説明

自動車のカウルグリル

【課題】エンジンルーム内への雨水等の浸入を効果的に防止可能で、しかも安価に実施可能な自動車のカウルグリルを提供する。
【解決手段】フロントウィンドシールドの前縁部からボンネットの後縁部の下方に渡って設けられ、車幅方向の途中部で接続可能な複数のカウルグリル分割体10L、10Rに分割構成された自動車のカウルグリル10であって、隣接配置される1対のカウルグリル分割体10L、10Rにおける第1カウルグリル分割体10Rに、第2カウルグリル分割体10Lとの接続部の下側へ延びる下部重合部37を形成し、この下部重合部37に第1樋部34をカウル17の排水路の上方位置まで後方へ向けて下り傾斜状に一体的に形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のカウルグリル分割体に分割構成された自動車のカウルグリルに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントウィンドシールドとボンネット間の下側にはカウルが車幅方向に設けられ、カウルの上側にはカウルに沿ってカウルグリルが設けられている。カウルグリルの後縁部はフロントウィンドシールドの前縁部に圧接され、カウルグリルの前縁部にはシールラバーが設けられ、このシールラバーがボンネットの下面に圧接されることで、エンジンルーム内への雨水等の浸入が防止されている。一般的な自動車のカウルグリルの排水構造では、フロントウィンドシールドを流下するなどしてカウルグリル上に流れ込んだ雨水等は、カウルグリルのグリル部からカウル内へ導入され、カウルの両側に設けた排水孔から外部へ排出されるように構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一方、自動車のカウルグリルとして、それを成形する金型の小型化を図るため、カウルグリルを車幅方向の途中部で複数のカウルグリル分割体に分割構成し、隣接するカウルグリル分割体の接続部の下部において凹凸嵌合などにより、隣接するカウルグリル分割体を接続可能となしたものが提案され、実用化されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平3−61178号公報
【特許文献2】特開2006−224758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献2記載の発明のように、複数のカウルグリル分割体に分割構成したカウルグリルにおいては、カウルグリルに流れ込んだ雨水等の一部が、隣接するカウルグリル分割体間の僅かな隙間を通ってエンジンルーム内へ浸入し、エンジンルーム内が汚れるという問題があった。また、雨水等に含まれる成分によっては、それとの接触によりエンジン部品が劣化することも考えられ、故障の原因となることが懸念される。
【0006】
本発明の目的は、エンジンルーム内への雨水等の浸入を効果的に防止可能で、しかも安価に実施可能な自動車のカウルグリルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る自動車のカウルグリルは、フロントウィンドシールドの前縁部からボンネットの後縁部の下方に渡って設けられ、車幅方向の途中部で接続可能な複数のカウルグリル分割体に分割構成された自動車のカウルグリルであって、隣接配置される1対のカウルグリル分割体における第1カウルグリル分割体に、第2カウルグリル分割体との接続部の下側へ延びる下側重合部を形成し、この下側重合部に第1樋部をカウルの上方位置まで後方へ向けて下り傾斜状に一体的に形成したものである。
【0008】
このカウルグリルでは、フロントウィンドシールドを流下するなどしてカウルグリル上に流れ込んだ雨水等の大部分は、従来と同様にカウルグリルのグリル部からカウル内へ導入され、カウルの両側に設けた排水孔から外部へ排出されることになる。また、第1カウルグリル分割体に、第2カウルグリル分割体との接続部の下側へ延びる下側重合部を形成し、この下側重合部に第1樋部を設けているので、接続部の僅かな隙間を通ってエンジンルーム内へ浸入しようとする雨水等に関しても、第1樋部を通ってカウルの排水路へ案内し、カウルの両端の排水口から外部へ排出することができる。このため、接続部からエンジンルーム内への雨水等の浸入を効果的に防止でき、雨水等によりエンジンルーム内が汚れたり、雨水等との接触によりエンジン部品が劣化したりするという不具合を効果的に防止できる。しかも、第1樋部を第1カウルグリル分割体に一体的に形成しているので、カウルグリルの製作コストを高めることなく実施できる。
【0009】
ここで、前記第1樋部の一方の側壁部を第1カウルグリル分割体の接続部における側壁部で構成することが好ましい実施の形態である。第1樋部は、第1カウルグリル分割体の側壁部とは別個に形成することも可能であるが、この発明のように構成することで、第1カウルグリル分割体の成形性を低下させることなく、第1樋部を設けることができるので好ましい。
【0010】
前記第1カウルグリル分割体の接続部における側壁部に、該カウルグリル分割体の上面よりも低い位置において側方へ突出する接続用突出部を形成して、この接続用突出部の上壁部に接続孔を形成し、前記第2カウルグリル分割体の下面に接続孔に嵌合係止される係合突起を形成することもできる。このように構成することで、係合突起を接続孔に嵌合係止させて、隣接するカウルグリル分割体を接続することができる。また、この場合には、前記接続用突出部の上壁部に、接続孔の下側を囲繞する第2樋部を、カウルの排水路側へ向けて下り傾斜状に一体的に形成することで、接続孔から浸入した雨水等を第2樋部からカウルの排水路へ導入できるので、エンジンルーム内への雨水等の浸入を一層効果的に防止できる。
【0011】
前記第1樋部の一方の側壁部を、第1カウルグリル分割体の接続部における側壁部と、接続用突出部における側壁部とで構成することもできる。この場合には、隣接するカウルグリル分割体の接続構造として、第1カウルグリル分割体に接続用突出部を設ける場合でも、第1カウルグリル分割体の成形性を低下させることなく、第1樋部を設けることができる。
【0012】
前記両カウルグリル分割体におけるボンネットとのシール部の後方に、シール部に沿って溝部をそれぞれ設け、前記第1樋部の上側に重ね合される第2カウルグリル分割体の上側重合部に、第3樋部をカウルの上方位置まで後方へ向けて下り傾斜状に一体的に形成し、前記第1樋部により、第1カウルグリル分割体の溝部内を接続部に向かって流れてくる水をカウル内へ案内し、前記第3樋部により、第2カウルグリル分割体の溝部内を接続部に向かって流れてくる水をカウル内へ案内することが好ましい実施の形態である。この場合には、第1カウルグリル分割体の溝部を通って接続部側へ流れてくる雨水等と、第2カウルグリル分割体の溝部を通って接続部側へ流れてくる雨水等を、第1樋部と第3樋部とでそれぞれ別個に排水できるので、接続部側へ流れ込む雨水等を効率よく排水して、エンジンルーム内への雨水等の浸入を一層効果的に防止できる。
【0013】
また、前述のように第3樋部を設ける場合には、次のように構成することもできる。
即ち、前記第3樋部を接続部に対して第1カウルグリル分割体側に車幅方向にずらした位置に設けるとともに、第3樋部の下流端に対面する前記第1カウルグリル分割体の溝部の後壁に開口部を形成し、この開口部に第3樋部の下流端を接続することができる。この場合には、第3樋部を接続部から離間させることによって、接続部への雨水等の浸入を一層効果的に防止できる。
【0014】
前記第1樋部の車幅方向端部に第3樋部の底部を載置することもできる。この場合には、第3樋部を第1樋部で支持させることができ、しかも第1樋部に第3樋部の底面を密着させて、第1樋部をシールすることができる。
【0015】
前記第2カウルグリル分割体の溝部と第3樋部との間に第3樋部側へ向かって流れる水を制限する堰を設けることも好ましい実施の形態である。このように構成することで、第2カウルグリル分割体の溝部を通って第3樋部側へ流れる雨水等を堰き止めて、接続部側へ流れる雨水等を抑制し、接続部からの雨水等の浸入を一層効果的に防止できる。
【0016】
前記第2カウルグリル分割体における前記シール部を、車幅方向に対して第3樋部よりも第1カウルグリル分割体側へ延設するとともに、両カウルグリル分割体のシール部の突合部を前記第1樋部に接続することも好ましい実施の形態である。この場合には、両カウルグリル分割体のシール部の突合部に浸入した雨水等を第1樋部へ案内できるので、該突合部から浸入した雨水等がエンジンルーム側へ浸入することを防止できる。
【0017】
前記カウルグリルの前縁上端部から溝部の後壁に至る部位において両カウルグリル分割体を車幅方向に重合させることも好ましい。このように構成すると、カウルグリル分割体の車室側部分が重合するので、車室への熱気、臭気、騒音の侵入を防止できる。
【0018】
前記カウルグリルを車幅方向の途中部で左右1対のカウルグリル分割体に分割構成することが好ましい実施の形態である。3分割以上に分割構成することも可能であるが、カウルグリルの見栄え性が低下したり、組立作業が煩雑なったりするなどの問題があるので、左右1対のカウルグリル分割体に分割構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る自動車のカウルグリルによれば、第1カウルグリル分割体に接続部の下側へ延びる第1樋部を形成するという簡単な構成で、接続部からエンジンルーム内への雨水等の浸入を効果的に防止でき、雨水等によりエンジンルーム内が汚れたり、雨水等との接触によりエンジン部品が劣化したりするという不具合を効果的に防止できる。しかも、第1樋部を第1カウルグリル分割体に一体的に形成しているので、カウルグリルの製作コストを高めることなく安価に実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、本実施の形態では、自動車の前後左右を基準に前後左右を定義して説明する。
【0021】
先ず、第1実施形態のカウルグリル10について、図1〜図6を参照しながら説明する。
図1に示すように、カウルグリル10付近の車体構造について説明すると、車室11の前側にはエンジンルーム13と車室11とを区画するダッシュパネル14が車幅方向の略全幅にわたって設けられ、ダッシュパネル14の上部の前側には、ダッシュパネル14の上部とカウルアッパパネル15とカウルロアパネル16とからなる閉断面状のカウル17が車幅方向の略全幅にわたって設けられ、フロントウィンドシールド18の前端縁はカウルアッパパネル15に固定設置されている。カウルロアパネル16の前端部には前方へ延びるカウルフロントパネル19が設けられ、カウルグリル10は、カウルフロントパネル19の上側に配置されている。
【0022】
図1〜図6に示すように、カウルグリル10にはフロントウィンドシールド18の前縁部の上側からボンネット20の後縁部の下方にわたって延びるカウルグリル上部21が設けられている。カウルグリル上部21の前端近傍部には倒立V字状の突出部22が形成され、突出部22よりも後側においてカウルグリル上部21には後方へ延びる傾斜部23が後方上がりの傾斜状に形成され、傾斜部23には多数の貫通孔を形成してなるグリル部24が形成されている。カウルグリル上部21の前縁部には一段段上げした堤部25が形成され、突出部22と堤部25間には溝部26が形成されている。堤部25の上面にはシール部材27が取付けられ、ボンネット20の裏面側に取付けたボンネットレインフォースメント28が、ボンネット20を閉じた状態で、このシール部材27に圧接されて、エンジンルーム13内への雨水等の浸入が防止されるように構成されている。ボンネット20の後縁部はカウルグリル上部21の突出部22の頂部よりもやや車体後方に配置され、突出部22の前側への雨水や異物の侵入が防止されるように構成されている。カウルグリル上部21の溝部26の前端部には下方へ延びる縦壁部29が設けられ、縦壁部29の下端部には前方へ延びてカウルフロントパネル19の前端部に重ね合わせてビス等で結合される取付部30が形成されている。
【0023】
カウルグリル10は、車幅方向の略中央部の接続部48において左右のカウルグリル分割体10L、10Rに分割構成され、左右のカウルグリル分割体10L、10Rは、次のような構成の接続構造31L、31Rにより着脱可能に接続されている。
【0024】
接続構造31Rについて説明すると、図1、図3、図5、図6に示すように、右側に配置される第1カウルグリル分割体10Rの突出部22及び傾斜部23には下方へ延びる第1側壁部32が形成されている。第1側壁部32の前後方向の略中央部には接続用突出部33が突出状に形成され、この接続用突出部33は、第1側壁部32の下端部から左方へ延びる上壁部33aと、上壁部33aの左端から下方へ延びる第1側壁部33bと、上壁部33aの後端部から下側へ延びる後壁部33cから構成され、下面及び右側面は開放されている。第1側壁部32の後部と第1側壁部33bには、両側壁部32、33bを右側壁となした断面U字状の第1樋部34が形成されている。第1樋部34の底壁部34aは後方へ向けて下り傾斜状に設けられ、その後端部は開口されてカウルフロントパネル19の上方位置に配置され、第1樋部34に流れ込んだ雨水等は、カウルフロントパネル19の排水路35に導入されるように構成されている。第1樋部34の左側壁34bの上端部は、左右のカウルグリル分割体10L、10Rを接続した状態で、左側のカウルグリル分割体10Lの下面に僅かな隙間をあけて配置されるように構成されている。
【0025】
接続用突出部33の上壁部33aの前部は前方下がりの円弧面で構成され、その前端部は第1樋部34の底壁部34aに連設されている。堤部25の左端部は切欠かれ、第1樋部34の前端部は前壁部36で閉鎖され、前壁部36の上端部には後方へ延びる下側重合部37が形成され、下側重合部37には連結孔38が形成されている。
【0026】
接続用突出部33の上壁部33aには有底な丸孔からなる第1接続孔40と前後方向に細長い長孔からなる第2接続孔41とが前後に形成され、第2接続孔41の後端部には幅狭な係合部41aが形成されている。接続用突出部33には、第2接続孔41の係合部41aを含む後部以外の口縁から下側へ延びる横断面が略U字状の縦壁部42aと、縦壁部42aの下端を閉鎖する底壁部42bとからなる第2樋部42が形成されている。第2樋部42の底壁部42bは後方下がりの傾斜状に形成され、その後端部は開口されてカウルフロントパネル19の上方位置に配置され、第2接続孔41を通じて第2樋部42に流れ込んだ雨水等は、カウルフロントパネル19の排水路35に導入されるように構成されている。
【0027】
接続構造31Lについて説明すると、図4、図5、図6に示すように、左側に配置される第2カウルグリル分割体10Lの右端部には下側重合部37に重ね合わされる上側重合部43が右方へ突出状に形成され、上側重合部43には下側重合部37の連結孔38に対応させて連結孔44が形成されている。接続用突出部33に対応する位置において、第2カウルグリル分割体10Lの下面には、第1接続孔40に嵌合可能な第1係合突起45と第2接続孔41に嵌合可能な第2係合突起46が下方へ突出状に形成され、第2係合突起46の下端部には係止部47が後方へ突出状に形成されている。
【0028】
この接続構造31L、31Rにより、両カウルグリル分割体10L、10Rを接続する場合には、先ず、第2カウルグリル分割体10Lの右端部を第1カウルグリル分割体10Rの左端部に対して前方へ多少ずらした状態で突き合わせ、第2カウルグリル分割体10Lにおける上側重合部43を第1カウルグリル分割体10Rの下側重合部37に重ね合わせるとともに、接続用突出部33を第2カウルグリル分割体10Lの左端部の下側に重ね合わせ、第2係合突起46を第2接続孔41の前部に嵌合させて、第2カウルグリル分割体10Lの右端部を上側から第1カウルグリル分割体10Rの左端部に重ね合わせる。そして、第2カウルグリル分割体10Lを後方へ移動させることで、第2係合突起46の基部を係合部41aに嵌合させ、更に第2係合突起46の係止部47を接続用突出部33の後壁部33cの下端に係合させるとともに、第1係合突起45を第1接続孔40に嵌合させ、その後、図6に示すように両連結孔38、44に対して連結ピン49を挿通させて、両カウルグリル分割体10L、10Rを接続することになる。
【0029】
また、このように両カウルグリル分割体10L、10Rを接続して、これを車体に組み付けた状態において、カウルグリル10上に流れ込んだ雨水等の大部分は、グリル部24を通ってカウルフロントパネル19の排水路35に導入され、カウルフロントパネル19の両端から外部へ排出されることになる。一方、両カウルグリル分割体10L、10Rの接続部48の僅かな隙間から接続部48内に浸入した雨水等は、図1に矢印Aで示すように、接続部48の下側に配置された第1樋部34を通ってカウルフロントパネル19の排水路35に導入され、カウルフロントパネル19の両端から外部へ排出され、また接続部48の僅かな隙間を通って第2接続孔41に流入した雨水等は、図1に矢印Bで示すように、第2樋部42を通ってカウルフロントパネル19の排水路35に導入され、カウルフロントパネル19の両端から外部へ排出される。このため、接続部48から浸入した雨水等が、エンジンルーム13側へ浸入することが効果的に防止され、雨水等によりエンジンルーム内が汚れたり、雨水等と接触によりエンジン部品が劣化したりするという不具合を効果的に防止できる。しかも、第1樋部33及び第2樋部42を第1カウルグリル分割体10Rに一体成形しているので、カウルグリル10の製作コストが高くなることもない。
【0030】
次に、第2実施形態のカウルグリル50について、図7〜図13を参照しながら説明するが、この第2実施形態のカウルグリル50は、前記第1実施形態のカウルグリル10における左右のカウルグリル分割体10L、10Rの接続構造31L、31Rを部分的に変更したもので、その他の構造はカウルグリル10と同様に構成されているので、同一部材は同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0031】
カウルグリル50は、車幅方向の略中央部の接続部48において左右のカウルグリル分割体50L、50Rに分割構成され、左右のカウルグリル分割体50L、50Rは、次のような構成の接続構造51L、51Rにより着脱可能に接続されている。
【0032】
接続構造51Rについて説明すると、右側に配置される第1カウルグリル分割体50Rの堤部25と溝部26Rの左端部には下側重合部52が形成され、第2カウルグリル分割体50Lには下側重合部52の上側に重ね合される上側重合部60が右方へ突出状に形成されている。下側重合部52の右部には上側重合部60の側端部が嵌合載置される堤部25より一段低い載置部53が形成され、下側重合部52の左部には第1樋部54が第1カウルグリル分割体50Rの前端部から突出部22の前壁部にわたって形成され、第1樋部54の底壁部54aは後方下りの傾斜状に形成されて、第1樋部54の後端部は溝部26Rの後壁部26aに形成した排水口56に開口されている。第1カウルグリル分割体50Rの溝部26Rの左端部は第1樋部54に接続され、溝部26Rを通って接続部48側へ流れる雨水等と、上側重合部60の縁部から上側重合部60と載置部53間に浸入した雨水等は、図7、図11、図13に矢印Cで示すように、第1樋部54を通って排水口56からカウルフロントパネル19の排水路35に導入される。
【0033】
右側に配置される第1カウルグリル分割体50Rの突出部22及び傾斜部23の左端部には下方へ延びる第1側壁部57が形成され、第1側壁部57には接続用突出部33が左側へ突出状に形成されている。この接続用突出部33は、第1側壁部57の下端部から左方へ延びる上壁部33aと、上壁部33aの左端から下方へ延びる第1側壁部33bと、上壁部33aの後端部から下側へ延びる後壁部33cから構成され、下面と右側面と前側面は開放されている。
【0034】
接続用突出部33の上壁部33aには、前記第1実施形態における第1及び第2接続孔40、41を一体化してなる、前後方向に細長い長孔からなる接続孔58が形成され、接続孔58の前後両端部には幅狭な第1係合部58aと第2係合部58bが形成されている。接続用突出部33には、接続孔58の後部以外の口縁から下側へ延びる横断面が略U字状の縦壁部59aと、縦壁部59aの下端を閉鎖する底壁部59bとからなる第2樋部59が形成されている。第2樋部59の底壁部59bは後方下がりの傾斜状に形成され、その後端部は開口されてカウルフロントパネル19の上方位置に配置され、接続孔58を通じて第2樋部59に流れ込んだ雨水等は、カウルフロントパネル19の排水路35に導入されるように構成されている。
【0035】
接続構造31Lについて説明すると、左側に配置される第2カウルグリル分割体50Lの右端部には、第1カウルグリル分割体50Rの下側重合部52に重ね合わされる上側重合部60が右方へ突出状に形成されている。上側重合部60には堤部25の前後方向の途中部から後方へ延びる第3樋部61が底壁部61aを後方下がりの傾斜状にして設けられ、第3樋部61の後端部は第1カウルグリル分割体50Rの溝部26Rの後壁部26aに形成した排水口62に開口されている。第2カウルグリル分割体50Lの溝部26Lは第3樋部61に接続され、溝部26Lと第3樋部61間には第3樋部61側へ雨水等の移動を制限する堰63が設けられている。溝部26Lを通って接続部48側へ流れる雨水等と、上側重合部60上へ浸入した雨水等は、図7、図11、図13に矢印Dで示すように、第3樋部54を通って排水口62からカウルフロントパネル19の排水路35に導入される。また、堰63により、第2カウルグリル分割体50Lの溝部26Lを通って第3樋部61側へ流れる雨水等を堰き止めて、接続部48側へ流れる雨水等を抑制し、接続部48からの雨水等の浸入を一層効果的に防止できる。第3樋部61は接続部48に対して第1カウルグリル分割体50R側に車幅方向にずらした位置に設けられている。図12に示すように、第3樋部61の底壁部61aは第1樋部54の左側壁部54bの上端部に載置され、第1樋部54により第3樋部61を支持するとともに、第1樋部54内の雨水等が左側壁部54bを乗り越えてエンジンルーム13側へ浸入しないように構成されている。
【0036】
接続用突出部33に対応する位置において、第2カウルグリル分割体50Lの下面には、第1係合部58aに嵌合可能な第1係合突起45と第2係合部58bに嵌合可能な第2係合突起46が下方へ突出状に形成され、第2係合突起46の下端部には係止部47が後方へ突出状に形成されている。
【0037】
この接続構造31L、31Rにより、両カウルグリル分割体50L、50Rを接続する場合には、先ず、第2カウルグリル分割体50Lの右端部を第1カウルグリル分割体50Rの左端部に対して前方へ多少ずらした状態で突き合わせ、第2係合突起46を接続孔58の前部に嵌合させてから、第2カウルグリル分割体50Lを後方へ移動させることで、第2係合突起46を第2係止部58bに係合させるとともに、第2係合突起46の係止部47を接続用突出部33の後壁部33cの下端に係合させ、更に第1係合突起45を第1係止部58aに係合させて、両カウルグリル分割体50L、50Rを接続することになる。この第2実施形態では、第1実施形態のように、連結ピン49を用いることなく両カウルグリル分割体50L、50Rを接続するので、接続強度は多少低下するが、連結ピン49が挿通する連結孔38、44からの雨水等の浸入を防止できる。
【0038】
また、このように両カウルグリル分割体50L、50Rを接続して、これを車体に組み付けた状態において、カウルグリル50上に流れ込んだ雨水等の大部分は、グリル部24を通ってカウルフロントパネル19の排水路35に導入され、カウルフロントパネル19の両端から外部へ排出されることになる。一方、両カウルグリル分割体50L、50Rの溝部26L、26Rを通って接続部48側へ流れる雨水等は、第1樋部54と第3樋部61を通ってカウルフロントパネル19の排水路35に案内されて、カウルフロントパネル19の両端から外部へ排出される。また、上側重合部60の縁部から上側重合部60と下側重合部52間の僅かな隙間に流入した雨水等は、第1樋部54を通って、また上側重合部60上に浸入した雨水等は、第3樋部61を通って、それぞれカウルフロントパネル19の排水路35に導入され、カウルフロントパネル19の両端から外部へ排出される。このため、接続部48からエンジンルーム13側への雨水等の浸入が効果的に防止され、雨水等によりエンジンルーム内が汚れたり、雨水等と接触によりエンジン部品が劣化したりするという不具合を効果的に防止できる。しかも、第1樋部54及び第2樋部59を第1カウルグリル分割体50Rに一体成形しているので、カウルグリル50の製作コストが高くなることもない。
【0039】
尚、本実施の形態では、カウルグリルを2つのカウルグリル分割体に分割構成したが、3個以上に分割構成することも可能である。また、隣接するカウルグリル分割体の接続構造は、樋部が接続部の下側に配置されて、接続部から流入した雨水等を排水路35に案内できるように構成されていれば、任意の接続構造を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1実施形態のカウルグリル及びその付近の縦断面図
【図2】同カウルグリルの斜視図
【図3】同カウルグリルの右側のカウルグリル分割体の接続部分の斜視図
【図4】同カウルグリルの左側のカウルグリル分割体の接続部分の斜視図
【図5】同カウルグリルのカウルグリル分割体の接続方法の説明図
【図6】同カウルグリルの左右のカウルグリル分割体の接続部分の要部縦断面図
【図7】第2実施形態のカウルグリル及びその付近の縦断面図
【図8】同カウルグリルの右側のカウルグリル分割体の接続部分の斜視図
【図9】同カウルグリルの左側のカウルグリル分割体の接続部分の斜視図
【図10】同カウルグリルのカウルグリル分割体の接続方法の説明図
【図11】同カウルグリルの左右のカウルグリル分割体の第1及び第3樋部付近の接続部の平面図
【図12】図11のXII-XII線断面図
【図13】図11のXIII-XIII線断面図
【符号の説明】
【0041】
10 カウルグリル 10R 第1カウルグリル分割体
10L 第2カウルグリル分割体 11 車室
13 エンジンルーム 14 ダッシュパネル
15 カウルアッパパネル 16 カウルロアパネル
17 カウル 18 フロントウィンドシールド
19 カウルフロントパネル 20 ボンネット
21 カウルグリル上部 22 突出部
23 傾斜部 24 グリル部
25 堤部 26 溝部
27 シール部材 28 ボンネットレインフォースメント
29 縦壁部 30 取付部
31L 接続構造 31R 接続構造
32 第1側壁部 33 接続用突出部
33a 上壁部 33b 第1側壁部
33c 後壁部 34 第1樋部
34a 底壁部 34b 左側壁
35 排水路 36 前壁部
37 下側重合部 38 連結孔
40 接続孔 41 接続孔
41a 係合部 42 第2樋部
42a 縦壁部 42b 底壁部
43 上側重合部 44 連結孔
45 第1係合突起 46 第2係合突起
47 係止部 48 接続部
49 連結ピン
26L 溝部 26R 溝部
26a 後壁部
50 カウルグリル 50L カウルグリル分割体
50R カウルグリル分割体 51L 接続構造
51R 接続構造 52 下側重合部
53 載置部 54 第1樋部
54a 底壁部 54b 左側壁部
56 排水口 57 側壁部
58 接続孔 58a 第1係合部
58b 第2係合部 59 第2樋部
59a 縦壁部 59b 底壁部
60 上側重合部 61 第3樋部
61a 底壁部 62 排水口
63 堰


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントウィンドシールドの前縁部からボンネットの後縁部の下方に渡って設けられ、車幅方向の途中部で接続可能な複数のカウルグリル分割体に分割構成された自動車のカウルグリルであって、
隣接配置される1対のカウルグリル分割体における第1カウルグリル分割体に、第2カウルグリル分割体との接続部の下側へ延びる下側重合部を形成し、この下側重合部に第1樋部をカウルの上方位置まで後方へ向けて下り傾斜状に一体的に形成した、
ことを特徴とする自動車のカウルグリル。
【請求項2】
前記第1樋部の一方の側壁部を第1カウルグリル分割体の接続部における側壁部で構成した請求項1記載の自動車のカウルグリル。
【請求項3】
前記第1カウルグリル分割体の接続部における側壁部に、該カウルグリル分割体の上面よりも低い位置において側方へ突出する接続用突出部を形成して、この接続用突出部の上壁部に接続孔を形成し、前記第2カウルグリル分割体の下面に接続孔に嵌合係止される係合突起を形成した請求項1又は2記載の自動車のカウルグリル。
【請求項4】
前記接続用突出部の上壁部に、接続孔の下側を囲繞する第2樋部を、カウルの排水路側へ向けて下り傾斜状に一体的に形成した請求項3記載の自動車のカウルグリル。
【請求項5】
前記第1樋部の一方の側壁部を、第1カウルグリル分割体の接続部における側壁部と、接続用突出部における側壁部とで構成した請求項3又は4記載の自動車のカウルグリル。
【請求項6】
前記両カウルグリル分割体におけるボンネットとのシール部の後方に、シール部に沿って溝部をそれぞれ設け、前記第1樋部の上側に重ね合される第2カウルグリル分割体の上側重合部に、第3樋部をカウルの上方位置まで後方へ向けて下り傾斜状に一体的に形成し、前記第1樋部により、第1カウルグリル分割体の溝部内を接続部に向かって流れてくる水をカウル内へ案内し、前記第3樋部により、第2カウルグリル分割体の溝部内を接続部に向かって流れてくる水をカウル内へ案内する請求項1〜4のいずれか1項記載の自動車のカウルグリル。
【請求項7】
前記第3樋部を接続部に対して第1カウルグリル分割体側に車幅方向にずらした位置に設けるとともに、第3樋部の下流端に対面する前記第1カウルグリル分割体の溝部の後壁に開口部を形成し、この開口部に第3樋部の下流端を接続した請求項6記載の自動車のカウルグリル。
【請求項8】
前記第1樋部の車幅方向端部に第3樋部の底部を載置した請求項6又は7記載の自動車のカウルグリル。
【請求項9】
前記第2カウルグリル分割体の溝部と第3樋部との間に第3樋部側へ向かって流れる水を制限する堰を設けた請求項6〜8のいずれか1項記載の自動車のカウルグリル。
【請求項10】
前記第2カウルグリル分割体における前記シール部を、車幅方向に対して第3樋部よりも第1カウルグリル分割体側へ延設するとともに、両カウルグリル分割体のシール部の突合部を前記第1樋部に接続した請求項6〜9のいずれか1項記載の自動車のカウルグリル。
【請求項11】
前記カウルグリルの前縁上端部から溝部の後壁に至る部位において両カウルグリル分割体を車幅方向に重合させた請求項6〜10のいずれか1項記載の自動車のカウルグリル。
【請求項12】
前記カウルグリルを車幅方向の途中部で左右1対のカウルグリル分割体に分割構成した請求項1〜11のいずれか1項記載の自動車のカウルグリル。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−195380(P2008−195380A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5189(P2008−5189)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000107619)スターライト工業株式会社 (62)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】