説明

自在継手のジョイント角検出装置

【課題】取り付けの制約が少なく正確に測定可能な自在継手14のジョイント角測定装置10を提供する。
【解決手段】スパイダ52の第1軸部48の一方の軸端54とその軸端54に相対回動可能に連結されたアーム部22とに設けられてそれらの間の第1軸部48の軸心C3まわりの相対的な周方向変位Lを検出する可変抵抗器70と、上記周方向変位Lとその検出点Aの軸心C3からの距離rとに基づいてジョイント角θを算出して出力するジョイント角算出装置72とを備えていることから、上記相対的な周方向変位Lは小型の可変抵抗器70で検出可能となるので、外周側に突き出す部品のための空間が不要となって取り付けの制約が殆ど解消されるとともに、重心の偏心も大幅に小さくなって高速回転となっても誤差が小さく、正確にジョイント角θを測定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自在継手のジョイント角を検出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、FR車両,4輪駆動車両、RF車両などにおいて、変速機から差動歯車装置へ動力を伝達するために、変速機出力軸と推進軸との間、分割推進軸の間、推進軸と差動歯車装置との間などにおいて、相互の回転軸心の交差に拘わらず動力伝達可能に連結する自在継手が知られている。このような自在継手は、互いに直交する状態で中央部が結合された第1軸部および第2軸部から成る十字軸と、上記第1軸部の一対の軸端にそれぞれ相対回動可能に連結された一対のアーム部を有して第1回転軸に固定された第1ヨークと、上記第2軸部の一対の軸端にそれぞれ相対回動可能に連結された一対のアーム部を有して第2回転軸に固定された第2ヨークとを備えて構成され、ユニバーサルジョイントとも称される。そして、このような自在継手におけるジョイント角は、車両の急加速時の振動やこもり音等の車両の性能に影響することから、品質管理などのために測定されている。
【0003】
上記自在継手のジョイント角は車両の急加速時の振動やこもり音等の車両の性能に影響することから、品質管理などのために、そのジョイント角の測定装置が提案されている。たとえば特許文献1に記載されたものがそれである。
【特許文献1】特開平09−145355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のジョイント角測定装置は、自在継手が連結する一対の軸部材の側面の2点間に設けられて、それら2点間の距離の変化を測定する変位センサから構成される。この変位センサは、一方の軸部材に支持ベースを介して固定された検出器とその検出器から突き出すスピンドルの先端の接触子を接触させるために他方の軸部材に固定されたアタッチメントとから構成されている。このため、外周側に突き出す部品のための空間が必要であるために取り付けが困難な場合があった。また、それらの部品から構成される変位センサによって重心が偏心するため、高速回転となるほど誤差が大きくなって正確にジョイント角が測定できない場合があった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、取り付けの制約が少なく正確に測定可能な自在継手のジョイント角測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、以上の事情を背景として種々検討を重ねた結果、自在継手において、十字軸を構成する第1軸部の一対の軸端とその第1軸部の軸端に相対回動可能に連結された前記一対のアーム部との相対的な回動角、すなわち、それら第1軸部とそれに相対回動可能に連結されたアーム部との間の周方向変位が、自在継手のジョイント角に対応しており、その周方向変位は、十分に小型の変位検出装置で検出可能であることを見いだした。本発明はかかる知見に基づいて為されたものである。
【0007】
すなわち、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、互いに直交する状態で中央部が結合された第1軸部および第2軸部から成る十字軸と、前記第1軸部の一対の軸端にそれぞれ相対回動可能に連結された一対のアーム部を有して第1回転軸に固定された第1ヨークと、前記第2軸部の一対の軸端にそれぞれ相対回動可能に連結された一対のアーム部を有して第2回転軸に固定された第2ヨークとを備えた自在継手において、その第1回転軸と第2回転軸との相互の回転軸心の交差角であるジョイント角を検出する自在継手のジョイント角検出装置であって、(a)前記第1軸部の一対の軸端とその第1軸部の軸端に相対回動可能に連結された前記一対のアーム部とに設けられてそれらの間の上記第1軸部の軸心まわりの相対的な周方向変位を検出する変位検出装置と、(b)その変位検出装置により検出された周方向変位とその変位検出装置の検出点の前記第1軸部の軸心からの距離とに基づいて前記ジョイント角を算出して出力するジョイント角算出装置とを、含むことにある。
【0008】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1にかかる発明において、前記変位検出装置は、前記第1軸部の軸端および前記一対のアーム部の一方及び他方に固設された、固定抵抗体を有する抵抗体側素子と、その抵抗体側素子の固定抵抗体に摺動可能に接触する接触子を有する接触子側素子とを備え、前記相対的な周方向変位に応じて抵抗値を変化させる可変抵抗器を構成するものであることにある。
【0009】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1にかかる発明において、前記変位検出装置は、前記第1軸部の軸端に固設され、多数の磁極がその第1軸部の軸心を中心とする周方向に連ねて配設された磁性素子と、前記一対のアーム部においてその磁性素子の磁極の接近した位置に配置され、その磁極の通過を検出可能な磁気センサ素子とを備え、前記相対的な周方向変位に応じて上記磁極の通過数に対応する数のパルスを出力するものであることにある。
【発明の効果】
【0010】
請求項1にかかる発明の自在継手のジョイント角検出装置によれば、前記第1軸部の一対の軸端とその第1軸部の軸端に相対回動可能に連結された前記一対のアーム部とに設けられてそれらの間の第1軸部の軸心まわりの相対的な周方向変位を検出する変位検出装置と、その変位検出装置により検出された周方向変位とその変位検出装置の検出点の前記第1軸部の軸心からの距離とに基づいて前記ジョイント角を算出して出力するジョイント角算出装置とを備えていることから、それら第1軸部の軸端とその第1軸部の軸端に相対回動可能に連結されたアーム部との間の第1軸部の軸心まわりの相対的な周方向変位は小型の変位検出装置で検出可能となるので、外周側に突き出す部品のための空間が不要となって取り付けの制約が殆ど解消されるとともに、重心の偏心も大幅に小さくなって高速回転となっても誤差が小さく、正確にジョイント角を測定できる。
【0011】
また、請求項2にかかる発明の自在継手のジョイント角測定装置によれば、前記変位検出装置は、前記第1軸部の軸端および前記一対のアーム部の一方及び他方に固設された、固定抵抗体を有する抵抗体側素子と、その抵抗体側素子の固定抵抗体に摺動可能に接触する接触子を有する接触子側素子とを備え、前記相対的な周方向変位に応じて抵抗値を変化させる可変抵抗器を構成するものであることから、外周側に突き出す部品のための空間が不要となって取り付けの制約が殆ど解消されるとともに、重心の偏心も大幅に小さくなって高速回転となっても誤差が小さく、正確にジョイント角を測定できる。
【0012】
また、請求項3にかかる発明の自在継手のジョイント角測定装置によれば、前記変位検出装置は、前記第1軸部の軸端に固設され、多数の磁極がその第1軸部の軸心を中心とする周方向に連ねて配設された磁性素子と、前記一対のアーム部において該磁性素子の磁極の接近した位置に配置され、その磁極の通過を検出可能な磁気センサ素子とを備え、前記相対的な周方向変位に応じて上記磁極の通過数に対応する数のパルスを出力するものであることから、外周側に突き出す部品のための空間が不要となって取り付けの制約が殆ど解消されるとともに、重心の偏心も大幅に小さくなって高速回転となっても誤差が小さく、正確にジョイント角を測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の一実施例のジョイント角検出装置10を示すブロック図と、ジョイント角検出装置10が好適に適用される車両用の推進軸8の一部とを示している。ここでは、先ず、上記車両用の推進軸8に関して説明する。
【0015】
図1において、たとえばFR車両において図示しない変速機から差動歯車装置へ動力を伝達するための車両用の推進軸8は、たとえば、上記変速機の出力軸に一端が連結された第1分割推進軸12と、その第1分割推進軸12の他端に一端が自在継手(ユニバーサルジョイント)14を介して連結され、上記差動歯車装置の入力軸に他端が連結された第2分割推進軸16とを備えている。自在継手14は、第1分割推進軸12と第2分割推進軸16との間で、それらの回転軸心C1、C2の交差角であるジョイント角θ[rad]が所定の大きさを有していても回転(トルク)を伝達するシェルカップ型の継手であるフック式自在継手である。
【0016】
第1分割推進軸12は、その第1分割推進軸12と共通する回転軸心C1を有する円管状の溶接管から成る第1回転軸18と、その第1回転軸18の一端が一面側に接合されている円盤状の基部20、およびその基部20の他面側のうち回転軸心C1に対して相互に反対側に位置する外周部から回転軸心C1と平行な方向へそれぞれ突き出す一対のアーム部22を有する第1ヨーク24とを、備えている。
【0017】
第2分割推進軸16は、その第2分割推進軸16と共通する回転軸心C2を有する円管状の溶接管から成る第2回転軸26と、その第2回転軸26の一端が一面側に接合されている円盤状の基部28、およびその基部28の他面側のうち回転軸心C2に対して相互に反対側に位置する外周部から回転軸心C2と平行な方向へそれぞれ突き出す一対のアーム部30を有する第2ヨーク32とを、備えている。
【0018】
図2は、図1の推進軸8の自在継手14を拡大して一部を切り欠いて断面で示す、図1のII矢視部拡大図である。図2において、自在継手14は、第1分割推進軸12と第2分割推進軸16との相互の回転軸心C1、C2の交差点を通り且つ回転軸心C1に略直交する軸心C3を有する第1軸部48、および上記交差点を通り且つ回転軸心C2に略直交する軸心C4を有する第2軸部50を含み、その第1軸部48および第2軸部50の中央部が互いに直交する状態で結合されて成るスパイダ(十字軸)52と、複数本の針状円柱状のニードルローラ56および有底円筒状のカップ58を介して第1軸部48の一対の軸端54に軸心C3まわりにそれぞれ相対回動可能に連結された前記一対のアーム部22を有して、第1回転軸18に固定された前記第1ヨーク24と、複数本の針状円柱状のニードルローラ56および有底円筒状のカップ58を介して第2軸部50の一対の軸端60に軸心C4まわりにそれぞれ相対回動可能に連結された前記一対のアーム部30を有して、第2回転軸26に固定された前記第2ヨーク32とを、備えている。
【0019】
上記一対のアーム部22に固定された2個のカップ58は、その一対のアーム部22の先端にそれぞれ軸心C3方向に形成された一対の貫通穴62に、相互に開口部が対向するようにそれぞれ嵌め入れられており、また、上記一対のアーム部30に固定された2個のカップ58は、その一対のアーム部30の先端にそれぞれ軸心C4方向に形成された一対の貫通穴64に、相互に開口部が対向するようにそれぞれ嵌め入れられている。本実施例では、上記一対のアーム部22に固定された2個のカップ58は、それらのカップ58の外周面に形成された円環状のスナップ溝にそれぞれ嵌め入れられたスナップリング66が各アーム部22の相対向する内側の面に当接するまでそれぞれ圧入されて、各アーム部22に対して軸心C3まわりに相対回転不能に固定されており、また、上記一対のアーム部30に固定された2個のカップ58は、それらのカップ58の外周面に形成された円環状のスナップ溝にそれぞれ嵌め入れられたスナップリング66が各アーム部30の相対向する内側の面に当接するまでそれぞれ圧入されて、各アーム部30に対して軸心C4まわりに相対回転不能に固定されている。
【0020】
また、各カップ58の内周面には、スパイダ52の各軸端54、60のうちいずれか1がそれぞれ嵌め入れられており、上記複数個のニードルローラ56は、各軸端54、60の外周面とそれらの各軸端54、60に連結された各カップ58の内周面との間に形成された円環状の間隙にそれぞれ総コロ状態で配置された状態で、各軸端54、60に嵌め入れられた円環状のワッシャ68によりその間隙から抜け出ることが阻止されている。
【0021】
以上のように構成される推進軸8は、車両の駆動に際して、図示しないエンジンで発生させられて変速機を介して推進軸8に入力された動力を図示しない差動歯車装置等を介して駆動輪に伝達する。その動力伝達経路の途中に位置する自在継手14は、第1ヨーク24に入力された動力すなわち回転軸心C1まわりのトルクを、その第1ヨーク24の一対のアーム部22、およびその一対のアーム部22に固定された一対のカップ58、およびそれら一対カップ58の内周面にそれぞれ配置させられた複数本のニードルローラ56、およびスパイダ52、およびそのスパイダ52の一対の軸端60の外周面にそれぞれ配置させられた複数本のニードルローラ56、および一対のアーム部30に固定された一対のカップ58を順に介して、第2ヨーク32(一対のアーム部30)に伝達するようになっている。
【0022】
そのトルク伝達の際には、第1回転軸18と第2回転軸26との相互の交差角であるジョイント角θに応じて、スパイダ52の各軸端54、60がそれらの各軸端54、60に連結されたカップ58(各アーム部22、30)に対して軸心C3または軸心C4まわりに相対回動しつつ、スパイダ52が回転軸心C1および回転軸心C2まわりに回転する。そのときの各軸端54、60とそれらの各軸端54、60に相対回動可能に連結されたカップ58(各アーム部22、30)との相対的な回動角α[rad]は、ジョイント角θが常に一定であった場合、ジョイント角θに比例する2倍となり、式(1)が成り立つ。
【0023】
α = 2θ ・・・式(1)
【0024】
ここで、たとえば一対のアーム部22を基準にして、第1軸部48の軸心C3からその軸心C3に直交する方向の所定距離r[m]に位置する点(後述の検出点Aに相当)が軸心C3まわりに回動角αだけ移動する場合、その点の軸心C3まわりの相対的な周方向変位L[m]は、式(2)で示されるようになる。
【0025】
L = r*α ・・・式(2)
【0026】
したがって、式(1)および式(2)から式(3)が成り立つ。すなわち、ジョイント角θは、第1軸部48の軸心C3に直交する方向に位置する点の軸心C3まわりの周方向変位Lと、その点の軸心C3からの所定距離r[m]とから算出される。
【0027】
θ = L/2r ・・・式(3)
【0028】
本実施例のジョイント角検出装置10は、式(3)に基づいて、第1回転軸18と第2回転軸26との相互の回転軸心C1、C2の交差角であるジョイント角θを検出するものである。
【0029】
続いて、ジョイント角検出装置10に関して説明する。図1に戻って、ジョイント角検出装置10は、第1軸部48の一方の軸端54とその一方の軸端54に相対回動可能に連結されたアーム部22とに設けられて、それらの間の第1軸部48の軸心C3まわりの相対的な周方向変位Lを検出する変位検出装置としての可変抵抗器70と、その可変抵抗器70により検出された周方向変位L、および可変抵抗器70における検出点Aの回転半径すなわち軸心C3からの所定距離(距離)rに基づいてジョイント角θを算出して出力するジョイント角算出装置72とを、備えている。
【0030】
ジョイント角算出装置72は、CPU、ROM、RAM、および入出力インターフェイス等を備えた所謂マイクロコンピュータを含み、予め記憶されたプログラムに従って上記入出力インターフェイスを介して入力された入力信号を処理する電子制御装置74と、光磁気ディスクやハードディスクあるいは半導体メモリ等の記憶媒体を含む外部的な記憶装置76と、二次元平面において文字、記号、および画像などを表示可能な画像表示装置78と、キーボードやマウス等を含む入力操作装置80とを、備えている。電子制御装置74には、可変抵抗器70、記憶装置76、画像表示装置78、および入力操作装置80が上記インターフェイスを介して電気的に接続されている。
【0031】
図3は、図2の可変抵抗器70を含む第1軸部48の軸心C3に直交する断面を示す、図2のIII−III視断面図である。図2または図3において、可変抵抗器70は、第1軸部48の一方の軸端54に固設された、固定抵抗体としての抵抗膜82を有する抵抗体側素子84と、上記一方の軸端54に連結されたアーム部22のカップ58に固設された、上記抵抗体側素子84の抵抗膜82に摺動可能に接触する接触子86を有する接触子側素子88とを、備えている。
【0032】
図4は、抵抗体側素子84を示す斜視図である。図2乃至図4に示すように、抵抗体側素子84は、軸心C3を中心とする部分円筒状の基部90、およびその基部90の内周面のうち回転軸心C1寄りの部位から軸心C3に向かって延出する扇形状の取付部92を有して成形された金属製または樹脂製の基板94と、その基板94の基部90の内周面のうち取付部92が設けられていない面に膜状に設けられた絶縁材料から成る絶縁基板96と、その絶縁基板96の内周面のうち取付部92寄りの面に、軸心C3を中心とする周方向の膜状に設けられた例えば導電性プラスチックや複合導電性プラスチックの抵抗体あるいはサーメット抵抗から成る前記抵抗膜82と、絶縁基板96の内周面のうち抵抗膜82の取付部92に対する反対側の面に、軸心C3を中心とする周方向の膜状に抵抗膜82と離間して設けられた例えば銅や銀等を含む導体から成る導体膜98と、抵抗膜82および導体膜98の一端同士を電気的に導通させるように連結する例えば銅や銀等を含む導体から成る膜状の連結膜100とを、備えている。上記抵抗膜82の内周面は、図3に示すように、軸心C3を中心とする曲率半径が所定距離rの円筒内周面である。この抵抗体側素子84は、取付部92における軸心C3を中心とする径方向の軸心C3寄りの端面である取付面102が前記第1軸部48の一方の軸端54の外周面に接着等されることにより固定されている。
【0033】
ここで、上記複合導電性プラスチックの抵抗体とは、カーボンあるいは金属(金、銀、銅、アルミニウム、鉄、ステンレス、ニッケルなど)の粉末や繊維が分散して複合された導電性を有するプラスチックであり、特にカーボンを含むものをカーボン抵抗と称する。
【0034】
抵抗膜82が上記カーボン抵抗から成る場合は、その抵抗膜82は、たとえば、黒鉛(グラファイト)やカーボンブラックなどのカーボン微粉末がエポキシ樹脂またはフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂と混合され、これがスクリーン印刷などの方法によって絶縁基板96上に形成されて硬化させられたものである。
【0035】
また、抵抗膜82が前記サーメット抵抗から成る場合は、その抵抗膜82は、たとえば、ルテニウム化合物やAg−Pdなどの貴金属の微粉末が低融点ガラス粉と混合され、これがスクリーン印刷などの方法によって絶縁基板96に形成されて700〜850℃で焼結された抵抗体である。このときの焼成温度は高温であるため、絶縁基板96には例えばアルミナ基板等が用いられる。
【0036】
図5は、接触子側素子88を示す斜視図である。図2、図3または図5に示すように、接触子側素子88は、抵抗体側素子84の抵抗膜82および導体膜98の各内周面に対向する外周面を有して、軸心C3を中心とする部分円筒状に成形された金属製または樹脂製の基板104と、その基板104の外周面に膜状に設けられた絶縁材料から成る絶縁基板106と、その絶縁基板106の外周面のうち抵抗膜82および導体膜98にそれぞれ相対向した各部位にそれぞれ固設された端子108、およびそれらの端子108から軸心C3まわりの周方向へそれぞれ延び出して抵抗膜82および導体膜98の各内周面に対してそれぞれ付勢する状態で接触している接触端部109をそれぞれ有する、バネ性の導電性材料から成る一対の接触子86とを、備えている。本実施例における一対の接触子86は、それぞれの接触端部109が軸心C3を中心とする径方向外側に向かって湾曲しており、抵抗膜82および導体膜98の各内周面に対して線接触するようになっている。本実施例では、一方の接触子86と抵抗膜82との接触部位が検出点Aである。また、接触子側素子88は、基板104における軸心C3を中心とする径方向の軸心C3寄りの端面である取付面110がカップ58の外周面に接着等されることにより固定されている。
【0037】
可変抵抗器70は、前述のように、電子制御装置74に対して前記電子制御装置74のインターフェイスを介して電気的に接続されているが、具体的には、可変抵抗器70は、一対の接触子86のそれぞれの端子108間の電気的な抵抗値R[Ω]が検出できるように、第1回転軸18に対して絶縁された状態でその第1回転軸18に設けられた一対のスリップリング111およびそれらの各スリップリング111に対してそれぞれ付勢させられつつ当接させられた一対のブラシ112を介して接続されている。その検出される抵抗値Rは、接触子86と抵抗膜82との摺動接点としての検出点Aの抵抗膜82に対する軸心C3まわりの相対的な周方向変位Lによって変化する。すなわち、検出点Aが連結膜100に近いほど抵抗値Rは小さくなり、検出点Aが連結膜100から遠いほど抵抗値Rは大きくなる。可変抵抗器70は、接触子86のスライド量(摺動量)によって抵抗値Rを変化させるスライド式可変抵抗器として機能する。
【0038】
本実施例のジョイント角検出装置10においては、検出点Aの軸心C3まわりの相対的な周方向変位Lとその周方向変位Lに伴って変化する抵抗値Rの最大値および最小値の差(振幅)である抵抗値差△Rとの関係は比例関係になり、次式(4)が成り立つ。式(4)において、Kは比例定数である。
【0039】
L = K*△R ・・・式(4)
【0040】
したがって、式(3)および式(4)から、次式(5)が成り立つ。
【0041】
θ = K*△R/2r ・・・式(5)
【0042】
前記電子制御装置74のROMには、予め実験等により算出された比例定数Kと共に、上記式(5)にて示されるジョイント角θと抵抗値差△Rとの関係が予め記憶されている。なお、本実施例のジョイント角検出装置10においては、上記関係は式(4)に示す比例関係となっているが、これに限らない。また、上記関係は、上記のように演算式の形式で記憶されているが、これに限らず、例えばマップ形式により記憶されてもよい。
【0043】
以上のように構成される自在継手8のジョイント角検出装置10は、推進軸8がトルク伝達を行う際にスパイダ52の軸端54がその軸端54に連結されたカップ58(アーム部22)に対して軸心C3まわりに相対回動することに伴って、上記軸端54に固設された接触子側素子88が上記カップ58に固設された抵抗体側素子84に対して軸心C3まわりに相対回動するようになっている。これにより、接触子86の先端端部109が抵抗膜82に対して摺動しつつ軸心C3まわりの周方向に変位する。
【0044】
図6は、上記トルク伝達を行う際に検出された抵抗値Rの時系列変化の一例を示す図である。この一例はジョイント角θが一定であった場合であるため、抵抗値Rは一定の正弦曲線を示している。図6において、抵抗値Rの最大値および最小値の差(振幅)が抵抗値差△Rである。
【0045】
ここで、ジョイント角θが算出される際の電子制御装置74の制御作動を説明する。先ず、可変抵抗器70により検出されて入力された抵抗値Rを示す電気的入力信号に基づいて、抵抗値差△Rが算出される。具体的には、たとえば数msec〜数十msecの所定の周期ごとに電子制御装置74に入力された抵抗値Rのうち、最大値と最小値とが算出されてその差が求められる。次いで、予め記憶された式(5)に示す関係から上記算出された抵抗値差△Rに基づいてジョイント角θが算出される。次いで、適宜、その算出されたジョイント角θ等が、画像表示装置78に数値やグラフにて表示され、記憶装置76に記憶されるようになっている。
【0046】
上述のように、本実施例の自在継手8のジョイント角検出装置10によれば、第1軸部48の一対の軸端54とその第1軸部48の軸端54に相対回動可能に連結された一対のアーム部22とに設けられてそれらの間の第1軸部48の軸心C3まわりの相対的な周方向変位Lを検出する変位検出装置としての可変抵抗器70と、その可変抵抗器70により検出された周方向変位Lとその可変抵抗器70の検出点Aの第1軸部48の軸心C3からの距離rとに基づいてジョイント角θを算出して出力するジョイント角算出装置72とを備えていることから、それら第1軸部48の軸端54とその第1軸部48の軸端54に相対回動可能に連結されたアーム部22との間の第1軸部48の軸心C3まわりの相対的な周方向変位Lは小型の可変抵抗器70で検出可能となるので、外周側に突き出す部品のための空間が不要となって取り付けの制約が殆ど解消されるとともに、重心の偏心も大幅に小さくなって高速回転となっても誤差が小さく、正確にジョイント角θを測定できる。
【0047】
また、本実施例の自在継手8のジョイント角検出装置10によれば、可変抵抗器70は、第1軸部48の一方の軸端54に固設された固定抵抗体としての抵抗膜82を有する抵抗体側素子84と、その一方の軸端54に対応するアーム部22に固定されたカップ58に固設されて抵抗体側素子84の抵抗膜82に摺動可能に接触する接触子86を有する接触子側素子88とを備え、前記相対的な周方向変位Lに応じて一対の接触子86間の抵抗値Rを変化させるスライド式可変抵抗器を構成するものであることから、外周側に突き出す部品のための空間が不要となって取り付けの制約が殆ど解消されるとともに、重心の偏心も大幅に小さくなって高速回転となっても誤差が小さく、正確にジョイント角θを測定できる。
【実施例2】
【0048】
次に、本発明の他の実施例について説明する。なお、以下の実施例の説明において、前述の実施例と重複する部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
図7は、本発明が適用された他の実施例のジョイント角検出装置113の変位検出装置としての磁気センサ114を示す、前述の実施例における図3に相当する図である。図7において、磁気センサ114は磁性素子116と、磁気センサ素子118とを備えている。
【0050】
図8は、磁性素子116を示す斜視図であり、図9は、磁気センサ素子118を示す斜視図である。図7および図8において、磁性素子116は、前記第1軸部48の一方の軸端54に固設された基板94と、その基板94の基部90の内周面において、多数の磁極すなわちN極nおよびS極sがその第1軸部48の軸心C3を中心とする周方向に順に連ねて着磁すなわち配設された部分円筒状の磁性体120とを、備えている。図7または図8においては、便宜上、N極nおよびS極sの間隔が実際よりも大きくなるように図示してある。なお、上記N極nおよびS極sの間隔は全ての磁極間で略一定である。
【0051】
また、図7および図9において、磁気センサ素子118は、磁性素子116が固設された上記一方の軸端54に連結されたアーム部22において、そのアーム部22に固定されたカップ58の外周面に固設された基板104と、その基板104の円筒面状の外周面に固設された絶縁基板106と、その絶縁基板106の円筒面状の外周面上であって磁性素子116の磁極の接近した位置に配置され、上記N極nおよびS極s等の磁極の通過を検出可能なホール素子122とを、備えている。上記ホール素子122は、所謂ホール効果を用いて磁界の強さおよび向きを電気信号として検出するものである。上記ホール効果とは、磁界中にある半導体にその磁界と垂直向きの電流が流れた際、その半導体の垂直方向に上記磁界の強さおよび向きに応じた起電力E[V]が生ずる現象である。
【0052】
磁気センサ114は、電子制御装置74に対して前記電子制御装置74のインターフェイスを介して電気的に接続されるが、具体的には、上記ホール効果によりホール素子122に生じた上記起電力Eが検出できるように、スリップリング111およびブラシ112を介して接続されている。その検出される起電力Eは、磁性体120に対向する磁気センサ122の表面の略中央に位置する検出点Aの磁性体120に対する軸心C3まわりの相対的な周方向位置によって変化する。すなわち、本実施例の磁気センサ114においては、上記起電力Eは、検出点Aが磁性体120のうちN極nに相対向したときに最大値(正の値のうち絶対値の最大値)になり、検出点Aが磁性体120のうちS極sに相対向したときに最小値(負の値のうち絶対値の最大値)になり、軸心Cまわりの周方向におけるN極nとS極sとの間の中央に位置するときに0(零)になる。磁気センサ114は、検出点Aの軸心C3まわりの周方向変位Lに応じてN極nあるいはS極s(磁極)の通過数に対応する数のパルスを出力するものである。なお、磁極の数を変更するすなわち正極Nおよび負極Sの配置ピッチを狭くすることにより、周方向の単位変位あたりの出力パルス数が変更可能であり、それのより周方向変位L検出の分解能を向上させることができる。
【0053】
本実施例のジョイント角検出装置113においては、検出点Aの軸心C3まわりの相対的な周方向変位Lと、その周方向変位Lの間に磁気センサ114から出力されるパルスの数であるパルス数Pとの関係は、N極nおよびS極sの間隔が全ての磁極間で一定であるため比例関係になり、次式(6)が成り立つ。式(6)において、Kは比例定数である。
【0054】
L = K*P ・・・式(6)
【0055】
したがって、式(3)および式(6)から、次式(7)が成り立つ。
【0056】
θ = K*P/2r ・・・式(7)
【0057】
前記電子制御装置74のROMには、予め実験等により算出された比例定数Kと共に、上記式(7)にて示されるジョイント角θとパルス数Pとの関係が予め記憶されている。本実施例のジョイント角検出装置113においては、上記関係は演算式の形式で記憶されているが、これに限らず、例えばマップ形式により記憶されてもよい。
【0058】
以上のように構成される自在継手8のジョイント角検出装置113は、推進軸8がトルク伝達を行う際にスパイダ52の軸端54がその軸端54に連結されたカップ58(アーム部22)に対して軸心C3まわりに相対回動することに伴って、上記軸端54に固設された磁性素子116が上記カップ58に固設された磁気センサ素子118に対して軸心C3まわりに相対回動するようになっている。これにより、検出点Aが軸心C3まわりの周方向に相対的に変位する。
【0059】
ここで、ジョイント角θが算出される際の電子制御装置74の制御作動を説明する。先ず、磁気センサ114により検出されてたとえば数msec〜数十msecの所定の周期ごとに電子制御装置74に入力された起電力Eを示すパルス状の電気的入力信号に基づいて、そのパルス数Pが算出される。次いで、予め記憶された式(7)に示す関係から上記算出されたパルス数Pに基づいてジョイント角θが算出される。次いで、適宜、その算出されたジョイント角θ等が、画像表示装置78に数値やグラフにて表示されて、記憶装置76に記憶されるようになっている。
【0060】
上述のように、本実施例の自在継手8のジョイント角検出装置10によれば、変位検出装置としての磁気センサ114は、第1軸部48の一方の軸端54に固設され、多数の磁極すなわちN極nおよびS極sがその第1軸部48の軸心C3を中心とする周方向に連ねて順に配設された磁性体120を有する磁性素子116と、上記一方の軸端54に対応する一方のアーム部22において、その磁性素子116の磁極の接近した位置に配置され、その磁極の通過を検出可能な磁気センサ素子118とを備え、前記相対的な周方向変位Lに応じて上記磁極の通過数に対応するパルス数Pを出力するものであることから、外周側に突き出す部品のための空間が不要となって取り付けの制約が殆ど解消されるとともに、重心の偏心も大幅に小さくなって高速回転となっても誤差が小さく、正確にジョイント角θを測定できる。
【0061】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
【0062】
たとえば、前述の実施例において、抵抗体側素子84および磁性素子116は、第1軸部48の一方の軸端54に設けられ、接触子側素子88および磁気センサ素子118は、上記一方の軸端54に連結されたカップ58に設けられていたが、これに限られない。たとえば、抵抗体側素子84および磁性素子116は、第1軸部48の他方の軸端54または第2軸部50の一方あるいは他方の軸端60に設けられ、接触子側素子88および磁気センサ素子118は、上記抵抗体側素子84または磁性素子116が設けられた軸端54、60に連結されたカップ58に設けられてもよい。
【0063】
また、前述の実施例において、磁性素子116の磁性体120には、N極nおよびS極sが軸心C3まわりの周方向に順に着磁されていたが、N極nあるいはS極sのうちいずれかが一定間隔を隔てて配置されてもよい。
【0064】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施例のジョイント角検出装置を示すブロック図と、そのジョイント角検出装置が好適に適用される車両用の推進軸の一部とを示している。
【図2】図1の推進軸の自在継手を拡大して一部を切り欠いて断面で示す、図1のII矢視部拡大図である。
【図3】図2の可変抵抗器を含む第1軸部の軸心に直交する断面を示す、図2のIII−III視断面図である。
【図4】図2の抵抗体側素子を示す斜視図である。
【図5】図2の接触子側素子を示す斜視図である。
【図6】図1の推進軸によりトルク伝達を行う際に検出された抵抗値の時系列変化の一例を示す図である。
【図7】本発明が適用された他の実施例のジョイント角検出装置の変位検出装置としての磁気センサを示す、前述の実施例における図3に相当する図である。
【図8】図7の磁性素子を示す斜視図である。
【図9】図7の磁気センサ素子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
8:推進軸
10:ジョイント角検出装置
12:第1分割推進軸
14:自在継手(ユニバーサルジョイント)
16:第2分割推進軸
18:第1回転軸
22:アーム部
24:第1ヨーク
26:第2回転軸
30:アーム部
32:第2ヨーク
48:第1軸部
50:第2軸部
52:スパイダ(十字軸)
54:軸端
60:軸端
70:可変抵抗器(変位検出装置)
72:ジョイント角算出装置
82:抵抗膜(固定抵抗体)
84:抵抗体側素子
86:接触子
88:接触子側素子
113:ジョイント角検出装置
114:磁気センサ
116:磁性素子
118:磁気センサ素子
A:検出点
C1、C2:回転軸心
C3、C4:軸心
L:周方向変位
R:抵抗値
n:N極(磁極)
r:所定距離(距離、回転半径)
s:S極(磁極)
α:回動角
θ:ジョイント角(交差角)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する状態で中央部が結合された第1軸部および第2軸部から成る十字軸と、前記第1軸部の一対の軸端にそれぞれ相対回動可能に連結された一対のアーム部を有して第1回転軸に固定された第1ヨークと、前記第2軸部の一対の軸端にそれぞれ相対回動可能に連結された一対のアーム部を有して第2回転軸に固定された第2ヨークとを備えた自在継手において、該第1回転軸と第2回転軸との相互の回転軸心の交差角であるジョイント角を検出する自在継手のジョイント角検出装置であって、
前記第1軸部の一対の軸端と該第1軸部の軸端に相対回動可能に連結された前記一対のアーム部とに設けられてそれらの間の該第1軸部の軸心まわりの相対的な周方向変位を検出する変位検出装置と、
該変位検出装置により検出された周方向変位と該変位検出装置の検出点の前記第1軸部の軸心からの距離とに基づいて前記ジョイント角を算出して出力するジョイント角算出装置と
を、含むことを特徴とする自在継手のジョイント角検出装置。
【請求項2】
前記変位検出装置は、前記第1軸部の軸端および前記一対のアーム部の一方及び他方に固設された、固定抵抗体を有する抵抗体側素子と、該抵抗体側素子の固定抵抗体に摺動可能に接触する接触子を有する接触子側素子とを備え、前記相対的な周方向変位に応じて抵抗値を変化させる可変抵抗器を構成するものである請求項1の自在継手のジョイント角検出装置。
【請求項3】
前記変位検出装置は、前記第1軸部の軸端に固設され、多数の磁極が該第1軸部の軸心を中心とする周方向に連ねて配設された磁性素子と、前記一対のアーム部において該磁性素子の磁極の接近した位置に配置され、該磁極の通過を検出可能な磁気センサ素子とを備え、前記相対的な周方向変位に応じて前記磁極の通過数に対応する数のパルスを出力するものである請求項1の自在継手のジョイント角検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−236682(P2009−236682A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83138(P2008−83138)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】