説明

自動変速機装置

【課題】少ない遊星歯車により多段変速を実現する。
【解決手段】サンギヤ32,リングギヤ34,キャリア38を有するダブルピニオン型の遊星歯車機構30と、サンギヤ42,リングギヤ44,キャリア48を有するシングルピニオン型の遊星歯車機構40と、サンギヤ52,リングギヤ54,キャリア58を有するシングルピニオン型の遊星歯車機構50と、クラッチC1〜C5と、ブレーキB1,B2とを備え、入力軸22をサンギヤ32に、出力ギヤ24をリングギヤ44に、リングギヤ34をリングギヤ54に接続する。また、クラッチC1を入力軸22とキャリア48とに、クラッチC2をキャリア48とキャリア58とに、クラッチC3をリングギヤ34とサンギヤ42とに、クラッチC4をキャリア38とサンギヤ42とに、クラッチC5をキャリア38とサンギヤ52とに、第1のブレーキB1をキャリア58に、第2のブレーキB2をサンギヤ52に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力部材に入力された動力を変速して出力部材に出力する自動変速機装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動変速機装置としては、4つの遊星歯車組(遊星歯車機構)と、4つのクラッチと、2つのブレーキとにより前進11速段と後進1速段とを形成可能なものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、4つの遊星歯車機構が軸方向に直列配置され、エンジンからの動力が入力される入力軸と駆動輪を駆動する出力軸とが直線上に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−197927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動変速機装置では、遊星歯車機構の数が多いほどギヤの噛み合い損失が増して動力の伝達効率が悪化し、全長(軸方向の長さ)が長くなり、重量が増し、装置全体も大型化するため、できる限り少ない遊星歯車機構により多段の変速段を実現することが望ましい。一方、多段の自動変速機を設計する際には、高速走行時に必要な駆動力を確保するために最高変速段におけるギヤ比を適正化したり、変速ショックを抑制するために各変速段間のステップ比を適正化することも求められる。
【0005】
本発明の自動変速機装置は、少ない遊星歯車機構により多段の変速段を実現することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自動変速機装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の自動変速機装置は、
入力部材に入力された動力を変速して出力部材に出力する自動変速機装置であって、
サンギヤが前記入力部材に接続されたダブルピニオン型の第1の遊星歯車機構と、
リングギヤが前記出力部材に接続されたシングルピニオン型の第2の遊星歯車機構と、
リングギヤが前記第1の遊星歯車機構のリングギヤに接続されたシングルピニオン型の第3の遊星歯車機構と、
前記入力軸と前記第2の遊星歯車機構のキャリアとの接続と該接続の解除とが可能な第1のクラッチと、
前記第2の遊星歯車機構のキャリアと前記第3の遊星歯車機構のキャリアとの接続と該接続の解除とが可能な第2のクラッチと、
前記第1の遊星歯車機構のリングギヤと前記第2の遊星歯車機構のサンギヤとの接続と該接続の解除とが可能な第3のクラッチと、
前記第1の遊星歯車機構のキャリアと前記第2の遊星歯車機構のサンギヤとの接続と該接続の解除とが可能な第4のクラッチと、
前記第1の遊星歯車機構のキャリアと前記第3の遊星歯車機構のサンギヤとの接続と該接続の解除とが可能な第5のクラッチと、
前記第3の遊星歯車機構のキャリアに接続された第1のブレーキと、
前記第3の遊星歯車機構のサンギヤに接続された第2のブレーキと、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の自動変速機装置では、自動変速機を、ダブルピニオン型の第1の遊星歯車機構と、シングルピニオン型の第2の遊星歯車機構と、シングルピニオン型の第3の遊星歯車機構と、第1〜第5のクラッチと、第1,第2のブレーキとにより構成し、入力部材を第1の遊星歯車機構のサンギヤに接続し、出力部材を第2の遊星歯車機構のリングギヤに接続し、第1の遊星歯車機構のリングギヤを第3の遊星歯車機構のリングギヤに接続し、第1のクラッチを入力軸と第2の遊星歯車機構のキャリアとの接続と接続の解除とが可能に形成し、第2のクラッチを第2の遊星歯車機構のキャリアと第3の遊星歯車機構のキャリアとの接続と接続の解除とが可能に形成し、第3のクラッチを第1の遊星歯車機構のリングギヤと第2の遊星歯車機構のサンギヤとの接続と接続の解除とが可能に形成し、第4のクラッチを第1の遊星歯車機構のキャリアと第2の遊星歯車機構のサンギヤとの接続と接続の解除とが可能に形成し、第1のブレーキを第3の遊星歯車機構のキャリアに接続し、第2のブレーキを第3の遊星歯車機構のサンギヤに接続する。この結果、少ない遊星歯車機構により多段変速の自動変速機を実現することができる。
【0009】
前進11速段と後進段の変速が可能な本発明の自動変速機装置において、前進1速段は、前記第2のクラッチと前記第4のクラッチと前記第5のクラッチと前記第1のブレーキとを係合することにより形成され、前進2速段は、前記第2のクラッチと前記第4のクラッチと前記第1のブレーキと前記第2のブレーキとを係合することにより形成され、前進3速段は、前記第2のクラッチと前記第4のクラッチと前記第5のクラッチと前記第2のブレーキとを係合することにより形成され、前進4速段は、前記第2のクラッチと前記第3のクラッチと前記第4のクラッチと前記第2のブレーキとを係合することにより形成され、前進5速段は、前記第1のクラッチと前記第2のクラッチと前記第4のクラッチと前記第2のブレーキとを係合することにより形成され、前進6速段は、前記第1のクラッチと前記第2のクラッチと前記第3のクラッチと前記第2のブレーキとを係合することにより形成され、前進7速段は、前記第1のクラッチと前記第3のクラッチと前記第4のクラッチと前記第2のブレーキとを係合することにより形成され、前進8速段は、前記第1のクラッチと前記第3のクラッチと前記第5のクラッチと前記第2のブレーキとを係合することにより形成され、前進9速段は、前記第1のクラッチと前記第3のクラッチと前記第5のクラッチと前記第1のブレーキとを係合することにより形成され、前進10速段は、前記第1のクラッチと前記第3のクラッチと前記第1のブレーキと前記第2のブレーキとを係合することにより形成され、前進11速段は、前記第1のクラッチと前記第4のクラッチと前記第1のブレーキと前記第2のブレーキとを係合することにより形成され、後進段は、前記第2のクラッチと前記第3のクラッチと前記第4のクラッチと前記第1のブレーキとを係合することにより形成されるものとすることもできる。こうすれば、各変速段におけるギヤ比やステップ比をより適正化することができる。
【0010】
また、本発明の自動変速機装置において、前記第1の遊星歯車機構と前記第2の遊星歯車機構と前記第3の遊星歯車機構は、軸方向に並んで配置され、前記第2の遊星歯車機構は、軸方向端部に配置されてなるものとすることもできる。車両左右方向が前記入力部材および前記出力部材の回転軸方向となると共に前記出力部材がギヤ機構と差動機構を介して左右輪に連結されてなる車両に搭載された上述した態様の自動変速機装置において、前記入力部材は、前記第2の遊星歯車機構側から挿通されて前記第1の遊星歯車機構のサンギヤに接続されてなるものとすることもできる。こうすれば、同一の遊星歯車機構(第2の遊星歯車機構)側に入力部材と出力部材とを配置することができるため、入力部材に動力を出力する原動機と自動変速機装置とを含めた駆動系を考えたときに、出力部材を駆動系の中央付近に配置することができる。したがって、出力部材と差動機構とを連結するギヤ機構を小型化でき、装置全体をより小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例としての自動変速機装置20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】実施例の自動変速機装置20の作動表である。
【図3】変形例の自動変速機装置120の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は本発明の一実施例としての自動変速機装置20の構成の概略を示す構成図である。実施例の自動変速機装置20は、図示しない内燃機関としてのエンジンが横置き(車両の左右方向に)配置されたタイプ(例えば、フロントエンジンフロントドライブ式)の車両に搭載されており、エンジンからの動力を図示しないトルクコンバータなどの発進装置を介して入力軸(インプットシャフト)22から入力すると共に入力した動力を変速して出力ギヤ24に出力する有段変速機構として構成されている。出力ギヤ24に出力された動力は、ギヤ機構26とデファレンシャルギヤ28とを介して左右の駆動輪29a,29bに出力される。なお、ギヤ機構26は、回転軸が出力ギヤ24の回転軸と並行に配置されたカウンタシャフト26aと、カウンタシャフト26aに取り付けられ出力ギヤ24と噛合するカウンタドリブンギヤ26bと、同じくカウンタシャフト26aに取り付けられデファレンシャルギヤ28のリングギヤと噛合するデファレンシャルドライブギヤ26cとにより構成されている。
【0014】
実施例の自動変速機装置20は、図1に示すように、ダブルピニオン式の第1の遊星歯車機構30とシングルピニオン式の第2の遊星歯車機構40とシングルピニオン式の第3の遊星歯車機構50と5つクラッチC1〜C5と2つのブレーキB1,B2とを備える。3つの遊星歯車機構30,40,50は、エンジン側(図1中右側)から第2の遊星歯車機構40,第1の遊星歯車機構30,第3の遊星歯車機構50の順に軸方向に並んで配置されている。
【0015】
ダブルピニオン式の第1の遊星歯車機構30は、外歯歯車としてのサンギヤ32と、このサンギヤ32と同心円上に配置された内歯歯車としてのリングギヤ34と、サンギヤ32に噛合する複数の第1のピニオンギヤ36と、この第1のピニオンギヤ36に噛合すると共にリングギヤ34に噛合する複数の第2のピニオンギヤ36と、複数の第1のピニオンギヤ36および複数の第2のピニオンギヤ37とを連結して自転かつ公転自在に保持するキャリア38とを備え、そのギヤ比λ1(サンギヤ32の歯数/リングギヤ34の歯数)としては0.54に設定されている。この第1の遊星歯車機構30では、サンギヤ32は入力軸22に接続されている。
【0016】
シングルピニオン式の第2の遊星歯車機構40は、外歯歯車のサンギヤ42と、このサンギヤ42と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ44と、サンギヤ42に噛合すると共にリングギヤ44に噛合する複数のピニオンギヤ46と、複数のピニオンギヤ46を自転かつ公転自在に保持するキャリア48とを備え、そのギヤ比λ2(サンギヤ42の歯数/リングギヤ44の歯数)としては0.3に設定されている。この第2の遊星歯車機構40では、サンギヤ42は第3のクラッチC3を介して第1の遊星歯車機構30のリングギヤ34に接続されると共に第4のクラッチC4を介して第1の遊星歯車機構30のキャリア38に接続され、リングギヤ44はその外周に出力ギヤ24が形成され、キャリア48は第1のクラッチC1を介して入力軸22に接続されている。
【0017】
また、第2の遊星歯車機構40は、サンギヤ42の回転軸中心に貫通孔が形成されている。入力軸22は、第2の遊星歯車機構40側(図1中右側)からサンギヤ42の貫通孔に挿通され、第1の遊星歯車機構30のサンギヤ32に接続されている。出力ギヤ24は第2の遊星歯車機構40のリングギヤ44に形成されているから、出力ギヤ24はエンジンと自動変速機装置20とを含めた駆動系の中央付近に配置されることになる。
【0018】
シングルピニオン式の第3の遊星歯車機構50は、外歯歯車のサンギヤ52と、このサンギヤ52と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ54と、サンギヤ52に噛合すると共にリングギヤ54に噛合する複数のピニオンギヤ56と、複数のピニオンギヤ56を自転かつ公転自在に保持するキャリア58とを備え、そのギヤ比λ3(サンギヤ52の歯数/リングギヤ54の歯数)としては0.38に設定されている。この第3の遊星歯車機構50では、サンギヤ52は第5のクラッチC5を介して第1の遊星歯車機構30のキャリア38に接続されると共に第2のブレーキB2を介して自動変速機装置20のケース21に接続され、リングギヤ54は第1の遊星歯車機構30のリングギヤ34に接続され、キャリア58は第2のクラッチC2を介して第2の遊星歯車機構40のキャリア48に接続されると共に第1のブレーキB1を介して自動変速機装置20のケース21に接続されている。
【0019】
こうして構成された実施例の自動変速機装置20は、クラッチC1〜C5の係合と非係合およびブレーキB1,B2の係合と非係合の組み合わせにより前進1速段〜11速段と後進段とを切り替えることができるようになっている。図2に、自動変速機装置20の作動表を示す。
【0020】
実施例の自動変速機装置20では、図2に示するように、前進1速段は、第2のクラッチC2と第4のクラッチC4と第5のクラッチC5と第1のブレーキB1とを係合とすると共に第1のクラッチC1と第3のクラッチC3と第2のブレーキB2とを非係合とすることにより形成することができる。また、前進2速段は、第2のクラッチC2と第4のクラッチC4と第1のブレーキB1と第2のブレーキB2とを係合とすると共に第1のクラッチC1と第3のクラッチC3と第5のクラッチC5とを非係合とすることにより形成することができる。前進3速段は、第2のクラッチC2と第4のクラッチC4と第5のクラッチC5と第2のブレーキB2とを係合とすると共に第1のクラッチC1と第3のクラッチC3と第1のブレーキB1とを非係合とすることにより形成することができる。前進4速段は、第2のクラッチC2と第3のクラッチC3と第4のクラッチC4と第2のブレーキB2とを係合とすると共に第1のクラッチC1と第5のクラッチC5と第1のブレーキB1とを非係合とすることにより形成することができる。前進5速段は、第1のクラッチC1と第2のクラッチC2と第4のクラッチC4と第2のブレーキB2とを係合とすると共に第3のクラッチC3と第5のクラッチC5と第1のブレーキB1とを非係合とすることにより形成することができる。前進6速段は、第1のクラッチC1と第2のクラッチC2と第3のクラッチC3と第2のブレーキB2とを係合とすると共に第4のクラッチC4と第5のクラッチC5と第1のブレーキB1とを非係合とすることにより形成することができる。前進7速段は、第1のクラッチC1と第3のクラッチC3と第4のクラッチC4と第2のブレーキB2とを係合とすると共に第2のクラッチC2と第5のクラッチC5と第1のブレーキB1とを非係合とすることにより形成することができる。前進8速段は、第1のクラッチC1と第3のクラッチC3と第5のクラッチC5と第2のブレーキB2とを係合とすると共に第2のクラッチC2と第4のクラッチC4と第1のブレーキB1とを非係合とすることにより形成することができる。前進9速段は、第1のクラッチC1と第3のクラッチC3と第5のクラッチC5と第1のブレーキB1とを係合とすると共に第2のクラッチC2と第4のクラッチC4と第2のブレーキB2とを非係合とすることにより形成することができる。前進10速段は、第1のクラッチC1と第3のクラッチC3と第1のブレーキB1と第2のブレーキB2とを係合とすると共に第2のクラッチC2と第4のクラッチC4と第5のクラッチC5とを非係合とすることにより形成することができる。前進11速段は、第1のクラッチC1と第4のクラッチC4と第1のブレーキB1と第2のブレーキB2とを係合とすると共に第2のクラッチC2と第3のクラッチC3と第5のクラッチC5とを非係合とすることにより形成することができる。後進段は、第2のクラッチC2と第3のクラッチC3と第4のクラッチC4と第1のブレーキB1とを係合とすると共に第1のクラッチC1と第5のクラッチC5と第2のブレーキB2とを非係合とすることにより形成することができる。
【0021】
こうして構成された実施例の自動変速機装置20では、図2に示すように、前進1速段〜6速段はギヤ比(減速比)が値1よりも大きい減速用の変速段に設定され、前進7速段はギヤ比が値1の等速用の変速段に設定され、前進8速〜11速段はギヤ比が値1よりも小さい増速用の変速段に設定されている。ここで、最高速段については、通常、高速走行時の駆動力を確保するために0.55程度のギヤ比が必要とされているが、実施例では、前進11速段のギヤ比が0.605に設定されており、十分な値に設定できていることがわかる。また、後進段については、前進2速のギヤ比よりも絶対値を大きな値−3.333に設定することができる。さらに、各変速段間のステップ比については、特に、乗員が変速ショックを感じやすい前進10速段と前進11速段との間におけるステップ比を低めの値1.271に設定することができる。
【0022】
以上説明した実施例の自動変速機装置20によれば、ダブルピニオン型の第1の遊星歯車機構30と、シングルピニオン型の第2の遊星歯車機構40と、シングルピニオン型の第3の遊星歯車機構50と、第1〜第5のクラッチC1〜C5と、第1,第2のブレーキB1,B2とを備え、入力軸22を第1の遊星歯車機構30のサンギヤ32に接続し、出力ギヤ24を第2の遊星歯車機構40のリングギヤ44の外周に形成し、第1の遊星歯車機構30のリングギヤ34を第3の遊星歯車機構50のリングギヤ54に接続し、第1のクラッチC1を入力軸22と第2の遊星歯車機構40のキャリア48とに接続し、第2のクラッチC2を第2の遊星歯車機構40のキャリア48と第3の遊星歯車機構50のキャリア58とに接続し、第3のクラッチC3を第1の遊星歯車機構30のリングギヤ34と第2の遊星歯車機構40のサンギヤ42とに接続し、第4のクラッチC4を第1の遊星歯車機構30のキャリア38と第2の遊星歯車機構40のサンギヤ42とに接続し、第5のクラッチC5を第1の遊星歯車機構30のキャリア38と第3の遊星歯車機構50のサンギヤ52とに接続し、第1のブレーキB1を第3の遊星歯車機構50のキャリア58とケース21とに接続し、第2のブレーキB2を第3の遊星歯車機構50のサンギヤ52とケース21とに接続するから、3つの遊星歯車機構により多段変速の自動変速機を実現することができる。この結果、自動変速機装置20の全長(軸方向の長さ)を短くしてコンパクト化することができたり、少ない遊星歯車機構によりその噛み合いによる損失を低減して動力の伝達効率を高めることができたり、少ない遊星歯車機構により装置全体の軽量化や低コスト化を図ったりすることができる。
【0023】
また、実施例の自動変速機装置20によれば、上述した構成に加えて、前進1速段は第2のクラッチC2と第4のクラッチC4と第5のクラッチC5と第1のブレーキB1とを係合し、前進2速段は第2のクラッチC2と第4のクラッチC4と第1のブレーキB1と第2のブレーキB2とを係合し、前進3速段は第2のクラッチC2と第4のクラッチC4と第5のクラッチC5と第2のブレーキB2とを係合し、前進4速段は第2のクラッチC2と第3のクラッチC3と第4のクラッチC4と第2のブレーキB2とを係合し、前進5速段は第1のクラッチC1と第2のクラッチC2と第4のクラッチC4と第2のブレーキB2とを係合し、前進6速段は第1のクラッチC1と第2のクラッチC2と第3のクラッチC3と第2のブレーキB2とを係合し、前進7速段は第1のクラッチC1と第3のクラッチC3と第4のクラッチC4と第2のブレーキB2とを係合し、前進8速段は第1のクラッチC1と第3のクラッチC3と第5のクラッチC5と第2のブレーキB2とを係合し、前進9速段は第1のクラッチC1と第3のクラッチC3と第5のクラッチC5と第1のブレーキB1とを係合し、前進10速段は第1のクラッチC1と第3のクラッチC3と第1のブレーキB1と第2のブレーキB2とを係合し、前進11速段は第1のクラッチC1と第4のクラッチC4と第1のブレーキB1と第2のブレーキB2とを係合し、後進段は第2のクラッチC2と第3のクラッチC3と第4のクラッチC4と第1のブレーキB1とを係合することにより、前進11速段と後進段とを実現するから、最高速段である前進11速段のギヤ比(実施例では、0.605)や後進段のギヤ比(実施例では、−3.333)を大きくとることができるため、最高速段による前進時や後進時に必要な駆動力を確保することができる。また、各変速段間、特に、前進10速段と前進11速段との間のステップ比(実施例では、1.271)を小さくすることができ、変速時のショックをより低減させることができる。
【0024】
さらに、実施例の自動変速機装置20によれば、第2の遊星歯車機構40のサンギヤ42の回転軸中心に貫通孔を形成し、入力軸22を第2の遊星歯車機構40側(図1中右側)からサンギヤ42の貫通孔に挿通して第1の遊星歯車機構30のサンギヤ32に接続すると共に出力ギヤ24を第2の遊星歯車機構40のリングギヤ44に形成するから、出力ギヤ24を、エンジンと自動変速機装置20とを含めた駆動系の中央付近に配置することができ、出力ギヤ24とデファレンシャルギヤ28とを連結するためのカウンターシャフト26aの軸長を短くすることができる。この結果、装置全体をコンパクトにすることができ、自動変速機装置20をフロントエンジンフロントドライブ式の車両に好適なものとすることができる。
【0025】
実施例の自動変速機装置20では、本発明を入力軸22と出力ギヤ24とが車両の左右方向に配置されたタイプ(フロントエンジンフロントドライブ式)の車両に適用するものとしたが、これに限られず、図3の変形例の自動変速機装置120に示すように、入力軸122と出力軸124とが車両の前後方向に配置されたタイプ(例えば、フロントエンジンリアドライブ式)の車両に適用するものとしてもよい。この変形例の自動変速機装置120では、3つの遊星歯車機構30,40,50の並び順やクラッチC1〜C5,ブレーキB1,B2の配置は実施例の自動変速機装置20と同一であり、入力軸122が第3の遊星歯車機構50側(図3中左側)に配置されると共に出力軸124が第2の遊星歯車機構40側(図3中右側)に配置されている点が異なる。第3の遊星歯車機構50はサンギヤ52の回転軸中心に貫通孔が形成されており、入力軸122は第3の遊星歯車機構50側からサンギヤ52の貫通孔に挿通されて第1の遊星歯車機構30のサンギヤ32に接続されている。また、第2の遊星歯車機構40はリングギヤ44に出力軸124が接続されている。このように、変形例の自動変速機装置120では、実施例の自動変速機装置20に対して3つの遊星歯車機構30,40,50やクラッチC1〜C5,ブレーキB1,B2の配置を変更することなく、入力軸122と出力軸124とが車両の前後方向に配置されたタイプの車両に適用することができるのである。
【0026】
実施例の自動変速機装置20では、5つのクラッチC1〜C5および2つのブレーキB1,B2の係合と非係合とを組み合わせを図2の作動表に従うものとして前進11速段と後進段とを実現するものとしたが、係合と非係合の組み合わせは図2の作動表に限定されるものではなく、その他の組み合わせを採用するものとしてもよい。このとき、変速段の段数は前進11速段に限られず、例えば前進10速段などの段数としてもよい。
【0027】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、入力軸(インプットシャフト)22,122が「入力部材」に相当し、出力ギヤ24や出力軸124が「出力部材」に相当し、第1の遊星歯車機構30が「第1の遊星歯車機構」に相当し、第2の遊星歯車機構40が「第2の遊星歯車機構」に相当し、第3の遊星歯車機構50が「第3の遊星歯車機構」に相当し、第1のクラッチC1が「第1のクラッチ」に相当し、第2のクラッチC2が「第2のクラッチ」に相当し、第3のクラッチC3が「第3のクラッチ」に相当し、第4のクラッチC4が「第4のクラッチ」に相当し、第5のクラッチC5が「第5のクラッチ」に相当し、第1のブレーキB1が「第1のブレーキ」に相当し、第2のブレーキB2が「第2のブレーキ」に相当する。また、ギヤ機構26が「ギヤ機構」に相当し、デファレンシャルギヤ28が「差動機構」に相当する。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0028】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、自動変速機の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0030】
20,120 自動変速機装置、21 ケース、22 入力軸、24 出力ギヤ、26 ギヤ機構、26a カウンタシャフト、26b カウンタドリブンギヤ、26c デファレンシャルドライブギヤ、28 デファレンシャルギヤ、29a,29b 駆動輪、30 ダブルピニオン型の遊星歯車機構、32 サンギヤ、34 リングギヤ、36 第1のピニオンギヤ、37 第2のピニオンギヤ、38 キャリア、40 シングルピニオン型の遊星歯車機構、42 サンギヤ、44 リングギヤ、46 ピニオンギヤ、48 キャリア、50 シングルピニオン型の遊星歯車機構、52 サンギヤ、54 リングギヤ、56 ピニオンギヤ、58 キャリア、122 入力軸、124 出力軸、C1 第1のクラッチ、C2 第2のクラッチ、C3 第3のクラッチ、C4 第4のクラッチ、C5 第5のクラッチ、B1 第1のブレーキ、B2 第2のブレーキ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部材に入力された動力を変速して出力部材に出力する自動変速機装置であって、
サンギヤが前記入力部材に接続されたダブルピニオン型の第1の遊星歯車機構と、
リングギヤが前記出力部材に接続されたシングルピニオン型の第2の遊星歯車機構と、
リングギヤが前記第1の遊星歯車機構のリングギヤに接続されたシングルピニオン型の第3の遊星歯車機構と、
前記入力軸と前記第2の遊星歯車機構のキャリアとの接続と該接続の解除とが可能な第1のクラッチと、
前記第2の遊星歯車機構のキャリアと前記第3の遊星歯車機構のキャリアとの接続と該接続の解除とが可能な第2のクラッチと、
前記第1の遊星歯車機構のリングギヤと前記第2の遊星歯車機構のサンギヤとの接続と該接続の解除とが可能な第3のクラッチと、
前記第1の遊星歯車機構のキャリアと前記第2の遊星歯車機構のサンギヤとの接続と該接続の解除とが可能な第4のクラッチと、
前記第1の遊星歯車機構のキャリアと前記第3の遊星歯車機構のサンギヤとの接続と該接続の解除とが可能な第5のクラッチと、
前記第3の遊星歯車機構のキャリアに接続された第1のブレーキと、
前記第3の遊星歯車機構のサンギヤに接続された第2のブレーキと、
を備えることを特徴とする自動変速機装置。
【請求項2】
前進11速段と後進段の変速が可能な請求項1記載の自動変速機装置であって、
前進1速段は、前記第2のクラッチと前記第4のクラッチと前記第5のクラッチと前記第1のブレーキとを係合することにより形成され、
前進2速段は、前記第2のクラッチと前記第4のクラッチと前記第1のブレーキと前記第2のブレーキとを係合することにより形成され、
前進3速段は、前記第2のクラッチと前記第4のクラッチと前記第5のクラッチと前記第2のブレーキとを係合することにより形成され、
前進4速段は、前記第2のクラッチと前記第3のクラッチと前記第4のクラッチと前記第2のブレーキとを係合することにより形成され、
前進5速段は、前記第1のクラッチと前記第2のクラッチと前記第4のクラッチと前記第2のブレーキとを係合することにより形成され、
前進6速段は、前記第1のクラッチと前記第2のクラッチと前記第3のクラッチと前記第2のブレーキとを係合することにより形成され、
前進7速段は、前記第1のクラッチと前記第3のクラッチと前記第4のクラッチと前記第2のブレーキとを係合することにより形成され、
前進8速段は、前記第1のクラッチと前記第3のクラッチと前記第5のクラッチと前記第2のブレーキとを係合することにより形成され、
前進9速段は、前記第1のクラッチと前記第3のクラッチと前記第5のクラッチと前記第1のブレーキとを係合することにより形成され、
前進10速段は、前記第1のクラッチと前記第3のクラッチと前記第1のブレーキと前記第2のブレーキとを係合することにより形成され、
前進11速段は、前記第1のクラッチと前記第4のクラッチと前記第1のブレーキと前記第2のブレーキとを係合することにより形成され、
後進段は、前記第2のクラッチと前記第3のクラッチと前記第4のクラッチと前記第1のブレーキとを係合することにより形成される
ことを特徴とする自動変速機装置。
【請求項3】
原動機からの動力を前記入力部材に入力して前記出力部材に出力する請求項1または2記載の自動変速機装置であって、
前記第1の遊星歯車機構と前記第2の遊星歯車機構と前記第3の遊星歯車機構は、軸方向に並んで配置され、
前記第2の遊星歯車機構は、軸方向端部に配置されてなる
ことを特徴とする自動変速機装置。
【請求項4】
車両左右方向が前記入力部材および前記出力部材の回転軸方向となると共に前記出力部材がギヤ機構と差動機構とを介して左右輪に連結されてなる車両に搭載された請求項3記載の自動変速機装置であって、
前記入力部材は、前記第2の遊星歯車機構側から挿通されて前記第1の遊星歯車機構のサンギヤに接続されてなる
ことを特徴とする自動変速機装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−72464(P2013−72464A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210905(P2011−210905)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】