自動車のカウル構造
【課題】 シールパネルの前側への倒れを確実に防止しつつ、車両衝突時の下向き荷重を受けた際にはシールパネルが確実に変形してフードの下方移動を許容する自動車のカウル構造を提供する。
【解決手段】 シールパネル8における固定部9と遮蔽壁10の間にリブ12を形成したため、空間S内に雪等の異物が溜まって、遮蔽壁10が前向き荷重F1により前側に押されても、遮蔽壁10が前側に倒れることはない。従って、遮蔽壁10の上端のシール部11によるフード1とのシール状態は維持される。また、車両衝突時においてフード1へ下向きの大きな荷重F2が加わった際には、リブ12が傾斜しているため、遮蔽壁10を所定方向へ変形させ(撓ませ)て、衝突エネルギーを確実に吸収する。
【解決手段】 シールパネル8における固定部9と遮蔽壁10の間にリブ12を形成したため、空間S内に雪等の異物が溜まって、遮蔽壁10が前向き荷重F1により前側に押されても、遮蔽壁10が前側に倒れることはない。従って、遮蔽壁10の上端のシール部11によるフード1とのシール状態は維持される。また、車両衝突時においてフード1へ下向きの大きな荷重F2が加わった際には、リブ12が傾斜しているため、遮蔽壁10を所定方向へ変形させ(撓ませ)て、衝突エネルギーを確実に吸収する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車のカウル構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フロントウィンドウパネルの前方にはカウルトップカバーが設けられている。カウルトップカバーには多数の空気導入孔が形成されている。このカウルトップカバーと、エンジンルームを覆うフードの後端との間には空間が形成され、該空間内には揺動自在なワイパアームが収納されている。
【0003】
この空間の前側はカウルトップカバーから上方へ形成した縦壁形状のシールパネルにより遮蔽されている。シールパネルの上端にはフードの下面に当接するシール部が設けられている。
【0004】
空間がこのようなシールパネルにより遮蔽されることにより、エンジンルーム内の熱気や臭いがカウルトップカバーを介して車室内側へ侵入するのを防止すると共に、空間内に溜まった異物(枯葉、雪など)がエンジンルーム内に侵入するのを防止する(例えば、特許文献1。)。
【特許文献1】特許第3006152号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、シールパネルが単なる縦壁形状のため、空間内に雪等の異物が溜まり、それがワイパアームにより更に前側へ押されると、シールパネルが前側へ倒れて、上端のシール部とフードとの間に隙間が生じるおそれがある。隙間が生じると、そこからエンジンルーム内の熱気や臭いが車室内に侵入してしまう。
【0006】
そこで、シールパネルが前側へ倒れないようにするため、シールパネル全体の剛性を高めることが考えられる。しかし、シールパネルの剛性があまり高すぎると、車両衝突時においてフードへ下向きの大きな荷重が加わった際に、フードが下方へ移動しにくくなり、衝突エネルギーを十分に吸収できなくなる。
【0007】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、シールパネルの前側への倒れを確実に防止しつつ、車両衝突時の下向き荷重を受けた際にはシールパネルが確実に変形してフードの下方移動を許容する自動車のカウル構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、フロントウィンドウパネルの前方に、揺動自在なワイパアームを収納する空間を形成し、該空間の底面をカウルトップカバーにより形成すると共に、カウルトップカバーの前方に、該カウルトップカバーに固定される固定部と、該固定部から上方へ立設された遮蔽壁とから成るシールパネルを、カウルトップカバーと一体又は別体で形成し、該シールパネルの遮蔽壁の上端に、フードの下面に当接するシール部を設けた自動車のカウル構造であって、前記シールパネルにおける固定部と遮蔽壁の間に、車幅方向で傾斜したリブを形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、フロントウィンドウパネルの前方に、揺動自在なワイパアームを収納する空間を形成し、該空間の底面をカウルトップカバーにより形成すると共に、カウルトップカバーの前方に、該カウルトップカバーに固定される固定部と、該固定部から上方へ立設された遮蔽壁とから成るシールパネルを、カウルトップカバーと一体又は別体で形成し、該シールパネルの遮蔽壁の上端に、フードの下面に当接するシール部を設けた自動車のカウル構造であって、前記シールパネルにおける固定部と遮蔽壁の間にリブを形成すると共に、遮蔽壁を前後方向で傾斜させたことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、リブが遮蔽壁の前側に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、シールパネルを樹脂で形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、シールパネルにおける固定部と遮蔽壁の間にリブを形成したため、空間内に雪等の異物が溜まって遮蔽壁が前側に押されても、遮蔽壁が前側に倒れることはない。従って、遮蔽壁の上端のシール部によるフードとのシール状態は維持される。また、車両衝突時においてフードへ下向きの大きな荷重が加わった際には、リブが傾斜しているため、遮蔽壁を所定方向へ変形させ(撓ませ)て、衝突エネルギーを確実に吸収する。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、シールパネルにおける固定部と遮蔽壁の間にリブを形成したため、空間内に雪等の異物が溜まって遮蔽壁が前側に押されても、遮蔽壁が前側に倒れることはない。従って、遮蔽壁の上端のシール部によるフードとのシール状態は維持される。また、車両衝突時においてフードへ下向きの大きな荷重が加わった際には、遮蔽壁が傾斜しているため、所定方向へ変形して、衝突エネルギーを確実に吸収する。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、リブが遮蔽壁の前側に形成されているため、遮蔽壁が前側へ倒れにくい。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、シールパネルが樹脂製のため、成形が容易で且つ軽量化を図ることができる。また、シールパネルをカウルトップカバーと一体成形することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
シールパネルの前側への倒れを確実に防止しつつ、車両衝突時の下向き荷重を受けた際にはシールパネルが確実に変形してフードの下方移動を許容する自動車のカウル構造を提供する、という目的を、フロントウィンドウパネルの前方に、揺動自在なワイパアームを収納する空間を形成し、該空間の底面をカウルトップカバーにより形成すると共に、カウルトップカバーの前方に、該カウルトップカバーに固定される固定部と、該固定部から上方へ立設された遮蔽壁とから成るシールパネルを、カウルトップカバーと一体又は別体で形成し、該シールパネルの遮蔽壁の上端に、フードの下面に当接するシール部を設けた自動車のカウル構造であって、前記シールパネルにおける固定部と遮蔽壁の間に、車幅方向で傾斜したリブを形成したことで実現した。以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の各実施例において共通する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0017】
図1〜図6は、第1実施例を示す図である。エンジンルームEの上方には、前開きタイプのフード1が配されている。フロントウィンドウパネル2の前方には空間Sが形成され、該空間Sの底面はフロントウィンドウパネル2の下端から前側に延びる樹脂製のカウルトップカバー3により形成されている。
【0018】
カウルトップカバー3の前端は、係止片4により車体を構成するカウルトップフロント5に係合されている。カウルトップカバー3には図示しない室内へ空気を導入可能なる多数の空気導入孔6が形成されている。また、カウルトップカバー3からはワイパアーム7が空間S側へ向けて突出している。ワイパアーム7はフロントウィンドウパネル2に沿って揺動自在で、揺動動作の最下端位置は空間S内で、且つ非使用時も空間S内に収納される。
【0019】
空間Sの前側には、樹脂製のシールパネル8が形成されている。シールパネル8が樹脂製のため、成形が容易で、軽量化を図ることもできる。シールパネル8は、基本的に、カウルトップカバー3の前端に固定される固定部9と、該固定部9の後端から上方へ向けて立設された 遮蔽壁10とから構成されている。遮蔽壁10の上端には、フード1の下面に当接する弾性材料製のシール部11が設けられている。また、固定部9と遮蔽壁10との間には、所定間隔ごとに複数の リブ12が形成されている。
【0020】
シールパネル8の固定部9は、カウルトップカバー3の前端から形成された折返部13により挟持された状態で固定されている。折返部13のリブ12と対応する部分には切欠14が形成されている。
【0021】
このシールパネル8の遮蔽壁10は、垂直に対して角度θ1だけ前方へ傾斜している(図4参照)。角度θ1としては、10〜45°の範囲が好ましい。また、リブ12も垂直に対して角度θ2だけ、車幅方向右側へ傾斜している(図5参照)。角度θ2も、10〜45°の範囲が好ましい。
【0022】
この実施例によれば、空間S内に雪15等の異物が溜まり、それがワイパアーム7により前側(図2の左側)に押されて、遮蔽壁10に対して前向き荷重F1(図2参照)が加わっても、固定部9と遮蔽壁10の間にリブ12が形成されているため、遮蔽壁10が前側に倒れることはない。特に、リブ12が遮蔽壁10の前側に形成されているため、遮蔽壁10の前側への倒れを防止する効果が高い。従って、遮蔽壁10の上端のシール部11によるフード1とのシール状態は維持され、シール部11とフード1との間に隙間が生じない。
【0023】
また、車両衝突時においてフード1へ下向きの大きな荷重F2(図2参照)が加わった際には、リブ12が車幅方向へ傾斜しており、且つ遮蔽壁10自体も前側へ傾斜しているため、遮蔽壁10は前側へ変形して(撓んで)、フード1の下方移動を許容する。そのため、前記下向き荷重F2による衝突エネルギーを確実に吸収することができる。また、リブ12の固定部9との接続部が車両前後方向で傾斜させても良い。更に、リブ12をくの字状、湾曲形状に設けても良い。
【0024】
図6は、下向きの荷重F2を実験的に加えた場合の荷重−変位特性を示すグラフである。図6の点線は比較例として、遮蔽壁とリブを両方とも垂直に形成したシールパネルの場合のデータを示している。比較例のように、垂直な遮蔽壁と、垂直なリブを形成した場合は、下向きの荷重F2に対して、遮蔽壁とリブの両方が最大限に抗力を発揮してしまうので、結果として降伏点P1のピーク値は非常に高くなる。
【0025】
図6の実線は本実施例を示している。比較例に比べて、遮蔽壁10とリブ12の両方が傾斜しているため、下向きに荷重F2に対して、遮蔽壁10とリブ12の傾斜が荷重F2を逃がす方向に作用する。従って、比較例に比べて、降伏点P2を低く抑えることができる。また、降伏点P2を超えた後も、傾斜したリブ12が粘り強く変形していくことにより、グラフ上の波形は降伏点P2のピーク値をあまり変化させることなく変形し続けていくことができる。このような潰れ方をすることで、衝突エネルギーの吸収性能と、ワイパアーム7の雪押し荷重に対する形状保持性能を両立できる。
【実施例2】
【0026】
図7及び図8は、本願発明の第2実施例を示す図である。この第2実施例に係るシールパネル16では、リブ17、18を交互に反対の方向へ傾斜させたものである。このようにリブ17、18の傾斜方向を変えても、先の実施例と同様の効果が得られる。
【実施例3】
【0027】
図9は、本願発明の第3実施例を示す図である。この第3実施例に係るシールパネル19では、リブ20は第1実施例と同様に、車幅方向へ角度θ2だけ傾斜しているが、遮蔽壁21は固定部9に対して垂直に形成したものである。このように遮蔽壁21を垂直にしても、リブ20が傾斜していることにより、先の実施例と略同様の効果が得られる。尚、シールパネル19の材料強度や、板厚等は、適宜最適なものに調整されて採用される。
【実施例4】
【0028】
図10及び図11は、本願発明の第4実施例を示す図である。この第4実施例に係るシールパネル22では、遮蔽壁10は第1実施例と同様に、前側へ角度θ1だけ傾斜しているが、リブ23は固定部9に対して垂直に形成したものである。このようにリブ23を垂直にしても、遮蔽壁10が傾斜していることにより、先の実施例と略同様の効果が得られる。また、遮蔽壁10を後側へ傾斜して設けても良い。尚、シールパネル22の材料強度や、板厚等は、適宜最適なものに調整されて採用される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上の実施例では、カウルトップカバー3と別体のシールパネル8、16、19、22を例にしたが、カウルトップカバー3と一体に形成されていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の第1実施例に係るカウル構造を示す斜視図。
【図2】図1のカウル構造を示す断面図。
【図3】図2のシールパネルを示す斜視図。
【図4】図3のシールパネルを示す側面図。
【図5】図3のシールパネルを示す正面図。
【図6】図3のシールパネルの荷重−変位特性を示すグラフ。
【図7】この発明の第2実施例に係るシールパネルを示す斜視図。
【図8】図7のシールパネルを示す正面図。
【図9】この発明の第3実施例に係るシールパネルを示す斜視図。
【図10】この発明の第4実施例に係るシールパネルを示す斜視図。
【図11】図10のシールパネルを示す正面図。
【符号の説明】
【0031】
1 フード
2 フロントウィンドウパネル
3 カウルトップカバー
7 ワイパアーム
8、16、19、22 シールパネル
9 固定部
10、21 遮蔽壁
11 シール部
12、17、18、20、23 リブ
15 雪
E エンジンルーム
S 空間
θ1 遮蔽壁の傾斜角度
θ2 リブの傾斜角度
F1 前向き荷重
F2 下向き荷重
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車のカウル構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フロントウィンドウパネルの前方にはカウルトップカバーが設けられている。カウルトップカバーには多数の空気導入孔が形成されている。このカウルトップカバーと、エンジンルームを覆うフードの後端との間には空間が形成され、該空間内には揺動自在なワイパアームが収納されている。
【0003】
この空間の前側はカウルトップカバーから上方へ形成した縦壁形状のシールパネルにより遮蔽されている。シールパネルの上端にはフードの下面に当接するシール部が設けられている。
【0004】
空間がこのようなシールパネルにより遮蔽されることにより、エンジンルーム内の熱気や臭いがカウルトップカバーを介して車室内側へ侵入するのを防止すると共に、空間内に溜まった異物(枯葉、雪など)がエンジンルーム内に侵入するのを防止する(例えば、特許文献1。)。
【特許文献1】特許第3006152号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、シールパネルが単なる縦壁形状のため、空間内に雪等の異物が溜まり、それがワイパアームにより更に前側へ押されると、シールパネルが前側へ倒れて、上端のシール部とフードとの間に隙間が生じるおそれがある。隙間が生じると、そこからエンジンルーム内の熱気や臭いが車室内に侵入してしまう。
【0006】
そこで、シールパネルが前側へ倒れないようにするため、シールパネル全体の剛性を高めることが考えられる。しかし、シールパネルの剛性があまり高すぎると、車両衝突時においてフードへ下向きの大きな荷重が加わった際に、フードが下方へ移動しにくくなり、衝突エネルギーを十分に吸収できなくなる。
【0007】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、シールパネルの前側への倒れを確実に防止しつつ、車両衝突時の下向き荷重を受けた際にはシールパネルが確実に変形してフードの下方移動を許容する自動車のカウル構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、フロントウィンドウパネルの前方に、揺動自在なワイパアームを収納する空間を形成し、該空間の底面をカウルトップカバーにより形成すると共に、カウルトップカバーの前方に、該カウルトップカバーに固定される固定部と、該固定部から上方へ立設された遮蔽壁とから成るシールパネルを、カウルトップカバーと一体又は別体で形成し、該シールパネルの遮蔽壁の上端に、フードの下面に当接するシール部を設けた自動車のカウル構造であって、前記シールパネルにおける固定部と遮蔽壁の間に、車幅方向で傾斜したリブを形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、フロントウィンドウパネルの前方に、揺動自在なワイパアームを収納する空間を形成し、該空間の底面をカウルトップカバーにより形成すると共に、カウルトップカバーの前方に、該カウルトップカバーに固定される固定部と、該固定部から上方へ立設された遮蔽壁とから成るシールパネルを、カウルトップカバーと一体又は別体で形成し、該シールパネルの遮蔽壁の上端に、フードの下面に当接するシール部を設けた自動車のカウル構造であって、前記シールパネルにおける固定部と遮蔽壁の間にリブを形成すると共に、遮蔽壁を前後方向で傾斜させたことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、リブが遮蔽壁の前側に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、シールパネルを樹脂で形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、シールパネルにおける固定部と遮蔽壁の間にリブを形成したため、空間内に雪等の異物が溜まって遮蔽壁が前側に押されても、遮蔽壁が前側に倒れることはない。従って、遮蔽壁の上端のシール部によるフードとのシール状態は維持される。また、車両衝突時においてフードへ下向きの大きな荷重が加わった際には、リブが傾斜しているため、遮蔽壁を所定方向へ変形させ(撓ませ)て、衝突エネルギーを確実に吸収する。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、シールパネルにおける固定部と遮蔽壁の間にリブを形成したため、空間内に雪等の異物が溜まって遮蔽壁が前側に押されても、遮蔽壁が前側に倒れることはない。従って、遮蔽壁の上端のシール部によるフードとのシール状態は維持される。また、車両衝突時においてフードへ下向きの大きな荷重が加わった際には、遮蔽壁が傾斜しているため、所定方向へ変形して、衝突エネルギーを確実に吸収する。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、リブが遮蔽壁の前側に形成されているため、遮蔽壁が前側へ倒れにくい。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、シールパネルが樹脂製のため、成形が容易で且つ軽量化を図ることができる。また、シールパネルをカウルトップカバーと一体成形することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
シールパネルの前側への倒れを確実に防止しつつ、車両衝突時の下向き荷重を受けた際にはシールパネルが確実に変形してフードの下方移動を許容する自動車のカウル構造を提供する、という目的を、フロントウィンドウパネルの前方に、揺動自在なワイパアームを収納する空間を形成し、該空間の底面をカウルトップカバーにより形成すると共に、カウルトップカバーの前方に、該カウルトップカバーに固定される固定部と、該固定部から上方へ立設された遮蔽壁とから成るシールパネルを、カウルトップカバーと一体又は別体で形成し、該シールパネルの遮蔽壁の上端に、フードの下面に当接するシール部を設けた自動車のカウル構造であって、前記シールパネルにおける固定部と遮蔽壁の間に、車幅方向で傾斜したリブを形成したことで実現した。以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の各実施例において共通する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0017】
図1〜図6は、第1実施例を示す図である。エンジンルームEの上方には、前開きタイプのフード1が配されている。フロントウィンドウパネル2の前方には空間Sが形成され、該空間Sの底面はフロントウィンドウパネル2の下端から前側に延びる樹脂製のカウルトップカバー3により形成されている。
【0018】
カウルトップカバー3の前端は、係止片4により車体を構成するカウルトップフロント5に係合されている。カウルトップカバー3には図示しない室内へ空気を導入可能なる多数の空気導入孔6が形成されている。また、カウルトップカバー3からはワイパアーム7が空間S側へ向けて突出している。ワイパアーム7はフロントウィンドウパネル2に沿って揺動自在で、揺動動作の最下端位置は空間S内で、且つ非使用時も空間S内に収納される。
【0019】
空間Sの前側には、樹脂製のシールパネル8が形成されている。シールパネル8が樹脂製のため、成形が容易で、軽量化を図ることもできる。シールパネル8は、基本的に、カウルトップカバー3の前端に固定される固定部9と、該固定部9の後端から上方へ向けて立設された 遮蔽壁10とから構成されている。遮蔽壁10の上端には、フード1の下面に当接する弾性材料製のシール部11が設けられている。また、固定部9と遮蔽壁10との間には、所定間隔ごとに複数の リブ12が形成されている。
【0020】
シールパネル8の固定部9は、カウルトップカバー3の前端から形成された折返部13により挟持された状態で固定されている。折返部13のリブ12と対応する部分には切欠14が形成されている。
【0021】
このシールパネル8の遮蔽壁10は、垂直に対して角度θ1だけ前方へ傾斜している(図4参照)。角度θ1としては、10〜45°の範囲が好ましい。また、リブ12も垂直に対して角度θ2だけ、車幅方向右側へ傾斜している(図5参照)。角度θ2も、10〜45°の範囲が好ましい。
【0022】
この実施例によれば、空間S内に雪15等の異物が溜まり、それがワイパアーム7により前側(図2の左側)に押されて、遮蔽壁10に対して前向き荷重F1(図2参照)が加わっても、固定部9と遮蔽壁10の間にリブ12が形成されているため、遮蔽壁10が前側に倒れることはない。特に、リブ12が遮蔽壁10の前側に形成されているため、遮蔽壁10の前側への倒れを防止する効果が高い。従って、遮蔽壁10の上端のシール部11によるフード1とのシール状態は維持され、シール部11とフード1との間に隙間が生じない。
【0023】
また、車両衝突時においてフード1へ下向きの大きな荷重F2(図2参照)が加わった際には、リブ12が車幅方向へ傾斜しており、且つ遮蔽壁10自体も前側へ傾斜しているため、遮蔽壁10は前側へ変形して(撓んで)、フード1の下方移動を許容する。そのため、前記下向き荷重F2による衝突エネルギーを確実に吸収することができる。また、リブ12の固定部9との接続部が車両前後方向で傾斜させても良い。更に、リブ12をくの字状、湾曲形状に設けても良い。
【0024】
図6は、下向きの荷重F2を実験的に加えた場合の荷重−変位特性を示すグラフである。図6の点線は比較例として、遮蔽壁とリブを両方とも垂直に形成したシールパネルの場合のデータを示している。比較例のように、垂直な遮蔽壁と、垂直なリブを形成した場合は、下向きの荷重F2に対して、遮蔽壁とリブの両方が最大限に抗力を発揮してしまうので、結果として降伏点P1のピーク値は非常に高くなる。
【0025】
図6の実線は本実施例を示している。比較例に比べて、遮蔽壁10とリブ12の両方が傾斜しているため、下向きに荷重F2に対して、遮蔽壁10とリブ12の傾斜が荷重F2を逃がす方向に作用する。従って、比較例に比べて、降伏点P2を低く抑えることができる。また、降伏点P2を超えた後も、傾斜したリブ12が粘り強く変形していくことにより、グラフ上の波形は降伏点P2のピーク値をあまり変化させることなく変形し続けていくことができる。このような潰れ方をすることで、衝突エネルギーの吸収性能と、ワイパアーム7の雪押し荷重に対する形状保持性能を両立できる。
【実施例2】
【0026】
図7及び図8は、本願発明の第2実施例を示す図である。この第2実施例に係るシールパネル16では、リブ17、18を交互に反対の方向へ傾斜させたものである。このようにリブ17、18の傾斜方向を変えても、先の実施例と同様の効果が得られる。
【実施例3】
【0027】
図9は、本願発明の第3実施例を示す図である。この第3実施例に係るシールパネル19では、リブ20は第1実施例と同様に、車幅方向へ角度θ2だけ傾斜しているが、遮蔽壁21は固定部9に対して垂直に形成したものである。このように遮蔽壁21を垂直にしても、リブ20が傾斜していることにより、先の実施例と略同様の効果が得られる。尚、シールパネル19の材料強度や、板厚等は、適宜最適なものに調整されて採用される。
【実施例4】
【0028】
図10及び図11は、本願発明の第4実施例を示す図である。この第4実施例に係るシールパネル22では、遮蔽壁10は第1実施例と同様に、前側へ角度θ1だけ傾斜しているが、リブ23は固定部9に対して垂直に形成したものである。このようにリブ23を垂直にしても、遮蔽壁10が傾斜していることにより、先の実施例と略同様の効果が得られる。また、遮蔽壁10を後側へ傾斜して設けても良い。尚、シールパネル22の材料強度や、板厚等は、適宜最適なものに調整されて採用される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上の実施例では、カウルトップカバー3と別体のシールパネル8、16、19、22を例にしたが、カウルトップカバー3と一体に形成されていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の第1実施例に係るカウル構造を示す斜視図。
【図2】図1のカウル構造を示す断面図。
【図3】図2のシールパネルを示す斜視図。
【図4】図3のシールパネルを示す側面図。
【図5】図3のシールパネルを示す正面図。
【図6】図3のシールパネルの荷重−変位特性を示すグラフ。
【図7】この発明の第2実施例に係るシールパネルを示す斜視図。
【図8】図7のシールパネルを示す正面図。
【図9】この発明の第3実施例に係るシールパネルを示す斜視図。
【図10】この発明の第4実施例に係るシールパネルを示す斜視図。
【図11】図10のシールパネルを示す正面図。
【符号の説明】
【0031】
1 フード
2 フロントウィンドウパネル
3 カウルトップカバー
7 ワイパアーム
8、16、19、22 シールパネル
9 固定部
10、21 遮蔽壁
11 シール部
12、17、18、20、23 リブ
15 雪
E エンジンルーム
S 空間
θ1 遮蔽壁の傾斜角度
θ2 リブの傾斜角度
F1 前向き荷重
F2 下向き荷重
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントウィンドウパネルの前方に、揺動自在なワイパアームを収納する空間を形成し、該空間の底面をカウルトップカバーにより形成すると共に、
カウルトップカバーの前方に、該カウルトップカバーに固定される固定部と、該固定部から上方へ立設された遮蔽壁とから成るシールパネルを、カウルトップカバーと一体又は別体で形成し、該シールパネルの遮蔽壁の上端に、フードの下面に当接するシール部を設けた自動車のカウル構造であって、
前記シールパネルにおける固定部と遮蔽壁の間に、車幅方向で傾斜したリブを形成したことを特徴とする自動車のカウル構造。
【請求項2】
フロントウィンドウパネルの前方に、揺動自在なワイパアームを収納する空間を形成し、該空間の底面をカウルトップカバーにより形成すると共に、
カウルトップカバーの前方に、該カウルトップカバーに固定される固定部と、該固定部から上方へ立設された遮蔽壁とから成るシールパネルを、カウルトップカバーと一体又は別体で形成し、該シールパネルの遮蔽壁の上端に、フードの下面に当接するシール部を設けた自動車のカウル構造であって、
前記シールパネルにおける固定部と遮蔽壁の間にリブを形成すると共に、遮蔽壁を前後方向で傾斜させたことを特徴とする自動車のカウル構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の自動車のカウル構造であって、
リブが遮蔽壁の前側に形成されていることを特徴とする自動車のカウル構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車のカウル構造であって、
シールパネルを樹脂で形成したことを特徴とする自動車のカウル構造。
【請求項1】
フロントウィンドウパネルの前方に、揺動自在なワイパアームを収納する空間を形成し、該空間の底面をカウルトップカバーにより形成すると共に、
カウルトップカバーの前方に、該カウルトップカバーに固定される固定部と、該固定部から上方へ立設された遮蔽壁とから成るシールパネルを、カウルトップカバーと一体又は別体で形成し、該シールパネルの遮蔽壁の上端に、フードの下面に当接するシール部を設けた自動車のカウル構造であって、
前記シールパネルにおける固定部と遮蔽壁の間に、車幅方向で傾斜したリブを形成したことを特徴とする自動車のカウル構造。
【請求項2】
フロントウィンドウパネルの前方に、揺動自在なワイパアームを収納する空間を形成し、該空間の底面をカウルトップカバーにより形成すると共に、
カウルトップカバーの前方に、該カウルトップカバーに固定される固定部と、該固定部から上方へ立設された遮蔽壁とから成るシールパネルを、カウルトップカバーと一体又は別体で形成し、該シールパネルの遮蔽壁の上端に、フードの下面に当接するシール部を設けた自動車のカウル構造であって、
前記シールパネルにおける固定部と遮蔽壁の間にリブを形成すると共に、遮蔽壁を前後方向で傾斜させたことを特徴とする自動車のカウル構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の自動車のカウル構造であって、
リブが遮蔽壁の前側に形成されていることを特徴とする自動車のカウル構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動車のカウル構造であって、
シールパネルを樹脂で形成したことを特徴とする自動車のカウル構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−7965(P2006−7965A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187995(P2004−187995)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】
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