説明

自動車内装材用積層シート、成形方法及び自動車内装材成形体

【課題】 本発明は、熱成形時に幅方向の両端部確実に把持することができ、熱成形時の材料搬送安定性を有する積層シートを提供する。
【解決手段】 変性PPE系樹脂発泡シートの両面に変性PPE系樹脂非発泡シートが積層一体化されてなり、何れか一方の変性PPE系樹脂非発泡シートにホットメルト接着剤層を介して表皮材が幅方向に積層された表皮積層シートであって、表皮積層シートの幅方向における両端からそれぞれ30〜100mm内側にはホットメルト接着剤層が積層されていないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮積層シート(自動車内装材用積層シート)、該シートの成形方法および成形体(自動車内装材成形体)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下、「変性PPE系樹脂」と称す場合がある)発泡シートの両面に変性ポリフェニレンエーテル系樹脂非発泡シートを積層一体化した積層シートは、耐熱性、軽量性及び成形性などに優れていることから自動車内装材などに好適に用いられている。
【0003】
このような積層シートとしては、特許文献1に、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を基材樹脂とする発泡シートの両面又は片面に変性ポリフェニレンエーテル系樹脂非発泡層が積層されてなる発泡積層シートの非発泡層の片面にホットメルト系接着剤層が設けられている自動車内装材用積層シートが開示されている。
【0004】
そして、上記積層シートは、積層シートの上側に表皮材を幅方向において全面に積層一体化させた後、連続的に搬送し、積層シートを加熱炉に供給し、表皮を積層一体化した積層シートを所定温度に加熱した後、成形型に搬送して所望の形状に成形される。
【0005】
積層シートを搬送するために、積層シートの幅方向における両端部に、エンドレスベルトまたはエンドレスチェーンの外周部に固定敷設されたピンに順次突き刺して、積層シートの両端部を把持した後、エンドレスベルトまたはエンドレスチェーンを稼動することによって積層シートを搬送し、加熱炉で積層シートを加熱軟化させた後、成形型にて賦型している。
【0006】
しかしながら、積層シートの幅方向における両端部にピンを突き刺す場合、積層シートは比較的硬いため、ピンが着実に突き刺さるのに対して、積層シートの上に積層一体化している表皮材は、比較的柔らかい素材で構成されているため、ピンが着実に刺さらないだけでなく、表皮材が抵抗となって積層シートへのピン突き刺しによる把持が不十分になったり、一旦積層シートに突き刺さったピンが外れたりして、搬送時、エンドレスベルトまたはエンドレスチェーンから表皮を積層した積層シートが外れ、加熱炉内に脱落し、成形加工時のトラブルになる事態が生じて、良好な成形加工ができない問題が発生している。
【0007】
そのため、エンドレスベルトまたはエンドレスチェーンの外周部に固定敷設されたピンに順次突き刺して積層シートを搬送する方式による成形加工に問題を起こさない積層シートの出現が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平9−29875号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、熱成形における材料搬送時に、材料の幅方向両端部を確実に把持することができ、加熱炉内での材料脱落を防止できるだけでなく、賦型を精度良く行うことができる積層シート及び該積層シートを用いた成形方法、並びに、該積層シートを用いた成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、変性PPE系樹脂を押出発泡成形して得られる変性PPE系樹脂発泡シートの両面に、変性PPE系樹脂からなる非発泡層を積層してなる変性PPE系樹脂発泡積層シートにおいて、何れか一方の非発泡層面(具体的には、室内側非発泡層面)に、ホットメルト系接着剤を積層し、該接着剤層を介して表皮材層を積層してなる表皮積層シートであって、表皮積層シートの幅方向における両端部からそれぞれ特定距離の内側にはホットメルト接着剤層が積層されていない状態にて表皮材を積層することにより、搬送用のクランプピンに表皮積層シートの表皮材を除いた積層シートを確実に把持するができることを見出して、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
[1] 変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートの両面に変性ポリフェニレンエーテル系樹脂非発泡シートが積層一体化されてなり、何れか一方の変性ポリフェニレンエーテル系樹脂非発泡シートにホットメルト接着剤層を介して表皮材が積層されてなる表皮積層シートであって、
表皮積層シートの幅方向において両端部からそれぞれ30〜100mm内側にはホットメルト接着剤層が積層されていないことを特徴とする、表皮積層シート。
[2] 変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートの両面に変性ポリフェニレンエーテル系樹脂非発泡シートが積層一体化されてなり、何れか一方の変性ポリフェニレンエーテル系樹脂非発泡シートにホットメルト接着剤層を介して表皮材が積層されてなる表皮積層シートを、外周面に所定間隔毎にピンが固着されてなる一対のエンドレスチェーンまたはベルトを用いて把持した状態で搬送して、加熱および熱成形を行う、表皮積層シートの成形方法であって、
表皮材が上側となるように表皮積層シートを配置し、表皮積層シートの幅方向において、両端部からそれぞれ30〜100mm内側にはホットメルト接着剤層が積層されていない部位に、ピンを突き刺すことを特徴とする、表皮積層シートの成形方法。
[3] [1]に記載の積層シートを熱成形してなることを特徴とする、成形体、および
[4] [2]の表皮積層シートの成形方法により得られることを特徴とする、成形体、
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の表皮積層シートは、変性PPE系樹脂発泡シートの両面に変性PPE系樹脂非発泡シートが積層一体化されてなり、何れか一方の変性PPE系樹脂非発泡シートにホットメルト接着剤層を介して表皮材が積層されてなる表皮積層シートであって、表皮積層シートの幅方向において両端から30〜100mmの領域(部位)にはホットメルト接着剤層が積層されていない為、熱成形に際して、表皮積層シートを搬送するために、表皮積層シートの幅方向における両端部に、エンドレスベルトまたはエンドレスチェーンの外周部に固定敷設されたピンを順次突き刺す際に、表皮材を除く積層シートのみの両端部を確実に把持することができ、加熱炉に搬送する際に把持具から表皮積層シートが離脱することなく、安定的な状態で積層シートの搬送並びに熱成形を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係わる表皮積層シートの断面構成を示している。
【図2】図2は、本発明の実施例における、表皮積層シートの各構成材の幅の、発泡層10の幅に対する関係を示す模式図である。発泡層10の幅方向における端部を基準位置として、各構成材の幅方向の端部との距離を示しており、その実測値は、各構成材の端部が発泡層10の端部より内側に存在する場合はプラス表示とし、外側に存在する場合はマイナス表示とした。なお、符号に付随する数字は、1が表皮積層シートの幅方向の左側(L)を、2が右側(R)を意味している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の表皮積層シートは、変性PPE系樹脂発泡シートの両面に、変性PPE系樹脂非発泡シートが積層一体化されてなり、何れか一方の変性PPE系樹脂非発泡シートにホットメルト接着剤層を介して表皮材が配置積層されてなる表皮積層シートであって、表皮積層シートの幅方向において該両端から30〜100mmの領域にはホットメルト接着剤層が積層されていないことを特徴とする表皮積層シートに関する。
【0015】
本発明の熱成形方法は、表皮積層シートの幅方向において両端から30〜100mmのホットメルト接着剤層が積層されていない部位を、ピンにて突き刺すことにより、表皮材を除く積層シートのみを確実に把持し、上記表皮積層シートを上側に表皮材を配置し熱成形をすることで、エンドレスベルトまたはエンドレスチェーンの外周部に固定敷設されたピンに順次突き刺して表皮積層シートの両端部を確実に把持することができ、加熱炉に搬送するときに把持具から積層シートが離脱することなく、安定的な状態で表皮積層シートの搬送並びに熱成形を行うことができる、表皮積層シートの成形方法に関する。
【0016】
本発明の表皮積層シート(「自動車内装材用積層シート」と称する場合もある。)、その成形方法および成形体(「自動車内装材成形体」と称する場合もある。)を、図面に基づいて説明するが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本発明の一実施形態に係わる表皮積層シートの断面構成を、図1に示している。図1の表皮積層シート30は、変性PPE系樹脂を基材樹脂とする押出発泡シートである発泡層10の両面に、変性PPE系樹脂を基材樹脂とする非発泡層11および13(室内側非発泡層11および室外側非発泡層13)が形成されるものであり、室外側非発泡層13の表面に、接着剤層16を介して異音防止層20が積層され、室内側非発泡層11の表面にホットメルト接着剤層18が積層される。さらに、ホットメルト接着剤層18を介して、意匠層となる表皮材22が積層されてなるものである。
【0018】
本発明における押出発泡シートである発泡層10の基材樹脂として使用される熱可塑性樹脂としては、PPE系樹脂とポリスチレン系樹脂(以下、「PS系樹脂」と記す。)との樹脂混合物、PPEへのスチレングラフト重合体等のスチレン・フェニレンエーテル共重合体、等の変性PPE系樹脂が挙げられる。変性PPE系樹脂は、耐熱性、剛性等の品質に優れ、加工性および製造が容易である点で好ましい。
【0019】
本発明で使用される変性PPE系樹脂は、PPE系樹脂とPS系樹脂とを混合することによって変性を行ったものであり、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂をいう。PPE系樹脂とPS系樹脂との混合による変性は、製造が容易であるなどの点から好ましい。
【0020】
変性PPE系樹脂中のPPE系樹脂の具体例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレンー1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−プロピルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−ブチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−ブロムフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−エチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)などがあげられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
これらのうちで、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)が、原料の汎用性、コストの点から好ましい。また、難燃性を付与したい場合には、ハロゲン系元素が含まれるポリ(2−メチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−ブロムフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−エチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)が好ましい。
【0022】
変性PPE系樹脂中のPS系樹脂の具体例としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン共重合体、ハイインパクトポリスチレンで代表されるスチレン−ブタジエン共重合体などがあげられる。これらのうちでは、ポリスチレンがその汎用性、コストの点から好ましい。
【0023】
本発明において、押出発泡シートの基材樹脂である変性PPE系樹脂を構成する混合樹脂におけるPPE系樹脂とPS系樹脂の割合(両者の合計量が100重量%)としては、PPE樹脂25〜70重量%およびPS系樹脂30〜75重量%であることが好ましく、PPE系樹脂30〜60重量%およびPS系樹脂40〜70重量%であることがより好ましい。PPE樹脂の混合割合が25重量%未満では、耐熱性が劣る傾向にあり、70重量%を超えると、加熱流動時の粘度が上昇し、発泡成形が困難になる場合がある。
【0024】
本発明における発泡シートである発泡層10は、発泡剤として炭化水素系発泡剤を用いて、押出発泡成形して得られるものが好ましい。
【0025】
発泡シートである発泡層10を得る際に使用される炭化水素系発泡剤としては、揮発性発泡剤が好ましく、具体的には、例えば、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンなどがあげられる。なかでも、発泡剤の溶解度を示すカウリブタノール値(KB値)が20〜50である炭化水素系発泡剤が好ましい。また、この範囲よりもKB値の高いものと低いものとを2種以上適宜混合して前記範囲としたものも使用することができる。
【0026】
本発明においては、前記発泡剤の具体例のなかでも、発泡剤の適度な溶解性および発泡剤の逸散性が小さく、発泡層の経時変化に伴う発泡性の変化が小さい点で、イソブタン、または、イソブタンおよびノルマルブタンの混合体であって、イソブタンの比率が高いものが好ましい。発泡剤がイソブタンおよびノルマルブタンの混合体である場合は、混合体中のイソブタン含有量は、50重量%以上が好ましい。イソブタン含有量が50重量%より少ないと発泡剤の逸散性が大きく、発泡層の経時変化に伴う発泡性の変化が大きくなる傾向がある。
【0027】
本発明における押出発泡成形時の炭化水素系発泡剤の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、2.0〜5.0重量部であることが好ましく、3.0〜5.0重量部であることがより好ましい。炭化水素系発泡剤の添加量が3.0重量部より少ないと、成形加熱時の二次発泡倍率が低くなりすぎることも有り得、良好な成形性を得るのに悪影響を与える傾向があり、5.0重量部を超えると、押出発泡が不安定になり、発泡シートの表面荒れが発生する傾向がある。
【0028】
本発明においては、変性PPE系樹脂を基材樹脂とする発泡シートである発泡層10(1次発泡層)の厚さとしては、1.0〜5.0mmが好ましく、2.3〜3.5mmがより好ましい。発泡シートである発泡層10(1次発泡層)の厚さが1.0mmより小さいと、強度および断熱性に劣り、自動車内装材用発泡積層シートとして適当でない場合がある。一方、5.0mmを超えると、成形時の加熱の際、発泡層10(1次発泡層)はさらに発泡(2次発泡)するが、発泡層10の厚み方向の中心部まで伝わり難く、そのため充分な加熱が行えず、成形性が低下する傾向がある。また、充分な加熱を行うべく加熱時間を長くすると、発泡層表面のセルに破泡などが生じ、製品として許容できるものが得られ難くなる傾向がある。
【0029】
本発明における、発泡シートである発泡層10(1次発泡層)の発泡倍率は16〜25倍が好ましく、18〜23倍がより好ましい。発泡層10(1次発泡層)の発泡倍率が16倍より低いと、軽量化の効果が小さくなる傾向がある。発泡層10(1次発泡層)の発泡倍率が25倍を超えると、強度が低下し、中心部まで加熱しにくいことにより、成形性が低下する傾向がある。
【0030】
本発明における、発泡シートである発泡層10を形成する一次発泡層の独立気泡率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。独立気泡率が80%未満では、断熱性、剛性に劣ると共に、成形加熱によって目的とする二次発泡倍率を得ることが困難となり、成形性に劣る傾向がある。
【0031】
本発明における、発泡シートである発泡層10(1次発泡層)のセル径は0.05〜0.9mmが好ましく、0.1〜0.7mmがより好ましい。発泡層10のセル径が0.05mmより小さいと、充分な強度が得られ難くい傾向があり、0.9mmを超えると、断熱性に劣る傾向がある。
【0032】
本発明における、発泡シートである発泡層10(1次発泡層)の目付は80〜180g/mが好ましく、100〜150g/mがより好ましい。発泡層10の目付が80g/mより低いと、自動車内装材用積層シート40としての必要剛性が不足する傾向があり、目付が180g/mを超えると、軽量性の効果が低下する傾向がある。
【0033】
本発明における、発泡シートである発泡層10(1次発泡層)中の残存揮発成分量は、発泡層10の全重量に対して1.0〜5.0重量%が好ましく、2.0〜4.5重量%がより好ましい。発泡層10中の残存揮発成分量が1.0重量%より少ないと、2次発泡倍率が低くなりすぎることも有り得るため、良好な成形性を得るのに影響を与える傾向がある。また、発泡層10中の残存揮発成分量が5.0重量%を超えると、接着剤層との間に空気溜まりが発生したり、経時による寸法安定性が低下する傾向がある。
なお、発泡層10中の残存揮発成分量は、ガスクロマトグラフィーにより測定しても良いが、通常、発泡層10の試験片を耐熱性樹脂が軟化を始める温度以上でかつ分解温度以下の温度範囲で加熱して揮発成分を充分に揮発させ、加熱前後の重量差により測定することができる。
【0034】
一般に、発泡シートである発泡層10(1次発泡層)においては、押出発泡成形時に延伸されて扁平となっていたセルが、成形加熱時に扁平率を解消する方向にその形状を変化させることにより、加熱収縮が発現させる。その加熱収縮が、結果的に自動車内装材成形体40の耐熱変形を起こす。
【0035】
本発明において、「耐熱変形」とは、自動車内装材成形体40を加熱試験した場合、加熱前後での発泡セルの加熱収縮による形状変形等により自動車内装材成形体40の寸法変化が発生することを意味する。
【0036】
本発明においては、耐熱変形等の形状変化を抑制するためには、発泡層10(1次発泡層)のセル形状としては、発泡層の両面表層部のセル密度アップを押出発泡成形シート化時に両表面とも均一に冷却することによりハードスキン層として形成することにより、発泡層の表層部を剛直化することで加熱収縮の量を抑制することができる。
【0037】
さらに、発泡層10のセル内圧の変化をなるべく小さくすることにより、加熱収縮量を小さくできる。例えば、発泡層10の押出発泡成形後、非発泡層11および13を積層加工するまでの養生時間を30日以上確保することにより、セル内圧の変化をなるべく小さくすることができる。
【0038】
さらに、加熱収縮による耐熱変形量は、二次加熱成形時の加熱温度を120〜150℃の範囲に制御し、発泡層10のセルに加熱成形時の歪みを与えない条件にて成形加工することによっても、非発泡層11または13を積層しない場合でも小さくすることができる。
【0039】
本発明において用いられる発泡シートである発泡層10の基材樹脂には、必要に応じて気泡調整剤、耐衝撃性改良剤、滑剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、安定剤、臭気低減剤、タルクなどを添加してもよい。
【0040】
本発明において、非発泡層11または13に用いられる熱可塑性樹脂としては、発泡層10との接着性の観点から、変性PPE系樹脂、耐熱PS系樹脂が好ましく使用される。発泡層10と同様に耐熱性、剛性等の品質に優れ、加工性および製造が容易である点から変性PPE系樹脂がより好ましい。
【0041】
本発明において、非発泡層11または13に用いられる変性PPE系樹脂は、上述の発泡層10の場合と同様に、PPE系樹脂とPS系樹脂とを混合することによって変性を行ったものであり、PPE系樹脂とPS系樹脂との混合樹脂をいう。PPE系樹脂とPS系樹脂との混合による変性は、製造が容易である等の点から好ましい。
【0042】
非発泡層におけるPPE系樹脂、PS系樹脂の具体例や好ましいものの例示、それを使用する理由などは、発泡層10において説明した場合と同様である。ただし、PS系樹脂の好ましい具体例として、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)で代表されるスチレン−ブタジエン共重合体が、非発泡層11または13の耐衝撃性改善効果が大きいという点から好ましい。
【0043】
本発明において、非発泡層11または13に用いられる変性PPE系樹脂を構成する混合樹脂におけるPPE系樹脂とPS系樹脂の割合としては、PPE樹脂5〜70重量%およびPS系樹脂30〜95重量%であることが好ましく、PPE系樹脂7〜50重量%およびPS系樹脂50〜93重量%であることがより好ましい。
PPE樹脂の混合割合が5重量%未満では、耐熱性が劣る傾向にあり、70重量%を超えると、加熱流動時の粘度が上昇し、非発泡層の押出加工成形が困難になる場合がある。
【0044】
本発明における非発泡層11および13の各層の目付は、60〜200g/mが好ましく、75〜180g/mがより好ましい。非発泡層の片面目付が60g/mより低い場合には、強度、耐熱性などが低下する傾向があり、200g/mより高い場合には、軽量の効果が低下する傾向がある。
【0045】
本発明において、変性PPE系樹脂発泡層10の両面に積層される変性PPE系樹脂非発泡層11及び13の幅は、発泡層10の幅よりも該両端からそれぞれ0〜15mm短いことが好ましい。すなわち、非発泡層11及び13は、発泡層の幅方向における両端からそれぞれ0〜15mm内側まで積層されることが好ましい。
【0046】
非発泡層の幅が発泡層の幅より外側へはみ出して積層されると、発泡層よりはみ出している非発泡層が、表皮積層シートの搬送冶具(ピン)へのセット時に、冶具側面に接触することによる割れ、カケによって、破片状の異物となり、自動車内装材成形体40に混入する恐れがあるため、好ましくない。また、非発泡層の幅が発泡層の幅方向における両端から15mm超の内側までしか積層されないと、エンドレスベルト又はエンドレスチェーンの外周部に固定敷設されたピンに順次突き刺す際に、積層シートの発泡層のみの把持となるため、積層シートの確実な把持が不十分となり搬送時のピン外れによる脱落トラブルとなるため、好ましくない。
【0047】
本発明においては、非発泡層を形成する場合、必要に応じて、耐衝撃性改良剤、充填剤、滑剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、安定剤、臭気低減剤等を、単独または2種以上組み合わせて添加してもよい。
【0048】
耐衝撃性改良剤は、非発泡層11および13を発泡層10に積層し、加熱成形時に2次発泡させた表皮積層シート30を自動車内装材成形体40として成形する際のパンチング加工や、表皮積層シート30や自動車内装材成形体40を輸送する際に、非発泡層11および13の割れなどを防止するのに有効である。本発明における耐衝撃性改良剤としては、基材樹脂に混合することによってその効果を発揮するものであれば、特に限定なく使用し得る。耐衝撃性改良剤は、重合による変性で熱可塑性樹脂に導入した耐衝撃性改良効果を発揮し得る成分であってもよく、例えば、HIPSなどのように耐衝撃性改良成分を含むものを混合して非発泡層に使用する場合も、非発泡層11または13に耐衝撃性を付与することができる。
【0049】
本発明の表皮積層シート30は、発泡層10の両面に室内側非発泡層11及び室外側非発泡層13を積層し、室外側非発泡層13に異音防止層20が積層され、室内側非発泡層11にホットメルト接着剤18が積層された積層シート25に、ホットメルト接着剤18を介して表皮材22が積層してなるものである。
【0050】
異音防止層20は、自動車内装材成形体40における室外側最外層に積層される部材であり、自動車の車体鋼板と接触する部分であり、自動車内装材成形体40と自動車鋼板との接触による擦れ音を防止する機能が要求され、繊維素材が好適に用いられる。
【0051】
異音防止層20としては、不織布系、織布系の繊維素材であれば何れも用いることができる。異音防止層20に使用される不織布としては、原料繊維を接着剤、溶融繊維、あるいは機械的方法により接合させた布状物であれば、いずれの種類でもよい。原料繊維の種類も特に限定されず、合成繊維、半合成繊維、あるいは天然繊維のいずれをも用いることができる。具体的には、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリアクリロニトリル等の合成繊維や、羊毛、木綿、セルロース等の天然繊維を使用することができるが、中でもポリエステル繊維が好ましく、特に耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。不織布の種類として、その製造加工方法により、接合バインダー接着布、ニードルパンチ布、スパンポンド布、スプレファイバー布、ウォーターニードル布あるいはステッチボンド布等が挙げられ、いずれの不織布も用いることができる。
異音防止層20として合成繊維を含む不織布が好ましい理由としては、製造が容易であり、安価かつ大量に製造することができ、比較的軽目付けで擦れ音を有効に防止できるためである。
【0052】
異音防止層20に使用される不織布は、品質およびコストを考慮すると、12〜70g/mの目付けを有していることが好ましく、20〜60g/mの目付けを有していることがより好ましい。異音防止層に使用される不織布の目付が12g/m未満では、自動車の車体鋼板との接触による擦れ音を防止する機能が低下する傾向がある。一方、不織布の目付が70g/mを超えると、いたずらに重量が増加し、コストアップする傾向にある。
【0053】
室外側非発泡層13側に積層される異音防止層20の幅は、発泡積層シートを構成する発泡層10の幅の該両端からそれぞれ、30mm以下長い、乃至、100mm以下短いことが好ましい。すなわち、異音防止層20は、発泡層の幅方向における両端からそれぞれ、30mm以下の外側、乃至、100mm以下の内側まで積層されることが好ましい。
【0054】
異音防止層20の幅が、発泡層の幅方向において該両端から30mm超の外側にも積層されると、発泡シートよりはみ出した部分が搬送クランプピンに引っかかって千切れることで異物となり、成形品に付着・混入することにより、外観不良を起こす傾向がある。他方、異音防止層20の幅が、発泡層10の幅方向において該両端から100mm超の内側までしか積層されないと、成形品の所定幅より異音防止層の幅が狭くなり、異音防止層本来の役割である擦れ音防止効果が発現できない傾向がある。
【0055】
異音防止層20を室外側非発泡層13に積層する方法としては、図1に示したように、異音防止層積層用接着剤層16を介して、室外側非発泡層13に異音防止層20を接合する方法がある。
【0056】
異音防止層積層用接着剤層16は、室外側非発泡層13と異音防止層20との接着品質保持とコストとの両立を考慮すると、3〜30g/mの目付けを有していることが好ましく、5〜25g/mの目付けを有していることがより好ましい。異音防止層積層用接着剤層16の目付が3g/m未満では、異音防止層20と室外側非発泡層13との接着性を保持できなくなる傾向がある。一方、異音防止層積層用接着剤層16の目付が30g/mを超えると、コストの増加、軽量性の効果が低下する傾向がある。
【0057】
室外側非発泡層13の表面に積層される異音防止層20の幅は、発泡層10及び室外側非発泡層13の幅に対し特に限定されるものではないが、発泡層10及び室外側非発泡層13の幅に対し積層シート内側に積層配置されていることが好ましく、自動車内装材用積層シート30から成形加工して得られる自動車内装成形体40の異音防止効果が発現できるものであれば、発泡層10及び室外側非発泡層13の幅方向内側の積層位置は適宜選択することができる。
【0058】
異音防止層積層用接着剤16を介して異音防止層20と室外側非発泡層13とを接合する方法としては、ホットメルト等のような膜状または粉末状の固形接着剤を介して積層する方法、ラテックス接着剤のような液状接着剤を介して積層する方法、等が挙げられる。
ホットメルト接着剤の具体例としては、ポリオレフィン系、変性ポリオレフィン系、ポリウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂系、ポリアミド系、ポリエステル系、熱可塑性ゴム系、スチレン−ブタジエン共重合体系、スチレン−イソプレン共重合体系等の樹脂を主成分とするものが挙げられる。
【0059】
ホットメルト接着剤のような膜状または粉末状の固形接着剤層を介して異音防止層20の繊維構成体を積層する方法としては、ホットメルト接着剤層を予め室外側非発泡層13の上に積層し、熱ラミネーション法により接着剤層を熱軟化させ、異音防止層20に圧着することにより接合する方法、発泡層10と室外側非発泡層13とのバインダーラミネーション加工時に、ホットメルト接着剤層を室外側非発泡層13と異音防止層20とで挟み込み圧着して接合する方法が挙げられる。
【0060】
本発明で用いられるラテックス接着剤の具体例としては、ポリスチレン系樹脂(PS系樹脂)ラテックス、スチレン−ブタジエン系共重合体(SB系樹脂)ラテックス、カルボキシル化変性スチおうレン−ブタジエン共重合体樹脂ラテックス(以下、「カルボキシル化変性SB系樹脂ラテックス」と記す。)、カルボキシル化変性アクリロニトリル−スチレン系共重合体樹脂ラテックス(以下、「カルボキシル化変性AS系樹脂ラテックス」と記す。)が挙げられ、これらを単独で用いることも可能であるが、自動車内装材成形体40としての種々の要求特性を満たすためには、数種のラテックスを混合して使用することが好ましい。
それらの中で、低温成膜性の良好なバインダーラテックスおよび耐熱性が高いレジンラテックスとの混合物を使用することにより、製造工程内の乾燥処理条件に依存しない安定で強固な初期接着強度とラテックス接着剤層の耐熱性を両立することができ、また、機械安定性の向上により製造工程での取扱い性を改善することができることから、より好ましい。
【0061】
本発明におけるバインダーラテックスとしては、カルボキシル化変性SB系樹脂を構成樹脂とするラテックスが、機械安定性が良好な点および、室外側非発泡層13と相溶性を有する点から好ましい。
【0062】
本発明におけるラテックス混合物中でのレジンラテックスの混合割合は、20〜50重量%が好ましく、30〜50重量%がさらに好ましい。
レジンラテックスの混合割合が20重量%未満では、接着剤層の耐熱性が低下し、内装材の実用特性として要求されるレベルに達しない場合があり、50重量%を超えると、バインダーラテックスが連続相とならず、ラテックス混合物の最低成膜温度が20℃以上となり、室温での乾燥によりフィルムの形成が起こらず接着不良が発生する可能性がある。
【0063】
本発明におけるラテックス混合物の最低成膜温度は、20℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましい。ラテックス混合物の最低成膜温度が20℃を超えると、室温での乾燥によりフィルムの形成が起こらず、接着不良が発生する場合がある。
【0064】
本発明におけるラテックス接着剤による室外側非発泡層13と異音防止層20との接着方法としては、イ)ラテックス接着剤を室外側非発泡層13表面に塗布し、未乾燥状態の塗布面に異音防止層20を積層した状態で乾燥し、仮接着させた後、加熱プレスすることで接着させる方法、ロ)異音防止層20に予めラテックス接着剤を塗布し、未乾燥状態の塗布面に室外側非発泡層13が接する様に積層シートを積層した状態で乾燥し、仮接着させた後、加熱プレスする方法 がある。
【0065】
ラテックス接着剤を塗布し、未乾燥状態で室外側非発泡層13および異音防止層20を積層させることにより、発泡層10の熱的ダメージを受けない加熱温度での加熱プレスによっても、要求される接着性が安定的に発現される。
【0066】
本発明におけるラテックス接着剤としては、カーペットバッキング用、塗工紙用、不織布繊維処理用として当業者に知られるいずれのラテックス接着剤を使用することができる。
【0067】
ラテックス原液中の固形分濃度としては、通常、40重量%以上であるが、塗布量および塗布方法にあわせ、任意に水で希釈した後使用することが可能である。但し、ラテックス水希釈溶液の固形分濃度が低すぎると、工程内での乾燥が不十分となり、接着不良を引き起こす可能性があるため、20重量%以上が好ましい。
【0068】
本発明において使用するバインダーラテックスおよびレジンラテックスは、製造工程でポンプ輸送、配合の際の攪拌、コーティングの際のロールコーターによる剪断等間断なく機械的操作を受けるため機械安定性が良好なラテックスが好ましい。
【0069】
ラテックス接着剤の機械安定性を改善する方策としては、乳化剤の添加量を増加させる、pHをアルカリ側に調整する、ラテックスをカルボキシル化変性する等があげられるが、カルボキシル化変性が最も有効であるため、カルボキシル化変性のラテックスの使用が好ましい。
【0070】
本発明におけるラテックスの塗布方法としては、各種ロールコーター法、スプレー法、泡噴霧法等の方法が挙げられ、塗布量、塗布面の形状により選択される。
【0071】
本発明におけるラテックスは、配合添加剤として、必要に応じて、安定剤、老化防止剤、加硫促進剤、分散剤、充填剤、増粘剤、着色剤、消泡剤、ゲル化剤、凍結防止剤、軟化剤、増粘樹脂等を含有してもよい。
【0072】
本発明における異音防止層積層用接着剤層16としてのラテックスの構成樹脂塗布量は、使用する熱可塑性樹脂の種類、必要とされる異音防止層20との接着強度により任意に選択されるが、一般的に、混合ラテックス中の固形分として、1mあたり3〜50gが好ましく、5〜20gがより好ましい。
異音防止層積層用接着剤層16の構成樹脂塗布量が3g未満の場合は、接着効果が発現されない可能性が有り、50gを超える場合は、成形時に異音防止層20より異音防止層積層用接着剤層16であるラテックスが染み出し金型を汚染する可能性がある。
【0073】
本発明の表皮積層シート30は、ホットメルト接着剤層18を介して、意匠層となる表皮材22が積層される。
【0074】
本発明の表皮積層シート30に用いられるホットメルト接着剤層18としては、フィルム状または粉体上の固形接着剤等があげられ、加工容易性の点より、フィルム状の使用が好ましい。
【0075】
ホットメルト接着剤の具体例としては、ポリオレフィン系、変性ポリオレフィン系、ポリウレタン系、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂系、ポリアミド系、ポリエステル系、熱可塑性ゴム系、スチレン−ブタジエン共重合体系、スチレン−イソプレン共重合体系等の樹脂を主成分とするものが挙げられる。
【0076】
本発明におけるホットメルト接着剤層18は、室内側非発泡層11と表皮材22との接着品質保持とコストとの両立を考慮すると、20〜80g/mの目付けを有していることが好ましく、30〜60g/mの目付けを有していることがより好ましい。
ホットメルト接着剤層18の目付が20g/m未満では、表皮材22と室内側非発泡層11との接着性を保持できなくなる傾向がある。一方、ホットメルト接着剤層18の目付が80g/mを超えると、コストの増加、成形加工時の加熱不足、軽量性の効果が低下する傾向がある。
【0077】
室内側非発泡層11の表面に積層されるホットメルト接着剤層18の幅は、発泡積層シートを構成する発泡層10の幅よりも該両端からそれぞれ30〜100mm短いことが好ましい。すなわち、ホットメルト接着剤層18は、発泡層の幅方向における両端部からそれぞれ30〜100mm内側まで積層されることが好ましい。(ホットメルト接着剤層18は、発泡層の幅方向における両端部からそれぞれ30〜100mm内側には積層されていないことが好ましい。)
【0078】
ホットメルト接着剤層18が、発泡層10の幅方向において該両端から30mm未満の内側まで積層されると、発泡層10並びに室内側非発泡層11と表皮材22が一体積層されるため、表皮積層シート30の幅方向両端部にピンを突き刺す場合、表皮積層シート30に積層一体化している表皮材22は比較的柔らかい素材で構成されているためピンが着実に刺さらず、表皮材22が抵抗となって積層シート25へのピン突き刺しによる把持が不十分になったり、一旦積層シート25に突き刺さったピンから積層シート25が外れたりして、搬送時、エンドレスベルト又はエンドレスチェーンから表皮積層シート30が外れ、加熱炉内に脱落し、成形加工時のトラブルになる事態が生じ、良好な成形加工ができないことから、好ましくない。
【0079】
ホットメルト接着剤層18が発泡層10の幅方向において該両端から100mm超の内側までしか積層されないと、積層シート25の幅方向に表皮材22が一体化されていない部分が増し、成形加工して得られる自動車内装材成形体40の幅方向に表皮材22が一体化されていない部分が生じ、意匠層である表皮材22が自動車内装材成形体40より剥離することから好ましくない。
【0080】
本発明における表皮材22とは、自動車内装材成形体40の室内側最外層に積層される部材であり、自動車室内から見え、触れられる部分に配置されるため、特に意匠性、耐傷つき性、風合い、色目等が要求される。
【0081】
本発明における表皮材22としては、原料繊維を接着剤、溶融繊維、あるいは機械的方法により接合させた布状物であれば、いずれの種類でも使用することができる。原料繊維の種類として、合成繊維、半合成繊維を使用することができる。原料繊維として、具体的には、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリアクリロニトリル等の合成繊維を使用することができるが、これらのうちでもポリエステル繊維が好ましく、特に耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。
【0082】
不織布の種類として、その製造加工方法により、接合バインダー接着布、ニードルパンチ布、スパンポンド布、スプレファイバー布、あるいはステッチボンド布等が挙げられ、いずれの不織布も使用することができる。
【0083】
原料繊維を接合させ、表皮材の耐摩耗性を確保するために、不織布表皮材の構成繊維を接合するための接着剤層として、バインダー樹脂を表皮材の表面または裏面より塗布、塗工などによる含浸する方法がある。
【0084】
バインダー樹脂としては、水溶性、溶剤可溶性、ビスコース液、エマルジョン、合成樹脂粉末等のタイプが挙げられる。これらの中で、耐水性、柔軟性、作業性の観点から、エマルジョンのものが好適に使用される。エマルジョンタイプとして、例えば、アクリロ・ニトリル・ブタジエンラテックス、スチレン・ブタジエンラテックス、アクリレートラテックス、酢酸ビニル系ラテックス等が用いられ、これらは単独または2種以上の混合物としても用いることができる。
【0085】
本発明で用いられる表皮材22は、表皮材の外観性等の品質とコストとの両立を考慮すると、100〜280g/mの目付けを有していることが好ましく、130〜250g/mの目付けを有していることがより好ましい。不織布の目付が100g/m未満では、成形加工時の表皮の伸び性のばらつきに伴うスケ、ムラの外観不良が発生しやすくなる傾向がある。一方、不織布の目付が280g/mを超えると、軽量性の効果が低下する傾向がある。
【0086】
本発明の表皮積層シート30を構成する積層シート25の目付は、235〜760g/mが好ましく、300〜600g/mがより好ましい。自動車内装材用積層シート30の全体目付は、235〜760g/mの範囲内であれば、軽量性と剛性保持の両立ができる。
【0087】
室内側非発泡層11側に積層される表皮材層22の幅は、発泡積層シートを構成する発泡層10の幅の該両端からそれぞれ、20mm以下長い、乃至、20mm以下短いことが好ましい。すなわち、表皮材層22は、発泡層の幅方向における両端からそれぞれ、20mm以下の外側、乃至、20mm以下の内側まで積層されることが好ましい。
【0088】
表皮材層22の幅が、発泡層10の幅方向において該両端から20mm超の外側にも積層されると、発泡シートよりはみ出した部分が積層シートで折り曲がり、積層シートを巻き込んだ状態となり、搬送部の位置決め精度が低下する傾向がある。他方、表皮材層22の幅が、発泡層10の幅方向において該両端から20mm超の内側までしか積層されないと、加熱時に表皮材22が積層されていない積層シートが直接高温下に晒され、過熱による軟化、それに伴う積層シートの剛性低下によりクランプピンからの積層シート外れ、破れが生じ、搬送冶具からの脱落等搬送トラブルに繋がる傾向がある。
【0089】
次に、本発明の表皮積層シート30の製造法について説明する。
【0090】
本発明において使用される発泡層10(1次発泡層)は、例えば、以下のように製造することができる。
すなわち、基材樹脂である変性PPE系樹脂に対し、必要に応じて各種添加剤をブレンドしたものを、押出機を用いて樹脂温度150〜400℃にて溶融・混練する。次いで、高温高圧(樹脂温度150〜400℃および樹脂圧3〜50MPa)下にある押出機内へ、変性PPE系樹脂100重量部に対して炭化水素系発泡剤2.0〜5.0重量部を圧入し、さらに、樹脂温度を発泡適正温度域(150〜300℃)に調節した後、サーキュラーダイなどを用い、低圧帯(通常は大気中)に押出し発泡させる。その後、マンドレル(円筒状冷却筒)などに接触させながら、例えば0.5〜40m/分の速度で引き取ることによりシート状に成形し、カットした後、巻き取るなどの方法により製造することができる。
【0091】
発泡層10に対して、非発泡層11および13を、さらに、異音防止層積層用接着剤層16を介して異音防止層20を、ホットメルト接着剤層18を介して表皮材22を積層する方法としては、例えば、予め発泡成形して巻き取られた発泡層10を繰り出しながら、押出機から供給される溶融状態の室内側非発泡層11の基材樹脂を、膜状、粉末状のホットメルト接着剤層18とで挟み込む形で層状に積層した後、冷却ローラーなどによって圧着する方法(押出ラミネート法)、発泡層10および押出機から供給される溶融状態の室外側非発泡層13の基材樹脂を発泡層10と異音防止層積層用接着剤層16を介して異音防止層20で挟み込む形で層状に積層した後、冷却ローラーなどによって圧着する方法、
等により製造することができる。
なかでも、発泡層10の押出発泡シート成形と非発泡層11および13の押出とをインラインで行って積層する方法が、製造工程の簡略化という点で好ましい。
【0092】
得られた表皮積層シート30(1次発泡積層シート)から賦型により自動車内装材成形体40(2次発泡積層成形体)を得る成形方法としては、上下にヒーターを持つ加熱炉の中央に表皮積層シート30を搬送冶具に把持して導き、成形に適した温度(例えば、発泡積層シートの表面温度を120〜150℃)になるように加熱させた後、温度調節した金型にてプレス冷却し、賦型する方法が挙げられる。
【0093】
なお、加熱炉での表皮積層シートの加熱、加熱軟化した表皮積層シートの金型での賦型について、加熱軟化における積層シートからの表皮の剥離、脱落を防止するために、表皮材が上側に配置することが好ましい。
【0094】
表皮積層シート(1次発泡積層シート)30を搬送冶具に把持する方法としては、外周面に所定間隔毎にピンが固着された一対のエンドレスチェーンまたはベルトを用いて、これらのエンドレスチェーンまたはベルトのピンで、表皮積層シート(1次発泡積層シート)30の幅方向における両端部付近において、それぞれに所定間隔毎に突き刺して把持する方法が挙げられる。
【0095】
エンドレスチェーンまたはベルトに敷設のクランプピンに表皮積層シートを突き刺し把持するにおいて、積層シートを確実に把持しつつ、所定の成形品を得るに必要な最小限の幅を確保し、歩留まりを向上するには、クランプピンは表皮積層シートの幅方向における両端からそれぞれ12mm〜28mm内側の位置に配置し、表皮積層シートを把持することが好ましい。
表皮積層シートの幅方向両端からのクランプピン位置が12mm未満の内側の場合、積層シートの幅方向両端部から把持する距離が短く、搬送時にピン破れによる脱落が生じる傾向にあり、28mm超の内側の場合、歩留まりが低下する傾向にある。
【0096】
クランプピンが敷設されたエンドレスチェーンまたはベルトの搬送速度は、生産性の点から、40m/分〜150m/分が好ましく、60m/分〜120m/分がより好ましい。搬送速度が40m/分未満の場合、成形サイクル時間が長くなり、生産性が低下する傾向にある。一方で、搬送速度が150m/分より大の場合、搬送時に積層シートが進行前方方向から風圧を受け、先端部が風圧によりピンより外れ、ピンより外れ浮き上がった積層シートが加熱炉入口の枠に接触し、良好な搬送並びに成形ができなる傾向がある。
【0097】
なお、表皮積層シート(1次発泡積層シート)30の幅方向両端部を把持冶具にて把持するタイミングとしては、表皮積層シート(1次発泡積層シート)30を加熱炉にて加熱する前が連続供給にて生産性を向上するため、好ましい。
【0098】
成形方法の例としては、具体的には、例えば、プラグ成形、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースドロー成形などの方法があげられる。
【0099】
本発明における表皮積層シート30は、室外側非発泡層13に異音防止層20を積層することにより、該基材の成形加工における金型との接触による冷却を防止することができ、該基材を用いた成形品の加工歪みを低減することができる。さらに、室外側非発泡層13に異音防止層20として配置することにより、自動車の振動等による自動車内装材成形体40と自動車ボデー本体の擦れによって発生する擦れ音を、該層にて防止することができる。
【0100】
本発明において、表皮積層シート30を構成する発泡層10(1次発泡シート)を加熱により2次発泡させる場合には、1次発泡シートに対して、通常1.2〜4倍に2次発泡させるのが好ましく、さらには1.5〜3倍に2次発泡させるのが好ましい。
従って、2次発泡後の発泡層(2次発泡シート)の発泡倍率は、19〜100倍が好ましく、24〜66倍がより好ましく、26〜55倍がさらに好ましい。2次発泡倍率が1.2倍未満では、柔軟性に劣り、曲げ等による破損が生じ易い傾向がある。2次発泡倍率が4倍を超えると、強度が低下する傾向がある。
【0101】
2次発泡後の発泡層(2次発泡シート)の厚さは、1.2〜20mmが好ましく、2.5〜10.0mmがより好ましく、3.5〜8.0mmがさらに好ましい。
2次発泡後の発泡層の厚さが1.2mmより小さいと、強度および断熱性に劣り、自動車内装材成形体40として適当でない場合がある。厚さが20mmを超えると、成形賦型時の形状発現性が劣り、さらに必要以上に嵩高くなり車室内が狭くなる傾向がある。
【0102】
このように成形して得られる自動車内装材成形体40の目付は、335〜1040g/mが好ましく、435〜905g/mがさらに好ましい。
自動車内装材成形体の全体目付が335g/m未満では、強度が劣り、曲げ等による破損が生じ易く、断熱性能が低下する傾向がある。1040g/mを超えると、重量増に伴う取扱い性(作業者のハンドリング性)が低下し、軽量性が劣る傾向にある。
【0103】
以上、本発明に係わる表皮積層シート、成形方法および成形体の様態を種々説明したが、本発明は前記の態様に限定されるものではない。例えば、表皮積層シートは、用途として電車、航空機、建築物の室内などの内装用の基材にも使用することができ、広義に解釈されるべきものである。その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施し得るものである。
【実施例】
【0104】
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限を受けるものではない。
実施例または比較例に用いた樹脂を表1に示した。
【0105】
【表1】

【0106】
なお、表1に示した各符号に関する記載は次の通りである。
PPE :ポリフェニレンエーテル樹脂
PS :ポリスチレン樹脂
HIPS :ハイインパクトポリスチレン樹脂
SB :スチレン・ブタジエン系共重合樹脂
【0107】
実施例または比較例にて実施した評価方法を、以下に示す。
【0108】
(発泡層、成形体の厚さ)
得られた1次発泡シート、成形体について、幅方向に20ヵ所の厚さを測定し、その測定値の平均値を算出した。
【0109】
(発泡倍率)
得られた1次発泡シートの密度dfをJIS K7222に準じて測定し、別途、変性PPE系樹脂の密度dpをJIS K7112に準じて測定し、発泡倍率=dp/dfの式により算出した。
【0110】
(セル径)
得られた1次発泡シート発泡層の断面を光学顕微鏡で観察して20個のセル径を測定し、その測定値の平均値を算出した。
【0111】
(独立気泡率)
得られた1次発泡シートの独立気泡率は、ASTMD−2859に準じて、マルチピクノメーター(ベックマン社製)を用いて測定した。
【0112】
(目付)
用いた材料の任意の5ヵ所より、100mm角の大きさの試験片を切り出し、それらの重量を測定した後、平均値を算出し、m当たりに換算した。
【0113】
(搬送性)
<自動車天井材の成形>における、積層シートの加熱炉および賦型部への搬送作業において、クランプピンからの積層シートの脱落状態により、以下の基準から、搬送性を評価した。
○:クランプピンからの積層シート外れがない。
△:クランプピンからの積層シート外れが一部認められるものの、搬送チェーンからの
脱落は発生していない。
×:クランプピンからの積層シート外れが発生し、搬送チェーンからの脱落が発生する。
【0114】
(成形体外観)
得られた成形体(自動車天井材)の外観を、以下の基準により評価した。
○:皺、欠け、破れ、表皮材の浮き/剥離などの著しい外観異常が認められない
△:表皮、異音防止層に一部皴が認められる
×:皴、欠け、破れが発生する。所定形状が発現していない。表皮材の浮き/剥離が認められる。
【0115】
なお、実施例および比較例での表皮積層シートの各構成材の幅に関しては、図2に示すように、発泡層10の幅方向における端部を基準位置とした、各構成材の幅方向の端部との距離として表示している。実測値は、各構成材の端部が発泡層10の端部より内側に存在する場合はプラス表示とし、外側に存在する場合はマイナス表示とした。
なお、符号のアルファベットは、Uは室内側非発泡層の端部との距離、Sは室外側非発泡層の端部との距離、Iは異音防止層の端部との距離、Hはホットメルト接着材層の端部との距離を示している。さらに、符号に付随する数字は、表皮積層シートの幅方向の左側(L)を1とし、右側(R)を2と表示した。
【0116】
(実施例1)
<発泡層の製造>
PPE樹脂成分40重量%およびPS樹脂成分60重量%となるようにPPE樹脂(A)57.1重量部およびPS樹脂(B)42.9重量部とを混合した混合樹脂100重量部に対して、iso−ブタンを主成分とする炭化水素系発泡剤(iso−ブタン/n−ブタン=85/15重量%)3.8重量部およびタルク0.32重量部を押出機により樹脂温度270℃にて混練し、樹脂温度を195℃まで冷却し、圧力15MPaでサーキュラーダイスにより押出し、引き取りロールを介して巻取りロールにロール状に巻取り、一次発泡層の厚さ2.3mm、発泡層の幅1315mm、一次発泡倍率15.5倍、独立気泡率87%、セル径0.16mmおよび目付150g/mの1次発泡シートの巻物を得た。
<室外側非発泡層および異音防止層の積層>
前記1次発泡シートをロールより繰り出しながら、PPE樹脂成分10.0重量%、PS樹脂成分79.3重量%およびゴム成分10.7重量%となるようにPPE樹脂(A)14.3重量部およびHIPS樹脂(C)85.7重量部を混合した混合樹脂を、押出機を用い樹脂温度240℃にて溶融・混練し、Tダイを用いてフィルム状に押出し、溶融状態でフィルム状の室外側非発泡層を前記1次発泡シートに積層し、目付120g/mの変性PPE系樹脂非発泡層を形成した。
その際、変性PPE系樹脂室外側非発泡層を積層時に、異音防止層として、カルボキシル化変性SB系樹脂ラテックス接着剤(F)[JSR(株)製、0569]が塗布(塗布目付:5g/m−dry)された目付20g/m、厚み0.3mmのスパンレース不織布(G)[(株)ユウホウ製、セレスR8020]を積層した。
<室内側非発泡層およびホットメルト接着剤層の積層>
得られた変性PPE系樹脂室外側非発泡層を形成した発泡積層シートに、PPE樹脂成分15.0重量%、PS樹脂成分84.4重量%およびゴム成分0.6重量%となるようにPPE樹脂(A)21.4重量部、PS樹脂(B)73.6量部およびHIPS樹脂(C)5重量部を混合した混合樹脂を、樹脂温度が240℃となるようフィルム状に押し出し、室外側非発泡層を形成した発泡シートの反対面に目付120g/mの変性PPE系樹脂室内側非発泡層を形成した。
変性PPE系樹脂非発泡層をTダイにてフィルム状に押出して積層する際に、テフロン(登録商標)表面加工処理されたラミネートロール側斜め上方より、ホットメルト接着剤層として、目付30g/m、幅1220mmのホットメルトフィルム(E)[倉敷紡績(株)製、クランベターX2200]を用い、ホットメルトフィルムを繰出機より繰り出し、皺取り用のロールを経由して、ラミネートロールとバックロール間では挟み込むように、積層した。
【0117】
<表皮材層の積層>
室内外非発泡層、異音防止層、ホットメルト接着剤層が積層された発泡積層シートのホットメルト接着剤層を加熱軟化させ、目付140g/mのプレーンニードルパンチ不織布(D)[(株)オーツカ製]を圧着し、積層シートに意匠面表皮材を積層した表皮積層シート(自動車内装材用積層シート)を得た。
なお、表皮積層シート(自動車内装材用積層シート)の幅は1304mmであった。室内側非発泡層の端部は、発泡層の両端部から、左側が3mm内側(U)、右側が2mm内側(U)であった。ホットメルト接着剤層の端部は、発泡層の両端部から、左側が2mm内側(F)、右側が0mm内側(F)であった。表皮剤層の端部は、発泡層の両端部から、左側が50mm内側(H)、右側が48mm内側(H)であった。室外側非発泡層の端部は、発泡層の両端部から、左側が5mm内側(S)、右側が6mm内側(S)であった。異音防止層の端部は、発泡層の両端部から、左側が12mm内側(I)、右側が14mm内側(I)であった。
【0118】
<成形体(自動車天井材)の成形>
成形体(自動車天井材)の成形には、搬送手段として、外周面に高さ25mmのクランプピンが200mm間隔毎に固着された、一対の無端状のチェーンを有する、加熱炉および賦型部を有する成形機を用いた。
得られた表皮積層シート(自動車内装材用積層シート)を長さ2150mmのシートに切断した後、上面側を意匠面表皮材層、下面を異音防止用不織布層となるように配置して、上記チェーンのピンを自動車内装材用積層シートの両端部から25mm内側の位置に突き刺して把持した状態で、チェーンを80m/分の速度で駆動させることにより、表皮積層シート(自動車内装材用積層シート)を成形機の加熱炉に入れ、表皮積層シート(自動車内装材用積層シート)の表面温度が、意匠側表皮材表面で170℃、異音防止層表面で145℃となるように40秒加熱した。
加熱後、連続して賦型部に搬送して、自動車成形天井用金型(幅1120mm×長さ1800mmの金型、上凸型、下凹型形状)を用い、金型クリアランス5.0mmでプラグ成形を行い、トリミング、パンチング加工を施し、成形体(自動車天井材)を得た。
表皮積層シート(自動車内装材用積層シート)をピンに把持した後、加熱炉、賦型部への搬送に関し、ピンからの積層シートの脱落はなく、成形加工に問題は認められなかった。
なお、搬送性および得られた成形体外観に関する評価結果を、表2に示した。
【0119】
(実施例2)
ホットメルト接着剤層の幅を1200mmとして積層した以外は、実施例1と同様な方法により、表皮積層シート(自動車内装材用積層シート;幅1304mm)を得、成形体(自動車天井材)の成形を行い、自動車天井材を得た。なお、積層された各層端部の発泡層端部に対する距離は、表2に示した通りであった。
<自動車天井材の成形>において、実施例1と同様の操作により成形加工を行った際、表皮積層シート(自動車内装材用積層シート)をピンに把持した後、加熱炉、賦型部への搬送において、ピンからの積層シートの脱落はなかった。
なお、搬送性および得られた成形体外観に関する評価結果を、表2に示した。
【0120】
(実施例3)
ホットメルト接着剤層の幅を1150mmとして積層した以外は、実施例1と同様な方法により、表皮積層シート(自動車内装材用積層シート;幅1304mm)を得、成形体(自動車天井材)の成形を行い、自動車天井材を得た。
なお、積層された各層端部の発泡層端部に対する距離は、表2に示した通りであった。
<自動車天井材の成形>において、実施例1と同様の操作により成形加工を行った際、表皮積層シート(自動車内装材用積層シート)をピンに把持した後、加熱炉、賦型部への搬送において、ピンからの積層シートの脱落はなかった。
なお、搬送性および得られた成形体外観に関する評価結果を、表2に示した。
【0121】
(実施例4)
ホットメルト接着剤層の幅を1280mmとして積層した以外は、実施例1と同様な方法により、表皮積層シート(自動車内装材用積層シート;幅1304mm)を得、成形体(自動車天井材)の成形を行い、自動車天井材を得た。
なお、積層された各層端部の発泡層端部に対する距離は、表2に示した通りであった。
<自動車天井材の成形>において、実施例1と同様の操作により成形加工を行った際、自動車内装材用積層シートをピンに把持した後、加熱炉、賦型部への搬送において、ピンからの積層シートの脱落はなかった。
なお、搬送性および得られた成形体外観に関する評価結果を、表2に示した。
【0122】
(比較例1)
ホットメルト接着剤層の幅を1330mmとして積層した以外は、実施例1と同様な方法により、表皮積層シート(自動車内装材用積層シート;幅1304mm)を得、成形体(自動車天井材)の成形を行い、自動車天井材を得た。
なお、積層された各層端部の発泡層端部に対する距離は、表2に示した通りであった。
<自動車天井材の成形>において、実施例1と同様の操作により成形加工を行った際、チェーン駆動と共に、ピンから積層シートが外れ、加熱炉内への挿入前に、積層シートがピンより脱落し、成形加工することができなかった。
なお、搬送性および得られた成形体外観に関する評価結果を、表2に示した。
【0123】
(比較例2)
ホットメルト接着剤層の幅を1120mmとして積層した以外は、実施例1と同様な方法により、自表皮積層シート(自動車内装材用積層シート;幅1304mm)を得、成形体(自動車天井材)の成形を行い、自動車天井材を得た。
なお、積層された各層端部の発泡層端部に対する距離は、表2に示した通りであった。
<自動車天井材の成形>において、実施例1と同様の操作により成形加工を行った。
得られた自動車天井材の外観は、成形体の幅方向における両端からそれぞれ15mm内側の位置は表皮材が浮いた状態であり、一体化されておらず、外観良好な成形体取得はできなかった。
なお、搬送性および得られた成形体外観に関する評価結果を、表2に示した。
【0124】
【表2】

【符号の説明】
【0125】
10 発泡層
11 室内側非発泡層
13 室外側非発泡層
16 異音防止層積層用接着剤層
18 ホットメルト接着剤層
20 異音防止層
22 表皮材層
25 積層シート
30 表皮積層シート
40 自動車天井材
表皮積層シート左側での、発泡剤層の端部と室内側非発泡層の端部との距離
表皮積層シート右側での、発泡剤層の端部と室外側非発泡層の端部との距離
表皮積層シート左側での、発泡剤層の端部と室外側非発泡層の端部との距離
表皮積層シート右側での、発泡剤層の端部と室外側非発泡層の端部との距離
表皮積層シート左側での、発泡剤層の端部と異音防止層の端部との距離
表皮積層シート右側での、発泡剤層の端部と異音防止層の端部との距離
表皮積層シート左側での、発泡剤層の端部とホットメルト接着材層の端部との距離
表皮積層シート右側での、発泡剤層の端部とホットメルト接着材層の端部との距離
表皮積層シート左側での、発泡剤層の端部と表皮材層の端部との距離
表皮積層シート右側での、発泡剤層の端部と表皮材層の端部との距離


【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートの両面に変性ポリフェニレンエーテル系樹脂非発泡シートが積層一体化されてなり、何れか一方の変性ポリフェニレンエーテル系樹脂非発泡シートにホットメルト接着剤層を介して表皮材が積層されてなる表皮積層シートであって、
表皮積層シートの幅方向において両端部からそれぞれ30〜100mm内側にはホットメルト接着剤層が積層されていないことを特徴とする、表皮積層シート。
【請求項2】
変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートの両面に変性ポリフェニレンエーテル系樹脂非発泡シートが積層一体化されてなり、何れか一方の変性ポリフェニレンエーテル系樹脂非発泡シートにホットメルト接着剤層を介して表皮材が積層されてなる表皮積層シートを、外周面に所定間隔毎にピンが固着されてなる一対のエンドレスチェーンまたはベルトを用いて把持した状態で搬送して、加熱および熱成形を行う表皮積層シートの成形方法であって、
表皮材が上側となるように表皮積層シートを配置し、表皮積層シートの幅方向において、両端部からそれぞれ30〜100mm内側にはホットメルト接着剤層が積層されていない部位に、ピンを突き刺すことを特徴とする成形方法。
【請求項3】
請求項1に記載の積層シートを熱成形してなることを特徴とする、成形体。
【請求項4】
請求項2の成形方法により得られることを特徴とする、成形体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−240380(P2012−240380A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115235(P2011−115235)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】