自動車の可動フロア装置
【課題】 簡単な構成で足部載置領域に生じる段差を解消して円滑に乗降することができ、しかも乗員が快適に使用することができる。
【解決手段】車体前後方向に延びるフロアパネル4と、このフロアパネル4上に配設されたシート5と、このシート5に着座する乗員の足部が載置される足部載置領域に配設された可動フロアパネル7と、この可動フロアパネル7をフロアパネル4に対して昇降動させる昇降機構33とを備える。この可動フロアパネル7は、そのシート5側の端部が当該シート5方向に延出することにより、この延出端縁が平面視において足部載置領域よりもシート5側に配置される。
【解決手段】車体前後方向に延びるフロアパネル4と、このフロアパネル4上に配設されたシート5と、このシート5に着座する乗員の足部が載置される足部載置領域に配設された可動フロアパネル7と、この可動フロアパネル7をフロアパネル4に対して昇降動させる昇降機構33とを備える。この可動フロアパネル7は、そのシート5側の端部が当該シート5方向に延出することにより、この延出端縁が平面視において足部載置領域よりもシート5側に配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のシートに着座する乗員の体格や体型に応じて当該乗員の足部が載置される足部載置領域のフロア高さを変更可能な可動フロア部を備えた自動車の可動フロア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のシートに着座する乗員、特に運転席に着座するドライバの運転姿勢は、該乗員の運転快適性や走行安全性などと密接に関係することが知られている。このような乗員の運転姿勢は、シートの前後位置や高さ等を調節するシート位置調節手段を始め、固定フロア部に対して昇降可能な可動フロア部の高さを調節する可動フロア装置によっても調節可能であることが知られている。このような可動フロア装置としては、従来、次のようなものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車体前後方向に延びる固定フロア部と、上記固定フロア部上であってブレーキペダルなどのペダル下方に位置してこのペダルを操作する乗員の足部が載置される操作時足部載置領域に配設される可動フロア部と、この可動フロア部を上記固定フロア部に対して昇降動させる昇降機構とを備えた可動フロア装置が提案されている。
【特許文献1】実開昭63−69655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の可動フロア装置では、ペダル操作時におけるフロア高さを調節する観点から可動フロア部が操作時足部載置領域にだけ配設されていたので、乗降時や操作時(運転時)に通常乗員の足部が載置される足部載置領域において固定フロア部と可動フロア部との間で段差を生じるという問題があった。このような段差が足部載置領域で生じると、例えば乗員の乗降時に可動フロア部が邪魔になることがあった。
【0005】
また、可動フロア部が下降位置にある場合において、乗員がシートに着座してペダルに足部を載置した運転姿勢になる前に足部が可動フロア部と固定フロア部とに跨って載置されることもあるが、このような場合に、可動フロア装置を作動させて可動フロア部を上昇させると、可動フロア部と固定フロア部との相対位置変化に基づいて足部の載置状態が不安定となり、乗員に対して不快感や違和感等を与えることとなる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、簡単な構成で足部載置領域に生じる段差を解消して円滑に乗降することができ、しかも乗員が快適に使用することができる自動車の可動フロア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る自動車の可動フロア装置は、車体前後方向に延びる固定フロア部と、この固定フロア部上に配設されたシートと、このシートに着座する乗員の足部が載置される足部載置領域に配設された可動フロア部と、この可動フロア部を上記固定フロア部に対して昇降動させる昇降機構とを備え、この可動フロア部は、そのシート側の端部が当該シート方向に延出することにより、この延出端縁が平面視において上記足部載置領域よりもシート側に配置されることを特徴とするものである。ここで、足部載置領域は、乗員の乗降時や運転時等に、通常の使用状態で乗員の足部が載置される固定フロア部上の所定領域であってシートの前端縁よりも当該シートに対して前方の領域をいうものとするが、実際に使用している中で、シートの前端縁よりも後方の領域に乗員の足部が載置されることを排斥するものではない。
【0008】
この発明によれば、この可動フロア部は、そのシート側の端部が当該シート方向に延出することにより、この延出端縁が平面視において上記足部載置領域よりもシート側に配置されるので、乗降時や運転時等に乗員の足部が載置される足部載置領域を超えて可動フロア部が配置されることとなり、足部載置領域におけるフロアの連続性を担保することができる。このように足部載置領域におけるフロアの連続性を担保することができるので、足部載置領域における可動フロア部と固定フロア部との間の段差を解消することができ、当該可動フロア部が邪魔にならずに円滑に乗降することができる。しかも、可動フロア部の延出端縁が足部載置領域を超えてシート側に配置されるので、可動フロア部の昇降動に伴って乗員の足下で固定フロア部に対する可動フロア部の相対位置が変化することに基づいて乗員が不快感や違和感等を感じさせることもなく、可動フロア部の高さ位置を快適に変更することができる。
【0009】
上記可動フロア部は、その延出端縁が、足部載置領域よりもシート側に配置されるように構成されていればよいが、具体的には、その延出端縁が、車体前後方向について、上記シートの車体に対する前側取付位置と当該取付位置よりも前方に位置するシートの前端縁との間に配置されるように構成され(請求項2)、或いは、上記固定フロア部には上方に突出する突出部が車幅方向に沿って設けられるとともに、この突出部には前端縁が前方に突出する態様で上記シートが取り付けられている場合に、上記延出端縁が、車体前後方向について、上記突出部とシートの前端縁との間に配置されるように構成されるのが好ましい(請求項3)。
【0010】
上記のように構成すれば、シートの前端縁よりも後方に可動フロア部の延出端縁が配置されるので、通常の使用状態で、当該シートに着座する乗員の足部が載置されることがほとんどないシート前端縁よりも後方のデッドスペースを有効に利用して可動フロア部の延出端縁を配置することができる。
【0011】
ここで、上記可動フロア部は、水平姿勢を維持して上下昇降動させるものであってもよいが、可動フロア部の前後一端縁を上下方向回動可能に支持して揺動させることにより昇降させるものとしてもよい。この場合には、可動フロア部は、その前端縁が固定フロア部等に回動可能に支持されるものであってもよいが、その延出端縁が、上記突出部に上下方向に回動可能に支持されているのが好ましい(請求項4)。
【0012】
このように可動フロア部を揺動させることにより昇降動させると、可動フロア部の高さだけでなく、傾斜角度も変更することができ、より適切に乗員の姿勢を調整することができる。しかも、可動フロア部の延出端縁が突出部に回動可能に支持されているので、突出させることにより剛性が高まった突出部に可動フロア部を支持させることにより当該可動フロア部の支持剛性を高めることができる。さらに、本発明では可動フロア部がシート方向に延出しているので、この可動フロア部を回動可能に支持させる場合であっても、昇降動に伴う傾斜の変化も緩やかとなり、乗員が乗降時等に可動フロア部上に乗った場合でもその違和感を抑制することができる。
【0013】
この場合、可動フロア部の延出端縁は、上記突出部のいずれの位置に支持させるものであってもよいが、上記固定フロア部から高さ方向に離間した位置で上記突出部に支持されるのが好ましく、この延出端縁の下方に上記昇降機構が配設されているのがさらに好ましい(請求項5)。
【0014】
このように構成すれば、可動フロア部の延出端縁を突出部に支持させることによる上記作用効果を維持しつつ、この可動フロア部の延出端縁の下方空間を有効に利用して上記昇降機構を配設することができ、可動フロア装置を構成する部材を効率的に配置することができる。
【0015】
この構成が採用される場合、乗員の着座姿勢を調整する着座姿勢調整装置として、この発明に係る可動フロア装置に加えてシートの位置を調節するシート位置調節機構を設ければ乗員の着座姿勢をよりきめ細やかに調整することができ、この場合には、上記昇降機構は、独自の駆動機構によって駆動されるように構成されるものであってもよいが、上記シートの位置を調節するシート位置調節機構に連動して駆動されるように構成されるのが好ましい(請求項6)。
【0016】
このように構成すれば、シート位置と可動フロア部高さとを予め調整しておくことにより、シート位置に応じて最適な可動フロア部高さに自動調節することができ、より使い勝手のよいものとなる。なお、駆動力を発生させる駆動源とこの駆動源によって発生した駆動力を昇降機構に伝達する駆動伝達手段とを有する駆動機構をさらに備え、上記駆動源をシートの下方ないしはその近傍位置に設けることとすれば、駆動伝達手段を短く形成することができ、これにより駆動力の伝達効率を向上させることができるとともに、駆動源との同期精度を向上させることができるという利点がある。
【0017】
この発明において、上記可動フロア部は、車体前後方向にヒンジ連結された2枚のパネルを有し、これらの前後パネルのうち前側パネルがその下方より上記昇降機構によって支持されるとともに、この前側パネルの昇降動に応じて後側パネルの後端縁が上記固定フロア部に沿って移動するように構成されているのが好ましい(請求項7)。
【0018】
すなわち、可動フロア部を一枚のパネルから形成してこのパネルの全体を昇降機構によって昇降動させるものであってもよいが、本発明のように延出端部を有する場合にはこのパネルが比較的大きなものとなり、昇降機構によって昇降させる可動フロア部の重量も増大することになる。
【0019】
したがって、上記のように構成すれば、後側パネルの後端縁においても可動フロア部の重量を一部支持させることができ、昇降機構によって昇降される可動フロア部の重量を軽減させることができ、これにより小さいエネルギーで可動フロア部を昇降動させることができる。しかも、前側パネルがその下方より上記昇降機構によって支持されるので、前側パネルの支持剛性を向上させることができる。また、前側パネルには後側パネルがヒンジ連結されているので、前側パネルの昇降動に伴って生じる隙間のうちシート側の隙間を塞ぐことができ、これにより見栄えを向上させることができる。さらに、上記固定フロア部および可動フロア部の上面にフロアマット等のフロアトリムを敷設した場合には、固定フロア部上に敷設されたフロアトリムが可動フロア部の昇降動に伴ってフロアトリムと可動フロア部との相対位置がずれることになるが、可動フロア部が足部載置領域に配設されるとともにこの足部載置領域から外れた位置にまで延出しているので、足部載置領域から外れた部分においてフロアトリムの位置ずれを生じさせることができ、このためこの位置ずれを円滑に行わせることができるとともに、可動フロア部の昇降動を快適かつ適正に実行することができる。
【0020】
また、この発明において、上記前側パネルを昇降動させる構成に代えて、上記可動フロア部は、車体前後方向にヒンジ連結された2枚のパネルを有し、これらの前後パネルのうち後側パネルがその下方より上記昇降機構によって支持されるとともに、この後側パネルの昇降動に応じて前側パネルの前端縁が上記固定フロア部に沿って移動するように構成されているのが好ましい(請求項8)。
【0021】
このように構成しても、前側パネルの前端縁において可動フロア部の重量を一部支持させることができ、昇降機構によって昇降される可動フロア部の重量を軽減させることができ、これにより小さいエネルギーで可動フロア部を昇降動させることができる。しかも、後側パネルがその下方より上記昇降機構によって支持されるので、可動フロア部の支持剛性を向上させることができる。
【0022】
また、後側パネルには前側パネルがヒンジ連結されているので、後側パネルの昇降動に伴って生じる隙間のうちシート側と反対側の隙間を塞ぐことができ、これにより見栄えを向上させることができる。さらに、上記固定フロア部および可動フロア部の上面にフロアマット等のフロアトリムを敷設した場合には、固定フロア部上に敷設されたフロアトリムが可動フロア部の昇降動に伴ってフロアトリムと可動フロア部との相対位置がずれることになるが、可動フロア部が足部載置領域に配設されるとともにこの足部載置領域から外れた位置にまで延出しているので、足部載置領域から外れた部分においてフロアトリムの位置ずれを生じさせることができ、このためこの位置ずれを円滑に行わせることができるとともに、可動フロア部の昇降動を快適かつ適正に実行することができる。
【0023】
上記シートは1列ないし複数列シートにおけるいずれのシートであってもよいが、上記シートはドライバーが着座するドライバーズシートであり、上記可動フロア部の前側パネルは、このドライバーズシートに着座するドライバーがその足部によって操作するペダルの下方における所定領域に配設されるとともに、上記昇降機構によってその後端部が上下されて前下がり姿勢から後下がり姿勢まで位置調節可能に構成されているのが好ましい(請求項9)。
【0024】
このように構成すれば、可動フロア部を昇降動させるだけでなく、その傾斜角度も変更することができ、特にこの傾斜角度を前下がりに傾斜した状態から後下がりに傾斜した状態に多様に変化させることができ、乗員における運転姿勢を細かく調整することによりペダルに対する操作性をより一層適正にすることができる。
【0025】
上記昇降機構によって支持される可動フロア部の部分は特に限定されるものではない。ただし、上記可動フロア部は、当該可動フロア部の部分のうち、上記シートに着座する乗員の足部が乗降時に載置される乗降時足部載置部分において上記昇降機構によって支持されているのが好ましい(請求項10)。
【0026】
このように構成すれば、可動フロア部における乗員の乗降時に載置される乗降時足部載置領域、例えば車体前後方向についてシートの前端縁から当該シートの前方に配置されたシートのシートバックやペダルなどとの間の中間領域が上記昇降機構によって下方から支持されて可動フロア部は特にこの乗降時足部載置領域において高い剛性で支持される。したがって、乗降時に当該領域の可動フロア部の部分に乗員の足部が載置されても可動フロア部が沈み込む等せず、乗員は安定して乗降することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明に係る自動車の可動フロア装置によれば、乗降時や運転時等に乗員の足部が載置される足部載置領域におけるフロアの連続性を担保することができ、足部載置領域における可動フロア部と固定フロア部との間の段差を解消することができ、乗降時に邪魔になったり、可動フロア部の昇降動に伴って乗員の足下で固定フロア部に対する可動フロア部の相対位置が変化することに基づく不快感や違和感を解消して可動フロア部の高さ位置を快適に変更することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
図1は当実施形態に係る可動フロア装置を含めた自動車の着座姿勢調整装置の概略を示す斜視図であり、図2および図3は同装置の側面図および平面図である。なお、この着座姿勢調整装置は、シート位置を調節するシート位置調節装置と、高さを含めた可動フロアパネルの位置を調節する可動フロア装置とによって構成されているが、その他、ステアリングの傾斜角度等を調節するステアリング位置調節装置やブレーキペダル等のペダル位置を調節するペダル位置調節機構等を含むものであってもよい。また、当実施形態では、可動フロア装置を含めた着座姿勢調整装置をドライバーズシートに適用する場合について説明するが、ナビシートや後列シートにも適用可能であり、この場合はシートに着座する乗員の着座姿勢を安楽にするため等に用いられる。
【0030】
車体前後方向に延びるフロアパネル4(固定フロア部の一例に相当する)上には、シートクッション51とシートバック52とを備えた乗員用シート5と、このシート5の車体前後方向の位置等を調節するシート位置調節装置6(シート位置調節機構の一例に相当)と、シート5に着座した乗員の足部が載置される可動フロアパネル7を駆動して当該可動フロアパネル7の高さ等を調節する可動フロア装置8とが配設されている。
【0031】
このフロアパネル4は、図2に示すように、その前端部が前上がりに傾斜して形成され、この傾斜パネル部4aの前端縁がエンジンルームと車室を仕切るダッシュパネル9に連設されている。このダッシュパネル9には、ブレーキペダルやアクセルペダル等、シート5に着座する乗員の足部によって操作されるペダル10が枢支されるとともに、上記乗員によって操作されるステアリング装置11が支持されている。また、フロアパネル4の車幅方向略中央部は上方に膨出することによりトンネル部4bが形成されている。このトンネル部4bは、車体前後方向に細長く延び、このトンネル部4bの外側は図示していないがセンターコンソールによって被覆され、当該センターコンソールとトンネル部4bとの間の空間に種々のワイヤーハーネスやダクト等が配設されるように構成されている。
【0032】
このフロアパネル4上であって当該パネル4のトンネル部4bの側方には上記乗員用シート5が配設され、このシート5はシート位置調節装置6によって位置調節可能に構成される。このシート位置調節装置6は、図2および図3に示すように、シート5を車体前後方向に移動可能に支持するシートスライド機構61と、このスライド機構61によってシート5をスライド変位させることによりシートクッション51の高さおよび傾斜角度を調節するシート昇降機構62とを備える。
【0033】
シートスライド機構61は、シート5を車体前後方向に移動可能に支持する左右一対のスライドレール63と、シートクッション51の両側縁部下方に突設されスライドレール63にスライド自在に支持されるスライドプレート64とを基本構成とし、このスライド移動に伴ってシートクッション51の前端縁51aが後述する前側クロスメンバ13の前面壁よりも後方に下がることがないように、言い換えるとシートクッション51の前端縁51aが平面視において前側クロスメンバ13の前面壁を含んでこれよりも前方に位置した状態を保ったままスライド移動するように寸法等が設定されている。
【0034】
スライドレール63は、スライドプレート64をそれぞれスライド自在に支持するC型鋼等からなり、フロアパネル4上に車幅方向に沿って設置され上方に突出する前後一対のクロスメンバ13,14の上面に所定の仰角(例えば15°程度)で前上がりに傾斜した状態で取り付けられている。また、このスライドレール63の外側壁面には、図4に示すように、車体の前後方向に延びるラックギヤ15が、シート昇降機構62の作動部となる転動ギヤ16と歯合するように固着されている。
【0035】
なお、前後一対のクロスメンバ13,14は、図2に示すように、フロアパネル4に対して上方に突出するとともに車幅方向に延びる高剛性部材であり、それぞれ前後上面壁とその開口縁からフロアパネル4に沿って延びるフランジ部とを有する断面ハット状に形成され、その下方のフランジ部においてフロアパネル4上に接合されている。
【0036】
図4に戻って、スライドプレート64の前部には、シートクッション51のフレーム材(図示せず)に固着される前部ブラケット17の枢支部を貫通する支軸20が、左右のスライドプレート64を互いに連結するように配設されている。また、スライドプレート64の中央部には、転動ギヤ16と一体回転する回転軸21が当該スライドプレート64を貫通する状態で枢支されるとともに、転動ギヤ16に歯合する中間ギヤ22が回転自在に支持されている。さらに、このスライドプレート64の後端部内面側には、シートクッション51の後端部を上下昇降動させるシート用昇降レバー23の基端部が枢支されている。
【0037】
また、転動ギヤ16と一体回転する上記回転軸21には、後述する駆動モータの回転力を伝達する第1伝達ケーブル24の先端部が接続されるとともに、中間ギヤ22には、その回転駆動力を上記可動フロア装置8に伝達する第2伝達ケーブル25の一端部が連結されている。また、上記スライドプレート64の内側には、中間ギヤ22と一体に回転することにより上記昇降レバー23を駆動して揺動変位させる駆動ギヤ26が設置されている。この駆動ギヤ26は、その直径が上記中間ギヤ22よりも小さく設定されることにより、その歯数が中間ギヤ22よりも少なく設定されるとともに、昇降レバー23の基端部に形成されたセクタギヤ23aに歯合するように構成されている。
【0038】
昇降レバー23の先端部は、リンクプレート27を介してシートクッション51の後部ブラケット28に連結されている。そして、上記リンクプレート27、昇降レバー23、駆動ギヤ26および中間ギヤ22により、シート5のスライド変位に連動して、シートクッション51を揺動変位させてその上下位置を調節するシート昇降機構62が構成されている。すなわち、上記第1伝達ケーブル24から転動ギヤ16を介して中間ギヤ22に伝達された回転力に応じ、駆動ギヤ26が回転駆動されるとともに、この駆動ギヤ26により昇降レバー23が駆動されて揺動変位し、これに対応して前部ブラケット17に枢支された支軸20を支点にシートクッション51の後端部が昇降動されるように構成されている。
【0039】
上記第1,第2伝達ケーブル24,25は、それぞれ可撓性を有する長尺の回転駆動軸部24a,25aからなり、この回転駆動軸部24a,25aが軸心回りに回転駆動されて作動部に回転力を伝達するように構成されている。そして、第1,第2伝達ケーブル24,25は、回転軸21および中間ギヤ22に対する接続部から車体の中央部側に突設されるとともに、その内側端部に設けられた屈曲部を介して車体の前方側に導出されている。
【0040】
第1伝達ケーブル24は、図5に示すように、クロスメンバ13による係止位置から車体の後方側に折り返されることによりトンネル部4bの上壁に沿って後方側に延設され、その後端部が、上記センターコンソールとトンネル部4bとの上面との間の空間内に配設された駆動モータ30の出力軸にカップリング30aを介して連結されている。そして、この駆動モータ30、第1伝達ケーブル24、転動ギヤ16およびラックギヤ15ににより、乗員用シート5のシートクッション51を、そのシートクッション51の前端縁51aが平面視においてクロスメンバ13の前端縁近傍位置よりも前方に位置した状態を保ちつつ、上記スライドレール63に沿って前後移動させることができる。従って、これらの駆動モータ30、第1伝達ケーブル24、転動ギヤ16およびラックギヤ15もシートスライド機構61を構成している。具体的には、上記駆動モータ30の回転力が第1伝達ケーブル24を介して上記転動ギヤ16に伝達され、この転動ギヤ16がラックギヤ15上を転動することにより、上記シートクッション51の下面に取り付けられたスライドプレート64がスライドレール63に沿って前後移動し、乗員用シート5の前後位置が調節されるようになっている。
【0041】
上記のように駆動モータ30から第1伝達ケーブル24を介して転動ギヤ16に伝達された回転力に応じ、この転動ギヤ16を回転駆動させることにより乗員用シート5を前後移動させるシートスライド機構61と、このシートスライド機構61と連動して昇降レバー23を揺動変位させることにより乗員用シート5の上下位置を調節する上記シート昇降機構62とで、乗員の体格等に応じて乗員用シート5の設置状態等を調節するシート位置調節装置6が構成されている。
【0042】
一方、第2伝達ケーブル25は、図5および図6に示すように、前側クロスメンバ13による係止位置から、車体の前方側に若干延出され、その前端部が、可動フロア装置8に接続されている。そして、回転軸21から第2伝達ケーブル25の一端部に入力された回転力が、この第2伝達ケーブル25の他端部側に伝達されることにより、可動フロア装置8の後述するウォーム334aが回転駆動されるように構成されている。すなわち、この第2伝達ケーブル25およびこの第2伝達ケーブル25に駆動力を伝達する駆動モータ30、第1伝達ケーブル24が駆動機構として機能する。
【0043】
この可動フロア装置8は、図2に示すように、ペダル10の下方であってフロアパネル4の上面に配設された可動フロアパネル7(可動フロア部の一例に相当)と、この可動フロアパネル7をフロアパネル4に対して昇降動させる昇降機構33とを備え、当実施形態では上記したようにシート位置調節装置6と連動して可動フロアパネル7を昇降動させるものとなされている。
【0044】
可動フロアパネル7は、硬質合成樹脂板または鋼板等からなる矩形状のパネルであり、当実施形態ではヒンジにより連結された前後2枚のパネルから構成されている。この可動フロアパネル7は、シート5に着座する乗員がペダル10を操作する場合にその足部が載置されるものであり、昇降機構33によって後側のパネルがその後端縁を中心に揺動することによって昇降動可能に構成されている。
【0045】
具体的には、可動フロアパネル7は、図6に明示するように、昇降機構によって昇降される後側パネル72と、この後側パネル72の前端部に後端部がヒンジ結合された前側パネル71とを備えている。
【0046】
後側パネル72は、後端部の全体が後方に延出することにより車体前後方向に細長く形成されたパネルであり、その後端部が前側のクロスメンバ13の前面壁に枢支されることにより後端縁を中心に上下に揺動可能に構成されている。また、後側パネル72の後端縁が前側のクロスメンバ13の前面壁に枢支されて車体前後方向への移動が拘束されているので、シートクッション51のスライド移動に拘わらず平面視において当該シートクッション51の前端縁よりも当該パネル72の後端縁が後方に配置されるようになっている。すなわち、この後側パネル72は、ステアリング装置11のステアリングの下方所定位置から後方に延び、その後端部における車幅方向両端部が前側のクロスメンバ13の前面壁上部にヒンジ支持部34によって枢支されている。そして、このように後側パネル72の後端部がフロアパネル4から高さ方向に離間した位置に枢支されることにより、当該後側パネル72の下方に空間部36が形成されている。
【0047】
上記ヒンジ支持部34はいわゆる蝶番として構成され、各端部が前側クロスメンバ13の前面および後側パネル72の上面に締結具によって接合されている。なお、このヒンジ支持部34について、各接合箇所の少なくとも一方にゴムやエラストマー等からなる板状の弾性パッドを介在させると、各部材の寸法誤差や組付誤差等を効果的に吸収することができる。
【0048】
前側パネル71は、図6に示すように、車体前後方向について、後側パネル72よりも短い矩形状のパネルであり、ペダル10の下方の所定領域に配設されている。この前側パネル71の大きさは、特に限定するものではないが、シート5に着座する乗員の両足が載置し得る程度の大きさに設定されている。この前側パネル71は、その後端部において、車幅方向左右両端部に配設されたヒンジ部73を介して後側パネル72の前端部に回動自在に連結され、一方、その前端部はフロアパネル4の傾斜パネル部4aに配置され、可動フロアパネル7の昇降動に伴ってその前端縁が上記傾斜パネル部4aの上面に沿って移動するように寸法等設定されている。なお、当実施形態では傾斜パネル部4aに沿って移動する前側パネル71の前端部に車体前後方向に移動する回転コロ37が配設され、フロアパネル4に沿った移動が円滑に行われるようになっている。
【0049】
昇降機構33は、図6に示すように、後側パネル72の下方空間部36に配設され、可動フロアパネル7を昇降動させることができるものであればその具体的構成は特に限定されるものではないが、当実施形態では後側パネル72の長手方向略中央部を下方から上下することにより、後側パネル72をその後端縁を中心に揺動させることにより当該後側パネル72を実質的に昇降させる機構が採用されている。
【0050】
すなわち、昇降機構33は、図3および図6に示すように、後側パネル72の下方において車幅方向に沿って延び、水平軸回りに正逆回転する回転軸部331と、この回転軸部331の長手方向両端部に取り付けられ当該回転軸部331と一体に回転する揺動アーム332と、回転軸部331をその長手方向両端部で回転自在に支持する左右一対の軸ブラケット333と、これらの左右一対の軸ブラケット333の一方側に配設され第2伝達ケーブル25からの回転駆動力を回転軸部331に伝達するとともに回転軸部331からの逆駆動力を支持する保持機構334(図7および図8参照)とを備える。そして、この昇降機構33は、乗員用シート5の位置調節と連動して回転駆動する第2伝達ケーブル25から保持機構334に回転駆動力が伝達されることにより回転軸部331および揺動アーム332が正逆回転駆動し、この揺動アーム332の先端部に当接する後側パネル72を上下に揺動させることにより可動フロアパネル7を昇降させるように構成されているとともに、第2伝達ケーブル25の回転が停止されると保持機構334によって後側パネル72を保持するように構成されている。
【0051】
この昇降機構33を図7および図8(a),(b)を用いて具体的に説明する。図7は昇降装置を拡大して示す斜視図であり、図8(a)は昇降機構の平面図であり、図8(b)は図(a)のb−b線断面図である。
【0052】
回転軸部331は、図7および図8に示すように、車幅方向に沿って延び軸ブラケット333によって後側パネル72の下方であってフロアパネル4上に回転自在に取り付けられている。
【0053】
揺動アーム332は、図7および図8に示すように、平面視略コ字状形状を呈し、回転軸部331の長手方向両端部にそれぞれ固定されている(図3参照)。この揺動アーム332の先端部は、後側パネル72の長手方向中央部、すなわちステアリング装置11のステアリングの下方であって乗員の乗降時に足部が載置されることが多い乗降時足部載置領域における後側パネル72の所定部分に下方から当接している。したがって、この後側パネル72の乗降時足部載置領域部分における支持剛性が特に高くなり、このため当該部分に乗降時に足部が載置されても後側パネル72の沈み込み等がなく、快適に乗り降りできる。また、この揺動アーム332の先端部には、当接ローラ部332aが回転自在に取り付けられ、後側パネル72を上下昇降動させる際に円滑かつ静粛に行われるようになっている。
【0054】
軸ブラケット333は、鋼板を屈曲して軸受として形成されている。これらの軸ブラケット333のうちトンネル部4b側に設けられた軸ブラケット333(図3では左側に配設されたブラケット333)には、保持機構334が配設されている。
【0055】
保持機構334は、図7および図8に示すように、第2伝達ケーブル25の先端部に取着されたウォーム334aと、このウォーム334aと歯合するウォームホイール334bとを備え、ウォームホイール334bが回転軸部331に固着されることによりウォームホイール334bと回転軸部331との間で駆動力の伝達がなされる。ウォーム334aは、車体前後方向に細長く形成され、ウォームホイール334bと歯合させた状態で軸ブラケット333に取り付けられている。なお、このウォーム334aは、ウォームホイール334bとの歯合部位の前後にその周面に沿って係合溝(図示せず)が刻設され、この係合溝に軸ブラケット333に取り付けられた逆U字状の係止部333aが係止されることにより当該ウォーム334aの車体前後方向への脱落を防止するものとなされている。
【0056】
なお、当実施形態では、図2に二点鎖線で示すように、フロアパネル4および可動フロア装置8の上にフロアマット35が敷設され見栄えを向上させるものとなされている。具体的には、このフロアマット35は、可動フロアパネル7の上面に接合され、一方、フロアパネル4の傾斜パネル部4a上に載置されている。このようにフロアパネル4上に配置されたフロアマット35を接合しないのは、可動フロアパネル7の昇降動に伴って前側パネル71の前端縁が傾斜パネル部4aに沿って移動することに基づき、フロアパネル4上に配置されたフロアマット35がフロアパネル4に対して相対位置変化するからである。したがって、上記のように構成すれば、フロアパネル4および可動フロアパネル7上に一体のフロアマット35が敷設されているにも拘わらず可動フロアパネル7を円滑に昇降動させることができる。しかも、前側パネル71の前端縁がペダル10の踏面部よりも前方における傾斜パネル部4aに配置されることと相俟ってこのフロアマット35の位置ずれが乗員の足下で行われることがなく、乗員の快適性を維持することができる。
【0057】
上記構成において、図示を省略したシート位置の調節スイッチを操作して駆動モータ30を作動させると、その回転力が第1伝達ケーブル24を介して転動ギヤ16に伝達され、この転動ギヤ16が回転駆動されて上記ラックギヤ15上を転動することにより、乗員用シート5のシートクッション51が、図9の実線で示す前方位置と、2点鎖線で示す後方位置との間を前後移動することになる。そして、このシートクッション51が前方位置および後方位置のいずれの時にある時でも、可動フロアパネル7の後端縁は平面視において当該シートクッション51の前端縁51aよりも後方に配置されている。
【0058】
そして、シート5を車体の前方側に移動させる方向に転動ギヤ16を図4の矢印に示す方向に回転駆動した場合には、この転動ギヤ16の回転方向aと逆方向bにシート昇降機構62の中間ギヤ22および駆動ギヤ26が回転駆動され、この駆動ギヤ26によりセクタギヤ23aが矢印c方向に回転駆動されることにより、昇降レバー23の先端部が上昇する方向に揺動変位してシートクッション51が水平状態に近い状態となる。一方、シート5を車体の後方側に移動させる場合には、転動ギヤ16、中間ギヤ22および駆動ギヤ26を、それぞれ上記前方移動時と逆方向に回転駆動することにより、昇降レバー23の先端部が下降する方向に揺動変位してシートクッション51が前上がりの傾斜状態となる。
【0059】
また、シート位置調節装置6によるシート位置の調節動作に応じて中間ギヤ22の回転力が第2伝達ケーブル25を介して可動フロア装置8に伝達されることにより、乗員の足が載置される可動フロアパネル7の後側パネル72が昇降機構によって昇降動される。そして、シート5のシートクッション51が前方位置に移動した場合には、図9および図10の実線で示すように後側パネル72が上昇してこれにより前側パネル71が前下がりの傾斜状態となるとともに、、これに応じて乗員の着座姿勢が直立状態となるように変化する。一方、シート5のシートクッション51が後方位置に移動した場合には、図9および図10の2点鎖線で示すように後側パネル72が下降してこれにより前側パネル71が前上がりの傾斜状態となり、これに応じて乗員の着座姿勢が後傾状態となるように変化する。
【0060】
上記のように構成された当実施形態の可動フロア装置8によれば、可動フロアパネル7は、その後端縁(前後端縁のうちシート5側の端縁)が当該シート5側の方向に延出することによりこの後端縁が平面視において乗車時或いはペダル10の操作時に乗員の足部が載置される足部載置領域よりも後方に配置されることとなる。その結果、車体前後方向について平面視における可動フロアパネル7の後端縁とフロアパネル4との境界は、上記足部載置領域を外れた位置、すなわち平面視においてシートクッション51の前端縁51aとこのシートクッション51がスライドプレート64等を介してスライド自在に取り付けられた前側クロスメンバ13の前面壁との間に位置することになるため、上記足部載置領域では可動フロアパネル7だけが配設されている状態となってその足部載置領域における床面の連続性が担保されることになる。
【0061】
このように足部載置領域における床面の連続性を担保することができれば、足部載置領域における可動フロアパネル7とフロアパネル4との乗員側の間の段差を解消することができ、乗員の乗降時に当該可動フロアパネル7が邪魔になるという印象もなくなり、快適かつ円滑に乗降することができる。
【0062】
ところで、例えば仮に可動フロアパネルの後端縁がシートの前方のフロアパネル上に枢支されている場合には、後側パネルの昇降動に伴って後側パネルとフロアパネルとの相対角度が変化することから、後側パネルとフロアパネルとに跨って乗員の足部が載置されていると、乗員に違和感や不快感等を与えることが想定される。しかしながら、当実施形態の可動フロア装置8では、可動フロアパネル7の延出端縁が足部載置領域を超えて後方に枢支されるので、可動フロアパネル7の昇降動に伴って乗員の足下でフロアパネル4に対する可動フロアパネル7の相対位置が変化することもなく、乗員において可動フロアパネル7の位置調整を快適に行うことができる。
【0063】
しかも、この可動フロアパネル7の後側パネル72の後端縁が前側クロスメンバ13の前面壁に枢支されているので、通常の使用状態で乗員の足部が載置されることが極めて稀なシート5の下方空間を有効に利用して可動フロアパネル7の後端部を配置することができる。
【0064】
また、昇降機構33が後側パネル72の後端部の下方空間部36に配設されるので、この昇降機構33に駆動力を伝達する第2伝達ケーブル25や、駆動モータ30からの駆動力を伝達する第1ケーブル24を比較的短く形成することができ、これにより駆動力の伝達効率を向上させることができるとともに、駆動モータ30との同期精度を向上させることができる。
【0065】
なお、以上に説明した可動フロア装置は、本発明に係る装置の一実施形態であり、装置の具体的構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、その変形例を説明する。
【0066】
(1)上記実施形態は、後側パネル72の後端縁が前側クロスメンバ13の前面壁上部に枢支されるものとなされているが、この枢支位置はシート5の前端縁と当該シート5の車体に対する前側取付位置との間、或いはシート5の前端縁と前側クロスメンバ13との間に配置されていれば、その具体的構成が特に限定されるものではなく、例えば前側クロスメンバ13の基端部や接合フランジ部に枢支されているものであってもよい。
【0067】
また、可動フロアパネル7の前端縁がフロアパネル4の傾斜パネル部4aやダッシュパネル9に枢支されるものであってもよい。
【0068】
具体的には、図11に示すように、可動フロアパネル107は、上記実施形態と同様に、硬質合成樹脂板または鋼板等からなる矩形状のパネルであり、ヒンジにより連結された前後2枚のパネルから構成されている。この可動フロアパネル107は、昇降機構33によって前側のパネルがその前端縁を中心に揺動することによって昇降動可能に構成されている。
【0069】
すなわち、可動フロアパネル107は、図11および図12に示すように、昇降機構133によって昇降される前側パネル171と、この前側パネル171の前端部に後端部がヒンジ結合された後側パネル172とを備えている。
【0070】
前側パネル171は、車体前後方向について後側パネル171よりも短く形成された矩形状のパネルであり、その前端部がフロアパネル4の傾斜パネル部4aに枢支されることによりこの前端縁を中心に上下揺動可能に構成されている。すなわち、この前側パネル171は、その前端部における車幅方向両端部が傾斜パネル部4aの前後方向略中間部にヒンジ支持部134によって枢支されている。そして、このように傾斜パネル部4aの所定高さ位置に前側パネル171の前端部が枢支されることにより当該前側パネル171の下方に空間部136が形成されている。
【0071】
後側パネル172は、後端部の全体が後方に延出することにより車体前後方向に細長く形成されたパネルであり、その前端部が車幅方向左右両端部に配設されたヒンジ部173を介して前側パネル171の前端部に回動自在に連結されている。一方、後側パネル172は、可動フロアパネル107の昇降動に伴ってその後端縁がフロアパネル4に沿って移動するように回転コロ137を介してフロアパネル4上に配置され、この後端縁が図11に示すように可動フロアパネル107の昇降過程のいずれのときでも側面視(平面視においても同様)においてシートクッション51の前端縁51aよりも後側に配置されるように構成されている。
【0072】
昇降機構133は、前側パネル171の下方側に配設され、当該前側パネル171の後端部を下方から支持して持ち上げあるいは下げることにより前側パネル171を前端縁を中心に上下揺動可能に支持している。
【0073】
なお、その他の構成は上記実施形態と同様であり、一部について同一符号を付してその説明を省略する。
【0074】
上記構成において、図示を省略したシート位置の調節スイッチを操作して駆動モータ30を作動させると、上記実施形態と同様、乗員用シート5のシートクッション51が、その傾斜角度を変化させつつ、図11の実線で示す前方位置と、2点鎖線で示す後方位置との間を前後移動することになる。そして、このシートクッション51が前方位置および後方位置のいずれの時にある時でも、可動フロアパネル107の後端縁は平面視において当該シートクッション51の前端縁51aよりも後方に配置される。
【0075】
また、シート位置調節装置6によるシート位置の調節動作に応じてその駆動力が可動フロア装置108に伝達されることにより、乗員の足が載置される可動フロアパネル107の前側パネル71が昇降機構133によって昇降動される。そして、シート5のシートクッション51が前方位置に移動した場合には、図11の実線で示すように前側パネル171が上昇して前下がりの傾斜状態となるとともに、、これに応じて乗員の着座姿勢が直立状態となるように変化する。一方、シート5のシートクッション51が後方位置に移動した場合には、図11の2点鎖線で示すように前側パネル171が下降して前上がりの傾斜状態となり、これに応じて乗員の着座姿勢が後傾状態となるように変化する。
【0076】
このように構成しても、乗降時や運転時等に乗員の足部が載置される足部載置領域における床面の連続性を担保することができ、足部載置領域における可動フロアパネル107とフロアパネル4との間の段差を解消することができ、乗降時に邪魔になったり、可動フロアパネル107の昇降動に伴って乗員の足下でフロアパネル4に対する可動フロアパネル107の相対位置が変化することに基づく不快感や違和感を解消して可動フロアパネル107の高さ位置を快適に変更することができる。
【0077】
(2)また、図13に示すように、前後一対のクロスメンバ13,14に代えてフロアパネル4を所定箇所で車幅方向に沿って上方に膨出させて取付突出部104cが形成され、この取付突出部104cの前面壁上部や下部に枢支されているものであってもよい。
【0078】
(3)上記実施形態では、可動フロアパネル7はヒンジ連結された前後2枚のパネル71,72を有して構成されているが、可動フロアパネルは一枚のパネルからなるものであってもよい。この場合でも可動フロアパネルを後方に延出してこの延出端縁をシートクッション51の前端縁51aよりも後方に配置することによって足部載置領域での段差を解消することができ、しかも可動フロアパネルが乗降時等に邪魔になったりすること等がなく、快適に使用することができる。
【0079】
なお、可動フロアパネルを一枚のパネルから構成した場合には、この可動フロアパネルの長手方向一端縁を枢支してこの枢支端縁を中心に上下揺動可能に構成されるものであってもよいし、水平姿勢を維持したまま上下昇降動させるものであってもよい。ただし、揺動可能に可動フロアパネルを車体に枢支した場合には、可動フロアパネルの傾斜角度も変更することができ、これにより乗員の姿勢をより適切に調整することができる点で有利である。
【0080】
(4)上記実施形態では、シート位置調節装置6と可動フロア装置8とを共通の駆動モータ30で連動させるように構成されているが、独立の駆動機構を設けて各々独立に駆動させるように構成してもよい。
【0081】
また、駆動機構についても駆動モータ30に限定されるものではなく、人力による駆動機構を採用するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る可動フロア装置の一実施形態を含めた着座姿勢調整装置を示す斜視図である。
【図2】同着座姿勢調整装置を示す側面図である。
【図3】同着座姿勢調整装置を示す平面図である。
【図4】シート位置調整装置の要部を示す拡大斜視図である。
【図5】シート位置調整装置の要部を示す平面図である。
【図6】可動フロア装置を拡大して示す側面図である。
【図7】同装置の昇降機構を示す斜視図である。
【図8】(a)は同装置の昇降機構の平面図、(b)は図(a)のb−b線断面図である。
【図9】同装置の使用状態を示す側面図である。
【図10】同装置の使用状態を示す平面図である。
【図11】本発明に係る可動フロア装置の変形例をシートとともに示す側面図である。
【図12】同装置を拡大して示す側面図である。
【図13】同装置の突出部を示す側面図である。
【符号の説明】
【0083】
4 フロアパネル(固定フロア部)
5 乗員用シート
6 シート位置調節装置
7 可動フロアパネル
71 前側パネル
72 後側パネル
73 ヒンジ部
8 可動フロア装置
13 クロスメンバ(突出部)
33 昇降機構
35 フロアマット
36 空間部
51 シートクッション
51a 前端縁
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のシートに着座する乗員の体格や体型に応じて当該乗員の足部が載置される足部載置領域のフロア高さを変更可能な可動フロア部を備えた自動車の可動フロア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のシートに着座する乗員、特に運転席に着座するドライバの運転姿勢は、該乗員の運転快適性や走行安全性などと密接に関係することが知られている。このような乗員の運転姿勢は、シートの前後位置や高さ等を調節するシート位置調節手段を始め、固定フロア部に対して昇降可能な可動フロア部の高さを調節する可動フロア装置によっても調節可能であることが知られている。このような可動フロア装置としては、従来、次のようなものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車体前後方向に延びる固定フロア部と、上記固定フロア部上であってブレーキペダルなどのペダル下方に位置してこのペダルを操作する乗員の足部が載置される操作時足部載置領域に配設される可動フロア部と、この可動フロア部を上記固定フロア部に対して昇降動させる昇降機構とを備えた可動フロア装置が提案されている。
【特許文献1】実開昭63−69655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の可動フロア装置では、ペダル操作時におけるフロア高さを調節する観点から可動フロア部が操作時足部載置領域にだけ配設されていたので、乗降時や操作時(運転時)に通常乗員の足部が載置される足部載置領域において固定フロア部と可動フロア部との間で段差を生じるという問題があった。このような段差が足部載置領域で生じると、例えば乗員の乗降時に可動フロア部が邪魔になることがあった。
【0005】
また、可動フロア部が下降位置にある場合において、乗員がシートに着座してペダルに足部を載置した運転姿勢になる前に足部が可動フロア部と固定フロア部とに跨って載置されることもあるが、このような場合に、可動フロア装置を作動させて可動フロア部を上昇させると、可動フロア部と固定フロア部との相対位置変化に基づいて足部の載置状態が不安定となり、乗員に対して不快感や違和感等を与えることとなる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、簡単な構成で足部載置領域に生じる段差を解消して円滑に乗降することができ、しかも乗員が快適に使用することができる自動車の可動フロア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る自動車の可動フロア装置は、車体前後方向に延びる固定フロア部と、この固定フロア部上に配設されたシートと、このシートに着座する乗員の足部が載置される足部載置領域に配設された可動フロア部と、この可動フロア部を上記固定フロア部に対して昇降動させる昇降機構とを備え、この可動フロア部は、そのシート側の端部が当該シート方向に延出することにより、この延出端縁が平面視において上記足部載置領域よりもシート側に配置されることを特徴とするものである。ここで、足部載置領域は、乗員の乗降時や運転時等に、通常の使用状態で乗員の足部が載置される固定フロア部上の所定領域であってシートの前端縁よりも当該シートに対して前方の領域をいうものとするが、実際に使用している中で、シートの前端縁よりも後方の領域に乗員の足部が載置されることを排斥するものではない。
【0008】
この発明によれば、この可動フロア部は、そのシート側の端部が当該シート方向に延出することにより、この延出端縁が平面視において上記足部載置領域よりもシート側に配置されるので、乗降時や運転時等に乗員の足部が載置される足部載置領域を超えて可動フロア部が配置されることとなり、足部載置領域におけるフロアの連続性を担保することができる。このように足部載置領域におけるフロアの連続性を担保することができるので、足部載置領域における可動フロア部と固定フロア部との間の段差を解消することができ、当該可動フロア部が邪魔にならずに円滑に乗降することができる。しかも、可動フロア部の延出端縁が足部載置領域を超えてシート側に配置されるので、可動フロア部の昇降動に伴って乗員の足下で固定フロア部に対する可動フロア部の相対位置が変化することに基づいて乗員が不快感や違和感等を感じさせることもなく、可動フロア部の高さ位置を快適に変更することができる。
【0009】
上記可動フロア部は、その延出端縁が、足部載置領域よりもシート側に配置されるように構成されていればよいが、具体的には、その延出端縁が、車体前後方向について、上記シートの車体に対する前側取付位置と当該取付位置よりも前方に位置するシートの前端縁との間に配置されるように構成され(請求項2)、或いは、上記固定フロア部には上方に突出する突出部が車幅方向に沿って設けられるとともに、この突出部には前端縁が前方に突出する態様で上記シートが取り付けられている場合に、上記延出端縁が、車体前後方向について、上記突出部とシートの前端縁との間に配置されるように構成されるのが好ましい(請求項3)。
【0010】
上記のように構成すれば、シートの前端縁よりも後方に可動フロア部の延出端縁が配置されるので、通常の使用状態で、当該シートに着座する乗員の足部が載置されることがほとんどないシート前端縁よりも後方のデッドスペースを有効に利用して可動フロア部の延出端縁を配置することができる。
【0011】
ここで、上記可動フロア部は、水平姿勢を維持して上下昇降動させるものであってもよいが、可動フロア部の前後一端縁を上下方向回動可能に支持して揺動させることにより昇降させるものとしてもよい。この場合には、可動フロア部は、その前端縁が固定フロア部等に回動可能に支持されるものであってもよいが、その延出端縁が、上記突出部に上下方向に回動可能に支持されているのが好ましい(請求項4)。
【0012】
このように可動フロア部を揺動させることにより昇降動させると、可動フロア部の高さだけでなく、傾斜角度も変更することができ、より適切に乗員の姿勢を調整することができる。しかも、可動フロア部の延出端縁が突出部に回動可能に支持されているので、突出させることにより剛性が高まった突出部に可動フロア部を支持させることにより当該可動フロア部の支持剛性を高めることができる。さらに、本発明では可動フロア部がシート方向に延出しているので、この可動フロア部を回動可能に支持させる場合であっても、昇降動に伴う傾斜の変化も緩やかとなり、乗員が乗降時等に可動フロア部上に乗った場合でもその違和感を抑制することができる。
【0013】
この場合、可動フロア部の延出端縁は、上記突出部のいずれの位置に支持させるものであってもよいが、上記固定フロア部から高さ方向に離間した位置で上記突出部に支持されるのが好ましく、この延出端縁の下方に上記昇降機構が配設されているのがさらに好ましい(請求項5)。
【0014】
このように構成すれば、可動フロア部の延出端縁を突出部に支持させることによる上記作用効果を維持しつつ、この可動フロア部の延出端縁の下方空間を有効に利用して上記昇降機構を配設することができ、可動フロア装置を構成する部材を効率的に配置することができる。
【0015】
この構成が採用される場合、乗員の着座姿勢を調整する着座姿勢調整装置として、この発明に係る可動フロア装置に加えてシートの位置を調節するシート位置調節機構を設ければ乗員の着座姿勢をよりきめ細やかに調整することができ、この場合には、上記昇降機構は、独自の駆動機構によって駆動されるように構成されるものであってもよいが、上記シートの位置を調節するシート位置調節機構に連動して駆動されるように構成されるのが好ましい(請求項6)。
【0016】
このように構成すれば、シート位置と可動フロア部高さとを予め調整しておくことにより、シート位置に応じて最適な可動フロア部高さに自動調節することができ、より使い勝手のよいものとなる。なお、駆動力を発生させる駆動源とこの駆動源によって発生した駆動力を昇降機構に伝達する駆動伝達手段とを有する駆動機構をさらに備え、上記駆動源をシートの下方ないしはその近傍位置に設けることとすれば、駆動伝達手段を短く形成することができ、これにより駆動力の伝達効率を向上させることができるとともに、駆動源との同期精度を向上させることができるという利点がある。
【0017】
この発明において、上記可動フロア部は、車体前後方向にヒンジ連結された2枚のパネルを有し、これらの前後パネルのうち前側パネルがその下方より上記昇降機構によって支持されるとともに、この前側パネルの昇降動に応じて後側パネルの後端縁が上記固定フロア部に沿って移動するように構成されているのが好ましい(請求項7)。
【0018】
すなわち、可動フロア部を一枚のパネルから形成してこのパネルの全体を昇降機構によって昇降動させるものであってもよいが、本発明のように延出端部を有する場合にはこのパネルが比較的大きなものとなり、昇降機構によって昇降させる可動フロア部の重量も増大することになる。
【0019】
したがって、上記のように構成すれば、後側パネルの後端縁においても可動フロア部の重量を一部支持させることができ、昇降機構によって昇降される可動フロア部の重量を軽減させることができ、これにより小さいエネルギーで可動フロア部を昇降動させることができる。しかも、前側パネルがその下方より上記昇降機構によって支持されるので、前側パネルの支持剛性を向上させることができる。また、前側パネルには後側パネルがヒンジ連結されているので、前側パネルの昇降動に伴って生じる隙間のうちシート側の隙間を塞ぐことができ、これにより見栄えを向上させることができる。さらに、上記固定フロア部および可動フロア部の上面にフロアマット等のフロアトリムを敷設した場合には、固定フロア部上に敷設されたフロアトリムが可動フロア部の昇降動に伴ってフロアトリムと可動フロア部との相対位置がずれることになるが、可動フロア部が足部載置領域に配設されるとともにこの足部載置領域から外れた位置にまで延出しているので、足部載置領域から外れた部分においてフロアトリムの位置ずれを生じさせることができ、このためこの位置ずれを円滑に行わせることができるとともに、可動フロア部の昇降動を快適かつ適正に実行することができる。
【0020】
また、この発明において、上記前側パネルを昇降動させる構成に代えて、上記可動フロア部は、車体前後方向にヒンジ連結された2枚のパネルを有し、これらの前後パネルのうち後側パネルがその下方より上記昇降機構によって支持されるとともに、この後側パネルの昇降動に応じて前側パネルの前端縁が上記固定フロア部に沿って移動するように構成されているのが好ましい(請求項8)。
【0021】
このように構成しても、前側パネルの前端縁において可動フロア部の重量を一部支持させることができ、昇降機構によって昇降される可動フロア部の重量を軽減させることができ、これにより小さいエネルギーで可動フロア部を昇降動させることができる。しかも、後側パネルがその下方より上記昇降機構によって支持されるので、可動フロア部の支持剛性を向上させることができる。
【0022】
また、後側パネルには前側パネルがヒンジ連結されているので、後側パネルの昇降動に伴って生じる隙間のうちシート側と反対側の隙間を塞ぐことができ、これにより見栄えを向上させることができる。さらに、上記固定フロア部および可動フロア部の上面にフロアマット等のフロアトリムを敷設した場合には、固定フロア部上に敷設されたフロアトリムが可動フロア部の昇降動に伴ってフロアトリムと可動フロア部との相対位置がずれることになるが、可動フロア部が足部載置領域に配設されるとともにこの足部載置領域から外れた位置にまで延出しているので、足部載置領域から外れた部分においてフロアトリムの位置ずれを生じさせることができ、このためこの位置ずれを円滑に行わせることができるとともに、可動フロア部の昇降動を快適かつ適正に実行することができる。
【0023】
上記シートは1列ないし複数列シートにおけるいずれのシートであってもよいが、上記シートはドライバーが着座するドライバーズシートであり、上記可動フロア部の前側パネルは、このドライバーズシートに着座するドライバーがその足部によって操作するペダルの下方における所定領域に配設されるとともに、上記昇降機構によってその後端部が上下されて前下がり姿勢から後下がり姿勢まで位置調節可能に構成されているのが好ましい(請求項9)。
【0024】
このように構成すれば、可動フロア部を昇降動させるだけでなく、その傾斜角度も変更することができ、特にこの傾斜角度を前下がりに傾斜した状態から後下がりに傾斜した状態に多様に変化させることができ、乗員における運転姿勢を細かく調整することによりペダルに対する操作性をより一層適正にすることができる。
【0025】
上記昇降機構によって支持される可動フロア部の部分は特に限定されるものではない。ただし、上記可動フロア部は、当該可動フロア部の部分のうち、上記シートに着座する乗員の足部が乗降時に載置される乗降時足部載置部分において上記昇降機構によって支持されているのが好ましい(請求項10)。
【0026】
このように構成すれば、可動フロア部における乗員の乗降時に載置される乗降時足部載置領域、例えば車体前後方向についてシートの前端縁から当該シートの前方に配置されたシートのシートバックやペダルなどとの間の中間領域が上記昇降機構によって下方から支持されて可動フロア部は特にこの乗降時足部載置領域において高い剛性で支持される。したがって、乗降時に当該領域の可動フロア部の部分に乗員の足部が載置されても可動フロア部が沈み込む等せず、乗員は安定して乗降することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明に係る自動車の可動フロア装置によれば、乗降時や運転時等に乗員の足部が載置される足部載置領域におけるフロアの連続性を担保することができ、足部載置領域における可動フロア部と固定フロア部との間の段差を解消することができ、乗降時に邪魔になったり、可動フロア部の昇降動に伴って乗員の足下で固定フロア部に対する可動フロア部の相対位置が変化することに基づく不快感や違和感を解消して可動フロア部の高さ位置を快適に変更することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
図1は当実施形態に係る可動フロア装置を含めた自動車の着座姿勢調整装置の概略を示す斜視図であり、図2および図3は同装置の側面図および平面図である。なお、この着座姿勢調整装置は、シート位置を調節するシート位置調節装置と、高さを含めた可動フロアパネルの位置を調節する可動フロア装置とによって構成されているが、その他、ステアリングの傾斜角度等を調節するステアリング位置調節装置やブレーキペダル等のペダル位置を調節するペダル位置調節機構等を含むものであってもよい。また、当実施形態では、可動フロア装置を含めた着座姿勢調整装置をドライバーズシートに適用する場合について説明するが、ナビシートや後列シートにも適用可能であり、この場合はシートに着座する乗員の着座姿勢を安楽にするため等に用いられる。
【0030】
車体前後方向に延びるフロアパネル4(固定フロア部の一例に相当する)上には、シートクッション51とシートバック52とを備えた乗員用シート5と、このシート5の車体前後方向の位置等を調節するシート位置調節装置6(シート位置調節機構の一例に相当)と、シート5に着座した乗員の足部が載置される可動フロアパネル7を駆動して当該可動フロアパネル7の高さ等を調節する可動フロア装置8とが配設されている。
【0031】
このフロアパネル4は、図2に示すように、その前端部が前上がりに傾斜して形成され、この傾斜パネル部4aの前端縁がエンジンルームと車室を仕切るダッシュパネル9に連設されている。このダッシュパネル9には、ブレーキペダルやアクセルペダル等、シート5に着座する乗員の足部によって操作されるペダル10が枢支されるとともに、上記乗員によって操作されるステアリング装置11が支持されている。また、フロアパネル4の車幅方向略中央部は上方に膨出することによりトンネル部4bが形成されている。このトンネル部4bは、車体前後方向に細長く延び、このトンネル部4bの外側は図示していないがセンターコンソールによって被覆され、当該センターコンソールとトンネル部4bとの間の空間に種々のワイヤーハーネスやダクト等が配設されるように構成されている。
【0032】
このフロアパネル4上であって当該パネル4のトンネル部4bの側方には上記乗員用シート5が配設され、このシート5はシート位置調節装置6によって位置調節可能に構成される。このシート位置調節装置6は、図2および図3に示すように、シート5を車体前後方向に移動可能に支持するシートスライド機構61と、このスライド機構61によってシート5をスライド変位させることによりシートクッション51の高さおよび傾斜角度を調節するシート昇降機構62とを備える。
【0033】
シートスライド機構61は、シート5を車体前後方向に移動可能に支持する左右一対のスライドレール63と、シートクッション51の両側縁部下方に突設されスライドレール63にスライド自在に支持されるスライドプレート64とを基本構成とし、このスライド移動に伴ってシートクッション51の前端縁51aが後述する前側クロスメンバ13の前面壁よりも後方に下がることがないように、言い換えるとシートクッション51の前端縁51aが平面視において前側クロスメンバ13の前面壁を含んでこれよりも前方に位置した状態を保ったままスライド移動するように寸法等が設定されている。
【0034】
スライドレール63は、スライドプレート64をそれぞれスライド自在に支持するC型鋼等からなり、フロアパネル4上に車幅方向に沿って設置され上方に突出する前後一対のクロスメンバ13,14の上面に所定の仰角(例えば15°程度)で前上がりに傾斜した状態で取り付けられている。また、このスライドレール63の外側壁面には、図4に示すように、車体の前後方向に延びるラックギヤ15が、シート昇降機構62の作動部となる転動ギヤ16と歯合するように固着されている。
【0035】
なお、前後一対のクロスメンバ13,14は、図2に示すように、フロアパネル4に対して上方に突出するとともに車幅方向に延びる高剛性部材であり、それぞれ前後上面壁とその開口縁からフロアパネル4に沿って延びるフランジ部とを有する断面ハット状に形成され、その下方のフランジ部においてフロアパネル4上に接合されている。
【0036】
図4に戻って、スライドプレート64の前部には、シートクッション51のフレーム材(図示せず)に固着される前部ブラケット17の枢支部を貫通する支軸20が、左右のスライドプレート64を互いに連結するように配設されている。また、スライドプレート64の中央部には、転動ギヤ16と一体回転する回転軸21が当該スライドプレート64を貫通する状態で枢支されるとともに、転動ギヤ16に歯合する中間ギヤ22が回転自在に支持されている。さらに、このスライドプレート64の後端部内面側には、シートクッション51の後端部を上下昇降動させるシート用昇降レバー23の基端部が枢支されている。
【0037】
また、転動ギヤ16と一体回転する上記回転軸21には、後述する駆動モータの回転力を伝達する第1伝達ケーブル24の先端部が接続されるとともに、中間ギヤ22には、その回転駆動力を上記可動フロア装置8に伝達する第2伝達ケーブル25の一端部が連結されている。また、上記スライドプレート64の内側には、中間ギヤ22と一体に回転することにより上記昇降レバー23を駆動して揺動変位させる駆動ギヤ26が設置されている。この駆動ギヤ26は、その直径が上記中間ギヤ22よりも小さく設定されることにより、その歯数が中間ギヤ22よりも少なく設定されるとともに、昇降レバー23の基端部に形成されたセクタギヤ23aに歯合するように構成されている。
【0038】
昇降レバー23の先端部は、リンクプレート27を介してシートクッション51の後部ブラケット28に連結されている。そして、上記リンクプレート27、昇降レバー23、駆動ギヤ26および中間ギヤ22により、シート5のスライド変位に連動して、シートクッション51を揺動変位させてその上下位置を調節するシート昇降機構62が構成されている。すなわち、上記第1伝達ケーブル24から転動ギヤ16を介して中間ギヤ22に伝達された回転力に応じ、駆動ギヤ26が回転駆動されるとともに、この駆動ギヤ26により昇降レバー23が駆動されて揺動変位し、これに対応して前部ブラケット17に枢支された支軸20を支点にシートクッション51の後端部が昇降動されるように構成されている。
【0039】
上記第1,第2伝達ケーブル24,25は、それぞれ可撓性を有する長尺の回転駆動軸部24a,25aからなり、この回転駆動軸部24a,25aが軸心回りに回転駆動されて作動部に回転力を伝達するように構成されている。そして、第1,第2伝達ケーブル24,25は、回転軸21および中間ギヤ22に対する接続部から車体の中央部側に突設されるとともに、その内側端部に設けられた屈曲部を介して車体の前方側に導出されている。
【0040】
第1伝達ケーブル24は、図5に示すように、クロスメンバ13による係止位置から車体の後方側に折り返されることによりトンネル部4bの上壁に沿って後方側に延設され、その後端部が、上記センターコンソールとトンネル部4bとの上面との間の空間内に配設された駆動モータ30の出力軸にカップリング30aを介して連結されている。そして、この駆動モータ30、第1伝達ケーブル24、転動ギヤ16およびラックギヤ15ににより、乗員用シート5のシートクッション51を、そのシートクッション51の前端縁51aが平面視においてクロスメンバ13の前端縁近傍位置よりも前方に位置した状態を保ちつつ、上記スライドレール63に沿って前後移動させることができる。従って、これらの駆動モータ30、第1伝達ケーブル24、転動ギヤ16およびラックギヤ15もシートスライド機構61を構成している。具体的には、上記駆動モータ30の回転力が第1伝達ケーブル24を介して上記転動ギヤ16に伝達され、この転動ギヤ16がラックギヤ15上を転動することにより、上記シートクッション51の下面に取り付けられたスライドプレート64がスライドレール63に沿って前後移動し、乗員用シート5の前後位置が調節されるようになっている。
【0041】
上記のように駆動モータ30から第1伝達ケーブル24を介して転動ギヤ16に伝達された回転力に応じ、この転動ギヤ16を回転駆動させることにより乗員用シート5を前後移動させるシートスライド機構61と、このシートスライド機構61と連動して昇降レバー23を揺動変位させることにより乗員用シート5の上下位置を調節する上記シート昇降機構62とで、乗員の体格等に応じて乗員用シート5の設置状態等を調節するシート位置調節装置6が構成されている。
【0042】
一方、第2伝達ケーブル25は、図5および図6に示すように、前側クロスメンバ13による係止位置から、車体の前方側に若干延出され、その前端部が、可動フロア装置8に接続されている。そして、回転軸21から第2伝達ケーブル25の一端部に入力された回転力が、この第2伝達ケーブル25の他端部側に伝達されることにより、可動フロア装置8の後述するウォーム334aが回転駆動されるように構成されている。すなわち、この第2伝達ケーブル25およびこの第2伝達ケーブル25に駆動力を伝達する駆動モータ30、第1伝達ケーブル24が駆動機構として機能する。
【0043】
この可動フロア装置8は、図2に示すように、ペダル10の下方であってフロアパネル4の上面に配設された可動フロアパネル7(可動フロア部の一例に相当)と、この可動フロアパネル7をフロアパネル4に対して昇降動させる昇降機構33とを備え、当実施形態では上記したようにシート位置調節装置6と連動して可動フロアパネル7を昇降動させるものとなされている。
【0044】
可動フロアパネル7は、硬質合成樹脂板または鋼板等からなる矩形状のパネルであり、当実施形態ではヒンジにより連結された前後2枚のパネルから構成されている。この可動フロアパネル7は、シート5に着座する乗員がペダル10を操作する場合にその足部が載置されるものであり、昇降機構33によって後側のパネルがその後端縁を中心に揺動することによって昇降動可能に構成されている。
【0045】
具体的には、可動フロアパネル7は、図6に明示するように、昇降機構によって昇降される後側パネル72と、この後側パネル72の前端部に後端部がヒンジ結合された前側パネル71とを備えている。
【0046】
後側パネル72は、後端部の全体が後方に延出することにより車体前後方向に細長く形成されたパネルであり、その後端部が前側のクロスメンバ13の前面壁に枢支されることにより後端縁を中心に上下に揺動可能に構成されている。また、後側パネル72の後端縁が前側のクロスメンバ13の前面壁に枢支されて車体前後方向への移動が拘束されているので、シートクッション51のスライド移動に拘わらず平面視において当該シートクッション51の前端縁よりも当該パネル72の後端縁が後方に配置されるようになっている。すなわち、この後側パネル72は、ステアリング装置11のステアリングの下方所定位置から後方に延び、その後端部における車幅方向両端部が前側のクロスメンバ13の前面壁上部にヒンジ支持部34によって枢支されている。そして、このように後側パネル72の後端部がフロアパネル4から高さ方向に離間した位置に枢支されることにより、当該後側パネル72の下方に空間部36が形成されている。
【0047】
上記ヒンジ支持部34はいわゆる蝶番として構成され、各端部が前側クロスメンバ13の前面および後側パネル72の上面に締結具によって接合されている。なお、このヒンジ支持部34について、各接合箇所の少なくとも一方にゴムやエラストマー等からなる板状の弾性パッドを介在させると、各部材の寸法誤差や組付誤差等を効果的に吸収することができる。
【0048】
前側パネル71は、図6に示すように、車体前後方向について、後側パネル72よりも短い矩形状のパネルであり、ペダル10の下方の所定領域に配設されている。この前側パネル71の大きさは、特に限定するものではないが、シート5に着座する乗員の両足が載置し得る程度の大きさに設定されている。この前側パネル71は、その後端部において、車幅方向左右両端部に配設されたヒンジ部73を介して後側パネル72の前端部に回動自在に連結され、一方、その前端部はフロアパネル4の傾斜パネル部4aに配置され、可動フロアパネル7の昇降動に伴ってその前端縁が上記傾斜パネル部4aの上面に沿って移動するように寸法等設定されている。なお、当実施形態では傾斜パネル部4aに沿って移動する前側パネル71の前端部に車体前後方向に移動する回転コロ37が配設され、フロアパネル4に沿った移動が円滑に行われるようになっている。
【0049】
昇降機構33は、図6に示すように、後側パネル72の下方空間部36に配設され、可動フロアパネル7を昇降動させることができるものであればその具体的構成は特に限定されるものではないが、当実施形態では後側パネル72の長手方向略中央部を下方から上下することにより、後側パネル72をその後端縁を中心に揺動させることにより当該後側パネル72を実質的に昇降させる機構が採用されている。
【0050】
すなわち、昇降機構33は、図3および図6に示すように、後側パネル72の下方において車幅方向に沿って延び、水平軸回りに正逆回転する回転軸部331と、この回転軸部331の長手方向両端部に取り付けられ当該回転軸部331と一体に回転する揺動アーム332と、回転軸部331をその長手方向両端部で回転自在に支持する左右一対の軸ブラケット333と、これらの左右一対の軸ブラケット333の一方側に配設され第2伝達ケーブル25からの回転駆動力を回転軸部331に伝達するとともに回転軸部331からの逆駆動力を支持する保持機構334(図7および図8参照)とを備える。そして、この昇降機構33は、乗員用シート5の位置調節と連動して回転駆動する第2伝達ケーブル25から保持機構334に回転駆動力が伝達されることにより回転軸部331および揺動アーム332が正逆回転駆動し、この揺動アーム332の先端部に当接する後側パネル72を上下に揺動させることにより可動フロアパネル7を昇降させるように構成されているとともに、第2伝達ケーブル25の回転が停止されると保持機構334によって後側パネル72を保持するように構成されている。
【0051】
この昇降機構33を図7および図8(a),(b)を用いて具体的に説明する。図7は昇降装置を拡大して示す斜視図であり、図8(a)は昇降機構の平面図であり、図8(b)は図(a)のb−b線断面図である。
【0052】
回転軸部331は、図7および図8に示すように、車幅方向に沿って延び軸ブラケット333によって後側パネル72の下方であってフロアパネル4上に回転自在に取り付けられている。
【0053】
揺動アーム332は、図7および図8に示すように、平面視略コ字状形状を呈し、回転軸部331の長手方向両端部にそれぞれ固定されている(図3参照)。この揺動アーム332の先端部は、後側パネル72の長手方向中央部、すなわちステアリング装置11のステアリングの下方であって乗員の乗降時に足部が載置されることが多い乗降時足部載置領域における後側パネル72の所定部分に下方から当接している。したがって、この後側パネル72の乗降時足部載置領域部分における支持剛性が特に高くなり、このため当該部分に乗降時に足部が載置されても後側パネル72の沈み込み等がなく、快適に乗り降りできる。また、この揺動アーム332の先端部には、当接ローラ部332aが回転自在に取り付けられ、後側パネル72を上下昇降動させる際に円滑かつ静粛に行われるようになっている。
【0054】
軸ブラケット333は、鋼板を屈曲して軸受として形成されている。これらの軸ブラケット333のうちトンネル部4b側に設けられた軸ブラケット333(図3では左側に配設されたブラケット333)には、保持機構334が配設されている。
【0055】
保持機構334は、図7および図8に示すように、第2伝達ケーブル25の先端部に取着されたウォーム334aと、このウォーム334aと歯合するウォームホイール334bとを備え、ウォームホイール334bが回転軸部331に固着されることによりウォームホイール334bと回転軸部331との間で駆動力の伝達がなされる。ウォーム334aは、車体前後方向に細長く形成され、ウォームホイール334bと歯合させた状態で軸ブラケット333に取り付けられている。なお、このウォーム334aは、ウォームホイール334bとの歯合部位の前後にその周面に沿って係合溝(図示せず)が刻設され、この係合溝に軸ブラケット333に取り付けられた逆U字状の係止部333aが係止されることにより当該ウォーム334aの車体前後方向への脱落を防止するものとなされている。
【0056】
なお、当実施形態では、図2に二点鎖線で示すように、フロアパネル4および可動フロア装置8の上にフロアマット35が敷設され見栄えを向上させるものとなされている。具体的には、このフロアマット35は、可動フロアパネル7の上面に接合され、一方、フロアパネル4の傾斜パネル部4a上に載置されている。このようにフロアパネル4上に配置されたフロアマット35を接合しないのは、可動フロアパネル7の昇降動に伴って前側パネル71の前端縁が傾斜パネル部4aに沿って移動することに基づき、フロアパネル4上に配置されたフロアマット35がフロアパネル4に対して相対位置変化するからである。したがって、上記のように構成すれば、フロアパネル4および可動フロアパネル7上に一体のフロアマット35が敷設されているにも拘わらず可動フロアパネル7を円滑に昇降動させることができる。しかも、前側パネル71の前端縁がペダル10の踏面部よりも前方における傾斜パネル部4aに配置されることと相俟ってこのフロアマット35の位置ずれが乗員の足下で行われることがなく、乗員の快適性を維持することができる。
【0057】
上記構成において、図示を省略したシート位置の調節スイッチを操作して駆動モータ30を作動させると、その回転力が第1伝達ケーブル24を介して転動ギヤ16に伝達され、この転動ギヤ16が回転駆動されて上記ラックギヤ15上を転動することにより、乗員用シート5のシートクッション51が、図9の実線で示す前方位置と、2点鎖線で示す後方位置との間を前後移動することになる。そして、このシートクッション51が前方位置および後方位置のいずれの時にある時でも、可動フロアパネル7の後端縁は平面視において当該シートクッション51の前端縁51aよりも後方に配置されている。
【0058】
そして、シート5を車体の前方側に移動させる方向に転動ギヤ16を図4の矢印に示す方向に回転駆動した場合には、この転動ギヤ16の回転方向aと逆方向bにシート昇降機構62の中間ギヤ22および駆動ギヤ26が回転駆動され、この駆動ギヤ26によりセクタギヤ23aが矢印c方向に回転駆動されることにより、昇降レバー23の先端部が上昇する方向に揺動変位してシートクッション51が水平状態に近い状態となる。一方、シート5を車体の後方側に移動させる場合には、転動ギヤ16、中間ギヤ22および駆動ギヤ26を、それぞれ上記前方移動時と逆方向に回転駆動することにより、昇降レバー23の先端部が下降する方向に揺動変位してシートクッション51が前上がりの傾斜状態となる。
【0059】
また、シート位置調節装置6によるシート位置の調節動作に応じて中間ギヤ22の回転力が第2伝達ケーブル25を介して可動フロア装置8に伝達されることにより、乗員の足が載置される可動フロアパネル7の後側パネル72が昇降機構によって昇降動される。そして、シート5のシートクッション51が前方位置に移動した場合には、図9および図10の実線で示すように後側パネル72が上昇してこれにより前側パネル71が前下がりの傾斜状態となるとともに、、これに応じて乗員の着座姿勢が直立状態となるように変化する。一方、シート5のシートクッション51が後方位置に移動した場合には、図9および図10の2点鎖線で示すように後側パネル72が下降してこれにより前側パネル71が前上がりの傾斜状態となり、これに応じて乗員の着座姿勢が後傾状態となるように変化する。
【0060】
上記のように構成された当実施形態の可動フロア装置8によれば、可動フロアパネル7は、その後端縁(前後端縁のうちシート5側の端縁)が当該シート5側の方向に延出することによりこの後端縁が平面視において乗車時或いはペダル10の操作時に乗員の足部が載置される足部載置領域よりも後方に配置されることとなる。その結果、車体前後方向について平面視における可動フロアパネル7の後端縁とフロアパネル4との境界は、上記足部載置領域を外れた位置、すなわち平面視においてシートクッション51の前端縁51aとこのシートクッション51がスライドプレート64等を介してスライド自在に取り付けられた前側クロスメンバ13の前面壁との間に位置することになるため、上記足部載置領域では可動フロアパネル7だけが配設されている状態となってその足部載置領域における床面の連続性が担保されることになる。
【0061】
このように足部載置領域における床面の連続性を担保することができれば、足部載置領域における可動フロアパネル7とフロアパネル4との乗員側の間の段差を解消することができ、乗員の乗降時に当該可動フロアパネル7が邪魔になるという印象もなくなり、快適かつ円滑に乗降することができる。
【0062】
ところで、例えば仮に可動フロアパネルの後端縁がシートの前方のフロアパネル上に枢支されている場合には、後側パネルの昇降動に伴って後側パネルとフロアパネルとの相対角度が変化することから、後側パネルとフロアパネルとに跨って乗員の足部が載置されていると、乗員に違和感や不快感等を与えることが想定される。しかしながら、当実施形態の可動フロア装置8では、可動フロアパネル7の延出端縁が足部載置領域を超えて後方に枢支されるので、可動フロアパネル7の昇降動に伴って乗員の足下でフロアパネル4に対する可動フロアパネル7の相対位置が変化することもなく、乗員において可動フロアパネル7の位置調整を快適に行うことができる。
【0063】
しかも、この可動フロアパネル7の後側パネル72の後端縁が前側クロスメンバ13の前面壁に枢支されているので、通常の使用状態で乗員の足部が載置されることが極めて稀なシート5の下方空間を有効に利用して可動フロアパネル7の後端部を配置することができる。
【0064】
また、昇降機構33が後側パネル72の後端部の下方空間部36に配設されるので、この昇降機構33に駆動力を伝達する第2伝達ケーブル25や、駆動モータ30からの駆動力を伝達する第1ケーブル24を比較的短く形成することができ、これにより駆動力の伝達効率を向上させることができるとともに、駆動モータ30との同期精度を向上させることができる。
【0065】
なお、以上に説明した可動フロア装置は、本発明に係る装置の一実施形態であり、装置の具体的構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、その変形例を説明する。
【0066】
(1)上記実施形態は、後側パネル72の後端縁が前側クロスメンバ13の前面壁上部に枢支されるものとなされているが、この枢支位置はシート5の前端縁と当該シート5の車体に対する前側取付位置との間、或いはシート5の前端縁と前側クロスメンバ13との間に配置されていれば、その具体的構成が特に限定されるものではなく、例えば前側クロスメンバ13の基端部や接合フランジ部に枢支されているものであってもよい。
【0067】
また、可動フロアパネル7の前端縁がフロアパネル4の傾斜パネル部4aやダッシュパネル9に枢支されるものであってもよい。
【0068】
具体的には、図11に示すように、可動フロアパネル107は、上記実施形態と同様に、硬質合成樹脂板または鋼板等からなる矩形状のパネルであり、ヒンジにより連結された前後2枚のパネルから構成されている。この可動フロアパネル107は、昇降機構33によって前側のパネルがその前端縁を中心に揺動することによって昇降動可能に構成されている。
【0069】
すなわち、可動フロアパネル107は、図11および図12に示すように、昇降機構133によって昇降される前側パネル171と、この前側パネル171の前端部に後端部がヒンジ結合された後側パネル172とを備えている。
【0070】
前側パネル171は、車体前後方向について後側パネル171よりも短く形成された矩形状のパネルであり、その前端部がフロアパネル4の傾斜パネル部4aに枢支されることによりこの前端縁を中心に上下揺動可能に構成されている。すなわち、この前側パネル171は、その前端部における車幅方向両端部が傾斜パネル部4aの前後方向略中間部にヒンジ支持部134によって枢支されている。そして、このように傾斜パネル部4aの所定高さ位置に前側パネル171の前端部が枢支されることにより当該前側パネル171の下方に空間部136が形成されている。
【0071】
後側パネル172は、後端部の全体が後方に延出することにより車体前後方向に細長く形成されたパネルであり、その前端部が車幅方向左右両端部に配設されたヒンジ部173を介して前側パネル171の前端部に回動自在に連結されている。一方、後側パネル172は、可動フロアパネル107の昇降動に伴ってその後端縁がフロアパネル4に沿って移動するように回転コロ137を介してフロアパネル4上に配置され、この後端縁が図11に示すように可動フロアパネル107の昇降過程のいずれのときでも側面視(平面視においても同様)においてシートクッション51の前端縁51aよりも後側に配置されるように構成されている。
【0072】
昇降機構133は、前側パネル171の下方側に配設され、当該前側パネル171の後端部を下方から支持して持ち上げあるいは下げることにより前側パネル171を前端縁を中心に上下揺動可能に支持している。
【0073】
なお、その他の構成は上記実施形態と同様であり、一部について同一符号を付してその説明を省略する。
【0074】
上記構成において、図示を省略したシート位置の調節スイッチを操作して駆動モータ30を作動させると、上記実施形態と同様、乗員用シート5のシートクッション51が、その傾斜角度を変化させつつ、図11の実線で示す前方位置と、2点鎖線で示す後方位置との間を前後移動することになる。そして、このシートクッション51が前方位置および後方位置のいずれの時にある時でも、可動フロアパネル107の後端縁は平面視において当該シートクッション51の前端縁51aよりも後方に配置される。
【0075】
また、シート位置調節装置6によるシート位置の調節動作に応じてその駆動力が可動フロア装置108に伝達されることにより、乗員の足が載置される可動フロアパネル107の前側パネル71が昇降機構133によって昇降動される。そして、シート5のシートクッション51が前方位置に移動した場合には、図11の実線で示すように前側パネル171が上昇して前下がりの傾斜状態となるとともに、、これに応じて乗員の着座姿勢が直立状態となるように変化する。一方、シート5のシートクッション51が後方位置に移動した場合には、図11の2点鎖線で示すように前側パネル171が下降して前上がりの傾斜状態となり、これに応じて乗員の着座姿勢が後傾状態となるように変化する。
【0076】
このように構成しても、乗降時や運転時等に乗員の足部が載置される足部載置領域における床面の連続性を担保することができ、足部載置領域における可動フロアパネル107とフロアパネル4との間の段差を解消することができ、乗降時に邪魔になったり、可動フロアパネル107の昇降動に伴って乗員の足下でフロアパネル4に対する可動フロアパネル107の相対位置が変化することに基づく不快感や違和感を解消して可動フロアパネル107の高さ位置を快適に変更することができる。
【0077】
(2)また、図13に示すように、前後一対のクロスメンバ13,14に代えてフロアパネル4を所定箇所で車幅方向に沿って上方に膨出させて取付突出部104cが形成され、この取付突出部104cの前面壁上部や下部に枢支されているものであってもよい。
【0078】
(3)上記実施形態では、可動フロアパネル7はヒンジ連結された前後2枚のパネル71,72を有して構成されているが、可動フロアパネルは一枚のパネルからなるものであってもよい。この場合でも可動フロアパネルを後方に延出してこの延出端縁をシートクッション51の前端縁51aよりも後方に配置することによって足部載置領域での段差を解消することができ、しかも可動フロアパネルが乗降時等に邪魔になったりすること等がなく、快適に使用することができる。
【0079】
なお、可動フロアパネルを一枚のパネルから構成した場合には、この可動フロアパネルの長手方向一端縁を枢支してこの枢支端縁を中心に上下揺動可能に構成されるものであってもよいし、水平姿勢を維持したまま上下昇降動させるものであってもよい。ただし、揺動可能に可動フロアパネルを車体に枢支した場合には、可動フロアパネルの傾斜角度も変更することができ、これにより乗員の姿勢をより適切に調整することができる点で有利である。
【0080】
(4)上記実施形態では、シート位置調節装置6と可動フロア装置8とを共通の駆動モータ30で連動させるように構成されているが、独立の駆動機構を設けて各々独立に駆動させるように構成してもよい。
【0081】
また、駆動機構についても駆動モータ30に限定されるものではなく、人力による駆動機構を採用するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る可動フロア装置の一実施形態を含めた着座姿勢調整装置を示す斜視図である。
【図2】同着座姿勢調整装置を示す側面図である。
【図3】同着座姿勢調整装置を示す平面図である。
【図4】シート位置調整装置の要部を示す拡大斜視図である。
【図5】シート位置調整装置の要部を示す平面図である。
【図6】可動フロア装置を拡大して示す側面図である。
【図7】同装置の昇降機構を示す斜視図である。
【図8】(a)は同装置の昇降機構の平面図、(b)は図(a)のb−b線断面図である。
【図9】同装置の使用状態を示す側面図である。
【図10】同装置の使用状態を示す平面図である。
【図11】本発明に係る可動フロア装置の変形例をシートとともに示す側面図である。
【図12】同装置を拡大して示す側面図である。
【図13】同装置の突出部を示す側面図である。
【符号の説明】
【0083】
4 フロアパネル(固定フロア部)
5 乗員用シート
6 シート位置調節装置
7 可動フロアパネル
71 前側パネル
72 後側パネル
73 ヒンジ部
8 可動フロア装置
13 クロスメンバ(突出部)
33 昇降機構
35 フロアマット
36 空間部
51 シートクッション
51a 前端縁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延びる固定フロア部と、この固定フロア部上に配設されたシートと、このシートに着座する乗員の足部が載置される足部載置領域に配設された可動フロア部と、この可動フロア部を上記固定フロア部に対して昇降動させる昇降機構とを備え、
この可動フロア部は、そのシート側の端部が当該シート方向に延出することにより、この延出端縁が平面視において上記足部載置領域よりもシート側に配置されることを特徴とする自動車の可動フロア装置。
【請求項2】
上記可動フロア部は、その延出端縁が、車体前後方向について、上記シートの車体に対する前側取付位置と当該取付位置よりも前方に位置するシートの前端縁との間に配置されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項3】
上記固定フロア部には上方に突出する突出部が車幅方向に沿って設けられるとともに、この突出部には前端縁が前方に突出する態様で上記シートが取り付けられ、上記可動フロア部は、その延出端縁が、車体前後方向について、上記突出部とシートの前端縁との間に配置されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項4】
上記可動フロア部は、その延出端縁が、上記突出部に上下方向に回動可能に支持され、この延出端縁を中心に上下揺動することにより昇降動させるように構成されていることを特徴とする請求項3記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項5】
上記可動フロア部の延出端縁は、上記固定フロア部から高さ方向に離間した位置で上記突出部に支持され、この延出端縁の下方に上記昇降機構が配設されていることを特徴とする請求項4記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項6】
上記昇降機構は、上記シートの位置を調節するシート位置調節機構に連動して駆動されるように構成されることを特徴とする請求項5記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項7】
上記可動フロア部は、車体前後方向にヒンジ連結された2枚のパネルを有し、これらの前後パネルのうち前側パネルがその下方より上記昇降機構によって支持されるとともに、この前側パネルの昇降動に応じて後側パネルの後端縁が上記固定フロア部に沿って移動するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項8】
上記可動フロア部は、車体前後方向にヒンジ連結された2枚のパネルを有し、これらの前後パネルのうち後側パネルがその下方より上記昇降機構によって支持されるとともに、この後側パネルの昇降動に応じて前側パネルの前端縁が上記固定フロア部に沿って移動するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項9】
上記シートはドライバーが着座するドライバーズシートであり、上記可動フロア部の前側パネルは、このドライバーズシートに着座するドライバーがその足部によって操作するペダルの下方における所定領域に配設されるとともに、上記昇降機構によってその後端部が上下されて前下がり姿勢から後下がり姿勢まで位置調節可能に構成されていることを特徴とする請求項7または請求項8記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項10】
上記可動フロア部は、当該可動フロア部の部分のうち、上記シートに着座する乗員の足部が乗降時に載置される乗降時足部載置部分において上記昇降機構によって支持されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項1】
車体前後方向に延びる固定フロア部と、この固定フロア部上に配設されたシートと、このシートに着座する乗員の足部が載置される足部載置領域に配設された可動フロア部と、この可動フロア部を上記固定フロア部に対して昇降動させる昇降機構とを備え、
この可動フロア部は、そのシート側の端部が当該シート方向に延出することにより、この延出端縁が平面視において上記足部載置領域よりもシート側に配置されることを特徴とする自動車の可動フロア装置。
【請求項2】
上記可動フロア部は、その延出端縁が、車体前後方向について、上記シートの車体に対する前側取付位置と当該取付位置よりも前方に位置するシートの前端縁との間に配置されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項3】
上記固定フロア部には上方に突出する突出部が車幅方向に沿って設けられるとともに、この突出部には前端縁が前方に突出する態様で上記シートが取り付けられ、上記可動フロア部は、その延出端縁が、車体前後方向について、上記突出部とシートの前端縁との間に配置されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項4】
上記可動フロア部は、その延出端縁が、上記突出部に上下方向に回動可能に支持され、この延出端縁を中心に上下揺動することにより昇降動させるように構成されていることを特徴とする請求項3記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項5】
上記可動フロア部の延出端縁は、上記固定フロア部から高さ方向に離間した位置で上記突出部に支持され、この延出端縁の下方に上記昇降機構が配設されていることを特徴とする請求項4記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項6】
上記昇降機構は、上記シートの位置を調節するシート位置調節機構に連動して駆動されるように構成されることを特徴とする請求項5記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項7】
上記可動フロア部は、車体前後方向にヒンジ連結された2枚のパネルを有し、これらの前後パネルのうち前側パネルがその下方より上記昇降機構によって支持されるとともに、この前側パネルの昇降動に応じて後側パネルの後端縁が上記固定フロア部に沿って移動するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項8】
上記可動フロア部は、車体前後方向にヒンジ連結された2枚のパネルを有し、これらの前後パネルのうち後側パネルがその下方より上記昇降機構によって支持されるとともに、この後側パネルの昇降動に応じて前側パネルの前端縁が上記固定フロア部に沿って移動するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項9】
上記シートはドライバーが着座するドライバーズシートであり、上記可動フロア部の前側パネルは、このドライバーズシートに着座するドライバーがその足部によって操作するペダルの下方における所定領域に配設されるとともに、上記昇降機構によってその後端部が上下されて前下がり姿勢から後下がり姿勢まで位置調節可能に構成されていることを特徴とする請求項7または請求項8記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項10】
上記可動フロア部は、当該可動フロア部の部分のうち、上記シートに着座する乗員の足部が乗降時に載置される乗降時足部載置部分において上記昇降機構によって支持されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−273053(P2006−273053A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92674(P2005−92674)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]