説明

自動車のための速度制御システムの駆動状態を選択する方法

【課題】速度制御システムの駆動状態の自動的な選択,特に適応的な速度制御システムのアクティブな状態と非アクティブな状態の間の選択を,目隠し認識の結果を適切に考慮して,駆動状況の大きな帯域幅内で適応的な速度制御システムの高い利用性と運転者にとっての妥当なシステム反応が達成されるように改良することである。
【解決手段】間隔センサと自動的な目隠し認識とを有する,自動車のための速度制御システムにおける駆動状態を選択する方法は,上記間隔センサが目隠しされている場合に速度制御を自動的にオフすることに関して,少なくとも1つの他の条件(S7)も調べられ,この他の条件も満たされている場合にのみ上記速度制御の自動的オフが行われることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,間隔センサと自動的な目隠し認識とを有する,自動車のための速度制御システムにおける駆動状態を選択する方法と,この方法を実施するための速度制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のために,速度制御システムが知られており,それを用いて車両の速度を運転者により選択された意図速度に調節することができる。さらに,間隔センサを用いて,たとえばレーダーセンサまたはリーダーセンサを用いて,前を走行する車両に対する間隔を測定することができる。その場合に速度制御は,目標対象として選択された,前を走行する車両に対する予め定められた,好ましくは速度に依存する間隔が維持されるように,修正される。この種のシステムは,適応的な速度制御システムまたはACCシステム(Adaptive Cruise Control)とも称される。
【0003】
ACCシステムの完璧な機能は,間隔センサがエラーなしで作動し,かつ正しく調整されていることを前提とし,そうであるからこそ,自己の走行車線上で前を走行する車両を確実に位置測定することができる。上記間隔センサの機能障害または誤調整の他に,たとえば激しい雨または降雪,センサヘッドの汚れなどのような環境要因もセンサ到達距離の減少をもたらし,ついには間隔センサを目隠ししてしまう。一般に,レーダーセンサの機能は,リーダーセンサの機能よりも雨または降雪によって損なわれることは少ない。しかし,レーダーセンサにおいても,特に,車両のフロントの危険にさらされる位置に取り付けられたレーダーアンテナに雪,氷あるいは道路から巻き上げられた泥がこびりついた場合に,目隠しの危険がある。安全上の理由から,間隔センサの目隠しが自動的に認識され,それに続いてACCシステムのオフが作動され,運転者に音響的または視覚的な警告指示が出力されることが望ましい。
【0004】
DE19644164A1からは自動車レーダーシステムが知られており,同システムにおいてはレーダー波のフォーカスに用いられる誘電体が電気的な導体路で覆われており,その導体路がレーダー受信を邪魔する汚れ,雪または液体からなる曇りを検出することを可能にする。場合によっては,邪魔になる被覆を自動的に,たとえば電気的な加熱によって,あるいはある種のガラスワイパーによって除去することもできる。しかし,この種の監視およびクリーニングシステムは,比較的複雑かつ高価である。
【0005】
DE19945268A1には,レーダーセンサ自体から供給される信号のみを用いてレーダーセンサの目隠しを認識することを可能にする方法が記載されている。信号の評価が,種々の指示によって形成され,それらがそれぞれ交通状況に応じて,多かれ少なかれ大きい説得力をもってセンサの目隠しを指し示す。適切な指示の例としては,レーダーシステムによって検出されたすべての対象の角度品質,対象安定性,すなわち制御のために選択された目標対象の検出欠落率の記述,センサによって受信された信号の平均的な出力,測定の間にシステムによって検出されたすべての対象の合計,自己の車両から最も離れて検出された対象における対象間隔とレーダー振幅の間の関係,および,走行路反射の存在または非存在である。これらの指示は,重み係数で重みづけされ,その重み係数自体は交通状況に従って可変であり,かつこのようにして得られた指示の重みづけされた合計を目標値と比較することによって,センサが目隠しされているかいないかを示す決定信号が得られる。
【0006】
交通状況に関しては,目隠し認識のために,特に追従走行と自由走行との間の区別が重要である。追従走行は,直前を走行する車両が目標対象として選択され,かつ適切な間隔をおいて追従している交通状況を称する。この状況においては,目標対象の突然の逸失は,重要な目隠し指示である。自由走行は,重要な目標対象が選択されておらず,運転者により選択された意図速度で制御される交通状況を称する。しかし,この状況においてもセンサは一般に他のレーダー目標,たとえば道路反射,可動の目標または走行路端縁の静止目標,隣接車線上の車両などを検出する。その場合にこれらの目標のレーダーエコーを,目隠し認識に利用することができる。
【0007】
自由走行においてであろうと,追従走行においてであろうと,既知のシステムにおいてセンサの目隠しが認識された場合,それは直接ACCシステムのオフをもたらし,運転者は,引継要請によって,自分でアクセルペダルとブレーキを用いて車両の縦運動に関するコントロールを引き継ぐように促される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は,速度制御システムの駆動状態の自動的な選択,特にACCシステムのアクティブな状態と非アクティブな状態の間の選択を,目隠し認識の結果を適切に考慮して,駆動状況の大きな帯域幅内でACCシステムの高い利用性と運転者にとっての妥当なシステム反応が達成されるように改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は,本発明によれば,冒頭で挙げた種類の方法において,間隔センサが目隠しされた場合に速度制御を自動的にオフにすることに関して,少なくとも1つの他の条件も検査されて,この他の条件も満たされている場合にのみ速度制御のオフが行われることによって,解決される。
【0010】
本発明は,自動的な目隠し認識は所定の駆動状況においては制限された信頼性しか持たないので,不当であり,かつ運転者にとって納得いかないACCシステムのオフをもたらす可能性があり,そのオフによって運転者の快適性と安全感覚が損なわれる可能性がある,という考えに基づいている。たとえば,荒野など,余り人が住んでいない地域内を走行する場合には,反射するレーダー目標がないことによってレーダーセンサの目隠しが装われ,ACCシステムの不当なオフが作動されてしまうことがある。その場合には運転者は,彼の目からは認識できる基準がないので,自身で走行事象に介入しなければならず,それがしばしば快適性を損なうと感じられ,かつACCシステムの確実性に対する信頼も小さくなる。従って本発明によれば,間隔センサの(真のあるいは推定される)目隠しが認識された場合に,ACCシステムのオフが妥当かつ必要であると思わせる,少なくともさらに1つの他の条件が存在するかが調べられる。この種の条件は,特に,目隠しを認識した時点で車両が追従走行にある場合に存在する。この状況においては,目隠し認識は間隔センサの真の目隠しを高い確率で示唆し,さらに,この状況では,安全上の理由から運転者に対してACCシステムにおける可能な誤機能を防止するように指示することが重要である。それに対し自由走行において,センサの目隠しは適当な反射目標がないことによってのみ装われた確率がより高く,真の目隠しが存在するとしても,意図速度への制御が続行されることについては直接的な危険はない。
【0011】
もちろん,本発明の範囲内で,自由走行においてもACC機能のオフが有意義であると思われる条件を調べることができる。たとえば,自由走行において間隔センサの目隠しが認識された場合,過去の所定期間内に追従走行が行われたか,あるいは前を走行する車両を追い越したかを調べることも考えられる。これは,走行している道路が比較的交通が激しく,次期に自己の走行車線上に前を走行する車両が新たに姿を現すことを考慮しなければならないことを意味しており,従って運転者は,推定される,間隔センサの目隠しに気をつけるように指示される。
【0012】
本発明の好ましい形態が,従属請求項から明らかにされる。
【0013】
本発明の実施形態においては,唯一の条件として車両が追従走行にあるかが調べられる。それに対し自由走行においては,目隠しが認識された場合でもACC制御が続行される。しかし,本発明の他の形態において,自由走行で目隠しが認識された場合に,運転者に対して,音響的および/または視覚的な信号を利用し,もしかしたらセンサの目隠しが存在するかもしれないことを示唆することが可能である。この種の示唆が設けられていない場合には,もちろん自由走行においては目隠し検査自体を実施する必要がない。
【0014】
追従走行においてあるいは他の付加条件に基づいて,ACC機能がオフにされた場合,これは,通常,運転者にとってはっきりと感じられる車両減速をもたらすので,その車両減速によって運転者はACC制御のオフを認識することができる。運転者に対し信号(引継要請)によってオフを示唆するとさらに効果的である。オフが行われた後に,再び目標対象が認識された場合には,ACC機能を自動的に再開することができる。というのは,その場合明らかに間隔センサの目隠しは解消されあるいは真の目隠しが存在していなかったからである。他の実施形態においては,運転者の指令によってのみACC制御を再びアクティブにできるようにシステムを設計することもできる。
【0015】
自由走行において目隠しが認識された場合に,改良された実施形態においては,意図速度への速度制御は続行したままで,間隔監視を非作動にし,運転者に信号でこの状況を示唆することが可能である。この場合においても,間隔監視を再び作動させることは,新しい目標対象が検出されたとき自動的に,あるいははっきりとした運転者指令によってのみ行うことができる。
【0016】
本発明の他の実施形態によれば,条件「追従走行」の代わりに,当該目隠し認識が,走行開始以来の,あるいは所定の期間内における,最初の目隠し認識であるかが調べられる。その場合,1回目の目隠し認識は,追従走行においても,自由走行においてもACCシステムのオフをもたらす。運転者が,自分が極めて反射の少ない環境にいて,従って偽りの目隠し認識であろうことを認識した場合,それに応じた指令によってACC制御が再びアクティブにされる。その後,目隠し認識システムが新たにセンサの目隠しを示した場合,上位の制御システムは,自動的なオフが運転者の意図に相当しないことを「学習」し,ACC機能は,少なくとも制限された期間の間維持される。この期間の長さは可変とすることができ,運転者がシステムを再作動する頻度が高いほどそれだけ長く選択される。代替案として,運転者に直接「目隠し認識を無視する」指令を入力させることができ,その指令は走行の最後まで,あるいは運転者により撤回されるまで有効である。この場合においては,検査すべき付加条件は,「目隠し認識を無視する」指令がアクティブではないことにある。その場合に安全上の理由から,走行開始時に,即ち点火装置をオンするときに,「目隠し認識を無視する」指令を非アクティブにする初期化が行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下,図面を用いて本発明の実施例を詳細に説明する。
【0018】
図1に示す自動車10は,間隔センサ12として自動車のフロント部分に取り付けられたレーダーセンサを有しており,そのレーダーセンサのハウジング内にACC制御ユニット14も収容されている。ACC制御ユニット14は,データ(CAN)バス16を介して電子的な駆動制御ユニット18,トランスミッション制御ユニット20,ブレーキシステム制御ユニット22およびマン/マシンインターフェイス(MMI)としての制御ユニット24と接続されている。
【0019】
間隔センサ12は,マルチビームレーダーを用いて,自己の車両の前にある,レーダー波の反射対象の間隔,相対速度およびアジマス角を測定する。規則的な時間間隔,たとえば10ms毎に受信される生データは,個々の対象を識別して追従するため,そして,特に自己の走行車線上ですぐ前を走行する車両を認識し,目標対象として選択するために,ACCシステム14内で評価される。駆動制御ユニット18とブレーキシステム制御ユニット22に対する,および,オートマチックトランスミッションを搭載した車両においてはトランスミッション制御ユニット20に対する指令によって,ACCシステム14は車両10の速度を制御する。制御ユニット24によって制御されるマン/マシンインターフェイスは,車両のダッシュボード上に種々の操作および表示素子を有しており,加えて,運転者の操作指令をACC制御ユニット14へ伝達し,ACC制御ユニット14の報告を運転者へ出力するために用いられる。この目的のために,マン/マシンインターフェイスは,音響的な信号あるいは合成音声のためのスピーカー出力も有することができる。
【0020】
前を走行する車両が位置測定されない場合には,ACC制御ユニット14は,車両10の速度を,運転者によって選択された意図速度に制御する。それに対して,前を走行する,その速度が自己の車両の速度よりも小さい車両が目標対象として検出された場合,車両10の速度は,前を走行する車両に対する適切な間隔が維持されるように制御される。
【0021】
この種のACCシステムの構造と作動方法は,たとえばヴィナーの「アダプティブクルーズコントロール」(Winner:"Adaptive Cruise Contorol" in Automotive
Electronics Handbook, Ronald K. Jurgen (Hrsg.), 2. Auflage, Mac Graw-Hill(1999)
kapitel 30.1)で説明されている。
【0022】
従来技術において知られているように,ACC制御ユニット14はセルフテスト機能を有しており,そのセルフテスト機能は,走行開始の際の初期化段階において,適当なテスト信号による間隔センサと評価システムの機能検査を可能にする。同様に,この制御ユニットは検査機能も有しており,その検査機能は走行の間に,たとえばDE19945268A1に記載されているように,受信されたレーダー信号を評価することによって,間隔センサ12の連続的または周期的な目隠し検査を可能にする。
【0023】
図2は,本方法のフローチャートを示しており,その方法は同様に間隔センサ制御ユニット14内に実装されており,かつ,走行の間にACCシステムがアクティブな場合にどのように目隠し認識が実施されるか,そしてそれがどのようにACCシステムの駆動状態に作用するかを定める。
【0024】
車両の点火装置がオンにされた直後,即ちステップS1におけるシステムスタート後に,まずステップS2において検出検査が実施され,その検出検査においては既知の方法に従って間隔センサ12の機能能力が調べられる。そして,この検出検査の肯定的なまたは否定的な結果が記憶される。検出検査の結果が否定的である場合には,選択によって即座に,制御ユニット24とマン/マシンインターフェイスを介してエラー信号を出力することができる。しかしこのことは強制されるものではない。というのは,車両は,ACCシステムが機能能力を無くしても走行できるからである。
【0025】
その後ステップS3において,運転者指令によってACCシステムが作動されたかが周期的に検査される。運転者が作動指令を入力した場合に,ステップS4において,ステップS2で実施された検出検査における記憶された結果が照会される。検出検査においてエラーが検出されている場合には,ステップS5において新たにエラー信号の出力が行われ,そのエラー信号が運転者にACCシステムが利用できないことを知らせる。一方,他の場合には,ステップS6において,ACCシステムの作動が行われる。
【0026】
ACCシステムがアクティブである場合,間隔センサ12の信号が評価されて,車両10が走行している走行車線上に,車両の直前を走行する他の車両がいるかが決定され,その後,その車両が目標対象として選択される。この種の目標対象が存在している場合,システムは「追従走行」のモードにあって,前を走行する車両への間隔制御が行われる。重要な目標対象が検出されない場合には,システムは「自由走行」のモードにあって,車両の速度は運転者により選択された意図速度に制御される。
【0027】
ステップS7においては,「追従走行」モードが存在するかが調べられる。存在しない場合,システムは,自由走行モードに留まり,ステップS7が循環的に繰り返される。
【0028】
システムが追従走行モードにある場合にのみ,ステップS8において,たとえば選択された目標対象からのエコー信号の欠落または信号品質を用いて,かつ,他のレーダー目標からのレーダーエコーがある場合にはそれを考慮して,間隔センサ12の目隠し検査が実施される。目隠し検査によって間隔センサが目隠しされていないことが明らかにされた場合,ステップS7への復帰が行われ,システムが追従走行モードに留まっている間,ステップS7とS8が循環的に繰り返される。それぞれ交通状況に応じて,追従走行モードと自由走行モードの間で1回または複数回の変更が行われる可能性がある。目隠し検査は,追従走行モードの度においてのみ行われる。
【0029】
ステップS8において,間隔センサ12の目隠しが認識された場合には,ステップS9でACCシステムが非作動にされ,運転者は,制御ユニット24とマン/マシンインターフェイスを介して引継要請を受け,その引継要請は,おそらく間隔センサが目隠しされており,ACCシステムがオフなので,運転者自身がコントロールを引き継がなければならないことを運転者に示唆する。その後,ステップS3への復帰が行われる。従って,運転者が,(たとえば天候条件の変化により)間隔センサの目隠しが解消されているという感覚をもった場合,運転者はACCシステムをいつでもまた作動させることができる。
【0030】
ステップS8は,追従走行モードにおいてのみ通過することができるので,自由走行モードにおいては速度制御は何れの場合においてもアクティブであり,運転者は引継要請によって不必要に負担をかけられることはない。
【0031】
ステップS9においてシステムオフが行われた後に,運転者がステップS3において新たにACCシステムをアクティブにした場合,一般に,間隔センサ12の目隠しがまだ続いている場合であっても速度制御機能は再び利用可能となる。センサが目隠しされている場合,重要な目標対象を認識して選択することができないので,ステップS7における追従走行モードの照会は否定的な結果をもたらす。従って,新たな目隠し検査は行われない。もちろんこの場合においては,運転者自身が前を走行する車両に注意しなければならない。
【0032】
上述した解決は,自由走行において,通常,間隔センサの目隠しが装われる反射の乏しい環境内で,誤った目隠し認識とそれに伴った不必要なACCシステムのオフが行われない,という利点を有している。これは特に,反射するレーダー目標が存在しない,交通の少ない道路上で都市間の走行を実施することの多い車両ユーザーにとって効果である。
【0033】
例外的に,この種の状況下でレーダーセンサの真の目隠しが発生し,その場合にACCシステムが前を走行する低速の車両との車間距離が詰まっていることに反応しない可能性はあるが,実際のところこれは交通安全を損なうことには至らない。というのは,車両ガイドの最終的な責任はもともと常に運転者にあり,運転者は,車線を維持するためだけにおいても,すでに自分の前の走行車線を目にいれておくことを強いられるので,この運転者が前を走行する障害物を見逃すことはないからである。
【0034】
既知のACCシステムにおいては,車両のダッシュボード上にディスプレイが設けられており,それが運転者に,たとえば前を走行する車両のシンボリック表示の点灯あるいは色の変化によって,重要な目標対象が選択されている(追従走行している)ことについて知らせる。さらに,このディスプレイは運転者に,選択された目標対象に対する間隔を定める,タイムギャップの選択された長さについても知らせる。従って運転者が目の前に前を走行する車両が突然現れるのを見たとき,ディスプレイを介して重要な目標が選択されたことについて何ら報告を受けない場合,運転者は,この状況によって,前を走行する車両に対する間隔が危機的な値まで減少するずっと前に,間隔センサが目隠しされていたことを認識することができる。このようにして,システムの行動は常に運転者によって明解である。
【0035】
これらの希な場合において,障害物が自動的に認識されないことから生じる,快適さが損なわれる状態は,運転者にとって(乾燥した気候を有する人の少ない地域において)推定されるセンサの目隠しによる頻繁なシステムオフよりも,むしろ受け入れられる。
【0036】
図3は,変形された実施例を示している。システムスタート(S101)後のステップS102において,運転者の作動指令の存在が周期的に調べられる。作動指令に続いて,ステップS103ではACCシステムが作動される。その後,連続的な制御駆動の間,追従走行においても自由走行においても,周期的な目隠し検査が行われる(ステップS104)。
【0037】
間隔センサの(推定される)目隠しが認識された場合に初めて,ステップS105において,システムが追従走行モードにあるか,自由走行モードにあるかが区別される。追従走行モードであると,ステップS106へ分岐し,そこでACCシステムが非作動にされて,運転者への引継要請が出される。例として,図3では変形例が示され,その変形例においては,上記引継要請に続いてプログラムが終了される(ステップS107)。従って,運転者は,次のシステムスタートまでACCシステムを再び作動させる可能性を持たない。しかし,ここでステップS106の後,選択的に,ステップS102への復帰を行うこともできるので,ACCシステムの新たな作動が可能になる。
【0038】
ステップS105において自由走行モードが検出された場合に,直接ステップS104への復帰を行うことができる。結果として,これは,自由走行モードにおいては目隠し認識が無視されることを意味している。しかし,図示の例においては,この分岐内に幾つかの中間ステップが挿入されている。ステップS108において,運転者はダッシュボード上のディスプレイを介して「対象検出できず」の報告を受ける。しかし,システムを非作動にはしないので,速度制御機能(意図速度への制御)はさらに提供される。上記報告は,単に,運転者に対して,一時的に,間隔センサがもしかしたら目隠しされているかもしれないので,前を走行する車両が検出できないかもしれないことについて,示唆する目的を有するだけである。
【0039】
その後ステップS109において,ACC制御ユニット14を介して,周期的に,間隔センサが再び対象を検出したかが調べられる。対象が検出された場合には,実際にはセンサの目隠しは存在しておらず,推定される目隠し認識は反射する対象がないだけの理由によるものであることを示唆する。この場合にはステップS110において,報告(ステップS108)が再び消去されて,ステップS104への復帰が行われるので,制御は正常に続行される。
【0040】
図4は,図3に示す方法の変形例を示している。ステップS202からS206は,図3のステップS101からS106に相当する。ステップS204の目隠し認識とステップS205における「自由走行」状態の認識の後に,ステップS208において,運転者は「対象検出できず,間隔制御オフ」の報告を受ける。これは運転者に,意図速度への制御のみはアクティブであり続けるが,対象が新たに認識された場合でも,追従走行のための間隔制御は自動的に再開されないことを示す。その代わりに,ステップS209において,運転者がACCシステムを(完全に)再作動させる指令を新たに入力したかが調べられる。この種の運転者指令に続き,ステップS210において報告(ステップS208)が再び消去され,ステップS203への復帰が行われ,そこで作動指令が実施される。その間に再びレーダー目標が検出された場合には,システムはアクティブなモードに留まる。他の場合には,新たにステップS205を通過して,非アクティブなモードへの変化(ステップS206)または部分アクティブなモードへの変化(ステップS208)が行われ,そこでは速度制御はアクティブなままであるが,間隔制御は非アクティブである。非アクティブなモードにおいても,運転者は作動指令(ステップS202で照会)を介してACCシステムを再び作動させることができる。
【0041】
図5は,ACCシステムのアクティブなモードと非アクティブなモードとの間を選択するために,自由走行と追従走行の間を区別せず,むしろ運転者の行動に合わせることができる実施形態を示している。
【0042】
ステップS301のシステムスタート後に,ステップS302において初期化が行われ,その初期化において待機時間Tが値T0にセットされ,フラグFが値0にセットされる。ステップS303において作動指令が調べられ,ステップS304においては必要に応じてACCシステムが作動される。
【0043】
制御駆動が連続している場合に,ステップS305において目隠し検査が行われ,センサの目隠しが検出されなかった場合は,ステップS305で目隠し検査が繰り返される前に,ステップS306において待機時間TとフラグFが(それらがその間に変化している場合)再び初期値T0ないし0へリセットされる。
【0044】
ステップS305において,間隔センサ12の目隠しが認識された場合には,ステップS307において,フラグFが値1であるかどうかが調べられる。このフラグは0に初期化されているので,最初のサイクルにおいてはこの問いの結果は否定的になる。その後ステップS308において,運転者に,間隔センサ目隠しが推定されることによりACCシステムが非作動にされることを示唆する報告が出力される。それに続いてステップS309において,フラグFが値1にセットされる。その後ステップS310において,所定の遅延時間待機し,この遅延時間の間に運転者が新たに作動指令を入力したかが調べられる。これが否定された場合には,ステップS311においてACCシステムがオフにされ,ステップS302への復帰が行われるので,運転者は新たに初期化した後にシステムを再び作動させることができる(ステップS303)。
【0045】
それに対して運転者がステップS310において,待機時間内に作動指令を入力した場合,運転者はそれによって,運転者としては目隠し認識を正しくないと思っており,ACCシステムのアクティブな状態を維持しようとしていることを認識することができる。その後ステップS305への復帰が行われて,目隠し検査が繰り返される。
【0046】
そうする間に環境条件が何も変化していない場合には,センサの目隠しが新たに認識される。しかしステップS307における検査は,フラグFがステップS309で1にセットされているので,今回は肯定的な結果となる。それに続いてステップS312でタイマーがセットされる(タイマーがまだ作動していない場合)。ステップS313において,タイマーの始動から待機時間Tが経過したかが調べられる。その待機時間は最初,初期化に基づいて値T0を有している。そして,長さTの待機ループ内でステップS305とS307が繰り返される。再び対象が検出された場合には,ステップS306を介しての待機ループを出る。他の場合には待機時間の経過後にステップS314において待機時間Tが所定のインクリメントΔTだけ,もちろん最大値Tmaxまでではあるが増大される。そして,タイマーがリセットされる。その後新たにステップS308,S309およびS310を通過する。ステップS309は,フラグFがすでに値1を有しているので効果はない。
【0047】
従って,ステップS305における新たな目隠し認識は,このサイクルでは即座にステップS308の報告の出力をもたらさず,この報告は待機時間Tの経過後に初めて出力される。従ってシステムは待機時間Tの間はまだアクティブな状態に留まり,その後に初めて,センサの目隠しが続く限りにおいて,運転者はステップS308からS310で,新たに,推定される目隠しによりシステムのオフを許すか,あるいはシステムをさらにアクティブにしておくかの選択を迫られる。運転者が後者の選択肢を決定した場合,新たにステップS305への復帰が行われ,ステップの待機ループが,今回はより長い待機時間T+ΔTによって通過される。
【0048】
このサイクルは,多数回通過することができ,その場合にシステムがアクティブに留まる待機時間Tは,最大値Tmaxに達するまで,毎回インクリメントΔTだけ大きくなる。このように運転者は,比較的希な介入によって(ステップS310における作動指令の新たな入力),システムをアクティブな状態に維持することができる。
【0049】
ステップS305のいずれかの時点において,間隔センサの目隠しがもはや存在しないことが検出された場合,ステップS306における待機時間TとフラグFがリセットされる。それによって,先行する事象についての「記憶」が消去され,システムは再び初期状態のように振舞う。このとき,新しい目隠し認識は,ステップS308における即座の再報告出力をもたらす。しかし選択的にステップS306を省くこともでき,その場合,待機時間は走行の最後までにさらに増大し,または最大値に留まる。この場合においては,レーダー目標が散発的に検出される場合に,運転者がステップS308の報告によってわずらわされることがさらに少なくなる。
【0050】
図5に示す実施形態は,ステップ310における作動指令の入力の形で運転者の介入を時折必要とするが,この指令は,システムの「学習能力」に基づき比較的大きい時間間隔をおいて入力するだけでよく,その場合にこの時間間隔は与えられた例においてだんだんと長くなる。この解決の利点は,反射の少ない環境において比較的長く走行する場合でも,目隠し認識が完全には無視されないことにある。ステップS310に組み込まれた遅延時間は,運転者は,最初の目隠し認識においても速度制御の即座のオフとそれに伴う車両の納得のゆかない減速によってとまどうことはなく,ちょうど良い時期に再作動指令を入力することにより,この車両減速を防止することができる,という利点を有している。
【0051】
図示の例において待機時間Tは一定の増分ΔTに従って線形に上昇しているが,待機時間が累進的にあるいは何らかの他のカーブに従って増加する実施形態も考えられる。選択的に,待機時間の長さを,過去においてどのような頻度でレーダー目標が検出されたかに関連付けることもできる。ここで,検出頻度が少ないということは,反射の少ない環境であることを示すので,待機時間が延長される。
【0052】
図5に示す実施形態は,その前に説明した実施形態と組み合わせて,追従走行においてACCシステムの即座の非作動化が行われ,自由走行においてステップS307からS314の示す手順が通過されるようにすることもできる。
【0053】
もちろん,図3から図5に示す実施例において,システムスタートに続いて図2のステップS2のように検出検査を行うこともできる。同様に,運転者はいつでも,オフ指令によってACCシステムを非作動にす可能性を有している。しかし,フローチャート内では理解を容易にするために上記のことは図示していない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】自動車内のACCシステムの重要なコンポーネントを概略的に示している。
【図2】方法の実施形態を示すフローチャートである。
【図3】方法の実施形態を示すフローチャートである。
【図4】方法の実施形態を示すフローチャートである。
【図5】方法の実施形態を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔センサ(12)と自動的な目隠し認識とを有する,自動車(10)のための速度制御システムにおける駆動状態を選択する方法において:
前記間隔センサ(12)が目隠しされている場合に速度制御を自動的にオフすることに関して,少なくとも1つの他の条件(S7;S105,S205;S307)も調べられ,この他の条件も満たされている場合にのみ前記速度制御の自動的オフが行われ、
前記他の条件の一つは、間隔センサ(12)の目隠しが認識された直前において,駆動状態が「追従走行」であり,その追従走行において前を走行する車両が目標対象として選択されており,かつ,この目標対象に対する間隔が制御され、
前記間隔センサ(12)の目隠しが認識されたが前記他の条件のどれも存在しない場合に,部分的に動作する駆動状態が選択され,
前記駆動状態においては,運転者により選択された意図速度への速度制御は動作し続け,間隔センサ(12)の信号に基づく間隔制御は,運転者の指令(S209)によってのみ再びアクティブにすることであることを特徴とする,駆動状態を選択する方法。
【請求項2】
前記間隔センサ(12)の目隠しが認識されたが、前記他の条件が満たされておらず,従って速度制御が続行される場合に,報告が運転者へ出力され,その報告は間隔センサが目隠しされている可能性があることを運転者に指し示すことを特徴とする,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記他の条件またはこれらの条件の1つは,行われた目隠し認識が,所定の期間内における最初の目隠し認識であるという条件であることを特徴とする,請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
当該目隠し認識が最初の目隠し認識ではない場合,速度制御は,当該目隠し認識から所定の待機時間(T)が経過し,その待機時間内に間隔センサの目隠し状態が続くとき,初めてオフにされることを特徴とする,請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記待機時間(T)は,運転者の再作動指令の頻度および/または間隔センサによる目標対象の検出の頻度に従って可変であることを特徴とする,請求項4に記載の方法。
【請求項6】
間隔センサ(12)と,前記間隔センサ(12)によって測定された,前を走行する車両に対する間隔に従って,あるいは,前を走行する車両が検出されない場合に運転者が選択した意図速度に,車両の速度を制御するための制御ユニット(14)とを有する,自動車(10)のための速度制御システムにおいて:
前記制御ユニット(14)内には,請求項1から5のいずれか1項に記載の方法が実装されていることを特徴とする,速度制御システム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−1271(P2009−1271A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177072(P2008−177072)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【分割の表示】特願2003−576222(P2003−576222)の分割
【原出願日】平成14年9月30日(2002.9.30)
【出願人】(501125231)ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (329)
【Fターム(参考)】