説明

自動車の内装のためのN−メチルピロリドン不含有被覆剤の使用

本発明は、装飾被膜および装飾表面の被覆におけるポリマー混合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾被膜および装飾表面の被覆におけるポリマー混合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー樹脂、艶消剤および架橋剤成分を含有するポリマー混合物は、自動車産業において、自動車車内の装飾表面の被覆に使用されている。
【0003】
ポリウレタンに基づくポリマー樹脂は頻繁に使用されている。多くのポリウレタンは、溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)を含有する。なぜなら、NMPは、イソシアネート基に対して不活性であり、従って、プレポリマーの合成中に粘度を低下させるのに適しているからである。更に、NMPは、高融点ジメチロールプロピオン酸を溶解することができ、このことは、ポリウレタン分散体化学においてしばしば利用されている。NMPを使用することにより、経済的に許容できる反応時間内に、カルボキシレート基としての十分な数の親水性中心が、確実にポリウレタン骨格に組み込まれる。
【0004】
しかしながら、NMPは、催奇形性物質に分類されている。また、NMPおよび他の共溶媒は、時間とともに、自動車車内の装飾表面上被膜から蒸発することが知られている。そのような放出により、NMPおよび他の有害な共溶媒の濃度が自動車車内において上昇し、それにより、乗員に健康被害がもたらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、ポリマー混合物であって、自動車車内の装飾表面を被覆するために使用してもNMPを放出しないかまたは少量しか放出しないので、そのようなポリマー混合物で被覆された装飾表面がOEM独自の規格を満たす、ポリマー混合物を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、自動車車内の装飾表面を被覆するために使用してもNMPを放出しないかまたは少量しか放出しないと同時に、常套のポリマー混合物に基づく装飾表面に良好な特性(例えば、一貫した高い透明度を伴った艶消度)が保持される、ポリマー混合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの目的は、本発明の対象によって達成される。
【0008】
本発明は、OH基およびNH基のツェレビチノフ活性水素原子の含量がポリウレタンの総量に基づいて0.01〜0.25重量%の範囲にあるポリウレタンに基づくポリウレタン水性分散体の少なくとも1種、少なくとも1種の艶消剤並びに少なくとも1種の架橋剤および/または架橋剤組成物を含有することを特徴とするN−メチルピロリドン低含有水性ポリマー混合物の、装飾表面および装飾被膜の被覆における使用を対象としている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ポリウレタン分散体中のOH基およびNH基のツェレビチノフ活性水素原子の含量は、ポリウレタンの総量に基づいて、好ましくは0.01〜0.22重量%、特に好ましくは0.05〜0.20重量%の範囲にある。
【0010】
NまたはOに結合する水素は、ツェレビチノフによって発見された方法に従ってヨウ化メチルマグネシウムとの反応によって水素を生成する場合は、ツェレビチノフ活性水素原子と称される(時には単に「活性水素」とも称される)。
【0011】
ポリウレタン分散体は、構成成分として、32〜145g/molの平均分子量Mを有するモノアルコール(f)の少なくとも1種および/または17〜147g/molの平均分子量Mを有するモノアミン(g)の少なくとも1種を含有する。
【0012】
モノアルコール(f)およびモノアミン(g)の含量は、ポリウレタン分散体の構成成分全体に基づいて、好ましくは0.1〜1.5重量%、特に好ましくは0.1〜1.3重量%である。
【0013】
NMP含量は、ポリマー混合物の総量に基づいて、好ましくは0.0〜0.5重量%、特に好ましくは0.0〜0.3重量%、最も好ましくは0.0〜0.1重量%である。本発明のポリマー混合物がNMPを含有しないことが更に好ましい。
【0014】
本発明の範囲において、NMPを含有しないとは、ポリマー混合物中のNMPの含量が、ガスクロマトグラフィーによって測定した場合に検出限界以下(即ち1ppm以下)であることを意味する。
【0015】
自動車車内の装飾表面または装飾被膜を被覆するために、本発明のポリマー混合物を使用すると、NMPは放出されないかまたは少量しか放出されず、また、他の共溶媒も放出されないかまたは少量しか放出されない。
【0016】
本発明に従って使用されるポリウレタン分散体の共溶媒含量は低い。本発明に従って使用されるポリウレタン分散体は、ポリウレタン分散体の総量に基づいて、好ましくは0.0〜0.9重量%、特に好ましくは0.0〜0.5重量%、最も好ましくは0.0〜0.4重量%の共溶媒を含有する。
【0017】
本発明のポリマー混合物の共溶媒含量は低い。本発明に従って使用されるポリウレタン分散体は、ポリウレタン分散体の総量に基づいて、好ましくは0.0〜0.9重量%、特に好ましくは0.0〜0.5重量%、最も好ましくは0.0〜0.4重量%の共溶媒を含有する。
【0018】
本発明の範囲における共溶媒は、極性有機溶媒である。共溶媒は、好ましくは、7.2〜16.0(cal/cm0.5の範囲のハンセンパラメータおよび7より大きいpK値を有する有機溶媒である。共溶媒は、特に好ましくは、7.2〜16.0(cal/cm0.5の範囲のハンセンパラメータおよび8より大きいpK値を有する有機溶媒である。共溶媒は、最も好ましくは、7.2〜16.0(cal/cm0.5の範囲のハンセンパラメータおよび9より大きいpK値を有する有機溶媒である。ハンセンパラメータは、とりわけ、"Polymer Handbooks", Eds. Brandrup, J; Immergut, E.H.; Grulke, E.A., 第4版、John Wiley, New York, 1999, VII/第675〜711頁に記載されている。
【0019】
本発明の範囲において好ましい共溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルジグリコール、ジメチルスルホキシド、N−エチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびジプロピレングリコールジメチルエーテルからなる群から選択される極性有機溶媒である。
【0020】
共溶媒は、一方では、ポリウレタンポリマーの合成において既に使用した溶媒であり、他方では、所望の特性を確立するために後にポリウレタン分散体に添加する溶媒である。
【0021】
本発明に従って使用されるポリウレタン水性分散体は、更なる構成成分として、
(a)少なくとも1種のポリイソシアネート、
(b)500〜6000g/molの平均分子量Mを有するポリオールの少なくとも1種、
(c)62〜500g/molの平均分子量Mを有するポリオールの少なくとも1種、
(d)イオン性基またはイオン性基を形成できる基を有する化合物の少なくとも1種、および
(e)32〜500g/molの平均分子量Mを有するポリアミンの少なくとも1種
を含有する。
【0022】
本発明に従って使用されるポリウレタン分散体の樹脂は、好ましくは1.5〜23重量%、特に好ましくは3.0〜17重量%の成分c)含量、および好ましくは28〜85重量%、より好ましくは30〜80重量%、特に好ましくは32〜75重量%のハードセグメント(HS)含量を有する。イソシアネートの量は、固体の量に基づいて22〜55重量%、好ましくは22〜50重量%、特に好ましくは22〜48重量%である。固体樹脂の酸価は、11〜30mgKOH/g、好ましくは13〜28mgKOH/g、特に好ましくは13〜27mgKOH/gである。
【0023】
ハードセグメント含量は、以下のように計算する。
【数1】

【0024】
成分a)として適しているものは、ポリウレタン化学で通常使用されているポリイソシアネートであり、その例は、式:R(NCO)[式中、Rは、4〜12個の炭素原子を含有する脂肪族炭化水素基、6〜15個の炭素原子を含有する脂環式炭化水素基、6〜15個の炭素原子を含有する芳香族炭化水素基、または7〜15個の炭素原子を含有する芳香脂肪族炭化水素基を表す]で示されるジイソシアネートである。好ましいジイソシアネートの例は、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、α,α,α’,α’−テトラメチル−m−キシリレンジイソシアネートまたはα,α,α’,α’−テトラメチル−p−キシリレンジイソシアネート、および前記ジイソシアネートの混合物である。特に好ましいジイソシアネートは、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)および4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンである。
【0025】
ポリウレタンが特定の程度まで分岐または架橋することを確実にするために、場合により、例えば三価および/または四価以上の、イソシアネートを少量使用してよい。使用されるポリイソシアネートの量は、その官能価によって決まり、NCOプレポリマーが撹拌性および分散性を維持するような量である。そのようなイソシアネートは、例えば、イソシアネート基の一部がイソシアヌレート基、ビウレット基、アロファネート基またはウレトジオン基に誘導体化されるように、二価イソシアネートを互いに反応させることによって得られる。二液型(2K)PUR水性ラッカーにおいて架橋剤として通常使用されているような、イオン性基によって親水化されたそのようなポリイソシアネートもまた適している。そのようなイソシアネートの例は、EP−A 510 438に記載されており、同文献では、ポリイソシアネートをOH官能性カルボキシル化合物と反応させている。親水化ポリイソシアネートはまた、ポリイソシアネートとスルホン酸基含有イソシアネート反応性化合物とを反応させることによって得られる。そのようなポリイソシアネートは、例えば2.2より大きい官能価を有する。
【0026】
適当なポリマーポリオールb)は、500〜6000g/mol、好ましくは500〜3000g/mol、特に好ましくは650〜2500g/molの分子量(M)範囲を有する。OH官能価は、少なくとも1.8〜3、好ましくは1.9〜2.2、特に好ましくは1.92〜2.0である。ポリオールは例えば、ポリエステル、プロピレンオキシドおよび/またはテトラヒドロフランに基づくポリエーテル、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリアセタール、ポリオレフィン、ポリアクリレートおよびポリシロキサンである。ポリエステル、ポリエーテル、ポリエステルカーボネートおよびポリカーボネートを使用することが好ましい。1.92〜2.0のOH官能価を有する、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエステルカーボネートおよびポリカーボネートが特に好ましい。前記ポリマーポリオールb)の混合物も適している。
【0027】
前記ポリオールb)との混合物に、更に、脂肪酸含有ポリエステルb1)を使用することもできる。脂肪酸含有ポリエステルは、例えばEP−A 0 017 199(第10頁第27行〜第11頁第31行)に記載されているように、乾性および/または不乾性脂肪酸または油を、少なくとも二官能性のポリオール化合物でエステル化またはエステル交換することによって得られる。四官能性ヒドロキシル成分、例えばペンタエリスリトールをポリオール化合物として使用することが好ましい。
【0028】
同様にポリオールb1)として適しているものは、部分脱水ひまし油である。部分脱水ひまし油は、ひまし油を酸触媒と共に加熱することによって得られ、EP−A 0 709 414(第2頁第37〜40行)に記載されている。
【0029】
同様にポリオールb1)として適しているものは、DE−A 199 30 961(第2頁第46〜54行、第2頁第67行〜第3頁第3行)に開示されているポリオールである。同特許文献では、8〜30個の炭素原子を含有する脂肪族および脂環式モノカルボン酸、例えばオレイン酸、ラウリン酸、リノール酸またはリノレン酸を、グリセロールの存在下で、ひまし油脂肪酸と反応させている。
【0030】
同様にポリオールb1)として適しているものは、別の1種または複数のトリグリセリドによるひまし油のエステル交換生成物である。混合物のモル組成は、最終生成物の平均OH官能価が1.8〜2.2の範囲となるように計算する。
【0031】
成分b1)として特に好ましいものは、OH基について統計的平均で二官能性であり、グリセロール単位またはトリメチロールプロパン単位を含有する脂肪酸含有成分である。最も好ましいものは、平均OH官能価が2である、ひまし油以外の油によるひまし油のエステル交換生成物である。脂肪酸含有ポリエステルb1)は、好ましくは、650〜2500g/molのMおよび1.9〜2のOH官能価を有するポリオールb)と共に使用される。脂肪酸含有ポリエステルb1)は、特に好ましくは、650〜2500g/molのMおよび1.92〜2のOH官能価を有し、エステル、エーテル、カーボネートおよびカーボネートエステルからなる群から選択されるポリオールb)と共に使用される。
【0032】
本発明に従って使用されるポリエステル分散体は、好ましくは、ポリオールとして、樹脂の総量に基づいて15〜72重量%、好ましくは20〜70重量%、特に好ましくは25〜68重量%の量で、成分b)のみを含有する。
【0033】
本発明の別の態様では、本発明に従って使用されるポリウレタン分散体は成分b)およびb1)を含有し、その総量は成分a)〜g)の樹脂の総量に基づいて65重量%以下であり、成分b1)の量はポリウレタン分散体の樹脂の総量に基づいて0〜30重量%、好ましくは0〜25重量%である。
【0034】
62〜500g/mol、好ましくは62〜400g/mol、特に好ましくは90〜300g/molの分子量(M)範囲を有する低分子量ポリオールc)は、ポリウレタン化学で通常使用される二官能性アルコールであり、その例は、エタンジオール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオールおよび1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、1,2−シクロヘキサンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジオール、2−エチル−3−プロピルペンタンジオール、2,4−ジメチルペンタンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、エーテル酸素含有ジオール、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリブチレングリコール、N−置換エタノールアミン、これら化合物の混合物である。好ましいポリオールc)は、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、1,2−シクロヘキサンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジオールである。最も好ましいポリオールc)は、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよびネオペンチルグリコールである。
【0035】
前記分子量範囲の三官能性以上のアルコールを、ポリマー溶液の撹拌性が維持されるような量で、付随的にある割合で使用してもよい。そのような成分は、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセロールおよびペンタエリスリトールを包含する。
【0036】
前記ポリオールc)との混合物に、更に、500g/mol未満の分子量を有する脂肪酸含有ポリエステルc1)を使用することもできる。脂肪酸含有ポリエステルは、例えばEP−A 0 017 199(第10頁第27行〜第11頁第31行)に記載されているように、乾性および/または不乾性脂肪酸または油を、少なくとも二官能性のポリオール化合物でエステル化またはエステル交換することによって得られる。ポリオール化合物として、三官能性および四官能性ヒドロキシル成分、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロールまたはペンタエリスリトールを使用することが好ましい。同様に適しているものは、脂肪酸/脂肪酸塩化物の脂肪酸アミドおよびジアルカノールアミン、好ましくはジエタノールアミンである。
【0037】
成分c)およびc1)の量は、それらの和がポリウレタン分散体の樹脂に基づいて1.5〜23重量%、好ましくは1.5〜10重量%、特に好ましくは1.0〜8重量%となるような量である。成分c)とc1)の重量比は、100:0〜20:80、好ましくは100:0〜30:70、特に好ましくは100:0〜40:60の範囲である。
【0038】
好ましい態様では、成分c)のみを、ポリウレタン分散体の樹脂に基づいて1.5〜23重量、好ましくは1.5〜10重量%、特に好ましくは1.0〜8重量%の量で使用する。
【0039】
成分d)として適しているものは、イオン性基を有するかまたはイオン性基を形成できる、低分子量のOH基および/またはNH基含有化合物であり、その例は、2−(2−アミノ−エチルアミノ)−エタンスルホン酸、エチレンジアミンプロピルスルホン酸、エチレンジアミンブチルスルホン酸、1,2−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸、1,3−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバリン酸、(メタ)アクリル酸とポリアミンとの反応生成物(例えばDE−A 19 750 186の第2頁第52〜57行)、スルホネート基含有ポリオール成分、例えば2−ブテンジオールへの亜硫酸水素ナトリウムのプロポキシル化付加物、またはEP−A 0 364 331(第6頁第1〜6行)に記載されているスルホイソフタル酸塩からなるポリエステルである。カルボン酸基含有成分が好ましい。ジメチロールプロピオン酸が特に好ましい。
【0040】
アニオン性分散体に適した中和成分は、当業者に既知の第三級アミン、アンモニアおよびアルカリ水酸化物である。中和成分は、好ましくは7未満のpK値、特に好ましくは6.5未満のpK値、最も好ましくは6.4未満のpK値を有する。
【0041】
NCOプレポリマーは、好ましくは、非イオン性親水化剤を含有しない。
【0042】
連鎖延長剤e)として、32〜500g/molの分子量Mを有するポリアミンが適しており、その例は、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ピペラジン、N−メチル−ジエチレントリアミンまたはジエチレントリアミンである。同様に、ヒドラジンも適している。ジアミンであるエチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンまたはイソホロンジアミンが好ましい。
【0043】
成分f)として、1〜18個、好ましくは1〜12個、特に好ましくは1〜8個の炭素原子を含有する単官能性アルコールが考えられる。その例は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、第一級ブタノール、第二級ブタノール、n−ヘキサノールおよびその異性体、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、1−オクタノール、1−ドデカノール、1−ヘキサデカノール、ラウリルアルコール、およびステアリルアルコールを包含する。好ましい成分f)は、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、第一級ブタノール、第二級ブタノール、n−ヘキサノールおよびその異性体、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルおよびジエチレングリコールモノブチルエーテルである。特に好ましい成分f)は、n−ブタノール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテルまたはエチレングリコールモノメチルエーテルである。
【0044】
適当なモノアミンg)は、17〜147g/molの分子量を有するもの、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジブチルアミン、2−アミノブタン、1−アミノペンタン、2−アミノペンタン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、1−アミノ−2−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−1−ブタノール、5−アミノ−1−ペンタノールである。好ましいモノアミンg)は、n−ブチルアミン、2−アミノブタン、1−アミノペンタン、2−アミノペンタン、エタノールアミンおよびジエタノールアミンを包含する。最も好ましい成分g)はn−ブチルアミンおよびジエタノールアミンである。
【0045】
本発明に従って使用されるポリウレタン分散体の調製に適した溶媒は、常圧で100℃未満の沸点を有し、イソシアネート反応性基を含有しない、水溶性の溶媒である。また、溶媒は、調製した分散体から蒸留によって除去できるものでなければならない。そのような溶媒の例は、アセトン、メチルエチルケトン、tert−ブチルメチルエーテルおよびテトラヒドロフランである。メチルエチルケトンまたはアセトンを溶媒として使用することが好ましい。アセトンが特に好ましい。
【0046】
本発明に従って使用されるポリマー混合物は、更に、少なくとも1種の艶消剤を含有する。当業者は、無機艶消剤と有機艶消剤を区別する。無機艶消剤は、例えば、Evonik Degussa(Frankfurt am Main)製Acematt(登録商標)またはGrace(Worms)製Syloid(登録商標)である。有機艶消剤は、例えば、ステアレートまたはポリマー有機艶消剤(例えば、Stahl Europe(Waalwijk)製Polymatte(登録商標)またはBASF(Ludwigshafen)製Astacin(登録商標) Novomatt (登録商標))である。別の艶消剤は、例えばKarsten: Lackrohstoff-Tabellen, 第10版、Vincents Verlag, Hanover 2000に記載されている。本発明のポリマー混合物は、無機艶消剤と有機艶消剤の組み合わせを含有してもよい。無機艶消剤は、ポリマー混合物に基づいて、好ましくは0.1〜6重量%、特に好ましくは0.5〜5重量%、最も好ましくは1〜4重量%の量で使用される。ポリウレタン水性分散体および/またはポリマー有機化合物に基づくポリマー有機艶消剤は、ポリマー混合物に基づいて、好ましくは0.1〜75重量%、特に好ましくは0.5〜60重量%、最も好ましくは10〜55重量%の量で使用される。
【0047】
架橋には、当業者に知られている架橋のタイプの全てが適している。本発明において挙げることができる例は、化学的架橋および/または物理的架橋であり、その例は、アミン架橋、アジリジン架橋、カルボジイミド架橋、エナミン架橋、エポキシド架橋、エポキシシラン架橋、ウレア架橋、ヒドラジド架橋、メラミン架橋または酸化乾燥である。自己架橋系、例えば、アゾメチン架橋、並びに中和剤および水の蒸発、自動酸化またはUV−水性により起こるカルボニルアミン反応を考えることもできる。別の可能な架橋のタイプは、シラン架橋および/または(例えば紫外線による)放射線架橋である。二重硬化架橋、即ちポリウレタンとUV架橋化学の組み合わせも可能である。前記したタイプの架橋は、それ自体でまたは随意に組み合わせて実施できる。
【0048】
ポリカルボジイミドとして、EP 0507407に従って変性されたポリカルボジイミドを使用することもできる。
【0049】
本発明に従って使用されるポリマー混合物は、ポリマー混合物に基づいて、好ましくは0.1〜50重量%、特に好ましくは0.1〜25重量%、最も好ましくは0.2〜15重量%の、少なくとも1種の架橋剤または架橋剤組成物を含有する。
【0050】
本発明に従って使用されるポリマー混合物の架橋剤または架橋剤組成物は、好ましくは、ポリイソシアネート、ポリエポキシド、エポキシシラン、アルコキシメチルメラミン、ウレア樹脂、ポリカルボジイミドおよびポリアジリジンからなる群から選択される化合物に基づく。少なくとも1種のポリイソシアネートおよび/または少なくとも1種のポリカルボジイミドに基づく架橋剤組成物を使用することが特に好ましい。
【0051】
架橋剤または架橋剤組成物がポリイソシアネートに基づく場合は、ポリイソシアネートは好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは7〜25重量%のNCO含量を有する。
【0052】
ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)およびヘキサヒドロトルエンジイソシアネート(HTDI)からなる群から選択されるポリイソシアネートであってよい。ポリイソシアネートはそれぞれ、ビウレットまたはウレトジオンまたはアロファネートまたはイソシアヌレートまたはイミノオキサジアジンジオンとして存在することもできる。
【0053】
架橋剤または架橋剤組成物によって架橋される本発明のポリマー混合物のNCO含量は、架橋前、好ましくは0.1〜9.0重量%、特に好ましくは0.1〜8.0重量%、とりわけ好ましくは0.1〜5.0重量%である。
【0054】
本発明に従って使用されるポリマー混合物は、好ましくは0〜75重量%、特に好ましくは1〜70重量%、最も好ましくは5〜65重量%の希釈剤を含有する。希釈剤は、水および/または低分子量アルコール或いは可変の重量割合を有するそれらの混合物である。好ましい低分子量アルコールは、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールおよびイソブタノールからなる群から選択される。水およびイソプロパノールの混合物を希釈剤として使用することが特に好ましい。
【0055】
ポリマー混合物は更に、好ましくは0〜40重量%、特に好ましくは0〜30重量%、最も好ましくは0〜20重量%の少なくとも1種の滑剤を含有する。
【0056】
滑剤は、ポリジアルキルシロキサン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、変性ポリシロキサン、分岐ポリオルガノシロキサン、ポリオレフィン系ワックス、ポリアミドワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン交互コポリマー(ECTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)および天然ワックス、例えばカルナルバワックスからなる群から選択される1種および/または2種以上の化合物である。しかしながら、非官能化滑剤がポリジメチルシロキサンであり、10〜14,000D−シリコーン構成単位を有することが特に好ましい。
【0057】
滑剤は、例えば、W. Buechnerら、"Industrielle Anorganische Chemie", Verlag Chemie, Weinheim, 1986. 第4章以下;"Lackharze", Dieter Stoye and Werner Freitag発行、Carl Hanser Verlag, Munich, Vienna 1996. 第9章以下;tego journal, Tego Chemie Service GmbH発行/Essen, 第3版、2007;Oberflaechenadditive (technical information L-SI1), Byk-Chemie発行/Wesel, 第09版/2005;Wachsadditive (technical information L-CI1), Byk-Chemie発行/Wesel, 第09版/2005;Karsten Lackrohstoff-Tabellen, Olaf Lueckert、第10版、Vincentz Verlag, Hanover 2000;Anthony Bogacki: Sind Antifriction-Lacke ein Bluff - schoen verkauft - In:Symposium "Hochwertige Werkstoffe fuer den Fahrzeuginnenraum", SKZ Wuerzburg 29./30.06.2005に詳細に記載されている。
【0058】
別の態様としてまたは組み合わせて、官能化滑剤を使用することも可能である。少なくとも1種の官能化および変性ポリシロキサン滑剤が好ましい。官能化滑剤は、第一級および/または第二級および/または第三級のアミノ基および/またはOH基で変性される。
【0059】
官能化滑剤は、好ましくは、0.1〜3.0mgKOH/gのアミン価および/または0.3〜5.0重量%のOH含量を有する。
【0060】
更に添加される成分は、本発明に従って使用されるポリマー混合物中に、好ましくは0〜50重量%、特に好ましくは0.1〜45重量%、最も好ましくは0.1〜35重量%の量で存在する。添加される成分は、光安定剤、例えば紫外線吸収剤および可逆性ラジカル受容体、酸化防止剤、湿潤剤、基材湿潤剤、乳化剤、流動化剤、被膜形成助剤、レオロジー助剤、防炎剤、殺生物剤、中和剤、消泡剤、増粘剤、無機充填剤、有機充填剤および顔料からなる群から選択される。
【0061】
0〜25重量%の有機充填剤および/または無機充填剤および/または顔料が存在することが好ましい。
【0062】
また、当業者に既知の添加成分を、更に使用してもよい。そのような添加成分はとりわけ以下に記載されている:
・Johann Bielemann著 "Lackadditive", Wiley-VCH, Weinheim, New York 1998、
・Lehrbuch der Lacke und Beschichtungen, 第4巻 (Loesemittel, Weichmacher, Additive), Martina Oertelt発行、第2版、S. Hirzel Verlag, Stuttgart 2007、
・Wernfried Heilen著Additive fuer waessrige Lacksysteme, Vincentz Netzwork, Hanover 2009、
・Guido WilkeおよびJuergen Ortmeier著Kunststoffbeschichtung. Aktuell, kompakt, praxisnah, Vincentz Netzwork, Hanover 2009。
【0063】
被膜を有するプラスチック材料製の成形品のための装飾表面は広く知られている。基材として、ポリ塩化ビニル(PVC)、特に可塑化PVC、ポリウレタン(PUR)、ポリオレフィン、ポリエステル(PES)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアクリレートまたは混合ポリマーに基づくポリマー混合物からなるプラスチック材料を使用することが好ましい。別の文献については、例えば、"Jahnke, Manfred; Mielke, Dirk; Van Well, Michael: Dekorative Oberflaechen aus Pasten PVC fuer den Automobilinnenraum. - In: SKZ Symposium "PVC-Pasten" on 19./20.09.2007. Sueddeutsches Kunststoff-Zentrum, Wuerzburg, 2007"が挙げられる。
【0064】
ポリマー混合物は、好ましくは装飾層のための上層および/またはラッカー層として装飾表面上で使用される。ラッカー層は、1種以上の同じまたは異なったポリマー混合物からなることもできる。技術的性質(例えば、摩擦挙動、表面の感じ、特に表面の感触、レオロジー、曇り挙動、耐光性および耐熱性)を調整するために、更なる添加成分としても言及した種々の架橋剤成分、艶消剤および添加剤をポリマー混合物に添加する。添加成分は、OEM仕様書に従って、互いに関連して種々の重量部で添加する。この手順は当業者に知られている。
【0065】
本発明のポリマー混合物は、成形品の装飾被膜上または成形品上の被膜として使用される。そのような装飾被膜の好ましい用途は、車両における、ダッシュボードまたはドア張りまたは室内ライニング部または座席張り材料である。
【0066】
得られた層全体にわたる全乾燥層厚さは、0.5〜50g/m、好ましくは1〜35g/mである。
【0067】
本発明に従って使用されるポリマー混合物は、既知の方法で、例えば、引き塗り、流し込み、ナイフ塗布、噴霧、回転塗布、ローラー塗または浸漬によって適用することができる。
【実施例】
【0068】
分子量の測定方法
以下のGPC装置(ポリスチレン標準に対して計算)を用いた。
ポンプ:Hewlett Packard 1100
注入器:Hewlett Packard 1100
検出器1:Hewlett Packard Kontron 240 nm
検出器2:Hewlett Packard RI G1362A
カラム:1.HEMA 3000〜10μm;MZ Analysentechnik
2.HEMA 300〜10μm;MZ Analysentechnik
3.HEMA 40〜10μm;MZ Analysentechnik
4.HEMA 40〜10μm;MZ Analysentechnik
溶離剤:ジメチルアセトアミド
流量:0.6ml/分
圧力:約70bar
【0069】
ポリマー混合物中のNMPおよび他の共溶媒の測定方法
100mgまたは10μLの被験試料を20mL容のヘッドスペースボトルに量り入れ、PTFEライニングが施されたブチルセプタムでシールした。種々の組成物において使用した共溶媒の、別に作成した検量線が5本存在した。しかしながら、それらは、被験物質の望ましい濃度範囲内にはなかった。
試料をガスクロマトグラフ(例えば、PerkinElmer(Jueggesheim)製、ヘッドスペースデバイスHS 40を備えたGC Clarus 500)で分析した。
【0070】
GC条件:
カラム:60mキャピラリーカラムHP-5、ID=0.25mm、被膜厚さ=1mm
検出器:FID(炎イオン化検出器)
検出器範囲:低い
検出器温度:250℃
注入器温度:210℃
キャリヤーガス:ヘリウム
キャリヤーガス流:1mL/分
スプリット:スプリットレス
【0071】
GC温度プログラム:1 2
炉温度[℃]: 55 200
滞留時間[分]: 0 15
加熱速度[K/分]:15
【0072】
HS 40条件:
モード:一定
試料温度:210℃
焼戻し時間:30分
圧力発生時間:1.0分
注入器時間:0.08分
脱気時間:0.2分
サイクル時間:30分
注入回数:1
【0073】
評価:各共溶媒について、検量線から勾配を計算した。対応する勾配を用いて、各溶媒の量を計算し、百分率組成に変換した。
【0074】
被膜中のNMPおよび他の共溶媒の測定方法
1cmの被験被膜を22mL容のヘッドスペースボトルに量り入れ、PTFEライニングが施されたブチルセプタムでシールした。各ヘッドスペースボトルにつき、4回ずつ注入を実施した。試料をガスクロマトグラフ(例えば、PerkinElmer(Jueggesheim)製、ヘッドスペースデバイスHS 40を備えたGC Clarus 500)で分析した。
【0075】
GC条件:
カラム:30mキャピラリーカラムHP-5、ID=0.25mm、被膜厚さ=1mm
検出器:FID(炎イオン化検出器)+MSD(質量選択検出器)
検出器範囲:低い
検出器温度:250℃
注入器温度:210℃
キャリヤーガス:ヘリウム
キャリヤーガス流:1mL/分
スプリット:1:20
【0076】
GC温度プログラム:1 2
炉温度[℃]: 50 180
滞留時間[分]: 3 9
加熱速度[K/分]:12
【0077】
HS 40条件:
モード:MHE(マルチプルヘッドスペース抽出)
試料温度:180℃
焼戻し時間:40分
圧力発生時間:1分
注入器時間:0.04分
脱気時間:0.2分
サイクル時間:40分
注入回数:4
【0078】
評価:測定する成分での検量線作成後に量的結果が得られるように、4回注入したピーク面積から、測定する各成分の総ピーク面積を計算した。
【0079】
ポリマー混合物の光沢度の測定方法
仕上試験被膜をCoatmasterの真空板上に平らに配置し、真空スイッチを入れた。被膜アプリケーターおよびCoatmasterを用いて、所定の厚さの湿潤被膜としてポリマー混合物を、仕上試験被膜上に適用した。次いで、空気循環炉において、被膜を130℃で3分間乾燥した。乾燥し、室温まで冷却した後、反射計で被膜の光沢度を測定した。
【0080】
装置:
1.真空吸着板を備えたErichsen Coatmaster 509 MC(Erichsen / Hemer)、
2.回転翼真空ポンプ、
3.Erichsen被膜アプリケーター(Erichsen / Hemer)、WASAGシステム、モデル288、ギャップ高さ40μmおよび100μm、
4.仕上試験被膜Benecke-Kaliko製品番号VV050472A0265A(Benecke-Kaliko / Hanover)、
5.空気循環炉(Binder / Tuttlingen)、
6.Dr. Lange Refo 3D反射計(Dr. Bruno Lange / Duesseldorf)、60°測定配置、300目盛り分割(s.d.)、DIN EN ISO 2813に従う。
【0081】
ベースラッカーおよび仕上ラッカーからなる実施例A並びに対応する試験結果によって、ポリマー混合物をより詳細に記載する。
【0082】
ポリウレタン分散体タイプ1の調製
脂肪酸含有ポリエステルの調製:3200gのひまし油、1600gの大豆油および2.0gの酸化ジブチルスズを、分留塔を備えた5L容の反応器に量り入れた。窒素流(5L/時)を反応器に流通させた。140分かけて混合物を240℃に加熱し、240℃で6時間後、冷却した。OH価は108mgKOH/g、酸価は2.5mgKOH/gであった。
【0083】
119.4gの脂肪酸含有ポリエステル、40.7gのポリエーテル(ポリプロピレンオキシド、OH価112)、29.9gのジメチロールプロピオン酸、11.9gのヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドおよび12.8gの1,6−ヘキサンジオールを混合し、55℃に加熱した。150gのアセトンおよび231.7gのDesmodur(登録商標) Wを混合物に連続して添加し、5.1重量%のNCO含量に達するまで還流しながら沸騰させた。混合物を再び55℃に調節し、十分に撹拌したトリエチルアミンの16.9gを透明溶液に添加した。中和プレポリマー溶液(55℃)の全てを、激しく撹拌しながら776.6gの水に分散させ、30℃の温度にした。分散後、更に5分間撹拌し、次いで、73gの水に溶解した11.8gのエチレンジアミン、0.5gのジエチレントリアミンおよび7.8gのジエタノールアミンの溶液を5分間にわたって添加した。続いて、蒸留によって、40℃で減圧下(120mbar)アセトンを除去した。残留イソシアネート基を反応させるために、IR分光法によってNCOが検出されなくなるまで、混合物を40℃で撹拌した。30℃に冷却後、240μm高速濾過器によって濾過した。
【0084】
ポリウレタン分散体の特性データ
固形分: 35%
ハードセグメント含量: 64%
酸価(固体樹脂に基づく):28.0mgKOH/g
(GPC)=20.124g/mol
NH含量=0.15%
【0085】
ポリウレタン分散体タイプ2の調製
152.1gのDesmodur(登録商標) Wおよび348.7gのDesmodur(登録商標) Iを55℃に加熱し、撹拌した。次いで、62.2gのジメチロールプロピオン酸を添加した。5分後、470.4gのDesmophen(登録商標) C 1200、96.3gのネオペンチルグリコール、2.8gのブチルグリコールおよび377.5gのアセトンの溶液を、20分間にわたって添加し、混合物を68℃に加熱した。2.8%のNCO含量に達するまでこの温度で撹拌した。続いて、混合物を60℃に冷却し、46.9gのトリエチルアミンを添加した。450gのこの溶液を、激しく撹拌しながら545.9gの水に分散させ、35℃の温度にした。分散後、更に5分間撹拌した。その後、2.0gのジエチレントリアミン、1.1gのn−ブチルアミンおよび3.5gのエチレンジアミンの水60.7g溶液を10分間にわたって添加した。添加完了後、40℃で20分間撹拌し、その温度で減圧下蒸留することによってアセトンを除去した。イソシアネート基を完全に反応させるために、IR分光法によってNCOが検出されなくなるまで40℃で撹拌した。30℃未満に冷却後、Erich Drehkopf製240μm高速濾過器によって濾過した。
【0086】
ポリウレタン分散体の特性データ:
平均粒度(LCS): 25nm
pH(10重量%まで希釈した固体):7.9
固形分: 35.9%
酸価(固体樹脂に基づく): 22.5mgKOH/g
ハードセグメント含量: 59.3%
(GPC)=12.048g/mol
NH含量=0.25%
【0087】
ポリウレタン分散体タイプ3の調製
62.0gのDesmodur(登録商標) Wおよび142.0gのDesmodur(登録商標) Iを55℃に加熱し、撹拌した。次いで、37.7gのジメチロールプロピオン酸を添加した。5分後、470.5gのDesmophen(登録商標) C 1200、15.6gのネオペンチルグリコール、1.1gのブチルグリコールおよび243gのアセトンの溶液を20分間かけて添加し、混合物を68℃に加熱した。1.8%のNCO含量に達するまでこの温度で撹拌した。続いて、混合物を60℃に冷却し、27.2gのエチルジイソプロピルアミンを添加した。溶液を激しく撹拌しながら807gの水に分散させ、35℃の温度にした。分散後、更に5分間撹拌した。1.8gのジエチレントリアミン、1.0gのn−ブチルアミンおよび3.3gのエチレンジアミンの水72g溶液を10分間かけて添加した。添加完了後、40℃で20分間撹拌し、この温度で減圧下蒸留することによってアセトンを除去した。イソシアネート基を完全に反応させるために、IR分光法によってNCOが検出されなくなるまで40℃で撹拌した。30℃未満に冷却後、Erich Drehkopf製240μm高速濾過器によって濾過した。
【0088】
ポリウレタン分散体の特性データ:
平均粒度(LCS): 32nm
pH(10重量%まで希釈した固体):7.9
固形分: 35.9%
酸価(固体樹脂に基づく): 21.4mgKOH/g
ハードセグメント含量: 36.3%
(GPC)=15.443g/mol
NH含量=0.19%
【0089】
実施例A: 重量[g]
1.ベースラッカー
ポリウレタン水性分散体タイプ3 33.6
艶消剤(シリカ) 3.9
希釈剤(2−プロパノール/水=50/50) 40.5
脱イオン水 19.5
ジメチルアミノエタノール 0.3
消泡剤(ポリ(エーテルシロキサン)コポリマー) 0.4
基材湿潤剤(シリコーン界面活性剤) 0.4
増粘剤(ポリアクリル酸) 0.9
架橋剤(ポリイソシアネート、HDI三量体) 0.6
【0090】
ベースラッカーの特性データ:
仕上(40μm;60°;300s.d.): 1.4±0.0s.d.
仕上(100μm;60°;300s.d.):1.7±0.1s.d.
pH値(DIN ISO 976): 8.3
粘度(4mm;DIN 53211に従う): 42秒
【0091】
2.仕上ラッカー
ポリウレタン水性分散体タイプ3 24.9
ポリウレタン水性分散体タイプ1 12.4
艶消剤(シリカ) 2.9
希釈剤(2−プロパノール/水=50/50) 28.0
脱イオン水 28.8
ジメチルアミノエタノール 0.3
基材湿潤剤(シリコーン界面活性剤) 0.3
増粘剤(ポリアクリル酸) 1.3
架橋剤(ポリカルボジイミド) 1.1
【0092】
仕上ラッカーの特性データ
仕上(40μm;60°;300s.d.): 2.3±0.1s.d.
仕上(100μm;60°;300s.d.):3.5±0.2s.d.
pH値(DIN ISO 976): 8.4
粘度(4mm;DIN 53211に従う): 42秒
【0093】
7g/mの量のベースラッカーおよび3g/mの量の仕上ラッカーを、グラビアによって合成皮革(DIN 16922に従った定義)に適用した。
【0094】
実施例B: 重量[g]
1.ベースラッカー
ポリウレタン水性分散体タイプ3 34.8
艶消剤(シリカ) 3.2
脱イオン水 57.3
ジメチルアミノエタノール 0.3
消泡剤(ポリ(エーテルシロキサン)コポリマー) 0.6
基材湿潤剤(シリコーン界面活性剤) 0.8
増粘剤(ポリアクリル酸) 2.4
架橋剤(ポリイソシアネート、HDIイソシアヌレート)0.6
【0095】
ベースラッカーの特性データ:
仕上(40μm;60°;300s.d.): 1.6±0.1s.d.
仕上(100μm;60°;300s.d.):1.9±0.0s.d.
pH値(DIN ISO 976): 8.9
粘度(4mm;DIN 53211に従う): 40秒
【0096】
2.仕上ラッカー
ポリウレタン水性分散体タイプ3 25.4
ポリウレタン水性分散体タイプ1 12.7
艶消剤(シリカ) 2.2
脱イオン水 56.4
ジメチルアミノエタノール 0.3
消泡剤(ポリ(エーテルシロキサン)コポリマー) 0.3
基材湿潤剤(シリコーン界面活性剤) 0.6
増粘剤(ポリアクリル酸) 0.9
架橋剤(ポリカルボジイミド) 1.2
【0097】
仕上ラッカーの特性データ
仕上(40μm;60°;300s.d.): 5.5±0.1s.d.
仕上(100μm;60°;300s.d.):5.8±0.1s.d.
pH値(DIN ISO 976): 8.9
粘度(4mm;DIN 53211に従う): 41秒
【0098】
実施例Aのラッカーで被覆した被膜のNMP含量を、先に記載した方法に従って測定した。
【0099】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
OH基およびNH基のツェレビチノフ活性水素原子の含量がポリウレタンの総量に基づいて0.01〜0.25重量%の範囲にあるポリウレタンに基づくポリウレタン水性分散体の少なくとも1種、少なくとも1種の艶消剤並びに少なくとも1種の架橋剤および/または架橋剤組成物を含有することを特徴とするN−メチルピロリドン低含有水性ポリマー混合物の、装飾表面および装飾被膜の被覆における使用。
【請求項2】
ポリウレタン分散体が、構成成分として、32〜145g/molの平均分子量Mを有するモノアルコール(f)の少なくとも1種および/または17〜147g/molの平均分子量Mを有するモノアミン(g)の少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ポリウレタン水性分散体が、更なる構成成分として、
(a)少なくとも1種のポリイソシアネート、
(b)500〜6000g/molの平均分子量Mを有するポリオールの少なくとも1種、
(c)62〜500g/molの平均分子量Mを有するポリオールの少なくとも1種、
(d)イオン性基またはイオン性基を形成できる基を有する化合物の少なくとも1種、および
(e)32〜500g/molの平均分子量Mを有するポリアミンの少なくとも1種
を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
ポリウレタン分散体が、構成成分全体に基づいて1.5〜23重量%の量で成分(c)を含有することを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
ポリウレタン分散体が、28〜85重量%のハードセグメント含量を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
ポリウレタン分散体が、構成成分全体に基づいて10〜65重量%の量で成分(b)を含有することを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項7】
架橋剤および/または架橋剤組成物が、少なくとも1種のポリイソシアネートおよび/または少なくとも1種のポリカルボジイミドに基づくことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
N−メチルピロリドン含量が、ポリマー混合物に基づいて0.0〜0.5重量%であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
N−メチルピロリドンを含有しないことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに従って得られた装飾被膜。
【請求項11】
ダッシュボード、ドア張り、室内ライニング部または座席張り材料としての、請求項10に記載の装飾被膜の使用。

【公表番号】特表2013−507511(P2013−507511A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533645(P2012−533645)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065540
【国際公開番号】WO2011/045420
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【出願人】(599004139)ベネツケ−カリコ・アーゲー (15)
【氏名又は名称原語表記】Benecke−Kaliko AG
【Fターム(参考)】