説明

自動探傷装置

【課題】頭部と探傷プローブとの間に一定のギャップ量を確保し、探傷プローブやワーク頭部の破損防止と、検出精度の向上とを同時に満足させ、単位時間当たりの探傷可能数量を減らすことなく高い検出精度を確保できる自動探傷装置を提供する。
【解決手段】円筒面を有するワークを円周方向に沿って一定のピッチで収容する収容部4を有する水平な円盤3と、円盤3を前記ピッチずつ間欠的に回転させる間欠回転装置と、前記ワークを収容部4内で回転させるワーク回転装置と、円盤3の回転と連係して進退し前進時に前記ワークの頭部に近接する探傷プローブ72と、を備えた自動探傷装置であって、探傷プローブ72の側部に探傷プローブ72の先端より前方に迫り出し前記頭部に当接するガイド部73を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦流を利用してボルト,ピン,リベット等の円筒面を有するワークの頭部を自動的に探傷する自動探傷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属材料の表面に生じた微小な傷(欠陥)を検出する方法の一つとして、渦電流を利用した渦流探傷方式がある。この渦流探傷方式は、検査対象とするワークに交流磁界を印加したとき、電磁誘導作用によりワークの表面に生じる渦電流が傷の有無によって変化することに着目し、渦電流の大きさやその変化から傷の有無を検出するものである。この渦流探傷方式を利用して、ボルト,ピン等の円筒面を有するワークの頭部を自動的に探傷し、良品と不良品とに選別する自動探傷装置が知られている。
この従来の技術としては、例えば、(特許文献1)に「ネジ部の中心を軸心としてボルトを回転させる回転機構と、前記ボルトの頭部周面に常に接触させて前記ボルトの回転時に異常を検出する探傷プローブと、を備えた高力ボルトの異常検出装置」が開示されている。また(特許文献1)には、「探傷プローブをボルトの頭部周面に常に接触させるので、探傷プローブの動きに応じてボルト頭部径の変位を検出し、ボルト頭部の偏心等の有無を検出できる」ことが記載されている。
(特許文献2)には、「円筒面を有するワークを円周方向に沿って一定のピッチで収容する切欠きを有する回転円盤と、前記回転円盤を前記ピッチずつ間欠的に回転させる間欠回転装置と、前記ワークを前記切欠き内で回転させるワーク回転装置と、前記回転円盤の回転と連係して進退し前進時に前記ワークの頭部に近接する探傷プローブと、を備えた自動探傷装置」が開示されている。
【特許文献1】実開昭56−153855号公報
【特許文献2】実公昭61−24930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)に開示の技術は、探傷プローブをボルトの頭部周面に常に接触させて、探傷プローブの動きに応じてボルト頭部径の変位も検出できるが、探傷プローブとボルトの頭部が擦れ合うことで探傷プローブの先端の磨耗や破損が生じ易く、耐久性に欠けるという課題を有していた。
(2)ワークや頭部はその直径にばらつきがあるが(頭部の直径の許容差は−0.4〜0.8mmのものがある)、(特許文献2)に開示の技術では、探傷プローブの前進量はカムで一定量に決められているため、頭部と探傷プローブとのギャップ量がワーク毎にばらつくという問題がある。頭部と探傷プローブとのギャップ量は、一般的には0.3〜0.7mmに維持されるが、小さい程S/N比が高く、ギャップ量が大きくなるにつれS/N比が低下し検出精度が低下するという傾向がある。このため、探傷プローブが頭部に可能な限り近づくように探傷プローブの前進量を設定するのが望ましいが、探傷プローブの前進量を大きくして探傷プローブを頭部に近づけると、頭部の直径の大きなワークがきたときに探傷プローブが頭部に衝突し、探傷プローブが破損したりワークの頭部に傷を付けたりすることがある。これを防ぐため、探傷プローブの前進量を小さくして探傷プローブを頭部から離すようにすると、S/N比が低下し検出精度が低下するという問題が生じる。このように、探傷プローブやワーク頭部の破損防止と、検出精度の向上とを同時に満足させることが難しいという課題を有していた。探傷プローブやワーク頭部の破損防止を優先すると、検出精度が犠牲となり、ワークの歩留が低下するという問題があった。また、検出精度を上げるために一個当たりのワークの探傷時間を長くすると、単位時間当たりの探傷可能数量が減るため生産性が低下するという問題があった。
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、頭部と探傷プローブとの間に一定のギャップ量を確保し、探傷プローブやワーク頭部の破損防止と、検出精度の向上とを同時に満足させ、単位時間当たりの探傷可能数量を減らすことなく高い検出精度を確保できる自動探傷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記従来の課題を解決するために本発明の自動探傷装置は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の自動探傷装置は、円筒面を有するワークを円周方向に沿って一定のピッチで収容する収容部を有する水平な円盤と、前記円盤を前記ピッチずつ間欠的に回転させる間欠回転装置と、前記ワークを前記収容部内で回転させるワーク回転装置と、前記円盤の回転と連係して進退し前進時に前記ワークの頭部に近接する探傷プローブと、を備えた自動探傷装置であって、前記探傷プローブの側部に前記探傷プローブの先端より前方に迫り出し前記頭部に当接するガイド部を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)ガイド部は探傷プローブの先端より迫り出しているため、ガイド部が頭部に当接すると、ガイド部が、頭部の表面を基準にして探傷プローブをガイド部より引っ込んだ所定の位置に配するため、頭部の直径にばらつきがあっても、頭部と探傷プローブとの間に一定のギャップ量を確保できる。このため、探傷プローブやワーク頭部の破損防止と、検出精度の向上とを同時に満足させることができ、単位時間当たりの探傷可能数量を減らすことなく、高い検出精度を確保できる。
【0006】
ここで、ワークとしては、円筒面を有しており、該円筒面の直径より大径の頭部を有するものであれば、ボルト,ピン,リベット等、特に限定なく探傷対象とすることができる。頭部は、外形が円形状のものだけでなく、八角形等の多角形状のものも探傷対象とすることができる。
探傷プローブとしては、コイルが巻装されたヨークを先端部に備え、ワークの頭部に交流磁界を加えるとともに、この交流磁界により頭部に生じる渦電流を、コイルを介して検出し頭部を探傷するものが用いられる。
【0007】
ガイド部としては、探傷プローブの先端より前方に迫り出すように、探傷プローブの側部の両方又は片方に設けられているものであれば、特に制限なく用いることができ、例えば、針状、板状、棒状、塊状等の種々の形状に形成されたものを用いることができる。特に、先端が丸みを帯びているものが好適に用いられる。ワークの頭部に当接させる際に、頭部に傷を付けないようにするためである。
ガイド部の材質としては、オーステナイト系ステンレス製等の金属製、POM等の合成樹脂製等、非磁性であれば特に限定なく用いることができる。
探傷プローブに対するガイド部の迫り出し量、ガイド部と探傷プローブの水平方向の間隔、ガイド部が複数配設された場合のガイド部間の間隔は、ワークの直径の中心値に応じて適宜設定し、探傷プローブとワークの頭部とのギャップ量が、探傷プローブの前進時に0.3〜0.7mm程度になるようにする。探傷プローブがワークに衝突しないようにするとともに、渦電流の検出感度を確保するためである。迫り出し量や間隔は、送りネジ等を用いて探傷プローブやガイド部を移動させて設定を変えることができる。また、探傷プローブ及びガイド部を組み込んだユニットを交換することにより、迫り出し量や間隔の設定を変えることもできる。
【0008】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動探傷装置であって、前記ガイド部が、水平方向に回転可能なローラである構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)ガイド部が水平方向に回転可能なローラであると、ワークを収容部内で回転させた場合、ワークの頭部の回転につれてローラも回転するため、ガイド部がワークの頭部の側面に擦れてできる擦り傷が生じ難く、ワークの美観を損ね難く高品質を維持できる。
(2)前進時にワークの頭部に近接する探傷プローブは、円盤の回転と連係して進退するが、稼働中に瞬時停電等が起こると、前進した探傷プローブが決められたタイミングで後退しないことがある。探傷プローブが後退しないまま円盤が回転すると、探傷プローブやガイド部にワークがあたり、探傷プローブ等が破損することがある。これを防ぐため、探傷プローブ及びガイド部が決められたタイミングで後退しない場合、強制的に(機械的に)後退させることができるが、ガイド部がローラで形成されているので、後退時にガイド部(ローラ)がワークの頭部に擦れても、ローラが回転するので頭部に傷が付き難く、また頭部との摩擦が少ないためスムーズに後退させることができる。
【0009】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の自動探傷装置であって、前記円盤の下方に配設され、前記ワークを前記収容部内で回転させる際に前記ワークの端部を押し上げ前記頭部の座面を前記収容部の上面から離間させるワーク押し上げ部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1又は2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)ワークの頭部の座面にスリットや凸起等(例えば、ボルトの緩み止め用)がある場合、ワークを収容部内で回転させると、収容部の上面と頭部の座面とが擦れて、ワークを安定して回転させることができず、また収容部の上面が摩擦により早期に磨り減ったり、座面に傷が付いたりすることがある。円盤の下方に配設されたワーク押し上げ部を備えているので、ワークを収容部内で回転させる際にワークの端部を押し上げ頭部の座面を収容部の上面から離間させることができ、ワークを安定して回転させるとともに、収容部の上面の磨耗を防ぎ、さらに座面に傷が付くのを防止できる。
(2)ワークの端部がワーク押し上げ部で押し上げられることにより、ワークは面積の小さなワークの端部を中心にして回転するので、摩擦が小さいため、小さなエネルギーでワークを回転させることができ省エネルギー性に優れる。
【0010】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の内いずれか1に記載の自動探傷装置であって、前記円盤とともに回転し前記探傷プローブを強制的に後退させる退避部を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)円盤は間欠的に回転し、正常運転時には、円盤の回転時に探傷プローブは後退し、円盤の停止時に探傷プローブが前進する。何らかの異常が生じると、円盤が回転を開始しても探傷プローブが後退しないことがあり、円盤の収容部に収容されたワークがガイド部に衝突し、ガイド部や探傷プローブが破損するおそれがある。しかし、円盤とともに回転し探傷プローブを強制的に後退させる退避部を備えているので、円盤が回転を開始しても探傷プローブが後退しないような異常が生じても、ガイド部や探傷プローブを強制的に退避させ、これらが破損するのを防止できる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の自動探傷装置によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)ガイド部が頭部に当接すると、頭部の表面を基準にして探傷プローブをガイド部より引っ込んだ所定の位置に配するため、頭部の直径にばらつきがあっても、頭部と探傷プローブとの間に一定のギャップ量を確保でき、探傷プローブやワーク頭部の破損防止と、検出精度の向上とを同時に満足させることができ、単位時間当たりの探傷可能数量を減らすことなく、高い検出精度を確保できる自動探傷装置を提供できる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)ワークの頭部の回転につれてローラも回転するため、ガイド部がワークの頭部の側面に擦れてできる擦り傷が生じ難く、ワークの美観を損ね難く高品質を維持できる自動探傷装置を提供できる。
(2)探傷プローブ及びガイド部を後退させる場合、ガイド部がローラで形成されているので、後退時にガイド部(ローラ)がワークの頭部に擦れても、ローラが回転するので頭部に傷が付き難く、ワークの美観を損ね難く高品質を維持でき、また頭部との摩擦が少ないためスムーズに後退させることができ、装置の致命的な損傷を防止できる自動探傷装置を提供できる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、
(1)ワークを収容部内で回転させる際にワークの端部を押し上げ頭部の裏面を収容部の上面から離間させることができ、ワークを安定して回転させるとともに、収容部の上面の磨耗を防ぎ、さらにワークに傷が付くのを防止できる自動探傷装置を提供できる。
(2)ワークの端部がワーク押し上げ部で押し上げられることにより、ワークは面積の小さなワークの端部を中心にして回転するので、摩擦が小さいため、小さなエネルギーでワークを回転させることができ省エネルギー性に優れた自動探傷装置を提供できる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1の効果に加え、
(1)円盤が回転を開始しても探傷プローブが後退しないような異常が生じても、ガイド部や探傷プローブを強制的に退避させ、これらが破損する致命的な損傷を防止できる自動探傷装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1における自動探傷装置の要部平面図であり、図2は自動探傷装置のワーク高さ調整部の正面図であり、図3は自動探傷装置の探傷部の正面図であり、図4は探傷部の要部側面図であり、図5は探傷部の要部平面図である。なお、図1は、円盤の上方に配設された退避部固定板を取り外した状態の平面図である。
図1において、1は本発明の実施の形態1における自動探傷装置、2は後述する間欠回転装置7に連結された駆動軸、3は駆動軸2に固定され水平に配設された円盤であり、本実施の形態においては、矢印で示す方向(左回り)に45°ずつ間欠的に回転する。4は円盤3の円周方向に沿って一定のピッチで切欠き状に形成された収容部、5は円盤3の上面の駆動軸2と各々の収容部4を結ぶ直線上に凸起状に形成された凸部である。20は後ほど詳述するワーク高さ調整部、40は後ほど詳述する探傷部である。
本実施の形態における自動探傷装置1は、図示しないパーツフィーダ等を用いてボルト,ピン,リベット等のワークを円盤3の収容部4に一個ずつ供給し、図示しない制御装置からの電気信号により、円盤3、ワーク高さ調整部20、探傷部40の動作を連動させて、供給されたワークを円盤3が間欠的に左回りに搬送し、探傷部40の位置(探傷位置)に到達したワークを探傷した後、探傷部40の位置を通過した探傷後のワークを不良品と良品とに選別するものである。
【0016】
図2において、6は自動探傷装置1の基台、7は基台6に配設され駆動軸2を間欠的に回転させる間欠回転装置、8は円盤3の上方の駆動軸2に配設された退避部固定板、9はローラ等で形成され退避部固定板8の端部に固定された退避部である。退避部9は収容部4と同一ピッチで配設されており、各々の退避部9が退避部固定板8に固定される位置は、円盤3に形成された収容部4の真上よりも少し回転方向前側である。Wはボルト,ピン,リベット等のワーク、HはワークWの外形が円形状や多角形状等に形成された頭部、JはワークWの軸部である。ワークWは頭部Hが円盤3の収容部4に掛止され、軸部Jが収容部4から垂下されるようにして収容部4に収容される。
10は基台6に間欠回転装置7と並設された回転ローラ駆動装置、11は回転ローラ駆動装置10により回転可能に配設されたプーリ、12は駆動軸2が遊挿されたプーリ、13はプーリ11,12間に掛架されたベルト、14は下端部にプーリ12が固定され駆動軸2に遊転可能に配設された回転ローラ固定部、15はウレタン樹脂等で形成され回転ローラ固定部14の上部側に固定された回転ローラである。本実施の形態においては、回転ローラ駆動装置10、プーリ11,12、ベルト13、回転ローラ固定部14、回転ローラ15が、ワーク回転装置を構成している。
20はワーク高さ調整部、21は基台6に垂設されたレールや軸等の垂直案内部、22は垂直案内部21の上部側に摺動可能に配設された上側スライダー、23は一端部が上側スライダー21に固定され他端部が円盤3の上方に向けて配設された上側固定板、24は上側固定板23の他端部に配設されたローラ固定部、25はローラ固定部24に固定され探傷位置(後述する探傷プローブ72の前進位置)と駆動軸2を結ぶ直線上に位置し円盤3の回転に伴って円盤3の上面及び凸部5を転動するローラ、26は上側固定板23に貫設された貫通孔、27は上側固定板23に対して上下に移動しないように固定され貫通孔26に軸心を中心として回動可能に挿通された調整軸、28は調整軸27の上端部に固定されたハンドル、29は調整軸27の下部側に形成された螺子部、30は垂直案内部21の下部側に摺動可能に配設された下側スライダー、31は一端部が下側スライダー30に固定され他端部が円盤3の下方に向けて配設された下側固定板、32は下側固定板31に貫設され内壁に調整軸27の螺子部29と螺合する螺子部が形成された貫通孔、33は下側固定板31の他端部に円盤3の収容部4(後述する探傷部40が前進する収容部4)に向けて突設されたワーク押し上げ部、34は図示しない支持体に固定されて円盤3の上方でワーク押し上げ部33の真上に配設されたワーク押さえ固定部、35はバネ等によってワーク押さえ固定部34に固定されて下向きに付勢され下端面が略半球状に形成されたワーク押さえ部である。
本実施の形態における自動探傷装置1では、ハンドル28を回転させて調整軸27及び螺子部29を回転させることにより、垂直案内部21に沿って上側スライダー22及び下側スライダー30の間隔を任意に変え、上側固定板23と下側固定板31とを螺子部29で一定の間隔に連結固定させる。上側スライダー22及び下側スライダー30の間隔は、ワークWの軸部Jの長さに応じて適宜設定する。
また、ワーク押さえ部35は、ワーク押し上げ部33によって押し上げられたワークWが上方に飛び出して、頭部Hが、後述する探傷プローブ72の探傷可能領域から外れないように押さえ込むためのものである。このため、ワーク押さえ部35は、後述する探傷プローブ72の探傷可能領域の上限高さに配設される。
【0017】
図3において、40は探傷部、41は基台6に配設されたレール等の直動案内部、42は直動案内部41に摺動可能に配設されたスライダー、43はスライダー42の上面にスライダー42の長手方向と略直交して垂設された前側支持部、44はスライダー42の上面にスライダー42の長手方向と略平行に垂設された後側支持部、45は直動案内部41の後端に直動案内部41の長手方向と略直交して固定された固定板、46は固定板45に対して前後に移動しないように固定され固定板45に形成された貫通孔に軸心を中心として回動可能に挿通された調整軸、47は調整軸46の後端部に固定されたハンドル、48は調整軸46の前部側に形成された螺子部、49は前側支持部43に貫設され内壁に調整軸46の螺子部48と螺合する螺子部が形成された貫通孔である。ハンドル47を回動することにより、前側支持部43と固定板45との間隔を変えてスライダー42を任意の位置で固定させることができ、探傷部40全体の前後の位置をワークWの外径に応じて調整することができる。
50は前側支持部43及び後側支持部44の上部に配設された探傷部支持板、51は探傷部支持板50の上面前側に配設されたレール等の直動案内部、52は探傷部支持板50の上面後側に配設されたモータ等の回転駆動部、53は回転駆動部52により回転可能に形成され探傷部支持板50に貫設された後側軸部、54は後側軸部53に固定されたプーリ、55はプーリ54の前側に配設されたプーリ、56はプーリ54,55間に掛架されたベルト、57は下端部にプーリ55が固定され探傷部支持板50に貫設された前側軸部、58は前側軸部57の上面に偏心して配設されたクランクピン、59は一端にクランクピン58が連結されたクランクアーム、60はクランクアーム59の他端に連結された連結ピン、61は連結ピン60が後側に配設され直動案内部51に摺動可能に配設されたスライダーである。
【0018】
図3乃至図5において、62はスライダー61の上面に配設された探傷支持部、63は探傷支持部62の前面に配設されたアーム部、64はアーム部63に固定され回転ローラ15と略同一高さで水平に配設された左右一対の補助ローラである。補助ローラ64は、スライダー61の前進時に、円盤3の収容部4に収容され垂下されたワークWの軸部Jに二箇所で当接し、軸部Jを回転ローラ15に押し当てる。
65は探傷支持部62の上面に配設された探傷プローブ支持部、66は探傷プローブ支持部65の前側上方に延設されたシャフトホルダ、67はシャフトホルダ66に挿設されたシャフト、68はシャフト67が摺動可能に挿通され前端部がシャフトホルダ66に固定された外筒、69は略コ字型に形成され底部がシャフト67の前端部に固定され前方に張り出した張出部、70はシャフト67が挿通しシャフトホルダ66と張出部69との間に配設され張出部69を前方に付勢するスプリング等の弾性体、71は張出部69の下面に配設された略角筒状の探傷プローブ保持部、72は探傷プローブ保持部71内に保持された探傷プローブ、73は探傷プローブ72の先端より前方に迫り出して探傷プローブ72の側部に配設されたガイド部であり、本実施の形態においては、ガイド部73は探傷プローブ72の両側部に配設された水平方向に回転可能なローラである。74はローラ等で形成され張出部69の上面前側に退避部9と略同一高さで水平に配設された退避部触突部である。
【0019】
以上のように構成された本発明の実施の形態1における自動探傷装置について、以下その動作を説明する。
図示しない制御装置からの電気信号により、間欠回転装置7が駆動して円盤3が間欠的に回転すると、図示しないパーツフィーダ等によりワークWが円盤3の収容部4に一個ずつ供給され、供給されたワークWは、頭部Hが円盤3の収容部4に掛止され、軸部Jが収容部4から垂下される。
円盤3が間欠的に回転してワークWが探傷部40の位置に達すると、ローラ25が凸部5に乗り上げる。ワーク高さ調整部20の上側固定板23と下側固定板31とが螺子部29で一定の間隔に連結されているので、ローラ25が凸部5に乗り上げると、上側固定板23が固定された上側スライダー22及び下側スライダー30が垂直案内部21に沿って上向きに摺動し、下側固定板31に突設されたワーク押し上げ部33が一定量だけ押し上げられる。押し上げられたワーク押し上げ部33が、収容部4に垂下されたワークWの軸部Jの端部を押し上げ、頭部Hの座面を収容部4の上面から離間させる。
探傷部40においては、間欠回転装置7の間欠駆動に連動した図示しない制御装置からの電気信号により、探傷部40の回転駆動部52が回転駆動する。回転駆動部52が回転駆動すると、クランクピン58の偏心回転により、クランクアーム59に連結された連結ピン60が前後に移動してスライダー61及び探傷支持部62を前後に移動させ、これに伴って探傷プローブ保持部71が前後に移動する。スライダー61及び探傷支持部62が前進すると、探傷支持部62の前側に位置する補助ローラ64が、収容部4に垂下されたワークWの軸部Jに当接し、軸部Jを回転ローラ15に押し当てる。回転ローラ駆動装置10は、図示しない制御装置からの電気信号により、補助ローラ64の前進に連動して駆動を開始し、回転ローラ15が回転を開始する。補助ローラ64により回転ローラ15に押し当てられたワークWの軸部Jは、頭部Hの座面を収容部4の上面から離間させたまま、左右一対の補助ローラ64と回転ローラ15に挟まれた状態で回転する。
また、スライダー61及び探傷支持部62が前進すると、探傷プローブ保持部71も前進し、弾性体70により前方に付勢されたガイド部73がワークWの頭部Hに当接する。ガイド部73が頭部Hに当接すると、図5に示すように、頭部Hの表面を基準にして探傷プローブ72がガイド部73より引っ込んだ所定の位置に配される。ワークWは補助ローラ64と回転ローラ15に挟まれた状態で回転するので、探傷プローブ72は頭部Hの表面の全周を探傷する。
【0020】
円盤3が間欠的に回転して、探傷されたワークWが探傷位置から離れると、ワーク高さ調整部20では、ローラ25が凸部5から降りるため、上側固定板23が固定された上側スライダー22及び下側スライダー30が垂直案内部21に沿って下向きに摺動し、下側固定板31に突設されたワーク押し上げ部33の位置が下がるため、ワークWは押し上げられなくなり、ワークWは収容部4に垂下された状態で収まる。
探傷部40では、回転駆動部52の回転駆動に伴い、クランクピン58の偏心回転により、クランクアーム59に連結された連結ピン60が後側に移動してスライダー61及び探傷支持部62を後側に移動させ、探傷プローブ保持部71を後退させる。
また、スライダー61及び探傷支持部62が後退すると、探傷支持部62の前側に位置する補助ローラ64が、収容部4に垂下されたワークWの軸部Jから離れるため、軸部Jは回転ローラ15からも離れる。回転ローラ駆動装置10は、図示しない制御装置からの電気信号により、補助ローラ64の後退に連動して駆動を停止し、回転ローラ15は回転を停止する。
【0021】
このように、探傷部40を後退させた時に、円盤3を間欠的に回転させて新たなワークWを探傷位置に搬送し、次いで探傷部40を前進させてワークWの頭部Hの探傷を行なう。探傷部40を後退させた時に円盤3を回転させて新たなワークWを搬送するので、ワークWがガイド部73や探傷プローブ72に衝突するのを防止できる。
万が一、瞬時停電や電磁ノイズ等により回転駆動部52等に電気的な異常が生じて、電気信号の伝達に問題が生じ、探傷部40が後退していない時に円盤3が回転した場合は、ワークWがガイド部73や探傷プローブ72に衝突する前に、円盤3とともに回転する退避部9が退避部触突部74に衝突して弾き飛ばし、張出部69及び探傷プローブ保持部71を強制的に退避させるため、ワークWがガイド部73や探傷プローブ72に衝突するのを防止し、ガイド部73や探傷プローブ72が損傷するのを防止する。
【0022】
以上のように、本発明の実施の形態1における自動探傷装置は構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)ガイド部73が探傷プローブ72の先端より迫り出しているため、ガイド部73が頭部Hに当接すると、頭部Hの表面を基準にして探傷プローブ72をガイド部73より引っ込んだ所定の位置に配するため、頭部Hの直径にばらつきがあっても、頭部Hと探傷プローブ72との間に一定のギャップ量を確保できる。このため、探傷プローブ72やワークWの頭部Hの破損防止と、検出精度の向上とを同時に満足させることができ、単位時間当たりの探傷可能数量を減らすことなく、高い検出精度を確保できる。この結果、1秒間に1個以上の選別能力を備えた自動探傷装置を製造できる。
(2)ガイド部73が水平方向に回転可能なローラであるため、ワークWを収容部4内で回転させた場合、ワークWの頭部Hの回転につれてローラも回転するため、ガイド部73がワークWの頭部Hの側面に擦れてできる擦り傷が生じ難く、ワークWの美観を損ね難く高品質を維持できる。
(3)ワークWの頭部Hの座面にスリットや凸起等(例えば、ボルトの緩み止め用)がある場合、ワークWを収容部4内で回転させると、収容部4の上面と頭部Hの座面とが擦れて、ワークWを安定して回転させることができず、また収容部4の上面が摩擦により早期に磨り減ったり、座面に傷が付いたりすることがあるが、円盤3の下方に配設されたワーク押し上げ部33を備えているので、ワークWを収容部4内で回転させる際にワークWの軸部Jの端部を押し上げ、頭部Hの座面を収容部4の上面から離間させることができ、ワークWを安定して回転させるとともに、収容部4の上面の磨耗を防ぎ、さらに座面に傷が付くのを防止できる。
(4)ワークWの端部がワーク押し上げ部33で押し上げられることにより、ワークWは面積の小さな軸部Jの端部を中心にして回転するので、摩擦が小さいため、小さなエネルギーでワークWを回転させることができ省エネルギー性に優れる。
(5)垂直案内部21に沿って摺動可能な上側スライダー22及び下側スライダー30の間隔を調整することで、ワーク押し上げ部33の押し上げ高さを調整できるので、軸部Jの寸法の異なるワークWであっても、ワーク押し上げ部33の押し上げ高さを調整して探傷することができ、汎用性に優れる。
(6)円盤3の上面の駆動軸2と各々の収容部4を結ぶ直線上に凸部5が形成されており、探傷位置(探傷プローブ72の前進位置)と駆動軸2を結ぶ直線上にローラ25が位置し、ローラ25が円盤3の回転に伴って円盤3の上面及び凸部5を転動するので、ローラ25の転動による上下動により、ワーク押し上げ部33が探傷位置で一定量だけ確実に上下動するため、探傷位置で頭部Hの座面を収容部4の上面から確実に離間させることができる。
(7)探傷プローブ72の前後動に伴って補助ローラ64が前後に移動し、前進した補助ローラ64が収容部4に垂下されたワークWの軸部Jに当接し、軸部Jを回転ローラ15に押し当て、ワークWの軸部Jを補助ローラ64と回転ローラ15に挟まれた状態で回転させるので、サイクルタイムを短縮でき高速検査が可能となる。
(8)何らかの異常が生じると、円盤3が回転を開始しても探傷プローブ72が後退しないことがあり、円盤3の収容部4に収容されたワークWがガイド部73に衝突し、ガイド部73や探傷プローブ72が破損するおそれがあるが、円盤3とともに回転する退避部9を備えているので、探傷プローブ72が後退しない場合に、探傷プローブ74の前方に配設された退避部触突部74に退避部9を触突させて、弾性体70で前方に付勢された探傷プローブ72を、弾性体70の付勢力に抗して強制的に後退させることができるため、円盤3が回転を開始しても探傷プローブ72が後退しないような異常が生じても、ガイド部73や探傷プローブ72がワークWに触突して破損するのを防止できる。
(9)ガイド部73がローラで形成されているので、強制的な後退時にガイド部73(ローラ)がワークWの頭部Hに擦れても、ローラが回転するので頭部Hに傷が付き難く、また頭部Hとの摩擦が少ないため、ガイド部73及び探傷プローブ72をスムーズに後退させることができる。
(10)回転ローラ15を固定する回転ローラ固定部14が駆動軸2に遊転可能に配設されており、回転ローラ15の回転中心を円盤3の駆動軸2と共用しているため、ワーク回転装置をコンパクト化し、これにより自動探傷装置1を小型化できる。
(11)探傷プローブ72及びガイド部71が弾性体70で前方に付勢されているので、ガイド部71を頭部Hの表面に確実に当接させることができ、頭部Hの直径にばらつきがあっても、頭部Hと探傷プローブ72との間に一定のギャップ量を確保できる。
【0023】
本実施の形態においては、ワーク押し上げ部33でワークWの端部を押し上げる場合について説明したが、ワークWの頭部Hの座面にスリットや凸起等が形成されておらず、座面が平坦な場合には、ワーク押し上げ部33は必ずしも必要ではない。
また、弾性体70がスプリングの場合について説明したが、前方に付勢することができればこれに限定するものではなく、ガスダンパー等を用いる場合もある。
また、ガイド部73が探傷プローブ72の両側部に配設された場合について説明したが、側部のいずれか一方に配設されている場合もある。また、ガイド部73はローラでなくても、先端が丸みを帯びた棒状や塊状等の部材とする場合もある。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、渦流を利用してボルト,ピン,リベット等の円筒面を有するワークの頭部を自動的に探傷する自動探傷装置に関し、頭部と探傷プローブとの間に一定のギャップ量を確保し、探傷プローブやワーク頭部の破損防止と、検出精度の向上とを同時に満足させ、単位時間当たりの探傷可能数量を減らすことなく高い検出精度を確保できる自動探傷装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態1における自動探傷装置の要部平面図
【図2】自動探傷装置のワーク高さ調整部の正面図
【図3】自動探傷装置の探傷部の正面図
【図4】探傷部の要部側面図
【図5】探傷部の要部平面図
【符号の説明】
【0026】
1 自動探傷装置
2 駆動軸
3 円盤
4 収容部
5 凸部
6 基台
7 間欠回転装置
8 退避部固定板
9 退避部
10 回転ローラ駆動装置
11,12 プーリ
13 ベルト
14 回転ローラ固定部
15 回転ローラ
20 ワーク高さ調整部
21 垂直案内部
22 上側スライダー
23 上側固定板
24 ローラ固定部
25 ローラ
26 貫通孔
27 調整軸
28 ハンドル
29 螺子部
30 下側スライダー
31 下側固定板
32 貫通孔
33 ワーク押し上げ部
34 ワーク押さえ固定部
35 ワーク押さえ部
40 探傷部
41 直動案内部
42 スライダー
43 前側支持部
44 後側支持部
45 固定板
46 調整軸
47 ハンドル
48 螺子部
49 貫通孔
50 探傷部支持板
51 直動案内部
52 回転駆動部
53 後側軸部
54,55 プーリ
56 ベルト
57 前側軸部
58 クランクピン
59 クランクアーム
60 連結ピン
61 スライダー
62 探傷支持部
63 アーム部
64 補助ローラ
65 探傷プローブ支持部
66 シャフトホルダ
67 シャフト
68 外筒
69 張出部
70 弾性体
71 探傷プローブ保持部
72 探傷プローブ
73 ガイド部
74 退避部触突部
W ワーク
H 頭部
J 軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒面を有するワークを円周方向に沿って一定のピッチで収容する収容部を有する水平な円盤と、前記円盤を前記ピッチずつ間欠的に回転させる間欠回転装置と、前記ワークを前記収容部内で回転させるワーク回転装置と、前記円盤の回転と連係して進退し前進時に前記ワークの頭部に近接する探傷プローブと、を備えた自動探傷装置であって、
前記探傷プローブの側部に前記探傷プローブの先端より前方に迫り出し前記頭部に当接するガイド部を備えていることを特徴とする自動探傷装置。
【請求項2】
前記ガイド部が、水平方向に回転可能なローラであることを特徴とする請求項1に記載の自動探傷装置。
【請求項3】
前記円盤の下方に配設され、前記ワークを前記収容部内で回転させる際に前記ワークの端部を押し上げ前記頭部の座面を前記収容部の上面から離間させるワーク押し上げ部を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動探傷装置。
【請求項4】
前記円盤とともに回転し前記探傷プローブを強制的に後退させる退避部を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1に記載の自動探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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