説明

自動車の機械的部品をサイドメンバへ取り付けるための補強部品付きの構造

本発明は、自動車の機械的部品(12)を縦方向のサイドメンバへ取り付けるための構造(10)に関し、この構造は、(i)サイドメンバ(14)が、端部(16)を有する概ねU字型の管状の部分からなり、端部(16)は、概ね垂直な2つのフランジ(20)によって境界を定められた底壁(18)からなり、底壁(18)に、少なくとも2つのドリル穴(22)が、自動車の機械的部品(12)を取り付けるために作られ、(ii)サイドメンバ(14)は、その中に、サイドメンバ(14)のドリル穴(22)に沿って配置される補強手段を受ける、タイプのものである。本発明は、補強手段は、共通の補強部品(24)からなり、補強部品(24)の底壁(26)は、サイドメンバ(14)の底壁(18)に溶接され、補強部品(24)は、サイドメンバ(14)の底壁(18)の固定用のドリル穴(22)と合致する2つのドリル穴(28)を有することを特徴とする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の機械的部品を自動車の縦方向のサイドメンバへ取り付けるための構造に関する。
本発明は、特に、サイドメンバが、端部を有する概ねU字型の管状の部分からなり、上記端部は、概ね垂直な2つのフランジによって境界を定められた底壁からなり、上記底壁に、例えば横方向にずらされた、少なくとも2つのドリル穴が、自動車の機械的部品を取り付けるために作られ、上記サイドメンバは、上記サイドメンバの中に、上記ドリル穴に沿って配置される補強手段を受ける、自動車の機械的部品を自動車の縦方向のサイドメンバへ取り付けるための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のタイプの構造の、数多くの例が知られている。
これらの多くの構造においては、サイドメンバは、各取り付けドリル穴の箇所で、ドリル穴にそって溶接され、サイドメンバのドリル穴と一致するドリル穴を有する個別の補強板によって補強される。
【0003】
この設計は、補強板の間のサイドメンバの剛性を高めることを可能にしない。更に、局部的な補強板の存在が、サイドメンバの中の液体、特に液化生成物のための排出穴を設けることを不可能にし、このため、サイドメンバは、内部腐食の高い危険にさらされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ドリル穴の間を連続して伸び、サイドメンバの中へ流入する液体及び例えば液化生成物を排出する手段を有する、補強部品をサイドメンバへ取り付けるための構造を提供することによって、上記従来の技術における問題を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、本明細書の「技術分野」に記載した自動車の機械的部品を自動車の縦方向のサイドメンバへ取り付けるための構造において、上記補強手段は、共通の補強部品からなり、上記補強部品の上記底壁は、上記サイドメンバの底壁に溶接され、上記補強部品は、上記サイドメンバの上記底壁の固定用の上記ドリル穴と合致する2つのドリル穴を有することを特徴とする、自動車の機械的部品を自動車の縦方向のサイドメンバへ取り付けるための構造を提供する。
【0006】
本発明のその他の特徴によれば:
−上記補強部品は、少なくとも4つの概ね垂直な側壁と上記底壁からなる盆の形状を有し、上記底壁に、上記サイドメンバの中に形成される液体、特に液化生成物を排出するために、上記サイドメンバの上記底壁に形成された対向する少なくとも1つの排出穴と合致する、少なくとも1つの排出穴が設けられ、
−各上記側壁は、その長さの少なくとも一部に、上記液体を上記排出穴へ向けて導くための、上記底壁に接する傾斜底端部を有し、更に上記傾斜底端部は、上記液体が上記補強部品と上記サイドメンバの間を通過することを可能にする、縦方向のトンネルの境界を定め、
−各上記側壁はその全長に亘って上記傾斜底端部を有し、
−上記サイドメンバの2つの上記ドリル穴22と、共通の上記補強部品の上記底壁の2つの上記ドリル穴は、それぞれ縦方向にずらされ、
−上記補強部品の上記底壁は、上記底壁の2つの上記ドリル穴の間に縦方向に配置された、概ね横方向の管状のリブを有し、上記リブは、上記液体が一方の縦方向の上記トンネルから他方の縦方向の上記トンネルへ、上記補強部品の下を通過することを可能にし、上記補強部品の中に、前の窪みと後の窪みとの、2つの上記窪みの境界を定め、
−上記前の窪みと上記後の窪みの各々は、上記液体のための上記排出穴を有し、
−上記底壁は、上記後の窪みの中で、上記リブの基部に並置された、少なくとも1つの上記排出穴を有し、
−上記リブの上面は、上記液体のための追加の排出穴(48)を有し、
−上記底壁は、上記前の窪みと上記後の窪みのうちの1つの窪みの中に、上記補強部品が溶接される前に、上記補強部品を上記サイドメンバに対して位置決めするための部品を受けるように設計され、上記補強部品が上記サイドメンバの中に溶接された後に、ストッパーを受けるように設計された、少なくとも1つのパイロットドリル穴を有し、
−上記補強部品の各上記ドリル穴は、ボルトによって上記自動車の上記機械的部品を固定するためのブッシュを受ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のその他の特徴及び利点は、理解のために添付図面を参照する以下の詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。これらの添付図面において:
−図1は、本発明による構造の斜視図であり;
−図2は、本発明による構造の補強部品の第1の実施の形態の、図1の2−2面における詳細断面図であり;
−図3は、本発明による構造の補強部品の第2の実施の形態の、図1の2−2面における詳細断面図であり;
−図4は、本発明による構造の、図1の4−4面における詳細断面図であり;
−図5は、本発明の第1の実施の形態に従って作られた補強部品を有する構造の詳細斜視図である。
【0008】
以下の説明において、同一の符号は、同一または類似の機能を有する部品を示す。
慣例に従って、用語「上部」または「下部」は、図1〜5において、それぞれ上方または下方に向けられた部材または位置を示し、「前」または「後」は、図1〜5において、それぞれ左または右に向けられた部品または位置を示す。
【0009】
図1、4及び5は、自動車の機械的部品12を、自動車の縦方向のサイドメンバ14へ取り付けるための構造10の全体を示す。機械的部品12は、例えば、自動車のサスペンションアームの回動のためのベアリングである。
【0010】
図1に示すように、サイドメンバ14は、例えば、概ねU字型の管状の部分からなり、概ね垂直な2つのフランジ20によって境界を定められた底壁18を含む、端部16を有する。底壁18に、自動車の機械的部品12を取り付けるための、横方向にずらされた少なくとも2つのドリル穴22が設けられている。機械的部品12は、例えば、サイドメンバ14の底壁18の底面に接して配置されるように設計された上面13を有する。
【0011】
従来のこのような構造10は、ドリル穴22が補強手段によって補強されたサイドメンバ14からなる。この補強手段、ドリル穴22に合致するドリル穴を有し、底壁18に溶接される板(図示しない)から形成される。
【0012】
このような従来の設計は、補強板の間のサイドメンバの剛性を高めることを可能にしない。更に、局部的な補強板の存在が、サイドメンバの中の液化生成物のような液体の排出穴を設けることを不可能にし、このため、サイドメンバは、内部腐食の高い危険にさらされる。
【0013】
このような従来技術の問題を解消するために、本発明は、上記のような構造10において、補強手段が共通の補強部品24からなり、補強部品24の底壁26はサイドメンバ14の底壁18に溶接され、補強部品24は、サイドメンバ14の底壁18の固定用のドリル穴22と合致する2つのドリル穴28を有することを特徴とする構造10を提供する。
【0014】
より詳細には、図5に示すように、補強部品24は、少なくとも4つの概ね垂直な側壁30と底壁26からなる盆の形状を有する。この底壁26に、サイドメンバ14の中に形成される液化生成物を排出するために、サイドメンバ14の底壁18に形成された対向する少なくとも1つの排出穴34と合致する、少なくとも1つの排出穴32が設けられる。
【0015】
この形態は、サイドメンバ14の中に形成された液化生成物が、サイドメンバ14の中に停滞し、サイドメンバ14の中における内部腐食の開始を引き起こす危険を回避することを有利に可能にする。
【0016】
より詳細には、図2〜4に示すように、例えば液化生成物のような液体を排出穴32へ向けて導くために、各側壁30は、その長さの少なくとも一部に、底壁26に接する傾斜底端部36を有する。この傾斜底端部36は、液化生成物を排出穴32へ向けて導くように設計される。
【0017】
図2、4は、本発明の第1の実施の形態を示す。この場合、補強部品24の後部においては、各側壁30はそれぞれ傾斜底端部36を有し、補強部品24の前部においては、側壁30の1つのみが傾斜底端部36を有する。
【0018】
図3、4は、本発明の第2の実施の形態を示す。この場合、各側壁30はそれぞれ全長に亘って傾斜底端部36を有する。
【0019】
図5に示すように、本発明の実施の形態においては、サイドメンバ14の底壁18の2つのドリル穴22と、共通の補強部品24の底壁26の2つのドリル穴28は、それぞれ縦方向にずらされている。勿論、ドリル穴の配置は、機械的部品(ベアリング)12の全体的形状に依存する。補強部品24の各ドリル穴28は、自動車の機械的部品12を取り付けるためのボルト25を受けるように設計されたブッシュ23を受ける。機械的部品12は、ボルト25によって受けられ、機械的部品12の下に配置されるナット27によって固定される。
【0020】
図示された例においては、機械的部品12の2つの固定点は、補強部品24に対して斜めの方向に配置される。機械的部品12の上面13は、サイドメンバ14の下を押し、全体として剛性を増加させる。この形態は、機械的部品12のサイドメンバ14の下への平衡した固定を保証する。
【0021】
本発明のすべての実施の形態において、各側壁30は少なくとも1つの傾斜底端部36を有する。傾斜底端部36は、底壁26に接し、これによって補強部品24の各側に設けられた縦方向のトンネル38の境界を定める。トンネル38は、液化生成物が補強部品24とサイドメンバ14の間を通過することを可能にする。そこで液化生成物は、補強部品24の1端または他端へ向けて排出される。
【0022】
本発明のすべての実施の形態において、補強部品24の底壁26は、底壁26の2つのドリル穴28の間に縦方向に配置された、液化生成物が一方の縦方向のトンネル38から他方の縦方向のトンネル38へ、補強部品24の下を通過することを可能にする、概ね横方向の管状のリブ40を有する。このリブ40は、前の窪み42と後の窪み44との、2つの窪みの境界を定める。窪み42、44の1つをドリル穴28の周囲に形成すると有利である。
【0023】
各窪みに溜まる液化生成物が排出されることを可能にするために、窪み42、44のそれぞれは、液化生成物のための排出穴32を有する。特に、底壁26に設けられた後の窪み44の排出穴32は、後の窪み44の中において、リブ40の中における流れを可能にするために後の窪み44が部分的に侵入する、リブ40の基部に並置される。前の窪み42の排出穴32は、例えば、サイドメンバ14の中へ外部から異物が進入することを回避するために設計された保護格子35を受ける。図示しない変形として、この機能は、天然または合成の、ゴムまたはエラストマーから作られ、液体を排出することを可能にするために穴が開けられた、ストッパーによって達成することも可能である。
【0024】
さらに、液化生成物は、リブ40の上にも溜まる可能性があるので、リブ40の上面46は、液化生成物のための排出穴48を有する。また、リブ40の上面46は凸面の湾曲形状を有することができる。
【0025】
補強部品24が溶接によって補強部品24に固定される前に、補強部品24がサイドメンバ14の中に配置されることを可能にするために、底壁26は、前の窪み42と後の窪み44のうちの1つの窪みに、少なくとも1つのパイロットドリル穴50を有する。このパイロットドリル穴50は、補強部品24をサイドメンバ14に対して位置決めするために、サイドメンバ14を貫通してパイロットドリル穴50の中に受け入れられる部品(図示しない)を受けるように設計される。溶接が実行された後に、この部品はサイドメンバ14及び補強部品24から除去され、パイロットドリル穴50は、例えばエラストマーで作られた栓のようなストッパー(図示しない)を受ける。
【0026】
実施の形態の図示しない変形によれば、側壁30は、概ね垂直な上端部に、側壁30とフランジ20との間の接触面が連続しないように、切り込み、すなわち銃眼形状を有する。このことは、補強部品24の取り付けを容易にし、電気泳動塗装中の塗料の伝播を容易にする。
【0027】
本発明は、このように、サイドメンバ14の中の液化生成物の排出を可能にしながら、サイドメンバ14の固定用のドリル穴22の近傍においてサイドメンバ14を確実に補強することを可能にする。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドメンバ(14)が、端部(16)を有する概ねU字型の管状の部分からなり、上記端部(16)は、概ね垂直な2つのフランジ(20)によって境界を定められた底壁(18)からなり、上記底壁(18)に、少なくとも2つのドリル穴(22)が、自動車の機械的部品(12)を取り付けるために作られ、上記サイドメンバ(14)は、上記サイドメンバ(14)の中に、上記サイドメンバ(14)の上記ドリル穴(22)に沿って配置される補強手段を受ける、自動車の機械的部品(12)を自動車の縦方向のサイドメンバ(14)へ取り付けるための構造(10)において、上記補強手段は、共通の補強部品(24)からなり、上記補強部品(24)の底壁(26)は、上記サイドメンバ(14)の上記底壁(18)に溶接され、上記補強部品(24)は、上記サイドメンバ(14)の上記底壁(18)の固定用の上記ドリル穴(22)と合致する2つのドリル穴(28)を有することを特徴とする、自動車の機械的部品を自動車の縦方向のサイドメンバへ取り付けるための構造。
【請求項2】
上記補強部品(24)は、少なくとも4つの概ね垂直な側壁(30)と上記底壁(26)からなる盆の形状を有し、上記底壁(26)に、上記サイドメンバ(14)の中に形成される液体を排出するために、上記サイドメンバ(14)の上記底壁(18)に形成された対向する少なくとも1つの排出穴(34)と合致する、少なくとも1つの排出穴(32)が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の自動車の機械的部品を自動車の縦方向のサイドメンバへ取り付けるための構造。
【請求項3】
各上記側壁(30)は、その長さの少なくとも一部に、上記液体を上記排出穴(32)へ向けて導くための、上記底壁(26)に接する傾斜底端部(36)を有し、更に上記傾斜底端部(36)は、上記液体が上記補強部品(24)と上記サイドメンバ(14)の間を通過することを可能にする、縦方向のトンネル(38)の境界を定めることを特徴とする、請求項2に記載の自動車の機械的部品を自動車の縦方向のサイドメンバへ取り付けるための構造。
【請求項4】
各上記側壁(30)はその全長に亘って上記傾斜底端部(36)を有することを特徴とする、請求項3に記載の自動車の機械的部品を自動車の縦方向のサイドメンバへ取り付けるための構造。
【請求項5】
上記補強部品(24)の上記底壁(26)は、上記底壁(26)の2つの上記ドリル穴(28)の間に縦方向に配置された、概ね横方向の管状のリブ(40)を有し、上記リブ(40)は、上記液体が一方の縦方向の上記トンネル(38)から他方の縦方向の上記トンネル(38)へ、上記補強部品(24)の下を通過することを可能にし、上記補強部品(24)の中に、前の窪み(42)と後の窪み(44)との、2つの上記窪みの境界を定めることを特徴とする、請求項3または4に記載の自動車の機械的部品を自動車の縦方向のサイドメンバへ取り付けるための構造。
【請求項6】
上記前の窪み(42)と上記後の窪み(44)の各々は、上記液体のための上記排出穴(32)を有することを特徴とする、請求項2と組み合わされた請求項5に記載の自動車の機械的部品を自動車の縦方向のサイドメンバへ取り付けるための構造。
【請求項7】
上記底壁は、上記後の窪み(44)の中で、上記リブ(40)の基部に並置された、少なくとも1つの上記排出穴(32)を有することを特徴とする、請求項6に記載の自動車の機械的部品を自動車の縦方向のサイドメンバへ取り付けるための構造。
【請求項8】
上記リブ(40)の上面(46)は、上記液体のための追加の排出穴(48)を有することを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1つに記載の自動車の機械的部品を自動車の縦方向のサイドメンバへ取り付けるための構造。
【請求項9】
上記底壁(26)は、上記前の窪み(42)と上記後の窪み(44)のうちの1つの窪みの中に、上記補強部品(24)が溶接される前に、上記補強部品(24)を上記サイドメンバ(14)に対して位置決めするための部品を受けるように設計され、上記補強部品(24)が上記サイドメンバ(14)の中に溶接された後に、ストッパーを受けるように設計された、少なくとも1つのパイロットドリル穴(50)を有することを特徴とする、請求項5〜8のいずれか1つに記載の自動車の機械的部品を自動車の縦方向のサイドメンバへ取り付けるための構造。
【請求項10】
上記補強部品(24)の各上記ドリル穴(28)は、ボルト(25)によって上記自動車の上記機械的部品(12)を固定するためのブッシュ(23)を受けることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1つに記載の自動車の機械的部品を自動車の縦方向のサイドメンバへ取り付けるための構造。

【公表番号】特表2007−516902(P2007−516902A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546280(P2006−546280)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050732
【国際公開番号】WO2005/073057
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】