説明

自動車用フロア嵩上げ材

【課題】フロアパネル面または介在する制振シート面とフロア嵩上げ材の裏面との密着摩擦状態を解消して、異常音の発生を防止することができる自動車用フロア嵩上げ材を提供する。
【解決手段】自動車用フロア嵩上げ材1は、ブロー成形によって一体成形された熱可塑性樹脂製中空二重壁構造体であって、間隔をおいて相対する表壁2および裏壁3を有する。表壁2には複数の溝状リブ6が略平行に形成されており、裏壁3には各溝状リブ6に対向する部位に円錐状リブ7がそれぞれ形成されている。溝状リブ6と円錐状リブ7とは溶着部を形成して一体化されている。裏壁3の円錐状リブ7の部分を除いた表面に、平均表面粗さRaが10〜1500μmの微小凹凸(シボ模様)9が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロアパネルに設置して、床面を所要の高さにするための自動車用フロア嵩上げ材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロアパネルに設置して床面を所要の高さにするための自動車用フロア嵩上げ材としては、フロアパネルとカーペットとの間に介在させて床面を嵩上げするものであって、射出成形により成形された発泡倍率が20〜45倍の発泡プラスチック製の軽量嵩上げ材が、特開2001−347872号公報に記載されている。
【0003】
また、硬質発泡プラスチック製であって、裏面側にリブまたは突起を形成して軽量でかつ高い剛性を有する自動車用嵩上げ材が、特開2003−127796号公報に記載されている。
【特許文献1】特開2001−347872号公報
【特許文献2】特開2003−127796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車のフロアは、フロアパネルの上にフロア嵩上げ材を設置してその上にカーペットを敷いた構成となっている。フロア嵩上げ材はフロアパネルに直に接触しているか、またはフロアパネルとの間にアスファルトシートなどの制振シートが介在しているが、そのいずれの場合でも、カーペットの上からフロア嵩上げ材に荷重がかかるとフロアパネルとフロア嵩上げ材との間の摩擦によって異常音(擦れ音)を発する現象がみられ、その有効な防止対策が求められていた。
【0005】
そこで、本発明は、フロアパネル面または介在する制振シート面とフロア嵩上げ材の裏面との密着摩擦状態を解消して、異常音の発生を防止することができる自動車用フロア嵩上げ材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1に係る自動車用フロア嵩上げ材は、ブロー成形によって一体成形された熱可塑性樹脂製中空二重壁構造体の自動車用フロア嵩上げ材であって、間隔をおいて相対する表壁および裏壁を有し、前記裏壁には少なくともその表面の一部に微小凹凸を形成したこと、を特徴とするものである。
【0007】
また、請求項2に係る自動車用フロア嵩上げ材は、ブロー成形によって一体成形された熱可塑性樹脂製中空二重壁構造体の自動車用フロア嵩上げ材であって、間隔をおいて相対する表壁および裏壁を有し、前記表壁には複数の溝状リブが略平行に形成されており、前記裏壁には各溝状リブに対向する部位に円錐状リブがそれぞれ形成されていて、前記溝状リブと前記円錐状リブとは溶着部を形成して一体化されているとともに、前記裏壁の前記円錐状リブの部分を除いた表面に平均表面粗さRaが10〜1500μmの微小凹凸が形成されていること、を特徴とするものである。
【0008】
さらに、請求項3に係る自動車用フロア嵩上げ材は、請求項1または2に係る自動車用フロア嵩上げ材において、微小凹凸がシボ模様であることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項4に係る自動車用フロア嵩上げ材は、ブロー成形によって一体成形された熱可塑性樹脂製中空二重壁構造体の自動車用フロア嵩上げ材であって、間隔をおいて相対する表壁および裏壁を有し、前記裏壁には少なくともその表面の一部に複数の小突起を形成したこと、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フロア嵩上げ材の裏壁には少なくともその表面の一部に微小凹凸または複数の小突起を形成することにより、フロアパネル面または介在する制振シート面とフロア嵩上げ材の裏面との密着摩擦状態を解消して、異常音の発生を防止することができる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の一実施の形態に係る自動車用フロア嵩上げ材の斜視図、図2は同上の自動車用フロア嵩上げ材を裏返し状に見た斜視図、図3は図2のA−A断面図、図4は自動車用フロア嵩上げ材をフロアパネルに設置した態様を示す斜視図である。
【0012】
図1ないし図4に示すように、フロア嵩上げ材1は、ブロー成形により一体成形された熱可塑性樹脂製中空二重壁構造体であって、間隔をおいて相対する表壁2および裏壁3を有し、表壁2および裏壁3の周縁には側壁4が連設されて、中空部5が形成されている。
【0013】
フロア嵩上げ材1の表壁2には裏壁側へ向かって溝状に窪んだ複数の溝状リブ6が略平行に形成されており、裏壁3には前記溝状リブ6に対向する部位に各溝状リブ6毎に円錐状リブ7が形成されていて、溝状リブ6と円錐状リブ7とは溶着部8を形成して一体化されている。また、裏壁3の円錐状リブ7の部分を除いた表面には平均表面粗さRaが10〜1500μmの微小凹凸(シボ模様)9が形成されている。なお、この微小凹凸9は、裏壁3の表面の一部に形成してもよい。
【0014】
フロア嵩上げ材1の裏壁3に形成される微小凹凸9は、適宜その形状、パターン等を選択可能であるが、ブロー成形による成形性およびその転写性を考慮して決定されるべきである。微小凹凸としてのシボ模様には、梨地状シボ、皮地状シボ、木目状シボ、石目状シボ、布地状シボ、幾何学模様状シボ、格子状または網目状シボなどが好適に適応可能である。
【0015】
フロア嵩上げ材1の裏壁3に形成される微小凹凸9はその平均表面粗さRaが10〜1500μmの範囲が好適であり、平均表面粗さRaが10μm未満では密着摩擦状態による異常音の発生を防止することができない。また、平均表面粗さRaが1500μmより高い場合では表面の凹凸によるがたつきが生じる原因となり好ましくない。これらフロア嵩上げ材1の裏壁3に形成される微小凹凸9は、日本工業規格(JIS)で規定する表面粗さ規格により特定することができ、表面粗さ測定機を用いて測定が可能である。
【0016】
また、裏壁3には微小凹凸9に換えて、小突起を複数形成することも可能であり、任意の位置に点在させるか、突条として形成するのが好適である。突条は複数本を並列状もしくは格子状として裏壁の円錐状リブの部分を除いた表面に形成されることで全体に偏りがなく配置され、がたつきがなく且つフロアパネルとの密着状態を好適に防止することができる。ここで、小突起はフロアパネルとの接触部分におけるがたつきを防止する観点からその高さは0.5〜5mmの範囲が特に好適である。
【0017】
フロア嵩上げ材1は、図4に示すように、自動車のフロアパネル10に裏壁3を下にして設置される。なお、図示しないがフロアパネル10には設置したフロア嵩上げ材1およびその他の部分にわたってカーペットが敷き込まれる。
【0018】
フロア嵩上げ材1は、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂で構成される。
【0019】
フロア嵩上げ材1は、図5および図6に示すようにブロー成形される。ブロー成形金型は一方の金型11と他方の金型12からなり、一方の金型11は溝状リブ6を形成する溝状リブ形成部14を有し、他方の金型12は円錐状リブ7を形成する円錐状リブ形成部15を有している。
【0020】
図5に示すように、開いた一方の金型11と他方の金型12間に押出ヘッド16よりパリソン17を押し出し、金型のピンチオフ部の全周にバリが形成されるように垂下させ、図6に示すように、型締めしてブロー成形することによりフロア嵩上げ材1を成形する。図1、図2および図4に示すように、ブロー成形されたフロア嵩上げ材1の側壁4には金型のピンチオフによってパーティングライン18が形成されている。
【0021】
本実施の形態に係る自動車用フロア嵩上げ材1は、その裏壁3に微小凹凸(シボ模様)9または小突起(図示せず)が形成されているので、フロアパネル面または介在する制振シート(図示せず)面とフロア嵩上げ材1の裏面との密着摩擦状態が解消される。このため、フロア嵩上げ材1が表壁2の溝状リブ6と裏壁3の円錐状リブ7とが溶着部8を形成して一体化されていて高い剛性を有することと相俟って異常音の発生を防止するとともにがたつきのない安定したフロア嵩上げ材1を提供することができる。
【0022】
なお、上記実施の形態に示した自動車用フロア嵩上げ材1は、表壁2の溝状リブ6と裏壁3の円錐状リブ7とが溶着部8で一体化したいわゆる補強リブを有するものであるが、これに限らず、本発明に係る自動車用フロア嵩上げ材は、間隔をおいて相対する表壁および裏壁との間に補強用のリブを有していない熱可塑性樹脂製中空二重壁構造体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態に係る自動車用フロア嵩上げ材の斜視図である。
【図2】同上自動車用フロア嵩上げ材を裏返し状に見た斜視図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】自動車用フロア嵩上げ材をフロアパネルに設置した態様を示す斜視図である。
【図5】自動車用フロア嵩上げ材のブロー成形態様を示す一部の断面図である。
【図6】図5の状態から型締めしてブロー成形した態様を示す一部の断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 フロア嵩上げ材
2 表壁
3 裏壁
4 側壁
5 中空部
6 溝状リブ
7 円錐状リブ
8 溶着部
9 微小凹凸(シボ模様)
10 フロアパネル
11 一方の金型
12 他方の金型
13 キャビティ
14 溝状リブ形成部
15 円錐状リブ形成部
16 押出ヘッド
17 パリソン
18 パーティングライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形によって一体成形された熱可塑性樹脂製中空二重壁構造体の自動車用フロア嵩上げ材であって、
間隔をおいて相対する表壁および裏壁を有し、
前記裏壁には少なくともその表面の一部に微小凹凸を形成したこと、
を特徴とする自動車用フロア嵩上げ材。
【請求項2】
ブロー成形によって一体成形された熱可塑性樹脂製中空二重壁構造体の自動車用フロア嵩上げ材であって、
間隔をおいて相対する表壁および裏壁を有し、
前記表壁には複数の溝状リブが略平行に形成されており、
前記裏壁には各溝状リブに対向する部位に円錐状リブがそれぞれ形成されていて、
前記溝状リブと前記円錐状リブとは溶着部を形成して一体化されているとともに、
前記裏壁の前記円錐状リブの部分を除いた表面に平均表面粗さRaが10〜1500μmの微小凹凸が形成されていること、
を特徴とする自動車用フロア嵩上げ材。
【請求項3】
微小凹凸がシボ模様であることを特徴とする請求項1または2記載の自動車用フロア嵩上げ材。
【請求項4】
ブロー成形によって一体成形された熱可塑性樹脂製中空二重壁構造体の自動車用フロア嵩上げ材であって、
間隔をおいて相対する表壁および裏壁を有し、
前記裏壁には少なくともその表面の一部に複数の小突起を形成したこと、
を特徴とする自動車用フロア嵩上げ材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−151206(P2006−151206A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345129(P2004−345129)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】