説明

自動血液分析器において、レーザーからの前方散乱を用いることによる、赤血球細胞を白血球細胞から判別する方法

自動血液分析器を用い、細胞によって散乱した光、吸収された光、細胞によって発せられる蛍光を検出することによって、全血の細胞成分を同定し、分析し、定量化する方法。より特定的には、上述の方法は、約400nmから約450nmの範囲の波長を有する光源と、複数回のインフロー光学測定を用いることによって、全血の細胞成分を同定し、分析し、定量化することと、赤血球細胞を溶解させる必要なく、染色することとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の特定の実施形態は、自動血液分析器を用い、それぞれの細胞から散乱する光、それぞれの細胞に吸収される光を検出することによって、全血の細胞成分を同定し、分析し、定量化する方法に関する。より特定的には、上述の方法は、赤血球細胞を溶解させる必要なく、サンプルの1回希釈物を用い、複数のインフロー光学測定を用いることによって全血の細胞成分を同定し、分析し、定量化することを含んでもよい。
【背景技術】
【0002】
自動血液分析器の中には、米国特許第5,631,165号明細書および米国特許第5,939,326号明細書(両方とも参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、光散乱、消光、蛍光のような複数のインフロー光学測定を測定することが可能な光学ベンチが取り付けられているものがある。さらに、米国特許第5,516,695号明細書および米国特許第5,648,225号明細書(両方とも参照により本明細書に組み込まれる)は、白血球細胞を赤芽球と判別するために、赤血球細胞を溶解し、膜を溶解した赤芽球の核DNAを染色するのに適した試薬を記載している。膜が溶解した赤芽球は、膜が溶解を受けた赤芽球である。米国特許第5,559,037号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)は、サイトグラムの軸方向の光損失(ALL)が起こる軸に沿ったリンパ球クラスターの下に位置するような細胞片(例えば、溶解した赤血球細胞膜)から出るノイズ信号を排除するために三連のトリガ回路を用いることによって、赤芽球と白血球細胞差異を同時に検出することについて記載している。しかしながら、赤血球細胞を溶解するために溶解剤を用いると、白血球細胞の検出がある程度困難になり、複雑になる。溶解剤は、十分に強力ではない場合があり、その場合には、赤血球細胞が白血球細胞として計数されてしまうことがある。あるいは、溶解剤が強すぎる場合もあり、その場合には、白血球細胞の数は間違った状態で少なく計数されてしまうことがある。正確な白血球細胞の数を計数するために、異なるサンプルには、異なる強度の溶解剤が必要である。したがって、現時点で使用されているすべての血液分析器からは、時に、白血球細胞の間違った計数が得られることがあり、妨害基質として、溶解耐性のあるさまざまな種類の赤血球細胞が列挙されている。
【0003】
ヒト全血からパラメーターを決定するのを目的とした血液学的なアッセイでは、細胞数を単純に、迅速に、かつ正確に決定するための妨害になる生理学的因子が2種類存在する。その1つの因子は、典型的には、新鮮なヒト末梢全血において、白血球細胞1個に対し、赤血球細胞が約1,000個、血小板が約50個存在することである。他の因子は、血小板は、典型的には、大きさに基づいて他の細胞種と識別できるほど十分に小さく、一方、ほとんどの白血球細胞は、大きさに基づいて識別できるほど赤血球細胞または血小板のいずれかよりも十分に大きいが、2種類の細胞種(特に、赤血球細胞およびリンパ球、白血球細胞のサブタイプ)は、典型的には、大きさの分布(および散乱の特徴)が、大きさに基づいて識別すると大きな間違いが生じ得る程度までかなり重複している。したがって、主に大きさによる識別によって赤血球細胞を決定すると、時折、白血球細胞が赤血球細胞と間違って分類されるために、片方に偏った非対称な濃度が測定されることがあるが、一般的に、赤血球細胞の測定濃度の全体的な正確性には、適切な程度で影響を与えない。しかしながら、逆は真ではなく、リンパ球の濃度(ここから拡張して、白血球の全体的な濃度)を決定する際に、赤血球細胞による説明されてない妨害によって、正しく計数されずに、きわめて不正確な結果が得られることがある。
【0004】
その結果、この大きな非対称や、大きさの重複に対処する方法が従来技術で開発されており、現時点でも、受け入れ可能な時間枠で有用な結果を得ている。従来技術で用いられている一般的な方法には、分析対象の血液サンプルを少なくとも2つのアリコートに分け、片方は赤血球細胞と血小板の分析用とし、もう片方を白血球細胞の分析用とする方法がある。白血球細胞の分析用のアリコートを、赤血球細胞膜を優先的に攻撃するか、または白血球細胞の膜を攻撃するよりも早く、溶解試薬を含む試薬溶液と混合する。部分的には、損傷した膜からヘモグロビンが失われるという理由で、また、部分的には、この操作に伴って大きさが小さくなるという理由で、得られた溶解赤血球細胞は、それぞれの分散特徴に基づいて、リンパ球と識別可能になる。従来技術で使用される別の方法は、赤血球細胞と白血球細胞とを蛍光で識別するために核酸染料を用いることを含む。白血球細胞は、DNAを含む核を含んでいる。これらの白血球細胞は、蛍光標識によって同定されるが、成熟した赤血球細胞は、成熟プロセスにおいて核を捨て去っているため、白血球細胞は、成熟した赤血球細胞とは識別することができる。
【0005】
これらの両方法には欠点がある。第一に、赤血球細胞を溶解するために使用される溶解試薬は、白血球細胞も同様に攻撃してしまう可能性があり、白血球細胞の完全性が失われ、最終的にはこの細胞も溶解してしまう。このことは、ある種の病的な状態(例えば、慢性リンパ性白血病)によって白血球細胞が初期の段階ですでに脆くなっている場合には、特に問題となる。一方、通常、溶解に耐性があり、したがって、溶解を含む白血球細胞アッセイにおいて妨害物質として残る傾向があるような赤血球細胞の種類(例えば、新生児や、サラセミア、鎌状細胞貧血、肝疾患の患者にみられる細胞)が存在する。白血球細胞の分解、または溶解しなかった赤血球細胞による妨害の可能性(いずれも、全体的な白血球細胞濃度の測定の精度が悪くなる可能性がある)を減らすために、溶解剤の濃度、温度制御、インキュベーション時間の注意深い組み合わせを用いてもよい。ある場合には、ユーザは、異なる溶解条件を用いた数種類の試験の選択肢を提案され、それによって、ユーザは、被検体である患者サンプルに合わせてアッセイを調整する。しかしながら、このように調整することには、複雑な問題があり、さらに、患者の状態に対する事前の知識が必要であったり、または、標準的な総血球数(CBC)にしたがった反射試験として使用しなければならなかったりする。
【0006】
赤血球細胞とリンパ球とを判別する際の蛍光によるアプローチに関し、主な障害は、測定速度である。白血球細胞を、赤血球細胞および血小板と同時に測定する場合、赤血球細胞の存在が受け入れられないほど高速で同時に発生してしまうことなく、分析器に送ることが可能な濃度の上限値を設定し、ひいては、このような濃度を達成するために使用される希釈比率は、白血球細胞の事象が計数されるレートを制限し、分析器の予測される計数精度を得るために、白血球細胞の事象を獲得するのが比較的低速になり、そのために、長い獲得時間が必要となる。例えば、1個のサンプルから、1回の通過ですべての血液成分を測定するという概念は、米国特許第6,524,858号明細書に開示されている。この開示内容に示されているように、この方法は、1サイクル時間が88秒で可能であり、または約41CBC/hrが可能であろう。このスループットは、ほとんどの今日市販されている自動血液分析器によって達成可能なスループットよりもかなり低く、商業的な有用性をひどく制限している。別の例として、CELL−DYN(R)Sapphire(R)血液分析器は、現時点で、無傷の(溶解していない)赤血球細胞と、リンパ球とを識別することが可能な核酸染料を利用する、試験選別を提案している(赤血球細胞/血小板アッセイと、白血球細胞アッセイで使用されるサンプルに加え、さらなるアリコートを必要とする)。この試験選別は、成熟した赤血球細胞と、細胞質に染料を吸収するRNAが残っている未成熟な赤血球細胞の一部である網状赤血球とを主に識別するために染料を用いる。この同じアッセイを用いて、赤血球細胞または網状赤血球からの蛍光によって、望ましい精度を得るのに十分識別されるため、白血球細胞を計数することは技術的に可能であると思われるが、使用した希釈物中の白血球細胞の濃度が相対的に低い場合には、必要な統計学的精度を得るには、現実的でない選択肢である。このようなスキームは、約75秒の獲得時間を必要とし、スループットはたった48CBC/hrに制限される。したがって、このアプローチは理論的には実現可能であるが、このアプローチを商業的に実現可能なものにするには、より大きなスループットが必要となる。
【0007】
1回希釈によるアプローチには、多くの潜在的で魅力的な利点がある。そのひとつは、複数のアリコートを必要としないことである。この特徴は、血液サンプルと試薬溶液を混合するのに、(2種類以上の容器ではなく)必要な容器はたった1個でよく、混合容器に試薬溶液を運び、測定するために、1つのシステム(例えば、正確に計量するシリンジ、関連する駆動モーター、制御電子機器)だけでよいため、システムの流体構造を顕著に単純化する。また、付随して弁の数、弁アクチュエータの数、個々の管のセグメント数、望ましいアッセイを実施するのに必要な試薬の数および量が減る。別の利点は、赤血球細胞を溶解するプロセスを必要としないことである。この特徴は、溶解に耐性のある赤血球細胞、溶解傾向のあるリンパ球に関連する不確実性を顕著に減らし、時間を消費する、繊細な溶解インキュベーション時間の必要がなくなり、さらに、以前は別個であった試験選別を、1つの手順で組み合わせるため、分析器を操作するために用いられるソフトウェアの大部分が必要なくなる。別の利点は、記載した個々の変化に起因して、分析器の複雑さが全体的に減ることによるものである。
【0008】
さらに、付随的に複雑さを減らすことができる可能性がある。高スループットのために設計された血液分析器は、一般的に、内部に組み込まれたフローサイトメーター部品に加え、さらなる変換器、例えば、血液細胞の部分集合を計数し、大きさを測定し、同定するための1つ以上のインピーダンス変換器、血液のヘモグロビンに関連するパラメーターを決定するための測色変換器を備えてもよい。1回希釈によるアプローチは、分析器が、測定時に十分なレート、精度、正確性を達成することができるならば、さらなるインピーダンス変換器、測色変換器、またはインピーダンス変換器と測色変換器の必要性をなくすことができ、現実的にこれらを取り除くことができる。ヘモグロビンのバルク測定のための測色変換器は、赤血球細胞膜を溶解するのに強力な溶解剤を使用する必要があるため(溶解剤は、典型的には、白血球細胞アッセイで使用される、より穏やかな溶解剤に加えて使用される)、測色変換器がなくなれば、フローサイトメーター部品で使用される溶解剤に加え、さらに強力なオンボード溶解剤の必要もなくなる場合がある。(a)別個の測色変換器またはインピーダンス変換器、または両者を保持しつつ、従来技術のフローサイトメーター部品を、1回希釈による部品と単純に交換すること、または、(b)インピーダンス変換器および測色変換器のすべての機能を1回希釈用分析器にさらに組み込むことによって複雑さが減り、故障するパーツの数が減り、熱を発生する(ある種の構成要素の寿命を短くする可能性がある)構成要素の数が減るため、装置の信頼性がかなり向上する場合がある。このような潜在的な信頼性の向上は、同様に、単純化した装置構造(すなわち、構成要素の数が少ない装置)の保守性が高まるために、必要なメンテナンスが少なくてすみ、必要な修理依頼の電話が少なくなり、これらの電話によって生じる費用が減り、装置のサービスプロフィールも大きく向上させる。信頼性の向上以外に、装置構造が単純化すると、部品の数が減り、製造中の組み立てや試験作業が単純になるために、費用が安くなる。
【0009】
しかしながら、これらのすべての利点は、開示されている方法のスループットが低いことによって、従来技術では目立たなくなってしまっている。言い換えると、従来技術で開示されている1回希釈の特徴は、単に、優れた分析器の可能な要素というだけである。商業的な血液分析器で一般的に予想されるスループット性能、典型的には、ハイボリューム環境にあうように設計された分析器で予想されるスループット性能を提供するために、測定レートが速い、1回希釈によるアプローチを高めることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,631,165号明細書
【特許文献2】米国特許第5,939,326号明細書
【特許文献3】米国特許第5,516,695号明細書
【特許文献4】米国特許第5,648,225号明細書
【特許文献5】米国特許第5,559,037号明細書
【特許文献6】米国特許第6,524,858号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
赤血球細胞を溶解する必要なく、複数回のインフロー光学測定を用いることによって全血の細胞成分を同定し、分析し、定量化する方法を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
方法、およびこの方法を実施するための血液分析器が提供される。特定の実施形態では、血液分析器は、(a)全血サンプルが高速または低速で通り抜けて導入されるフローセルと;(b)フローセルに光を向けるための、約400nmから約450nmの範囲の波長を有するレーザーと;(c)複数の光学測定チャネルで、光と細胞との相互作用を検出するための複数の検出器と;(d)データ分析ワークステーションとを含み、このデータ分析ワークステーションは、i.フローセルに高速で導入されたサンプルの第1の部分から得られる複数回のインフロー光学測定を用い、サンプル中の白血球細胞を識別し、計数するためのプログラミングと;ii.フローセルに低速で導入されたサンプルの第2の部分から得られる複数回のインフロー光学測定を用い、サンプル中の赤血球細胞および血小板を識別し、計数するためのプログラミングとを含む。特定の場合に、ワークステーションは、さらに、iii.以下にかなり詳細に記載されるように、細胞ごとを基準としてヘモグロビンに関連するパラメーターを測定するためのプログラミングを含んでもよい。
【0013】
一態様では、この方法は、(a)光の消光、光散乱、蛍光を測定することが可能であり、約400nmから約450nmの範囲の波長を有するレーザーが設置された自動血液分析器を与えるステップと;(b)血液サンプルを希釈するための、特定の場合には、球化剤を含む希釈剤を与えるステップと;(c)全血サンプルを与えるステップと;(d)希釈剤と全血サンプルとを混合するステップと;(e)高速でサンプルを導入する複数回のインフロー光学測定を用いることによって、白血球細胞を識別し、計数するステップと;(f)低速でサンプルを導入する複数回のインフロー光学測定を用いることによって、赤血球細胞および血小板を識別し、計数するステップと;(g)複数回のインフロー光学測定を用い、ステップ(f)から得た赤血球細胞数を用いて個々の各赤血球細胞中のヘモグロビン濃度を測定することによって、全血サンプルのヘモグロビン濃度を測定し、全血サンプル中の赤血球細胞濃度を決定するステップとを含む。
【0014】
赤芽球細胞の濃度を測定するために、この方法は、(a)赤芽球の核を核染色剤で染色するステップと;(b)核染色から得られる消光、光散乱、蛍光のうち、少なくとも1つを用いることによって赤芽球を検出するステップと;(c)赤芽球と、他の細胞集合との分離を分析するアルゴリズムによって、赤芽球細胞を識別し、計数するステップといったさらなるステップを含む。
【0015】
赤血球細胞の集合全体における網状赤血球の割合を測定するために、この方法は、(a)網状赤血球をRNA染色剤で染色するステップと;(b)消光、光散乱、蛍光のうち、少なくとも1つを用いることによって網状赤血球を検出するステップと;(c)赤血球細胞の集合における蛍光シグナルの分布を分析するアルゴリズムによって、網状赤血球を識別し、サンプル中の赤血球細胞のうち、網状赤血球の割合を定量化するステップといったさらなるステップを含む。
【0016】
本明細書に記載される方法は、(a)全血サンプルの分析データを格納するステップと、(b)全血サンプルの分析結果を報告するステップと、(c)白血球細胞、赤血球、血小板、赤芽球、網状赤血球を計数し、識別するための少なくとも1つのアルゴリズムによって、全血サンプルを分析するステップとをさらに含んでもよい。
【0017】
一実施形態では、血液サンプルは、血液分析器のOpen Modeにおいて、手動による調製を行うことなく分析される(繰り返し反転させることによって、サンプル収集管におけるサンプルの均一化をしなくてよい)。希釈剤/シース試薬を用いてオンボード分析用に調製されるサンプルは、本明細書に記載される電気光学フローサイトメトリーシステムを流れ、このシステムの電子論理と、このシステムのアルゴリズムは、細胞のボリューム、細胞の屈折率、細胞の蛍光強度、細胞内の核の存在および形状、細胞内に細胞質の顆粒が存在するか、およびその量、2種類以上の光学測定の組み合わせから構築されたサイトグラムにおける、各細胞クラスターの位置およびパターン、または選択した軸に沿った光学測定の画像から構築されるヒストグラムに基づいて、それぞれの細胞集合を識別する。理解されるように、流量が大きな状態で測定を行うと、細胞のすべてが1個の配列にはならない。流量が大きな状態で、白血球細胞(WBC)は、個々の細胞が良好に分離した状態で1個の配列に並んでいると思われ、赤血球細胞(RBC)は、頻繁に、WBCと同じ位置にある場合がある。流量が大きな状態で、IASトリガによって、分析器はRBCを無視することができる。流量が小さな状態で、RBCは、一般的に、計数可能な状態で1個の配列になるはずである。中間角散乱(IAS)トリガによって、白血球細胞からのシグナルを定性する。有効な白血球細胞のシグナル(すなわち、白血球細胞から発生したシグナル)として定性化されるためには、このシグナルの大きさが、中間角散乱(IAS)トリガによる閾値よりも上でなければならず、このシステムのアルゴリズムは、複数の光学検出器から得たシグナルの強度、クラスターの形状および数を用いることによって、白血球細胞の部分集合を識別するという機能を発揮する。
【0018】
約400nmから約450nmの範囲の波長を有するレーザーを用いると、赤血球細胞を白血球細胞から分離するのに役立つ。上述のレーザーを用いると、血液分析器を、白血球細胞の正確な数を得るために、赤血球細胞の溶解剤を必要とせずに機能させることができる。
【0019】
一実施形態では、分析器は、サンプル中のすべての細胞を計数するために、全血の1回希釈物を1個使用する。この計数は、希釈した血液をフローセルに導入するのに、2種類の異なるサンプル導入レートを用いることによって行われる。白血球細胞の計数は、血小板および赤血球細胞を除外するために、十分に高速のサンプル導入レートと、中間角散乱(IAS)トリガを使用する。赤血球細胞および血小板を計数するための全体的なサンプル導入レートは、白血球細胞を計数する際に用いられる全体的なサンプル導入レートよりも遅い。この技術によって、40秒に満たない計数時間で、十分な数の白血球細胞事象を集めることができる。希釈したサンプルをフローセルに導入するのは、注入によって行ってもよい。実際のサンプル導入レートは、過度な実験を行うことなく、当業者が決定することができる。例えば、特定の実施形態では、低速のサンプル導入レートは、約1,000から50,000細胞/秒(通常の成人の血液で典型的に見られる濃度を有するサンプルの場合)の範囲であってもよく、一方、特定の実施形態では、高速のサンプル導入レートは、約50,001から300,000細胞/秒(通常の成人の血液で典型的に見られる濃度を有するサンプルの場合)の範囲であってもよい。
【0020】
上の実施形態に加え、本発明の装置および方法は、現行の血液分析器およびフローサイトメーターで従来から用いられている対応する構成要素の数を減らすような構成要素を用いてもよい。これらの構成要素は、(a)溶解剤を含まず、i.希釈剤、ii.RNAを染色する蛍光染料およびDNAを染色する蛍光染料、または、RNAおよびDNAにそれぞれ優先的に結合する2種類の異なる染料の組み合わせを含む、試薬システム;(b)サンプルの一部分を運ぶことが可能な、サンプル吸引アセンブリ;(c)このような部分を保持し、このような一部分と、試薬溶液とを混合するための1個の容器;(d)適切な量の試薬をサンプルアリコート容器に計量し、運ぶための、1つ以上のサブシステム;(e)サンプルのアリコートと試薬を含む得られた溶液を光学フローセルに入れるための、1個のサブシステム;(f)サンプルの経路を洗浄し、廃棄物を捨てるのに必要な流体要素である。特定の場合には、希釈剤は、以下に示すような、RBCの検出で使用することが可能な球化剤を含んでもよい。明らかであろうが、希釈剤および染料を、互いに別個に保存してもよく、特定の場合には、使用前に互いに合わせてもよい。
【0021】
一実施形態では、分析器は、バルク検出およびヘモグロビン定量化のための測色変換器と、適切な流体と、このような変換器で実施されるヘモグロビンアッセイを補助するのに必要な適切な電子機器とを備えている。別の実施形態では、分析器は、ヘモグロビンのバルク測定のための別個の測色変換器を備えておらず(それにより、流体および補助電子機器の必要がなく)、このような変換器のヘモグロビン定量化機能が、フローセルの機能に組み込まれており、この分析器で、溶解剤を含まない1回希釈アッセイが行われる。
【0022】
さらに、血液サンプル中の網状赤血球および有核赤血球細胞を同定し、計数する方法が提供される。特定の実施形態では、この方法は、(a)約400nmから約450nmの範囲の波長を有するレーザーを備えた自動血液分析器を与えることと;(b)蛍光染料、例えば、SYTO類を含む希釈剤と、全血サンプルとを混合し、サンプル中の網状赤血球および有核赤血球細胞を蛍光染料で染色することと;(c)自動血液分析器を用い、蛍光染料が発した蛍光を検出することによって、サンプル中の網状赤血球および有核赤血球細胞を検出することとを含む。特定の場合には、血液サンプルを、以下に示すように、高速および低速で分析器のフローセルに導入してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、差を分析するための複数の検出チャネルにおいて、細胞から発生するシグナルに適した装置の照射および検出光学部品を示す概略図である。
【図2】図2は、溶解剤を必要としない1回希釈用分析器の導入に伴って、サブシステムが減り、全体的な複雑さが低下していることを示すフローチャートである。
【図3】図3は、溶解していない全血のサイトグラムであり、光源の波長は、405nmであった。血小板、赤血球細胞、白血球細胞が明確に分離されていることがわかる。計数される白血球細胞の数は、他の集合と比較すると少なすぎ、白血球細胞の識別を行うことができない。収集される白血球細胞の事象の割合を増やすために、サイトグラムのIAS軸で約8000に対応する中間角散乱(IAS)トリガの閾値が必要である。
【図4】図4は、高速でサンプルを導入し(注入)、チャネルでの中間角散乱(IAS)トリガが7000である、溶解していない臨床血液サンプルの白血球細胞のサイトグラムである。白血球細胞の差が示されており、単球は、文字「M」で示された領域にあり、リンパ球は、文字「L」で示された領域にあり、好中球は、文字「N」で示された領域にあり、好酸球は、文字「E」で示された領域にある。この分類は、クラスタリングアルゴリズムを用いずに行われる。
【図5】図5A、図5B、図5C、図5Dは、WBCおよびリンパ球の計数を妨害する溶解耐性のあるRBCを含むサンプルを示す、従来技術のサイトグラムであり、リンパ球の割合は95%を示している。サイトグラムは、溶解強度の低い従来の溶解剤を用い、CELL−DYN(R)Sapphire(R)血液分析器によって作成した。レーザーの波長488nmは、本明細書に記載される範囲(すなわち、400nmから450nm)内ではなかった。
【図6】図6A、図6B、図6C、図6Dは、図5A、図5B、図5C、図5Dと同じサンプルを示すサイトグラムであり、リンパ球の割合は48%を示している。サイトグラムは、溶解強度の高い従来の溶解剤を用い、CELL−DYN(R)Sapphire(R)血液分析器によって作成した。レーザーの波長488nmは、本明細書に記載される範囲(すなわち、400nmから450nm)内ではなかった。
【図7】図7A、図7B、図7C、図7Dは、図5A、図5B、図5C、図5Dと同じサンプルを示すサイトグラムであり、リンパ球の割合は55%を示している。サイトグラムは、溶解強度が中程度の従来の溶解剤を用い、CELL−DYN(R)Ruby(R)血液分析器によって作成した。レーザーの波長633nmは、本明細書に記載される範囲(すなわち、400nmから450nm)内ではなかった。
【図8】図8は、図5A、図5B、図5C、図5Dと同じサンプルを示すサイトグラムであり、リンパ球の割合は12%を示している。サイトグラムは、405nmレーザーと、本明細書に記載の1回希釈技術を用いる試作品の血液分析器によって、溶解剤を用いずに作成した。リンパ球は、文字「L」で示される領域にある。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で使用される場合、「軸方向の光損失」および「ALL」という表現は、粒子がレーザー光を通過する場合に、典型的には0°(そのシステムの光軸)から約1°までの角度範囲内で検出器によって測定される(試験中に細胞または粒子から測定される)、レーザー光からの光損失合計の測定値を指す。このパラメーターは、散乱および吸収による光損失を含む、光の消光測定に関連し、吸収がない状態では、光学検出システムを通過する細胞または粒子の大きさと広範囲で相関関係にある測定値である。
【0025】
本明細書で使用される場合、「小角散乱」および「SAS」という表現は、約1°から約3°の小さな角度で、光の前方散乱の測定値を指す。特定のレーザー光波長、例えば、波長633nmで、このパラメーターは、細胞の大きさを測定することと関係がある。特定の他のレーザー光波長、例えば、波長405nmでは、このパラメーターは、細胞の屈折率を測定することと関係があり、例えば、ヘモグロビンのような細胞質内容物の測定値である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「中間角散乱」および「IAS」という表現は、約3°から約10°の中程度の角度で、光の前方散乱の測定値を指す。このパラメーターは、細胞の複雑性の測定と広く関係がある。本明細書で使用される場合、用語「複雑性」は、細胞の組成を指す。ある細胞は、ミトコンドリア、リボソーム、核を含んでおり、他の細胞は、上の成分の1つ以上の含んでいない。IASの測定強度は、サイトメーターの照射ビームを通過する細胞(または粒子)の内容物の不均質さにある程度依存する。IASシグナルの強度は、細胞内容物の複雑性(すなわち、例えば、核、液胞、ミトコンドリアなどの細胞小器官の存在)の測定値であると考えてもよい。特定のレーザー光波長では、IASシグナルの強度は、細胞の平均屈折率に関する情報もさらに保有している。
【0027】
本明細書で使用される場合、「偏光側方散乱」および「PSS」という表現は、90°を中心と刷る円錐形に散乱し、約10°から約75°の半値幅角を有する、偏向した(すなわち、偏光を維持している)光を指す。このパラメーターは、多葉性の測定に広く関係する。細胞核は、種々の形状を有しており、1から5個(端値を含む)の葉を持ってもよい。複数の葉を持つ核を有する細胞の代表例は、分葉核好中球が挙げられ、多葉性がより大きいことは、PSSシグナルの増加と相関関係をもつ傾向がある。
【0028】
本明細書で使用される場合、「非偏光側方散乱」および「DSS」は、90°を中心とする円錐形に散乱し、約10°から約75°の半値幅角を有する、脱偏光した(すなわち、偏光が回転する)光散乱を指す。このパラメーターは、粒度の測定に広く関係がある。白血球の主要なサブクラスは、好中球、好酸球、好塩基球を含む細胞分類である顆粒球であり、細胞質に顆粒が存在することを特徴とする。好酸球の顆粒の一部分は、結晶性の配置を示しており、これにより、DSSシグナルが増加する。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「トリガ」は、電気シグナルが有効であるとみなされるために超えなければならない最小電圧を意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「赤芽球」は、赤血球へと成長する、骨髄中の任意の有核細胞を意味する。本明細書で使用される場合、用語「赤血球」は、ヘモグロビンを含み、血液の色の原因となっている、赤色がかった、核のない円板状の血液細胞を意味する。
【0031】
好ましくは、ALL、SAS、IASを測定するため、またはALL、SAS、IASのうち一部を測定するために、またはALLを測定するために、フローセルから発せられる光の経路に1つ以上の検出器が配置されるか、SASおよびIAS、同様にPSSおよびDSSをあわせた範囲を測定する検出器が配置される。ALLを測定するサブシステムは、レーザー照射の主要な光線で伝わる光を集め、散乱を測定するサブシステムは、主要な光線の外側の光を集める。ALLを測定するサブシステムにおいて、目的のシグナルは、定常状態のレーザーシグナルから引き算された負のシグナルであり、一方、散乱を測定するサブシステム(SAS、IAS、PSS、DSSを含む)では、シグナルは、非常に小さなバックグラウンド光レベルに加わった、小さな正のシグナルである。IASを集めることは、SASを集めることと同様であり、但し、IASは、入射レーザー光から、大きな角度で散乱している。好ましい実施形態では、ALLは、水平方向に約0.3°、垂直方向に約1.2°の半値幅角を有する(システムの光軸から測定される)検出器で集められ、IASは、レーザーの軸から約2°から約10°の範囲の角度にある検出器によって集められる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「Open Mode」という表現は、ヒト操作者が自動装置の開放している管にサンプルを有する方法を意味する。本明細書で使用される場合、「Closed Mode」という表現は、ロボット機械によって自動装置の封をした管にサンプルを有する方法を意味する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「細胞を測定する」という表現は、細胞を特定の染料または蛍光色素を用いて染色するときに、光学測定技術を用いることによって、細胞を調べ、例えば、大きさ、屈折率、複雑性、多葉性、粒度、蛍光を決定することを指す。
【0034】
対象物の名称の後に続く「(s)」という記号は、その1個の対象物または複数の対象物の言及を含む記述の情況によって、その対象物が1個だけであること、または複数であることのいずれかを指していることを示す。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「白血球」は、白血球細胞を意味する。赤血球細胞とは異なり、白血球細胞には、多くの異なる種類がある。白血球の例としては、顆粒球(これは、さらに、例えば、好中球、好酸球、好塩基球に分けられる)、リンパ球、単球が挙げられる。「参照方法」という表現は、ある試験方法と比較する従来技術の方法を意味する。
【0036】
用語「鎌状細胞」は、鎌に似た形状の赤血球細胞を意味する。鎌状細胞は、典型的には、溶解試薬に耐性がある。
【0037】
用語「サラセミア」は、骨髄が、十分に赤血球を作り出すことができず、赤血球の生存率も低い、遺伝的な血液障害に関する。
【0038】
用語「リンパ球」は、リンパ節、脾臓、他のリンパ組織で成熟し、血液に入り、体中を循環する白血球細胞を意味する。
【0039】
「有核赤血球細胞」および「赤芽球」という表現は、まだ核を含んでいる未成熟な赤血球細胞を意味する。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「ノイズ」は、限定されないが、粒子状の形態、細胞片、および血小板の塊中の、溶解した赤血球細胞のような基質を意味する。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「事象」は、1つ以上の検出器、例えば、IAS検出器のトリガとなるのに十分なシグナルを発生し、分析器上で可能な検出器全てにおいて、粒子の測定値(例えば、ALL、IAS、PSS、DSS)を集めるために、検出器が分析器にシグナルを送るような粒子を意味する。粒子は、限定されないが、白血球細胞(WBC)、赤血球細胞(RBC)、RBCフラグメント、血小板(PLT)、脂質、血小板の塊である。
【0042】
本明細書で使用される場合、「希釈剤」、「シース」、「シース希釈剤」、「希釈剤/シース」などの用語および句は、CELL−DYN(R)Sapphire(R)、CELL−DYN(R)Ruby(R)、CELL−DYN(R)3000シリーズ、CELL−DYN(R)4000シリーズの血液分析器のような血液分析器とともに用いるのに適した種類の希釈剤およびシース液として使用される試薬を意味し、この試薬は、Abbott Laboratories(サンタクララ、CA)を含む種々の供給源から市販されている。
【0043】
特定の場合には、血液分析器は、光源、レンズまたはレンズシステム、フローセル、適切な検出器を含んでもよく、フローサイトメトリーの構成要素およびその機能は、当業者にはよく知られている。例えば、米国特許第5,017,497号;第5,138,181号;第5,350,695号;第5,812,419号;第5,939,326号;第6,579,685号;第6,618,143号;米国特許公開第2003/0143117号、第US20080153170号、第US20080158561号、第US20080268494号を参照。ここに、例示的な光源、レンズ、フローセル、検出器について、非常に詳細に記載されている。上述の参考文献は、すべて、参照により本明細書に組み込まれる。本発明で用いるのに適したレーザー、レンズ、フローセル、検出器は、Abbott Laboratories(サンタクララ、CA)を含む種々の製造業者から市販されている。
【0044】
本明細書に記載される方法の特定の場合は、液体(例えば、血液)中の、白血球細胞、白血球細胞の差(サンプル中の好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球の比率を特定し、場合により、さらなる未成熟白血球細胞の種類、例えば、未成熟な顆粒球、芽細胞、桿状好中球、変形リンパ球)、赤芽球、網状赤血球、赤血球細胞、血小板を同時に分析するための自動方法を含む。他の生体液(例えば、脳脊髄液、腹水、胸膜液、腹腔液、心膜液、滑液、透析液、排液)を用い、これらの流体の種々のパラメーターを決定してもよい。
【0045】
例示的な血液分析器の光学部品を図1に模式的に示す。当業者は、構成要素の選択、数および設計(例えば、使用するレーザーの種類、光学要素の数および仕様など)は、分析器間で大きく変わってもよく、このように、図1の血液分析器は、一例として与えられており、本開示を限定するために使用すべきではないことを認識する。例えば、特定の場合、血液分析器は、蛍光を検出してもよく、検出しなくてもよい。
【0046】
図1を参照すると、一実施形態では、装置10は、光源12と、光線を曲げるための前方の鏡14と、後方の鏡16と、第1の円柱レンズ20と第2の円柱レンズ22とを有する光線拡大モジュール18と、集束レンズ24と、光線精密調節器26と、フローセル28と、前方散乱レンズ30と、ブルズアイ検出器32と、第1の光電子増倍管34と、第2の光電子増倍管36と、第3の光電子増倍管38とを含む。ブルズアイ検出器32は、ALL検出のための内側検出器32aと、IAS検出のための外側検出器32bとを有している。
【0047】
以下の説明において、光源は、レーザーであってもよい。しかしながら、例えば、ランプ(例えば、水銀、キセノン)、発光ダイオード(LED)、高輝度LEDのような他の光源を用いてもよい。光源は、約400nmから約450nm、例えば、約400nmから約430nmの範囲の波長で光線を発してもよい。例えば、約405nmまたは約413nmの波長で光を発するレーザーを用いてもよい。一実施形態では、光源12は、Coherent,Inc.(サンタクララ、CA)から市販されている垂直偏光の405nmダイオードCubeレーザーであってもよい。レーザーの操作条件は、自動血液分析器で現在使用されているレーザーと実質的に同じであってもよい。
【0048】
例示的なフローセル、例示的なレンズ、例示的な集束レンズ、例示的な光線精密調節機構、例示的なレーザー集束レンズに関するさらなる詳細は、米国特許第5,631,165号(参照により本明細書に組み込まれる)に見いだすことができ、特に、第41欄第32行から第43欄第11行に見いだすことができる。図1に示される例示的な前方光路システムは、球形の平凸レンズ30と、このレンズの後焦点面に配置されている2要素の発光ダイオード検出器32とを含む。この構造で、2要素の発光ダイオード検出器32内にあるそれぞれの点は、フローセル28を通って移動する、細胞からの光の特定の収集角度に沿って描かれている。検出器32は、ALLおよびIASを検出することが可能なブルズアイ検出器であってもよい。米国特許第5,631,165号は、第43欄第12から52行に、この検出器に代わる種々の代替例を記載している。
【0049】
この例において、第1の光電子増倍管34(PMT1)は、DSSを測定する。第2の光電子増倍管36(PMT2)は、PSSを測定し、第3の光電子増倍管38(PMT3)は、使用する蛍光染料の発光スペクトルと一致する波長範囲の蛍光(例えば、450nm付近から550nm付近)を測定する。側方散乱および蛍光発光は、効率のよい検出を可能にするのに必要な波長を有効に伝え、反射するダイクロイックビームスプリッタ40およびビームスプリッタ42(場合により、偏光スプリッタ)によってこれらの光電子増倍管に向かう。米国特許第5,631,165号は、第43欄第53行から第44欄第4行に、例示的な光電子増倍管に関する種々のさらなる詳細を記載している。
【0050】
特定の場合に、簡単にわかるであろうが、蛍光検出システムで使用されるフィルタ(例えば、光電子増倍器38の前方にあるフィルタ56)は、レーザーによって作られる光をフィルタリングし、それによって、蛍光のみが光電子増倍器に到達するようにしてもよい。一実施形態では、波長405nmを有するレーザーと共に用いるのに適した蛍光フィルタを使用する。
【0051】
特定の場合には、浸漬集光システムを用いることによって、感度は光電子増倍管34、36、38にて高められてもよい。浸漬集光システムは、屈折率を合わせた層を用いることによって光学集光器サブシステム44の第1のレンズをフローセル28に光学的に接続し、広い角度にわたって光を集めることができるようにしたものである。米国特許第5,631,165号は、この光学システムに関し、第44欄の第5から第31行に、種々のさらなる詳細を記載している。
【0052】
集光器44は、高解像度顕微鏡で用いられる回折限界での画像形成に十分な収差補正を有する光学レンズサブシステムである。米国特許第5,631,165号は、第44欄の第32から第60行に、この光学システムに関する種々のさらなる詳細を記載している。
【0053】
図1に示される他の構成要素(すなわち、スリット46、対物レンズ48、第2のスリット50)の機能は、米国特許第5,631,165号の第44欄第63行から第45欄第15行に記載されている。光電子増倍管34および36は、側方散乱(入射レーザー光に対してほぼ垂直の軸をもつ円錐形に散乱する光)を検出し、一方、光電子増倍管38は、蛍光(入射レーザー光とは異なる波長で細胞から発生する光)を検出する。
【0054】
ほとんどの測定では、使用する唯一の試薬は、シース希釈剤である。使用されるシース希釈剤は、現行の血液分析器(例えば、CELL−DYN(R)3000シリーズおよびCELL−DYN(R)4000シリーズの血液分析器)で使用されるのと異なる必要はないが、所望な場合、異なる配合物を用いてもよい。シース希釈剤は、サンプル中の赤血球細胞において球面を作り出すために使用される界面活性剤を試薬要素として含んでもよい。
【0055】
網状赤血球および有核赤血球細胞(NRBC)を検出するために、核酸染料を使用してもよい。本明細書に記載される方法で使用するのに適した蛍光核酸染料としては、限定されないが、すべてLife Technologiesから市販されているSYTO 40、SYTO 41、SYTO 42、SYTO 43、SYTO 44、SYTO 45のような青色/紫色の光を発する細胞透過性のシアニン核酸染色(例えば、Wlodkowic(2008)Cytometry A73,496−507)、および、SYTO染料と同様の吸収発光スペクトルを有する他の細胞透過性の染料、例えば、約425から約440nmの範囲(例えば、約428nmから約435nmの範囲)に吸収最大を有し、約450nmから約465nmの範囲(例えば、約452nmから約463nmの範囲)に発光最大を有する染料が挙げられるが、特定の場合には、これらの範囲からはずれる発光/吸収最大を有する染料を利用してもよい。このような染料を、本明細書ではまとめて「SYTO」染料と呼ぶ。本方法で利用可能な核酸染料は、使用されるレーザーの波長で光を吸収し、このレーザーの波長とは異なる波長で光を発してもよく、それによって、蛍光を検出することができる。一実施形態では、核酸染料は、サンプル中のRNAにもDNAにも結合する。代替的な実施形態では、2種類の別個の核酸染料を用い、片方は、RNAに優先的に結合し、他方は、DNAに優先的に結合する。好ましい実施形態では、この方法で使用される1種類以上の核酸染料は、蛍光のバックグラウンドが小さくなり、シグナルとノイズの比率が大きくなるため、結合すると蛍光が強くなる。
【0056】
約400nmから約450nmの範囲の波長を有するレーザーを用い、前方散乱(IAS)のトリガ値によって、赤血球細胞を白血球細胞と識別することができる。低いIASトリガ値は、血小板と赤血球細胞とを識別し、それによって、これらの細胞を計数することができる。高いIASトリガ値は、白血球細胞を同定し、それによって、白血球を計数し、赤血球細胞と血小板を自動的にはじくことができ、白血球細胞の差を知ることができる。低いトリガ値は、特定の場合では、0.1Vであってもよい。しかしながら、この値は、IAS検出器によって集められる角度範囲、光の収集効率、IAS(中間角散乱)検出器として用いられる発光ダイオードの量子効率、発光ダイオードのゲイン、使用する任意のプリアンプおよびアンプのゲインのような因子によって変わり、そのため、トリガ値は、これらの因子に依存して、0.005Vから10V、例えば、2.3Vであってもよい。
【0057】
測定プロセスは、シース希釈剤で希釈され、同時発生度が満足のいくほど低くなるような赤血球細胞の測定レートで注入される細胞の流れとして始まり、シース溶液によって囲まれた層流のサンプル流としてフローセル28を通って流れる。照射されたボリュームは、流体力学的に集められた細胞流による流動軸に垂直な方向と、レーザー光の垂直なビームウエストによる流動軸と平行な方向の2方向に結合しており、約17マイクロメートルである。サンプル流中の希釈したサンプルの流量は、赤血球細胞および血小板のアッセイの場合、約0.5マイクロリットル/秒であり、白血球細胞のアッセイの場合、約5マイクロリットル/秒である。
【0058】
図2は、本方法の一例を示す。図2を参照すると、サンプル調製の最初の段階は、従来技術の段階と類似してもよく、サンプルのローディング(1702)、サンプルの均一化(1704)、サンプルの吸引(1706)といった類似のステップを有する。従来技術とは対称的に、処理のために1回のボリュームのサンプルを用いるため、サンプルのアリコートを与えるステップは、なくてもよい。従来技術の3個以上の別個のアッセイを、1個のアッセイ(1710)に合わせてもよく、これにより、従来技術において、赤血球細胞および血小板のパラメーターのためのアッセイ、白血球細胞、白血球細胞の差、有核赤血球細胞のパラメーターのためのアッセイ、網状赤血球のパラメーターを定量化するためのアッセイ、ヘモグロビンに関連するパラメーターを定量化するためのアッセイを必要とするパラメーターが得られる。所定ボリュームのサンプルを1個の容器に運び(1714)、希釈剤溶液を計量し(1712)、同じ容器に運んだ(1716)。一実施形態では、希釈剤/シース試薬と血液との比率は、約100:1である。得られた混合物を均質化し(2318)、次いで、得られた混合物を、試薬の性質(例えば、1種類以上の核酸染料を使用するかどうか)、血液サンプルで行われるのが望ましいアッセイの種類(例えば、網状赤血球アッセイ、赤芽球アッセイ、またはこの両方のアッセイを標準的なCBCに加えて行う)に依存して、所定時間インキュベートする。次いで、サンプルと試薬溶液の混合が行われ(1722)、すぐにフローセルを通し、ここでフローサイトメーター測定を行う(1724)。連続して処理すべき別個のサンプル混合物はないので、したがって、このサンプルは、廃棄に向かい、フローセルを洗浄し(1726)、それによって、すぐに別のサンプルに進むことができる。白血球細胞の差を測定する場合、フローセルへのサンプル注入レートは、赤血球細胞および血小板に用いるレートよりも大きなレートを使用する。
【0059】
フローセル測定から得たシグナルを、アルゴリズムによって処理し、分析する(1728)。このシステムのアルゴリズムは、各検出器チャネルで各細胞について記録された光学シグナル強度、2種類以上の光学測定の組み合わせから構築されたサイトグラムにおける、各細胞クラスターの位置およびパターン、または選択した軸に沿った光学測定の画像から構築されるヒストグラムに基づいて、それぞれの細胞の集合を識別してもよい。
【0060】
特定の実施形態では、このデータを分析するための普遍的なクラスタリングアルゴリズムを用いてもよい。このようなアルゴリズムは、任意の種類のデータとともに満足のいく程度で行うことができる。このような不変的なクラスタリングアルゴリズムを以下に記載する。
【0061】
不変的なクラスタリングアルゴリズムは、高次元の空間(2より大きい)で同様の事象(クラスター)の群を作成することができる。アルゴリズムは、任意の自動血液分析器で、任意の試薬を用いて機能させることができる。これは、データに基づくアルゴリズムの第1のステップである。従来技術のアルゴリズムは、知識に基づくものであり、すなわち、探究するものは、ある程度知られているものであり、データは、それに従って分類される。知識に基づくアルゴリズムは、データが予想されるものではなかった場合、異常な結果をもたらしてしまう場合がある。知識に基づくアルゴリズムの仮定が、そのデータについてなされるために、その仮定によって定義されるセットの外側にあるデータセットは、正しく分析されない場合がある。
【0062】
データに基づくアルゴリズムは、たとえそのデータが予測されない事象を含んでいる場合であっても、任意のデータを用いて機能させることができる。このようなアルゴリズムは、常に、主要なクラスターを与えることができる。この種のアルゴリズムのスループットに基づいて、観察されるデータの種類を決定することができ、次いで、詳細な分析に適したアルゴリズム(知識に基づくアルゴリズムを含む)を使用することができる。クラスタリングアルゴリズムによって、データの種類を粗く分類することができ(ある場合には、広範囲な仮定に基づいて)、その後に、第2のアルゴリズムを行い、より厳密な仮定に基づいて詳細な分類を行う。
【0063】
以下に、クラスタリングアルゴリズムによるアプローチの一実施形態を記載する。クラスタリングルーチンのk−meansを用い、約10クラスターの初期セットを得る。10という数は、分析対象のデータセットに存在すると予想される、意味のあるクラスターの数よりも高くなるように選択される。k−meansのルーチンに戻った後、クラスターを、その距離の測定値にある程度基づいてまとめる。距離閾値の固定値を使用してもよく、2つのクラスター間の距離が、この値より小さい場合、そのクラスターをまとめることができる。カットオフ値より互いに近いところに残っているクラスター対が存在しなくなるまで、まとめ続ける。k−meansのルーチンとは異なり、本明細書に記載されるクラスタリングルーチンは、可変数のクラスターを戻す。
【0064】
本明細書に記載されている距離の測定は、クラスターの位置とクラスターの広がりの組み合わせである。
【0065】
特定の場合には、データを、点からアサインしたクラスター中心までの平方の合計が最小になるように、点をk群に分配する目的をもつk−means法によってクラスター化する。最小になったら、すべてのクラスター中心は、そのVoronoiセット(クラスター中心に最も近いデータ点のセット)の平均に存在する。
【0066】
HartiganおよびWongのアルゴリズム(Hartigan、J.A.およびWong、M.A.(1979)、「Algorithm AS 136:A K−means clustering algorithm」、Journal of the Royal Statistical Society、Series C(Applied Statistics)28、100−108)をデフォルトで使用してもよい。特定の場合、特定のアルゴリズム、例えば、MacQueen(MacQueen、J.(1967)、「Some methods for classification and analysis of multivariate observations」、Proceedings of the Fifth Berkeley Symposium on Mathematical Statistics and Probability,eds L.M.Le Cam & J.Neyman、1967 1、pp.281−297.Berkeley、CA:University of California Press)、Lloyd(Lloyd、S.P.(1957)、「Least squares quantization in PCM」、Technical Note、Bell Laboratories.Published in 1982 in IEEE Transactions on Information Theory 28、128−137)およびForgy(Forgy、E.W.(1965)、「Cluster analysis of multivariate data:efficiency vs.interpretability of classifications」、Biometrics 21、768−769)に記載されるようなものを使用してもよい。また、Hartigan−Wongアルゴリズムを使用してもよいが、数回のランダムスタートによる試行が推奨されることが多い。Lloyd−Forgy方法以外にも、kクラスターは、数が特定されている場合には常に戻される。初期の中心のマトリックスが与えられる場合、1つ以上の中心に最も近い点がないこともあり得、現時点では、これはHartigan−Wong方法によるエラーである。上の刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
使用されるクラスタリングアルゴリズムは、データに関してなんら仮説を必要としない。使用されるクラスタリングアルゴリズムは、観察されるデータの主要な要素の十分な概要を戻すことができる。観察されるデータから、観察されるサンプルの種類についての仮説を作成することができる。次いで、直面する異なるサンプルに合わせた詳細なアルゴリズムを使用してもよい。
【0068】
クラスタリングアプローチを分類アルゴリズムの第1ステップとして用いると、サンプルを非常に良好な粗く分類することができ、次いで、適切な詳細なアルゴリズムを実行することができる。クラスタリングアルゴリズムの第2の利点は、例えば、未成熟の顆粒球のような小さな集合をより正確に特定することができることである。
【0069】
本明細書に記載される方法の特定の実施形態には、利点がある。特定の場合には、溶解剤を必要とせず、そのため、白血球細胞の計数の正確度が増す。さらに、特定の場合には、溶解ステップを必要とせず、そのため、分析器のスループットが大きくなる。強いヘモグロビンシグナルによって、計数のために細胞がフローセルを通るにつれて、細胞ごとに赤血球細胞中のヘモグロビン濃度を測定することができる。さらに、特定の場合には、方法は、血液サンプルの1回希釈のみを必要とし、そのため、血液分析器の流体工学的に単純化することができる。
【0070】
本明細書に記載される方法の特定の実施形態は、標準的な総血数の計数に必要な別個の処理ステップの数、総血数を得るために用いられる試薬の数および量、製造コスト、操作中の失敗リスク、メンテナンスおよび修理の費用において、分析器の複雑性を顕著に低減する。さらに、本明細書に記載されている装置および方法は、白血球細胞のアッセイ中に赤血球細胞を溶解する必要をなくすことができ、それによって、白血球細胞の計数の妨害がなくなり、溶解耐性のある赤血球細胞(例えば、鎌状細胞、標的細胞、新生児に由来する赤芽球を含む)からの差分アッセイを行わなくてよい。
【0071】
一実施形態では、赤血球細胞を溶解するためのインキュベーションステップは行われず、特定の実施形態では、従来の方法の複数のアッセイを1回のアッセイで合わせる。例えば、従来技術の溶解手順の2回以上のそれぞれの送出サブシステムで、本発明の1回希釈による手順を採用することによって除外されるサブシステムとしては、以下の構成要素を上げることができる。(a)正確な計量シリンジ;(b)シリンジアセンブリ;(c)シリンジステッパーモーター;(d)ステッパーモーター駆動ボード;(e)いくつかの長さの非対応の管;(f)いくつかのピンチ弁;(g)ピンチ弁を操作する、対応するパイロット弁、または、ピンチ弁を操作するソレノイド;(h)パイロット弁またはソレノイドを動かす電子ボード要素;(i)1アリコートのサンプルと、計量した試薬とを混合するために使用される容器;(j)サンプルのアリコートと試薬溶液とを混合するために用いられるモーター;(k)混合モーター駆動ボード;(l)ステッパーモーター、混合モーター、いくつかのパイロット弁またはソレノイドを制御するためのファームウェア;(m)ステッパーモーター、混合モーター、いくつかのパイロット弁またはソレノイドのための電源;(n)パイロット弁またはソレノイドを操作することに起因するフローパネルから発生する熱を除去するためのファン。CELL−DYN(R)Sapphire(R)血液分析器を例として挙げると、フローサイトメトリー測定を支える3種類の試薬送出サブシステムが現時点で用いられており(赤血球細胞/血小板アッセイ用;白血球細胞、白血球細胞の差、有核赤血球細胞のアッセイ用;任意要素の網状赤血球アッセイ用)、本明細書に記載されている装置および方法を採用すると、試薬送出サブシステムは1つに減る。インピーダンス測定を支える(細胞ボリュームの決定のための)サブシステムまたは測色測定を支える(ヘモグロビンのバルク決定のため)サブシステムに影響を及ぼす必要はない。しかしながら、溶解を行わない1回希釈アプローチに用いる装置および方法によって、商業的な血液分析器で必要とされる、報告可能な全てのパラメーター(平均細胞ボリュームおよび全体的なヘモグロビン濃度を含む)を与えることができるため、これらのサブシステムも、単純さ、信頼性、費用というさらなる利点のために、場合によって除去してもよい。
【0072】
この分析器で用いられる試薬は、従来技術のセット(白血球細胞アッセイで使用する溶解剤、同時に行う有核赤血球細胞のアッセイで使用するための溶解剤に加えられる、任意要素の核酸染料、赤血球細胞/血小板アッセイのための任意の球化試薬を含む希釈剤溶液、核酸染料を含む、網状赤血球アッセイに用いられる試薬溶液、ヘモグロビンの定量化に用いられる強力な溶解剤を含む)と比べ、希釈剤、典型的には、生理食塩水希釈剤を含む1個の試薬溶液に減らすことができる。1個の試薬溶液は、好ましくは、本質的に等価な細胞からの向き依存性の光散乱結果を防ぐために、赤血球細胞の膜に作用し、そのボリュームを実質的に変えずにほぼ球形の形態にする、等容性の球化試薬(例えば、界面活性剤)を含む。1個の試薬溶液は、場合により、網状赤血球および有核赤血球細胞を分析するための1種類または2種類の核酸染料を含む。核酸染料の少なくとも1つは、RNAを染色することができなくてはならず、核酸染料の少なくとも1つは、DNAを染色することができなくてはならない。あるいは、少なくとも1つの核酸は、RNAとDNAの両方を染色することができる。本明細書に記載される方法で使用するための試薬溶液の別の任意成分は、選択的な透過剤である。たった1種類の希釈比率を用いる。細胞の計数および同定のアルゴリズムを、現時点で使用されているそれぞれのアッセイ専用のセットから、実施される1回のアッセイに適用されるべき1回のセットになるように合わせる。さらに、アルゴリズムは、現時点で使用されているものと同様のデータ(シグナル)を使用する。結果の正確さは、設計によって自動的に維持することができる。同時計数のレベルも設計によって維持することができる。
【0073】
上述の方法を使用し、サンプルの個々の赤血球細胞の数、個々の赤血球細胞のボリューム、個々の赤血球細胞中のヘモグロビンの量を測定することができ、その集合のさらなる特徴の分析を行うことができる。一実施形態では、方法は、所定の特徴を有する赤血球細胞の比率(例えば、パーセント、分数または別の数であらわされてもよい)を算出することをさらに含んでもよい。例えば、この方法を用い、所定のボリュームよりも大きなボリュームおよび/または小さなボリュームを有する赤血球細胞の比率(例えば、120fLよりも大きな細胞の割合、すなわち、「大赤血球性の」赤血球細胞の割合;または、60fLよりも小さな細胞の割合、すなわち、「小赤血球性の」赤血球細胞の割合)を算出してもよい。別の実施形態では、この方法を使用し、所定のボリュームよりも多いおよび/または小さいヘモグロビン濃度を有する赤血球細胞の比率(例えば、細胞のヘモグロビン濃度が28g/dL未満の赤血球細胞の割合、すなわち、「低色素性の」赤血球細胞の割合;または、細胞ヘモグロビン濃度が41g/dLより大きな赤血球細胞の割合、すなわち、「高色素性の」赤血球細胞の割合)を算出してもよい。同様に、ある集合の個々の赤血球細胞のボリュームおよび/またはヘモグロビン濃度を、例えば、その集合内の個々のRBCのボリュームまたはヘモグロビン濃度の分布または変動の形状を記述する他の統計学的測定値を同定するために統計学的に分析してもよい。ある例示的な実施形態では、赤血球細胞の集合におけるヘモグロビン濃度の分布幅を算出する。
【0074】
さらなる実施形態では、方法は、サンプル中の網状赤血球を同定することをさらに含んでもよい。網状赤血球は、他の赤血球細胞と、例えば、蛍光によって識別することが可能な赤血球細胞の部分集合である。また、この方法を用い、例えば、網状赤血球中のヘモグロビンの平均量、網状赤血球中のヘモグロビンの平均濃度、または網状赤血球の平均ボリュームを算出することによって、サンプル中の網状赤血球をさらに分析してもよい。この方法をさらに使用し、適切なサイトグラム(例えば、サンプル中の個々の網状赤血球および赤血球細胞のボリューム対ヘモグロビン濃度を示すサイトグラム)で、網状赤血球の集合を、成熟した赤血球細胞と比較してもよい。
【0075】
例えば、赤血球細胞の障害または貧血を観察するために、また、必要であれば処置を決定するために、上述の血液分析器を使用してもよい。貧血の例としては、鉄欠乏性貧血、慢性障害の貧血、ビタミンB12または葉酸によって引き起こされる巨赤芽球性貧血が挙げられる。例えば、鉄サプリメントの投与は、鉄欠乏性貧血の処置にはきわめて有効であるが、慢性障害の貧血には有効ではない。したがって、貧血の原因は、貧血の処置にとって重要である。
【0076】
鉄の欠乏は、世界的な規模で、最もよくある1つの欠乏状態である。罹患した個体が肉体労働を行う能力を低下させ、子供の成長および学習の両方を低下させてしまうため、鉄の欠乏は、経済的に重要である。
【0077】
貧血を伴うか、または伴わない絶対的な鉄欠乏、機能的な鉄欠乏は、非常によくある臨床状態であり、これらの状態を患う患者は、鉄不足によって赤血球の産生が低下している。絶対的な鉄欠乏は、体内全体の鉄含有量が低下していることと定義される。鉄欠乏性貧血は、鉄の欠乏が、赤血球の産生を低下させ、貧血を進行させるのに十分なほど重篤である場合に起こる。機能的な鉄欠乏は、体内全体の鉄含有量は正常であるか、逆に多いが、鉄が赤血球細胞の産生から「遠ざけられて」おり、利用することができないような状態を記述する。この状態は、血液透析を受けている慢性腎不全の患者、慢性炎症または慢性感染の患者で主に観察される。
【0078】
鉄の状態は、血液学的指数および生化学指数を用いて測定することができる。鉄の状態のそれぞれのパラメーターは、体内の異なる鉄貯蔵形態の変化を反映しており、異なる鉄欠乏度で影響を受ける。特定の鉄の測定は、ヘモグロビン、細胞の平均ボリューム、ヘマトクリット、赤血球のプロトポルフィリン、血漿中の鉄、トランスフェリン、トランスフェリン飽和度、血清中のフェリチン、可溶性トランスフェリン受容体、赤血球の分布幅を含む。
【0079】
ヘモグロビンは、他の鉄状態のパラメーターよりも長く使用されてきた。ヘモグロビンは、貧血が進行したら、鉄欠乏の重篤度の定量的な測定値を与える。ヘモグロビンの決定は簡便かつ単純なスクリーニング方法であり、妊娠中または幼年期のように、鉄欠乏の有病率が高い場合に特に有用である。鉄の状態の測定値としてヘモグロビンを用いる場合の制限は、特異性のある欠乏(ビタミンB12または葉酸による欠乏、遺伝的障害および慢性感染のような因子は、赤血球産生を制限することがあるため)であり、正常な集合と鉄欠乏集合との間で値が重複することによる、相対的な感度の低さである。鉄欠乏性貧血を同定するために、ヘモグロビンを、鉄の状態に関するより選択的な測定とともに測定する。
【0080】
平均細胞ボリュームの低下は、貧血が進行し始めるのとほぼ同時に、鉄の欠乏が重篤になると起こる。サラセミアおよび慢性疾患の貧血が除外されたときには、鉄の欠乏のかなり特定的な指標である。カットオフ値である80flは、成人の通常範囲の下限値として受け入れられている。赤血球細胞の分布幅(RDW)は、貧血を分類するための他のパラメーターと組み合わせて近年用いられている。RDWは、赤血球細胞の大きさの変動を反映しており、この値を用い、微妙な程度の赤血球不同症を検出することができる。
【0081】
現時点で、最も一般的に用いられる鉄の状態のパラメーターは、トランスフェリン飽和度(TSAT)と血清フェリチンである。しかしながら、両方とも、鉄の状態を間接的に測定するものである。トランスフェリンは、2個の鉄結合部位を含む輸送タンパク質であり、これによって、鉄が貯蔵部位から赤血球前駆体へと輸送される。TSAT(すなわち、鉄によって占められている全結合部位の割合)は、赤血球産生に利用可能な鉄の測定値である。TSATは、血清中の鉄を全鉄結合能力(循環血中トランスフェリンの測定値)で割り、100を掛けることによって算出される。フェリチンは、主に、網内系に含まれる貯蔵タンパク質であり、ある量が血清に放出される。鉄が過剰な状態では、血漿中の鉄の増加を打ち消すように、フェリチンの産生が増加する。したがって、血清中のフェリチン量は、鉄の貯蔵量を反映している。
【0082】
網状赤血球は、成熟した赤血球細胞になるのに、ほんの1から2日間の成熟時間がかかる、未成熟な赤血球細胞である。網状赤血球がまず骨髄から放出されると、ヘモグロビン含有量の測定値によって、赤血球産生にすぐに利用可能な鉄の量を与えることができる。これらの網状赤血球中のヘモグロビン含有量が正常値より低いことは、需要よりも相対的に鉄の供給が不十分であることの指標である。これらの網状赤血球中のヘモグロビンの量は、成熟した赤血球細胞中のヘモグロビンの量とも対応している。網状赤血球のヘモグロビン含有量は、絶対的な鉄欠乏および機能的な鉄欠乏のためのテストが、非常に感知しやすく、特異的であることがわかっているため、近年、多くの試験で評価されている。しかしながら、実際の閾値は、使用される実験室および装置に大きく依存するため、確立されていない。
【0083】
エリスロポエチンは、赤血球細胞の産生を刺激するのに有効であるが、ヘモグロビンに結合するための鉄の供給が十分でないと、赤血球細胞は、低色素性になる(すなわち、ヘモグロビン含有量が少ない)。したがって、鉄欠乏の状態において、骨髄に残る赤血球細胞のうち、かなりの割合が、ヘモグロビン含有量が低い。ヘモグロビン含有量が28g/dL未満の赤血球細胞の割合を測定することによって、鉄欠乏を検出することができる。低色素性細胞の割合が10%より多いことは、鉄の欠乏と相関関係にあり、したがって、鉄欠乏を検出するための診断基準として使用されている。
【0084】
白血球細胞の計数を与えることに加え、上述の装置および方法は、血液サンプル中の白血球細胞(WBC)のそれぞれの種類の割合を与える、白血球細胞の差を与えることができ、それによって、サンプル中の白血球細胞がかかると思われる特定の病気が存在するか否かがわかる。好中球は、微生物感染または炎症性疾患に対して反応すると増える場合がある。好中球のかなりの増加は、慢性骨髄性白血病のような種々の骨髄障害によって引き起こされることがある。好中球量の減少は、重篤な感染または他の状態の結果(例えば、種々の医薬、例えば、化学療法に対する反応)である場合がある。好酸球は、アレルギー性疾患、皮膚の炎症、寄生虫感染に対して反応すると増える場合がある。また、好酸球は、ある種の感染または種々の骨髄障害に反応すると増える場合もある。好酸球の量の減少は、感染の結果として起こることがある。好塩基球は、白血病、慢性炎症、食物に対する過敏反応の存在、または放射線治療の場合に増えることがある。リンパ球は、ウイルス感染、白血病、骨髄の癌、または放射線治療の場合に増えることがある。リンパ球の量の減少は、免疫系に影響を与える疾患、例えば、狼瘡、HIV感染の後期段階を示す場合がある。単球の量は、あらゆる種類の感染および炎症性障害に反応すると増える場合がある。単球の数は、特定の悪性障害(白血病を含む)のときにも増える。単球の量の減少は、骨髄の損傷または欠陥、ある形態の白血病を示す場合がある。ある患者では、割合がミスリーディングされる場合があるため、種々の種類のWBCの絶対値も報告される場合がある(例えば、絶対好中球数(ANC))。絶対値は、WBCの数に、それぞれの種類の白血球細胞の割合を掛け算することによって算出され、疾病を診断し、治療を観察するのに役立つ場合がある。
【0085】
一実施形態では、本明細書に記載される方法を実施するための、装置を含む物理的な記憶(すなわち「プログラミング」)が提供される。ある実施形態では、メモリは、i.フローセルに高速で導入されたサンプルの第1の部分から得られる複数回のインフロー光学測定を用い、サンプル中の白血球細胞を識別し、計数するためのプログラミングと、ii.フローセルに低速で導入されたサンプルの第2の部分から得られる複数回のインフロー光学測定を用い、サンプル中の赤血球細胞および血小板を識別し、計数するためのプログラミングとを含む、物理的なコンピューターで読み取り可能な媒体を含んでもよい。一実施形態では、血液分析器から得たデータを集め、入力値として複数回のインフロー光学測定を用い、計算するためのアルゴリズムを含むプログラミングを実施する。
【0086】
プログラミングは、物理的な記憶媒体または伝送媒体に与えられてもよい。次いで、指示を受けるコンピューターが、アルゴリズムおよび/または本方法から得られる処理データを実施する。コンピューターで読み取り可能な記憶媒体の例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ、CD−ROM、ハードディスクドライブ、ROMまたは集積回路、磁気光学ディスク、またはコンピューターで読み取り可能なカード(例えば、PCMCIAカード)などが挙げられ、このようなデバイスは、コンピューターに内蔵であってもよく、外付けであってもよい。情報を含む配列は、コンピューターで読み取り可能な媒体に「記憶」されてもよく、「記憶する」とは、後で、ローカルネットワークまたはリモートネットワークにあるコンピューターによってアクセス可能であり、検索可能であるような情報の記録を意味する。
【0087】
本明細書に記載される方法は、サンプルを操作するそれぞれの時に自動的に実行させることができ、または、操作者によって、異なる試験の選択に反応して、サンプルを実行させることができる。
【0088】
以下の非限定的な例は、本発明の方法を説明している。以下の実施例において、測定されるパラメーターは、以下のように記載される:
(1)大きさ、または0°チャネル:この検出チャネルは、分析器のプラットフォームによって、2種類の異なる量を測定する
(a)ALL:消光、すなわち、主要な光線からの光損失(例えば、CELL−DYN(R)Sapphire(R)において);または
(b)SAS:レーザー光の伝搬軸に対し、約1°から約3°の範囲の角度での光散乱(例えば、CELL−DYN(R)Ruby(R)において)
(2)IAS、複雑性、7°または10°チャネル:レーザー光の伝搬軸に対し、約3°から約10°のの範囲の角度での光散乱。
(3)PSS、多葉性、または90°チャネル:垂直偏光を有するレーザー光に対して直交する光散乱。
(4)DSS、粒度、または90°脱偏光チャネル:細胞の付随要素との相互作用によって、水平の偏光を獲得した、レーザー光に対して直交する光散乱。
【0089】
(実施例1)
この実施例は、405nmの波長を有するレーザーを用いる試作品の分析器で実施される、溶解していない全血サンプルにおける赤血球細胞、白血球細胞、血小板の分離を示す。結果は図3に示されている。血小板、赤血球細胞、白血球細胞が明確に分離されていることがわかる。白血球細胞の数は少なすぎて、白血球細胞の差を知ることはできない。より多くの白血球細胞の事象を集めるために、IASに関し、約8000に対応するIASトリガ値が必要である。
【0090】
(実施例2)
この実施例は、405nmの波長を有するレーザーを用いる試作品の分析器で実施される、白血球細胞の差を示し、この方法では、溶解剤を用いない。結果は図4に示され、単球は、文字「M」で示された領域にあり、リンパ球は、文字「L」で示された領域にあり、好中球は、文字「N」で示された領域にあり、好酸球は、文字「E」で示された領域にある。この分類は、クラスタリングアルゴリズムを用いずに行われる。
【0091】
(実施例3)
この実施例は、CELL−DYN(R)Ruby(R)血液分析器およびCELL−DYN(R)Sapphire(R)血液分析器による、白血球細胞の計数を妨害する、溶解耐性のある赤血球細胞を用いて直面する課題が、405nmの波長を有するレーザーを用いると顕著に改良されることを示す。CELL−DYN(R)Ruby(R)血液分析器は、633nmの波長を使用する。CELL−DYN(R)Sapphire(R)血液分析器は、488nmの波長を使用する。同じ血液サンプルを、4種類の別個のアッセイを用い、3種類の異なる分析器で操作し、結果は、図5から図8を参照しつつ、以下に記載する。
【0092】
図5は、分析器によって作成される結果が、400nmから450nmの範囲からはずれる波長を有するレーザーを使用し、低い溶解強度を有する溶解剤を用い、CELL−DYN(R)Sapphire(R)血液分析器で測定される場合、このサンプルのリンパ球の割合は95%であることを示している。図6は、分析器によって作成される結果が、400nmから450nmの範囲からはずれる波長を有するレーザーを使用し、高い溶解強度を有する溶解剤を用い、CELL−DYN(R)Sapphire(R)血液分析器で測定される場合、このサンプルのリンパ球の割合は48%であることを示している。図7は、分析器によって作成される結果が、400nmから450nmの範囲からはずれる波長を有するレーザーを使用し、中程度の溶解強度を有する溶解剤を用い、CELL−DYN(R)Ruby(R)血液分析器で測定される場合、このサンプルのリンパ球の割合は55%であることを示している。
【0093】
図8は、405nmのレーザーを取り付けた試作品の分析器を用いるが、溶解剤を使用せず、本明細書に記載の1回希釈技術を用いて測定すると、サンプルのリンパ球の割合が12%であることを示す。ここで、リンパ球の割合は、12%であると測定される。リンパ球は、文字「L」で示される。この特定のサンプルについての真実を確立するために用いられる参照方法は、訓練された操作者による、顕微鏡でのスライド観察であり、このサンプルのリンパ球の割合は10%であった。405nmのレーザーを用い、本明細書に記載される1回希釈技術を用いると、参照方法に最も近い結果となり、CELL−DYN(R)Sapphire(R)血液分析器(溶解強度の低い状態、および高い状態の両方のアッセイで)およびCELL−DYN(R)Ruby(R)血液分析器は、両方とも、溶解耐性のある赤血球細胞の妨害に起因して、かなり矛盾した結果が得られた。このデータは、405nmのレーザーを用いる血液分析器が、白血球細胞数の測定および白血球細胞の差の測定において、溶解耐性のある赤血球細胞からの妨害を減らすか、またはなくすのに優れていることを示している。
【0094】
本発明の種々の変更および改変は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には明らかになると考えられ、本発明は、本明細書に記載されている具体的な実施形態に不当に限定されるべきはないことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)全血サンプルが高速および低速で導入されるフローセルと;
(b)前記フローセルに光を向けるための、約400nmから約450nmの範囲の波長を有するレーザーと;
(c)複数のインフロー光学測定チャネルで、細胞による光の散乱を検出するための複数の検出器と;
(d)データ分析ワークステーションとを含み、データ分析ワークステーションが、
i.前記フローセルに高速で導入されたサンプルの第1の部分から得られる複数回のインフロー光学測定を用い、前記サンプル中の白血球細胞を識別し、計数するためのプログラミングと;
ii.前記フローセルに低速で導入されたサンプルの第2の部分から得られる複数回のインフロー光学測定を用い、前記サンプル中の赤血球細胞を識別し、計数するためのプログラミングとを含む、血液分析器。
【請求項2】
前記レーザーが、約400nmから約430nmの範囲の波長を有する、請求項1に記載の血液分析器。
【請求項3】
前記複数の検出器が、約0°から約1°の角度で、光の消光測定値を得るための検出器を含む、請求項1に記載の血液分析器。
【請求項4】
前記複数の検出器が、約3°から約10°の角度で、光散乱の測定値を得るための検出器を含む、請求項1に記載の血液分析器。
【請求項5】
前記分析器において、少なくとも1つのインフロー光学測定の閾値が、白血球細胞からのすべてのシグナルを定性し、すべての他のシグナルを判別するように設定される、請求項1に記載の血液分析器。
【請求項6】
異なる種類の白血球細胞を識別し、計数するための少なくとも1つのアルゴリズムによって、血液サンプルを分析するためのプログラミングをさらに含む、請求項1に記載の血液分析器。
【請求項7】
iii.複数回のインフロー光学測定を用いた個々の赤血球細胞中のヘモグロビン濃度の測定値、および赤血球細胞数の測定値を用い、全血サンプルのヘモグロビン濃度を概算し、全血サンプル中の赤血球細胞の濃度を決定するためのプログラミングをさらに備える、請求項1に記載の血液分析器。
【請求項8】
(a)複数回のインフロー光学測定値を測定することが可能であり、約400nmから約450nmの範囲の波長を有するレーザーが設置された、自動血液分析器を与えるステップと;
(b)血液サンプルを希釈するための希釈剤を与えるステップと;
(c)全血サンプルを与えるステップと;
(d)希釈剤と全血サンプルとを混合するステップと;
(e)高速でサンプルを導入する複数回のインフロー光学測定を用いることによって、白血球細胞を識別し、計数するステップと;
(f)低速でサンプルを導入する複数回のインフロー光学測定を用いることによって、赤血球細胞および血小板を識別し、計数するステップとを含む、血液サンプル中の細胞を識別し、正確に計数する方法。
【請求項9】
(g)複数回のインフロー光学測定を用い、赤血球細胞数を測定することによって、個々の赤血球細胞中のヘモグロビン濃度を測定し、赤血球細胞数を決定することによって、全血サンプルのヘモグロビン濃度を測定し、全血サンプル中の赤血球濃度を決定するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記自動血液分析器に、約400nmから約430nmの範囲の波長を有するレーザーが取り付けられている、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
高速でのサンプル注入を、中間角散乱(IAS)トリガと合わせて使用し、白血球細胞および白血球細胞の差を測定し、低速でのサンプル注入を用い、赤血球細胞および血小板を計数する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
血液サンプルを分析するためのデータを格納するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
血液サンプルを分析するための結果を報告するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
白血球細胞、赤血球、血小板を識別するための少なくとも1つのアルゴリズムによって、血液サンプルを分析するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
赤芽球および白血球細胞が、消光、光散乱、蛍光の測定を含む複数回のインフロー光学測定を用いることによって計数される、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの消光測定値が、約0°から約1°の角度で得られる、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つのインフロー光学測定の閾値が、白血球細胞からのすべてのシグナルを定性し、すべての他のシグナルを判別するように設定される、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つのインフロー光学測定値が、約3°から約10°で散乱する光から得られる、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
(a)赤芽球の核を核染色で染色するステップと;
(b)核染色から得られる消光、光散乱、蛍光のうち、少なくとも1つを用いることによって赤芽球を検出するステップと;
(c)赤芽球細胞と、他の細胞集合との分離を分析するアルゴリズムによって、赤芽球細胞を識別し、計数するステップとをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項20】
血液分析器を操作するために検索可能な指示を含み、
i.フローセルに高速で導入されたサンプルの第1の部分から得られる複数回のインフロー光学測定を用い、サンプル中の白血球細胞を識別し、計数するためのプログラミングと、
ii.フローセルに高速で導入されたサンプルの第2の部分から得られる複数回のインフロー光学測定を用い、サンプル中の赤血球細胞を識別し、計数するためのプログラミングとを含む、物理的なコンピューターで読み取り可能な媒体。
【請求項21】
血液サンプル中の網状赤血球および有核赤血球細胞を同定し、計数する方法であって、
(a)約400nmから約450nmの範囲の波長を有するレーザーを備えた自動血液分析器を与えることと;
(b)蛍光染料と、全血サンプルとを含む希釈物を混合し、前記サンプル中の網状赤血球および有核赤血球細胞を前記蛍光染料で染色することと;
(c)前記サンプルの赤血球細胞を溶解させることなく、前記蛍光染料が発した蛍光を検出することによって、前記サンプル中の前記網状赤血球および前記有核赤血球細胞を検出することとを含む、方法。
【請求項22】
前記蛍光染料が、核酸を染色する青色蛍光染料である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記蛍光染料が、SYTO 41またはSYTO 42である、請求項22に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2012−525589(P2012−525589A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508569(P2012−508569)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/032429
【国際公開番号】WO2010/126838
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】