説明

自動車用温調システム

【課題】冷凍負荷が冷凍装置の能力を超えたときに、他の冷熱で不足分を補うようにした自動車用温調システムを提供する。
【解決手段】自動車用温調システム10では、制御部70が、車載バッテリ80の熱量を空気調和に利用する蓄熱利用モード、及び車載バッテリ80の熱量を空気調和に利用しない通常運転モードを、冷凍負荷に応じて選択し実行する。例えば、自動車の走行条件によって冷凍負荷が増大し自動車用温調システム10の最大能力を超えるような場合に、車載バッテリ80に蓄えられた熱量を利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用温調システムに関し、特に、空気調和用の冷媒回路が少なくともバッテリ冷却用の冷媒回路を兼ねている自動車用温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車等の温調システムとして、特許文献1(特開平11−23081号公報)に開示されているような空調装置が広く知られている。この空調装置は、高圧冷媒を中間圧力まで減圧する高圧側電気膨張弁と、中間圧冷媒をさらに低圧圧力まで減圧する低圧側電気膨張弁と、その両電気膨張弁の間に設置される冷却器とを備えており、その冷却器によって、走行用モータ、モータ用インバータおよびバッテリを冷却している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような空調装置では、頻繁には起こりえない最大冷凍負荷にさえも対応できるように冷凍機器を設計する傾向にあり、それが装置の大型化、高コスト化の要因となっている。
【0004】
本発明の課題は、冷凍負荷が冷凍装置の能力を超えたときに、他の冷熱で不足分を補うようにした自動車用温調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る自動車用温調システムは、1つの冷媒回路を用いて少なくとも空気調和とバッテリの温調とを行なう自動車用温調システムであって、冷媒回路の冷媒の流れを制御する制御部を備えている。冷媒回路は、空気調和用の蒸発器及び放熱器との間に、バッテリ温調用冷媒路を有している。バッテリ温調用冷媒路は、バッテリの温調を行なうバッテリ熱交換器を含んでいる。制御部は、バッテリの熱量を空気調和に利用する蓄熱利用モード、及びバッテリの熱量を空気調和に利用しない通常運転モードを、冷凍負荷に応じて選択し実行する。
【0006】
この自動車用温調システムでは、自動車の走行条件によって冷凍負荷が増大し自動車用温調システムの最大能力を超えるような場合に、バッテリに蓄えられた熱量を利用することができる。それゆえ、頻繁には起こりえない最大冷凍負荷に備えて機器を大型化する必要がなくなり、装置の小型・軽量化が図れる。また、バッテリを蓄熱源として利用するので、別に蓄熱源を備える必要がなく、コスト低減が図られる。
【0007】
本発明の第2観点に係る自動車用温調システムは、第1観点に係る自動車用温調システムであって、制御部が、バッテリの目標温度が所定の適正温度範囲内になるように冷媒回路の冷媒の流れを制御している。さらに、制御部は、蓄熱利用モードを選択したとき目標温度を適正温度範囲内の第1範囲内に設定する。また、制御部は、通常運転モードを選択したとき目標温度を適正温度範囲内で且つ第1範囲と異なる第2範囲へ設定する。
【0008】
この自動車用温調システムでは、通常運転モードを実行時にバッテリの目標温度が、バッテリへの蓄熱が行なわれるような温度範囲に設定されるので、(蓄熱利用モードのための)バッテリへの蓄熱手段を別に備える必要がなくなり、小型化、軽量化、及び低コスト化が図られる。
【0009】
本発明の第3観点に係る自動車用温調システムは、第2観点に係る自動車用温調システムであって、蓄熱利用モードが蓄熱冷房運転モードと蓄熱暖房運転モードとを含んでいる。蓄熱冷房運転モードは、バッテリの熱量を利用して冷房運転を行うモードである。蓄熱暖房運転モードは、バッテリの熱量を利用して暖房運転を行うモードである。また、通常運転モードは、通常冷房運転モードと通常暖房運転モードとを含んでいる。通常冷房運転モードは、バッテリの熱量を利用せずに冷房運転を行うモードである。通常暖房運転モードは、バッテリの熱量を利用せずに暖房運転を行うモードである。また、制御部は、通常冷房運転モードを選択したとき、第2範囲を適正温度範囲の最下限値を含む範囲に設定する。さらに、制御部は、通常暖房運転モードを選択したとき、第2範囲を適正温度範囲の最上限値を含む範囲に設定する。
【0010】
この自動車用温調システムでは、冷房運転時に、バッテリを適正温度範囲の最下限値になるように温調しておくことによって、蓄熱冷房運転モードへの切り換えに備えることができる。また、暖房運転時に、バッテリを適正温度範囲の最上限値になるように温調しておくことによって、蓄熱暖房運転モードへの切り換えに備えることができる。
【0011】
本発明の第4観点に係る自動車用温調システムは、第3観点に係る自動車用温調システムであって、制御部が、バッテリ熱交換器内の冷媒圧力を調節して、バッテリの温調を行なう。
【0012】
この自動車用温調システムでは、1つの冷媒回路を用いて空気調和とバッテリの温調とを行なうので、必然的にバッテリ熱交換器内の冷媒圧力は冷媒回路の高圧側圧力と低圧側圧力との間の任意の中間圧力に調節される。つまり、バッテリの目標温度範囲の設定自由度が、蒸発温度と凝縮温度との間の温度範囲分だけ確保されるので、蓄熱利用モード及び通常使用モードそれぞれ目標温度範囲の設定が容易である。
【0013】
本発明の第5観点に係る自動車用温調システムは、第4観点に係る自動車用温調システムであって、バッテリ温調用冷媒路が、バッテリ熱交換器の両側に配置される2つの開度可変の減圧器をさらに含んでいる。制御部は、2つの減圧器の開度を調節して、バッテリ熱交換器内の冷媒圧力を制御する。
【0014】
この自動車用温調システムでは、バッテリ熱交換器内の冷媒圧力を精度よく調節できるので、例えば、バッテリの温度を適正温度範囲の下限値の近傍または上限値の近傍に維持することも可能である。
【0015】
本発明の第6観点に係る自動車用温調システムは、第5観点に係る自動車用温調システムであって、暖房運転時の凝縮器に送風するファンをさらに備えている。制御部は、暖房運転時に蒸発器の着霜を検知または推定したとき、デフロスト運転を行う。デフロスト運転は、ファンを停止し、冷媒の流れを冷房運転時と同じ冷媒循環サイクルへ切り換え、バッテリ熱交換器の上流側となる減圧器の開度を絞り、バッテリ熱交換器の下流側となる減圧器の開度を全開とする、運転である。
【0016】
この自動車用温調システムでは、先ず、高圧ガス冷媒が着霜した蒸発器に流入して放熱するので、蒸発器が加熱され霜が融解する。放熱して凝縮した高圧冷媒は、バッテリ熱交換器の上流側となる減圧器で減圧され、バッテリ熱交換器へ流入する。バッテリ熱交換器内の冷媒は、バッテリを熱源として蒸発するので、(暖房運転時の)凝縮器へは空調対象空間の温度に近い温度のガス冷媒が入り込み、さらに、ファンが停止していることもあって、ユーザーに冷風が当たるなどの不快感を誘発するような事態は防止される。
【0017】
本発明の第7観点に係る自動車用温調システムは、第6観点に係る自動車用温調システムであって、制御部が、デフロスト運転時に除湿指令を受けたとき、デフロスト時除湿運転を行う。デフロスト時除湿運転は、バッテリ熱交換器の上流側となる減圧器の開度を開き、バッテリ熱交換器の下流側となる減圧器の開度を絞る、運転である。
【0018】
この自動車用温調システムでは、制御部は、バッテリ熱交換器の下流側となる減圧器の開度を絞り、その絞り量を調節することができるので、蒸発器内で冷媒を除湿に必要な量だけ蒸発させることができる。
【0019】
本発明の第8観点に係る自動車用温調システムは、第5観点に係る自動車用温調システムであって、暖房運転時の蒸発器に送風する第1ファンと、暖房運転時の凝縮器に送風する第2ファンとをさらに備えている。制御部は、暖房運転時に蒸発器の着霜を検知または推定したとき、デフロスト運転を行う。デフロスト運転は、第1ファンを停止し、冷媒の流れを暖房運転時と同じ冷媒循環サイクルで、バッテリ熱交換器の上流側となる減圧器の開度を絞り、バッテリ熱交換器の下流側となる減圧器の開度を全開とする、運転である。
【0020】
この自動車用温調システムでは、バッテリ熱交換器内の冷媒は、バッテリを熱源として蒸発して過熱ガス冷媒となって蒸発器に入り込む。その結果、蒸発器に付着した霜が融解する。
【0021】
本発明の第9観点に係る自動車用温調システムは、第8観点に係る自動車用温調システムであって、制御部が、デフロスト運転時、第2ファンの回転数を低下させる。
【0022】
この自動車用温調システムでは、第2ファンの回転数を低下させ、冷媒の凝縮器での放熱を抑制することによって、冷媒は、高い熱量を保有したままバッテリ熱交換器に入り、そこで過熱状態となるので、着霜した蒸発器に流入したときに蒸発器を素早く加熱して霜を融解する。
【0023】
本発明の第10観点に係る自動車用温調システムは、第6観点から第9観点のいずれか1つに係る自動車用温調システムであって、制御部が、デフロスト準備運転を行う。デフロスト準備運転は、デフロスト運転を実行する前に、バッテリの温度を現在の温度よりも高い所定温度で所定時間だけ保持する、運転である。
【0024】
この自動車用温調システムでは、バッテリ熱交換器内の冷媒は、バッテリを熱源として蒸発して過熱ガス冷媒となって蒸発器に入り込み蒸発器を加熱して霜を融解するのであるから、バッテリの熱量は大きいほどよい。それゆえ、デフロスト準備運転によって、デフロスト運転前にバッテリの熱量を高めることが有効である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の第1観点に係る自動車用温調システムでは、自動車の走行条件によって冷凍負荷が増大し自動車用温調システムの最大能力を超えるような場合に、バッテリに蓄えられた熱量を利用することができる。それゆえ、頻繁には起こりえない最大冷凍負荷に備えて機器を大型化する必要がなくなり、装置の小型・軽量化が図れる。また、バッテリを蓄熱源として利用するので、別に蓄熱源を備える必要がなく、コスト低減が図られる。
【0026】
本発明の第2観点に係る自動車用温調システムでは、通常運転モードを実行時にバッテリの目標温度が、バッテリへの蓄熱が行なわれるような温度範囲に設定されるので、(蓄熱利用モードのための)バッテリへの蓄熱手段を別に備える必要がなくなり、小型化、軽量化、及び低コスト化が図られる。
【0027】
本発明の第3観点に係る自動車用温調システムでは、冷房運転時に、バッテリを適正温度範囲の最下限値になるように温調しておくことによって、蓄熱冷房運転モードへの切り換えに備えることができる。また、暖房運転時に、バッテリを適正温度範囲の最上限値になるように温調しておくことによって、蓄熱暖房運転モードへの切り換えに備えることができる。
【0028】
本発明の第4観点に係る自動車用温調システムでは、1つの冷媒回路を用いて空気調和とバッテリの温調とを行なうので、必然的にバッテリ熱交換器内の冷媒圧力は冷媒回路の高圧側圧力と低圧側圧力との間の任意の中間圧力に調節される。つまり、バッテリの目標温度範囲の設定自由度が、蒸発温度と凝縮温度との間の温度範囲分だけ確保されるので、蓄熱利用モード及び通常使用モードそれぞれ目標温度範囲の設定が容易である。
【0029】
本発明の第5観点に係る自動車用温調システムでは、バッテリ熱交換器内の冷媒圧力を精度よく調節できるので、例えば、バッテリの温度を適正温度範囲の下限値の近傍または上限値の近傍に維持することも可能である。
【0030】
本発明の第6観点に係る自動車用温調システムでは、先ず、高圧ガス冷媒が着霜した蒸発器に流入して放熱するので、蒸発器が加熱され霜が融解する。放熱して凝縮した高圧冷媒は、バッテリ熱交換器の上流側となる減圧器で減圧され、バッテリ熱交換器へ流入する。バッテリ熱交換器内の冷媒は、バッテリを熱源として蒸発するので、(暖房運転時の)凝縮器へは空調対象空間の温度に近い温度のガス冷媒が入り込み、さらに、ファンが停止していることもあって、ユーザーに冷風が当たるなどの不快感を誘発するような事態は防止される。
【0031】
本発明の第7観点に係る自動車用温調システムでは、制御部は、バッテリ熱交換器の下流側となる減圧器の開度を絞り、その絞り量を調節することができるので、蒸発器内で冷媒を除湿に必要な量だけ蒸発させることができる。
【0032】
本発明の第8観点に係る自動車用温調システムでは、バッテリ熱交換器内の冷媒は、バッテリを熱源として蒸発して過熱ガス冷媒となって蒸発器に入り込む。その結果、蒸発器に付着した霜が融解する。
【0033】
本発明の第9観点に係る自動車用温調システムでは、第2ファンの回転数を低下させ、冷媒の凝縮器での放熱を抑制することによって、冷媒は、高い熱量を保有したままバッテリ熱交換器に入り、そこで過熱状態となるので、着霜した蒸発器に流入したときに蒸発器を素早く加熱して霜を融解する。
【0034】
本発明の第10観点に係る自動車用温調システムでは、バッテリ熱交換器内の冷媒は、バッテリを熱源として蒸発して過熱ガス冷媒となって蒸発器に入り込み蒸発器を加熱して霜を融解するのであるから、バッテリの熱量は大きいほどよい。それゆえ、デフロスト準備運転によって、デフロスト運転前にバッテリの熱量を高めることが有効である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動車用温調システムの構成図。
【図2】圧力−エンタルピ線図上に表した通常冷房運転時の冷凍サイクル。
【図3】圧力−エンタルピ線図上に表した蓄熱冷房運転時の冷凍サイクル。
【図4A】第1実施形態に係る他の自動車用温調システムの構成図。
【図4B】デフロスト終了からデフロスト準備運転を経て次のデフロスト運転開始に至るまでの車載バッテリ温度の変化を表すグラフ。
【図5】第1変形例に係る自動車用温調システムにおける圧力−エンタルピ線図上に表したデフロスト運転時の冷凍サイクル。
【図6A】第2変形例に係る自動車用温調システムの構成図。
【図6B】第2変形例に係る他の自動車用温調システムの構成図。
【図7】第2変形例に係る自動車用温調システムにおける圧力−エンタルピ線図上に表したデフロスト運転時の冷凍サイクル。
【図8】本発明の第2実施形態に係る自動車用温調システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0037】
<第1実施形態>
(1)自動車用温調システム10の概要
(1−1)全体構成
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動車用温調システム10の構成図である。図1において、自動車用温調システム10は、冷房運転及び暖房運転が可能な空気調和システムであり、冷媒回路40と、外気ファン50と、内気ファン60と、制御部70とを備えている。
【0038】
(1−2)冷媒回路40
冷媒回路40では、圧縮機11、四路切換弁13、外気熱交換器15、及び内気熱交換器23が環状に繋がっている。また、冷媒回路40は、外気熱交換器15と内気熱交換器23とを繋ぐバッテリ温調用冷媒路42を有しており、バッテリ温調用冷媒路42には外気熱交換器15側から第1減圧器25、バッテリ熱交換器27及び第2減圧器29が接続されている。
【0039】
さらに、冷媒回路40は駆動部冷却用冷媒路47を有している。具体的には、第1減圧器25と外気熱交換器15との間には冷媒の分岐点Oが存在し、第2減圧器29と内気熱交換器23との間には冷媒の分岐点Pが存在する。駆動部冷却用冷媒路47は、分岐点Oと、分岐点Pと、圧縮機11の吐出管とを繋いでいる。駆動部冷却用冷媒路47には、分岐点O側から第1逆止弁31、冷媒ポンプ33、インバータ熱交換器35、及びモータ熱交換器37が直列に接続されている。また、第1逆止弁31及び冷媒ポンプ33の中間点Qと、分岐点Pとは、第2逆止弁32を含む冷媒路で繋がっている。
【0040】
(1−3)外気ファン50
外気ファン50は、外気熱交換器15に対面するように配置されており、回転することによって車外空気を取り込んで外気熱交換器15に送風し、外気熱交換器15内の冷媒と車外空気との熱交換を促進する。
【0041】
(1−4)内気ファン60
内気ファン60は、一般にはブロアと呼ばれる送風機である。この内気ファン60は、内気熱交換器23が設置された風路の上流側に位置し、内気熱交換器23の上流側から内気熱交換器23に向って送風する。
【0042】
(1−5)制御部70
制御部70は、四路切換弁13、第1減圧器25、第2減圧器29、及び電動膨張弁21の弁開度、圧縮機11、冷媒ポンプ33、内気ファン60、外気ファン50の回転数を制御して、冷媒回路40を循環する冷媒の流れや、内気熱交換器23、外気熱交換器15、バッテリ熱交換器27の熱交換量を制御する。
【0043】
(2)詳細構成
(2−1)圧縮機11、及び四路切換弁13
圧縮機11は、ガス冷媒を吸入して圧縮する。四路切換弁13は、冷房運転と暖房運転との切換時に、冷媒の流れの方向を切り換える。冷房運転時、四路切換弁13は、圧縮機11の吐出側と外気熱交換器15のガス側とを接続するとともに圧縮機11の吸入側と内気熱交換器23のガス側とを接続する。つまり、図1の四路切換弁13内の実線で示された状態である。
【0044】
また、暖房運転時、四路切換弁13は、圧縮機11の吐出側と内気熱交換器23のガス側とを接続するとともに圧縮機11の吸入側と外気熱交換器15のガス側とを接続する。つまり、図1の四路切換弁13内の点線で示された状態である。
【0045】
(2−2)外気熱交換器15
外気熱交換器15は、積層型熱交換器であって、車外空気との熱交換によって内部を流れる冷媒を凝縮(超臨界冷媒の場合は放熱)又は蒸発させることができる。積層型熱交換器については多くの文献が存在するので、ここでは説明を省略する。なお、外気熱交換器15は積層型熱交換器に限定されるものではなく、他の熱交換器であってもよい。
【0046】
(2−3)内気熱交換器23
内気熱交換器23は、車内乗車室前面の吹出口と通じる風路内に設置される。この内気熱交換器23は、積層型熱交換器であって、車外から取り入れた空気または車内乗車室から取り入れた空気との熱交換によって内部を流れる冷媒を凝縮(超臨界冷媒の場合は放熱)又は蒸発させることができる。なお、内気熱交換器23は積層型熱交換器に限定されるものではなく、他の熱交換器であってもよい。
【0047】
(2−4)バッテリ熱交換器27
バッテリ熱交換器27は、電気自動車の走行用モータなどの電源である車載バッテリ80と冷媒回路40を循環する冷媒との間で熱交換を行なわせる熱交換器である。バッテリ熱交換器27は、外気熱交換器15と内気熱交換器23との間を繋ぐバッテリ温調用冷媒路42の途中に接続されている。また、バッテリ熱交換器27の両側には、第1減圧器25および第2減圧器29が接続されている。
【0048】
(2−5)第1減圧器25
第1減圧器25は、開度可変式の電動膨張弁であって、バッテリ温調用冷媒路42のうちのバッテリ熱交換器27と外気熱交換器15との間に接続されている。第1減圧器25は、冷房運転時、外気熱交換器15からの高圧冷媒を高圧圧力と低圧圧力との間の中間圧力まで減圧する。また、暖房運転時、第1減圧器25は冷媒圧力を外気熱交換器15で蒸発可能な圧力まで減圧する。
【0049】
(2−6)第2減圧器29
第2減圧器29は、開度可変式の電動膨張弁であって、バッテリ温調用冷媒路42のうちのバッテリ熱交換器27と内気熱交換器23との間に接続されている。第2減圧器29は、暖房運転時、内気熱交換器23からの高圧冷媒を高圧圧力と低圧圧力との間の中間圧力まで減圧する。また、第2減圧器29は、冷房運転時、冷媒圧力を内気熱交換器23で蒸発可能な圧力まで減圧する。
【0050】
(2−7)第1逆止弁31及び第2逆止弁32
第1逆止弁31は、分岐点Oから駆動部冷却用冷媒路47に向おうとする冷媒を通すが、中間点Qから分岐点Oに向おうとする冷媒を通さない。同様に、第2逆止弁32は、分岐点Pから駆動部冷却用冷媒路47に向おうとする冷媒を通すが、中間点Qから分岐点Pに向おうとする冷媒を通さない。
【0051】
(2−8)冷媒ポンプ33
冷媒ポンプ33は、ローターの回転により吸い込んだ冷媒を昇圧して吐出するように構成されている。制御部70が、冷媒ポンプ33の出力を変更することによって、インバータ熱交換器35、及びモータ熱交換器37に流れる冷媒量を制御することができ、その結果、冷却能力を調整することができる。また、冷媒ポンプ33によって、インバータ熱交換器35、及びモータ熱交換器37において熱交換が行われた冷媒を圧縮機11の吐出管側に流すことができる。つまり、冷媒が圧縮機11内ではなく吐出管に導かれるので、圧縮機動力が増加しない。
【0052】
(2−9)インバータ熱交換器35及びモータ熱交換器37
インバータ熱交換器35は、インバータ85を温調するための熱交換器である。インバータ85は、走行モータ87に所定の波形に制御された交流出力を供給する。また、モータ熱交換器37は、走行モータ87を温調するための熱交換器である。
【0053】
インバータ85及び走行モータ87は冷却しなければ温度が上昇し続け破損するが、例えば100℃以下に保持すれば破損しないので、それらの冷却には高圧液冷媒を利用すればよい。それゆえ、冷媒ポンプ33は、モータ熱交換器37の出口冷媒が過熱ガス冷媒となるように流量を制御する。なお、インバータ熱交換器35とモータ熱交換器37とは一体の熱交換器であってもよい。
【0054】
(3)自動車用温調システム10の動作
(3−1)通常冷房運転モード
図1において、通常冷房運転時、四路切換弁13は、圧縮機11の吐出側と外気熱交換器15のガス側とを接続するとともに圧縮機11の吸入側と内気熱交換器23のガス側とを接続する。また、第1減圧器25は、外気熱交換器15からの高圧冷媒を高圧圧力と低圧圧力との間の中間圧力まで減圧する。また、第2減圧器29は、中間圧冷媒を内気熱交換器23で蒸発可能な圧力まで減圧する。その結果、外気熱交換器15が冷媒の凝縮器として機能し、内気熱交換器23が冷媒の蒸発器として機能する。また、冷媒ポンプ33は、冷媒回路40を循環する冷媒量の20%程度の冷媒が分岐点Oから駆動部冷却用冷媒路47に流入するように出力制御される。
【0055】
また、図2は、圧力−エンタルピ線図上に表した通常冷房運転時の冷凍サイクルである。図2において、英字a〜gの各位置は、図1の英字a〜gの各位置に対応している。以下、図1及び図2を参照しながら通常冷房運転時の冷媒流れについて説明する。
【0056】
冷媒回路40において、低圧の冷媒は、圧縮機11に吸入され、高圧に圧縮された後に吐出される(図2のa−b間)。圧縮機11から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁13を通じて、外気熱交換器15に送られる。
【0057】
外気熱交換器15に送られた高圧の冷媒は、そこで車外空気と熱交換を行って凝縮する(図2のb−c間)。外気熱交換器15において凝縮した高圧の冷媒のうち約80%の冷媒が、第1減圧器25に送られて中間圧力まで減圧された後(図2のc−d間)、バッテリ熱交換器27に入る。
【0058】
中間圧まで低下した冷媒は2相冷媒となってバッテリ熱交換器27を流れる。この2層冷媒は、バッテリ熱交換器27を介して車載バッテリ80と熱交換する(図2のd−e間)。車載バッテリ80は、バッテリ熱交換器27によって冷却され所定温度に調節される。なお、本実施形態では、バッテリ熱交換器27での冷媒温度が25℃になるように、第1減圧器25の開度が適宜制御され、中間圧力が調節される。冷媒は、バッテリ熱交換器27において、車載バッテリ80と熱交換する。この作用によって車載バッテリ80はほぼ30℃に維持される。
【0059】
バッテリ熱交換器27を出た中間圧の冷媒は、第2減圧器29によって内気熱交換器23で蒸発可能な圧力まで減圧され(図2e−f間)、内気熱交換器23に入る。内気熱交換器23に入った低圧の冷媒は、そこで車内乗車室へ供給する空気と熱交換を行って蒸発する(図2のf−a間)。内気熱交換器23で冷却された空気は、車内乗車室に吹き出され車内乗車室を冷却する。内気熱交換器23において蒸発した低圧の冷媒は、四路切換弁13を経て、再び、圧縮機11に吸入される(図2のa)。
【0060】
他方、外気熱交換器15において凝縮した高圧の冷媒のうち約20%の冷媒が、分岐点Oから駆動部冷却用冷媒路47に流入する。この高圧の液冷媒は、冷媒ポンプ33によって圧縮機11の吐出圧力まで昇圧され、インバータ熱交換器35、及びモータ熱交換器37に入る。この冷媒は、インバータ85及び走行モータ87と熱交換し(図2のc−g)、インバータ85及び走行モータ87それぞれの温度を破損しない温度に維持する。モータ熱交換器37を出た冷媒は、圧縮機11の吐出管側に入る(図2のg)。
【0061】
(3−2)蓄熱冷房運転モード
例えば、通常冷房運転中に、電気自動車が急な坂道を登るような場合、走行モータ87の回転数を上げるので、インバータ85及び走行モータ87に対する冷却能力を上げる必要がある。
【0062】
このような場合、制御部70は、運転モードを通常冷房運転から蓄熱冷房運転へ切り換える。蓄熱冷房運転では、制御部70は、通常冷房運転時と同じ冷媒循環サイクルで、冷媒ポンプ33を制御し、冷媒回路40を循環する冷媒量の40%程度の冷媒が駆動部冷却用冷媒路47に流入するように調整する。また、蓄熱冷房運転では、制御部70は第1減圧器25の開度を全開にする。
【0063】
また、図3は、圧力−エンタルピ線図上に表した蓄熱冷房運転時の冷凍サイクルである。以下、図1及び図3を参照しながら通常冷房運転時の冷媒流れについて説明する。
【0064】
冷媒回路40において、低圧の冷媒は、圧縮機11に吸入され、高圧に圧縮された後に吐出される(図3のa−b間)。圧縮機11から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁13を通じて、外気熱交換器15に送られる。
【0065】
外気熱交換器15に送られた高圧の冷媒は、そこで車外空気と熱交換を行って凝縮する(図3のb−c間)。外気熱交換器15において凝縮した高圧の冷媒のうち約60%の冷媒は、第1減圧器25に送られるが、第1減圧器25の開度が全開であるので、減圧されることなくバッテリ熱交換器27に送られる。
【0066】
運転モードが通常冷房運転から蓄熱冷房運転へ切り換えられる直前まで、車載バッテリ80は30℃に維持されている。車載バッテリ80は、重さ200kgもあるので、30℃の蓄熱源である。したがって、車載バッテリ80は短時間であれば、ほぼ30℃を維持したまま、バッテリ熱交換器27内の冷媒と熱交換して過冷却となる(図3のc−e間)。
【0067】
バッテリ熱交換器27を出た冷媒は、第2減圧器29によって内気熱交換器23で蒸発可能な圧力まで減圧され(図3のe−f間)、内気熱交換器23に入る。内気熱交換器23に入った低圧の冷媒は、そこで車内乗車室へ供給する空気と熱交換を行って蒸発する(図3のf−a間)。内気熱交換器23で冷却された空気は、車内乗車室に吹き出され車内乗車室を冷却する。内気熱交換器23において蒸発した低圧の冷媒は、四路切換弁13を経て、再び、圧縮機11に吸入される(図3のa)。
【0068】
他方、外気熱交換器15において凝縮した高圧の冷媒のうち約40%の冷媒が、分岐点Oから駆動部冷却用冷媒路47に流入する。つまり、蓄熱暖房運転では、通常冷房運転時の2倍の冷媒量を駆動部冷却用冷媒路47に流入させて、インバータ85及び走行モータ87を冷却することになる。
【0069】
この高圧の液冷媒は、冷媒ポンプ33によって圧縮機11の吐出圧力まで昇圧され、インバータ熱交換器35、及びモータ熱交換器37に入る。この冷媒は、インバータ85及び走行モータ87と熱交換し(図3のc−g)、インバータ85及び走行モータ87それぞれの温度を破損しない温度に維持する。モータ熱交換器37を出た冷媒は、圧縮機11の吐出管側に入る(図3のg)。
【0070】
(3−3)通常暖房運転モード
図1において、暖房運転時、四路切換弁13は、圧縮機11の吐出側と内気熱交換器23のガス側とを接続するとともに圧縮機11の吸入側と外気熱交換器15のガス側とを接続する。また、第2減圧器29は、内気熱交換器23からの高圧冷媒を高圧圧力と低圧圧力との間の中間圧力まで減圧する。また、第1減圧器25は、中間圧冷媒を外気熱交換器15で蒸発可能な圧力まで減圧する。その結果、内気熱交換器23が冷媒の凝縮器として機能し、外気熱交換器15が冷媒の蒸発器として機能する。また、冷媒ポンプ33は、冷媒回路40を循環する冷媒量の20%程度の冷媒が分岐点Pから駆動部冷却用冷媒路47に流入するように出力制御される。
【0071】
このような状態の冷媒回路40において、低圧の冷媒は、圧縮機11に吸入され、高圧に圧縮された後に吐出される。圧縮機11から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁13を通じて、内気熱交換器23に送られる。
【0072】
内気熱交換器23に送られた高圧の冷媒は、そこで車内乗車室へ供給する空気と熱交換を行って凝縮する。内気熱交換器23で加熱された空気は、車内乗車室に吹き出され車内乗車室を暖める。内気熱交換器23において凝縮した高圧の冷媒のうち約80%の冷媒は、第2減圧器29に送られて中間圧力まで減圧された後、バッテリ熱交換器27に入る。
【0073】
中間圧まで低下した冷媒は2相冷媒となってバッテリ熱交換器27を流れる。この2層冷媒は、バッテリ熱交換器27を介して車載バッテリ80と熱交換する。なお、本実施形態では、バッテリ熱交換器27での冷媒温度が25℃になるように、第2減圧器29の開度が適宜制御され、中間圧力が調節される。冷媒は、バッテリ熱交換器27において、車載バッテリ80と熱交換する。この作用によって車載バッテリ80はほぼ30℃に維持される。
【0074】
バッテリ熱交換器27を出た中間圧の冷媒は、第1減圧器25によって外気熱交換器15で蒸発可能な圧力まで減圧され、外気熱交換器15に入る。外気熱交換器15に入った低圧の冷媒は、そこで車外の空気と熱交換を行って蒸発する。外気熱交換器15において蒸発した低圧の冷媒は、四路切換弁13を経て、再び、圧縮機11に吸入される。
【0075】
他方、内気熱交換器23において凝縮した高圧の冷媒のうち約20%の冷媒が、分岐点Pから駆動部冷却用冷媒路47に流入する。この高圧の液冷媒は、冷媒ポンプ33によって圧縮機11の吐出圧力まで昇圧され、インバータ熱交換器35、及びモータ熱交換器37に入る。この冷媒は、インバータ85及び走行モータ87と熱交換し、インバータ85及び走行モータ87それぞれの温度を破損しない温度に維持する。モータ熱交換器37を出た冷媒は、圧縮機11の吐出管側に入る。
【0076】
(3−4)蓄熱暖房運転モード
例えば、通常暖房運転中に、電気自動車が急な坂道を登るような場合、走行モータ87の回転数を上げるので、インバータ85及び走行モータ87に対する冷却能力を上げる必要がある。
【0077】
このような場合、制御部70は、運転モードを通常暖房運転から蓄熱暖房運転へ切り換える。蓄熱暖房運転では、制御部70は、通常暖房運転時と同じ冷媒循環サイクルで、冷媒ポンプ33を、冷媒回路40を循環する冷媒量の40%程度の冷媒が駆動部冷却用冷媒路47に流入するように制御する。また、蓄熱暖房運転では、制御部70は第2減圧器29の開度を全開にする。
【0078】
このような状態の冷媒回路40において、低圧の冷媒は、圧縮機11に吸入され、高圧に圧縮された後に吐出される。圧縮機11から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁13を通じて、内気熱交換器23に送られる。
【0079】
高圧の冷媒は、内気熱交換器23で車内乗車室へ供給する空気と熱交換を行いて凝縮する。内気熱交換器23で加熱された空気は、車内乗車室に吹き出され車内乗車室を暖める。内気熱交換器23において凝縮した高圧の冷媒のうち約60%の冷媒は、第2減圧器29に送られるが、第2減圧器29の開度が全開であるので、減圧されることなくバッテリ熱交換器27に送られる。
【0080】
運転モードが通常暖房運転から蓄熱暖房運転へ切り換えられる直前まで、車載バッテリ80は30℃に維持されている。車載バッテリ80は、重さ200kgもあるので、30℃の蓄熱源である。したがって、車載バッテリ80は短時間であれば、ほぼ30℃を維持したまま、バッテリ熱交換器27内の冷媒と熱交換して過冷却となる。
【0081】
バッテリ熱交換器27を出た冷媒は、第1減圧器25によって外気熱交換器15で蒸発可能な圧力まで減圧され、外気熱交換器15に入る。外気熱交換器15に入った低圧の冷媒は、そこで車外の空気と熱交換を行って蒸発する。外気熱交換器15において蒸発した低圧の冷媒は、四路切換弁13を経て、再び、圧縮機11に吸入される。
【0082】
他方、内気熱交換器23において凝縮した高圧の冷媒のうち約40%の冷媒が、分岐点Pから駆動部冷却用冷媒路47に流入する。つまり、蓄熱暖房運転では、通常暖房運転時の2倍の冷媒量を駆動部冷却用冷媒路47に流入させて、インバータ85及び走行モータ87を冷却することになる。
【0083】
この高圧の液冷媒は、冷媒ポンプ33によって圧縮機11の吐出圧力まで昇圧され、インバータ熱交換器35、及びモータ熱交換器37に入る。この冷媒は、インバータ85及び走行モータ87と熱交換し、インバータ85及び走行モータ87それぞれの温度を破損しない温度に維持する。モータ熱交換器37を出た冷媒は、圧縮機11の吐出管側に入る。
【0084】
(3−5)デフロスト運転モード
制御部70は、暖房運転時、外気熱交換器15に着霜したことを検知、若しくは推定したとき、四路切換弁13を冷房側へ切り換え、デフロスト運転を行う。つまり、デフロスト運転時、四路切換弁13は、圧縮機11の吐出側と外気熱交換器15のガス側とを接続するとともに圧縮機11の吸入側と内気熱交換器23のガス側とを接続する。
【0085】
また、制御部70は、第2減圧器29の開度を全開にするので、外気熱交換器15が冷媒の凝縮器として機能し、バッテリ熱交換器27及び内気熱交換器23が冷媒の蒸発器として機能する。第1減圧器25は、外気熱交換器15からの高圧冷媒をバッテリ熱交換器27及び内気熱交換器23で蒸発可能な圧力まで減圧する。
【0086】
また、制御部70は、冷媒回路40を循環する冷媒量の5%程度の冷媒が分岐点Oから駆動部冷却用冷媒路47に流入するように冷媒ポンプ33の出力を制御する。さらに、制御部70は、外気ファン50および内気ファン60を停止させる。
【0087】
このような状態の冷媒回路40において、低圧の冷媒は、圧縮機11に吸入され、高圧に圧縮された後に吐出される。圧縮機11から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁13を通じて、外気熱交換器15に送られる。
【0088】
外気熱交換器15に送られた高圧の冷媒は、本来なら、車外空気と熱交換を行って凝縮するのであるが、外気ファン50が停止しているので、車外空気よりもむしろ外気熱交換器15に付着している霜との熱交換によって凝縮する。それゆえ、冷媒凝縮時の熱量のほとんどが霜融解熱に利用され、霜がすばやく融解する。
【0089】
外気熱交換器15において凝縮した高圧の冷媒のうち約95%の冷媒は、第1減圧器25で減圧され、冷媒温度が5℃になるように、制御部70によって第1減圧器25の開度が制適宜制御されて、バッテリ熱交換器27に入る。冷媒は、バッテリ熱交換器27で車載バッテリ80から熱を奪って蒸発する。車載バッテリ80は、重さ200kgもあるので、30℃の蓄熱源である。したがって、車載バッテリ80はほぼ30℃に維持される。
【0090】
バッテリ熱交換器27を出た冷媒は、15℃まで温度上昇して内気熱交換器23に入る。このとき、内気ファン60は停止しているので、内気熱交換器23内の冷媒と熱交換して冷やされた空気が車内乗車室に吹き出されることはない。内気熱交換器23を出た冷媒は、四路切換弁13を経て、再び、圧縮機11に吸入される。
【0091】
他方、外気熱交換器15において凝縮した高圧の冷媒のうち約5%の冷媒が、分岐点Oから駆動部冷却用冷媒路47に流入する。この高圧の液冷媒は、冷媒ポンプ33によって圧縮機11の吐出圧力まで昇圧され、インバータ熱交換器35、及びモータ熱交換器37に入る。この冷媒は、インバータ85及び走行モータ87と熱交換し、インバータ85及び走行モータ87それぞれの温度を破損しない温度に維持する。モータ熱交換器37を出た冷媒は、圧縮機11の吐出管側に入る。
【0092】
(3−6)デフロスト時除湿運転モード
上記デフロスト運転中に除湿作用が必要となった場合、バッテリ熱交換器27での蒸発量を減らし、除湿に必要な蒸発量を内気熱交換器23で発生させる。
【0093】
具体的には、制御部70は、第1減圧器25の開度を上記デフロスト運転時よりも開き、冷媒温度を上げて、バッテリ熱交換器27での蒸発量を減らし、第2減圧器29の開度を上記デフロスト運転時の全開状態から冷媒が内気熱交換器23で蒸発可能な圧力となるように絞る。
【0094】
これによって、外気熱交換器15の除霜、車載バッテリ80の温調、及び車内乗車室の除湿が行われる。
【0095】
(3−7)デフロスト準備運転モード
上記デフロスト運転は、車載バッテリ80を熱源として利用するので、デフロスト運転前に車載バッテリ80を加温するためのデフロスト準備運転を行うのが好ましい。例えば、暖房通常運転時は、車載バッテリ80を30℃に調温しているが、デフロスト準備運転では、車載バッテリ80を準備温度(例えば、40℃)まで加温する。
【0096】
具体的には、車載バッテリ80は、充放電の際の内部の化学反応によって温度上昇するため、バッテリ熱交換器27での冷媒による冷却量を減少または止めればいい。その結果、車載バッテリ80は、充放電の際の内部の化学反応によって温度上昇する。
そこで、第1の方策としては、第2減圧器29を全開にして、バッテリ熱交換器27に入る冷媒温度を上げ、冷却量を減少させる。
【0097】
第2の方策としては、図4A(第1実施形態に係る他の自動車用温調システムの構成図)に示すように、第2減圧器29を全閉にしてバッテリ熱交換器27へ冷媒が流れないようにし、車載バッテリ80の冷却を止める。また、第2減圧器29を全閉にすると外気熱交換器15(蒸発器)に冷媒が流れなくなるので、ここでは、開閉弁491を有するバイパス路49が設けられている。開閉弁491は、デフロスト準備運転時に開動作するように制御すればよい。
【0098】
なお、デフロスト運転開始前に、車載バッテリ80の温度が準備温度に達したときは、車載バッテリ80の温度をその所定値に保つように、車載バッテリ80の冷却を再開する。
【0099】
デフロスト準備運転は、デフロスト運転を開始するまでの時間と車載バッテリ80を所定値まで昇温するまでの時間を算出して決定する。なお、着霜量との相関が高い、外気熱交換器15における蒸発飽和温度Teの値をトリガーとしても良い。
【0100】
図4Bは、デフロスト終了からデフロスト準備運転を経て次のデフロスト運転開始に至るまでの車載バッテリ温度の変化を表すグラフである。以下、図4Bを参照しながら、外気温度2℃での運転を想定したときの動作を説明する。
【0101】
制御部70は、デフロスト運転終了後、蒸発飽和温度Te=−4℃で通常暖房運転を開始する。蒸発飽和温度Teは、霜の成長とともに徐々に低下する。そして、ある程度まで霜が成長したとき、蒸発飽和温度Teは急激に低下する。
【0102】
上記の特徴を利用して、制御部70は、蒸発飽和温度Teが第1所定値を下回った時、車載バッテリ80の昇温処理であるデフロスト準備運転を開始する。なお、第1所定値は、Te<外気温度−10℃、且つTe<−5℃を満たす値である。デフロスト準備運転は、暖房運転のまま、第2減圧器29が全閉される。但し、車載バッテリ80の温度が第1所定値に達したときは、車載バッテリ80の温度を第1所定値に保つように、第1減圧器25の開度を調節し車載バッテリ80の冷却を再開する。
【0103】
制御部70は、蒸発飽和温度Teがさらに低下し第2所定値を下回ったとき、デフロスト運転を開始する。なお、第2所定値は、Te<外気温度−15℃、且つTe<−10℃を満たす値である。外気熱交換器15のフィン温度Tdefが、第3所定値を超えたときデフロスト運転を終了し、通常暖房運転に復帰する。なお、外気熱交換器15のフィン温度Tdefの第3所定値は、10℃である。その際、車載バッテリ80の温度が通常暖房運転時の適正温度(例えば、30℃)に達していない場合は、デフロスト準備運転と同じ制御を行い、準備温度(例えば、40℃)以上になったら車載バッテリ80の冷却を開始する。
【0104】
(4)第1実施形態の特徴
(4−1)
自動車用温調システム10では、制御部70が、車載バッテリ80の熱量を空気調和に利用する蓄熱利用モード、及び車載バッテリ80の熱量を空気調和に利用しない通常運転モードを、冷凍負荷に応じて選択し実行する。例えば、自動車の走行条件によって冷凍負荷が増大し自動車用温調システム10の最大能力を超えるような場合に、車載バッテリ80に蓄えられた熱量を利用することができる。それゆえ、頻繁には起こりえない最大冷凍負荷に備えて機器を大型化する必要がなくなり、装置の小型・軽量化が図れる。また、車載バッテリ80を蓄熱源として利用するので、別に蓄熱源を備える必要がなく、コスト低減が図れる。
【0105】
(4−2)
自動車用温調システム10では、通常運転モードを実行時に車載バッテリ80の目標温度が、車載バッテリ80への蓄熱が行なわれるような温度範囲に設定されるので、(蓄熱利用モードのための)車載バッテリ80への蓄熱手段を別に備える必要がなくなり、小型化、軽量化、及び低コスト化が図られる。
【0106】
(4−3)
自動車用温調システム10では、冷房運転時に、車載バッテリ80を適正温度範囲の最下限値になるように温調しておくことによって、蓄熱冷房運転モードへの切り換えに備えることができる。また、暖房運転時に、バッテリを適正温度範囲の最上限値になるように温調しておくことによって、蓄熱暖房運転モードへの切り換えに備えることができる。
【0107】
(4−4)
自動車用温調システム10では、1つの冷媒回路40を用いて空気調和と車載バッテリ80の温調とを行なうので、必然的にバッテリ熱交換器27内の冷媒圧力は冷媒回路40の高圧側圧力と低圧側圧力との間の任意の中間圧力に調節される。その結果、車載バッテリ80の目標温度範囲の設定自由度が、蒸発温度と凝縮温度との間の温度範囲分だけ確保されるので、蓄熱利用モード及び通常使用モードそれぞれ目標温度範囲の設定が容易である。
【0108】
(4−5)
自動車用温調システム10では、制御部70が、第1減圧器25及び第2減圧器29の開度を調節して、バッテリ熱交換器27内の冷媒圧力を制御する。それゆえ、バッテリ熱交換器内の冷媒圧力を精度よく調節でき、例えば、バッテリの温度を適正温度範囲の下限値の近傍または上限値の近傍に維持することも可能である。
【0109】
(4−6)
自動車用温調システム10では、制御部70が、暖房運転時に蒸発器の着霜を検知または推定したとき、内気ファン60を停止し、冷媒の流れを冷房運転時と同じ冷媒循環サイクルへ切り換え、バッテリ熱交換器27の上流側となる第1減圧器25の開度を絞り、バッテリ熱交換器27の下流側となる第2減圧器29の開度を全開とする、デフロスト運転を行う。バッテリ熱交換器27内の冷媒は、車載バッテリ80を熱源として蒸発するので、内気熱交換器23へは空調対象空間の温度に近い温度のガス冷媒が入り込み、さらに、内気ファン60が停止していることもあって、ユーザーに冷風が当たるなどの不快感を誘発するような事態は防止される。
【0110】
(4−7)
自動車用温調システム10では、制御部70が、デフロスト運転時に除湿指令を受けたとき、バッテリ熱交換器27の上流側となる第1減圧器25の開度を開き、バッテリ熱交換器27の下流側となる第2減圧器29の開度を絞る、デフロスト時除湿運転を行う。それゆえ、内気熱交換器23内で冷媒を除湿に必要な量だけ蒸発させることができる。
【0111】
(4−8)
自動車用温調システム10では、制御部70が、デフロスト運転を実行する前に、車載バッテリ80の温度を現在の温度よりも高い所定温度で所定時間だけ保持する、デフロスト準備運転を行う。バッテリ熱交換器27内の冷媒は、車載バッテリ80を熱源として蒸発して過熱ガス冷媒となって蒸発器に入り込み蒸発器を加熱して霜を融解するのであるから、車載バッテリ80の熱量は大きいほどよい。それゆえ、デフロスト準備運転によって、デフロスト運転前にバッテリの熱量を高めることが有効である。
【0112】
(5)第1実施形態の変形例
(5−1)第1変形例
第1実施形態に係る自動車用温調システム10では、デフロスト運転は、一旦、冷媒の循環サイクルを冷房運転時の循環サイクルに切り換えているが、これに限定されるものではない。本変形例に係る空調室内機では、制御部70は、暖房運転時、外気熱交換器15に着霜したことを検知、若しくは推定したとき、暖房運転時の循環サイクルのままでデフロスト運転を行う。
【0113】
具体的には、制御部70は、冷媒回路40を循環する冷媒量の5%程度の冷媒が分岐点Pから駆動部冷却用冷媒路47に流入するように冷媒ポンプ33の出力を制御する。さらに、制御部70は、外気ファン50を停止させ、内気ファン60の回転数を低下させる。また、制御部70は、第2減圧器29を冷媒がバッテリ熱交換器27で蒸発可能な圧力まで絞る。さらに、制御部70は、第1減圧器25の開度を全開にする。
【0114】
図5は、第1変形例に係る自動車用温調システムにおける圧力−エンタルピ図上に表したデフロスト運転時の冷凍サイクルである。以下、図1及び図5を参照しながら変形例に係るデフロスト運転について説明する。
【0115】
冷媒回路40において、低圧の冷媒は、圧縮機11に吸入され、高圧に圧縮された後に吐出される(図5のa−b)。圧縮機11から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁13を通じて、内気熱交換器23に送られる。
【0116】
内気熱交換器23に送られた高圧の冷媒は、車内乗車室に供給する空気と熱交換を行って凝縮する(図5のb−f間)。但し、内気ファン60の回転数が低減されているので暖房能力は低下する。
【0117】
内気熱交換器23において凝縮した高圧の冷媒のうち約95%の冷媒は、第2減圧器29で減圧され(図5のf−e間)、バッテリ熱交換器27に入り、車載バッテリ80との熱交換によって蒸発する(図5のe−c間)。つまり、冷媒は、バッテリ熱交換器27で車載バッテリ80から熱を奪って蒸発し、過熱ガス冷媒となる。なお、除霜のための蒸気飽和温度は5℃以上であり、車載バッテリ80を適正温度に維持するには20℃が好ましい。
【0118】
バッテリ熱交換器27を出た過熱ガス冷媒は、外気熱交換器15に入る。このとき、内気ファン60は停止しているので、車外空気よりもむしろ外気熱交換器15に付着している霜と熱交換する。それゆえ、霜がすばやく融解する。なお、過熱ガス冷媒の一部は霜との熱交換によって一部凝縮する(図5のc−a間)。外気熱交換器15を出た冷媒は、四路切換弁13を経て、再び、圧縮機11に吸入される。
【0119】
(5−2)第2変形例
なお、上記のように外気熱交換器15で一部凝縮した冷媒を圧縮機11に吸入させることは、圧縮機11にとっては好ましいことではないので、圧縮機11の吸入口手前にアキュームレータを配置して気液分離し、ガス冷媒のみ圧縮機11に戻すことが好ましい。
【0120】
図6Aは、第2変形例に係る自動車用温調システムの構成図である。また、図7は、第2変形例に係る自動車用温調システムにおける圧力−エンタルピ図上に表したデフロスト運転時の冷凍サイクルである。
【0121】
以下、図6A及び図7を参照しながら第2変形例に係るデフロスト運転について説明する。図6Aにおいて、第2変形例の冷媒回路40は、圧縮機11の吸入口手前にアキュームレータ20が配置されていることが、第1変形例と異なる。それゆえ、冷媒の流れについては、バッテリ熱交換器27を出た過熱ガス冷媒が外気熱交換器15に入るところまでは、第1変形例と同じであるので、過熱ガス冷媒が外気熱交換器15に入った後の流れを説明する。
【0122】
過熱ガス冷媒は、外気熱交換器15に付着している霜との間で熱交換し、一部は凝縮する(図7のc−a間)。外気熱交換器15を出た冷媒は、圧縮機11の吸入管手前に配置されたアキュームレータ20で気液分離され、ガス成分のみが圧縮機11に吸入される(図7のa)。
【0123】
なお、外気熱交換器15において凝縮した高圧の冷媒のうち約5%の冷媒が、分岐点Oから駆動部冷却用冷媒路47に流入する。駆動部冷却用冷媒路47における冷媒の操作制御については、暖房運転時と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0124】
以上のように、第1変形例および第2変形例に係る自動車用温調システム10では、制御部70が暖房運転時に外気熱交換器15(蒸発器)の着霜を検知または推定したとき、外気ファン50を停止し、冷媒の流れを暖房運転時と同じ冷媒循環サイクルで、バッテリ熱交換器27の上流側となる第2減圧器29の開度を絞り、バッテリ熱交換器27の下流側となる第1減圧器25の開度を全開とする、デフロスト運転を行う。それゆえ、バッテリ熱交換器27内の冷媒は、車載バッテリ80を熱源として蒸発して過熱ガス冷媒となって外気熱交換器15(蒸発器)に入り込む。その結果、蒸発器に付着した霜が素早く融解する。
【0125】
また、制御部70が、デフロスト運転時、内気ファン60の回転数を低下させる。冷媒の内気熱交換器23(凝縮器)での放熱が抑制され、冷媒は、高い熱量を保有したままバッテリ熱交換器27に入り、そこで過熱状態となるので、着霜した外気熱交換器15(蒸発器)に流入したときに外気熱交換器15を素早く加熱して霜を融解する。
【0126】
<第2実施形態>
(1)自動車用温調システム100の概要
(1−1)全体構成
図8は、本発明の第2実施形態に係る自動車用温調システム100の構成図である。図8において、自動車用温調システム100は、冷房運転及び暖房運転が可能な空気調和システムであり、冷媒回路140と、外気ファン50と、内気ファン60と、制御部170とを備えている。なお、外気ファン50及び内気ファン60は、第1実施形態で説明した内容と同じであるので、ここで説明を省略する。
【0127】
(1−2)冷媒回路140
冷媒回路140では、圧縮機11、四路切換弁13、外気熱交換器15、及び内気熱交換器23が環状に繋がっている。また、外気熱交換器15と内気熱交換器23との間には、両者を繋ぐ2つの冷媒路が形成されており、一方は第1冷媒路としての空気調和用冷媒路41であり、他方は第2冷媒路としてのバッテリ温調用冷媒路42である。バッテリ温調用冷媒路42は、空気調和用冷媒路41と並列に接続されている。
【0128】
空気調和用冷媒路41には、外気熱交換器15側からメイン膨張弁17、除湿熱交換器19、除湿用膨張弁121が接続されている。また、バッテリ温調用冷媒路42には、外気熱交換器15側から第1減圧器25、バッテリ熱交換器27及び第2減圧器29が接続されている。なお、説明の便宜上、空気調和用冷媒路41とバッテリ温調用冷媒路42との接続点のうち、外気熱交換器15側を分岐点Rと呼び、内気熱交換器23側を分岐点Sと呼ぶ。
【0129】
また、冷媒回路140は、第3冷媒路としての駆動部冷却用冷媒路147をさらに有している。駆動部冷却用冷媒路147は、分岐点Sと第2減圧器29との間に設けられた分岐点Tと圧縮機11の吐出管とを繋ぐ冷媒路である。駆動部冷却用冷媒路147では、分岐点T側から第1逆止弁131、冷媒ポンプ33、インバータ熱交換器35、及びモータ熱交換器37が直列に接続されている。
【0130】
また、空気調和用冷媒路41と駆動部冷却用冷媒路147とは第2逆止弁132によって連絡されており、分岐点Rとメイン膨張弁17との間を流れる冷媒の一部が、第1逆止弁131と冷媒ポンプ33との間で合流するようになっている。
【0131】
(1−3)制御部170
制御部170は、四路切換弁13、第1減圧器25、第2減圧器29、メイン膨張弁17及び除湿用膨張弁121の弁開度、圧縮機11、冷媒ポンプ33、内気ファン60、外気ファン50の回転数を制御して、冷媒回路140を循環する冷媒の流れや、内気熱交換器23、除湿熱交換器19、外気熱交換器15、バッテリ熱交換器27の熱交換量を制御する。
【0132】
(2)詳細構成
圧縮機11、及び四路切換弁13、外気熱交換器15、除湿熱交換器19、内気熱交換器23、第1減圧器25、バッテリ熱交換器27、第2減圧器29、冷媒ポンプ33、インバータ熱交換器35及びモータ熱交換器37は、第1実施形態で説明した内容と同じであるので、ここでは詳細説明を省略する。
【0133】
(2−1)メイン膨張弁17
メイン膨張弁17は、開度可変式の電動膨張弁であり、除湿熱交換器19と外気熱交換器15との間に接続されている。メイン膨張弁17は、冷房運転時には冷媒圧力を除湿熱交換器19及び内気熱交換器23で蒸発可能な圧力まで減圧する。また、メイン膨張弁17は、暖房運転時には冷媒圧力を外気熱交換器15で蒸発可能な圧力まで減圧する。
【0134】
(2−2)除湿用膨張弁121
除湿用膨張弁121は、開度可変式の電動膨張弁であり、除湿熱交換器19と内気熱交換器23との間に接続される。また、除湿用膨張弁121は、暖房除湿運転時には、所定の除湿量となるように、減圧量を調整する。
【0135】
(3)自動車用温調システム100の動作
(3−1)通常冷房運転モード
図3において、冷房運転時、四路切換弁13は、圧縮機11の吐出側と外気熱交換器15のガス側とを接続するとともに圧縮機11の吸入側と内気熱交換器23のガス側とを接続する。
【0136】
また、除湿用膨張弁121は、開度を全開、若しくは冷媒を減圧しない程度にまで開度を拡大している。メイン膨張弁17は、冷媒圧力を除湿熱交換器19及び内気熱交換器23で蒸発可能な圧力まで減圧するように開度調節される。
【0137】
また、第1減圧器25は、外気熱交換器15からの高圧冷媒を高圧圧力と低圧圧力との間の中間圧力まで減圧する。また、第2減圧器29は、中間圧冷媒を内気熱交換器23で蒸発可能な圧力まで減圧する。その結果、外気熱交換器15が冷媒の凝縮器として機能し、空気調和用冷媒路41では除湿熱交換器19及び内気熱交換器23が冷媒の蒸発器として機能し、バッテリ温調用冷媒路42では内気熱交換器23が冷媒の蒸発器として機能する。
【0138】
このような状態の冷媒回路において、低圧の冷媒は、圧縮機11に吸入され、高圧に圧縮された後に吐出される。圧縮機11から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁13を通じて、外気熱交換器15に送られる。
【0139】
外気熱交換器15に送られた高圧の冷媒は、そこで車外空気と熱交換を行って凝縮する。外気熱交換器15において凝縮器した高圧の冷媒は、分岐点Rにおいて空気調和用冷媒路41とバッテリ温調用冷媒路42の2方向に分かれて流れる。
【0140】
空気調和用冷媒路41に流れた高圧の冷媒は、メイン膨張弁17によって減圧され、除湿熱交換器19及び内気熱交換器23に入る。除湿熱交換器19及び内気熱交換器23は、除湿用膨張弁121がほぼ全開となっているので、一つの蒸発器として機能する。
【0141】
他方、バッテリ温調用冷媒路42に流れた高圧の冷媒は、第1減圧器25に送られて中間圧力まで減圧された後、バッテリ熱交換器27に入る。中間圧まで低下した冷媒は2相冷媒となってバッテリ熱交換器27を流れる。この2層冷媒は、バッテリ熱交換器27を介して車載バッテリ80と熱交換する。車載バッテリ80は、バッテリ熱交換器27によって冷却され所定温度に調節される。なお、本実施形態では、第1減圧器25の開度を適宜制御することによって、中間圧力が調整され、冷媒温度が調整される。この作用により車載バッテリ80を20℃〜40℃の範囲内の任意温度に調節している。バッテリ熱交換器27を出た中間圧の冷媒は、第2減圧器29によって内気熱交換器23で蒸発可能な圧力まで減圧され、内気熱交換器23に入る。
【0142】
除湿熱交換器19及び内気熱交換器23に入った低圧の冷媒は、そこで車内乗車室へ供給する空気と熱交換を行って蒸発する。内気熱交換器23で冷却された空気は、車内乗車室に吹き出され車内乗車室を冷却する。内気熱交換器23において蒸発した低圧の冷媒は、四路切換弁13を経て、再び、圧縮機11に吸入される。
【0143】
さらに、空気調和用冷媒路41から第2逆止弁132を介して高圧液冷媒の一部が駆動部冷却用冷媒路147に流入する。この高圧液冷媒は、冷媒ポンプ33によって圧縮機11の吐出圧力まで昇圧され、インバータ熱交換器35、及びモータ熱交換器37に入る。この冷媒は、インバータ85及び走行モータ87と熱交換し、インバータ85及び走行モータ87それぞれの温度を破損しない温度に維持する。モータ熱交換器37を出た冷媒は、圧縮機11の吐出管側に入る。
【0144】
(3−2)蓄熱冷房運転モード
例えば、通常冷房運転中に、電気自動車が急な坂道を登るような場合、走行モータ87の回転数を上げるので、インバータ85及び走行モータ87に対する冷却能力を上げる必要がある。
【0145】
このような場合、制御部170は、運転モードを通常冷房運転から蓄熱冷房運転へ切り換える。蓄熱冷房運転では、制御部170は、通常冷房運転時と同じ冷媒循環サイクルで、冷媒ポンプ33を、冷媒回路140を循環する冷媒量の一部が駆動部冷却用冷媒路147に流入するように制御する。また、蓄熱冷房運転では、制御部170は第1減圧器25の開度を全開にする。
【0146】
このような状態の冷媒回路140において、低圧の冷媒は、圧縮機11に吸入され、高圧に圧縮された後に吐出される。圧縮機11から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁13を通じて、外気熱交換器15に送られる。
【0147】
外気熱交換器15に送られた高圧の冷媒は、そこで車外空気と熱交換を行って凝縮する。外気熱交換器15において凝縮器した高圧の冷媒は、分岐点Rにおいて空気調和用冷媒路41とバッテリ温調用冷媒路42の2方向に分かれて流れる。
【0148】
空気調和用冷媒路41に流れた高圧の冷媒は、メイン膨張弁17によって減圧され、除湿熱交換器19及び内気熱交換器23に入る。除湿熱交換器19及び内気熱交換器23は、除湿用膨張弁121がほぼ全開となっているので、一つの蒸発器として機能する。
【0149】
他方、バッテリ温調用冷媒路42に流れた高圧の冷媒は、第1減圧器25に送られるが、第1減圧器25の開度が全開であるので、減圧されることなくバッテリ熱交換器27に送られる。
【0150】
運転モードが通常冷房運転から蓄熱冷房運転へ切り換えられる直前まで、車載バッテリ80は30℃に維持されている。車載バッテリ80は、重さ200kgもあるので、30℃の蓄熱源である。したがって、車載バッテリ80は短時間であれば、ほぼ30℃を維持したまま、バッテリ熱交換器27内の冷媒と熱交換して過冷却となる。
【0151】
バッテリ熱交換器27を出た冷媒は、第2減圧器29によって内気熱交換器23で蒸発可能な圧力まで減圧され、内気熱交換器23に入る。
【0152】
内気熱交換器23に入った低圧の冷媒は、そこで車内乗車室へ供給する空気と熱交換を行って蒸発する。内気熱交換器23で冷却された空気は、車内乗車室に吹き出され車内乗車室を冷却する。内気熱交換器23において蒸発した低圧の冷媒は、四路切換弁13を経て、再び、圧縮機11に吸入される。
【0153】
さらに、空気調和用冷媒路41から第2逆止弁132を介して高圧液冷媒の一部が駆動部冷却用冷媒路147に流入する。この高圧液冷媒は、冷媒ポンプ33によって圧縮機11の吐出圧力まで昇圧され、インバータ熱交換器35、及びモータ熱交換器37に入る。この冷媒は、インバータ85及び走行モータ87と熱交換し、インバータ85及び走行モータ87それぞれの温度を破損しない温度に維持する。モータ熱交換器37を出た冷媒は、圧縮機11の吐出管側に入る。
【0154】
(3−3)暖房運転時の冷媒の流れ
図8において、暖房運転時、四路切換弁13は、圧縮機11の吐出側と内気熱交換器23のガス側とを接続するとともに圧縮機11の吸入側と外気熱交換器15のガス側とを接続する。
【0155】
また、除湿用膨張弁121は、開度を全開、若しくは冷媒を減圧しない程度にまで開度を拡大している。メイン膨張弁17は、冷媒圧力を外気熱交換器15で蒸発可能な圧力まで減圧するように開度調節される。
【0156】
また、第2減圧器29は、内気熱交換器23からの高圧冷媒を高圧圧力と低圧圧力との間の中間圧力まで減圧する。また、第1減圧器25は、中間圧冷媒を外気熱交換器15で蒸発可能な圧力まで減圧する。その結果、バッテリ温調用冷媒路42では内気熱交換器23が冷媒の凝縮器として機能し、空気調和用冷媒路41では内気熱交換器23及び除湿熱交換器19が冷媒の凝縮器として機能する。外気熱交換器15は冷媒の蒸発器として機能する。
【0157】
このような状態の冷媒回路において、低圧の冷媒は、圧縮機11に吸入され、高圧に圧縮された後に吐出される。圧縮機11から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁13を通じて、内気熱交換器23に送られる。
【0158】
内気熱交換器23に送られた高圧の冷媒は、そこで車内乗車室へ供給する空気と熱交換を行って凝縮する。内気熱交換器23で加熱された空気は、車内乗車室に吹き出され車内乗車室を暖める。
【0159】
内気熱交換器23において凝縮器した高圧の冷媒は、分岐点Sにおいて空気調和用冷媒路41とバッテリ温調用冷媒路42との2方向に分かれて流れる。
【0160】
空気調和用冷媒路41に流れた冷媒は、ほぼ全開状態の除湿用膨張弁121を通過して除湿熱交換器19に入り、そこでさらに放熱して過冷却状態となる。除湿熱交換器19を出た冷媒は、メイン膨張弁17によって減圧され、外気熱交換器15に入る。
【0161】
他方、バッテリ温調用冷媒路42に流れた高圧の冷媒は、第2減圧器29に送られて中間圧力まで減圧された後、バッテリ熱交換器27に入る。中間圧まで低下した冷媒は2相冷媒となってバッテリ熱交換器27を流れる。この2層冷媒は、バッテリ熱交換器27を介して車載バッテリ80と熱交換する。車載バッテリ80は、バッテリ熱交換器27によって冷却され所定温度に調節される。なお、本実施形態では、第2減圧器29の開度を適宜制御することによって、中間圧力が調整され、冷媒温度が調整される。この作用により車載バッテリ80を20℃〜40℃の範囲内の任意温度に調節している。バッテリ熱交換器27を出た中間圧の冷媒は、第1減圧器25によって外気熱交換器15で蒸発可能な圧力まで減圧され、外気熱交換器15に入る。
【0162】
外気熱交換器15に入った低圧の冷媒は、そこで車外の空気と熱交換を行って蒸発する。外気熱交換器15において蒸発した低圧の冷媒は、四路切換弁13を経て、再び、圧縮機11に吸入される。
【0163】
さらに、分岐点Tから第1逆止弁131を介して高圧液冷媒の一部が駆動部冷却用冷媒路147に流入する。この高圧液冷媒は、冷媒ポンプ33によって圧縮機11の吐出圧力まで昇圧され、インバータ熱交換器35、及びモータ熱交換器37に入る。この冷媒は、インバータ85及び走行モータ87と熱交換し、インバータ85及び走行モータ87それぞれの温度を破損しない温度に維持する。モータ熱交換器37を出た冷媒は、圧縮機11の吐出管側に入る。
【0164】
(3−4)暖房除湿運転モード
暖房除湿運転では、制御部170は、上記暖房運転時と同じ冷媒循環サイクルで、メイン膨張弁17を全開にし、除湿用膨張弁121の開度を調節し、分岐点Sから空気調和用冷媒路41に流れる高圧の冷媒を減圧する。除湿用膨張弁121は冷媒圧力を除湿熱交換器19及び外気熱交換器15で蒸発可能な圧力まで減圧し、除湿熱交換器19及び外気熱交換器15においてその周囲から吸熱して蒸発する。なお、除湿用膨張弁121の開度を適宜制御することによって、減圧量を調整し除湿量を調整する。
【0165】
除湿熱交換器19は、通過する空気を冷却するので、その空気中の水分が凝縮し除湿される。除湿された空気は、内気熱交換器23によって加熱されるので、車内乗車室には除湿された暖かい空気が吹き出される。
【0166】
他方、バッテリ温調用冷媒路42に流れた高圧の冷媒は、第2減圧器29に送られて中間圧力まで減圧された後、バッテリ熱交換器27に入る。中間圧まで低下した冷媒は2相冷媒となってバッテリ熱交換器27を流れる。この2層冷媒は、バッテリ熱交換器27を介して車載バッテリ80と熱交換する。車載バッテリ80は、バッテリ熱交換器27によって冷却され所定温度に調節される。なお、本実施形態では、第2減圧器29の開度を適宜制御することによって、車載バッテリ80を20℃〜40℃の範囲内の任意温度に調節している。バッテリ熱交換器27を出た中間圧の冷媒は、第1減圧器25によって外気熱交換器15で蒸発可能な圧力まで減圧され、外気熱交換器15に入る。
【0167】
外気熱交換器15に入った低圧の冷媒は、そこで車外の空気と熱交換を行って蒸発する。外気熱交換器15において蒸発した低圧の冷媒は、四路切換弁13を経て、再び、圧縮機11に吸入される。
【0168】
さらに、分岐点Tから第1逆止弁131を介して高圧液冷媒の一部が駆動部冷却用冷媒路147に流入する。この高圧液冷媒は、冷媒ポンプ33によって圧縮機11の吐出圧力まで昇圧され、インバータ熱交換器35、及びモータ熱交換器37に入る。この冷媒は、インバータ85及び走行モータ87と熱交換し、インバータ85及び走行モータ87それぞれの温度を破損しない温度に維持する。モータ熱交換器37を出た冷媒は、圧縮機11の吐出管側に入る。
【0169】
(3−5)蓄熱暖房運転モード
例えば、通常暖房運転中に、電気自動車が急な坂道を登るような場合、走行モータ87の回転数を上げるので、インバータ85及び走行モータ87に対する冷却能力を上げる必要がある。
【0170】
このような場合、制御部170は、運転モードを通常暖房運転から蓄熱暖房運転へ切り換える。蓄熱暖房運転では、制御部170は、通常暖房運転時と同じ冷媒循環サイクルで、冷媒ポンプ33を、冷媒回路140を循環する冷媒量の一部が駆動部冷却用冷媒路147に流入するように制御する。また、蓄熱暖房運転では、制御部170は第2減圧器29の開度を全開にする。
【0171】
このような状態の冷媒回路140において、低圧の冷媒は、圧縮機11に吸入され、高圧に圧縮された後に吐出される。圧縮機11から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁13を通じて、内気熱交換器23に送られる。高圧の冷媒は、内気熱交換器23で車内乗車室へ供給する空気と熱交換を行いて凝縮する。内気熱交換器23で加熱された空気は、車内乗車室に吹き出され車内乗車室を暖める。
【0172】
内気熱交換器23において凝縮器した高圧の冷媒は、分岐点Sにおいて空気調和用冷媒路41とバッテリ温調用冷媒路42との2方向に分かれて流れる。
【0173】
空気調和用冷媒路41に流れた冷媒は、ほぼ全開状態の除湿用膨張弁121を通過して除湿熱交換器19に入り、そこでさらに放熱して過冷却状態となる。除湿熱交換器19を出た冷媒は、メイン膨張弁17によって減圧され、外気熱交換器15に入る。
【0174】
他方、バッテリ温調用冷媒路42に流れた高圧の冷媒は、第2減圧器29に送られるが、第2減圧器29の開度が全開であるので、減圧されることなくバッテリ熱交換器27に送られる。
【0175】
運転モードが通常暖房運転から蓄熱暖房運転へ切り換えられる直前まで、車載バッテリ80は30℃に維持されている。車載バッテリ80は、重さ200kgもあるので、30℃の蓄熱源である。したがって、車載バッテリ80は短時間であれば、ほぼ30℃を維持したまま、バッテリ熱交換器27内の冷媒と熱交換して過冷却となる。
【0176】
バッテリ熱交換器27を出た冷媒は、第1減圧器25によって外気熱交換器15で蒸発可能な圧力まで減圧され、外気熱交換器15に入る。外気熱交換器15に入った低圧の冷媒は、そこで車外の空気と熱交換を行って蒸発する。外気熱交換器15において蒸発した低圧の冷媒は、四路切換弁13を経て、再び、圧縮機11に吸入される。
【0177】
さらに、分岐点Tから第1逆止弁131を介して高圧液冷媒の一部が駆動部冷却用冷媒路147に流入する。この高圧液冷媒は、冷媒ポンプ33によって圧縮機11の吐出圧力まで昇圧され、インバータ熱交換器35、及びモータ熱交換器37に入る。この冷媒は、インバータ85及び走行モータ87と熱交換し、インバータ85及び走行モータ87それぞれの温度を破損しない温度に維持する。モータ熱交換器37を出た冷媒は、圧縮機11の吐出管側に入る。
【0178】
(3−6)デフロスト運転モード
制御部170は、暖房運転時、外気熱交換器15に着霜したことを検知、若しくは推定したとき、四路切換弁13を冷房側へ切り換え、デフロスト運転を行う。つまり、デフロスト運転時、四路切換弁13は、圧縮機11の吐出側と外気熱交換器15のガス側とを接続するとともに圧縮機11の吸入側と内気熱交換器23のガス側とを接続する。
【0179】
また、制御部170は、除湿用膨張弁121の開度を全開にし、若しくは冷媒を減圧しない程度にまで開度を拡大する。メイン膨張弁17は、冷媒圧力を除湿熱交換器19及び内気熱交換器23で蒸発可能な圧力まで減圧するように開度調節される。また、制御部170は、第2減圧器29の開度を全開にする。第1減圧器25は、外気熱交換器15からの高圧冷媒をバッテリ熱交換器27及び内気熱交換器23で蒸発可能な圧力まで減圧する。それゆえ、外気熱交換器15が冷媒の凝縮器として機能し、空気調和用冷媒路41では除湿熱交換器19及び内気熱交換器23が冷媒の蒸発器として機能し、バッテリ温調用冷媒路42ではバッテリ熱交換器27及び内気熱交換器23が冷媒の蒸発器として機能する。
【0180】
また、制御部170は、冷媒回路140を循環する冷媒量の一部が分岐点Rから駆動部冷却用冷媒路147に流入するように冷媒ポンプ33の出力を制御する。さらに、制御部170は、外気ファン50および内気ファン60を停止させる。
【0181】
このような状態の冷媒回路140において、低圧の冷媒は、圧縮機11に吸入され、高圧に圧縮された後に吐出される。圧縮機11から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁13を通じて、外気熱交換器15に送られる。
【0182】
外気熱交換器15に送られた高圧の冷媒は、本来なら、車外空気と熱交換を行って凝縮するのであるが、外気ファン50が停止しているので、車外空気よりもむしろ外気熱交換器15に付着している霜との熱交換によって凝縮する。それゆえ、冷媒凝縮時の熱量のほとんどが霜融解熱に利用され、霜がすばやく融解する。外気熱交換器15において凝縮器した高圧の冷媒は、分岐点Rにおいて空気調和用冷媒路41とバッテリ温調用冷媒路42の2方向に分かれて流れる。
【0183】
空気調和用冷媒路41に流れた高圧の冷媒は、メイン膨張弁17によって減圧され、除湿熱交換器19及び内気熱交換器23に入る。除湿熱交換器19及び内気熱交換器23は、除湿用膨張弁121がほぼ全開となっているので、一つの蒸発器として機能する。
【0184】
他方、バッテリ温調用冷媒路42に流れた高圧の冷媒は、第1減圧器25で減圧され、バッテリ熱交換器27に入る。冷媒は、バッテリ熱交換器27で車載バッテリ80から熱を奪って蒸発する。その際、冷媒温度が5℃になるように、制御部170によって第1減圧器25の開度が制適宜制御される。この作用によって車載バッテリ80はほぼ30℃に維持される。
【0185】
バッテリ熱交換器27を出た冷媒は、15℃まで温度上昇して内気熱交換器23に入る。このとき、内気ファン60は停止しているので、内気熱交換器23内の冷媒と熱交換して冷やされた空気が車内乗車室に吹き出されることはない。内気熱交換器23を出た冷媒は、四路切換弁13を経て、再び、圧縮機11に吸入される。
【0186】
また、外気熱交換器15において凝縮した高圧の冷媒の一部が、分岐点Rから駆動部冷却用冷媒路147に流入する。この高圧の液冷媒は、冷媒ポンプ33によって圧縮機11の吐出圧力まで昇圧され、インバータ熱交換器35、及びモータ熱交換器37に入る。この冷媒は、インバータ85及び走行モータ87と熱交換し、インバータ85及び走行モータ87それぞれの温度を破損しない温度に維持する。モータ熱交換器37を出た冷媒は、圧縮機11の吐出管側に入る。
【0187】
(3−7)デフロスト準備運転モード
第2実施形態におけるデフロスト準備モードは、第1実施形態におけるデフロスト準備モードを適用する。
【0188】
但し、先に説明した第1実施形態の第2の方策を適用するときは、図6B(第2変形例に係る他の自動車用温調システムの構成図)に示すように、第2減圧器29を全閉にしてバッテリ熱交換器27へ冷媒が流れないようにし、車載バッテリ80の冷却を止める。また、第2減圧器29を全閉にすると外気熱交換器15(蒸発器)に冷媒が流れなくなるので、図6Bでは、開閉弁491を有するバイパス路49が設けられている。開閉弁491は、デフロスト準備運転時に開動作するように制御すればよい。
【0189】
(4)特徴
以上のように、第2実施形態に係る自動車用温調システム100は、第1実施形態に係る自動車用温調システム10の特徴に加えて、冷媒回路140が空気調和用冷媒路41とは別にバッテリ温調用冷媒路42とを有しているという特徴がある。それゆえ、空気調和とは別に、バッテリ熱交換器27の温度を蒸発温度と凝縮温度との間の任意の温度に調節することができ、車載バッテリ80を適温に調節することができる。
【産業上の利用可能性】
【0190】
以上のように、本発明の自動車用温調システムによれば、冷凍負荷が冷凍装置の能力を超えたときに、車載バッテリの冷熱で不足分を補う。それゆえ、別に蓄熱源を備える必要がなく、コスト低減が図られる。それゆえ、電気自動車だけに限らず、ハイブリット自動車にも有用である。
【符号の説明】
【0191】
10,100 自動車用温調システム
25 第1減圧器
27 バッテリ熱交換器
29 第2減圧器
40,140 冷媒回路
41 空気調和用冷媒路
42 バッテリ温調用冷媒路
50 外気ファン(第1ファン)
60 内気ファン(第2ファン)
70,170 制御部
80 車載バッテリ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0192】
【特許文献1】特開平11−23081号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの冷媒回路(40)を用いて少なくとも空気調和とバッテリ(80)の温調とを行なう自動車用温調システムであって、
前記冷媒回路(40)の冷媒の流れを制御する制御部(70)を備え、
前記冷媒回路(40)は、空気調和用の蒸発器及び放熱器との間に、前記バッテリ(80)の温調を行なうバッテリ熱交換器(27)を含むバッテリ温調用冷媒路(42)を有し、
前記制御部(70)は、前記バッテリ(80)の熱量を空気調和に利用する蓄熱利用モード、及び前記バッテリ(80)の熱量を空気調和に利用しない通常運転モードを、冷凍負荷に応じて選択し実行する、
自動車用温調システム(10)。
【請求項2】
前記制御部(70)は、前記バッテリ(80)の目標温度が所定の適正温度範囲内になるように前記冷媒回路(40)の冷媒の流れを制御しており、
さらに、前記制御部(70)は、
前記蓄熱利用モードを選択したとき前記目標温度を前記適正温度範囲内の第1範囲内に設定し、
前記通常運転モードを選択したとき前記目標温度を前記適正温度範囲内で且つ前記第1範囲と異なる第2範囲へ設定する、
請求項1に記載の自動車用温調システム(10)。
【請求項3】
前記蓄熱利用モードは、
前記バッテリ(80)の熱量を利用して冷房運転を行う蓄熱冷房運転モードと、
前記バッテリ(80)の熱量を利用して暖房運転を行う蓄熱暖房運転モードと、
を含み、
前記通常運転モードは、
前記バッテリ(80)の熱量を利用せずに冷房運転を行う通常冷房運転モードと、
前記バッテリ(80)の熱量を利用せずに暖房運転を行う通常暖房運転モードと、
を含み、
前記制御部(70)は、
通常冷房運転モードを選択したとき、前記第2範囲を前記適正温度範囲の最下限値を含む範囲に設定し、
通常暖房運転モードを選択したとき、前記第2範囲を前記適正温度範囲の最上限値を含む範囲に設定する、
請求項2に記載の自動車温調システム(10)。
【請求項4】
前記制御部(70)は、前記バッテリ熱交換器(27)内の冷媒圧力を調節して、前記バッテリ(80)の温調を行なう、
請求項3に記載の自動車用温調システム(10)。
【請求項5】
前記バッテリ温調用冷媒路(42)は、前記バッテリ熱交換器(27)の両側に配置される2つの開度可変の減圧器(25,29)をさらに含み、
前記制御部(70)は、2つの前記減圧器(25,29)の開度を調節して、前記バッテリ熱交換器(27)内の冷媒圧力を制御する、
請求項4に記載の自動車用温調システム(10)。
【請求項6】
暖房運転時の前記凝縮器に送風するファン(60)をさらに備え、
前記制御部(70)は、暖房運転時に前記蒸発器の着霜を検知または推定したとき、前記ファン(60)を停止し、冷媒の流れを冷房運転時と同じ冷媒循環サイクルへ切り換え、前記バッテリ熱交換器(27)の上流側となる前記減圧器(25)の開度を絞り、前記バッテリ熱交換器(27)の下流側となる前記減圧器(29)の開度を全開とする、デフロスト運転を行う、
請求項5に記載の自動車用温調システム(10)。
【請求項7】
前記制御部(70)は、前記デフロスト運転時に除湿指令を受けたとき、前記バッテリ熱交換器(27)の上流側となる前記減圧器(25)の開度を開き、前記バッテリ熱交換器(27)の下流側となる前記減圧器(29)の開度を絞る、デフロスト時除湿運転を行う、
請求項6に記載の自動車用温調システム(10)。
【請求項8】
暖房運転時の前記蒸発器に送風する第1ファン(50)と、
暖房運転時の前記凝縮器に送風する第2ファン(60)と、
をさらに備え、
前記制御部(70)は、暖房運転時に前記蒸発器の着霜を検知または推定したとき、前記第1ファン(50)を停止し、冷媒の流れを暖房運転時と同じ冷媒循環サイクルで、前記バッテリ熱交換器(27)の上流側となる前記減圧器(29)の開度を絞り、前記バッテリ熱交換器(27)の下流側となる前記減圧器(25)の開度を全開とする、デフロスト運転を行う、
請求項5に記載の自動車用温調システム(10)。
【請求項9】
前記制御部(70)は、前記デフロスト運転時、前記第2ファン(60)の回転数を低下させる、
請求項8に記載の自動車用温調システム(10)。
【請求項10】
前記制御部(70)は、
前記デフロスト運転を実行する前に、前記バッテリ(80)の温度を現在の温度よりも高い所定温度で所定時間だけ保持する、デフロスト準備運転を行う。
請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の自動車用温調システム(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−75650(P2013−75650A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218386(P2011−218386)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】