説明

自動変速機用コントロールスイッチ

【課題】シャフトを可動体に圧入するときに、可動体やシャフトに破損などの不具合が発生するおそれが小さい自動変速機用コントロールスイッチを提供する。
【解決手段】可動体10の軸部11に圧入孔15を設け、略多角形状のシャフト20を圧入孔15に圧入して固定する自動変速機用コントロールスイッチにおいて、圧入孔15の角の部分又はその近傍の内壁面に、応力緩和溝15aを設けた。これにより、シャフト20を圧入孔15に挿通した時には、圧入孔15の内壁とシャフト20との間に隙間16が形成される。従って、圧入孔15の角の部分にかかる応力が緩和されるので、破損などの不具合が発生するおそれを小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車における自動変速機のシフトレバーの切換操作で、パーキング、リバース、ニュートラル、ドライブ、2速、1速というようなシフトポジションを示すポジション信号を発生する自動変速機用コントロールスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動変速機のシフトレバーの切換操作に応じて自動変速機のシフトポジションに対応したポジション信号を出力する、自動変速機用コントロールスイッチが提供されている。
【0003】
この種の自動変速機用コントロールスイッチとして、例えば特許文献1に記載されたコントロールスイッチは、円筒状に形成された軸部及び軸部から突設された主体を有する可動体と、内部に可動体を収納したハウジングとを備え、ハウジングに貫設された軸受孔に可動体の軸部が回動自在に枢支されており、可動体の主体は、軸部の回動に応じてハウジングに形成された空間内を回動する。ハウジングの空間内には、可動体の軸部を中心として同心円弧状に複数の固定接点が配設されており、可動体の主体には、当該主体と一体移動し、前記固定接点に接離自在に接触する可動接点が設けられている。また、可動体の軸部は、シフトレバーの切換操作に応じて回動するシャフトに固定されている。
【0004】
すなわち本従来例では、シフトレバーの操作に応じてシャフト並びに可動体が一体的に回動し、この可動体の回動によって可動接点と固定接点とが接触・開離して、当該接点の接触・開離の組み合わせに対応したポジション信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−265674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなコントロールスイッチにおいて、可動体をシャフトに固定するには、締め付け用ナットによって締め付け固定する方法や、可動体にシャフトを圧入して固定する方法がある。特に後者の方法ではナットが不要なことから、前者に比べて製造工程を簡素化することができるとともに、ナットの締め付け不足や弛みなどによる不具合の発生を防ぐことができ、また部品点数の削減を図ることができるという利点があり、一般にこの後者の方法が採用されるようになっている。
【0007】
図4に、可動体10にシャフト20を圧入して固定するコントロールスイッチにおいて、従来用いられてきた可動体10の構造を示す。可動体10の軸部11には、略多角形状であるシャフト20の断面と略同一形状の圧入孔15が貫設されており、この圧入孔15にシャフト20を圧入する構造となっている。
【0008】
しかしながら、上記の構造を有する可動体10では、シャフト20を圧入孔15に圧入するときに、圧入孔15の角の部分15bに応力が集中する。このため、可動体10の軸部11やシャフト20に、割れや破損などの不具合が発生するおそれがあった。
【0009】
この問題を解決するには、例えば、圧入孔の大きさをシャフトの断面よりも大きめに設計しておき、この圧入孔の内壁面にリブを形成して、リブを潰しながらシャフトを圧入する構造を採用することが考えられる。しかしこの方法では、圧入孔の内壁とシャフトの間の圧力が低下してしまい、圧入ズレが生じるおそれがある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、可動体にシャフトを圧入するときに、シャフトや可動体に破損などの不具合が発生しにくい自動変速機用コントロールスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、ハウジング及び、自動変速機のシフトレバーの切換操作に応じて前記ハウジング内を回動する可動体を備え、この可動体に可動接点を設けるとともに可動体の回動位置に応じて可動接点と接触・開離する複数の固定接点を前記ハウジング内に設け、接触又は開離する可動接点と固定接点の組み合わせに対応した自動変速機のシフトポジションを示すポジション信号を出力する自動変速機用コントロールスイッチにおいて、前記可動体は、前記ハウジングに貫設された軸受孔に挿通されて回動自在に枢支される軸部を具備するとともに、前記軸受孔の軸方向に沿って前記軸部を貫通し、前記シフトレバーの操作によって回動するシャフトが圧入される圧入孔を有してなり、前記圧入孔は、断面略多角形の略角柱状である前記シャフトの側面に圧接する内壁面を有し、この圧入孔の内壁面のうちで、前記シャフトの圧入による応力が集中する内壁と内壁との交差箇所、或いはこの交差箇所の近傍に、前記シャフトの側面から離れるように凹んだ応力緩和溝が前記シャフトの圧入方向に沿って設けられたことを特徴とする。
【0012】
本発明では、略多角形である圧入孔の角の部分(内壁と内壁との交差箇所)又はその近傍の内壁面に応力緩和溝を形成することによって、シャフトの側面と圧入孔の内壁との間に隙間が形成される。これにより、この角の部分にかかる応力が緩和されるので、可動体やシャフトに破損などの不具合が発生するおそれが小さくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、可動体にシャフトを圧入するときに、シャフトや可動体に破損などの不具合が発生しにくい自動変速機用コントロールスイッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態にかかる、(a)は可動体10の斜視図、(b)は可動体10及びシャフト20の斜視図、(c)は可動体10の軸部11の断面図、(d)は可動体10の軸部11とシャフト20の断面図である。
【図2】同上の分解斜視図である。
【図3】本発明の別の実施形態にかかる、(a)は可動体10の軸部11の断面図、(b)は可動体10の軸部11とシャフト20の断面図である。
【図4】従来例にかかる、(a)は可動体10の斜視図、(b)は可動体10及びシャフト20の斜視図、(c)は可動体10の軸部11の断面図、(d)は可動体10の軸部11とシャフト20の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0016】
本実施形態の自動変速機用コントロールスイッチは、図2に示すように、それぞれ略扇形に形成された合成樹脂成形品からなるボディ1aとカバー1bとを嵌合してなるハウジング1と、このハウジング1の内部に回動自在に収められる可動体10とを備えている。
【0017】
可動体10は一端に円筒形の軸部11を有する主体12を備え、主体12のボディ1aと対向する面(図2における下面)に設けられた凹所(図示せず)内に、コイルばね13によりボディ1a側へ弾性付勢された複数個(図示は1個のみ)の可動接点14が収納される。軸部11には、図1に示すように、自動変速機のシャフト20が挿通される圧入孔15が、軸方向に沿って貫設されている。この圧入孔15は、略多角形であるシャフト20の断面と略同一形状の内壁面を備えるとともに、略多角形の角の部分(内壁と内壁との交差箇所)には、シャフト20の圧入方向に沿って、応力緩和溝15aが(略四角形であるシャフト20の断面形状に対応して4つ)設けられている。すなわち、圧入孔15にシャフト20を挿通しているときには、図1(d)に示すように、圧入孔15の内壁の角の部分とシャフト20の側面との間に隙間16が形成される。
【0018】
尚、応力緩和溝15aの形状は、図1(c)のように略多角形の一辺をU字状に凹ませた形状に限られるものではなく、圧入孔15の角部分において圧入孔15の内壁とシャフト20との間に隙間が形成されるものであればよい。
【0019】
ボディ1aは一面が開口する扁平な略扇状に形成され、扇の要に相当する部分には、可動体10の軸部11の一端側が挿通されて回動自在に枢支する軸受孔2aが、厚み方向に貫設されている。また、ボディ1aの内底面には、一端部にそれぞれ固定接点3が設けられた帯板状の複数の導電体4がインサート成形されている。各固定接点3は軸受孔2aを中心にした同心円弧状に配設されており、ハウジング1内で可動体10が具備する可動接点14と対向させてある。また、周壁で囲まれ筒状に形成されたコネクタ部5がボディ1aと一体に形成されており、コネクタ部5の内底面には、複数の導電体4の先端が複数列に突出されてコネクタ端子(図示せず)が形成してある。
【0020】
また、ボディ1aにおける扇の要部分の両側には、略山型の鍔部6,6が一体に形成されている。鍔部6には、ハウジング1を車体(あるいは自動変速機)に取り付けるためのボルト(図示せず)が挿通される長円形のボルト挿通孔7aが貫通した筒状の補強部材7が、それぞれインサート成形されている。
【0021】
カバー1bは、ボディ1aの開口部を覆う扁平な略扇形に形成され、ボディ1aと同様に扇の要に相当する部分には、可動体10の軸部11の他端側が挿通されて回動自在に枢支する軸受孔2bが、厚み方向に貫設されている。
【0022】
本実施形態は、可動体10の圧入孔15にシャフト20を圧入し、補強部材7のボルト挿通孔7aに挿通されたボルトにナットを締め付けることで、車体(あるいは自動変速機)に取り付けられる。そして、自動変速機のシフトレバーの切換操作によってシャフト20と可動体10とが一体的に回動し、ハウジング1に対する可動体10の回動位置に応じて可動体10に保持されている可動接点14が各固定接点3と選択的に接触・開離して、自動変速機のシフトポジションに対応したポジション信号が、コネクタ部5に接続された相手側コネクタを介して外部に取り出されるものである。
【0023】
本実施形態の可動体10に形成された圧入孔15は、断面略多角形であるシャフト20の側面に圧接する内壁面を有し、この圧入孔15の内壁面のうちで、シャフト20の圧入による応力が集中する角の部分に、このシャフト20の圧入方向に沿って、シャフト20の側面から離れるように凹んだ応力緩和溝15aを設けてなる。これにより、圧入孔15の角の部分において、シャフト20と圧入孔15の内壁との間に隙間16が形成されるので、当該角の部分にかかる応力が緩和される。従って、軸部11やシャフト20に割れや破損が発生するおそれを小さくすることができる。
【0024】
なお、図3(a)に示すように、応力緩和溝15aを、圧入孔15の角の部分15b近傍の内壁面に設けてもよい。シャフト20を圧入孔15に挿通すると、圧入孔15には図3(b)の矢印A及びBの向きに圧力がかかり、角の部分15bに応力が集中する。本実施形態では、角の部分15b近傍の内壁面に応力緩和溝15aを設けることによって、当該応力緩和溝15aを設けた内壁面から角の部分15bにかかる応力(矢印Aの向きにかかる圧力によって生じる応力)が緩和される。従って、軸部11やシャフト20に割れや破損が発生するおそれを小さくすることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 ハウジング
3 固定接点
10 可動体
11 軸部
14 可動接点
15 圧入孔
15a 応力緩和溝
16 隙間
20 シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング及び、自動変速機のシフトレバーの切換操作に応じて前記ハウジング内を回動する可動体を備え、この可動体に可動接点を設けるとともに可動体の回動位置に応じて可動接点と接触・開離する複数の固定接点を前記ハウジング内に設け、接触又は開離する可動接点と固定接点の組み合わせに対応した自動変速機のシフトポジションを示すポジション信号を出力する自動変速機用コントロールスイッチにおいて、
前記可動体は、前記ハウジングに貫設された軸受孔に挿通されて回動自在に枢支される軸部を具備するとともに、前記軸受孔の軸方向に沿って前記軸部を貫通し、前記シフトレバーの操作によって回動するシャフトが圧入される圧入孔を有してなり、
前記圧入孔は、断面略多角形の略角柱状である前記シャフトの側面に圧接する内壁面を有し、この圧入孔の内壁面のうちで、前記シャフトの圧入による応力が集中する内壁と内壁との交差箇所、或いはこの交差箇所の近傍に、前記シャフトの側面から離れるように凹んだ応力緩和溝が前記シャフトの圧入方向に沿って設けられたことを特徴とする自動変速機用コントロールスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−38568(P2011−38568A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185058(P2009−185058)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】