説明

自動車内でランプによって散逸される平均出力の制御方法

本発明は、ランプ内の平均強度を制御するためにデューティサイクル(β)のパルス幅信号(PWM)を変調するステップを含む、自動車内でランプによって散逸される平均出力の制御方法であって、車載回路網の電圧が所定の閾値よりも実質的に大きいとき、ランプによって散逸される平均出力が一定であるように、車載回路網の電圧に応じてデューティサイクル(β)を決定することを特徴とする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内のランプの寿命、特には自動車の電気回路網に接続されたランプの寿命を延長できるようにする方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
ランプの照度又は出力は、ランプ内の電流に依存する。この電流を制御、調節又は修正するために従来は回路が使用されている。一般的に使用される技術は、パルス幅変調周波数信号(MLI)又は英語でPulse Width Modulation(PWM)によってランプを操作することにより、ランプ内の平均電流及び平均強度を制御することである。PWM信号のデューティサイクルの変更により、ランプ内の電流を調整すること、したがってその散逸される平均出力を制御することが可能になる。しかしながら自動車の車載回路網又はバッテリによって給電される白熱灯の寿命は、この回路網上の電圧レベルの影響を受ける。オルタネータの動作は、車載回路網の電圧に対して影響力を及ぼす可能性があり、それがランプの寿命を短縮させる恐れのある高い電圧レベルを特に発生させる可能性がある。更に、「日中走行用ライト」とも呼ばれる「日中の点灯」のような機能の設置により、ランプが点灯される期間が増加し、そのことが、ランプの変化頻度を増加させることに寄与する。
【0003】
特にランプが次第に駆動されるようになり、かつそのアクセスが容易でないときに、ランプの平均散逸出力及びその光束を変えることなくランプの寿命を増加させることが必要である。
【発明の概要】
【0004】
したがって本発明の目的は、前述の不都合を緩和しながら、車両のランプの寿命を延長できるようにする簡易な方法を提案することである。
【0005】
この目的で、本発明は、車載回路網の電圧が所定の閾値よりも実質的に大きいとき、ランプによって散逸される平均出力が一定であるように、車載回路網の電圧に応じてデューティサイクルを決定するステップを含む、ランプ内の平均強度を制御するためにデューティサイクルのパルス幅信号(PWM)を変調するステップを含む、自動車内でランプによって散逸される平均出力の制御方法を対象とする。
【0006】
かかる方法は、操作されるランプの100%の寿命を得ることを保証できるようにする。このランプ制御方法は、有利なことに、車載回路網の電圧の変化に対してランプの寿命を最適化できるようにする。より頻繁に点灯されるランプの寿命が、改善される。
【0007】
かかる方法は、一定の光束値、すなわち一定かつ最適な平均散逸出力を得ることも可能にする。
【0008】
本発明の他の特徴によれば、
−関係式:
【数1】


によってデューティサイクルβを決定することができ、ランプPmeanによって散逸される一定した平均出力は、
【数2】


(式中、Cは、所望のランプ寿命の関数として決定される定電圧を表し、Vbatは、車載回路網の電圧を表し、Vは、ランプに関連した線路抵抗による電圧降下を表し、Rは、ランプの抵抗を表す)に実質的に等しく、
−実質的に100%の所望の寿命に関して、関係式:
【数3】


によってPWMのデューティサイクルを決定することができ、定電圧Cは、ランプを組み込んだ要素内部の電圧降下を考慮に入れて、ランプ寿命が実質的に100%である車載回路網の電圧よりも実質的に低く、
−定数Cは、13.1Vに実質的に等しくてもよく、PWMのデューティサイクルは、次の関係式:
【数4】


によって決定され、
−100Hzに実質的に等しい変調周波数を使用することができ、
−デューティサイクルが、
○ 車載回路網の電圧が16Vに実質的に等しいとき、0.67に実質的に等しく、
○ 車載回路網の電圧が13.5Vに実質的に等しいとき、0.82に実質的に等しく、
○ 車載回路網の電圧が13.1Vに実質的に等しいとき、1に実質的に等しくなるような、3点での線形補間によってデューティサイクルを決定することができ、
−車載回路網の電圧が16Vよりも実質的に大きいときは、デューティサイクルは実質的に一定で0.67に等しくなることができ、車載回路網の電圧が13.1Vよりも実質的に小さいときは、デューティサイクルは実質的に一定で1に等しくなることができる。
【0009】
かかる方法を利用する装置により、このように操作された各ランプの給電電圧の低下を補償できるようになる。
もう1つの特徴によれば、この方法は、あらゆる白熱灯に給電するために使用することができる。
【0010】
本発明は、前記ランプの照明のためにこの方法を使用する、白熱灯タイプの外部又は内部照明ランプを含む自動車にも関する。
本発明は、添付図面を参照して、非限定的な例として与えられる一実施形態についての以下の記載によってより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ランプ寿命及びその照度をそれぞれ車載回路網の電圧の関数として示す2本の曲線のグラフである。
【図2】本発明による制御装置を表す図である。
【図3】100Hzに実質的に等しい周波数におけるPWMのデューティサイクルを車載回路網の電圧の関数として示す曲線のグラフである。
【図4】ランプによって散逸される出力を図2の装置の車載回路網の電圧の関数として示す曲線のグラフである。
【0012】
パルス幅変調の原理は、当業者に既知の原理であり、本明細書の以下の部分では説明しない。
一般的に自動車の車載回路網の電圧は、動作モードのとき実質的に12.5V〜16Vの間で変化し、多くの場合は実質的に14.5Vの周辺で落ち着く。
【0013】
図1に、ランプ寿命及びランプ照度を車両の車載回路網の電圧の関数として示した曲線を示す。ランプ寿命は、13.2Vに実質的に等しい電圧のとき、実質的に100%であり、その端子での電圧が増加するとき、強く減少することが確認できる。
本発明によるランプ操作方法は、一定した平均出力を散逸させるのに必要な電流をランプに供給し、かつその寿命を延長するために、PWMのデューティサイクルが可変である周波数信号を使用することにある。
【0014】
図2で、制御装置、又は計算器1は、デューティサイクルが可変である周波数信号を使用して、自動車のランプを操作できるようにする。このために、操作すべきランプにワイヤによって接続された計算器1は、車載回路網の電圧を獲得するブロック2と、点灯を要求するブロック3と、それぞれ右側ランプ及び左側ランプに関する線路損失を補正する2つのブロック4及び5と、パルス幅変調MLI又はPWMのデューティサイクルを発生させる統御ブロック6と、ブロック6によって計算されたPWMのデューティサイクルを使用して周波数信号によりランプを操作できるようにするブロック7とを含む。このブロック6は、車載回路網の動的変動を補償するための規則的な時間間隔を有するPWMの循環値を更新し、PWM値の更新の速さは、車載回路網の変動速度と一致する。
【0015】
計算器1の点灯を要求するブロック3が、例えば車両のCANバスを介して、点灯制御データを受け取ったとき、統御ブロック6は、PWMのデューティサイクルを計算し、かつランプが所望の一定した平均出力を散逸させるのに必要な信号を増幅するために、対応する信号をブロック7に送る。
【0016】
PWMのデューティサイクルの計算では、幾つものパラメータ、特にランプを計算器1に接続する線路の抵抗による電圧降下を考慮に入れる。実際に、計算器1のエンジン室内への配置及びランプの局在化を考慮すると、計算器1をそれぞれ左側ランプ及び右側ランプに接続する左側及び右側ワイヤの長さ、並びに地帰路は、実質的に同じでない。その場合、ワイヤによる電圧降下は、実質的に異なる。ブロック4及び5は、これらの電圧降下を考慮に入れることを可能にするとともに、左側ランプにおいては左側ワイヤによる電圧降下Vlg、右側ランプにおいては右側ワイヤによる電圧降下Vldにそれぞれ実質的に対応する、例えば振幅信号を統御ブロック6の入力部に送る。したがって、各ランプにおけるPWMのデューティサイクルの計算は、各ランプの線路抵抗によるそれぞれの電圧降下を考慮に入れたものとなる。
【0017】
ブロック7は、車載回路網の電圧に接続されており出力を操作する2つの装置71及び72、例えばMOSFETトランジスタを含む。各出力装置71、72は、バッテリの給電によって給電され、かつ信号PWMを入力部で受け取る。信号PWMのデューティサイクルの変更により、ランプを操作するために出力装置71、72によって増幅される電流を調整できるようになる。
【0018】
本明細書の以下の部分においては、左側ランプを右側ランプと区別しない。計算は、ランプについて一般的に説明する。左側ランプにおける電圧降下Vlg、又は右側ランプにおけるVldを、Vと記す。
【0019】
図1の装置において、ランプが、単一かつ同一の出力装置によって同様に操作できること、並びに左側ランプにおける電圧降下Vlg、及び右側ランプにおけるVldが同一であり得ることが理解されるであろう。
【0020】
バッテリの電圧が13.2Vに実質的に等しい場合に、実質的に100%のランプ寿命が得られる。しかるに先に記載した線路抵抗の評価では、計算器1からプロジェクタ又はランプの入力に至る配線及び地帰路しか考慮せず、特にプロジェクタ内部のワイヤの存在を考慮に入れない。このように、この不確定なパラメータを考慮に入れ、かつ100%のランプ寿命を保証するために、例えば13.2Vの公称動作点よりも実質的に低い、例えば13.1Vの公称動作点に関して、ブロック6によって統御が行われる。この選択された公称動作点は、少なくとも100%の寿命を保証し、ランプ寿命が100%未満にならないように、車載回路網の電圧が実質的に13.1Vとなる点である。その場合、ランプによって散逸される出力は、車載回路網の電圧が13.1Vの場合に得られ、かつ100%の寿命を保証する出力に関して実質的に常に一定である。
【0021】
前述の例が限定的なものでないこと、並びに統御を行うために使用される公称動作点が、得ようと願うランプ寿命に依存することが理解されるであろう。もちろん、ランプを組み込んだ要素、例えばプロジェクタの内部の不確定な線路抵抗を例えば考慮に入れなければならない。
【0022】
各ランプのデューティサイクルの計算は、次の計算を用いて決定される。
ランプによって散逸される平均出力Pmoyは、
【数5】


(式中、Rは、ランプの抵抗を表し、V=Vbat−Vは、ランプに関連した線路抵抗による電圧降下を考慮に入れた車載回路網の電圧Vbatを表す)によって定義される。先に明確にしたように、左側ランプについてデューティサイクルを計算する場合は、V=Vlgであり、右側ランプについてデューティサイクルを計算する場合は、V=Vldである。
【0023】
デューティサイクルの値βは、13.1Vの公称動作点で以下のように定義される。
−電圧V=Vbat−V≦13.1Vの場合、β=1、
−電圧V=Vbat−V>13.1Vの場合、
【数6】


である。その場合、平均散逸出力Pmoyは、
【数7】


で記述される。
この統御に従ってランプによって散逸される平均出力が、車載回路網の電圧Vbatに依存しないことが確認される。
【0024】
図3及び図4において、デューティサイクルβを車載回路網の電圧の関数として(グラフ31及び図3)、またランプによって散逸される出力を100Hzに実質的に等しい周波数fでの21ワットのランプに関する上記統御のための車載回路網の電圧の関数としてそれぞれ示す。
【0025】
図3及び4を検討すると、この統御により、車載回路網のばらつきに対する有効な調節が得られるようになることがわかる。
この統御により、低いデューティサイクルβに対しても一定した散逸出力が確保できるようになり、散逸出力は、一定かつ最適である。
【0026】
これらの計算は、80Hz〜150Hzに実質的に含まれ、好ましくは100Hzに実質的に等しい周波数に関して実行され、それによりフィラメントが温度変動を受けないことが可能になる。この周波数の増加は必要でなく、逆に車両内で電磁両立性CEMの挙動に関連する問題を発生させ、かつ出力操作装置71及び72内でのスイッチングによる出力の散逸を限定する危険がある。
【0027】
もう1つの実施形態によれば、デューティサイクルは、図3の曲線32に示すように、任意の点A、B、Cでの線形補間によって得られる。例えば0V、13.1V、14.5V及び16Vに関して、デューティサイクルは、図3によれば1、1、0.82、0.67にそれぞれ等しい。これらの点A、B、Cでの線形補間によって、デューティサイクルβが得られる。このデューティサイクルは、実質的に一定であり、かつ13.1Vより実質的に小さい車載回路網の電圧では1に等しく、実質的に一定であり、16Vより大きい電圧では0.67に等しい。このようにすることにより、デューティサイクルの計算を実行するためのソフトウェア資源が節約される。
【0028】
かかる方法により、車載回路網の電圧に触れずにランプの出力を操作できるようになる。ランプの出力制御は、13.1V+Vよりも実質的に大きい自動車の車載回路網の電圧Vbatがいかなるものであれ、調節される。このランプは、一定した出力を散逸させ、かつ増加した保証寿命を有する。
【0029】
有利なことに、この方法により少なくとも100%のランプ寿命が保証できるようになる。
有利なことに、この方法の利用を、駐車灯又は走行ビーム前照灯などの照明機能に拡張することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプ内の平均強度を制御するためにデューティサイクル(β)のパルス幅信号を変調する(PWM)ステップを含む、自動車内でランプによって散逸される平均出力の制御方法であって、車載回路網の電圧が所定の閾値よりも実質的に大きいとき、ランプによって散逸される平均出力が一定であるように、車載回路網の電圧(Vbat)の関数としてデューティサイクル(β)を決定することを特徴とする方法。
【請求項2】
関係式:
【数1】


によってデューティサイクルβを決定し、ランプPmeanによって散逸される一定した平均出力が、
【数2】


(式中、Cは、所望のランプ寿命の関数として決定される定電圧を表し、Vbatは、車載回路網の電圧を表し、Vは、ランプに関連した線路抵抗による電圧降下を表し、Rは、ランプの抵抗を表す)に実質的に等しいことを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
実質的に100%の所望の寿命に関して、関係式:
【数3】


によってデューティサイクルを決定し、定電圧Cは、ランプを組み込んだ要素内部の電圧降下を考慮に入れて、ランプ寿命が実質的に100%である車載回路網の電圧よりも実質的に低いことを特徴とする請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
定数Cが、13.1Vに実質的に等しく、デューティサイクルが、次の関係式:
【数4】


によって決定されることを特徴とする請求項3に記載の制御方法。
【請求項5】
100Hzに実質的に等しい変調周波数を使用することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項6】
デューティサイクルが、
a.車載回路網の電圧(Vbat)が16Vに実質的に等しいときは、0.67に実質的に等しく、
b.車載回路網の電圧(Vbat)が13.5Vに実質的に等しいときは、0.82に実質的に等しく、
c.車載回路網の電圧(Vbat)が13.1Vに実質的に等しいときは、1に実質的に等しくなるような、3点での線形補間によってデューティサイクル(β)を決定することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項7】
車載回路網の電圧(Vbat)が16Vよりも実質的に大きいときは、デューティサイクル(β)は実質的に一定で0.67に等しく、車載回路網の電圧が13.1Vよりも実質的に小さいときは、デューティサイクル(β)は実質的に一定で1に等しいことを特徴とする請求項6に記載の制御方法。
【請求項8】
白熱灯を照明するための請求項1から7のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項9】
前記ランプの照明のための請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を使用することを特徴とする白熱灯タイプの外部又は内部照明ランプを含む自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−537873(P2010−537873A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522424(P2010−522424)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051552
【国際公開番号】WO2009/044025
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(507308902)ルノー・エス・アー・エス (281)
【Fターム(参考)】