自動細胞培養システムおよび方法
本発明は一般に、主に、解析目的での細胞の成長、増殖、および生産のため、ならびに細胞産物の生産および回収のために用いられる実験室工程である、細胞培養の分野に関する。本発明は、以下の特性のいずれかまたはすべてを示す機能化および/または改変ヒドロゲルマイクロキャリアを含む:制御可能な浮力、強磁性または常磁性、分子のまたは製造されたレポーターエレメント、および光学的透明性。マイクロキャリアは、細胞増殖および/または細胞解析を容易にするために、外力を用いてマイクロキャリアの運動エネルギーおよび移動または位置的配向性を制御するバイオリアクターにおいて用いられる。バイオリアクターは、以下のいずれかまたはすべてを使用する自動システムの一部であってよい;マイクロキャリア製造方法、モニタリング方法、細胞培養方法、および解析方法。人の介入が最小限である細胞培養および解析を可能にする自動システムにおいて、単一のバイオリアクターまたは複数のバイオリアクターが用いられる。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、07/17/2003に出願した米国特許出願第60/488,068号(1)である。
【0002】
発明の背景
本発明は一般に、主に、解析目的での細胞の成長、増殖、および生産のため、ならびに細胞産物の生産および回収のために用いられる実験室工程である、細胞培養の分野に関する。生細胞は通常、その自然環境に存在する栄養素および増殖因子の多くを含む増殖培地で、プラスチック表面上に播種する。次いで、ペトリ皿またはフラスコなどのプラスチック容器の底に静置している細胞を、暖かく、湿気があり、かつ適切にガスに包まれた環境を提供するインキュベーター内に置き、増殖させる。培養できる細胞の数および種類、ならびに培養細胞から得られ得る価値のある産物およびデータには、実質的に制限はない。培養細胞を用いて、潜在的薬学的活性について大きな医薬品化合物ライブラリーをスクリーニングすることができ、また培養細胞に由来する分泌タンパク質および核酸は、薬学的産物として重要な価値を有する場合がある。さらに、細胞培養は、製薬研究室における創薬プログラム、ならびに細胞に基づいた治療法のためのヒト、動物、および植物細胞など、研究室での幅広い研究用途を有する。
【0003】
伝統的な細胞培養の大部分は平底ディッシュの使用に依存しており、関心対象の細胞はその上で増殖する。ペトリ皿および他の細胞培養容器は、足場依存性細胞が接着し増殖し得る表面を提供する。伝統的なペトリ皿は78.52 cmという表面積を有し、完全にコンフルエントになった時点で、1x106個を超える細胞の増殖を支持し得る。ペトリ皿の改良には、細胞フラスコ、ローラーボトルの使用、および培養容器中の繊維上での細胞増殖が含まれる。
【0004】
マイクロキャリアは、増殖培地容器または培養容器の表面上での細胞増殖に代わるものとして開発された。マイクロキャリアは、細胞が増殖し得るのに使用できる表面積を増大させる手段として、プラスチック、ガラス、ゼラチン、およびアルギン酸カルシウムなど、種々の材料から作製されている(2、3、4、5)。しかし、マイクロキャリアは、その表面上で細胞を増殖させるために撹拌する必要がある。先行技術では、マイクロキャリアを懸濁状態に維持するために、スピナーフラスコの底の下にある外部の回転磁石によって駆動される吊るされた撹拌羽根を必要とするスピナーフラスコについて記載している。しかし、撹拌羽根は増殖している細胞に流体力学的ストレスを与え(6)、このストレスは細胞に損傷を与え得るか、またはその形態を変化させ得る。撹拌羽根は通常、細胞培養液中に吊るされており、上にあるモーターとの直接的な結合を介して、または培養フラスコの支持体の基部にある回転磁石による磁気誘導を介して、撹拌される。撹拌羽根は、浄化および滅菌可能であり、かつ細胞培養液中に混入物質を与えない物質から作製される必要があるため、高価である可能性がある。
【0005】
さらに、研究室の大部分は、冷凍庫から細胞を取り出して融解する段階、培養容器またはフラスコに細胞を播種する段階、細胞を増殖させ、培地を与え、および分割して、最終的にアッセイ法のために細胞をこすり剥がすかまたは酵素を用いて剥離する段階、ならびに必要に応じて凍結する段階を含む、従来の細胞培養を手動で行っている。
【0006】
したがって、細胞の培養、維持、および解析過程における細胞の操作の点で従来の細胞培養を改善する必要性、ならびに培養細胞の状態または健康、および場合によっては細胞が自然状態で増殖する環境により近い環境で増殖できるような、細胞を増殖させる条件を改善する必要性が存在する。培養条件のこの改善は、細胞培養条件が、その細胞が最初に得られた生物(ヒト、非ヒト哺乳動物、動物、植物、およびその他など)における細胞の生理的条件を模倣するかまたはそのような条件をより正確に表すであろうことから、より正確な解析および観察を提供することになる。操作段階の縮小の点では、いくつかの態様において本発明は、細胞を取り扱うために必要な労力を約75%縮小して、播種、増殖、培地の供給、分割、および細胞または細胞産物のアッセイ法という伝統的な操作段階を排除することができる。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は、培養細胞の増殖を支持する培養基を提供し得り、マイクロキャリアを少なくとも1つの物理的力に応答するようにする少なくとも1つの物質をさらに含むヒドロゲル組成物を含む、細胞増殖に適した改変マイクロキャリアに関する。細胞は改変マイクロキャリアの内部およびマイクロキャリアの外部表面上で増殖し得り、改変マイクロキャリアは、細胞培養システムで用いられた場合に少なくとも1つの物理的力に応答するように、少なくとも1つの物理的力によって操作されるように、または制御されるように作製されている。本発明はまた、これらの改変マイクロキャリアを作製する方法、ならびに細胞産物を解析および生産するためにこれを用いて細胞を増殖させる方法に関する。
【0008】
別の態様において、本発明はさらに、培養容器またはバイオリアクター中に含まれる本明細書に記載の改変マイクロキャリア、および培養容器中の改変マイクロキャリアの運動を制御する、培養容器内へ、培養容器の周囲へ、および/または培養容器の外側に力を放出するための供給源を含むバイオリアクターに関する。
【0009】
さらなる態様において、本発明はさらに、改変マイクロキャリア、培養容器またはバイオリアクター、および培養容器中の改変マイクロキャリアの運動を制御する、培養容器内へ、培養容器の周囲へ、および/または培養容器の外側に力を放出するための、制御システムによって制御を受ける供給源、および細胞培養の目的を達成するためのバイオリアクターを含み、供給源が制御されている自動細胞培養システムに関する。
【0010】
本発明の1つの態様は、改変マイクロキャリア、培養容器またはバイオリアクター、および培養容器中の改変マイクロキャリアの運動を制御する、培養容器内へ、培養容器の周囲へ、および/または培養容器の外側に力を放出するための、統合制御システムによって制御を受ける供給源を含み、データを観察し、測定し、記録し、さらに工程を制御する統合コンピュータプロセッサまたはバイオチッププロセッサにデータを送信するモニタリングシステムをさらに含む、自動細胞培養システムおよびモニタリングシステムに関する。
【0011】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、培養容器内で他のマイクロキャリアと関連したマイクロキャリアの操作および物理的運動をもたらす、または培養容器内で単に運動をもたらす特有の性質を提供する添加物をさらに含むように、従来のマイクロキャリアから改良したマイクロキャリアについて開示する。本発明はさらに、添加物が刺激または刺激に対する応答を報告するリガンド、レポーター、または応答エレメントであるマイクロキャリアについて開示する。
【0012】
本発明はさらに、実質的に限定されない特性を有する多種多様な物質で作製される改変マイクロキャリアについて開示する。例えば、そのような改変マイクロキャリアには、これらに限定されないが、ゼラチン、コラーゲンまたはゼラチンと共重合させたポリアクリルアミド、変更させた電荷を有するポリアクリルアミド、アルギン酸、およびゼラチンと共重合させたアルギン酸が含まれる。好ましいマイクロキャリアは、Kwon et al(7)に開示されているアルギン酸カルシウムおよびゼラチンなどの化学的構成で作製されたマイクロキャリアである。しかし、次いで、これらの従来のマイクロキャリアを改良して、レポーターとして働く機能化マイクロキャリアを作製する。本発明者らはまた、本明細書に記載するような、特定の浮力ならびに磁性および/または常磁性特性などの特有の性質を有する改変マイクロキャリアである、化学的マイクロキャリアにおける改良について記載する。したがって、本発明の機能化および/または改変マイクロキャリアは、既知の方法および材料を用いて化合物および化学的組成物から作製されるという点で既知のマイクロキャリアの特性を含むが、これらの従来のマイクロキャリアは、これらの有利な特性を提供する添加物(例えば、密度の変化を付与する、および/または培養容器内の改変マイクロキャリアに運動エネルギーを与える少なくとも1つの物理的力の負荷による、培養容器またはバイオリアクター内部での改変マイクロキャリアの移動、操縦、撹拌、または別の方法での操作を可能にする、マイクロキャリアに導入される(図1を参照のこと)、またはマイクロキャリアの外側に結合される粒子、分子、および/または気体など)を包含するまたは含むようにさらに改変または改良される。
【0013】
アルギン酸カルシウムおよびゼラチンマイクロキャリアは、これらの組成物から作製された改変マイクロキャリアが最小限の内因性蛍光を有し、よって蛍光共焦点顕微鏡などの顕微鏡技術を用いて細胞を観察することができるため、細胞機能のモニタリングに特に有用である。好ましい態様は、使用できる他のマイクロキャリアと比較して光学的に透明なマイクロキャリアの作製である。本発明において開示する好ましいマイクロキャリアは、本明細書においてさらに詳述する添加物で改変した場合にでさえ、光学的透明度の大部分を保持し、改変マイクロキャリアの内部または外部の細胞で行う観察または定量的測定を機能上妨げない。
【0014】
本発明のマイクロキャリアは細胞密度の増加を提供し、例えば、癌細胞は5x 103個のマイクロキャリア当たり最大で7x 105細胞という密度まで増殖する。しかし、マイクロキャリアに統合されたコンフルエンスの程度を示すレポーター分子、または外部のモニタリングシステムの使用により決定される十分な密度にまで細胞が増殖した時点で、これらの細胞は、レポーター分子を含むために、トリプシンなどの酵素を用いて接着から細胞を遊離させる比較的破壊的な過程(平底容器で必要であるような)を必要とせずに、直接研究に用いられる。
【0015】
本マイクロキャリアは、幾何学的、化学的、および機能的特性の制限なしに作製され得る点で、柔軟性の恩恵を与える(8、9)。本発明のいくつかの態様では、マイクロキャリアは任意の直径の、しかしより合理的には1 mmから関心対象の細胞の直径未満までの直径の球体として作製され得る。本発明のマイクロキャリアは好ましくは、直径1μm〜1 mmの大きさである。しかし、最小で1ナノメートル未満までのより小さな大きさ、および最大で2センチメートルまたはそれ以上までのより大きな大きさは、開示する自動細胞培養システムにおいて有用であり、開示する方法によって作製される。本発明において有用なマイクロキャリアはまた、非接着細胞をその表面に接着できるように化学的に修飾することも可能である。本発明はいくつかの態様において、非接着細胞の接着を可能にするばかりでなく(10)、本明細書に記載の特定のレポーティング、浮力、ならびに磁性および/または常磁性特性を有するさらなる改変マイクロキャリアへのそのような接着も可能にする技術を用いる。
【0016】
本発明の改変マイクロキャリアは、一般に回収操作を容易にするのに有用である;しかし、マイクロキャリアが懸濁液中で沈降する傾向から、自動化によってマイクロキャリアを容易に回収することは不可能である。マイクロキャリア製品は数十年間もの間市販されているが、製薬産業におけるハイスループットスクリーニング過程を支持するために使用する点での関心は、操作が困難であることおよび高価であること、ならびにマイクロキャリアを用いるために必要な複雑な回転羽根システムまたは増殖容器回転システムに阻まれている。ハイスループットスクリーニングついての、本明細書に開示する自動細胞培養システムおよびモニタリングシステムにおける本発明のマイクロキャリアの使用は、これまでに用いられていたハイスループットスクリーニング系を超える利点を提供する。
【0017】
別の態様において、本発明は、重合化学混合物を含む液体中に噴霧する段階、または乳濁液を作製するために、急速に撹拌している油浴にマイクロキャリア基質を添加する段階を含む、従来の技術を用いたマイクロキャリアの製造または作製について開示する。本発明の別の態様において、改変マイクロキャリアの製造は任意に、細胞培養自動化プラットフォーム内に統合される過程であってよい(図4を参照のこと)。本明細書に開示する自動細胞培養システムにおいて使用するために必要な時点で、必要な改変マイクロキャリアを製造する細胞培養システムは今日まで存在していない。このアプローチは、「ジャストインタイム」細胞培養生産工程を提供する。
【0018】
改変マイクロキャリア
磁性
本発明の新規改変マイクロキャリアは、改変マイクロキャリアの密度に影響する取り込まれた浮力エレメント、および/または改変マイクロキャリアに磁性および/または常磁性特性を与える粒子を含む。小型の磁性または常磁性粒子の使用および取り込みにより、外部磁場による粒子の制御が可能になる。磁性および/または常磁性粒子を選択することで、選択された運動または運動エネルギーを改変マイクロキャリアに対して与えるために必要な外部磁場の大きさまたは配向性を縮小することができる。改変マイクロキャリアに常磁性粒子を取り込むことの利点は、外部磁場に曝露されない場合には固有の磁性を欠くことであり、これは次いで相互の引力を妨げる。いくつかの態様において、マイクロキャリアの凝集は、組織または器官の構築など、細胞の有用な凝集体を作製する場合に望ましい。したがって、マイクロキャリアは、外部磁石(永久磁石または電磁石)の任意の配置と内部の磁性または強磁性特性との任意の組み合わせにより、特定の配向および数で凝集が誘導され得る。他の態様において、個々のマイクロキャリアが高いスクリーニングシグナルを生じ得る新規医薬品のハイスループットスクリーニングなどでは、凝集は望ましくない。さらなる態様において、常磁性体と磁性体を組み合わせることは望ましく、外部磁場に対する様々な応答を可能にする特性を与える。
【0019】
改変マイクロキャリアの磁性特性は、これらのマイクロキャリアの製造工程において制御することも、または製造工程後に与えることも可能である。磁場の非存在下でマイクロキャリアを重合またはゲル化する場合には、磁性または常磁性粒子は改変マイクロキャリア上でまたは改変マイクロキャリア内でランダムな配向を有することになる。一方、製造工程において静電気または様々な方法で磁場を加える場合、マイクロキャリア上またはマイクロキャリア内の粒子に特定の配向性および磁性の強さを与えることができる(粒子が磁化され得る場合)。例えば、本発明を限定することを意図するわけではないが、液体中のマイクロキャリアを外部磁場に曝露した結果として自身の軸を中心に回転し得るように、各マイクロキャリアに磁気双極子を与えることを望む場合がある。細胞がマイクロキャリアの表面上で相互に固着して増殖することによって起こるマイクロキャリアの凝集を望まない場合には、軸回転を与えることで、マイクロキャリア間の凝集は妨げられやすくなる。
【0020】
浮力
マイクロキャリアの浮力は、浮力特性を有する物質からマイクロキャリアを製造することによって、または浮力を制御し得る1つまたは複数の物質を添加することによって制御される。浮力とは、本明細書では、マイクロキャリアを懸濁した液体中で、マイクロキャリアを重力と逆の方向に自発的に動かす特性と定義する。多くの可能な態様のうちの1つでは、製造されたマイクロキャリアに、常磁性粒子および正味の正の浮力を表すガラス泡を共に与える。これらの物質は、細胞培養ではこれまで未知であった物理的特性をマイクロキャリアに与える。さらに、マイクロキャリアの密度は、成分の様々な組み合わせを用いることで制御し得り、そのうちのいくつかは、細胞培養用のキャリアの密度が、マイクロキャリアが培養液中で懸濁状態となる0.8〜1.4 g/cmの範囲内になるような浮力特性を有する。
【0021】
製造
マイクロキャリアは、これらに限定されないが、微粒子を重合させる原料を含む液体を、懸濁液中でおよび油水乳濁液中で噴霧、超音波処理、懸濁、振動、または乳化する段階を含む、多くの方法によって製造され得る。浮力を制御する能力など本特許において記載する改変した特性の付与は、使用者の必要性に応じてマイクロキャリア中に分布するように、ガラス泡などの選択された物質をマイクロキャリア原料に添加することによって達成される。または、選択された特性をマイクロキャリアに与える物質を、マイクロキャリアが製造された後に添加することも可能である。
【0022】
細胞接着、増殖、分化を促進するもしくは増強させる、または形態変化および生化学物質の発現を含む選択された表現型の発現を促進する特定のタンパク質を、マイクロキャリアの基質中に、またはマイクロキャリアの表面コーティング中に取り込むことができる。例えば(これらに限定されないが)、コラーゲン、フィブロネクチン、ペプチド、ならびに他のタンパク質および生化学物質などの細胞外基質タンパク質が取り込まれたマイクロキャリアが、様々な細胞の挙動(上記のものを含む)を誘導するために用いられている可能性がある。または、非特異的接着および細胞挙動は、ポリマー、生化学物質、および他の物質を使用することによって抑制されている(10〜14)。ゼラチンは、平面状のスライドガラスへの細胞接着を促進するために用いられている(15)。先行技術は、培養、回収、および足場依存性細胞の使用のための、低密度コラーゲンコーティングマイクロキャリア方法について開示している(16)。しかし、本発明は、培養する細胞の必要性に適合する改変浮力を有して、回転羽根に基づく方法によらずに自動操作され得るマイクロキャリアの作製について開示する。さらに、本発明の改変マイクロキャリアは、生細胞を必要とする用途において直接使用することができ、光学的に透明でない不溶性マイクロキャリアについて記載しているHillegas(16)の開示するマイクロキャリアとは異なる。Hillegasの提案は、任意の特定の1つまたは複数の細胞の使用について、および特定の細胞の増殖の支持に関する発明の固有の利点について開示していない。本発明は、非接着細胞がマイクロアレイ用のスライドガラスに接着し得ることを可能にするKoichi(10)の開示を改良する。本発明の改変マイクロキャリアは、懸濁可能であり、添加物を用いて改変する点でKoichiの方法を改良しており、懸濁状態で操作できることを用いた細胞培養過程に関与する。これらの固定の利点は、それによって多くの非接着細胞、例えば血液細胞、免疫細胞(抗原と反応して抗体を産生し得る、または細胞性免疫もしくは遅延型過敏反応において活性化し得るリンパ球系の細胞)、いくつかの癌細胞、幹細胞、単細胞生物、および他の細胞が、様々な基体に固定し得る点である(10)。本改変マイクロキャリアの場合には、いくつかの態様において、生体適合性固定物質がマイクロキャリアの基質中に、または本明細書に記載する手順に従ってマイクロキャリア上にコーティングされる表層上に取り込まれる。1つの態様において、固定促進物質はオレイルポリ(エチレングリコール)エーテルである(10)。この固定促進物質を、懸濁状態で操作し得る改変マイクロキャリアに含めることにより、足場依存性細胞および足場非依存生細胞の実質的にすべての細胞で機能する、強力な細胞培養方法が得られる。
【0023】
または、細胞分化もしくは増殖を可能にする微小環境、または細胞を定常状態非増殖相に維持する微小環境において、細胞を改変マイクロキャリア内部に保持することができる。次いで、この改変マイクロキャリアを用いて細胞を選択された位置に送達することができ、例えばそれは生物中への移植であり、そこで細胞は接着する、他のクローン細胞株に分化する、または拡大して空間または必要性を満たすことができる。分解可能なまたは酵素によって消化可能な生体適合性マイクロキャリアを用いて、細胞を関心対象の部位に送達し、その後様々な手段によって気泡を消化、分解、崩壊、または溶解することができる。この後者の方法の例としては、インビトロまたはインビボで気泡と同じ位置に超音波エネルギーを送達することにより、気泡を分解することができる。
【0024】
より具体的には、マイクロキャリアは、2つの主要なクラスの物質、すなわち熱可塑性ポリマー、ヒドロゲルポリマーを含む多くの物質から製造され得る。熱可塑性物質とは、これらに限定されないがポリアクリル酸またはポリエチレングリコールを含む任意の水溶性物質である。これらに限定されないがアガロースおよび/またはアルギン酸などのヒドロゲル物質に細胞を封入するのに、より穏やかな、したがって害の少ない製造条件を用いることが有利である。特定のしかし非限定的な例として、アルギン酸は褐藻類およびいくつかの細菌から抽出される細胞内基質多糖である。本発明者らの独特な改変マイクロキャリアにおける細胞の生存度を改善するため、本発明者らは、エンドトキシンを含まない供給源に由来するアルギン酸を選択した。アルギン酸マイクロキャリア上での細胞培養に関する当業者でさえ、マイクロキャリア上での細胞接着、健康、増殖、および生存度を改善するために、エンドトキシンをわずかに含むかまたは含まないアルギン酸を使用するという本発明者らの開示から恩恵を受けると考えられる。アルギン酸は、Sigma(ミズーリ州、セントルイス)またはPronova Biomedical(ノルウェー、オスロ)から入手でき、エンドトキシンを含まない水を用いて、0.1重量%アルギン酸ナトリウム〜10%アルギン酸ナトリウムという範囲で水溶液中に混合する。しかし、マイクロキャリアは、アルギン酸濃度が0.8%〜1.2%の場合に、その溶液の粘性から製造がより容易となる。エンドトキシンはSigmaのLimulus-lysateアッセイキットを用いて測定し、5000エンドトキシン単位/mL未満の値を有するアルギン酸溶液のみを、外部に細胞を有するマイクロキャリアの製造に使用した。細胞を培養するための理想的な範囲は、500エンドトキシン単位/mL未満のエンドトキシンレベルであった。アルギン酸を架橋させるため、アルギン酸溶液を2〜4重量%アルギン酸プロピレングリコール(PGA)溶液(Kelcoloid(商標)D;ISP Alginante、カリフォルニア州、サンディエゴ)と混合する[Kwon et al.(7)]。この任意の手順は、0重量%〜10重量%のPGA濃度で行うことができる。さらに、アルギン酸は、マンヌロン酸もしくはグルロン酸またはマンヌロン酸もしくはグルロン酸の混合物の領域を有する生物供給源から作製される。細胞の健康、増殖、および生存度を最適化するこれらの物質の比率を有する供給源が選択される。マンヌロン酸とグルロン酸の比率は、Klock(17)の方法に従って445 nmでの放射によって測定される。カルシウムと架橋するための好ましい比率は90%またはそれ以上のマンヌロン酸であるが、細胞増殖はマンヌロン酸とグルロン酸の任意の比率で認められる。さらなる添加物には、最大で20容量%までのガラス泡(3M Corporaion、ミネソタ州、メープルウッド)、タンパク質泡、または気泡が含まれる。しかし本発明者らは、1%〜5%のガラス泡により理想の密度を有するマイクロキャリアが得られ、それが手頃に製造できることを見い出した。容器を激しく振盪して小さい不均一な気泡の形態で空気を捕捉することにより、またはバブラー(圧縮された空気または気体がシンター化(scintered)金属製装置に注入され、この装置が気体を均一な気泡に分割する)を使用することにより、気(またはヘリウムなどの他の不活性気体)泡を溶液中に取り込むことができる。生じるマイクロキャリアに常磁性または強磁性特性を与えるため、常磁性または強磁性粒子(Spherotech、イリノイ州、リバティービル)もまた、この時点で溶液中に含めることができる。マイクロキャリアの内積の最大で75%までを常磁性または強磁性粒子で満たすことができるが、理想的な比率は、250 umマイクロキャリア当たり1〜1000粒子である。本願の他所に記載する蛍光分子などの指標も、必要に応じてこの時点で添加することができる。
【0025】
所望するマイクロキャリアの特定の性質に基づいて、マイクロキャリア溶液の内容物を決定すると、ゆっくりと撹拌している1.5%(0.135 M)塩化カルシウム溶液にアルギン酸/PGA添加物溶液を1滴ずつ添加する段階を含む様々な方法により、マイクロキャリアを形成する。市販の微量液滴生成機を使用してもよい。生細胞を混合物に添加してからマイクロキャリアを作製し、内部細胞封入培養を行うこと、または類似のもしくは異なる細胞を用いてマイクロキャリアの内部および外部で細胞を共培養することができる。生細胞を封入することを意図する場合には、生理的緩衝液を用いてアルギン酸溶液を調整する。次いで、洗浄してからマイクロキャリアを細胞培養に使用する。1%ゼラチン溶液(例えば、地域の食料品店で得られる無香料Knoxゼラチン)を任意の量のマイクロキャリア懸濁液に添加し、穏やかに混合し、次いで新しい緩衝液を繰り返し交換してビーズを洗浄することによって、マイクロキャリアをゼラチンでコーティングすることも可能である。高濃度のゼラチンはより高い剛性を与えるため、本発明者らは最大で10%までのゼラチンを使用したが、細胞接着には0.5%〜3%が理想的である。細胞接着を増強する分子、細胞を形質転換し得る分子(DNA、RNA)、および本願の他所に記載する指標を含む添加物が、ゼラチン溶液中に添加される。Kwon et al(7)によって記載される通りに2倍量の0.2 M NaOHを添加して、アルギン酸にアシル基転移することにより、ゼラチンは架橋して、より大きな剛性を有するマイクロキャリアを生じ得る。マイクロキャリアの電荷および/または多孔性を増加または減少させるため、これに限定されないがポリ-L-リジン(陽イオン性アミノ酸ポリマー)(18)などの種々の分子が取り込まれる。本発明は、物理的力に対するマイクロキャリアの応答を制御する物質の取り込みについて開示し、マイクロキャリアの透過性、多孔性、および強度を制御する物質の使用に改良を加える。
【0026】
カルシウム(Ca2+)などの二価カチオンを添加することで、アルギン酸グルロン分子、よってマイクロキャリアは結合され、剛性、よって強度を生じる。バリウム(Ba2+)を用いることで、グルロン酸およびマヌロン酸はいずれも相互に結合し、そのためStrand(19)によれば、Ba2+を取り込むことはより強いマイクロキャリア特性を達成するために重要である。マイクロキャリアの剛性を増大させるために選択されたカチオンを使用するというStrandによって開示される技術に加えて、本発明者らは、カルシウム濃度の変化は測定を妨げると同時に、マイクロキャリアの完全性を変化させることから、カルシウム流入および濃度を試験する生化学アッセイ法でのCa2+の使用を避けるため、二価分子結合としてBa2+を使用するという新規技術を開示する。
【0027】
マイクロキャリアは、アルギン酸溶液および添加物懸濁液の層流噴流分裂能を備えた電磁気または圧電駆動ノズルの使用を含む、種々の方法を用いて製造される。市販のカプセル化システムの使用は、マイクロキャリアの大きさに影響する物理的パラメータ(例えば、流束比率、振動数、および振幅)の制御を可能にするのに望ましい。または、素早く撹拌している、油と二価陽イオンまたは架橋剤を含む緩衝液の乳濁液に、アルギン酸溶液を添加する。マイクロキャリアは乳濁液中で自発的に微小の球状形態を形成し、乳濁液緩衝液の密度よりも高い密度を有する場合には、撹拌を緩めるかまたは停止した時点で油の中から外へと沈殿する。マイクロキャリアが浮力密度を有して作製される場合には、遠心分離し表面から吸引することにより、またはマイクロキャリアが常磁性粒子を含む場合にはこれを容器の側面に引き寄せることによって、乳濁液から取り出すことができる。
【0028】
マイクロキャリアの使用を容易にするための改変特性の使用
増殖培地中に懸濁された標準的なマイクロキャリア上で細胞を増殖させることで、栄養素、空気、または酸素、および二酸化炭素をより用いやすくなるが、配向性が重力に関してランダムであることから、制御不可能な剪断応力に起因して潜在的損傷が増大する。本発明の改変マイクロキャリアに付加された利点は、撹拌培養によって与えられるストレスまたは不都合なしに、穏やかな増殖条件を提供する点にある。本改変マイクロキャリアによって、各マイクロキャリアの特定の配向性が外部から制御されるようになる。さらに、次の手順のために、改変マイクロキャリアを容易にかつ迅速に回収することができる。細胞を増殖させるために用いられ得るマイクロキャリアの量は、容器中の培養液の量によってのみ制限される。したがって、開示する改変マイクロキャリアを使用することで、微細加工技術(20)による微小規模培養での使用から、1リットルを超える量、例えば500リットルでの培養系までの、培養の拡張が可能になる。
【0029】
増殖過程の1つのチャイニーズハムスター卵巣細胞によって部分的に囲まれるようになる、約5 umの改変マイクロキャリアの作製に成功した。この方法により、細胞がマイクロチャネル液体流内を移動しながら、または平面、三次元表面、もしくはアレイ上に一時的にもしくは永続的に固定化されたまま、足場表面上に
留まることが可能になる。
【0030】
さらに本発明は、微小規模においてのみ本特許出願に記載した手順と同じ手順の多くを行うための、微小磁石、微小圧力系、および微小検出器などの微小規模成分の使用について開示する。本発明の重要な利点は、改変マイクロキャリアが応答する圧力または磁性を用いて、マイクロチャネルアレイ内の細胞を操作する能力にある。改変マイクロキャリアの懸濁培養液を含む本発明は生産性を増大し、控えめに言って平底ディッシュの400倍およスピナーフラスコの2倍を超える生産性が期待できる。
【0031】
細胞が所望のコンフルエンスレベル、例えばマイクロキャリアの80%被覆度に到達すると、多くの場合、細胞を解析に用いるためにマイクロキャリアから取り外す必要がある。足場表面から生細胞を取り外す最も一般的な方法は、細胞がマイクロキャリア上に固定するために用いるタンパク質のいくつかを消化するタンパク質分解性酵素(トリプシン)の使用を介する。トリプシン処理は細胞から多くの重要な細胞表面タンパク質を剥ぎ取るばかりでなく、細胞に一時的なショックをもたらし、その結果として多くの場合、マイクロキャリアから無傷で遊離される細胞の収率は低くなる。また細胞は、マイクロキャリアから遊離させるために、機械的ショック(溶液中でのマイクロキャリアの急速な減速によって与えられるエネルギーなど)を必要とし得る。マイクロキャリアの表面にくぼみがあればあるほど、細胞が表面から遊離されるまたは剥離される可能性は低い。マイクロキャリアから細胞を遊離する特定の技術についてはMundt(21)が取り組んでおり、彼は、マイクロキャリアから細胞を遊離させるためのトリプシンの使用について開示した。本マイクロキャリアはKwon(7)によって記載されるように自発的に分解するよう改変されており、したがって足場表面から細胞を遊離させるための非特異的酵素の使用に関する課題が回避されるため、本発明にはこれらの問題がない。したがって本発明は、自動化と協調して働き、これらの仕事を手動で行う必要性のない、自発的に分解する改変マイクロキャリアの使用を包含することを意図する。さらに、自動化工程内の特定の時点および位置でマイクロキャリアを分解する能力は、これまでに記載されていない。例えば、改変マイクロキャリアは、セルソーターまたは蛍光活性化細胞スキャナーで解析する前に液体流中に移す過程で、部分的にまたは完全に解離することができる。本発明者らの改変マイクロキャリアは、マイクロキャリアの特性の外部制御を使用することで、より迅速に解離することが可能である。例えば(これらに限定されないが)、外部から加えられた周期的に振動する磁場のために迅速に運動している磁性または常磁性粒子によって付与される内部運動エネルギーの増加により、溶液中のカルシウムを重合閾値未満に減少させた場合に、重合化アルギン酸は迅速に解離し得る。常磁性粒子および/またはガラス泡を含むマイクロキャリアを分解することで、これらの物質を回収し再利用すること、またはそれらが下流の工程に混入するもしくは悪影響を及ぼすのを防ぐことができる。
【0032】
改変マイクロキャリアの別の利点は、従来の使い捨てディッシュ、ピペット、培養液、インキュベーター、細胞分注器、振盪機、撹拌機、プレートシーラー、および解析機器を用いて、従来の細胞培養設備において使用することができる点である。
【0033】
増殖培地中での運動の付与
マイクロキャリアの撹拌は、伝統的に回転羽根を用いて行われてきた(上記を参照のこと)。しかし、回転羽根を用いずに増殖培地を撹拌するのには多くの利点が存在する。本発明は、改変マイクロキャリアの使用を介して増殖する生細胞を含む増殖培地に運動エネルギーを与える別のアプローチを提供する。増殖培地に運動エネルギーを与えることは、栄養素の分配を保証し、全細胞に対する良好なガス交換を保証し、さらに改変マイクロキャリアの凝集を妨げる。本発明は、個々にまたは任意の組み合わせで使用することができる、増殖培地に運動エネルギーを与える多くの方法を提供する。例えば、運動エネルギーは、増殖培地中に温度勾配を誘導する熱源を用いる形式であってよい。温度勾配は増殖培地中に動きを与え、弱く加熱した培地は培養容器中で上昇し、より高度に冷却した培地は培養容器中で沈む傾向があり、したがって改変マイクロキャリアの運動が生じる。温度勾配は運動エネルギーを誘導するのに十分であるが、それぞれ凍結保護されているかまたは熱的に安定化されていない限り、一般に33°F〜105°Fを許容し得る増殖細胞に害を与えない。外界との温度差1度〜外界よりも40°F高い温度を用いて、対流を誘導することができる。温度勾配はサーボ制御装置で制御することができ、サーボ制御装置は最適な細胞増殖をもたらす温度まで培養液を温める熱源として実際に機能する。
【0034】
圧力をマイクロキャリアに加えて、2つの目的を達成することも可能である。1つめの目的は、マイクロキャリア内またはマイクロキャリア上で増殖している細胞を、生物中で増殖している細胞が感じる圧力特性と類似の圧力特性に供することである。したがって、1分当たり5拍動から最大で1分当たり500拍動までといったような自然状態で見られる速度で、脈圧または時間を通じての差圧をマイクロキャリアに加えることができる。圧力を加える2つめの目的は、マイクロキャリアに取り込まれたガス気泡を圧縮して、浮力を増強することである。ガス気泡含有マイクロキャリアを保持している容器全体を圧縮することによって、マイクロキャリアの密度を増大させることができ、それによってマイクロキャリアは加圧下で沈み、減圧下で上昇する。外気圧から多様な大気までの圧力を用いることができる。
【0035】
マイクロキャリア浮力の機械的調節
本発明の別の態様では、培養容器またはバイオリアクター内の運動エネルギーを増大させるために、粒子浮力を用いる。例えば、圧縮性ガス気泡から構成されるまたは圧縮性ガス気泡を含む粒子を導入する。種々の天然または合成弾性材料を用いて、ガス気泡を捕捉することができる。気体は液体よりも圧縮性が高いため、外部で生成されるエネルギー源、温度または圧力の使用による気体の圧縮は、粒子に様々な浮力を与えることになる。様々な浮力を示す粒子を使用して、細胞の増殖または維持を支持するマイクロキャリアを含む増殖培地を撹拌することができ、または細胞を含むマイクロキャリア内またはマイクロキャリア上に圧縮性気泡を導入することができる。
【0036】
外部磁場の調節
磁場を用いて、細胞培養液などの液体中に運動エネルギーを誘導することができる。大きな磁束は任意の液体中に、微細な、そして最終的には巨視的なレベルで運動を誘導する。または、生成される必要のある磁場の量を制限するために、1つの態様において本発明は、その運動が外部で生成される磁場によって誘導され得る強磁性または常磁性粒子のマイクロキャリア内(またはマイクロキャリア上)への導入を開示する。強磁性粒子は恒常的に磁場を示し、一方、常磁性粒子は磁場に曝露された場合にのみ磁場を示す。粒子の運動は液体中に運動を誘導し、ひいては細胞の増殖を支持しているマイクロキャリアの懸濁状態を維持する。常磁性粒子は、マイクロキャリアの内部または表面上で増殖する細胞の増殖または維持を支持しているマイクロキャリアの表面に結合されるか、またはマイクロキャリアの内部に取り付けられ、本発明の目的内の改変マイクロキャリアの例を生じ得る。強磁性物質または磁場に応答する任意の物質は、マイクロキャリアの製造工程において形成された粒子を添加することにより、もしくは溶液から物質を沈殿させることにより、またはマイクロキャリアが製造されてからコーティングとして導入することにより、マイクロキャリア内またはマイクロキャリア上に取り付けることができる。既知の磁性材料には、これらに限定されないが、クロム、鉄、ニッケル、およびコバルト、ならびにそれらの酸化物および誘導体が含まれる。これらの物質は、光学的特性を妨げないよう微粉化したナノ粒子中に、またはマイクロキャリアの周囲の光学的特性が保存されるように大きなコアとして、0〜75重量%添加することができる。
【0037】
磁場は、細胞培養容器の上部、下部、または側面に設置される永久磁石または電磁石を用いて調節することができる。磁石の配置は、マイクロキャリアの所望される運動に依存することになる。例えば(これらに限定されないが)、改変マイクロキャリアを容器の底に導いて培地を吸引除去できるようにする、またはマイクロキャリアを培地の表面に導いて回収できるようにするなど(図5および7を参照されたい)、容器内で磁場はマイクロキャリアの特定の配向性が所望される場合には、磁場を連続して加えることができる。磁場は、様々な時間的プロファイルまたは強度プロファイルで加えることが可能である。例えば(これらに限定されないが)、磁場を送ることはマイクロキャリアを懸濁状態に維持するのに有用であり(図5〜10を参照のこと)、電磁石によって生成される熱量または永久磁石の機械的運動による量を制限する。深い侵入強度を有する場がマイクロキャリアの選択された運動または配向性を与え得り、それと同時に侵入強度の小さいより強い場を用いてマイクロキャリアを選択された配向性に維持し得るように、複合型の磁場を加えることも可能である。
【0038】
図12は1つの態様を示しており、縦棒は容器の周囲で輪状に配列された棒磁石を示す。磁石をコンピューター制御で活性化することにより、およびその極性を変化させることによって、撹拌、培地交換、細胞接着操作、または細胞回収のために、多くの異なるマイクロキャリア軌道を生じることができる。
【0039】
上記の方法を組み合わせて用いることで、細胞種および必要とされる増殖条件に応じて、細胞の増殖または維持を最適化することができる。例えば1つの態様において本発明は、同じマイクロキャリア内に同時に導入された常磁性粒子および気泡を使用して、常磁性粒子および気泡の両方がマイクロ粒子に与える特性を併せもつ改変マイクロキャリアを取得した。常磁性粒子と気泡のこの組み合わせにより、浮力を調節する能力、および磁場を用いて撹拌し、バイオリアクター中の磁性粒子の運動および/または配向性を誘導する能力が付与される。したがって、改変マイクロキャリアは、運動エネルギー、密度、外部から加えられる磁場に対する応答、および配向性に応じて、それぞれの細胞種の特定の必要性に適合するように製造することができる。例えば、浮力特性を有する改変マイクロキャリアが培養容器の底に誘引されて、最初の細胞接着ができるように、細胞および改変マイクロキャリアを含む培養液に外部磁場を加える。次いで、磁場を除去して、増殖細胞が接着した浮揚性改変マイクロキャリアを、増殖培地中に上昇させることができる。
【0040】
ハイスループットシステム(HTS)における細胞を備えた改変マイクロキャリアの直接的使用
本発明の改変マイクロキャリアが細胞を備えると、それらを生化学的または生理学的手順において直接使用することができる。固有の特性または自動化を用いた結果として、改変マイクロキャリアを特定の位置に操作できる能力により、これらを使用して、その後の研究または開発手順で使用することができる。例えば、それらの浮力および/または熱対流を使用して、改変マイクロキャリアを細胞培養容器またはバイオリアクターの上部に移動させることで、自動ピペットまたは他の細胞回収手段が使用できるようになる。または、ピペットで吸引するために、外部から磁場を加えることにより、または低密度を誘導することにより、改変マイクロキャリアをバイオリアクターの上部に集めることができる。本発明の別の態様は、その後の手順で使用するために、マイクロキャリアを濃縮して液体流中に排出できるように、マイクロキャリアをバイオリアクター内の液体引き込み口に導くことである。
【0041】
機能化マイクロキャリア
細胞培養実験室で増殖させた培養細胞における生化学的手順または解析は、研究、製品開発、および創薬を含めた様々な用途を有する。通常、細胞の個々の細胞小器官または細胞によって産生される生体分子を研究できるように、細胞は消化されるかまたは別の方法で解離され、分画される必要がある。最近、細胞全体を研究する能力により、「ハイコンテント」発見またスクリーニングがもたらされた。新たな細胞培養プレートが開発され、表面に接着している細胞を、細胞内蛍光レポーター分子によって試験することが可能になった。しかし、平らなディッシュ上で増殖した細胞は、インサイチューの細胞と同様の表現型も挙動も有していない。一方、マイクロキャリア上で増殖および維持した細胞は、極性化することが示されており、インサイチュー対応物とより同等な表現型を示し、さらに細胞産物をより大量に産生する。懸濁状態の細胞を研究するために、セルソーターまたは蛍光活性化細胞分類(FACS)機器が開発された。懸濁細胞は、大きさ、蛍光、および/または電気的特性を定量化するために、光学的検出器の前の細い液体流中を移動する。残念なことに、足場依存性細胞は固定されない環境中に置かれると、多くの場合に負の特性を表す。今回製造された改変マイクロキャリアは十分に小さく、そのため個々の細胞がマイクロキャリア基質によって支持される。したがって、本発明の改変マイクロキャリアは、細胞計数機器および分類機器に有用である。改変マイクロキャリアの常磁性特性および浮力特性は、液体環境から細胞を分離する、細胞を分類する、または刺激に対する反応を測定する手段としても有用である。
【0042】
従来の非改変マイクロキャリアまたは本明細書に記載の改変マイクロキャリアへの機能強化とは、刺激を報告するおよび/または刺激に応答するリガンドおよびまたは結合分子を含むように、マイクロキャリアを機能化することである。例えば、収縮タンパク質を含むマイクロキャリアは、細胞からの刺激または細胞培養バイオリアクター制御装置に応答して収縮するように、およびその浮力に変化を生じるように誘導することができる。リガンド、レポーター、または応答エレメントは、マイクロキャリアの表面および/または内部に共有結合または非共有結合させることができる。レポーターは、例えばこれに限定されないがワイヤレスモートといった電磁法を介して報告する、マイクロキャリア内またはマイクロキャリア上に取り込まれた微小(またはナノ)電気的エレメントまたは微小(またはナノ)機械的エレメントからなってよい。リガンドを用いて、マイクロキャリアの任意の状況(外部、内部、またはその両方)で増殖した細胞から反応を引き起こすことができる。マイクロキャリアは、培養液中の変化、または細胞から搬出もしくは分泌される物質によって生じる変化の結果として、変化をその環境に報告できるように、レポーターを用いて機能化することができる。1つの態様において、レポーターは反応の存在および進行または刺激に対する応答を信号で伝え得る。多くの発光レポーターは、蛍光分子および生物発光分子の形態で使用できる。レポーターの選択は、何を測定するかによって変わる。例えば1つの態様では、細胞内ナトリウムを報告するように、ナトリウムに対するナトリウム感受性レポーターを細胞の内部に導入することができる。同様に、細胞からマイクロキャリアの表面上の足場表面に、またはマイクロキャリア内に排出されるナトリウムが報告され得るように、ナトリウム感受性色素をマイクロキャリアに取り込むことができる。レポーターは、マイクロキャリアに/マイクロキャリア中に直接連結された、または最初にマイクロキャリアに/マイクロキャリア中に連結した官能基に連結された有機分子、無機分子、および単一または複数の分子であってよい。報告または応答のための本発明者らのマイクロキャリア機能化工程は、本発明者らのマイクロキャリアが関心対象の分子を放出する生細胞を支持するように設計されている点で、記載されている先行技術(15)とは異なる。さらに本発明は、例えば1つの態様における収縮エレメントのような、マイクロキャリア環境に応答するおよびマイクロキャリア環境を変化させる分子の使用について開示する。
【0043】
改変マイクロキャリアは、製薬会社および基礎研究者にとって興味深い多くのアッセイ法に使用することができる。例えば、癌細胞が転移する能力を決定すること、および細胞が外来組織に結合し、貫通し、さらに侵入するのに用いる機構を決定することへの大きな関心が存在する。細胞遊走および/または転移アッセイ法は、新規抗癌剤を見い出すもしくは精緻化するのに、または組織発生においていかにして動脈が形成されるかを研究するのに有用である。本明細書に開示する改変マイクロキャリアは、生化学的アッセイ法に基づいて細胞遊走または浸潤を測定するよう設計されている。1つの態様において、マイクロキャリア内への癌細胞の分裂は、細胞数または細胞分裂の結果として発せられるシグナルを測定することによってモニターすることができる。例えば、この態様では、細胞表面タンパク質に感受性のあるレポーター分子を重合して、マイクロキャリアのコアを作製することができる。マイクロキャリアの表面上で増殖している細胞はコアに向かって貫通していくので、蛍光シグナル伝達分子の増加または減少を測定する。したがって、シグナルの大きさは、細胞が遊走または浸潤する能力および活性と相関する。別の局面においては、マイクロキャリアを、マイクロキャリア上で増殖している細胞が浸潤し得る、基底膜または他の生物学的障壁と似ている物質でコーティングする。細胞をマイクロキャリアの表面上および/または内部で共培養し、細胞の外層からマイクロキャリアの中心に向かう浸潤を測定するか、またはマイクロキャリアのコアから離れて外側に浸潤する細胞を観察および測定する。または、浸潤または遊走する可能性のある細胞を含むマイクロキャリアを、別のマイクロキャリア上で増殖している他の細胞の方に誘引し(磁場または浮力を用いて)、一方のマイクロキャリアから他方のマイクロキャリアへの浸潤または遊走を観察および測定する。マイクロキャリアはまた、重力、浮力、温度勾配、および/または磁性を用いて、例えばさらなる態様における従来の培養フラスコの表面などの、従来の足場依存的表面上で増殖している細胞の方に誘引することもできる。マイクロキャリアが規定の距離内に入ると、表面からマイクロキャリアへ、またはマイクロキャリアから表面への細胞遊走または浸潤を測定する。
【0044】
細胞生理または生化学に及ぼす剪断応力の影響は、本発明の改変マイクロキャリアを用いて測定される。回転しているマイクロキャリアは、その表面上の細胞に剪断応力を与えることになる(図11を参照のこと)。したがって、細胞生理または生化学の変化は、マイクロキャリア内部または外部の運動エネルギーを変化させ得る、外部から加えた磁場に応じて測定することができ、例えばこれは、1つの態様においては、使用者がプログラム化できる速度、向き、振幅のプロファイル、および時間的プロファイル(パルス波、傾斜波、方形波、および使用者が規定できる他のプロファイルなど)に準じた回転である。
【0045】
本発明の改変マイクロキャリアは、血液脳関門を模倣するのに有用である。脳は、活性薬理学的化合物を送達することが困難な場所である。血液脳関門では、いかにしてこの関門が脳と循環血液を区別するのかを決定するための研究が活発に行われている。したがって、本発明の改変マイクロキャリアおよび培養系は、血液脳関門を模倣し得る方法において医薬品発見のモデルを提供し、その研究および血液脳関門のインビトロモデルの開発を可能にする。この態様では、脳血管内皮細胞を改変マイクロキャリア上で培養し、このマイクロキャリアは、培養液中の選択された化合物のどれぐらいが細胞および/もしくはマイクロキャリアコアの内部に接近するのか、またはマイクロキャリア内の化合物のどれぐらいが細胞の内部に接近するのか、もしくはレポーター層もしくは培地へ向かってマイクロキャリア細胞層の外部へ搬出されるのかを決定するのに有用である。このモデルは、改変マイクロキャリアを使用して、任意の実験において容易に活用することができる。
【0046】
さらなる態様においては、改変マイクロキャリアは、(これらに限定されないが)臍帯血、脂肪組織、胚、および末梢循環などの様々な供給源に由来する幹細胞の接着表面として用いられる。幹細胞の維持または子孫細胞への分化を促進するためには、擬似微小重力環境が有利である。
【0047】
バイオリアクター
現在、ヒトでの使用に関して100を超えるバイオ医薬品がFDAにより認可されているが、これは1000億ドルを超える市場を生み出し、その年間成長率は100%を超える。バイオリアクターまたは培養容器は、細胞増殖に最適化された条件下でタンパク質を生産するために用いられる(22〜31)。バイオリアクター内で細胞が最大密度に達すると、栄養素および酸素に対する競合により細胞死が起こり、それによってこの系の効率が悪くなる。大部分のバイオ技術者は、バイオリアクターは完成に到達したと考えており、したがって、より効率的で最適な工程を求めている。ホローファイバーバイオリアクター(または灌流に基づくシステム)によりタンパク質生産が改善されたが、これは関心対象のタンパク質を分泌する細胞に対してのみであった。ホローファイバーシステムは、培養物が十分成長していくに連れて死細胞の産物で詰まってしまい、そのため多くのバッチシステムと比較して収率は低くなる。このように、これまで、いかなる技術も最適な細胞生存度およびタンパク質生産性をもたらしていない。
【0048】
関心対象のタンパク質を生産するためには、120日もの長い期間バイオリアクターを運転する。そのため、最適なリアクター条件(pH、栄養素レベル、温度、溶解ガス濃度)をモニターし維持する上で、かなり多くの労力がかかる。一般に、細胞がバイオリアクターから取り出されることはない。この工程が続く間、これらの大きなバッチは、栄養素を添加するかまたは条件を調節することによって維持される。バイオリアクターから液体が採取され、解析用に実験室に送られるため、モニタリングのずれが生じる。理想的には、細胞増殖および代謝のモニタリングは、細胞レベルでリアルタイムで行われるべきである。
【0049】
本発明の自動細胞培養システムは本明細書に記載の改変マイクロキャリアを含み、このマイクロキャリアは、各改変マイクロキャリアがその表面上(または内部)で増殖している細胞の健康および増殖状態を報告することを可能にする、構造内に付与された指標を有する。指標を使用することで、閉ループ制御システムを各バイオリアクターモジュールに導入することができる。本発明者らの態様において、本発明の改変マイクロキャリアは、マイクロキャリアの基質自体に指標を取り込むことによって、細胞レベルで微視的状態を報告するように改変される。例えば、そのような指標は、これらに限定されないがpHの蛍光指標であってよく、酸素、二酸化炭素、グルコース、尿素、重炭酸、乳酸、およびアンモニアの指標を各マイクロキャリアに取り込み、バイオリアクターまたは培養容器を介してこれらをモニターすることができる。または、従来の流液解析システムを用いて培養液の成分をモニターすることができる。
【0050】
本発明のバイオリアクターは、マイクロキャリアを動かすおよび撹拌するために、改変マイクロキャリアが撹拌、回転、過熱、冷却、ガス供給(特有のガス混合物で)、加圧される、磁場(これらに限定されないが近赤外線〜遠紫外線を含む、電磁スペクトルの任意の部分が一定または異なる)に曝露される能力を十分に使用している。
【0051】
本発明の別の態様は、使い捨て細胞培養容器を直立(または垂直)状態でまたは横になった(または平行)状態で維持する、単一のまたは複数の開口部または穴を含む、改変マイクロキャリアに基づくバイオリアクターである。例えばスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)に由来するSF9昆虫細胞などの非接着細胞の懸濁細胞培養液中に運動エネルギーの増加をもたらすため、開口部または穴の1つを介して、バイオリアクター内に含まれる細胞培養液中にマイクロキャリアを導入することができる。バイオリアクターはまた、マイクロキャリアが応答する少なくとも1つの物理的力を生じるための、少なくとも1つの供給源を含む。
【0052】
さらなる態様において、上記のバイオリアクターは、制御システムと称する、増殖培地中のマイクロキャリアを浮揚させるおよび操作するのに必要なさらなる1つまたは複数のエレメントを含む。制御システムは、手動で操作する機器からなってよい。制御システムを改善して、自動で作動する機械システムをこれに含めることも可能である。制御システムをさらに改善して、これにソフトウェア、および完全自動システムの作動を可能にする制御電子回路を含めることも可能である。例えば、機器および制御電子回路およびソフトウェアは、温度勾配によってマイクロキャリアを浮揚させる熱エレメントを提供する(温度制御システム)。バイオリアクターは、マイクロキャリアを動かす、回転させる、および/または静止状態に維持する磁場を提供するための機器、制御電子回路、およびソフトウェアを含む(磁気制御システム)。ロボット装置、サーボ機構、および他の手段を用いて永久磁石を動かすことにより、磁場を変えることができる。または、ソフトウェア制御下の固定型または可動性電磁石を用いて、マイクロキャリアを操作することもできる。機器および制御電子回路およびソフトウェアは、圧力トランスデューサがバイオリアクターに対する圧力を変えて、マイクロキャリア内またはマイクロキャリア上に含まれる気体の圧縮を介してマイクロキャリア密度の変化をもたらす手段を提供する(圧力制御システム)。時間的または特定の圧力勾配またはプロファイルを容器に与えて、生物学的剪断応力または圧縮応力を模倣し、細胞応答を研究すること、または特定のタンパク質を産生するかもしくは選択された挙動を示す細胞を誘導することができる。これらの制御システムはそれぞれ単一のバイオリアクターを運転することができ、または単一の制御システムが複数のバイオリアクターにその作用を伝えることができる。または、複数の制御システムが複数の自動バイオリアクターを運転し得る。バイオリアクターの能力は、単にバイオリアクターの大きさまたは数を増すことによって増大させることができる。
【0053】
マイクロキャリアの配向性および/または運動を操作するための磁場の使用は、Wolf(32)の開示する、マイクロキャリアに対する細胞の接着を促進するための電磁場の使用とは異なる。前者の場合、本発明者らの磁場はマイクロキャリアの運動エネルギーの変化を付与し、後者の場合、Wolfはマイクロキャリアに対する細胞の接着を改善している。本発明は1つの態様において、強磁性マイクロキャリアを懸濁状態に維持するのに適した線状磁場を生成するために、バイオリアクターに対して直角に配置された個々に直線的に間隔をあけた電磁石コイルを用いる(図6を参照のこと)。磁束および磁力線は、電流、コイル半径、コイルの巻数、線の直径、コイル数、およびコイルの間隔を制御することによって変更することができる。電磁気アプローチを用いるためには、電流は0.1 ampから100 ampまで様々であってよい。巻数は、1から、細胞培養液体カラムを囲む空間に適合するできるだけ多くの巻数まで様々であってよい。ただ1つのコイルないしは何百ものコイルが15 cm長の範囲に入るよう、間隔も変動し得る。コイル直径は、細胞培養チューブの直径と同じぐらい小さいものから、磁束がなおマイクロキャリアに運動を付与し得るできるだけ大きいのものまでであってよい。常磁性マイクロキャリアを制御するための磁気コイルの使用は、以前に開示されている(33)。しかし彼らは、細胞の培養ではなく廃液の精製ができるよう、酵素を含むマイクロキャリアを動いている場において静止状態に維持するために、この方法を用いることを開示している。
【0054】
自動化
細胞培養工程は、誤差率が高く、工程を管理する人による汚染が置きやすい、退屈で大きな労働力を要する仕事である。多くの細胞培養物および細胞培養設備は、一般に細胞培養を行う個体に由来するマイコプラズマ、菌類、酵母、および他の生物で汚染される。細胞培養は、研究者および技術者が、無菌環境での培地添加および生細胞の継代培養において費やす数え切れないほどの時間を伴う。人件費に加えて、細胞培養は、無菌のプラスチックピペット、培養ディッシュ、培養ボトル、および他の関連する器具を大量に消費する費用のかかる工程である。
【0055】
これまで手動で行われていた段階(37)を自動化するために、ロボットが用いられている(34〜36)。例えば、従来の細胞培養を行う際には、まず最初に-80℃〜-150℃で維持していた凍結保存液から細胞を融解する。融解した保存液を、12 mm x 75 mmの無菌使い捨て培養フラスコ(多くの場合、T75と称される)中の細胞培養液に添加する。フラスコをインキュベーターに入れて、フラスコの表面に細胞を接着させ、分裂および増殖を開始させる。増殖速度および細胞生存度を維持するためには、継続して培地を与えること(例えば、週に3回)が必要である。培地の添加は、培養フラスコ内に挿入した使い捨て無菌プラスチックピペットを用いて、消費した培地を慎重に吸引する段階を含む。次いで、増殖している細胞を妨げないように、温めた新鮮な培地を慎重に導入する。細胞が適切なコンフルエンスの程度に達した時点で、使用のために、細胞をフラスコから除去することができる。細胞の除去は、機械的または酵素的方法によってこすり剥がすかまたは剥離する段階を含む。いずれの場合にも、これらの段階において細胞は物理的に損傷を受けるか、または細胞表面タンパク質が剥離される。細胞を繁殖させるためには、細胞は一般に酵素によりディッシュから剥離し、長期保存のために凍結する。
【0056】
本発明は、細胞を増殖させるためのマイクロキャリアまたは改変および/もしくは機能化マイクロキャリア、これらのマイクロキャリアを含みその使用を支持するバイオリアクター、ならびにマイクロキャリア、液体、気体、およびバイオリアクター成分の操作を提供する自動化システムの組み合わせを用いた細胞培養の自動化について開示する。自動化システムはまた、自動細胞培養工程を管理するため、およびシステムの進行に関するデータを提供するための工程制御ソフトウェアを備えたコンピュータシステムを含み得る。各工程のフィードバック制御が維持できるように、複数のセンサーを用いて、自動化システムの働きおよび環境の状態をモニターする。バイオリアクターはマイクロキャリアの特有の性質を必要とし、自動化の設定はバイオリアクターおよびマイクロキャリアの特性に依存する。自動化を用いることで、播種、増殖、培地添加、分割、およびアッセイ法という細胞培養に関連する手動段階の多くを縮小または排除することができ、その結果汚染が減少する。さらに、マイクロキャリアを用いた場合には細胞の剥離も酵素消化も必要ではないため、創薬などの下流の工程により健康な細胞を直接導入することができる。タンパク質生産のための細胞の連続培養もまた、自動化システムによって支持される。
【0057】
自動化システムは、マイクロキャリアまたはマイクロキャリア作製装置、バイオリアクター、任意のモニタリングシステム、任意の制御システム、液体を動かすための方法、培養容器、および使い捨て培養器を含む。機械装置は、本発明のマイクロキャリアの使用を支持する耐久性または使い捨て培養器と通じる手段を提供する。1つの態様においては、細胞培養液を保持する少なくとも1つのカップ状のプラスチック培養容器によって、上部からの液体処理装置によるアクセスが可能になる。自動化システムが無菌環境内に含まれる場合、容器はふたなし容器として維持され得る。無菌性は、(これらに限定されないが)生存している微生物、花粉、および胞子、空中浮遊細菌、菌類、ならびにウイルスを死滅させる紫外線の使用、または特定の大きさを超える粒子をすべて除去するために装備されるHEPAフィルターの使用を含む従来法により達成され得る。または、細胞培養容器は、閉鎖を維持しつつ用具の出入りを可能にする、セプタムにあるような開口部または穴が装備されている以外は、閉じていてもよい。セプタムとは、培養容器に物質を添加するまたは培養容器から物質を除去するための引き込み口として機能する、培養容器に組み込まれた装置である。セプタムは、硬いピペットが貫通し得るピアシング可能なゴムキャップで蓋をされ得る。ピペットまたはシリンジ針を取り除くと、ゴムキャップは再び閉じる。培養容器は硬質で開口端からのガス交換のみを可能にするものであってよく、またはCO2およびO2などの気体の自由な交換を可能にするよう改変された材料から構築されてもよい。1つの態様においては、優れたガス交換を有するが、液体の交換も損失も起こさないポリフッ化培養バッグ(American Fluoroseal Corporation、メリーランド州、ゲイサーズバーグ)を使用する。培養バッグは、標準的な50 mL遠心チューブまたは培養バッグを保持するためのより大きな硬質構造を有する容器を含む、培養バッグを支持するように設計された任意の容器中に支持され得る。1つの態様において、気体の自由な交換を可能にするよう50 mL遠心チューブに孔を開ける。ポリフッ化バッグを使用することで、ポリフッ化プラスチックバッグ内に密閉された、およびチューブまたはバッグを保持している容器のキャップ内に挿入されキャップに密閉されたセプタムを介した、自動化システム内の細胞培養容器での連続製造および培地添加が可能になる。例えば、(これらに限定されないが)、レーザー溶融(または溶着)により、ポリフッ化シート製品を培養容器に成形することができる。
【0058】
自動化システムは、培養容器の内外に液体を動かす手段を含む。例えば、分注装置を備えた上部の直角座標ロボットを用いて、培養容器から液体を吸引する、または培養容器に液体を補充することができる。または、円筒座標ロボット、関節アーム、スチュアートプラットフォーム、または他のロボットシステムを、液体処理機器に装備してもよい。さらに、1つの態様においては、培養液の除去を容易にするため、改変マイクロキャリアの常磁性特性を用いる手段を提供し得る。例えば、以前に図5および7に示したように、磁力を利用して培養容器の底に常磁性マイクロキャリアを引き付けた後に、培養液を除去することができる。培地が除去された時点で、十分な容量のピペットを用いるか、培地の供給源から培養容器まで複数回往復させるか、または培養容器に培養液を連続して分注するポンプを備えたピペットを用いることにより、分注ロボットが培養容器に新鮮な培地を補充し得る。培地補充作業の前、途中、または後に、マイクロキャリアの関与周辺から磁力を除去することができる。自動化システムは、培養操作を行うために必要な機器をすべて含んでもよいし、または培養工程の様々な段階を行うために(上記の)バイオリアクターの使用を利用してもよい。
【0059】
培養容器はまた、容器の穴に通したチューブ類を経由するか、または容器の製造工程において設置した培養容器との直接連結部を経由する、培養液と直接関連する液体の出入り口を備え得る。液体を容器から汲み出すもしくは容器に注ぎ込む必要がある場合には、マイクロキャリアを開口部から離し得り、またはマイクロキャリアを回収する必要がある場合には、マイクロキャリアを開口部に近づけ得る。マイクロキャリアの移動は、対流、マイクロキャリア浮力によっても、または常磁性特性の利用によってもよい。
【0060】
自動化内部環境全体は、各細胞種に適した細胞増殖温度、湿度、およびガス濃度で維持される。または、自動化システムの選択された部分が環境面で制御され得る。バイオリアクターシステムまたはサブシステムを自動化システムにおいて使用し、独特のマイクロキャリアの使用を最適化するために適切な条件を提供することができる。
【0061】
自動化システムにおいて行われる事象の順序は、手動細胞培養を行う場合に経験するものと同様である。最初に、細胞培養使用者が凍結細胞または増殖細胞のバイアルを自動化システムに供給する。細胞バイアルはバーコード付きであることが好ましく、その結果、バーコード読取装置がバイアルの同一性を明らかにし、次いで、細胞、オペレーター、マイクロキャリアの種類、および増殖条件などの内容に関してこの情報に合うものを、あらかじめ確立されたデータベースにおいて見つけ得る。バイアルはまた、無線認識チップ(RFID)または他の標識手段を備え得る。バイアルを、窓、引き込み口、または開口部の形態をした入力装置に設置する。機構組立がバイアルを受け取り、バイアルを37℃に温める装置にこのバイアルを移す。加温装置は、再現可能な制御融解プロファイルを実行するよう設定されている。さらに、(これらに限定されないが)エタノール、イソプロパノール、漂白剤、過酸化水素でバイアルを洗浄する、またはガスプラズマに曝露するなど、バイアルの外部を滅菌する手段がシステム内に設計されている。制御融解およびバイアル滅菌の後、バイアルの蓋をはずすか、または滅菌条件下においてロボットの分注器上のピペットでバイアルに穴を開ける。ピペットで内容物を吸引し、滅菌培養容器にこれを移す。制御増殖環境(インキュベーター)中で、または培養容器をインキュベーターに設置する前に、マイクロキャリア、培地、および増殖因子を培養容器中に導入する。細胞がマイクロキャリアの表面に接着できるように、マイクロキャリアと細胞の混合物を、培養容器内の培地中で少なくとも1時間静置する。細胞がマイクロキャリアに接着し得るまでの時間は、培養する細胞の種類に依存することになる。細胞がマイクロキャリアに接着すると、細胞培養液内のマイクロキャリアを撹拌または運動させるための、先に記載した多くの物理的力のいずれかを使用し得る。
【0062】
細胞が増殖している間、細胞増殖をモニタリングする複数の方法を任意に用いることができる。マイクロキャリア表面の何パーセント(平均して)が増殖細胞で覆われているかの決定に関して有用であることを実証する、種々の方法が試験されている。例えば、(これらに限定されないが)、電磁スペクトルの任意の波長における分光法、直角光散乱、画像解析、細胞自家蛍光の測定、ラマン分光法、質量分析法、タンパク質発現、生体染色色素を吸収するまたは排除する能力、チミジン取り込み、および細胞増殖を測定するための他の手段などの、任意のいくつもの従来解析法を用いることができる。細胞がコンフルエンスに達するか、または増殖の任意の状態で静止すると、(これらに限定されないが)イオン輸送、細胞内pH、およびカルシウム取り込みなどの技法を用いて、細胞の健康および状態をモニターすることができる。
【0063】
細胞が所望のコンフルエンス状態または増殖状態に達すると、創薬、研究、および細胞産物生産を含む様々な用途のために細胞を回収することができる。または、細胞をタンパク質工場または細胞産物工場として用いることができ、自動ピペットまたは自動ポンプによって培地を回収することができる。撹拌手段を停止した後に、種々の手段によってマイクロキャリアを回収することができる。この関連における撹拌とは、循環運動を意味するのではなく、マイクロキャリアを懸濁状態に維持する任意の運動を意味する。マイクロキャリアは、沈降マイクロキャリアを使用するか浮揚性マイクロキャリアを使用するかに応じて、それぞれ培養容器の底または培養容器の表面から回収し得る。逆に、培地は、マイクロキャリアが表面にあるか底にあるかに応じて、細胞培養システムの表面または底から回収し得る。通常、マイクロキャリアの存在しない培地を回収するか、または最小限の量の培地に入ったマイクロキャリアを回収することを望むと考えられる。
【0064】
回収されたマイクロキャリア上での細胞アッセイ法は、様々な産物生産工程またはバイオアッセイ法において直接用いられ得る。または、上記に説明した通り、化学的手段または酵素的手段を用いてマイクロキャリアを解離することができる。アルギン酸カルシウムの場合には、低Ca2+培地の存在下でマイクロキャリアは自発的に分解する。自動化システムには、細胞または細胞産物の回収に必要な機械システムが装備されており、これらを次の工程に直接輸送する。この特徴は実験室技術者の労力の必要性を排除し、それと同時に細胞の汚染の可能性を低減することになる。
【0065】
または、細胞を回収し、マイクロキャリア上で直接、またはマイクロキャリアから解離した後に-150℃で凍結することによって、細胞を長期保存することができる。自動冷却装置を用いて制御凍結手順を実施するように、自動システムをプログラムすることができる。標準的な凍結手順に従って細胞が凍結されると、-80℃冷凍庫(TechCell、マサチューセッツ州、ホプキントン)もしくは-150℃冷凍庫で、または直接液体窒素冷蔵庫で、短期間(1ヶ月またはそれ未満)保存することができる。細胞を含むマイクロキャリアを、細胞の活動の停止を支持する状態まで脱水することによって、冷凍庫の使用を不要にすることができる。
【0066】
マイクロキャリア上の細胞の用途
オルトバイオロジックス(Orthobiologics)とは、置換または修復用の構造組織の増殖の分野である。本発明の機能化および/または改変マイクロキャリアを用いて、植物、動物、またはヒトにおける自己または異種移植のための細胞の増殖および分化を支持することができる。移植組織は、最終的に吸収され得るおよび身体自体の支持基質に置き換えられ得る基質上で細胞の増殖を支持するべきである。生物において使用するために、様々な細胞を増殖させることができる。ヒトでの商業的に実現可能な置換細胞には、軟骨細胞(chondrocyte)(軟骨組織細胞(cartilage cell))、骨細胞(oesteocyte)(骨の細胞(bone cell))、骨芽細胞、軟骨形成細胞、多能性細胞、ならびに組織置換および/または被覆のための粘膜細胞が含まれる。
【0067】
本発明のマイクロキャリア培養技術(改変マイクロキャリア、バイオリアクター、および自動化プラットフォーム)は、ヒトにおける組織置換のための細胞および従来通りに増殖させる細胞のより優れた供給源を提供する。本発明の改変マイクロキャリアで細胞を産生させることで、細胞のより迅速な産生、剪断応力および回転羽根衝突による損傷の減少、リアルタイムで細胞増殖をモニターし増殖条件を最適化する能力、ならびに完全な自動化および無菌環境において培養を開始し維持する能力が可能になる。さらに、ヒト、動物、または植物細胞を改変マイクロキャリア上で増殖させた場合、細胞の修復または置換のためにこの細胞を組織に直接注入することができる。この場合、ヒトの移植に関してFDAにより認可された常磁性粒子を使用する。または、注入する前に、強い磁場を用いてマイクロキャリアから常磁性粒子を取り除く。ガラス泡は生物学的に不活性であるが、注射用マイクロキャリアにはガス気泡の使用が好ましい。改変マイクロキャリアを動力学的に操作する能力によって、より優れたインビボ生存度を有し得るマイクロキャリア凝集体の形成が可能になり、または生物内に導入されるとマイクロキャリアの操作が可能になる。
【0068】
以下のさらなる態様は上記ではまだ開示していなかったものであり、本発明を開示の範囲内で説明するために以下に提供する。
【0069】
固有の物理的特性を有するマイクロキャリア
1. 外部の力に応答することを可能にする固有の特性を有する、種々の形状および組成のマイクロキャリアを作製する方法[例えば、これらに限定されないが、マイクロキャリアが固有の双極子モーメントを有し、そのため電場および/または磁場に応答する、固有の圧縮性および浮力を有し、そのため圧力の変化に応答する、ならびに適切な装置を用いて測定した場合に有用なシグナルを生じる固有の自家蛍光を有する]。
2. マイクロキャリアの少なくとも1つの亜集団が以下のいずれかまたはすべてであり得る、1に記載の方法:球形、三角形、台形、立方形、長円柱形、中空型、進入孔を有する中空型、管型(両端または長さに沿ったどこかが閉じたまたは孔を有する)、多孔性形状、または平面形状。細胞培養液と直接接触する、複数の形状の表面に沿った任意の部位が、細胞接着を可能または不可能にするように化学修飾され得る。
2b. マイクロキャリアが細胞の増殖を支持する表面によって特徴づけられる、上記の1および2に記載の方法。
2c. マイクロキャリアが細胞の増殖を支持し得る特定部位の非存在によって特徴づけられる、上記の1〜3に記載の方法。
2d. 微粒子が平均直径1 nm〜1 mmを有する、1および2に記載の方法。2e. マイクロキャリアが平均直径100 nm〜500 umを有する、請求項1〜2cに記載の方法。
2f.マイクロキャリアが、0.8〜1.4 g/cmの範囲内の細胞培養用のキャリア密度を有し、これによって細胞培養用のマイクロキャリアを培養溶液中で懸濁状態にすることが可能になる、1〜2に記載の方法。
2g。マイクロキャリアが噴霧融合または乳濁液重合によって作製される、上記の1に記載の方法。
3. 細胞が関心対象の部位に到達され、その後様々な手段によって気泡が分解、崩壊、または溶解されることを可能にする、ちょうど上記の1または2にあるような分解可能な生体適合性マイクロキャリア。例えば、限定的な適用ではないが、インビトロまたはインビボで気泡と同じ位置に超音波エネルギーを送達することにより、気泡を分解することができる。
4. 非足場依存性細胞の接着を可能にする変更させた表面を有するマイクロキャリア。
【0070】
改変マイクロキャリア
5. 細胞増殖、および/またはマイクロキャリア上もしくはマイクロキャリア内で増殖している生細胞における活性を測定するために、マイクロキャリア内またはマイクロキャリア上の検出分子を付与する方法。
6. 上記の4にあるようなマイクロキャリア内またはマイクロキャリア上の別の検出分子が発するシグナルを増幅する、マイクロキャリア内またはマイクロキャリア上の検出分子。
7. 磁気双極子を付与する物質を取り込んだ、またはマイクロキャリアが鉄もしくは鉄酸化物を含み磁性を有するまたは常磁性である、またはマイクロキャリアがこれらの特性の組み合わせを有する、足場依存性細胞の増殖および/または維持のために設計されたマイクロキャリア。
8. マイクロキャリア密度および/もしくは浮力を制御する能力を付与するか、またはマイクロキャリアの密度もしくは浮力が外部の力によって制御されることを可能にする物質を含む物質で製造された、足場依存性細胞の増殖および/または維持のために設計されたマイクロキャリア。
9. 透明度、および関心対象の細胞に固有の自家蛍光に対して低い自家蛍光を付与する物質を取り込んだ、足場依存性細胞の増殖および/または維持のために設計された、請求項のいずれか一項記載のマイクロキャリア。
【0071】
改変マイクロキャリアの応用
10. 生物学的過程を模倣する分析ツールとして改変されたマイクロキャリア。
11. 細胞遊走、浸潤、および転移をモニターおよび測定するよう改変された、上記の8記載のマイクロキャリア。
12. これらに限定されないが、血液脳関門、腸管、腎臓、肝臓、心臓、肺、骨髄、皮膚、および血管を含む種々の器官の生物活性を模倣するように改変された、上記の7および8のいずれか1つにあるようなマイクロキャリア。
13. マイクロキャリアは、(これらに限定されないが)脂肪組織、胚、および末梢循環などの様々な供給源に由来する幹細胞の接着表面として用いられる。幹細胞の維持または子孫細胞への分化を促進するためには、擬似微小重力環境が有利である。
【0072】
物理的特性の組み合わせ
14. 請求項1〜6のいずれか一項または全項における特性の組み合わせを有するマイクロキャリア。
【0073】
運動エネルギー
15. 以下の運動エネルギーパラメータを制御する方法;加速、運動、運動速度、絶対位置、および液体中のマイクロキャリアの回転速度。
16. 液体中のマイクロキャリア内の運動エネルギーパラメータを制御する方法。
17. 液体中のマイクロキャリア凝集体における、上記の1および2にあるような運動エネルギーパラメータを制御する方法。
【0074】
マイクロキャリアに影響を及ぼす各物理的力の制御
18. 上記の1〜7のいずれ1つまたはすべてにあるようなマイクロキャリアに影響を及ぼす磁力を制御する方法。
19. マイクロキャリアを含む液体に対する外圧を制御することによる、上記の1〜7のいずれか1つまたはすべてにあるようなマイクロキャリアの浮力または運動エネルギーを制御する方法。
20. 温度勾配を誘導することによる、任意のマイクロキャリアおよび上記の1〜7のいずれか1つまたはすべてにあるようなマイクロキャリアの運動エネルギーパラメータを制御する方法。
【0075】
多くの物理的力の制御
21. 配向性および/または移動の方向を示す物質を含む、上記の1〜7のいずれか1つに記載のマイクロキャリア。
21b. 上記の21に記載の方法によって決定される配向性に基づいて、運動エネルギーおよびまたは移動の方向およびまたは配向性が培養容器外部で制御され得る、フィードバックループに関与する、請求項1〜7および/または21のいずれか一項に記載のマイクロキャリア。
【0076】
マイクロキャリア配向性、ならびに細胞の生化学および生理学の測定
22. 配向性、細胞増殖、および細胞の健康を決定するために、上記の1〜7のいずれか1つにあるようなマイクロキャリアを試験する方法。
22b. マイクロキャリアの少なくとも1つの亜集団が発光、蛍光、または比色特性を有し、かつ該マイクロキャリアが発するシグナルが以下を含む任意の方法によって検出され得る、上記の1記載の方法:(a) フレーム全体の画像化;(b) 部分的フレームの画像化、および(c) 静的な記録もしくはシグナル測定または時間に基づいた記録もしくはシグナル測定としてのシグナル捕捉。
23. (これらに限定されないが)分光光度計、蛍光光度計、ラマン光散乱装置、
ルミノメーター、蛍光偏光計、および/または光散乱装置を含む、マイクロキャリア上またはマイクロキャリア内の細胞が発する電磁スペクトルの変化を測定する任意の装置を用いた、上記の15にあるような方法。
24. マイクロキャリアが発する細胞の生化学的シグナルを検出する方法[例えば;薬物吸収を決定するための溶液中でマイクロキャリアを試験する]。
【0077】
バイオリアクター
24b. マイクロキャリアおよびその中でマイクロキャリアが増殖する培地を含むバイオリアクター。
25. 細胞培養液を保持するための容器、最適な増殖および維持温度を維持するためにマイクロキャリア培養物に熱を供給するための装置、気体[CO2、空気、および/または酸素の両方]の一定した供給を提供するための装置、運動エネルギー、上記の8〜13にあるようなマイクロキャリアの位置、配向性、および運動を制御するための外部制御装置、ならびにバイオリアクター内の無菌性を維持するための装置からなる、マイクロキャリア上の細胞の増殖を最適化するためのバイオリアクター。
26. 複数のバイオリアクターが同時に使用でき、かつ同じエネルギー供給源、気体、および/または外部制御装置を共有し、かつ培地およびマイクロキャリアを無菌状態に維持できるようなモジュール方式で構築された、上記の18にあるようなバイオリアクター。
27. 容器、例えば、ポリフッ化バッグの壁を介して細胞培養液の十分な酸素供給をもたらすが、水分の明らかな喪失もウイルスもしくは細菌の透過も起こさない容器を用いる、上記の18および19にあるようなバイオリアクター。
28. 気体流、温度、湿度、無菌性を制御するための外部コンピュータ機器を使用する、上記の18〜20にあるようなバイオリアクター。
【0078】
自動化
29. 上記の18〜21にあるような単一または複数のバイオリアクターからなる、自動細胞培養システム。
30. バイオリアクターに培地を添加する、およびバイオリアクターから培地を除去するための装置を組み入れた、上記の21にあるような自動細胞培養システム。
31. 培養するための細胞のバイアルの投入を受け取るための装置を組み入れた、上記の21〜22のいずれか1つにあるような自動細胞培養システム。
32. 自動細胞培養装置に提供された細胞のバイアルを滅菌した後、細胞を融解し、容器を開け、および融解した細胞を細胞培養液を含む上記の18〜21のいずれか1つにあるようなバイオリアクターに移す自動装置。
33. 無菌性の維持、培地の交換を含む培養細胞の進行状態を維持し、進め、かつモニターし、マイクロキャリアに関連する最適な運動エネルギーを維持し、かつ適切な時間で細胞を回収する、自動装置。
34. 細胞培養の必要性に基づいて、上記の21〜25のいずれか1つに基づいた自動システムの動作をモニターおよび調整するコンピュータシステムを含む、上記の26にあるような自動装置。
35. 制御された凍結プロファイルを使用し、細胞がマイクロキャリアに接着したまま、凍結すべき細胞の温度を下げる、長期保存用の細胞を調製および凍結する自動装置。
36. 細胞またはマイクロキャリア内の氷の微小結晶化が起こらないように強力な磁場を用いる、上記の27にあるような細胞を調製および凍結する自動装置。
37. 長期保存用の細胞を調製するが、細胞/マイクロキャリア複合体の乾燥を用いる、自動装置。
38. 必要に応じてマイクロキャリアを作製するために必要な、ソフトウェアアルゴリズムによって制御を受ける機器および試薬を含む自動システム。
【0079】
本発明を説明の目的で詳細に記載したが、このような詳細はその目的のためのみのものであること、およびその中で本発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者によって変更が行われ得ることが理解されるべきである。
【0080】
引用した文献はすべて、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0081】
参照文献
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】従来の微粒子、常磁性粒子を有する微粒子、浮揚性成分および常磁性粒子を有する微粒子の描写である。
【図2】培養容器に加えられる物理的力の供給源と培地および/またはマイクロキャリアを添加および除去するための開口部の関係を示す、本発明の改変マイクロキャリアを含む、本発明の代表的なバイオリアクターの図である。
【図3】物理的力の供給源、開口部を介した培養容器への培地およびマイクロキャリアの添加または培養容器からの培地およびマイクロキャリアの除去、ならびにモニタリングシステムも同様に制御する制御システムによって制御を受ける、本発明の改変マイクロキャリアを含む、本発明の代表的な自動バイオリアクターの図である。
【図4】改変マイクロキャリアを含み、マイクロキャリアを培養容器中に直接提供するマイクロキャリア製造方法との関係、および解析のために培養容器からマイクロキャリアを受け取るアッセイ方法との関係をさらに示す、本発明の代表的な自動バイオリアクターの図である。
【図5】単一の磁石を用いる、本発明の1つの態様の描写である。この図は、いかにしてこの磁石を用いて、バイオリアクター内のマイクロキャリアを動かすかを示す。培養容器および物理的力の供給源(各培養容器に対する単一の電磁石または永久磁石)を含む2つのバイオリアクターを示す。左図では、黒い円盤形で示す磁石を培養容器の底まで下げて小さい円で示すマイクロキャリアを引き寄せ、培養容器の右側にある開口部から不要な培地を除去する。右図では、磁石を培養容器の上部まで上げて小さい円で示すマイクロキャリアを引き寄せ、培養容器からマイクロキャリアを取り出す。
【図6】一連の電磁石コイルまたは磁石を用いて培養容器を取り囲む場合の、本発明の態様の描写である。この図は、細胞増殖の必要性に応じてマイクロキャリアを動かし、培地交換およびマイクロキャリアの吸引を容易にし得ることを示す。手動でまたはロボットアームにより吸引するためには、最上部のコイルにエネルギーを与えてマイクロキャリアを上方に移動させる。すべてのコイルにエネルギーを与えて、マイクロキャリアを懸濁状態に維持することができる。不要な培地を除去するためおよび新鮮な培地を添加するためには、底部のコイルにエネルギーを与えてマイクロキャリアを底まで移動させる。
【図7】左図における培地交換および右図におけるマイクロキャリアの吸引の描写である。この図は、図5と同様に磁石を使用するが、図6のように複数の磁石を有することを示す。
【図8】特定の必要性に応じてマイクロキャリアを操作できる、別の磁石配置の描写である。図6にあるように、手動またはロボットでマイクロキャリアを吸引するには、最上部の電磁コイルによってマイクロキャリアを上方に移動させ、使用済みのまたは不要な培地を手動またはロボットで吸引するには、底部の電磁コイルによってマイクロキャリアを下方に移動させ、さらにマイクロキャリアを懸濁状態に維持するには、すべてのコイルを振動させる。
【図9】様々なマイクロキャリアの動きを提供するための磁場のさらなる描写である。この図は、培養容器を介して対角運動をもたらすための、二極または複数極を有する2つの円形電磁石の使用を示す。
【図10】マイクロキャリアのより循環した、上から下までの混合を可能にする、さらに別の磁石配置の描写である。
【図11】運動エネルギーを誘導するための外部磁場によって操作される改変マイクロキャリアの描写である。マイクロキャリアはそれ自体の軸を中心に回転して、球体の外部で増殖している細胞に剪断応力を誘導し、球体の右側の剪断力プロファイルに概算するように、周囲長周りにある細胞は軸近傍の細胞と比較してより大きな剪断応力に曝露されると考えられる。
【背景技術】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、07/17/2003に出願した米国特許出願第60/488,068号(1)である。
【0002】
発明の背景
本発明は一般に、主に、解析目的での細胞の成長、増殖、および生産のため、ならびに細胞産物の生産および回収のために用いられる実験室工程である、細胞培養の分野に関する。生細胞は通常、その自然環境に存在する栄養素および増殖因子の多くを含む増殖培地で、プラスチック表面上に播種する。次いで、ペトリ皿またはフラスコなどのプラスチック容器の底に静置している細胞を、暖かく、湿気があり、かつ適切にガスに包まれた環境を提供するインキュベーター内に置き、増殖させる。培養できる細胞の数および種類、ならびに培養細胞から得られ得る価値のある産物およびデータには、実質的に制限はない。培養細胞を用いて、潜在的薬学的活性について大きな医薬品化合物ライブラリーをスクリーニングすることができ、また培養細胞に由来する分泌タンパク質および核酸は、薬学的産物として重要な価値を有する場合がある。さらに、細胞培養は、製薬研究室における創薬プログラム、ならびに細胞に基づいた治療法のためのヒト、動物、および植物細胞など、研究室での幅広い研究用途を有する。
【0003】
伝統的な細胞培養の大部分は平底ディッシュの使用に依存しており、関心対象の細胞はその上で増殖する。ペトリ皿および他の細胞培養容器は、足場依存性細胞が接着し増殖し得る表面を提供する。伝統的なペトリ皿は78.52 cmという表面積を有し、完全にコンフルエントになった時点で、1x106個を超える細胞の増殖を支持し得る。ペトリ皿の改良には、細胞フラスコ、ローラーボトルの使用、および培養容器中の繊維上での細胞増殖が含まれる。
【0004】
マイクロキャリアは、増殖培地容器または培養容器の表面上での細胞増殖に代わるものとして開発された。マイクロキャリアは、細胞が増殖し得るのに使用できる表面積を増大させる手段として、プラスチック、ガラス、ゼラチン、およびアルギン酸カルシウムなど、種々の材料から作製されている(2、3、4、5)。しかし、マイクロキャリアは、その表面上で細胞を増殖させるために撹拌する必要がある。先行技術では、マイクロキャリアを懸濁状態に維持するために、スピナーフラスコの底の下にある外部の回転磁石によって駆動される吊るされた撹拌羽根を必要とするスピナーフラスコについて記載している。しかし、撹拌羽根は増殖している細胞に流体力学的ストレスを与え(6)、このストレスは細胞に損傷を与え得るか、またはその形態を変化させ得る。撹拌羽根は通常、細胞培養液中に吊るされており、上にあるモーターとの直接的な結合を介して、または培養フラスコの支持体の基部にある回転磁石による磁気誘導を介して、撹拌される。撹拌羽根は、浄化および滅菌可能であり、かつ細胞培養液中に混入物質を与えない物質から作製される必要があるため、高価である可能性がある。
【0005】
さらに、研究室の大部分は、冷凍庫から細胞を取り出して融解する段階、培養容器またはフラスコに細胞を播種する段階、細胞を増殖させ、培地を与え、および分割して、最終的にアッセイ法のために細胞をこすり剥がすかまたは酵素を用いて剥離する段階、ならびに必要に応じて凍結する段階を含む、従来の細胞培養を手動で行っている。
【0006】
したがって、細胞の培養、維持、および解析過程における細胞の操作の点で従来の細胞培養を改善する必要性、ならびに培養細胞の状態または健康、および場合によっては細胞が自然状態で増殖する環境により近い環境で増殖できるような、細胞を増殖させる条件を改善する必要性が存在する。培養条件のこの改善は、細胞培養条件が、その細胞が最初に得られた生物(ヒト、非ヒト哺乳動物、動物、植物、およびその他など)における細胞の生理的条件を模倣するかまたはそのような条件をより正確に表すであろうことから、より正確な解析および観察を提供することになる。操作段階の縮小の点では、いくつかの態様において本発明は、細胞を取り扱うために必要な労力を約75%縮小して、播種、増殖、培地の供給、分割、および細胞または細胞産物のアッセイ法という伝統的な操作段階を排除することができる。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は、培養細胞の増殖を支持する培養基を提供し得り、マイクロキャリアを少なくとも1つの物理的力に応答するようにする少なくとも1つの物質をさらに含むヒドロゲル組成物を含む、細胞増殖に適した改変マイクロキャリアに関する。細胞は改変マイクロキャリアの内部およびマイクロキャリアの外部表面上で増殖し得り、改変マイクロキャリアは、細胞培養システムで用いられた場合に少なくとも1つの物理的力に応答するように、少なくとも1つの物理的力によって操作されるように、または制御されるように作製されている。本発明はまた、これらの改変マイクロキャリアを作製する方法、ならびに細胞産物を解析および生産するためにこれを用いて細胞を増殖させる方法に関する。
【0008】
別の態様において、本発明はさらに、培養容器またはバイオリアクター中に含まれる本明細書に記載の改変マイクロキャリア、および培養容器中の改変マイクロキャリアの運動を制御する、培養容器内へ、培養容器の周囲へ、および/または培養容器の外側に力を放出するための供給源を含むバイオリアクターに関する。
【0009】
さらなる態様において、本発明はさらに、改変マイクロキャリア、培養容器またはバイオリアクター、および培養容器中の改変マイクロキャリアの運動を制御する、培養容器内へ、培養容器の周囲へ、および/または培養容器の外側に力を放出するための、制御システムによって制御を受ける供給源、および細胞培養の目的を達成するためのバイオリアクターを含み、供給源が制御されている自動細胞培養システムに関する。
【0010】
本発明の1つの態様は、改変マイクロキャリア、培養容器またはバイオリアクター、および培養容器中の改変マイクロキャリアの運動を制御する、培養容器内へ、培養容器の周囲へ、および/または培養容器の外側に力を放出するための、統合制御システムによって制御を受ける供給源を含み、データを観察し、測定し、記録し、さらに工程を制御する統合コンピュータプロセッサまたはバイオチッププロセッサにデータを送信するモニタリングシステムをさらに含む、自動細胞培養システムおよびモニタリングシステムに関する。
【0011】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、培養容器内で他のマイクロキャリアと関連したマイクロキャリアの操作および物理的運動をもたらす、または培養容器内で単に運動をもたらす特有の性質を提供する添加物をさらに含むように、従来のマイクロキャリアから改良したマイクロキャリアについて開示する。本発明はさらに、添加物が刺激または刺激に対する応答を報告するリガンド、レポーター、または応答エレメントであるマイクロキャリアについて開示する。
【0012】
本発明はさらに、実質的に限定されない特性を有する多種多様な物質で作製される改変マイクロキャリアについて開示する。例えば、そのような改変マイクロキャリアには、これらに限定されないが、ゼラチン、コラーゲンまたはゼラチンと共重合させたポリアクリルアミド、変更させた電荷を有するポリアクリルアミド、アルギン酸、およびゼラチンと共重合させたアルギン酸が含まれる。好ましいマイクロキャリアは、Kwon et al(7)に開示されているアルギン酸カルシウムおよびゼラチンなどの化学的構成で作製されたマイクロキャリアである。しかし、次いで、これらの従来のマイクロキャリアを改良して、レポーターとして働く機能化マイクロキャリアを作製する。本発明者らはまた、本明細書に記載するような、特定の浮力ならびに磁性および/または常磁性特性などの特有の性質を有する改変マイクロキャリアである、化学的マイクロキャリアにおける改良について記載する。したがって、本発明の機能化および/または改変マイクロキャリアは、既知の方法および材料を用いて化合物および化学的組成物から作製されるという点で既知のマイクロキャリアの特性を含むが、これらの従来のマイクロキャリアは、これらの有利な特性を提供する添加物(例えば、密度の変化を付与する、および/または培養容器内の改変マイクロキャリアに運動エネルギーを与える少なくとも1つの物理的力の負荷による、培養容器またはバイオリアクター内部での改変マイクロキャリアの移動、操縦、撹拌、または別の方法での操作を可能にする、マイクロキャリアに導入される(図1を参照のこと)、またはマイクロキャリアの外側に結合される粒子、分子、および/または気体など)を包含するまたは含むようにさらに改変または改良される。
【0013】
アルギン酸カルシウムおよびゼラチンマイクロキャリアは、これらの組成物から作製された改変マイクロキャリアが最小限の内因性蛍光を有し、よって蛍光共焦点顕微鏡などの顕微鏡技術を用いて細胞を観察することができるため、細胞機能のモニタリングに特に有用である。好ましい態様は、使用できる他のマイクロキャリアと比較して光学的に透明なマイクロキャリアの作製である。本発明において開示する好ましいマイクロキャリアは、本明細書においてさらに詳述する添加物で改変した場合にでさえ、光学的透明度の大部分を保持し、改変マイクロキャリアの内部または外部の細胞で行う観察または定量的測定を機能上妨げない。
【0014】
本発明のマイクロキャリアは細胞密度の増加を提供し、例えば、癌細胞は5x 103個のマイクロキャリア当たり最大で7x 105細胞という密度まで増殖する。しかし、マイクロキャリアに統合されたコンフルエンスの程度を示すレポーター分子、または外部のモニタリングシステムの使用により決定される十分な密度にまで細胞が増殖した時点で、これらの細胞は、レポーター分子を含むために、トリプシンなどの酵素を用いて接着から細胞を遊離させる比較的破壊的な過程(平底容器で必要であるような)を必要とせずに、直接研究に用いられる。
【0015】
本マイクロキャリアは、幾何学的、化学的、および機能的特性の制限なしに作製され得る点で、柔軟性の恩恵を与える(8、9)。本発明のいくつかの態様では、マイクロキャリアは任意の直径の、しかしより合理的には1 mmから関心対象の細胞の直径未満までの直径の球体として作製され得る。本発明のマイクロキャリアは好ましくは、直径1μm〜1 mmの大きさである。しかし、最小で1ナノメートル未満までのより小さな大きさ、および最大で2センチメートルまたはそれ以上までのより大きな大きさは、開示する自動細胞培養システムにおいて有用であり、開示する方法によって作製される。本発明において有用なマイクロキャリアはまた、非接着細胞をその表面に接着できるように化学的に修飾することも可能である。本発明はいくつかの態様において、非接着細胞の接着を可能にするばかりでなく(10)、本明細書に記載の特定のレポーティング、浮力、ならびに磁性および/または常磁性特性を有するさらなる改変マイクロキャリアへのそのような接着も可能にする技術を用いる。
【0016】
本発明の改変マイクロキャリアは、一般に回収操作を容易にするのに有用である;しかし、マイクロキャリアが懸濁液中で沈降する傾向から、自動化によってマイクロキャリアを容易に回収することは不可能である。マイクロキャリア製品は数十年間もの間市販されているが、製薬産業におけるハイスループットスクリーニング過程を支持するために使用する点での関心は、操作が困難であることおよび高価であること、ならびにマイクロキャリアを用いるために必要な複雑な回転羽根システムまたは増殖容器回転システムに阻まれている。ハイスループットスクリーニングついての、本明細書に開示する自動細胞培養システムおよびモニタリングシステムにおける本発明のマイクロキャリアの使用は、これまでに用いられていたハイスループットスクリーニング系を超える利点を提供する。
【0017】
別の態様において、本発明は、重合化学混合物を含む液体中に噴霧する段階、または乳濁液を作製するために、急速に撹拌している油浴にマイクロキャリア基質を添加する段階を含む、従来の技術を用いたマイクロキャリアの製造または作製について開示する。本発明の別の態様において、改変マイクロキャリアの製造は任意に、細胞培養自動化プラットフォーム内に統合される過程であってよい(図4を参照のこと)。本明細書に開示する自動細胞培養システムにおいて使用するために必要な時点で、必要な改変マイクロキャリアを製造する細胞培養システムは今日まで存在していない。このアプローチは、「ジャストインタイム」細胞培養生産工程を提供する。
【0018】
改変マイクロキャリア
磁性
本発明の新規改変マイクロキャリアは、改変マイクロキャリアの密度に影響する取り込まれた浮力エレメント、および/または改変マイクロキャリアに磁性および/または常磁性特性を与える粒子を含む。小型の磁性または常磁性粒子の使用および取り込みにより、外部磁場による粒子の制御が可能になる。磁性および/または常磁性粒子を選択することで、選択された運動または運動エネルギーを改変マイクロキャリアに対して与えるために必要な外部磁場の大きさまたは配向性を縮小することができる。改変マイクロキャリアに常磁性粒子を取り込むことの利点は、外部磁場に曝露されない場合には固有の磁性を欠くことであり、これは次いで相互の引力を妨げる。いくつかの態様において、マイクロキャリアの凝集は、組織または器官の構築など、細胞の有用な凝集体を作製する場合に望ましい。したがって、マイクロキャリアは、外部磁石(永久磁石または電磁石)の任意の配置と内部の磁性または強磁性特性との任意の組み合わせにより、特定の配向および数で凝集が誘導され得る。他の態様において、個々のマイクロキャリアが高いスクリーニングシグナルを生じ得る新規医薬品のハイスループットスクリーニングなどでは、凝集は望ましくない。さらなる態様において、常磁性体と磁性体を組み合わせることは望ましく、外部磁場に対する様々な応答を可能にする特性を与える。
【0019】
改変マイクロキャリアの磁性特性は、これらのマイクロキャリアの製造工程において制御することも、または製造工程後に与えることも可能である。磁場の非存在下でマイクロキャリアを重合またはゲル化する場合には、磁性または常磁性粒子は改変マイクロキャリア上でまたは改変マイクロキャリア内でランダムな配向を有することになる。一方、製造工程において静電気または様々な方法で磁場を加える場合、マイクロキャリア上またはマイクロキャリア内の粒子に特定の配向性および磁性の強さを与えることができる(粒子が磁化され得る場合)。例えば、本発明を限定することを意図するわけではないが、液体中のマイクロキャリアを外部磁場に曝露した結果として自身の軸を中心に回転し得るように、各マイクロキャリアに磁気双極子を与えることを望む場合がある。細胞がマイクロキャリアの表面上で相互に固着して増殖することによって起こるマイクロキャリアの凝集を望まない場合には、軸回転を与えることで、マイクロキャリア間の凝集は妨げられやすくなる。
【0020】
浮力
マイクロキャリアの浮力は、浮力特性を有する物質からマイクロキャリアを製造することによって、または浮力を制御し得る1つまたは複数の物質を添加することによって制御される。浮力とは、本明細書では、マイクロキャリアを懸濁した液体中で、マイクロキャリアを重力と逆の方向に自発的に動かす特性と定義する。多くの可能な態様のうちの1つでは、製造されたマイクロキャリアに、常磁性粒子および正味の正の浮力を表すガラス泡を共に与える。これらの物質は、細胞培養ではこれまで未知であった物理的特性をマイクロキャリアに与える。さらに、マイクロキャリアの密度は、成分の様々な組み合わせを用いることで制御し得り、そのうちのいくつかは、細胞培養用のキャリアの密度が、マイクロキャリアが培養液中で懸濁状態となる0.8〜1.4 g/cmの範囲内になるような浮力特性を有する。
【0021】
製造
マイクロキャリアは、これらに限定されないが、微粒子を重合させる原料を含む液体を、懸濁液中でおよび油水乳濁液中で噴霧、超音波処理、懸濁、振動、または乳化する段階を含む、多くの方法によって製造され得る。浮力を制御する能力など本特許において記載する改変した特性の付与は、使用者の必要性に応じてマイクロキャリア中に分布するように、ガラス泡などの選択された物質をマイクロキャリア原料に添加することによって達成される。または、選択された特性をマイクロキャリアに与える物質を、マイクロキャリアが製造された後に添加することも可能である。
【0022】
細胞接着、増殖、分化を促進するもしくは増強させる、または形態変化および生化学物質の発現を含む選択された表現型の発現を促進する特定のタンパク質を、マイクロキャリアの基質中に、またはマイクロキャリアの表面コーティング中に取り込むことができる。例えば(これらに限定されないが)、コラーゲン、フィブロネクチン、ペプチド、ならびに他のタンパク質および生化学物質などの細胞外基質タンパク質が取り込まれたマイクロキャリアが、様々な細胞の挙動(上記のものを含む)を誘導するために用いられている可能性がある。または、非特異的接着および細胞挙動は、ポリマー、生化学物質、および他の物質を使用することによって抑制されている(10〜14)。ゼラチンは、平面状のスライドガラスへの細胞接着を促進するために用いられている(15)。先行技術は、培養、回収、および足場依存性細胞の使用のための、低密度コラーゲンコーティングマイクロキャリア方法について開示している(16)。しかし、本発明は、培養する細胞の必要性に適合する改変浮力を有して、回転羽根に基づく方法によらずに自動操作され得るマイクロキャリアの作製について開示する。さらに、本発明の改変マイクロキャリアは、生細胞を必要とする用途において直接使用することができ、光学的に透明でない不溶性マイクロキャリアについて記載しているHillegas(16)の開示するマイクロキャリアとは異なる。Hillegasの提案は、任意の特定の1つまたは複数の細胞の使用について、および特定の細胞の増殖の支持に関する発明の固有の利点について開示していない。本発明は、非接着細胞がマイクロアレイ用のスライドガラスに接着し得ることを可能にするKoichi(10)の開示を改良する。本発明の改変マイクロキャリアは、懸濁可能であり、添加物を用いて改変する点でKoichiの方法を改良しており、懸濁状態で操作できることを用いた細胞培養過程に関与する。これらの固定の利点は、それによって多くの非接着細胞、例えば血液細胞、免疫細胞(抗原と反応して抗体を産生し得る、または細胞性免疫もしくは遅延型過敏反応において活性化し得るリンパ球系の細胞)、いくつかの癌細胞、幹細胞、単細胞生物、および他の細胞が、様々な基体に固定し得る点である(10)。本改変マイクロキャリアの場合には、いくつかの態様において、生体適合性固定物質がマイクロキャリアの基質中に、または本明細書に記載する手順に従ってマイクロキャリア上にコーティングされる表層上に取り込まれる。1つの態様において、固定促進物質はオレイルポリ(エチレングリコール)エーテルである(10)。この固定促進物質を、懸濁状態で操作し得る改変マイクロキャリアに含めることにより、足場依存性細胞および足場非依存生細胞の実質的にすべての細胞で機能する、強力な細胞培養方法が得られる。
【0023】
または、細胞分化もしくは増殖を可能にする微小環境、または細胞を定常状態非増殖相に維持する微小環境において、細胞を改変マイクロキャリア内部に保持することができる。次いで、この改変マイクロキャリアを用いて細胞を選択された位置に送達することができ、例えばそれは生物中への移植であり、そこで細胞は接着する、他のクローン細胞株に分化する、または拡大して空間または必要性を満たすことができる。分解可能なまたは酵素によって消化可能な生体適合性マイクロキャリアを用いて、細胞を関心対象の部位に送達し、その後様々な手段によって気泡を消化、分解、崩壊、または溶解することができる。この後者の方法の例としては、インビトロまたはインビボで気泡と同じ位置に超音波エネルギーを送達することにより、気泡を分解することができる。
【0024】
より具体的には、マイクロキャリアは、2つの主要なクラスの物質、すなわち熱可塑性ポリマー、ヒドロゲルポリマーを含む多くの物質から製造され得る。熱可塑性物質とは、これらに限定されないがポリアクリル酸またはポリエチレングリコールを含む任意の水溶性物質である。これらに限定されないがアガロースおよび/またはアルギン酸などのヒドロゲル物質に細胞を封入するのに、より穏やかな、したがって害の少ない製造条件を用いることが有利である。特定のしかし非限定的な例として、アルギン酸は褐藻類およびいくつかの細菌から抽出される細胞内基質多糖である。本発明者らの独特な改変マイクロキャリアにおける細胞の生存度を改善するため、本発明者らは、エンドトキシンを含まない供給源に由来するアルギン酸を選択した。アルギン酸マイクロキャリア上での細胞培養に関する当業者でさえ、マイクロキャリア上での細胞接着、健康、増殖、および生存度を改善するために、エンドトキシンをわずかに含むかまたは含まないアルギン酸を使用するという本発明者らの開示から恩恵を受けると考えられる。アルギン酸は、Sigma(ミズーリ州、セントルイス)またはPronova Biomedical(ノルウェー、オスロ)から入手でき、エンドトキシンを含まない水を用いて、0.1重量%アルギン酸ナトリウム〜10%アルギン酸ナトリウムという範囲で水溶液中に混合する。しかし、マイクロキャリアは、アルギン酸濃度が0.8%〜1.2%の場合に、その溶液の粘性から製造がより容易となる。エンドトキシンはSigmaのLimulus-lysateアッセイキットを用いて測定し、5000エンドトキシン単位/mL未満の値を有するアルギン酸溶液のみを、外部に細胞を有するマイクロキャリアの製造に使用した。細胞を培養するための理想的な範囲は、500エンドトキシン単位/mL未満のエンドトキシンレベルであった。アルギン酸を架橋させるため、アルギン酸溶液を2〜4重量%アルギン酸プロピレングリコール(PGA)溶液(Kelcoloid(商標)D;ISP Alginante、カリフォルニア州、サンディエゴ)と混合する[Kwon et al.(7)]。この任意の手順は、0重量%〜10重量%のPGA濃度で行うことができる。さらに、アルギン酸は、マンヌロン酸もしくはグルロン酸またはマンヌロン酸もしくはグルロン酸の混合物の領域を有する生物供給源から作製される。細胞の健康、増殖、および生存度を最適化するこれらの物質の比率を有する供給源が選択される。マンヌロン酸とグルロン酸の比率は、Klock(17)の方法に従って445 nmでの放射によって測定される。カルシウムと架橋するための好ましい比率は90%またはそれ以上のマンヌロン酸であるが、細胞増殖はマンヌロン酸とグルロン酸の任意の比率で認められる。さらなる添加物には、最大で20容量%までのガラス泡(3M Corporaion、ミネソタ州、メープルウッド)、タンパク質泡、または気泡が含まれる。しかし本発明者らは、1%〜5%のガラス泡により理想の密度を有するマイクロキャリアが得られ、それが手頃に製造できることを見い出した。容器を激しく振盪して小さい不均一な気泡の形態で空気を捕捉することにより、またはバブラー(圧縮された空気または気体がシンター化(scintered)金属製装置に注入され、この装置が気体を均一な気泡に分割する)を使用することにより、気(またはヘリウムなどの他の不活性気体)泡を溶液中に取り込むことができる。生じるマイクロキャリアに常磁性または強磁性特性を与えるため、常磁性または強磁性粒子(Spherotech、イリノイ州、リバティービル)もまた、この時点で溶液中に含めることができる。マイクロキャリアの内積の最大で75%までを常磁性または強磁性粒子で満たすことができるが、理想的な比率は、250 umマイクロキャリア当たり1〜1000粒子である。本願の他所に記載する蛍光分子などの指標も、必要に応じてこの時点で添加することができる。
【0025】
所望するマイクロキャリアの特定の性質に基づいて、マイクロキャリア溶液の内容物を決定すると、ゆっくりと撹拌している1.5%(0.135 M)塩化カルシウム溶液にアルギン酸/PGA添加物溶液を1滴ずつ添加する段階を含む様々な方法により、マイクロキャリアを形成する。市販の微量液滴生成機を使用してもよい。生細胞を混合物に添加してからマイクロキャリアを作製し、内部細胞封入培養を行うこと、または類似のもしくは異なる細胞を用いてマイクロキャリアの内部および外部で細胞を共培養することができる。生細胞を封入することを意図する場合には、生理的緩衝液を用いてアルギン酸溶液を調整する。次いで、洗浄してからマイクロキャリアを細胞培養に使用する。1%ゼラチン溶液(例えば、地域の食料品店で得られる無香料Knoxゼラチン)を任意の量のマイクロキャリア懸濁液に添加し、穏やかに混合し、次いで新しい緩衝液を繰り返し交換してビーズを洗浄することによって、マイクロキャリアをゼラチンでコーティングすることも可能である。高濃度のゼラチンはより高い剛性を与えるため、本発明者らは最大で10%までのゼラチンを使用したが、細胞接着には0.5%〜3%が理想的である。細胞接着を増強する分子、細胞を形質転換し得る分子(DNA、RNA)、および本願の他所に記載する指標を含む添加物が、ゼラチン溶液中に添加される。Kwon et al(7)によって記載される通りに2倍量の0.2 M NaOHを添加して、アルギン酸にアシル基転移することにより、ゼラチンは架橋して、より大きな剛性を有するマイクロキャリアを生じ得る。マイクロキャリアの電荷および/または多孔性を増加または減少させるため、これに限定されないがポリ-L-リジン(陽イオン性アミノ酸ポリマー)(18)などの種々の分子が取り込まれる。本発明は、物理的力に対するマイクロキャリアの応答を制御する物質の取り込みについて開示し、マイクロキャリアの透過性、多孔性、および強度を制御する物質の使用に改良を加える。
【0026】
カルシウム(Ca2+)などの二価カチオンを添加することで、アルギン酸グルロン分子、よってマイクロキャリアは結合され、剛性、よって強度を生じる。バリウム(Ba2+)を用いることで、グルロン酸およびマヌロン酸はいずれも相互に結合し、そのためStrand(19)によれば、Ba2+を取り込むことはより強いマイクロキャリア特性を達成するために重要である。マイクロキャリアの剛性を増大させるために選択されたカチオンを使用するというStrandによって開示される技術に加えて、本発明者らは、カルシウム濃度の変化は測定を妨げると同時に、マイクロキャリアの完全性を変化させることから、カルシウム流入および濃度を試験する生化学アッセイ法でのCa2+の使用を避けるため、二価分子結合としてBa2+を使用するという新規技術を開示する。
【0027】
マイクロキャリアは、アルギン酸溶液および添加物懸濁液の層流噴流分裂能を備えた電磁気または圧電駆動ノズルの使用を含む、種々の方法を用いて製造される。市販のカプセル化システムの使用は、マイクロキャリアの大きさに影響する物理的パラメータ(例えば、流束比率、振動数、および振幅)の制御を可能にするのに望ましい。または、素早く撹拌している、油と二価陽イオンまたは架橋剤を含む緩衝液の乳濁液に、アルギン酸溶液を添加する。マイクロキャリアは乳濁液中で自発的に微小の球状形態を形成し、乳濁液緩衝液の密度よりも高い密度を有する場合には、撹拌を緩めるかまたは停止した時点で油の中から外へと沈殿する。マイクロキャリアが浮力密度を有して作製される場合には、遠心分離し表面から吸引することにより、またはマイクロキャリアが常磁性粒子を含む場合にはこれを容器の側面に引き寄せることによって、乳濁液から取り出すことができる。
【0028】
マイクロキャリアの使用を容易にするための改変特性の使用
増殖培地中に懸濁された標準的なマイクロキャリア上で細胞を増殖させることで、栄養素、空気、または酸素、および二酸化炭素をより用いやすくなるが、配向性が重力に関してランダムであることから、制御不可能な剪断応力に起因して潜在的損傷が増大する。本発明の改変マイクロキャリアに付加された利点は、撹拌培養によって与えられるストレスまたは不都合なしに、穏やかな増殖条件を提供する点にある。本改変マイクロキャリアによって、各マイクロキャリアの特定の配向性が外部から制御されるようになる。さらに、次の手順のために、改変マイクロキャリアを容易にかつ迅速に回収することができる。細胞を増殖させるために用いられ得るマイクロキャリアの量は、容器中の培養液の量によってのみ制限される。したがって、開示する改変マイクロキャリアを使用することで、微細加工技術(20)による微小規模培養での使用から、1リットルを超える量、例えば500リットルでの培養系までの、培養の拡張が可能になる。
【0029】
増殖過程の1つのチャイニーズハムスター卵巣細胞によって部分的に囲まれるようになる、約5 umの改変マイクロキャリアの作製に成功した。この方法により、細胞がマイクロチャネル液体流内を移動しながら、または平面、三次元表面、もしくはアレイ上に一時的にもしくは永続的に固定化されたまま、足場表面上に
留まることが可能になる。
【0030】
さらに本発明は、微小規模においてのみ本特許出願に記載した手順と同じ手順の多くを行うための、微小磁石、微小圧力系、および微小検出器などの微小規模成分の使用について開示する。本発明の重要な利点は、改変マイクロキャリアが応答する圧力または磁性を用いて、マイクロチャネルアレイ内の細胞を操作する能力にある。改変マイクロキャリアの懸濁培養液を含む本発明は生産性を増大し、控えめに言って平底ディッシュの400倍およスピナーフラスコの2倍を超える生産性が期待できる。
【0031】
細胞が所望のコンフルエンスレベル、例えばマイクロキャリアの80%被覆度に到達すると、多くの場合、細胞を解析に用いるためにマイクロキャリアから取り外す必要がある。足場表面から生細胞を取り外す最も一般的な方法は、細胞がマイクロキャリア上に固定するために用いるタンパク質のいくつかを消化するタンパク質分解性酵素(トリプシン)の使用を介する。トリプシン処理は細胞から多くの重要な細胞表面タンパク質を剥ぎ取るばかりでなく、細胞に一時的なショックをもたらし、その結果として多くの場合、マイクロキャリアから無傷で遊離される細胞の収率は低くなる。また細胞は、マイクロキャリアから遊離させるために、機械的ショック(溶液中でのマイクロキャリアの急速な減速によって与えられるエネルギーなど)を必要とし得る。マイクロキャリアの表面にくぼみがあればあるほど、細胞が表面から遊離されるまたは剥離される可能性は低い。マイクロキャリアから細胞を遊離する特定の技術についてはMundt(21)が取り組んでおり、彼は、マイクロキャリアから細胞を遊離させるためのトリプシンの使用について開示した。本マイクロキャリアはKwon(7)によって記載されるように自発的に分解するよう改変されており、したがって足場表面から細胞を遊離させるための非特異的酵素の使用に関する課題が回避されるため、本発明にはこれらの問題がない。したがって本発明は、自動化と協調して働き、これらの仕事を手動で行う必要性のない、自発的に分解する改変マイクロキャリアの使用を包含することを意図する。さらに、自動化工程内の特定の時点および位置でマイクロキャリアを分解する能力は、これまでに記載されていない。例えば、改変マイクロキャリアは、セルソーターまたは蛍光活性化細胞スキャナーで解析する前に液体流中に移す過程で、部分的にまたは完全に解離することができる。本発明者らの改変マイクロキャリアは、マイクロキャリアの特性の外部制御を使用することで、より迅速に解離することが可能である。例えば(これらに限定されないが)、外部から加えられた周期的に振動する磁場のために迅速に運動している磁性または常磁性粒子によって付与される内部運動エネルギーの増加により、溶液中のカルシウムを重合閾値未満に減少させた場合に、重合化アルギン酸は迅速に解離し得る。常磁性粒子および/またはガラス泡を含むマイクロキャリアを分解することで、これらの物質を回収し再利用すること、またはそれらが下流の工程に混入するもしくは悪影響を及ぼすのを防ぐことができる。
【0032】
改変マイクロキャリアの別の利点は、従来の使い捨てディッシュ、ピペット、培養液、インキュベーター、細胞分注器、振盪機、撹拌機、プレートシーラー、および解析機器を用いて、従来の細胞培養設備において使用することができる点である。
【0033】
増殖培地中での運動の付与
マイクロキャリアの撹拌は、伝統的に回転羽根を用いて行われてきた(上記を参照のこと)。しかし、回転羽根を用いずに増殖培地を撹拌するのには多くの利点が存在する。本発明は、改変マイクロキャリアの使用を介して増殖する生細胞を含む増殖培地に運動エネルギーを与える別のアプローチを提供する。増殖培地に運動エネルギーを与えることは、栄養素の分配を保証し、全細胞に対する良好なガス交換を保証し、さらに改変マイクロキャリアの凝集を妨げる。本発明は、個々にまたは任意の組み合わせで使用することができる、増殖培地に運動エネルギーを与える多くの方法を提供する。例えば、運動エネルギーは、増殖培地中に温度勾配を誘導する熱源を用いる形式であってよい。温度勾配は増殖培地中に動きを与え、弱く加熱した培地は培養容器中で上昇し、より高度に冷却した培地は培養容器中で沈む傾向があり、したがって改変マイクロキャリアの運動が生じる。温度勾配は運動エネルギーを誘導するのに十分であるが、それぞれ凍結保護されているかまたは熱的に安定化されていない限り、一般に33°F〜105°Fを許容し得る増殖細胞に害を与えない。外界との温度差1度〜外界よりも40°F高い温度を用いて、対流を誘導することができる。温度勾配はサーボ制御装置で制御することができ、サーボ制御装置は最適な細胞増殖をもたらす温度まで培養液を温める熱源として実際に機能する。
【0034】
圧力をマイクロキャリアに加えて、2つの目的を達成することも可能である。1つめの目的は、マイクロキャリア内またはマイクロキャリア上で増殖している細胞を、生物中で増殖している細胞が感じる圧力特性と類似の圧力特性に供することである。したがって、1分当たり5拍動から最大で1分当たり500拍動までといったような自然状態で見られる速度で、脈圧または時間を通じての差圧をマイクロキャリアに加えることができる。圧力を加える2つめの目的は、マイクロキャリアに取り込まれたガス気泡を圧縮して、浮力を増強することである。ガス気泡含有マイクロキャリアを保持している容器全体を圧縮することによって、マイクロキャリアの密度を増大させることができ、それによってマイクロキャリアは加圧下で沈み、減圧下で上昇する。外気圧から多様な大気までの圧力を用いることができる。
【0035】
マイクロキャリア浮力の機械的調節
本発明の別の態様では、培養容器またはバイオリアクター内の運動エネルギーを増大させるために、粒子浮力を用いる。例えば、圧縮性ガス気泡から構成されるまたは圧縮性ガス気泡を含む粒子を導入する。種々の天然または合成弾性材料を用いて、ガス気泡を捕捉することができる。気体は液体よりも圧縮性が高いため、外部で生成されるエネルギー源、温度または圧力の使用による気体の圧縮は、粒子に様々な浮力を与えることになる。様々な浮力を示す粒子を使用して、細胞の増殖または維持を支持するマイクロキャリアを含む増殖培地を撹拌することができ、または細胞を含むマイクロキャリア内またはマイクロキャリア上に圧縮性気泡を導入することができる。
【0036】
外部磁場の調節
磁場を用いて、細胞培養液などの液体中に運動エネルギーを誘導することができる。大きな磁束は任意の液体中に、微細な、そして最終的には巨視的なレベルで運動を誘導する。または、生成される必要のある磁場の量を制限するために、1つの態様において本発明は、その運動が外部で生成される磁場によって誘導され得る強磁性または常磁性粒子のマイクロキャリア内(またはマイクロキャリア上)への導入を開示する。強磁性粒子は恒常的に磁場を示し、一方、常磁性粒子は磁場に曝露された場合にのみ磁場を示す。粒子の運動は液体中に運動を誘導し、ひいては細胞の増殖を支持しているマイクロキャリアの懸濁状態を維持する。常磁性粒子は、マイクロキャリアの内部または表面上で増殖する細胞の増殖または維持を支持しているマイクロキャリアの表面に結合されるか、またはマイクロキャリアの内部に取り付けられ、本発明の目的内の改変マイクロキャリアの例を生じ得る。強磁性物質または磁場に応答する任意の物質は、マイクロキャリアの製造工程において形成された粒子を添加することにより、もしくは溶液から物質を沈殿させることにより、またはマイクロキャリアが製造されてからコーティングとして導入することにより、マイクロキャリア内またはマイクロキャリア上に取り付けることができる。既知の磁性材料には、これらに限定されないが、クロム、鉄、ニッケル、およびコバルト、ならびにそれらの酸化物および誘導体が含まれる。これらの物質は、光学的特性を妨げないよう微粉化したナノ粒子中に、またはマイクロキャリアの周囲の光学的特性が保存されるように大きなコアとして、0〜75重量%添加することができる。
【0037】
磁場は、細胞培養容器の上部、下部、または側面に設置される永久磁石または電磁石を用いて調節することができる。磁石の配置は、マイクロキャリアの所望される運動に依存することになる。例えば(これらに限定されないが)、改変マイクロキャリアを容器の底に導いて培地を吸引除去できるようにする、またはマイクロキャリアを培地の表面に導いて回収できるようにするなど(図5および7を参照されたい)、容器内で磁場はマイクロキャリアの特定の配向性が所望される場合には、磁場を連続して加えることができる。磁場は、様々な時間的プロファイルまたは強度プロファイルで加えることが可能である。例えば(これらに限定されないが)、磁場を送ることはマイクロキャリアを懸濁状態に維持するのに有用であり(図5〜10を参照のこと)、電磁石によって生成される熱量または永久磁石の機械的運動による量を制限する。深い侵入強度を有する場がマイクロキャリアの選択された運動または配向性を与え得り、それと同時に侵入強度の小さいより強い場を用いてマイクロキャリアを選択された配向性に維持し得るように、複合型の磁場を加えることも可能である。
【0038】
図12は1つの態様を示しており、縦棒は容器の周囲で輪状に配列された棒磁石を示す。磁石をコンピューター制御で活性化することにより、およびその極性を変化させることによって、撹拌、培地交換、細胞接着操作、または細胞回収のために、多くの異なるマイクロキャリア軌道を生じることができる。
【0039】
上記の方法を組み合わせて用いることで、細胞種および必要とされる増殖条件に応じて、細胞の増殖または維持を最適化することができる。例えば1つの態様において本発明は、同じマイクロキャリア内に同時に導入された常磁性粒子および気泡を使用して、常磁性粒子および気泡の両方がマイクロ粒子に与える特性を併せもつ改変マイクロキャリアを取得した。常磁性粒子と気泡のこの組み合わせにより、浮力を調節する能力、および磁場を用いて撹拌し、バイオリアクター中の磁性粒子の運動および/または配向性を誘導する能力が付与される。したがって、改変マイクロキャリアは、運動エネルギー、密度、外部から加えられる磁場に対する応答、および配向性に応じて、それぞれの細胞種の特定の必要性に適合するように製造することができる。例えば、浮力特性を有する改変マイクロキャリアが培養容器の底に誘引されて、最初の細胞接着ができるように、細胞および改変マイクロキャリアを含む培養液に外部磁場を加える。次いで、磁場を除去して、増殖細胞が接着した浮揚性改変マイクロキャリアを、増殖培地中に上昇させることができる。
【0040】
ハイスループットシステム(HTS)における細胞を備えた改変マイクロキャリアの直接的使用
本発明の改変マイクロキャリアが細胞を備えると、それらを生化学的または生理学的手順において直接使用することができる。固有の特性または自動化を用いた結果として、改変マイクロキャリアを特定の位置に操作できる能力により、これらを使用して、その後の研究または開発手順で使用することができる。例えば、それらの浮力および/または熱対流を使用して、改変マイクロキャリアを細胞培養容器またはバイオリアクターの上部に移動させることで、自動ピペットまたは他の細胞回収手段が使用できるようになる。または、ピペットで吸引するために、外部から磁場を加えることにより、または低密度を誘導することにより、改変マイクロキャリアをバイオリアクターの上部に集めることができる。本発明の別の態様は、その後の手順で使用するために、マイクロキャリアを濃縮して液体流中に排出できるように、マイクロキャリアをバイオリアクター内の液体引き込み口に導くことである。
【0041】
機能化マイクロキャリア
細胞培養実験室で増殖させた培養細胞における生化学的手順または解析は、研究、製品開発、および創薬を含めた様々な用途を有する。通常、細胞の個々の細胞小器官または細胞によって産生される生体分子を研究できるように、細胞は消化されるかまたは別の方法で解離され、分画される必要がある。最近、細胞全体を研究する能力により、「ハイコンテント」発見またスクリーニングがもたらされた。新たな細胞培養プレートが開発され、表面に接着している細胞を、細胞内蛍光レポーター分子によって試験することが可能になった。しかし、平らなディッシュ上で増殖した細胞は、インサイチューの細胞と同様の表現型も挙動も有していない。一方、マイクロキャリア上で増殖および維持した細胞は、極性化することが示されており、インサイチュー対応物とより同等な表現型を示し、さらに細胞産物をより大量に産生する。懸濁状態の細胞を研究するために、セルソーターまたは蛍光活性化細胞分類(FACS)機器が開発された。懸濁細胞は、大きさ、蛍光、および/または電気的特性を定量化するために、光学的検出器の前の細い液体流中を移動する。残念なことに、足場依存性細胞は固定されない環境中に置かれると、多くの場合に負の特性を表す。今回製造された改変マイクロキャリアは十分に小さく、そのため個々の細胞がマイクロキャリア基質によって支持される。したがって、本発明の改変マイクロキャリアは、細胞計数機器および分類機器に有用である。改変マイクロキャリアの常磁性特性および浮力特性は、液体環境から細胞を分離する、細胞を分類する、または刺激に対する反応を測定する手段としても有用である。
【0042】
従来の非改変マイクロキャリアまたは本明細書に記載の改変マイクロキャリアへの機能強化とは、刺激を報告するおよび/または刺激に応答するリガンドおよびまたは結合分子を含むように、マイクロキャリアを機能化することである。例えば、収縮タンパク質を含むマイクロキャリアは、細胞からの刺激または細胞培養バイオリアクター制御装置に応答して収縮するように、およびその浮力に変化を生じるように誘導することができる。リガンド、レポーター、または応答エレメントは、マイクロキャリアの表面および/または内部に共有結合または非共有結合させることができる。レポーターは、例えばこれに限定されないがワイヤレスモートといった電磁法を介して報告する、マイクロキャリア内またはマイクロキャリア上に取り込まれた微小(またはナノ)電気的エレメントまたは微小(またはナノ)機械的エレメントからなってよい。リガンドを用いて、マイクロキャリアの任意の状況(外部、内部、またはその両方)で増殖した細胞から反応を引き起こすことができる。マイクロキャリアは、培養液中の変化、または細胞から搬出もしくは分泌される物質によって生じる変化の結果として、変化をその環境に報告できるように、レポーターを用いて機能化することができる。1つの態様において、レポーターは反応の存在および進行または刺激に対する応答を信号で伝え得る。多くの発光レポーターは、蛍光分子および生物発光分子の形態で使用できる。レポーターの選択は、何を測定するかによって変わる。例えば1つの態様では、細胞内ナトリウムを報告するように、ナトリウムに対するナトリウム感受性レポーターを細胞の内部に導入することができる。同様に、細胞からマイクロキャリアの表面上の足場表面に、またはマイクロキャリア内に排出されるナトリウムが報告され得るように、ナトリウム感受性色素をマイクロキャリアに取り込むことができる。レポーターは、マイクロキャリアに/マイクロキャリア中に直接連結された、または最初にマイクロキャリアに/マイクロキャリア中に連結した官能基に連結された有機分子、無機分子、および単一または複数の分子であってよい。報告または応答のための本発明者らのマイクロキャリア機能化工程は、本発明者らのマイクロキャリアが関心対象の分子を放出する生細胞を支持するように設計されている点で、記載されている先行技術(15)とは異なる。さらに本発明は、例えば1つの態様における収縮エレメントのような、マイクロキャリア環境に応答するおよびマイクロキャリア環境を変化させる分子の使用について開示する。
【0043】
改変マイクロキャリアは、製薬会社および基礎研究者にとって興味深い多くのアッセイ法に使用することができる。例えば、癌細胞が転移する能力を決定すること、および細胞が外来組織に結合し、貫通し、さらに侵入するのに用いる機構を決定することへの大きな関心が存在する。細胞遊走および/または転移アッセイ法は、新規抗癌剤を見い出すもしくは精緻化するのに、または組織発生においていかにして動脈が形成されるかを研究するのに有用である。本明細書に開示する改変マイクロキャリアは、生化学的アッセイ法に基づいて細胞遊走または浸潤を測定するよう設計されている。1つの態様において、マイクロキャリア内への癌細胞の分裂は、細胞数または細胞分裂の結果として発せられるシグナルを測定することによってモニターすることができる。例えば、この態様では、細胞表面タンパク質に感受性のあるレポーター分子を重合して、マイクロキャリアのコアを作製することができる。マイクロキャリアの表面上で増殖している細胞はコアに向かって貫通していくので、蛍光シグナル伝達分子の増加または減少を測定する。したがって、シグナルの大きさは、細胞が遊走または浸潤する能力および活性と相関する。別の局面においては、マイクロキャリアを、マイクロキャリア上で増殖している細胞が浸潤し得る、基底膜または他の生物学的障壁と似ている物質でコーティングする。細胞をマイクロキャリアの表面上および/または内部で共培養し、細胞の外層からマイクロキャリアの中心に向かう浸潤を測定するか、またはマイクロキャリアのコアから離れて外側に浸潤する細胞を観察および測定する。または、浸潤または遊走する可能性のある細胞を含むマイクロキャリアを、別のマイクロキャリア上で増殖している他の細胞の方に誘引し(磁場または浮力を用いて)、一方のマイクロキャリアから他方のマイクロキャリアへの浸潤または遊走を観察および測定する。マイクロキャリアはまた、重力、浮力、温度勾配、および/または磁性を用いて、例えばさらなる態様における従来の培養フラスコの表面などの、従来の足場依存的表面上で増殖している細胞の方に誘引することもできる。マイクロキャリアが規定の距離内に入ると、表面からマイクロキャリアへ、またはマイクロキャリアから表面への細胞遊走または浸潤を測定する。
【0044】
細胞生理または生化学に及ぼす剪断応力の影響は、本発明の改変マイクロキャリアを用いて測定される。回転しているマイクロキャリアは、その表面上の細胞に剪断応力を与えることになる(図11を参照のこと)。したがって、細胞生理または生化学の変化は、マイクロキャリア内部または外部の運動エネルギーを変化させ得る、外部から加えた磁場に応じて測定することができ、例えばこれは、1つの態様においては、使用者がプログラム化できる速度、向き、振幅のプロファイル、および時間的プロファイル(パルス波、傾斜波、方形波、および使用者が規定できる他のプロファイルなど)に準じた回転である。
【0045】
本発明の改変マイクロキャリアは、血液脳関門を模倣するのに有用である。脳は、活性薬理学的化合物を送達することが困難な場所である。血液脳関門では、いかにしてこの関門が脳と循環血液を区別するのかを決定するための研究が活発に行われている。したがって、本発明の改変マイクロキャリアおよび培養系は、血液脳関門を模倣し得る方法において医薬品発見のモデルを提供し、その研究および血液脳関門のインビトロモデルの開発を可能にする。この態様では、脳血管内皮細胞を改変マイクロキャリア上で培養し、このマイクロキャリアは、培養液中の選択された化合物のどれぐらいが細胞および/もしくはマイクロキャリアコアの内部に接近するのか、またはマイクロキャリア内の化合物のどれぐらいが細胞の内部に接近するのか、もしくはレポーター層もしくは培地へ向かってマイクロキャリア細胞層の外部へ搬出されるのかを決定するのに有用である。このモデルは、改変マイクロキャリアを使用して、任意の実験において容易に活用することができる。
【0046】
さらなる態様においては、改変マイクロキャリアは、(これらに限定されないが)臍帯血、脂肪組織、胚、および末梢循環などの様々な供給源に由来する幹細胞の接着表面として用いられる。幹細胞の維持または子孫細胞への分化を促進するためには、擬似微小重力環境が有利である。
【0047】
バイオリアクター
現在、ヒトでの使用に関して100を超えるバイオ医薬品がFDAにより認可されているが、これは1000億ドルを超える市場を生み出し、その年間成長率は100%を超える。バイオリアクターまたは培養容器は、細胞増殖に最適化された条件下でタンパク質を生産するために用いられる(22〜31)。バイオリアクター内で細胞が最大密度に達すると、栄養素および酸素に対する競合により細胞死が起こり、それによってこの系の効率が悪くなる。大部分のバイオ技術者は、バイオリアクターは完成に到達したと考えており、したがって、より効率的で最適な工程を求めている。ホローファイバーバイオリアクター(または灌流に基づくシステム)によりタンパク質生産が改善されたが、これは関心対象のタンパク質を分泌する細胞に対してのみであった。ホローファイバーシステムは、培養物が十分成長していくに連れて死細胞の産物で詰まってしまい、そのため多くのバッチシステムと比較して収率は低くなる。このように、これまで、いかなる技術も最適な細胞生存度およびタンパク質生産性をもたらしていない。
【0048】
関心対象のタンパク質を生産するためには、120日もの長い期間バイオリアクターを運転する。そのため、最適なリアクター条件(pH、栄養素レベル、温度、溶解ガス濃度)をモニターし維持する上で、かなり多くの労力がかかる。一般に、細胞がバイオリアクターから取り出されることはない。この工程が続く間、これらの大きなバッチは、栄養素を添加するかまたは条件を調節することによって維持される。バイオリアクターから液体が採取され、解析用に実験室に送られるため、モニタリングのずれが生じる。理想的には、細胞増殖および代謝のモニタリングは、細胞レベルでリアルタイムで行われるべきである。
【0049】
本発明の自動細胞培養システムは本明細書に記載の改変マイクロキャリアを含み、このマイクロキャリアは、各改変マイクロキャリアがその表面上(または内部)で増殖している細胞の健康および増殖状態を報告することを可能にする、構造内に付与された指標を有する。指標を使用することで、閉ループ制御システムを各バイオリアクターモジュールに導入することができる。本発明者らの態様において、本発明の改変マイクロキャリアは、マイクロキャリアの基質自体に指標を取り込むことによって、細胞レベルで微視的状態を報告するように改変される。例えば、そのような指標は、これらに限定されないがpHの蛍光指標であってよく、酸素、二酸化炭素、グルコース、尿素、重炭酸、乳酸、およびアンモニアの指標を各マイクロキャリアに取り込み、バイオリアクターまたは培養容器を介してこれらをモニターすることができる。または、従来の流液解析システムを用いて培養液の成分をモニターすることができる。
【0050】
本発明のバイオリアクターは、マイクロキャリアを動かすおよび撹拌するために、改変マイクロキャリアが撹拌、回転、過熱、冷却、ガス供給(特有のガス混合物で)、加圧される、磁場(これらに限定されないが近赤外線〜遠紫外線を含む、電磁スペクトルの任意の部分が一定または異なる)に曝露される能力を十分に使用している。
【0051】
本発明の別の態様は、使い捨て細胞培養容器を直立(または垂直)状態でまたは横になった(または平行)状態で維持する、単一のまたは複数の開口部または穴を含む、改変マイクロキャリアに基づくバイオリアクターである。例えばスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)に由来するSF9昆虫細胞などの非接着細胞の懸濁細胞培養液中に運動エネルギーの増加をもたらすため、開口部または穴の1つを介して、バイオリアクター内に含まれる細胞培養液中にマイクロキャリアを導入することができる。バイオリアクターはまた、マイクロキャリアが応答する少なくとも1つの物理的力を生じるための、少なくとも1つの供給源を含む。
【0052】
さらなる態様において、上記のバイオリアクターは、制御システムと称する、増殖培地中のマイクロキャリアを浮揚させるおよび操作するのに必要なさらなる1つまたは複数のエレメントを含む。制御システムは、手動で操作する機器からなってよい。制御システムを改善して、自動で作動する機械システムをこれに含めることも可能である。制御システムをさらに改善して、これにソフトウェア、および完全自動システムの作動を可能にする制御電子回路を含めることも可能である。例えば、機器および制御電子回路およびソフトウェアは、温度勾配によってマイクロキャリアを浮揚させる熱エレメントを提供する(温度制御システム)。バイオリアクターは、マイクロキャリアを動かす、回転させる、および/または静止状態に維持する磁場を提供するための機器、制御電子回路、およびソフトウェアを含む(磁気制御システム)。ロボット装置、サーボ機構、および他の手段を用いて永久磁石を動かすことにより、磁場を変えることができる。または、ソフトウェア制御下の固定型または可動性電磁石を用いて、マイクロキャリアを操作することもできる。機器および制御電子回路およびソフトウェアは、圧力トランスデューサがバイオリアクターに対する圧力を変えて、マイクロキャリア内またはマイクロキャリア上に含まれる気体の圧縮を介してマイクロキャリア密度の変化をもたらす手段を提供する(圧力制御システム)。時間的または特定の圧力勾配またはプロファイルを容器に与えて、生物学的剪断応力または圧縮応力を模倣し、細胞応答を研究すること、または特定のタンパク質を産生するかもしくは選択された挙動を示す細胞を誘導することができる。これらの制御システムはそれぞれ単一のバイオリアクターを運転することができ、または単一の制御システムが複数のバイオリアクターにその作用を伝えることができる。または、複数の制御システムが複数の自動バイオリアクターを運転し得る。バイオリアクターの能力は、単にバイオリアクターの大きさまたは数を増すことによって増大させることができる。
【0053】
マイクロキャリアの配向性および/または運動を操作するための磁場の使用は、Wolf(32)の開示する、マイクロキャリアに対する細胞の接着を促進するための電磁場の使用とは異なる。前者の場合、本発明者らの磁場はマイクロキャリアの運動エネルギーの変化を付与し、後者の場合、Wolfはマイクロキャリアに対する細胞の接着を改善している。本発明は1つの態様において、強磁性マイクロキャリアを懸濁状態に維持するのに適した線状磁場を生成するために、バイオリアクターに対して直角に配置された個々に直線的に間隔をあけた電磁石コイルを用いる(図6を参照のこと)。磁束および磁力線は、電流、コイル半径、コイルの巻数、線の直径、コイル数、およびコイルの間隔を制御することによって変更することができる。電磁気アプローチを用いるためには、電流は0.1 ampから100 ampまで様々であってよい。巻数は、1から、細胞培養液体カラムを囲む空間に適合するできるだけ多くの巻数まで様々であってよい。ただ1つのコイルないしは何百ものコイルが15 cm長の範囲に入るよう、間隔も変動し得る。コイル直径は、細胞培養チューブの直径と同じぐらい小さいものから、磁束がなおマイクロキャリアに運動を付与し得るできるだけ大きいのものまでであってよい。常磁性マイクロキャリアを制御するための磁気コイルの使用は、以前に開示されている(33)。しかし彼らは、細胞の培養ではなく廃液の精製ができるよう、酵素を含むマイクロキャリアを動いている場において静止状態に維持するために、この方法を用いることを開示している。
【0054】
自動化
細胞培養工程は、誤差率が高く、工程を管理する人による汚染が置きやすい、退屈で大きな労働力を要する仕事である。多くの細胞培養物および細胞培養設備は、一般に細胞培養を行う個体に由来するマイコプラズマ、菌類、酵母、および他の生物で汚染される。細胞培養は、研究者および技術者が、無菌環境での培地添加および生細胞の継代培養において費やす数え切れないほどの時間を伴う。人件費に加えて、細胞培養は、無菌のプラスチックピペット、培養ディッシュ、培養ボトル、および他の関連する器具を大量に消費する費用のかかる工程である。
【0055】
これまで手動で行われていた段階(37)を自動化するために、ロボットが用いられている(34〜36)。例えば、従来の細胞培養を行う際には、まず最初に-80℃〜-150℃で維持していた凍結保存液から細胞を融解する。融解した保存液を、12 mm x 75 mmの無菌使い捨て培養フラスコ(多くの場合、T75と称される)中の細胞培養液に添加する。フラスコをインキュベーターに入れて、フラスコの表面に細胞を接着させ、分裂および増殖を開始させる。増殖速度および細胞生存度を維持するためには、継続して培地を与えること(例えば、週に3回)が必要である。培地の添加は、培養フラスコ内に挿入した使い捨て無菌プラスチックピペットを用いて、消費した培地を慎重に吸引する段階を含む。次いで、増殖している細胞を妨げないように、温めた新鮮な培地を慎重に導入する。細胞が適切なコンフルエンスの程度に達した時点で、使用のために、細胞をフラスコから除去することができる。細胞の除去は、機械的または酵素的方法によってこすり剥がすかまたは剥離する段階を含む。いずれの場合にも、これらの段階において細胞は物理的に損傷を受けるか、または細胞表面タンパク質が剥離される。細胞を繁殖させるためには、細胞は一般に酵素によりディッシュから剥離し、長期保存のために凍結する。
【0056】
本発明は、細胞を増殖させるためのマイクロキャリアまたは改変および/もしくは機能化マイクロキャリア、これらのマイクロキャリアを含みその使用を支持するバイオリアクター、ならびにマイクロキャリア、液体、気体、およびバイオリアクター成分の操作を提供する自動化システムの組み合わせを用いた細胞培養の自動化について開示する。自動化システムはまた、自動細胞培養工程を管理するため、およびシステムの進行に関するデータを提供するための工程制御ソフトウェアを備えたコンピュータシステムを含み得る。各工程のフィードバック制御が維持できるように、複数のセンサーを用いて、自動化システムの働きおよび環境の状態をモニターする。バイオリアクターはマイクロキャリアの特有の性質を必要とし、自動化の設定はバイオリアクターおよびマイクロキャリアの特性に依存する。自動化を用いることで、播種、増殖、培地添加、分割、およびアッセイ法という細胞培養に関連する手動段階の多くを縮小または排除することができ、その結果汚染が減少する。さらに、マイクロキャリアを用いた場合には細胞の剥離も酵素消化も必要ではないため、創薬などの下流の工程により健康な細胞を直接導入することができる。タンパク質生産のための細胞の連続培養もまた、自動化システムによって支持される。
【0057】
自動化システムは、マイクロキャリアまたはマイクロキャリア作製装置、バイオリアクター、任意のモニタリングシステム、任意の制御システム、液体を動かすための方法、培養容器、および使い捨て培養器を含む。機械装置は、本発明のマイクロキャリアの使用を支持する耐久性または使い捨て培養器と通じる手段を提供する。1つの態様においては、細胞培養液を保持する少なくとも1つのカップ状のプラスチック培養容器によって、上部からの液体処理装置によるアクセスが可能になる。自動化システムが無菌環境内に含まれる場合、容器はふたなし容器として維持され得る。無菌性は、(これらに限定されないが)生存している微生物、花粉、および胞子、空中浮遊細菌、菌類、ならびにウイルスを死滅させる紫外線の使用、または特定の大きさを超える粒子をすべて除去するために装備されるHEPAフィルターの使用を含む従来法により達成され得る。または、細胞培養容器は、閉鎖を維持しつつ用具の出入りを可能にする、セプタムにあるような開口部または穴が装備されている以外は、閉じていてもよい。セプタムとは、培養容器に物質を添加するまたは培養容器から物質を除去するための引き込み口として機能する、培養容器に組み込まれた装置である。セプタムは、硬いピペットが貫通し得るピアシング可能なゴムキャップで蓋をされ得る。ピペットまたはシリンジ針を取り除くと、ゴムキャップは再び閉じる。培養容器は硬質で開口端からのガス交換のみを可能にするものであってよく、またはCO2およびO2などの気体の自由な交換を可能にするよう改変された材料から構築されてもよい。1つの態様においては、優れたガス交換を有するが、液体の交換も損失も起こさないポリフッ化培養バッグ(American Fluoroseal Corporation、メリーランド州、ゲイサーズバーグ)を使用する。培養バッグは、標準的な50 mL遠心チューブまたは培養バッグを保持するためのより大きな硬質構造を有する容器を含む、培養バッグを支持するように設計された任意の容器中に支持され得る。1つの態様において、気体の自由な交換を可能にするよう50 mL遠心チューブに孔を開ける。ポリフッ化バッグを使用することで、ポリフッ化プラスチックバッグ内に密閉された、およびチューブまたはバッグを保持している容器のキャップ内に挿入されキャップに密閉されたセプタムを介した、自動化システム内の細胞培養容器での連続製造および培地添加が可能になる。例えば、(これらに限定されないが)、レーザー溶融(または溶着)により、ポリフッ化シート製品を培養容器に成形することができる。
【0058】
自動化システムは、培養容器の内外に液体を動かす手段を含む。例えば、分注装置を備えた上部の直角座標ロボットを用いて、培養容器から液体を吸引する、または培養容器に液体を補充することができる。または、円筒座標ロボット、関節アーム、スチュアートプラットフォーム、または他のロボットシステムを、液体処理機器に装備してもよい。さらに、1つの態様においては、培養液の除去を容易にするため、改変マイクロキャリアの常磁性特性を用いる手段を提供し得る。例えば、以前に図5および7に示したように、磁力を利用して培養容器の底に常磁性マイクロキャリアを引き付けた後に、培養液を除去することができる。培地が除去された時点で、十分な容量のピペットを用いるか、培地の供給源から培養容器まで複数回往復させるか、または培養容器に培養液を連続して分注するポンプを備えたピペットを用いることにより、分注ロボットが培養容器に新鮮な培地を補充し得る。培地補充作業の前、途中、または後に、マイクロキャリアの関与周辺から磁力を除去することができる。自動化システムは、培養操作を行うために必要な機器をすべて含んでもよいし、または培養工程の様々な段階を行うために(上記の)バイオリアクターの使用を利用してもよい。
【0059】
培養容器はまた、容器の穴に通したチューブ類を経由するか、または容器の製造工程において設置した培養容器との直接連結部を経由する、培養液と直接関連する液体の出入り口を備え得る。液体を容器から汲み出すもしくは容器に注ぎ込む必要がある場合には、マイクロキャリアを開口部から離し得り、またはマイクロキャリアを回収する必要がある場合には、マイクロキャリアを開口部に近づけ得る。マイクロキャリアの移動は、対流、マイクロキャリア浮力によっても、または常磁性特性の利用によってもよい。
【0060】
自動化内部環境全体は、各細胞種に適した細胞増殖温度、湿度、およびガス濃度で維持される。または、自動化システムの選択された部分が環境面で制御され得る。バイオリアクターシステムまたはサブシステムを自動化システムにおいて使用し、独特のマイクロキャリアの使用を最適化するために適切な条件を提供することができる。
【0061】
自動化システムにおいて行われる事象の順序は、手動細胞培養を行う場合に経験するものと同様である。最初に、細胞培養使用者が凍結細胞または増殖細胞のバイアルを自動化システムに供給する。細胞バイアルはバーコード付きであることが好ましく、その結果、バーコード読取装置がバイアルの同一性を明らかにし、次いで、細胞、オペレーター、マイクロキャリアの種類、および増殖条件などの内容に関してこの情報に合うものを、あらかじめ確立されたデータベースにおいて見つけ得る。バイアルはまた、無線認識チップ(RFID)または他の標識手段を備え得る。バイアルを、窓、引き込み口、または開口部の形態をした入力装置に設置する。機構組立がバイアルを受け取り、バイアルを37℃に温める装置にこのバイアルを移す。加温装置は、再現可能な制御融解プロファイルを実行するよう設定されている。さらに、(これらに限定されないが)エタノール、イソプロパノール、漂白剤、過酸化水素でバイアルを洗浄する、またはガスプラズマに曝露するなど、バイアルの外部を滅菌する手段がシステム内に設計されている。制御融解およびバイアル滅菌の後、バイアルの蓋をはずすか、または滅菌条件下においてロボットの分注器上のピペットでバイアルに穴を開ける。ピペットで内容物を吸引し、滅菌培養容器にこれを移す。制御増殖環境(インキュベーター)中で、または培養容器をインキュベーターに設置する前に、マイクロキャリア、培地、および増殖因子を培養容器中に導入する。細胞がマイクロキャリアの表面に接着できるように、マイクロキャリアと細胞の混合物を、培養容器内の培地中で少なくとも1時間静置する。細胞がマイクロキャリアに接着し得るまでの時間は、培養する細胞の種類に依存することになる。細胞がマイクロキャリアに接着すると、細胞培養液内のマイクロキャリアを撹拌または運動させるための、先に記載した多くの物理的力のいずれかを使用し得る。
【0062】
細胞が増殖している間、細胞増殖をモニタリングする複数の方法を任意に用いることができる。マイクロキャリア表面の何パーセント(平均して)が増殖細胞で覆われているかの決定に関して有用であることを実証する、種々の方法が試験されている。例えば、(これらに限定されないが)、電磁スペクトルの任意の波長における分光法、直角光散乱、画像解析、細胞自家蛍光の測定、ラマン分光法、質量分析法、タンパク質発現、生体染色色素を吸収するまたは排除する能力、チミジン取り込み、および細胞増殖を測定するための他の手段などの、任意のいくつもの従来解析法を用いることができる。細胞がコンフルエンスに達するか、または増殖の任意の状態で静止すると、(これらに限定されないが)イオン輸送、細胞内pH、およびカルシウム取り込みなどの技法を用いて、細胞の健康および状態をモニターすることができる。
【0063】
細胞が所望のコンフルエンス状態または増殖状態に達すると、創薬、研究、および細胞産物生産を含む様々な用途のために細胞を回収することができる。または、細胞をタンパク質工場または細胞産物工場として用いることができ、自動ピペットまたは自動ポンプによって培地を回収することができる。撹拌手段を停止した後に、種々の手段によってマイクロキャリアを回収することができる。この関連における撹拌とは、循環運動を意味するのではなく、マイクロキャリアを懸濁状態に維持する任意の運動を意味する。マイクロキャリアは、沈降マイクロキャリアを使用するか浮揚性マイクロキャリアを使用するかに応じて、それぞれ培養容器の底または培養容器の表面から回収し得る。逆に、培地は、マイクロキャリアが表面にあるか底にあるかに応じて、細胞培養システムの表面または底から回収し得る。通常、マイクロキャリアの存在しない培地を回収するか、または最小限の量の培地に入ったマイクロキャリアを回収することを望むと考えられる。
【0064】
回収されたマイクロキャリア上での細胞アッセイ法は、様々な産物生産工程またはバイオアッセイ法において直接用いられ得る。または、上記に説明した通り、化学的手段または酵素的手段を用いてマイクロキャリアを解離することができる。アルギン酸カルシウムの場合には、低Ca2+培地の存在下でマイクロキャリアは自発的に分解する。自動化システムには、細胞または細胞産物の回収に必要な機械システムが装備されており、これらを次の工程に直接輸送する。この特徴は実験室技術者の労力の必要性を排除し、それと同時に細胞の汚染の可能性を低減することになる。
【0065】
または、細胞を回収し、マイクロキャリア上で直接、またはマイクロキャリアから解離した後に-150℃で凍結することによって、細胞を長期保存することができる。自動冷却装置を用いて制御凍結手順を実施するように、自動システムをプログラムすることができる。標準的な凍結手順に従って細胞が凍結されると、-80℃冷凍庫(TechCell、マサチューセッツ州、ホプキントン)もしくは-150℃冷凍庫で、または直接液体窒素冷蔵庫で、短期間(1ヶ月またはそれ未満)保存することができる。細胞を含むマイクロキャリアを、細胞の活動の停止を支持する状態まで脱水することによって、冷凍庫の使用を不要にすることができる。
【0066】
マイクロキャリア上の細胞の用途
オルトバイオロジックス(Orthobiologics)とは、置換または修復用の構造組織の増殖の分野である。本発明の機能化および/または改変マイクロキャリアを用いて、植物、動物、またはヒトにおける自己または異種移植のための細胞の増殖および分化を支持することができる。移植組織は、最終的に吸収され得るおよび身体自体の支持基質に置き換えられ得る基質上で細胞の増殖を支持するべきである。生物において使用するために、様々な細胞を増殖させることができる。ヒトでの商業的に実現可能な置換細胞には、軟骨細胞(chondrocyte)(軟骨組織細胞(cartilage cell))、骨細胞(oesteocyte)(骨の細胞(bone cell))、骨芽細胞、軟骨形成細胞、多能性細胞、ならびに組織置換および/または被覆のための粘膜細胞が含まれる。
【0067】
本発明のマイクロキャリア培養技術(改変マイクロキャリア、バイオリアクター、および自動化プラットフォーム)は、ヒトにおける組織置換のための細胞および従来通りに増殖させる細胞のより優れた供給源を提供する。本発明の改変マイクロキャリアで細胞を産生させることで、細胞のより迅速な産生、剪断応力および回転羽根衝突による損傷の減少、リアルタイムで細胞増殖をモニターし増殖条件を最適化する能力、ならびに完全な自動化および無菌環境において培養を開始し維持する能力が可能になる。さらに、ヒト、動物、または植物細胞を改変マイクロキャリア上で増殖させた場合、細胞の修復または置換のためにこの細胞を組織に直接注入することができる。この場合、ヒトの移植に関してFDAにより認可された常磁性粒子を使用する。または、注入する前に、強い磁場を用いてマイクロキャリアから常磁性粒子を取り除く。ガラス泡は生物学的に不活性であるが、注射用マイクロキャリアにはガス気泡の使用が好ましい。改変マイクロキャリアを動力学的に操作する能力によって、より優れたインビボ生存度を有し得るマイクロキャリア凝集体の形成が可能になり、または生物内に導入されるとマイクロキャリアの操作が可能になる。
【0068】
以下のさらなる態様は上記ではまだ開示していなかったものであり、本発明を開示の範囲内で説明するために以下に提供する。
【0069】
固有の物理的特性を有するマイクロキャリア
1. 外部の力に応答することを可能にする固有の特性を有する、種々の形状および組成のマイクロキャリアを作製する方法[例えば、これらに限定されないが、マイクロキャリアが固有の双極子モーメントを有し、そのため電場および/または磁場に応答する、固有の圧縮性および浮力を有し、そのため圧力の変化に応答する、ならびに適切な装置を用いて測定した場合に有用なシグナルを生じる固有の自家蛍光を有する]。
2. マイクロキャリアの少なくとも1つの亜集団が以下のいずれかまたはすべてであり得る、1に記載の方法:球形、三角形、台形、立方形、長円柱形、中空型、進入孔を有する中空型、管型(両端または長さに沿ったどこかが閉じたまたは孔を有する)、多孔性形状、または平面形状。細胞培養液と直接接触する、複数の形状の表面に沿った任意の部位が、細胞接着を可能または不可能にするように化学修飾され得る。
2b. マイクロキャリアが細胞の増殖を支持する表面によって特徴づけられる、上記の1および2に記載の方法。
2c. マイクロキャリアが細胞の増殖を支持し得る特定部位の非存在によって特徴づけられる、上記の1〜3に記載の方法。
2d. 微粒子が平均直径1 nm〜1 mmを有する、1および2に記載の方法。2e. マイクロキャリアが平均直径100 nm〜500 umを有する、請求項1〜2cに記載の方法。
2f.マイクロキャリアが、0.8〜1.4 g/cmの範囲内の細胞培養用のキャリア密度を有し、これによって細胞培養用のマイクロキャリアを培養溶液中で懸濁状態にすることが可能になる、1〜2に記載の方法。
2g。マイクロキャリアが噴霧融合または乳濁液重合によって作製される、上記の1に記載の方法。
3. 細胞が関心対象の部位に到達され、その後様々な手段によって気泡が分解、崩壊、または溶解されることを可能にする、ちょうど上記の1または2にあるような分解可能な生体適合性マイクロキャリア。例えば、限定的な適用ではないが、インビトロまたはインビボで気泡と同じ位置に超音波エネルギーを送達することにより、気泡を分解することができる。
4. 非足場依存性細胞の接着を可能にする変更させた表面を有するマイクロキャリア。
【0070】
改変マイクロキャリア
5. 細胞増殖、および/またはマイクロキャリア上もしくはマイクロキャリア内で増殖している生細胞における活性を測定するために、マイクロキャリア内またはマイクロキャリア上の検出分子を付与する方法。
6. 上記の4にあるようなマイクロキャリア内またはマイクロキャリア上の別の検出分子が発するシグナルを増幅する、マイクロキャリア内またはマイクロキャリア上の検出分子。
7. 磁気双極子を付与する物質を取り込んだ、またはマイクロキャリアが鉄もしくは鉄酸化物を含み磁性を有するまたは常磁性である、またはマイクロキャリアがこれらの特性の組み合わせを有する、足場依存性細胞の増殖および/または維持のために設計されたマイクロキャリア。
8. マイクロキャリア密度および/もしくは浮力を制御する能力を付与するか、またはマイクロキャリアの密度もしくは浮力が外部の力によって制御されることを可能にする物質を含む物質で製造された、足場依存性細胞の増殖および/または維持のために設計されたマイクロキャリア。
9. 透明度、および関心対象の細胞に固有の自家蛍光に対して低い自家蛍光を付与する物質を取り込んだ、足場依存性細胞の増殖および/または維持のために設計された、請求項のいずれか一項記載のマイクロキャリア。
【0071】
改変マイクロキャリアの応用
10. 生物学的過程を模倣する分析ツールとして改変されたマイクロキャリア。
11. 細胞遊走、浸潤、および転移をモニターおよび測定するよう改変された、上記の8記載のマイクロキャリア。
12. これらに限定されないが、血液脳関門、腸管、腎臓、肝臓、心臓、肺、骨髄、皮膚、および血管を含む種々の器官の生物活性を模倣するように改変された、上記の7および8のいずれか1つにあるようなマイクロキャリア。
13. マイクロキャリアは、(これらに限定されないが)脂肪組織、胚、および末梢循環などの様々な供給源に由来する幹細胞の接着表面として用いられる。幹細胞の維持または子孫細胞への分化を促進するためには、擬似微小重力環境が有利である。
【0072】
物理的特性の組み合わせ
14. 請求項1〜6のいずれか一項または全項における特性の組み合わせを有するマイクロキャリア。
【0073】
運動エネルギー
15. 以下の運動エネルギーパラメータを制御する方法;加速、運動、運動速度、絶対位置、および液体中のマイクロキャリアの回転速度。
16. 液体中のマイクロキャリア内の運動エネルギーパラメータを制御する方法。
17. 液体中のマイクロキャリア凝集体における、上記の1および2にあるような運動エネルギーパラメータを制御する方法。
【0074】
マイクロキャリアに影響を及ぼす各物理的力の制御
18. 上記の1〜7のいずれ1つまたはすべてにあるようなマイクロキャリアに影響を及ぼす磁力を制御する方法。
19. マイクロキャリアを含む液体に対する外圧を制御することによる、上記の1〜7のいずれか1つまたはすべてにあるようなマイクロキャリアの浮力または運動エネルギーを制御する方法。
20. 温度勾配を誘導することによる、任意のマイクロキャリアおよび上記の1〜7のいずれか1つまたはすべてにあるようなマイクロキャリアの運動エネルギーパラメータを制御する方法。
【0075】
多くの物理的力の制御
21. 配向性および/または移動の方向を示す物質を含む、上記の1〜7のいずれか1つに記載のマイクロキャリア。
21b. 上記の21に記載の方法によって決定される配向性に基づいて、運動エネルギーおよびまたは移動の方向およびまたは配向性が培養容器外部で制御され得る、フィードバックループに関与する、請求項1〜7および/または21のいずれか一項に記載のマイクロキャリア。
【0076】
マイクロキャリア配向性、ならびに細胞の生化学および生理学の測定
22. 配向性、細胞増殖、および細胞の健康を決定するために、上記の1〜7のいずれか1つにあるようなマイクロキャリアを試験する方法。
22b. マイクロキャリアの少なくとも1つの亜集団が発光、蛍光、または比色特性を有し、かつ該マイクロキャリアが発するシグナルが以下を含む任意の方法によって検出され得る、上記の1記載の方法:(a) フレーム全体の画像化;(b) 部分的フレームの画像化、および(c) 静的な記録もしくはシグナル測定または時間に基づいた記録もしくはシグナル測定としてのシグナル捕捉。
23. (これらに限定されないが)分光光度計、蛍光光度計、ラマン光散乱装置、
ルミノメーター、蛍光偏光計、および/または光散乱装置を含む、マイクロキャリア上またはマイクロキャリア内の細胞が発する電磁スペクトルの変化を測定する任意の装置を用いた、上記の15にあるような方法。
24. マイクロキャリアが発する細胞の生化学的シグナルを検出する方法[例えば;薬物吸収を決定するための溶液中でマイクロキャリアを試験する]。
【0077】
バイオリアクター
24b. マイクロキャリアおよびその中でマイクロキャリアが増殖する培地を含むバイオリアクター。
25. 細胞培養液を保持するための容器、最適な増殖および維持温度を維持するためにマイクロキャリア培養物に熱を供給するための装置、気体[CO2、空気、および/または酸素の両方]の一定した供給を提供するための装置、運動エネルギー、上記の8〜13にあるようなマイクロキャリアの位置、配向性、および運動を制御するための外部制御装置、ならびにバイオリアクター内の無菌性を維持するための装置からなる、マイクロキャリア上の細胞の増殖を最適化するためのバイオリアクター。
26. 複数のバイオリアクターが同時に使用でき、かつ同じエネルギー供給源、気体、および/または外部制御装置を共有し、かつ培地およびマイクロキャリアを無菌状態に維持できるようなモジュール方式で構築された、上記の18にあるようなバイオリアクター。
27. 容器、例えば、ポリフッ化バッグの壁を介して細胞培養液の十分な酸素供給をもたらすが、水分の明らかな喪失もウイルスもしくは細菌の透過も起こさない容器を用いる、上記の18および19にあるようなバイオリアクター。
28. 気体流、温度、湿度、無菌性を制御するための外部コンピュータ機器を使用する、上記の18〜20にあるようなバイオリアクター。
【0078】
自動化
29. 上記の18〜21にあるような単一または複数のバイオリアクターからなる、自動細胞培養システム。
30. バイオリアクターに培地を添加する、およびバイオリアクターから培地を除去するための装置を組み入れた、上記の21にあるような自動細胞培養システム。
31. 培養するための細胞のバイアルの投入を受け取るための装置を組み入れた、上記の21〜22のいずれか1つにあるような自動細胞培養システム。
32. 自動細胞培養装置に提供された細胞のバイアルを滅菌した後、細胞を融解し、容器を開け、および融解した細胞を細胞培養液を含む上記の18〜21のいずれか1つにあるようなバイオリアクターに移す自動装置。
33. 無菌性の維持、培地の交換を含む培養細胞の進行状態を維持し、進め、かつモニターし、マイクロキャリアに関連する最適な運動エネルギーを維持し、かつ適切な時間で細胞を回収する、自動装置。
34. 細胞培養の必要性に基づいて、上記の21〜25のいずれか1つに基づいた自動システムの動作をモニターおよび調整するコンピュータシステムを含む、上記の26にあるような自動装置。
35. 制御された凍結プロファイルを使用し、細胞がマイクロキャリアに接着したまま、凍結すべき細胞の温度を下げる、長期保存用の細胞を調製および凍結する自動装置。
36. 細胞またはマイクロキャリア内の氷の微小結晶化が起こらないように強力な磁場を用いる、上記の27にあるような細胞を調製および凍結する自動装置。
37. 長期保存用の細胞を調製するが、細胞/マイクロキャリア複合体の乾燥を用いる、自動装置。
38. 必要に応じてマイクロキャリアを作製するために必要な、ソフトウェアアルゴリズムによって制御を受ける機器および試薬を含む自動システム。
【0079】
本発明を説明の目的で詳細に記載したが、このような詳細はその目的のためのみのものであること、およびその中で本発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者によって変更が行われ得ることが理解されるべきである。
【0080】
引用した文献はすべて、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0081】
参照文献
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】従来の微粒子、常磁性粒子を有する微粒子、浮揚性成分および常磁性粒子を有する微粒子の描写である。
【図2】培養容器に加えられる物理的力の供給源と培地および/またはマイクロキャリアを添加および除去するための開口部の関係を示す、本発明の改変マイクロキャリアを含む、本発明の代表的なバイオリアクターの図である。
【図3】物理的力の供給源、開口部を介した培養容器への培地およびマイクロキャリアの添加または培養容器からの培地およびマイクロキャリアの除去、ならびにモニタリングシステムも同様に制御する制御システムによって制御を受ける、本発明の改変マイクロキャリアを含む、本発明の代表的な自動バイオリアクターの図である。
【図4】改変マイクロキャリアを含み、マイクロキャリアを培養容器中に直接提供するマイクロキャリア製造方法との関係、および解析のために培養容器からマイクロキャリアを受け取るアッセイ方法との関係をさらに示す、本発明の代表的な自動バイオリアクターの図である。
【図5】単一の磁石を用いる、本発明の1つの態様の描写である。この図は、いかにしてこの磁石を用いて、バイオリアクター内のマイクロキャリアを動かすかを示す。培養容器および物理的力の供給源(各培養容器に対する単一の電磁石または永久磁石)を含む2つのバイオリアクターを示す。左図では、黒い円盤形で示す磁石を培養容器の底まで下げて小さい円で示すマイクロキャリアを引き寄せ、培養容器の右側にある開口部から不要な培地を除去する。右図では、磁石を培養容器の上部まで上げて小さい円で示すマイクロキャリアを引き寄せ、培養容器からマイクロキャリアを取り出す。
【図6】一連の電磁石コイルまたは磁石を用いて培養容器を取り囲む場合の、本発明の態様の描写である。この図は、細胞増殖の必要性に応じてマイクロキャリアを動かし、培地交換およびマイクロキャリアの吸引を容易にし得ることを示す。手動でまたはロボットアームにより吸引するためには、最上部のコイルにエネルギーを与えてマイクロキャリアを上方に移動させる。すべてのコイルにエネルギーを与えて、マイクロキャリアを懸濁状態に維持することができる。不要な培地を除去するためおよび新鮮な培地を添加するためには、底部のコイルにエネルギーを与えてマイクロキャリアを底まで移動させる。
【図7】左図における培地交換および右図におけるマイクロキャリアの吸引の描写である。この図は、図5と同様に磁石を使用するが、図6のように複数の磁石を有することを示す。
【図8】特定の必要性に応じてマイクロキャリアを操作できる、別の磁石配置の描写である。図6にあるように、手動またはロボットでマイクロキャリアを吸引するには、最上部の電磁コイルによってマイクロキャリアを上方に移動させ、使用済みのまたは不要な培地を手動またはロボットで吸引するには、底部の電磁コイルによってマイクロキャリアを下方に移動させ、さらにマイクロキャリアを懸濁状態に維持するには、すべてのコイルを振動させる。
【図9】様々なマイクロキャリアの動きを提供するための磁場のさらなる描写である。この図は、培養容器を介して対角運動をもたらすための、二極または複数極を有する2つの円形電磁石の使用を示す。
【図10】マイクロキャリアのより循環した、上から下までの混合を可能にする、さらに別の磁石配置の描写である。
【図11】運動エネルギーを誘導するための外部磁場によって操作される改変マイクロキャリアの描写である。マイクロキャリアはそれ自体の軸を中心に回転して、球体の外部で増殖している細胞に剪断応力を誘導し、球体の右側の剪断力プロファイルに概算するように、周囲長周りにある細胞は軸近傍の細胞と比較してより大きな剪断応力に曝露されると考えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養細胞の増殖を支持する培養基を提供し得るヒドロゲル組成物であって、マイクロキャリアを少なくとも1つの物理的力に応答するようにする少なくとも1つの物質をさらに含むヒドロゲル組成物を含む、細胞増殖に適した改変マイクロキャリア。
【請求項2】
ヒドロゲル組成物が、アルギン酸、ゼラチン、コラーゲンまたはゼラチンと共重合させたポリアクリルアミド、変更させた電荷を有するポリアクリルアミド、ゼラチンと共重合させたアルギン酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項3】
物質がマイクロキャリア密度および/もしくは浮力を制御する能力を付与するか、またはマイクロキャリアの密度もしくは浮力が少なくとも1つの物理的力によって制御されることを可能にする、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項4】
物質が磁気双極子を付与する、磁性粒子、常磁性粒子、気泡、ガス気泡、中空ビーズ、またはこれらの組み合わせである、請求項1記載の改変マイクロキャリア[注記、中空ビーズがガラス、プラスチック、金属、タンパク質、および空洞化できる任意の固体基体から作製され得るため、本発明者らは明細書中のガラス泡を中空ビーズに再定義する必要がある]。
【請求項5】
細胞がヒト、哺乳動物、動物、または植物細胞である、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項6】
物理的力が電磁エネルギー、音波エネルギー、熱エネルギー、圧力、重力、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項7】
球形、三角形、台形、立方形、長円柱形、中空型、進入孔を有する中空型、末端が閉じた管型、両端に孔を有する管型、長さに沿って少なくとも1つの孔を有する管型、多孔性形状、または平面形状を含む、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項8】
細胞培養液と直接接触する、複数の形状のいずれか1つの表面に沿って、細胞接着を可能または不可能にするように化学修飾され得る、請求項7記載の改変マイクロキャリア。
【請求項9】
約1 nm〜1 mmの平均直径を有する、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項10】
約100 nm〜500μmの平均直径を有する、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項11】
透明度、および細胞に固有の自家蛍光に対して低い自家蛍光を付与する、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項12】
細胞増殖、および/またはマイクロキャリア上もしくはマイクロキャリア内での培養で増殖している細胞における活性を測定するために、マイクロキャリア内またはマイクロキャリア上の検出分子をさらに含む、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項13】
検出分子が、マイクロキャリア内またはマイクロキャリア上の別の検出分子が発するシグナルを増幅する、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項14】
刺激を報告するおよび/または刺激に応答し、かつマイクロキャリアの表面および/または内部に共有結合または非共有結合されたリガンドまたはレポーターをさらに含む、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項15】
レポーターが蛍光分子または生物発光分子である、請求項14記載の改変マイクロキャリア。
【請求項16】
培養細胞の増殖を支持する培養基を提供し得るヒドロゲル組成物であって、刺激を報告するおよび/または刺激に応答し、かつマイクロキャリアの表面上および/または内部の官能基を介して直接または間接的に共有結合または非共有結合された少なくとも1つのリガンドまたはレポーターをさらに含むヒドロゲル組成物を含む、細胞増殖に適した機能化マイクロキャリア。
【請求項17】
レポーターが蛍光分子または生物発光分子である、請求項16記載の機能化マイクロキャリア。
【請求項18】
以下を含む、細胞の増殖に適したバイオリアクター:
(a) 少なくとも1つの細胞を含む、請求項1記載の少なくとも1つの改変マイクロキャリア、および該細胞の増殖に十分な培養液を含む培養容器;および
(b) マイクロキャリアが応答する少なくとも1つの物理的力を生じるための、少なくとも1つの供給源。
【請求項19】
培養容器がポリフッ化バッグである、請求項18記載のバイオリアクター。
【請求項20】
ヒドロゲル組成物が、アルギン酸、ゼラチン、コラーゲンまたはゼラチンと共重合させたポリアクリルアミド、変更させた電荷を有するポリアクリルアミド、ゼラチンと共重合させたアルギン酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項18記載のバイオリアクター。
【請求項21】
ヒドロゲル組成物の物質がマイクロキャリア密度および/もしくは浮力を制御する能力を付与するか、またはマイクロキャリアの密度もしくは浮力が少なくとも1つの物理的力によって制御されることを可能にする、請求項18記載のバイオリアクター。
【請求項22】
ヒドロゲル組成物の物質が磁気双極子を付与する、磁性粒子、常磁性粒子、気泡、ガス気泡、中空ビーズ、またはこれらの組み合わせである、請求項18記載のバイオリアクター。
【請求項23】
物理的力が電磁エネルギー、音波エネルギー、熱エネルギー、圧力、重力、またはこれらの組み合わせを含む、請求項18記載のバイオリアクター。
【請求項24】
以下を含む、細胞の増殖に適した自動バイオリアクター:
(a) 以下を含む少なくとも1つのバイオリアクター:
(1) 少なくとも1つの細胞を含む、請求項1記載の少なくとも1つの改変マイクロキャリア、および該細胞の増殖に十分な培養液を含む培養容器;および
(2) マイクロキャリアが応答する少なくとも1つの物理的力を生じるための、少なくとも1つの供給源:ならびに
(b) バイオリアクターの機能および該マイクロキャリアを制御するための物理的力の発生を制御する、少なくとも1つの制御システム。
【請求項25】
ヒドロゲル組成物が、アルギン酸、ゼラチン、コラーゲンまたはゼラチンと共重合させたポリアクリルアミド、変更させた電荷を有するポリアクリルアミド、ゼラチンと共重合させたアルギン酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項24記載のバイオリアクター。
【請求項26】
ヒドロゲル組成物の物質がマイクロキャリア密度および/もしくは浮力を制御する能力を付与するか、またはマイクロキャリアの密度もしくは浮力が少なくとも1つの物理的力によって制御されることを可能にする、請求項24記載のバイオリアクター。
【請求項27】
ヒドロゲル組成物の物質が磁気双極子を付与する、磁性粒子、常磁性粒子、気泡、ガス気泡、中空ビーズ、またはこれらの組み合わせである、請求項24記載のバイオリアクター。
【請求項28】
細胞がヒト、哺乳動物、動物、または植物細胞である、請求項24記載のバイオリアクター。
【請求項29】
物理的力が電磁エネルギー、音波エネルギー、熱エネルギー、圧力、重力、またはこれらの組み合わせを含む、請求項24記載のバイオリアクター。
【請求項30】
細胞増殖、および/またはマイクロキャリア上もしくはマイクロキャリア内での培養で増殖している細胞における活性を測定するための検出分子を、マイクロキャリア内またはマイクロキャリア上にさらに含む、請求項24記載のバイオリアクター。
【請求項31】
検出分子を検出するためのモニタリングシステムをさらに含む、請求項30記載のバイオリアクター。
【請求項32】
マイクロキャリア上に含まれる細胞およびその細胞産物を解析するためのアッセイシステムをさらに含む、請求項24記載のバイオリアクター。
【請求項33】
アッセイシステムが、開閉可能な開口部を介して培養容器に直接連結されている、請求項33記載のバイオリアクター。
【請求項34】
マイクロキャリアを生成するためのマイクロキャリア製造システムをさらに含む、請求項24記載のバイオリアクター。
【請求項35】
マイクロキャリア製造システムが、開閉可能な開口部を介して培養容器に直接連結されている、請求項34記載のバイオリアクター。
【請求項36】
マイクロキャリアと結合しているレポーター分子を検出するためのモニタリングシステム、マイクロキャリア上に含まれる細胞およびその細胞産物を解析するためのアッセイシステム、およびマイクロキャリアを生成するためのマイクロキャリア製造システムをさらに含む、請求項34記載のバイオリアクター。
【請求項37】
請求項24記載の自動バイオリアクターを2つまたはそれ以上含む、自動バイオリアクターシステム。
【請求項38】
バイオリアクターのそれぞれの機能、およびマイクロキャリアを制御するための物理的力の発生または制御を制御する単一の制御システムを含む、請求項37記載のバイオリアクターシステム。
【請求項39】
請求項36記載の自動バイオリアクターを2つまたはそれ以上含む、自動バイオリアクターシステム。
【請求項40】
以下の段階を含む、細胞の増殖方法:
(a) 請求項1記載のマイクロキャリアをバイオリアクター内の培養液に添加する段階;
(b) 物理的力を加えるかまたは重力を与えて、細胞とマイクロキャリアとを合わせる段階;
(c) 生細胞が該マイクロキャリアに接着するまで、該マイクロキャリアを生細胞と接触したままにしておく段階;
(d) 物理的力を加えて、(c)にあるような接着した細胞を含む該マイクロキャリアに運動エネルギーを付与する段階;
(e) 物理的力を加えてマイクロキャリアを移動させ、手動法または自動化法による、消費した培養液の新鮮培地との交換を可能にする段階;
(f) 物理的力を加えてマイクロキャリアを移動させ、マイクロキャリアを回収して、細胞を(a)〜(e)などで新たな培養物に継代することを可能にする段階;および/または
(f) 物理的力を加えて、マイクロキャリアを、該マイクロキャリアを回収し、かつそれらを別の培養容器またはアッセイシステムに移すための方法に移行させる段階。
【請求項41】
以下の段階を含む、懸濁細胞の増殖方法:
(a) 請求項8に記載されるような細胞接着を不可能にするマイクロキャリアを培養液に添加する段階;
(b) 物理的力を加えるかまたは重力を与えて、運動エネルギーを培養液に付与する段階;
(c) 物理的力を加えてマイクロキャリアおよび細胞を移動させ、手動法または自動化法による、消費した培養液の新鮮培地との交換を可能にする段階;
(d) 物理的力を加えてマイクロキャリアおよび細胞を移動させ、細胞を回収し、かつ細胞を請求項(a)〜(c)などで新たな培養物に継代することを可能にする段階;および
(e) 物理的力を加えて、マイクロキャリアを、細胞を回収し、かつそれらを別の培養容器またはアッセイ法に移すための方法に移行させる段階。
【請求項42】
マイクロキャリア上での培養で増殖した細胞を含むマイクロキャリアを凍結するかまたは脱水することにより、バイオリアクター内で培養した、請求項1記載のマイクロキャリア上またはマイクロキャリア内の細胞を保存する方法。
【請求項43】
融解または再水和し、かつ細胞培養システムなどで培養することによって、請求項42に記載されるように保存された細胞を再培養する方法。
【請求項44】
マイクロキャリア上での培養で増殖した細胞を含むマイクロキャリアを凍結するかまたは脱水することにより、請求項8に記載されるようにマイクロキャリアを用いてバイオリアクター内で培養した細胞を保存する方法。
【請求項45】
融解または再水和し、かつ細胞培養システムなどで培養することによって、請求項44に記載されるように保存された細胞を再培養する方法。
【請求項1】
培養細胞の増殖を支持する培養基を提供し得るヒドロゲル組成物であって、マイクロキャリアを少なくとも1つの物理的力に応答するようにする少なくとも1つの物質をさらに含むヒドロゲル組成物を含む、細胞増殖に適した改変マイクロキャリア。
【請求項2】
ヒドロゲル組成物が、アルギン酸、ゼラチン、コラーゲンまたはゼラチンと共重合させたポリアクリルアミド、変更させた電荷を有するポリアクリルアミド、ゼラチンと共重合させたアルギン酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項3】
物質がマイクロキャリア密度および/もしくは浮力を制御する能力を付与するか、またはマイクロキャリアの密度もしくは浮力が少なくとも1つの物理的力によって制御されることを可能にする、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項4】
物質が磁気双極子を付与する、磁性粒子、常磁性粒子、気泡、ガス気泡、中空ビーズ、またはこれらの組み合わせである、請求項1記載の改変マイクロキャリア[注記、中空ビーズがガラス、プラスチック、金属、タンパク質、および空洞化できる任意の固体基体から作製され得るため、本発明者らは明細書中のガラス泡を中空ビーズに再定義する必要がある]。
【請求項5】
細胞がヒト、哺乳動物、動物、または植物細胞である、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項6】
物理的力が電磁エネルギー、音波エネルギー、熱エネルギー、圧力、重力、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項7】
球形、三角形、台形、立方形、長円柱形、中空型、進入孔を有する中空型、末端が閉じた管型、両端に孔を有する管型、長さに沿って少なくとも1つの孔を有する管型、多孔性形状、または平面形状を含む、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項8】
細胞培養液と直接接触する、複数の形状のいずれか1つの表面に沿って、細胞接着を可能または不可能にするように化学修飾され得る、請求項7記載の改変マイクロキャリア。
【請求項9】
約1 nm〜1 mmの平均直径を有する、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項10】
約100 nm〜500μmの平均直径を有する、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項11】
透明度、および細胞に固有の自家蛍光に対して低い自家蛍光を付与する、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項12】
細胞増殖、および/またはマイクロキャリア上もしくはマイクロキャリア内での培養で増殖している細胞における活性を測定するために、マイクロキャリア内またはマイクロキャリア上の検出分子をさらに含む、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項13】
検出分子が、マイクロキャリア内またはマイクロキャリア上の別の検出分子が発するシグナルを増幅する、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項14】
刺激を報告するおよび/または刺激に応答し、かつマイクロキャリアの表面および/または内部に共有結合または非共有結合されたリガンドまたはレポーターをさらに含む、請求項1記載の改変マイクロキャリア。
【請求項15】
レポーターが蛍光分子または生物発光分子である、請求項14記載の改変マイクロキャリア。
【請求項16】
培養細胞の増殖を支持する培養基を提供し得るヒドロゲル組成物であって、刺激を報告するおよび/または刺激に応答し、かつマイクロキャリアの表面上および/または内部の官能基を介して直接または間接的に共有結合または非共有結合された少なくとも1つのリガンドまたはレポーターをさらに含むヒドロゲル組成物を含む、細胞増殖に適した機能化マイクロキャリア。
【請求項17】
レポーターが蛍光分子または生物発光分子である、請求項16記載の機能化マイクロキャリア。
【請求項18】
以下を含む、細胞の増殖に適したバイオリアクター:
(a) 少なくとも1つの細胞を含む、請求項1記載の少なくとも1つの改変マイクロキャリア、および該細胞の増殖に十分な培養液を含む培養容器;および
(b) マイクロキャリアが応答する少なくとも1つの物理的力を生じるための、少なくとも1つの供給源。
【請求項19】
培養容器がポリフッ化バッグである、請求項18記載のバイオリアクター。
【請求項20】
ヒドロゲル組成物が、アルギン酸、ゼラチン、コラーゲンまたはゼラチンと共重合させたポリアクリルアミド、変更させた電荷を有するポリアクリルアミド、ゼラチンと共重合させたアルギン酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項18記載のバイオリアクター。
【請求項21】
ヒドロゲル組成物の物質がマイクロキャリア密度および/もしくは浮力を制御する能力を付与するか、またはマイクロキャリアの密度もしくは浮力が少なくとも1つの物理的力によって制御されることを可能にする、請求項18記載のバイオリアクター。
【請求項22】
ヒドロゲル組成物の物質が磁気双極子を付与する、磁性粒子、常磁性粒子、気泡、ガス気泡、中空ビーズ、またはこれらの組み合わせである、請求項18記載のバイオリアクター。
【請求項23】
物理的力が電磁エネルギー、音波エネルギー、熱エネルギー、圧力、重力、またはこれらの組み合わせを含む、請求項18記載のバイオリアクター。
【請求項24】
以下を含む、細胞の増殖に適した自動バイオリアクター:
(a) 以下を含む少なくとも1つのバイオリアクター:
(1) 少なくとも1つの細胞を含む、請求項1記載の少なくとも1つの改変マイクロキャリア、および該細胞の増殖に十分な培養液を含む培養容器;および
(2) マイクロキャリアが応答する少なくとも1つの物理的力を生じるための、少なくとも1つの供給源:ならびに
(b) バイオリアクターの機能および該マイクロキャリアを制御するための物理的力の発生を制御する、少なくとも1つの制御システム。
【請求項25】
ヒドロゲル組成物が、アルギン酸、ゼラチン、コラーゲンまたはゼラチンと共重合させたポリアクリルアミド、変更させた電荷を有するポリアクリルアミド、ゼラチンと共重合させたアルギン酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項24記載のバイオリアクター。
【請求項26】
ヒドロゲル組成物の物質がマイクロキャリア密度および/もしくは浮力を制御する能力を付与するか、またはマイクロキャリアの密度もしくは浮力が少なくとも1つの物理的力によって制御されることを可能にする、請求項24記載のバイオリアクター。
【請求項27】
ヒドロゲル組成物の物質が磁気双極子を付与する、磁性粒子、常磁性粒子、気泡、ガス気泡、中空ビーズ、またはこれらの組み合わせである、請求項24記載のバイオリアクター。
【請求項28】
細胞がヒト、哺乳動物、動物、または植物細胞である、請求項24記載のバイオリアクター。
【請求項29】
物理的力が電磁エネルギー、音波エネルギー、熱エネルギー、圧力、重力、またはこれらの組み合わせを含む、請求項24記載のバイオリアクター。
【請求項30】
細胞増殖、および/またはマイクロキャリア上もしくはマイクロキャリア内での培養で増殖している細胞における活性を測定するための検出分子を、マイクロキャリア内またはマイクロキャリア上にさらに含む、請求項24記載のバイオリアクター。
【請求項31】
検出分子を検出するためのモニタリングシステムをさらに含む、請求項30記載のバイオリアクター。
【請求項32】
マイクロキャリア上に含まれる細胞およびその細胞産物を解析するためのアッセイシステムをさらに含む、請求項24記載のバイオリアクター。
【請求項33】
アッセイシステムが、開閉可能な開口部を介して培養容器に直接連結されている、請求項33記載のバイオリアクター。
【請求項34】
マイクロキャリアを生成するためのマイクロキャリア製造システムをさらに含む、請求項24記載のバイオリアクター。
【請求項35】
マイクロキャリア製造システムが、開閉可能な開口部を介して培養容器に直接連結されている、請求項34記載のバイオリアクター。
【請求項36】
マイクロキャリアと結合しているレポーター分子を検出するためのモニタリングシステム、マイクロキャリア上に含まれる細胞およびその細胞産物を解析するためのアッセイシステム、およびマイクロキャリアを生成するためのマイクロキャリア製造システムをさらに含む、請求項34記載のバイオリアクター。
【請求項37】
請求項24記載の自動バイオリアクターを2つまたはそれ以上含む、自動バイオリアクターシステム。
【請求項38】
バイオリアクターのそれぞれの機能、およびマイクロキャリアを制御するための物理的力の発生または制御を制御する単一の制御システムを含む、請求項37記載のバイオリアクターシステム。
【請求項39】
請求項36記載の自動バイオリアクターを2つまたはそれ以上含む、自動バイオリアクターシステム。
【請求項40】
以下の段階を含む、細胞の増殖方法:
(a) 請求項1記載のマイクロキャリアをバイオリアクター内の培養液に添加する段階;
(b) 物理的力を加えるかまたは重力を与えて、細胞とマイクロキャリアとを合わせる段階;
(c) 生細胞が該マイクロキャリアに接着するまで、該マイクロキャリアを生細胞と接触したままにしておく段階;
(d) 物理的力を加えて、(c)にあるような接着した細胞を含む該マイクロキャリアに運動エネルギーを付与する段階;
(e) 物理的力を加えてマイクロキャリアを移動させ、手動法または自動化法による、消費した培養液の新鮮培地との交換を可能にする段階;
(f) 物理的力を加えてマイクロキャリアを移動させ、マイクロキャリアを回収して、細胞を(a)〜(e)などで新たな培養物に継代することを可能にする段階;および/または
(f) 物理的力を加えて、マイクロキャリアを、該マイクロキャリアを回収し、かつそれらを別の培養容器またはアッセイシステムに移すための方法に移行させる段階。
【請求項41】
以下の段階を含む、懸濁細胞の増殖方法:
(a) 請求項8に記載されるような細胞接着を不可能にするマイクロキャリアを培養液に添加する段階;
(b) 物理的力を加えるかまたは重力を与えて、運動エネルギーを培養液に付与する段階;
(c) 物理的力を加えてマイクロキャリアおよび細胞を移動させ、手動法または自動化法による、消費した培養液の新鮮培地との交換を可能にする段階;
(d) 物理的力を加えてマイクロキャリアおよび細胞を移動させ、細胞を回収し、かつ細胞を請求項(a)〜(c)などで新たな培養物に継代することを可能にする段階;および
(e) 物理的力を加えて、マイクロキャリアを、細胞を回収し、かつそれらを別の培養容器またはアッセイ法に移すための方法に移行させる段階。
【請求項42】
マイクロキャリア上での培養で増殖した細胞を含むマイクロキャリアを凍結するかまたは脱水することにより、バイオリアクター内で培養した、請求項1記載のマイクロキャリア上またはマイクロキャリア内の細胞を保存する方法。
【請求項43】
融解または再水和し、かつ細胞培養システムなどで培養することによって、請求項42に記載されるように保存された細胞を再培養する方法。
【請求項44】
マイクロキャリア上での培養で増殖した細胞を含むマイクロキャリアを凍結するかまたは脱水することにより、請求項8に記載されるようにマイクロキャリアを用いてバイオリアクター内で培養した細胞を保存する方法。
【請求項45】
融解または再水和し、かつ細胞培養システムなどで培養することによって、請求項44に記載されるように保存された細胞を再培養する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−535902(P2007−535902A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520410(P2006−520410)
【出願日】平成16年7月19日(2004.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/023222
【国際公開番号】WO2005/010162
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(506018008)グローバル セル ソリューションズ エルエルシー. (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月19日(2004.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/023222
【国際公開番号】WO2005/010162
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(506018008)グローバル セル ソリューションズ エルエルシー. (1)
【Fターム(参考)】
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