説明

自己免疫疾患についてのHSP70に基づく治療

樹状細胞を活性化させる非天然HSP70活性化領域に関する。HSP70活性化領域に結合するポリペプチドを使用し、HSP70に結合しかつHSP70が樹状細胞を活性化することを妨げることによって自己免疫疾患、例えば白斑の治療が可能である。HSP70結合剤は、三量体複合体の形成のために会合しうる三量体化構造エレメントを有する融合タンパク質の形態で構築されうる。HSP70結合タンパク質、融合タンパク質および複合体を使用する白斑を治療するための医薬組成物および方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年9月12日に出願された米国仮特許出願第60/960,022号明細書および2008年5月9日に出願された米国仮特許出願第61/051,720号明細書の優先権を主張するものであり、その各々はその全体が参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、自己免疫疾患、例えば白斑の治療に関する。特に、本発明は、樹状細胞を活性化するヒトHSP70タンパク質、HSP70タンパク質に結合するペプチド、およびペプチドを使用してHSP70によって誘発される自己免疫疾患、例えば白斑を治療するための方法に関する。
【0003】
関連分野の説明
白斑は、主な徴候が皮膚の進行性色素脱失である皮膚障害である。この疾患は、世界人口の1%または米国内だけで約300万人を悩ませている。色素脱失の一般的原因は既存のメラノサイトによるメラニン形成の低下である。しかし、白斑においては、色素脱失は表皮の基底層からのメラノサイトの欠損によって誘発される。
【0004】
白斑を発症する遺伝的傾向を有する個人はほんの一部である。これは拡張した小胞体のプロフィールおよび異常なメラノソームの区画化を含む白斑のメラノサイトにおける内因性異常の存在により反映されている。これらの異常により、白斑患者はいくつかの形態のストレスに感受性を示しうる。ストレスは白斑における増悪因子と考えられている。漂白性のフェノール、UV放射および機械的損傷を含む既知のストレス要因は、ケブナー現象(すなわち損傷を受けた領域に作用するいくつかの皮膚状態の傾向)を引き起こすことになる。患者自身は、ストレス(感情的なものまたは身体的なもののいずれか)がそれらの疾患の主因であると考えている。ストレスの役割は、一部の個人が職場における漂白性のフェノールへの暴露後に白斑を発症することになる場合での「職業性白斑」の存在によってさらに支持される。
【0005】
T細胞浸潤物は、白斑症例の90%超を占める最も一般的な形態である全身性白斑を有する患者に由来する拡大病変の病変部周辺(perilesional)の皮膚において常に認められている。白斑皮膚から単離される腫瘍細胞は、自系メラノサイトに対して細胞毒性を示す。これらの所見は、白斑がストレス下で引き起こされるT細胞媒介性自己免疫疾患と見なされうることを示している。
【0006】
ストレス下の細胞は、主流のタンパク質合成を停止させる一方、熱ショックタンパク質および/またはグルコースに調節されるタンパク質合成を誘発することになる(Welch、1993年;KiangおよびTsokos、1998年)。ストレスタンパク質は、既存の細胞性タンパク質に結合し、それらの分解を阻止し、それによって細胞アポトーシスを回避することになる。T細胞由来のストレスタンパク質画分が、それらが付き添う(chaperone)タンパク質およびペプチド、それ故にそれらの由来である細胞に特異的な免疫応答を開始させうることは十分に確立されている。したがって、腫瘍由来のストレスタンパク質画分は抗腫瘍免疫反応性を惹起させうる。HSP70は、誘導HSP70が生細胞から分泌され、(シャペロンと同様にサイトカインとしても機能する)シャペロカイン(chaperokine)としての機能を果たすことから、これに関連するかなり特異なストレスタンパク質である(Aseaら、2000年)。HSP70を有する小胞のエクソサイトーシスは、交感神経系の活性化に応答して生じ、最終的にいくつかの細胞種においてエクソサイトーシスにおけるシグナルとしての細胞内カルシウムの増加をもたらすと考えられる(JohnsonおよびFleshner、2006年)。この状況にて、樹状細胞(DC)は、処理されて排出リンパ節内のT細胞に提示されうる生細胞由来の抗原ペプチドを備えると同時に、HSP70によって活性化され免疫応答を開始させる。これに関連し、HSP70はナチュラルキラー(NK)細胞の増殖および細胞毒性を刺激し(Multhofら、1999年)、DCにより成熟および1型分極(polarizing)サイトカイン産生を誘発し(Wangら、2002年)、DCによってT細胞のクロスプライミングを刺激しうる(Kammererら、2002年)。最も重要なこととして、HSP70は、マウスにおいて、T細胞耐性を破壊し、自己免疫を誘発することが示されている(Millarら、2003年)。興味深いことに、最近、循環リンパ球上でのHSP70の表面発現の増大が白斑患者において報告された(Fredianiら、2005年)。したがって、ストレスタンパク質の中でHSP70がシャペロンタンパク質に対する免疫反応性の誘導への主要な寄与因子であるようである。
【0007】
HSP70ファミリーは、部分的に構成的に発現されかつ部分的に誘導性のタンパク質をコードする、ヒトにおける染色体1、5、6、9、11、14および21上の少なくとも11の関連性の高い遺伝子からなる(Tavariaら、1996年)。ファミリーメンバー中での共通因子(denominator)は、遺伝子産物の発現が温度上昇によって誘発され(熱ショック)、かつタンパク質がおよそ70kDa(66〜78kDa)の分子量を有する点である(Tavariaら、1996年)。大部分のファミリーメンバーは分子シャペロンとしての機能を果たす。この機能において、HSP70ファミリーメンバーは、発生期のタンパク質のフォールディングを促進し、ポリペプチドを結合させ、かつ成熟タンパク質を転位置させることになる(GethingおよびSambrook、1992年)。HSP70ファミリーの個々のメンバーをコードする遺伝子座は、HSPA1からHSPA9にかけての名称が付けられている(HSPA1およびHSPA2の双方では、複数のメンバーに亜分類される)。個々の遺伝子産物の局在化は、核/細胞質(A1はHSP72またはHsp70iとしても知られ、A8はHSP73またはHSC70としても知られる)からER(5はBiPまたはGRP78としても知られる)およびミトコンドリア(9はGRP75またはPBP74としても知られる)まで、様々である(Tavariaら、1996年)。シャペロカインの機能は、主に誘導HSPA1Aに与えられるように見える(JohnsonおよびFleshner、2006年)。熱ショックの生理学的結果から細胞を保護する遺伝子の進化的保存により、タンパク質のこのファミリーの相同体が植物界および動物界を通して見出されうる。
【0008】
構成的形態のHSP70、HSPA8は、通常であればプロテアソーム分解を受けることになっている細胞質内タンパク質をリソソームに経路変更する。リソソーム分解に向けて経路変更されたタンパク質は、HSP70を含むリソソーム膜複合体によって線状化され、次いでリソソーム膜内に孔を形成するリソソーム関連膜タンパク質−2a(LAMP−2a)分子に移される。一旦、リソソーム内部でタンパク質がHSP70(lyHSP70)に再び遭遇すると、進入する常在リソソームタンパク質が偶発的な分解から保護されうる。関節リウマチにおいては、自己免疫反応性が、HSP70がタンパク質(MHCクラスIIタンパク質を含む)をリソソームまで付き添うプロセスに部分的に与えられている。HSP70は、リソソームの完全性を保護し、酸化的ストレスの状態から保護する(Nylandstedら、2004年)。(細胞質に面する)リソソーム膜内に存在するHSP70はまた、ドッキングタンパク質として、オートファジーと称されるプロセスでのリソソームと膜蓄積物(membranous accumulation)および細胞質タンパク質との融合に(少なくとも部分的には)関与する。オートファジーは、余分な細胞内分子および構造を再生する機能を果たす。破壊されたオートファジーはまた、白斑メラノサイトにおいて認められる膜封入体(membranous inclusion)によって支持されるものとして、白斑において生じうる(Le Pooleら、2000年)。その結果、HSP70およびその共シャペロン(特にCHIP)は、プロテアソーム分解を受け、抗原提示のMHCクラスI経路に入るか、またはリソソーム分解を受けるタンパク質の割合を限定する門番のように見える。MHCクラスII分子を発現する細胞においては、リソソームは、かかるMHCクラスII分子との関連で提示されるべきペプチド源である。したがって、HSP70は、クラスIおよびクラスIIの行先の分離に関与する。
【0009】
常在性組織細胞はまた、MHCクラスII分子を特別な環境下で発現しうる。メラノサイトにおいては、これらの環境はメラノーマおよび白斑において見出される(Le Pooleら、2003年)。メラノサイト細胞は、他の細胞種におけるリソソームに対する等価物としてメラノソームを保有する。メラノソームは、メラノソーム−ファゴソーム融合体に組み込まれる(Le Pooleら、1993年;Le Pooleら、2004年)。HSP70における変異は、エンドソーム/リソソーム区画の破壊に関与している。メラノソームタンパク質の輸送に潜在的に関与する、メラノソームの表面または内部でのHSP70の存在については今日まで検討されていない。しかし、メラノソームの特別な免疫原性は、少なくとも部分的には、白斑メラノサイトによるMHCクラスII分子との関連で免疫系に提示されるメラノサイトに特異的なメラノソームタンパク質に起因する可能性が高い(Wangら、1999年)。また、メラノソームに関連したHSP70はメラノソームの移動の間に外在化され、それはDCによる抗原取り込み、プロセシングおよび提示に潜在的に作用しうる。
【0010】
HSP70−ペプチド複合体に対するいくつかの表面受容体は免疫細胞上で同定されており、それにはLDL受容体関連タンパク質2/α2−マクログロブリンCD91(Basuら、2001年)、スカベンジャー受容体LOX−1(Delnesteら、2002年)、CD94(Grossら、2003年)、SR−A(Berwynら、2003年)、ならびにToll様受容体2および4(Aseaら、2002年)およびCD40(Beckerら、2002年)が含まれる。メラノーマ対白斑におけるメラノサイト細胞に対する抗腫瘍免疫と自己免疫との関係(Dasら、2001年;Turkら、2002年;HoughtonおよびGuevara−Patino、2004年;Engelhornら、2006年)によると、HSPが抗腫瘍免疫に関与した後での白斑における熱ショックタンパク質の関与が指摘されている(SrivastavaおよびUdono、1994年;Castelliら、2004年)。したがって、HSP70をメラノサイトに対する免疫応答の存続から遮断することは、白斑を有する患者にとって有益でありうる。ストレスを受けたメラノサイトは、白斑における樹状細胞(DC)を、ストレスを受けたメラノサイトによるHSP70の放出を介して活性化し、それによってアポトーシス誘発分子(例えばTRAIL)の発現を誘発しうる。さらに、活性化された樹状細胞は活性化後に細胞毒性活性を有し、メラノサイトを殺滅する可能性があり、それによって微小環境下でHSP70のレベルが上昇する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Asea A, Kraeft SK, Kurt-Jones EA, Stevenson MA, Chen LB, Finberg RW, Koo GC, Calderwood SK HSP70 stimulates cytokine production through a CD14-dedendant pathway, demonstrating its dual role as a chaperone and cytokine Nature Med 6: 435-442 (2000)
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【非特許文献42】Welch WJ Heat shock proteins functioning as molecular chaperones: their roles in normal and stressed cells Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci 339: 327-333 (1993)
【非特許文献43】Whitehorn, EA, Tate, E, Yanofsky, S D, Kochersperger, L, Davis A, Mortensen, R B, Yonkovic, S, Bell, K, Dower, W J, and Barrett, R W "A generic method for expression and use of "tagged" soluble versions of cell surface receptors" Bio/Echnology 13: 1215-1219 (1995)
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
白斑のためのケアの標準的方法は、免疫抑制治療としての局所ヒドロコルチゾンの処方、その後の免疫抑制およびメラニン形成刺激の双方をもたらすためのPUVA療法を含み、いずれも成果は限定的である。既存のメラノサイト抗酸化剤の補充用に偽カタラーゼ(pseudocatalase)を使用した結果は不本意であった。効果的治療様式の開発における主な障害は、疾患として既存の病変を誤って認識することであった。したがって、患者、医師、および製薬会社は、色素脱失を妨げようとするのではなく再色素沈着(repigmentation)を達成するための手段を探索している。白斑病変が傷が癒えた時に残る傷跡に酷似することから、これは行うべき重要な区別である。
【0013】
したがって、発明者は、抗メラノサイト免疫の主な扇動因子(instigator)を除去することによって疾患の進行を停止するという当該技術分野における需要を特定している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
一態様では、本発明は、QPGVLIQVYEG[配列番号1]を含むヒトHSP70活性化領域の非天然断片を有するポリペプチドに関する。
【0015】
別の態様では、本発明は、三量体化ドメインとQPGVLIQVYEGに結合する少なくとも1つのポリペプチドとを有する融合タンパク質に関する。ペプチドは、QPGVLIQVYEGに結合するポリペプチド配列を含むループ領域を有するC型レクチン様ドメイン(CLTD)でありうる。また、融合タンパク質は、三量体化ドメインのN末端およびC末端の一方に位置するQPGVLIQVYEGに結合する第1のポリペプチドおよび三量体化ドメインのN末端およびC末端の他方に位置するQPGVLIQVYEGに結合する第2のポリペプチドを有しうる。第1および第2のポリペプチドの一方または双方は、QPGVLIQVYEGに結合するポリペプチド配列を含むループ領域を有するC型レクチン様ドメイン(CLTD)でありうる。三量体化ドメインは、テトラネクチン三量体化構造エレメントでありうる。融合タンパク質は会合し、三量体複合体を形成しうる。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、HSP70活性化領域に結合するペプチドおよび薬学的に許容可能な賦形剤を含有する医薬組成物に関する。組成物を使用し、白斑またはHSP70によって引き起こされる他の自己免疫疾患を患う患者の治療が可能である。
【0017】
本発明の様々なさらなる態様は、HSP70による樹状細胞の活性化を妨げる方法を含む。本方法は、樹状細胞およびHSP70を発現する細胞を有する組織をHSP70活性化領域を有するペプチドと接触させる工程を含む。ペプチドは、融合タンパク質および三量体複合体の形態でありうる。
【0018】
本発明の別の態様は、三量体化ドメインとQPGVLIQVYEGを含むHSP70ポリペプチドとの融合タンパク質を含む。3つの融合タンパク質は、三量体複合体の形態でありうる。タンパク質および複合体を使用し、樹状細胞の活性化およびメラノーマの治療が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、TRP−2誘発性の白斑表現型を有するマウス(Vitマウス)において、ヒトHSP70およびHSP70変異体10がHSP70変異体5、6および8とは対照的に色素脱失を媒介しうることを示す実験の結果を示すグラフである。
【図2】図2は、形質移入の48時間後におけるCOS細胞によるHSP70iの発現のウエスタンブロット分析を示す。
【図3】図3は、Vitマウスにおける色素脱失がHSP70に応答して加速されることを示す。
【図4】図4は、最終の遺伝子銃ワクチン接種の6週間後におけるVitマウスの色素脱失を示す。
【図5】図5は、腹側への遺伝子銃ワクチン接種がVitマウスの背部への色素脱失の進行を誘発したことを示す。
【図6】図6は、既知の三次元構造の10個のCTLDのアミノ酸配列のアラインメントを示す。主な二次構造エレメントの配列位置は、各配列上に示され、「αN」(αヘリックス数をNで示す)および「βM」(β鎖数をMで示す)として連続番号順で称される。CTLDの2つの保存されたジスルフィド架橋の形成に関与する4つのシステイン残基は、図中にそれぞれ「C」、「CII」、「CIII」および「CIV」として示され、列挙される。2つの保存されたジスルフィド架橋は、それぞれC−CIVおよびCII−CIIIである。10個のC型レクチンは、hTN:ヒトテトラネクチン、MBP:マンノース結合タンパク質;SP−D:界面活性剤タンパク質D;LY49A:NK受容体LY49A;H1−ASR:アシアログリコプロテイン受容体のH1サブユニット;MMR−4:マクロファージマンノース受容体ドメイン4;IX−AおよびIX−B:凝固因子IX/X−結合タンパク質ドメインAおよびB(各々);Lit:リソスタシン(lithostatine);TU14:被嚢類(tunicate)C型レクチンである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
この詳細な説明の末尾にある参照文献一覧は、本明細書中で言及される文献の完全な参照のために提供される。参照文献一覧におけるまたは本明細書全体にわたって言及される参照文献の各々はそれら全体が参照により援用される。
【0021】
一態様では、本発明は樹状細胞(DC)を活性化する非天然HSP70ポリペプチドに関する。ポリペプチドを使用し、免疫活性化が操作されうるように、ヒトHSP70内のDC活性化領域に結合する結合剤の生成が可能である。白斑のような自己免疫疾患においては、DC活性化領域の遮断が疾患の進行を遮断できる必要がある。したがって、一態様では、本発明は、HSP70誘発性の樹状細胞の活性化を低減または妨げることによる、白斑を治療するための方法に関する。
【0022】
別の態様では、本発明は、三量体化ドメインと樹状細胞を活性化するヒトHSP70ドメイン(「HSP活性化領域」)に結合するポリペプチドとの融合タンパク質に関する。三量体化ドメインは、白斑の治療に使用される安定な非免疫原性組成物を提供する他の類似の融合タンパク質に関連しうる。
【0023】
本発明のこれらや他の態様をさらに詳細に規定する前に、多数の用語が定義される。本開示を通して使用される用語および語句は、用語に対する特定の定義が本明細書中に提供されない場合、当該技術分野で一般に理解されているような意味を有するものと解釈されるべきである。また、本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上他に明示しない場合、複数の言及を含む。
【0024】
本明細書で使用される用語「結合メンバー」は、相互に結合特異性を有する分子対のメンバーを示す。結合対のメンバーは、天然由来でありうるかまたは全体的もしくは部分的に合成によって生成されうる。分子対の一方のメンバーはその表面上にある領域または空洞を有し、それは分子対の他方のメンバーの特定の空間的でかつ極性のある機構に対し、特異的に結合し、それ故に相補的である。したがって、対のメンバーは相互に特異的に結合する特性を有する。
【0025】
本明細書で使用される用語「三量体化ドメイン」は、他の2つのアミノ酸配列と会合して「三量体」を形成するという機能性を含むアミノ酸配列を意味する。三量体化ドメインは、同一のアミノ酸配列の別の三量体化ドメイン(ホモ三量体)または異なるアミノ酸配列の三量体化ドメイン(ヘテロ三量体)と会合しうる。かかる相互作用は、三量体化ドメインの成分間の共有結合、ならびに水素結合力、疎水力、ファンデルワールス力および塩架橋によって引き起こされうる。
【0026】
三量体化ドメインの特定の非限定例として、テトラネクチン三量体化構造エレメント(「TTSE」)、マンノース結合タンパク質三量体化ドメイン、およびコレクチンネック領域などが挙げられる。本明細書で使用される「テトラネクチン三量体化構造エレメント」または「TTSE」は、テトラネクチンタンパク質のアミノ酸22〜49、50、51または52(配列番号3)を含む。
【0027】
本発明の融合タンパク質の三量体化ドメインはテトラネクチンに由来する場合があり、より詳細には米国特許出願公開第2007/0154901号明細書(参照により本明細書中に援用される)中に詳述されるTTSEを含む。TTSEの三量体化効果は、他の2つのTTSEのコイルドコイル構造と相互作用し、比較的高温であっても非常に安定な三本鎖αヘリカルコイルドコイル三量体を形成するコイルドコイル構造によって引き起こされる。用語TTSEはまた、タンパク質のテトラネクチンファミリーの天然メンバーのTTSEの変異体、悪影響を伴わないアミノ酸配列内で修飾されている変異体(いくらか実質的程度まで)、TTSEのαヘリカルコイルドコイル三量体を形成する能力を包含するように意図されている。したがって、本発明に記載の三量体ポリペプチドはTTSEを三量体化ドメインとして含む可能性があり、それは配列番号2の配列と少なくとも68%のアミノ酸配列同一性、より詳細には配列番号2と少なくとも75%の同一性、少なくとも87%の同一性または少なくとも92%の同一性を有する配列を含む。これによると、TTSEのシステイン残基50番目(配列番号3)は、不要な鎖間ジスルフィド架橋の形成を回避するため、有利にはセリン、トレオニン、メチオニンまたは任意の他のアミノ酸残基に突然変異化される場合があり、それにより不要な多量体化が生じうる。特定の実施形態では、三量体化ドメインは、米国特許出願公開第2007/00154901号明細書中により十分に記載の、テトラネクチンファミリーの三量体化構造エレメントのコンセンサス配列である配列番号2のポリペプチドである。
【0028】
三量体化ドメインの別の例が、コレクチンネック領域を含むポリペプチドについて記載する国際公開第95/31540号パンフレット(その全体が本明細書中に援用される)において開示されている。次いで、三量体は、コレクチンネック領域のアミノ酸配列を含む3つのポリペプチドを伴う適切な条件下で作製されうる。
【0029】
三量体化ドメインの別の例が、マンノース結合タンパク質C三量体化ドメイン(MBP−C)である。この三量体化ドメインは、さらにオリゴマー化し、より高次の多量体複合体を生成しうる。
【0030】
用語「C型レクチン様タンパク質」および「C型レクチン」は、任意の真核種内に存在するかまたはそのゲノム内にコードされる任意のタンパク質を示すように使用され、同タンパク質は、炭水化物リガンドに結合する、CTLDの亜群、CRDに属する1つ以上のCTLDまたは1つ以上のドメインを有する。その定義は、詳細には、膜に付着したC型レクチン様タンパク質およびC型レクチン、機能的膜貫通ドメインが欠如した「可溶性」C型レクチン様タンパク質およびC型レクチンおよび1つ以上のアミノ酸残基がインビボでのグリコシル化または任意の他の合成後修飾によって改変されている変異体のC型レクチン様タンパク質およびC型レクチン、ならびにC型レクチン様タンパク質およびC型レクチンの化学修飾によって得られる任意の産物を含む。
【0031】
CTLDは約120のアミノ酸残基からなり、特徴として2つまたは3つの鎖間ジスルフィド架橋を有する。異なるタンパク質に由来するCTLD間のアミノ酸配列レベルでの類似性は比較的低いが、多数のCTLDの三次元構造は、高度に保存されると共に、構造的変動性がいわゆるループ領域(最大で5つのループによって規定されることが多い)に本質的に限定されることが見出されている。いくつかのCTLDは、カルシウムに対する1つまたは2つのいずれかの結合部位を有し、カルシウムと相互作用する側鎖の大部分はループ領域内に位置する。
【0032】
三次元構造情報が入手できるCTLDに基づくと、標準的なCTLDがβ1、α1、α2、β2、β3、β4、およびβ5の順序で連続的に出現する7つの主な二次構造エレメント(すなわち5つのβ鎖および2つのαヘリックス)によって構造的に特徴づけられることは推定されている。三次元構造が決定されている場合のすべてのCTLDにおいては、β鎖は、2つの逆平行のβシート(一方はβ1およびβ5で構成され、他方はβ2、β3およびβ4で構成される)で配列される。追加的なβ鎖である配列内でβ1に先行することが多いβ0は、存在する場合、β1、β5シートと統合する追加的な鎖を形成する。さらに、2つのジスルフィド架橋(α1およびβ5に結合するもの(C−CIV)とβ3に結合するもの)ならびにβ4およびβ5に結合するポリペプチドセグメント(CII−CIII)は、これまでに特徴づけられたすべてのCTLDにおいて常に見出される。
【0033】
CTLDの三次元構造においては、これらの保存された二次構造エレメントは、多数のループに対するコンパクトな足場を形成し、これに関連して集合的に「ループ領域」と称され、コアから突出している。CTLDの一次構造においては、これらのループは、2つのセグメント、すなわちループセグメントA(LSA)およびループセグメントB(LSB)内で組織化される。LSAは、規則的な二次構造が欠如することが多いβ2およびβ3に結合する長いポリペプチドセグメントを示し、最大で4つのループを有する。LSBは、β鎖のβ3およびβ4に結合するポリペプチドセグメントを示す。LSA内の残基が、β4内の単一の残基と共に、いくつかのCTLD(テトラネクチンのそれを含む)のCa2+およびリガンド結合部位を特定することが示されている。例えば、1個もしくは数個の残基の置換を含む突然変異誘発試験では、結合特異性、Ca2+−感受性および/または親和性における変化がCTLDドメインによって行われうることが示されている(WeisおよびDrickamer(1996年)、Chibaら(1999年)、Graversenら(2000年))。
【0034】
次の非限定例、すなわちテトラネクチン、リソスタチン(lithostatin)、マウスマクロファージガラクトースレクチン、クッパー細胞受容体、ニワトリニューロカン、パールシン(perlucin)、アシアログリコプロテイン受容体、軟骨プロテオグリカンコアタンパク質、IgE Fc受容体、膵炎関連タンパク質、マウスマクロファージ受容体、ナチュラルキラー基、幹細胞成長因子、因子IX/X結合タンパク質、マンノース結合タンパク質、ウシコングルチニン、ウシCL43、肝臓コレクチン1(collectin liver 1)、界面活性剤タンパク質A、界面活性剤タンパク質D、e−セレクチン、被嚢類c型レクチン、CD94 NK受容体ドメイン、LY49A NK受容体ドメイン、ニワトリ肝レクチン、マスc型レクチン、HIV gp 120−結合c型レクチン、および樹状細胞受容体DC−Signを含む多数のCLTDが知られている。
【0035】
用語「アポトーシス」および「アポトーシス活性」は広義で使用され、典型的には細胞質の濃縮、血漿膜微絨毛の消失、核の分割、染色体DNAの分解またはミトコンドリアの機能の消失を含む1つ以上の特徴的な細胞変化を伴う、哺乳類における規則正しいかまたは制御された形態の細胞死を示す。この活性は、周知の技術的方法、例えば細胞生存度アッセイ、FACS分析またはDNA電気泳動、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化、および/または膜小胞(アポトーシス体と称される)の形成を使用して決定され、測定されうる。
【0036】
ここで本発明をより詳細に検討すると、一態様では本発明はQPGVLIQVYEG[配列番号1]を含むヒトHSP70の非天然断片を含むポリペプチドに関する。このペプチドは、樹状細胞を活性化するためのヒトHSP70内の活性化領域を示す。活性化された樹状細胞は、活性化後に細胞毒性およびT細胞刺激活性を有し、メラノサイトを殺滅可能であり、それにより環境内でのHSP70のレベルが直接的または間接的に上昇する。
【0037】
ヒトHSP70の非天然断片は、完全長HSP70に満たないヒトHSP70の一部を含む。特に、HSP70の非天然断片は、限定はされないが、11、13、15、20、25、30、40、50、75、100、125、および150アミノ酸長のポリペプチド配列を含む。非天然断片はまた、NもしくはC末端で切断されているかまたは末端間に1つ以上のアミノ酸の欠失を有する天然HSP70を含む。本発明の非天然断片は、配列番号1のHSP70活性化領域を含む。かかる断片は、切断された野生型配列として任意の種によって天然に発現されることはなく、当該技術分野で容易に理解されるように単離され、精製されうる。
【0038】
別の態様では、本発明は、HSP70活性化ドメインに結合するポリペプチドに関する。本態様では、本発明は、三量体化ドメインとHSP70活性化領域に結合する少なくとも1つのポリペプチド結合メンバーとを含むペプチド、タンパク質または融合タンパク質に関する。本発明によると、結合メンバーは、三量体化ドメインのNもしくはC末端アミノ酸残基のいずれかに結合されうる。また、特定の実施形態では、結合メンバーを三量体化ドメインのN末端およびC末端の双方に結合させることは有利でありうる。
【0039】
別の態様では、ポリペプチド結合メンバーはCTLDのループ領域内に含まれる。ポリペプチドは、天然または非天然の配列でありうる。本態様では、配列はCLTDのループ領域内に含まれ、CTLDはドメインのN末端またはC末端で直接かまたは適切なリンカーを介するかのいずれかで三量体化ドメインに融合される。また、本発明の融合タンパク質は、N末端およびC末端の他方で融合された第2のCLTDドメインを含みうる。本態様の変形では、融合タンパク質は、三量体化ドメインの末端の一方で結合メンバーおよび他方の末端でCLTDを含む。融合タンパク質の第1、第2または第3は、HSP70活性化領域における最大で6つの特定の結合メンバーを有する三量体複合体の一部でありうる。
【0040】
別の実施形態では、結合メンバーは抗体または抗体断片を含む。これに関連して、用語「抗体」は、天然であってもまたは部分的もしくは全体的に合成によって生成されるにしても免疫グロブリンを記述するために使用される。抗体が多くの方法で修飾されうることから、用語「抗体」は、任意の特異的な結合メンバーまたはQPGVLIQVYEG[配列番号1]に対して特異的な結合ドメインを有する物質を網羅するものとして解釈されるべきである。したがって、この用語は、天然であってもまたは全体的もしくは部分的な合成であっても、免疫グロブリン結合ドメインを含む任意のポリペプチドを含む、抗体の抗体断片、誘導体、機能的等価物および相同体を網羅する。したがって、別のポリペプチドに融合される、免疫グロブリン結合ドメインを含むキメラ分子または等価物が含まれる。同用語はまた、抗体結合ドメイン、例えば抗体模倣体であるかまたはそれに相同性がある結合ドメインを有する任意のポリペプチドまたはタンパク質を網羅する。これらは天然の供給源に由来しうるか、またはそれらは部分的もしくは全体的に合成によって生成されうる。抗体の例として、免疫グロブリンアイソタイプおよびそのアイソタイプサブクラス;Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、Fv、dAb、Fdなどの抗原結合ドメインを含む断片;ならびに二重特異性抗体が挙げられる。
【0041】
別の態様では、本発明は、3つの融合タンパク質の三量体複合体に関し、ここで3つの融合タンパク質の各々は三量体化ドメインとHSP70活性化領域に結合する少なくとも1つのポリペプチドとを含む。一実施形態では、三量体複合体は、テトラネクチン三量体化構造エレメント、マンノース結合タンパク質(MBP)三量体化ドメイン、コレクチンネック領域およびその他から選択される三量体化ドメインを有する融合タンパク質を含む。三量体複合体は、本発明の融合タンパク質のいずれかからなり得、ここで三量体複合体の融合タンパク質は三量体を形成するための互いに会合可能な三量体化ドメインを含む。したがって、一部の実施形態では、三量体複合体は同じアミノ酸配列を有する融合タンパク質からなるホモ三量体複合体である。他の実施形態では、三量体複合体は、例えば異なる三量体化ドメインおよび/またはHSP70活性化領域に結合する異なるポリペプチドなどの異なるアミノ酸配列を有する融合タンパク質からなるヘテロ三量体複合体である。
【0042】
マイコバクテリアHSP70配列QPSVQIQVYQGEREIAAHNK[配列番号17](アミノ酸407〜426)が樹状細胞を活性化することが可能であることは過去に決定された(Wangら、J.Immunology、174(6):3306頁(2005年))。次いで、これらの結果を用い、樹状細胞の活性化に関与するヒトHSP70の領域が同定された。分析のため、ヒトHSP70のQPGVLIQVYEGER[配列番号18]配列が選択された。この配列は、上記のマイコバクテリア配列の一部(QPSVQIQVYQGER[配列番号19];アミノ酸407〜419)に対して相同性があり、それは免疫刺激性領域であることが報告された20−merペプチドの一部である(同文献)。報告のように、このペプチドの最初から4つのアミノ末端アミノ酸のアラニン置換により、免疫刺激が有意に阻害された(同文献)。
【0043】
下記の実施例に記載のように、多数の変異が、種間相同性に基づく13−merヒト配列内に導入された。4つの変異体が生成され、これらの配列を有するベクターは白斑マウスモデルにおいて試験された。最後の2つのアミノ酸の突然変異(すなわち変異体10)が色素脱失に対して全く効果を有しないことから、これらのアミノ酸が白斑における色素脱失の媒介に必要でなかったことが明らかである。したがって、本発明のポリペプチドQPGVLIQVYEG[配列番号1]が、白斑における色素脱失の媒介を担うHSP70活性化領域として同定される。
【0044】
本発明の他の態様は、hsp70ペプチドに対する拮抗性ペプチドの競合的結合を介し、hsp70の刺激部分と細胞との相互作用を阻害することによって樹状細胞の活性化を妨げることに関する。
【0045】
別の態様は、HSP70によって誘発されるストレス関連自己免疫疾患、例えば白斑を、かかる疾患を患う患者にHSP70活性化領域に結合する有効量のポリペプチドを投与することによって治療することに関する。ポリペプチドは三量体化ドメインを伴う融合タンパク質の一部であり、また記載のような三量体複合体の一部でありうる。白斑の治療においては、投与の好ましい経路は薬学的に許容可能な送達賦形剤中で局所である。
【0046】
本発明の別の態様では、HSP70活性化領域を使用し、樹状細胞が活性化されうる。本態様では、ドメインは三量体化ドメインに融合され、融合タンパク質が生成される。上記のように、融合タンパク質は三量体複合体の一部であり得、かつそれはHSP70活性化領域が移殖されているCTLDループ領域を含みうる。
【0047】
白斑皮膚に浸潤するT細胞によって認識される抗原は、メラノーマ腫瘍に浸潤するT細胞に対する主な標的抗原として先行的に同定された(Dasら、2001年)。これらの抗原は、他の細胞種内のリソソームに対して機能的類似性を担持するメラノソーム内で発現される(Le Pooleら、1993年)。局在化は、gp100、MART−1およびチロシナーゼなどのメラノソームタンパク質の免疫原性に寄与する可能性が高い。白斑における免疫反応性とメラノーマの間の類似性は、その腫瘍に対して検出可能な免疫応答を有するメラノーマ患者において認められる白斑によって支持される。実際、色素脱失はメラノーマ患者における陽性予後因子と考えられる(Nordlundら、1983年)。不運にも免疫応答はメラノーマ腫瘍をほとんど除去できない一方、有効な免疫は進行性白斑の特質である。したがって、白斑患者は、メラノサイト細胞に対し、メラノーマ患者の場合より活発な免疫応答を生じさせるように見える(Garbelliら、2005年)。
【0048】
DCによる抗原の取り込みおよびプロセシングを援助するHSP70のシャペロンの機能は、分子を、抗腫瘍ワクチンにおけるアジュバントとして機能する理想的な候補にする。HSP70−抗原融合タンパク質をコードするDNAがメラノーマに対するワクチン内に封入されている(Zhangら、2006年)。かかる応用では、マイコバクテリアHSP70が用いられることが多い(Chenら、2000年)。抗癌ワクチンにおいては、異種ストレスタンパク質の使用は、得られるタンパク質の免疫原性をヌクレオチド変異が高めるというさらなる利点を有する(マイコバクテリアおよびマウスHSP70は約50%の相同性がある)一方で、いずれかの変異がペプチドとタンパク質とを結合しうる。異なる種内での分子の保存は、マウス細胞系がヒトHSP70に結合し、その逆もいえるという観察によってさらに支持される(MacAryら、2004年)。3つの機能ドメインが、HSP70分子内部で割り当てられている。すなわち、シャペロン共同因子への結合に明らかに関与する、約44kD(約350アミノ酸)のN末端ATPaseドメイン、約18kDのペプチド結合ドメイン(約150アミノ酸)および10kDのC末端ドメイン(約100アミノ酸)である(Lehnerら、2004年)。HSP70−ペプチド複合体におけるいくつかの表面受容体が免疫細胞上で同定されており、LDL受容体関連タンパク質2/α2−マクログロブリンCD91(Basuら、2001年)、スカベンジャー受容体LOX−1(Delnesteら、2002年)、CD94(Grossら、2003年)およびSR−A(Berwynら、2003年)、Toll様受容体2および4(Aseaら、2002年)、ならびにCD40(Beckerら、2002年)が含まれる。
【0049】
メラノーマ対白斑におけるメラノサイト細胞に対する抗腫瘍免疫と自己免疫との関係について報告がなされている(Dasら、2001年;Turkら、2002年;HoughtonおよびGuevara−Patino、2004年;Engelhornら、2006年)(SrivastavaおよびUdono、1994年;Castelliら、2004年)。抗腫瘍免疫におけるHSP70の役割を援助するワクチンがメラノーマ患者にとって利益になる一方、HSP70がメラノサイトに対する免疫応答を持続しないよう遮断することが、白斑を有する患者にとって利益になりうる。
【0050】
メラノーマにおける抗腫瘍免疫を高めるため、HSP70融合タンパク質に基づくワクチンを含むいくつかのワクチンが開発中である(Huangら、2003年)。HSP70または熱ショックタンパク質70が、それ自体で免疫原性を示しかつDC活性化およびT細胞反応性を刺激するためのアジュバントとして機能するシャペロンタンパク質としてワクチン内に含まれる。
【0051】
したがって、本発明の別の態様は、樹状細胞を活性化することによりメラノーマを治療する方法を含む。本方法は、樹状細胞を融合タンパク質または三量体複合体と接触させる工程を含む。本発明の様々な態様では、分子は、皮膚癌(メラノーマ)もしくは他のタイプの癌のためのワクチンとして、またはウイルスワクチンまたはワクチンにおけるアジュバントとして、単独でまたは免疫応答が生じる必要がある抗原にライゲートして使用されうる。
【0052】
本発明の他の態様は、米国特許出願公開第2007/0154901号明細書にさらに記載のように、本発明の融合タンパク質を発現するためのヌクレオチド配列、ベクターおよび宿主細胞に関する。
【0053】
HSP70活性化領域に対する結合メンバーの同定方法
一態様では、HSP70活性化領域に対する結合メンバーは、ポリペプチドのランダムライブラリからの、HSP活性化領域に特異的に結合するライブラリのメンバーの選択によって得ることができる。推定リガンド結合部位を有する表現型を提示するための多数のシステムが知られている。これらは、ファージディスプレイ(例えば線状ファージfd[Dunn(1996年)、GriffithsおよびDuncan(1998年)、Marksら(1992年)]、ファージλ[Mikawaら(1996年)])、真核ウイルス上のディスプレイ(例えばバキュロウイルス[Ernstら(2000年)])、細胞ディスプレイ(例えば、細菌細胞[Benharら(2000年)]、酵母細胞[BoderおよびWittrup(1997年)]、および哺乳類細胞[Whitehornら(1995年)]上のディスプレイ)、リボソーム結合ディスプレイ[Schaffitzelら(1999年)]、ならびにプラスミド結合ディスプレイ[Gatesら(1996年)]を含む。
【0054】
また、米国特許出願公開第2007/0275393号明細書(その全体が参照により本明細書中に援用される)は、CLTDライブラリの作成を目的としてディスプレイシステムを完成させるための手順について詳述している。一般的手順は、(1)選択されるCTLDの三次元構造の参照(かかる情報が入手可能な場合)によるループ領域の位置の同定、または入手不能な場合での、図6に示される配列との配列アラインメントによるβ2、β3およびβ4鎖の配列位置の同定(これは、上でさらに開示される、β2およびβ3コンセンサス配列要素に対応する配列要素およびβ4鎖特性の同定によるさらなる実証によって補助される);(2)β2、β3およびβ4をコードする配列に近接したエンドヌクレアーゼ制限部位の挿入を予め行う場合または行わない場合での、タンパク質ディスプレイベクター系における選択されるCTLDをコードする核酸断片のサブクローン化;ならびに(3)選択されるCTLDのループ領域の一部または全部をコードする核酸断片と、多数の核酸断片からなるアンサンブルの無作為に選択されたメンバーとの置換を含む。多数の核酸断片は、受け取るフレームワークをコードする核酸コンテキストへの挿入後、元のループ領域ポリペプチド断片をコードする核酸断片を、無作為に選択された核酸断片と置換することになる。元のループセグメントまたはループ領域全体を置換する新しいポリペプチドをコードするクローン化核酸断片の各々は、その新しい配列コンテキスト内部で決定されたリーディングフレームにおいて解読されることになる。
【0055】
ホモ三量体タンパク質として機能する複合体が形成されうる。ヒトテトラネクチンタンパク質の三量体構造は、HSP70活性化領域に結合可能なメンバーを有するライブラリを作成するための独自の理想的な足場を提示する。しかし、HSP70結合活性を有するペプチドがまず同定されなければならない。これを行うため、既知の結合活性を有するペプチドが使用されうるか、またはさらなる新しいペプチドがディスプレイライブラリからのスクリーニングによって同定されうる。多数の異なるディスプレイシステム、例えば限定はされないが、ファージ、リボソームおよび酵母ディスプレイが利用可能である。
【0056】
結合活性を有する新しいペプチドを選択するため、ライブラリが作成され、単量体成分として、単一の単量体CTLDドメインまたはファージの表面上に提示される個々のペプチドのいずれかとしてのHSP70活性化領域への結合について最初にスクリーニングされうる。一旦、HSP70結合活性を有する配列が同定されると、それに続いてこれらの配列をヒトテトラネクチンの三量体化ドメイン上に移殖することで、ヒトHSP70活性化領域に結合可能な有望なタンパク質療法が得られることになる。
【0057】
4つの方法が、これらのファージディスプレイライブラリおよび三量体化ドメインコンストラクトの作成において用いられうる。第1の方法では、ランダムペプチドファージディスプレイライブラリが作成および/または使用されることになる。ジスルフィド制限ループとして作成されるランダム線状ペプチドおよび/またはランダムペプチドは、ファージ粒子の表面上に個別に提示され、ファージディスプレイの「パニング」を介したHSP70活性化領域への結合性に対して選択されることになる。HSP70結合活性を有するペプチドクローンを得た後、これらのペプチドは、ヒトテトラネクチンの三量体化ドメイン上に移殖されるか、またはCTLDドメインのループ内に移殖されてから三量体化ドメイン上に移植され、HSP70結合活性についてスクリーニングされることになる。
【0058】
ファージディスプレイライブラリおよび三量体化ドメインコンストラクトを作成するための第2の方法では、CTLD由来の結合剤を得ることを含むことになる。ライブラリは、ファージの表面上に提示されるヒトテトラネクチンのCTLD足場内部の5つの異なるループの中の1つ以上のループ内でアミノ酸をランダム化することによって作成されうる。HSP70活性化領域への結合については、ファージディスプレイパニングを介して選択されうる。HSP70結合活性を示すペプチドループを有するCTLDクローンを得た後、これらのCTLDクローンはヒトテトラネクチンの三量体化ドメイン上に移植され、HSP70結合活性についてスクリーニングされうる。
【0059】
ファージディスプレイライブラリおよび三量体化ドメインコンストラクトを作成するための第3の方法では、HSP70活性化領域に対する結合能を有する既知の配列を取得することを含み、これらをヒトテトラネクチンの三量体化ドメイン上に直接移殖し、HSP70結合活性についてスクリーニングすることになる。
【0060】
第4の方法は、HSP70活性化領域に対する既知の結合能を有するペプチド配列を使用し、最初にそれらの結合性を、ペプチドに隣接するランダム化アミノ酸または/およびペプチド内部の選択されたランダム化内部アミノ酸で新しいライブラリを作成することによって改善し、次いでファージディスプレイを介して改善された結合性に対して選択することを含む。改善された親和性を有する結合剤を得た後、これらのペプチドの結合剤は、ヒトテトラネクチンの三量体化ドメイン上に移殖され、HSP70結合活性についてスクリーニングされうる。この方法では、初期ライブラリは、第1の方法(上記)におけるようなファージ粒子の表面上に提示される遊離ペプチドまたは第2の方法(これも上で考察)におけるようなCTLD足場内部の制限ループのいずれかとして作成されうる。改善された親和性を有する結合剤を得た後、これらのペプチドのヒトテトラネクチンの三量体化ドメイン上への移植およびHSP70結合活性についてのスクリーニングが行われることになる。
【0061】
N末端(V17)で最大で16の残基が除去されるかまたはC末端が改変された三量体化ドメインの切断バージョンが使用されうる。TripV、TripT、TripQおよびTripKと称されるC末端の変異は、三量体化ドメイン上でのCTLDドメインに特有の提示を可能にする。TripK変異体は最長のコンストラクトであり、CTLDと三量体化ドメインとの間での最長でかつ最も柔軟なリンカーを有する。TripV、TripT、TripQは、構造的柔軟性が全く伴わない、CTLD分子の三量体化モジュール上への直接的な融合を示すが、CTLD分子の3分の1が、TripVからTripTへ、またTripTからTripQへとしている。これは、これらのアミノ酸の各々がαヘリカルターン(α−helical turn)になっており、フルターン(full turn)には3.2アミノ酸が必要とされるという事実に基づく。第1、第3および第4の方法において結合性に対して選択される遊離ペプチドは、三量体化ドメインの上記バージョンのいずれかの上に移殖されうる。次いで、得られる融合体をスクリーニングすることで、ペプチドの組み合わせおよび方向のいずれが最高の活性をもたらすかが判明しうる。テトラネクチンのCTLDのループ内部に制限された、結合性に対して選択されるペプチドは完全長三量体化ドメイン上に移殖されうる。
【0062】
より詳細には、4つの方法は以下に説明される。これらの方法ではファージディスプレイが着目されているが、ポリペプチドを同定する他の等価な方法が使用可能である。
【0063】
方法1
限定はされないがNew England Biolabs Ph.D.ファージディスプレイペプチドライブラリキットなどのペプチドディスプレイライブラリキットが市販されており、HSP70結合活性を有する新しい新規のペプチドの選択における使用を目的に購入されうる。New England Biolabsキットの3つの形態、すなわち、(2.8×10の独立クローンのライブラリサイズを有する)7アミノ酸長の線状ランダムペプチドを有するPh.D.−7ペプチドライブラリキット、(7アミノ酸長のランダムペプチドおよび1.2×10独立クローンのライブラリサイズを有する)ジスルフィド制限ループとして作成されたペプチドを有するPh.D.−C7Cジスルフィド制限ペプチドライブラリキット、および(2.8×10の独立クローンのライブラリサイズを有する)12アミノ酸長の線状ランダムペプチドを有するPh.D.−12ペプチドライブラリキットが使用可能である。
【0064】
あるいは、類似のライブラリが、これらのキットに類似するランダムアミノ酸を有するペプチドでデノボに作成されうる。作成においては、ランダムヌクレオチドがNNKまたはNNS方法のいずれかを使用して生成され、ここではNは4つの核酸塩基A、C、GおよびTの均等な混合物を表す。KはGまたはTのいずれかの均等な混合物を表し、SはGまたはCのいずれかの均等な混合物を表す。これらのランダム化された位置は、ファージまたはファージミドディスプレイベクター系のいずれかにおいてGene IIIタンパク質上へクローン化されうる。NNKおよびNNS方法の双方は全部で20の有望なアミノ酸および1つの停止コドンを網羅し、ここでコードされたアミノ酸における頻度はやや異なる。細菌の形質転換効率に限界があることから、ファージディスプレイにおいて作成されるライブラリサイズは上掲のサイズの程度であり、それ故に最大で7つのランダム化アミノ酸位置(NNKNNKNNKNNKNNKNNKNNK)[配列番号20]を有するペプチドが生成可能であり、さらに理論上の組み合わせ(20=1.28×10)のレパートリー全体を網羅する。より長いペプチドライブラリはNNKまたはNNS方法のいずれかを使用して作成可能であるが、実際のファージディスプレイのライブラリサイズは、細菌の形質転換における要件に起因して、かかる長さに関連しうるすべての理論上のアミノ酸の組み合わせを網羅しないであろう。
【0065】
方法2
図6に示されるヒトテトラネクチンCTLDは5つのループを有し、それは改変され、CTLDの異なるタンパク質標的に対する結合性が付与されうる。ランダムアミノ酸配列をこれらのループの中の1つ以上のループ内に配置することでライブラリの作成が可能であり、それから所望される結合特性を有するCTLDドメインが選択されうる。ヒトテトラネクチンCTLDの5つのループの全部または一部の内部に制限されたランダムペプチドを有するこれらのライブラリの作成は、(限定はされないが)上の方法1に記載のNNKまたはNNSのいずれかを使用してなされうる。7つのランダムペプチドがTN CTLDのループ1に挿入されうるという方法の一例は次の通りである。
【0066】
断片AのPCRは、CTLDのN末端に結合するフォワードオリゴF1(5’−GCCCTCCAGACGGTCTGCCTGAAGGGG−3’;配列番号4);ループ1の直ぐ5’側のDNA配列に結合するリバースオリゴR1(5’−GTTGAGGCCCAGCCAGATCTCGGCCTC−3’;配列番号5)を使用して実施されうる。断片Bは、フォワードオリゴF2(5’−GAGGCCGAGATCTGGCTGGGCCTCAACNNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKTGGGTGGACATGACCGGCGCGCGCATC−3’;配列番号6)およびリバースプライマーR2(5’−CACGATCCCGAACTGGCAGATGTAGGG−3’;配列番号7)を使用して作成されうる。フォワードプライマーF2は、プライマーR1に対して相補的な5’末端を有し、ループ1の最初から7個のアミノ酸をランダムアミノ酸と置換し、ループ1の最後のアミノ酸およびその3’側配列に結合する3’末端を有する一方、リバースプライマーR2は、CTLD配列の末端に対して相補的であり、それに結合する。PCRは、高性能ポリメラーゼまたはtaqブレンドおよび標準のPCR熱サイクル条件を使用して実施されうる。次いで、断片AおよびBはゲル単離され、次いで上記のようにプライマーF1およびR2を使用する重複伸長(overlap extension)PCRのために結合されうる。制限酵素BglIIおよびPstIによる消化は、TN CTLDのループを有する断片の単離と、それに続く(クローン化のためにBglIIおよびPstIで同様に消化される)Gene IIIに融合された下記に示される制限修飾CTLDを有するファージディスプレイベクター(CANTAB 5Eなど)へのライゲーションを可能にしうる。
【0067】
ランダム化アミノ酸との置換による他のループの修飾は、上で示される場合と同様に行われうる。ループ内部の制限されたアミノ酸とランダム化アミノ酸との置換は、任意の特定のループに限定されないばかりか、元のサイズのループに限定されない。同様に、ループの全置換は必要とされず、部分置換はループのいずれかにおいて生じうる。いくつかの場合、ループ内部での元のアミノ酸の一部(例えばカルシウムを調整するアミノ酸(calcium coordinating amino acid))の保持が望ましい場合がある。これらの場合、ランダム化アミノ酸との置換がループ内部の少ない方のアミノ酸のいずれかにおいて生じ、カルシウムを調整するアミノ酸が保持されうるか、あるいはさらなるランダム化アミノ酸をループに付加することで、ループの全体サイズが拡大し、さらにこれらのカルシウムを調整するアミノ酸が保持されうる。極めて大きいペプチドが、ループ1および2またはループ3および4などのループ領域を1つのより大きい置換ループに組み合わせることによって適合され、試験されうる。さらに、他のCTLD、例えば限定はされないがMBL CTLDが、テトラネクチンのCTLDの代わりに使用されうる。ペプチドのこれらCTLDへの移植が、上記の場合と同様の方法を用いて行われうる。
【0068】
方法3
いくつかの場合、結合活性を有するペプチドの直接クローン化が十分でない場合があり、さらに最適化および選択が必要でありうる。例として、HSPに対して既知の結合性を有するペプチド、例えば限定はされないが上記のものは、ヒトテトラネクチンのCTLDに移殖されうる。結合のためのこれらのペプチドの最適な提示に対して選択するため、隣接アミノ酸の中の1つ以上がランダム化された後、結合についてのファージディスプレイ選択がなされうる。さらに、単独で限定的または弱い結合を示すペプチドはまた、別の追加的ループのランダム化を有するCTLDライブラリのループの1つに移殖された後、再び結合性および/または特異性の増大についてのファージディスプレイを介した選択がなされうる。さらに、アミノ酸への特異的な相互作用/結合が既知である場合に結晶構造によって同定されるペプチドにおいては、非結合アミノ酸のランダム化が検討された後、結合性および受容体特異性の増大についてのファージディスプレイを介した選択がなされうる。
【0069】
方法4:
一旦HSP70に対する結合活性を有する多数のペプチドが同定されると、これらのペプチドは、遊離線状ペプチドとしてかまたはシステインを使用するジスルフィド制限ループとして、NまたはC末端の三量体化ドメインのいずれかの上に直接クローン化されうる。HSPに結合可能な一本鎖抗体またはドメイン抗体はまた、三量体化ドメインのいずれかの末端上にクローン化されうる。さらに、既知の結合特性を有するペプチドは、TN CTLDのループ領域のいずれか1つに直接クローン化されうる。ジスルフィド制限ループまたは抗体の相補性決定領域として選択されるペプチドであれば、ヒトテトラネクチンのCTLDのループ領域への再配置に対してかなり従順でありうる。次いで、これらすべてのコンストラクトにおいては、単量体としての結合、ならびに三量体化ドメインと融合される場合には三量体としての結合が試験されうる。
【0070】
医薬組成物
さらに別の態様では、本発明は、治療有効量の本発明の融合タンパク質を薬学的に許容可能な担体または賦形剤と共に含有する医薬組成物に関する。本明細書で使用される「薬学的に許容可能な担体」または「薬学的に許容可能な賦形剤」は、生理学的に適合性のあるありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張性剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容可能な担体または賦形剤の例として、水、生理食塩水、リン酸塩緩衝化生理食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノールなどの1つ以上と共にそれらの組み合わせが挙げられる。多くの場合、組成物中に、等張性剤、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを含むことは好ましいものになる。湿潤剤などの薬学的に許容可能な物質あるいは湿潤剤または乳化剤などの少量の補助剤、保護剤または緩衝液は、抗体または抗体部分の貯蔵寿命または有効性を高めるものであり、それらもまた含められうる。場合により、崩壊剤、例えば架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどが含まれ得る。賦形剤に加え、医薬組成物は、次のもの、すなわち血清アルブミンなどの担体タンパク質、緩衝液、結合剤、甘味料および他の香味料;着色剤およびポリエチレングリコールの中の1つ以上を含みうる。
【0071】
組成物は、例えば、液体、半固体および固体剤形、例えば溶液(例えば注射可能および注入可能溶液)、分散液または懸濁液、錠剤、ピル、粉末、リポソームおよび坐剤を含む種々の形態でありうる。好ましい形態は、意図される投与経路および治療用途に依存することになる。一実施形態では、ペプチド、複合体または組成物は、局所クリームまたは軟膏において投与される。一実施形態では、組成物は注射可能または注入可能溶液の形態であり、例えば抗体でのヒトの受動免疫用に使用される場合に類似の組成物が挙げられる。一実施形態では、投与の形式は非経口的である(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)。一実施形態では、融合タンパク質(または三量体複合体)は静脈内注入または注射によって投与される。別の実施形態では、融合タンパク質または三量体複合体は筋肉内または皮下注射によって投与される。
【0072】
医薬組成物における投与の他の適切な経路は、限定はされないが、直腸、経皮、膣、経粘膜または腸内投与を含む。
【0073】
治療的組成物は、典型的には製造および保存の条件下で無菌でありかつ安定である。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散剤、リポソーム、または高い薬剤濃度に適する他の規則正しい構造として処方されうる。無菌の注射可能溶液は、必要量の活性化合物(すなわち融合タンパク質または三量体複合体)を、必要に応じて上に列挙される成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒中に取り込むことによって調製され、その後に滅菌濾過されうる。一般に、分散剤は、活性化合物を塩基性分散媒および上に列挙される成分からの必要とされる他の成分を含有する無菌媒体中に取り込むことによって調製される。無菌の注射可能溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥と、活性成分プラス任意の追加的な所望される成分の粉末を予め無菌濾過されたその溶液から生成する凍結乾燥である。溶液の適切な液性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散剤の場合に必要とされる粒子サイズの維持および界面活性剤の使用によって維持されうる。注射可能組成物の長期間の吸収は、組成物中に吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含むことによってもたらされうる。
【0074】
HSP70ポリペプチド結合剤および本明細書中に記載の障害の治療において有用な治療剤を有するキットなどの製品(article of manufacture)は、少なくとも容器およびラベルを含む。適切な容器として、例えば、ボトル、バイアル、注射器、および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの種々の材料から形成されうる。容器の表面かまたはそれに付随するラベルは、製剤が選択される条件を扱うために使用されることを示す。製品は、薬学的に許容可能な緩衝液、例えばリン酸塩緩衝化生理食塩水、リンガー液、およびデキストロース溶液を含む容器をさらに含みうる。それは、使用説明書と共に、他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、注射器、および添付文書を含む、商業およびユーザの観点からして望ましい他の構成要素をさらに含みうる。製品はまた、上記の別の活性剤を有する容器を含みうる。
【0075】
典型的には、適量の薬学的に許容可能な塩が製剤中で使用され、製剤に等張性が付与される。薬学的に許容可能な担体の例として、生理食塩水、リンガー液およびデキストロース溶液が挙げられる。製剤のpHは、好ましくは約6〜約9、およびより好ましくは約7〜約7.5である。特定の担体が、例えばHSPポリペプチド結合剤の投与経路および濃度に応じてより好ましい場合があることは、当業者にとって明らかであろう。
【0076】
治療的組成物は、適切な純度を有する所望される分子を、凍結乾燥剤形、水溶液または水性懸濁液の形態で、任意の薬学的に許容可能な担体、賦形剤、または安定化剤と混合することによって調製されうる(「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第16版、Osol、A.編(1980年))。許容可能な担体、賦形剤、または安定化剤は、使用される用量および濃度でレシピエントに対して好ましくは非毒性であり、トリス、HEPES、PIPES、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭水化物;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;ならびに/あるいはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0077】
かかる担体のさらなる例として、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、グリシンなどの緩衝物質、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、または、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウムなどの電解液、ポリビニルピロリドン、およびセルロースに基づく物質が挙げられる。局所またはゲルベース形態の担体には、多糖類、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウムまたはメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、およびウッドワックスアルコールが含まれる。すべての投与においては、従来のデポー形態が好適に使用される。かかる形態には、例えば、マイクロカプセル、ナノカプセル、リポソーム、プラスター、吸入形態、鼻腔スプレー、舌下錠、および持続放出製剤が含まれる。
【0078】
インビボ投与に使用される製剤であれば無菌である必要がある。これは、凍結乾燥および再構成の前または後に無菌濾過膜を通る濾過によって行われる。製剤は、全身投与される場合、凍結乾燥形態かまたは溶液中で保存されうる。凍結乾燥形態の場合、それは典型的には、使用される時点で、適切な希釈剤との再構成のため、他の成分と併せて処方される。液体製剤の例として、皮下注射用に1回分用量バイアル内に満たされた無菌、透明、無色の保存料未添加の(unpreserved)溶液が挙げられる。
【0079】
治療製剤は、一般に無菌のアクセスポートを有する容器、例えば皮下注射針によって貫通可能なストッパを有する静脈内溶液バッグまたはバイアル内に入れられる。製剤は、好ましくは、局所、静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、筋肉内(i.m.)反復注射または注入として、あるいは鼻腔内または肺内送達に適するエアロゾル製剤として投与される。
【0080】
本明細書で開示される分子はまた、持続放出製剤の形態で投与されうる。持続放出製剤の適切な例として、タンパク質を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、ここでマトリックスは造形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例として、ポリエステル、Langerら、J.Biomed.Mater.Res.、15:167−277頁(1981年)およびLanger、Chem.Tech.、12:98−105頁(1982年)に記載のヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号明細書、欧州特許第58,481号明細書)、L−グルタミン酸およびγエチル−L−グルタミン酸の共重合体(Sidmanら、Biopolymers、22:547−556頁(1983年))、非分解性エチレン−酢酸ビニル(Langerら、上記)、Lupron Depotなどの分解性乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフィア)、ならびにポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133,988号明細書)が挙げられる。
【0081】
補助活性化合物はまた組成物中に取り込まれうる。特定の実施形態では、本発明の融合タンパク質または三量体複合体は、1つ以上の追加的治療剤との同時処方および/または同時投与がなされる。例えば、本発明の融合タンパク質または三量体複合体は、他の標的に結合する1つ以上の抗体(例えば他のサイトカインに結合するかまたは細胞表面分子に結合する抗体)または1つ以上のサイトカインとの同時処方および/または同時投与がなされうる。
【0082】
本明細書で使用される用語「治療有効量」は、投与される目的である効果をもたらす融合タンパク質または三量体複合体の量を意味する。正確な用量は当業者によって確認可能になる。当該技術分野で既知のように、年齢、体重、性別、食事、投与の時間、薬剤相互作用および症状の重症度に基づく調整が必要な場合があり、それは当業者による定期実験で確認可能となる。治療有効量はまた、治療的に有益な効果が融合タンパク質または三量体複合体の任意の毒性または有害な影響を上回る場合のものでもある。「予防的有効量」は、所望される予防的結果を得るのに必要な用量および期間での有効量を示す。典型的には、予防的用量が疾患前かまたは疾患のより早期の段階で対象に対して使用されることから、予防的有効量は治療有効量より少ないことになる。
【0083】
投与計画を調整することで、最適な所望される応答(例えば治療的または予防的応答)を得ることができる。例えば、単回ボーラスが投与されうるか、数回に分けた用量が長期的に投与されうるか、または用量は治療的状況の要件が示すように比例的に低減または増加されうる。投与のしやすさおよび用量の均一性から非経口組成物を用量単位形態で処方することが特に有利である。本明細書で用いられる用量単位形態は、試験される哺乳類対象について1回分の用量として適する物理的に独立した単位を示し、各単位は必要とされる薬剤担体に関連して所望される治療効果をもたらすように計算された規定量の活性化合物を含有する。本発明の用量単位形態における仕様は、(a)活性化合物に固有の特性および達成されるべき特定の治療または予防効果、ならびに(b)個体における感受性の治療においてかかる活性化合物を化合する場合の当該技術分野に特有の制限によって決定づけられ、かつそれらに直接依存している。
【0084】
治療の方法
本発明の別の態様は、HSP70媒介性のDCの活性化を妨げる方法に関する。本方法は、可溶性HSP70を、三量体化ドメインとHSP70活性化領域に結合する少なくとも1つのポリペプチドとを含む本発明のHSP70樹状細胞活性化領域における結合メンバーと接触させる工程を含む。本態様の一実施形態では、本方法は、HSP70を発現する細胞を有する組織を本発明の三量体複合体と接触させる工程を含む。
【0085】
HSPポリペプチド結合剤は、既知の方法、例えばボーラスとしての静脈内投与に従って、あるいは筋肉内、腹腔内、脳脊髄内(intracerobrospinal)、皮下、関節内、滑液嚢内、髄腔内、経口、局所、または吸入経路による長期間の連続注入によって投与されうる。場合により、投与は、様々な市販のデバイスを使用し、ミニポンプ注入を介して行われうる。
【0086】
本発明はまた、本発明のポリペプチド、融合タンパク質または複合体を、メラノーマを患う患者に投与する工程を含む、メラノーマを治療する方法に関する。
【0087】
本発明のHSPポリペプチドおよびポリペプチド結合剤を投与するのに有効な用量および計画は経験に基づいて決定可能であり、かかる決定を行うことは当業者の範囲内にある。1回または複数回の用量が使用されうる。HSPポリペプチドおよびポリペプチド結合剤のインビボ投与が用いられる場合、常用量は、投与の経路に依存し、1日あたり哺乳動物の体重の約10ng/kg〜最大で100mg/kgまたはそれ以上、好ましくは約1μg/kg/日〜10mg/kg/日で変化しうる。送達の特定の用量および方法に関する指針は、文献において提供されている。例えば、米国特許第4,657,760号明細書;米国特許第5,206,344号明細書;または米国特許第5,225,212号明細書を参照のこと。当業者は、投与すべき用量が、例えば、ポリペプチドを受けることになる動物、投与の経路、および哺乳動物に投与されている他の薬剤または治療法に依存して変化することを理解するであろう。用量の種間スケーリングは、当該技術分野で既知の方法で、例えばMordentiら、Pharmaceut.Res.、8:1351頁(1991年)に開示されるように行われうる。
【0088】
融合タンパク質の生成
本発明の融合タンパク質は、任意の適切な標準タンパク質発現系において、融合タンパク質をコードするベクターで形質転換された宿主を融合タンパク質が発現されるような条件下で培養することによって発現されうる。好ましくは、発現系は、所望されるタンパク質が容易にインビトロで単離され、再フォールディングされうる系である。一般的事柄として、原核生物の発現系が、高収量のタンパク質が得られる可能性があり、効率的精製および再フォールディング方法が利用可能であることから好ましい。したがって、(ベクターおよび細胞種を含む)適切な発現系の選択は当業者の理解の範囲内にある。同様に、一旦、本発明の融合タンパク質における主なアミノ酸配列が選択されると、当業者は所望されるアミノ酸配列をコードすることになる適切な組換えDNAコンストラクトを容易に設計し、選択される宿主内でのコドンバイアス、宿主内で分泌されるシグナル配列に対する必要性、シグナル配列内部でのプロテイナーゼ切断部位の導入などの要素を考慮することができる。
【0089】
一実施形態では、単離ポリヌクレオチドはHSPポリペプチドまたはHSP70活性化領域に結合するポリペプチドをコードする。一実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、HSP70ポリペプチドに結合する第1のポリペプチド、HSP70ポリペプチドに結合する第2のポリペプチド、および三量体化ドメインをコードする。特定の実施形態では、HSP70ポリペプチドに結合するポリペプチド(または第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチド)および三量体化ドメインは単一の隣接ポリヌクレオチド配列(遺伝子融合体)においてコードされる。他の実施形態では、HSP70ポリペプチドに結合するポリペプチド(または第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチド)および三量体化ドメインは非隣接ポリヌクレオチド配列によってコードされる。したがって、一部の実施形態では、HSP70ポリペプチドに結合する少なくとも1つのポリペプチド(またはHSP70ポリペプチドに特異的に結合する第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチド)および三量体化ドメインは、別々のポリペプチドとして発現され、単離され、精製され、また共に融合されて本発明の融合タンパク質が形成される。
【0090】
標準的技術が、組換えDNA分子、タンパク質、および融合タンパク質の生成、ならびに組織培養および細胞形質転換において用いられうる。例えば、Sambrookら(下記)または「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubelら編、Green Publishers Inc.およびWiley and Sons 1994年)を参照のこと。精製技術は、典型的には、製造業者の仕様に従うかまたはSambrookら(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual.」Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor(NY)(1989年)に示されるような従来の方法を用いて当該技術分野で一般に行われたように、または本明細書中に記載のように実施される。特別な定義が提供されない場合、実験手法に関連して用いられる命名法、ならびに本明細書中に記載の分子生物学、生化学、分析化学、および薬化学/製剤化学に関する技術は、当該技術分野で周知であり一般に用いられるものである。標準的技術は、生化学合成、生化学分析、薬学的調製、処方、および送達、ならびに患者の治療において用いられうる。
【0091】
これらの組換えDNAコンストラクトは、選択される宿主に適する多数の発現ベクターのいずれかにインフレームで挿入されうる。特定の実施形態では、発現ベクターは組換え融合タンパク質コンストラクトの発現を制御する強力なプロモーターを含む。組換え発現方法を用いて本発明の融合タンパク質を生成する場合、得られる融合タンパク質は当該技術分野で周知の適切な標準的方法を用いて単離され、精製され、場合により例えば凍結乾燥などのさらなる処理を受けうる。
【0092】
柔軟な分子リンカーが場合によって特定の結合メンバーおよび三量体化ドメインの間に挿入され、それらに共有結合しうることは理解されるであろう。特定の実施形態では、リンカーは約1〜20個のアミノ酸残基のポリペプチド配列である。リンカーは、10個未満、最も好ましくは5、4、3、2、もしくは1個のアミノ酸でありうる。特定の場合、9、8、7もしくは6個のアミノ酸が適切でありうる。有用な実施形態では、リンカーは本質的に非免疫原性であり、タンパク質分解切断を受けにくく、他の残基(例えばシステイン残基)と相互作用することで知られるアミノ酸残基を含まない。
【0093】
下記の説明はまた、1つ以上の化学基に共有結合される(以下、「抱合される」)融合タンパク質および三量体複合体を生成する方法に関する。かかる抱合体における使用に適する化学基は、好ましくは有意に毒性または免疫原性でない。化学基は、場合により、保存に適する条件下で保存され、使用されうる抱合体を生成するように選択される。ポリペプチドに抱合されうる種々の典型的な化学基は当該技術分野で既知であり、例えば炭水化物、例えば糖タンパク質、ポリグルタミン酸塩、および非タンパク質性ポリマー、例えばポリオール上で天然に生じる炭水化物を含む(例えば米国特許第6,245,901号明細書を参照)。
【0094】
本明細書で使用される用語「ポリオール」は広くは多価アルコール化合物を示す。ポリオールは任意の水溶性ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーであり得、例えば直鎖または分岐鎖を有しうる。好ましいポリオールは、1つ以上のヒドロキシル位置で化学基、例えば1〜4の炭素を有するアルキル基と置換されるものを含む。典型的には、ポリオールはポリ(アルキレングリコール)、好ましくはポリ(エチレングリコール)(PEG)である。しかし、当業者は、例えばポリ(プロピレングリコール)およびポリエチレン−ポリプロピレングリコール共重合体などの他のポリオールがPEGにおける本明細書中に記載した抱合のための技術を用いて利用されうることを理解している。本発明のポリオールは、当該技術分野で周知のものや、例えば市販のものを含む。
【0095】
例えば、ポリオールは、国際公開第93/00109号パンフレット(上記)に開示のように、リジン残基を含む1つ以上のアミノ酸残基で本発明の融合タンパク質に抱合されうる。使用されるポリオールは任意の水溶性ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーであり得、直鎖または分岐鎖を有しうる。適切なポリオールは、1つ以上のヒドロキシル位置で化学基、例えば1〜4の炭素を有するアルキル基と置換されるものを含む。典型的には、ポリオールはポリ(アルキレングリコール)、例えばポリ(エチレングリコール)(PEG)であることから、説明を簡単にするため、考察の残りは、使用されるポリオールがPEGであり、ポリオールをポリペプチドに抱合させるプロセスが「ペグ化(ペグ化ion)」と称される場合の典型的な実施形態に関する。しかし、当業者は、例えばポリ(プロピレングリコール)およびポリエチレン−ポリプロピレングリコール共重合体などの他のポリオールがPEGにおける本明細書中に記載の抱合のための技術を用いて利用されうることを理解している。
【0096】
Apo−2Lのペグ化において使用されるPEGの平均分子量は変動する可能性があり、典型的には約500〜約30,000ダルトン(D)の範囲でありうる。好ましくは、PEGの平均分子量は約1、000〜約25,000D、およびより好ましくは約1、000〜約5,000Dである。一実施形態では、ペグ化は約1,000Dの平均分子量を有するPEGの場合になされる。場合により、PEGホモポリマーは未置換であるが、1末端でアルキル基と置換されうる。好ましくは、アルキル基は、C1〜C4アルキル基、および最も好ましくはメチル基である。PEG製剤は市販されており、典型的には、本発明における使用に適するPEG製剤は、平均分子量に基づいて販売される非均一製剤である。例えば、市販のPEG(5000)製剤は、典型的には分子量がやや変動する(通常±500D)分子を含有する。本発明の融合タンパク質は、例えば小分子化合物(例えば化学療法剤)に抱合される;シグナル分子(例えばフルオロフォア)に抱合される;特異的結合対の分子(例えば、ビオチン/ストレプトアビジン、抗体/抗原)に抱合される;またはグリコシル化、ペグ化、または安定化ドメイン(例えばFcドメイン)に対するさらなる融合によって安定化される当該技術分野で既知の技術を用いてさらに修飾されうる。
【0097】
タンパク質をペグ化するための種々の方法は当該技術分野で既知である。PEGに抱合されたタンパク質を生成する特定の方法は、米国特許第4,179,337号明細書、米国特許第4,935,465号明細書および米国特許第5,849,535号明細書に記載の方法を含む。典型的には、タンパク質は、主に反応条件、ポリマーの分子量などに依存し、タンパク質の1つ以上のアミノ酸残基を介してポリマー上の末端反応基に共有結合される。反応基を有するポリマーは本明細書中で活性化ポリマーと称される。反応基は、選択的にタンパク質上の遊離アミノ基または他の反応基と反応する。PEGポリマーは、ランダムまたは部位特異的様式のいずれかでタンパク質上のアミノ基または他の反応基に共役されうる。しかし、最適な結果を得るため、選択される反応基のタイプおよび量ならびに使用されるポリマーのタイプが、反応基をタンパク質上の多すぎる特に活性の高い基と反応させることを回避するために使用される特定のタンパク質またはタンパク質変異体に依存することになることは理解されるであろう。これが完全に回避する見込みがない可能性があることから、一般に、タンパク質濃度に依存し、タンパク質1モルあたり、約0.1〜1000モル、好ましくは2〜200モルの活性化ポリマーが使用されることが推奨される。タンパク質1モルあたりの最終量の活性化ポリマーは、最適な活性を維持する一方、それと同時に可能であればタンパク質の循環半減期を最適化する上でのバランスである。
【0098】
セクション見出しがあくまで整理上の目的で本明細書中で用いられ、記述される主題を限定する任意の方法などとして解釈されるべきでないことは着目すべきである。本明細書中で引用されるすべての参考文献は、あらゆる目的でそれら全体が参照により援用される。
【0099】
以下は、あくまで例示目的で提供され、上で広義の用語で記述される本発明の範囲を限定するようには意図されない。本開示において引用されるすべての参考文献は参照により本明細書中に援用される。
【実施例】
【0100】
実施例1
突然変異をヒトHSP70発現ベクターに導入し、ヒトHSP70におけるDC活性化領域についてよりよく理解し、DCの活性化に関与する最小の考え得る領域を同定した。ヒトHSP70のアミノ酸配列を下記に示す[配列番号16]。
【表1】

【0101】
HSP−70の13−mer(太字)を、白斑での色素脱失におけるその重要性をさらに検討するために選択した。4つの変異体を生成し、これらの配列を有するベクターを、Denmanら、「Society for Investigative Dermatology」、128;2041−2048頁、2008年3月(参照により本明細書中に援用される)に記載のように白斑マウスモデルにおいて試験した。同モデルでは、樹状細胞によって認識されるメラノサイト関連抗原ペプチドを提供し、それによってT細胞媒介性免疫応答を誘発するタンパク質の翻訳を誘導するヒトTRP−2 DNAを使用する。突然変異を、HSP70をコードするプラスミドに部位特異的突然変異誘発によって導入した。下記の表1は、この部位特異的突然変異誘発の結果を示す。突然変異を導入し、13−mer内部のアミノ酸の1または2を改変した。修飾アミノ酸を太字で示す。
【0102】
【表2】

【0103】
hTRP−2およびhHSP70およびhHSP70変異体のクローン化および配列決定は次のように実施可能である。hTRP−2発現クローン化においては、RNAをM14ヒトメラノーマ細胞から単離した。TRP−2転写産物は、次のプライマー、すなわち5’−CACCATGAGCCCCCTTTGGTGGGGGTTTC−3’(フォワード)[配列番号12]および5’−CTAGGCTTCTTCTGTGTATCTCTTG−3’(リバース)[配列番号13]の存在下で増幅可能である。上流プライマーにおけるCACC配列は、PCR産物のpcDNA3.1D/V5−His−TOPO(Invitrogen(Carlsbad,CA))へのディレクショナルTOPOクローン化を可能にした。ヒトHSP70iは、プライマー5’−ATGGCCGCGGCGATCG−3’(フォワード)[配列番号14]および5’−CTAATCTACCTCAATGGTG−3’(リバース)[配列番号15]の存在下でヒト一次ケラチノサイトRNAから増幅可能である。HSP70をコードする遺伝子をpcDNA3.1/CT−GFP−TOPO(Invitrogen)にクローン化した。
【0104】
すべての増幅における逆転写PCR条件は次のようにして得ることができる。すなわち、5mgのRNAが、1mMずつのdNTP、10mM DTT(ジチオトレイトール)、3.3mM MgCl、25ng/mlのオリゴdTプライマーおよび200U Supercript II逆転写酵素の存在下、42℃で、第1の鎖の逆転写緩衝液と結合し、70℃への加熱によって反応が終了しうる。10%の逆転写反応物のPCR増幅が可能である(PCR緩衝液:2mM MgCl、400mMずつのdNTP、0.8mg/mlのプライマーおよび5U Taqポリメラーゼ)。hTRP−2の場合、Taqポリメラーゼを2.5U AccuPrime酵素(Invirtrogen)によって置換した上で、添加剤は1#AccuPrimeミックス(Invitrogen)によって置換可能である。PCR反応は、95℃で30秒間、58℃で30秒間、および72℃で100秒間、それに続いて72℃で10分間、40サイクルで実行可能である。PCR産物は、製造業者の使用説明書に従って適切なベクターにクローン化可能である。
【0105】
各クローン化手順から得られる細菌コロニーに対して制限分析可能であり、正確な方向に遺伝子を有するクローンをMegaPrepエンドトキシンフリーな単離手順(Qiagen(Valencia,CA))において使用し、配列決定によって検証可能である。hHSP70、mHSP70、およびTRP−2を含むワクチン内に含まれる真核発現ベクターによってコードされるすべてのタンパク質の発現の奏功については、形質移入COS細胞由来の全タンパク質のウエスタンブロッティング、それに続く間接アルカリホスファターゼ免疫染色によって確認可能である。
【0106】
実施例2
単一または二重の置換ペプチド配列を13−mer内部に導入し、未変性タンパク質および突然変異タンパク質の発現を形質移入COS細胞のウエスタンブロッティングによって確認した。タンパク質の発現をもたらさなかった変異体は示していない。
【0107】
図2は、形質転換の48時間後におけるCOS細胞による誘導HSP70(HSP70i)の発現を示す。COS細胞にはタンパク質回収の48時間前にリポフェクタミンの存在下で形質移入した。ブロットを、HSP70に対する抗体(SPA−810(モノクローナル)およびSPA−811(ポリクローナル)の双方)でプローブした。MoAbによる変異体5および6の認識は、ポリクローナル抗体(PoAb)による認識よりも低下している。抗体はAssay Designs Inc.(Ann Arbor,Michigan)から購入した。
【0108】
実施例3
C57BL/6マウス10匹/群に、4週間にわたり4.8μgの全DNAを毎週ワクチン接種した。使用したプラスミドDNAは、(メラノサイトに対する免疫原性応答を誘導するのに使用される)TRP2と野生型または変異体HSP70発現ベクターとの組み合わせ、ならびに空の(empty)ベクター対照群を含んだ。マウスに、Overwijkら、PNAS、96:2982−7頁、1999年に記載のように遺伝子銃によってワクチン接種した。遺伝子銃で使用される「銃弾(bullets)」を調製するため、所望される組み合わせでのエンドトキシンフリーなプラスミドDNAを、200mM CaCl(Sigma(St Louis,MO))および10容量のエタノール(Sigma)の存在下で、スペルミジンでコートした金ビーズ(Fluka Biochemika(Buchs,Switzerland)およびSigma−Aldrich)上に沈殿させた。洗浄したビーズを、BioRad Tubing Prep Station(Bio−Rad)内のシリコーンチューブ(Bio−Rad)上に沈殿させた。銃弾を調製の10日以内に使用した。Helios遺伝子銃システム(Bio−Rad)を使用する遺伝子銃ワクチン接種によるマウス(Jackson Labs、Bar Harborから得たC57BL/6J)の2つの株。目的のDNAでコートした金粒子を、最大300p.s.i.(ポンド/平方インチ)でのヘリウム圧力下でシリコーンチューブカートリッジから放出し、それによりDNAが皮膚に直接進入し、DCなどの関連細胞種内部に収まる(nestle)ことが可能になり、ここではDNAが排出リンパ節への泳動の前および後に発現され、ワクチンによってコードされる抗原に対する免疫応答が誘発されうる。
【0109】
アッセイでは、実験条件ごとにマウス10匹の群サイズを用いた。マウスを麻酔し、ワクチン接種前にそれらの毛をNAIR(登録商標)クリームで除去した。色素脱失を、毛が回復後、毎週、フラットベッドスキャナー上のイメージから測定した。色素脱失を、週に1度、麻酔したマウスの両側に対し、フラットベッドスキャナーを使用して走査し、PHOTOSHOP(登録商標)ソフトウェアを使用してグレースケールで定量することによって評価した。マウスは9週間監視され、順応に1週間、ワクチン接種にさらに3週間および毛の再生後の追跡調査に8週間を費やした。マウスを6〜10週齢で実験に導入した。
【0110】
図3および4は実験の結果を示す。図4Aは、最後の遺伝子銃ワクチン接種の6週間後におけるマウスの色素脱失を示す。図4Bは、対照プラスミドのみでワクチン接種されているマウスを示す。毛が回復してから、色素脱失は全く認められなかった。図4Bは、等量のTRP2およびヒトHSP70をコードするプラスミドの組み合わせでワクチン接種したマウスにおける有意な色素脱失を示す。図4Cに示されるように、マウスは、等量のTRP2およびヒトHSP70変異体6をコードするプラスミドの組み合わせでのワクチン接種後に色素脱失を示さなかった。これらの結果は、同じく処理されたマウス間での色素脱失の浸透度における変動を示す。
【0111】
図5は、腹側への遺伝子銃ワクチン接種がマウスの背部への色素脱失の進行を誘発したことを示す。対照ベクター(図5、左側)対TRP−2およびヒトHSP70変異体10個の組み合わせ(図5、中央)またはTRP−2+マウスHSP70(図6、右側)で処理された代表的マウスの非ワクチン接種領域を示す背側イメージ。それらの色素脱失の進行性は、ヒト白斑において認められるものに類似する。背側色素脱失はまた、HSP70変異体10で処理されたマウスにおいて認められた。
【0112】
したがって、アミノ酸配列QPGVLIQVYEG[配列番号1]がDC活性化およびそれによる免疫活性化に関与するものと決定されうる。図1は、本発明のペプチドが自己免疫色素脱失のプロセスを媒介することを示す。変異体5、6、8、および10に対する野生型ペプチドの活性の比較によると、変異体10のみが色素脱失を野生型ペプチドに類似のレベルまで促進することが示される。
【0113】
本発明の様々な特定の実施形態が本明細書中に記載されているが、本発明が明確な実施形態に限定されず、かつ様々な変化または改良が本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者によって本明細書中でなされうることは理解されるべきである。
【0114】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
QPGVLIQVYEG[配列番号1]を含むヒトHSP70の単離非天然断片を含むポリペプチド。
【請求項2】
三量体化ドメインとQPGVLIQVYEG[配列番号1]に結合する少なくとも1つのポリペプチドとを含む融合タンパク質。
【請求項3】
前記少なくとも1つのポリペプチドが、QPGVLIQVYEG[配列番号1]に結合するポリペプチド配列を含むループ領域を有するC型レクチン様ドメイン(CLTD)を含む、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
QPGVLIQVYEG[配列番号1]に結合する第1のポリペプチドが前記三量体化ドメインのN末端およびC末端の一方に位置し、かつQPGVLIQVYEG[配列番号1]に結合する第2のポリペプチドが前記三量体化ドメインのN末端およびC末端の他方に位置する、請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記第1および第2のポリペプチドの少なくとも1つが、QPGVLIQVYEG[配列番号1]に結合する前記ポリペプチド配列を含むループ領域を有するC型レクチン様ドメイン(CLTD)を含む、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記三量体化ドメインがテトラネクチン三量体化構造エレメントである、請求項2〜5のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
請求項2〜5のいずれか一項に記載の3つの融合タンパク質を含む三量体複合体。
【請求項8】
前記三量体化ドメインがテトラネクチン三量体化構造エレメントである、請求項7に記載の三量体複合体。
【請求項9】
請求項8に記載の複合体および少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含有する医薬組成物。
【請求項10】
白斑を患う患者に請求項8に記載の複合体を投与する工程を含む、白斑を治療する方法。
【請求項11】
白斑を患う患者に請求項9に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、白斑を治療する方法。
【請求項12】
請求項2〜4に記載の融合タンパク質を含むポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項12に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項14】
請求項13に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項15】
樹状細胞およびHSP70を発現する細胞を含む組織を請求項6に記載の三量体複合体と接触させる工程を含む、HSP70によって樹状細胞の活性化を妨げる方法。
【請求項16】
ストレスを患う患者に請求項9に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、ストレスに対するHSP70に関連した自己免疫応答を予防する方法。
【請求項17】
三量体化ドメインとQPGVLIQVYEG[配列番号1]を含むHSP70ポリペプチドとを含む融合タンパク質。
【請求項18】
QPGVLIQVYEG[配列番号1]を含むループ領域を有するC型レクチン様ドメイン(CLTD)をさらに含む、請求項17に記載の融合タンパク質。
【請求項19】
樹状細胞を請求項1、17または18のいずれか1項に記載のポリペプチドと接触させる工程を含む、樹状細胞を活性化する方法。
【請求項20】
メラノーマを患う患者に請求項1、17または18のいずれか1項に記載のポリペプチドを投与する工程を含む、メラノーマを治療する方法。
【請求項21】
前記投与が局所である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記投与がメラノーマ腫瘍の注射によるものである、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−538655(P2010−538655A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525040(P2010−525040)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/076266
【国際公開番号】WO2009/036349
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(508253627)アナフォア インコーポレイテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】Anaphore,Inc.
【Fターム(参考)】