説明

自動車用着色積層フィルム

【課題】溶剤によるフィルムへの悪影響を防止してより美麗な外装をなすとともに、柔軟性や成形性にも優れた自動車用着色積層フィルムを提供する。
【解決手段】樹脂成形体Mの表面に貼着される自動車用着色積層フィルム10Aであって、アクリル系樹脂又はウレタン系樹脂の単独またはこれらの混合物に顔料、染料、着色剤の単独またはこれらの混合物が混練されてなる着色塗膜層20を含み、前記着色塗膜層20の下面側には、裏面にプライマー層60または粘着層65を有し前記着色塗膜層20と前記樹脂成形体Mとの密着性と保護性を高めるためのアンカーコート層30が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の外装部品等の樹脂成形体の表面に貼着される自動車用着色積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の外装部品等の樹脂成形体には、耐候性、耐久性、装飾性等の観点から、その表面に適宜の積層フィルムが貼着され、特に、部品の表面美装の観点から、部品表面に所望する色合いを発現するための着色層を含む自動車用着色積層フィルムが用いられる。
【0003】
このような自動車用着色積層フィルムとしては、例えば、合成樹脂材料中に種々の色の顔料等が混練され樹脂成形体に貼着されるベースフィルム層と、その上面側に積層される装飾PETフィルム層との間に、接着層を介して着色層が形成されてなるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この自動車用着色積層フィルムでは、ベースフィルム層と装飾PETフィルム層とを強固に接合することが可能となるとともに、深みのある色彩を表現することができる。
【0004】
ところで、従来の自動車用着色積層フィルムでは、ベースフィルム層と装飾PETフィルム層とを接合するための接着層から溶剤が溶出してしまうことがある。接着層から溶出した溶剤が着色層へ浸透してしまうと、所望する色彩の発現に悪影響を及ぼし、自動車用フィルムとしての見映えが悪くなってしまうことがある。さらに、接着層から溶出した溶剤が着色層を透過すると、表面の装飾PETフィルム層とベースフィルム層の接着性が阻害される問題もある。
【0005】
また、自動車用着色積層フィルムの表面に設けられる装飾PETフィルム層は、柔軟性や成形性への影響を極力少なくしつつ耐久性等の性能を十分に確保できる厚みで形成されるが、真空成形や射出成形、押出成形等の適宜の成形方法で樹脂成形体と一体成形する際には、樹脂成形体の角に相当する部分等にしわができる等の不具合が生じることがあった。そこで、柔軟性や成形性を確保するために、装飾PETフィルム層の代わりにフッ素フィルム層を形成することも可能であるが、このような場合ではフッ素フィルム特有の白濁により着色層の発色が鈍ることが問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−224324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、溶剤によるフィルムへの悪影響を防止してより美麗な外装をなすとともに、柔軟性や成形性にも優れた自動車用着色積層フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1の発明は、樹脂成形体の表面に貼着される自動車用着色積層フィルムであって、アクリル系樹脂又はウレタン系樹脂の単独またはこれらの混合物に顔料、染料、着色剤の単独またはこれらの混合物が混練されてなる着色塗膜層を含み、前記着色塗膜層の下面側には、裏面にプライマー層または粘着層を有し前記着色塗膜層と前記樹脂成形体との密着性と保護性を高めるためのアンカーコート層が形成されていることを特徴とする自動車用着色積層フィルムに係る。
【0009】
請求項2の発明は、樹脂成形体の表面に貼着される自動車用着色積層フィルムであって、アクリル系樹脂又はウレタン系樹脂の単独またはこれらの混合物に顔料、染料、着色剤の単独またはこれらの混合物が混練されるとともに、前記樹脂成形体表面に貼着されるベースフィルム層とその上面にドライラミネートからなる接着剤層を介して接合される着色塗膜層を含み、前記着色塗膜層の下面側には、前記着色塗膜層と前記接着剤層との密着性と保護性を高めるためのアンカーコート層が形成されていることを特徴とする自動車用着色積層フィルムに係る。
【0010】
請求項3の発明は、前記ベースフィルム層の裏面にプライマー層または粘着層が施されている請求項2に記載の自動車用着色積層フィルムに係る。
【0011】
請求項4の発明は、前記アンカーコート層が、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、尿素−メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂の単独またはこれらの混合物からなり、厚みが0.01〜5μmである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の自動車用着色積層フィルムに係る。
【0012】
請求項5の発明は、前記着色塗膜層上面に保護フィルム層を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の自動車用着色積層フィルムに係る。
【0013】
請求項6の発明は、前記着色塗膜層の上面側にアクリル系樹脂又はウレタン系樹脂よりなる透明樹脂塗膜層が形成されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の自動車用着色積層フィルムに係る。
【0014】
請求項7の発明は、前記透明樹脂塗膜層の厚みが3〜100μmである請求項6に記載の自動車用着色積層フィルムに係る。
【0015】
請求項8の発明は、前記透明樹脂塗膜層上面に保護フィルム層を有する請求項6又は7に記載の自動車用着色積層フィルムに係る。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明に係る自動車用着色積層フィルムによれば、樹脂成形体の表面に貼着される自動車用着色積層フィルムであって、アクリル系樹脂又はウレタン系樹脂の単独またはこれらの混合物に顔料、染料、着色剤の単独またはこれらの混合物が混練されてなる着色塗膜層を含み、前記着色塗膜層の下面側には、裏面にプライマー層または粘着層を有し前記着色塗膜層と前記樹脂成形体との密着性と保護性を高めるためのアンカーコート層が形成されているため、十分な柔軟性や成形性を得ることができるとともに、溶剤が浸透することを効果的に防止して当該フィルムへの悪影響を抑制し、より美麗な外装をなすことができる。
【0017】
請求項2の発明に係る自動車用着色積層フィルムによれば、樹脂成形体の表面に貼着される自動車用着色積層フィルムであって、アクリル系樹脂又はウレタン系樹脂の単独またはこれらの混合物に顔料、染料、着色剤の単独またはこれらの混合物が混練されるとともに、前記樹脂成形体表面に貼着されるベースフィルム層とその上面にドライラミネートからなる接着剤層を介して接合される着色塗膜層を含み、前記着色塗膜層の下面側には、前記着色塗膜層と前記接着剤層との密着性と保護性を高めるためのアンカーコート層が形成されているため、十分な柔軟性や成形性を得ることができるとともに、溶剤が浸透することを効果的に防止して当該フィルムへの悪影響を抑制し、より美麗な外装をなすことができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、請求項2において、前記ベースフィルム層の裏面にプライマー層または粘着層が施されているため、ベースフィルム層と樹脂成形体との接着性を向上させることができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、請求項1ないし3において、前記アンカーコート層が、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、尿素−メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂の単独またはこれらの混合物からなり、厚みが0.01〜5μmであるため、アンカーコート層による密着性を十分に得ることができるとともに、経済的にも有利な自動車用着色積層フィルムを得ることができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、請求項1ないし4において、前記着色塗膜層上面に保護フィルム層を有するため、当該自動車用着色積層フィルムの貼り合わせ工程及び該自動車用着色積層フィルムが貼着された材料の加工工程、あるいは輸送、保管中において、当該自動車用着色積層フィルムの傷つきを防止することができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、請求項1ないし4において、前記着色塗膜層の上面側にアクリル系樹脂又はウレタン系樹脂よりなる透明樹脂塗膜層が形成されているため、耐候性等の性能を十分に確保することができる。
【0022】
請求項7の発明によれば、請求項6において、前記透明樹脂塗膜層の厚みが3〜100μmであるため、十分な耐候性等の性能を得ることができるとともに、経済的にも有利な自動車用着色積層フィルムを得ることができる。
【0023】
請求項8の発明によれば、請求項6又は7において、前記透明樹脂塗膜層上面に保護フィルム層を有するため、当該自動車用着色積層フィルムの貼り合わせ工程及び該自動車用着色積層フィルムが貼着された材料の加工工程、あるいは輸送、保管中において、当該自動車用着色積層フィルムの傷つきを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一実施例に係る自動車用着色積層フィルムの概略断面図である。
【図2】第二実施例に係る自動車用着色積層フィルムの概略断面図である。
【図3】第三実施例に係る自動車用着色積層フィルムの概略断面図である。
【図4】第四実施例に係る自動車用着色積層フィルムの概略断面図である。
【図5】第五実施例に係る自動車用着色積層フィルムの概略断面図である。
【図6】第六実施例に係る自動車用着色積層フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示すように、本発明の第一実施例に係る自動車用着色積層フィルム10Aは、樹脂成形体Mの表面に貼着されるものであって、着色塗膜層20を含み、着色塗膜層20の下面側にアンカーコート層30が形成されている。実施例の樹脂成形体Mは、例えば、PC、ABS、PVC、PP等の樹脂によって形成された自動車用モールディング等の自動車用外装部品等からなる。なお、図中の符号55は公知のキャリアフィルムを表す。
【0026】
着色塗膜層20は、アクリル系樹脂又はウレタン系樹脂の単独またはこれらの混合物に顔料、染料、着色剤の単独またはこれらの混合物が混練されてなる。この着色塗膜層20は、グラビアロールコーティング法等の公知の手法により形成される。その厚みとしては、目的とする色彩を発現させるとともに耐候性を確保するために、3〜100μmであることが好ましい。実施例では、キャリアフィルム55の裏面に、グラビアロールコーティング法により塗着して形成される。着色塗膜層20の厚みが100μmを超える場合、外観的、製造的及び価格的な観点から問題となる。一方、厚みが3μm未満である場合、耐候性等の性能を十分に確保することが困難となる。要求される耐候性としては、当該自動車用着色積層フィルム10A単品でのサンシャインウェザーメーター2000時間処理による色差のΔEが少なくとも3以内であることが好ましい。また、耐候性を向上させるために着色塗膜層20に公知の紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0027】
アンカーコート層30は、着色塗膜層20と樹脂成形体Mとの間に形成されて、両者の密着性と保護性を高めるものであり、その裏面には樹脂成形体Mとの接着性を向上するために公知のプライマー処理によってプライマー層60が施される。アンカーコート層30は、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、尿素−メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂の単独またはこれらの混合物を主成分としたものからなる。このように、アンカーコート層30が着色塗膜層20の下面側に形成されることにより、プライマー層60の溶剤が溶出して着色塗膜層20へ浸透することが阻止されるため、溶剤による色彩の発現への悪影響を防止することができる。なお、アンカーコート層30の裏面には、プライマー層60の代わりに公知の粘着処理によって粘着層65を施すことも可能である。
【0028】
このアンカーコート層30は、上記の樹脂を有機溶剤に溶解させた塗料をグラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等の通常の印刷法を用いて樹脂成形体Mの上面に塗布し、乾燥させて形成される。アンカーコート層30の厚みとしては、着色塗膜層20と樹脂成形体Mとの密着性が十分得られるならば特に限定されるものではなく、例えば0.01〜5μmが好ましい。厚みが0.01μm未満の場合は密着性の効果が少なく、厚みが5μmを超えると十分な密着性を得ることができず経済的にも不利となる問題がある。
【0029】
上記自動車用着色積層フィルム10Aでは、着色塗膜層20上面に保護フィルム層50を有することが好ましく勧められる。保護フィルム層50は、当該自動車用着色積層フィルム10Aが貼着されたり被覆されたりする樹脂成形体Mへの該フィルムの貼り合わせ工程及び該フィルムが貼着された材料の加工工程、あるいは輸送、保管中において、当該フィルムの傷つきを防止するものである。実施例では、裏面に着色塗膜層20が塗着されたキャリアフィルム55が保護フィルム層50としてそのまま使用される。また、保護フィルム層50の厚みは、9〜100μm、さらに好ましくは、12〜75μmとされる。厚みが9μm未満の場合は保護性能を満足できず、厚みが100μmを超える場合は価格的な観点から問題となる。なお、この保護フィルム層50は保護部分であり、最終的には剥離除去される。
【0030】
なお、実施例の自動車用着色積層フィルム10Aでは、まず、キャリアフィルム55の裏面に着色塗膜層20が形成され、以下、アンカーコート層30、プライマー層60の順に各層が形成される。
【0031】
図2に示す第二実施例に係る自動車用着色積層フィルム10Bは、着色塗膜層20が樹脂成形体M表面に貼着されるベースフィルム層11と接着層15を介して接合される。なお、以下の各実施例の説明において、第一実施例と同一の符号は同一の構成を表すものとして、その説明を省略する。
【0032】
ベースフィルム層11は、樹脂成形体Mの材料の関係でその材質や厚み等が選択される。例えば、当該自動車用着色積層フィルム10Bが塩化ビニル樹脂の押出成形で押出成形品と一体成形される場合には、このベースフィルム層11としては塩化ビニル樹脂フィルムが好ましく使用される。一般的な材質としては、例えばポリオレフィン系樹脂の中でも特にポリプロピレン樹脂及び共重合成分を含む樹脂が使用され、その他にはポリマーアロイ樹脂としてABS樹脂なども使用することができる。要求性能として、耐熱性、耐水性等が必要となるため、耐熱安定剤等が含まれていてもよい。また、適宜の着色顔料等を混練したり、耐候性を向上させるために公知の紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0033】
ベースフィルム層11の厚みは30〜500μmであることが好ましく、特には50〜300μmである。厚みが30μm未満では接着性能が満足できず、500μmを超えると製造的及び価格的な観点から不利となる。
【0034】
接着層15は、ベースフィルム層11と着色塗膜層20とを接着するものであって、ベースフィルム層11の上面に公知のドライラミネータにて塗布して形成される。接着層15としては、2液硬化型のポリウレタン系接着剤等が好適に使用される。また、塗布して乾燥させた後の接着層15の厚みは、1〜10μm、さらに好ましくは2〜7μmである。厚みが1μm未満では満足な接着強度が得られず、10μmを超えると製造的及び価格的な観点から不利である。
【0035】
この自動車用着色積層フィルム10Bでは、着色塗膜層20の下面側に接着層15との密着性と保護性を高めるためのアンカーコート層30が形成されている。これにより、接着層15の溶剤が溶出して着色塗膜層20へ浸透することが阻止されるため、溶剤による色彩の発現への悪影響を防止することができる。
【0036】
また、図3に示す第三実施例の自動車用着色積層フィルム10Cのように、ベースフィルム層11の裏面に公知のプライマー処理によってプライマー層60を施してもよい。これにより、ベースフィルム層11と樹脂成形体Mとの接着性を向上させることができる。なお、ベースフィルム層11の裏面には、プライマー層60の代わりに公知の粘着処理によって粘着層65を施すことも可能である。
【0037】
図4に示す第四実施例に係る自動車用着色積層フィルム10Dは、着色塗膜層20と、着色塗膜層20の下面側に形成されたアンカーコート層30とを含み、着色塗膜層20の上面側にアクリル系樹脂又はウレタン系樹脂よりなる透明樹脂塗膜層40が形成される。
【0038】
透明樹脂塗膜層40は、透明性や耐候性に優れたアクリル系樹脂又はウレタン系樹脂よりなり、これらのいずれか1種類、もしくは混合物からなるものを用いることができる。アクリル系樹脂としては、アクリル酸、又はメタクリル酸、あるいはそれらのメチルエステル、エチルエステル等のアルキルエステル類の重合体や、これらの単量体と、これと共重合可能なアルケニルベンゼン類や、α、β−不飽和単体量体のコモノマーとの共重合体が好適に使用される。ウレタン系樹脂としては、ポリイソシアネートや、ポリオール等(活性水素化合物)を主成分とした組成物が好適に使用される。
【0039】
この透明樹脂塗膜層40は、グラビアロールコーティング法等の公知の手法によって形成され、その厚みは3〜100μmが好ましく、より好ましくは10〜25μmである。実施例では、キャリアフィルム55の裏面に、グラビアロールコーティング法によりアクリル系樹脂又はウレタン系樹脂を塗着して形成される。透明樹脂塗膜層40の厚みが3μm未満となると耐候性等の性能を十分に確保することが困難となり、100μmを超えると価格的な観点から問題となる。なお、要求される耐候性としては、当該自動車用着色積層フィルム10A単品でのサンシャインウェザーメーター2000時間処理による色差のΔEが少なくとも3以内であることが好ましく、耐候性を向上させるために透明樹脂塗膜層40に公知の紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0040】
また、着色塗膜層20は、グラビアロールコーティング法等の公知の手法により透明樹脂塗膜層30の下面に塗布されて形成され、透明樹脂塗膜層30を透過して所望する色彩が発現される。この着色塗膜層20は、透明樹脂塗膜層30と樹脂成形体Mとを接合する機能を有し、その厚みとしては、1〜30μmであることが好ましい。厚みが30μmを超える場合、外観的、製造的及び価格的な観点から問題となる。一方、厚みが1μm未満である場合、目的とする色彩を発現させることが困難となる問題がある。また、耐候性を向上させるために着色塗膜層20に公知の紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0041】
なお、実施例では、まず、キャリアフィルム55の裏面に透明樹脂塗膜層40が形成され、以下、着色塗膜層20、アンカーコート層30、プライマー層60の順に各層が形成される。また、前記したように、キャリアフィルム55は保護フィルム層50としてそのまま使用され、最終的には剥離除去される。
【0042】
この自動車用着色積層フィルム10Dでは、着色塗膜層20の下面側にアンカーコート層30が形成されているため、プライマー層60の溶剤が溶出して着色塗膜層20へ浸透することが阻止されるため、溶剤による色彩の発現への悪影響を防止することができる。また、特に、溶出した溶剤によって透明樹脂塗膜層40がアタック(膨潤)されることを防止することができる。
【0043】
図5に示す第五実施例に係る自動車用着色積層フィルム10Eは、透明樹脂塗膜層40の下面に形成される着色塗膜層20が樹脂成形体M表面に貼着されるベースフィルム層11と接着層15を介して接合される。この自動車用着色積層フィルム10Eにおいても、自動車用着色積層フィルム10Dと同様に、着色塗膜層20の下面側にアンカーコート層30が形成されていることにより、接着層15の溶剤が溶出して着色塗膜層20へ浸透することを阻止することができ、特に、溶出した溶剤によって透明樹脂塗膜層40がアタック(膨潤)されることを防止することができる。
【0044】
また、図6に示す第六実施例の自動車用着色積層フィルム10Fのように、ベースフィルム層11の裏面に公知のプライマー処理によってプライマー層60を施してもよい。これにより、ベースフィルム層11と樹脂成形体Mとの接着性を向上させることができる。なお、ベースフィルム層11の裏面には、プライマー層60の代わりに公知の粘着処理によって粘着層65を施すことも可能である。
【0045】
以上図示し説明したように、本発明の自動車用着色積層フィルム10A,10B,10C,10D,10E,10Fは、いずれも従来の自動車用フィルムのような装飾PET層を不要とするため、十分な柔軟性や成形性を得ることができ、樹脂成形体Mと一体成形した場合であってもしわ等の不具合が生じることがない。
【0046】
また、特に、自動車用着色積層フィルム10A,10B,10C,10D,10E,10Fは、いずれも着色塗膜層20の下面側にアンカーコート層30を有するため、接着層15やプライマー層60(粘着層65)の溶剤が浸透することを効果的に防止することができ、着色塗膜層20や透明樹脂塗膜層40等の当該フィルム10A,10B,10C,10D,10E,10Fへの悪影響を抑制して、より美麗な外装をなすことができる。
【0047】
なお、本発明の自動車用着色積層フィルムは、上記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において変更可能である。
【符号の説明】
【0048】
10A,10B,10C 自動車用着色積層フィルム
20 着色塗膜層
30 アンカーコート層
40 透明樹脂塗膜層
50 保護フィルム層
60 プライマー層
65 粘着層
M 樹脂成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形体の表面に貼着される自動車用着色積層フィルムであって、
アクリル系樹脂又はウレタン系樹脂の単独またはこれらの混合物に顔料、染料、着色剤の単独またはこれらの混合物が混練されてなる着色塗膜層を含み、
前記着色塗膜層の下面側には、裏面にプライマー層または粘着層を有し前記着色塗膜層と前記樹脂成形体との密着性と保護性を高めるためのアンカーコート層が形成されている
ことを特徴とする自動車用着色積層フィルム。
【請求項2】
樹脂成形体の表面に貼着される自動車用着色積層フィルムであって、
アクリル系樹脂又はウレタン系樹脂の単独またはこれらの混合物に顔料、染料、着色剤の単独またはこれらの混合物が混練されるとともに、前記樹脂成形体表面に貼着されるベースフィルム層とその上面にドライラミネートからなる接着剤層を介して接合される着色塗膜層を含み、
前記着色塗膜層の下面側には、前記着色塗膜層と前記接着剤層との密着性と保護性を高めるためのアンカーコート層が形成されている
ことを特徴とする自動車用着色積層フィルム。
【請求項3】
前記ベースフィルム層の裏面にプライマー層または粘着層が施されている請求項2に記載の自動車用着色積層フィルム。
【請求項4】
前記アンカーコート層が、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、尿素−メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂の単独またはこれらの混合物からなり、厚みが0.01〜5μmである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の自動車用着色積層フィルム。
【請求項5】
前記着色塗膜層上面に保護フィルム層を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の自動車用着色積層フィルム。
【請求項6】
前記着色塗膜層の上面側にアクリル系樹脂又はウレタン系樹脂よりなる透明樹脂塗膜層が形成されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の自動車用着色積層フィルム。
【請求項7】
前記透明樹脂塗膜層の厚みが3〜100μmである請求項6に記載の自動車用着色積層フィルム。
【請求項8】
前記透明樹脂塗膜層上面に保護フィルム層を有する請求項6又は7に記載の自動車用着色積層フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−184361(P2010−184361A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28316(P2009−28316)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(593227981)日本プライ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】