説明

自己乳化型浴用剤組成物

【課題】長期保存安定性に優れ、浴湯への投入時の乳化分散性の良好な自己乳化型浴用剤を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)、(C)及び(D)
(A)25℃で液状の炭化水素油、
(B)グリセリン 0.2質量%以上2質量%未満、
(C)HLB8.5〜16の非イオン性界面活性剤から選ばれるHLB値の異なる2種以上の非イオン性界面活性剤、
(D)水 1〜3質量%
を含有する自己乳化型浴用剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴湯に投入した際に自己乳化する浴用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
浴湯に投入した際に自己乳化することにより白濁する自己乳化型浴用剤として、種々の界面活性剤と油性成分を組み合わせたものが提案されている(特許文献1〜4)。これら自己乳化型の浴用剤に配合される代表的な油性成分は、流動パラフィンに代表される常温で液体の飽和炭化水素類である。液体の炭化水素油は、肌にしっとり感を与えるものであるが、炭化水素類は疎水性が強いため、多量の界面活性剤やオレイン酸等の極性油を併用することにより、浴水に溶解したときの乳化分散性や浴用剤自体の安定性を高めている。
【0003】
さらに乳化分散性と感触を高めるために、炭化水素油にエステル油を加え、さらに非イオン性界面活性剤量を一定量配合した自己乳化型浴用剤が報告されている(特許文献5)。
【特許文献1】特開昭61−176520号公報
【特許文献2】特開昭61−227519号公報
【特許文献3】特開平6−157285号公報
【特許文献4】特開平10−36250号公報
【特許文献5】特開2000−327559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら自己乳化型浴用剤は、浴湯に投入する前は透明な液体であり、浴湯に投入した際に自己乳化により浴湯が白濁するという特徴を有する。しかしながら、炭化水素油やエステル油等の油性成分や界面活性剤を調整し、浴湯へ投入した際の乳化性、肌へのしっとり感、及び保存安定性のすべてを満たす自己乳化型浴用剤を得るには十分でなく、更に検討が行われている。例えば、肌へのしっとり感を増すために炭化水素油を増やすと、保存時に浴用剤自体が白濁や分離し易くなり、特に白濁等が生じた浴用剤を浴湯に投入したときの分散性が悪くなり油浮き等が生じてしまう。
従って、本発明の目的は、長期保存安定性に優れ、浴湯への投入時の乳化分散性が良好で、かつ十分な乳濁(白濁)状を呈する自己乳化型浴用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者は、長期保存安定性と自己乳化性について種々検討した結果、炭化水素油と一定のHLBの非イオン性界面活性剤の2種以上に加えて、グリセリンと水を組み合せて配合することにより、高温で長期間保存後も透明性が確保されており、浴湯への投入時に乳化分散性が良好であることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D)
(A)25℃で液状の炭化水素油、
(B)グリセリン 0.2質量%以上2質量%未満、
(C)HLB8.5〜16の非イオン性界面活性剤から選ばれるHLB値の異なる2種以上の非イオン性界面活性剤、
(D)水 1〜3質量%
を含有する自己乳化型浴用剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の浴用剤は、高温条件に長期間保存した際の高温安定性に優れており、かつ浴湯に投入時には速やかに自己乳化し白濁浴湯が得られる。また、炭化水素油とグリセリンの作用により、入浴後の肌感触も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の自己乳化型浴用剤には、(A)炭化水素油、(B)グリセリン、(C)2種以上の特定のHLBを有する非イオン性界面活性剤及び(D)水を含有する。
【0009】
本発明に用いられる(A)炭化水素油は、25℃で液状であり、例えば流動パラフィン、スクワラン、スクワレン等が挙げられる。このうち、流動パラフィンが特に好ましい。これらの炭化水素油は、1種以上を用いることができ、湯上りの肌にしっとり感を付与する点から、全組成中に60質量%以上、さらに65〜95質量%、特に72〜85質量%含有するのが好ましい。
【0010】
本発明に用いられる(B)グリセリンとしては、通常化粧料等に用いられる濃グリセリンとして市販されているものを用いることができる。(B)グリセリンの全組成中の含有量は、高温保存安定性の点から、さらには肌感触の点から、0.2質量%以上2質量%未満であるが、0.3〜1.8質量%が好ましく、特に0.5〜1.5質量%が好ましい。
【0011】
本発明に用いられる(C)非イオン性界面活性剤は、HLB8.5〜16のものから2種以上が選ばれる。より具体的には、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(6)ソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン(9)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(6)ステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;モノオレイン酸ポリオキシエチレン(15)グリセリル等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(30)ソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(40)ソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(60)ソルビット等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;ヤシ油脂肪酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。このうち、乳化性及び保存安定性の点からポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを用いるのが特に好ましい。
【0012】
これらのうち成分(C)としては、HLB8.5〜11.4の非イオン性界面活性剤1種以上とHLB11.5〜16の非イオン性界面活性剤1種以上とを組み合せるのが好ましい。さらに、HLB8.5〜11.4の非イオン性界面活性剤1種以上と、HLB11.5〜14.4の非イオン性界面活性剤1種以上と、HLB14.5〜16の非イオン性界面活性剤1種以上とを組み合せるのが特に好ましい。
なお、ここでHLB値はGriffinの式により求めたものである。
【0013】
成分(C)の全組成中の含有量は、乳化分散性、自己乳化性、入浴後のしっとり感、皮膚刺激性、保存安定性の点から、5〜20質量%、さらに7〜17質量%、特に8〜15質量%が好ましい。
【0014】
また、本発明の自己乳化型浴用剤には、安定性の点から少量の水、すなわち1〜3質量%の水を含有する。特に安定性を考慮するとグリセリンの配合量に対して水の量が多いほうが好ましい。
【0015】
本発明の浴用剤には、さらに通常の浴用剤に用いられる成分、例えば無機塩類、有機酸類、グリセリン以外のアルコール類、水溶性高分子類、生薬類やビタミン類等の各種薬効成分、雲母末や中性白土等の白濁剤、色素や顔料類、殺菌剤、防腐剤等を適宜配合できる。また、ラベンダー油やローズ油等の天然香料類、シトラール、ムスク、リモネン等の合成香料類等の香料を配合することができる。
【0016】
本発明の浴用剤は、自己乳化型であり、浴湯に投入したときに乳化して、白濁する。特に、40℃の浴湯に溶解したとき、乳化粒子の平均粒子径が1μm以下となるのが好ましい。また本発明浴用剤は、液状であり、組成物自体の外観は、透明であるのが好ましい。
【実施例】
【0017】
表1及び表2に示す組成の自己乳化型浴用剤を常法により製造し、原液安定性、乳化性及び白濁度を評価した。結果を表1及び表2に併せて示す。なお、配合直後の原液に、分離又は析出があったものは評価を行わなかった。
【0018】
(評価方法)
(1)原液安定性:
各サンプルを50℃もしくは25℃の恒温槽に1ヶ月間静置させ、溶液の状態を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
〈評価基準〉
○:透明均一
△:不透明均一
×:分離、又は析出
(2)乳化性:
各サンプル30gを40℃・180Lの浴湯に投入し均一に溶解させ、乳化性を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
〈評価基準〉
○:油浮きの無い均一白濁溶液
△:若干の油浮きを認めるが均一白濁溶液
×:油浮き、又はクリーム状の分離を認める
(3)白濁度
各サンプル30gを40℃・180Lの浴湯に浴解させ、白濁度を下記の基準で評価した。
〈評価基準〉
○:白い
△:若干白い
×:透明
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
表1及び表2より、本発明の自己乳化型浴用剤組成物は、高温保存しても透明液状を保持しており、かつ自己乳化性も良好であった。グリセリンを含まない比較例1〜3、精製水を配合しない比較例4、グリセリン量の多い比較例5及び6いずれも特に浴用剤自体(原液)の高温保存安定性が悪かった。界面活性剤が1種類の比較例7〜9は、いずれも浴用剤自体(原液)の保存安定性および乳化性に劣るものであった。
また、本発明の組成物を用いて入浴したところ、肌感触が良好であり、かつ香り立ちも良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D)
(A)25℃で液状の炭化水素油、
(B)グリセリン 0.2質量%以上2質量%未満、
(C)HLB8.5〜16の非イオン性界面活性剤から選ばれるHLB値の異なる2種以上の非イオン性界面活性剤、
(D)水 1〜3質量%
を含有する自己乳化型浴用剤組成物。
【請求項2】
成分(C)が、HLB8.5〜11.4の非イオン性界面活性剤1種以上と、HLB11.5〜16の非イオン性界面活性剤1種以上とを含有する請求項1記載の浴用剤組成物。
【請求項3】
成分(C)が、HLB8.5〜11.4の非イオン性界面活性剤1種以上と、HLB11.5〜14.4の非イオン性界面活性剤1種以上と、HLB14.5〜16の非イオン性界面活性剤1種以上とを含有する請求項1又は2記載の浴用剤組成物。
【請求項4】
成分(C)の含有量が5〜20質量%である請求項1〜3のいずれか1項記載の浴用剤組成物。
【請求項5】
組成物の外観が透明である請求項1〜4のいずれか1項記載の浴用剤組成物。

【公開番号】特開2009−191037(P2009−191037A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35160(P2008−35160)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】