説明

自動車ブレーキディスクアンチラストフィルムの製造方法

【課題】 自動車のホイールに貼付した際に剥がれにくい自動車ブレーキディスクアンチラストフィルムに用いられる粘着剤を用いて自動車ブレーキディスクアンチラストフィルムを製造する方法を提供する。
【解決手段】
(メタ)アクリルアミド系モノマーに基づく単位を有し、重量平均分子量が500,000〜1,100,000であるアクリル系共重合体を、その(メタ)アクリルアミド系モノマーに基づく単位を架橋化基点とし、ポリイソシアネート化合物で架橋させて得られるアクリル樹脂系粘着剤を表面基材フィルムの片面に設けることを特徴とする自動車ブレーキディスクアンチラストフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ブレーキディスクアンチラストフィルムを自動車のホイールに貼着した際に、そのフィルムを剥がれ難くすることができる自動車ブレーキディスクアンチラストフィルム用粘着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のブレーキディスクは、外部から雨水が浸入することによって、酸化され、黒錆が付着する。このような黒錆は、自動車内の静粛性、居住性を損なう原因に繋がるため、自動車のブレーキディスクには防水処理を施し、酸化を防ぐことが行われている。
【0003】
従来、自動車のブレーキディスクの黒錆防止には、パルプ成型品をブレーキディスクに直接嵌め込む方法を採っていた。しかし、パルプ成型品は、耐水性が乏しく、脱着のための工程数が多いこと、コストが高いことなどのために、最近はパルプ成型品を粘着フィルムに置き換えることが提案されている(特許文献1)。このような粘着フィルムは、アンチラストフィルムと言われ、貼付、剥離工程が簡便であること、タイヤホイールの外傷防止も可能となるという利点があり、タイヤホイールに貼付される。アンチラストフィルムには、被着体であるタイヤホイールが三次曲面形状であるため、曲面追従性が必要とされ、この見地から柔軟なポリエチレンフィルムを基材フィルムとして使用している。
【0004】
一方、自動車シャーシは、ブレーキディスクの冷却のため、走行中に前方から受ける風をタイヤホイール方向に巻き込むような空力設計がなされている。このため、アンチラストフィルムは、内側から風圧を受けるため、キャリアカーでの自動車運搬走行中、又は完成車の走行テスト中に剥がれるという問題点がある。また、アルミホイールは、スチールホイールよりも加工性に優れるという利点があるために高意匠化が進んでおり、軽量化による燃費向上、材料使用量の低減による環境負荷の削減、ブレーキディスクの冷却効率向上という観点から、アルミホイールは細いスポークのものが主流となっている。このため、アンチラストフィルムをアルミホイールに貼付する際には、接着面積が低下し、剥がれの問題がますます増加する傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−309510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決し、自動車のホイールに貼付した際に剥がれにくい自動車ブレーキディスクアンチラストフィルムに用いられる粘着剤を用いて自動車ブレーキディスクアンチラストフィルムを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、自動車ブレーキディスクアンチラストフィルム用粘着剤として、(メタ)アクリルアミド系モノマーに基づく単位を有し、重量平均分子量が500,000〜1,100,000であるアクリル系共重合体を、その(メタ)アクリルアミド系モノマーに基づく単位を架橋化基点とし、ポリイソシアネート化合物で架橋させて得られるアクリル樹脂系粘着剤を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、(メタ)アクリルアミド系モノマーに基づく単位を有し、重量平均分子量が500,000〜1,100,000であるアクリル系共重合体を、その(メタ)アクリルアミド系モノマーに基づく単位を架橋化基点とし、ポリイソシアネート化合物で架橋させて得られるアクリル樹脂系粘着剤を表面基材フィルムの片面に設けることを特徴とする自動車ブレーキディスクアンチラストフィルムの製造方法を提供するものである。
また、本発明は、(メタ)アクリルアミド系モノマーに基づく単位を有し、重量平均分子量が500,000〜1,100,000であるアクリル系共重合体を、その(メタ)アクリルアミド系モノマーに基づく単位を架橋化基点とし、ポリイソシアネート化合物で架橋させて得られるアクリル樹脂系粘着剤からなることを特徴とする自動車ブレーキディスクアンチラストフィルム用粘着剤を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、上記自動車ブレーキディスクアンチラストフィルム用粘着剤において、前記アクリル系共重合体中の(メタ)アクリルアミド系モノマーに基づく単位の含有量が前記アクリル系共重合体100質量部当たり0.01〜30質量部である自動車ブレーキディスクアンチラストフィルム用粘着剤を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、上記自動車ブレーキディスクアンチラストフィルム用粘着剤において、200〜380nmの波長領域の分光透過率が0〜20%となるように、アクリル樹脂系粘着剤100質量部当たり0.01〜20質量部の割合で紫外線吸収剤を含有させている自動車ブレーキディスクアンチラストフィルム用粘着剤を提供するものである。
さらに、本発明は、上記の粘着剤からなる粘着剤層が表面基材フィルムの片面に設けられていることを特徴とする自動車ブレーキディスクアンチラストフィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粘着剤からなる粘着剤層を表面基材フィルムの片面に設けた自動車ブレーキディスクアンチラストフィルムは、その粘着剤層の表面が対向して接するように、ホイールに貼付した場合、剥がれ難く、自動車のブレーキディスクへの黒錆の防止性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の自動車ブレーキディスクアンチラストフィルム用粘着剤は、(メタ)アクリルアミド系モノマーに基づく単位を有し、重量平均分子量が500,000〜1,100,000であるアクリル系共重合体を、(メタ)アクリルアミド系モノマーに基づく単位を架橋化基点とし、ポリイソシアネート化合物で架橋させて得られるアクリル樹脂系粘着剤からなる。
【0013】
(メタ)アクリルアミド系モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド;エトキシメチルアクリルアミド、プロポキシメチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、エトキシメチルメタクリルアミド、プロポキシメチルメタクリルアミド、ブトキシメチルメタクリルアミドなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのN−アルカノール化(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。(メタ)アクリルアミド系モノマーの炭素数は、3〜10が好ましく、3〜8が特に好ましい。
【0014】
アクリル系共重合体は、上記の(メタ)アクリルアミド系モノマーに基づく単位の他に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく単位、及び必要に応じてその他の共重合性モノマーに基づく単位を有する。
【0015】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソドデシル、及びメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソドデシルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの炭素数は、4〜16が好ましく、4〜10が特に好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0016】
その他の共重合性モノマーとしては、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに、ヒドロキシル基、メチロール基、グリシジル基、エチレンイミノ基、イソシアネート基などの極性基の1種以上が置換された共重合性モノマーが挙げられる。また、その他の共重合性モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのビニルニトリル化合物;スチレン、ビニルピリジンなどのビニル芳香族化合物;ブタジエン、クロロプレンなどのジエン化合物などが挙げられる。その他の共重合性モノマーとしては、ビニルエステルが好ましい。その他の共重合性モノマーは、1種又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0017】
アクリル系共重合体は、上記の(メタ)アクリルアミド系モノマーに、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び必要に応じてその他の共重合性モノマーを共重合させることにより得ることができる。共重合は、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合などの種々の形式により行うことができ、重合開始剤の存在下で共重合させることが好ましい。重合開始剤としては、過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤などが好ましく挙げられる。
【0018】
アクリル系共重合体における、(メタ)アクリルアミド系モノマーに基づく単位の含有量は、アクリル系共重合体100質量部当たり0.01〜30質量部が好ましく、0.1〜20質量部がより好ましく、0.5〜9質量部がさらに好ましく、1〜5質量部が特に好ましい。
アクリル系共重合体における、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく単位の含有量は、アクリル系共重合体100質量部当たり65〜95質量部が好ましく、70〜90質量部がより好ましく、75〜85質量部が特に好ましい。
【0019】
アクリル系共重合体における、その他の共重合性モノマーに基づく単位の含有量は、アクリル系共重合体100質量部当たり5〜30質量部が好ましく、10〜25質量部がより好ましく、15〜20質量部が特に好ましい。
アクリル系共重合体は、重量平均分子量が500,000〜1,100,000であり、好ましくは600,000〜1,000,000であり、特に好ましくは650,000〜950,000である。
【0020】
本発明の粘着剤は、上記アクリル系共重合体を、(メタ)アクリルアミド系モノマーに基づく単位を架橋化基点とし、ポリイソシアネート化合物で架橋させて得られるアクリル樹脂系粘着剤からなる。
【0021】
ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、水素化トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びその水添体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマー、ポリメチロールプロパン変性TDIなどが挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、テトライソシアネート化合物、ペンタイソシアネート化合物が好ましく、ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0022】
ポリイソシアネート化合物による架橋は、(メタ)アクリルアミド系モノマーに基づく単位とポリイソシアネート化合物とが反応することにより行われる。詳しくは、(メタ)アクリルアミド系モノマーに基づく単位のアミド基とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とが反応し、ウレア結合又はビゥレット結合を形成することにより行われる。この架橋により、本発明の粘着剤は、優れた粘着力と凝集力を兼ね備えることとなり、自動車アンチラストフィルム用強粘着再剥離型粘着剤として優れた性能を発揮する。
【0023】
ポリイソシアネート化合物の架橋量を調整することで、種々の塗装面に対し必要な粘着物性を発現させることができる。ポリイソシアネート化合物の使用量は、アクリル系共重合体100質量部に対して、0〜20質量部が好ましく、0.01〜10質量部が特に好ましい。ポリイソシアネート化合物は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0024】
架橋に際しては、アクリル系共重合体とポリイソシアネート化合物とは、十分に混合することが好ましく、特に溶剤中で十分に混合することが好ましい。溶剤中のアクリル系共重合体とポリイソシアネート化合物の合計量濃度は、20〜80質量%が好ましく、30〜70質量%が特に好ましい。溶剤としては、酢酸エチルなどの脂肪酸エステル、メチルエチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。溶剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。溶剤は、アクリル系共重合体の重合溶剤をそのまま用いてもよい。
【0025】
架橋温度は、適宜選定すればよいが、通常0〜100℃であればよく、10〜40℃が好ましい。架橋は、溶液状態で行われてもよいし、塗布後の乾燥中または乾燥後に行われてもよい。
【0026】
本発明の粘着剤には、200〜380nmの波長領域の分光透過率が0〜20%となるように、本発明の粘着剤に紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。紫外線吸収剤の含有割合としては、アクリル樹脂系粘着剤の固形分100質量部当たり0.01〜20質量部が好ましい。紫外線吸収剤を含有させることにより、耐候性を向上させると共に、屋外に長期間曝される場合にも、被着体への糊残りなくフィルムを剥離することができる。
紫外線吸収剤の具体例としては、ハイドロキノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0027】
ハイドロキノン系紫外線吸収剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンジサリチレートなどが挙げられる。サリチル酸系紫外線吸収剤としては、フェニルサリチレート、パラオクチルフェニルサリチレートなどが挙げられる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンゾイルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホンベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ナトリウムスルホベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−クロルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0028】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第3ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−カルボン酸ブチルエステルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5,6−ジクロルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−エチルスルホンベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第3ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第3ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾール、2−(2’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ステアリルオキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)−5−メチルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−カルボン酸フェニル)ベンゾトリアゾールエチルエステル、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−第3ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第3ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−フェニルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−シクロヘキシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’,5’−ジメチルフェニル)−5−カルボン酸ベンゾトリアゾールブチルエステル、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクロルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’,5’−ジクロル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)−5−エチルスルホンベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−フェニルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)−5−メチルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−カルボン酸エステルベンゾトリアゾール、2−(2’−アセトキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第3ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2〜2’−メチレンビス[6−(2−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]などが挙げられる。シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸エチル、2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0029】
これらの紫外線吸収剤のうち、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好適である。特に、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、及び2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンが好ましく、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5,6−ジクロルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第3ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−第3ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第3ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−フェニルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第3ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
これら紫外線吸収剤は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0030】
また、紫外線吸収剤と共に、光安定剤、酸化防止剤などの耐候助剤の1種以上を適宜含有させることができる。
また、上記粘着剤には、必要に応じて粘着付与剤、軟化剤、レベリング剤、シランカップリング剤、填料、染料又は顔料などの着色剤、溶剤などの1種以上を適宜配合することができる。
【0031】
自動車ブレーキディスクアンチラストフィルム用表面基材フィルムは、自動車ブレーキディスクアンチラストフィルムにおいて、表面に配置される基材フィルムである。
自動車ブレーキディスクアンチラストフィルム用表面基材フィルムの片面には、好適には本発明の粘着剤を塗布し、乾燥して粘着剤層が設けられている。粘着剤の乾燥は、溶剤や低沸点成分の残留を防ぐために、室温より高い温度で行うことが好ましい。
【0032】
粘着剤層の厚みは、特に制限ないが、通常1〜300μmであればよく、好ましくは2〜150μmであり、特に好ましくは5〜100μmである。
自動車ブレーキディスクアンチラストフィルム用表面基材フィルムは、種々の材質にすることができるが、好適な材質としては、低密度ポリエチレン樹脂が好ましい。また、低密度ポリエチレン樹脂と高密度ポリエチレン樹脂との混合物、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂なども使用できる。
【0033】
低密度ポリエチレン樹脂の密度は、0.910〜0.940g/cmが好ましく、0.918〜0.938g/cmがより好ましく、0.923〜0.933g/cmが特に好ましい。
自動車ブレーキディスクアンチラストフィルム用表面基材フィルムは、単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。また、1軸延伸又は2軸延伸等のように延伸処理されていてもよい。
【0034】
表面基材フィルムの成形方法としては、押出し成形方法、インフレーション成形方法などが挙げられるが、インフレーション成形方法が好ましい。
延伸方法としては、種々の延伸方法が適用できるが、例えば、周速の異なるロール群による縦方向1軸延伸方法、テンターオーブンによる横方向1軸延伸方法、これらの組合せによる2軸延伸方法、インフレーションのチューブラー延伸方法等が挙げられる。
表面基材フィルムは、延伸後は、アニ−リング処理してもよい。
【0035】
自動車ブレーキディスクアンチラストフィルム用表面基材フィルムの厚みは、通常20〜200μmの範囲が好ましく、30〜100μmの範囲が特に好ましい。
自動車ブレーキディスクアンチラストフィルム用表面基材フィルムには、200〜380nmの波長領域の分光透過率が0〜20%となるように、表面基材フィルムの樹脂に対して紫外線吸収剤を含有させてもよい。紫外線吸収剤の含有割合としては、基材フィルムの樹脂の固形分100質量部当たり0.01〜20質量部が好ましい。紫外線吸収剤を含有させることにより、耐候性を向上させると共に、屋外に長期間曝される場合にも、被着体への糊残りなくフィルムを剥離することができる。
また、紫外線吸収剤と共に、光安定剤、酸化防止剤などの耐候助剤を含有させることができる。
【0036】
粘着剤層は、表面基材フィルムの片面に直接塗布することにより、形成してもよく、また、予め剥離シートの剥離剤層面に粘着剤を塗布、乾燥させ粘着剤層を形成した粘着剤層付き剥離シートを調製した後、その剥離シートの粘着剤層の表面と表面基材フィルムと貼り合わせることにより、表面基材フィルムの片面に形成してもよい。粘着剤層の形成方法としては、特に制限なく種々の方法を用いることができ、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーターなどを用いて、塗布、乾燥させることによる形成方法などが挙げられる。
【0037】
粘着剤層の表面は、剥離シートで覆うことが好ましい。また、剥離シートを使用しないで、表面基材フィルムの表面に剥離剤を塗布するなどにより剥離性を付与し、表面基材フィルムの非剥離性面に粘着剤層が設けられている粘着フィルムを作成し、その粘着フィルムを剥離性面と粘着剤層の表面が接するようにロール巻きにして保存してもよい。このようにして、粘着剤層の表面を保護することができる。
【0038】
剥離シートとしては、いずれのものを使用してもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレートなどの各種樹脂よりなるフィルムや、ポリエチレンラミネート紙、ポリプロピレンラミネート紙、クレーコート紙、樹脂コート紙、グラシン紙、上質紙等の各種紙材を基材とし、この基材の粘着剤層との接合面に、必要により剥離処理が施されたものを用いることができる。
この場合、剥離処理の代表例としては、シリコーン系樹脂、長鎖アルキル系樹脂、フッ素系樹脂等の剥離剤よりなる剥離剤層の形成が挙げられる。
剥離シートの厚みは、特に制限されず、適宜選定すればよい。
【0039】
本発明の自動車ブレーキディスクアンチラストフィルム用粘着剤により片面に粘着剤層が設けられた自動車ブレーキディスクアンチラスト粘着フィルムを被着体に貼付するには、粘着剤層の表面に剥離シートが覆われている場合はその剥離シートを剥ぎ取り、その粘着剤層をホイールなどの被着体の表面に密着させることにより、行うことができる。また、予め剥離シートの剥離剤層面に粘着剤を塗布、乾燥させ粘着剤層を形成した粘着剤層付き剥離シートを調製した後、その剥離シートの粘着剤層の表面とホイールなどの被着体の表面に密着させ、次いで剥離シートを剥して、その後粘着剤層の表面と表面基材フィルムと貼り合わせることにより、自動車ブレーキディスクアンチラスト粘着フィルムを被着体に貼付してもよい。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの例によって、何ら限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
表面基材フィルムの製造
密度が0.928g/cmである低密度ポリエチレン樹脂を原料として、インフレーションフィルム成型機を用い、厚み50μmのポリエチレン樹脂フィルムを作成した。
【0042】
アクリル系共重合体の製造
温度計、撹拌機、還流冷却菅、窒素ガス導入菅を備えた反応装置に、アクリル酸−2−エチルヘキシル54質量部、アクリル酸エチル27質量部、酢酸ビニル17質量部、アクリルアミド2質量部、酢酸エチル100質量部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルの重合開始剤の存在下共重合させて、重合平均分子量800,000のアクリル系共重合体を得た。
【0043】
粘着剤層が形成された粘着フィルムの製造
上記の表面基材フィルム(ポリエチレン樹脂フィルム、厚み50μm)の片面に、上記のアクリル系共重合体の樹脂分100質量部に対してイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製、商品名「コロネートL」)を3.0質量部添加した混合物を、マイヤーバーで乾燥後の塗布量が25μmとなるように室温(25℃)で塗布、40℃で乾燥して、架橋させた粘着剤層を形成し、その後上質紙からなる支持体の片面に剥離剤としてシリコーン樹脂を塗布して剥離層を形成して得られた剥離シート(リンテック(株)製、商品名「KGM−11S白」)の剥離層と前記粘着剤層とをラミネーターを用いて貼り合わせ、粘着フィルムを作成した。
【0044】
(実施例2)
実施例1のアクリル樹脂系粘着剤の樹脂成分100質量部に対して3質量部のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名「チヌビン326」、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第3ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール)を混合したものを粘着剤として使用し、実施例1のポリエチレン樹脂フィルムを表面基材フィルムとして使用した以外は、実施例1と同様にして、粘着フィルムを作成した。粘着フィルムの200〜380nmの波長領域の分光透過率は1%未満であった。
【0045】
(比較例1)
粘着剤として、温度計、撹拌機、還流冷却菅、窒素ガス導入菅を備えた反応装置に、アクリル酸−2−エチルヘキシル54質量部、アクリル酸エチル27質量部、酢酸ビニル17質量部、アクリル酸2質量部、及び酢酸エチル100質量部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルの開始剤の存在下共重合させて得られた重合平均分子量800,000のアクリル樹脂系粘着剤を使用した以外は、実施例1と同様な粘着フィルムを作成した。
【0046】
(比較例2)
粘着剤として、温度計、撹拌機、還流冷却菅、窒素ガス導入菅を備えた反応装置に、アクリル酸−2−エチルヘキシル54質量部、アクリル酸エチル27質量部、酢酸ビニル17質量部、アクリルアミド2質量部、及び酢酸エチル100質量部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルの開始剤の存在下共重合させて得られた重合平均分子量400,000のアクリル樹脂系粘着剤を使用した以外は、実施例1と同様な粘着フィルムを作成した。
【0047】
(比較例3)
粘着剤として、温度計、撹拌機、還流冷却菅、窒素ガス導入菅を備えた反応装置に、アクリル酸−2−エチルヘキシル54質量部、アクリル酸エチル27質量部、酢酸ビニル17質量部、アクリルアミド2質量部、及び酢酸エチル100質量部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルの開始剤の存在下共重合させて得られた重合平均分子量1,200,000のアクリル樹脂系粘着剤を使用した以外は、実施例1と同様な粘着フィルムを作成した。
【0048】
粘着フィルムの物性の測定
実施例及び比較例で得られた粘着フィルムについて、下記に示した粘着力の測定、サンシャインウェザオメーター(以下、SWOMという)試験、自動車走行後のフィルムの剥がれ試験及び被着体汚染性試験を行った。その結果を表1に示した。
【0049】
(1)粘着力の測定
上記の実施例及び比較例で得られた粘着フィルムについて、23℃、50%RH環境下で、JIS Z0237に準拠し、被着体はアルミニウム板に塗料(関西ペイント(株)製、商品名「マジクロンALC−2−1」)を塗装したものを使用して、粘着力を測定した。
【0050】
(2)SWOM試験
上記の実施例及び比較例で得られた粘着フィルムを、SWOM(スガ試験機(株)製、商品名「サンシャインスーパーロングライフウェザオメーター WEL−SUN−HCH」)に入れて、500時間及び1000時間の照射後の粘着力を、上記の測定方法により測定した。
【0051】
(3)自動車走行後のフィルムの剥がれ試験
上記の実施例及び比較例で得られた粘着フィルムを自動車(トヨタ自動車(株)製、商品名「セルシオ」)のアルミホイールの表面に貼付して、自動車を時速80kmで、60分間走行させたときの粘着フィルムの剥がれを下記の基準で評価した。
○:剥がれなし。
×:剥がれあり。
【0052】
(4)被着体汚染性試験
上記の実施例及び比較例で得られた粘着フィルムをアルミニウム板に塗料(関西ペイント(株)製、商品名「マジクロンALC−2−1」)を塗装した被着体に貼付し、その状態でSWOM試験を行い、SWOM試験500時間及び1000時間後に取り出し、粘着フィルムを被着体から剥離したときの、被着体の汚染状態を下記の基準で評価した。
○:被着体の汚染なし。
×:被着体の汚染あり。
【0053】
【表1】

【0054】
実施例1は、アクリル系共重合体の重量平均分子量が800,000であるので、23℃、50RH環境下の粘着力が高く、自動車走行試験後のフィルムの剥がれもない。また、SWOM試験500時間後の被着体汚染もなく、アクリルアミドを架橋化基点として、ポリイソシアネート化合物で架橋した場合の高粘着力、高凝集力を実証できた。
実施例2は、実施例1の粘着剤に紫外線吸収剤を添加しているものであり、実施例1と同様、自動車走行試験後のフィルムの剥がれが見られなかった。また、実際の使用条件ではSWOM試験1000時間に相当する実曝環境に曝されることはないが、SWOM試験1000時間後でさえも被着体汚染がなく、紫外線による粘着剤の劣化を抑制できることを実証できた。
【0055】
比較例1は、架橋化基点のモノマー単位をアクリル酸としたものであり、実施例1と同様、ポリイソシアネート化合物で架橋したものである。この比較例1を実施例1と比較すると、比較例1は、粘着力が低く、自動車走行試験後にフィルムの剥がれが観察された。
比較例2は、実施例1と同様の組成の粘着剤であるが、重量平均分子量が400,000に低く制御されているので、実施例1と比較して、粘着力が低く、自動車走行試験後にフィルムの剥がれが観察された。
【0056】
比較例3は、実施例1と同様の組成の粘着剤であるが、重量平均分子量が1200,000に高く制御されているので、実施例1と比較して、粘着力が低く、自動車走行試験後にフィルムの剥がれが観察された。
本発明の自動車ブレーキディスクアンチラストフィルム用粘着剤は、表面基材フィルムの片面に塗布することにより、自動車ブレーキディスクアンチラストフィルムとして利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリルアミド系モノマーに基づく単位を有し、重量平均分子量が500,000〜1,100,000であるアクリル系共重合体を、その(メタ)アクリルアミド系モノマーに基づく単位を架橋化基点とし、ポリイソシアネート化合物で架橋させて得られるアクリル樹脂系粘着剤を表面基材フィルムの片面に設けることを特徴とする自動車ブレーキディスクアンチラストフィルムの製造方法。



【公開番号】特開2012−97901(P2012−97901A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250757(P2011−250757)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【分割の表示】特願2006−511340(P2006−511340)の分割
【原出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】