説明

自動車のフロントフェース構造体用サイドコンバージャ、対応するフロントフェース構造体、および同構造体の組み立て方法

本発明は、自動車のバンパから空気吸入口を介して流入する空気をエンジンの前方に配置された熱交換器(12)へ案内するための、自動車のフロントサーフェス構造体(10)用サイドディフューザ(16)に関し、前記ディフューザはプレートから形成されており、プレートのバックエッジが熱交換器を支持し、プレートのフロントエッジ(16b)がバンパを支持して、このフロントエッジ(16b)は自動車の前方のクロスピースの端部(14)を受け入れ可能な凹み部を有する。このディフューザの後ろ側には、熱交換器上に設けられた対応する受け入れ部と係合可能なピボット軸と、前記ピボット軸を中心としてサイドディフューザが一回転した後で、熱交換器上に設けられた対応する取り付け部と係合可能な取り付け部とが設けられている。本発明はまた、自動車のフロントサーフェス構造体、およびそのような構造体の組み立て方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロントフェース構造体用サイドコンバージャ、対応するフロントフェース構造体、およびそのようなフロントフェース構造体の組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車はエンジンを冷却するために、空気流を流入可能とする空気吸入口をそのフロントフェースに有する。これらの空気吸入口は自動車のフロントバンパに開口を有する。エンジンの冷却は、フロントフェースのエンジン前方にある熱交換器(ラジエータ、空気冷却器、コンデンサ)によって、通過する空気流を用いて行われる。
【0003】
流入する空気流を熱交換器へと向けるために、自動車は通常コンバージャを有し、これは通常、バンパの空気吸入口からの空気を熱交換器へと案内するように配置されたプラスチック部品である。よって、これらのコンバージャは、バンパと熱交換器の間に配置される。自動車の縦方向に実質的に垂直に配置されるサイドコンバージャ、および熱交換器の上方に実質的に水平に配置される上方コンバージャが存在する。
【0004】
自動車は、熱交換器とフロントバンパの間に、熱交換器とバンパの間の領域を横切る最前方のクロスメンバも有している。この最前方のクロスメンバのために、クロスメンバが渡っているイドコンバージャの取り付けは困難である。
【0005】
その理由は、最前方のクロスメンバを取り付けるまではサイドコンバージャを取り付けられないためである。というのは、サイドコンバージャの位置が、クロスメンバのいくつかの固定箇所へのアクセスを妨げるためである。実際、クロスメンバはサイドコンバージャより先に取り付けられ、それによって固定箇所へのアクセスが困難になるためにサイドコンバージャの取り付けは困難である。
【0006】
解決法の1つは、サイドコンバージャを2つの部品に分け、一方を熱交換器に、他方をバンパに固定することである。しかしながら、サイドコンバージャのこれら2つの部品の間の接合領域をシールすることは難しい。
【0007】
このように、このクロスメンバの存在により熱交換器とバンパの間の領域をシールすることが難しく、熱交換器とバンパの間の領域を通って空気が漏れ出し、エンジン冷却を損なうことが観察される。
【0008】
現在、その冷却性能を向上させ、よってオートマチックトランスミッションに接続されたディーゼルエンジンなどの、ある種のエンジンに対する冷却要求を増大させている新たな汚染コントロール規制に準拠することを可能とするために、熱交換器を通る空気流を改善することが必要となりつつある。
【0009】
したがって、流入する空気流のできるだけ多くを熱交換器へと向け、よってエンジンの冷却を改善するために、熱交換器とバンパの間の領域のシーリングを改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の第1の目的は、自動車の最前方のクロスメンバが取り付けられた後で熱交換器に容易に取り付け可能なサイドコンバージャを提供することである。
【0011】
本発明の第2の目的は、自動車のフロント構造体の交換器とバンパとの間の領域のシーリングを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のために、本発明の課題は、自動車のバンパの空気吸入口を介して流入した空気をエンジンの前方に配置された熱交換器へ案内するように設計された自動車のフロントフェース構造体用サイドコンバージャに関し、前記コンバージャはプレートから形成されており、このプレートのリヤエッジが熱交換器上に配置され、フロントエッジがバンパ上に配置され、前記フロントエッジはまた、前記フロントフェース構造体の最前方のクロスメンバを受け入れることができるハウジングを有しており、このコンバージャは、コンバージャのリヤエッジが、
・熱交換器上の対応する受け入れ部材と係合可能なピボットピンと、
・前記ピボットピンを中心としてサイドコンバージャが回動すると、熱交換器上の対応する固定部材と係合可能な固定部材と
を備えることを特徴とする。
【0013】
したがって、本発明のサイドコンバージャは、最前方のクロスメンバが取り付けられた後で容易に位置決めおよび固定できる。熱交換器の対応する受け入れ部材へのピボットピンの係合は、熱交換器に対するコンバージャの正しい位置決めを保証し、固定は、サイドコンバージャが単純に回動することにより、対応する固定部材によって行われる。このような設計は、サイドコンバージャが単一の部品として製作可能であり、よって2つ以上の部品で製作されたコンバージャで観察される空気漏れを制限することを意味する。
【0014】
有利には、固定部材は、サイドコンバージャの可逆的な固定を許容するように設計されており、よって取り外し可能である。
【0015】
有利には、ピボットピンはリヤエッジの下半分に配置されている。
【0016】
具体的には、ピボットピンは、概ねクロスメンバ用のハウジングの下に配置され、例えばそこから距離を空けて、容易にアクセス可能な領域にある。
【0017】
有利には、固定部材はリヤエッジの上端近傍にある。
【0018】
具体的には、固定部材はクロスメンバ用のハウジングの上にあり、そこから距離を空けて、容易にアクセス可能な領域にある。
【0019】
ピボットピンと固定部材とは、熱交換器に位置決めおよび固定された結果として得られる2箇所が、熱交換器へのコンバージャの確実な取り付けを保証するのに十分に離間しているように、互いに距離を空けて配置することが好ましい。
【0020】
有利には、固定部材は、それが熱交換器の対応する固定部材へと挿入されたときにそれを案内できるガイド部と、熱交換器の対応する固定部材に連結可能なロック部とを有する。
【0021】
このような設計は、固定部材の熱交換器への固定を簡素化する。
【0022】
有利には、固定部材は、ピボットピンに垂直な平面内において弓形のホルダによって支持されている。
【0023】
この弓形、例えば丸形状の、寸法および曲率は、コンバージャがピボットピンを中心に回動することに続いて、熱交換器上の対応する固定部材とのコンバージャ上の固定部材の係合を可能とするように選ばれる。
【0024】
本発明はまた、自動車のエンジンを冷却するように設計された熱交換器と、最前方のクロスメンバとを備えた自動車のフロントフェース構造体に関し、この構造体は、熱交換器が、サイドコンバージャを熱交換器に位置決めおよび固定するために、前記熱交換器の各側部に、本発明によるサイドコンバージャのピボットピンおよび固定部材と係合できる受け入れ部材および固定部材を備えることを特徴とする。
【0025】
最後に、本発明は、熱交換器と、最前方のクロスメンバと、本発明による2つのサイドコンバージャとを備えた自動車のフロントフェース構造体の組み立て方法に関し、熱交換器が、サイドコンバージャを熱交換器に位置決めおよび固定するために、前記熱交換器の各側部に、本発明によるサイドコンバージャのピボットピンおよび固定部材と係合できる受け入れ部材および固定部材を備えるものであり、本方法は、
(i)最前方のクロスメンバを固定するステップ、
(ii)熱交換器の対応する受け入れ部材にコンバージャのピボットピンを挿入することによって、最前方のクロスメンバおよび熱交換器の間にサイドコンバージャを位置決めするステップであって、ここで各コンバージャが組み立ての中間に位置するステップ、
(iii)コンバージャの固定部材が熱交換器の対応する固定部材と係合するまで、コンバージャをそのピンを中心として回動させるステップ
を含む。
【0026】
次に、本発明を、添付の非制限的な図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の自動車のフロントフェース構造体の正面図である。
【図2】本発明のサイドコンバージャの斜視図である。
【図3】図2のサイドコンバージャおよびそのピボットピンを示す。
【図4】図2のコンバージャの固定部材を拡大したものである。
【図5】熱交換器と係合したサイドコンバージャの固定部材を示す。
【図6】図4の固定部材の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書では、フロントおよびリヤの方向は、自動車のフロントおよびリヤの方向を指している。同様に、縦方向は自動車の縦方向を指す。
【0029】
図1は、自動車のエンジンを冷却するための熱交換器12を有する自動車のフロントフェース構造体10を示す。
【0030】
このフロント構造体は、熱交換器12と自動車のフロントバンパ(図示せず)の間に配置された最前方のクロスメンバ14も有する。
【0031】
図1はさらに、2つのサイドコンバージャ16、18と、上方コンバージャ20とを示している。これらは、自動車のエンジンの前方に配置された熱交換器12へと、自動車のバンパの空気吸入口を介して流入した空気を案内するものである。
【0032】
サイドコンバージャ16、18は、垂直縦方向面に関して対称であり、よってこれらのうちの1つのみの構造を図面を参照して説明する。
【0033】
サイドコンバージャ16はプレートから形成されており、このプレートのリヤエッジ16aは熱交換器12上に位置し、フロントエッジ16bはバンパ(図示せず)上に位置し、前記フロントエッジ16bはまた、自動車の最前方のクロスメンバ14を受け入れ可能なハウジングを有する。リヤおよびフロントエッジ16a、16bは、実質的に垂直方向に延びる。この実施例では、コンバージャは、一体に作られたプレートから形成されている。
【0034】
本発明によれば、コンバージャのリヤエッジ16aは、
−熱交換器12上の対応する受け入れ部材50と係合可能なピボットピン30と、
−前記ピボットピン30を中心にサイドコンバージャが回動すると、熱交換器12上の対応する固定部材60と係合できる固定部材40と
を備える。
【0035】
図示の実施例では、ピボットピン30は、リヤエッジ16aの下半分、具体的には、最前方のクロスメンバ14を受け入れるためのハウジングの下に配置されている。
【0036】
このピボットピン30は、支持タブ32に取り付けられた軸30aを有する実質的に垂直なロッド31の形態であり、ロッドの非取り付け端部は、コンバージャに対して下を向いている。この非取り付け端部は、好ましくは、熱交換器の対応する固定部材への挿入を容易とするため、傾斜しているか、もしくは円錐形である。
【0037】
熱交換器の対応する受け入れ部材50は、リング52によって形成され、ロッド31の挿入が容易になるように円錐形に形作られ、タブ54によって支持されている。このタブは、コンバージャが熱交換器に固定されたとき、ロッドとコンバージャの間を、実質的にその全高にわたってロッド31に沿って延びる実質的に垂直なリップ53の形態で延在する。リップ53は、ロッド31を案内し、固定する役目を果たす。
【0038】
一変形例においては、受け入れ部材はシースまたはスリーブとすることができる。
【0039】
図示の実施例では、コンバージャの固定部材40は、リヤエッジの上端近傍にある。とりわけ最前方のクロスメンバ14用のハウジングの上方にある。
【0040】
固定部材40は、固定部材が熱交換器の対応する固定部材60へと挿入されたときに固定部材を案内できるガイド部42と、熱交換器の対応する固定部材60に連結可能なロック部44とを有する。
【0041】
固定部材40はまた、ピボットピン30に垂直な平面内において弓形のホルダ46によって支持されている。
【0042】
図4および6に示すように、ガイド部42は、端部が傾斜していることにより熱交換器の対応する固定部材60への挿入が容易な実質的に水平なタブで形成されている。ロック部44は、スナップ固定タブで形成されている。
【0043】
図5に示すように、固定部材は、ガイド部42およびロック部44の挿入を可能とする第1の開口部62を有する凹み部60で形成されている。ガイド部42の幅は、この開口60の幅とほぼ同じであり、固定部材の正しい位置決めを可能とする。凹み部60は、第1の開口部62の平面と垂直な平面内に第2の開口部64を有する。この第2の開口部64は、第1の開口部62と共にポスト66を形成するのに十分に近く、これによりロック部44は係合可能となり、この実施例ではスナップ固定によって示されている。第2の開口部64により、ロック部44が正しく位置決めされ、そのコンバージャ固定機能を果たしていることがチェック可能となる。第2の開口部64はまた、このロック部44へのアクセスを可能にし、よってロック部44は解放可能となり、サイドコンバージャから容易に取り外すことができる。
【0044】
熱交換器の各側部には、サイドコンバージャを熱交換器に位置決めおよび固定するために、本発明によるサイドコンバージャのピボットピンおよび固定部材の両方と係合可能な受け入れ部材50および固定部材60が設けられている。したがって、これらの部材50、60は、熱交換器の垂直サイドエッジ上に配置されている。
【0045】
熱交換器12と、最前方のクロスメンバ14と、2つのサイドコンバージャ16、18とを備える上述の自動車のフロントフェース構造体は、以下のようにして組み立てられる。
(i)最前方のクロスメンバ14を固定する;
(ii)熱交換器の対応する受け入れ部材50にコンバージャのピボットピン30を挿入することによって、最前方のクロスメンバ14および熱交換器12の間にサイドコンバージャ16、18を位置決めし、ここで各コンバージャは組み立ての中間に位置する;
(iii)コンバージャ16、18の固定部材40が熱交換器の対応する固定部材60と係合するまで、コンバージャ16、18をそのピン30を中心に回動させる。
【0046】
組み立ての中間位置は、コンバージャが垂直で、ただしコンバージャの最終垂直位置に対して所定の角度だけずれている位置に対応する。
【0047】
その結果、本発明のコンバージャのピボットピンおよび固定部材は、各サイドコンバージャを熱交換器の各側部に位置決めおよび固定する。
【0048】
サイドコンバージャは、最前方のクロスメンバが存在していても、サイドコンバージャとその周囲の部品との間に良好なシールを有して、迅速かつ容易に取り付け可能である。この目的のために、コンバージャのエッジには、フレキシブルなシールが設けられてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフロントフェース構造体(10)用サイドコンバージャ(16)であって、前記自動車のバンパの空気吸入口を介して流入した空気を、エンジンの前方に配置された熱交換器(12)へと案内するように設計されて、プレートから形成されており、このプレートのリヤエッジ(16a)は熱交換器の上に配置され、プレートのフロントエッジ(16e)は前記バンパの上に配置され、前記フロントエッジは、前記フロントフェース構造体の最前方のクロスメンバ(14)を受け入れ可能なハウジングも備えているもので、コンバージャの前記リヤエッジ(16a)が、
−前記熱交換器上の対応する受け入れ部材(50)と係合可能なピボットピン(30)と、
−前記ピボットピンを中心として前記サイドコンバージャが回動すると、熱交換器上の対応する固定部材(60)と係合可能な固定部材(40)と
を備えることを特徴とする。
【請求項2】
ピボットピン(30)が、リヤエッジの下半分に配置されていることを特徴とする、請求項1記載のサイドコンバージャ。
【請求項3】
固定部材(40)が、リヤエッジの上端近傍にあることを特徴とする、請求項1または2に記載のサイドコンバージャ。
【請求項4】
固定部材(40)が、前記熱交換器の対応する固定部材へ挿入されたときに固定部材を案内するガイド部(42)と、熱交換器の対応する固定部材にロック可能なロック部(44)とを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のサイドコンバージャ。
【請求項5】
固定部材(40)が、ピボットピンに垂直な平面内において弓形のホルダ(46)によって支持されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のサイドコンバージャ。
【請求項6】
自動車のエンジンを冷却するように設計されている熱交換器(12)と、最前方のクロスメンバ(14)とを備えた自動車のフロントフェース構造体(10)であって、前記熱交換が、サイドコンバージャを前記熱交換器に位置決めおよび固定するために、前記熱交換器の各側部に、請求項1〜5のいずれか一項に記載のサイドコンバージャのピボットピン(30)および固定部材(40)と係合できる受け入れ部材(50)および固定部材(60)を備えることを特徴とする、構造体。
【請求項7】
熱交換器(12)と、最前方のクロスメンバ(14)と、請求項1〜5のいずれか一項に記載の2つのサイドコンバージャ(16、18)とを備えた自動車のフロントフェース構造体(10)の組み立て方法であって、前記熱交換器(12)が、サイドコンバージャを前記熱交換器に位置決めおよび固定するために、前記熱交換器の各側部に、請求項1〜5のいずれか一項に記載のサイドコンバージャの前記ピボットピン(30)および前記固定部材(40)と係合できる受け入れ部材(50)および固定部材(60)を備えるものであり、
(i)最前方のクロスメンバ(14)を固定するステップ、
(ii)熱交換器の対応する受け入れ部材(50)にコンバージャのピボットピン(30)を挿入することによって、最前方のクロスメンバ(14)および熱交換器(12)の間にサイドコンバージャ(16、18)を位置決めするステップであって、ここで各コンバージャが組み立ての中間に位置するステップ、および
(iii)前記コンバージャ(16、18)の固定部材(40)が熱交換器の対応する固定部材(60)と係合するまで、前記コンバージャ(16、18)をそのピンを中心に回動せるステップ
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−518075(P2011−518075A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505562(P2011−505562)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【国際出願番号】PCT/FR2009/050494
【国際公開番号】WO2009/130429
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(507308902)ルノー・エス・アー・エス (281)
【Fターム(参考)】