自動車の開閉体用ロック装置
【課題】フラップに形成するスリットの開口面積を最小限に抑えて見栄えを向上させる。
【解決手段】トランクリッド9の下端にはロックカバー13が設けられ、ロックカバー13の下端部には、車幅方向に間隔をあけて下方に突出して延びる一対の先端部13b,13bが形成されている。一対の先端部13b,13bのうち、ストライカ23に車幅方向に隣接するポップアップレバー50側に対応する一方の先端部13bの突出長さが他方よりも長く設定されている。
【解決手段】トランクリッド9の下端にはロックカバー13が設けられ、ロックカバー13の下端部には、車幅方向に間隔をあけて下方に突出して延びる一対の先端部13b,13bが形成されている。一対の先端部13b,13bのうち、ストライカ23に車幅方向に隣接するポップアップレバー50側に対応する一方の先端部13bの突出長さが他方よりも長く設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の開閉体用ロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1に示すように、車両のトランクルームのトランク開口を開閉するトランクリッドに設けられたロック装置のラッチと、車体側のリヤエンドパネルに立設されたストライカとを係合させることで、トランクリッドがトランクルームを閉じた状態に保持するようにした車両の後部構造は知られている。
【0003】
この後部構造では、リヤエンドパネルをカバーするリヤエンドトリムにおいて、ストライカに対応する位置にストライカ開口が設けられ、このストライカ開口にはカバー部材が取り付けられている。このカバー部材は、ストライカに対して両側に互いに離反するように開閉する一対のフラップと、これらのフラップに一体に形成され、下端がリヤエンドトリムに枢着される一対の支持アームと、これらの支持アームに取り付けられ、開口部が閉じられるようにフラップを付勢する捩りコイルバネとを有している。そして、トランクリッドの開放時には、ストライカが外側から見えないようにフラップによりストライカ開口を閉じる一方、トランクリッドを閉じるとそのロック装置(ロックカバー)で押されてフラップが開き、ラッチとストライカとが係合するようになっている。
【特許文献1】特開2004−44258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ストライカとトランクリッドのロック装置とによって構成されるロック機構では、ロック解除時にトランクリッドを開きやすくするために、トランクリッドを開方向に付勢するポップアップレバーを追加した構造のものが知られている。以下、図11を用いて説明する。
【0005】
図11は、従来のロック装置の構造を示す側面断面図である。図11に示すように、車体後部において車幅方向に延びるリヤエンドパネル21には、車体前後方向に沿って略一直線状となるように門型のストライカ23が突設されている。リヤエンドパネル21には、リヤエンドパネル21との間に空間部Sを有するように、ストライカ23に対応する位置に略矩形状の開口部33が形成されたカバープレート19が取り付けられている。
【0006】
また、図12にも示すように、車体後部のリヤバンパー3上方には、トランクルーム5の上側及び後側に開口されたトランク開口7を開閉するトランクリッド9が設けられている。このトランクリッド9のリッド上面部10の前端は、ヒンジ部材12により車体に回動可能に枢着され、リッド後面部11における車幅方向の略中央部の下端縁には、ロックカバー113が設けられている。
【0007】
このロックカバー113は、車幅方向に間隔をあけて下方に略同じ長さだけ突出して延びる一対の先端部113b,113bを有し、一対の先端部113b,113b間がストライカ23が侵入する切込み口113aとして構成され、この切込み口113aに侵入したストライカ23と係合するラッチ(図示せず)が内蔵されている。
【0008】
そして、前記ラッチの解錠時にロックカバー113を上方へ押圧してトランクリッド9を開方向に付勢するポップアップレバー50が、ストライカ23の車幅方向(図11においては、車幅方向右側)に隣接して配置されている。
【0009】
前記カバープレート19には、開口部33を開閉する略矩形状のフラップ143が車体後部側の車幅方向に軸支されている。図13に示すように、トランクリッド9を閉めると、フラップ143上面がロックカバー113の先端部113b,113bと当接してフラップ143が車体後部側の軸部45を中心に空間部S内で回動し、開口部33が開かれるようになっている。
【0010】
そして、前記フラップ143には、トランクリッド9の開閉動作に連動したフラップ143の回動時に、ストライカ23及びポップアップレバー50が侵入するスリット147が形成されている(図14参照)。
【0011】
ここで、前記トランクリッド9の閉動作時に、ロックカバー113の先端部113b,113bがポップアップレバー50の当接部53に当接してからストライカ23とラッチとが係合してロックが完了するまでの間にポップアップレバー50が下方に移動する移動量は、ロックカバー113を上方へ押圧するために必要な押圧力に応じて予め設定されている。すなわち、ポップアップレバー50は、図示しない付勢スプリングにより上方に位置するように付勢されており、下方への移動量が大きいほどロックカバー113を上方へ押圧する押圧力が高まるような構成となっている。図11に示す例では、所定の移動量を確保するために、ポップアップレバー50が比較的上方位置に配置されている。
【0012】
このため、フラップ143に形成されたスリット147は、ストライカ23及びポップアップレバー50とフラップ143との衝突を避けるために、これらストライカ23及びポップアップレバー50が侵入するように車幅方向に大きく切り欠かれており、スリット147の開口面積が大きくなって見栄えが悪くなるという問題があった。
【0013】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フラップに形成するスリットの開口面積を最小限に抑えて見栄えを向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成するため、本発明は、ロックカバーの一対の先端部のうちポップアップレバー側に対応する一方の先端部の突出長さを他方よりも長く設定して、ポップアップレバーを下方に配置できるようにした。
【0015】
具体的に、本発明は、車体前後方向に沿って略一直線状となるように、車幅方向に延びるリヤエンドパネルに突設された門型のストライカと、車体後部に開口された車体開口を開閉する開閉体と、前記開閉体の下端に設けられ、車幅方向に間隔をあけて下方に突出して延びる一対の先端部を有し、該一対の先端部間が前記ストライカが侵入する切込み口として構成され、該切込み口に侵入した該ストライカと係合するロック部材が内蔵されたロックカバーとを備えた自動車の開閉体用ロック装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0016】
すなわち、請求項1の発明は、前記ストライカの車幅方向に隣接して配置され、前記ロック部材の解錠時に前記ロックカバーを上方へ押圧して前記開閉体を開方向に付勢するポップアップレバーと、
前記リヤエンドパネルとの間に空間部を有するように該リヤエンドパネルに取り付けられ、前記ストライカに対応する位置に略矩形状の開口部が形成されたカバープレートと、
前記カバープレートに車幅方向に軸支され、前記開閉体の開閉時に前記ロックカバーと当接して前記空間部内で回動することで前記カバープレートの開口部を開閉する略矩形状のフラップとを備え、
前記フラップには、前記開閉体の開閉動作に連動した該フラップの回動時に前記ストライカが侵入するスリットが形成され、
前記ロックカバーの前記一対の先端部のうち、前記ポップアップレバー側に対応する一方の先端部の突出長さが他方よりも長く設定されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記開閉体は、車体後部に開口されたトランク開口の車体前方近傍に前端が枢着されるとともに、後端に前記ロックカバーが設けられて該トランク開口を開閉するトランクリッドであることを特徴とするものである。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記開閉体は、車体後部に開口されたテールゲート部の上縁近傍に上端が枢着されるとともに、下端に前記ロックカバーが設けられて該テールゲート部を開閉するバックドアであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、ロックカバーの切込み口を構成する一対の先端部のうち、ポップアップレバー側に対応する一方の先端部の突出長さを他方よりも長く設定したから、開閉体を上方へ押圧する押圧力を得るために必要なポップアップレバーの下方への移動量を確保しつつ、ポップアップレバーを従来よりも下方に配置することができる。これにより、フラップに形成するスリットを、従来のようなストライカ及びポップアップレバーが侵入する形状とせずにストライカのみが侵入する形状とすることができる。このため、スリットの開口面積を小さくして見栄えを向上させることができる。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、車体後部に開口されたトランク開口の車体前方近傍に前端が枢着されるとともに、後端に前記ロックカバーが設けられて該トランク開口を開閉するトランクリッドを備えた自動車に対して本発明を適用することができる。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、車体後部に開口されたテールゲート部の上縁近傍に上端が枢着されるとともに、下端にロックカバーが設けられて該テールゲート部を開閉するバックドアを備えた自動車に対して本発明を適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的な例示に過ぎず、本発明を制限することを意図するものではない。
【0023】
<実施形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る車両の後部構造の全体構成を示す斜視図である。図1において、3はリヤバンパー、5は車体後部に設けられたトランクルームである。このトランクルーム5は車両の上側及び後側に開口する車両の後部開口としてのトランク開口7を有し、このトランク開口7が開閉体としてのトランクリッド9により開閉される。
【0024】
前記トランクリッド9はリッド上面部10の前端がヒンジ部材12により車体に回動可能に枢着される一方、トランク開口7のうちの後側を開閉するリッド後面部11を有している。このリッド後面部11における車幅方向の略中央部の下端縁には、前記トランクリッド9を閉じたときに、このトランクリッド9を車体側にロック保持するロックカバー13が設けられている。
【0025】
一方、前記リッド後面部11の下端縁が当接するトランク開口7の後側下縁には、車体側のリヤエンドパネル21(図3参照)をカバーする板状のリヤエンドトリム15が設けられている。
【0026】
図2に示すように、前記リヤエンドトリム15は、リヤエンドパネル21の後縁部を車幅方向全域に亘って、車体の上側及び前側(トランクルーム5側)を空間部Sを有して被う板状で樹脂製のカバー部材である。このリヤエンドトリム15の車幅方向に略中央部には、上方から見て略矩形状の嵌合開口部17が設けられ、この嵌合開口部17に被着体としての樹脂製の略矩形状のカバープレート19がリヤエンドトリム15の表面側(上側)から嵌め込まれて固定されている。
【0027】
前記カバープレート19は、リヤエンドトリム15の嵌合開口部17と略同じ形状に形成されている。すなわち、カバープレート19は上側を構成する上面部19aと、この上面部19aに湾曲するように連続して車内側を構成する前面部19bとを有し、上面部19aの中央部に略矩形状の開口部33が設けられている。カバープレート19がリヤエンドトリム15に取り付けられた状態で、この開口部33の車幅方向の略中央部に前記ストライカ23(図3参照)が位置している。
【0028】
図3は、図2のIII−III線断面図である。図3に示すように、前記ストライカ23は、車両前後方向に沿うように折り曲げられた門型の棒状部材であり、上方から見て略一直線状をなしている。このストライカ23の前後両端(下端)は台座25に一体的に形成されている。この台座25には取付用孔25aが貫通形成されており、この取付用孔にボルト27を挿通して、リヤエンドパネル21の裏面に予め溶着されたウェルドナット29に螺合させることにより、台座25、すなわちストライカ23がリヤエンドパネル21に取り付けられる。そして、リヤエンドパネル21は上方が車外側(後側)に傾斜するように形成されているため、該リヤエンドパネル21に取り付けられたストライカ23もその前後方向の上端(頂部)が、リヤエンドパネル21と略平行になっている。詳しくは後述するが、このストライカ23と、これに係合するトランクリッド9に取り付けられたロックカバー13内のロック部材とによってロック機構が構成されている。
【0029】
(フラップ)
前記カバープレート19の開口部33の後側縁部裏面には、開口部33を開閉する略矩形板状のフラップ43が基端部(後端部)の軸部45にて空間部S内を回動可能に枢着されている。このフラップ43の車幅方向の略中央部の先端部(前端部)には、先端部から車外側に向かって切り欠き状に凹陥したスリット47(図4参照)が開口され、このスリット47の下方に前記ストライカ23が位置して、ストライカ23がスリット47に侵入可能となっている。
【0030】
そして、フラップ43の基端部(後端部)をなす一辺に沿って車幅方向両側に突出するように軸部45が直線状に一体に形成されている。
【0031】
そして、前記フラップ43の軸部45には、フラップ43がカバープレート19の開口部33を閉じるように回動付勢する捩りコイルバネ65が取り付けられている。具体的に、この捩りコイルバネ65のコイル状に巻かれた環状部はフラップ43の軸部45に遊嵌合され、環状部から延びる一対の端部65a,65bのうち一方の端部65aがカバープレート19の上面部19aの裏面に当接し、他方の端部65bがフラップ43の裏面に当接している。
【0032】
また、前記フラップ43は、車両前後方向の長さが開口部33よりも若干長く形成される一方、車幅方向の長さも開口部33よりも若干長く形成されている。そして、フラップ43がカバープレート19の裏面側から取り付けられて、捩りコイルバネ65により車両上側に向かって付勢され、フラップ43の車幅方向両端部及び前端部がカバープレート19の裏面に当接して開口部33を閉じるようになっている。
【0033】
(ポップアップレバー)
図5に示すように、前記ストライカ23の車幅方向右側(図5では左側)に隣接する位置には、ポップアップレバー50が配設されている。このポップアップレバー50は、トランクリッド9を閉じた状態、すなわち、トランクリッド9の下端に設けられたロックカバー13内のラッチ81(ロック部材)とストライカ23とが係合している状態からロックを解錠させたときに、トランクリッド9を開きやすくするためにロックカバー13を上方へ押圧してトランクリッド9を開方向に付勢するものである。
【0034】
具体的に、ポップアップレバー50は、車幅方向に延びる板状のレバー部51と、レバー部51を上下方向に回動可能に軸支するための回動中心となる車体前後方向に延びる回動軸52と、レバー部51の一端側に設けられ、ロックカバー13と当接する当接部53と、当接部53が上方に位置する方向(図5では時計回り方向)にレバー部51を回動付勢する付勢スプリング54とを備えている。
【0035】
前記レバー部51は、車幅方向に延びる板状体で構成され、その外周部に沿って表面側へ隆起する補強用のリブ51aが設けられている。そして、レバー部51の一端側にはロックカバー13と当接する前記当接部53が設けられ、他端側には付勢スプリング54の一端を係止する係止部51cが設けられている。そして、レバー部51の長手方向(略車幅方向)の略中央位置には、側端から外方(上方)に突出した突出部51bが形成され、この突出部51bに前記回動軸52が貫通する軸孔51dが形成されている。また、前記台座25には、回動軸52の軸方向に膨出した膨出部55が形成されている。
【0036】
前記回動軸52の一端は、前記膨出部55に回動不能に固定され、その中間部を前記突出部51bの軸孔51dに挿通し、その他端はレバー部51が当該回動軸52から抜けないように、且つレバー部51が回動軸52回りに回動できるようにした抜け止め部(図示せず)が形成されている。
【0037】
前記付勢スプリング54の一端は、レバー部51の他端部に設けられた係止部51cに係止される一方、他端は台座25に設けられた係止部25aに係止されて、ポップアップレバー50の当接部53を上方に位置する方向に付勢している。
【0038】
そして、前記レバー部51の当接部53が付勢スプリング54により上方に位置する方向に付勢されたときに、膨出部55の側壁(図5では左側の側壁)の下端部がレバー部51と当接してそれ以上回動しなくなり、当接部53の上方での待機位置が規定される。
【0039】
(ロックカバー)
以下、本発明の特徴部分である、ロックカバー13の構成について、図3及び図5を用いて説明する。図3及び図5に示すように、ロックカバー13は、トランクリッド9のリッド後面部11(図1参照)の端縁部に下方に向かうように突設されている。このロックカバー13の下端部には、車幅方向に間隔をあけて下方に突出して延びる一対の先端部13b,13bが形成され、一対の先端部13b,13b間がストライカ23が侵入する切込み口13aとして構成されている。
【0040】
また、このロックカバー13内には、切込み口13aに侵入したストライカ23と係合する爪部81aを有する回動可能なラッチ81(ロック部材)が設けられている。このラッチ81は、ロックカバー13の切込み口13aの側方に前後方向に延びる回転軸83によって回転可能に支持されていて、一部が切込み口13aに表れるように、図示しない付勢手段により回動付勢されており、トランクリッド9を閉じたとき、ロックカバー13により押し下げられて開くフラップ43のスリット47を通って切込み口13aまで挿入されたストライカ23によって、切込み口13a内に表れている部分が押されてラッチ81が図5において反時計回りに回転し、先端に設けられた爪部81aがストライカ23に係合するようになっている。
【0041】
ここで、トランクリッド9の閉動作時に、ロックカバー13がポップアップレバー50に当接してからストライカ23とラッチ81とが係合してロックが完了するまでの間にポップアップレバー50が下方に移動する移動量は、ロックカバー13を上方へ押圧するために必要な押圧力に応じて予め設定されており、一対の先端部13b,13bの長さが従来のように同じ場合には、ポップアップレバー50の下方への所定の移動量を確保するために、ポップアップレバー50を比較的上方位置に配置する必要がある。この場合には、フラップ43に形成するスリット47を、ストライカ23及びポップアップレバー50がフラップ43に当たらないように車幅方向に大きく切り欠かなければならず、スリット47の開口面積が大きくなって見栄えが悪くなるため好ましくない。
【0042】
そこで、本発明では、ロックカバー13の一対の先端部13b,13bのうち、ポップアップレバー50側に対応する一方の先端部13b(図5では左側)の突出長さを他方(図5では右側)よりも長く設定している。これにより、ロックカバー13を上方へ押圧する押圧力を得るために必要なポップアップレバー50の下方への移動量を確保しつつ、ポップアップレバー50を、ロックカバー13の一対の先端部13b,13bの突出長さを両方とも同じ長さにした場合に比べて下方に配置することができる。
【0043】
このように、ポップアップレバー50を下方に配置、すなわち、フラップ43の回動時にフラップ43とポップアップレバー50とが衝突しない位置に配置するようにすれば、フラップ43に形成するスリット47を、ストライカ23のみが侵入する程度の大きさにするだけで良くなり、フラップ43のスリット47の開口面積を小さくすることができて見栄えが良くなるため好ましい。
【0044】
(使用状態)
次に、図3及び図6を用いて、トランクリッド9のロックカバー13におけるラッチ81とストライカ23とを係合させる動作手順について説明する。
【0045】
前記トランクリッド9がトランク開口7を閉じると、図3に示すように、ロックカバー13の下端がフラップ43に当接して押し下げ、このフラップ43は捩りコイルバネ65の付勢力に抗して、軸部45を回動中心にして先端部が下方に移動するように回動して開き、この回動するフラップ43のスリット47にストライカ23が挿入される。
【0046】
このとき、ロックカバー13の下端がポップアップレバー50の当接部53に当接して押し下げ、ポップアップレバー50のレバー部51は付勢スプリング54の付勢力に抗して、回動軸52を回動中心にして当接部53が下方に位置するように回動する。
【0047】
そして、トランクリッド9が閉じ位置に達すると、ストライカ23がロックカバー13の切込み口13aに挿入されてラッチ81を押す。このストライカ23に押されたラッチ81は回転軸83を中心に回転し、爪部81aがストライカ23に係合してトランクリッド9が車体側にロックされて施錠状態となる。
【0048】
一方、トランクリッド9を開くときには、図示しないロック解除機構により、ラッチ81の爪部81aとストライカ23との係合を外す。ロックが解除されると、ポップアップレバー50に係止された付勢スプリング54の付勢力により、レバー部51が回動軸52を中心に図5において時計回りに回動して、当接部53が上方に移動してトランクリッド9を上方に持ち上げる。このとき、フラップ43が捩りコイルバネ65に付勢されてカバープレート19の開口部33を閉じ、ストライカ23がスリット47からのみ見えるようになる。
【0049】
<実施形態2>
図7は、本発明の実施形態2を示し、この実施形態2に係る車両は、ワンボックスカー等の荷室と車室とがつながったタイプの車両である。この車両後部には、後側の略全体に亘って車両の後部開口としてのテールゲート部85が開口し、このテールゲート部85の上縁近傍に開閉体としてのバックドア86の上端が枢着されている。このバックドア86はテールゲート部85を開閉するものであり、その下端に前記ロックカバー13が設けられている。
【0050】
そして、前記テールゲート部85の下縁はリヤエンドトリム15で構成され、このリヤエンドトリム15のストライカ23に対応する位置に設けられた嵌合開口部17に前記カバープレート19が嵌め込まれている。すなわち、この実施形態2では、前記実施形態1のトランクリッド9がテールゲート部85を開閉するバックドア86である。その他の構成は前記実施形態1と同じである。よって、この実施形態2でも実施形態1と同様の作用効果が得られる。
【0051】
<その他の実施形態>
なお、上述の実施形態は、本発明の例示であって、本発明はこの例に限定されるものではない。例えば、以下のような構成としてもよい。
【0052】
すなわち、前記実施形態では、1枚のフラップ43を用いてカバープレート19の開口部33を開閉していたが、この形態に限定するものではなく、例えば、図8〜図10に示すように、ロックカバー13の板厚が厚い場合、すなわち、開口部33の開口面積が大きい場合には、車体前後方向に対向する一対の略矩形板状のフラップ43,44を用いて開口部33の開閉動作を行うようにしてもよい。
【0053】
図8に示すように、一対のフラップ43,44のうち、車外側に位置するフラップ43の幅(図8の左右方向の長さ)が車内側に位置するフラップ44より長く設定されているとともに、フラップ43にのみ、車幅方向の略中央部の先端部に、先端部から車外側に向かって切り欠き状に凹陥したスリット47が開口され、このスリット47の下方にストライカ23が位置して、ストライカ23がスリット47に侵入可能となっている。
【0054】
図9に示すように、一対のフラップ43,44は、それぞれ軸部45にて空間部S内を回動可能に枢着されている。そして、一対のフラップ43,44の軸部45のそれぞれには、フラップ43,44をカバープレート19の開口部33を閉じるように回動付勢する捩りコイルバネ65,65が前記実施形態1と同様に取り付けられている。
【0055】
ここで、トランクリッド9がトランク開口7を閉じると、ロックカバー13の下端が一対のフラップ43,44に当接して押し下げ、この一対のフラップ43,44は捩りコイルバネ65の付勢力に抗して、軸部45,45を回動中心にして先端部が下方に移動するように回動して開き、この回動するフラップ43のスリット47にストライカ23が挿入される。
【0056】
このとき、ロックカバー13の下端がポップアップレバー50の当接部53に当接して押し下げ、ポップアップレバー50のレバー部51は付勢スプリング54の付勢力に抗して、回動軸52を回動中心にして当接部53が下方に移動するように回動する。
【0057】
そして、図10に示すように、トランクリッド9が閉じ位置に達すると、ストライカ23がロックカバー13の切込み口13aに挿入されてラッチ81を押す。このストライカ23に押されたラッチ81は回転軸83を中心に回転し、爪部81aがストライカ23に係合してトランクリッド9が車体側にロックされて施錠状態となる。
【0058】
その他の構成は前記実施形態1と同じである。よって、この実施形態でも実施形態1と同様の作用効果が得られる。
【0059】
また、前記各実施形態において、ストライカ23は、上端が車外側に傾斜してリヤエンドパネル21に取り付けられているが、本発明は、水平に取り付けられたストライカ23に対しても適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明は、フラップに形成するスリットの開口面積を最小限に抑えて見栄えを向上させることができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態に係る車両のトランクルームを後方から見た斜視図である。
【図2】図1におけるフラップの拡大斜視図である。
【図3】トランクリッドの閉動作途中におけるロックカバーがポップアップレバーに当接した直後の状態を示す図2のIII−III線断面図である。
【図4】フラップの構成を示す平面図である。
【図5】ロックカバーとポップアップレバーの構成を示す正面図である。
【図6】トランクリッドを閉じてラッチとストライカとが係合した状態を示す側面断面図である。
【図7】実施形態2に係る車両のバックドアを後方から見た斜視図である。
【図8】その他の実施形態に係るロック装置におけるフラップの構成を示す平面図である。
【図9】トランクリッドを開いた状態を示す側面断面図である。
【図10】トランクリッドを閉じてラッチとストライカとが係合した状態を示す側面断面図である。
【図11】従来のロック装置における図3相当図である。
【図12】従来の車両のトランクルームを後方から見た斜視図である。
【図13】図12におけるトランクリッドを閉じてラッチとストライカとが係合したロック施錠状態を示す側面断面図である。
【図14】図13におけるフラップの構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0062】
5 トランクルーム
7 トランク開口
9 トランクリッド(開閉体)
13 ロックカバー
13a 切込み口
13b 先端部
19 カバープレート
21 リヤエンドパネル
23 ストライカ
33 開口部
43 フラップ
47 スリット
50 ポップアップレバー
81 ラッチ(ロック部材)
85 テールゲート部
86 バックドア(開閉体)
S 空間部
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の開閉体用ロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1に示すように、車両のトランクルームのトランク開口を開閉するトランクリッドに設けられたロック装置のラッチと、車体側のリヤエンドパネルに立設されたストライカとを係合させることで、トランクリッドがトランクルームを閉じた状態に保持するようにした車両の後部構造は知られている。
【0003】
この後部構造では、リヤエンドパネルをカバーするリヤエンドトリムにおいて、ストライカに対応する位置にストライカ開口が設けられ、このストライカ開口にはカバー部材が取り付けられている。このカバー部材は、ストライカに対して両側に互いに離反するように開閉する一対のフラップと、これらのフラップに一体に形成され、下端がリヤエンドトリムに枢着される一対の支持アームと、これらの支持アームに取り付けられ、開口部が閉じられるようにフラップを付勢する捩りコイルバネとを有している。そして、トランクリッドの開放時には、ストライカが外側から見えないようにフラップによりストライカ開口を閉じる一方、トランクリッドを閉じるとそのロック装置(ロックカバー)で押されてフラップが開き、ラッチとストライカとが係合するようになっている。
【特許文献1】特開2004−44258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ストライカとトランクリッドのロック装置とによって構成されるロック機構では、ロック解除時にトランクリッドを開きやすくするために、トランクリッドを開方向に付勢するポップアップレバーを追加した構造のものが知られている。以下、図11を用いて説明する。
【0005】
図11は、従来のロック装置の構造を示す側面断面図である。図11に示すように、車体後部において車幅方向に延びるリヤエンドパネル21には、車体前後方向に沿って略一直線状となるように門型のストライカ23が突設されている。リヤエンドパネル21には、リヤエンドパネル21との間に空間部Sを有するように、ストライカ23に対応する位置に略矩形状の開口部33が形成されたカバープレート19が取り付けられている。
【0006】
また、図12にも示すように、車体後部のリヤバンパー3上方には、トランクルーム5の上側及び後側に開口されたトランク開口7を開閉するトランクリッド9が設けられている。このトランクリッド9のリッド上面部10の前端は、ヒンジ部材12により車体に回動可能に枢着され、リッド後面部11における車幅方向の略中央部の下端縁には、ロックカバー113が設けられている。
【0007】
このロックカバー113は、車幅方向に間隔をあけて下方に略同じ長さだけ突出して延びる一対の先端部113b,113bを有し、一対の先端部113b,113b間がストライカ23が侵入する切込み口113aとして構成され、この切込み口113aに侵入したストライカ23と係合するラッチ(図示せず)が内蔵されている。
【0008】
そして、前記ラッチの解錠時にロックカバー113を上方へ押圧してトランクリッド9を開方向に付勢するポップアップレバー50が、ストライカ23の車幅方向(図11においては、車幅方向右側)に隣接して配置されている。
【0009】
前記カバープレート19には、開口部33を開閉する略矩形状のフラップ143が車体後部側の車幅方向に軸支されている。図13に示すように、トランクリッド9を閉めると、フラップ143上面がロックカバー113の先端部113b,113bと当接してフラップ143が車体後部側の軸部45を中心に空間部S内で回動し、開口部33が開かれるようになっている。
【0010】
そして、前記フラップ143には、トランクリッド9の開閉動作に連動したフラップ143の回動時に、ストライカ23及びポップアップレバー50が侵入するスリット147が形成されている(図14参照)。
【0011】
ここで、前記トランクリッド9の閉動作時に、ロックカバー113の先端部113b,113bがポップアップレバー50の当接部53に当接してからストライカ23とラッチとが係合してロックが完了するまでの間にポップアップレバー50が下方に移動する移動量は、ロックカバー113を上方へ押圧するために必要な押圧力に応じて予め設定されている。すなわち、ポップアップレバー50は、図示しない付勢スプリングにより上方に位置するように付勢されており、下方への移動量が大きいほどロックカバー113を上方へ押圧する押圧力が高まるような構成となっている。図11に示す例では、所定の移動量を確保するために、ポップアップレバー50が比較的上方位置に配置されている。
【0012】
このため、フラップ143に形成されたスリット147は、ストライカ23及びポップアップレバー50とフラップ143との衝突を避けるために、これらストライカ23及びポップアップレバー50が侵入するように車幅方向に大きく切り欠かれており、スリット147の開口面積が大きくなって見栄えが悪くなるという問題があった。
【0013】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フラップに形成するスリットの開口面積を最小限に抑えて見栄えを向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成するため、本発明は、ロックカバーの一対の先端部のうちポップアップレバー側に対応する一方の先端部の突出長さを他方よりも長く設定して、ポップアップレバーを下方に配置できるようにした。
【0015】
具体的に、本発明は、車体前後方向に沿って略一直線状となるように、車幅方向に延びるリヤエンドパネルに突設された門型のストライカと、車体後部に開口された車体開口を開閉する開閉体と、前記開閉体の下端に設けられ、車幅方向に間隔をあけて下方に突出して延びる一対の先端部を有し、該一対の先端部間が前記ストライカが侵入する切込み口として構成され、該切込み口に侵入した該ストライカと係合するロック部材が内蔵されたロックカバーとを備えた自動車の開閉体用ロック装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0016】
すなわち、請求項1の発明は、前記ストライカの車幅方向に隣接して配置され、前記ロック部材の解錠時に前記ロックカバーを上方へ押圧して前記開閉体を開方向に付勢するポップアップレバーと、
前記リヤエンドパネルとの間に空間部を有するように該リヤエンドパネルに取り付けられ、前記ストライカに対応する位置に略矩形状の開口部が形成されたカバープレートと、
前記カバープレートに車幅方向に軸支され、前記開閉体の開閉時に前記ロックカバーと当接して前記空間部内で回動することで前記カバープレートの開口部を開閉する略矩形状のフラップとを備え、
前記フラップには、前記開閉体の開閉動作に連動した該フラップの回動時に前記ストライカが侵入するスリットが形成され、
前記ロックカバーの前記一対の先端部のうち、前記ポップアップレバー側に対応する一方の先端部の突出長さが他方よりも長く設定されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記開閉体は、車体後部に開口されたトランク開口の車体前方近傍に前端が枢着されるとともに、後端に前記ロックカバーが設けられて該トランク開口を開閉するトランクリッドであることを特徴とするものである。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記開閉体は、車体後部に開口されたテールゲート部の上縁近傍に上端が枢着されるとともに、下端に前記ロックカバーが設けられて該テールゲート部を開閉するバックドアであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、ロックカバーの切込み口を構成する一対の先端部のうち、ポップアップレバー側に対応する一方の先端部の突出長さを他方よりも長く設定したから、開閉体を上方へ押圧する押圧力を得るために必要なポップアップレバーの下方への移動量を確保しつつ、ポップアップレバーを従来よりも下方に配置することができる。これにより、フラップに形成するスリットを、従来のようなストライカ及びポップアップレバーが侵入する形状とせずにストライカのみが侵入する形状とすることができる。このため、スリットの開口面積を小さくして見栄えを向上させることができる。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、車体後部に開口されたトランク開口の車体前方近傍に前端が枢着されるとともに、後端に前記ロックカバーが設けられて該トランク開口を開閉するトランクリッドを備えた自動車に対して本発明を適用することができる。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、車体後部に開口されたテールゲート部の上縁近傍に上端が枢着されるとともに、下端にロックカバーが設けられて該テールゲート部を開閉するバックドアを備えた自動車に対して本発明を適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的な例示に過ぎず、本発明を制限することを意図するものではない。
【0023】
<実施形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る車両の後部構造の全体構成を示す斜視図である。図1において、3はリヤバンパー、5は車体後部に設けられたトランクルームである。このトランクルーム5は車両の上側及び後側に開口する車両の後部開口としてのトランク開口7を有し、このトランク開口7が開閉体としてのトランクリッド9により開閉される。
【0024】
前記トランクリッド9はリッド上面部10の前端がヒンジ部材12により車体に回動可能に枢着される一方、トランク開口7のうちの後側を開閉するリッド後面部11を有している。このリッド後面部11における車幅方向の略中央部の下端縁には、前記トランクリッド9を閉じたときに、このトランクリッド9を車体側にロック保持するロックカバー13が設けられている。
【0025】
一方、前記リッド後面部11の下端縁が当接するトランク開口7の後側下縁には、車体側のリヤエンドパネル21(図3参照)をカバーする板状のリヤエンドトリム15が設けられている。
【0026】
図2に示すように、前記リヤエンドトリム15は、リヤエンドパネル21の後縁部を車幅方向全域に亘って、車体の上側及び前側(トランクルーム5側)を空間部Sを有して被う板状で樹脂製のカバー部材である。このリヤエンドトリム15の車幅方向に略中央部には、上方から見て略矩形状の嵌合開口部17が設けられ、この嵌合開口部17に被着体としての樹脂製の略矩形状のカバープレート19がリヤエンドトリム15の表面側(上側)から嵌め込まれて固定されている。
【0027】
前記カバープレート19は、リヤエンドトリム15の嵌合開口部17と略同じ形状に形成されている。すなわち、カバープレート19は上側を構成する上面部19aと、この上面部19aに湾曲するように連続して車内側を構成する前面部19bとを有し、上面部19aの中央部に略矩形状の開口部33が設けられている。カバープレート19がリヤエンドトリム15に取り付けられた状態で、この開口部33の車幅方向の略中央部に前記ストライカ23(図3参照)が位置している。
【0028】
図3は、図2のIII−III線断面図である。図3に示すように、前記ストライカ23は、車両前後方向に沿うように折り曲げられた門型の棒状部材であり、上方から見て略一直線状をなしている。このストライカ23の前後両端(下端)は台座25に一体的に形成されている。この台座25には取付用孔25aが貫通形成されており、この取付用孔にボルト27を挿通して、リヤエンドパネル21の裏面に予め溶着されたウェルドナット29に螺合させることにより、台座25、すなわちストライカ23がリヤエンドパネル21に取り付けられる。そして、リヤエンドパネル21は上方が車外側(後側)に傾斜するように形成されているため、該リヤエンドパネル21に取り付けられたストライカ23もその前後方向の上端(頂部)が、リヤエンドパネル21と略平行になっている。詳しくは後述するが、このストライカ23と、これに係合するトランクリッド9に取り付けられたロックカバー13内のロック部材とによってロック機構が構成されている。
【0029】
(フラップ)
前記カバープレート19の開口部33の後側縁部裏面には、開口部33を開閉する略矩形板状のフラップ43が基端部(後端部)の軸部45にて空間部S内を回動可能に枢着されている。このフラップ43の車幅方向の略中央部の先端部(前端部)には、先端部から車外側に向かって切り欠き状に凹陥したスリット47(図4参照)が開口され、このスリット47の下方に前記ストライカ23が位置して、ストライカ23がスリット47に侵入可能となっている。
【0030】
そして、フラップ43の基端部(後端部)をなす一辺に沿って車幅方向両側に突出するように軸部45が直線状に一体に形成されている。
【0031】
そして、前記フラップ43の軸部45には、フラップ43がカバープレート19の開口部33を閉じるように回動付勢する捩りコイルバネ65が取り付けられている。具体的に、この捩りコイルバネ65のコイル状に巻かれた環状部はフラップ43の軸部45に遊嵌合され、環状部から延びる一対の端部65a,65bのうち一方の端部65aがカバープレート19の上面部19aの裏面に当接し、他方の端部65bがフラップ43の裏面に当接している。
【0032】
また、前記フラップ43は、車両前後方向の長さが開口部33よりも若干長く形成される一方、車幅方向の長さも開口部33よりも若干長く形成されている。そして、フラップ43がカバープレート19の裏面側から取り付けられて、捩りコイルバネ65により車両上側に向かって付勢され、フラップ43の車幅方向両端部及び前端部がカバープレート19の裏面に当接して開口部33を閉じるようになっている。
【0033】
(ポップアップレバー)
図5に示すように、前記ストライカ23の車幅方向右側(図5では左側)に隣接する位置には、ポップアップレバー50が配設されている。このポップアップレバー50は、トランクリッド9を閉じた状態、すなわち、トランクリッド9の下端に設けられたロックカバー13内のラッチ81(ロック部材)とストライカ23とが係合している状態からロックを解錠させたときに、トランクリッド9を開きやすくするためにロックカバー13を上方へ押圧してトランクリッド9を開方向に付勢するものである。
【0034】
具体的に、ポップアップレバー50は、車幅方向に延びる板状のレバー部51と、レバー部51を上下方向に回動可能に軸支するための回動中心となる車体前後方向に延びる回動軸52と、レバー部51の一端側に設けられ、ロックカバー13と当接する当接部53と、当接部53が上方に位置する方向(図5では時計回り方向)にレバー部51を回動付勢する付勢スプリング54とを備えている。
【0035】
前記レバー部51は、車幅方向に延びる板状体で構成され、その外周部に沿って表面側へ隆起する補強用のリブ51aが設けられている。そして、レバー部51の一端側にはロックカバー13と当接する前記当接部53が設けられ、他端側には付勢スプリング54の一端を係止する係止部51cが設けられている。そして、レバー部51の長手方向(略車幅方向)の略中央位置には、側端から外方(上方)に突出した突出部51bが形成され、この突出部51bに前記回動軸52が貫通する軸孔51dが形成されている。また、前記台座25には、回動軸52の軸方向に膨出した膨出部55が形成されている。
【0036】
前記回動軸52の一端は、前記膨出部55に回動不能に固定され、その中間部を前記突出部51bの軸孔51dに挿通し、その他端はレバー部51が当該回動軸52から抜けないように、且つレバー部51が回動軸52回りに回動できるようにした抜け止め部(図示せず)が形成されている。
【0037】
前記付勢スプリング54の一端は、レバー部51の他端部に設けられた係止部51cに係止される一方、他端は台座25に設けられた係止部25aに係止されて、ポップアップレバー50の当接部53を上方に位置する方向に付勢している。
【0038】
そして、前記レバー部51の当接部53が付勢スプリング54により上方に位置する方向に付勢されたときに、膨出部55の側壁(図5では左側の側壁)の下端部がレバー部51と当接してそれ以上回動しなくなり、当接部53の上方での待機位置が規定される。
【0039】
(ロックカバー)
以下、本発明の特徴部分である、ロックカバー13の構成について、図3及び図5を用いて説明する。図3及び図5に示すように、ロックカバー13は、トランクリッド9のリッド後面部11(図1参照)の端縁部に下方に向かうように突設されている。このロックカバー13の下端部には、車幅方向に間隔をあけて下方に突出して延びる一対の先端部13b,13bが形成され、一対の先端部13b,13b間がストライカ23が侵入する切込み口13aとして構成されている。
【0040】
また、このロックカバー13内には、切込み口13aに侵入したストライカ23と係合する爪部81aを有する回動可能なラッチ81(ロック部材)が設けられている。このラッチ81は、ロックカバー13の切込み口13aの側方に前後方向に延びる回転軸83によって回転可能に支持されていて、一部が切込み口13aに表れるように、図示しない付勢手段により回動付勢されており、トランクリッド9を閉じたとき、ロックカバー13により押し下げられて開くフラップ43のスリット47を通って切込み口13aまで挿入されたストライカ23によって、切込み口13a内に表れている部分が押されてラッチ81が図5において反時計回りに回転し、先端に設けられた爪部81aがストライカ23に係合するようになっている。
【0041】
ここで、トランクリッド9の閉動作時に、ロックカバー13がポップアップレバー50に当接してからストライカ23とラッチ81とが係合してロックが完了するまでの間にポップアップレバー50が下方に移動する移動量は、ロックカバー13を上方へ押圧するために必要な押圧力に応じて予め設定されており、一対の先端部13b,13bの長さが従来のように同じ場合には、ポップアップレバー50の下方への所定の移動量を確保するために、ポップアップレバー50を比較的上方位置に配置する必要がある。この場合には、フラップ43に形成するスリット47を、ストライカ23及びポップアップレバー50がフラップ43に当たらないように車幅方向に大きく切り欠かなければならず、スリット47の開口面積が大きくなって見栄えが悪くなるため好ましくない。
【0042】
そこで、本発明では、ロックカバー13の一対の先端部13b,13bのうち、ポップアップレバー50側に対応する一方の先端部13b(図5では左側)の突出長さを他方(図5では右側)よりも長く設定している。これにより、ロックカバー13を上方へ押圧する押圧力を得るために必要なポップアップレバー50の下方への移動量を確保しつつ、ポップアップレバー50を、ロックカバー13の一対の先端部13b,13bの突出長さを両方とも同じ長さにした場合に比べて下方に配置することができる。
【0043】
このように、ポップアップレバー50を下方に配置、すなわち、フラップ43の回動時にフラップ43とポップアップレバー50とが衝突しない位置に配置するようにすれば、フラップ43に形成するスリット47を、ストライカ23のみが侵入する程度の大きさにするだけで良くなり、フラップ43のスリット47の開口面積を小さくすることができて見栄えが良くなるため好ましい。
【0044】
(使用状態)
次に、図3及び図6を用いて、トランクリッド9のロックカバー13におけるラッチ81とストライカ23とを係合させる動作手順について説明する。
【0045】
前記トランクリッド9がトランク開口7を閉じると、図3に示すように、ロックカバー13の下端がフラップ43に当接して押し下げ、このフラップ43は捩りコイルバネ65の付勢力に抗して、軸部45を回動中心にして先端部が下方に移動するように回動して開き、この回動するフラップ43のスリット47にストライカ23が挿入される。
【0046】
このとき、ロックカバー13の下端がポップアップレバー50の当接部53に当接して押し下げ、ポップアップレバー50のレバー部51は付勢スプリング54の付勢力に抗して、回動軸52を回動中心にして当接部53が下方に位置するように回動する。
【0047】
そして、トランクリッド9が閉じ位置に達すると、ストライカ23がロックカバー13の切込み口13aに挿入されてラッチ81を押す。このストライカ23に押されたラッチ81は回転軸83を中心に回転し、爪部81aがストライカ23に係合してトランクリッド9が車体側にロックされて施錠状態となる。
【0048】
一方、トランクリッド9を開くときには、図示しないロック解除機構により、ラッチ81の爪部81aとストライカ23との係合を外す。ロックが解除されると、ポップアップレバー50に係止された付勢スプリング54の付勢力により、レバー部51が回動軸52を中心に図5において時計回りに回動して、当接部53が上方に移動してトランクリッド9を上方に持ち上げる。このとき、フラップ43が捩りコイルバネ65に付勢されてカバープレート19の開口部33を閉じ、ストライカ23がスリット47からのみ見えるようになる。
【0049】
<実施形態2>
図7は、本発明の実施形態2を示し、この実施形態2に係る車両は、ワンボックスカー等の荷室と車室とがつながったタイプの車両である。この車両後部には、後側の略全体に亘って車両の後部開口としてのテールゲート部85が開口し、このテールゲート部85の上縁近傍に開閉体としてのバックドア86の上端が枢着されている。このバックドア86はテールゲート部85を開閉するものであり、その下端に前記ロックカバー13が設けられている。
【0050】
そして、前記テールゲート部85の下縁はリヤエンドトリム15で構成され、このリヤエンドトリム15のストライカ23に対応する位置に設けられた嵌合開口部17に前記カバープレート19が嵌め込まれている。すなわち、この実施形態2では、前記実施形態1のトランクリッド9がテールゲート部85を開閉するバックドア86である。その他の構成は前記実施形態1と同じである。よって、この実施形態2でも実施形態1と同様の作用効果が得られる。
【0051】
<その他の実施形態>
なお、上述の実施形態は、本発明の例示であって、本発明はこの例に限定されるものではない。例えば、以下のような構成としてもよい。
【0052】
すなわち、前記実施形態では、1枚のフラップ43を用いてカバープレート19の開口部33を開閉していたが、この形態に限定するものではなく、例えば、図8〜図10に示すように、ロックカバー13の板厚が厚い場合、すなわち、開口部33の開口面積が大きい場合には、車体前後方向に対向する一対の略矩形板状のフラップ43,44を用いて開口部33の開閉動作を行うようにしてもよい。
【0053】
図8に示すように、一対のフラップ43,44のうち、車外側に位置するフラップ43の幅(図8の左右方向の長さ)が車内側に位置するフラップ44より長く設定されているとともに、フラップ43にのみ、車幅方向の略中央部の先端部に、先端部から車外側に向かって切り欠き状に凹陥したスリット47が開口され、このスリット47の下方にストライカ23が位置して、ストライカ23がスリット47に侵入可能となっている。
【0054】
図9に示すように、一対のフラップ43,44は、それぞれ軸部45にて空間部S内を回動可能に枢着されている。そして、一対のフラップ43,44の軸部45のそれぞれには、フラップ43,44をカバープレート19の開口部33を閉じるように回動付勢する捩りコイルバネ65,65が前記実施形態1と同様に取り付けられている。
【0055】
ここで、トランクリッド9がトランク開口7を閉じると、ロックカバー13の下端が一対のフラップ43,44に当接して押し下げ、この一対のフラップ43,44は捩りコイルバネ65の付勢力に抗して、軸部45,45を回動中心にして先端部が下方に移動するように回動して開き、この回動するフラップ43のスリット47にストライカ23が挿入される。
【0056】
このとき、ロックカバー13の下端がポップアップレバー50の当接部53に当接して押し下げ、ポップアップレバー50のレバー部51は付勢スプリング54の付勢力に抗して、回動軸52を回動中心にして当接部53が下方に移動するように回動する。
【0057】
そして、図10に示すように、トランクリッド9が閉じ位置に達すると、ストライカ23がロックカバー13の切込み口13aに挿入されてラッチ81を押す。このストライカ23に押されたラッチ81は回転軸83を中心に回転し、爪部81aがストライカ23に係合してトランクリッド9が車体側にロックされて施錠状態となる。
【0058】
その他の構成は前記実施形態1と同じである。よって、この実施形態でも実施形態1と同様の作用効果が得られる。
【0059】
また、前記各実施形態において、ストライカ23は、上端が車外側に傾斜してリヤエンドパネル21に取り付けられているが、本発明は、水平に取り付けられたストライカ23に対しても適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明は、フラップに形成するスリットの開口面積を最小限に抑えて見栄えを向上させることができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態に係る車両のトランクルームを後方から見た斜視図である。
【図2】図1におけるフラップの拡大斜視図である。
【図3】トランクリッドの閉動作途中におけるロックカバーがポップアップレバーに当接した直後の状態を示す図2のIII−III線断面図である。
【図4】フラップの構成を示す平面図である。
【図5】ロックカバーとポップアップレバーの構成を示す正面図である。
【図6】トランクリッドを閉じてラッチとストライカとが係合した状態を示す側面断面図である。
【図7】実施形態2に係る車両のバックドアを後方から見た斜視図である。
【図8】その他の実施形態に係るロック装置におけるフラップの構成を示す平面図である。
【図9】トランクリッドを開いた状態を示す側面断面図である。
【図10】トランクリッドを閉じてラッチとストライカとが係合した状態を示す側面断面図である。
【図11】従来のロック装置における図3相当図である。
【図12】従来の車両のトランクルームを後方から見た斜視図である。
【図13】図12におけるトランクリッドを閉じてラッチとストライカとが係合したロック施錠状態を示す側面断面図である。
【図14】図13におけるフラップの構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0062】
5 トランクルーム
7 トランク開口
9 トランクリッド(開閉体)
13 ロックカバー
13a 切込み口
13b 先端部
19 カバープレート
21 リヤエンドパネル
23 ストライカ
33 開口部
43 フラップ
47 スリット
50 ポップアップレバー
81 ラッチ(ロック部材)
85 テールゲート部
86 バックドア(開閉体)
S 空間部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に沿って略一直線状となるように、車幅方向に延びるリヤエンドパネルに突設された門型のストライカと、
車体後部に開口された車体開口を開閉する開閉体と、
前記開閉体の下端に設けられ、車幅方向に間隔をあけて下方に突出して延びる一対の先端部を有し、該一対の先端部間が前記ストライカが侵入する切込み口として構成され、該切込み口に侵入した該ストライカと係合するロック部材が内蔵されたロックカバーとを備えた自動車の開閉体用ロック装置であって、
前記ストライカの車幅方向に隣接して配置され、前記ロック部材の解錠時に前記ロックカバーを上方へ押圧して前記開閉体を開方向に付勢するポップアップレバーと、
前記リヤエンドパネルとの間に空間部を有するように該リヤエンドパネルに取り付けられ、前記ストライカに対応する位置に略矩形状の開口部が形成されたカバープレートと、
前記カバープレートに車幅方向に軸支され、前記開閉体の開閉時に前記ロックカバーと当接して前記空間部内で回動することで前記カバープレートの開口部を開閉する略矩形状のフラップとを備え、
前記フラップには、前記開閉体の開閉動作に連動した該フラップの回動時に前記ストライカが侵入するスリットが形成され、
前記ロックカバーの前記一対の先端部のうち、前記ポップアップレバー側に対応する一方の先端部の突出長さが他方よりも長く設定されていることを特徴とする自動車の開閉体用ロック装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記開閉体は、車体後部に開口されたトランク開口の車体前方近傍に前端が枢着されるとともに、後端に前記ロックカバーが設けられて該トランク開口を開閉するトランクリッドであることを特徴とする自動車の開閉体用ロック装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記開閉体は、車体後部に開口されたテールゲート部の上縁近傍に上端が枢着されるとともに、下端に前記ロックカバーが設けられて該テールゲート部を開閉するバックドアであることを特徴とする自動車の開閉体用ロック装置。
【請求項1】
車体前後方向に沿って略一直線状となるように、車幅方向に延びるリヤエンドパネルに突設された門型のストライカと、
車体後部に開口された車体開口を開閉する開閉体と、
前記開閉体の下端に設けられ、車幅方向に間隔をあけて下方に突出して延びる一対の先端部を有し、該一対の先端部間が前記ストライカが侵入する切込み口として構成され、該切込み口に侵入した該ストライカと係合するロック部材が内蔵されたロックカバーとを備えた自動車の開閉体用ロック装置であって、
前記ストライカの車幅方向に隣接して配置され、前記ロック部材の解錠時に前記ロックカバーを上方へ押圧して前記開閉体を開方向に付勢するポップアップレバーと、
前記リヤエンドパネルとの間に空間部を有するように該リヤエンドパネルに取り付けられ、前記ストライカに対応する位置に略矩形状の開口部が形成されたカバープレートと、
前記カバープレートに車幅方向に軸支され、前記開閉体の開閉時に前記ロックカバーと当接して前記空間部内で回動することで前記カバープレートの開口部を開閉する略矩形状のフラップとを備え、
前記フラップには、前記開閉体の開閉動作に連動した該フラップの回動時に前記ストライカが侵入するスリットが形成され、
前記ロックカバーの前記一対の先端部のうち、前記ポップアップレバー側に対応する一方の先端部の突出長さが他方よりも長く設定されていることを特徴とする自動車の開閉体用ロック装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記開閉体は、車体後部に開口されたトランク開口の車体前方近傍に前端が枢着されるとともに、後端に前記ロックカバーが設けられて該トランク開口を開閉するトランクリッドであることを特徴とする自動車の開閉体用ロック装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記開閉体は、車体後部に開口されたテールゲート部の上縁近傍に上端が枢着されるとともに、下端に前記ロックカバーが設けられて該テールゲート部を開閉するバックドアであることを特徴とする自動車の開閉体用ロック装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−214913(P2008−214913A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51708(P2007−51708)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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