自壊性リンカーを有する高分子プロドラッグ
カスケードキャリヤーを連結したプロドラッグが記載されている。これは、生物学的に活性な成分及びマスキング基を含んでおり、ここで、マスキング基は、少なくとも1個の求核性成分を有しており、又、前記キャリヤーとは異なっている。本発明の好ましい一実施形態では、該プロドラッグは、式(I)で表される構造を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド、タンパク質、天然産物又は合成化学化合物などの生物学的に活性な物質のアミノ基に対する一時的結合を有する高分子プロドラッグに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーは、典型的には、溶媒-ポリマー混合物中に物理化学的に配合させた薬物化合物と一緒に非共有結合的な方法で使用されるか、又は、ポリマー試薬を薬物の官能基のうちの1つに共有結合で永久的に結合させることにより使用される。
【0003】
非共有結合的な薬物カプセル化は、持続性放出プロフィールのために、デポー製剤に適用されてきた。典型的には、薬物を高分子材料と混合し、該薬物が該バルク高分子材料全体に分配されるように加工する。そのようなポリマー-タンパク質凝集体は、注射可能な懸濁液として投与される微小粒子として成形し得るか、又は、それらは、一回のボーラス注射で投与されるゲルとして製剤する。薬物の放出は、該ポリマーが膨潤したときに起こるか、又は、該ポリマーが分解して薬物が外部に拡散可能となったときに起こる。そのような分解のプロセスは、自己加水分解的であり得るか、又は、酵素触媒的であり得る。薬物-ポリマーゲルのボーラス投与に基づく市販薬の例は、Lupron Depotである。懸濁化微小粒子に基づく市販薬の例は、Nutropin Depotである。
【0004】
非共有結合的なアプローチの不利な点は、薬物のバースト型の制御されない放出を防止するために、カプセル化を、立体的に高度に密集した環境を作り出すことにより最大限に効率化しなければならないということである。未結合の水溶性薬物分子の拡散を抑制するのには、強いファンデルワールス接触が必要であり、これは多くの場合、疎水性成分により媒介される。タンパク質又はペプチドなどのような立体配置的に感応性を有する多くの治療用物質は、カプセル化プロセス中に、及び/又は、その後の貯蔵中に、その機能を失う。さらに、そのようなアミノ含有薬物化合物は、ポリマー分解産物と容易に副反応を起こす(D.H. Lee et al., J. Contr. Rel., 2003, 92, 291-299)。さらに、放出機構が生分解に依存することは、患者間の可変性の原因となり得る。
【0005】
あるいは、永久的な共有結合を介して薬物をポリマーにコンジュゲートさせることもできる。このアプローチは、いわゆる小分子から天然産物やさらに大きなタンパク質に至るまで、様々な種類の分子に適用される。
【0006】
アルカロイド及び抗腫瘍薬などのような多くの種類の小分子薬剤は、水性液体中での溶解度が低い。これらの小分子化合物を溶解させる1つの方法は、それらを親水性ポリマーにコンジュゲートさせることである。この目的のために、ヒト血清アルブミン、デキストラン、レクチン、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(スチレン-コ-無水マレイン酸)、ポリ(N-ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)、ポリ(ジビニルエーテル-コ-無水マレイン酸)、ヒアルロン酸などの、さまざまな水溶性ポリマーが記述されている(R. Duncan, Nature Rev. Drug Disc., 2003, 2, 347-360)。
【0007】
癌治療における主要な挑戦は、腫瘍細胞を細胞毒性薬の選択的な標的とすることである。小分子抗癌薬を腫瘍組織中に蓄積させて、当該薬剤の望ましくない副作用を低減させるための有望な方法は、当該細胞毒性薬を高分子キャリヤーに結合させることである。高分子薬物コンジュゲートの腫瘍に対する受動的標的化は、Matsumura, Y.及びMaeda, H.(Cancer Res., 1986, vol 6, pp 6387-6392)が記述しているように、いわゆるEPR効果(enhanced permeability and retention effect)に基づいている。結果として、数種類のポリマー-薬物コンジュゲートが、抗癌剤としての臨床試験に入っている。
【0008】
1970年代の後期から、生体分子のポリ(エチレングリコール)による共有結合的な修飾について広範囲な研究が成されている。いわゆるペグ化タンパク質は、溶解度が増大したことにより、免疫原性が低減したことにより、また、腎臓クリアランス及び酵素によるタンパク質分解が低減したことに起因してインビボでの循環半減期が長くなったことにより、治療効果の向上を示してきた(例えば、「Caliceti P., Veronese F.M., Adv. Drug Deliv. Rev. 2003, 55, 1261-1277」を参照されたい)。
【0009】
しかしながら、INFα2、サクイナビル又はソマトスタチンなどの多くの薬剤は、ポリマーが薬物分子に共有結合でコンジュゲートしている場合、不活性であるか、又は、低下した生物活性を示す(T. Peleg-Shulman et al., J. Med. Chem., 2004, 47, 4897-4904)。
【0010】
非共有結合ポリマー混合物又は永久的な共有結合のいずれかにより課せられた欠点を回避するために、薬物のポリマーキャリヤーへの化学的コンジュゲートについてのプロドラッグアプローチを採用することは好ましいであろう。そのような高分子プロドラッグにおいては、生物学的に活性な成分は、典型的には、キャリヤー成分と薬物分子のヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシ基の間で形成された一時的結合により 高分子キャリヤー成分に結合している(例えば、図1に示されている)。
【0011】
プロドラッグは、それ自体は殆ど不活性であるが、予想どおりに活性代謝物に変換される治療薬である(「B. Testa, J.M:Mayer in Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism, Wiley-VCH, 2003, page 4」を参照されたい)。キャリヤープロドラッグアプローチは、薬剤の生物活性を回復させるためにインビボでポリマーから薬剤を放出させるような方法で適用し得る。薬物の持続放出又は制御放出が望まれる場合、放出された薬物と比較してプロドラッグの生物活性が低減されているということは有利である。この場合、副作用や過剰投与の危険を伴うことなく、比較的大量のプロドラッグを投与することができる。薬物の放出は時間の経過とともに起こり、それにより、薬物を繰り返し頻繁に投与する必要性が低減される。
【0012】
プロドラッグの活性化は、キャリヤーと薬物分子の間の一時的結合を、酵素的若しくは非酵素的に開裂することにより起こり得るか、又は、それらを順次組み合わせることにより、即ち、酵素的段階とそれに続く非酵素的な転位により起こり得る。水性バッファー溶液などのような酵素を含んでいないインビトロ環境中では、エステル又はアミドのような一時的結合は加水分解を受け得るが、加水分解の対応速度はあまりにも遅すぎて、治療上有用ではない。インビボ環境中では、エステラーゼ又はアミダーゼが一般的に存在しており、それらは、加水分解速度を、2倍から数桁速い速度まで、触媒的に著しく促進し得る(例えば、「R.B. Greenwald et al., J. Med. Chem. 1999, 42(18), 3857-3867」を参照されたい)。
【0013】
IUPACに基づく定義
(「http://www.chem.qmul.ac.uk/iupac/medchem/」の元で提供されている(アクセス日 2004年3月8日))。
【0014】
プロドラッグ
プロドラッグは、生体内変換を受けた後でその薬理効果を示す任意の化合物である。従って、プロドラッグは、親分子における望ましくない特性を改変するか又は排除するために一時的な方法で用いられる特殊化した非毒性保護基を含んでいる薬物であると見なすことができる。
【0015】
キャリヤー結合プロドラッグ(キャリヤープロドラッグ)
キャリヤー結合プロドラッグは、所与の活性物質の一時的なキャリヤー基との一時的な結合を含んでいるプロドラッグであり、ここで、そのキャリヤー基は、物理化学的特性又は薬物動態学的特性を改善し、通常は加水分解的な開裂により、インビボで容易に除去され得る。これは、図1において図式的に示してある。
【0016】
カスケードプロドラッグ
カスケードプロドラッグは、活性化基がアンマスキングされて初めてキャリヤー基の開裂が起こるキャリヤープロドラッグである。
【0017】
高分子カスケードプロドラッグ
高分子カスケードプロドラッグは、所与の活性物質と一時的な高分子キャリヤー基の一時的な結合を含み、活性化基がアンマスキングされて初めてキャリヤー基の開裂が起こるキャリヤープロドラッグである。
【0018】
バイオプレカーサープロドラッグ
バイオプレカーサープロドラッグは、キャリヤー基への結合は含んでいないが、活性成分自体の分子修飾により生じるプロドラッグである。この修飾により、代謝的又は化学的に変換されることが可能な新しい化合物が生成され、変換の結果生じる化合物は当該活性成分である。
【0019】
生体内変換
生体内変換は、生体又は酵素調製物による物質の化学的変換である。
【0020】
プロドラッグは、2つの種類、バイオプレカーサー及びキャリヤー結合プロドラッグに分類される。バイオプレカーサーはキャリヤー基を含まず、代謝的に官能基が作り出されることにより活性化される。キャリヤー結合プロドラッグでは、活性物質は一時的結合によりキャリヤー成分に結合している。本発明は、高分子キャリヤー結合プロドラッグ又は高分子プロドラッグに関し、ここで、キャリヤー自体は、キャリヤータンパク質又は多糖類又はポリエチレングリコールなどの巨大分子である。特に、本発明は、ポリマーと薬物の間の開裂がカスケード機構に従って二段階で進行する高分子キャリヤー結合プロドラッグに関する。
【0021】
キャリヤープロドラッグが開裂することにより、増大した生理活性を有する分子状物質(薬物)及び少なくとも1個の副生成物(キャリヤー)が生成される。この副生成物は、生物学的に不活性であり得る(例えば、PEG)か、又は、ターゲッティング特性を有し得る(例えば、抗体)。開裂後、当該生理活性物質では、前もってコンジュゲートされそれにより保護されていた少なくとも1個の官能基が出現し、その基の存在が、典型的には、当該薬物の生理活性に寄与する。
【0022】
プロドラッグ戦略を実行するために、薬物分子内の少なくとも1個の特定の官能基を用いてキャリヤーポリマーを結合させる。好ましい官能基は、ヒドロキシル基又はアミノ基である。従って、結合化学及び加水分解条件は、いずれも、これら2種類の官能性の間で大きく異なっている。
【0023】
単純な一段階機構においては、プロドラッグの一時的結合は、固有の不安定性又は酵素依存性を特徴とする。酵素触媒が存在しているか又は存在していない水性環境中における該結合の加水分解に対する感受性により、高分子キャリヤーと薬物の間の開裂速度が制御される。多くの種類の高分子プロドラッグが文献に記載されており、そこでは、一時的結合は、不安定なエステル結合である。これらの場合、生理活性物質により提供される官能基は、ヒドロキシル基又はカルボン酸のいずれかである(例えば、Y. Luo, MR Ziebell, GD Prestwich, "A Hyaluronic Acid - Taxol Antitumor Bioconjugate Targeted to Cancer Cells", Biomacromolecules 2000, 1, 208-218, J Cheng et al, Synthesis of Linear, beta-Cyclodextrin Based Polymer and Their Camptothecin Conjugates, Bioconjugate Chem. 2003, 14, 1007-1017, R. Bhatt et al, Synthesis and in Vivo Antitumor Activity of Poly(L-glutamic acid) Conjugates of 20(S)-Campthothecin, J. Med. Chem. 2003, 46, 190-193;R.B. Greenwald, A. Pendri, C.D. Conover, H. Zhao, Y.H. Choe, A. Martinez, K. Shum, S. Guan, J. Med. Chem., 1999, 42, 3657-3667;B. Testa, J.M:Mayer in Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism, Wiley-VCH, 2003,Chapter 8)。
【0024】
特に、治療効果を有する生体高分子のみではなく、特定の小分子薬物の場合にも、高分子キャリヤーを生理活性物質のアミノ基(即ち、タンパク質のN-末端アミノ基又はリシンアミノ基)に結合させることが望ましいことがあり得る。これは、薬物の生理活性をマスキングするのに、生理活性物質の特定のアミノ基(例えば、活性中心又は受容体結合に関与する領域若しくはエピトープに位置しているアミノ基)にコンジュゲートさせることが必要な場合である。さらにまた、プロドラッグの調製に際しては、アミノ基は、ヒドロキシル基又はフェノール基と比較して大きな求核性を有しているので、より化学選択的に処置し得るし、また、キャリヤーと薬物をコンジュゲートさせるためのより良好なハンドルとして作用し得る。このことは、非常に多種多様な異なった反応性官能基を含み得るタンパク質についてとりわけ当てはまる。そのようなタンパク質では、非選択的なコンジュゲーション反応は望ましくない生成物混合物をもたらし、それらは、広範囲のキャラクタリゼーション又は精製が必要であり、また、反応の収率及び生成物の治療効率を低減し得る。
【0025】
アミド結合や脂肪族カルバメートは、加水分解に対して、エステル結合よりも非常に安定であり、キャリヤー結合プロドラッグにおける治療用途のためには、開裂速度が遅すぎるであろう。従って、プロドラッグアミド結合の開裂性を制御するために、隣接基などの構成的な化学成分を加えることは有利である。キャリヤー物質によっても又は薬物によっても提供されないそのような付加的な開裂制御性化学構造は、リンカーと称される。プロドラッグリンカーは、所与の一時的結合の加水分解速度に、強い影響を及ぼすことができる。これらのリンカーの化学的性質はさまざまであることから、リンカーの特性を大きな範囲で設計することが可能である。
【0026】
例えば、プロドラッグリンカーは、酵素選択性に合わせて設計し得る。酵素依存性についての必要条件は、そのリンカーの構造が、対応する内因性酵素により基質として認識される構造モチーフを示すことである(図2)。
【0027】
酵素触媒によるプロドラッグ開裂の促進は、器官又は細胞を標的とする用途にとって望ましい特性である。当該結合を選択的に開裂する酵素が、処置に対して選択された器官又は細胞型に特異的に存在している場合、生理活性物質の標的化放出が達成される。
【0028】
酵素依存性一時的結合の典型的な特性は、加水分解に対するその安定性である。この一時的結合自体は、標準的な投与計画において治療効果が誘発され得るであろう程度に薬物を放出するような速度での自己加水分解を受けない。該結合に対する酵素の攻撃により開裂が有意に促進され、同時に、遊離薬物の濃度が上昇するのは、酵素が存在している場合のみである。
【0029】
標的化放出に対する特異的酵素によるアミン含有生物学的活性成分のプロドラッグ活性化に関して、幾つかの例が公開されている。これらの場合、開裂は、酵素により触媒される一段階プロセスで起こる。G. Cavallaroら(Bioconjugate Chem. 2001, 12, 143-151)は、プロテアーゼプラスミンによる抗腫瘍薬の酵素的放出について記載している。トリペプチド配列D-Val-Leu-Lysを介してシタラビンをポリマーα,β-ポリ(N-ヒドロキシエチル)-DLアスパルトアミド(PHEA)にカップリングさせる。さまざまな種類の腫瘍塊において比較的濃度が高いプロテアーゼプラスミンにより、シタラビンを酵素的に放出させる。
【0030】
β-ラクタマーゼ(R. Satchi-Fainaro et al., Bioconjugate Chem. 2003, 14, 797-804)及びシステインプロテアーゼ様カテプシンB(R. Duncan et al. J. Contr. Release 2001, 74, 135-146)などの様な特異的酵素により活性化される抗腫瘍高分子プロドラッグのさらなる例についても記載されている。Wiwattanapatapeeら(2003)は、5-アミノサルチル酸を結腸に送達するためのデンドリマープロドラッグについて概説している。該薬物分子を、アゾ結合により、「第3世代」PAMAMデンドリマーにコンジュゲートさせる。5-アミノサリチル酸は、結腸において、アゾレダクターゼと称される細菌酵素により放出される(W. R. Wiwattanapatapee, L. Lomlim, K. Saramunee, J. Controlled Release, 2003, 88:1-9)。
【0031】
A.J. Garmanら(A.J. Garman, S.B. Kalindjan, FEBS Lett. 1987, 223(2),361-365 1987)は、組織プラスミノーゲン活性化因子及びウロキナーゼにおけるアミノ基を可逆的に修飾するために、PEG5000-無水マレイン酸を用いている。pH7.4のバッファーでインキュベーションした際のマレイン酸結合の開裂によるPEG-uPAコンジュゲートからの機能的な酵素の再生は、半減期が6.1時間の一次速度式に従う。プロドラッグの開裂について、酵素の存在下では調べられなかった。上記で説明したように、インビボ環境中に存在しているプロテアーゼが一時的なアミド結合の開裂に有意に寄与するであろうということは、予期することができる。この結合のさらなる不利点は、低いpH値においてコンジュゲートが安定性を欠いているということである。これにより、時期尚早のプロドラッグ開裂を防止するために活性剤ポリマーコンジュゲートの精製を塩基性条件下で実施しなくてはならないので、当該リンカーの適用性は、塩基性pH値で安定な活性剤に限定される。
【0032】
カスケード機構は、リンカー開裂特性が単純な一段階プロドラッグにおける場合よりも非常に大きな適応性を持って最適化することが可能であることから、アミノ基官能性を含んでいる薬物の制御放出において特に有用であるということが証明された。
【0033】
カスケード開裂は、マスキング基と活性化基の構造的組合せで構成されるリンカー化合物により可能となる。マスキング基は、第一の一時的結合(例えば、エステル又はカルバメート)によって活性化基に結合させる。その活性化基は、第二の一時的結合(例えば、カルバメート)を介して薬物分子のアミノ基に結合させる。第二の一時的結合の安定性又は加水分解に対する感受性は、マスキング基が存在しているか又は存在していないかに依存する。マスキング基の存在下では、第二の一時的結合は非常に安定であり、治療上有用な速度で薬物を放出することは起こりそうにない。マスキング基が存在していない場合、該結合は非常に不安定となり、急速に開裂して薬物を放出する。
【0034】
第一の一時的結合の開裂は、当該カスケード機構の律速段階である。この第一の段階は、活性化基の分子転位(例えば、1,6-除去)を誘発し得る。この転位により第二の一時的結合はいっそう不安定となり、その開裂が誘発される。理想的には、第一の一時的結合の開裂速度は、所与の治療計画における薬物分子の望ましい放出速度に等しい。さらに、第二の一時的結合の開裂は、第一の一時的結合の開裂によりその不安定性が誘発された直後に起こるのが望ましい。
【0035】
図3において図式的に示されているように、マスキング基の官能性がキャリヤーポリマー自体により実現されているカスケードキャリヤープロドラッグについてのさまざまな例が存在している。以下で論じられている系において、マスキング基は、キャリヤーの一部分であるばかりではなく、酵素依存性に対しても設計されている(図4)。対応する酵素の存在下においてのみ、第一の一時的結合の開裂速度は、治療用途に対して充分に促進される。
【0036】
R.B. Greenwald、A. Pendri、C.D. Conover、H. Zhao、Y.H. Choe、A. Martinez、K. Shum、S. Guan(J. Med. Chem., 1999, 42, 3657-3667 及び PCT特許出願WOA-99/30727)は、1,4-又は1,6-ベンジル除去に基づいた、アミノ含有小分子化合物のポリ(エチレングリコール)プロドラッグの合成方法について記載している。このアプローチでは、高分子キャリヤーとしてのポリ(エチレングリコール)を、第一の一時的結合(例えば、エステル結合、カーボネート結合、カルバメート結合又はアミド結合)により、ベンジル基に結合させる。そのベンジル基は活性化基として作用し、該PEGポリマーも、このカスケード開裂機構においてマスキング基としての機能を有している。薬物分子のアミノ基は、カルバメート基を含んでいる第二の一時的結合を介してベンジル成分に結合させる。該薬物分子からのPEGの放出は第一の一時的結合の酵素的開裂により開始し、次いで、急速に1,4-ベンジル又は1,6-ベンジルが除去され、第二の一時的結合の開裂が開始する。
【0037】
同じリンカー系は、タンパク質の放出可能なポリ(エチレングリコール)コンジュゲートにも使用される(S. Lee, R.B. Greenwald et al. Bioconj. Chem. 2001, 12(2), 163-169)。リゾチームは、リシン残基のε-アミノ基でペグ化が起こった場合にその活性を失うので、モデルタンパク質として使用する。さまざまな量のPEGリンカーを該タンパク質にコンジュゲートさせた。PEGコンジュゲートからの本来のタンパク質の再生は、ラット血漿中での酵素的開裂により起こるか、又は、非生理学的な高pHバッファー中で起こる。
【0038】
Greenwaldらは、2000年に、トリメチルロックラクトン化(trimethyl lock lactonization)に基づいたアミノ含有プロドラッグのポリ(エチレングリコール)薬物送達システムについて公表した(R.B. Greenwald et al. J.Med.Chem. 2000, 43(3), 457-487;PCT特許出願WO-A02/089789)。このプロドラッグ系においては、置換o-ヒドロキシフェニル-ジメチルプロピオン酸を、第一の一時的結合としてのエステル基、カーボネート基又はカルバメート基でPEGに結合させ、及び、第二の一時的結合としてのアミド結合により薬物分子のアミノ基に結合させている。薬物放出の律速段階は、第一の結合の酵素的開裂である。この段階につづいてすぐにラクトン化によるアミド開裂が起こり、潜在的に毒性の芳香族ラクトン副産物が遊離する。
【0039】
同様のプロドラッグ系が、F.M.H. DeGrootらによって記述され(WO02083180およびW004043493A1)、また、D. Shabatらによって記述された(WO04019993A1)。W002083180には、1,(4+2n)除去に基づく細長い複数のリンカーを有するプロドラッグ系が開示されている。これらの例におけるマスキング成分は、酵素的開裂に対して特異的に設計された。このアプローチは、1の酵素的活性化イベントが2種類以上の薬物分子の放出を誘発する樹枝状プロドラッグ系にまで拡大された(WO04043493Al)。W004019993A1には、単一の酵素的活性化イベントにより多くの薬物成分を放出する自壊性デンドリマーに基づいた類似プロドラッグ系が開示されている。これらのプロドラッグ系は、高分子キャリヤーが存在していないことを特徴とする。その代わりに、プロドラッグリンカー成分のオリゴマー化により高分子量のプロドラッグが提供され、プロドラッグの開裂によりリンカー残基及び遊離薬物が生成されるが、高分子物質は放出されない。
【0040】
Greenwald、DeGroot及びShabatによって記述された上記プロドラッグ系の不利点は、一時的な結合の開裂後に、キノンメチドのような潜在的に毒性の芳香族小分子副生成物が放出されるということである。この潜在的に毒性の物質は薬物と1:1の化学量論的比率で放出され、インビボで高い濃度になり得る。この危険因子は、活性化基のオリゴマーに基づく自壊性樹枝状構造を用いた場合にもなお大きく、薬物分子よりも多くの芳香族副生成物が放出される。
【0041】
最近になって、R.B. Greenwaldら(Greenwald et al. J. Med.Chem. 2004, 47, 726-734)が、ビス-(N-2-ヒドロキシエチル)グリシンアミド(ビシンアミド)リンカーに基づくPEGプロドラッグ系について記述した。この系では、2つのPEG分子を、薬物分子のアミノ基にカップリングさせたビシン分子に結合させている。プロドラッグの活性化の最初の2つの段階は、両方のPEG分子の酵素的開裂である。PEGとビシンの間の結合が異なると、異なったプロドラッグ活性化動力学が得られると記述されている。この系の主な不利点は、薬物分子にコンジュゲートさせたビシンアミドの加水分解速度が遅いことであり(リン酸塩バッファー中で、t1/2=3時間)、その結果、ビシン修飾プロドラッグ中間体が放出され、このビシン修飾プロドラッグ中間体は、親薬物分子と比較して、異なった薬物動態学的特性及び薬力学的特性を示し得る。
【0042】
キャリヤーポリマーの一部分であるマスキング基を有するカスケードプロドラッグは、薬物放出速度の制御において限界がある。マスキング基の開裂は、該カスケード機構における律速段階であるので、該薬物放出速度はその分子構造に左右される。キャリヤーポリマーがマスキング基と同一である場合、その構造的適応性は、該ポリマーの特性に制限される。あるいは、制御された開裂のための要件に合わせるためにポリマーの構造改変が必要である場合、対応する構造の合成は、さらに困難なものになり得る。さらにまた、ポリマーにマスキング基特性を組み込んだ場合、その安全性プロフィールが変わり得る。
【0043】
従って、マスキング基とキャリヤーは、構造的に分離させるのが好ましい。これは、ポリマーキャリヤーと活性化基の間に永久的な結合を採用することにより達成することができる。この安定な結合は、カスケード開裂機構に関与しない。該キャリヤーがマスキング基として作用せず且つ活性化基を安定な結合でキャリヤーにカップリングさせた場合、当該活性化基などの潜在的に毒性である副産物の放出は回避される。活性化基とポリマーを安定的に結合させることにより、薬理が不明瞭な薬物-リンカー中間体の放出も抑制される。
【0044】
マスキング基を酵素依存性とすることにより治療薬を標的化送達するための系が開発された。対応する酵素の存在下においてのみ、マスキング基を活性化基に連結している第一の一時的結合の開裂速度は、治療用途に充分な程促進される。
【0045】
Antczakら(Bioorg Med Chem 9(2001) 2843-48)は、アミン含有薬物分子のための高分子カスケードプロドラッグ系のための基礎を形成する試薬について記述している。このアプローチにおいては、抗体がキャリヤーとして作用し、酵素的に開裂可能なマスキング基を有する活性化成分に該抗体を安定な結合で連結させている。エステル結合マスキング基が酵素的に除去された後、第二の一時的結合が開裂して、薬物化合物を放出する(図6に示してある)。
【0046】
D. Shabatら(Chem. Eur. J. 2004, 10, 2626-2634)は、マンデル酸活性化成分に基づく高分子プロドラッグ系について記述している。この系では、マスキング基をカルバメート結合で活性化成分に結合させている。該活性化成分は、ポリアクリルアミドポリマーに、アミド結合で永久的にコンジュゲートさせてある。マスキング基を触媒性抗体で酵素的に活性化した後、マスキング基は環化により開裂され、薬物が放出される。この活性化成分は、薬物が放出された後においても、まだ、ポリアクリルアミドポリマーに連結したままである。
【0047】
M.-R. Leeら(Angew. Chem. 2004, 116, 1707-1710)は、マンデル酸活性化成分と酵素的に開裂可能なエステル結合マスキング基に基づく類似したプロドラッグ系について記述している。
【0048】
記述されているこれらの全てのプロドラッグ-ポリマー系においては、マスキング基は、酵素に対する基質となるように特異的に設計されており、また、マスキング基の開裂は、患者間の可変性、注射部位の可変性及びインビトロとインビボの相関性が乏しいという不利点を伴っている酵素触媒に殆ど完全に依存している。
【0049】
主として酵素的に開裂されることの主な欠点は、患者間の可変性である。酵素レベルは、個々の間で有意に異なり得るが、その結果、酵素的開裂によるプロドラッグ活性化の生物学的変動が生じる。酵素レベルは、さらに、投与部位に応じても変わり得る。例えば、皮下注射の場合、体の特定の領域では、他の領域よりも予測可能な治療効果が得られることが知られている。この予測できない効果を低減するためには、非酵素的開裂又は分子内触媒が特に興味深い(例えば、「B. Testa, J.M:Mayer in Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism, Wiley-VCH, 2003, page 5」を参照されたい)。
【0050】
さらに、そのような酵素依存性のキャリヤー結合プロドラッグについては、薬物動態学的特性のインビボ-インビトロの相関関係を確立することは困難である。インビボとインビトロの適切な相関関係がない場合は、放出プロフィールの最適化は、面倒な仕事となる。
【0051】
さらにまた、酵素選択性の必要性は、プロドラッグリンカーで使用可能な構造的特性に厳しい制限を課すこととなる。この制限は、適切な構造活性相関の開発の大きな障害となり、従って、リンカー開裂動力学の最適化において大きな障害となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0052】
これらの理由により、記述されている高分子プロドラッグの上記制限を克服するために、アミン含有活性物質の高分子プロドラッグを形成させる新規なリンカー及び/又はキャリヤー技術を提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0053】
本発明は、上記で記載した不利な点に取り組むものである。本発明は、求核性成分(nucleophile)を含み且つキャリヤーとは異なるマスキング基を特徴とする高分子カスケードプロドラッグを提供する。
【0054】
該求核性成分は、第一の一時的結合の開裂後に、1,(4+2p)除去反応(ここで、p=0、l、2、3、4、・・・)を受けることが可能な芳香族活性化基を有する第一の一時的結合に対して適切な距離にある。本発明は、さらに、1,(4+2p)除去の結果として開裂される第二の一時的結合を介して薬物分子のアミノ基に連結されている活性化基を特徴とする。さらなる構造的特徴は、高分子キャリヤーが永久的な結合で活性化基に結合していることである。 本発明によるマスキング基は、少なくとも1個の求核性成分Nuを含んでいる。この求核性成分は、例えば、第一級アミノ基、第二級アミノ基又は第三級アミノ基であることができるが、該求核性成分は、分子内触媒又は分子内環化により、活性化成分からのマスキング基の開裂を援助することが可能である。
【0055】
本発明は、式(Ia)又は(Ib):
【化1】
【0056】
[式中、Y1〜Y5、R1〜R4、T、X、W、Nu及びArは、下記で定義されている]
で表される高分子カスケードプロドラッグ及び対応する高分子カスケードプロドラッグリンカー試薬を提供する。
【0057】
本来の薬物は、二段階の機構により放出される。第一段階は、マスキング基
【化2】
【0058】
と活性化成分
【化3】
【0059】
の間の第一の一時的結合の当該高分子プロドラッグからのインビボにおける律速的な開裂である。
【0060】
上記で記載したように、マスキング基の開裂は、酵素的段階又は非酵素的段階、例えば、pH依存性加水分解又は分子内環化などにより介在され得る。本発明の好ましい実施形態では、開裂は、分子内環化又は触媒により非酵素的に成される。本発明のマスキング基の37℃の水性バッファー(pH7.4)中における開裂速度(cleaveage kinetics)の半減期は、好ましくは、1時間〜6ヶ月であり、さらに好ましくは、1日〜3ヶ月であり、最も好ましくは、1日〜2ヶ月である。
【0061】
再生された本来の薬物の放出における第二の最終段階は、それぞれ、式(Ia)又は式(Ib)で表される残りの高分子プロドラッグの成分
【化4】
【0062】
の、迅速で、自発的且つ不可逆的な、いわゆる、1,4-除去、又は、1,6-除去、又は、1,(4+2p)(ここで、p=2、3、4又はそれ以上)除去である。
【0063】
マスキング基の加水分解性開裂とそれに続く活性化基の1,6-除去段階により誘発される、高分子プロドラッグからの本来の薬物の放出の上記機構は、本発明の高分子プロドラッグにより例証される。
【化5】
【0064】
式(Ia)又は式(Ib)におけるY1〜Y5、R1〜R4、T、X、W、Nu及びArの定義
Tは、D又はAである。
【0065】
本発明による構造が高分子カスケードプロドラッグリンカー試薬である場合、TはAであり、そして、Aは脱離基である。適切な脱離基Aの非限定的な例としては、限定するものではないが、塩化物、臭化物、フッ化物、ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、N-ヒドロキシアゾベンゾトリアゾリル、ペンタフルオロフェノキシ、N-ヒドロキシスルホスクシンイミジル、又は、当業者には既知の任意の他の脱離基などを挙げることができる。
【0066】
本発明による構造が高分子カスケードプロドラッグである場合、TはDであり、そして、Dは、アミン含有生物学的活性物質の残基であり、ここで、アミン含有生物学的活性物質としては、限定するものではないが、小分子生理活性作用物質又は生体高分子、例えば、タンパク質、ポリペプチド、及び、オリゴヌクレオチド(RNA、DNA)、ペプチド核酸(PNA)などを挙げることができる。
【0067】
ここで留意すべきことは、本明細書において、しばしばプロドラッグについて言及されているということである。真のプロドラッグは、Tがアミン含有生物学的活性物質又はアミン含有生物学的活性成分の残基である場合である。Tが脱離基Aである場合、当該式は、高分子カスケードプロドラッグリンカー試薬を表している。簡単にするために、本明細書においては、これらをプロドラッグと称する。真のプロドラッグ又は前駆体としての試薬のいずれを意味しているのかは、前後関係から理解されるであろう。
【0068】
適切な有機小分子生理活性成分としては、限定するものではないが、少なくとも1個の第一級アミノ基又は第二級アミノ基を有する、中枢神経系-活性作用物質、抗感染症薬、抗新生物薬、抗細菌薬、抗真菌薬、鎮痛薬、避妊薬、抗炎症薬、ステロイド性作用薬、血管拡張性作用薬、血管収縮作用薬及び心臓血管作用薬などの成分を挙げることができる。そのような化合物の非排他的な例は、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、アミノグルテチミド、アマンタジン、ジアフェニルスルホン、エタンブトール、スルファジアジン、スルファメラジン、スルファメトキサゾール、スルファレン、クリナフロキサシン、モキシフロキサシン、シプロフロキサシン、エノキサシン、ノルフロキサシン、ネオマイシンB、スプレクチノマイシン(sprectinomycin)、カナマイシンA、メロペネム、ドパミン、ドブタミン、リシノプリル、セロトニン、カルブタミド及びアシビシンなどである。
【0069】
少なくとも1個の遊離アミノ基を有する適切なタンパク質及びポリペプチドとしては、限定するものではないが、ACTH、アデノシンデアミナーゼ、アガルシダーゼ、アルブミン、α-1アンチトリプシン(AAT)、α-1プロテイナーゼインヒビター(API)、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、アンクロドセリンプロテアーゼ、抗体(モノクローナル又はポリクローナル、及び、フラグメント又は融合物)、抗トロンビンIII、抗トリプシン、アプロチニン、アスパラギナーゼ、ビファリン(biphalin)、骨形成タンパク質、カルシトニン(サケ)、コラゲナーゼ、DNアーゼ、エンドルフィン、エンフュービルタイド、エンケファリン、エリスロポエチン、VIIa因子、VIII因子、VIIIa因子、IX因子、フィブリノリジン、融合タンパク質、卵胞刺激ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、ガラクトシダーゼ、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド様GLP-1、グルコセレブロシダーゼ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PLAP)、絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、ヘモグロビン、B型肝炎ワクチン、ヒルジン、ヒアルロニダーゼ、イズルノニダーゼ(idurnonidase)、免疫グロブリン、インフルエンザワクチン、インターロイキン(1α、1β、2、3、4、6、10、11、12)、IL-1受容体拮抗薬(rhIL-1ra)、インスリン、インターフェロン(α2a、α2b、α2c、β1a、β1b、γ1a、γ1b)、角質細胞増殖因子(KGF)、トランスホーミング増殖因子、ラクターゼ、ロイプロリド、レボチロキシン、黄体形成ホルモン、ライムワクチン、ナトリウム利尿ペプチド、パンクレリパーゼ、パパイン、副甲状腺ホルモン、PDGF、ペプシン、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF-AH)、プロラクチン、タンパク質C、オクトレオチド、セクレチン、セルモレリン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ソマトロピン(成長ホルモン)、ソマトスタチン、ストレプトキナーゼ、スクラーゼ、破傷風毒素フラグメント、チラクターゼ、トロンビン、チモシン、甲状腺刺激ホルモン、チロトロピン、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF受容体-IgG Fc、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、TSH、尿酸オキシダーゼ
、ウロキナーゼ、ワクチン及び植物性タンパク質(例えば、レクチン及びリシンなど)などを挙げることができる。
【0070】
同様に、ここで、インビボ生理活性を有する任意の合成ポリペプチド又はポリペプチドの任意の部分なども挙げることができる。さらに、組換えDNA法で調製したタンパク質、例えば、上記で挙げたタンパク質の突然変異体、抗体フラグメント、一本鎖結合タンパク質、触媒性抗体及び融合タンパク質なども挙げることができる。
【0071】
好ましいタンパク質は、抗体、カルシトニン、G-CSF、GM-CSF、エリスロポエチン、ヘモグロビン、インターロイキン、インスリン、インターフェロン、SOD、ソマトロピン、TNF、TNF-受容体-IgC Fc及びGLP-1である。
【0072】
Xは、R5-Y6などのようなスペーサー成分である。
【0073】
Y1、Y2は、それぞれ、互いに独立して、O、S又はNR6であり得る。
【0074】
Y3、Y5は、それぞれ、互いに独立して、O又はSであり得る。
【0075】
Y4は、O、NR6又は-C(R7)(R8)-である。
【0076】
Y6は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素-炭素結合若しくは自由電子対を含んでいる任意のヘテロ原子であるか、又は、存在しない。
【0077】
R2及びR3は、独立して、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、又は、カルボキサミドアルキルなどから選択される。
【0078】
本発明との関連において、用語「ヘテロアルキル」は、(直線状、環状又は分枝状)アルキル鎖を表し、ここで、該アルキル鎖は、任意の位置において、0、S、N、P、Si、Cl、F、Br及びIなどから独立して選択される1個以上のヘテロ原子、又は、カルボキサミド、カルボン酸エステル、ホスホン酸エステル、リン酸エステル、二重結合若しくは三重結合、カルバメート、尿素、チオ尿素、チオカルバメート、オキシム、シアノ、カルボキシル及びカルボニルなどから独立して選択される1個以上の基を含んでいるか又はそれらで置換されている。
【0079】
Ar上の各R4置換基は、同一であっても又は異なっていてもよく、そして、独立して、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルコキシ、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、シアノ又はハロゲンなどから選択される。
【0080】
R4は、好ましくは、小置換基、例えば、水素、メチル、エチル、エトキシ、メトキシ、並びに、他の、C1-C6の直鎖、環状若しくは分枝鎖のアルキル及びヘテロアルキルなどから選択される。
【0081】
nは、ゼロ又は正の整数である。
【0082】
R7及びR8は、独立して、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、シアノ又はハロゲンなどから選択される。
【0083】
R5は、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールなどから選択される。
【0084】
R6は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールなどから選択される。
【0085】
R1は、ポリマーである。
【0086】
適切なポリマーの非限定的な例は、ポリアルキルオキシをベースとするポリマー、例えば、ポリ(プロピレングリコール)又はポリ(エチレングリコール)、デキストラン、キトサン、ヒアルロン酸及び誘導体、アルギナート、キシラン、マンナン、カラギーナン、アガロース、セルロース、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)及び炭水化物をベースとする他のポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(オキサゾリン)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ウレタン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、例えば、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)(HMPA)、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、例えば、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(有機ホスファゼン)、ポリ(シロキサン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(エステル)、例えば、ポリ(乳酸)又はポリ(グリコール酸)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(アミノ酸)、例えば、ポリ(グルタミン酸)、コラーゲン、ゼラチン、コポリマー、グラフトコポリマー、架橋ポリマー、ヒドロゲル、並びに、上記で挙げたポリマーに由来するブロックコポリマーである。
【0087】
ヒドロゲルは、大量の水を吸収している親水性又は両親媒性の三次元高分子網状組織であると定義される。この網状組織は、ホモポリマー又はコポリマーで構成され、共有結合性の化学的又は物理的(イオン性、疎水性相互作用、絡み合い)架橋が存在していることに起因して不溶性である。架橋により、網状組織構造及び物理的一体性がもたらされている。ヒドロゲルは、水との熱力学的な適合性を示すが、それにより、水性媒体中で膨潤することができる(以下のものを参照されたい:N.A. Peppas, P. Bures, W. Leobandung、H. Ichikawa、Hydrogels in pharmaceutical formulations, Eur. J. Pharm. Biopharm. 2000, 50, 27-46)。その網状組織の鎖は、細孔が存在し且つその細孔のかなりの割合は1〜1000nmの寸法を有するようにつながっている。特定の重合条件を選択することにより、当該ヒドロゲルは、無定形のゲルの形態で得ることができるか又はビーズ状樹脂として得ることができる。そのような柔らかいビーズは、1〜1000μmの寸法を有し得る。
【0088】
ヒドロゲルは、上記で挙げたポリマー及びコポリマーから合成することが可能であり、また、文献(W.E. Hennink and C.F. van Nostrum, Adv. Drug Del. Rev. 2002, 54,13-36)に記載されているように、縮合反応や付加反応などのような化学反応により、ラジカル重合、アニオン重合又はカチオン重合によって、化学的に架橋することができるか又は物理的に架橋することができる。
【0089】
さらなる例には、分岐ポリマー及び高分岐ポリマーなどがある。そのようなポリマーの例としては、デンドリマー及びほかの高密度スターポリマーなどを挙げることができる(R. Esfand, D.A. Tomalia, Drug Discov Today, 2001, 6(8), 427-436;P.M. Heegaard, U. Boas, Chem. Soc. Rev. 2004(33(1), 43-63;S.M. Grayson, J.M. Frechet, Chem. Rev. 2001, 101(12), 3819-3868)。
【0090】
R1は、タンパク質などのような生体高分子であることもできる。そのようなポリマーの非限定的な例としては、アルブミン、抗体、繊維素、カゼイン及び他の血漿タンパク質などを挙げることができる。
【0091】
各R1ポリマーは、本明細書に記載されている第二のプロドラッグリンカー又は当業者には既知の任意の別のリンカーとのコンジュゲーションにより該ポリマーに結合させた1個以上の生物学的活性物質を有し得る。該ポリマーは、さらなる置換基を有することも可能であり、また、スペーサー成分Xに結合するように官能基化することも可能である。そのような官能基の非限定的な例には、カルボン酸及び活性化誘導体、アミノ、マレイミド、チオール、スルホン酸及び誘導体、カーボネート及び誘導体、カルバメート及び誘導体、ヒドロキシル、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン、イソシアネート、イソチオシアネート、リン酸及び誘導体、ホスホン酸及び誘導体、ハロアセチル、ハロゲン化アルキル、アクリロイル、アリール化剤、例えば、フッ化アリール、ヒドロキシルアミン、ジスルフィド、例えば、ピリジルジスルフィド、ビニルスルホン、ビニルケトン、ジアゾアルカン、ジアゾアセチル化合物、エポキシド、オキシラン並びにアジリジンなどを挙げることができる。
【0092】
R1ポリマーについての好ましい官能基としては、限定するものではないが、チオール、マレイミド、アミノ、カルボン酸及び誘導体、カーボネート及び誘導体、カルバメート及び誘導体、アルデヒド並びにハロアセチルなどを挙げることができる。
【0093】
特に好ましい官能基としては、チオール、マレイミド、アミノ、カルボン酸及び誘導体、カルバメート及び誘導体、並びに、カーボネート及びその誘導体などを挙げることができる。
【0094】
XとR1の間で形成させる適切な結合又は基の非限定的な例としては、ジスルフィド、S-スクシンイミド、アミド、アミノ、カルボン酸エステル、スルホンアミド、カルバメート、カーボネート、エーテル、オキシム、ヒドラゾン、尿素、チオ尿素、ホスフェート及びホスホネートなどを挙げることができる。
【0095】
XとR1の間で形成させる好ましい結合又は基には、S-スクシンイミド、アミド、カルバメート及び尿素などがある。
【0096】
好ましくは、R1ポリマーは、哺乳動物において、充分に水和しており、また、分解可能又は排泄可能であり、無毒性且つ非免疫原性である。好ましいR1ポリマーとしては、「Nektar Inc. 2003 catalog "Nektar Molecule Engineering - Polyethylene Glycol and Derivatives for Advanced PEGylation"」に記載されているポリエチレングリコール試薬及びポリエチレングリコールなどのようなポリアルコキシをベースとするポリマー、分岐、高分岐、架橋ポリマー及びヒドロゲル、並びに、アルブミンなどのようなタンパク質などを挙げることができる。
【0097】
Wは、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキル、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールなどから選択される。
【0098】
Wは、好ましくは、無毒性の、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル又はヘテロアルキルから選択される。
【化6】
【0099】
の好ましい変形態様は、
【化7】
である。
【化8】
【0100】
の特に好ましい変形態様は、
【化9】
【0101】
であり、これらは、下記式:
【化10】
【0102】
で表される高分子プロドラッグを形成する。
【0103】
式(Iaa)及び式(Iba)において、R6は、Nu-Wであることも可能である。
【0104】
少なくとも1個のNuは、Nu-Wに存在している。
【0105】
Nuは、求核性成分であり、これは、
【化11】
【0106】
のカルボニル炭素において求核攻撃することが可能であり、従って、分子内触媒又は環化によりマスキング基の開裂を触媒することが可能である(図8)。図8は、マスキング基が分子内環化により開裂される、式(Ia)又は式(Ib)による例を示している。Nuが分子内触媒によりマスキング基の開裂のみを触媒する場合、該マスキング基の環状生成物は形成されない。
【0107】
好ましい求核性成分としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、チオール、カルボン酸、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン及び窒素含有ヘテロアリールなどを挙げることができる。特に好ましい求核性成分としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基及び第三級アミノ基などを挙げることができる。該マスキング基の開裂を効果的に触媒するために、求核性成分NuとY2の間の間隔は、好ましくは、3個の原子〜15個の原子である。さらに好ましくは、NuとY2の間の間隔は、4個の原子〜10個の原子である。少なくとも1個の該求核性成分NuをWのいずれか(例えば、Wの末端又は中央)に結合させ得るか、又は、少なくとも1個の該求核性成分NuをWの一部とすることができる。
【0108】
該マスキング基:
【化12】
【0109】
の好ましい変形態様は、独立に、
【化13】
【0110】
から選択され、ここで、
【化14】
【0111】
は、第一級、第二級又は第三級のアミン求核性成分Nuを形成している。
【0112】
これらの好ましい変形態様により、下記式:
【化15】
【0113】
で表される高分子プロドラッグが形成される。
【0114】
R9及びR10は、独立して、水素、置換若しくは非置換のアルキル若しくはヘテロアルキル、又は、置換若しくは非置換のアリール若しくはヘテロアリールから選択される。
【0115】
該マスキング基:
【化16】
【0116】
の特に好ましい変形態様は、
【化17】
【0117】
から選択される。
【0118】
好ましくは、R9、R10、R11及びR12は、独立して、水素、又は、置換若しくは非置換のアルキルから選択され、R7及び/又はR8は、水素ではない。
【0119】
R6は、さらにまた、
【化18】
【0120】
であってもよく、また、R6は、好ましくは、水素ではない。
【0121】
驚くべきことに、該マスキング基内に求核性成分Nuが存在していない場合、該マスキング基が前記アミン含有生物学的活性成分を不可逆的に修飾し得ることが見いだされた。実施例のところで示されているように、本発明には包含されないペンタノイルマスキング基(求核性成分を含んでいないという理由による)を有している高分子プロドラッグからの生理活性成分インスリンの放出に際して、インスリン分子の約30%がアシル転位により該マスキング基で修飾された。マスキング基からのアシル転位に対する求核性成分として作用する付加的な遊離アミノ基をDが含んでいるこの修飾の例の機構は、図9に示してある。
【0122】
式(Ia)又は式(Ib)のArは、複数の置換基を有する芳香族炭化水素又は複数の置換基を有する芳香族ヘテロ環である。芳香族であるためには、π電子の数はヒュッケル則(4n+2)を満たさなければならず、また、当該環は平面的でなければならない。多くの種類のさまざまな化合物がこれらの基準を満たし、従って、それらは、式(Ia)又は式(Ib)のArとして適している。非限定的な好ましい芳香族成分としては、以下のものなどがある。
【化19】
【0123】
ここで、Wは、互いに独立して、O、N又はSである。
【0124】
式(Ia)におけるY2と
【化20】
【0125】
又は、式(Ib)におけるY2と
【化21】
【0126】
は、1,4-除去、又は、1,6-除去、又は、1,(4+2p)(ここで、p=2、3、4又はそれ以上)除去が起こり得るように、当該芳香環上に配置されていなければならない(上記を参照されたい)。例えば、6員環の場合、置換基は、オルト又はパラに配置されていなければならない。
【0127】
Arについての好ましい成分は、単環式及び二環式の芳香族炭化水素又は芳香族ヘテロ環である。
【0128】
特に好ましい成分は、単環式の5員又は6員の芳香族炭化水素又は芳香族ヘテロ環である。
【0129】
該高分子プロドラッグの一般的な合成手順
本発明の高分子プロドラッグの代表的な例の合成については、実施例のところで記載してある。
【0130】
本発明のプロドラッグは、種々の異なった方法で調製することができる。図10には、式(Ia)で表される本発明の高分子プロドラッグの一般的な合成経路が示してある。
【0131】
第一の方法では、出発物質(II)をマスキング基
【化22】
【0132】
でアシル化することにより中間体(III)を提供する。そのために、X又はNuは、可逆的な保護基PG1で保護しなければならない場合もある。適切な保護基は、「TW Greene, P.G.M. Wuts, Protective groups in organic synthesis, 1999, John Wiley & Sons, 3rd ed」に記載されている。中間体(III)から(Iaa)を得るために、2種類の代替的な経路を用いることができる。第一の経路では、中間体(III)をクロロギ酸4-ニトロフェニル又はジスクシニルカーボネートなどの活性化剤で活性化して、(IV)を生成させる。活性化された中間体(IV)の脱離基を置き換えることによりアミン含有薬物分子を(IV)に結合させて、(V)を得る。例えば中間体(V)をトリフルオロ酢酸又はDTT(適用可能な場合)などの試薬で処理することにより、Xを脱保護し、その後、脱保護された中間体(V)をポリマーR1と反応させて、高分子プロドラッグ(Iaa)を得る。
【0133】
第二の経路では、(適用可能な場合)Xを脱保護した後、ポリマーR1を最初に中間体(III)に結合させて中間体(VI)を形成させる。活性化段階に付した後、中間体(VII)を形成させる。(VII)をアミン含有薬物分子と反応させて、高分子プロドラッグ(Iac)を形成させる。
【0134】
第二の方法では、クロロギ酸4-ニトロフェニルなどの活性化剤で出発物質(II)を活性化することにより中間体(VIII)を提供する。そのために、Y2及び/又はXは、保護基PG2及び/又はPG1で保護しなければならない場合もある。アミン含有薬物を中間体(VIII)と反応させて、(IX)を形成させる。第一の経路では、(IX)のY2を選択的に脱保護し、アシル化して、中間体(V)を形成させ、これを、上記で記載したようにさらに処理して、(Iaa)とする。第二の経路では、Xを選択的に脱保護し、ポリマーR1と反応させて、中間体(X)を形成させる。次いで、(X)のY2を脱保護し、アシル化して、高分子プロドラッグ(Iac)を形成させる。
【0135】
第三の方法では、出発物質(II)をポリマーR1と反応させて、中間体(XI)を形成させる。1つの経路では、中間体(XI)をアシル化して中間体(VI)を形成させることができる。これを上記で記載したように処理して、高分子プロドラッグ(Iaa)を形成させる。第二の経路では、Y2を保護基PG2で保護し、活性化し、アミン含有薬物分子と反応させて、(X)を形成させる。次いで、中間体(X)を上記で記載したように処理して、高分子プロドラッグ(Iac)を形成させる。
【0136】
記載した全ての方法に関し、Y3などのさらなる官能基又はNu-W内に存在している求核性成分を、適切な保護基で保護しなければならない場合もある。
【0137】
式(Ib)で表される高分子プロドラッグは、図10において、(II)の代わりに出発物質(IIb)を使用して、式(Ia)で表されるプロドラッグについて上記で記載した方法で調製することができる。
【化23】
【0138】
当然のことながら、記載したような保護基又は脱離基を有し、対応する高分子プロドラッグの合成に使用される、ここで概説した本発明によるリンカー構造は、本発明の範囲内にあると見なされる。
【0139】
分子療法における高分子プロドラッグの適用
高分子カスケードプロドラッグに関し、第一の一時的結合の開裂動力学は、ヒトの血液循環内の条件(pH7.4, 37℃)下で進行するのが望ましい。最も重要なことは、第一の一時的結合の開裂は、加水分解に基づくべきであるということであり、また、酵素類、塩類又は結合タンパク質類などのようなヒトの血液循環内存在している化学的物質又は生化学的物質又は物理化学的物質への依存性は全く示さないか又は極限られた依存性しか示すべきではないということである。
【0140】
マスキング基と活性化基を連結している第一の一時的結合の開裂速度及びその血液成分への依存性が、該マスキング基内に存在していて対応する一時的結合に対して特定の間隔に位置している求核性官能基(例えば、第一級アミン、第二級アミン又は第三級アミン)が介在する隣接基効果によって制御することができるということが見いだされた。マスキング基がこのように構築されている場合、該求核性成分が寄与する分子内反応により、該結合の動力学が規定される(図5及び図8)。
【0141】
本発明の高分子プロドラッグの主な有利点は、それらの大部分が非酵素的に開裂されること:適切に緩衝されたpH7.4のヒト血漿(水性バッファー濃度50%未満)中の該プロドラッグの半減期が、酵素を含んでいないpH7.4のバッファー中の該プロドラッグの半減期の少なくとも50%であることである。
【0142】
このような特徴を有することにより、生体への投与後の放出速度のよりよい予測と制御が可能となり、患者間の可変性が小さくなる。
【0143】
Antzczakら、Shabatら、及び、Leeらの上記実施例に記載されているようなマスキング基の除去の酵素依存性とは対照的に、マスキング基が酵素非依存的な自己脱離特性を有している場合、放出速度をより高度なレベルで制御することができる。
【0144】
本発明のマスキング基は、少なくとも1個の求核性成分Nuを含んでいる。このマスキング基の構造的特徴(例えば、アミン基の求核性及び環形成能など)は、プロドラッグの開裂速度を正確に調節するために、系統的に最適化することができる。図8に図式的に示されているように、分子間反応よりも分子内反応の方が一般に好ましいという事実により、アンマスキングとそれに続く転位をもたらすそのような分子内反応は、酵素からは高度に独立している。
【0145】
本発明の別の実施形態では、プロドラッグ開裂の酵素レベルへの非依存性は、図7に示されているように、立体要求性キャリヤー(sterically demanding carrier)基を含んでいるプロドラッグを提供することにより達成される。
【0146】
そのような、立体要求性キャリヤー基による立体的保護又はカプセル化は、キャリヤーポリマーの分岐構造、高分岐構造、架橋構造又は自己組織化構造により付与され得る。そのようなポリマーは、例えば、デンドリマー、高密度スターポリマー又はビーズ形のナノ粒子及びマイクロ粒子又は無定型ゲルなどにおけるような、高密度に詰め込まれた分子容を形成する傾向を有する。薬物へのポリマーキャリヤーの結合がポリマーキャリヤーの内部に位置している場合、そのように結合された薬物は、効率よくカプセル化されて酵素の攻撃から保護される。この場合、該ポリマーによる立体障害により、酵素の接近が防止され、一時的結合の酵素による開裂が防止される。
【0147】
さらに別の実施形態では、プロドラッグの酵素非依存的開裂は、分子内自己脱離性マスキング基を、カプセル化する高分岐キャリヤー又は架橋キャリヤー又は自己組織化キャリヤーと組み合わせることにより達成される。
【0148】
本発明のさらなる有利点は、修飾されていない生物学的活性成分の放出である。該生物学的活性成分が、タンパク質内のリシン残基のアミノ基のようなさらなる反応性官能基を含んでいる場合、マスキング基と生物学的活性成分の間の不要な副反応が起こり得る。生物学的活性成分のそのような反応性官能基は、マスキング基と反応することが可能であり、それにより安定な共有結合を形成し、そして、結果として、修飾された生物学的活性成分を放出する。この潜在的な副反応は、図9に図式的に示してある。そのような副反応の生起については、マスキング基内に求核性成分Nuを含まない、Antczakら又はLeeらによって記載されているペンタノイル残基のような単純なマスキング基を有する本発明には包含されない高分子プロドラッグを用いて、実施例のところで示してある。このリンカー系における該副反応は、求核性成分Nuを含んでいる分子内で活性化されたマスキング基を有する本発明の高分子プロドラッグを使用することにより抑制することができる(実施例を参照されたい)。
【0149】
酵素非依存的な放出の制御により、カプセル化する必要なく、デポー製剤が可能となる。これまで、大きな細孔径を有するヒドロゲルなどのような多くの種類の生体適合性材料は、カプセル化特性が欠如しているために、デポー製剤には使用することができなかった。そのような充分に水和している機械的に柔らかい生体適合性材料からは、生物学的活性成分は、大部分の治療用途について、速く放出されすぎるであろう。本発明において記述されているプロドラッグリンカーと組み合わせた場合、放出は、専らリンカー開裂動力学により制御されて、ポリマーキャリヤー自体の化学的又は酵素的分解を必要とはしないので、該キャリヤー材料は、その生体適合特性について最適化され得る。
【0150】
放出速度は、実質的に非酵素的化学的反応により制御され、該反応は、該リンカーの分子構造に依存する。例えば1つ以上の位置における置換基を変えることにより、例えばカスケードプロドラッグにおけるマスキング基を変えることにより、化学構造を系統的に又はランダムに修飾することで、種々の放出速度を有するプロドラッグリンカーを形成させることができる。従って、さまざまなプロドラッグリンカーを作り出すことが可能であり、また、所与の薬剤の適用又は所与の治療用途による要求に照らして、速く開裂するプロドラッグリンカー又はゆっくりと開裂するプロドラッグリンカーを選択することが可能である。
【0151】
本発明の一部である別の有利な特徴は、該ポリマーキャリヤーが、二重又はカスケードプロドラッグ放出機構に関与している活性化成分に、安定な共有結合で結合しているということである。本発明の一部として、該活性化成分は、薬物の放出後にもポリマーキャリヤーに結合したままで残っており、従って、環境中に拡散することがない。ポリマーキャリヤーが活性化基に永久的に結合していることにより、活性化成分の全ての副反応性が大いに低減され、また、好ましくない毒性作用の可能性が著しく低減される。当技術分野で知られている別の高分子カスケードプロドラッグにおいては、薬物に加えて、活性化成分も放出される。カスケードプロドラッグにおいて用いられる分子転位機構に起因して、活性化成分が高い反応性を有する形態で放出されて周囲の生体分子に直接的な損傷を引き起こし得るか、又は、活性化成分の潜在的に毒性な誘導体がインビボで形成され得る。
【0152】
図面の説明
図1は、キャリヤー結合プロドラッグを示している。
【0153】
図2は、酵素依存性キャリヤー結合プロドラッグを示している。
【0154】
図3は、マスキング基がキャリヤーの一部であるカスケードプロドラッグを示している。
【0155】
図4は、マスキング基がキャリヤーの一部である酵素依存性カスケードプロドラッグを示している。
【0156】
図5は、マスキング基がキャリヤーから分離している自己開裂性カスケードプロドラッグを示している。
【0157】
図6は、マスキング基がキャリヤーから分離している酵素依存性カスケードプロドラッグを示している。
【0158】
図7は、キャリヤーがマスキング基を立体的に保護しているカスケードプロドラッグを示している。
【0159】
図8は、分子内環化によるマスキング基の開裂を示している。
【0160】
図9は、高分子プロドラッグの活性化による可能な副反応を示している。
【0161】
図10は、一般的な合成方法を示している。
【0162】
図11は、プロドラッグから放出されたインスリン分子の質量スペクトルを示している。
【実施例】
【0163】
実施例
材料
Fmoc-アミノ酸、樹脂及びPyBOPは、Novabiochemから購入した。それらの名前を挙げるときはそのカタログに従う。Fmoc-Ado-OHは、Neosystemから入手した。それ以外の化学薬品は全て、Sigma Aldrichから購入した。組換えヒトインスリンは、ICN Biomedicals(USA)製のものであった。Maleimide-PEG5kは、Nektar(USA)から入手した。5-(及び、-6)-カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(異性体混合物)は、Molecular Probesから入手した。
【0164】
固相合成反応媒体
固相合成は、NovaSyn TG Sieberアミド樹脂(ローディング 0.17mmol/g)、又は、塩化2-クロロトリチル樹脂(ローディング 1.4mmol/g)で実施した。ポリプロピレン製フリットを具備したシリンジを反応容器として用いた。
【0165】
fmocで保護されているアミノ酸についての標準的なカップリングサイクル
fmoc保護基を除去するために、該樹脂を、2/2/96(v/v/v)ピペリジン/DBU/DMFと一緒に繰り返し撹拌し(3回,各4分間)、DMFで洗浄した(6回)。
【0166】
樹脂上における遊離アミノ酸へのfmoc保護アミノ酸のカップリングは、該樹脂を、DMF中で、遊離アミノ基に対して3当量(eq)のfmoc-アミノ酸と3eqのPyBOPと6eqのDIEAと一緒に60分間撹拌することにより行なわせた。
【0167】
最後に、該樹脂をDMFで繰り返し洗浄した(5回)。
【0168】
TentaGel Sieberアミド樹脂のための標準的な開裂プロトコル
合成が完了した時点で、該樹脂をDCMで洗浄し、減圧下に乾燥させ、97/2/1(v/v)DCM/TES/TFAで繰り返し処理した(5回)。蒸発させた後、分取RP-HPLC(Waters 600)で化合物を精製した。
【0169】
塩化2-クロロトリチル樹脂のための標準的な開裂プロトコル
合成が完了した時点で、該樹脂をDCMで洗浄し、減圧下に乾燥させ、65/35(v/v)HFIP/DCMで30分間2回処理した。溶出液を合した後、揮発性成分を蒸発させた。
【0170】
分析
質量分析(MS)は、Waters ZQ 4000 ESI装置で行った。必要に応じ、Waters software MaxEntによりスペクトルを解釈した。
【0171】
サイズ排除クロマトグラフィーは、Superdex 200カラムを備えたAmersham Bioscience AEKTAbasicシステム(Amersham Bioscience)で行った。Bruker AC300に、NMRスペクトルを記録した。
【0172】
エステル結合で結合したマスキング基を有する式(Ia)の高分子プロドラッグの合成の概略
【化24】
【0173】
カーバメート結合で結合したマスキング基を有する式(Ia)の高分子プロドラッグの合成
【化25】
【0174】
カーバメート結合で結合したマスキング基を有する式(Ib)の高分子プロドラッグの合成
【化26】
【0175】
化合物(2)の合成
【化27】
【0176】
Mmt-クロリド(1eq)及びメルカプトプロピオン酸(1.1eq)をTFAに溶解させ、30分間インキュベーションした。減圧下に溶媒を除去した。生成物をピリジンに溶解させ、水で希釈し、酢酸で酸性化し、エーテルで抽出した。エーテル相を分離し、Na2SO4で脱水した。減圧下に溶媒を除去し、生成物(2)をRP-HPLCで精製した。
【0177】
化合物(3a)及び化合物(3b)の合成
【化28】
【0178】
オクトパミン塩酸塩(1a)(2eq)、DIEA(4eq)及びPyBOP(1eq)をDMFに溶解させ、(2)(1eq)を添加し、その混合物を室温で50分間反応させた。酢酸(7eq)を添加した後、生成物(3a)をRP-HPLCで精製した。
【0179】
(3b)は、ノルメタネフリン塩酸塩(1b)から上記と同様にして合成した。
【0180】
(3a):MS [M+Na]+=536(MW+Na 計算値=536.2g/mol)
(3b):MS [M+Na]+=566(MW+Na 計算値=566.2g/mol)
【0181】
メルカプトチアゾリド(4)の合成
【化29】
【0182】
2-メルカプトチアゾリン及びトリエチルアミン(1.5eq)を乾燥THFに溶解させ、塩化ペンタノイル(1eq)を添加した。その混合物を、不活性雰囲気下、50℃で1時間撹拌し、室温まで冷却した。0.5N水性HClを添加した。有機相を分離し、Na2SO4で脱水した。減圧下に濃縮した後、残渣を、移動相として1/1のヘプタン/酢酸エチルを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。メルカプトチアゾリド(4)を粘性の黄色の油状物として採集した。
【0183】
(4) Rf(ヘプタン/酢酸エチル 1:1)=0.7
【0184】
化合物(5a)及び化合物(5b)の合成
【化30】
【0185】
一般的な合成プロトコル:
1gの塩化2-クロロトリチル樹脂(ローディング 1.6mmol/g)を、5mLのDCM/DMF(1/1)中で、850mg(2.4mmol)のFmoc-Ile-OH及び840μL(4.8mmol)のDIEAと一緒に1時間インキュベーションした。fmocを除去し、該樹脂をDMFで洗浄した後、標準的なカップリング方法に従い、boc-アミノ酪酸を0.5gの樹脂にカップリングさせた。97/l/2(v/v)DCM/TFA/TESを用いて、45分間、化合物(5a)を該樹脂から開裂させた。ピリジンで中和した後、減圧下に溶媒を除去し、(5a)をRP-HPLCで精製した。
【0186】
(5b)は、boc-アミノヘキサン酸から上記と同様にして合成した。
【0187】
(5a) MS [M+Na]+=339.2(MW+Na 計算値=339.4g/mol)
(5b) MS [M+Na]+=367.4(MW+Na 計算値=367.5g/mol)
【0188】
化合物(6a)の合成
【化31】
【0189】
メルカプトチアゾリド(4)(1eq)、フェノール(3a)(4eq)及びDMAP(4eq)を、窒素雰囲気下、DCM中で2時間還流した。酢酸で中和した後、減圧下に溶媒を除去し、生成物(6a)をRP-HPLCで精製した。
【0190】
(6a) MS [M+Na]+=620(MW+Na 計算値=620.3g/mol)
【0191】
化合物(6b)〜化合物(6e)の合成
【化32】
【0192】
一般的な合成プロトコル:
DMF中のカルボン酸(5a)(1eq)、フェノール(3b)(1eq)、DIC(1eq)及びDMAP(2eq)を室温で1時間反応させた。酢酸(4eq)を添加した後、生じたカルボン酸エステル(6c)をRP-HPLCで精製した。
【0193】
(6d)は、出発物質として(5b)及び(3b)を使用し、上記と同様にして合成した。
【0194】
(6b)は、Z-Lys(Boc)-OH及び(3b)を使用し、上記と同様にして合成した。
【0195】
(6e)は、(5b)及び(3a)を使用し、上記と同様にして合成した。
【0196】
(6b) MS [M+Na]+=928(MW+Na 計算値=928.6g/mol)
(6c) MS [M+Na]+=864(MW+Na 計算値=864.5g/mol)
(6d) MS [M+Na]+=892(MW+Na 計算値=892.6g/mol)
(6e) MS [M+Na]+=862(MW+Na 計算値=862.6g/mol)
【0197】
化合物(7a)〜化合物(7e)の合成
【化33】
【0198】
一般的な合成プロトコル:
アルコール(6a)(1eq)、クロロギ酸4-ニトロフェニル(10eq)及びDIEA(10eq)を、窒素雰囲気下で、乾燥ジオキサン中、室温で3時間撹拌した。酢酸(25eq)を添加した後、その混合物を7/3(v/v)アセトニトリル/H2Oで希釈し、得られたカーボネート(7a)をRP-HPLCで精製した。
【0199】
(7b)、(7c)、(7d)又は(7e)は、それぞれ、(6b)、(6c)、(6d)又は(6e)から、上記と同様にして合成した。
【0200】
(7a) MS [M+Na]+=785(MW+Na 計算値=785.5g/mol)
(7b) MS [M+Na]+=1093(MW+Na 計算値=1093.7g/mol)
(7c) MS [M+Na]+=1029(MW+Na 計算値=1029.6g/mol)
(7d) MS [M+Na]+=1057(MW+Na 計算値=1057.6g/mol)
(7e) MS [M+Na]+=1027(MW+Na 計算値=1027.6g/mol)
【0201】
化合物(8a)〜化合物(8c)(NαA1-リンカー-インスリン)の合成
【化34】
【0202】
一般的な合成プロトコル:
1/1(v/v)DMSO/DMF中のRh-インスリンを、DMSO中の0.9eqのカーボネート(7a)の溶液と混合した。その溶液をDIEAで塩基性pHに調節し、室温で1.5時間撹拌した。RP-HPLCで精製して、Mmtで保護された中間体を得た。
【0203】
凍結乾燥後、Mmtで保護された上記中間体を95:5(v/v)TFA/トリエチルシランと混合し、5分間撹拌した。窒素流下で揮発性物質を除去した。(8a)をRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。インスリン修飾の位置選択性は、DTT還元及びMS分析により確認した。
【0204】
(8b)又は(8c)は、それぞれ、(7c)又は(7d)から、上記と同様にして合成した。
【0205】
(8a) MS [M+2H]2+=3078.9;[M+3H]3+=2053.2;[M+4H]4+=1540.6(MW 計算値=6158g/mol)
(8b) MS [M+2H]2+=3152.9;[M+3H]3+=2100.6;[M+4H]4+=1575.8(MW 計算値=6302g/mol)
(8c) MS [M+3H]3+=2110.7;[M+4H]4+=1583.7;[M+5H]5+=1266.6(MW 計算値=6330g/mol)
【0206】
化合物(8d)〜化合物(8g)(NεB29-フルオレセイン-NαA1-リンカー-インスリン)の合成
【化35】
【0207】
NεB29-フルオレセインインスリンの合成:
80mg(13.8μmol)のrh-インスリンを4mLの1/1(v/v)DMF/DMSOに溶解させ、40μLのDIEAを添加した。8mg(17μmol)の5-(及び-6)-カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステルを添加し、その溶液を室温で30分間撹拌した。4mLの5/5/1(v/v/v)アセトニトリル/水/酢酸を添加した。生成物であるNεB29-フルオレセインインスリンをRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。コンジュゲーション部位は、1,4-ジチオトレイトールでのNεB29-フルオレセインインスリンの還元、プロテアーゼ消化及びMS分析により確認した。
【0208】
MS:[M+2H]2+=3084.0;[M+3H]3+=2054.6(MW 計算値=6166g/mol)
【0209】
1/1(v/v)DMF/DMSO中のNεB29-フルオレセインインスリンを、DMSO中の0.9eqのカーボネート(7b)の溶液と混合した。その溶液をDIEAで塩基性pHに調節し、室温で3時間撹拌した。RP-HPLCで精製して、Mmtで保護された中間体を得た。
【0210】
凍結乾燥後、該中間体を95/5(v/v)TFA/トリエチルシランに溶解させ、5分間撹拌した。窒素流下で揮発性物質を除去した。(8d)をRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。
【0211】
(8e)、(8f)又は(8g)は、それぞれ、(7c)、(7d)又は(7e)を用いて、上記と同様にして合成した。
【0212】
(8d) MS:[M+2H]2+=3364.1;[M+3H]3+=2242.7;[M+4H]4+=1681.5(MW 計算値=6724g/mol)
(8e) MS:[M+3H]3+=2219.2;[M+4H]4+=1665.9;[M+5H]5+=1332.8(MW 計算値=6660g/mol)
(8f) MS:[M+3H]3+=2229.7;[M+4H]4+=1673.3;[M+5H]5+=1337.7(MW 計算値=6689g/mol)
(8g) MS:[M+3H]3+=2218.7;[M+4H]4+=1664.9(MW 計算値=6659g/mol)
【0213】
化合物(9a)〜化合物(9g)(モノペグ化インスリン化合物)の合成
70μLの1/4(v/v)アセトニトリル/水中500μM(8a)を、7μLの1/4(v/v)アセトニトリル/水中10mMマレイミド-PEG5k及び10μLの0.5Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)と混合し、15分間インキュンベーションした。化合物(9a)を、移動相として10mM HEPESバッファー(pH7.4)、150mM NaCl、3mM EDTA及び0.005% Tweenを用いるSEC(カラム:Superdex 200,流速:0.75mL/分)で精製した。採集した溶出液(約1.5mL)を、放出速度の測定にそのままで直接使用した。
【0214】
(9b)、(9c)、(9d)、(9e)、(9f)又は(9g)は、それぞれ、(8b)、(8c)、(8d)、(8e)、(8f)又は(8g)から、上記と同様にして合成した。
【0215】
(9a)〜(9g):SEC 保持時間:19.5分
【0216】
化合物(11a)及び化合物(11b)の合成
【化36】
【0217】
3,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-アセトフェノン(5.0mmol)(10a)及びCuBr2(1.7g, 7.5mmol)を10mLの酢酸エチルに溶解させ、2時間還流した。濾過により固体状の副生成物を除去した。濾液を蒸発させ、粗製生物(11a)をRP-HPLCで精製した。
【0218】
(11b)は、4-ヒドロキシ-3-メチル-アセトフェノン(10b)(0.75g, 5.0mmol)から、上記と同様にして合成した。
【0219】
(11a):収量 754mg(62%);MS [M+H]+=243.1/245.1(MW+H 計算値=244.1g/mol)
(11b):収量 533mg(47%);MS [M+H]+=229.2/231.1(MW+H 計算値=230.1g/mol)
【0220】
化合物(12a)及び化合物(12b)の合成
【化37】
【0221】
500mgの(11a)(2.06mmol)及び576mg(4.11mmol)のヘキサメチレンテトラミンを20mLのトリクロロメタンに溶解させ、30分間還流した。減圧下に溶媒を除去した。4mLのエタノール及び2mLの濃HClを添加し、得られたスラリーを50℃に4時間加熱した。その混合物を減圧下に濃縮し、アセトニトリル/水で希釈し、(12a)をRP-HPLCで精製した。
【0222】
(12b)は、472mg(2.06mmol)の(IIb)から、上記と同様にして合成した。
【0223】
(12a):収量 TFA塩として547mg(81%);MS [M+Na]+=202.2(MW+Na 計算値=202.2g/mol)
(12b):収量 TFA塩として455mg(70%);MS [M+Na]+=188.2(MW+Na 計算値=188.2g/mol)
【0224】
化合物(13)の合成
【化38】
【0225】
500mg(1.71mmol)の(12a)(TFA塩)を10mLの1/1(v/v)メタノール/水に溶解させ、129mg(3.41mmol)のNaBH4を添加した。その混合物を、室温で30分間撹拌した。0.5mLの酢酸を添加し、(13)をRP-HPLCで精製した。
【0226】
(13):収量 TFA塩として313mg(62%);MS [M+Na]+=204.2(MW+Na 計算値=204.2g/mol);
NMR(300MHz, DMSO-d6)δ[ppm]=8.25(s, 1H, フェノール), 7.84(bs, 3H, NH3+), 6.89(s, 2H, CHar), 5.85(d, 1H, ヒドロキシル, J=3.7Hz), 4.62(m, 1H, CHベンジル), 2.93(m, 1H, CHa), 2.80(m, 1H, CHb), 2.17(s, 6H, CH3)
【0227】
化合物(14a)〜化合物(14d)の合成
【化39】
【0228】
(13)(TFA塩, 159mg, 0.541mmol)を、化合物(3a)について記載されているように化合物(2)にカップリングさせて、(14a)を生成させた。
【0229】
(14b)又は(14c)は、それぞれ、シネフリン(335mg, 2.00mmol)又はメタネフリン(HCl塩, 281mg, 1.20mmol)を用いて、上記と同様にして合成した。シネフリン(335mg, 2.3mmol)を上記と同様に3-トリチルスルファニル-プロピオン酸にカップリングさせて、(14d)を生成させた。
【0230】
(14a):収量 254mg(87%);MS [M+Na]+=564.7(MW+Na 計算値=564.3g/mol)
(14b):収量 760mg(72%);MS [M+Na]+=550.2(MW+Na 計算値=550.3g/mol)
(14c):収量 530mg(80%);MS [M+Na]+=580.4(MW+Na 計算値=580.4g/mol)
(14d):収量 567mg(49%);MS [M+Na]+=520.5(MW+Na 計算値=520.7g/mol)
【0231】
化合物(15c)、化合物(15d)及び化合物(15f)の合成
【化40】
【0232】
一般的な合成プロトコル:
1gの塩化2-クロロトリチル樹脂(ローディング 1.4mmol/g)を、DCM中で、N,N'-ジメチルプロパン-1,3-ジアミン((15c)を合成する場合)又はN,N'-ジエチル-プロパン1,3-ジアミン((15d)を合成する場合)又はN,N'-ジメチル-エタン-1,2-ジアミン(4eq)((15f)を合成する場合)と一緒に1時間インキュベーションした。該樹脂をDMFで洗浄した後、アミンを、1/1/2(v/v/v)無水酢酸/ピリジン/DMFで14時間アセチル化した。その樹脂をTHFで洗浄し、乾燥させた。THF中に懸濁させた該樹脂に、LiAlH4(THF中1M, 4eq)を滴下して加えた。得られた懸濁液を、窒素雰囲気下、45℃で3時間撹拌した。冷却後、ロッシェル塩水溶液を添加し、樹脂を分離し、乾燥させた。2/1(v/v)HFIP/DCM(2×30分)で化合物を樹脂から開裂させた。揮発性成分を蒸発させた。生成物(15c)、生成物(15d)又は生成物(15f)は、それ以上精製することなく次の段階で使用した。
【0233】
(15c) MS [M+H]+=131.2(MW=130.1g/mol)
(15d) MS [M+H]+=159.2(MW=158.1g/mol)
(15f) MS [M+H]+=117.1(MW=116g/mol)
【0234】
化合物(16a)〜化合物(16f)及び化合物(16i)の合成
【化41】
【0235】
(16a) R1=R2=R5=Me、R6=2-(ジメチルアミノ)エチル、R7=H、R4=Mmt
(16b) R1=OMe、R2=H、R5=Et、R6=2-(ジエチルアミノ)エチル、R7=H、R4=Mmt
(16c) R1=OMe、R2=H、R5=Me、R6=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル、R7=Me、R4=Mmt
(16d) R1=R2=H、R5=Me、R6=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル、R7=Me、R4=Mmt
(16e) R1=OMe、R2=H、R5=Et、R6=3-(ジエチルアミノ)プロピル、R7=Me、R4=Mmt
(16f) R1=R2=H、R5=Et、R6=3-(ジエチルアミノ)プロピル、R7=Me、R4=Mmt
(16i) R1=R2=H、R5=Et、R6=2-(ジエチルアミノ)エチル、R7=Me、R4=Trt
【0236】
(14a)(120mg, 0.222mmol)を1.5mLの乾燥THEに溶解させた。クロロギ酸p-ニトロフェニル(45mg, 0.222mmol)及びDIEA(113μL, 0.665mmol)を添加し、その混合物を室温で30分間撹拌した。(15a)(N,N,N'-トリメチル-エチレン-1,2-ジアミン)(72μL, 0.554mmol)を添加し、撹拌を30分間継続した。減圧下に溶媒を除去し、100μLのAcOHを添加し、(16a)をRP-HPLCで精製した。
【0237】
(16b)は、(3b)(80mg, 0.15mmol)及び(15b)(N,N,N'-トリエチル-エチレン-1,2-ジアミン)(55mg, 0.38mmol)から、上記と同様にして合成した。
【0238】
(16c)又は(16d)は、それぞれ、(14c)(56mg, 0.1mmol)及びジアミン(15c)から、又は、(14b)(53mg, 0.1mmol)及びジアミン(15c)から、上記と同様にして合成した。
【0239】
(16e)又は(16f)は、それぞれ、(14c)(56mg, 0.1mmol)及びジアミン(15d)から、又は、(14b)(53mg, 0.1mmol)及びジアミン(15d)から、上記と同様にして合成した。
【0240】
(16i)は、(14d)(350mg, 0.7mmol)及び(15b)(N,N,N'-トリエチル-エチレン-1,2-ジアミン)(180μL, 1mmol)から、上記と同様にして合成した。
【0241】
(16a):収量 TFA塩として120mg(69%);MS [M+Na]+=692.4(MW+Na 計算値=692.9g/mol)
(16b):収量 TFA塩として48mg(40%) ;MS [M+Na]+=736.3(MW+Na 計算値=736.4g/mol)
(16c):収量 TFA塩として8mg(10%) ;MS [M+Na]+=736.4(MW+Na 計算値=736.4g/mol)
(16d):収量 TFA塩として20mg(25%) ;MS [M+Na]+=706.3(MW+Na 計算値=706.3g/mol)
(16e):収量 TFA塩として2mg(3%) ;MS [M+Na]+=764.6(MW+Na 計算値=764.4g/mol)
(16f):収量 TFA塩として6mg(8%) ;MS [M+Na]+=734.4(MW+Na 計算値=734.3g/mol)
(16i):収量 TFA塩として152mg(28%);MS [M+Na]+=690.5(MW+Na 計算値=690.9g/mol)
【0242】
化合物(17)の合成
【化42】
【0243】
アミン(12b)(TFA塩)を、化合物(3a)について記載されているように、化合物(2)にカップリングさせた。
【0244】
(17):収量 608mg(74%);MS [M+Na]+=548.3(MW+Na 計算値=548.7g/mol)
【0245】
化合物(18a)及び化合物(18b)の合成
【化43】
【0246】
(18a) R1=R5=Me、R2=H、R6=3-(ジメチルアミノ)プロピル
(18b) R1=R5=Me、R2=H、R6=2-(N-エチル-N-メチルアミノ)エチル
【0247】
383mg(0.729 rnmol)の(17)を、クロロギ酸p-ニトロフェニル及び、それぞれ、N,N,N'-トリメチル-プロパン-1,3-ジアミン(15e)又は(15f)と反応させ、化合物(16a)について記述したようにして、(18a)又は(18b)を生成させる。
【0248】
(18a):収量 TFA塩として287mg(50%);MS [M+Na]+=690.7(MW+Na 計算値=690.9g/mol)
(18b):収量 TFA塩として148mg(26%);MS [M+Na]+=690.9(MW+Na 計算値=690.9g/mol)
【0249】
化合物(16g)及び化合物(16h)の合成
【化44】
【0250】
(16g) R1=R5=Me、R2=H、R6=3-(ジメチルアミノ)プロピル
(16h) R1=R5=Me、R2=H、R6=2-(N-エチル-N-メチルアミノ)エチル
(18a)(287mg, 0.367mmol, TFA塩)を5mLのメタノールに溶解させ、NaBH4(41mg, 1.07mmol)を添加した。その混合物を室温で30分間撹拌した。0.5mLの酢酸を添加し、(16g)をRP-HPLCで精製した。
【0251】
(18b)(8mg, 0.010mmol, TFA塩)を上記で記載したのと同様に反応させて、(16h)を生成させた。
【0252】
(16g):収量 TFA塩として201mg(70%);MS [M+Na]+=692.7(MW+Na 計算値=692.9g/mol)
(16h):収量 TFA塩として6mg(77%) ;MS [M+Na]+=692.7(MW+Na 計算値=692.9g/mol)
【0253】
化合物(19a)〜化合物(19i)の合成
【化45】
【0254】
(19a) R1=R2=R5=Me、R6=2-(ジメチルアミノ)エチル、R7=H、R4=Mmt
(19b) R1=OMe、R2=H、R5=Et、R6=2-(ジエチルアミノ)エチル、R7=H、R4=Mmt
(19c) R1=OMe、R2=H、R5=Me、R6=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル、R7=Me、R4=Mmt
(19d) R1=R2=H、R5=Me、R6=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル、R7=Me、R4=Mmt
(19e) R1=OMe、R2=H、R5=Et、R6=3-(ジエチルアミノ)プロピル、R7=Me、R4=Mmt
(19f) R1=R2=H、R5=Et、R6=3-(ジエチルアミノ)プロピル、R7=Me、R4=Mmt
(19g) R1=R5=Me、R2=H、R6=3-(ジメチルアミノ)プロピル、R7=H、R4=Mmt
(19h) R1=R5=Me、R2=H、R6=2-(N-エチル-N-メチルアミノ)エチル、R7=H、R4=Mmt
(19i) R1=R2=H、R5=Et、R6=2-(ジエチルアミノ)エチル、R7=Me、R4=Trt
【0255】
カーボネート(19a)〜カーボネート(19i)は、それぞれ、(16a)〜(16i)から、化合物(7a)について記載したのと同様に合成した。
【0256】
(19a):収量 TFA塩として98mg(72%) ;MS [M+Na]+=857.8(MW+Na 計算値=858.0g/mol)
(19b):収量 TFA塩として6mg(11%) ;MS [M+Na]+=901.8(MW+Na 計算値=901.5g/mol)
(19c):収量 TFA塩として1mg(15%) ;MS [M+Na]+=901.4(MW+Na 計算値=901.5g/mol)
(19d):収量 TFA塩として8mg(29%) ;MS [M+Na]+=871.4(MW+Na 計算値=871.4g/mol)
(19e):収量 TFA塩として0.3mg(18%);MS [M+Na]+=929.4(MW+Na 計算値=929.5g/mol)
(19f):収量 TFA塩として4mg(45%) ;MS [M+Na]}=899.7(MW+Na 計算値=899.6g/mol)
(19g):収量 TFA塩として6mg(6%) ;MS [M+Na]+=857.8(MW+Na 計算値=858.0g/mol)
(19h):収量 TFA塩として0.8mg(11%);MS [M+Na]+=857.7(MW+Na 計算値=858.0g/mol)
(19i):収量 TFA塩として77mg(49%) ;MS [M+Na]+=856.2(MW+Na 計算値=856.0g/mol)
【0257】
化合物(20a)〜化合物(20f)の合成
【化46】
【0258】
20a R1=R2=R5=Me、R6=2-(ジメチルアミノ)エチル、R7=H
20b R1=OMe、R2=H、R5=Et、R6=2-(ジエチルアミノ)エチル、R7=H
20c R1=OMe、R2=H、R5=Me、R6=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル、R7=Me
20d R1=R2=H、R5=Me、R6=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル、R7=Me
20e R1=R5=Me、R2=H、R6=3-(ジメチルアミノ)プロピル、R7=H
20f R1=R5=Me、R2=H、R6=2-(N-エチル-N-メチルアミノ)エチル、R7=H
【0259】
インスリン誘導体(20a)、(20b)、(20c)、(20d)、(20e)又は(20f)は、それぞれ、(19a)、(19b)、(19c)、(19d)、(19g)又は(19h)から、化合物(8a)について記載したのと同様にして合成した。
【0260】
(20a) MS [M+3H]3+=2077.3;[M+4H]4+=1559.2(MW 計算値=6231.3g/mol)
(20b) MS [M+3H]3+=2093.0;[M+4H]4+=1569.6(MW 計算値=6274g/mol)
(20c) MS [M+3H]3+=2090.8;[M+4H]4+=1568.7(MW 計算値=6274g/mol)
(20d) MS [M+3H]3+=2081.3;[M+4H]4+=1561.8(MW 計算値=6244g/mol)
(20e) MS [M+3H]3+=2077.1;[M+4H]4+=1558.2(MW 計算値=6231.3g/mol)
(20f) MS [M+3H]3+=2076.7;[M+4H]4+=1559.3(MW 計算値=6231.3g/mol)
【0261】
化合物(21a)〜化合物(21f)(モノペグ化インスリン誘導体)の合成
【化47】
【0262】
(21a) R1=R2=R5=Me、R6=2-(ジメチルアミノ)エチル、R7=H
(21b) R1=OMe、R2=H、R5=Et、R6=2-(ジエチルアミノ)エチル、R7=H
(21c) R1=OMe、R2=H、R5=Me、R6=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル、R7=Me
(21d) R1=R2=H、R5=Me、R6=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル、R7=Me
(21e) R1=R5=Me、R2=H、R6=3-(ジメチルアミノ)プロピル、R7=H
(21f) R1=R5=Me、R2=H、R6=2-(N-エチル-N-メチルアミノ)エチル、R7=H
【0263】
インスリン誘導体(21a)、(21b)、(21c)、(21d)、(21e)又は(21f)は、それぞれ、化合物(20a)、(20b)、(20c)、(20d)、(20e)又は(20f)から、化合物(9a)について記載したのと同様にして合成した。
【0264】
(21a)〜(21f):SEC保持時間:19.5分
【0265】
化合物(23a)及び化合物(23b)の合成
【化48】
【0266】
ニトロベンゼン中のo-クレゾール(22a)(1eq)、無水コハク酸(1eq)及びAlCl3(3eq)を100℃に1時間加熱した。その反応混合物をHCl/氷に注ぎ、エーテルで抽出した。有機層を1N NaOHで抽出し、水層を濃HClで酸性化した。水層をエーテルで抽出し、そのエーテルを蒸発させた。(23a)をRP-HPLCで精製した。
【0267】
(23b)は、2,6-ジメチルフェノール(22b)から、上記で記載したのと同様にして合成した。
【0268】
(23a):収量 552mg(31%);MS [M+Na]+=231.0(MW+Na 計算値=231.2g/mol);
NMR(300MHz, DMSO-d6)δ[ppm]=12.05(bs, 1H, CO2H), 10.23(s, 1H, フェノールOH), 7.74(s, 1H, CHar), 7.7(d, 1H, CHar, 3JH,H=8.4Hz), 6.86(d, 1H, CHar, 3JH,H=8.4Hz), 3.13(t, 2H, C(O)CH2, 3JH,H=6.4Hz), 2.53(t, 2H, CH2CO2, 3JH,H=6.4Hz), 2.16(s, 3H, CH3)
(23b):収量 166mg(15%);MS [M+Na]+=245.4(MW+Na 計算値=245.2g/mol)
【0269】
化合物(24)の合成
【化49】
【0270】
1.85g(16.02mmol)のシステアミン塩酸塩を15mLのTFAに溶解させ、2.47g(8.01mmol)のMmtClを添加した。その混合物を室温で20分間撹拌した後、減圧下に溶媒を蒸発させた。残渣をジエチルエーテルに溶解させ、飽和水性NaHCO3、1N H2SO4及びブラインで抽出した。溶媒を蒸発させ、(24)をRP-HPLCで精製した。
【0271】
(24):収量 TFA塩として1.11g(30%);TLC(AcOEt/Et3N 99/1), Rf=0.24
【0272】
化合物(25a)及び化合物(25b)の合成
【化50】
【0273】
(23a)(1eq)、HOBt(1.1eq)及びDIC(1eq)をDMFび溶解させ、室温で30分間撹拌した。(24)(TFA塩, 1eq)及びDIEA(3eq)を添加し、その溶液を60分間撹拌した。酢酸を添加し、(25a)をRP-HPLCで精製した。
【0274】
(25b)は、(23b)から、上記で記載したのと同様にして合成した。
【0275】
(25a):収量 552mg(25%);MS [M+Na]+=562.7(MW+Na 計算値=562.7g/mol)
(25b):収量 15mg(40%) ;MS [M+Na]+=576.6(MW+Na 計算値=576.6g/mol)
【0276】
化合物(26a)及び化合物(26b)の合成
【化51】
【0277】
(26a) R1=Me、R2=H、R5=R6=3-(ジメチルアミノ)プロピル
(26b) R1=R2=R5=Me、R6=2-(ジメチルアミノ)エチル
【0278】
267mg(0.495mmol)の(25a)をクロロギ酸p-ニトロフェニル及びN-(3-ジメチルアミノ-プロピル)-N',N'-ジメチル-プロパン-1,3-ジアミン(15g)と反応させ、化合物(16a)について記載したのと同様にして(26a)を生成させた。
【0279】
(26b)は、15mgの(25b)及びN,N,N'-トリメチルエタン-1,2-ジアミン(15a)を用いて、上記で記載したのと同様にして合成した。
【0280】
(26a):収量 複TFA塩として282mg(58%);MS [M+Na]+=775.2(MW+Na 計算値=776.0g/mol)
(26b):収量 TFA塩として17mg(70%) ;MS [M+Na]+=704.5(MW+Na 計算値=704.6g/mol)
【0281】
化合物(27a)及び化合物(27b)の合成
【化52】
【0282】
(27a) R1=Me、R2=H、R5=R6=3-(ジメチルアミノ)プロピル
(27b) R1=R2=R5=Me、R6=2-(ジメチルアミノ)エチル
【0283】
(26a)(272mg, 0.277mmol, 複TFA塩)を5mLのメタノールに溶解させ、NaBH4(42mg, 1.09mmol)を添加した。その混合物を室温で30分間撹拌した。0.5mLの酢酸を添加し、(27a)をRP-HPLCで精製した。
【0284】
アルコール(27b)は、(26b)から同様にして合成した(17mg, 25μmol, TFA塩)。
【0285】
(27a):収量 複TFA塩として142mg(52%);MS [M+Na]+=777.9(MW+Na 計算値=778.0g/mol)
(27b):収量 TFA塩として6mg(40%) ;MS [M+Na]+=706.5(MW+Na 計算値=706.6g/mol)
【0286】
化合物(28a)及び化合物(28b)の合成
【化53】
【0287】
(28a) R1=Me、R2=H、R5=R6=3-(ジメチルアミノ)プロピル
(28b) R1=R2=R5=Me、R6=2-(ジメチルアミノ)エチル
【0288】
カーボネート(28a)又はカーボネート(28b)は、それぞれ、(27a)又は(27b)から、化合物(7a)について記載したのと同様にして合成した。
【0289】
(28a):収量 1mg(29%) ;MS [M+Na]+=942.9(MW+Na 計算値=943.2g/mol)
(28b):収量 1.5mg(19%);MS [M+Na]+=871.6(MW+Na 計算値=871.7g/mol)
【0290】
化合物(29a)及び化合物(29b)の合成
【化54】
【0291】
(29a) R1=Me、R2=H、R5=R6=3-(ジメチルアミノ)プロピル
(29b) R1=R2=R5=Me、R6=2-(ジメチルアミノ)エチル
【0292】
インスリン誘導体(29a)又はインスリン誘導体(29b)は、それぞれ、(28a)又は(28b)から、化合物(8a)について記載したのと同様にして合成した。
【0293】
(29a) MS [M+3H]3+=2105.8;[M+4H]4+=1580.2(MW 計算値=6316.4g/mol)
(29b) MS [M+3H]3+=2081.8;[M+4H]4+=1562.4(MW 計算値=6244g/mol)
【0294】
モノペグ化インスリン誘導体(30a)及びモノペグ化インスリン誘導体(30b)の合成
【化55】
【0295】
(30a) R1=Me、R2=H、R5=R6=3-(ジメチルアミノ)プロピル
(30b) R1=R2=R5=Me、R6=2-(ジメチルアミノ)エチル
【0296】
インスリン誘導体(30a)又はインスリン誘導体(30b)は、それぞれ、(29a)又は(29b)から、化合物(9a)について記載したのと同様にして合成した。
【0297】
(30a)及び(30b):SEC保持時間:19.5分
【0298】
エステル結合マスキング基及び樹枝状キャリヤーを有する式(Ia)の高分子プロドラッグ(9h)の合成
【化56】
【0299】
化合物(31)の合成
【化57】
【0300】
(31)は、標準的な固相合成プロトコルに準じて得た。アミノ酸Fmoc-Dpr(Boc)-OH、Fmoc-Dpr(Fmoc)-OH、Fmoc-Dpr(Fmoc)-OH、Fmoc-AdoOH及びFmoc-Dpr(Fmoc)-OHをNovaSyn TG Sieberアミド樹脂にカップリングさせた。
【0301】
最後のfmocを除去した後、該樹脂を、DMF中で、アミノ基に対して5eqのマレイミドプロピオン酸及び5eqのDICと一緒に30分間撹拌した。95/3/2(v/v/v)TFA/TES/水を用いて、(31)を樹脂から開裂させた。溶媒を蒸発させた後、生成物(31)をRP-HPLCで精製した。
【0302】
MS:[M+H]+=2494.6(MW 計算値=2495.4g/mol)
【0303】
化合物(32)の合成
【化58】
【0304】
化合物(32)は、標準的な固相合成プロトコルに準じて得た。アミノ酸Fmoc-Cys(Mmt)-OH、Fmoc-Dpr(Fmoc)-OH、Fmoc-Dpr(Fmoc)-OH、Fmoc-Ado-OH及びFmoc-Dpr(Fmoc)-OHをNovaSyn TG Sieberアミド樹脂にカップリングさせた。
【0305】
最後のfmocを除去した後、該樹脂を、DMF中で、アミノ基に対して3eqのBoc-アミノオキシ酢酸、3eqのDIC及び3eqのHOBtと一緒に30分間撹拌した。97/1/2(v/v/v)DCM/TFA/TESを用いて、(32)を樹脂から開裂させた。TFAに対して0.8eqのピリジンを添加した後、溶媒を蒸発させ、生成物(32)をRP-HPLCで精製した。
【0306】
MS:[M+H]+=2688.2g/mol(MW 計算値=2688.8g/mol)
【0307】
化合物(33)の合成
【化59】
【0308】
化合物(33)は、標準的な固相合成プロトコルに準じて得た。アミノ酸Fmoc-Dpr(ivDde)-OH、Fmoc-Dpr(Fmoc)-OH、Fmoc-Dpr(Fmoc)OH、Fmoc-Lys(Fmoc)-OH及びFmoc-Ado-OHをNovaSyn TG Sieberアミド樹脂にカップリングさせた。
【0309】
最後のfmocを除去した後、該樹脂を、DMF中で、アミノ基に対して3eqの3,6,9-トリオキサデカン酸、3eqのPyBOP及び6eqのDIEAと一緒に60分間撹拌した。
【0310】
ivDde保護基を開裂させるために、該樹脂をDMF中の2%ヒドラジンで3回処理した。洗浄した後、3eqのFmoc-Ser-OHを3eqのDIC及び3eqのHOBtと30分間カップリングさせた。最後のfmocを除去した後、樹脂を洗浄し、88/10/2(v/v/v)DCM/TFA/TESで樹脂から生成物を開裂させた。溶媒を蒸発させ、樹脂を、3/2(v/v)0.1Mリン酸ナトリウム(pH7)/アセトニトリル中で、10eqの過ヨウ素酸ナトリウムで15分間酸化し、(33)を生成させた。生成物(33)をRPHPLCで精製し、凍結乾燥させた。
【0311】
MS:[M+H]+=3372.1g/mol(3372.8g/mol)
【0312】
化合物(34)の合成
【化60】
【0313】
6mg(2.4μmol)の化合物(31)を1mLの2/1(v/v)アセトニトリル/0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7)に溶解させ、65mg(24.2μmol)の化合物(32)を添加した。その溶液を室温で2時間撹拌した後、生成物をRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた(収量:45mg(78%))。
【0314】
凍結乾燥させた該生成物(45mg)を0.5mLのDMFに溶解させ、10μLのDIEAを添加した。150μLのDMF中の5mg(30μmo1)の3-マレイミドプロピオン酸及び4.7μL(30μmol)のDICを添加し、その反応混合物を室温で20分間撹拌した。生成物をRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。
【0315】
凍結乾燥させた該生成物を95/5(v/v)TFA/水の中で10分間インキュベーションし、次いで、窒素流下で溶媒を除去した。生成物(34)をRPHPLCで精製し、凍結乾燥させた(3段階全体についての総収量:20mg(47%))。
【0316】
MS:17700-18200(幅広ピーク)(MW 計算値=17749g/mol)
【0317】
化合物(9h)の合成
1.5mg(225nmol)の(8g)及び5mg(280nmol)の(34)を混合し、300μLの2/1(v/v)0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7)/アセトニトリルに溶解させ、室温で15分間インキュベーションした。生成物をRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた(収量 4mg, 160nmol, 70%)。
【0318】
凍結乾燥させた該生成物を200μLの0.1Mクエン酸ナトリウムバッファー(pH1.5)に溶解させ、200μLの2/1(v/v)アセトニトリル/クエン酸ナトリウムバッファー(pH1.5)中の69mg(20.5μmol)の(33)を添加した。その混合物を室温で24時間撹拌し、生成物(9h)をサイズ排除クロマトグラフィー(カラム:Superdex 200, バッファー:10mM HEPES(pH7.4), 0.005% Tween-20, 3mM EDTA, 流速:0.75mL/分)で精製した。
【0319】
SEC溶離時間:15分
【0320】
化合物(37a)の合成
【化61】
【0321】
250mg(0.35mmol)の塩化2-クロロトリチル樹脂(ローディング 1.4mmol/g)を、4mLのDCM中で、308mg(4eq., 1.4mmol)の4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミンと一緒に1.5時間インキュベーションして、(35a)を生成させた。その樹脂をDCMで洗浄し、乾燥させた。3mLのDMF中の107mg(0.7mmol)のHOBt、110μL(0.7mmol)のDIC及び150mg(0.9mmol)の5-ホルミルサルチル酸を添加し、得られた懸濁液を室温で1時間撹拌して、(36a)を生成させた。DCM及びTHFで洗浄した後、その樹脂を6mLのTHFに懸濁させ、3mL(3mmol)のBH3THF(THF中1M, 8.5eq.)を滴下して加えた。その反応混合物を、窒素雰囲気下、45℃で18時間撹拌した。冷却後、4mLのTHF、0.8mLのDIEA及び1.6mLのMeOHを順次添加した。210mg(0.84mmol)のI2(濃THF溶液として)を添加し、得られた懸濁液を1時間撹拌した。その樹脂を、THF、DMF、MeOH及びDCMで繰り返し洗浄した(それぞれ3回)。乾燥させた該樹脂を、3mLのDMF中で、107mg(0.7mmol)のHOBt、110μL(0.7mmol)のDIC及び55μL(0.9mmol)のAcOHと1時間反応させた。この樹脂をDMF及びDCMで洗浄した後、2/1(v/v)HFIP/DCM(30分間で2回)で樹脂から化合物(37a)を開裂させた。揮発性成分を蒸発させた。生成物(37a)は、それ以上精製することなく次の段階で使用した。
【0322】
(37a):収量 TFA塩として29mg(20%);MS [M+Na]+=421.4(MW+Na 計算値=421.5g/mol)
【0323】
化合物(38)の合成
【化62】
【0324】
0.5mLのDMF中の24mg(0.06mmol)の(37a)、31mg(0.06mmol)のPyBOP、32μL(0.18mmol)のDIEA及び23mg(0.06mmol)の(2)を室温で50分間反応させた。50μLの酢酸を添加した後、生成物(38)をRP-HPLCで精製した。
【0325】
(38):収量 7mg(15%);MS [M+Na]+=781.3(MW+Na 計算値=781.6g/mol)
【0326】
化合物(39)の合成
【化63】
【0327】
300mg(0.42mmol)の塩化2-クロロトリチル樹脂(ローディング 1.4mmol/g)を、4mLのDCM中で、245mg(4eq., 1.7mmol)の1,8-ジアミノオクタンと一緒に1.5時間インキュベーションして、(35b)を生成させた。その樹脂をDCMで洗浄し、乾燥させた。3mLのDMF中の107mg(0.7mmol)のHOBT、110μL(0.7mmol)のDIC及び150mg(0.9mmol)5-ホルミルサリチル酸を添加し、得られた懸濁液を室温で1時間撹拌して、(36b)を生成させた。DCM及びTHFで洗浄した後、その樹脂を6mLのTHFに懸濁させ、3mL(3mmol)のBH3THF(THF中1M)を滴下して加えた。その反応混合物を、窒素雰囲気下、45℃で18時間撹拌した。冷却後、4mLのTHF、0.8mLのDIEA及び1.6mLのMeOHを順次添加した。210mg(0.84mmol)のI2(濃THF溶液として)を添加し、その懸濁液を1時間撹拌した。樹脂を、THF、DMF、McOH及びDCMで繰り返し洗浄した(それぞれ3回)。乾燥させた該樹脂を、3mLのDMF中で、107mg(0.7mmol)のHOBT、110μL(0.7mmol)のDIC及び55μL(0.9mmol)AcOHと1時間反応させた。その樹脂をDMF及びDCMで洗浄した後、1/1(v/v)THF/DCM中の化合物(37b)、78mg(0.39mmol)のクロロギ酸p-ニトロフェニル及び210μL(1.2mmol)のDIEAを室温で30分間反応させた。分離させた樹脂を1/1(v/v)THF/DCMに懸濁させ、210μL(1.2mmol)のN,N,N'-トリメチルエチレンジアミンを添加した。得られた懸濁液を室温で25分間撹拌した。樹脂を分離させ、DCMで洗浄した。2/1(v/v)HFIP/DCM(30分間で2回)で樹脂から生成物(39)開裂させた。揮発性成分を蒸発させ、生成物(39)をHPLCで精製した。
【0328】
(39):収量 TFA塩として16mg(8%);MS [M+Na]+=473.5(MW+Na 計算値=473.3g/mol)
【0329】
化合物(40a)の合成
【化64】
【0330】
(38)(7mg, 9μmol)を200μLの乾燥THEに溶解させた。クロロギ酸p-ニトロフェニル(2.0mg, 10μmol)及びDIEA(4.4μL, 25μmol)を添加し、その混合物を室温で30分間撹拌した。N,N,N'-トリエチルエチレンジアミン(15b)(18μL, 0.1mmol)を添加し、撹拌を30分間継続した。減圧下に溶媒を除去した。10μLのAcOHを添加し、(40a)をRP-HPLCで精製した。
【0331】
(40a):収量 TFA塩として1mg(11%);MS [M+Na]+=951.1(MW+Na 計算値=951.8g/mol)
【0332】
化合物(40b)の合成
【化65】
【0333】
0.5mLのDMF中の15mg(33μmol)の(39)、18mg(33μmol)のPyBOP、23μL(0.13mmol)のDIEA及び13mg(35μmol)の(2)を室温で45分間反応させた。50μLの酢酸を添加した後、生成物(40)をRP-HPLCで精製した。
【0334】
(40b):収量 TFA塩として10mg(37%);MS [M+H]+=811.5(MW+Na 計算値=810.5g/mol)
【0335】
化合物(41a)及び化合物(41b)の合成
【化66】
【0336】
カーボネート(41a)又はカーボネート(41b)は、(40a)又は(40b)から、化合物(7a)について記載したのと同様にして合成した。
【0337】
(41a):収量 TFA塩として0.4mg ;MS [M+Na]+=1116.8(MW+Na 計算値=1116.9g/mol)
(41b):収量 TFA塩として2mg(16%);MS [M+H]+=976.8(MW 計算値=975.8g/mol)
【0338】
化合物(42)の合成
【化67】
【0339】
インスリン誘導体(42)は、(41b)から、化合物(8a)について記載したのと同様にして合成した。
【0340】
(42) MS [M+3H]3+=2124.5;[M+4H]4+=1594.6(MW 計算値=6371g/mol)
【0341】
化合物(43)の合成
【化68】
【0342】
インスリン誘導体(43)は、(42)から、化合物(9a)について記載したのと同様にして合成した。
【0343】
(43):SEC保持時間:18.0分
【0344】
rh-インスリンをロードしたPEGAヒドロゲル(45)の合成
【化69】
【0345】
ポリアクリルアミドベースヒドロゲル(PEGA)のマレイミド誘導体化:
0.4mmol/gのローディング及び150〜300μmのビーズ寸法を有するNH2-PEGAヒドロゲルビーズをNovabiochemから購入した。
【0346】
メタノールで湿らせた2.5gのNH2-PEGA-ヒドロゲル(0.4mmol/g NH2-ローディング)を量って、ポリプロピレン製フリットを具備したシリンジの中に入れた。マレイミドのローディングは、下記に記載してあるように、活性化マレイミドプロピオン酸と酢酸の混合物を用いるアシル化により調節した。該ヒドロゲルをDMFで5回洗浄し、4mLのDMF中で、13.5mg(0.08mmol)の3-マレイミドプロピオン酸、115.2μL(1.92mmol)の酢酸及び313μL(2mmol)のDICと30分間反応させた。そのマレイミドで誘導体化したヒドロゲル(44)をDMF及びDCMで10回洗浄し、最後に、アセトニトリルで洗浄した。
【0347】
30mgのマレイミド誘導体化樹脂(44)(ローディング 16μmol/g)を、600μLの20/80(v/v)アセトニトリル/50mMリン酸バッファー(pH7.4)中で、3mgの化合物(20b)(480mmol, 1.06eq)と10分間反応させて、rh-インスリンがロードしたヒドロゲル(45)を得た。そのヒドロゲル(45)を50/50(v/v)アセトニトリル/水で5回洗浄し、アセトニトリルで3回洗浄し、減圧下に乾燥させた。
【0348】
rh-インスリン炭水化物ベースヒドロゲル(46)の合成
【化70】
【0349】
NHS活性化「セファロース4高速流動(Sepharose 4 Fast Flow)」ヒドロゲルビーズ(化学的に架橋したアガロース,架橋剤エピクロルヒドリン)をAmershamから購入した。
【0350】
エタノールで湿らせた1.5gのセファロースヒドロゲル(150mgの乾燥ヒドロゲル)を量ってポリプロピレン製フリットを具備したシリンジの中に入れ、DMF中の1Mの4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミンと30分間反応させた。DMFでの洗浄段階を5回行った後、ヒドロゲルを、4mLのDMF中で、8.5mg(0.05mmol)の3-マレイミドプロピオン酸、57μL(0.95mmol)の酢酸、151mg(1mmol)のHOBt及び158μL(1mmol)のDICと30分間反応させて、マレイミドで誘導体化したヒドロゲルを得た。そのヒドロゲルをDMFで10回洗浄し、最後に、アセトニトリルで洗浄した。
【0351】
1.5mgの(8c)を25/75(v/v)アセトニトリル/50mMリン酸バッファー(pH7.4)に溶解させ、10.8mgのマレイミド誘導体化ヒドロゲルと10分間反応させた。そのrh-インスリンがロードされたヒドロゲル(46)を50/50(v/v)アセトニトリル/水で5回洗浄し、アセトニトリルで3回洗浄し、減圧下で乾燥させた。
【0352】
フルオロセイン-インスリン-rHSA(50)の合成スキーム
【化71】
【0353】
ビスマレイミド(47)の合成
【化72】
【0354】
200μLのDMF中の3-マレイミド-プロピオン酸(92mg、0.54mmol)を、室温で、DIC(78μL, 0.50mmol)と15分間反応させた。4,7,10-トリオキサ-トリデカン-1,13-ジアミン(43.5μL, 0.20mmol)を添加し、その混合物を室温で30分間撹拌した。
【0355】
800μLの1/4(v/v)酢酸/水を添加した後、(47)をRP-HPLCで精製した。
【0356】
(47):収量 23mg(22%);MS [M+Na]+=545.5(MW+Na 計算値=545.6g/mol)
【0357】
rHSA-マレイミド(48)の合成
145mM NaCl、32mMオクタン酸ナトリウム及び0.0015% Tween-80に溶解させたrHSAの3mM溶液66.5μLを66.5μLの0.5Mリン酸バッファー(pH7.0)と混合した。0.41mgのビスマレイミド(47)(0.8μmol)を添加し、その混合物を室温で15分間反応させた。化合物(48)を、移動相として10mM HEPESバッファー(pH7.4)、150mM NaCl、3mM EDTA及び0.005% Tweenを用いるSEC(カラム:Superdex 200,流速:0.75mL/分)で精製した(収量:2.6mL, 77.5μM, (48))。
【0358】
SEC保持時間:17.1分n(280nm);ESI-MS=66988(MW 計算値=66984g/mol)
【0359】
フルオレセイン-インスリン-リンカー-マレイミド(49)の合成
40μLの1/1(v/v)アセトニトリル/水中2.4mMビスマレイミド(47)(96nmol)を、40μLの0.5Mホウ酸ナトリウムバッファー(pH5.8)と混合した。16.8μLの1/1(v/v)アセトニトリル/水中24nmol(8f)を添加し、その混合物を室温で10分間インキュベーションした。5μLのAcOHを添加し、(49)をRP-HPLCで精製した。
【0360】
ESI-MS=7211(MW 計算値=7211g/mol)
【0361】
フルオレセイン-インスリン-リンカー-rHSA(50)の合成
(a) (49)とrHSAから
(b) (48)と(8f)から
【0362】
(a)
30μLの1/1(v/v)アセトニトリル/水中80mM(49)(2.4 nmol)を、70μLの0.25Mリン酸ナトリウムバッファー(pH6.4)と混合した。145mM NaC1、32mMオクタン酸ナトリウム及び0.0015% Tween-80の中の3mM rHSA(24nmol)8μLを添加し、その混合物を室温で20分間インキュベーションした。
【0363】
化合物(50)を、移動相として10mM HEPESバッファー(pH7.4)、150mM NaCl、3mM EDTA及び0.005% Tweenを用いるSEC(カラム:Superdex 200,流速:0.75mL/分)で精製した。
【0364】
SEC保持時間:17.3分(500nm);ESI-MS=73676(MW 計算値=73673g/mol)
【0365】
(b)
rHSA-マレイミド(48)のSEC溶出液(241μL, 77.5μM, 18.7 nmol)を、20μLの0.5Mホウ酸ナトリウムバッファー(pH5.8)と混合した。14μLの1/1(v/v)アセトニトリル/水中1.41mM(8f)(19.6 nmol)を添加し、その混合物を室温で10分間インキュベーションした。1.2μLの1/1(v/v)アセトニトリル/水中48.5mM3-マレイミド プロピオン酸(58 nmol)を添加し、化合物(50)を、移動相として10mM HEPESバッファー(pH7.4)、150mM NaCl、3mM EDTA及び0.005% Tweenを用いるSEC(カラム:Superdex 200,流速:0.75mL/分)で精製した。
【0366】
SEC保持時間:17.1分(500nm);ESI-MS=73698(MW 計算値=73673g/mol)
【0367】
rHSA-リンカー-GLP-1(53a)及びrHSA-リンカー-GLP-1(53b)の合成スキーム
【化73】
【0368】
(51a)の合成
fmoc方法を用いるRink-アミド樹脂(Specialty Peptide Laboratories, Heidelberg, Germany)で、GLP(7-36)(配列:HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR-アミド)を合成した。N-末端fmoc保護基を除去し、樹脂をDCMで洗浄し、乾燥させた。118mgの樹脂(0.11mmol/g, 13.2μmol)を、50mgの(19i)(53μmol)を750μLの乾燥DMSOと22.4μLのDIEAに溶解させた溶液に懸濁させた。2.1μLのピリジンを添加し、その混合物を室温で48時間振盪した。その樹脂を毎回DMF及びDCMで6回洗浄した後、樹脂からペプチドを開裂させ、96/2/2(v/v/v)TFA/トリエチルシラン/水を用いて保護基を除去した。窒素流下で揮発性物質を除去し、(51a)をRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。
【0369】
(51a):収量 4.6mg(9%);MS:[M+3H]3+=1251.0(MW 計算値=3750.3g/mol)
【0370】
(51b)の合成
fmoc方法を用いるRink-アミド樹脂(Specialty Peptide Laboratories, Heidelberg, Germany)で、Lys28ivDde側鎖で保護されているGLP(7-36)(配列:HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVK(ivDde)GR-アミド)を合成した。N-末端fmoc保護基を除去し、樹脂をDCMで洗浄し、乾燥させた。50mgの樹脂(0.11mmol/g, 5.5μmol)を、25mgの(19i)(26μmol)を400μLの乾燥DMSOと11.2μLのDIEAに溶解させた溶液に懸濁させた。1.1μLのピリジンを添加し、その混合物を室温で48時間振盪した。その樹脂をDMFで6回洗浄した後、樹脂をDMF中の5%ヒドラジンと一緒に20分間3回インキュベーションすることにより、ivDde保護基を開裂させた。標準的なカップリングサイクルに従い、Fmoc-8-アミノ, 3,6-ジオキサオクタン酸をカップリングさせた。Fmoc保護基を除去した。該樹脂を8mgの5-(及び-6)-カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル及び2μLのDIEAと一緒に60分間インキュベーションすることにより、カルボキシ-フルオレセインをカップリングさせた。樹脂を毎回DMF及びDCMで6回洗浄した。96/2/2(v/v/v)TFA/トリエチルシラン/水を用いて、樹脂からペプチドを開裂させ、保護基を除去した。窒素流下で揮発性物質を除去した。(51b)は、それ以上精製することなく、(52)の合成に使用した。
【0371】
MS:[M+3H]4+=1064.3, [M+2H]3+=1418.3(MW 計算値=4254g/mol)
【0372】
(52)の合成
原料(51b)を500μLの1/1(v/v)アセトニトリル/0.25Mリン酸ナトリウム(pH7)に溶解させ、8mgのN,N'-ビス(3-マレイミドプロピオニル)-2-ヒドロキシ-1,3-プロパンジアミンを添加した。その溶液を室温で15分間撹拌した。(52)をRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。
【0373】
(52):収量:5.1mg;MS [M+3H]4+=1162.8;[M+2H]3+=1549.4(MW 計算値=4645g/mol)
【0374】
化合物(53a)の合成
【化74】
【0375】
30μLの10mM HEPESバッファー(pH7.4)中1.57mM(48)(47nmol)、150mM NaCl、3mM EDTA及び0.005% Tweenを、10μLの0.5Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)と混合した。9/1(v/v)水/アセトニトリルの中の2μLのDMSOと12μLの6.06mM(51a)(73nmol)の混合物を添加し、その溶液を室温で30分間インキュベーションした。(53a)を、移動相として10mMリン酸バッファー(pH7.4)、150mM NaCl及び0.005% Tweenを用いるSEC(カラム:Superdex 200,流速:0.75mL/分)で精製した。
【0376】
SEC保持時間:17.7分(280nm);ESI-MS=70745(MW 計算値=70734g/mol)
【0377】
(53b)の合成
【化75】
【0378】
100μLの9/1の50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)/アセトニトリル中3mM(52)(300nmol)を100μLの3mM HSA(300nmol)と混合し、その溶液を室温で30分間インキュベーションした。(53b)を、移動相として10mM HEPESバッファー(pH7.4)、150mM NaCl、3mM EDTA及び0.005% Tweenを用いるSEC(カラム:Superdex 200,流速:0.75mL/分)で精製した。
【0379】
SEC保持時間:17.7分(500nm)
【0380】
化合物(54a)及び化合物(54b)の合成
【化76】
【0381】
AlCl3(1.05eq)をDCMに懸濁させ、6-ブロモヘキサン酸クロリド(1eq)を添加した。室温で20分間撹拌した後、o-クレゾール(1eq)を添加した。その混合物を室温で25分間反応させた。その反応混合物を氷水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機相を分離してNa2SO4で脱水し、減圧下に濃縮した。生成物(54a)を、移動相としてヘプタン/酢酸エチル(4/1)を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0382】
(54b)は、6-ブロモヘキサン酸クロリド及びフェノールを用いて、上記と同様にして合成した。
【0383】
(54a):収量 3.7g(33%) ;MS [M+H]+=285.1及び287.2(MW+H 計算値=386.2g/mol)
(54b):収量 620mg(15%);MS [M+H]+=271.2(MW 計算値=271.0g/mol)
【0384】
化合物(55a)及び化合物(55b)の合成
【化77】
【0385】
臭化物(54a)(105mg, 369μmol)及びトリチルチオール(204mg, 738μmol)を50mLの乾燥DMSOに溶解させた溶液に、DBU(105μL, 701μmol)を添加した。その反応混合物を室温で40分間撹拌し、1N H2SO4で酸性化した。水層を酢酸エチルで抽出し、蒸発させた。(55a)をRP-HPLCで精製した。
【0386】
(55b)は、(54b)(180mg, 0.66mmol)を使用して、同じプロトコルに準じて合成した。
【0387】
(55a):収量 173mg(97%);MS [M+Na]+=503.6(MW+Na 計算値=503.7g/mol)
(55b):収量 160mg(85%);MS [M+Na]+=489.5(MW+Na 計算値=489.3g/mol)
【0388】
化合物(56a)及び(56b)の合成
【化78】
【0389】
(56a) R1=Me、R2=R3=3-(ジメチルアミノ)プロピル,
(56b) R1=H、R2=Me、R3=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル
【0390】
(56a)は、(55a)(9mg, 19μmol)、クロロギ酸p-ニトロフェニル及びビス(3-ジメチルアミノプロピル)アミン(21μL, 94μmol)から、化合物(16a)について記載したのと同様にして調製した。
【0391】
(56b)は、(55b)(160mg, 0.34mmol)、クロロギ酸p-ニトロフェニル及びN-エチル-N,N'-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(15c)から、化合物(16a)について記載したのと同様にして合成した。
【0392】
(56a):収量 TFA塩として12mg(70%);MS [M+Na]+=716.8(MW+Na 計算値=717.0g/mol)
(56b):収量 TFA塩として80mg(32%);MS [M+Na]+=645.6(MW+Na 計算値=645.4g/mol)
【0393】
化合物(57a)及び化合物(57b)の合成
【化79】
【0394】
(57a) R1=Me、R2=R3=3-ジメチルアミノ-プロピル,
(57b) R1=H、R2=Me、R3=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル
【0395】
(57a)及び(57b)は、それぞれ、(56a)(12mg, 13μmol, 複TFA塩)及び(56b)(80mg, 110μmol, TFA塩)から、化合物(16g)について記載したのと同様にして合成した。
【0396】
(57a):収量 TFA塩として9mg(75%) ;MS [M+Na]+=719.0(MW+Na 計算値=718.7g/mol)
(57b):収量 TFA塩として60mg(75%);MS [M+Na]+=647.4(MW+Na 計算値=647.4g/mol)
【0397】
化合物(58a)及び化合物(58b)の合成
【化80】
【0398】
(58a) R1=Me、R2=R3=3-(ジメチルアミノ)プロピル,
(58b) R1=H、R2=Me、R3=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル
【0399】
(57a)(1eq, 8mg, 9μmol)、クロロギ酸4-ニトロフェニル(3.5eq, 6mg, 30μmol)、DIEA(6eq, 9μL, 52μmol)及びDMAP(1eq, 1mg, 9μmol)を、1mLの乾燥DCM中で、窒素雰囲気下、室温で45分間撹拌した。揮発性物質を蒸発させ、酢酸を添加した。その混合物を1/1(v/v)アセトニトリル/水に溶解させ、カーボネート(58a)をRP-HPLCで精製した。
【0400】
カーボネート(58b)は、(57b)(135mg, 0.18mmol)から、同様にして調製した。
【0401】
(58a):収量 TFA塩として7mg(70%) ;MS [M+Na]+=883.8(MW+Na 計算値=884.1g/mol)
(58b):収量 TFA塩として110mg(77%);MS [M+Na]+=812.4(MW+Na 計算値=812.5g/mol)
【0402】
化合物(59)の合成
【化81】
【0403】
0.3mLのDMSO中のrh-インスリン(44.5mg, 7.7μmol)、カーボネート(58a)(1eq, 7mg, 6.4mmol)、DIEA(15μL, 88μmol)及びDMAP(1.5mg, 12μmol)を、室温で30分間反応させた。その反応混合物を酢酸で中和し、1/1(v/v)アセトニトリル/水で希釈した。RP-HPLCで精製して、Trtで保護された適切な中間体を得た。
【0404】
凍結乾燥後、該Trt保護中間体を95/5(v/v)TFA/トリエチルシランと混合し、5分間撹拌した。窒素流下で揮発性物質を除去した。(59)をRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。インスリン修飾の位置は、DTT還元及びMS分析により確認した。
【0405】
(59):MS [M+3H]3+=2095.5;[M+4H]4+=1572.2(MW 計算値=6288g/mol)
【0406】
化合物(60)の合成
【化82】
【0407】
(60)は、(59)(0.17μmol)から、化合物(9a)について記載したのと同様にして調製した。
【0408】
(60):SEC保持時間:19.5分
【0409】
化合物(61)の合成
【化83】
【0410】
(57b)(70mg, 90μmol)、DSC(161mg, 630μmol)、DIEA(192μL, 1.1mmol)及びDMAP(11mg, 90μmol)を、1mLの乾燥アセトニトリル中で、窒素雰囲気下、室温で14時間撹拌した。揮発性物質を蒸発させ、酢酸を添加した。その混合物を1/1(v/v)アセトニトリル/水に溶解させ、カーボネート(61)をRP-HPLCで精製した。
【0411】
(61):収量 TFA塩として40mg(51%);MS [M+Na]'=788.4(MW+Na 計算値=788.5g/mol)
【0412】
化合物(62)の合成
【化84】
【0413】
(61)(12mg, 13μmol)及びNPys-Cl(4mg, 21μmol)を、1mLのDCM中で、窒素雰囲気下、-10℃で2時間撹拌した。窒素流下で揮発性物質を除去し、(62)をRP-HPLCで精製した。
【0414】
(62):収量 TFA塩として7mg(65%);MS [M+Na]+=700.9(MW+Na 計算値=701.4g/mol)
【0415】
化合物(63)の合成
【化85】
【0416】
200μLの50mMホウ酸バッファー(pH8.0)中の0.9mgの脱塩rhGH(ProspecTany, Israel, MW 22250g/mol, 40 nmol)、8μLのアセトニトリル中カーボネート(62)(38mM, 300nmol)及び40μLのDMSOを、室温で3時間反応させた。Centricon 5フィルター(カットオフ 5kDa)を用いる限外瀘過により、溶媒混合物及び低分子量化合物を水で置き換えた後、酢酸バッファー(25mM, pH4.2, 0.005% Tween 20)で置き換えた。8μL(80nmol)の25mM酢酸バッファー(pH4.2, 0.005% Tween)中10mM DTTを添加し、室温で30分間インキュベーションした。Centricon 5フィルター及び溶出液としての25mM酢酸バッファー(pH4.2, 0.005% Tween)を用いる限外瀘過により、低分子量化合物を除去した。容積が100μLになるまで濃縮(Centricon 5)した後、20μL(100nmol)の水中5mMマレイミド-PEG5k及び80μLの0.5Mリン酸バッファー(pH7.0)を添加した。その混合物を室温で5分間インキュベーションした。移動相として10mMリン酸バッファー(pH7.4)、150mM NaCl及び0.005% Tween 20を用いるSEC(カラム:Superdex 200, 流速:0.75mL/分)により、モノコンジュゲート(63)を分離した。集めた溶出液(約1.0mL)を、0.05%NaN3を含有している0.5mLのバッファーで希釈し、放出速度の測定に直接使用した。
【0417】
(63):SEC保持時間:17.5分
【0418】
バッファー(pH7.4)中におけるコンジュゲートからのインスリン又はフルオレセイン-インスリンの放出
(フルオレセイン)-インスリンコンジュゲート(9a)〜(9h)、(21a)〜(21f)、(30a)、(30b)、(43)、(50)及び(60)からの(フルオレセイン)-インスリンの放出、(53b)からのフルオレセイン-GLP-1の放出、並びに、(63)からのrhGHの放出は、水性バッファー(pH7.4)でのリンカー加水分解により行わせた。(フルオレセイン)-インスリンコンジュゲート(上記を参照)、フルオレセイン-GLP-1コンジュゲート及びrhGHコンジュゲートのSEC溶出液をそれぞれ採取し、それらを、37℃でインキュベーションした。時間間隔を開けてサンプルを取り、RP-HPLC(インスリンコンジュゲート)又はSEC(rhGHコンジュゲート、フルオレセインインスリンコンジュゲート及びフルオレセイン-GLP-1コンジュゲート)、及び、UV検出(215nm又は280nm)又はVIS検出(500nm)により分析した。天然インスリン、フルオレセイン-インスリン、フルオレセイン-GLP-1及びrhGHの保持時間に関連するピークをそれぞれ積分し、インキュベーション時間に対してプロットした。カーブフィッティングソフトウェアを適用して、対応する半放出時間(halftime of release)を推定した。
【0419】
ヒドロゲルコンジュゲート(45)及び(46)からのインスリンの放出
4mgの(45)又は 2mgの(46)を量って試験管の中に入れ、1mLの10mM HEPESバッファー(pH7.4)、150mM NaCl、0.005% Tweenと一緒に37℃でインキュベーションした。種々の時間間隔で45μLのサンプルを取り、rh-インスリンについて、RP-HPLCアッセイにより定量的に分析した。rh-インスリンのピークを積分し、標準曲線からrh-インスリン濃度を求めた。一次放出動力学(first order release kinetic)をデータポイントに当てはめて、リンカー半減期を得た。
【0420】
化合物(9a)、(9b)及び(30a)から放出されたインスリンのMS分析
バッファーから放出されたインスリンのサンプル(上記参照)を質量分析法で分析した。図11は、化合物(9a)、化合物(9b)及び化合物(30a)から放出されたインスリンの質量スペクトルを示している。化合物(9a)から放出されたインスリンの質量スペクトルには、不可逆的にペンタノイルで修飾されたインスリンに相当する主要な副生成物(矢印で表されている)が明瞭に示されている。この場合、ペンタノイルマスキング基は、加水分解では除去されなかったが、インスリンへのアシル転位により除去された。化合物(9b)及び化合物(30a)から放出されたインスリンの質量スペクトルには、修飾は示されていなかった。
【0421】
80%ヒト血漿中におけるコンジュゲート(9d)及び(9e)からのフルオレセイン-インスリンの放出
(9d)又は(9e)からのフルオレセイン-インスリンの放出は、20mM HEPES(pH7.4)中の80%ヒト血漿中、37℃で、加水分解により行わせた。時間間隔を開けてサンプルを取り、SEC及びVIS検出(500nm)により分析した。フルオレセイン-インスリンの保持時間に関連するピークを積分し、インキュベーション時間に対してプロットした。カーブフィッティングソフトウェアを適用して、対応する半放出時間(halftime of release)を推定した。
【表1】
【0422】
上述の事項は、本発明の原理を例証しているものと見なされる。当業者には多くの変更が想定されるので、本発明は、まさに記載されているその構成及び操作に限定されるものではない。適切な全ての変更及び等価物は、「特許請求の範囲」の範囲内である。
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0423】
【図1】キャリヤー結合プロドラッグを示す図である。
【図2】酵素依存性キャリヤー結合プロドラッグを示す図である。
【図3】マスキング基がキャリヤーの一部であるカスケードプロドラッグを示す図である。
【図4】マスキング基がキャリヤーの一部である酵素依存性カスケードプロドラッグを示す図である。
【図5】マスキング基がキャリヤーから分離している自己開裂性カスケードプロドラッグを示す図である。
【図6】マスキング基がキャリヤーから分離している酵素依存性カスケードプロドラッグを示す図である。
【図7】キャリヤーがマスキング基を立体的に保護しているカスケードプロドラッグを示す図である。
【図8】分子内環化によるマスキング基の開裂を示す図である。
【図9】高分子プロドラッグの活性化による可能な副反応を示す図である。
【図10】一般的な合成方法を示す図である。
【図11】プロドラッグから放出されたインスリン分子の質量スペクトルを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド、タンパク質、天然産物又は合成化学化合物などの生物学的に活性な物質のアミノ基に対する一時的結合を有する高分子プロドラッグに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーは、典型的には、溶媒-ポリマー混合物中に物理化学的に配合させた薬物化合物と一緒に非共有結合的な方法で使用されるか、又は、ポリマー試薬を薬物の官能基のうちの1つに共有結合で永久的に結合させることにより使用される。
【0003】
非共有結合的な薬物カプセル化は、持続性放出プロフィールのために、デポー製剤に適用されてきた。典型的には、薬物を高分子材料と混合し、該薬物が該バルク高分子材料全体に分配されるように加工する。そのようなポリマー-タンパク質凝集体は、注射可能な懸濁液として投与される微小粒子として成形し得るか、又は、それらは、一回のボーラス注射で投与されるゲルとして製剤する。薬物の放出は、該ポリマーが膨潤したときに起こるか、又は、該ポリマーが分解して薬物が外部に拡散可能となったときに起こる。そのような分解のプロセスは、自己加水分解的であり得るか、又は、酵素触媒的であり得る。薬物-ポリマーゲルのボーラス投与に基づく市販薬の例は、Lupron Depotである。懸濁化微小粒子に基づく市販薬の例は、Nutropin Depotである。
【0004】
非共有結合的なアプローチの不利な点は、薬物のバースト型の制御されない放出を防止するために、カプセル化を、立体的に高度に密集した環境を作り出すことにより最大限に効率化しなければならないということである。未結合の水溶性薬物分子の拡散を抑制するのには、強いファンデルワールス接触が必要であり、これは多くの場合、疎水性成分により媒介される。タンパク質又はペプチドなどのような立体配置的に感応性を有する多くの治療用物質は、カプセル化プロセス中に、及び/又は、その後の貯蔵中に、その機能を失う。さらに、そのようなアミノ含有薬物化合物は、ポリマー分解産物と容易に副反応を起こす(D.H. Lee et al., J. Contr. Rel., 2003, 92, 291-299)。さらに、放出機構が生分解に依存することは、患者間の可変性の原因となり得る。
【0005】
あるいは、永久的な共有結合を介して薬物をポリマーにコンジュゲートさせることもできる。このアプローチは、いわゆる小分子から天然産物やさらに大きなタンパク質に至るまで、様々な種類の分子に適用される。
【0006】
アルカロイド及び抗腫瘍薬などのような多くの種類の小分子薬剤は、水性液体中での溶解度が低い。これらの小分子化合物を溶解させる1つの方法は、それらを親水性ポリマーにコンジュゲートさせることである。この目的のために、ヒト血清アルブミン、デキストラン、レクチン、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(スチレン-コ-無水マレイン酸)、ポリ(N-ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)、ポリ(ジビニルエーテル-コ-無水マレイン酸)、ヒアルロン酸などの、さまざまな水溶性ポリマーが記述されている(R. Duncan, Nature Rev. Drug Disc., 2003, 2, 347-360)。
【0007】
癌治療における主要な挑戦は、腫瘍細胞を細胞毒性薬の選択的な標的とすることである。小分子抗癌薬を腫瘍組織中に蓄積させて、当該薬剤の望ましくない副作用を低減させるための有望な方法は、当該細胞毒性薬を高分子キャリヤーに結合させることである。高分子薬物コンジュゲートの腫瘍に対する受動的標的化は、Matsumura, Y.及びMaeda, H.(Cancer Res., 1986, vol 6, pp 6387-6392)が記述しているように、いわゆるEPR効果(enhanced permeability and retention effect)に基づいている。結果として、数種類のポリマー-薬物コンジュゲートが、抗癌剤としての臨床試験に入っている。
【0008】
1970年代の後期から、生体分子のポリ(エチレングリコール)による共有結合的な修飾について広範囲な研究が成されている。いわゆるペグ化タンパク質は、溶解度が増大したことにより、免疫原性が低減したことにより、また、腎臓クリアランス及び酵素によるタンパク質分解が低減したことに起因してインビボでの循環半減期が長くなったことにより、治療効果の向上を示してきた(例えば、「Caliceti P., Veronese F.M., Adv. Drug Deliv. Rev. 2003, 55, 1261-1277」を参照されたい)。
【0009】
しかしながら、INFα2、サクイナビル又はソマトスタチンなどの多くの薬剤は、ポリマーが薬物分子に共有結合でコンジュゲートしている場合、不活性であるか、又は、低下した生物活性を示す(T. Peleg-Shulman et al., J. Med. Chem., 2004, 47, 4897-4904)。
【0010】
非共有結合ポリマー混合物又は永久的な共有結合のいずれかにより課せられた欠点を回避するために、薬物のポリマーキャリヤーへの化学的コンジュゲートについてのプロドラッグアプローチを採用することは好ましいであろう。そのような高分子プロドラッグにおいては、生物学的に活性な成分は、典型的には、キャリヤー成分と薬物分子のヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシ基の間で形成された一時的結合により 高分子キャリヤー成分に結合している(例えば、図1に示されている)。
【0011】
プロドラッグは、それ自体は殆ど不活性であるが、予想どおりに活性代謝物に変換される治療薬である(「B. Testa, J.M:Mayer in Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism, Wiley-VCH, 2003, page 4」を参照されたい)。キャリヤープロドラッグアプローチは、薬剤の生物活性を回復させるためにインビボでポリマーから薬剤を放出させるような方法で適用し得る。薬物の持続放出又は制御放出が望まれる場合、放出された薬物と比較してプロドラッグの生物活性が低減されているということは有利である。この場合、副作用や過剰投与の危険を伴うことなく、比較的大量のプロドラッグを投与することができる。薬物の放出は時間の経過とともに起こり、それにより、薬物を繰り返し頻繁に投与する必要性が低減される。
【0012】
プロドラッグの活性化は、キャリヤーと薬物分子の間の一時的結合を、酵素的若しくは非酵素的に開裂することにより起こり得るか、又は、それらを順次組み合わせることにより、即ち、酵素的段階とそれに続く非酵素的な転位により起こり得る。水性バッファー溶液などのような酵素を含んでいないインビトロ環境中では、エステル又はアミドのような一時的結合は加水分解を受け得るが、加水分解の対応速度はあまりにも遅すぎて、治療上有用ではない。インビボ環境中では、エステラーゼ又はアミダーゼが一般的に存在しており、それらは、加水分解速度を、2倍から数桁速い速度まで、触媒的に著しく促進し得る(例えば、「R.B. Greenwald et al., J. Med. Chem. 1999, 42(18), 3857-3867」を参照されたい)。
【0013】
IUPACに基づく定義
(「http://www.chem.qmul.ac.uk/iupac/medchem/」の元で提供されている(アクセス日 2004年3月8日))。
【0014】
プロドラッグ
プロドラッグは、生体内変換を受けた後でその薬理効果を示す任意の化合物である。従って、プロドラッグは、親分子における望ましくない特性を改変するか又は排除するために一時的な方法で用いられる特殊化した非毒性保護基を含んでいる薬物であると見なすことができる。
【0015】
キャリヤー結合プロドラッグ(キャリヤープロドラッグ)
キャリヤー結合プロドラッグは、所与の活性物質の一時的なキャリヤー基との一時的な結合を含んでいるプロドラッグであり、ここで、そのキャリヤー基は、物理化学的特性又は薬物動態学的特性を改善し、通常は加水分解的な開裂により、インビボで容易に除去され得る。これは、図1において図式的に示してある。
【0016】
カスケードプロドラッグ
カスケードプロドラッグは、活性化基がアンマスキングされて初めてキャリヤー基の開裂が起こるキャリヤープロドラッグである。
【0017】
高分子カスケードプロドラッグ
高分子カスケードプロドラッグは、所与の活性物質と一時的な高分子キャリヤー基の一時的な結合を含み、活性化基がアンマスキングされて初めてキャリヤー基の開裂が起こるキャリヤープロドラッグである。
【0018】
バイオプレカーサープロドラッグ
バイオプレカーサープロドラッグは、キャリヤー基への結合は含んでいないが、活性成分自体の分子修飾により生じるプロドラッグである。この修飾により、代謝的又は化学的に変換されることが可能な新しい化合物が生成され、変換の結果生じる化合物は当該活性成分である。
【0019】
生体内変換
生体内変換は、生体又は酵素調製物による物質の化学的変換である。
【0020】
プロドラッグは、2つの種類、バイオプレカーサー及びキャリヤー結合プロドラッグに分類される。バイオプレカーサーはキャリヤー基を含まず、代謝的に官能基が作り出されることにより活性化される。キャリヤー結合プロドラッグでは、活性物質は一時的結合によりキャリヤー成分に結合している。本発明は、高分子キャリヤー結合プロドラッグ又は高分子プロドラッグに関し、ここで、キャリヤー自体は、キャリヤータンパク質又は多糖類又はポリエチレングリコールなどの巨大分子である。特に、本発明は、ポリマーと薬物の間の開裂がカスケード機構に従って二段階で進行する高分子キャリヤー結合プロドラッグに関する。
【0021】
キャリヤープロドラッグが開裂することにより、増大した生理活性を有する分子状物質(薬物)及び少なくとも1個の副生成物(キャリヤー)が生成される。この副生成物は、生物学的に不活性であり得る(例えば、PEG)か、又は、ターゲッティング特性を有し得る(例えば、抗体)。開裂後、当該生理活性物質では、前もってコンジュゲートされそれにより保護されていた少なくとも1個の官能基が出現し、その基の存在が、典型的には、当該薬物の生理活性に寄与する。
【0022】
プロドラッグ戦略を実行するために、薬物分子内の少なくとも1個の特定の官能基を用いてキャリヤーポリマーを結合させる。好ましい官能基は、ヒドロキシル基又はアミノ基である。従って、結合化学及び加水分解条件は、いずれも、これら2種類の官能性の間で大きく異なっている。
【0023】
単純な一段階機構においては、プロドラッグの一時的結合は、固有の不安定性又は酵素依存性を特徴とする。酵素触媒が存在しているか又は存在していない水性環境中における該結合の加水分解に対する感受性により、高分子キャリヤーと薬物の間の開裂速度が制御される。多くの種類の高分子プロドラッグが文献に記載されており、そこでは、一時的結合は、不安定なエステル結合である。これらの場合、生理活性物質により提供される官能基は、ヒドロキシル基又はカルボン酸のいずれかである(例えば、Y. Luo, MR Ziebell, GD Prestwich, "A Hyaluronic Acid - Taxol Antitumor Bioconjugate Targeted to Cancer Cells", Biomacromolecules 2000, 1, 208-218, J Cheng et al, Synthesis of Linear, beta-Cyclodextrin Based Polymer and Their Camptothecin Conjugates, Bioconjugate Chem. 2003, 14, 1007-1017, R. Bhatt et al, Synthesis and in Vivo Antitumor Activity of Poly(L-glutamic acid) Conjugates of 20(S)-Campthothecin, J. Med. Chem. 2003, 46, 190-193;R.B. Greenwald, A. Pendri, C.D. Conover, H. Zhao, Y.H. Choe, A. Martinez, K. Shum, S. Guan, J. Med. Chem., 1999, 42, 3657-3667;B. Testa, J.M:Mayer in Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism, Wiley-VCH, 2003,Chapter 8)。
【0024】
特に、治療効果を有する生体高分子のみではなく、特定の小分子薬物の場合にも、高分子キャリヤーを生理活性物質のアミノ基(即ち、タンパク質のN-末端アミノ基又はリシンアミノ基)に結合させることが望ましいことがあり得る。これは、薬物の生理活性をマスキングするのに、生理活性物質の特定のアミノ基(例えば、活性中心又は受容体結合に関与する領域若しくはエピトープに位置しているアミノ基)にコンジュゲートさせることが必要な場合である。さらにまた、プロドラッグの調製に際しては、アミノ基は、ヒドロキシル基又はフェノール基と比較して大きな求核性を有しているので、より化学選択的に処置し得るし、また、キャリヤーと薬物をコンジュゲートさせるためのより良好なハンドルとして作用し得る。このことは、非常に多種多様な異なった反応性官能基を含み得るタンパク質についてとりわけ当てはまる。そのようなタンパク質では、非選択的なコンジュゲーション反応は望ましくない生成物混合物をもたらし、それらは、広範囲のキャラクタリゼーション又は精製が必要であり、また、反応の収率及び生成物の治療効率を低減し得る。
【0025】
アミド結合や脂肪族カルバメートは、加水分解に対して、エステル結合よりも非常に安定であり、キャリヤー結合プロドラッグにおける治療用途のためには、開裂速度が遅すぎるであろう。従って、プロドラッグアミド結合の開裂性を制御するために、隣接基などの構成的な化学成分を加えることは有利である。キャリヤー物質によっても又は薬物によっても提供されないそのような付加的な開裂制御性化学構造は、リンカーと称される。プロドラッグリンカーは、所与の一時的結合の加水分解速度に、強い影響を及ぼすことができる。これらのリンカーの化学的性質はさまざまであることから、リンカーの特性を大きな範囲で設計することが可能である。
【0026】
例えば、プロドラッグリンカーは、酵素選択性に合わせて設計し得る。酵素依存性についての必要条件は、そのリンカーの構造が、対応する内因性酵素により基質として認識される構造モチーフを示すことである(図2)。
【0027】
酵素触媒によるプロドラッグ開裂の促進は、器官又は細胞を標的とする用途にとって望ましい特性である。当該結合を選択的に開裂する酵素が、処置に対して選択された器官又は細胞型に特異的に存在している場合、生理活性物質の標的化放出が達成される。
【0028】
酵素依存性一時的結合の典型的な特性は、加水分解に対するその安定性である。この一時的結合自体は、標準的な投与計画において治療効果が誘発され得るであろう程度に薬物を放出するような速度での自己加水分解を受けない。該結合に対する酵素の攻撃により開裂が有意に促進され、同時に、遊離薬物の濃度が上昇するのは、酵素が存在している場合のみである。
【0029】
標的化放出に対する特異的酵素によるアミン含有生物学的活性成分のプロドラッグ活性化に関して、幾つかの例が公開されている。これらの場合、開裂は、酵素により触媒される一段階プロセスで起こる。G. Cavallaroら(Bioconjugate Chem. 2001, 12, 143-151)は、プロテアーゼプラスミンによる抗腫瘍薬の酵素的放出について記載している。トリペプチド配列D-Val-Leu-Lysを介してシタラビンをポリマーα,β-ポリ(N-ヒドロキシエチル)-DLアスパルトアミド(PHEA)にカップリングさせる。さまざまな種類の腫瘍塊において比較的濃度が高いプロテアーゼプラスミンにより、シタラビンを酵素的に放出させる。
【0030】
β-ラクタマーゼ(R. Satchi-Fainaro et al., Bioconjugate Chem. 2003, 14, 797-804)及びシステインプロテアーゼ様カテプシンB(R. Duncan et al. J. Contr. Release 2001, 74, 135-146)などの様な特異的酵素により活性化される抗腫瘍高分子プロドラッグのさらなる例についても記載されている。Wiwattanapatapeeら(2003)は、5-アミノサルチル酸を結腸に送達するためのデンドリマープロドラッグについて概説している。該薬物分子を、アゾ結合により、「第3世代」PAMAMデンドリマーにコンジュゲートさせる。5-アミノサリチル酸は、結腸において、アゾレダクターゼと称される細菌酵素により放出される(W. R. Wiwattanapatapee, L. Lomlim, K. Saramunee, J. Controlled Release, 2003, 88:1-9)。
【0031】
A.J. Garmanら(A.J. Garman, S.B. Kalindjan, FEBS Lett. 1987, 223(2),361-365 1987)は、組織プラスミノーゲン活性化因子及びウロキナーゼにおけるアミノ基を可逆的に修飾するために、PEG5000-無水マレイン酸を用いている。pH7.4のバッファーでインキュベーションした際のマレイン酸結合の開裂によるPEG-uPAコンジュゲートからの機能的な酵素の再生は、半減期が6.1時間の一次速度式に従う。プロドラッグの開裂について、酵素の存在下では調べられなかった。上記で説明したように、インビボ環境中に存在しているプロテアーゼが一時的なアミド結合の開裂に有意に寄与するであろうということは、予期することができる。この結合のさらなる不利点は、低いpH値においてコンジュゲートが安定性を欠いているということである。これにより、時期尚早のプロドラッグ開裂を防止するために活性剤ポリマーコンジュゲートの精製を塩基性条件下で実施しなくてはならないので、当該リンカーの適用性は、塩基性pH値で安定な活性剤に限定される。
【0032】
カスケード機構は、リンカー開裂特性が単純な一段階プロドラッグにおける場合よりも非常に大きな適応性を持って最適化することが可能であることから、アミノ基官能性を含んでいる薬物の制御放出において特に有用であるということが証明された。
【0033】
カスケード開裂は、マスキング基と活性化基の構造的組合せで構成されるリンカー化合物により可能となる。マスキング基は、第一の一時的結合(例えば、エステル又はカルバメート)によって活性化基に結合させる。その活性化基は、第二の一時的結合(例えば、カルバメート)を介して薬物分子のアミノ基に結合させる。第二の一時的結合の安定性又は加水分解に対する感受性は、マスキング基が存在しているか又は存在していないかに依存する。マスキング基の存在下では、第二の一時的結合は非常に安定であり、治療上有用な速度で薬物を放出することは起こりそうにない。マスキング基が存在していない場合、該結合は非常に不安定となり、急速に開裂して薬物を放出する。
【0034】
第一の一時的結合の開裂は、当該カスケード機構の律速段階である。この第一の段階は、活性化基の分子転位(例えば、1,6-除去)を誘発し得る。この転位により第二の一時的結合はいっそう不安定となり、その開裂が誘発される。理想的には、第一の一時的結合の開裂速度は、所与の治療計画における薬物分子の望ましい放出速度に等しい。さらに、第二の一時的結合の開裂は、第一の一時的結合の開裂によりその不安定性が誘発された直後に起こるのが望ましい。
【0035】
図3において図式的に示されているように、マスキング基の官能性がキャリヤーポリマー自体により実現されているカスケードキャリヤープロドラッグについてのさまざまな例が存在している。以下で論じられている系において、マスキング基は、キャリヤーの一部分であるばかりではなく、酵素依存性に対しても設計されている(図4)。対応する酵素の存在下においてのみ、第一の一時的結合の開裂速度は、治療用途に対して充分に促進される。
【0036】
R.B. Greenwald、A. Pendri、C.D. Conover、H. Zhao、Y.H. Choe、A. Martinez、K. Shum、S. Guan(J. Med. Chem., 1999, 42, 3657-3667 及び PCT特許出願WOA-99/30727)は、1,4-又は1,6-ベンジル除去に基づいた、アミノ含有小分子化合物のポリ(エチレングリコール)プロドラッグの合成方法について記載している。このアプローチでは、高分子キャリヤーとしてのポリ(エチレングリコール)を、第一の一時的結合(例えば、エステル結合、カーボネート結合、カルバメート結合又はアミド結合)により、ベンジル基に結合させる。そのベンジル基は活性化基として作用し、該PEGポリマーも、このカスケード開裂機構においてマスキング基としての機能を有している。薬物分子のアミノ基は、カルバメート基を含んでいる第二の一時的結合を介してベンジル成分に結合させる。該薬物分子からのPEGの放出は第一の一時的結合の酵素的開裂により開始し、次いで、急速に1,4-ベンジル又は1,6-ベンジルが除去され、第二の一時的結合の開裂が開始する。
【0037】
同じリンカー系は、タンパク質の放出可能なポリ(エチレングリコール)コンジュゲートにも使用される(S. Lee, R.B. Greenwald et al. Bioconj. Chem. 2001, 12(2), 163-169)。リゾチームは、リシン残基のε-アミノ基でペグ化が起こった場合にその活性を失うので、モデルタンパク質として使用する。さまざまな量のPEGリンカーを該タンパク質にコンジュゲートさせた。PEGコンジュゲートからの本来のタンパク質の再生は、ラット血漿中での酵素的開裂により起こるか、又は、非生理学的な高pHバッファー中で起こる。
【0038】
Greenwaldらは、2000年に、トリメチルロックラクトン化(trimethyl lock lactonization)に基づいたアミノ含有プロドラッグのポリ(エチレングリコール)薬物送達システムについて公表した(R.B. Greenwald et al. J.Med.Chem. 2000, 43(3), 457-487;PCT特許出願WO-A02/089789)。このプロドラッグ系においては、置換o-ヒドロキシフェニル-ジメチルプロピオン酸を、第一の一時的結合としてのエステル基、カーボネート基又はカルバメート基でPEGに結合させ、及び、第二の一時的結合としてのアミド結合により薬物分子のアミノ基に結合させている。薬物放出の律速段階は、第一の結合の酵素的開裂である。この段階につづいてすぐにラクトン化によるアミド開裂が起こり、潜在的に毒性の芳香族ラクトン副産物が遊離する。
【0039】
同様のプロドラッグ系が、F.M.H. DeGrootらによって記述され(WO02083180およびW004043493A1)、また、D. Shabatらによって記述された(WO04019993A1)。W002083180には、1,(4+2n)除去に基づく細長い複数のリンカーを有するプロドラッグ系が開示されている。これらの例におけるマスキング成分は、酵素的開裂に対して特異的に設計された。このアプローチは、1の酵素的活性化イベントが2種類以上の薬物分子の放出を誘発する樹枝状プロドラッグ系にまで拡大された(WO04043493Al)。W004019993A1には、単一の酵素的活性化イベントにより多くの薬物成分を放出する自壊性デンドリマーに基づいた類似プロドラッグ系が開示されている。これらのプロドラッグ系は、高分子キャリヤーが存在していないことを特徴とする。その代わりに、プロドラッグリンカー成分のオリゴマー化により高分子量のプロドラッグが提供され、プロドラッグの開裂によりリンカー残基及び遊離薬物が生成されるが、高分子物質は放出されない。
【0040】
Greenwald、DeGroot及びShabatによって記述された上記プロドラッグ系の不利点は、一時的な結合の開裂後に、キノンメチドのような潜在的に毒性の芳香族小分子副生成物が放出されるということである。この潜在的に毒性の物質は薬物と1:1の化学量論的比率で放出され、インビボで高い濃度になり得る。この危険因子は、活性化基のオリゴマーに基づく自壊性樹枝状構造を用いた場合にもなお大きく、薬物分子よりも多くの芳香族副生成物が放出される。
【0041】
最近になって、R.B. Greenwaldら(Greenwald et al. J. Med.Chem. 2004, 47, 726-734)が、ビス-(N-2-ヒドロキシエチル)グリシンアミド(ビシンアミド)リンカーに基づくPEGプロドラッグ系について記述した。この系では、2つのPEG分子を、薬物分子のアミノ基にカップリングさせたビシン分子に結合させている。プロドラッグの活性化の最初の2つの段階は、両方のPEG分子の酵素的開裂である。PEGとビシンの間の結合が異なると、異なったプロドラッグ活性化動力学が得られると記述されている。この系の主な不利点は、薬物分子にコンジュゲートさせたビシンアミドの加水分解速度が遅いことであり(リン酸塩バッファー中で、t1/2=3時間)、その結果、ビシン修飾プロドラッグ中間体が放出され、このビシン修飾プロドラッグ中間体は、親薬物分子と比較して、異なった薬物動態学的特性及び薬力学的特性を示し得る。
【0042】
キャリヤーポリマーの一部分であるマスキング基を有するカスケードプロドラッグは、薬物放出速度の制御において限界がある。マスキング基の開裂は、該カスケード機構における律速段階であるので、該薬物放出速度はその分子構造に左右される。キャリヤーポリマーがマスキング基と同一である場合、その構造的適応性は、該ポリマーの特性に制限される。あるいは、制御された開裂のための要件に合わせるためにポリマーの構造改変が必要である場合、対応する構造の合成は、さらに困難なものになり得る。さらにまた、ポリマーにマスキング基特性を組み込んだ場合、その安全性プロフィールが変わり得る。
【0043】
従って、マスキング基とキャリヤーは、構造的に分離させるのが好ましい。これは、ポリマーキャリヤーと活性化基の間に永久的な結合を採用することにより達成することができる。この安定な結合は、カスケード開裂機構に関与しない。該キャリヤーがマスキング基として作用せず且つ活性化基を安定な結合でキャリヤーにカップリングさせた場合、当該活性化基などの潜在的に毒性である副産物の放出は回避される。活性化基とポリマーを安定的に結合させることにより、薬理が不明瞭な薬物-リンカー中間体の放出も抑制される。
【0044】
マスキング基を酵素依存性とすることにより治療薬を標的化送達するための系が開発された。対応する酵素の存在下においてのみ、マスキング基を活性化基に連結している第一の一時的結合の開裂速度は、治療用途に充分な程促進される。
【0045】
Antczakら(Bioorg Med Chem 9(2001) 2843-48)は、アミン含有薬物分子のための高分子カスケードプロドラッグ系のための基礎を形成する試薬について記述している。このアプローチにおいては、抗体がキャリヤーとして作用し、酵素的に開裂可能なマスキング基を有する活性化成分に該抗体を安定な結合で連結させている。エステル結合マスキング基が酵素的に除去された後、第二の一時的結合が開裂して、薬物化合物を放出する(図6に示してある)。
【0046】
D. Shabatら(Chem. Eur. J. 2004, 10, 2626-2634)は、マンデル酸活性化成分に基づく高分子プロドラッグ系について記述している。この系では、マスキング基をカルバメート結合で活性化成分に結合させている。該活性化成分は、ポリアクリルアミドポリマーに、アミド結合で永久的にコンジュゲートさせてある。マスキング基を触媒性抗体で酵素的に活性化した後、マスキング基は環化により開裂され、薬物が放出される。この活性化成分は、薬物が放出された後においても、まだ、ポリアクリルアミドポリマーに連結したままである。
【0047】
M.-R. Leeら(Angew. Chem. 2004, 116, 1707-1710)は、マンデル酸活性化成分と酵素的に開裂可能なエステル結合マスキング基に基づく類似したプロドラッグ系について記述している。
【0048】
記述されているこれらの全てのプロドラッグ-ポリマー系においては、マスキング基は、酵素に対する基質となるように特異的に設計されており、また、マスキング基の開裂は、患者間の可変性、注射部位の可変性及びインビトロとインビボの相関性が乏しいという不利点を伴っている酵素触媒に殆ど完全に依存している。
【0049】
主として酵素的に開裂されることの主な欠点は、患者間の可変性である。酵素レベルは、個々の間で有意に異なり得るが、その結果、酵素的開裂によるプロドラッグ活性化の生物学的変動が生じる。酵素レベルは、さらに、投与部位に応じても変わり得る。例えば、皮下注射の場合、体の特定の領域では、他の領域よりも予測可能な治療効果が得られることが知られている。この予測できない効果を低減するためには、非酵素的開裂又は分子内触媒が特に興味深い(例えば、「B. Testa, J.M:Mayer in Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism, Wiley-VCH, 2003, page 5」を参照されたい)。
【0050】
さらに、そのような酵素依存性のキャリヤー結合プロドラッグについては、薬物動態学的特性のインビボ-インビトロの相関関係を確立することは困難である。インビボとインビトロの適切な相関関係がない場合は、放出プロフィールの最適化は、面倒な仕事となる。
【0051】
さらにまた、酵素選択性の必要性は、プロドラッグリンカーで使用可能な構造的特性に厳しい制限を課すこととなる。この制限は、適切な構造活性相関の開発の大きな障害となり、従って、リンカー開裂動力学の最適化において大きな障害となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0052】
これらの理由により、記述されている高分子プロドラッグの上記制限を克服するために、アミン含有活性物質の高分子プロドラッグを形成させる新規なリンカー及び/又はキャリヤー技術を提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0053】
本発明は、上記で記載した不利な点に取り組むものである。本発明は、求核性成分(nucleophile)を含み且つキャリヤーとは異なるマスキング基を特徴とする高分子カスケードプロドラッグを提供する。
【0054】
該求核性成分は、第一の一時的結合の開裂後に、1,(4+2p)除去反応(ここで、p=0、l、2、3、4、・・・)を受けることが可能な芳香族活性化基を有する第一の一時的結合に対して適切な距離にある。本発明は、さらに、1,(4+2p)除去の結果として開裂される第二の一時的結合を介して薬物分子のアミノ基に連結されている活性化基を特徴とする。さらなる構造的特徴は、高分子キャリヤーが永久的な結合で活性化基に結合していることである。 本発明によるマスキング基は、少なくとも1個の求核性成分Nuを含んでいる。この求核性成分は、例えば、第一級アミノ基、第二級アミノ基又は第三級アミノ基であることができるが、該求核性成分は、分子内触媒又は分子内環化により、活性化成分からのマスキング基の開裂を援助することが可能である。
【0055】
本発明は、式(Ia)又は(Ib):
【化1】
【0056】
[式中、Y1〜Y5、R1〜R4、T、X、W、Nu及びArは、下記で定義されている]
で表される高分子カスケードプロドラッグ及び対応する高分子カスケードプロドラッグリンカー試薬を提供する。
【0057】
本来の薬物は、二段階の機構により放出される。第一段階は、マスキング基
【化2】
【0058】
と活性化成分
【化3】
【0059】
の間の第一の一時的結合の当該高分子プロドラッグからのインビボにおける律速的な開裂である。
【0060】
上記で記載したように、マスキング基の開裂は、酵素的段階又は非酵素的段階、例えば、pH依存性加水分解又は分子内環化などにより介在され得る。本発明の好ましい実施形態では、開裂は、分子内環化又は触媒により非酵素的に成される。本発明のマスキング基の37℃の水性バッファー(pH7.4)中における開裂速度(cleaveage kinetics)の半減期は、好ましくは、1時間〜6ヶ月であり、さらに好ましくは、1日〜3ヶ月であり、最も好ましくは、1日〜2ヶ月である。
【0061】
再生された本来の薬物の放出における第二の最終段階は、それぞれ、式(Ia)又は式(Ib)で表される残りの高分子プロドラッグの成分
【化4】
【0062】
の、迅速で、自発的且つ不可逆的な、いわゆる、1,4-除去、又は、1,6-除去、又は、1,(4+2p)(ここで、p=2、3、4又はそれ以上)除去である。
【0063】
マスキング基の加水分解性開裂とそれに続く活性化基の1,6-除去段階により誘発される、高分子プロドラッグからの本来の薬物の放出の上記機構は、本発明の高分子プロドラッグにより例証される。
【化5】
【0064】
式(Ia)又は式(Ib)におけるY1〜Y5、R1〜R4、T、X、W、Nu及びArの定義
Tは、D又はAである。
【0065】
本発明による構造が高分子カスケードプロドラッグリンカー試薬である場合、TはAであり、そして、Aは脱離基である。適切な脱離基Aの非限定的な例としては、限定するものではないが、塩化物、臭化物、フッ化物、ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、N-ヒドロキシアゾベンゾトリアゾリル、ペンタフルオロフェノキシ、N-ヒドロキシスルホスクシンイミジル、又は、当業者には既知の任意の他の脱離基などを挙げることができる。
【0066】
本発明による構造が高分子カスケードプロドラッグである場合、TはDであり、そして、Dは、アミン含有生物学的活性物質の残基であり、ここで、アミン含有生物学的活性物質としては、限定するものではないが、小分子生理活性作用物質又は生体高分子、例えば、タンパク質、ポリペプチド、及び、オリゴヌクレオチド(RNA、DNA)、ペプチド核酸(PNA)などを挙げることができる。
【0067】
ここで留意すべきことは、本明細書において、しばしばプロドラッグについて言及されているということである。真のプロドラッグは、Tがアミン含有生物学的活性物質又はアミン含有生物学的活性成分の残基である場合である。Tが脱離基Aである場合、当該式は、高分子カスケードプロドラッグリンカー試薬を表している。簡単にするために、本明細書においては、これらをプロドラッグと称する。真のプロドラッグ又は前駆体としての試薬のいずれを意味しているのかは、前後関係から理解されるであろう。
【0068】
適切な有機小分子生理活性成分としては、限定するものではないが、少なくとも1個の第一級アミノ基又は第二級アミノ基を有する、中枢神経系-活性作用物質、抗感染症薬、抗新生物薬、抗細菌薬、抗真菌薬、鎮痛薬、避妊薬、抗炎症薬、ステロイド性作用薬、血管拡張性作用薬、血管収縮作用薬及び心臓血管作用薬などの成分を挙げることができる。そのような化合物の非排他的な例は、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、アミノグルテチミド、アマンタジン、ジアフェニルスルホン、エタンブトール、スルファジアジン、スルファメラジン、スルファメトキサゾール、スルファレン、クリナフロキサシン、モキシフロキサシン、シプロフロキサシン、エノキサシン、ノルフロキサシン、ネオマイシンB、スプレクチノマイシン(sprectinomycin)、カナマイシンA、メロペネム、ドパミン、ドブタミン、リシノプリル、セロトニン、カルブタミド及びアシビシンなどである。
【0069】
少なくとも1個の遊離アミノ基を有する適切なタンパク質及びポリペプチドとしては、限定するものではないが、ACTH、アデノシンデアミナーゼ、アガルシダーゼ、アルブミン、α-1アンチトリプシン(AAT)、α-1プロテイナーゼインヒビター(API)、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、アンクロドセリンプロテアーゼ、抗体(モノクローナル又はポリクローナル、及び、フラグメント又は融合物)、抗トロンビンIII、抗トリプシン、アプロチニン、アスパラギナーゼ、ビファリン(biphalin)、骨形成タンパク質、カルシトニン(サケ)、コラゲナーゼ、DNアーゼ、エンドルフィン、エンフュービルタイド、エンケファリン、エリスロポエチン、VIIa因子、VIII因子、VIIIa因子、IX因子、フィブリノリジン、融合タンパク質、卵胞刺激ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、ガラクトシダーゼ、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド様GLP-1、グルコセレブロシダーゼ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PLAP)、絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、ヘモグロビン、B型肝炎ワクチン、ヒルジン、ヒアルロニダーゼ、イズルノニダーゼ(idurnonidase)、免疫グロブリン、インフルエンザワクチン、インターロイキン(1α、1β、2、3、4、6、10、11、12)、IL-1受容体拮抗薬(rhIL-1ra)、インスリン、インターフェロン(α2a、α2b、α2c、β1a、β1b、γ1a、γ1b)、角質細胞増殖因子(KGF)、トランスホーミング増殖因子、ラクターゼ、ロイプロリド、レボチロキシン、黄体形成ホルモン、ライムワクチン、ナトリウム利尿ペプチド、パンクレリパーゼ、パパイン、副甲状腺ホルモン、PDGF、ペプシン、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF-AH)、プロラクチン、タンパク質C、オクトレオチド、セクレチン、セルモレリン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ソマトロピン(成長ホルモン)、ソマトスタチン、ストレプトキナーゼ、スクラーゼ、破傷風毒素フラグメント、チラクターゼ、トロンビン、チモシン、甲状腺刺激ホルモン、チロトロピン、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF受容体-IgG Fc、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、TSH、尿酸オキシダーゼ
、ウロキナーゼ、ワクチン及び植物性タンパク質(例えば、レクチン及びリシンなど)などを挙げることができる。
【0070】
同様に、ここで、インビボ生理活性を有する任意の合成ポリペプチド又はポリペプチドの任意の部分なども挙げることができる。さらに、組換えDNA法で調製したタンパク質、例えば、上記で挙げたタンパク質の突然変異体、抗体フラグメント、一本鎖結合タンパク質、触媒性抗体及び融合タンパク質なども挙げることができる。
【0071】
好ましいタンパク質は、抗体、カルシトニン、G-CSF、GM-CSF、エリスロポエチン、ヘモグロビン、インターロイキン、インスリン、インターフェロン、SOD、ソマトロピン、TNF、TNF-受容体-IgC Fc及びGLP-1である。
【0072】
Xは、R5-Y6などのようなスペーサー成分である。
【0073】
Y1、Y2は、それぞれ、互いに独立して、O、S又はNR6であり得る。
【0074】
Y3、Y5は、それぞれ、互いに独立して、O又はSであり得る。
【0075】
Y4は、O、NR6又は-C(R7)(R8)-である。
【0076】
Y6は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素-炭素結合若しくは自由電子対を含んでいる任意のヘテロ原子であるか、又は、存在しない。
【0077】
R2及びR3は、独立して、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、又は、カルボキサミドアルキルなどから選択される。
【0078】
本発明との関連において、用語「ヘテロアルキル」は、(直線状、環状又は分枝状)アルキル鎖を表し、ここで、該アルキル鎖は、任意の位置において、0、S、N、P、Si、Cl、F、Br及びIなどから独立して選択される1個以上のヘテロ原子、又は、カルボキサミド、カルボン酸エステル、ホスホン酸エステル、リン酸エステル、二重結合若しくは三重結合、カルバメート、尿素、チオ尿素、チオカルバメート、オキシム、シアノ、カルボキシル及びカルボニルなどから独立して選択される1個以上の基を含んでいるか又はそれらで置換されている。
【0079】
Ar上の各R4置換基は、同一であっても又は異なっていてもよく、そして、独立して、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルコキシ、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、シアノ又はハロゲンなどから選択される。
【0080】
R4は、好ましくは、小置換基、例えば、水素、メチル、エチル、エトキシ、メトキシ、並びに、他の、C1-C6の直鎖、環状若しくは分枝鎖のアルキル及びヘテロアルキルなどから選択される。
【0081】
nは、ゼロ又は正の整数である。
【0082】
R7及びR8は、独立して、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、シアノ又はハロゲンなどから選択される。
【0083】
R5は、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールなどから選択される。
【0084】
R6は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールなどから選択される。
【0085】
R1は、ポリマーである。
【0086】
適切なポリマーの非限定的な例は、ポリアルキルオキシをベースとするポリマー、例えば、ポリ(プロピレングリコール)又はポリ(エチレングリコール)、デキストラン、キトサン、ヒアルロン酸及び誘導体、アルギナート、キシラン、マンナン、カラギーナン、アガロース、セルロース、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)及び炭水化物をベースとする他のポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(オキサゾリン)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ウレタン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、例えば、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)(HMPA)、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、例えば、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(有機ホスファゼン)、ポリ(シロキサン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(エステル)、例えば、ポリ(乳酸)又はポリ(グリコール酸)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(アミノ酸)、例えば、ポリ(グルタミン酸)、コラーゲン、ゼラチン、コポリマー、グラフトコポリマー、架橋ポリマー、ヒドロゲル、並びに、上記で挙げたポリマーに由来するブロックコポリマーである。
【0087】
ヒドロゲルは、大量の水を吸収している親水性又は両親媒性の三次元高分子網状組織であると定義される。この網状組織は、ホモポリマー又はコポリマーで構成され、共有結合性の化学的又は物理的(イオン性、疎水性相互作用、絡み合い)架橋が存在していることに起因して不溶性である。架橋により、網状組織構造及び物理的一体性がもたらされている。ヒドロゲルは、水との熱力学的な適合性を示すが、それにより、水性媒体中で膨潤することができる(以下のものを参照されたい:N.A. Peppas, P. Bures, W. Leobandung、H. Ichikawa、Hydrogels in pharmaceutical formulations, Eur. J. Pharm. Biopharm. 2000, 50, 27-46)。その網状組織の鎖は、細孔が存在し且つその細孔のかなりの割合は1〜1000nmの寸法を有するようにつながっている。特定の重合条件を選択することにより、当該ヒドロゲルは、無定形のゲルの形態で得ることができるか又はビーズ状樹脂として得ることができる。そのような柔らかいビーズは、1〜1000μmの寸法を有し得る。
【0088】
ヒドロゲルは、上記で挙げたポリマー及びコポリマーから合成することが可能であり、また、文献(W.E. Hennink and C.F. van Nostrum, Adv. Drug Del. Rev. 2002, 54,13-36)に記載されているように、縮合反応や付加反応などのような化学反応により、ラジカル重合、アニオン重合又はカチオン重合によって、化学的に架橋することができるか又は物理的に架橋することができる。
【0089】
さらなる例には、分岐ポリマー及び高分岐ポリマーなどがある。そのようなポリマーの例としては、デンドリマー及びほかの高密度スターポリマーなどを挙げることができる(R. Esfand, D.A. Tomalia, Drug Discov Today, 2001, 6(8), 427-436;P.M. Heegaard, U. Boas, Chem. Soc. Rev. 2004(33(1), 43-63;S.M. Grayson, J.M. Frechet, Chem. Rev. 2001, 101(12), 3819-3868)。
【0090】
R1は、タンパク質などのような生体高分子であることもできる。そのようなポリマーの非限定的な例としては、アルブミン、抗体、繊維素、カゼイン及び他の血漿タンパク質などを挙げることができる。
【0091】
各R1ポリマーは、本明細書に記載されている第二のプロドラッグリンカー又は当業者には既知の任意の別のリンカーとのコンジュゲーションにより該ポリマーに結合させた1個以上の生物学的活性物質を有し得る。該ポリマーは、さらなる置換基を有することも可能であり、また、スペーサー成分Xに結合するように官能基化することも可能である。そのような官能基の非限定的な例には、カルボン酸及び活性化誘導体、アミノ、マレイミド、チオール、スルホン酸及び誘導体、カーボネート及び誘導体、カルバメート及び誘導体、ヒドロキシル、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン、イソシアネート、イソチオシアネート、リン酸及び誘導体、ホスホン酸及び誘導体、ハロアセチル、ハロゲン化アルキル、アクリロイル、アリール化剤、例えば、フッ化アリール、ヒドロキシルアミン、ジスルフィド、例えば、ピリジルジスルフィド、ビニルスルホン、ビニルケトン、ジアゾアルカン、ジアゾアセチル化合物、エポキシド、オキシラン並びにアジリジンなどを挙げることができる。
【0092】
R1ポリマーについての好ましい官能基としては、限定するものではないが、チオール、マレイミド、アミノ、カルボン酸及び誘導体、カーボネート及び誘導体、カルバメート及び誘導体、アルデヒド並びにハロアセチルなどを挙げることができる。
【0093】
特に好ましい官能基としては、チオール、マレイミド、アミノ、カルボン酸及び誘導体、カルバメート及び誘導体、並びに、カーボネート及びその誘導体などを挙げることができる。
【0094】
XとR1の間で形成させる適切な結合又は基の非限定的な例としては、ジスルフィド、S-スクシンイミド、アミド、アミノ、カルボン酸エステル、スルホンアミド、カルバメート、カーボネート、エーテル、オキシム、ヒドラゾン、尿素、チオ尿素、ホスフェート及びホスホネートなどを挙げることができる。
【0095】
XとR1の間で形成させる好ましい結合又は基には、S-スクシンイミド、アミド、カルバメート及び尿素などがある。
【0096】
好ましくは、R1ポリマーは、哺乳動物において、充分に水和しており、また、分解可能又は排泄可能であり、無毒性且つ非免疫原性である。好ましいR1ポリマーとしては、「Nektar Inc. 2003 catalog "Nektar Molecule Engineering - Polyethylene Glycol and Derivatives for Advanced PEGylation"」に記載されているポリエチレングリコール試薬及びポリエチレングリコールなどのようなポリアルコキシをベースとするポリマー、分岐、高分岐、架橋ポリマー及びヒドロゲル、並びに、アルブミンなどのようなタンパク質などを挙げることができる。
【0097】
Wは、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキル、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールなどから選択される。
【0098】
Wは、好ましくは、無毒性の、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル又はヘテロアルキルから選択される。
【化6】
【0099】
の好ましい変形態様は、
【化7】
である。
【化8】
【0100】
の特に好ましい変形態様は、
【化9】
【0101】
であり、これらは、下記式:
【化10】
【0102】
で表される高分子プロドラッグを形成する。
【0103】
式(Iaa)及び式(Iba)において、R6は、Nu-Wであることも可能である。
【0104】
少なくとも1個のNuは、Nu-Wに存在している。
【0105】
Nuは、求核性成分であり、これは、
【化11】
【0106】
のカルボニル炭素において求核攻撃することが可能であり、従って、分子内触媒又は環化によりマスキング基の開裂を触媒することが可能である(図8)。図8は、マスキング基が分子内環化により開裂される、式(Ia)又は式(Ib)による例を示している。Nuが分子内触媒によりマスキング基の開裂のみを触媒する場合、該マスキング基の環状生成物は形成されない。
【0107】
好ましい求核性成分としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、チオール、カルボン酸、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン及び窒素含有ヘテロアリールなどを挙げることができる。特に好ましい求核性成分としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基及び第三級アミノ基などを挙げることができる。該マスキング基の開裂を効果的に触媒するために、求核性成分NuとY2の間の間隔は、好ましくは、3個の原子〜15個の原子である。さらに好ましくは、NuとY2の間の間隔は、4個の原子〜10個の原子である。少なくとも1個の該求核性成分NuをWのいずれか(例えば、Wの末端又は中央)に結合させ得るか、又は、少なくとも1個の該求核性成分NuをWの一部とすることができる。
【0108】
該マスキング基:
【化12】
【0109】
の好ましい変形態様は、独立に、
【化13】
【0110】
から選択され、ここで、
【化14】
【0111】
は、第一級、第二級又は第三級のアミン求核性成分Nuを形成している。
【0112】
これらの好ましい変形態様により、下記式:
【化15】
【0113】
で表される高分子プロドラッグが形成される。
【0114】
R9及びR10は、独立して、水素、置換若しくは非置換のアルキル若しくはヘテロアルキル、又は、置換若しくは非置換のアリール若しくはヘテロアリールから選択される。
【0115】
該マスキング基:
【化16】
【0116】
の特に好ましい変形態様は、
【化17】
【0117】
から選択される。
【0118】
好ましくは、R9、R10、R11及びR12は、独立して、水素、又は、置換若しくは非置換のアルキルから選択され、R7及び/又はR8は、水素ではない。
【0119】
R6は、さらにまた、
【化18】
【0120】
であってもよく、また、R6は、好ましくは、水素ではない。
【0121】
驚くべきことに、該マスキング基内に求核性成分Nuが存在していない場合、該マスキング基が前記アミン含有生物学的活性成分を不可逆的に修飾し得ることが見いだされた。実施例のところで示されているように、本発明には包含されないペンタノイルマスキング基(求核性成分を含んでいないという理由による)を有している高分子プロドラッグからの生理活性成分インスリンの放出に際して、インスリン分子の約30%がアシル転位により該マスキング基で修飾された。マスキング基からのアシル転位に対する求核性成分として作用する付加的な遊離アミノ基をDが含んでいるこの修飾の例の機構は、図9に示してある。
【0122】
式(Ia)又は式(Ib)のArは、複数の置換基を有する芳香族炭化水素又は複数の置換基を有する芳香族ヘテロ環である。芳香族であるためには、π電子の数はヒュッケル則(4n+2)を満たさなければならず、また、当該環は平面的でなければならない。多くの種類のさまざまな化合物がこれらの基準を満たし、従って、それらは、式(Ia)又は式(Ib)のArとして適している。非限定的な好ましい芳香族成分としては、以下のものなどがある。
【化19】
【0123】
ここで、Wは、互いに独立して、O、N又はSである。
【0124】
式(Ia)におけるY2と
【化20】
【0125】
又は、式(Ib)におけるY2と
【化21】
【0126】
は、1,4-除去、又は、1,6-除去、又は、1,(4+2p)(ここで、p=2、3、4又はそれ以上)除去が起こり得るように、当該芳香環上に配置されていなければならない(上記を参照されたい)。例えば、6員環の場合、置換基は、オルト又はパラに配置されていなければならない。
【0127】
Arについての好ましい成分は、単環式及び二環式の芳香族炭化水素又は芳香族ヘテロ環である。
【0128】
特に好ましい成分は、単環式の5員又は6員の芳香族炭化水素又は芳香族ヘテロ環である。
【0129】
該高分子プロドラッグの一般的な合成手順
本発明の高分子プロドラッグの代表的な例の合成については、実施例のところで記載してある。
【0130】
本発明のプロドラッグは、種々の異なった方法で調製することができる。図10には、式(Ia)で表される本発明の高分子プロドラッグの一般的な合成経路が示してある。
【0131】
第一の方法では、出発物質(II)をマスキング基
【化22】
【0132】
でアシル化することにより中間体(III)を提供する。そのために、X又はNuは、可逆的な保護基PG1で保護しなければならない場合もある。適切な保護基は、「TW Greene, P.G.M. Wuts, Protective groups in organic synthesis, 1999, John Wiley & Sons, 3rd ed」に記載されている。中間体(III)から(Iaa)を得るために、2種類の代替的な経路を用いることができる。第一の経路では、中間体(III)をクロロギ酸4-ニトロフェニル又はジスクシニルカーボネートなどの活性化剤で活性化して、(IV)を生成させる。活性化された中間体(IV)の脱離基を置き換えることによりアミン含有薬物分子を(IV)に結合させて、(V)を得る。例えば中間体(V)をトリフルオロ酢酸又はDTT(適用可能な場合)などの試薬で処理することにより、Xを脱保護し、その後、脱保護された中間体(V)をポリマーR1と反応させて、高分子プロドラッグ(Iaa)を得る。
【0133】
第二の経路では、(適用可能な場合)Xを脱保護した後、ポリマーR1を最初に中間体(III)に結合させて中間体(VI)を形成させる。活性化段階に付した後、中間体(VII)を形成させる。(VII)をアミン含有薬物分子と反応させて、高分子プロドラッグ(Iac)を形成させる。
【0134】
第二の方法では、クロロギ酸4-ニトロフェニルなどの活性化剤で出発物質(II)を活性化することにより中間体(VIII)を提供する。そのために、Y2及び/又はXは、保護基PG2及び/又はPG1で保護しなければならない場合もある。アミン含有薬物を中間体(VIII)と反応させて、(IX)を形成させる。第一の経路では、(IX)のY2を選択的に脱保護し、アシル化して、中間体(V)を形成させ、これを、上記で記載したようにさらに処理して、(Iaa)とする。第二の経路では、Xを選択的に脱保護し、ポリマーR1と反応させて、中間体(X)を形成させる。次いで、(X)のY2を脱保護し、アシル化して、高分子プロドラッグ(Iac)を形成させる。
【0135】
第三の方法では、出発物質(II)をポリマーR1と反応させて、中間体(XI)を形成させる。1つの経路では、中間体(XI)をアシル化して中間体(VI)を形成させることができる。これを上記で記載したように処理して、高分子プロドラッグ(Iaa)を形成させる。第二の経路では、Y2を保護基PG2で保護し、活性化し、アミン含有薬物分子と反応させて、(X)を形成させる。次いで、中間体(X)を上記で記載したように処理して、高分子プロドラッグ(Iac)を形成させる。
【0136】
記載した全ての方法に関し、Y3などのさらなる官能基又はNu-W内に存在している求核性成分を、適切な保護基で保護しなければならない場合もある。
【0137】
式(Ib)で表される高分子プロドラッグは、図10において、(II)の代わりに出発物質(IIb)を使用して、式(Ia)で表されるプロドラッグについて上記で記載した方法で調製することができる。
【化23】
【0138】
当然のことながら、記載したような保護基又は脱離基を有し、対応する高分子プロドラッグの合成に使用される、ここで概説した本発明によるリンカー構造は、本発明の範囲内にあると見なされる。
【0139】
分子療法における高分子プロドラッグの適用
高分子カスケードプロドラッグに関し、第一の一時的結合の開裂動力学は、ヒトの血液循環内の条件(pH7.4, 37℃)下で進行するのが望ましい。最も重要なことは、第一の一時的結合の開裂は、加水分解に基づくべきであるということであり、また、酵素類、塩類又は結合タンパク質類などのようなヒトの血液循環内存在している化学的物質又は生化学的物質又は物理化学的物質への依存性は全く示さないか又は極限られた依存性しか示すべきではないということである。
【0140】
マスキング基と活性化基を連結している第一の一時的結合の開裂速度及びその血液成分への依存性が、該マスキング基内に存在していて対応する一時的結合に対して特定の間隔に位置している求核性官能基(例えば、第一級アミン、第二級アミン又は第三級アミン)が介在する隣接基効果によって制御することができるということが見いだされた。マスキング基がこのように構築されている場合、該求核性成分が寄与する分子内反応により、該結合の動力学が規定される(図5及び図8)。
【0141】
本発明の高分子プロドラッグの主な有利点は、それらの大部分が非酵素的に開裂されること:適切に緩衝されたpH7.4のヒト血漿(水性バッファー濃度50%未満)中の該プロドラッグの半減期が、酵素を含んでいないpH7.4のバッファー中の該プロドラッグの半減期の少なくとも50%であることである。
【0142】
このような特徴を有することにより、生体への投与後の放出速度のよりよい予測と制御が可能となり、患者間の可変性が小さくなる。
【0143】
Antzczakら、Shabatら、及び、Leeらの上記実施例に記載されているようなマスキング基の除去の酵素依存性とは対照的に、マスキング基が酵素非依存的な自己脱離特性を有している場合、放出速度をより高度なレベルで制御することができる。
【0144】
本発明のマスキング基は、少なくとも1個の求核性成分Nuを含んでいる。このマスキング基の構造的特徴(例えば、アミン基の求核性及び環形成能など)は、プロドラッグの開裂速度を正確に調節するために、系統的に最適化することができる。図8に図式的に示されているように、分子間反応よりも分子内反応の方が一般に好ましいという事実により、アンマスキングとそれに続く転位をもたらすそのような分子内反応は、酵素からは高度に独立している。
【0145】
本発明の別の実施形態では、プロドラッグ開裂の酵素レベルへの非依存性は、図7に示されているように、立体要求性キャリヤー(sterically demanding carrier)基を含んでいるプロドラッグを提供することにより達成される。
【0146】
そのような、立体要求性キャリヤー基による立体的保護又はカプセル化は、キャリヤーポリマーの分岐構造、高分岐構造、架橋構造又は自己組織化構造により付与され得る。そのようなポリマーは、例えば、デンドリマー、高密度スターポリマー又はビーズ形のナノ粒子及びマイクロ粒子又は無定型ゲルなどにおけるような、高密度に詰め込まれた分子容を形成する傾向を有する。薬物へのポリマーキャリヤーの結合がポリマーキャリヤーの内部に位置している場合、そのように結合された薬物は、効率よくカプセル化されて酵素の攻撃から保護される。この場合、該ポリマーによる立体障害により、酵素の接近が防止され、一時的結合の酵素による開裂が防止される。
【0147】
さらに別の実施形態では、プロドラッグの酵素非依存的開裂は、分子内自己脱離性マスキング基を、カプセル化する高分岐キャリヤー又は架橋キャリヤー又は自己組織化キャリヤーと組み合わせることにより達成される。
【0148】
本発明のさらなる有利点は、修飾されていない生物学的活性成分の放出である。該生物学的活性成分が、タンパク質内のリシン残基のアミノ基のようなさらなる反応性官能基を含んでいる場合、マスキング基と生物学的活性成分の間の不要な副反応が起こり得る。生物学的活性成分のそのような反応性官能基は、マスキング基と反応することが可能であり、それにより安定な共有結合を形成し、そして、結果として、修飾された生物学的活性成分を放出する。この潜在的な副反応は、図9に図式的に示してある。そのような副反応の生起については、マスキング基内に求核性成分Nuを含まない、Antczakら又はLeeらによって記載されているペンタノイル残基のような単純なマスキング基を有する本発明には包含されない高分子プロドラッグを用いて、実施例のところで示してある。このリンカー系における該副反応は、求核性成分Nuを含んでいる分子内で活性化されたマスキング基を有する本発明の高分子プロドラッグを使用することにより抑制することができる(実施例を参照されたい)。
【0149】
酵素非依存的な放出の制御により、カプセル化する必要なく、デポー製剤が可能となる。これまで、大きな細孔径を有するヒドロゲルなどのような多くの種類の生体適合性材料は、カプセル化特性が欠如しているために、デポー製剤には使用することができなかった。そのような充分に水和している機械的に柔らかい生体適合性材料からは、生物学的活性成分は、大部分の治療用途について、速く放出されすぎるであろう。本発明において記述されているプロドラッグリンカーと組み合わせた場合、放出は、専らリンカー開裂動力学により制御されて、ポリマーキャリヤー自体の化学的又は酵素的分解を必要とはしないので、該キャリヤー材料は、その生体適合特性について最適化され得る。
【0150】
放出速度は、実質的に非酵素的化学的反応により制御され、該反応は、該リンカーの分子構造に依存する。例えば1つ以上の位置における置換基を変えることにより、例えばカスケードプロドラッグにおけるマスキング基を変えることにより、化学構造を系統的に又はランダムに修飾することで、種々の放出速度を有するプロドラッグリンカーを形成させることができる。従って、さまざまなプロドラッグリンカーを作り出すことが可能であり、また、所与の薬剤の適用又は所与の治療用途による要求に照らして、速く開裂するプロドラッグリンカー又はゆっくりと開裂するプロドラッグリンカーを選択することが可能である。
【0151】
本発明の一部である別の有利な特徴は、該ポリマーキャリヤーが、二重又はカスケードプロドラッグ放出機構に関与している活性化成分に、安定な共有結合で結合しているということである。本発明の一部として、該活性化成分は、薬物の放出後にもポリマーキャリヤーに結合したままで残っており、従って、環境中に拡散することがない。ポリマーキャリヤーが活性化基に永久的に結合していることにより、活性化成分の全ての副反応性が大いに低減され、また、好ましくない毒性作用の可能性が著しく低減される。当技術分野で知られている別の高分子カスケードプロドラッグにおいては、薬物に加えて、活性化成分も放出される。カスケードプロドラッグにおいて用いられる分子転位機構に起因して、活性化成分が高い反応性を有する形態で放出されて周囲の生体分子に直接的な損傷を引き起こし得るか、又は、活性化成分の潜在的に毒性な誘導体がインビボで形成され得る。
【0152】
図面の説明
図1は、キャリヤー結合プロドラッグを示している。
【0153】
図2は、酵素依存性キャリヤー結合プロドラッグを示している。
【0154】
図3は、マスキング基がキャリヤーの一部であるカスケードプロドラッグを示している。
【0155】
図4は、マスキング基がキャリヤーの一部である酵素依存性カスケードプロドラッグを示している。
【0156】
図5は、マスキング基がキャリヤーから分離している自己開裂性カスケードプロドラッグを示している。
【0157】
図6は、マスキング基がキャリヤーから分離している酵素依存性カスケードプロドラッグを示している。
【0158】
図7は、キャリヤーがマスキング基を立体的に保護しているカスケードプロドラッグを示している。
【0159】
図8は、分子内環化によるマスキング基の開裂を示している。
【0160】
図9は、高分子プロドラッグの活性化による可能な副反応を示している。
【0161】
図10は、一般的な合成方法を示している。
【0162】
図11は、プロドラッグから放出されたインスリン分子の質量スペクトルを示している。
【実施例】
【0163】
実施例
材料
Fmoc-アミノ酸、樹脂及びPyBOPは、Novabiochemから購入した。それらの名前を挙げるときはそのカタログに従う。Fmoc-Ado-OHは、Neosystemから入手した。それ以外の化学薬品は全て、Sigma Aldrichから購入した。組換えヒトインスリンは、ICN Biomedicals(USA)製のものであった。Maleimide-PEG5kは、Nektar(USA)から入手した。5-(及び、-6)-カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(異性体混合物)は、Molecular Probesから入手した。
【0164】
固相合成反応媒体
固相合成は、NovaSyn TG Sieberアミド樹脂(ローディング 0.17mmol/g)、又は、塩化2-クロロトリチル樹脂(ローディング 1.4mmol/g)で実施した。ポリプロピレン製フリットを具備したシリンジを反応容器として用いた。
【0165】
fmocで保護されているアミノ酸についての標準的なカップリングサイクル
fmoc保護基を除去するために、該樹脂を、2/2/96(v/v/v)ピペリジン/DBU/DMFと一緒に繰り返し撹拌し(3回,各4分間)、DMFで洗浄した(6回)。
【0166】
樹脂上における遊離アミノ酸へのfmoc保護アミノ酸のカップリングは、該樹脂を、DMF中で、遊離アミノ基に対して3当量(eq)のfmoc-アミノ酸と3eqのPyBOPと6eqのDIEAと一緒に60分間撹拌することにより行なわせた。
【0167】
最後に、該樹脂をDMFで繰り返し洗浄した(5回)。
【0168】
TentaGel Sieberアミド樹脂のための標準的な開裂プロトコル
合成が完了した時点で、該樹脂をDCMで洗浄し、減圧下に乾燥させ、97/2/1(v/v)DCM/TES/TFAで繰り返し処理した(5回)。蒸発させた後、分取RP-HPLC(Waters 600)で化合物を精製した。
【0169】
塩化2-クロロトリチル樹脂のための標準的な開裂プロトコル
合成が完了した時点で、該樹脂をDCMで洗浄し、減圧下に乾燥させ、65/35(v/v)HFIP/DCMで30分間2回処理した。溶出液を合した後、揮発性成分を蒸発させた。
【0170】
分析
質量分析(MS)は、Waters ZQ 4000 ESI装置で行った。必要に応じ、Waters software MaxEntによりスペクトルを解釈した。
【0171】
サイズ排除クロマトグラフィーは、Superdex 200カラムを備えたAmersham Bioscience AEKTAbasicシステム(Amersham Bioscience)で行った。Bruker AC300に、NMRスペクトルを記録した。
【0172】
エステル結合で結合したマスキング基を有する式(Ia)の高分子プロドラッグの合成の概略
【化24】
【0173】
カーバメート結合で結合したマスキング基を有する式(Ia)の高分子プロドラッグの合成
【化25】
【0174】
カーバメート結合で結合したマスキング基を有する式(Ib)の高分子プロドラッグの合成
【化26】
【0175】
化合物(2)の合成
【化27】
【0176】
Mmt-クロリド(1eq)及びメルカプトプロピオン酸(1.1eq)をTFAに溶解させ、30分間インキュベーションした。減圧下に溶媒を除去した。生成物をピリジンに溶解させ、水で希釈し、酢酸で酸性化し、エーテルで抽出した。エーテル相を分離し、Na2SO4で脱水した。減圧下に溶媒を除去し、生成物(2)をRP-HPLCで精製した。
【0177】
化合物(3a)及び化合物(3b)の合成
【化28】
【0178】
オクトパミン塩酸塩(1a)(2eq)、DIEA(4eq)及びPyBOP(1eq)をDMFに溶解させ、(2)(1eq)を添加し、その混合物を室温で50分間反応させた。酢酸(7eq)を添加した後、生成物(3a)をRP-HPLCで精製した。
【0179】
(3b)は、ノルメタネフリン塩酸塩(1b)から上記と同様にして合成した。
【0180】
(3a):MS [M+Na]+=536(MW+Na 計算値=536.2g/mol)
(3b):MS [M+Na]+=566(MW+Na 計算値=566.2g/mol)
【0181】
メルカプトチアゾリド(4)の合成
【化29】
【0182】
2-メルカプトチアゾリン及びトリエチルアミン(1.5eq)を乾燥THFに溶解させ、塩化ペンタノイル(1eq)を添加した。その混合物を、不活性雰囲気下、50℃で1時間撹拌し、室温まで冷却した。0.5N水性HClを添加した。有機相を分離し、Na2SO4で脱水した。減圧下に濃縮した後、残渣を、移動相として1/1のヘプタン/酢酸エチルを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。メルカプトチアゾリド(4)を粘性の黄色の油状物として採集した。
【0183】
(4) Rf(ヘプタン/酢酸エチル 1:1)=0.7
【0184】
化合物(5a)及び化合物(5b)の合成
【化30】
【0185】
一般的な合成プロトコル:
1gの塩化2-クロロトリチル樹脂(ローディング 1.6mmol/g)を、5mLのDCM/DMF(1/1)中で、850mg(2.4mmol)のFmoc-Ile-OH及び840μL(4.8mmol)のDIEAと一緒に1時間インキュベーションした。fmocを除去し、該樹脂をDMFで洗浄した後、標準的なカップリング方法に従い、boc-アミノ酪酸を0.5gの樹脂にカップリングさせた。97/l/2(v/v)DCM/TFA/TESを用いて、45分間、化合物(5a)を該樹脂から開裂させた。ピリジンで中和した後、減圧下に溶媒を除去し、(5a)をRP-HPLCで精製した。
【0186】
(5b)は、boc-アミノヘキサン酸から上記と同様にして合成した。
【0187】
(5a) MS [M+Na]+=339.2(MW+Na 計算値=339.4g/mol)
(5b) MS [M+Na]+=367.4(MW+Na 計算値=367.5g/mol)
【0188】
化合物(6a)の合成
【化31】
【0189】
メルカプトチアゾリド(4)(1eq)、フェノール(3a)(4eq)及びDMAP(4eq)を、窒素雰囲気下、DCM中で2時間還流した。酢酸で中和した後、減圧下に溶媒を除去し、生成物(6a)をRP-HPLCで精製した。
【0190】
(6a) MS [M+Na]+=620(MW+Na 計算値=620.3g/mol)
【0191】
化合物(6b)〜化合物(6e)の合成
【化32】
【0192】
一般的な合成プロトコル:
DMF中のカルボン酸(5a)(1eq)、フェノール(3b)(1eq)、DIC(1eq)及びDMAP(2eq)を室温で1時間反応させた。酢酸(4eq)を添加した後、生じたカルボン酸エステル(6c)をRP-HPLCで精製した。
【0193】
(6d)は、出発物質として(5b)及び(3b)を使用し、上記と同様にして合成した。
【0194】
(6b)は、Z-Lys(Boc)-OH及び(3b)を使用し、上記と同様にして合成した。
【0195】
(6e)は、(5b)及び(3a)を使用し、上記と同様にして合成した。
【0196】
(6b) MS [M+Na]+=928(MW+Na 計算値=928.6g/mol)
(6c) MS [M+Na]+=864(MW+Na 計算値=864.5g/mol)
(6d) MS [M+Na]+=892(MW+Na 計算値=892.6g/mol)
(6e) MS [M+Na]+=862(MW+Na 計算値=862.6g/mol)
【0197】
化合物(7a)〜化合物(7e)の合成
【化33】
【0198】
一般的な合成プロトコル:
アルコール(6a)(1eq)、クロロギ酸4-ニトロフェニル(10eq)及びDIEA(10eq)を、窒素雰囲気下で、乾燥ジオキサン中、室温で3時間撹拌した。酢酸(25eq)を添加した後、その混合物を7/3(v/v)アセトニトリル/H2Oで希釈し、得られたカーボネート(7a)をRP-HPLCで精製した。
【0199】
(7b)、(7c)、(7d)又は(7e)は、それぞれ、(6b)、(6c)、(6d)又は(6e)から、上記と同様にして合成した。
【0200】
(7a) MS [M+Na]+=785(MW+Na 計算値=785.5g/mol)
(7b) MS [M+Na]+=1093(MW+Na 計算値=1093.7g/mol)
(7c) MS [M+Na]+=1029(MW+Na 計算値=1029.6g/mol)
(7d) MS [M+Na]+=1057(MW+Na 計算値=1057.6g/mol)
(7e) MS [M+Na]+=1027(MW+Na 計算値=1027.6g/mol)
【0201】
化合物(8a)〜化合物(8c)(NαA1-リンカー-インスリン)の合成
【化34】
【0202】
一般的な合成プロトコル:
1/1(v/v)DMSO/DMF中のRh-インスリンを、DMSO中の0.9eqのカーボネート(7a)の溶液と混合した。その溶液をDIEAで塩基性pHに調節し、室温で1.5時間撹拌した。RP-HPLCで精製して、Mmtで保護された中間体を得た。
【0203】
凍結乾燥後、Mmtで保護された上記中間体を95:5(v/v)TFA/トリエチルシランと混合し、5分間撹拌した。窒素流下で揮発性物質を除去した。(8a)をRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。インスリン修飾の位置選択性は、DTT還元及びMS分析により確認した。
【0204】
(8b)又は(8c)は、それぞれ、(7c)又は(7d)から、上記と同様にして合成した。
【0205】
(8a) MS [M+2H]2+=3078.9;[M+3H]3+=2053.2;[M+4H]4+=1540.6(MW 計算値=6158g/mol)
(8b) MS [M+2H]2+=3152.9;[M+3H]3+=2100.6;[M+4H]4+=1575.8(MW 計算値=6302g/mol)
(8c) MS [M+3H]3+=2110.7;[M+4H]4+=1583.7;[M+5H]5+=1266.6(MW 計算値=6330g/mol)
【0206】
化合物(8d)〜化合物(8g)(NεB29-フルオレセイン-NαA1-リンカー-インスリン)の合成
【化35】
【0207】
NεB29-フルオレセインインスリンの合成:
80mg(13.8μmol)のrh-インスリンを4mLの1/1(v/v)DMF/DMSOに溶解させ、40μLのDIEAを添加した。8mg(17μmol)の5-(及び-6)-カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステルを添加し、その溶液を室温で30分間撹拌した。4mLの5/5/1(v/v/v)アセトニトリル/水/酢酸を添加した。生成物であるNεB29-フルオレセインインスリンをRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。コンジュゲーション部位は、1,4-ジチオトレイトールでのNεB29-フルオレセインインスリンの還元、プロテアーゼ消化及びMS分析により確認した。
【0208】
MS:[M+2H]2+=3084.0;[M+3H]3+=2054.6(MW 計算値=6166g/mol)
【0209】
1/1(v/v)DMF/DMSO中のNεB29-フルオレセインインスリンを、DMSO中の0.9eqのカーボネート(7b)の溶液と混合した。その溶液をDIEAで塩基性pHに調節し、室温で3時間撹拌した。RP-HPLCで精製して、Mmtで保護された中間体を得た。
【0210】
凍結乾燥後、該中間体を95/5(v/v)TFA/トリエチルシランに溶解させ、5分間撹拌した。窒素流下で揮発性物質を除去した。(8d)をRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。
【0211】
(8e)、(8f)又は(8g)は、それぞれ、(7c)、(7d)又は(7e)を用いて、上記と同様にして合成した。
【0212】
(8d) MS:[M+2H]2+=3364.1;[M+3H]3+=2242.7;[M+4H]4+=1681.5(MW 計算値=6724g/mol)
(8e) MS:[M+3H]3+=2219.2;[M+4H]4+=1665.9;[M+5H]5+=1332.8(MW 計算値=6660g/mol)
(8f) MS:[M+3H]3+=2229.7;[M+4H]4+=1673.3;[M+5H]5+=1337.7(MW 計算値=6689g/mol)
(8g) MS:[M+3H]3+=2218.7;[M+4H]4+=1664.9(MW 計算値=6659g/mol)
【0213】
化合物(9a)〜化合物(9g)(モノペグ化インスリン化合物)の合成
70μLの1/4(v/v)アセトニトリル/水中500μM(8a)を、7μLの1/4(v/v)アセトニトリル/水中10mMマレイミド-PEG5k及び10μLの0.5Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)と混合し、15分間インキュンベーションした。化合物(9a)を、移動相として10mM HEPESバッファー(pH7.4)、150mM NaCl、3mM EDTA及び0.005% Tweenを用いるSEC(カラム:Superdex 200,流速:0.75mL/分)で精製した。採集した溶出液(約1.5mL)を、放出速度の測定にそのままで直接使用した。
【0214】
(9b)、(9c)、(9d)、(9e)、(9f)又は(9g)は、それぞれ、(8b)、(8c)、(8d)、(8e)、(8f)又は(8g)から、上記と同様にして合成した。
【0215】
(9a)〜(9g):SEC 保持時間:19.5分
【0216】
化合物(11a)及び化合物(11b)の合成
【化36】
【0217】
3,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-アセトフェノン(5.0mmol)(10a)及びCuBr2(1.7g, 7.5mmol)を10mLの酢酸エチルに溶解させ、2時間還流した。濾過により固体状の副生成物を除去した。濾液を蒸発させ、粗製生物(11a)をRP-HPLCで精製した。
【0218】
(11b)は、4-ヒドロキシ-3-メチル-アセトフェノン(10b)(0.75g, 5.0mmol)から、上記と同様にして合成した。
【0219】
(11a):収量 754mg(62%);MS [M+H]+=243.1/245.1(MW+H 計算値=244.1g/mol)
(11b):収量 533mg(47%);MS [M+H]+=229.2/231.1(MW+H 計算値=230.1g/mol)
【0220】
化合物(12a)及び化合物(12b)の合成
【化37】
【0221】
500mgの(11a)(2.06mmol)及び576mg(4.11mmol)のヘキサメチレンテトラミンを20mLのトリクロロメタンに溶解させ、30分間還流した。減圧下に溶媒を除去した。4mLのエタノール及び2mLの濃HClを添加し、得られたスラリーを50℃に4時間加熱した。その混合物を減圧下に濃縮し、アセトニトリル/水で希釈し、(12a)をRP-HPLCで精製した。
【0222】
(12b)は、472mg(2.06mmol)の(IIb)から、上記と同様にして合成した。
【0223】
(12a):収量 TFA塩として547mg(81%);MS [M+Na]+=202.2(MW+Na 計算値=202.2g/mol)
(12b):収量 TFA塩として455mg(70%);MS [M+Na]+=188.2(MW+Na 計算値=188.2g/mol)
【0224】
化合物(13)の合成
【化38】
【0225】
500mg(1.71mmol)の(12a)(TFA塩)を10mLの1/1(v/v)メタノール/水に溶解させ、129mg(3.41mmol)のNaBH4を添加した。その混合物を、室温で30分間撹拌した。0.5mLの酢酸を添加し、(13)をRP-HPLCで精製した。
【0226】
(13):収量 TFA塩として313mg(62%);MS [M+Na]+=204.2(MW+Na 計算値=204.2g/mol);
NMR(300MHz, DMSO-d6)δ[ppm]=8.25(s, 1H, フェノール), 7.84(bs, 3H, NH3+), 6.89(s, 2H, CHar), 5.85(d, 1H, ヒドロキシル, J=3.7Hz), 4.62(m, 1H, CHベンジル), 2.93(m, 1H, CHa), 2.80(m, 1H, CHb), 2.17(s, 6H, CH3)
【0227】
化合物(14a)〜化合物(14d)の合成
【化39】
【0228】
(13)(TFA塩, 159mg, 0.541mmol)を、化合物(3a)について記載されているように化合物(2)にカップリングさせて、(14a)を生成させた。
【0229】
(14b)又は(14c)は、それぞれ、シネフリン(335mg, 2.00mmol)又はメタネフリン(HCl塩, 281mg, 1.20mmol)を用いて、上記と同様にして合成した。シネフリン(335mg, 2.3mmol)を上記と同様に3-トリチルスルファニル-プロピオン酸にカップリングさせて、(14d)を生成させた。
【0230】
(14a):収量 254mg(87%);MS [M+Na]+=564.7(MW+Na 計算値=564.3g/mol)
(14b):収量 760mg(72%);MS [M+Na]+=550.2(MW+Na 計算値=550.3g/mol)
(14c):収量 530mg(80%);MS [M+Na]+=580.4(MW+Na 計算値=580.4g/mol)
(14d):収量 567mg(49%);MS [M+Na]+=520.5(MW+Na 計算値=520.7g/mol)
【0231】
化合物(15c)、化合物(15d)及び化合物(15f)の合成
【化40】
【0232】
一般的な合成プロトコル:
1gの塩化2-クロロトリチル樹脂(ローディング 1.4mmol/g)を、DCM中で、N,N'-ジメチルプロパン-1,3-ジアミン((15c)を合成する場合)又はN,N'-ジエチル-プロパン1,3-ジアミン((15d)を合成する場合)又はN,N'-ジメチル-エタン-1,2-ジアミン(4eq)((15f)を合成する場合)と一緒に1時間インキュベーションした。該樹脂をDMFで洗浄した後、アミンを、1/1/2(v/v/v)無水酢酸/ピリジン/DMFで14時間アセチル化した。その樹脂をTHFで洗浄し、乾燥させた。THF中に懸濁させた該樹脂に、LiAlH4(THF中1M, 4eq)を滴下して加えた。得られた懸濁液を、窒素雰囲気下、45℃で3時間撹拌した。冷却後、ロッシェル塩水溶液を添加し、樹脂を分離し、乾燥させた。2/1(v/v)HFIP/DCM(2×30分)で化合物を樹脂から開裂させた。揮発性成分を蒸発させた。生成物(15c)、生成物(15d)又は生成物(15f)は、それ以上精製することなく次の段階で使用した。
【0233】
(15c) MS [M+H]+=131.2(MW=130.1g/mol)
(15d) MS [M+H]+=159.2(MW=158.1g/mol)
(15f) MS [M+H]+=117.1(MW=116g/mol)
【0234】
化合物(16a)〜化合物(16f)及び化合物(16i)の合成
【化41】
【0235】
(16a) R1=R2=R5=Me、R6=2-(ジメチルアミノ)エチル、R7=H、R4=Mmt
(16b) R1=OMe、R2=H、R5=Et、R6=2-(ジエチルアミノ)エチル、R7=H、R4=Mmt
(16c) R1=OMe、R2=H、R5=Me、R6=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル、R7=Me、R4=Mmt
(16d) R1=R2=H、R5=Me、R6=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル、R7=Me、R4=Mmt
(16e) R1=OMe、R2=H、R5=Et、R6=3-(ジエチルアミノ)プロピル、R7=Me、R4=Mmt
(16f) R1=R2=H、R5=Et、R6=3-(ジエチルアミノ)プロピル、R7=Me、R4=Mmt
(16i) R1=R2=H、R5=Et、R6=2-(ジエチルアミノ)エチル、R7=Me、R4=Trt
【0236】
(14a)(120mg, 0.222mmol)を1.5mLの乾燥THEに溶解させた。クロロギ酸p-ニトロフェニル(45mg, 0.222mmol)及びDIEA(113μL, 0.665mmol)を添加し、その混合物を室温で30分間撹拌した。(15a)(N,N,N'-トリメチル-エチレン-1,2-ジアミン)(72μL, 0.554mmol)を添加し、撹拌を30分間継続した。減圧下に溶媒を除去し、100μLのAcOHを添加し、(16a)をRP-HPLCで精製した。
【0237】
(16b)は、(3b)(80mg, 0.15mmol)及び(15b)(N,N,N'-トリエチル-エチレン-1,2-ジアミン)(55mg, 0.38mmol)から、上記と同様にして合成した。
【0238】
(16c)又は(16d)は、それぞれ、(14c)(56mg, 0.1mmol)及びジアミン(15c)から、又は、(14b)(53mg, 0.1mmol)及びジアミン(15c)から、上記と同様にして合成した。
【0239】
(16e)又は(16f)は、それぞれ、(14c)(56mg, 0.1mmol)及びジアミン(15d)から、又は、(14b)(53mg, 0.1mmol)及びジアミン(15d)から、上記と同様にして合成した。
【0240】
(16i)は、(14d)(350mg, 0.7mmol)及び(15b)(N,N,N'-トリエチル-エチレン-1,2-ジアミン)(180μL, 1mmol)から、上記と同様にして合成した。
【0241】
(16a):収量 TFA塩として120mg(69%);MS [M+Na]+=692.4(MW+Na 計算値=692.9g/mol)
(16b):収量 TFA塩として48mg(40%) ;MS [M+Na]+=736.3(MW+Na 計算値=736.4g/mol)
(16c):収量 TFA塩として8mg(10%) ;MS [M+Na]+=736.4(MW+Na 計算値=736.4g/mol)
(16d):収量 TFA塩として20mg(25%) ;MS [M+Na]+=706.3(MW+Na 計算値=706.3g/mol)
(16e):収量 TFA塩として2mg(3%) ;MS [M+Na]+=764.6(MW+Na 計算値=764.4g/mol)
(16f):収量 TFA塩として6mg(8%) ;MS [M+Na]+=734.4(MW+Na 計算値=734.3g/mol)
(16i):収量 TFA塩として152mg(28%);MS [M+Na]+=690.5(MW+Na 計算値=690.9g/mol)
【0242】
化合物(17)の合成
【化42】
【0243】
アミン(12b)(TFA塩)を、化合物(3a)について記載されているように、化合物(2)にカップリングさせた。
【0244】
(17):収量 608mg(74%);MS [M+Na]+=548.3(MW+Na 計算値=548.7g/mol)
【0245】
化合物(18a)及び化合物(18b)の合成
【化43】
【0246】
(18a) R1=R5=Me、R2=H、R6=3-(ジメチルアミノ)プロピル
(18b) R1=R5=Me、R2=H、R6=2-(N-エチル-N-メチルアミノ)エチル
【0247】
383mg(0.729 rnmol)の(17)を、クロロギ酸p-ニトロフェニル及び、それぞれ、N,N,N'-トリメチル-プロパン-1,3-ジアミン(15e)又は(15f)と反応させ、化合物(16a)について記述したようにして、(18a)又は(18b)を生成させる。
【0248】
(18a):収量 TFA塩として287mg(50%);MS [M+Na]+=690.7(MW+Na 計算値=690.9g/mol)
(18b):収量 TFA塩として148mg(26%);MS [M+Na]+=690.9(MW+Na 計算値=690.9g/mol)
【0249】
化合物(16g)及び化合物(16h)の合成
【化44】
【0250】
(16g) R1=R5=Me、R2=H、R6=3-(ジメチルアミノ)プロピル
(16h) R1=R5=Me、R2=H、R6=2-(N-エチル-N-メチルアミノ)エチル
(18a)(287mg, 0.367mmol, TFA塩)を5mLのメタノールに溶解させ、NaBH4(41mg, 1.07mmol)を添加した。その混合物を室温で30分間撹拌した。0.5mLの酢酸を添加し、(16g)をRP-HPLCで精製した。
【0251】
(18b)(8mg, 0.010mmol, TFA塩)を上記で記載したのと同様に反応させて、(16h)を生成させた。
【0252】
(16g):収量 TFA塩として201mg(70%);MS [M+Na]+=692.7(MW+Na 計算値=692.9g/mol)
(16h):収量 TFA塩として6mg(77%) ;MS [M+Na]+=692.7(MW+Na 計算値=692.9g/mol)
【0253】
化合物(19a)〜化合物(19i)の合成
【化45】
【0254】
(19a) R1=R2=R5=Me、R6=2-(ジメチルアミノ)エチル、R7=H、R4=Mmt
(19b) R1=OMe、R2=H、R5=Et、R6=2-(ジエチルアミノ)エチル、R7=H、R4=Mmt
(19c) R1=OMe、R2=H、R5=Me、R6=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル、R7=Me、R4=Mmt
(19d) R1=R2=H、R5=Me、R6=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル、R7=Me、R4=Mmt
(19e) R1=OMe、R2=H、R5=Et、R6=3-(ジエチルアミノ)プロピル、R7=Me、R4=Mmt
(19f) R1=R2=H、R5=Et、R6=3-(ジエチルアミノ)プロピル、R7=Me、R4=Mmt
(19g) R1=R5=Me、R2=H、R6=3-(ジメチルアミノ)プロピル、R7=H、R4=Mmt
(19h) R1=R5=Me、R2=H、R6=2-(N-エチル-N-メチルアミノ)エチル、R7=H、R4=Mmt
(19i) R1=R2=H、R5=Et、R6=2-(ジエチルアミノ)エチル、R7=Me、R4=Trt
【0255】
カーボネート(19a)〜カーボネート(19i)は、それぞれ、(16a)〜(16i)から、化合物(7a)について記載したのと同様に合成した。
【0256】
(19a):収量 TFA塩として98mg(72%) ;MS [M+Na]+=857.8(MW+Na 計算値=858.0g/mol)
(19b):収量 TFA塩として6mg(11%) ;MS [M+Na]+=901.8(MW+Na 計算値=901.5g/mol)
(19c):収量 TFA塩として1mg(15%) ;MS [M+Na]+=901.4(MW+Na 計算値=901.5g/mol)
(19d):収量 TFA塩として8mg(29%) ;MS [M+Na]+=871.4(MW+Na 計算値=871.4g/mol)
(19e):収量 TFA塩として0.3mg(18%);MS [M+Na]+=929.4(MW+Na 計算値=929.5g/mol)
(19f):収量 TFA塩として4mg(45%) ;MS [M+Na]}=899.7(MW+Na 計算値=899.6g/mol)
(19g):収量 TFA塩として6mg(6%) ;MS [M+Na]+=857.8(MW+Na 計算値=858.0g/mol)
(19h):収量 TFA塩として0.8mg(11%);MS [M+Na]+=857.7(MW+Na 計算値=858.0g/mol)
(19i):収量 TFA塩として77mg(49%) ;MS [M+Na]+=856.2(MW+Na 計算値=856.0g/mol)
【0257】
化合物(20a)〜化合物(20f)の合成
【化46】
【0258】
20a R1=R2=R5=Me、R6=2-(ジメチルアミノ)エチル、R7=H
20b R1=OMe、R2=H、R5=Et、R6=2-(ジエチルアミノ)エチル、R7=H
20c R1=OMe、R2=H、R5=Me、R6=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル、R7=Me
20d R1=R2=H、R5=Me、R6=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル、R7=Me
20e R1=R5=Me、R2=H、R6=3-(ジメチルアミノ)プロピル、R7=H
20f R1=R5=Me、R2=H、R6=2-(N-エチル-N-メチルアミノ)エチル、R7=H
【0259】
インスリン誘導体(20a)、(20b)、(20c)、(20d)、(20e)又は(20f)は、それぞれ、(19a)、(19b)、(19c)、(19d)、(19g)又は(19h)から、化合物(8a)について記載したのと同様にして合成した。
【0260】
(20a) MS [M+3H]3+=2077.3;[M+4H]4+=1559.2(MW 計算値=6231.3g/mol)
(20b) MS [M+3H]3+=2093.0;[M+4H]4+=1569.6(MW 計算値=6274g/mol)
(20c) MS [M+3H]3+=2090.8;[M+4H]4+=1568.7(MW 計算値=6274g/mol)
(20d) MS [M+3H]3+=2081.3;[M+4H]4+=1561.8(MW 計算値=6244g/mol)
(20e) MS [M+3H]3+=2077.1;[M+4H]4+=1558.2(MW 計算値=6231.3g/mol)
(20f) MS [M+3H]3+=2076.7;[M+4H]4+=1559.3(MW 計算値=6231.3g/mol)
【0261】
化合物(21a)〜化合物(21f)(モノペグ化インスリン誘導体)の合成
【化47】
【0262】
(21a) R1=R2=R5=Me、R6=2-(ジメチルアミノ)エチル、R7=H
(21b) R1=OMe、R2=H、R5=Et、R6=2-(ジエチルアミノ)エチル、R7=H
(21c) R1=OMe、R2=H、R5=Me、R6=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル、R7=Me
(21d) R1=R2=H、R5=Me、R6=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル、R7=Me
(21e) R1=R5=Me、R2=H、R6=3-(ジメチルアミノ)プロピル、R7=H
(21f) R1=R5=Me、R2=H、R6=2-(N-エチル-N-メチルアミノ)エチル、R7=H
【0263】
インスリン誘導体(21a)、(21b)、(21c)、(21d)、(21e)又は(21f)は、それぞれ、化合物(20a)、(20b)、(20c)、(20d)、(20e)又は(20f)から、化合物(9a)について記載したのと同様にして合成した。
【0264】
(21a)〜(21f):SEC保持時間:19.5分
【0265】
化合物(23a)及び化合物(23b)の合成
【化48】
【0266】
ニトロベンゼン中のo-クレゾール(22a)(1eq)、無水コハク酸(1eq)及びAlCl3(3eq)を100℃に1時間加熱した。その反応混合物をHCl/氷に注ぎ、エーテルで抽出した。有機層を1N NaOHで抽出し、水層を濃HClで酸性化した。水層をエーテルで抽出し、そのエーテルを蒸発させた。(23a)をRP-HPLCで精製した。
【0267】
(23b)は、2,6-ジメチルフェノール(22b)から、上記で記載したのと同様にして合成した。
【0268】
(23a):収量 552mg(31%);MS [M+Na]+=231.0(MW+Na 計算値=231.2g/mol);
NMR(300MHz, DMSO-d6)δ[ppm]=12.05(bs, 1H, CO2H), 10.23(s, 1H, フェノールOH), 7.74(s, 1H, CHar), 7.7(d, 1H, CHar, 3JH,H=8.4Hz), 6.86(d, 1H, CHar, 3JH,H=8.4Hz), 3.13(t, 2H, C(O)CH2, 3JH,H=6.4Hz), 2.53(t, 2H, CH2CO2, 3JH,H=6.4Hz), 2.16(s, 3H, CH3)
(23b):収量 166mg(15%);MS [M+Na]+=245.4(MW+Na 計算値=245.2g/mol)
【0269】
化合物(24)の合成
【化49】
【0270】
1.85g(16.02mmol)のシステアミン塩酸塩を15mLのTFAに溶解させ、2.47g(8.01mmol)のMmtClを添加した。その混合物を室温で20分間撹拌した後、減圧下に溶媒を蒸発させた。残渣をジエチルエーテルに溶解させ、飽和水性NaHCO3、1N H2SO4及びブラインで抽出した。溶媒を蒸発させ、(24)をRP-HPLCで精製した。
【0271】
(24):収量 TFA塩として1.11g(30%);TLC(AcOEt/Et3N 99/1), Rf=0.24
【0272】
化合物(25a)及び化合物(25b)の合成
【化50】
【0273】
(23a)(1eq)、HOBt(1.1eq)及びDIC(1eq)をDMFび溶解させ、室温で30分間撹拌した。(24)(TFA塩, 1eq)及びDIEA(3eq)を添加し、その溶液を60分間撹拌した。酢酸を添加し、(25a)をRP-HPLCで精製した。
【0274】
(25b)は、(23b)から、上記で記載したのと同様にして合成した。
【0275】
(25a):収量 552mg(25%);MS [M+Na]+=562.7(MW+Na 計算値=562.7g/mol)
(25b):収量 15mg(40%) ;MS [M+Na]+=576.6(MW+Na 計算値=576.6g/mol)
【0276】
化合物(26a)及び化合物(26b)の合成
【化51】
【0277】
(26a) R1=Me、R2=H、R5=R6=3-(ジメチルアミノ)プロピル
(26b) R1=R2=R5=Me、R6=2-(ジメチルアミノ)エチル
【0278】
267mg(0.495mmol)の(25a)をクロロギ酸p-ニトロフェニル及びN-(3-ジメチルアミノ-プロピル)-N',N'-ジメチル-プロパン-1,3-ジアミン(15g)と反応させ、化合物(16a)について記載したのと同様にして(26a)を生成させた。
【0279】
(26b)は、15mgの(25b)及びN,N,N'-トリメチルエタン-1,2-ジアミン(15a)を用いて、上記で記載したのと同様にして合成した。
【0280】
(26a):収量 複TFA塩として282mg(58%);MS [M+Na]+=775.2(MW+Na 計算値=776.0g/mol)
(26b):収量 TFA塩として17mg(70%) ;MS [M+Na]+=704.5(MW+Na 計算値=704.6g/mol)
【0281】
化合物(27a)及び化合物(27b)の合成
【化52】
【0282】
(27a) R1=Me、R2=H、R5=R6=3-(ジメチルアミノ)プロピル
(27b) R1=R2=R5=Me、R6=2-(ジメチルアミノ)エチル
【0283】
(26a)(272mg, 0.277mmol, 複TFA塩)を5mLのメタノールに溶解させ、NaBH4(42mg, 1.09mmol)を添加した。その混合物を室温で30分間撹拌した。0.5mLの酢酸を添加し、(27a)をRP-HPLCで精製した。
【0284】
アルコール(27b)は、(26b)から同様にして合成した(17mg, 25μmol, TFA塩)。
【0285】
(27a):収量 複TFA塩として142mg(52%);MS [M+Na]+=777.9(MW+Na 計算値=778.0g/mol)
(27b):収量 TFA塩として6mg(40%) ;MS [M+Na]+=706.5(MW+Na 計算値=706.6g/mol)
【0286】
化合物(28a)及び化合物(28b)の合成
【化53】
【0287】
(28a) R1=Me、R2=H、R5=R6=3-(ジメチルアミノ)プロピル
(28b) R1=R2=R5=Me、R6=2-(ジメチルアミノ)エチル
【0288】
カーボネート(28a)又はカーボネート(28b)は、それぞれ、(27a)又は(27b)から、化合物(7a)について記載したのと同様にして合成した。
【0289】
(28a):収量 1mg(29%) ;MS [M+Na]+=942.9(MW+Na 計算値=943.2g/mol)
(28b):収量 1.5mg(19%);MS [M+Na]+=871.6(MW+Na 計算値=871.7g/mol)
【0290】
化合物(29a)及び化合物(29b)の合成
【化54】
【0291】
(29a) R1=Me、R2=H、R5=R6=3-(ジメチルアミノ)プロピル
(29b) R1=R2=R5=Me、R6=2-(ジメチルアミノ)エチル
【0292】
インスリン誘導体(29a)又はインスリン誘導体(29b)は、それぞれ、(28a)又は(28b)から、化合物(8a)について記載したのと同様にして合成した。
【0293】
(29a) MS [M+3H]3+=2105.8;[M+4H]4+=1580.2(MW 計算値=6316.4g/mol)
(29b) MS [M+3H]3+=2081.8;[M+4H]4+=1562.4(MW 計算値=6244g/mol)
【0294】
モノペグ化インスリン誘導体(30a)及びモノペグ化インスリン誘導体(30b)の合成
【化55】
【0295】
(30a) R1=Me、R2=H、R5=R6=3-(ジメチルアミノ)プロピル
(30b) R1=R2=R5=Me、R6=2-(ジメチルアミノ)エチル
【0296】
インスリン誘導体(30a)又はインスリン誘導体(30b)は、それぞれ、(29a)又は(29b)から、化合物(9a)について記載したのと同様にして合成した。
【0297】
(30a)及び(30b):SEC保持時間:19.5分
【0298】
エステル結合マスキング基及び樹枝状キャリヤーを有する式(Ia)の高分子プロドラッグ(9h)の合成
【化56】
【0299】
化合物(31)の合成
【化57】
【0300】
(31)は、標準的な固相合成プロトコルに準じて得た。アミノ酸Fmoc-Dpr(Boc)-OH、Fmoc-Dpr(Fmoc)-OH、Fmoc-Dpr(Fmoc)-OH、Fmoc-AdoOH及びFmoc-Dpr(Fmoc)-OHをNovaSyn TG Sieberアミド樹脂にカップリングさせた。
【0301】
最後のfmocを除去した後、該樹脂を、DMF中で、アミノ基に対して5eqのマレイミドプロピオン酸及び5eqのDICと一緒に30分間撹拌した。95/3/2(v/v/v)TFA/TES/水を用いて、(31)を樹脂から開裂させた。溶媒を蒸発させた後、生成物(31)をRP-HPLCで精製した。
【0302】
MS:[M+H]+=2494.6(MW 計算値=2495.4g/mol)
【0303】
化合物(32)の合成
【化58】
【0304】
化合物(32)は、標準的な固相合成プロトコルに準じて得た。アミノ酸Fmoc-Cys(Mmt)-OH、Fmoc-Dpr(Fmoc)-OH、Fmoc-Dpr(Fmoc)-OH、Fmoc-Ado-OH及びFmoc-Dpr(Fmoc)-OHをNovaSyn TG Sieberアミド樹脂にカップリングさせた。
【0305】
最後のfmocを除去した後、該樹脂を、DMF中で、アミノ基に対して3eqのBoc-アミノオキシ酢酸、3eqのDIC及び3eqのHOBtと一緒に30分間撹拌した。97/1/2(v/v/v)DCM/TFA/TESを用いて、(32)を樹脂から開裂させた。TFAに対して0.8eqのピリジンを添加した後、溶媒を蒸発させ、生成物(32)をRP-HPLCで精製した。
【0306】
MS:[M+H]+=2688.2g/mol(MW 計算値=2688.8g/mol)
【0307】
化合物(33)の合成
【化59】
【0308】
化合物(33)は、標準的な固相合成プロトコルに準じて得た。アミノ酸Fmoc-Dpr(ivDde)-OH、Fmoc-Dpr(Fmoc)-OH、Fmoc-Dpr(Fmoc)OH、Fmoc-Lys(Fmoc)-OH及びFmoc-Ado-OHをNovaSyn TG Sieberアミド樹脂にカップリングさせた。
【0309】
最後のfmocを除去した後、該樹脂を、DMF中で、アミノ基に対して3eqの3,6,9-トリオキサデカン酸、3eqのPyBOP及び6eqのDIEAと一緒に60分間撹拌した。
【0310】
ivDde保護基を開裂させるために、該樹脂をDMF中の2%ヒドラジンで3回処理した。洗浄した後、3eqのFmoc-Ser-OHを3eqのDIC及び3eqのHOBtと30分間カップリングさせた。最後のfmocを除去した後、樹脂を洗浄し、88/10/2(v/v/v)DCM/TFA/TESで樹脂から生成物を開裂させた。溶媒を蒸発させ、樹脂を、3/2(v/v)0.1Mリン酸ナトリウム(pH7)/アセトニトリル中で、10eqの過ヨウ素酸ナトリウムで15分間酸化し、(33)を生成させた。生成物(33)をRPHPLCで精製し、凍結乾燥させた。
【0311】
MS:[M+H]+=3372.1g/mol(3372.8g/mol)
【0312】
化合物(34)の合成
【化60】
【0313】
6mg(2.4μmol)の化合物(31)を1mLの2/1(v/v)アセトニトリル/0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7)に溶解させ、65mg(24.2μmol)の化合物(32)を添加した。その溶液を室温で2時間撹拌した後、生成物をRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた(収量:45mg(78%))。
【0314】
凍結乾燥させた該生成物(45mg)を0.5mLのDMFに溶解させ、10μLのDIEAを添加した。150μLのDMF中の5mg(30μmo1)の3-マレイミドプロピオン酸及び4.7μL(30μmol)のDICを添加し、その反応混合物を室温で20分間撹拌した。生成物をRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。
【0315】
凍結乾燥させた該生成物を95/5(v/v)TFA/水の中で10分間インキュベーションし、次いで、窒素流下で溶媒を除去した。生成物(34)をRPHPLCで精製し、凍結乾燥させた(3段階全体についての総収量:20mg(47%))。
【0316】
MS:17700-18200(幅広ピーク)(MW 計算値=17749g/mol)
【0317】
化合物(9h)の合成
1.5mg(225nmol)の(8g)及び5mg(280nmol)の(34)を混合し、300μLの2/1(v/v)0.1Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7)/アセトニトリルに溶解させ、室温で15分間インキュベーションした。生成物をRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた(収量 4mg, 160nmol, 70%)。
【0318】
凍結乾燥させた該生成物を200μLの0.1Mクエン酸ナトリウムバッファー(pH1.5)に溶解させ、200μLの2/1(v/v)アセトニトリル/クエン酸ナトリウムバッファー(pH1.5)中の69mg(20.5μmol)の(33)を添加した。その混合物を室温で24時間撹拌し、生成物(9h)をサイズ排除クロマトグラフィー(カラム:Superdex 200, バッファー:10mM HEPES(pH7.4), 0.005% Tween-20, 3mM EDTA, 流速:0.75mL/分)で精製した。
【0319】
SEC溶離時間:15分
【0320】
化合物(37a)の合成
【化61】
【0321】
250mg(0.35mmol)の塩化2-クロロトリチル樹脂(ローディング 1.4mmol/g)を、4mLのDCM中で、308mg(4eq., 1.4mmol)の4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミンと一緒に1.5時間インキュベーションして、(35a)を生成させた。その樹脂をDCMで洗浄し、乾燥させた。3mLのDMF中の107mg(0.7mmol)のHOBt、110μL(0.7mmol)のDIC及び150mg(0.9mmol)の5-ホルミルサルチル酸を添加し、得られた懸濁液を室温で1時間撹拌して、(36a)を生成させた。DCM及びTHFで洗浄した後、その樹脂を6mLのTHFに懸濁させ、3mL(3mmol)のBH3THF(THF中1M, 8.5eq.)を滴下して加えた。その反応混合物を、窒素雰囲気下、45℃で18時間撹拌した。冷却後、4mLのTHF、0.8mLのDIEA及び1.6mLのMeOHを順次添加した。210mg(0.84mmol)のI2(濃THF溶液として)を添加し、得られた懸濁液を1時間撹拌した。その樹脂を、THF、DMF、MeOH及びDCMで繰り返し洗浄した(それぞれ3回)。乾燥させた該樹脂を、3mLのDMF中で、107mg(0.7mmol)のHOBt、110μL(0.7mmol)のDIC及び55μL(0.9mmol)のAcOHと1時間反応させた。この樹脂をDMF及びDCMで洗浄した後、2/1(v/v)HFIP/DCM(30分間で2回)で樹脂から化合物(37a)を開裂させた。揮発性成分を蒸発させた。生成物(37a)は、それ以上精製することなく次の段階で使用した。
【0322】
(37a):収量 TFA塩として29mg(20%);MS [M+Na]+=421.4(MW+Na 計算値=421.5g/mol)
【0323】
化合物(38)の合成
【化62】
【0324】
0.5mLのDMF中の24mg(0.06mmol)の(37a)、31mg(0.06mmol)のPyBOP、32μL(0.18mmol)のDIEA及び23mg(0.06mmol)の(2)を室温で50分間反応させた。50μLの酢酸を添加した後、生成物(38)をRP-HPLCで精製した。
【0325】
(38):収量 7mg(15%);MS [M+Na]+=781.3(MW+Na 計算値=781.6g/mol)
【0326】
化合物(39)の合成
【化63】
【0327】
300mg(0.42mmol)の塩化2-クロロトリチル樹脂(ローディング 1.4mmol/g)を、4mLのDCM中で、245mg(4eq., 1.7mmol)の1,8-ジアミノオクタンと一緒に1.5時間インキュベーションして、(35b)を生成させた。その樹脂をDCMで洗浄し、乾燥させた。3mLのDMF中の107mg(0.7mmol)のHOBT、110μL(0.7mmol)のDIC及び150mg(0.9mmol)5-ホルミルサリチル酸を添加し、得られた懸濁液を室温で1時間撹拌して、(36b)を生成させた。DCM及びTHFで洗浄した後、その樹脂を6mLのTHFに懸濁させ、3mL(3mmol)のBH3THF(THF中1M)を滴下して加えた。その反応混合物を、窒素雰囲気下、45℃で18時間撹拌した。冷却後、4mLのTHF、0.8mLのDIEA及び1.6mLのMeOHを順次添加した。210mg(0.84mmol)のI2(濃THF溶液として)を添加し、その懸濁液を1時間撹拌した。樹脂を、THF、DMF、McOH及びDCMで繰り返し洗浄した(それぞれ3回)。乾燥させた該樹脂を、3mLのDMF中で、107mg(0.7mmol)のHOBT、110μL(0.7mmol)のDIC及び55μL(0.9mmol)AcOHと1時間反応させた。その樹脂をDMF及びDCMで洗浄した後、1/1(v/v)THF/DCM中の化合物(37b)、78mg(0.39mmol)のクロロギ酸p-ニトロフェニル及び210μL(1.2mmol)のDIEAを室温で30分間反応させた。分離させた樹脂を1/1(v/v)THF/DCMに懸濁させ、210μL(1.2mmol)のN,N,N'-トリメチルエチレンジアミンを添加した。得られた懸濁液を室温で25分間撹拌した。樹脂を分離させ、DCMで洗浄した。2/1(v/v)HFIP/DCM(30分間で2回)で樹脂から生成物(39)開裂させた。揮発性成分を蒸発させ、生成物(39)をHPLCで精製した。
【0328】
(39):収量 TFA塩として16mg(8%);MS [M+Na]+=473.5(MW+Na 計算値=473.3g/mol)
【0329】
化合物(40a)の合成
【化64】
【0330】
(38)(7mg, 9μmol)を200μLの乾燥THEに溶解させた。クロロギ酸p-ニトロフェニル(2.0mg, 10μmol)及びDIEA(4.4μL, 25μmol)を添加し、その混合物を室温で30分間撹拌した。N,N,N'-トリエチルエチレンジアミン(15b)(18μL, 0.1mmol)を添加し、撹拌を30分間継続した。減圧下に溶媒を除去した。10μLのAcOHを添加し、(40a)をRP-HPLCで精製した。
【0331】
(40a):収量 TFA塩として1mg(11%);MS [M+Na]+=951.1(MW+Na 計算値=951.8g/mol)
【0332】
化合物(40b)の合成
【化65】
【0333】
0.5mLのDMF中の15mg(33μmol)の(39)、18mg(33μmol)のPyBOP、23μL(0.13mmol)のDIEA及び13mg(35μmol)の(2)を室温で45分間反応させた。50μLの酢酸を添加した後、生成物(40)をRP-HPLCで精製した。
【0334】
(40b):収量 TFA塩として10mg(37%);MS [M+H]+=811.5(MW+Na 計算値=810.5g/mol)
【0335】
化合物(41a)及び化合物(41b)の合成
【化66】
【0336】
カーボネート(41a)又はカーボネート(41b)は、(40a)又は(40b)から、化合物(7a)について記載したのと同様にして合成した。
【0337】
(41a):収量 TFA塩として0.4mg ;MS [M+Na]+=1116.8(MW+Na 計算値=1116.9g/mol)
(41b):収量 TFA塩として2mg(16%);MS [M+H]+=976.8(MW 計算値=975.8g/mol)
【0338】
化合物(42)の合成
【化67】
【0339】
インスリン誘導体(42)は、(41b)から、化合物(8a)について記載したのと同様にして合成した。
【0340】
(42) MS [M+3H]3+=2124.5;[M+4H]4+=1594.6(MW 計算値=6371g/mol)
【0341】
化合物(43)の合成
【化68】
【0342】
インスリン誘導体(43)は、(42)から、化合物(9a)について記載したのと同様にして合成した。
【0343】
(43):SEC保持時間:18.0分
【0344】
rh-インスリンをロードしたPEGAヒドロゲル(45)の合成
【化69】
【0345】
ポリアクリルアミドベースヒドロゲル(PEGA)のマレイミド誘導体化:
0.4mmol/gのローディング及び150〜300μmのビーズ寸法を有するNH2-PEGAヒドロゲルビーズをNovabiochemから購入した。
【0346】
メタノールで湿らせた2.5gのNH2-PEGA-ヒドロゲル(0.4mmol/g NH2-ローディング)を量って、ポリプロピレン製フリットを具備したシリンジの中に入れた。マレイミドのローディングは、下記に記載してあるように、活性化マレイミドプロピオン酸と酢酸の混合物を用いるアシル化により調節した。該ヒドロゲルをDMFで5回洗浄し、4mLのDMF中で、13.5mg(0.08mmol)の3-マレイミドプロピオン酸、115.2μL(1.92mmol)の酢酸及び313μL(2mmol)のDICと30分間反応させた。そのマレイミドで誘導体化したヒドロゲル(44)をDMF及びDCMで10回洗浄し、最後に、アセトニトリルで洗浄した。
【0347】
30mgのマレイミド誘導体化樹脂(44)(ローディング 16μmol/g)を、600μLの20/80(v/v)アセトニトリル/50mMリン酸バッファー(pH7.4)中で、3mgの化合物(20b)(480mmol, 1.06eq)と10分間反応させて、rh-インスリンがロードしたヒドロゲル(45)を得た。そのヒドロゲル(45)を50/50(v/v)アセトニトリル/水で5回洗浄し、アセトニトリルで3回洗浄し、減圧下に乾燥させた。
【0348】
rh-インスリン炭水化物ベースヒドロゲル(46)の合成
【化70】
【0349】
NHS活性化「セファロース4高速流動(Sepharose 4 Fast Flow)」ヒドロゲルビーズ(化学的に架橋したアガロース,架橋剤エピクロルヒドリン)をAmershamから購入した。
【0350】
エタノールで湿らせた1.5gのセファロースヒドロゲル(150mgの乾燥ヒドロゲル)を量ってポリプロピレン製フリットを具備したシリンジの中に入れ、DMF中の1Mの4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミンと30分間反応させた。DMFでの洗浄段階を5回行った後、ヒドロゲルを、4mLのDMF中で、8.5mg(0.05mmol)の3-マレイミドプロピオン酸、57μL(0.95mmol)の酢酸、151mg(1mmol)のHOBt及び158μL(1mmol)のDICと30分間反応させて、マレイミドで誘導体化したヒドロゲルを得た。そのヒドロゲルをDMFで10回洗浄し、最後に、アセトニトリルで洗浄した。
【0351】
1.5mgの(8c)を25/75(v/v)アセトニトリル/50mMリン酸バッファー(pH7.4)に溶解させ、10.8mgのマレイミド誘導体化ヒドロゲルと10分間反応させた。そのrh-インスリンがロードされたヒドロゲル(46)を50/50(v/v)アセトニトリル/水で5回洗浄し、アセトニトリルで3回洗浄し、減圧下で乾燥させた。
【0352】
フルオロセイン-インスリン-rHSA(50)の合成スキーム
【化71】
【0353】
ビスマレイミド(47)の合成
【化72】
【0354】
200μLのDMF中の3-マレイミド-プロピオン酸(92mg、0.54mmol)を、室温で、DIC(78μL, 0.50mmol)と15分間反応させた。4,7,10-トリオキサ-トリデカン-1,13-ジアミン(43.5μL, 0.20mmol)を添加し、その混合物を室温で30分間撹拌した。
【0355】
800μLの1/4(v/v)酢酸/水を添加した後、(47)をRP-HPLCで精製した。
【0356】
(47):収量 23mg(22%);MS [M+Na]+=545.5(MW+Na 計算値=545.6g/mol)
【0357】
rHSA-マレイミド(48)の合成
145mM NaCl、32mMオクタン酸ナトリウム及び0.0015% Tween-80に溶解させたrHSAの3mM溶液66.5μLを66.5μLの0.5Mリン酸バッファー(pH7.0)と混合した。0.41mgのビスマレイミド(47)(0.8μmol)を添加し、その混合物を室温で15分間反応させた。化合物(48)を、移動相として10mM HEPESバッファー(pH7.4)、150mM NaCl、3mM EDTA及び0.005% Tweenを用いるSEC(カラム:Superdex 200,流速:0.75mL/分)で精製した(収量:2.6mL, 77.5μM, (48))。
【0358】
SEC保持時間:17.1分n(280nm);ESI-MS=66988(MW 計算値=66984g/mol)
【0359】
フルオレセイン-インスリン-リンカー-マレイミド(49)の合成
40μLの1/1(v/v)アセトニトリル/水中2.4mMビスマレイミド(47)(96nmol)を、40μLの0.5Mホウ酸ナトリウムバッファー(pH5.8)と混合した。16.8μLの1/1(v/v)アセトニトリル/水中24nmol(8f)を添加し、その混合物を室温で10分間インキュベーションした。5μLのAcOHを添加し、(49)をRP-HPLCで精製した。
【0360】
ESI-MS=7211(MW 計算値=7211g/mol)
【0361】
フルオレセイン-インスリン-リンカー-rHSA(50)の合成
(a) (49)とrHSAから
(b) (48)と(8f)から
【0362】
(a)
30μLの1/1(v/v)アセトニトリル/水中80mM(49)(2.4 nmol)を、70μLの0.25Mリン酸ナトリウムバッファー(pH6.4)と混合した。145mM NaC1、32mMオクタン酸ナトリウム及び0.0015% Tween-80の中の3mM rHSA(24nmol)8μLを添加し、その混合物を室温で20分間インキュベーションした。
【0363】
化合物(50)を、移動相として10mM HEPESバッファー(pH7.4)、150mM NaCl、3mM EDTA及び0.005% Tweenを用いるSEC(カラム:Superdex 200,流速:0.75mL/分)で精製した。
【0364】
SEC保持時間:17.3分(500nm);ESI-MS=73676(MW 計算値=73673g/mol)
【0365】
(b)
rHSA-マレイミド(48)のSEC溶出液(241μL, 77.5μM, 18.7 nmol)を、20μLの0.5Mホウ酸ナトリウムバッファー(pH5.8)と混合した。14μLの1/1(v/v)アセトニトリル/水中1.41mM(8f)(19.6 nmol)を添加し、その混合物を室温で10分間インキュベーションした。1.2μLの1/1(v/v)アセトニトリル/水中48.5mM3-マレイミド プロピオン酸(58 nmol)を添加し、化合物(50)を、移動相として10mM HEPESバッファー(pH7.4)、150mM NaCl、3mM EDTA及び0.005% Tweenを用いるSEC(カラム:Superdex 200,流速:0.75mL/分)で精製した。
【0366】
SEC保持時間:17.1分(500nm);ESI-MS=73698(MW 計算値=73673g/mol)
【0367】
rHSA-リンカー-GLP-1(53a)及びrHSA-リンカー-GLP-1(53b)の合成スキーム
【化73】
【0368】
(51a)の合成
fmoc方法を用いるRink-アミド樹脂(Specialty Peptide Laboratories, Heidelberg, Germany)で、GLP(7-36)(配列:HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR-アミド)を合成した。N-末端fmoc保護基を除去し、樹脂をDCMで洗浄し、乾燥させた。118mgの樹脂(0.11mmol/g, 13.2μmol)を、50mgの(19i)(53μmol)を750μLの乾燥DMSOと22.4μLのDIEAに溶解させた溶液に懸濁させた。2.1μLのピリジンを添加し、その混合物を室温で48時間振盪した。その樹脂を毎回DMF及びDCMで6回洗浄した後、樹脂からペプチドを開裂させ、96/2/2(v/v/v)TFA/トリエチルシラン/水を用いて保護基を除去した。窒素流下で揮発性物質を除去し、(51a)をRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。
【0369】
(51a):収量 4.6mg(9%);MS:[M+3H]3+=1251.0(MW 計算値=3750.3g/mol)
【0370】
(51b)の合成
fmoc方法を用いるRink-アミド樹脂(Specialty Peptide Laboratories, Heidelberg, Germany)で、Lys28ivDde側鎖で保護されているGLP(7-36)(配列:HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVK(ivDde)GR-アミド)を合成した。N-末端fmoc保護基を除去し、樹脂をDCMで洗浄し、乾燥させた。50mgの樹脂(0.11mmol/g, 5.5μmol)を、25mgの(19i)(26μmol)を400μLの乾燥DMSOと11.2μLのDIEAに溶解させた溶液に懸濁させた。1.1μLのピリジンを添加し、その混合物を室温で48時間振盪した。その樹脂をDMFで6回洗浄した後、樹脂をDMF中の5%ヒドラジンと一緒に20分間3回インキュベーションすることにより、ivDde保護基を開裂させた。標準的なカップリングサイクルに従い、Fmoc-8-アミノ, 3,6-ジオキサオクタン酸をカップリングさせた。Fmoc保護基を除去した。該樹脂を8mgの5-(及び-6)-カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル及び2μLのDIEAと一緒に60分間インキュベーションすることにより、カルボキシ-フルオレセインをカップリングさせた。樹脂を毎回DMF及びDCMで6回洗浄した。96/2/2(v/v/v)TFA/トリエチルシラン/水を用いて、樹脂からペプチドを開裂させ、保護基を除去した。窒素流下で揮発性物質を除去した。(51b)は、それ以上精製することなく、(52)の合成に使用した。
【0371】
MS:[M+3H]4+=1064.3, [M+2H]3+=1418.3(MW 計算値=4254g/mol)
【0372】
(52)の合成
原料(51b)を500μLの1/1(v/v)アセトニトリル/0.25Mリン酸ナトリウム(pH7)に溶解させ、8mgのN,N'-ビス(3-マレイミドプロピオニル)-2-ヒドロキシ-1,3-プロパンジアミンを添加した。その溶液を室温で15分間撹拌した。(52)をRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。
【0373】
(52):収量:5.1mg;MS [M+3H]4+=1162.8;[M+2H]3+=1549.4(MW 計算値=4645g/mol)
【0374】
化合物(53a)の合成
【化74】
【0375】
30μLの10mM HEPESバッファー(pH7.4)中1.57mM(48)(47nmol)、150mM NaCl、3mM EDTA及び0.005% Tweenを、10μLの0.5Mリン酸ナトリウムバッファー(pH7.4)と混合した。9/1(v/v)水/アセトニトリルの中の2μLのDMSOと12μLの6.06mM(51a)(73nmol)の混合物を添加し、その溶液を室温で30分間インキュベーションした。(53a)を、移動相として10mMリン酸バッファー(pH7.4)、150mM NaCl及び0.005% Tweenを用いるSEC(カラム:Superdex 200,流速:0.75mL/分)で精製した。
【0376】
SEC保持時間:17.7分(280nm);ESI-MS=70745(MW 計算値=70734g/mol)
【0377】
(53b)の合成
【化75】
【0378】
100μLの9/1の50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)/アセトニトリル中3mM(52)(300nmol)を100μLの3mM HSA(300nmol)と混合し、その溶液を室温で30分間インキュベーションした。(53b)を、移動相として10mM HEPESバッファー(pH7.4)、150mM NaCl、3mM EDTA及び0.005% Tweenを用いるSEC(カラム:Superdex 200,流速:0.75mL/分)で精製した。
【0379】
SEC保持時間:17.7分(500nm)
【0380】
化合物(54a)及び化合物(54b)の合成
【化76】
【0381】
AlCl3(1.05eq)をDCMに懸濁させ、6-ブロモヘキサン酸クロリド(1eq)を添加した。室温で20分間撹拌した後、o-クレゾール(1eq)を添加した。その混合物を室温で25分間反応させた。その反応混合物を氷水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機相を分離してNa2SO4で脱水し、減圧下に濃縮した。生成物(54a)を、移動相としてヘプタン/酢酸エチル(4/1)を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0382】
(54b)は、6-ブロモヘキサン酸クロリド及びフェノールを用いて、上記と同様にして合成した。
【0383】
(54a):収量 3.7g(33%) ;MS [M+H]+=285.1及び287.2(MW+H 計算値=386.2g/mol)
(54b):収量 620mg(15%);MS [M+H]+=271.2(MW 計算値=271.0g/mol)
【0384】
化合物(55a)及び化合物(55b)の合成
【化77】
【0385】
臭化物(54a)(105mg, 369μmol)及びトリチルチオール(204mg, 738μmol)を50mLの乾燥DMSOに溶解させた溶液に、DBU(105μL, 701μmol)を添加した。その反応混合物を室温で40分間撹拌し、1N H2SO4で酸性化した。水層を酢酸エチルで抽出し、蒸発させた。(55a)をRP-HPLCで精製した。
【0386】
(55b)は、(54b)(180mg, 0.66mmol)を使用して、同じプロトコルに準じて合成した。
【0387】
(55a):収量 173mg(97%);MS [M+Na]+=503.6(MW+Na 計算値=503.7g/mol)
(55b):収量 160mg(85%);MS [M+Na]+=489.5(MW+Na 計算値=489.3g/mol)
【0388】
化合物(56a)及び(56b)の合成
【化78】
【0389】
(56a) R1=Me、R2=R3=3-(ジメチルアミノ)プロピル,
(56b) R1=H、R2=Me、R3=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル
【0390】
(56a)は、(55a)(9mg, 19μmol)、クロロギ酸p-ニトロフェニル及びビス(3-ジメチルアミノプロピル)アミン(21μL, 94μmol)から、化合物(16a)について記載したのと同様にして調製した。
【0391】
(56b)は、(55b)(160mg, 0.34mmol)、クロロギ酸p-ニトロフェニル及びN-エチル-N,N'-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(15c)から、化合物(16a)について記載したのと同様にして合成した。
【0392】
(56a):収量 TFA塩として12mg(70%);MS [M+Na]+=716.8(MW+Na 計算値=717.0g/mol)
(56b):収量 TFA塩として80mg(32%);MS [M+Na]+=645.6(MW+Na 計算値=645.4g/mol)
【0393】
化合物(57a)及び化合物(57b)の合成
【化79】
【0394】
(57a) R1=Me、R2=R3=3-ジメチルアミノ-プロピル,
(57b) R1=H、R2=Me、R3=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル
【0395】
(57a)及び(57b)は、それぞれ、(56a)(12mg, 13μmol, 複TFA塩)及び(56b)(80mg, 110μmol, TFA塩)から、化合物(16g)について記載したのと同様にして合成した。
【0396】
(57a):収量 TFA塩として9mg(75%) ;MS [M+Na]+=719.0(MW+Na 計算値=718.7g/mol)
(57b):収量 TFA塩として60mg(75%);MS [M+Na]+=647.4(MW+Na 計算値=647.4g/mol)
【0397】
化合物(58a)及び化合物(58b)の合成
【化80】
【0398】
(58a) R1=Me、R2=R3=3-(ジメチルアミノ)プロピル,
(58b) R1=H、R2=Me、R3=3-(N-エチル-N-メチルアミノ)プロピル
【0399】
(57a)(1eq, 8mg, 9μmol)、クロロギ酸4-ニトロフェニル(3.5eq, 6mg, 30μmol)、DIEA(6eq, 9μL, 52μmol)及びDMAP(1eq, 1mg, 9μmol)を、1mLの乾燥DCM中で、窒素雰囲気下、室温で45分間撹拌した。揮発性物質を蒸発させ、酢酸を添加した。その混合物を1/1(v/v)アセトニトリル/水に溶解させ、カーボネート(58a)をRP-HPLCで精製した。
【0400】
カーボネート(58b)は、(57b)(135mg, 0.18mmol)から、同様にして調製した。
【0401】
(58a):収量 TFA塩として7mg(70%) ;MS [M+Na]+=883.8(MW+Na 計算値=884.1g/mol)
(58b):収量 TFA塩として110mg(77%);MS [M+Na]+=812.4(MW+Na 計算値=812.5g/mol)
【0402】
化合物(59)の合成
【化81】
【0403】
0.3mLのDMSO中のrh-インスリン(44.5mg, 7.7μmol)、カーボネート(58a)(1eq, 7mg, 6.4mmol)、DIEA(15μL, 88μmol)及びDMAP(1.5mg, 12μmol)を、室温で30分間反応させた。その反応混合物を酢酸で中和し、1/1(v/v)アセトニトリル/水で希釈した。RP-HPLCで精製して、Trtで保護された適切な中間体を得た。
【0404】
凍結乾燥後、該Trt保護中間体を95/5(v/v)TFA/トリエチルシランと混合し、5分間撹拌した。窒素流下で揮発性物質を除去した。(59)をRP-HPLCで精製し、凍結乾燥させた。インスリン修飾の位置は、DTT還元及びMS分析により確認した。
【0405】
(59):MS [M+3H]3+=2095.5;[M+4H]4+=1572.2(MW 計算値=6288g/mol)
【0406】
化合物(60)の合成
【化82】
【0407】
(60)は、(59)(0.17μmol)から、化合物(9a)について記載したのと同様にして調製した。
【0408】
(60):SEC保持時間:19.5分
【0409】
化合物(61)の合成
【化83】
【0410】
(57b)(70mg, 90μmol)、DSC(161mg, 630μmol)、DIEA(192μL, 1.1mmol)及びDMAP(11mg, 90μmol)を、1mLの乾燥アセトニトリル中で、窒素雰囲気下、室温で14時間撹拌した。揮発性物質を蒸発させ、酢酸を添加した。その混合物を1/1(v/v)アセトニトリル/水に溶解させ、カーボネート(61)をRP-HPLCで精製した。
【0411】
(61):収量 TFA塩として40mg(51%);MS [M+Na]'=788.4(MW+Na 計算値=788.5g/mol)
【0412】
化合物(62)の合成
【化84】
【0413】
(61)(12mg, 13μmol)及びNPys-Cl(4mg, 21μmol)を、1mLのDCM中で、窒素雰囲気下、-10℃で2時間撹拌した。窒素流下で揮発性物質を除去し、(62)をRP-HPLCで精製した。
【0414】
(62):収量 TFA塩として7mg(65%);MS [M+Na]+=700.9(MW+Na 計算値=701.4g/mol)
【0415】
化合物(63)の合成
【化85】
【0416】
200μLの50mMホウ酸バッファー(pH8.0)中の0.9mgの脱塩rhGH(ProspecTany, Israel, MW 22250g/mol, 40 nmol)、8μLのアセトニトリル中カーボネート(62)(38mM, 300nmol)及び40μLのDMSOを、室温で3時間反応させた。Centricon 5フィルター(カットオフ 5kDa)を用いる限外瀘過により、溶媒混合物及び低分子量化合物を水で置き換えた後、酢酸バッファー(25mM, pH4.2, 0.005% Tween 20)で置き換えた。8μL(80nmol)の25mM酢酸バッファー(pH4.2, 0.005% Tween)中10mM DTTを添加し、室温で30分間インキュベーションした。Centricon 5フィルター及び溶出液としての25mM酢酸バッファー(pH4.2, 0.005% Tween)を用いる限外瀘過により、低分子量化合物を除去した。容積が100μLになるまで濃縮(Centricon 5)した後、20μL(100nmol)の水中5mMマレイミド-PEG5k及び80μLの0.5Mリン酸バッファー(pH7.0)を添加した。その混合物を室温で5分間インキュベーションした。移動相として10mMリン酸バッファー(pH7.4)、150mM NaCl及び0.005% Tween 20を用いるSEC(カラム:Superdex 200, 流速:0.75mL/分)により、モノコンジュゲート(63)を分離した。集めた溶出液(約1.0mL)を、0.05%NaN3を含有している0.5mLのバッファーで希釈し、放出速度の測定に直接使用した。
【0417】
(63):SEC保持時間:17.5分
【0418】
バッファー(pH7.4)中におけるコンジュゲートからのインスリン又はフルオレセイン-インスリンの放出
(フルオレセイン)-インスリンコンジュゲート(9a)〜(9h)、(21a)〜(21f)、(30a)、(30b)、(43)、(50)及び(60)からの(フルオレセイン)-インスリンの放出、(53b)からのフルオレセイン-GLP-1の放出、並びに、(63)からのrhGHの放出は、水性バッファー(pH7.4)でのリンカー加水分解により行わせた。(フルオレセイン)-インスリンコンジュゲート(上記を参照)、フルオレセイン-GLP-1コンジュゲート及びrhGHコンジュゲートのSEC溶出液をそれぞれ採取し、それらを、37℃でインキュベーションした。時間間隔を開けてサンプルを取り、RP-HPLC(インスリンコンジュゲート)又はSEC(rhGHコンジュゲート、フルオレセインインスリンコンジュゲート及びフルオレセイン-GLP-1コンジュゲート)、及び、UV検出(215nm又は280nm)又はVIS検出(500nm)により分析した。天然インスリン、フルオレセイン-インスリン、フルオレセイン-GLP-1及びrhGHの保持時間に関連するピークをそれぞれ積分し、インキュベーション時間に対してプロットした。カーブフィッティングソフトウェアを適用して、対応する半放出時間(halftime of release)を推定した。
【0419】
ヒドロゲルコンジュゲート(45)及び(46)からのインスリンの放出
4mgの(45)又は 2mgの(46)を量って試験管の中に入れ、1mLの10mM HEPESバッファー(pH7.4)、150mM NaCl、0.005% Tweenと一緒に37℃でインキュベーションした。種々の時間間隔で45μLのサンプルを取り、rh-インスリンについて、RP-HPLCアッセイにより定量的に分析した。rh-インスリンのピークを積分し、標準曲線からrh-インスリン濃度を求めた。一次放出動力学(first order release kinetic)をデータポイントに当てはめて、リンカー半減期を得た。
【0420】
化合物(9a)、(9b)及び(30a)から放出されたインスリンのMS分析
バッファーから放出されたインスリンのサンプル(上記参照)を質量分析法で分析した。図11は、化合物(9a)、化合物(9b)及び化合物(30a)から放出されたインスリンの質量スペクトルを示している。化合物(9a)から放出されたインスリンの質量スペクトルには、不可逆的にペンタノイルで修飾されたインスリンに相当する主要な副生成物(矢印で表されている)が明瞭に示されている。この場合、ペンタノイルマスキング基は、加水分解では除去されなかったが、インスリンへのアシル転位により除去された。化合物(9b)及び化合物(30a)から放出されたインスリンの質量スペクトルには、修飾は示されていなかった。
【0421】
80%ヒト血漿中におけるコンジュゲート(9d)及び(9e)からのフルオレセイン-インスリンの放出
(9d)又は(9e)からのフルオレセイン-インスリンの放出は、20mM HEPES(pH7.4)中の80%ヒト血漿中、37℃で、加水分解により行わせた。時間間隔を開けてサンプルを取り、SEC及びVIS検出(500nm)により分析した。フルオレセイン-インスリンの保持時間に関連するピークを積分し、インキュベーション時間に対してプロットした。カーブフィッティングソフトウェアを適用して、対応する半放出時間(halftime of release)を推定した。
【表1】
【0422】
上述の事項は、本発明の原理を例証しているものと見なされる。当業者には多くの変更が想定されるので、本発明は、まさに記載されているその構成及び操作に限定されるものではない。適切な全ての変更及び等価物は、「特許請求の範囲」の範囲内である。
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0423】
【図1】キャリヤー結合プロドラッグを示す図である。
【図2】酵素依存性キャリヤー結合プロドラッグを示す図である。
【図3】マスキング基がキャリヤーの一部であるカスケードプロドラッグを示す図である。
【図4】マスキング基がキャリヤーの一部である酵素依存性カスケードプロドラッグを示す図である。
【図5】マスキング基がキャリヤーから分離している自己開裂性カスケードプロドラッグを示す図である。
【図6】マスキング基がキャリヤーから分離している酵素依存性カスケードプロドラッグを示す図である。
【図7】キャリヤーがマスキング基を立体的に保護しているカスケードプロドラッグを示す図である。
【図8】分子内環化によるマスキング基の開裂を示す図である。
【図9】高分子プロドラッグの活性化による可能な副反応を示す図である。
【図10】一般的な合成方法を示す図である。
【図11】プロドラッグから放出されたインスリン分子の質量スペクトルを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子カスケードプロドラッグであって、
アミンを含む生物学的に活性な成分と、
少なくとも1個の求核性成分を有していてキャリヤーとは異なるマスキング基と
を含む高分子カスケードプロドラッグ。
【請求項2】
以下の構造:
【化1】
[ここで、
Tは、D又はAであり;
Dは、アミンを含む生物学的に活性な成分の残基であり;
Aは、脱離基であり;
Xは、R5-Y6のようなスペーサー成分であり;
Y1、Y2は、それぞれ、互いに独立して、O、S又はNR6であり得;
Y3、Y5は、それぞれ、互いに独立して、O又はSであり得;
Y4は、O、NR6又は-C(R7)(R8)-であり;
Y6は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素-炭素結合若しくは自由電子対を含むヘテロ原子であるか、又は、存在せず;
R3は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、又は、カルボキサミドアルキルから選択され;
R4は、独立して、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルコキシ、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、シアノ、又は、ハロゲンから選択され;
R5は、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
R7及びR8は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、カルボキサミドアルキル、シアノ、又は、ハロゲンから選択され;
R6は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
R1は、ポリマーであり;
Wは、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキル、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
Nuは、求核性成分であり;
nは、ゼロ又は正の整数であり;そして
Arは、複数の置換基を有する芳香族炭化水素又は複数の置換基を有する芳香族ヘテロ環である]
を有する請求項1に記載のプロドラッグ又は対応する高分子カスケードプロドラッグリンカー試薬。
【請求項3】
以下の構造:
【化2】
[ここで、
Tは、D又はAであり;
Dは、アミンを含む生物学的に活性な分子の残基であり;
Aは、脱離基であり;
Xは、R5-Y6のようなスペーサー成分であり;
Y1、Y2は、それぞれ、互いに独立して、O、S又はNR6であり得;
Y3、Y5は、それぞれ、互いに独立して、O又はSであり得;
Y4は、O、NR6又は-C(R7)(R8)-であり;
Y6は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素-炭素結合若しくは自由電子対を含むヘテロ原子であるか、又は、存在せず;
R2及びR3は、独立して、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、又は、カルボキサミドアルキルから選択され;
R4は、独立して、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルコキシ、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、シアノ、又は、ハロゲンから選択され;
R5は、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
R7及びR8は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、カルボキサミドアルキル、シアノ、又は、ハロゲンから選択され;
R6は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
R1は、ポリマーであり;
Wは、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキル、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
Nuは、求核性成分であり;
nは、ゼロ又は正の整数であり;そして
Arは、複数の置換基を有する芳香族炭化水素又は複数の置換基を有する芳香族ヘテロ環である]
を有する請求項1に記載のプロドラッグ又は対応する高分子カスケードプロドラッグリンカー試薬。
【請求項4】
前記生物学的に活性な成分が、小分子の生物学的に活性な作用物質又は生体高分子からなる生物学的成分の群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項5】
前記生体高分子が、タンパク質、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド及びペプチド核酸からなる生体高分子の群から選択される、請求項4に記載のプロドラッグ。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、ACTH、アデノシンデアミナーゼ、アガルシダーゼ、アルブミン、α-1アンチトリプシン(AAT)、α-1プロテイナーゼインヒビター(API)、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、アンクロドセリンプロテアーゼ、抗体(モノクローナル又はポリクローナル、及び、フラグメント又は融合物)、抗トロンビンIII、抗トリプシン、アプロチニン、アスパラギナーゼ、ビファリン、骨形成タンパク質、カルシトニン(サケ)、コラゲナーゼ、DNアーゼ、エンドルフィン、エンフュービルタイド、エンケファリン、エリスロポエチン、VIIa因子、VIII因子、VIIIa因子、IX因子、フィブリノリジン、融合タンパク質、卵胞刺激ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、ガラクトシダーゼ、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド様GLP-1、グルコセレブロシダーゼ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PLAP)、絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、ヘモグロビン、B型肝炎ワクチン、ヒルジン、ヒアルロニダーゼ、イズルノニダーゼ、免疫グロブリン、インフルエンザワクチン、インターロイキン(1α、1β、2、3、4、6、10、11、12)、IL-1受容体拮抗薬(rhIL-Ira)、インスリン、インターフェロン(α2a、α2b、α2c、β1a、β1b、γ1a、γ1b)、角質細胞増殖因子(KGF)、トランスホーミング増殖因子、ラクターゼ、ロイプロリド、レボチロキシン、黄体形成ホルモン、ライムワクチン、ナトリウム利尿ペプチド、パンクレリパーゼ、パパイン、副甲状腺ホルモン、PDGF、ペプシン、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF-AH)、プロラクチン、タンパク質C、オクトレオチド、セクレチン、セルモレリン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ソマトロピン(成長ホルモン)、ソマトスタチン、ストレプトキナーゼ、スクラーゼ、破傷風毒素フラグメント、チラクターゼ、トロンビン、チモシン、甲状腺刺激ホルモン、チロトロピン、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF受容体-IgG Fc、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、TSH、尿酸オキシダーゼ、ウロキナーゼ、ワクチン及び植物性タンパク質(例えば、レクチン及びリシン)からなるポリペプチドの群から選択される、請求項5に記載のプロドラッグ。
【請求項7】
前記タンパク質が、組換えDNA技術により調製されたタンパク質である、請求項5に記載のプロドラッグ。
【請求項8】
前記タンパク質が、抗体フラグメント、一本鎖結合タンパク質、触媒性抗体及び融合タンパク質からなるタンパク質の群から選択される、請求項5に記載のプロドラッグ。
【請求項9】
前記タンパク質が、抗体、カルシトニン、G-CSF、GM-CSF、エリスロポエチン、ヘモグロビン、インターロイキン、インスリン、インターフェロン、SOD、ソマトロピン、TNF、TNF-受容体-IgC Fc、グルカゴン様ペプチド様GLP-1からなるタンパク質の群から選択される、請求項5に記載のプロドラッグ。
【請求項10】
前記小分子生物学的活性作用物質が、少なくとも1個の第一級アミノ基又は第二級アミノ基を有する、中枢神経系-活性作用物質、抗感染症薬、抗新生物薬、抗細菌薬、抗真菌薬、鎮痛薬、避妊薬、抗炎症薬、ステロイド性作用薬、血管拡張性作用薬、血管収縮作用薬及び心臓血管作用薬からなる作用物質の群から選択される、請求項4に記載のプロドラッグ。
【請求項11】
前記小分子生物学的活性作用物質が、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、アミノグルテチミド、アマンタジン、ジアフェニルスルホン、エタンブトール、スルファジアジン、スルファメラジン、スルファメトキサゾール、スルファレン、クリナフロキサシン、モキシフロキサシン、シプロフロキサシン、エノキサシン、ノルフロキサシン、ネオマイシンB、スプレクチノマイシン、カナマイシンA、メロペネム、ドパミン、ドブタミン、リシノプリル、セロトニン、アシビシン及びカルブタミドからなる化合物の群から選択される、請求項4に記載のプロドラッグ。
【請求項12】
R4が、水素、メチル、エチル、エトキシ、メトキシ、並びに、1個〜6個の炭素原子を含む他の直鎖アルキル、シクロアルキル又は分枝鎖アルキル及びヘテロアルキルからなる小さな置換基の群から選択される、請求項2又は3に記載のプロドラッグ。
【請求項13】
R1が、ポリアルキルオキシをベースとするポリマー、例えば、ポリ(プロピレングリコール)又はポリ(エチレングリコール)、デキストラン、キトサン、ヒアルロン酸及び誘導体、アルギナート、キシラン、マンナン、カラギーナン、アガロース、セルロース、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)及び炭水化物をベースとする他のポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(オキサゾリン)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ウレタン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、例えば、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)(HMPA)、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、例えば、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(有機ホスファゼン)、ポリ(シロキサン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(エステル)、例えば、ポリ(乳酸)又はポリ(グリコール酸)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(アミノ酸)、例えば、ポリ(グルタミン酸)、コラーゲン、ゼラチン、コポリマー、グラフトコポリマー、架橋ポリマー、並びに、上記で挙げたポリマーに由来するブロックコポリマーからなるポリマーの群から選択される、請求項2又は3に記載のプロドラッグ。
【請求項14】
R1がヒドロゲルである、請求項2又は3に記載のプロドラッグ。
【請求項15】
R1が、分岐ポリマー又は高分岐ポリマーである、請求項2又は3に記載のプロドラッグ。
【請求項16】
R1が、デンドリマー又は高密度スターポリマーである、請求項2又は3に記載のプロドラッグ。
【請求項17】
R1が生体高分子である、請求項2又は3に記載のプロドラッグ。
【請求項18】
R1がタンパク質である、請求項17に記載のプロドラッグ。
【請求項19】
前記タンパク質が、アルブミン、抗体、繊維素、カゼイン又は他の血漿タンパク質である、請求項18に記載のプロドラッグ。
【請求項20】
R1が、1種類以上の生物学的に活性な物質をさらに含む、請求項2〜19のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項21】
R1の前記ポリマーが、Xに結合するための少なくとも1個の官能基を有している、請求項2〜20のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項22】
前記少なくとも1個の官能基が、カルボン酸及び活性化誘導体、アミノ、マレイミド、チオール、スルホン酸及び誘導体、カーボネート及び誘導体、カルバメート及び誘導体、ヒドロキシル、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン、イソシアネート、イソチオシアネート、リン酸及び誘導体、ホスホン酸及び誘導体、ハロアセチル、ハロゲン化アルキル、アクリロイル、アリール化剤、例えば、フッ化アリール、ヒドロキシルアミン、ジスルフィド、例えば、ピリジルジスルフィド、ビニルスルホン、ビニルケトン、ジアゾアルカン、ジアゾアセチル化合物、エポキシド、オキシラン並びにアジリジンからなる官能基の群から選択される、請求項21に記載のプロドラッグ。
【請求項23】
前記少なくとも1個の官能基が、チオール、マレイミド、アミノ、カルボン酸及び誘導体、カーボネート及び誘導体、カルバメート及び誘導体、アルデヒド並びにハロアセチルからなる官能基の群から選択される、請求項21又は22に記載のプロドラッグ。
【請求項24】
XとR1の間で形成される結合又は基が、ジスルフィド、S-スクシンイミド、アミド、アミノ、カルボン酸エステル、スルホンアミド、カルバメート、カーボネート、エーテル、オキシム、ヒドラゾン、尿素、チオ尿素、ホスフェート、ホスホネートからなる結合又は基の群から選択される、請求項21〜23のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項25】
XとR1の間で形成される結合又は基が、S-スクシンイミド、アミド、カルバメート及び尿素からなる結合又は基の群から選択される、請求項21〜24のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項26】
Aが、塩化物、臭化物、フッ化物、ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、N-ヒドロキシアゾベンゾトリアゾリル、ペンタフルオロフェノキシ及びN-ヒドロキシスルホスクシンイミジルからなる脱離基の群から選択される、請求項2〜25のいずれか1項に記載の高分子カスケードプロドラッグリンカー試薬。
【請求項27】
前記成分:
【化3】
が、好ましくは、
【化4】
からなる成分の群から選択される、請求項2又は3に記載のプロドラッグ。
【請求項28】
前記成分:
【化5】
が、
【化6】
である、請求項27に記載のプロドラッグ。
【請求項29】
R6が、さらに、Nu-Wであることができる、請求項27又は28に記載のプロドラッグ。
【請求項30】
請求項2〜29のいずれか1項に記載のプロドラッグにおいて、
【化7】
が、
【化8】
[ここで、R9、R10、R11及びR12は、独立して、水素、置換若しくは非置換のアルキル若しくはヘテロアルキル、又は、置換若しくは非置換のアリール若しくはヘテロアリールから選択される]
である、前記プロドラッグ。
【請求項31】
R9、R10、R11及びR12が、独立して、水素、又は、置換若しくは非置換のアルキルから選択される、請求項30に記載のプロドラッグ。
【請求項32】
Nuが、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、チオール、カルボン酸、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン及び窒素含有ヘテロアリールからなる求核性成分の群から選択される、請求項2〜31のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項33】
R7及び/又はR8が水素ではない、請求項30又は31に記載のプロドラッグ。
【請求項34】
Arが、以下の構造:
【化9】
を有する成分の群から選択され、ここで、Wは、互いに独立して、O、S又はNである、請求項2又は3に記載のプロドラッグ。
【請求項35】
Arが、単環式又は二環式の芳香族炭化水素又は芳香族ヘテロ環である、請求項2又は3に記載のプロドラッグ。
【請求項36】
Arが、5員又は6員の芳香族炭化水素又は芳香族ヘテロ環である、請求項2又は3に記載のプロドラッグ。
【請求項37】
Tが、生物学的に活性な成分と共有結合するための脱離基Aである、請求項2〜36のいずれか1項に記載の高分子カスケードプロドラッグリンカー試薬。
【請求項38】
前記生物学的に活性な成分がアミン含有分子である、請求項37に記載の高分子カスケードプロドラッグリンカー試薬。
【請求項39】
前記生物学的に活性な成分が、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質である、請求項37又は38に記載の高分子カスケードプロドラッグリンカー試薬。
【請求項40】
高分子プロドラッグを合成する方法であって、
式(II):
【化10】
で表される出発分子を提供するステップ;
式(II)で表される該出発分子から少なくとも1個の中間体化合物を合成するステップ;
及び、
アミン含有生物学的活性成分Dを、該少なくとも1個の中間体化合物に結合させて、該高分子プロドラッグを形成させるステップ;
を含み、ここで、
Y2は、O、S又はNR6から選択され;
Y3は、O又はSから選択され;
Xは、R5-Y6のようなスペーサー成分であり;
R3は、独立して、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル又はカルボキサミドアルキルから選択され;
R4は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルコキシ、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ、シアノ又はハロゲンから選択され;
R5は、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
R6は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
Y6は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素-炭素結合又は自由電子対を含むヘテロ原子であり;
nは、ゼロ又は正の整数であり;そして
Arは、複数の置換基を有する芳香族炭化水素又は複数の置換基を有する芳香族ヘテロ環である;
前記方法。
【請求項41】
前記少なくとも1個の中間体化合物うちの第一の化合物が、
Y2を、
【化11】
でアシル化し、そして、場合により第一の保護基PG1を結合させることにより合成された、式(III):
【化12】
で表される中間体分子であり、ここで、
Nuは、求核性成分であり;
Wは、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキル、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
Y1は、O、S又はNR6からなる成分の群から選択され;
Y4は、-C(R7)(R8)-、O又はNR6からなる成分の群から選択され;
R7及びR8は、独立して、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、カルボキサミドアルキル、シアノ又はハロゲンから選択され;
R6は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択される;
請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1個の中間体化合物のうちの第二の化合物が、
式(III)で表される化合物を活性化剤で活性化することにより形成された、式(IV):
【化13】
で表される中間体化合物であり、ここで、Aは脱離基であり、Y5はO又はSから選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
Aが、塩化物、臭化物、フッ化物、ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、N-ヒドロキシアゾベンゾトリアゾリル、ペンタフルオロフェノキシ及びN-ヒドロキシスルホスクシンイミジルから選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記活性化剤が、クロロギ酸4-ニトロフェニル又はジスクシニルカーボネートからなる活性化剤の群から選択される、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
前記アミン含有生物学的活性成分Dを、脱離基Aの置換により少なくとも1個の中間体化合物のうちの第二の化合物(式(IV))に結合させる、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項46】
少なくとも1個の中間体化合物のうちの第二の化合物から可逆的な第一の保護基PG1を除去するステップを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記可逆的な保護基PG1を除去するステップを、トリフルオロ酢酸又はDTTからなる試薬の群から選択された試薬を用いて実施する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ポリマーR1をXに結合させるステップをさらに含む、請求項46又は47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
第一のポリマー保護基PG1を除去してポリマーR1をXに結合させることにより式(VI):
【化14】
で表される前記少なくとも1個の中間体化合物のうちの第三の化合物を形成させるステップをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項50】
活性化剤を用いて前記少なくとも1個の中間体化合物のうちの第三の化合物を活性化することにより式(VII):
【化15】
[式中、Aは脱離基である]
で表される前記少なくとも1個の中間体化合物のうちの第四の化合物を形成させるステップをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
Aが、塩化物、臭化物、フッ化物、ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、N-ヒドロキシアゾベンゾトリアゾリル、ペンタフルオロフェノキシ及びN-ヒドロキシスルホスクシンイミジルから選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記活性化剤が、クロロギ酸4-ニトロフェニル又はジスクシニルカーボネートからなる活性化剤の群から選択される、請求項50又は51に記載の方法。
【請求項53】
前記アミン含有生物学的活性成分Dを、脱離基Aの置換により式(VII)で表される化合物に結合させる、請求項50〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
式(II)で表される出発分子を第一ポリマーR1と反応させることにより該第一ポリマーR1をXに結合させるステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項55】
Y2を第二の保護基PG2で保護するステップをさらに含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
活性化剤で該プロドラッグを活性化してアミン含有生物学的活性成分Dと反応させることにより式(X):
【化16】
で表される前記少なくとも1個の中間体化合物のうちの第五の化合物を形成させるステップをさらに含む、請求項54又は55に記載の方法。
【請求項57】
前記活性化剤が、クロロギ酸4-ニトロフェニル又はジスクシニルカーボネートからなる活性化剤の群から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
Y2から前記第二の保護基PG2を除去し、そして、Y2を、
【化17】
[ここで、
Wは、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキル、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
Nuは、求核性成分であり;
Y1は、O、S又はNR6からなる成分の群から選択され;
Y4は、-C(R7)(R8)-、O、NR6からなる成分の群から選択され;そして
R7及びR8は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、カルボキサミドアルキル、シアノ又はハロゲンから選択される]
でアシル化する、請求項56又は57に記載の方法。
【請求項59】
前記第二の可逆的基PG2の除去を、トリフルオロ酢酸又はDTTからなる試薬の群から選択される試薬を用いて実施する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
除去可能な第一の保護基PG1をXに結合させ、除去可能な第二の保護基PG2を式(II)で表される出発化合物に結合させた後、活性化剤を用いて活性化することにより、式(VIII):
【化18】
[式中、Aは脱離基である]
で表される前記少なくとも1個の中間体化合物のうちの第六の化合物を形成させるステップを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項61】
Aが、塩化物、ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、N-ヒドロキシアゾベンゾトリアゾリル、ペンタフルオロフェノキシ及びN-ヒドロキシスルホスクシンイミジルからなる脱離基の群から選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記活性化剤が、クロロギ酸4-ニトロフェニル又はジスクシニルカーボネートからなる活性化剤の群から選択される、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
前記アミン含有生物学的活性成分Dを、脱離基Aの置換により少なくとも1個の中間体化合物のうちの第六の化合物に結合させる、請求項60〜62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
Xから前記第一の保護基PG1を除去してポリマーR1を結合させるステップを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
Y2から前記第二の保護基PG2を除去し、そして、Y2を、
【化19】
[ここで、
Wは、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキル、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
Nuは、求核性成分であり;
Y1は、O、S又はNR6からなる成分の群から選択され;
Y4は、-C(R7)(R8)-、O又はNR6からなる成分の群から選択され;そして
R7及びR8は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、カルボキサミドアルキル、シアノ又はハロゲンから選択される]
でアシル化する、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
Y2から前記第二の保護基PG2を除去し、そして、Y2を、
【化20】
[ここで、
Wは、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキル、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
Nuは、求核性成分であり;
Y1は、O、S又はNR6からなる成分の群から選択され;
Y4は、-C(R7)(R8)-、O又はNR6からなる成分の群から選択され;そして
R7及びR8は、水素、置換若しくは非置換の直鎖アルキル、分枝鎖アルキル若しくは環状アルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアルキル若しくはヘテロアリール、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、カルボキサミドアルキル、シアノ又はハロゲンから選択される]
でアシル化する、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
Xから前記第一の保護基PG1を除去してポリマーR1を結合させるステップを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
Y2を、
【化21】
[ここで、
Wは、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキル、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
Nuは、求核性成分であり;
Y1は、O、S又はNR6からなる成分の群から選択され;
Y4は、-C(R7)(R8)-、O又はNR6からなる成分の群から選択され;そして
R7及びR8は、水素、置換若しくは非置換の直鎖アルキル、分枝鎖アルキル若しくは環状アルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアルキル若しくはヘテロアリール、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、カルボキサミドアルキル、シアノ又はハロゲンから選択される]
でアシル化して前記少なくとも1個の中間体化合物のうちの第三の化合物を形成させるステップを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項69】
活性化剤を用いて前記少なくとも1個の中間体化合物のうちの第三の化合物を活性化して式(VII):
【化22】
[式中、Aは脱離基である]
で表される前記少なくとも1個の中間体化合物のうちの第七の化合物を形成させるステップをさらに含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
Aが、塩化物、ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、N-ヒドロキシアゾベンゾトリアゾリル、ペンタフルオロフェノキシ及びN-ヒドロキシスルホスクシンイミジルからなる脱離基の群から選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記活性化剤が、クロロギ酸4-ニトロフェニル又はジスクシニルカーボネートからなる活性化剤の群から選択される、請求項69又は70に記載の方法。
【請求項72】
前記アミン含有生物学的活性成分Dを、脱離基Aの置換により式(VII)で表される化合物に結合させる、請求項69〜71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
式(II)で表される前記出発分子を、式(IIb):
【化23】
[式中、R2は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル又はカルボキサミドアルキルから選択される]
で表される出発分子で置き換える、請求項40〜72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
請求項1〜36のいずれか1項に記載のプロドラッグを加水分解する方法であって、該プロドラッグをpHが約7.4である溶液の中に入れるステップを含む、前記方法。
【請求項75】
前記溶液が細胞外液である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
アミン含有成分を生体に投与する方法であって:
請求項1〜39のいずれか1項に記載の高分子カスケードプロドラッグを提供する第一ステップ;
前記高分子カスケードプロドラッグを当該生体に投与する第二ステップ;
及び、
実質的に非酵素的な反応を用いて、前記高分子カスケードプロドラッグから当該アミン含有成分を開裂させる第三ステップ;
を含む、前記方法。
【請求項77】
前記第三ステップを細胞外液内で行わせる、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記実質的に非酵素的な反応が加水分解のステップを含む、請求項76又は77に記載の方法。
【請求項79】
前記実質的に非酵素的な反応が分子内環化又は分子内触媒作用のステップを含む、請求項76〜78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記リンカーの少なくとも一部分を立体要求性キャリヤーで立体的に保護するステップをさらに含む、請求項76〜79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
請求項1〜39のいずれか1項に記載の高分子カスケードプロドラッグにおいて、求核性成分含有リンカーの実質的に非酵素的な反応により、前記アミン含有成分を前記キャリヤーから開裂させる方法。
【請求項82】
前記実質的に非酵素的な反応を約7.4のpHで行わせる、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記キャリヤーに結合している該アミン含有成分を細胞外液内で開裂させる、請求項81又は82に記載の方法。
【請求項84】
前記実質的に非酵素的な反応が加水分解のステップを含む、請求項81〜83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記実質的に非酵素的な反応が分子内環化又は触媒作用のステップを含む、請求項81〜84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記求核性成分含有リンカーの少なくとも一部分を立体要求性キャリヤーで立体的に保護するステップをさらに含む、請求項81〜85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記アミン含有成分が生物学的に活性な成分である、請求項81〜86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
治療上有用な濃度の生物学的に活性な分子を提供する方法であって、該生物学的に活性な分子を請求項1〜39のいずれか1項に記載のプロドラッグからインビボで開裂させることによる、前記方法。
【請求項1】
高分子カスケードプロドラッグであって、
アミンを含む生物学的に活性な成分と、
少なくとも1個の求核性成分を有していてキャリヤーとは異なるマスキング基と
を含む高分子カスケードプロドラッグ。
【請求項2】
以下の構造:
【化1】
[ここで、
Tは、D又はAであり;
Dは、アミンを含む生物学的に活性な成分の残基であり;
Aは、脱離基であり;
Xは、R5-Y6のようなスペーサー成分であり;
Y1、Y2は、それぞれ、互いに独立して、O、S又はNR6であり得;
Y3、Y5は、それぞれ、互いに独立して、O又はSであり得;
Y4は、O、NR6又は-C(R7)(R8)-であり;
Y6は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素-炭素結合若しくは自由電子対を含むヘテロ原子であるか、又は、存在せず;
R3は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、又は、カルボキサミドアルキルから選択され;
R4は、独立して、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルコキシ、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、シアノ、又は、ハロゲンから選択され;
R5は、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
R7及びR8は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、カルボキサミドアルキル、シアノ、又は、ハロゲンから選択され;
R6は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
R1は、ポリマーであり;
Wは、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキル、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
Nuは、求核性成分であり;
nは、ゼロ又は正の整数であり;そして
Arは、複数の置換基を有する芳香族炭化水素又は複数の置換基を有する芳香族ヘテロ環である]
を有する請求項1に記載のプロドラッグ又は対応する高分子カスケードプロドラッグリンカー試薬。
【請求項3】
以下の構造:
【化2】
[ここで、
Tは、D又はAであり;
Dは、アミンを含む生物学的に活性な分子の残基であり;
Aは、脱離基であり;
Xは、R5-Y6のようなスペーサー成分であり;
Y1、Y2は、それぞれ、互いに独立して、O、S又はNR6であり得;
Y3、Y5は、それぞれ、互いに独立して、O又はSであり得;
Y4は、O、NR6又は-C(R7)(R8)-であり;
Y6は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素-炭素結合若しくは自由電子対を含むヘテロ原子であるか、又は、存在せず;
R2及びR3は、独立して、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、又は、カルボキサミドアルキルから選択され;
R4は、独立して、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルコキシ、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、シアノ、又は、ハロゲンから選択され;
R5は、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
R7及びR8は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、カルボキサミドアルキル、シアノ、又は、ハロゲンから選択され;
R6は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
R1は、ポリマーであり;
Wは、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキル、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
Nuは、求核性成分であり;
nは、ゼロ又は正の整数であり;そして
Arは、複数の置換基を有する芳香族炭化水素又は複数の置換基を有する芳香族ヘテロ環である]
を有する請求項1に記載のプロドラッグ又は対応する高分子カスケードプロドラッグリンカー試薬。
【請求項4】
前記生物学的に活性な成分が、小分子の生物学的に活性な作用物質又は生体高分子からなる生物学的成分の群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項5】
前記生体高分子が、タンパク質、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド及びペプチド核酸からなる生体高分子の群から選択される、請求項4に記載のプロドラッグ。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、ACTH、アデノシンデアミナーゼ、アガルシダーゼ、アルブミン、α-1アンチトリプシン(AAT)、α-1プロテイナーゼインヒビター(API)、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、アンクロドセリンプロテアーゼ、抗体(モノクローナル又はポリクローナル、及び、フラグメント又は融合物)、抗トロンビンIII、抗トリプシン、アプロチニン、アスパラギナーゼ、ビファリン、骨形成タンパク質、カルシトニン(サケ)、コラゲナーゼ、DNアーゼ、エンドルフィン、エンフュービルタイド、エンケファリン、エリスロポエチン、VIIa因子、VIII因子、VIIIa因子、IX因子、フィブリノリジン、融合タンパク質、卵胞刺激ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、ガラクトシダーゼ、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド様GLP-1、グルコセレブロシダーゼ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PLAP)、絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、ヘモグロビン、B型肝炎ワクチン、ヒルジン、ヒアルロニダーゼ、イズルノニダーゼ、免疫グロブリン、インフルエンザワクチン、インターロイキン(1α、1β、2、3、4、6、10、11、12)、IL-1受容体拮抗薬(rhIL-Ira)、インスリン、インターフェロン(α2a、α2b、α2c、β1a、β1b、γ1a、γ1b)、角質細胞増殖因子(KGF)、トランスホーミング増殖因子、ラクターゼ、ロイプロリド、レボチロキシン、黄体形成ホルモン、ライムワクチン、ナトリウム利尿ペプチド、パンクレリパーゼ、パパイン、副甲状腺ホルモン、PDGF、ペプシン、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼ(PAF-AH)、プロラクチン、タンパク質C、オクトレオチド、セクレチン、セルモレリン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ソマトロピン(成長ホルモン)、ソマトスタチン、ストレプトキナーゼ、スクラーゼ、破傷風毒素フラグメント、チラクターゼ、トロンビン、チモシン、甲状腺刺激ホルモン、チロトロピン、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF受容体-IgG Fc、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、TSH、尿酸オキシダーゼ、ウロキナーゼ、ワクチン及び植物性タンパク質(例えば、レクチン及びリシン)からなるポリペプチドの群から選択される、請求項5に記載のプロドラッグ。
【請求項7】
前記タンパク質が、組換えDNA技術により調製されたタンパク質である、請求項5に記載のプロドラッグ。
【請求項8】
前記タンパク質が、抗体フラグメント、一本鎖結合タンパク質、触媒性抗体及び融合タンパク質からなるタンパク質の群から選択される、請求項5に記載のプロドラッグ。
【請求項9】
前記タンパク質が、抗体、カルシトニン、G-CSF、GM-CSF、エリスロポエチン、ヘモグロビン、インターロイキン、インスリン、インターフェロン、SOD、ソマトロピン、TNF、TNF-受容体-IgC Fc、グルカゴン様ペプチド様GLP-1からなるタンパク質の群から選択される、請求項5に記載のプロドラッグ。
【請求項10】
前記小分子生物学的活性作用物質が、少なくとも1個の第一級アミノ基又は第二級アミノ基を有する、中枢神経系-活性作用物質、抗感染症薬、抗新生物薬、抗細菌薬、抗真菌薬、鎮痛薬、避妊薬、抗炎症薬、ステロイド性作用薬、血管拡張性作用薬、血管収縮作用薬及び心臓血管作用薬からなる作用物質の群から選択される、請求項4に記載のプロドラッグ。
【請求項11】
前記小分子生物学的活性作用物質が、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、アミノグルテチミド、アマンタジン、ジアフェニルスルホン、エタンブトール、スルファジアジン、スルファメラジン、スルファメトキサゾール、スルファレン、クリナフロキサシン、モキシフロキサシン、シプロフロキサシン、エノキサシン、ノルフロキサシン、ネオマイシンB、スプレクチノマイシン、カナマイシンA、メロペネム、ドパミン、ドブタミン、リシノプリル、セロトニン、アシビシン及びカルブタミドからなる化合物の群から選択される、請求項4に記載のプロドラッグ。
【請求項12】
R4が、水素、メチル、エチル、エトキシ、メトキシ、並びに、1個〜6個の炭素原子を含む他の直鎖アルキル、シクロアルキル又は分枝鎖アルキル及びヘテロアルキルからなる小さな置換基の群から選択される、請求項2又は3に記載のプロドラッグ。
【請求項13】
R1が、ポリアルキルオキシをベースとするポリマー、例えば、ポリ(プロピレングリコール)又はポリ(エチレングリコール)、デキストラン、キトサン、ヒアルロン酸及び誘導体、アルギナート、キシラン、マンナン、カラギーナン、アガロース、セルロース、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)及び炭水化物をベースとする他のポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(オキサゾリン)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ウレタン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、例えば、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)(HMPA)、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、例えば、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(有機ホスファゼン)、ポリ(シロキサン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(エステル)、例えば、ポリ(乳酸)又はポリ(グリコール酸)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(アミノ酸)、例えば、ポリ(グルタミン酸)、コラーゲン、ゼラチン、コポリマー、グラフトコポリマー、架橋ポリマー、並びに、上記で挙げたポリマーに由来するブロックコポリマーからなるポリマーの群から選択される、請求項2又は3に記載のプロドラッグ。
【請求項14】
R1がヒドロゲルである、請求項2又は3に記載のプロドラッグ。
【請求項15】
R1が、分岐ポリマー又は高分岐ポリマーである、請求項2又は3に記載のプロドラッグ。
【請求項16】
R1が、デンドリマー又は高密度スターポリマーである、請求項2又は3に記載のプロドラッグ。
【請求項17】
R1が生体高分子である、請求項2又は3に記載のプロドラッグ。
【請求項18】
R1がタンパク質である、請求項17に記載のプロドラッグ。
【請求項19】
前記タンパク質が、アルブミン、抗体、繊維素、カゼイン又は他の血漿タンパク質である、請求項18に記載のプロドラッグ。
【請求項20】
R1が、1種類以上の生物学的に活性な物質をさらに含む、請求項2〜19のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項21】
R1の前記ポリマーが、Xに結合するための少なくとも1個の官能基を有している、請求項2〜20のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項22】
前記少なくとも1個の官能基が、カルボン酸及び活性化誘導体、アミノ、マレイミド、チオール、スルホン酸及び誘導体、カーボネート及び誘導体、カルバメート及び誘導体、ヒドロキシル、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン、イソシアネート、イソチオシアネート、リン酸及び誘導体、ホスホン酸及び誘導体、ハロアセチル、ハロゲン化アルキル、アクリロイル、アリール化剤、例えば、フッ化アリール、ヒドロキシルアミン、ジスルフィド、例えば、ピリジルジスルフィド、ビニルスルホン、ビニルケトン、ジアゾアルカン、ジアゾアセチル化合物、エポキシド、オキシラン並びにアジリジンからなる官能基の群から選択される、請求項21に記載のプロドラッグ。
【請求項23】
前記少なくとも1個の官能基が、チオール、マレイミド、アミノ、カルボン酸及び誘導体、カーボネート及び誘導体、カルバメート及び誘導体、アルデヒド並びにハロアセチルからなる官能基の群から選択される、請求項21又は22に記載のプロドラッグ。
【請求項24】
XとR1の間で形成される結合又は基が、ジスルフィド、S-スクシンイミド、アミド、アミノ、カルボン酸エステル、スルホンアミド、カルバメート、カーボネート、エーテル、オキシム、ヒドラゾン、尿素、チオ尿素、ホスフェート、ホスホネートからなる結合又は基の群から選択される、請求項21〜23のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項25】
XとR1の間で形成される結合又は基が、S-スクシンイミド、アミド、カルバメート及び尿素からなる結合又は基の群から選択される、請求項21〜24のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項26】
Aが、塩化物、臭化物、フッ化物、ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、N-ヒドロキシアゾベンゾトリアゾリル、ペンタフルオロフェノキシ及びN-ヒドロキシスルホスクシンイミジルからなる脱離基の群から選択される、請求項2〜25のいずれか1項に記載の高分子カスケードプロドラッグリンカー試薬。
【請求項27】
前記成分:
【化3】
が、好ましくは、
【化4】
からなる成分の群から選択される、請求項2又は3に記載のプロドラッグ。
【請求項28】
前記成分:
【化5】
が、
【化6】
である、請求項27に記載のプロドラッグ。
【請求項29】
R6が、さらに、Nu-Wであることができる、請求項27又は28に記載のプロドラッグ。
【請求項30】
請求項2〜29のいずれか1項に記載のプロドラッグにおいて、
【化7】
が、
【化8】
[ここで、R9、R10、R11及びR12は、独立して、水素、置換若しくは非置換のアルキル若しくはヘテロアルキル、又は、置換若しくは非置換のアリール若しくはヘテロアリールから選択される]
である、前記プロドラッグ。
【請求項31】
R9、R10、R11及びR12が、独立して、水素、又は、置換若しくは非置換のアルキルから選択される、請求項30に記載のプロドラッグ。
【請求項32】
Nuが、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、チオール、カルボン酸、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン及び窒素含有ヘテロアリールからなる求核性成分の群から選択される、請求項2〜31のいずれか1項に記載のプロドラッグ。
【請求項33】
R7及び/又はR8が水素ではない、請求項30又は31に記載のプロドラッグ。
【請求項34】
Arが、以下の構造:
【化9】
を有する成分の群から選択され、ここで、Wは、互いに独立して、O、S又はNである、請求項2又は3に記載のプロドラッグ。
【請求項35】
Arが、単環式又は二環式の芳香族炭化水素又は芳香族ヘテロ環である、請求項2又は3に記載のプロドラッグ。
【請求項36】
Arが、5員又は6員の芳香族炭化水素又は芳香族ヘテロ環である、請求項2又は3に記載のプロドラッグ。
【請求項37】
Tが、生物学的に活性な成分と共有結合するための脱離基Aである、請求項2〜36のいずれか1項に記載の高分子カスケードプロドラッグリンカー試薬。
【請求項38】
前記生物学的に活性な成分がアミン含有分子である、請求項37に記載の高分子カスケードプロドラッグリンカー試薬。
【請求項39】
前記生物学的に活性な成分が、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質である、請求項37又は38に記載の高分子カスケードプロドラッグリンカー試薬。
【請求項40】
高分子プロドラッグを合成する方法であって、
式(II):
【化10】
で表される出発分子を提供するステップ;
式(II)で表される該出発分子から少なくとも1個の中間体化合物を合成するステップ;
及び、
アミン含有生物学的活性成分Dを、該少なくとも1個の中間体化合物に結合させて、該高分子プロドラッグを形成させるステップ;
を含み、ここで、
Y2は、O、S又はNR6から選択され;
Y3は、O又はSから選択され;
Xは、R5-Y6のようなスペーサー成分であり;
R3は、独立して、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル又はカルボキサミドアルキルから選択され;
R4は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルコキシ、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ若しくはヘテロアリールオキシ、シアノ又はハロゲンから選択され;
R5は、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
R6は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
Y6は、O、S、NR6、スクシンイミド、マレイミド、不飽和炭素-炭素結合又は自由電子対を含むヘテロ原子であり;
nは、ゼロ又は正の整数であり;そして
Arは、複数の置換基を有する芳香族炭化水素又は複数の置換基を有する芳香族ヘテロ環である;
前記方法。
【請求項41】
前記少なくとも1個の中間体化合物うちの第一の化合物が、
Y2を、
【化11】
でアシル化し、そして、場合により第一の保護基PG1を結合させることにより合成された、式(III):
【化12】
で表される中間体分子であり、ここで、
Nuは、求核性成分であり;
Wは、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキル、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
Y1は、O、S又はNR6からなる成分の群から選択され;
Y4は、-C(R7)(R8)-、O又はNR6からなる成分の群から選択され;
R7及びR8は、独立して、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、カルボキサミドアルキル、シアノ又はハロゲンから選択され;
R6は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択される;
請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1個の中間体化合物のうちの第二の化合物が、
式(III)で表される化合物を活性化剤で活性化することにより形成された、式(IV):
【化13】
で表される中間体化合物であり、ここで、Aは脱離基であり、Y5はO又はSから選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
Aが、塩化物、臭化物、フッ化物、ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、N-ヒドロキシアゾベンゾトリアゾリル、ペンタフルオロフェノキシ及びN-ヒドロキシスルホスクシンイミジルから選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記活性化剤が、クロロギ酸4-ニトロフェニル又はジスクシニルカーボネートからなる活性化剤の群から選択される、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
前記アミン含有生物学的活性成分Dを、脱離基Aの置換により少なくとも1個の中間体化合物のうちの第二の化合物(式(IV))に結合させる、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項46】
少なくとも1個の中間体化合物のうちの第二の化合物から可逆的な第一の保護基PG1を除去するステップを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記可逆的な保護基PG1を除去するステップを、トリフルオロ酢酸又はDTTからなる試薬の群から選択された試薬を用いて実施する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ポリマーR1をXに結合させるステップをさらに含む、請求項46又は47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
第一のポリマー保護基PG1を除去してポリマーR1をXに結合させることにより式(VI):
【化14】
で表される前記少なくとも1個の中間体化合物のうちの第三の化合物を形成させるステップをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項50】
活性化剤を用いて前記少なくとも1個の中間体化合物のうちの第三の化合物を活性化することにより式(VII):
【化15】
[式中、Aは脱離基である]
で表される前記少なくとも1個の中間体化合物のうちの第四の化合物を形成させるステップをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
Aが、塩化物、臭化物、フッ化物、ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、N-ヒドロキシアゾベンゾトリアゾリル、ペンタフルオロフェノキシ及びN-ヒドロキシスルホスクシンイミジルから選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記活性化剤が、クロロギ酸4-ニトロフェニル又はジスクシニルカーボネートからなる活性化剤の群から選択される、請求項50又は51に記載の方法。
【請求項53】
前記アミン含有生物学的活性成分Dを、脱離基Aの置換により式(VII)で表される化合物に結合させる、請求項50〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
式(II)で表される出発分子を第一ポリマーR1と反応させることにより該第一ポリマーR1をXに結合させるステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項55】
Y2を第二の保護基PG2で保護するステップをさらに含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
活性化剤で該プロドラッグを活性化してアミン含有生物学的活性成分Dと反応させることにより式(X):
【化16】
で表される前記少なくとも1個の中間体化合物のうちの第五の化合物を形成させるステップをさらに含む、請求項54又は55に記載の方法。
【請求項57】
前記活性化剤が、クロロギ酸4-ニトロフェニル又はジスクシニルカーボネートからなる活性化剤の群から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
Y2から前記第二の保護基PG2を除去し、そして、Y2を、
【化17】
[ここで、
Wは、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキル、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
Nuは、求核性成分であり;
Y1は、O、S又はNR6からなる成分の群から選択され;
Y4は、-C(R7)(R8)-、O、NR6からなる成分の群から選択され;そして
R7及びR8は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、カルボキサミドアルキル、シアノ又はハロゲンから選択される]
でアシル化する、請求項56又は57に記載の方法。
【請求項59】
前記第二の可逆的基PG2の除去を、トリフルオロ酢酸又はDTTからなる試薬の群から選択される試薬を用いて実施する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
除去可能な第一の保護基PG1をXに結合させ、除去可能な第二の保護基PG2を式(II)で表される出発化合物に結合させた後、活性化剤を用いて活性化することにより、式(VIII):
【化18】
[式中、Aは脱離基である]
で表される前記少なくとも1個の中間体化合物のうちの第六の化合物を形成させるステップを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項61】
Aが、塩化物、ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、N-ヒドロキシアゾベンゾトリアゾリル、ペンタフルオロフェノキシ及びN-ヒドロキシスルホスクシンイミジルからなる脱離基の群から選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記活性化剤が、クロロギ酸4-ニトロフェニル又はジスクシニルカーボネートからなる活性化剤の群から選択される、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
前記アミン含有生物学的活性成分Dを、脱離基Aの置換により少なくとも1個の中間体化合物のうちの第六の化合物に結合させる、請求項60〜62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
Xから前記第一の保護基PG1を除去してポリマーR1を結合させるステップを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
Y2から前記第二の保護基PG2を除去し、そして、Y2を、
【化19】
[ここで、
Wは、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキル、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
Nuは、求核性成分であり;
Y1は、O、S又はNR6からなる成分の群から選択され;
Y4は、-C(R7)(R8)-、O又はNR6からなる成分の群から選択され;そして
R7及びR8は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、カルボキサミドアルキル、シアノ又はハロゲンから選択される]
でアシル化する、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
Y2から前記第二の保護基PG2を除去し、そして、Y2を、
【化20】
[ここで、
Wは、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキル、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
Nuは、求核性成分であり;
Y1は、O、S又はNR6からなる成分の群から選択され;
Y4は、-C(R7)(R8)-、O又はNR6からなる成分の群から選択され;そして
R7及びR8は、水素、置換若しくは非置換の直鎖アルキル、分枝鎖アルキル若しくは環状アルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアルキル若しくはヘテロアリール、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、カルボキサミドアルキル、シアノ又はハロゲンから選択される]
でアシル化する、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
Xから前記第一の保護基PG1を除去してポリマーR1を結合させるステップを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
Y2を、
【化21】
[ここで、
Wは、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のヘテロアルキル、又は、置換若しくは非置換のヘテロアリールから選択され;
Nuは、求核性成分であり;
Y1は、O、S又はNR6からなる成分の群から選択され;
Y4は、-C(R7)(R8)-、O又はNR6からなる成分の群から選択され;そして
R7及びR8は、水素、置換若しくは非置換の直鎖アルキル、分枝鎖アルキル若しくは環状アルキル、アリール、置換アリール、置換若しくは非置換のヘテロアルキル若しくはヘテロアリール、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル、カルボキサミドアルキル、シアノ又はハロゲンから選択される]
でアシル化して前記少なくとも1個の中間体化合物のうちの第三の化合物を形成させるステップを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項69】
活性化剤を用いて前記少なくとも1個の中間体化合物のうちの第三の化合物を活性化して式(VII):
【化22】
[式中、Aは脱離基である]
で表される前記少なくとも1個の中間体化合物のうちの第七の化合物を形成させるステップをさらに含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
Aが、塩化物、ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N-ヒドロキシスクシンイミジル、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、N-ヒドロキシアゾベンゾトリアゾリル、ペンタフルオロフェノキシ及びN-ヒドロキシスルホスクシンイミジルからなる脱離基の群から選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記活性化剤が、クロロギ酸4-ニトロフェニル又はジスクシニルカーボネートからなる活性化剤の群から選択される、請求項69又は70に記載の方法。
【請求項72】
前記アミン含有生物学的活性成分Dを、脱離基Aの置換により式(VII)で表される化合物に結合させる、請求項69〜71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
式(II)で表される前記出発分子を、式(IIb):
【化23】
[式中、R2は、水素、置換若しくは非置換の直鎖、分枝鎖若しくは環状のアルキル若しくはヘテロアルキル、アリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、シアノ、ニトロ、ハロゲン、カルボキシ、カルボキシアルキル、アルキルカルボニル又はカルボキサミドアルキルから選択される]
で表される出発分子で置き換える、請求項40〜72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
請求項1〜36のいずれか1項に記載のプロドラッグを加水分解する方法であって、該プロドラッグをpHが約7.4である溶液の中に入れるステップを含む、前記方法。
【請求項75】
前記溶液が細胞外液である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
アミン含有成分を生体に投与する方法であって:
請求項1〜39のいずれか1項に記載の高分子カスケードプロドラッグを提供する第一ステップ;
前記高分子カスケードプロドラッグを当該生体に投与する第二ステップ;
及び、
実質的に非酵素的な反応を用いて、前記高分子カスケードプロドラッグから当該アミン含有成分を開裂させる第三ステップ;
を含む、前記方法。
【請求項77】
前記第三ステップを細胞外液内で行わせる、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記実質的に非酵素的な反応が加水分解のステップを含む、請求項76又は77に記載の方法。
【請求項79】
前記実質的に非酵素的な反応が分子内環化又は分子内触媒作用のステップを含む、請求項76〜78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記リンカーの少なくとも一部分を立体要求性キャリヤーで立体的に保護するステップをさらに含む、請求項76〜79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
請求項1〜39のいずれか1項に記載の高分子カスケードプロドラッグにおいて、求核性成分含有リンカーの実質的に非酵素的な反応により、前記アミン含有成分を前記キャリヤーから開裂させる方法。
【請求項82】
前記実質的に非酵素的な反応を約7.4のpHで行わせる、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記キャリヤーに結合している該アミン含有成分を細胞外液内で開裂させる、請求項81又は82に記載の方法。
【請求項84】
前記実質的に非酵素的な反応が加水分解のステップを含む、請求項81〜83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記実質的に非酵素的な反応が分子内環化又は触媒作用のステップを含む、請求項81〜84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記求核性成分含有リンカーの少なくとも一部分を立体要求性キャリヤーで立体的に保護するステップをさらに含む、請求項81〜85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記アミン含有成分が生物学的に活性な成分である、請求項81〜86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
治療上有用な濃度の生物学的に活性な分子を提供する方法であって、該生物学的に活性な分子を請求項1〜39のいずれか1項に記載のプロドラッグからインビボで開裂させることによる、前記方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−530485(P2007−530485A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504348(P2007−504348)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003061
【国際公開番号】WO2005/099768
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(506318698)コンプレックス バイオシステムズ ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003061
【国際公開番号】WO2005/099768
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(506318698)コンプレックス バイオシステムズ ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】
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