説明

自動車室内装飾用照明装置

【課題】ELシートを発光させるために、自動車用バッテリの出力を変換するインバータを用いると、装置全体の大型化及びコストアップとなる。
【解決手段】家庭用交流電源とほぼ同じ周波数及び電圧を出力するインバータ20に接続された差し込みコンセント19と並列にELシート12,14を接続することにより、ELシート専用のインバータを廃止し、装置全体の小型化及びコストダウンを実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EL(Electro Luminescence)発光板を用いた自動車室内装飾用の照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ELとは、硫化亜鉛(ZnS)などに電圧を印可した際に発光する現象であって、この現象を利用した無機EL素子は、シート状に成形され照明又は表示用のELシートとして電子機器に多用されている。
【0003】
例えば、ELシートは自動車などで使用され、照明又は表示用で使用するためには、補機用の直流12Vのバッテリ電圧を昇圧して100Vとし、周波数変換にて周波数400Hz程度の交流に変換する必要がある。
【0004】
このようなELシートを用いる場合には、電圧昇圧及び周波数変換用の駆動回路が必要になる。一般的には、電圧昇圧の為にトランスを使用した回路又は、トランスを用いない回路として2つのトランジスタ・スイッチを用いてオン/オフを繰り返しELシートチョッパー・コイルを断続的に充放電させ、ELシートの充放電繰り返すことでELシートを発光させる技術が、特許文献1(特開平8−88081号公報)に示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−88081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のELシートの駆動回路は、昇圧に用いられているトランスが磁性コアと巻線の多いコイルから構成されているため、トランスの形状や容量が大きく、回路の小型化又は薄型化が出来ないという問題があった。
【0007】
さらに、特許文献1に示されているトランスを用いない回路では、小型化が可能であるがコストが高く、複数のELシートを駆動する駆動回路全体ではさらにコストアップとなるという問題があった。また、装飾目的では明るすぎるため夜間の運転の妨げとなる恐れがあり、駆動周波数を下げて照度を低減させていた。
【0008】
図2は、無機ELの明るさと点灯時間の経時変化を示した模式図であり、駆動電圧125V/430Hzから100V/55Hzまでの特性を示している。図2のように、高い周波数と駆動電圧でELシートを長時間使用していると明るさが減少し、暗くなった時に故障したと思われる恐れがあった。しかし、例えば100V/55Hzでは、経時変化があまりみられない。
【0009】
一方、高級車やRV車には、テレビ、パーソナルコンピュータ等の使用を可能とするために従来の直流12Vの他に交流100Vのコンセントを備えたものがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上のような目的を達成するために、本発明に係る自動車室内装飾用照明装置は、自動車のバッテリに接続され該バッテリの電圧よりも高い家庭用交流電源とほぼ同じ周波数及び電圧に変換して出力するインバータと、該インバータの出力に接続され自動車室内に取り付けられる交流電源用差し込みコンセントと、該差し込みコンセントと並列に前記インバータの出力に接続される無機EL発光体と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る自動車室内装飾用照明装置において、前記インバータは、50Hz〜60Hzの交流略100V電源又は略200Vに変換して出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明を用いると、EL発光体を駆動するための専用のインバータが不要となるため、装置の小型化とコスト低減を実現することができる。さらに、EL発光体の明るさが経時変化であまり変化しないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の参考となる構成(以下参考構成という)と、実施の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態における複数のELを駆動するEL駆動回路であり、例えば、カップホルダ位置表示と収納ボックス位置表示などである。EL駆動回路は、12Vバッテリ16を含む駆動回路10である1次側と、交流100Vを供給するインバータ20と交流100V側に接続されたELシート12,14である2次側で構成されている。
【0015】
さらに駆動回路10は、リレーRLY1と、リレーの逆起電力吸収用のダイオードD2と、バッテリ逆接続保護及びノイズ対策用のダイオードD1と、リレー駆動用のトランジスタTr1と、電流制限用の抵抗R3と、プルダウン抵抗R2とを有している。
【0016】
バッテリ16の12Vプラス側は、駆動回路10のリレーRLY1の上端と、ダイオードD2のカソード端子と、イルミネーション・スイッチ18との上端に接続され、イルミネーション・スイッチ18の下端はイルミネーション端子ILL+に接続されている。
【0017】
イルミネーション端子ILL+は、ダイオードD1のアノード端子に接続されさらにダイオードD1のカソード端子は、電流制限用の抵抗R3と接続されている。抵抗R3の他端は、トランジスタTr1のベース端子Bと、トランジスタTr1を確実にオフするためのプルダウン抵抗R2の上端とに接続されている。
【0018】
さらに、トランジスタTr1のコレクタ端子Cは、リレーRLY1の下端とダイオードD2のアノード端子と接続されている。また、トランジスタTr1のエミッタE端子と、プルダウン抵抗R2の下端とはグランドに接続されている。
【0019】
駆動回路10のリレーRLY1の100V上端には、インバータ20から出力される交流100V−55Hzが回路保護用のヒューズF1を介して接続されている。さらにリレーRLY1の100V下端にはELシート12が接続され、ELシート12の他端はインバータ20に接続されている。
【0020】
また、家庭用交流電源を用いるテレビ、ビデオ等などの機器を自動車室内でそのまま使用することができるように、インバータの出力に接続された差し込みコンセント19が例えばコンソールボックスの後席側に取り付けられる。
【0021】
次に、動作説明について述べる。イルミネーション・スイッチ18がオフの時は、駆動回路10の入力端子となるイルミネーション端子ILL+もオフで、トランジスタTr1がオフでありリレーRLY1もオフであるため、ELシート12にも交流100Vは印加されず消灯状態である。
【0022】
イルミネーション・スイッチ18がオンの時は、イルミネーション端子ILL+がオンで、トランジスタTr1がオンとなり、リレーRLY1がオンしているため、ELシート12に交流100Vが印加され、点灯状態となる。
【0023】
この時、ELシート12には電流がほとんど流れない。このため、本実施形態においてリレーは、100V電圧に耐えるメカニカル・マイクロリレーを使用した。バッテリの12V側と交流100V側はリレーRLY1を介して電気的に絶縁されている。なお、リレーは、半導体リレー、無接点リレー、アナログスイッチなどを使用しても好適である。
【0024】
本実施形態において、イルミネーション・スイッチ18を用いて夜間照明で使用する場合にてついて説明したが、イグニッション・オン時で使用したければ“IG”、アクセサリ・オン時で使用したければ“ACC”の信号を使用することで好適に動作させることが可能であることはいうまでもない。
【0025】
また、ELシート12の駆動波形は本来、交流100V−400Hz程度であるが、本実施形態では55Hzに落とすことにより、ELシート12の輝度は下がるが、夜間装飾として使用しているため、十分使用可能である。さらに、図2に示すようにELシート12の明るさが長期間変化しないという効果もある。
【0026】
上述したように、本発明を用いることでELシート専用のインバータが不要となり、標準的に装備されているインバータと共用することが可能である。また、眩しすぎない明るさは、夜間装飾として使用する照明として好適である。
【0027】
また、ELシートをリレーを介してインバータに接続するのではなく、手動スイッチを介して接続してもよい。この場合は、上記駆動回路10が不要となる。なお、本実施形態では、カップホルダの位置表示と収納ボックス位置表示を用いて説明したが、これらに限らず車両用の照明として利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態における複数のELを駆動するEL駆動回路を示すブロック図である。
【図2】無機ELの明るさと点灯時間の経時変化を示した模式図である。
【符号の説明】
【0029】
10 駆動回路、12,14 ELシート、16 バッテリ、18 イルミネーション・スイッチ、19 差し込みコンセント、20 インバータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のバッテリに接続され該バッテリの電圧よりも高い家庭用交流電源とほぼ同じ周波数及び電圧に変換して出力するインバータと、
該インバータの出力に接続され自動車室内に取り付けられる交流電源用差し込みコンセントと、
該差し込みコンセントと並列に前記インバータの出力に接続される無機EL発光体と、
を備えることを特徴とする自動車室内装飾用照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車室内装飾用照明装置において、
前記インバータは、50Hz〜60Hzの交流略100V電源又は略200Vに変換して出力することを特徴とする自動車室内装飾用照明装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−117114(P2006−117114A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307209(P2004−307209)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】