説明

自動車の縦ガイド装置

前方を走行する車両を位置測定するセンサシステム(12)と、車両(32)の速度を、追従走行モードにおいて前方を走行する車両に対する距離に従って、あるいは自由走行モードにおいて目標速度に制御する制御器と、走行するルート(40、42)に関する情報を準備するナビゲーションシステムへのインターフェイスと、準備された情報を用いて目標速度を制限する制限装置と、を有する自動車(32)の縦ガイド装置は、制限装置が、走行ルートの多義性が認識された場合に、各可能なルート(40、42)について目標速度のための限界値を計算し、これらの限界値の最大のものを目標速度を制限するために選択するように、形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方を走行する車両の位置を測定するセンサと、車両の速度を、追従走行モードにおいて前方を走行する車両に対する距離に従って制御するか、又は、自由走行モードにおいて目標速度に制御する制御器と、走行するルートに関する情報を準備するナビゲーションシステムへのインターフェイスと、準備された情報を用いて目標速度を制限する制限装置とを有する自動車の縦ガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車を縦ガイドするこの種の装置は、ACCシステム(Adaptive Cruise Control)とも称され、センサシステムとして典型的にレーダーセンサを有しており、そのレーダーセンサによって前方を走行する車両の距離と相対速度を測定することができる。このようにして、すぐ前方を走行する車両、いわゆる「目標対象」を適切な間隔で、あるいはもっと正確には、適切に選択されたタイムラグで追従することが可能となる。目標対象が存在しない場合の「自由走行モード」においては、目標速度への制御が行われ、その目標速度は、現在使用されているシステムにおいては、運転者によって選択された「意図速度」によって与えられる。
【0003】
しかし、所定の条件下、例えば、狭いカーブを通過する場合などでは、意図速度が実際の状況に適合しておらず、カーブを速すぎる速度で通過してしまうという事態が生じ得る。その場合に運転者は、自ら縦ガイドに介入し、かつ、ACCシステムを一時的に非作動にすることを強いられる。
【0004】
下記特許文献1及び特許文献2には、縦ガイド装置が記載されている。これらの縦ガイド装置は、車両内に存在するナビゲーションシステムに同様に接続されており、このナビゲーションシステムにより準備されたルート情報、特にデジタル地図から読み出し可能な、すぐ前方にある走行路部分の曲率に関する情報を、速度制御の際に使用することができる。
【0005】
しかし、この際、分岐した道路網内の交差点又は分かれ道においては、自己の車両がどのルートをとるかは、必ずしも前もってわかるとは限らない、という問題がある。従って、ナビゲーションシステムの目標ガイド機能がアクティブであり、かつ、自己の車両が目標ガイドシステムにより計算されたルートを辿ることを前提にできる場合でのみ、ナビゲーションシステムにより準備されたルート情報は、縦ガイドにおいて使用されうる。しかし、自動車によるほとんどの走行は、既知の地域上で行われるので、目標ガイドは、それ自体不要であるにも関わらず、縦ガイドという目的のためにわざわざ能動化されなければならないが、それは比較的複雑な目標入力と結びついている。さらに、目標ガイドがアクティブである場合でも、運転者が計算されたルートから逸れることは比較的頻繁に生じ得る。何故ならば、ナビゲーションシステムによって実施される、目標への最速のルートを発見する計算は、アウトバーン(高速道路)、幹線道路、又は地区内道路上で可能な速度に関する所定の仮定に基づいており、かつ、この仮定は、しばしば運転者の経験と矛盾するからである。
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第19821803号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19931161号明細書
【発明の開示】
【0007】
請求項1に記載された特徴を有する発明は、ナビゲーションシステムの目標ガイドがアクティブでない場合でも、縦ガイドシステムにおける、適合された速度を達成する機能を利用することを可能にする。
【0008】
これは、本発明によれば、制限装置が、走行ルートの多義性が認識された場合に、可能なルートそれぞれについて目標速度のための限界値を計算し、これらの限界値の最大のものを目標速度を制限するために選択するように形成されていることによって、達成される。
【0009】
このようにして、制限装置は、予測される走行ルートが明らかでない場合でも、常に定められた状態にある。従って運転者によって選択されると予測されるルートに関する情報が存在しない場合でも、制限装置はアクティブであることができる。制限装置の機能方法は、交差点又は分かれ道に接近した場合に、運転者が種々の考えられるルートのうちで最大の速度を許すルートを選択する、という仮定に基づいている。
【0010】
この仮定は、常に当たる必要はないが、走行ルートがわかっていない場合でも制限装置をアクティブにすることを可能にする。また、この仮定は、いずれにしてもルートが一義的である区間部分においては、自動的な速度調整を可能にするための前提を形成する。この際、複数の可能なルートのうち、より小さい速度での走行しか許さないルートを運転者が選択する場合には、常に、アクティブに縦ガイドへ介入しなければならないことが、運転者によって意識的に考慮される。しかし、もともと散発的にしか発生しない、この種の状況において、運転者は、適合された速度を制限装置が正しく予想できないことを考慮する。従って、運転者は、自らが縦ガイドにアクティブに介入しなければならないことについて予め準備することができる。よって、それと結びついて快適性が損なわれることは、容易に受け容れられる。他のすべての状況において、制限装置の機能が提供される利点は、圧倒的である。
【0011】
本発明の好ましい形態と展開が、従属請求項から明らかにされる。
【0012】
制限装置の機能の枠内において、走行ルートが一義的であるか、多義的であるかが決定されなければならない。この決定のために、種々の補助判断基準、特に走行方向表示装置の状態を利用することができる。それによって、運転者が縦ガイドへ介入しなければならない状況の頻度が、著しく減少される。望ましい副次効果は、このようにして運転者が、走行方向表示装置(ウィンカー)を早めにセットすることによってその意図を明らかにするように促されることにある。
【0013】
場合によっては、多義性を除去するために、運転者の操舵行動、例えばアウトバーン出口の前の減速ゾーンに向けて進行方向を変更することなども考慮することができる。
【0014】
ナビゲーションシステム内で目標ガイド機能(走行ルート案内機能)がアクティブである場合に、運転者が計算されたルートに従うと仮定して、ルートを一義的であると仮定することができる。しかし、修正された実施形態においては、目標ガイド機能により計算されたルートを、全般的に考慮しないことも可能である。この場合、運転者が計算されたルートから逸れ、例えばナビゲーションシステムから出力された分岐推奨を無視する場合に、車両の不必要な遅延を回避することができる。さらに、この変形例は、制限装置が常に同一の機能方法を有するので、運転者は一貫したシステム挙動に容易に慣れることができるという利点を有している。
【0015】
ACCシステムは、通常、レジュームキーを有しており、それを用いて運転者はACC機能を一時的に非能動化した後に再び能動化することができる。
【0016】
その場合、通常、意図速度として、システムが非能動化される前に最後に意図速度として調節されていた速度が引き継がれる。本発明に基づくシステムにおいて、ルートが多義であり、運転者が、車両の減速をもたらすために、例えば、キー操作又はブレーキペダルの操作によって縦ガイドにアクティブに介入する場合、この介入は、運転者が目標速度のためのより小さい限界値が有効なルートを走行することを決定したことを示唆する。この場合においては、レジュームキーの機能を修正して、最大の限界値ではなく、より小さい限界値が制御の基礎にされると効果的であり得る。その場合に、運転者は、ACC機能を非作動にした直後に、再びレジュームキーを操作することができ、システムは、速度を運転者によって選択されたルートに適合した速度に制御する。
【0017】
制限装置は、運転者の指令によって能動化されることができ、かつ非能動化されることができる。しかし、好ましい実施形態においては、制限装置は、自由走行モードにおいては自動的にアクティブにされ、それに対して追従走行モードにおいては自動的にインアクティブにされる。この機能方法は、自己の車両が、その先にある区間部分を、目標対象がこの区間部分を通過したのと同じ速度で通過できる、という考えに基づいている。ナビゲーションシステムにより準備されたルート情報を用いては、走行路曲率は、制限された精度でしか定められない。よって、制限装置は、目標速度の限界値を計算する場合に、所定の安全割引を考慮するようにプログラミングされる。これに対して追従走行モードにおいては、この安全割引は不要であり、それによって、目標対象に対する距離が一定に維持され、かつ運転者の直感に逆らう、燃料消費を増大させる不必要な減速及び加速プロセスが回避されるという利点が得られる。例えば、前方を走行する車両が曲がったり、隣接車線へ移動するなど、目標対象が失われた場合に、システムは自由走行モードへ移行し、制限装置は自動的にアクティブになるので、適合された速度による走行が続行される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態を図面に示し、以下で詳細に説明する。
【0019】
図1には、ACCシステム10が示されており、その原理的な構造と機能方法は既知であることを前提にすることができるので、ここでは簡単に説明する。
【0020】
車両内に組み込まれ、角度分解能を有するレーダーセンサ12が、位置を測定した対象の位置測定データ(間隔、相対速度及びアジマス角)を、ACCシステム10に供給する。測定データは、周期的に更新される。実際のデータのそれぞれは、トラッキングモジュール14内で、先行する測定サイクルにおける測定データと比較される。よって、個々の対象の移動を追跡することができる。
【0021】
コース予測モジュール16は、自己の車両が走行すると見込まれるコースを評価するために用いられる。そのために、最も簡単な場合においては、ヨーレートセンサ18を用いて測定された自己の車両のヨー速度のみが評価され、自己の車両の走行速度と組み合わせて、自己の車両がまさに通過する走行路部分内の走行路曲率の決定が可能となる。
【0022】
図示の例において、コース予測の際に、付加的に、トラッキングモジュール14のデータが評価される。レーダーセンサ12は、前方を走行する車両に反応するだけでなく、停止している対象及び対向交通にも反応する。しかし、前方を走行する車両は、その相対速度と自己の車両の走行速度との間の関係を用いて識別される。前方を走行する1台又は複数台の車両の位置が測定される場合には、差し迫ったカーブは、自己の車両がまだカーブ内へ進入しておらず、従ってヨーレートがまだ実際にゼロに等しくても、前方を走行する車両が集団として横運動を実施することにより、予め認識される。
【0023】
予測されたカーブを用いて、その後、走行するべきルートが定められ、間隔制御のための目標対象として考えられる車両は、その走行するべきルートの内部に存在しなければならない。最も簡単な場合において、この走行するべきルートは、予測されたコースに従い所定の標準幅を有するストライプである。しかし、トラッキングモジュール14のデータを用いて、自己の車両が走行する走行路が幾つの車線を有しているか、そして、自己の車両がこれらの車線のうちのどの車線上にいるか、ということも認識される。例えば、この目的のために、比較的長い期間にわたって、自己の車両に対して、ほぼ通常の車線幅に相当する横変位を有する、前方を走行する車両が存在するか、を調べることができる。同様に、自己の車両がどのくらいの回数追い越されたか、又は、自己の車両が右隣りの車線上の車両をどのくらいの回数追い越したか、を評価することができる。
【0024】
その後、位置測定され、かつ、トラッキングモジュール14内で追従される対象が、蓋然性モジュール20内で蓋然化される。すなわち、各対象について、それが走行チューブの内部にある確率が示される。この場合、位置測定データ、特に横位置データが所定のエラー許容誤差を有しており、対象間隔が大きくなるにつれてそれが大きくなることが考慮される。対象が走行チューブの内部にある確率が所定の閾値以上である場合に、対象は「蓋然化」される。つまり、対象は、自己の走行車線上にある重要な対象として処理される。その後、このように蓋然化された対象の中で、最も小さい間隔を有する対象が、間隔制御のための目標対象として選択される。
【0025】
制御器22内では、目標対象の位置測定データを用いて、車両の駆動システムに介入し、必要な場合にはブレーキシステムへも介入することによって、本来の間隔制御が行われる。その結果、運転者によって所定の限界内で選択されたタイムラグにより、目標対象が追従される。目標対象が存在しない場合、システムは、自由走行モードとなり、通常、運転者により選択された意図速度への制御が行われる。
【0026】
ここで説明するACCシステム10は、車両のナビゲーションシステム24へのインターフェイスを有しており、このナビゲーションシステムは、デジタル形式で記憶された道路地図を有し、GPSシステム(Global Positioning System)を用いて自己の車両の実際の位置を求める。よって、ACCシステムには、道路タイプ(アウトバーン又は幹線道路)に関する情報及び間近な出口、交差、流入、カーブなどに関する情報も提供される。
【0027】
特に、デジタル地図に記憶されているデータから、すぐ前にある走行路部分の曲率が定められる。この情報は、予測モジュール16内でカーブ予測を改良するために利用することができる。特に、この情報は、自由走行モードにおいて、車両の縦ガイドを改良するために利用することもできる。すなわち、車両タイプに依存する、まだ快適と感じられる最大の横加速度の設定の下で、走行路曲率を用いて、該当する走行路部分を通過すべき速度のための上限値が計算される。この限界値が意図速度よりも小さい場合には、意図速度にではなく、限界値に制御されるように、速度制御を修正すると効果的である。
【0028】
さらに、ナビゲーションシステムから供給されたデータを用いて、前にある走行路部分が、閉成された集落の外部の幹線道路であるか、又は、地域内の道路であるか、ということも決定される。よって、この場合、限界値として、該当する道路タイプに有効な法律的最高速度を選択することができる。「インテリジェント」ナビゲーションシステムが、例えば、現在ある速度制限に関する情報を準備する場合にも同様なことが言える。
【0029】
しかし、交差点、分岐又は分かれ道の前に、複数の可能な走行ルートが提供され、それが同様にナビゲーションシステムのデータを用いて認識できる場合には、運転者がどのルートに従う公算が大きいかについて、所定の仮定を行わなければならず、それによってシステムは各状況において定められた挙動を示す。この理由から、図1に示される装置は、ナビゲーションシステム24のデータを用いて走行ルートのこの種の多義性を認識するモジュール26を有している。この種の多義性を除去し、あるいは少なくとも制限するために、モジュール26は付加的に、自己の車両の走行方向表示器(ウィンカー)の実際の状態を表す状態センサ28から信号を得る。例えば、右へ曲がる可能性があり、右のウィンカーがセットされている場合には、運転者は右へ曲がろうとしていると推定され、従ってその場合に速度限界値の決定のために右へ曲がるルートが有力となる。しかし、右のウィンカーも左のウィンカーもセットされていない場合には、状況は多義的のままである。何故ならば、運転者は実際にまっすぐに走行しようとしているのか、あるいはウィンカーをセットするのを忘れているか、明らかではないからである。この場合、多義性は、場合によっては、運転者の操舵挙動が評価されることによって、除去可能である。この目的のために、図示の例においてモジュール26は、ヨーレートセンサ18の信号も得る。
【0030】
ナビゲーションシステム24内で目標ガイドシステムが能動化されている場合に、選択的に、多義性を除去するために、運転者が目標ガイドシステムによって計算されたルートに従うと仮定することもできる。しかし、ここで考察される例においては、目標ガイドシステムによって準備されるルート情報は考慮されない。
【0031】
追従走行状況において、目標対象が選択されておりかつ追従される場合には、間隔制御の目的のために、自己の車両が目標対象のコースに追従するというのが有意義な仮定である。この仮定は、予測モジュール16内のコース予測の基礎となる。
【0032】
自由走行モードにおいて、上述した速度限界値の計算は、制限装置30内で行われ、その制限装置は、多義性を除去した後においても残っている全ての可能なルートの走行路データを、モジュール26から得る。制限装置30は、さらに、目標対象が選択されているか否かの情報を、蓋然化モジュール20から得る。目標対象が選択されており、従って追従走行モードにある場合には、制限装置30はインアクティブに留まり、制御器22内ではナビゲーションシステム24が準備したデータとは関係なく、目標対象への間隔制御が行われる。
【0033】
自由走行モードにおいては、制限装置30は、可能なルートの各々について、該当するルートに有効なそれぞれの走行路曲率を用いて、別々の限界値を計算する。この場合、制限装置30は、このように計算された限界値の最大の限界値を選択して、それを運転者によって選択された意図速度と比較する。この場合、互いに比較される2つの値の小さい方が、目標速度として制御器22へ渡される。
【0034】
図2には、上述した装置の作用方法が、例を用いて示されている。
【0035】
図1に示す装置を搭載した車両32が、例えばアウトバーンのある方向の道路の、二車線の走行路34の右の車線上を走行し、減速ゾーン36を有する出口へ近づいており、その減速ゾーンは比較的シャープに右へ曲がる分岐車線へ移行しており、走行路34は出口の後方で軽い左カーブを描いている。従って、車両32には、走行路曲率が異なる2つの可能なルート40と42が提供される。これら2つの曲率の各々は、車両32がそのルートを走行する場合に上回ってはならず、この場合に車両の横加速度が快適性及び安全性の観点に基づいて許容される最大値を下回った値に留まるように、速度限界値を定める。
【0036】
モジュール26(図1)は、状況の多義性を認識し、2つのルート40と42に属する曲率を制限装置30へ伝える。そして、制限装置30は、速度のための付属の限界値を計算して、その後、これら2つの限界値中のより大きい方として、ルート40に属する限界値を選択する。この場合、まず、車両32の走行方向表示器がセットされていないと仮定される。さらに、ここでは自由走行状況が存在するので、運転者によって選択された意図速度に相当する、車両32の実際速度が、選択された限界値より大きいと仮定される。従って、この限界値が目標速度を形成し、それが制御器22へ伝達される。制御器22は、それに基づいて(負の)自由走行目標加速度を計算し、それによって、車両が軽い左カーブへ進入した場合に、車両32の速度が限界値に減少されることが、保証される。
【0037】
この場合、実際には、走行路曲率を用いた限界値の計算を、車両32の実際の位置より予め定められ、好ましくは速度に依存する距離だけ前方にある所定の点について行うことができる。この場合、この距離は、車両32による必要な減速が快適な範囲内で行われ得るように選択される。洗練された実施形態においては、制限装置が、ルート40に沿った複数の点のための複数の限界値を計算して、それらの限界値を該当する点の距離と共に制御器22へ引き渡すことが可能である。よって、制御器22は、このデータを用いて最適な減速ストラテジーを計算することができる。
【0038】
図2に示す状況で、車両32において右のウィンカーがセットされている場合には、モジュール26は、走行ルートが一義的であることを認識し、制限装置30がルート42のための該当する1つ又は複数の限界値を制御器22へ引き渡し、その結果車両32は分岐車線38へ進入する前に、より強く減速される。
【0039】
運転者が走行方向表示器をセットしておらず、それにもかかわらず曲がろうとする場合には、場合によっては少し遅い時点で操舵運動を用いて、車両が図2に破線で示すように減速ゾーン36へと車線を変えたことを、認識することができる。この場合、場合によってはナビゲーションシステムにより提供可能な、減速ゾーン36の存在と始まりに関する情報が利用され、かつ、場合によってはACCシステムにより提供可能な、車両32がどの車線上にいるかに関する情報も利用される。それによって、走行路34の左車線から右車線への車両の車線変更が、曲がる意図と誤って解釈されることが防止される。
【0040】
車両32の運転者がルート42に従って曲がろうとしているが、その曲がる意図が認識されない場合、又は、認識が遅すぎた場合には、車両を十分に減速させるために、運転者自身が縦ガイドへ介入しなければならない。それと結びついて快適性が損なわれることは、逆の場合に生じる、制限装置42が多義的な状況において小さい方の限界値(ルート42に相当する)を選択し、しかし実際には運転者はより高い速度を許すルート40に従おうとした場合に快適性が損なわれることよりも、ずっと小さい。この場合、ルート42に適合された比較的強い車両の減速は、不必要であり、かつ、蓋然性がなく、運転者や後続交通にとって煩わしく、かつ、戸惑いとして感じられる。本発明に基づいて、速度のために、常に最大の限界値が選択されることによって、この欠点が回避される。
【0041】
図3には、結果として上述した機能方法と等価であるが、やや修正された装置の機能方法がフローチャートで示されている。
【0042】
ステップS1において、ACCシステム10が追従走行モードにある(YES)か、又は自由走行モードにある(NO)かが決定される。システムが追従走行モードにある場合には、ステップS2において制御器22が、トラッキングモジュール14から供給された、目標加速度としての目標対象に関するデータを用いて、目標対象が予め定められたタイムラグで追従されることを保証する追従走行目標加速度を計算する。
【0043】
それに対して、自由走行モードにおいては、ステップS3で制限装置30によって、可能なルートの各々について意図目標加速度と自由走行目標加速度を計算する。意図目標加速度は、運転者によって選択された意図速度を維持し、又は再び達成するために必要な加速度である。自由走行目標加速度は、該当するルートの走行路曲率及び/又はその他の走行路特徴に依存する。それらを計算する場合に、制限装置30は、モジュール26によって可能であると考えられたルートについて、ナビゲーションシステム24により準備された走行路データを利用する。その後ステップS4において、制限装置30が目標加速度として、意図目標加速度と自由走行目標加速度の最大値とから最小値を計算する。
【0044】
その後ステップS5において、制御器22によって、ステップS2で計算された目標加速度か、あるいはステップS4で計算された目標加速度が、車両の駆動システム及び/又はブレーキシステムへ出力される。
【0045】
従ってこの実施形態では、上述した実施形態の場合とは異なり、目標速度ではなく、目標加速度に調節される。しかしここでもステップS3において、自由走行目標加速度の計算は、まず、各ルートについて走行路曲率を用いて速度のための限界値が定められ、その後目標加速度が、該当する走行路部分に達した場合に実際の速度が限界値に相当するように計算されるようにして、行われる。従って限界値は、自由走行目標加速度内に暗黙のうちに含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】縦ガイド装置のブロック図である。
【図2】装置の作業方法を明らかにする、交通状況の略図である。
【図3】修正された実施形態に基づく装置の作業方法を説明するフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方を走行する車両の位置を測定するセンサシステム(12)と、
車両(32)速度を、追従走行モードにおいて前方を走行する車両に対する距離に従って制御するか、又は、自由走行モードにおいて目標速度に制御する制御器(22)と、
走行ルート(40、42)に関する情報を準備するナビゲーションシステム(24)へのインターフェイスと、
準備された前記情報を用いて前記目標速度を制限する制限装置(30)と、
を有する自動車の縦ガイド装置において、
前記制限装置(30)は、前記走行ルートの多義性が認識された場合、可能なルート(40、42)それぞれについて前記目標速度に対する限界値を計算し、計算した複数の限界値のうち最大の限界値を、前記目標速度を制限するために選択するように形成されていることを特徴とする、自動車の縦ガイド装置。
【請求項2】
前記制限装置(30)は、運転者により選択された意図速度及び選択した前記限界値のうちの最小値と等しくなるように、前記目標速度を定めるように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の自動車の縦ガイド装置。
【請求項3】
前記目標速度に対する限界値は、前記ナビゲーションシステム(24)により準備された、該当するルート(40、42)上の走行路曲率に関する情報に依存することを特徴とする、請求項1又は2に記載の自動車の縦ガイド装置。
【請求項4】
選択可能な相異なる複数のルートを前記ナビゲーションシステム(24)により準備された道路網に関する情報を用いて認識し、当該複数のルートの何れが前記車両(32)の可能なルート(40、42)として考えられるかを付加的な情報を用いて決定するように形成されているモジュール(26)を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の自動車の縦ガイド装置。
【請求項5】
前記付加的な情報は、前記車両の走行方向表示器の状態を表す、状態センサ(28)の信号であることを特徴とする、請求項4に記載の自動車の縦ガイド装置。
【請求項6】
前記付加的な情報の1つは、計算された前記走行ルートに関する前記ナビゲーションシステム(24)の目標ガイドシステムの情報であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の自動車の縦ガイド装置。
【請求項7】
前記制限装置(30)は、前記自由走行モードにおいてのみアクティブであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の自動車の縦ガイド装置。
【請求項8】
前記制限装置(30)は、前記追従走行モードから前記自由走行モードへと切り替った場合に、自動的にアクティブになることができることを特徴とする、請求項7に記載の自動車の縦ガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−508741(P2009−508741A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531639(P2008−531639)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065234
【国際公開番号】WO2007/033867
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(501125231)ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (329)
【Fターム(参考)】