説明

自動車用フロアマットクリップ

【課題】フロアやフロアマットの清掃時には、相対的に係止孔がマット係止突起から抜けやすい状態にして、フロアマットを容易に外せるようにする。
【解決手段】フロアマット6とカーペット2との間へ介在されるプレート11と、プレートの上面から膨出されて、フロアマットの係止孔7を貫通して該係止孔の周縁8へ係合するマット係止突起13と、プレートの下面から膨出されて、カーペットの係止孔3を貫通して該係止孔の周縁4へ係合するカーペット係止突起12とを備えるフロアマットクリップにおいて、マット係止突起13の上部に水平軸の周りに回転する係止部材81を回転可能に設け、係止部材をマット係止突起の下部よりも径方向にはみ出す第1の姿勢に回転させた状態と、係止部材をマット係止突起の下部よりも径方向に実質的にはみ出さない第2の姿勢に回転させた状態とに変化させられるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のフロアマットをカーペットへ係止するためのフロアマットクリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のフロアマットクリップは、フロアマットとカーペットとの間へ介在されるプレートと、上端部分が座席側へ折り曲げられた形状に、プレートの上面から膨出されて、フロアマットの係止孔の周縁へ係合するマット係止突起と、プレートの下面から膨出されて、カーペットに形成された係止孔の周縁へ係合するカーペット係止突起とからなり、合成樹脂で一体成形されていた(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
マット係止突起はプレートの上面から垂直に突設された円柱状の首部と、当該首部の上端から座席側へ傾斜した爪状の頭部からなる。頭部を座席側へ傾斜させることにより、マット係止突起は、その上端部分が座席側へ折り曲げられた形状となる。フロアマットには、乗客の足で図の矢印方向へ荷重が掛けられるので、当該マット係止突起は係止孔の周縁へフック止め的に係合することとなる。そして、頭部の傾斜方向が座席方向以外であると、既述の荷重方向の関係から、フロアマットが係止突起より外れ易くなるので好ましくないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平6−24278号公報
【特許文献2】意匠登録第801906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、従来のフロアマットクリップは、上記形状のマット係止突起がフロアマットの係止孔の周縁へフック止め的に係合していたので、フロアマット使用時に係止孔がマット係止突起から抜けてフロアマットが外れるようなことはなかった。
【0006】
しかしその反面、フロアやフロアマットの清掃等のために、係止孔をマット係止突起から抜いてフロアマットを外そうとすると、外しにくいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフロアマットクリップは、フロアマットとカーペットとの間へ介在されるプレートと、プレートの上面から膨出されて、フロアマットの係止孔を貫通して該係止孔の周縁へ係合するマット係止突起と、プレートの下面から膨出されて、カーペットの係止孔を貫通して該係止孔の周縁へ係合するカーペット係止突起とを備えるフロアマットクリップにおいて、マット係止突起の上部に水平軸の周りに回転する係止部材を回転可能に設け、係止部材をマット係止突起の下部よりも径方向にはみ出す第1の姿勢に回転させた状態と、係止部材をマット係止突起の下部よりも径方向に実質的にはみ出さない第2の姿勢に回転させた状態とに変化させられるように構成したことを特徴とする。
【0008】
ここで、係止部材を第1の姿勢に係止する係止構造を設けることが好ましい。さらに、係止部材を第2の姿勢に係止する係止構造を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フロアマット使用時には、相対的に係止孔がマット係止突起から抜けにくい状態にして、フロアマットが外れることを防止し、また、フロアやフロアマットの清掃時には、相対的に係止孔がマット係止突起から抜けやすい状態にして、フロアマットを容易に外すことができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の斜視図である。
【図2】実施例1の(a)正面図、(b)平面図、(c)底面図、(d)左側面図、(e)右側面図である。背面図は正面図と対称に表れる。
【図3】実施例1の使用状態を示す断面図である。
【図4】実施例2の斜視図である。
【図5】実施例2の(a)正面図、(b)平面図、(c)底面図、(d)左側面図、(e)右側面図である。背面図は正面図と対称に表れる。
【図6】実施例2の使用状態を示す断面図である。
【図7】実施例3の斜視図である。
【図8】実施例3の(a)正面図、(b)平面図、(c)底面図、(d)左側面図、(e)右側面図である。背面図は正面図と対称に表れる。
【図9】実施例3の使用状態を示す断面図である。
【図10】実施例4の斜視図である。
【図11】実施例4の(a)正面図、(b)平面図、(c)底面図、(d)左側面図、(e)右側面図である。背面図は正面図と対称に表れる。
【図12】実施例4の使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
フロアマットとカーペットとの間へ介在されるプレートと、プレートの上面から膨出されて、フロアマットの係止孔を貫通して該係止孔の周縁へ係合するマット係止突起と、プレートの下面から膨出されて、カーペットの係止孔を貫通して該係止孔の周縁へ係合するカーペット係止突起とを備えるフロアマットクリップにおいて、マット係止突起の上部に水平軸の周りに回転する係止部材を回転可能に設け、係止部材をマット係止突起の下部よりも径方向にはみ出す第1の姿勢に回転させた状態と、係止部材をマット係止突起の下部よりも径方向に実質的にはみ出さない第2の姿勢に回転させた状態とに変化させられるように構成したことを特徴とするフロアマットクリップである。
【0012】
実施例1〜4のフロアマットクリップを説明する前に、自動車のフロアとフロアマットについて説明しておく。各実施例の断面図(図3等)において、左側が前方向(運転席であればペダルがある側)、右側が後方向(座席側)示している。自動車用のフロアパネル1の上にはカーペット2が前後左右に動かないように敷かれている。カーペット2には係止孔3が形成され、図示例の係止孔3における周縁4は、ハトメ状(フランジ付金属筒)の補強部材5で補強されている。カーペット2の上に載せられるフロアマット6には係止孔7が形成され、図示例の係止孔7における周縁8は、ハトメ状(フランジ付金属筒)の補強部材9で補強されている。なお、周縁4,8の補強部材の材質及び固定の態様は特に限定されない。例えば、樹脂製の筒状部材を補強部材とし、これをカーペットやフロアマットへ接着することでもよいし、カーペットやフロアマットへ樹脂を含浸させて補強部材とすることでもよい。
【0013】
いずれの実施例1〜4のフロアマットクリップも、フロアマット6とカーペット2との間へ介在されるプレート11と、プレート11の下面から膨出されて、カーペット2の係止孔3を貫通して該係止孔3の周縁4へ係合するカーペット係止突起12と、プレート11の上面から膨出されて、フロアマット6の係止孔7を貫通して該係止孔7の周縁8へ係合するマット係止突起13とを備えている。プレート11において、カーペット係止突起とマット係止突起13とは前後方向に離間している。
【0014】
いずれの実施例1〜4のフロアマットクリップも、プレート11は樹脂で左右幅よりも前後に長く形成されている。また、カーペット係止突起12は、間隙14をおいて対向する2つの半割円筒状の可撓部15と、可撓部15の下端部からの膨径状に突出した係止部16とからなり、これら15,16は樹脂でプレート11と一体形成されている。そして、間隙14を狭めるように2つの半割円筒状の可撓部15を撓ませて、係止部16をカーペット2の係止孔3に挿入し、該撓みが戻ると、係止部16が係止孔3の周縁4に係止するようになっている。
【0015】
いずれの実施例1〜4のフロアマットクリップも、マット係止突起13は、相対的にフロアマット6の係止孔7が抜けにくい状態と、相対的にフロアマット6の係止孔7が抜けやすい状態とに変化させられるように構成されているが、その態様が異なる。そこで、以下の実施例1〜4の説明では、主としてマット係止突起13の態様について説明する。
【実施例1】
【0016】
図1〜図3に示すように、実施例1のフロアマットクリップにおけるマット係止突起13は、プレート11の上面から垂直に突設された支柱80と、この支柱80の上部に水平軸の周りに回転可能に設けた係止部材81とからなる。支柱80は樹脂でプレート11と一体形成されている。係止部材81は樹脂でプレート11とは別体に形成されている。支柱80の上部は、縦割り状の間隔82が形成されることで、左右の支柱片83に分かれている。支柱片83の内面には軸孔84が形成され、支柱片83の上面には第2係止凹所85が形成され、支柱片83の側部には第1係止凹所86が形成されている。係止部材81は、幅がおよそ間隔82に等しく、側面の短辺がおよそ支柱80の直径に等しく、側面の長辺が支柱80の直径より大きい、直方体形状に形成されており、該長辺は支柱80の下部よりも径方向の両方にはみ出しうるものである。係止部材81の両側面には、軸孔84に回転可能に係合する回転軸87と、第1係止凹所86と第2係止凹所85に選択的に係止する係止ピン88が形成されている。
【0017】
図3(a)に示すように、係止部材81をその長辺が横方向となり支柱80の下部よりも径方向にはみ出す第1の姿勢に回転させ、係止ピン88を第1係止凹所86に係止させたときは、係止部材81がフロアマット6の係止孔7の周縁8へ係合するため、マット係止突起13は相対的にフロアマット6の係止孔7が抜けにくい状態である。一方、図3(b)に示すように、係止部材81をその短辺が横方向となり支柱80の下部よりも径方向にはみ出さない第2の姿勢に回転させ、係止ピン88を第2係止凹所85に係止させたときは、フロアマット6の係止孔7の周縁8へ係合するものがないため、マット係止突起13は相対的にフロアマット6の係止孔7が抜けやすい状態である。実施例11は、この両状態に変化させられる。
【実施例2】
【0018】
図4〜図6に示すように、実施例2のフロアマットクリップにおけるマット係止突起13は、実施例1のマット係止突起13に対して、係止部材81の長辺が支柱80の下部よりも径方向の一方のみにはみ出しうるものである点と、係止部材81の長辺方向の先端部が円柱状に形成されている点と、係止ピンを省略する代わりに、軸孔84と回転軸87とに、90度回転する毎に係止する矩形状を採用した点と、この係止を外して回転させるのを容易にするための肉抜き89を軸孔84の周りに設けた(肉抜き89により軸孔84の周りが弾性変形しやすくなる)点において相違するものであり、その他の構成及び作用効果は共通である。
【実施例3】
【0019】
図7〜図9に示すように、実施例3のフロアマットクリップにおけるマット係止突起13は、実施例2のマット係止突起13に対して、矩形状の採用に代えて、支柱80の間隔82の内底面に形成した凸部91と、係止部材81の周りに形成した凹部92とが、90度回転する毎に係止するようにした点と、肉抜き89を凸部91の下側に設けた点において相違するものであり、その他の構成及び作用効果は共通である。
【実施例4】
【0020】
図10〜図12に示すように、実施例4のフロアマットクリップにおけるマット係止突起13は、実施例2のマット係止突起13に対して、係止部材81に回転軸に代えてふたこぶ状の長孔93を形成し、別体形成した回転軸94を該長孔93のふたこぶのうちの一つに選択的に係止するようにした点において相違するものであり、その他の構成及び作用効果は共通である。
【0021】
図12(a)に示すように、係止部材81をその長辺が横方向となり支柱80の下部よりも径方向にはみ出す姿勢に回転させたときは、長孔93のうち図12で右側のこぶに回転軸94が嵌合し、係止ピン88が第1係止凹所86に係止する。また、図12(b)に示すように、係止部材81をその長辺が支柱80の下部よりも径方向にはみ出さない姿勢に回転させるときには、まず、係止部材81を横にスライドさせ(図10(c)から(d)も参照)、長孔93のうち同図で左側のこぶに回転軸94を嵌合させ、係止ピン88を第1係止凹所86から外した後、係止部材81を縦に回転させる。
【0022】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【符号の説明】
【0023】
6 フロアマット
7 係止孔
8 周縁
9 補強部材
11 プレート
12 カーペット係止突起
13 マット係止突起
80 支柱
81 係止部材
82 間隔
83 支柱片
84 軸孔
85 第2係止凹所
86 第1係止凹所
87 回転軸
88 係止ピン
89 肉抜き
91 凸部
92 凹部
93 長孔
94 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアマットとカーペットとの間へ介在されるプレートと、プレートの上面から膨出されて、フロアマットの係止孔を貫通して該係止孔の周縁へ係合するマット係止突起と、プレートの下面から膨出されて、カーペットの係止孔を貫通して該係止孔の周縁へ係合するカーペット係止突起とを備えるフロアマットクリップにおいて、マット係止突起の上部に水平軸の周りに回転する係止部材を回転可能に設け、係止部材をマット係止突起の下部よりも径方向にはみ出す第1の姿勢に回転させた状態と、係止部材をマット係止突起の下部よりも径方向に実質的にはみ出さない第2の姿勢に回転させた状態とに変化させられるように構成したことを特徴とするフロアマットクリップ。
【請求項2】
係止部材を第1の姿勢に係止する係止構造を設けた請求項1記載のフロアマットクリップ。
【請求項3】
係止部材を第2の姿勢に係止する係止構造を設けた請求項2記載のフロアマットクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−105145(P2011−105145A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262400(P2009−262400)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】