説明

自動車のアーム

【課題】
高い強度と、同時に高い耐久性および安価な生産性を有し、そしてさらに、事故の際に前車両の損傷を少なく保つ可能性を与える自動車のアームを提供する。
【解決手段】
車両のアーム、特にウィッシュボーン式アーム(1)であって、ワンシェルタイプのベースボディ(2)と、ベースボディ(2)に接続される支承部分(7)を有し、その際、ベースボディ(2)が平らなベースボディ底部(3)と、これに付設される折り曲げられたサイドアーム(4)を有しているアームにおいて、二つの支承部分(7)の間に、一つの空所部(11)が、少なくとも一つのサイドアーム(4)内に設けられていることにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の特徴に従う車両のアーム、特にウィッシュボーン式アームに関する。
【背景技術】
【0002】
道路交通上または他の使用範囲における自動車の運転の際に、ドライバーによる自動車の適切でない取扱いや、事故が生じることはしばしばである。
【0003】
今日提供されている自動車は、自己懸架式のボディを通じて、ボディに接続されたシャシーコンポーネントを与えられている。ボディは、損傷の際の必要な場合に、車両内部室または車両客室を保護するために、極めて複雑な構造を有している。発生する損傷、例えば縁石の縁の部分上に乗り上げたり、またはタイヤ部分やフェンダー部分が例えば固定対象物ないし他の自動車に少ない程度のみ衝突したりする場合、タイヤへの接続部、例えばアームを介して、大きな力が伝達されることがあり、これによってボディは、意図せず変形してしまう可能性がある。この意図しない変形は、修繕後に、車両形状または車両乗客保護室の十分でない回復へと通じる。車両客室の著しい変形によって、同乗者が負傷する高い可能性があるという結果となる。
【0004】
先行技術から、損傷予定箇所が公知である。この損傷予定箇所は、しかしながら十分でない保護を与えるのみである。というのは、これは、起こりうる事故のシナリオの極めて制限された状況のみしかカバーしていないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって本発明の課題は、高い強度と、同時に高い耐久性および安価な生産性を有し、そしてさらに、事故の際に全車両の損傷を少なく保つ可能性を与える自動車のアームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題は、請求項1に従う自動車のアームによって解決される。
【0007】
本発明の有利な改良形は、従属請求項の構成要素である。
【0008】
本発明に係る車両のアーム、特にウィッシュボーン式アームであって、ワンシェルタイプのベースボディと、ベースボディに接続される支承部分を有し、その際、ベースボディが平らなベースボディ底部と、これに付設される折り曲げられたサイドアームを有しているアームは、二つの支承部分の間に、一つの空所部が、少なくとも一つのサイドアーム内に設けられていることによって特徴付けられている。
【0009】
空所部は、本発明の枠内においては、材料除去部(Materialwegnahme)であると理解される。その際、空所部は、ワンシェルタイプのベースボディのサイドアーム領域において、一種の目標屈曲箇所が達成されるために設けられる。ここで、ワンシェルタイプのアームを安価に製造し、そして一つの空所部によって、高い耐用寿命が与えられるよう設けられる、特に有利な可能性がある。側方案内力、静的および動的軸負荷の形で、発生しそして車両ボディに伝達される車輪力に基づいて、本発明に係る空所部は、高い耐用寿命と車両のアームの耐久揺動強度を、同時にコントロールされた屈曲態様のもと保証すること意図している。
【0010】
本発明の別の有利な実施形では、空所部が、車両長手方向軸に対して直行して延在している。ここで空所部は、サイドアームに設けられ、このサイドアームが基本的に車両Y方向に向けられていることが意図されている。よって空所部もまた同様に、基本的に、車両Y方向の上に延在している。このため、事故の場合に発生する力を、車両横断軸に対して平行な過負荷の際に、アームの屈曲が起こることによって分離することが、特に有利に可能である。これによって、また、アームのジョイント接続点が引き裂かれるのが回避され、よって、車輪キャリアが、発生する過負荷の際に時間的に可能な限り長くアームに接続されているということが保証される。
【0011】
したがって、衝突によって引き起こされる運動エネルギーが、車輪を介して、アームにおいて運動エネルギーの形で吸収される。車輪が、フェンダー領域または車輪領域にぶつかると、ここで広範にわたる変形が意図されず引き起こされ、軸接続点または軸補助フレームの意図されない変形が回避される。よって、全体としてより少ない事故損傷が起こり、この事故損傷は、さらにまた理想的な場合には、アームの交換のみによって修復されることが可能である。
【0012】
別の有利な実施形においては、空所部が、車両横断軸に対して直行して延在している。よって空所部は、車両X方向に延在している。前述したメリットは、このような延在に対してもまた有効である。よって、発明にしたがい、車両長手方向過負荷力および車両横断方向過負荷力の形で発生する過負荷力が、分離され、そして例えばアームにおける二つの空所部によって適切に調節される可能性が生じる。
【0013】
別の有利な実施形においては、空所部が、少なくとも部分的にカラー部を有する。ワンシェルタイプのアームは、本発明の枠内で有利には薄板部材として形成される。空所部をカラー部とともに実施することによって、これは特に有利に生産可能である。例えばアームの形成プロセスの間に、空所部はアイレット(Durchizug)またはハーフアイレットの形で作り出されることができる。カラー部の、生じる別のメリットは、空所部の回りの範囲と、空所部の特に表面の領域におけるか、または全体の領域における固有応力が、カラー部によって意図的に応力転換の形で減少されることが可能であるということである。つまり発明に従うカラー部によって、耐久揺動態様に基づき応力ピークや応力裂け目が発生しない。
【0014】
他の有利な実施バリエーションにおいては、空所部が、部分円弧形状の形状を有する。これは、空所部の領域において、略半円形または丸められた材料箇所が、取外されていることを意味する。この取外しは、例えば打ち抜き形式の製造プロセス中や、また変形の形式のカラー部の作成の間に行われることが可能である。空所部の部分円弧形状の推移は、アーム内に発生する、伝達されるべき車輪力の形式の応力推移に対してもまた、特に有利に作用する。空所部の、基本的に半円の形状によって、応力ピークが大幅に回避され、そして一様な応力推移が促進される。本発明の枠内で、空所部の端部領域が同様に丸められており、角ばった形状を有していないとき、特に有利である。
【0015】
他の有利な実施バリエーションでは、空所部が多角形状に形成されている。本発明の枠内において、空所部が多角形状に形成されているとは、三角形状、四角形状、長方形状、または他の形の形状であると理解される。これは、三角形状によって、例えば特に安価に意図された屈曲モーメントを調整することができるというメリットを意味する。前記屈曲モーメントは、ある所定の過負荷力から、アームの屈曲を引き起こす。これら過負荷力は、本発明の枠内で幾ニュートンまで正確に定めることができる。
【0016】
好ましくは、空所部は、その長手方向において、0.01から100mmの長さ、好ましくは0.1から60mmの長さ、そして特に1から50mmの長さにわたって延在している。その際、空所部は本発明の枠内で、センターパンチ(Koernung)としてや、または切削もしくは切断されたスリットとして、またはサイドアーム内の形状的な形によって延在することが可能である。空所部の長手方向は、その際、これがサイドアームにわたって伸びるよう割り当てられている。1から50mmの形状寸法によって、空所部が車両のアームに製造されることができ、この空所部が、50kNまでの、またはより大きなオーダーの車輪力を伝達できるということが保証される。
【0017】
10kNから50kNを超えるオーダーに予調整されることができる過負荷の場合、しかしながらアームの屈曲が、空所部の長手方向軸に対して直行する軸の周りに生じる。
【0018】
別の有利な実施バリエーションでは、カラー部は、サイドアームに対して直行する方に向けられており、かつ、0.1から20mm、好ましくは1から10mmの長さを有する。これによって、特にコストメリットを有してカラー部を製造することが可能である。アームの変形プロセスの間に、カラー部もまた同時に製造することが可能である。さらにカラー部の、車両アームに対しての形状的拡大、または車両アームから離れての形状的拡大が、空所部の内部の応力推移に特に有利に作用する。
【0019】
さらに空所部は、0.1から40mm、好ましくは1から30mmの半径を有する。その際、空所部は、部分円弧形状か、または楕円形に形成されている。半径は、空所部の推移にわたって変化してもよい。これはまた、空所部内に発生する応力推移に対して特に有利に作用する。和らげられた、または一様な応力推移によって、疲労破壊やひび形成に至ることが無い。過負荷によって引き起こされる正確な屈曲モーメントまたは作動モーメントは、よって、より少ないニュートンまで正確に調整または設定されることができる。
【0020】
別の有利な実施バリエーションでは、空所部を取り囲む周辺領域が、ベースボディに対してばらついた硬度を有している。その際、周辺領域は、ベースボディよりも高い硬度を有していることが可能であるが、またベースボディよりも低い硬度を有していても良い。これによって、空所部の領域の材料組織中の、意図して調整された硬度によって、車両のアームの屈曲態様に、特に有利に影響を与えることができる。
【0021】
別の有利な実施バリエーションでは、空所部及び/又は空所部を取り囲む周辺領域が、少なくとも部分的に熱処理されている。部分的な熱処理、例えば誘電照射(Induktion-)及び/又は熱赤外線照射(Waermeinfrarotbestrahlung)によって、特有の硬度の材料組織を意図的に製造することが可能である。材料組織は、既に記載した、過負荷の場合における車両のアームの屈曲特性に対しても同様に、特に有利に作用する。
【0022】
本発明の更なる利点、特徴および観点は、以下の説明から生じ、有利な実施形は、簡略図中の表されている。これらは、本発明の簡単な理解のために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】発明にしたがう車両のアームの斜視図
【図2】発明にしたがう空所部の斜視図
【図3】発明にしたがう空所部の別の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0024】
図中において、同じまたは類似の部材には同一の参照符号が使用されている。その際、簡単化の観点から繰り返しての説明が省略されていたとしても、対応するまたは比較可能なメリットは達成されることが可能である。
【0025】
図1は、ワンシェルタイプのベースボディ2を有する車両のウィッシュボーン式アーム1を示す。その際ベースボディ2は、ベースボディ底部2と、これに形成されたサイドアーム4を有している。サイドアーム4は、この実施例においては、基本的に平らに形成されたベースボディ底部3に対して直行して切り替えられているので、このサイドアームは、ベースボディに対して略直角に立っている。ベースボディ底部3は、さらに組立開口部5と硬化のための硬化ビード(Versteifungssicken)6を有している。
【0026】
さらにベースボディには、支承部分7が設けられている。支承部分7内には、例えば支承ピボット8、支承ホール(Lageoese)9およびボールジョイント10がある。基本的に本発明の枠内で、他のバリエーションの支承部が、支承部分7内に設けられることができる。支承ホール9とボールジョイント10の間には、発明に係る空所部11が存在している。この空所部は、ここで間に存在しているサイドアーム4内に設けられている。その際、本発明に係る空所部11は、支承ホール9と支承ピボット8により定められる揺動軸12に対して基本的に直行して延在している。さらに揺動軸12は、自動車中で、これが車両の長手方向軸または横断方向軸の方向に向けられているように配置されている。
【0027】
図2は、本発明に係る空所部11の詳細図を示している。その際、空所部11は、サイドアーム4への移行部分13内に、丸められた角14を有している。空所部は、周辺領域Rによって取囲まれており、この周辺領域はサイドアーム4内にある。周辺領域Rは、ベースボディ底部中で、これもまた移行している。
【0028】
図3から、空所部11は、車両のウィッシュボーン式アーム1の方に向かうカラー部15の形式で形成されている。全体として、空所部11は、部分円弧状の形状を有している。これはある半径16を有し、この半径は、しかしながら、特にサイドアーム4への端部移行部領域17において、その長さにわたって変化してもよい。端部移行部領域17は、サイドアーム4の上にある角18上に丸められて形成されている。カラー部15は、車両のウィッシュボーン式アーム1の内部室19中で延在している。
【符号の説明】
【0029】
1 ウィッシュボーン式アーム
2 ベースボディ
3 ベースボディの底部
4 サイドアーム
5 組立開口部
6 硬化ビード
7 支承部分
8 支承ピボット
9 支承ホール
10 ボールジョイント
11 空所部
12 揺動軸
13 移行部分
14 11への丸められた角
15 カラー部
16 半径
17 端部移行部分
18 4への角
19 内部室

R 周辺領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のアーム、特にウィッシュボーン式アーム(1)であって、ワンシェルタイプのベースボディ(2)と、ベースボディ(2)に接続される支承部分(7)を有し、その際、ベースボディ(2)が平らなベースボディ底部(3)と、これに付設される折り曲げられたサイドアーム(4)を有している前記アームにおいて、
二つの支承部分(7)の間に、一つの空所部(11)が、少なくとも一つのサイドアーム(4)内に設けられていることを特徴とするアーム。
【請求項2】
空所部(11)が、車両長手方向軸に対して直行して延在していることを特徴とする請求項1に記載のアーム。
【請求項3】
空所部(11)が、車両横断軸に対して直行して延在していることを特徴とする請求項1または2に記載のアーム。
【請求項4】
空所部(11)が、少なくとも部分的にカラー部(15)を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のアーム。
【請求項5】
空所部(11)が、部分円弧形状に形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のアーム。
【請求項6】
空所部(11)が、多角形状に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のアーム。
【請求項7】
空所部(11)が、その長手方向において、0.01から100mmの長さ、好ましくは0.1から60mmの長さ、そして特に1から50mmの長さにわたって延在していることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のアーム。
【請求項8】
カラー部(15)が、サイドアーム(4)に対して直行するほうに向けられており、かつ、0.1から20mm、好ましくは1から10mmの長さを有することを特徴とする請求項4から7のいずれか一項に記載のアーム。
【請求項9】
空所部(11)が、0.1から40mm、好ましくは1から30mmの半径を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のアーム。
【請求項10】
空所部を取り囲む周辺領域(R)が、ベースボディ(2)に対してばらついた硬度を有していることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のアーム。
【請求項11】
空所部(11)及び/又は空所部(11)を取り囲む周辺領域(R)が、少なくとも部分的に熱処理されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のアーム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−6586(P2012−6586A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137167(P2011−137167)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(504258871)ベンテラー アウトモビールテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (60)
【氏名又は名称原語表記】Benteler Automobiltechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Elsener Strasse 95, D−33102 Paderborn, Germany
【Fターム(参考)】