説明

自動車のバックドアのガラス組付構造

【課題】低コストでありながら作業性を向上させることができる自動車のバックドアのガラス組付構造を提供する。
【解決手段】窓枠状に開口したバックドアインナ及びコネクタハウジング15が形成されたバックドアアウタ6とからなり窓枠部を有するバックドア本体と、このバックドア本体の内部に配索される先端にコネクタ8を有するワイヤハーネス11と、バックドア本体の窓枠部に装着され、ターミナルが接続された熱線パターンを有するバックドアガラス3と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のバックドアガラスの組付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両後部の開口に開閉可能にバックドアが取り付けられた自動車では、図5及び図6に示すように、バックドア本体102に形成された窓枠部104にバックドアガラス103が組み付けられるのが一般的である。バックドアガラス103には熱線パターン119が形成され、バックドアガラス103の表面に結露が生じるのを防止したり、生じた結露を除去することができるように構成されている。この種のバックドア本体102は、トリムとも呼ばれる車両内側に位置するバックドアインナ105と、車両外側に位置するバックドアアウタ106と、を備える。バックドアインナ105とバックドアアウタ106との間には、車両本体側から延設されたワイヤハーネス111が配索される。このワイヤハーネス111の先端にはコネクタ108が設けられている。バックドアガラス103に形成された熱線パターン119には、バックドアガラス103の車室側表面に配設されるターミナル113が結線される。バックドア本体102にバックドアガラス103を組み付けた後、コネクタ108をターミナル113に接続することによって、熱線パターン119に電流が導通し得る。
【0003】
このように構成されている従来のバックドア本体102に対するバックドアガラス103の組付けは、先ず、車両後部開口の上部中央から延出しているワイヤハーネス111を、バックドアインナ105の上部中央の車室内側からワイヤハーネス引込孔109を介して車室外側に引き込むと共に左右に分岐させ、それぞれをバックドアインナ105の窓枠状の開口部107の上部外面に沿って配策する。次いで、分岐したワイヤハーネス111のそれぞれの先端に設けられたコネクタ108とワイヤハーネス111とを、バックドアインナ105の窓枠状の開口部107の左右両側部にそれぞれ穿設されたコネクタ引出孔130から適当な長さ分だけ車室内側に向かって引き出す。この状態で、バックドアインナ105に対してバックドアアウタ106を取り付ける。そして、バックドアガラス103の内側面の周縁には、周回状にわたってウレタン接着剤129が塗盛され、バックドアアウタ106の窓枠部104の開口部周辺のバックドアガラス接着代112にウレタン接着剤129を介してバックドアガラス103を接着する。この際、位置決めクリップ115を位置決め孔116に係合する。また、バックドアガラス103の内側面における左右両側部に設けられたターミナル113を、バックドアアウタ106の窓枠状の開口部107aの左右両側部に穿設されたターミナル接続穴114に通す。この後、予め引き出しておかれたコネクタ108を、コネクタ引出孔130から戻し、ターミナル113に接続する。最後に、コネクタ引出孔130にカバー131を組み付けて組付作業が終了する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のバックドアのガラス組付構造101では、コネクタ108を、コネクタ引出孔130から戻し、ターミナル113に接続し、コネクタ引出孔130にカバー131を組み付ける作業が必要である。これに伴い、コネクタ引出孔130が不可欠であり、従ってコネクタ引出孔130を塞ぐカバー131が必須となる。そのため、その分コスト高となる上、コネクタ引出孔130の周辺が狭いために、コネクタ引出孔130を大きくできず、コネクタ108をターミナル113に接続する作業に難が生じ、作業効率を低下させる要因となっていた。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みて創作されたものであり、より低コストでありながら作業性を向上させることができる自動車のバックドアのガラス組付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、デフォッガの熱線パターンが形成されたリアガラスの自動車のバックドアへの組付構造であって、先端にコネクタを有しバックドアインナとバックドアアウタとの間に配索されたワイヤハーネスと、バックドアアウタの表裏に貫通して設けられコネクタが組み付けられたコネクタハウジングと、熱線パターンに接続され、コネクタに対応する位置においてリアガラスの内側面に立設されたターミナルと、を備えたことを特徴としている。
【0007】
コネクタは側面に爪部を有し、コネクタハウジングは、この爪部を受容する受け部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自動車のバックドアのガラス組付構造において、バックドアガラスの内側表面の所定位置に、コネクタとの接続用ターミナルを立設し、このターミナルの接続のためのコネクタが組み付けられたコネクタハウジングを、バックドアに有し、これらをバックドアに対するバックドアガラスの装着時に接続することができるよう構成したことによって、従来不可欠とされたコネクタ引出孔の設定やコネクタ引出孔を塞ぐカバーが不要となり、低コスト化を図れる上、コネクタをコネクタ引出孔から引き出す必要がないことから、ワイヤハーネスの余分な長さが不要となってより一層の低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図1〜図4を参照しながら詳細に説明する。図示の実施形態に係る自動車のバックドアのガラス組付構造1は、ハッチバック型車両の後部開口(図示省略)に開閉自在に取り付けられるバックドア本体2に対するバックドアガラス3の組付けに関するものであって、費用の低減を図ると共に、作業性を改善するためのものである。
【0010】
本実施形態のバックドアは、図1に示すように、上半部に開設される窓枠部4を有するバックドア本体2と、バックドア本体2の窓枠部4に装着されるバックドアガラス3とから構成される。バックドア本体2は、トリムとも呼ばれ車室内側に位置するバックドアインナ5と、車室外側に位置するバックドアアウタ6とを備える。
【0011】
バックドアインナ5は、バックドアアウタ6に対応した形状に形成され、上半部に窓枠状の開口部7を有する。バックドアインナ5の上部中央には、ワイヤハーネス11を引き込むための表裏に貫通したワイヤハーネス引込孔9が穿設されている。バックドアインナ5の窓枠状の開口部7の周辺部は、車外側から車内側に向かって断面が凹字形に窪んだ溝型に形成され、補強構造とされると共に、この溝部分10にワイヤハーネス11を配索できるように構成される。
【0012】
バックドアアウタ6は、バックドアインナ5の外形とほぼ同等の外形に形成され、バックドアインナ5の外面に装着される。バックドアアウタ6の上半部には、窓枠状の開口部7aが形成され、この窓枠状の開口部7aの周辺部にはバックドアガラス3を接着するためのバックドアガラス接着代12が設けられる。このバックドアガラス接着代12の左辺部の下端部中央と、右辺部の下端部中央には、図2(a)に示すように、それぞれ表裏に貫通し、バックドアガラス3に立設されたターミナル13が挿通される方形状の位置決め穴14が穿設される。バックドアアウタ6の裏面には、図2(b)に示すように、位置決め穴14を囲繞して四角筒形にコネクタハウジング15が立設される。コネクタハウジング15の位置決め穴14付近には、表裏に貫穿した受け部16が形成され、コネクタ8の外周面に形成された爪部17が係合し得るように構成される。バックドアアウタ6の下半部の中央には、ナンバープレートを取り付けるためのナンバープレート取付部18が形成される。
【0013】
バックドアガラス3は、図1に示すように、バックドア本体2の窓枠部4の形状を、ほぼ相似形に大きくし、窓枠部4を覆うように形成される横長の略長方形をなしている。バックドアガラス3の車室側の面、即ち内面には、車幅方向に平行で等間隔に形成される多数の熱線19aを含む熱線パターン19を有する。バックドアガラス3の内面における左右の両端のそれぞれには、車幅方向に平行な各熱線19aに電力供給するための導電性の幹線部20が設けられる。左右の幹線部20のそれぞれの下端部には、図3に示すように、バックドアガラス3に対して垂直に立設される、ターミナル13を有する。
【0014】
ターミナル13は、図3(a)に示すように、平板状に形成された導電部21aと、この導電部21aの基端部に設けられ、導電部21aと幹線部20の間に介在する座部21bとを備える。導電部21aは、位置決めのための孔21cを備える。ターミナル13の先端の接触部21cは、位置決め穴14の裏面側に形成されたコネクタハウジング15に装着されたコネクタ8の内底部に設けられる導電性の接続部(図示省略)に当接することによって、導電可能に結合されるように構成される。座部21bは、導電性を有する帯状の金属板を略凸字形に形成して成り、バックドアガラス3の板面に平行に形成された両端部分が幹線部20に固着される。
【0015】
以上説明したように、本実施形態の自動車のバックドアのガラス組付構造1は、窓枠状に開口した開口部7,7aを有するバックドアインナ5及びバックドアアウタ6とからなり窓枠部4を有するバックドア本体2と、このバックドア本体2の内部に配索される先端にコネクタ8を有するワイヤハーネス11と、バックドア本体2の窓枠部4に装着されるターミナル13が接続された熱線パターン19を有するバックドアガラス3と、を備えて構成される。
【0016】
バックドアガラス3のバックドア本体2に対する組付けについて説明する。先ず、バックドアインナ5の窓枠状の開口部7に沿って溝部分10にワイヤハーネス11を配索し、その先端のコネクタ8を、図4に示すように、バックドアアウタ6の内面に形成されたコネクタハウジング15に装着する。次いで、バックドアインナ5とバックドアアウタ6とをパッキン28を介して接合する。続いて、バックドアガラス3の内面周縁に周回上にわたってウレタン接着剤29を塗盛する。さらに、バックドアガラス3をバックドア本体2の窓枠部周縁のバックドアガラス接着代12に装着して、バックドアガラス3とバックドアアウタ6とを接合することによって、組付作業が完了する。この際、ターミナル13がコネクタ8に接続されることにより、位置決めがなされると共にワイヤハーネス11と熱線パターン19とが電気的に接続される。
このように、本発明のバックドアのガラス組付構造は、先端にコネクタを有しバックドアインナとバックドアアウタとの間に配索されたワイヤハーネスと、バックドアアウタの表裏に貫通して設けられコネクタが組み付けられた位置決め穴と、熱線パターンに接続され、コネクタに対応する位置においてリアガラスの内側面に立設されたターミナルと、を備え、ターミナルを位置決め穴に挿通するだけでワイヤハーネスと熱線パターンとの電気的な接続が完了するように構成されたものであって、その主旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る自動車のバックドアのガラス組付構造の構成を示す斜視図である。
【図2】(a)は、実施形態のバックドアインナとバックドアアウタの組付けの様子を示す部分分解斜視図であり、(b)はコネクタハウジングに対するコネクタの装着の様子を示す拡大斜視図である。
【図3】(a)は、実施形態の幹線部に立設されたターミナルの一構成例を示す拡大斜視図であり、(b)は実施形態の幹線部に立設されたターミナルの変形例を示す拡大斜視図である。
【図4】図1のA−A断面の一部を示したものであり、実施形態のバックドアのガラス組付けの構成を示す概念図である。
【図5】従来の自動車のバックドアのガラス組付構造の構成を示す斜視図である。
【図6】図5におけるB−B断面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 バックドアのガラス組付構造
2 バックドア本体
3 バックドアガラス
4 窓枠部
5 バックドアインナ
6 バックドアアウタ
7 開口部
7a 開口部
8 コネクタ
9 ワイヤハーネス引込孔
10 溝部分
11 ワイヤハーネス
12 バックドアガラス接着代
13 ターミナル
14 位置決め穴
15 コネクタハウジング
16 止穴
17 抜止爪
18 ナンバープレート取付部
19 熱線パターン
19a 熱線
20 幹線部
21 導電部
21a 基部
21b 錐形部
21c 接触部
22 緩衝部
23 接続部
24 導電部
25 補強カバー
26 基盤部
27 切欠部
28 パッキン
29 ウレタン接着剤
101 従来のバックドアのガラス組付構造
102 バックドア本体
103 バックドアガラス
104 窓枠部
105 バックドアインナ
106 バックドアアウタ
107 開口部
107a 開口部
108 コネクタ
109 ワイヤハーネス引込孔
111 ワイヤハーネス
112 バックドアガラス接着代
113 ターミナル
114 ターミナル接続穴
119 熱線パターン
129 ウレタン接着剤
130 コネクタ引出孔
131 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デフォッガの熱線パターンが形成されたリアガラスの自動車のバックドアへの組付構造であって、
先端にコネクタを有しバックドアインナとバックドアアウタとの間に配索されたワイヤハーネスと、上記バックドアアウタの表裏に貫通して設けられ上記コネクタが組み付けられたコネクタハウジングと、
上記熱線パターンに接続され、上記コネクタに対応する位置において上記リアガラスの内側面に立設されたターミナルと、を備えたことを特徴とする、自動車のバックドアのガラス組付構造。
【請求項2】
前記コネクタは、側面に爪部を有し、前記コネクタハウジングは、この爪部を受容する受け部を有することを特徴とする、請求項1に記載の自動車のバックドアのガラス組付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−120521(P2010−120521A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296145(P2008−296145)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】