説明

自動洗浄装置

【課題】 前洗浄で使用する洗浄水を尿流洗浄のために使用して、最適な洗浄水量を供給できる自動洗浄装置を提供する。
【解決手段】
小便器内の尿流を検知する検知手段と該検知手段から出力された尿流信号に基づき便器洗浄時間を決定し、且つ便器洗浄を行うためのバルブの開閉制御を行う制御手段とを備え、前記制御手段は、前記検知手段によって尿流検知を開始した後に便器の前洗浄を行なう前洗浄機能と、前記検知手段によって尿流検知を終了した後に便器の本洗浄を行なう本洗浄機能とを有し、前洗浄を行った際の本洗浄時間が、前記尿流信号の検知時間、または、前記尿流信号の検知時間および小便器使用者の使用間隔に基づき設定される所定の洗浄時間よりも短く設定されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知手段からの出力信号に基づき便器洗浄を行う自動洗浄装置において、前洗浄機能及び本洗浄機能を有する自動洗浄装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、検知手段によって使用者の有無を判定し、検知手段からの出力信号によって便器洗浄のための洗浄水の供給を行う自動洗浄装置が知られている。一般的には、使用者が自動洗浄装置の前にいることを判定して便器洗浄を行うものであり、検知手段としては光の投受光によって使用者の存在を確認する光電センサが使用されていた。
【0003】
また、使用者の有無を判定するのではなく、小便器内に放射された尿流を検知することにより、便器洗浄のための洗浄水の供給を行うものもあった(例えば、特許文献1参照)。ここでは、検知手段として水位センサが使用されており、排水口近傍に設置された水位センサによって封水の水位が上昇した際に尿流を検知したと判断し、洗浄水の供給を制御するものであった。
【0004】
検知手段によって洗浄水の供給を制御する自動洗浄装置において、使用者を検知することにより便器表面を濡らすための前洗浄を行い、使用者が小便を終わったことを確認して尿を洗浄するための本洗浄を行う自動洗浄装置もある。
前洗浄を行うことにより、小便器内部の陶器表面が洗浄水によって濡れるため、尿が陶器表面に直接付着することを防止できるため、小便器内部に尿流による尿石の付着防止が可能となり、自動洗浄装置の設備保護を行うことが可能であった。
【0005】
また、検知手段により、小便器前にいることを検知すると予備洗浄を行い、小便器から離遠すると本洗浄を行う小便器洗浄装置もあった(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−189315号公報
【特許文献2】特開昭63−221275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前洗浄機能を有する小便器において、例えば光電センサを用いて使用者の有無を検知して、使用者の小便器直前の滞在時間を検知することにより洗浄時間を決定する自動洗浄装置がある。このとき前洗浄は、小便器に接近した使用者の有無を検知するとすぐに洗浄水を吐水し、使用者が小便器を使用する前に陶器表面を洗浄水によって濡らすタイミングで行っていた。そのため、前洗浄は、陶器表面を濡らすためだけに行われ、本洗浄を補助するような吐水ではなかった。また、本洗浄は使用者が小便器の前に立った時間に応じて洗浄水量を決定するため、尿が少ない場合においても多量の洗浄水量を用いて洗浄を行う場合もあった。
【0007】
また、前洗浄機能を有する小便器において、水位センサ等を用いて、使用者の尿流によりワントラップ内の水位変化を検知することにより、前洗浄や本洗浄を行う自動洗浄装置がある。このとき前洗浄は、尿が水位センサの設置された排水口近傍に達するまで使用者がいることを確認できないため、尿が放出されたときに便器を濡らすことが出来ない。また、水位センサを排水口近傍に設置した場合に、他の便器装置の排水が配水管を通過する際に起きる引力で水位センサが設置された水面の変動が発生するため、誤検知を行い便器洗浄を行う可能性もあった。
【0008】
以上のように、前洗浄機能を有する自動洗浄装置に関しては、前洗浄は、実際に尿を洗浄するための本洗浄とは別に、陶器表面を濡らすことを主として行われていたため、必要以上の洗浄水を使用するという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は上記問題を解決するためになされたもので、前洗浄で使用する洗浄水を尿洗浄のために使用して、最適な洗浄水量を供給できる自動洗浄装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項第1項記載の発明は、小便器内の尿流を検知する検知手段と該検知手段から出力された尿流信号に基づき便器洗浄時間を決定し、且つ便器洗浄を行うためのバルブの開閉制御を行う制御手段とを備え、前記制御手段は、前記検知手段によって尿流検知を開始した後に便器の前洗浄を行なう前洗浄機能と、前記検知手段によって尿流検知を終了した後に便器の本洗浄を行なう本洗浄機能とを有し、前洗浄を行った際の本洗浄時間が、前記尿流信号の検知時間、または、前記尿流信号の検知時間および小便器使用者の使用間隔に基づき設定される所定の洗浄時間よりも短く設定されることを特徴とする。
【0011】
ここで、「尿流信号の検知時間、または、前記尿流信号の検知時間および小便器使用者の使用間隔に基づき設定される所定の洗浄時間」とは、前洗浄がない場合の本洗浄に要する時間であって、制御手段により尿流信号の検知時間や使用間隔に応じて便器洗浄水量を決定するなど、使用者の尿流検知を開始した時から検知終了したときまでの使用状況に応じて本洗浄を行うためにバルブ開閉制御を行うように設定された時間のことを指す。
【0012】
「前洗浄」とは、使用者が小便器に対して放尿を行った直後に小便器内部を洗浄する洗浄行動であり、小便が陶器に着尿する際に洗浄水にて尿を流し、陶器への尿の付着を防止するものである。また、人体の接近を検知して洗浄水を流す「前洗浄」は、尿が陶器表面に着尿する前に陶器表面を濡らして、尿の陶器への付着を防止するものである。
また、「本洗浄」とは、使用者が尿終了後に小便器内部を洗浄するものであり、前洗浄時間よりも長い時間で洗浄を行うものである。洗浄を行うタイミングとしては、使用者が小便器から一定距離離遠したことを判断した場合、尿流検知終了後、任意の時間経過した場合等ある。
【0013】
請求項1記載の発明における前洗浄は、検知手段によって尿流を検知したと同時に前洗浄を行う。よって、尿が陶器表面に着尿した瞬間、又は着尿後直ぐに洗浄水が吐水されるため、陶器表面を濡らすという従来の前洗浄機能を持ちながら、前洗浄によって前洗浄終了時までの尿を洗浄することが可能となる。
かかる構成により、前洗浄による尿の陶器への付着を防止する効果を維持しつつ、且つ前洗浄によって尿の洗浄が可能であるため、前洗浄を行う場合の本洗浄時間を、前洗浄の有無に関わらず尿流検知時間や使用間隔で決定される前記所定の洗浄時間より短くしても、尿の洗浄効果を維持しつつ洗浄水量の低減を図ることが可能となる。
【0014】
また、請求項第2項記載の発明は、
制御手段は前洗浄終了時から所定時間、尿流検知を禁止する第1禁止時間を有し、
第1禁止時間と第1禁止時間終了時に継続している尿流信号の検知時間により
本洗浄時間を決定する
ことを特徴とする。
ここで、「禁止時間」とは、尿流と洗浄水を誤検知しないように洗浄中または洗浄直後に検知手段による検知を禁止するために設けた時間を指す。
【0015】
「第1禁止時間」とは、前洗浄終了後から所定の時間、検知手段による尿流検知を禁止する時間である。ここで、前洗浄終了後とは、前洗浄を行うために開動作を行っていたバルブが閉動作になった瞬間であり、バルブが閉動作を行った直後、給水管内に溜まった洗浄水が流れたものを検知しないようになっており、洗浄水と尿流を誤検知しないようになっている。また、前洗浄中は尿流と洗浄水との誤検知を防止するために、制御手段は前洗浄中の尿流信号に基づいた制御を行わないものである。ここで制御手段が、前洗浄中の検知手段からの尿流信号に基づいた制御を行わないようにするためには、前洗浄中の検知手段からの尿流信号を無視したり、前洗浄中の検知手段の出力を一時停止したりと各種の方法により実現できる。
【0016】
かかる構成により、第1禁止時間直後に尿流を検知したときは、第1禁止時間中に尿が存在したと判断できる。第1禁止時間と第1禁止時間終了時から正確な尿流信号の検知時間を把握することが可能となり、適量な本洗浄の供給を行うことが可能となる。
【0017】
また、請求項第3項記載の発明は
制御手段は検知手段によって第1禁止時間後に尿流を検知しない場合に本洗浄を行わない
ことを特徴とする。
【0018】
かかる構成により、第1禁止時間後に尿流を検知しないときは、前洗浄中、又は第1禁止時間中に尿が終了したと判断できる。そのため、検知した尿流量が少量であると判断できるため、前洗浄による洗浄で十分洗浄可能と判断できる。よって本洗浄を行わなくても尿を洗浄することが可能であるため本洗浄分の洗浄水量を低減できると共に洗浄効果を維持することが可能となる。
【0019】
また、請求項第4項記載の発明は、制御手段は前洗浄のみが所定の回数行われた場合に、一定時間の便器洗浄を行うことを特徴とする。
【0020】
ここで、「一定時間の便器洗浄」とは、前洗浄のみが任意の回数行われた場合に洗浄するための便器洗浄である。前記「一定時間」は、前記第1禁止時間と任意の回数の積によって得られる総時間を基に概算される時間であり、総時間よりも短い時間で設定されるものである。
【0021】
また、前洗浄のみの便器洗浄が発生したことは、尿が前洗浄中又は第1禁止時間中に終了したことが判断できる。ここで、前洗浄中に尿が終了した場合には、前洗浄により尿の洗浄が可能であるが、第1禁止時間中に終了した場合には、前洗浄終了から尿が終了するまでの時間の尿は洗浄されていない可能性がある。
【0022】
かかる構成により、第1禁止時間中に終了した尿があった場合においても、一定時間の便器洗浄を行うことにより、小便器内部に残留していた尿を洗浄することが可能となるため、残留尿による尿石の付着を防止することが可能となる。
【0023】
また、請求項第5項記載の発明は制御手段は本洗浄終了時から所定時間、尿流検知を禁止する第2禁止時間を有し、第2禁止時間の終了直後に検知手段によって尿流を検知した場合、第2禁止時間の終了時からの尿流検知時間に基づき本洗浄機能による便器洗浄時間を決定することを特徴とする。
【0024】
「第2禁止時間」とは、本洗浄終了後から所定の時間、検知手段による尿流検知を禁止する時間である。ここで、本洗浄終了後とは、前洗浄を行うために開動作を行っていたバルブが閉動作になった瞬間であり、第2禁止時間はバルブが閉動作を行った直後、給水管内に溜まった洗浄水が流れたものを検知しないようにするために設定された時間である。そのため、本洗浄後に洗浄水と尿流を誤検知しないようになっている。また、本洗浄中は尿流と洗浄水との誤検知を防止するために、制御手段は本洗浄中の尿流信号に基づいた制御を行わないものである。ここで制御手段が、本洗浄中の検知手段からの尿流信号に基づいた制御を行わないようにするためには、本洗浄中の検知手段からの尿流信号を無視したり、本洗浄中の検知手段の出力を一時停止したりと各種の方法により実現できる。
【0025】
かかる構成により、第2禁止時間の終了直後に検知手段によって尿流を検知した場合は、使用者が尿終了後に本洗浄中または、第2禁止時間中に次の使用者が現れたと判断できる。即ち、連続使用であると判断できるため、便器内壁面は濡れていることから前洗浄を行わなくても尿の付着を防止することができると共に、前洗浄水分の洗浄水を低減することが可能となる。
【0026】
また、請求項第6項記載の発明は検知手段は電波の送受信を行い尿流を検知する電波センサであることを特徴とする。
【0027】
電波センサは金属のような導電物質以外の材質に関しては、物質越しに検知対象物を検知することが可能であり、且つ動体である検知対象部に対しての検知を行うことが可能である。かかる構成により、陶器を透過して検知を行うことが可能なため、設置場所の指定をすることなく設置可能であり、且つ動体の検知を行うことが可能なため、陶器越しに尿流を検知した瞬間に前洗浄機能による便器洗浄を行うことが可能なため、尿流が着尿する瞬間に対して前洗浄が可能となり、前洗浄機能による便器洗浄の洗浄水で効率よく尿流を洗浄することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、検知手段により尿流検知を開始して前洗浄を行うことにより、従来陶器表面を濡らす目的だった前洗浄時の洗浄水を、尿を洗浄するための洗浄水の一部として使用することにより、洗浄効果を維持しつつ節水が可能な最適な洗浄水量によって洗浄を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。ここで、本発明の小便器とは、床面へ直接接触するように設置するものや、壁面に取り付けられた取り付けフックに小便器を引っ掛けて設置するものであり、本発明の自動洗浄装置は便器の設置方法による影響が無いことは言うまでもない。
【0030】
図1に本発明の自動洗浄装置の概略構成図を示す。本発明の自動洗浄装置は、小便器1内の尿流を検知する検知手段3と、検知手段3から出力された尿流信号に基づき便器洗浄時間を決定し、且つ便器洗浄を行うためのバルブ4の開閉制御を行う制御手段5とを備えものである。本実施例においては、尿流を検知する検知手段3を小便器1の上部に設置したものを記載しているが、検知手段3を小便器背面、又は小便器の排水口近傍に設置しても良い。但し、検知手段3は、小便器使用者が放尿を行い、小便が小便器1内部の陶器に着尿する前に確実に尿流を検知できる場所に設置する必要がある。
【0031】
制御手段5は、検知手段3によって得られた尿流信号に基づいて、便器洗浄時間の決定を行うものである。そこで、図2に制御手段5が尿流信号を基に行う信号変換図を示す。
図2のA信号は、検知手段によって出力される尿流アナログ信号7である。制御手段5は、尿流アナログ信号7に対して予め設定した閾値を基に信号を2値化し、尿流の有無を判定する。図2のB信号が尿流信号を基に2値化された尿流ディジタル信号9である。尿流ディジタル信号9により、1人の使用者による尿流検知時間、及び使用者が小便器装置を使用する間隔を制御手段5により認識することができる。図2において、C値が尿流検知時間、D値が使用する間隔の時間を示している。
【0032】
制御手段5は、C値が長い場合には尿量が多いと判断して洗浄時間を長く設定し、短い場合には尿量が少ないと判断して洗浄時間を短くする。これにより、尿量に応じた洗浄水量を決定することができ、最適な洗浄水量による洗浄が可能となる。また、D値が短い場合には、使用間隔が短く、小便器の使用頻度が高いと判断できるため、D値が短い場合が所定の回数に達した場合には、1人の使用者に対する洗浄時間を、尿量によって決定される洗浄時間よりも短い時間に設定する。使用頻度が多いため、洗浄時間を短く設定しても、次の洗浄がすぐに行われるために尿を確実に洗浄することが可能となる。
【0033】
逆に、D値が長い場合には、使用間隔が長く、小便器の使用頻度が低いと判断できるため、D値が所定の時間以上に達した後の使用者に対しては、尿量によって決定される洗浄時間よりも長い時間に設定する。使用頻度が少ないため、洗浄時間を長くすることにより、尿を確実に洗浄することが可能となり、尿が陶器表面に残留して付着することを防止することが可能となる。
【0034】
ここで、本発明の自動洗浄装置は、尿流検知を開始した後に便器の洗浄を行う前洗浄機能と、検知手段によって尿流検知を終了した後に便器洗浄を行う本洗浄機能とを有している。そこで、図3に前洗浄機能の有無による洗浄タイミング/時間の概略図を示す。図3の尿流ディジタル信号11による尿流検知時間をT0とする。尿流検知時間T0に対して、本発明の制御手段5は洗浄時間をT1が最適であると判断した場合、前洗浄機能無し13の場合、T0の尿流検知時間に対して本洗浄をT1行うことで最適な洗浄水量での洗浄を行うことが可能となる。ここで、前洗浄機能有り15の場合、尿流ディジタル信号が「1」になると前洗浄を開始する。本発明の自動洗浄装置は、尿流を検知したと同時に前洗浄を行うため、尿が陶器表面に着尿するタイミングで洗浄を行い、前洗浄中T2時間の尿を洗浄することができる。そのため、本洗浄時間は、前洗浄で尿を洗浄しているため、前洗浄機能無しの場合の洗浄時間よりも短い洗浄時間に設定することが可能となる。よって、従来陶器表面を濡らす目的で吐水されていた前洗浄の洗浄水を、本洗浄の一部に使用することができるため、本洗浄時間を短くしても陶器内の尿を洗浄することが可能となる。
【0035】
次に、前洗浄を行う場合における実際の自動洗浄装置の動作に対する信号図を図4に示す。図4には、尿流信号を基に2値化した信号である尿流ディジタル信号17と、バルブ4の開閉信号19、検知手段3の動作信号21について記載している。ここで、検知手段3が尿流を検知すると、制御手段5は前洗浄を行うためにバルブ4の開動作を行い、前洗浄が開始される。前洗浄中は、制御手段5は検知手段3による洗浄水と尿流との誤検知を防止するために前洗浄中の尿流信号に基づいた制御を行わないものである。所定の時間前洗浄を行うと、制御手段5はバルブ4の閉動作を行う。ここで、制御手段5はバルブ4の閉動作を行うが、給水管内部に溜まった洗浄水が小便器内部に供給されるため、検知手段3は制御手段5によるバルブ4の閉動作後、一定時間(第1禁止時間)経過して尿流検知を再開する。第1禁止時間後に尿流検知を再開することにより、給水管に溜まった洗浄水が小便器内部に供給されたものを尿流と誤検知することを防止することができるため、確実に尿流のみを検知可能となる。
【0036】
制御手段5は、第1禁止時間後に尿流検知を再開した検知手段3により検知された尿流時間に基づいて本洗浄時間の決定を行うものである。ここで、検知手段3が第1禁止時間後に尿流を検知したことで、前洗浄中の時間及び第1禁止時間中は尿が存在したと判断できる。そのうち、前洗浄中は、前洗浄で小便器に供給される洗浄水によって尿の洗浄を行っており、第1禁止時間中にも給水管内部に溜まっていた洗浄水によって洗浄された可能性があるため、制御手段5は第1禁止時間後の尿流時間によって本洗浄時間を決定するものである。これにより、前洗浄を本洗浄の一部として使用するため、前洗浄に使用する洗浄水を有効活用でき、且つ尿流時間や小便器の使用間隔によって決定される所定の洗浄時間より少ない洗浄水量で尿を確実に洗浄することが可能となる。
【0037】
尿流ディジタル信号17により尿流が検知できなくなると、制御手段5はバルブ4の開動作を行い本洗浄を開始する。本洗浄は、上記記載のように第1禁止時間後の尿流検知時間によって洗浄時間が決定され、洗浄を行うものである。ここで、本洗浄中は、制御手段5は前洗浄と同様に、検知手段3による洗浄水と尿流との誤検知を防止するために、本洗浄中の尿流信号に基づいた制御を行わないものである。決定された洗浄時間経過後、制御手段5はバルブ4の閉動作を行う。ここで、検知手段3は制御手段5によるバルブ4の閉動作後、一定時間(第2禁止時間)経過して尿流検知を再開する。第2禁止時間後に尿流検知を再開することにより、前洗浄時と同様給水管に溜まった洗浄水が小便器内部に供給されたものを尿流と誤検知することを防止することが可能となる。また第2禁止時間は、第1禁止時間よりも長く設定されている。第1禁止時間後に尿流検知を行うものであるため、第1禁止時間を短く設定することにより、尿流を正確に検知することが可能となる。また、第2禁止時間を、第1禁止時間より長くすることにより、使用者が小便器から離遠する時に検知できる出力信号が尿流信号と同様の信号になった場合においても、離遠する信号と尿流信号とを誤検知することが無くなる。以上の動作を行うことにより、本発明の自動洗浄装置は、前洗浄を本洗浄の一部として使用することで、尿流検知時間及び小便器の使用間隔で決定される所定の洗浄時間よりも短い本洗浄時間で確実に尿を洗浄することが可能となり、且つ尿流と洗浄水との誤検知を防止することが可能となる。
【0038】
次に尿流検知時間が短い場合についての制御手段5の動作に対する信号図を図5に示す。ここで、尿流信号ディジタル信号23が、第1禁止時間後に検知できない場合には、制御手段5は本洗浄を行うためのバルブ4の開動作を行わないものである。これは、尿流が前洗浄中又は第1禁止時間中になくなってしまったと判断でき、前洗浄中又は第1禁止時間中の尿は前洗浄によってほぼ洗浄できていると判断できるためである。よって、検知手段3により尿流を検知して前洗浄を行うことで、少ない尿に対して前洗浄後に再度本洗浄を行う必要なく、尿を洗浄することが可能となる。
【0039】
上記のように、検知手段3は第1禁止時間の直後に尿流を検知できない場合が所定の回数行われた場合に、本発明の自動洗浄装置は一定時間の便器洗浄を行う。これは、少ない尿も複数回行われた場合には前洗浄では完全に洗浄できない可能性もあり、完全に洗浄できなかった尿により、小便器1内部に尿石が付着するのを防止するためである。この動作により、小便器1内部に残った尿を確実に洗浄することができ、小便器1内部への尿石の付着を防止することが可能となる。
【0040】
ここで、本実施例では、尿流を検知していない場合に一定時間の便器洗浄を行う場合を記載しているが、それ以外にも、前洗浄のみの洗浄が所定の回数行われた後に使用者が小便器1を使用した際に、通常行う洗浄時間よりも長めの洗浄を行い、小便器1内部に残留した可能性のある尿を確実に洗浄する方法もある。
【0041】
次に、使用者が小便器を連続して使用した場合ついての制御手段5の動作に対する信号図を図6に示す。ここで、検知手段3により最初の使用者の尿流検知終了後、制御手段5は本洗浄を行うためにバルブ4の開動作を行い本洗浄を開始する。本洗浄中は、制御手段5は検知手段3による洗浄水と尿流との誤検知を防止するために、本洗浄中の尿流信号に基づいた制御を行わない。最初の使用者の尿流に対する本洗浄中に次の使用者が小便器を使用して放尿を行うと、検知手段3は尿流を検知できず、最初の使用者に対する第2禁止時間後に尿流を検知する。この時、制御手段5は、最初の使用者に対する第2禁止時間後に検知できた尿流時間を検知して、尿流検知後に最初の使用者に対する第2禁止時間後に検知できた尿流時間に対して本洗浄を行う。
【0042】
これは、最初の使用者に対する本洗浄中に次の使用者が放尿を開始したため、制御手段5は最初の使用者に対する本洗浄中の尿流は、本洗浄の洗浄水によって洗浄されたと判断するため、この本洗浄を前洗浄として利用するものである。これにより、前洗浄を行うことなく、且つ少ない洗浄水量で尿の洗浄を行うことが可能となる。
【0043】
次に、本発明の自動洗浄装置に使用する検知手段3について記載する。本発明の自動洗浄装置に使用する検知手段3は、尿流を検知できる必要があり、且つ尿流が陶器表面に着尿する前に尿流の検知を行う必要がある。そのため、例えば排水口内部の封水の動きを検知する水位センサや、尿流による僅かな圧力により尿流の有無を検知する微差圧センサでは、上記条件を満足することが困難である。そこで、本発明の自動洗浄装置は、電波の送受信によって尿流を検知する電波センサを用いている。電波センサは、金属のような導電性物質以外は透過する性質を持つため、陶器表面に露出することなく小便器1へ設置することが可能である。そのため、尿流が陶器表面に着尿する前に尿流を検知することできる場所への設置が可能なため、尿流を確実に検知することが可能となる。
【0044】
上記に記載したように、本実施例における検知手段3の設置場所は、小便器1の上部に設置して、尿流が陶器表面に着尿する直前で検知するように設置しているが、それ以外にも小便器1の背面に設置して、電波を使用者の方向に放射することで尿流が陶器表面に着尿する前に検知することも可能である。また、電波センサは、上記記載のように陶器越しでの検知が可能であるため、従来の検知手段である光電センサを搭載することが困難な小便器(使用者がバルブの開閉を制御する小便器)に対しても、設置する際に陶器に光電センサを取り付ける穴を加工することなく、バルブの制御を手動制御から検知手段による制御に変更することが可能なため、後付けも容易に行うことが可能となる。
【0045】
次に尿流信号に基づいて前洗浄を行う場合と、人体を検知した信号に基づいて前洗浄を場合とを比較し、本洗浄水量に対する洗浄効果について示す。ここで、人体を検知した信号とは、人体の接近や人体が小便器前にいることによって検知手段から得られる信号であり、検知手段によって人体がいることを確認できた場合に前洗浄を行うことを示す。
本測定における測定箇所を図7に示す。
本測定においては、小便器から外部へ尿及び洗浄水等を排出する、配管直前に設けられたトラップ2内の残存尿量によって洗浄効果を導出した。残存尿量に関しては、トラップ2内に溜水している封水8の電気伝導度を測定することによって導出した。
【0046】
ここで、導出された電気伝導度が高いほどトラップ2内に残存する尿量は多いこととなり、洗浄水がトラップ2内に流入することで洗浄水と尿が置換されて、トラップ内の電気伝導度は低くなる。そこで、洗浄効果については、洗浄水と尿が置換する割合である置換率によって導出し、導出された置換率によって洗浄効果の判定を行うものである。置換率の導出式を式(1)に記載する。

(置換率)={(A−B)/(A−C)}×100 [%] (1)

A:封水内に所定の尿量を入れた時の封水の電気伝導度[S/m]
B:任意の時間本洗浄を行った後の封水の電気伝導度[S/m]
C:洗浄水の電気伝導度[S/m]
【0047】
測定においては、大人が小便器を通常使用する際における、短時間と長時間の場合を想定して試験を行った。短時間の場合における総尿量は60ml(約5秒使用を想定)とし、また長時間の場合における総尿量は210ml(約16秒使用を想定)として尿量を設定した。また、本測定で使用した尿は、一般的な尿成分を基に作成した擬似尿をているために、実際の洗浄効果に近い結果を導出することが可能となり、またインク等を投入して色による目視評価を行う方法に比べて数値的に導出することが可能となるため、測定精度を確保することができる。
本試験においては、成人男性を基準として設定を行っており、成人男性の腰の高さに一定流量/一定流速で擬似尿を放出できるノズルを設けて、陶器背面に向かって擬似尿を放出するものである。ここで、擬似尿を放出する流速は、一般成人の尿の放出速度の平均値を使用した。
上記設定における評価結果で総尿量210mlの結果を図8に示す。図8より、尿流信号による前洗浄と、人体を検知した信号による前洗浄を行った結果、同じ置換率を得るために必要とする本洗浄の洗浄時間は、尿流信号に基づく前洗浄の方が短いことが確認できた。よって、同一の洗浄効果を得るにあたり、尿流信号に基づく前洗浄を行った方が短い本洗浄時間、すなわち少ない洗浄水量で洗浄効果を得ることが可能となる。例えば、洗浄が完了した1つの基準である置換率90%の場合において、洗浄時間は0.5秒の短縮となる。0.5秒の短縮であれば水量として約120mlの節水となる。小便器の設置場所としては公共の場所等の使用者が多い場所に設置されているため、総水量で換算すると、大幅な節水が可能となる。
【0048】
ここで、短時間で本洗浄を行う場合や本洗浄を行わない場合においては、前洗浄を行うために使用する信号の違いで置換率が異なることが確認できる。そのため、第1禁止時間後に尿流が検知できず本洗浄を行わない場合においても、尿流検知信号に基づき前洗浄を行う方法であれば、人体を検知した信号に基づき前洗浄を行う時よりも洗浄効果を得ることが可能となる。更に、前洗浄のみの洗浄が任意の回数行われた場合に一定時間の便器洗浄を行う際も、前洗浄である程度の洗浄効果を得ることが出来ているため、洗浄時間すなわち洗浄水量を少なくして洗浄することが可能となる。
ここで、測定結果より、総尿量210mlの場合での、本洗浄を行わない場合の置換率として、尿流信号と人体を検知した信号との差は約20%であり、総尿量60mlの場合においても約10%の差が発生するため、本洗浄を行わない場合においては大きな洗浄効果を得ることが可能となる。
【0049】
以上の結果より、尿流信号を基に前洗浄を行うことにより、人体を検知した信号により前洗浄を行う場合と同様の洗浄効果を維持することができると共に、本洗浄時間が短い場合においては、本洗浄水量を低減しても洗浄効果を得ることができるため、節水効果を得ることが確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の自動洗浄装置の概略構成図
【図2】制御手段が尿流信号を基に行う信号変換図
【図3】前洗浄機能の有無による洗浄タイミング/時間の概略図
【図4】前洗浄を行う場合における実際の自動洗浄装置の動作に対する信号図
【図5】尿流検知時間が短い場合についての制御手段の動作に対する信号図
【図6】使用者が小便器を連続して使用した場合ついての制御手段の動作に対する信 号図
【図7】電気伝導度測定箇所図。(A)は自動洗浄装置の全体を示した図であり、(B)はトラップ部とその周辺の部分拡大図である。
【図8】本洗浄時間−置換率関係図
【符号の説明】
【0051】
1…小便器
2…トラップ部
3…検知手段
4…バルブ
5…制御手段
6…天井面
7…尿流アナログ信号
8…封水
9、11、17、23、29…尿流ディジタル信号
13…前洗浄機能無し時の洗浄信号
15…前洗浄機能有り時の洗浄信号
19、25、31…バルブ開閉信号
21、27、33…検知手段動作信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小便器内の尿流を検知する検知手段と
該検知手段から出力された尿流信号に基づき便器洗浄時間を決定し、
且つ便器洗浄を行うためのバルブの開閉制御を行う制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記検知手段によって尿流検知を開始した後に便器の前洗浄を行なう前洗浄機能と、
前記検知手段によって尿流検知を終了した後に便器の本洗浄を行なう本洗浄機能とを有し、
前洗浄を行った際の本洗浄時間が、
前記尿流信号の検知時間、または、前記尿流信号の検知時間および小便器使用者の使用間隔に基づき設定される所定の洗浄時間よりも短く設定されることを特徴とする
自動洗浄装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前洗浄終了時から所定時間、尿流検知を禁止する第1禁止時間を有し、
第1禁止時間と第1禁止時間終了後に継続している尿流信号の検知時間により
本洗浄時間を決定する
ことを特徴とする請求項1記載の自動洗浄装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
検知手段によって前記第1禁止時間後に尿流を検知しない場合に、
本洗浄を行わない
ことを特徴とする請求項1または2記載の自動洗浄装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前洗浄のみが所定の回数行われた場合に、一定時間の便器洗浄を行う
ことを特徴とする請求項3記載の自動洗浄装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
本洗浄終了時から所定時間、尿流検知を禁止する第2禁止時間を有し、
第2禁止時間の終了直後に検知手段によって尿流を検知した場合、
第2禁止時間の終了時からの尿流検知時間に基づき本洗浄機能による便器洗浄時間を決定する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の自動洗浄装置。
【請求項6】
前記検知手段は、
電波の送受信を行い尿流を検知する電波センサである
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の自動洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−9556(P2006−9556A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234176(P2004−234176)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】