説明

自動変速機

【課題】クラッチの数が少なく、開放される係合要素の数が少ない自動変速機を提供する。
【解決手段】自動変速機は、4つのプラネタリギヤ4〜7を備える。入力軸2をリングギヤRfに、出力ギヤ3をキャリアCrに連結している。キャリアCfとサンギヤSmとを連結する第1連結体Cf,Smと、キャリアCmとリングギヤRaとを連結する第2連結体Cm,Raと、リングギヤRmとキャリアCaとリングギヤRrとを連結する第3連結体Rm,Ca,Rrとを備える。第1クラッチC1は、キャリアCmとサンギヤSrとを連結する。第2クラッチC2は、サンギヤSaとサンギヤSrとを連結する。第3クラッチC3は、入力軸2とサンギヤSrとを連結する。第1ブレーキB1は第1連結体Cf,Smを、第2ブレーキB2は第2連結体Cm,Raを、第3ブレーキB3はサンギヤSfを、それぞれ変速機ケース1に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力部材の回転を複数段に変速して出力部材に伝達する自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力部材の回転を変速機ケース内に配置した複数のプラネタリギヤを介して複数段に変速して出力部材に伝達する自動変速機が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1,2には、3組のプラネタリギヤ、及び係合要素として4つのクラッチと2つのブレーキを備え、前進8段を確保した自動変速機が記載されている。各変速段において、夫々2つの係合要素が係合し、4つの係合要素が開放されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−130152号公報
【特許文献2】特開2005−273768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に記載の自動変速機では、係合要素は4つのクラッチと2つのブレーキであり、ブレーキと比較してクラッチの数が多い。クラッチのピストンは、変速機ケースに設けられるブレーキのピストンと異なり、入力部材たる入力軸上や入力軸を軸支する主軸上等に設けられるものであり、プラネタリギヤの径方向外方に配置することができない。このため、クラッチの数が多いと自動変速機の軸長ひいては全長が長くなるという不具合がある。
【0006】
又、各変速段において夫々2つの係合要素が係合されており、開放している係合要素の数が4つと多く、開放されている係合要素の引き摺りによるフリクションロスが大きくなる。このため、変速機の伝達効率が劣るという不具合がある。
【0007】
以上の点に鑑み、本発明は、クラッチの数が少なく、開放される係合要素の数が少ない自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様は、入力部材の回転を変速機ケース内に配置した第1乃至第4プラネタリギヤを介して複数段に変速して出力部材に伝達する自動変速機であって、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に、第1プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を夫々第7要素、第8要素及び第9要素とし、第4プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を夫々第10要素、第11要素及び第12要素として、入力部材が第3要素に連結され、第2要素と第4要素とを連結して第1連結体が構成され、第5要素と第7要素とを連結して第2連結体が構成され、第6要素と第8要素と第10要素とを連結して第3連結体が構成されると共に、第11要素が出力部材に連結され、第2連結体と第12要素とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第1クラッチと、第9要素と第12要素とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第2クラッチと、入力部材と第12要素とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第3クラッチと、第1連結体を変速機ケースに固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在な第1ブレーキと、第2連結体を変速機ケースに固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在な第2ブレーキと、第1要素を変速機ケースに固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在な第3ブレーキとを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、後述する実施形態の説明から明らかなように、3つのクラッチと3つのブレーキで、前進8段の変速を確保することができる。従って、上記特許文献1,2に記載の自動変速機と比較して、自動変速機の全長を短くすることができる。
【0010】
又、各変速段において、開放される係合要素の数は全て3つであり、上記特許文献1,2に記載の自動変速機と比較して、開放される係合要素の数を1つ減少させることができる。従って、引き摺りによるフリクションロスが低減し、自動変速機の伝達効率を向上させることができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、入力部材の回転を変速機ケース内に配置した第1乃至第4プラネタリギヤを介して複数段に変速して出力部材に伝達する自動変速機であって、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に、第1プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を夫々第7要素、第8要素及び第9要素とし、第4プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を夫々第10要素、第11要素及び第12要素として、入力部材が第3要素に連結され、第2要素と第4要素とを連結して第1連結体が構成され、第5要素と第7要素とを連結して第2連結体が構成され、第6要素と第8要素と第10要素とを連結して第3連結体が構成されると共に、第11要素が出力部材に連結され、第2連結体と第12要素とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第1クラッチと、第9要素と第11要素とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第2クラッチと、入力部材と第12要素とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第3クラッチと、第1連結体を変速機ケースに固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在な第1ブレーキと、第2連結体を変速機ケースに固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在な第2ブレーキと、第1要素を変速機ケースに固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在な第3ブレーキとを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、後述する実施形態の説明から明らかなように、3つのクラッチと3つのブレーキで、前進8段の変速を確保することができる。従って、上記特許文献1,2に記載の自動変速機と比較して、自動変速機の全長を短くすることができる。
【0013】
又、各変速段において、開放される係合要素の数は全て3つであり、上記特許文献1,2に記載の自動変速機と比較して、開放される係合要素の数を1つ減少させることができる。従って、引き摺りによるフリクションロスが低減し、自動変速機の伝達効率を向上させることができる。
【0014】
更に、本発明の第1及び第2の態様において、第2プラネタリギヤの第5要素と第3プラネタリギヤの第7要素とを一体化すると共に、第2プラネタリギヤの第6要素と第3プラネタリギヤの第8要素とを一体化して、第2プラネタリギヤと第3プラネタリギヤとでラビニヨ型の複式プラネタリギヤを構成すれば、自動変速機の全軸をより短くすることができる。
【0015】
又、本発明の第1及び第2の態様において、第3クラッチをドグクラッチ又はシンクロクラッチで構成すれば、第3クラッチを多板クラッチで構成したものと比較して、構造を簡素化することができるため、自動変速機の全軸をより短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は本発明に係る自動変速機の第1実施形態のスケルトン図、(b)は各変速段と各係合要素の係合状態との関係を纏めて示す図。
【図2】第1実施形態の第1乃至第4プラネタリギヤの速度線図。
【図3】(a)は本発明に係る自動変速機の第2実施形態のスケルトン図、(b)は各変速段と各係合要素の係合状態との関係を纏めて示す図。
【図4】第2実施形態の第1乃至第4プラネタリギヤの速度線図。
【図5】本発明に係る自動変速機の第3実施形態のスケルトン図。
【図6】本発明に係る自動変速機の第4実施形態のスケルトン図。
【図7】本発明に係る自動変速機の第5実施形態のスケルトン図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
本発明に係る自動変速機の第1実施形態を図1及び図2を参照して説明する。この自動変速機は、変速機ケース1内に回転自在に軸支した、図外のエンジン等の動力源に連結される入力部材たる入力軸2と、入力軸2と同心に配置された出力部材たる出力ギヤ3とを備えている。出力ギヤ3の回転は、図外のデファレンシャルギヤを介して車両の左右の駆動輪に伝達される。この自動変速機は、入力軸2が車両の幅方向に向くよう横置きに搭載されるため全長の制約が大きいFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車用に好適に搭載することができる。
【0018】
変速機ケース1内には、入力軸2の周りに位置させて、入力用の第1プラネタリギヤ4と、第2プラネタリギヤ5と第3プラネタリギヤ6とで構成される変速用の複式プラネタリギヤと、出力用の第4プラネタリギヤ7とが配置されている。
【0019】
第1プラネタリギヤ4は、サンギヤSfと、リングギヤRfと、互いに噛合すると共にサンギヤSfとリングギヤRfとに噛合するピニオンPfを自転及び公転自在に支持するキャリアCfとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成されている。
【0020】
図2の上段に示す第1プラネタリギヤ4の速度線図を参照して、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSf、キャリアCf及びリングギヤRfから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第1要素、第2要素及び第3要素とすると、第1要素はサンギヤSf、第2要素はキャリアCf、第3要素はリングギヤRfになる。尚、サンギヤSfとキャリアCf間の間隔とキャリアCfとリングギヤRf間の間隔との比は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比をi(リングギヤの歯数/サンギヤの歯数)として、i:1に設定される。又、リングギヤRfは入力軸2に連結されている。尚、速度線図において、下の横線と上の横線は夫々回転速度が「0」と「1」(入力軸2と同じ回転速度)であることを示している。
【0021】
上記複式プラネタリギヤは、第2プラネタリギヤ5と第3プラネタリギヤ6とで構成されている。第2プラネタリギヤ5は、サンギヤSmと、リングギヤRmと、サンギヤSmとリングギヤRmとに噛合するピニオンPmを自転及び公転自在に支持するキャリアCmとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成されている。第3プラネタリギヤ6も、サンギヤSaと、リングギヤRaと、サンギヤSaとリングギヤRaとに噛合するピニオンPaを自転及び公転自在に支持するキャリアCaとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成されている。
【0022】
図2の中段に示す複式プラネタリギヤの速度線図を参照して、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSm、キャリアCm及びリングギヤRmから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とすると、第4要素はサンギヤSm、第5要素はキャリアCm、第6要素はリングギヤRmになる。尚、サンギヤSmとキャリアCm間の間隔とキャリアCmとリングギヤRm間の間隔との比は、第2プラネタリギヤ5のギヤ比をjとして、j:1に設定される。
【0023】
又、上記複式プラネタリギヤの速度線図を参照して、第3プラネタリギヤ6のサンギヤSa、キャリアCa及びリングギヤRaから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第7要素、第8要素及び第9要素とすると、第7要素はリングギヤRa、第8要素はキャリアCa、第9要素はサンギヤSaになる。尚、サンギヤSaとキャリアCa間の間隔とキャリアCaとリングギヤRa間の間隔との比は、第3プラネタリギヤ6のギヤ比をkとして、k:1に設定される。
【0024】
第4プラネタリギヤ7は、サンギヤSrと、リングギヤRrと、サンギヤSrとリングギヤRrとに噛合するピニオンPrを自転及び公転自在に支持するキャリアCrとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成されている。
【0025】
図2の下段に示す第4プラネタリギヤ7の速度線図を参照して、第4プラネタリギヤ7のサンギヤSr、キャリアCr及びリングギヤRrから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第10要素、第11要素及び第12要素とすると、第10要素はリングギヤRr、第11要素はキャリアCr、第12要素はサンギヤSrになる。尚、サンギヤSrとキャリアCr間の間隔とキャリアCrとリングギヤRr間の間隔との比は、第4プラネタリギヤ7のギヤ比をmとして、m:1に設定される。
【0026】
ここで、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRf(第3要素)に入力軸2を連結し、第1プラネタリギヤ4のキャリアCf(第2要素)と第2プラネタリギヤ5のサンギヤSm(第4要素)とを連結して、第1連結体Cf,Smを構成し、第2プラネタリギヤ5のキャリアCm(第5要素)と第3プラネタリギヤ6のリングギヤRa(第7要素)とを連結して第2連結体Cm,Raを構成し、第2プラネタリギヤ5のリングギヤRm(第6要素)と第3プラネタリギヤ6のキャリアCa(第8要素)と第4プラネタリギヤ7のリングギヤRr(第10要素)とを連結して第3連結体Rm,Ca,Rrを構成し、第4プラネタリギヤ7のキャリアCr(第11要素)を出力ギヤ3に連結している。
【0027】
そして、係合要素として、3つの多板式のクラッチC1〜C3と3つのブレーキB1〜B3とを備えている。第1クラッチC1は、第2連結体Cm,Raと第4プラネタリギヤ7のサンギヤSr(第12要素)とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在に係合し、第2クラッチC2は、第3プラネタリギヤ6のサンギヤSa(第9要素)と第4プラネタリギヤ7のサンギヤSr(第12要素)とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在に係合し、第3クラッチC3は、第4プラネタリギヤ7のサンギヤSr(第12要素)と入力軸2とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在に係合する。
【0028】
また、第1ブレーキB1は、第1連結体Cf,Smを変速機ケース1に固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在に係合し、第2ブレーキB2は、第2連結体Cm,Raを変速機ケース1に固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在に係合し、第3ブレーキB3は、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSf(第1要素)を変速機ケース1に固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在に係合する。
【0029】
以上のように構成した第1実施形態において、第3クラッチC3と第2ブレーキB2と第3ブレーキB3とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRf及び第4プラネタリギヤ7のサンギヤSrの回転速度が「1」、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSf及び第2連結体Cm,Raを構成する第2プラネタリギヤ5のキャリアCm及び第3プラネタリギヤ6のリングギヤRaの回転速度が「0」になると共に、第1連結体Cf,Smを構成する第1プラネタリギヤ4のキャリアCfと第2プラネタリギヤ5のサンギヤSmとが等速度で回転し、第3連結体Rm,Ca,Rrを構成する第2プラネタリギヤ5のリングギヤRmと第3プラネタリギヤ6のキャリアCaと第4プラネタリギヤ7のリングギヤRrとが等速度で回転して、出力ギヤ3に連結される第4プラネタリギヤ7のキャリアCrが位置する線での回転速度は「1st」になり、1速段が確立される。
【0030】
第3クラッチC3と第1ブレーキB1と第2ブレーキB2とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRf及び第4プラネタリギヤ7のサンギヤSrの回転速度が「1」、第1連結体Cf,Smを構成する第1プラネタリギヤ4のキャリアCf及び第2プラネタリギヤ5のサンギヤSm及び第2連結体Cm,Raを構成する第2プラネタリギヤ5のキャリアCm及び第3プラネタリギヤ6のリングギヤRaの回転速度が「0」になると共に、第3連結体Rm,Ca,Rrを構成する第2プラネタリギヤ5のリングギヤRmと第3プラネタリギヤ6のキャリアCaと第4プラネタリギヤ7のリングギヤRrとが等速度で回転して、出力ギヤ3に連結される第4プラネタリギヤ7のキャリアCrが位置する線での回転速度は「2nd」になり、2速段が確立される。
【0031】
第2クラッチC2と第3クラッチC3と第2ブレーキB2とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRf及び第3プラネタリギヤ6のサンギヤSa及び第4プラネタリギヤ7のサンギヤSrの回転速度が「1」、第2連結体Cm,Raを構成する第2プラネタリギヤ5のキャリアCm及び第3プラネタリギヤ6のリングギヤRaの回転速度が「0」になると共に、第1連結体Cf,Smを構成する第1プラネタリギヤ4のキャリアCfと第2プラネタリギヤ5のサンギヤSmとが等速度で回転し、第3連結体Rm,Ca,Rrを構成する第2プラネタリギヤ5のリングギヤRmと第3プラネタリギヤ6のキャリアCaと第4プラネタリギヤ7のリングギヤRrとが等速度で回転して、出力ギヤ3に連結される第4プラネタリギヤ7のキャリアCrが位置する線での回転速度は「3rd」になり、3速段が確立される。
【0032】
第2クラッチC2と第3クラッチC3と第1ブレーキB1とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRf及び第3プラネタリギヤ6のサンギヤSa及び第4プラネタリギヤ7のサンギヤSrの回転速度が「1」、第1連結体Cf,Smを構成する第1プラネタリギヤ4のキャリアCf及び第2プラネタリギヤ5のサンギヤSmの回転速度が「0」になると共に、第2連結体Cm,Raを構成する第2プラネタリギヤ5のキャリアCmと第3プラネタリギヤ6のリングギヤRaとが等速度で回転し、第3連結体Rm,Ca,Rrを構成する第2プラネタリギヤ5のリングギヤRmと第3プラネタリギヤ6のキャリアCaと第4プラネタリギヤ7のリングギヤRrとが等速度で回転して、出力ギヤ3に連結される第4プラネタリギヤ7のキャリアCrが位置する線での回転速度は「4th」になり、4速段が確立される。
【0033】
第2クラッチC2と第3クラッチC3と第3ブレーキB3とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRf及び第3プラネタリギヤ6のサンギヤSa及び第4プラネタリギヤ7のサンギヤSrの回転速度が「1」、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSfの回転速度が「0」になると共に、第1連結体Cf,Smを構成する第1プラネタリギヤ4のキャリアCfと第2プラネタリギヤ5のサンギヤSmとが等速度で回転し、第2連結体Cm,Raを構成する第2プラネタリギヤ5のキャリアCmと第3プラネタリギヤ6のリングギヤRaとが等速度で回転し、第3連結体Rm,Ca,Rrを構成する第2プラネタリギヤ5のリングギヤRmと第3プラネタリギヤ6のキャリアCaと第4プラネタリギヤ7のリングギヤRrとが等速度で回転して、出力ギヤ3に連結される第4プラネタリギヤ7のキャリアCrが位置する線での回転速度は「5th」になり、5速段が確立される。
【0034】
第1クラッチC1と第2クラッチC2と第3クラッチC3とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRf及び第4プラネタリギヤ7のサンギヤSrの回転速度が「1」になると共に、第2連結体を構成する第2プラネタリギヤ5のキャリアCmと第3プラネタリギヤ6のリングギヤRa及び第3プラネタリギヤ6のサンギヤSaが連結されることにより、第2プラネタリギヤ5、第3プラネタリギヤ6及び第4プラネタリギヤ7は相対回転不能なロック状態となって、出力ギヤ3に連結される第4プラネタリギヤ7のキャリアCrが位置する線での回転速度も「1」の「6th」になり、6速段が確立される。
【0035】
第1クラッチC1と第3クラッチC3と第3ブレーキB3とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRf及び第2プラネタリギヤ5のキャリアCm及び第4プラネタリギヤ7のサンギヤSrの回転速度が「1」、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSfの回転速度が「0」になると共に、第1連結体Cf,Smを構成する第1プラネタリギヤ4のキャリアCfと第2プラネタリギヤ5のサンギヤSmとが等速度で回転し、第2連結体Cm,Raを構成する第2プラネタリギヤ5のキャリアCmと第3プラネタリギヤ6のリングギヤRaとが等速度で回転し、第3連結体Rm,Ca,Rrを構成する第2プラネタリギヤ5のリングギヤRmと第3プラネタリギヤ6のキャリアCaと第4プラネタリギヤ7のリングギヤRrとが等速度で回転して、出力ギヤ3に連結される第4プラネタリギヤ7のキャリアCrが位置する線での回転速度は「7th」になり、7速段が確立される。
【0036】
第1クラッチC1と第3クラッチC3と第1ブレーキB1とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRf及び第2プラネタリギヤ5のキャリアCm及び第4プラネタリギヤ7のサンギヤSrの回転速度が「1」、第1プラネタリギヤ4のキャリアCf及び第2プラネタリギヤ5のサンギヤSmの回転速度が「0」になると共に、第2連結体Cm,Raを構成する第2プラネタリギヤ5のキャリアCmと第3プラネタリギヤ6のリングギヤRaとが等速度で回転し、第3連結体Rm,Ca,Rrを構成する第2プラネタリギヤ5のリングギヤRmと第3プラネタリギヤ6のキャリアCaと第4プラネタリギヤ7のリングギヤRrとが等速度で回転して、出力ギヤ3に連結される第4プラネタリギヤ7のキャリアCrが位置する線での回転速度は「8th」になり、8速段が確立される。
【0037】
第1クラッチC1と第2ブレーキB2と第3ブレーキB3とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRfの回転速度が「1」、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSf及び第2連結体Cm,Raを構成する第2プラネタリギヤ5のキャリアCm及び第3プラネタリギヤ6のリングギヤRaの回転速度が「0」になると共に、第1連結体Cf,Smを構成する第1プラネタリギヤ4のキャリアCfと第2プラネタリギヤ5のサンギヤSmとが等速度で回転し、第3連結体Rm,Ca,Rrを構成する第2プラネタリギヤ5のリングギヤRmと第3プラネタリギヤ6のキャリアCaと第4プラネタリギヤ7のリングギヤRrとが等速度で回転して、出力ギヤ3に連結される第4プラネタリギヤ7のキャリアCrが位置する線での回転速度はマイナスの「Rev」になり、後進段が確立される。
【0038】
図1(b)は、上述した各変速段とクラッチC1〜C3、ブレーキB1〜B3の係合状態との関係を纏めて表示した図であり、「○」は係合を表している。また、図1(b)は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比iを1.65、第2プラネタリギヤ5のギヤ比jを2.33、第3プラネタリギヤ6のギヤ比kを2.20、第4プラネタリギヤ7のギヤ比mを1.65とした場合における各変速段のギヤレシオ(入力軸2の回転速度/出力ギヤ3の回転速度)も示している。これによれば、公比(各変速段間のギヤレシオの比)が適切になると共に、レシオレンジ(第1速のギヤレシオと第8速のギヤレシオの比(図1(b)の1速段のギヤレシオの右隣の欄に表示))も適切となり、変速商品性に優れている。
【0039】
第1実施形態によれば、3つのクラッチC1〜C3と3つのブレーキB1〜B3で、前進8段後進1段の変速を確保することができ、上記特許文献1,2に記載の自動変速機と比較して、主軸上に配置されるクラッチの数を1つ減少させることができる。従って、自動変速機の全長を短くすることができ、FF車への搭載性が良好となる。
【0040】
又、各変速段において、開放される係合要素の数は全て3つであり、上記特許文献1,2に記載の自動変速機と比較して、開放される係合要素の数を1つ減少させることができる。従って、引き摺りによるフリクションロスが低減し、自動変速機の伝達効率が向上する。更に、第1乃至第4プラネタリギヤ4〜7を全てシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成しているので、ダブルピニオン型のプラネタリギヤを含み構成される場合と比較して、プラネタリギヤ内のピニオンギヤ同士のギヤ噛合を減少させることができる。従って、ギヤの噛合効率が向上し、更に自動変速機の伝達効率が向上する。
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係る自動変速機の第2実施形態を図3及び図4を参照して説明する。この自動変速機は、FF車用への搭載性が良好なものであり、変速機ケース1内には、入力軸2の周りに位置させて、入力用の第1プラネタリギヤ4と、第2プラネタリギヤ5と第3プラネタリギヤ6とで構成される変速用の複式プラネタリギヤと、出力用の第4プラネタリギヤ7とが配置されている。
【0041】
第1プラネタリギヤ4は、第1実施形態と同様に、シングルピニオン型の単式プラネタリギヤで構成されている。
【0042】
上記複式プラネタリギヤは、第2プラネタリギヤ5と第3プラネタリギヤ6とで構成されているが、第1実施形態とは異なり、第2実施形態ではラビニヨ型の複式プラネタリギヤとなっている。第2プラネタリギヤ5は、サンギヤSmと、リングギヤRmと、サンギヤSmとリングギヤRmとに噛合するピニオンPmを自転及び公転自在に支持するキャリアCmとから成るシングルピニオン型のプラネタリギヤで構成され、第3プラネタリギヤ6は、サンギヤSaと、リングギヤRaと、一方がサンギヤSa、他方がリングギヤRaに噛合する一対のピニオンPa,Pa´を自転及び公転自在に支持するキャリアCaとから成るダブルピニオン型のプラネタリギヤで構成されている。
【0043】
そして、第2プラネタリギヤ5のピニオンPmと第3プラネタリギヤ6のピニオンPaとがピニオンPm(Pa)として一体化される共に、第2プラネタリギヤ5のキャリアCmと第3プラネタリギヤ6のキャリアCaとがキャリアCm(Ca)として一体化され、ピニオンPm(Pa)を自転及び公転自在に支持する。第2プラネタリギヤ5のリングギヤRmと第3プラネタリギヤ6のリングギヤRaとがリングギヤRm(Ra)として一体化されている。
【0044】
図2の中段に示す複式プラネタリギヤの速度線図を参照して、第2プラネタリギヤ5のサンギヤSm、キャリアCm及びリングギヤRmから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第4要素、第5要素及び第6要素とすると、第4要素はサンギヤSm、第5要素はキャリアCm、第6要素はリングギヤRmになる。尚、サンギヤSmとキャリアCm間の間隔とキャリアCmとリングギヤRm間の間隔との比は、第2プラネタリギヤ5のギヤ比をjとして、j:1に設定される。
【0045】
又、上記複式プラネタリギヤの速度線図を参照して、第3プラネタリギヤ6のサンギヤSa、キャリアCa及びリングギヤRaから成る3個の要素を、速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に左側から夫々第7要素、第8要素及び第9要素とすると、第7要素はキャリアCa、第8要素はリングギヤRa、第9要素はサンギヤSaになる。尚、サンギヤSaとキャリアCa間の間隔とキャリアCaとリングギヤRa間の間隔との比は、第3プラネタリギヤ6のギヤ比をkとして、k:1に設定される。
【0046】
第4プラネタリギヤ7は、第1実施形態と同様に、シングルピニオン型の単式プラネタリギヤで構成されている。
【0047】
ここで、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRf(第3要素)に入力軸2を連結し、第1プラネタリギヤ4のキャリアCf(第2要素)と第2プラネタリギヤ5のサンギヤSm(第4要素)とを連結して、第1連結体Cf,Smを構成し、複式プラネタリギヤのリングギヤRm(Ra)(第6要素、第8要素)と第4プラネタリギヤ7のリングギヤRr(第10要素)とを連結して第3連結体Rm(Ra),Rrを構成し、第4プラネタリギヤ7のキャリアCr(第11要素)を出力ギヤ3に連結している。
【0048】
尚、第1実施形態では、第2プラネタリギヤ5のキャリアCm(第5要素)と第3プラネタリギヤ6のリングギヤRa(第7要素)とを連結して第2連結体Cm,Raを構成していたが、第2実施形態では、上記のように、第2プラネタリギヤ5のキャリアCm(第5要素)と第3プラネタリギヤ6のキャリアCa(第7要素)とが複式プラネタリギヤのキャリアCm(Ca)として一体化されている。
【0049】
そして、係合要素として、3つの多板式のクラッチC1〜C3と3つのブレーキB1〜B3とを備えている。第1クラッチC1は、複式プラネタリギヤのキャリアCm(Ca)と第4プラネタリギヤ7のサンギヤSr(第12要素)とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在に係合し、第2クラッチC2は、第3プラネタリギヤ6のサンギヤSa(第9要素)と第4プラネタリギヤ7のキャリアCr(第11要素)とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在に係合し、第3クラッチC3は、第4プラネタリギヤ7のサンギヤSr(第12要素)と入力軸2とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在に係合する。
【0050】
また、第1ブレーキB1は、第1連結体Cf,Smを変速機ケース1に固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在に係合し、第2ブレーキB2は、複式プラネタリギヤのキャリアCm(Ca)を変速機ケース1に固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在に係合し、第3ブレーキB3は、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSf(第1要素)を変速機ケース1に固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在に係合する。
【0051】
以上のように構成した第2実施形態において、第3クラッチC3と第2ブレーキB2と第3ブレーキB3とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRf及び第4プラネタリギヤ7のサンギヤSrの回転速度が「1」、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSf及び複式プラネタリギヤのキャリアCm(Ca)の回転速度が「0」になると共に、第1連結体Cf,Smを構成する第1プラネタリギヤ4のキャリアCfと第2プラネタリギヤ5のサンギヤSmとが等速度で回転し、第3連結体Rm(Ra),Rrを構成する複式プラネタリギヤのリングギヤRm(Ra)と第4プラネタリギヤ7のリングギヤRrとが等速度で回転して、出力ギヤ3に連結される第4プラネタリギヤ7のキャリアCrが位置する線での回転速度は「1st」になり、1速段が確立される。
【0052】
第3クラッチC3と第1ブレーキB1と第2ブレーキB2とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRf及び第4プラネタリギヤ7のサンギヤSrの回転速度が「1」、第1連結体Cf,Smを構成する第1プラネタリギヤ4のキャリアCfと第2プラネタリギヤ5のサンギヤSm及び複式プラネタリギヤのキャリアCm(Ca)の回転速度が「0」になると共に、第3連結体Rm(Ra),Rrを構成する複式プラネタリギヤのリングギヤRm(Ra)と第4プラネタリギヤ7のリングギヤRrとが等速度で回転して、出力ギヤ3に連結される第4プラネタリギヤ7のキャリアCrが位置する線での回転速度は「2nd」になり、2速段が確立される。
【0053】
第2クラッチC2と第3クラッチC3と第2ブレーキB2とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRf及び第4プラネタリギヤ7のサンギヤSrの回転速度が「1」、複式プラネタリギヤのキャリアCm(Ca)の回転速度が「0」になると共に、第1連結体Cf,Smを構成する第1プラネタリギヤ4のキャリアCfと第2プラネタリギヤ5のサンギヤSmとが等速度で回転し、第3連結体Rm(Ra),Rrを構成する複式プラネタリギヤのリングギヤRm(Ra)と第4プラネタリギヤ7のリングギヤRrとが等速度で回転し、第3プラネタリギヤ6のサンギヤSaと第4プラネタリギヤ7のキャリアCrとが等速度で回転して、出力ギヤ3に連結される第4プラネタリギヤ7のキャリアCrが位置する線での回転速度は「3rd」になり、3速段が確立される。
【0054】
第2クラッチC2と第3クラッチC3と第1ブレーキB1とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRf及び第4プラネタリギヤ7のサンギヤSrの回転速度が「1」、第1連結体Cf,Smを構成する第1プラネタリギヤ4のキャリアCf及び第2プラネタリギヤ5のサンギヤSmの回転速度が「0」になると共に、第3連結体Rm(Ra),Rrを構成する複式プラネタリギヤのリングギヤRm(Ra)と第4プラネタリギヤ7のリングギヤRrとが等速度で回転し、第3プラネタリギヤ6のサンギヤSaと第4プラネタリギヤ7のキャリアCrとが等速度で回転して、出力ギヤ3に連結される第4プラネタリギヤ7のキャリアCrが位置する線での回転速度は「4th」になり、4速段が確立される。
【0055】
第2クラッチC2と第3クラッチC3と第3ブレーキB3とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRf及び第4プラネタリギヤ7のサンギヤSrの回転速度が「1」、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSfの回転速度が「0」になると共に、第1連結体Cf,Smを構成する第1プラネタリギヤ4のキャリアCfと第2プラネタリギヤ5のサンギヤSmとが等速度で回転し、第3連結体Rm(Ra),Rrを構成する複式プラネタリギヤのリングギヤRm(Ra)と第4プラネタリギヤ7のリングギヤRrとが等速度で回転し、第3プラネタリギヤ6のサンギヤSaと第4プラネタリギヤ7のキャリアCrとが等速度で回転して、出力ギヤ3に連結される第4プラネタリギヤ7のキャリアCrが位置する線での回転速度は「5th」になり、5速段が確立される。
【0056】
第1クラッチC1と第2クラッチC2と第3クラッチC3とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRf及び第4プラネタリギヤ7のサンギヤSrの回転速度が「1」になると共に、複式プラネタリギヤのキャリアCm(Ca)と第4プラネタリギヤ7のサンギヤSrが連結されることにより、第2プラネタリギヤ5、第3プラネタリギヤ6及び第4プラネタリギヤ7は相対回転不能なロック状態となって、出力ギヤ3に連結される第4プラネタリギヤ7のキャリアCrが位置する線での回転速度も「1」の「6th」になり、6速段が確立される。
【0057】
第1クラッチC1と第3クラッチC3と第3ブレーキB3とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRf及び複式プラネタリギヤのキャリアCm(Ca)及び第4プラネタリギヤ7のサンギヤSrの回転速度が「1」、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSfの回転速度が「0」になると共に、第1連結体Cf,Smを構成する第1プラネタリギヤ4のキャリアCfと第2プラネタリギヤ5のサンギヤSmとが等速度で回転し、第3連結体Rm(Ra),Rrを構成する複式プラネタリギヤのリングギヤRm(Ra)と第4プラネタリギヤ7のリングギヤRrとが等速度で回転して、出力ギヤ3に連結される第4プラネタリギヤ7のキャリアCrが位置する線での回転速度は「7th」になり、7速段が確立される。
【0058】
第1クラッチC1と第3クラッチC3と第1ブレーキB1とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRf及び複式プラネタリギヤのキャリアCm(Ca)及び第4プラネタリギヤ7のサンギヤSrの回転速度が「1」、第1連結体Cf,Smを構成する第1プラネタリギヤ4のキャリアCf及び第2プラネタリギヤ5のサンギヤSmの回転速度が「0」になると共に、第3連結体Rm(Ra),Rrを構成する複式プラネタリギヤのリングギヤRm(Ra)と第4プラネタリギヤ7のリングギヤRrとが等速度で回転して、出力ギヤ3に連結される第4プラネタリギヤ7のキャリアCrが位置する線での回転速度は「8th」になり、8速段が確立される。
【0059】
第1クラッチC1と第2ブレーキB2と第3ブレーキB3とを係合させると、第1プラネタリギヤ4のリングギヤRfの回転速度が「1」、第1プラネタリギヤ4のサンギヤSf及び複式プラネタリギヤのキャリアCm(Ca)及び第4プラネタリギヤ7のサンギヤSrの回転速度が「0」になると共に、第1連結体Cf,Smを構成する第1プラネタリギヤ4のキャリアCfと第2プラネタリギヤ5のサンギヤSmとが等速度で回転し、第3連結体Rm(Ra),Rrを構成する複式プラネタリギヤのリングギヤRm(Ra)と第4プラネタリギヤ7のリングギヤRrとが等速度で回転して、出力ギヤ3に連結される第4プラネタリギヤ7のキャリアCrが位置する線での回転速度はマイナスの「Rev」になり、後進段が確立される。
【0060】
図3(b)は、上述した各変速段とクラッチC1〜C3、ブレーキB1〜B3の係合状態との関係を纏めて表示した図であり、「○」は係合を表している。また、図1(b)は、第1プラネタリギヤ4のギヤ比iを1.50、第2プラネタリギヤ5のギヤ比jを2.15、第3プラネタリギヤ6のギヤ比kを2.05、第4プラネタリギヤ7のギヤ比mを1.60とした場合における各変速段のギヤレシオ(入力軸2の回転速度/出力ギヤ3の回転速度)も示している。これによれば、公比(各変速段間のギヤレシオの比)が適切になると共に、レシオレンジ(第1速のギヤレシオと第8速のギヤレシオの比(図3(b)の1速段のギヤレシオの右隣の欄に表示))も適切となり、変速商品性に優れている。
【0061】
第2実施形態によれば、3つのクラッチC1〜C3と3つのブレーキB1〜B3で、前進8段後進1段の変速を確保することができる。そして、上記特許文献1,2に記載の自動変速機と比較して、主軸上に配置されるクラッチの数を1つ減少させることができる。従って、自動変速機の全長を短くすることができ、FF車への搭載性が良好となる。更に、第2プラネタリギヤ5と第3プラネタリギヤ6とでラビニヨ型の複式プラネタリギヤを構成したので、第1実施形態と比較して、自動変速機の全長を更に短くすることができる。
【0062】
又、各変速段において、開放される係合要素の数は3つであり、上記特許文献1,2に記載の自動変速機と比較して、開放される係合要素の数を1つ減少させることができる。従って、引き摺りによるフリクションロスが低減し、自動変速機の伝達効率が向上する。
〔第3実施形態〕
本発明に係る自動変速機の第3実施形態は、図5に示すように、第1実施形態の第3クラッチC3を、多板式のクラッチに代えて、入力軸2と第4プラネタリギヤ7のサンギヤSr(第12要素)とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在に係合するドグクラッチDを用いている。これにより、多板式のクラッチで構成したものと比較して、構造を簡素化することができるため、自動変速機の全軸をより短くすることができる。詳細は図示しないが、ドグクラッチDは、第4プラネタリギヤ7のサンギヤSrに連結された部材の外周に設置されたドグ歯と、入力軸の外周にスプライン結合された可動ドグとで構成され、可動ドグのドグ歯をサンギヤSrに連結された部材のドグ歯に係合させることでサンギヤSrへ動力源からの回転を入力させる。尚、図示しないが、ドグクラッチDに代えて、シンクロクラッチを用いてもよい。
〔第4実施形態〕
本発明に係る自動変速機の第4実施形態は、図6に示すように、第2実施形態の第3クラッチC3を多板式のクラッチに代えて、第3実施形態と同様に、入力軸2と第4プラネタリギヤ7のサンギヤSr(第12要素)とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在に係合するドグクラッチDを用いている。これにより、構造を簡素化することができるため、自動変速機の全軸をより短くすることができる。尚、図示しないが、ドグクラッチDに代えて、シンクロクラッチを用いてもよい。
〔第5実施形態〕
本発明に係る自動変速機の第5実施形態は、図7に示すように、第1実施形態の出力ギヤ3に代えて、入力軸2と同軸の出力軸3を出力部材として設けている。これにより、自動変速機の入力軸2が車両の前後方向に向くよう縦置きに搭載されるFR(フロントエンジン・リアドライブ)車に好適に搭載することができる。尚、図示しないが、自動変速機の第2乃至第4実施形態も、同様に、出力ギヤ3に代えて、入力軸2と同軸の出力軸3を出力部材として設け、FR車に好適に搭載できるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…変速機ケース、2…入力軸(入力部材)、3…出力ギヤ、出力軸(出力部材)、4…第1プラネタリギヤ、5…第2プラネタリギヤ、6…第3プラネタリギヤ、7…第4プラネタリギヤ、Sf…第1プラネタリギヤのサンギヤ(第1要素)、Rf…第1プラネタリギヤのリングギヤ(第3要素)、Cf…第1プラネタリギヤのキャリア(第2要素)、Sm…第2プラネタリギヤのサンギヤ(第4要素)、Rm…第2プラネタリギヤのリングギヤ(第6要素)、Cm…第2プラネタリギヤのキャリア(第5要素)、Sa…第3プラネタリギヤのサンギヤ(第9要素)、Ra…第3プラネタリギヤのリングギヤ(第7要素)、Ca…第3プラネタリギヤのキャリア(第8要素)、Sr…第4プラネタリギヤのサンギヤ(第12要素)、Rr…第4プラネタリギヤのリングギヤ(第10要素)、Cr…第4プラネタリギヤのキャリア(第11要素)、Cm(Ca)…複式プラネタリギヤのキャリア(第5要素、第7要素)、Rm(Ra)…複式プラネタリギヤのリングギヤ(第6要素、第8要素)、C1…第1クラッチ、C2…第2クラッチ、C3…第3クラッチ、B1…第1ブレーキ、B2…第2ブレーキ、B3…第3ブレーキ、D…ドグクラッチ(第3クラッチ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部材の回転を変速機ケース内に配置した第1乃至第4プラネタリギヤを介して複数段に変速して出力部材に伝達する自動変速機であって、
速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に、第1プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を夫々第7要素、第8要素及び第9要素とし、第4プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を夫々第10要素、第11要素及び第12要素として、
入力部材が第3要素に連結され、第2要素と第4要素とを連結して第1連結体が構成され、第5要素と第7要素とを連結して第2連結体が構成され、第6要素と第8要素と第10要素とを連結して第3連結体が構成されると共に、第11要素が出力部材に連結され、
第2連結体と第12要素とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第1クラッチと、
第9要素と第12要素とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第2クラッチと、
入力部材と第12要素とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第3クラッチと、
第1連結体を変速機ケースに固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在な第1ブレーキと、
第2連結体を変速機ケースに固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在な第2ブレーキと、
第1要素を変速機ケースに固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在な第3ブレーキとを備えることを特徴とする自動変速機。
【請求項2】
入力部材の回転を変速機ケース内に配置した第1乃至第4プラネタリギヤを介して複数段に変速して出力部材に伝達する自動変速機であって、
速度線図におけるギヤ比に対応する間隔での並び順に、第1プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を夫々第1要素、第2要素及び第3要素とし、第2プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を夫々第4要素、第5要素及び第6要素とし、第3プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を夫々第7要素、第8要素及び第9要素とし、第4プラネタリギヤのサンギヤ、キャリア及びリングギヤから成る3個の要素を夫々第10要素、第11要素及び第12要素として、
入力部材が第3要素に連結され、第2要素と第4要素とを連結して第1連結体が構成され、第5要素と第7要素とを連結して第2連結体が構成され、第6要素と第8要素と第10要素とを連結して第3連結体が構成されると共に、第11要素が出力部材に連結され、
第2連結体と第12要素とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第1クラッチと、
第9要素と第11要素とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第2クラッチと、
入力部材と第12要素とを連結する状態とこの連結を断つ状態とに切換自在な第3クラッチと、
第1連結体を変速機ケースに固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在な第1ブレーキと、
第2連結体を変速機ケースに固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在な第2ブレーキと、
第1要素を変速機ケースに固定する状態とこの固定を解除する状態とに切換自在な第3ブレーキとを備えることを特徴とする自動変速機。
【請求項3】
第2プラネタリギヤの第5要素と第3プラネタリギヤの第7要素とを一体化すると共に、第2プラネタリギヤの第6要素と第3プラネタリギヤの第8要素とを一体化して、第2プラネタリギヤと第3プラネタリギヤとでラビニヨ型の複式プラネタリギヤを構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動変速機。
【請求項4】
第3クラッチをドグクラッチ又はシンクロクラッチで構成したことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の自動変速機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−203462(P2010−203462A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46611(P2009−46611)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】