説明

自動車用モールディング

【課題】 自動車の車体における曲線等に隙間なく装着でき、また装飾部分の外側表面に窪み部が現出しない車体パネルに追従できる長尺物の合成樹脂製のモールディングを提供すること。
【解決手段】 モールディング本体1には、上部長手方向に装飾部2を形成し、この装飾部2の下方に起立部3を形成し、この起立部3の構成材料を合成樹脂より軟質性の軟質合成樹脂を以って形成する。該起立部3の軟質合成樹脂として、硬さHDA20〜50の熱可塑性エラストマー又は発泡体とする。また、該装飾部2の合成樹脂としては、硬さHDA80〜95の熱可塑性エラストマーとする。保護膜層11の構成材料としては、該装飾部2より硬い、硬質オレフィン系樹脂を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体に装着されるルーフモールディング、サイドプロテクターモールディング、ウインドモールディング等の車体の外装面に装着される長尺状の合成樹脂からなる自動車用モールディングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の自動車用モールディングにおいては、各車体の外側に装着されるため、モールディング本体の装飾部の外表面は、美観の優れた外観と品質の高揚が要求され、自動車の車体の曲線にも確実に合ったものが追従して装着されることが要求されているものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする問題点としては、合成樹脂製よりなる長尺物状と呼ばれるモールディング本体においては、モールディング本体を自動車の車体に装着するときには、モールディング本体が車体との間に隙間なく装着されるためと、モールディング本体が車体側に引っ張られるように強固に装着するため、車体と装着する部分のモールディング本体の表面の装飾部分の外側の表面に極く僅かな窪み部が現出される。従って、車体の外観が美観上著しく劣る問題点と、そのモールディング本体の品質に対する問題点等が生ずるものである。また、モールディング本体の合成樹脂が硬化すぎると、自動車の車体における曲線等に追従対応できず、装着が確実に出来ないという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以上の各問題点を解決するために、モールディング本体の表面の装飾部と、その内面下部の取付脚部と連結される起立部のみの合成樹脂として、表面の装飾部に使用する合成樹脂より軟質性を有する軟質合成樹脂を使用するものである。
また、該モールディング本体の該起立部の軟質合成樹脂としては、硬さHDA20〜50の熱可塑性エラストマー又は、その発泡体とする。更に、表面の装飾部に用いる合成樹脂は、硬さHDA80〜95の熱可塑性エラストマーとする。
また、該モールディング本体の装飾部の表面に形成する保護膜層は、該装飾部より硬い、硬質オレフィン系樹脂を使用したものである。
【発明の効果】
【0005】
以上のように本発明のモールディング本体によれば、長尺物として上部の長手方向に装飾部を設け、該装飾部の下方に連結した起立部と係合部とを形成し、該起立部の構成材料を該装飾部の合成樹脂より軟質性の軟質合成樹脂を以って成形したので、モールディング本体は、車体パネルに強固に装着できると共に、軟質合成樹脂の起立部が引っ張等による伸縮の変化によって、表面の装飾部に窪みや凹部による変形が生ずる事が無い効果と、モールディング本体の表面の外観と、品質の保障が確保される優れた効果がある。
更に、モールディング本体を構成する構成する装飾部の硬さをHDA80〜95のオレフィン系熱可塑性エラストマーを使用したので、自動車の車体パネルの曲線に対しても充分に追従装着できる効果と、車体パネルに対しても確実強固に装着できる効果もある。
また、該装飾部の表面長手方向に該装飾部より硬い硬質オレフィン系樹脂よりなる保護膜層を重合成形することにより、耐傷付法、耐薬品性、耐侯性が著しく向上する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の起立部に使用する該軟質合成樹脂としては、硬さHDA20〜50(JIS K7215)の熱可塑性エラストマーまたは、その発泡体の材料を使用するものである。該モールディング本体を自動車の車体に隙間の無いように強固に装着しても、該起立部の軟質合成樹脂が伸縮することで、モールディング本体の表面の装飾部の表面が引っ張られることが無く、該装飾部の外表面の美観を著しく良好とすることができる。
また、自動車の車体の曲線に追従適合できるように装飾部の合成樹脂としては、硬さHDA80〜95(JIS K7215)の熱可塑性エラストマーを使用することで車体の曲線に対応追従できると共に、車体に対して確実に装着できる。更に、該熱可塑性エラストマーの装飾部の表面が傷付きやすいために、硬質オレフィン系合成樹脂の保護膜層を融着重合している。
【実施例1】
【0007】
次に、本発明の実施例を図面について説明すると、図1に示すものは、自動車の車体(16)の車体パネル(10)にモールディング本体(1)を装着した状態を示す斜面図である。
図2は、図1に示すA−A線の一部欠除した断面図であって、該モールディング本体(1)が、車体パネル(10)に装着され、その長尺物状の表面側に装飾部(2)を形成し、該装飾部(2)と、その裏面下部のやや中央に起立部(3)を設け、該起立部(3)は、該装飾部(2)に用いる合成樹脂より軟質性の軟質合成樹脂を使用している。また、該起立部(3)には、下端に取付脚部(6)の係止凹部(7)に挿着される係合部(5)を形成する。
該取付脚部(6)には、下端に挿入片(8)を形成してある。該挿入片(8)は、車体パネル(10)(10)の接合面を貫通して車体パネル(10)(10)に止着されている。
また、図3及び図4に示すものは、モールディング本体(1)と、取付脚部(6)との断面形状を表している。なお、近年押出し成形においては、断面が一定だけでなく、可変押出し成形によって断面を自由に変化させていることが可能となったために、長尺状と云う表現を使用したものである。
【0008】
次に、図5は、従来例の変形したモールディング本体(1)を示し、これを車体パネル(10)(10)に装着した場合に該装飾部(2)の上面に凹窪み部(15)が発生した状態を示したものである。
また、図6に示すものは、本発明の他の実施例を示すもので、該装飾部(2)の表面に対して補強と保護との役目を果たす。硬質オレフィン系樹脂からなる保護膜層(11)を押出成形によって熱融着したものである。
該装飾部(2)に設けた起立部(3)の係合部(5)と係止される断面コ字状の係止凹弧部(12)を装設してある。該係止凹弧部(12)の下面には、該車体パネル(10)(10)との間に両面テープ(13)を介在して接着したものである。
更に、図7に示すものは、他の実施例を示し、モールディング本体(1)に設けた該起立部(3)に代えて設けた、相対向する長手方向の係止部(14)(14)を装設したものである。
【0009】
次に、本発明に使用される合成樹脂としては、モールディング本体(1)の装飾部(2)を形成する合成樹脂としては、自動車の車体パネル(10)の各種の曲線に追促されると共に、剛性が保たれるように、硬さHDA80〜95(JIS K7215)のオレフィン系熱可塑性エラストマーまたはスチレン系熱可塑性エラストマーを使用する。更に、係合部(5)を形成する合成樹脂は、該装飾部(2)と同種の合成樹脂によって形成してある。また、必要に応じて係合部(5)の合成樹脂は、該装飾部(2)より硬い合成樹脂を使用することもある。
【0010】
更に、該起立部(3)の合成樹脂としては、硬さHDA20〜50(JIS K7215)のスチレン系熱可塑性エラストマー又はその発泡体、オレフィン系熱可塑性エラストマーまたはその発泡体が使用される。
なお、参考として表1にスチレン系熱可塑性エラストマーの硬さと、100%モジュラス(100%引張応力)を記載している。
【0011】
次に、図6に示す、装飾部(2)の表面に形成する硬質オレフィン系樹脂の保護膜層(11)としては、耐薬品性、耐傷付法、耐侯性に優れている高結晶性ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂が使用され、HDA95(JIS K7215)以上の硬さが好ましく、該保護膜層(11)の厚さとしては、装飾部(2)の剛性を損なわれない程度の0.05mmから0.3mmの範囲が良好である。
【0012】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のモールディング本体を自動車等の車輌に装着した全体の斜面図である。
【図2】同じく本願の図1A−A線の縦断側面図である。
【図3】本発明のモールディングの一部である装飾部の断面図である。
【図4】本発明のモールディングの一部分である取付脚部の断面図である。
【図5】従来例の装飾部が変形した状態を示した縦断側面図である。
【図6】本発明の他の実施例を示した縦断側面図である。
【図7】本発明の装飾部の他の実施例を示した断面図である。
【符号の説明】
【0014】
1 モールディング本体
2 装飾部
3 起立部
5 係合部
6 取付脚部
7 係止凹部
8 挿入片
10 車体パネル
11 保護膜層
12 係止凹弧部
13 両面テープ
14 係止部
15 凹窪み部
16 車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体に装設される長尺物として押出し成形される自動車用モールディングにおいて、モールディング本体は、上部長手方向に装飾部を形成し、該装飾部には、下方に連結した起立部と該起立部の下方先端に係合部を形成し、該起立部の合成樹脂は、上部の該装飾部と下方の先端の係合部との合成樹脂より軟質性を有する軟質合成樹脂を以って成形したことを特徴とする自動車用モールディング。
【請求項2】
請求項1に記載されている起立部に用いる軟質合成樹脂の材料として、硬さHDA20〜50の熱可塑性エラストマーまたはその発泡体からなることを特徴とする請求項1の自動車用モールディング。
【請求項3】
請求項1に記載されている該装飾部に用いる合成樹脂として、硬さHDA80〜95の熱可塑性エラストマーからなることを特徴とする請求項1の自動車用モールディング。
【請求項4】
請求項1又は3記載の該装飾部の表面長手方向に該装飾部より硬い、硬質オレフィン系樹脂からなる保護膜層を形成したことを特徴とする請求項1又は3記載の自動車用モールディング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−264660(P2006−264660A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122935(P2005−122935)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000110103)トキワケミカル工業株式会社 (27)
【出願人】(591029688)株式会社システムテクニカル (22)
【Fターム(参考)】