説明

自動酸化傾向を減少させたアクリル酸の製造装置および製造方法

本願発明は、アクリル酸の調製装置(1)に関し、このアクリル酸の調製装置(1)は、第1の反応器(2)と、少なくとも1つのさらなる反応器(3)と、を備え、少なくとも第1の反応器(2)は、アクロレインの合成に触媒作用を及ぼす触媒を含む複数の管(4)を有する多管反応器であり、管(4)は、流出領域(7)を介して少なくとも1つのさらなる反応器(3)に、流体的に接続できる収集チャンバ(6)に開口し、流出領域(7)は、流出領域(8)の中を流れるガス流のプロフィールの層流化をもたらす層流化手段(8)を備える。本願発明は、アクリル酸の調製方法、アクリル酸、親水性ポリマーの調製方法、親水性ポリマー、吸水性衛生用品の製造方法、繊維、成形品、または膜などの化学製品、およびアクリル酸の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、アクリル酸の調製装置および調製方法、アクリル酸、親水性ポリマーの調製方法、親水性ポリマー、吸水性衛生用品の製造方法、繊維、成形品、または膜などの化学製品、およびアクリル酸の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸は、多くのポリマーの出発物質である。特に、アクリル酸は、架橋および部分的に中和されたポリアクリレートに基づき、水中においてそれ自体の重量の10倍以上も吸収することができる、超吸収性ポリマーとして知られる物質の出発物質でもある。アクリル酸は、アクロレインからしばしば調製され、このアクロレインはプロペンの気相酸化によって生産される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このプロペンの気相酸化において、自動酸化として知られるこの工程では、プロペンが所望通りに部分的に酸化されアクロレインを形成する代わりに、所望しない態様で完全に酸化され、所望しない副産物を形成するという問題がしばしば起こる。
【0004】
大まかに言えば、本願発明の目的は、プロペンの二段気相酸化によるアクリル酸の調製に関連した従来技術が持つ欠点を克服することであった。
【0005】
特に、本願発明の目的は、プロペンからのアクリル酸の調製方法および調製装置を特定し、アクリル酸を可能な限り高い収率で得ることであった。
【0006】
特に、本願発明の目的は、従来の反応器または従来の方法に比べて、アクロレインの自動酸化を減少させたアクリル酸の調製装置および調製方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の請求項の主題は、前述の目的の達成を支援し、独立項は、本願発明の特有の実施形態を提示する。
【0008】
本願発明に係るアクリル酸の調製装置は、
第1の反応器と、
少なくとも1つのさらなる反応器と、を備え、
少なくとも第1の反応器は、プロペンからのアクロレインの合成に触媒作用を及ぼす触媒を含む複数の管を有する多管反応器であり、
この管は、流出領域を介して少なくとも1つのさらなる反応器に流体的に接続できる収集チャンバに開口しており、
流出領域は、流出領域の中を流れるガス流のプロフィールの層流化をもたらす層流化手段を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本願発明によれば、「流体的に」という用語は、ガス、もしくは懸濁液を含む液体、またはその混合物、好ましくはガスが、対応する線を通って導かれるという事実を指している。輸送導管、ポンプなどは、特にこの目的のために使用できる。
【0010】
本願発明の1つの構成によれば、第1および第2の反応器は、第1およびそれに続く第2の反応器を受ける大型の反応器の一部を形成できる。この種の大型の反応器において、両反応段階は、第1の部分反応器におけるアクロレインの調製のための触媒、および第2の部分反応器におけるアクリル酸へのアクロレインの変換のための触媒という、それぞれ異なる触媒から構成される。
【0011】
この関連で、「流れのプロフィールの層流化」という用語は、特に、対応する流れのレイノルズ数の減少を指している。当業者は、レイノルズ数を測定するための様々な方法に精通している。例えば、平均レイノルズ数は、一方では、ガス流の流速または質量流量を、他方では、ガス流の粘度を測定することによって決定することができる。ガス流の粘度は、例えば、ガス流の組成および温度に基づいて計算でき、他方で流速および/または質量流量は、従来の流量計を使用して測定できる。原理上は、計算、特に反復計算は、対応するナビエ・ストークス方程式に基づいても行うことができる。従来のCFD法、例えば、FLUENTソフトウェアパッケージは、特に、この場合に使用することができる。
【0012】
さらに、レイノルズ数は、例えば、ガス流のプロフィールを測定し、レイノルズ数を変化させることによってこのプロフィールへの適合を行う公知の飛行時間法(TOF)および/またはマーカー法を使用して計算できる。加えて、層流化は、例えばレイノルズの色素流入実験(Reynoldschen Farbfadenversuchs)に基づいて、装置のモデルに基づいて有利に測定することができる。
【0013】
「多管反応器」という用語は、特に、脱離ガスおよび生成ガスが中を流れることができる、多くの相互平行管を有する反応器を指している。これらの管は、対応する反応に触媒作用を及ぼすために選択される少なくとも1つ触媒を含むフィードストックでしばしば充填される。第1の反応器の場合、触媒は、特に、プロペンからのアクロレインの合成を触媒するために選択される。収容される触媒は、当業者に公知の、プロペンの気相酸化において、アクロレインを形成するために従来使用されている任意の触媒であってよい。特に、この触媒は一般に、従来、酸化モリブデン、酸化クロム、酸化バナジウム、または酸化テルルに基づいた酸化物の多成分系である。プロペンからのアクロレインの調製における適切な触媒に関連して、「Stets Geforscht」,第2巻,Chemieforschung im Degussa−Forschungszentrum Wolfgang 1998,108−126頁,「Acrolein und Derivate」章,Dietrich ArntzおよびEwald Noll、および特に、国際公開第03/051809号パンフレットに開示されており、これらの文献は参照によって本願明細書に引用され、本願明細書の一部を構成するものとする。
【0014】
第1の反応器に含まれる触媒が、組成
MoBiFe
を有することが特に好ましく、ここで、
Moは、モリブデンを表し、
Biは、ビスマスを表し、
Feは、鉄を表し、
Aは、コバルトおよびニッケルから選択される少なくとも1つの元素を表し、
Bは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびタリウムから選択される少なくとも1つの元素を表し、
Cは、タングステン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、およびチタンから選択される少なくとも1つの元素を表し、
Dは、リン、テルル、アンチモン、スズ、セリウム、鉛、ニオブ、マンガン、ヒ素、および亜鉛から選択される少なくとも1つの元素を表し、
Oは、酸素を表し、
ここで、a=12の場合、
bは、0.1〜10であり、
cは、0.1〜20であり、
dは、2〜20であり、
eは、0.001〜10であり、
fは、0〜30であり、
gは、0〜4であり、xは、他の元素の酸化状態によって決定される値を有する。
【0015】
シェルアンドチューブ熱交換器の管には、触媒自体を導入することができる。しかしながらこの触媒を、不活性の触媒担体に担持し、触媒が担持された不活性の触媒担体をシェルアンドチューブ熱交換器の管へ導入することもできる。使用される担体は、この場合、従来の多孔質のまたは非多孔質の酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化トリウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、または、ケイ酸マグネシウム、もしくはケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩であってよい。担体部分は、均一または不均一の形状であってよく、不均一の形状の担体部分は、はっきりとした表面粗さ有し、例えば、球体または中空円筒であることが好ましい。
【0016】
一般に、多管反応器は、冷媒および/または温度制御媒体が、管の通過流および配向に垂直な通過流方向に流れることができるように構成されている。使用する冷媒または温度制御媒体は、流体媒体の形をとることが好ましい。特に、硝酸カリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム、および/もしくは硝酸ナトリウムなどの溶融塩、または、ナトリウム、水銀、および様々な金属の合金などの低融点金属の融液の使用が有益である。
【0017】
本願発明に係る装置の有利な構成によれば、層流化手段は、流出領域の中に突出している。
【0018】
特に、突出した層流化手段は、流出領域において、流動ジオメトリを変化させる。この点において、この層流化手段が流出領域の方向へ先細ることが、特に好ましい。層流化手段は、この場合、錐台または錐体であることが好ましい。
【0019】
本願発明に係る装置の更に有利な構成によれば、層流化手段は、錐台を備える。
【0020】
本願発明に係る装置の更に有利な構成によれば、層流化手段は、錐体を備える。
【0021】
錐体または錐台である層流化手段の構成は、ここでは低い乱流率、ならびに、特に、個々の管内の出発物質および出発生成物の非常に短い滞留時間を導く、流れの著しい層流化を、特にもたらす。これが、アクロレインの自動酸化のリスクを効果的に除去する。特に、これは、アクロレインの自動酸化によって引き起こされる爆発による、第1の反応器への破損を防ぐこともできる。
【0022】
層流化手段が錐体または錐台である場合は、この錐体または錐台は、15〜60°の範囲の錐角を有することが好ましく、20〜45°の範囲であることが特に好ましく、25〜40°の範囲であることがさらにより好ましい。
【0023】
「錐角」という用語は、本願明細書において、特に錐体の開口角、つまり、先細の領域でかつ錐体または錐台の対称軸を含む平面に対して任意の鋭角である領域にある投影辺の角度、の半分を指す。
【0024】
さらに、層流化手段が錐体または錐台の場合、錐体または錐台の高さ(H):少なくとも1つのさらなる反応器から離れた側における錐体または錐台の直径(D)の比率が、3:1〜1:3の範囲にあることが好ましく、2:1〜1:2の範囲にあることが特に好ましく、1.5:1〜1:1.5の範囲にあることが最も好ましい。
【0025】
少なくとも1つのさらなる反応器も、シェルアンドチューブ熱反応器であることが好ましい。しかしながら、反応器の反応チャンバにおいて、熱金属シートが、熱金属シート反応空間と熱伝導空間との間に形成するように配置されている反応器も想起できる。この種類の反応器について、例えば、独国特許出願公開第19848208号明細書、または独国特許出願公開第10108380号明細書に記載されている。
【0026】
第1の反応器と同様に、少なくとも1つのさらなる反応器も触媒を有し、この触媒はシェルアンドチューブ熱反応器である限りは、この触媒自体をシェルアンドチューブ熱反応器の管の中へ導入してもよいし、または触媒担体部分に担持することもできる。少なくとも1つのさらなる反応器が反応チャンバに配置された熱金属シートを備える反応器である限り、触媒を、フィードストックまたは熱金属シートの表面を覆うものとして導入することができる。
【0027】
少なくも1つのさらなる反応器におけるこの触媒は、アクリル酸へのアクロレインの変換に触媒作用を及ぼす触媒であることが好ましい。アクロレインからのアクリル酸の調製における適切な触媒に関連して、「Stets Geforscht」,第2巻,Chemieforschung im Degussa−Forschungszentrum Wolfgang 1998,108−126頁,「Acrolein und Derivate」章,Dietrich ArntzおよびEwald Noll,に再び開示されており、これに関しても、これらの文献は参照によって本発明書に引用され、本明細書の一部を構成するものとする。
【0028】
少なくとも1つのさらなる反応器に含まれる触媒が、組成
Moを有することが特に好ましく、
ここで、
Moは、モリブデンを表し、
Vは、バナジウムを表し、
Aは、銅、コバルト、ビスマス、および鉄から選択される少なくとも1つの元素を表し、Bは、アンチモン、タングステン、およびニオブから選択される少なくとも1つの元素を表し、
Cは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、およびチタンから選択される少なくとも1つの元素を表し、
Dは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、タリウム、リン、テルル、スズ、セリウム、鉛、マンガン、および亜鉛から選択される少なくとも1つの元素を表し、
Oは、酸素を表し、
ここで、a=12の場合、
bは、0.1〜10であり、
cは、0.1〜20であり、
dは、0.1〜20であり、
eは、0.001〜10であり、
fは、0〜30であり、xは、他の元素の酸化の状態によって決定する値を有する。
【0029】
本願発明のさらなる態様は、
第1段階において、アクロレインは、プロペンの気相酸化によって、第1の反応器において生産され、
少なくとも1つの第2段階において、アクロレインは、少なくとも1つのさらなる反応器において、アクリル酸に変換され、
第1の反応器は、ガスが中を流れることができる複数の管を有する多管反応器であって、この反応器は、流出領域を介して少なくとも1つのさらなる反応器に接続し、
ガス流は、層流化手段を使用して、流出領域において層流化される、アクリル酸の調製方法を提供する。
【0030】
好ましい層流化手段は、本願発明に係るアクリル酸の調製装置に関連して冒頭に記載した層流化手段である。
【0031】
「層流化」という用語は、本願明細書において、特に、レイノルズ数の減少も意味する。層流化は、特に、流出領域の対応する形成によって達成できる。特に、流出領域において、流出領域の断面、形状および/または長さを好ましく変える層流化手段が構成されてよい。本願発明に係る方法は、特に、本願発明に係る装置において実施することができる。
【0032】
レイノルズ数は、特に、流動ガスの流速および粘度に基づいて測定できる。この目的において必要とされる変数は、例えば、流量計を使用して測定できるか、または、既知反応条件、特に、温度、ガス密度、ガスの混合比、触媒の状態、触媒の密度、触媒反応に利用できる触媒表面積、流れの断面、および他の要因を考慮した既知反応条件に基づいて計算できる。特に、この場合、対応するナビエ・ストークス方程式を導いて、それに応じて解いてもよい。この場合に使用するのは、FLUENTソフトウェアパッケージのような、市販のCFD(連続流体力学)システムが好ましい。アクリル酸の調製装置に関連して開示された詳細および利点は、本願発明に係るアクリル酸の調製方法において同様に適用および移行可能であり、その逆もまた同じである。
【0033】
本願発明に係る方法は、さらなる工程として、アクロレインを生産する工程およびアクロレインを変換しアクリル酸を形成する工程に加えて、蒸留、結晶化、抽出によって、またはこれらの精製工程の組み合わせによって得られたアクリル酸を精製する工程を含むことが好ましい。
【0034】
精製する工程は、まず始めにアクリル酸水溶液を得るために、得られた生成ガス混合物を、水中の急冷塔として公知の装置において、全体を凝縮させる方法で実施されることが好ましい。しかしながら、例えば、75重量%のジフェニルエーテルと25重量%のジフェニルとの混合物などの高沸点溶媒中においてアクリル酸を吸収することも想起できる。アクリル酸の吸収の後には、通常、蒸留によるさらなる精製が続き、ここで、出発組成物としてのアクリル酸水溶液の場合、トルエンなどの適切な同調因子の存在下において共沸混合物蒸留が実施されることが多く、粗アクリル酸が残液として残される。反応ガスの混合物が高沸点溶媒に吸収された場合、粗アクリル酸は、通常、精留装置の側流において取り除かれる。
【0035】
このようにして得られた粗アクリル酸を、特に、低沸点物質を分離するために、さらなる精製のためさらに蒸留することができる。粗アクリル酸は、結晶化、特に懸濁結晶化によってもさらに精製することができ、最終的には、99重量%の少なくともアクリル酸を含有する純アクリル酸が得られる。
【0036】
本願発明のさらなる態様は、本願発明に係る方法によって得られる好ましくは精製されたアクリル酸がラジカル重合する、親水性ポリマーの調製方法を提供する。重合は、本願発明に係る方法によって得られる好ましくは精製されたアクリル酸が、ヒドロゲルを形成するために、架橋剤の存在下において、水系溶液において、部分的に中和された形でラジカル重合するように実施されることが好ましく、ヒドロゲルはその後、小さいサイズにされ、乾燥され、得られたポリマー粒子は、その後、表面改質、好ましくは表面後架橋される。超吸収体として知られる物質は、このようにして得られる。超吸収体に関するさらなる説明、特に、その調製に関しては、「Modern Superabsorbent Polymer Technology」,FL Buchholz,AT Graham,Wiley−VCH,1998に開示されている。
【0037】
本願発明のさらなる態様は、前述の工程によって調製された、親水性、好ましくは吸水性ポリマー、特に好ましくは超吸収体が、少なくとも1つの衛生用品要素に組み込まれている、吸水性の衛生用品の製造方法によって形成される。この種の衛生用品要素は、おむつまたは生理用ナプキンの芯であることが好ましい。
【0038】
本願発明は、前述の工程によって得られる精製されたアクリル酸に少なくとも基づくかまたはそれを少なくとも含有する、繊維、成形品、膜、発泡体、超吸収性ポリマー、合成洗剤、廃水処理の分野のための特定ポリマー、エマルション塗料、化粧品、織物、皮革用塗料もしくは紙製品、または衛生用品などの化学製品にも関する。
【0039】
最後に、本願発明は、繊維、成形品、膜、発泡体、超吸収性ポリマーもしくは衛生用品、合成洗剤もしくは廃水処理の分野のための特定ポリマー、エマルション塗料、化粧品、織物、皮革用塗料、または紙製品における、あるいはその製造のための本願発明に係るアクリル酸の調製方法によって得られる好ましくは精製されたアクリル酸の使用も提案している。
【0040】
以下に、添付の図面を参照し、本願発明を詳細に説明するが、実施形態によっていかなる限定もせず、利点および詳細を示す。
【0041】
図1は、本願発明に係るアクリル酸の調製装置1を概略的に示している。装置1は、第1の反応器2と、少なくとも1つのさらなる反応器3と、を備える。少なくとも第1の反応器2は、複数の管4を含む多管反応器であり、この管4の詳細は、明快にするために例として図示したにすぎない。この管4は、冷媒、好ましくは溶融塩のよりよい循環を実現するために、管の輪として配置されてもよい。各管4は、アクロレインを形成するプロペンと酸素の触媒反応のための触媒を含む。特に、この触媒は、モリブデン酸ビスマスに基づいた多成分触媒であってよい。第1のガス流5は、管4の中を流れることができる。第1のガス流5は、気相酸化の出発物質、つまりプロペンおよび酸素を含む。管4から出るガスは、収集チャンバ6において混合される。この収集チャンバ6は、少なくとも1つのさらなる反応器3に、流出領域7を介して接続される。流出領域7は、流出領域7の中を流れるガス流のプロフィールの層流化をもたらす層流化手段8を含む。この場合、層流化手段8は、流出領域7に突出し、流出領域7の方向へ先細くなっている。管4が管の輪になるように配置される場合、層流化手段は、管の輪の管がない内部領域の下に配置されることが好ましい。本第1の実施形態において、層流化手段8は、錐体の形状で構成されている。「流れの層流化」という用語は、この流れのレイノルズ数の減少を意味する。流れの層流化は、平均流速を増加し、管4内の出発物質および生成物の滞留時間を減少させるため、混合ガスの自動酸化をほぼ防ぐ。管4において起こる反応は、発熱反応を含むため、管の温度を調整することは有利となる。この目的において、冷媒流入口9および冷媒排出口10が備えられており、これを通って冷媒は、第1反応器2を通り、管4を周って流れることができる。冷媒流入口9および冷媒排出口10は、例えば対応するポンプ(図示せず)など、冷媒を運搬するための対応する手段に接続されていてよい。
【0042】
生成ガスの混合物は、流出領域7を介して第1の反応器2から出る。ミキサー11において、アクロレインは、供給管12を介して添加できる酸素と混合される。次に、さらなる反応器3においてアクロレインは酸化され、アクリル酸を形成する。
【0043】
図2は、本願発明に係る装置1の細部を概略的に示している。流出領域7、収集チャンバ6、および層流化手段8が示されている。層流化手段8は、錐角13を有し、高さHおよび、少なくとも1つのさらなる反応器から離れた側における直径Dを有する錐体を備える。
【0044】
図3は、本願発明に係る装置1のさらなる実施形態の細部を概略的に示している。収集チャンバ6、流出領域7、および層流化手段8が、この場合も、示されている。層流化手段8は、錐台として構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本願発明に係る装置の略断面図である。
【図2】本願発明に係る装置の細部を示す略図である。
【図3】本願発明に係る装置のさらなる実施形態の細部を示す略図である。
【符号の説明】
【0046】
1 アクリル酸の調製装置
2 第1の反応器
3 さらなる反応器
4 管
5 第1のガス流
6 収集チャンバ
7 流出領域
8 層流化手段
9 冷媒注入口
10 冷却材排出口
11 ミキサー
12 供給管
13 錐角
D 少なくとも1つのさらなる反応器から離れた側における錐体または錐台の直径
H 錐体または錐台の高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸の調製装置(1)であって、
第1の反応器(2)と、
少なくとも1つのさらなる反応器(3)と、を備え、
少なくとも前記第1の反応器(2)は、アクロレインの合成に触媒作用を及ぼす触媒を含む複数の管(4)を有する多管反応器であり、
前記管(4)は、流出領域(7)を介して少なくとも1つの前記さらなる反応器(3)に、流体的に接続できる収集チャンバ(6)に開口し、
前記流出領域(7)は、前記流出領域(8)の中を流れるガス流のプロフィールの層流化をもたらす層流化手段(8)を備える、アクリル酸の調製装置。
【請求項2】
前記層流化手段(8)が前記流出領域(7)に突出する、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記層流化手段(8)が前記流出領域(7)の方向へ先細る、請求項1または請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記層流化装置(8)は、錐台を備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記層流化装置(8)は、錐体を備える、請求項3または請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記錐体または前記錐台が、15〜60°の範囲の錐角(13)を有する、請求項4または請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記錐体または前記錐台の高さ(H):少なくとも1つの前記さらなる反応器から離れた側における前記錐体または前記錐台の直径(D)の比率が、3:1〜1:3の範囲にある、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
アクリル酸の調製方法であって、
第1の段階において、アクロレインは、第1の反応器(2)において、プロペンの気相酸化によって生産され、
少なくとも1つの第2段階において、前記アクロレインは、少なくとも1つのさらなる反応器(3)において、前記アクリル酸に変換され、
前記第1の反応器(2)は、ガスが中を流れることができる複数の管(4)を有する多管反応器であって、前記反応器は、流出領域(7)を介して、少なくとも1つの前記さらなる反応器(3)に接続され、
ガス流は、層流化手段を用いて前記流出領域(7)において層流化される、前記アクリル酸の調製方法。
【請求項9】
さらなる工程として、前記アクロレインを生産する工程および前記アクロレインを変換し前記アクリル酸を形成する工程に加えて、蒸留、結晶化、抽出によって、またはこれらの精製工程の組み合わせによって得られた前期アクリル酸を精製する工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の装置(1)において実施される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の方法を使用して得られるアクリル酸。
【請求項12】
請求項9に記載のアクリル酸がラジカル重合する親水性ポリマーの調製方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法を使用して得られる親水性ポリマー。
【請求項14】
請求項13に記載の親水性ポリマーが、少なくとも1つの衛生用品要素と組み合わされる、吸水性衛生用品の製造方法。
【請求項15】
請求項9に記載の方法によって得られるアクリル酸に少なくとも基づくか、またはそれを少なくとも含有する、繊維、成形品、膜、発泡体、超吸収性ポリマー、合成洗剤、廃水処理の分野のための特定ポリマー、エマルション塗料、化粧品、織物、皮革用塗料もしくは紙製品、または衛生用品。
【請求項16】
繊維、成形品、膜、発泡体、超吸収性ポリマーもしくは衛生用品、合成洗剤もしくは廃水処理の分野のための特定ポリマー、エマルション塗料、化粧品、織物、皮革用塗料、または紙製品における、あるいはその製造のための請求項9に記載の方法によって得られるアクリル酸の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−544594(P2009−544594A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519876(P2009−519876)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006479
【国際公開番号】WO2008/009466
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(508004236)エボニック・シュトックハウゼン・ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】