自己免疫疾患及び癌を治療する薬剤及び方法
【解決手段】本発明は、GAD固有作用ではなく全身的効果を引き起こすようなGADワクチン接種の方法及び処方に関している。本発明は、GAD固有作用に関係のない人間の疾患の治療に使用できる。本発明は、感作目的のプライムアンドブースト投与法に続いて治療目的のブースト投与法で少なくとも一種の隔絶自己抗原を投与することで、自己免疫疾患又は病気を治療する方法を含んでいる。これは、診断後直ぐに行ってよい。隔絶自己抗原の例には、GAD65 GAD67、プロインスリン、ミエリン塩基性タンパク質、MOG及びコンドロイチンIIが含まれる。
本発明は、診断から6ヶ月内に自己抗原疾患を治療する薬剤及び方法に関係している。
本発明は、診断から6ヶ月内に自己抗原疾患を治療する薬剤及び方法に関係している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2007年4月24日に出願された米国仮特許出願第60/926,121号と、2007年9月13日に出願された米国仮特許出願第60/993,640号とについて、優先権による利益を主張する。
【0002】
発明の背景技術
自己免疫疾患、アレルギー、及び癌は、似て異なる点で調節異常免疫性炎症(dysregulated immune inflammation)に関係した疾患である。幾つかの自己免疫疾患及び組織拒絶反応のメカニズムは、臓器特異的であり、ほとんどT細胞媒介性であり、且つ、感受性者におけるウイルス感染を含む環境因子によって引き起こされる。このことによって、隔絶(sequestered)自己抗原又は移植抗原が現れて、治療的に使用され、疾患が調整されることが起こり得る。アレルギーは、大抵の場合、アレルゲンの頻繁な出現に応答するB細胞IgE(B cell-mediated IgE)に関係している。癌は、炎症性因子、又は、細胞行動を変化させるその他因子によって引き起こされ得るが、一旦形質転換した癌細胞は、しばしば免疫系の監視を免れる。
【0003】
臓器特異的な自己免疫疾患において、免疫系を抑制すること、又は、免疫系のある種の反応部分を削除することで、疾患を改善することは可能である。免疫抑制は、シクロスポリンのような一般的な抑制剤を用いて達成できるが、T細胞特異的抗体(T cell-specific antibodies)(例えば、抗CD3抗体)及びB細胞特異的抗体(B cell-specific antibodies)(例えば、抗CD20抗体)を使用することで、免疫系の特定のアームを静める、より現代的なアプローチがもたらされる。
【0004】
免疫抑制、及び/又は、免疫成分(immunocomponents)の減少/鎮静は、後天的なB及びT細胞記憶と関係して、さらに、エプスタインバーウイルス感染、インフルエンザ及びその他の微生物の再活性化を含む副作用を頻繁に起こす可能性がある。更に、免疫系の主要なアームへの抗体は、一時的にせよ、治療される患者について、新たな癌疾病と戦う能力を低下させる可能性がある。抗体を用いた免疫調節療法は、大抵の場合、数日間の入院と点滴静注を要することから、面倒である。
【0005】
故に、免疫系自体が時として病気を重くし、及び/又は引き起こすような疾患を安全に治療する薬剤及び方法を見つけるという要求は、殆ど満たされていない。
【0006】
多くの場合、ある種の自己抗原への抗体のような生物学的マーカーは、臓器特異的な自己免疫疾患の顕著な特徴である。このような抗体は、大抵、IgGタイプであるが、疾患のデビュー(disease debut)が近くなるにつれてある種のアイソタイプが顕著になっている(Jacob Pedersen)。免疫系における細胞のアームと体液のアームが疾病の治療効果において協調することは知られているが、現在の見解だと、臓器特異的な自己免疫疾患では、T細胞応答は、主たるインスチゲータ(instigator)である一方で、少なくとも幾つかの自己抗体アイソタイプクラスの存在は、細胞性反応がその自己抗原に対して活性を有することを示している。
【0007】
自己抗原は、当然ながら内因性であるので、自己免疫疾患状態において免疫系によって寛容されないのは驚きかも知れない。インスリンは、患者の免疫系が発達する間は豊富であり、例えば、インスリン抗体が頻繁に生じる1型糖尿病における自己抗原と考えられる。インスリンに対する自己反応性(autoreactivity)は、膵関連(pancreas-related)領域における炎症性を含む環境因子によって、又は、インスリンの隔絶プリフォーム(pre-form)によって誘発される可能性がある。プレプロインスリン又はプロインスリンの全身濃度は、例えば、免疫系が発達する間には免疫系に示されず、一旦現れると、先に隔絶していた内因性のこれらの自己抗原に対する積極的な反応が起こる可能性がある。その反応は、細胞毒性T細胞又はB細胞を含んでいるかも知れない。細胞毒性T細胞は、MHCクラスI抗原及び/又はクラスII抗原によって示されるβ細胞表面の自己抗原エピトープに向かって反応する。B細胞は、先に寛容された又は隔絶した自己抗原に抗体を分泌する。B細胞と自己反応性細胞障害性細胞はさらに、一体となって作用して、目的の治療効果を継続し得る。
【0008】
インスリンは、大きな分子であり、免疫系に十分にさらされるので、1型糖尿病における免疫調節自己抗原としてのポテンシャルは弱い。しかしながら、弱い抗原の免疫調節効果を、それら若しくはそれら由来のペプチドを変化させることで、それらをより強力な抗原に結合することで、アジュバント(adjuvants)にそれらを調製することで、又は、例えば、消化管を介したインスリンのケースのように、新たな投与経路を介して免疫系にそれらをさらすことで、増加することは可能である。
【0009】
自然発症糖尿病NODマウスから得られた説得力のあるデータは、GAD65による治療が、機能性免疫寛容(functional immune tolerance)を誘発することで、自己免疫性糖尿病を防止することを示している。成人性潜在型糖尿病(latent autoimmune diabetes in the adult)(LADA)と5年内に診断された患者の用量設定試験は、一般的なワクチン製剤で組み換え型ヒトGAD65を患者に安全に500μg用量で4回投与できることと、20μgと100μgの用量のプライムアンドブースト注入(prime-and-boost injection)が、数年間、内因性残留インスリン分泌を維持する一方で、4μgと500μgの用量だと有効性を示さなかったこととを示している。それ故に、1型糖尿病である患者のGAD65による治療は、最初の投与に先立つ6ヶ月の期間内に診断された患者群にのみ機能しており、更なる投与が、隔絶しているがなお内因性であるこの自己抗原の免疫調節効果を維持するために必要とされることは、驚くべき発見であり、これが本件発明の主題である。
【0010】
1型糖尿病(T1D)は、自己免疫疾患であり1、人口の0.3乃至1%に影響を及ぼしており、その発生率は増加している。現代の集中的なインスリン治療は、T1Dの患者における神経、腎臓、眼、及び心臓の合併症を低減したが、完全には防止できていない。この病気の疾病率と死亡率は顕著であり、多数の患者が、時には生死に関わる急性の合併症で悩んでいる2-4。少量の残留インスリン分泌でさえも、0.2pmol/ml以上の誘導Cペプチドがあり、長期の合併症を低減する点で、臨床的に有意義な利益をもたらすと言われている5。しかしながら、残留β細胞機能を維持する幾つかの試みは、多くの患者が有害事象を得ているものの非常に見込みがありそうな抗CD3モノクローナル抗体を用いた治療を除いて16,17、副作用に関して小さい又は非常に弱い効果に終わっている6-15。自己抗原の投与は、試みに関係しているように見える18。インスリンとグルタミン酸脱炭酸酵素65(GAD65)は、T1Dにおける主要な自己抗原であって19,20、免疫修飾実験でテストされている21。自然発症糖尿病NODマウスから得られた従来のデータは、GAD65が、機能的免疫寛容を誘発することで、T1Dを防ぐことを示している22,23。過去において、成人性潜在型糖尿病(LADA)である患者の用量設定試験は、20μgのDiamid(登録商標)(ミョウバン(alum)を用いた一般的なワクチン製剤の組み換えヒトGAD65)のプライムアンドブースト注入が、残留インスリン分泌を維持できることを示している24。
【0011】
これら及びその他の発見を考慮して、我々は、発症後間もない若いT1D患者へのDiamid(登録商標)の投与が安全であるか否か、残留インスリン分泌の減少を減らす又は食い止めるか否かに関する研究を考えて、それを開始した。本明細書では、15ヶ月の研究期間後の結果について報告する。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
本発明は、GAD固有作用ではなく全身的効果を引き起こすようなGADワクチン接種の方法及び処方に関している。それ故に、本発明は、GAD固有作用に関係のない人間の疾患の治療に使用できる。
【0013】
大まかに言えば、本発明は、感作目的のプライムアンドブースト投与法に続いて治療目的のブースト投与法で少なくとも一種の隔絶自己抗原を投与することで、自己免疫疾患又は疾病を治療する方法を含んでいる。これは、診断後直ぐに行ってよい。隔絶自己抗原は、GAD65 GAD67、プロインスリン、ミエリン塩基性タンパク質(Basic Myelin Protein)、MOG、及びコンドロイチンII(Chondrotoin II)からなる群から少なくとも1種選択される。
【0014】
投与は、経口投与、経鼻投与、吸入投与、筋肉内投与、又は皮下投与の1つ又は複数であってよい。
【0015】
本発明の対象となり得る疾患又は病気は、下記の群から選択される:膵炎、偽膜性大腸炎、急性潰瘍性大腸炎、慢性潰瘍性大腸炎、無弛緩症、胆管炎、クローン病、炎症性大腸炎、腸炎、ウィップル病、糖尿病、ぜんそく、アレルギー、免疫複合体病、臓器虚血、臓器壊死、花粉症、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、肺気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、やけど、皮膚炎、皮膚筋炎、じんましん、血管炎、循環器疾患、アテローム性動脈硬化症、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、関節リウマチ、アルツハイマー病、セリアック病、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、神経炎、関節リウマチ、滑膜炎、シェーグレン症候群、スティッフパーソン症候群、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、紅斑性狼瘡、アジソン病、悪性貧血、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、同種移植拒絶反応移植片対宿主病、1型糖尿病、強直性脊椎炎、ベルジェ病、2型糖尿病及びグレイヴズ病。
【0016】
疾患又は病気の症状の検知に応じて、追加の投与がなされてもよい。
【0017】
また、自己抗原は、ミョウバンのようなアジュバントに調製されてよい。
【0018】
また、本発明は、GAD65 GAD67、プロインスリン、ミエリン塩基性タンパク質、MOG及びコンドロイチンIIの中の少なくとも1種を含む隔絶自己抗原のカクテル療法を含む処方を含んでおり、当該処方は、医薬組成物として使用されてよい。その薬剤は、ミョウバンのようなアジュバントを含んでよい。
【0019】
本発明の主題は、自己免疫疾患に関している。より詳細には、それは、T細胞の特異的アップレギュレーションを含んでいる。
【0020】
GADは、自己免疫性糖尿病の主要な自己抗原である。1日目と30日目という2回の時点にて、cペプチドが陽性、GADab+であって、発症後間もない10乃至18歳の1型糖尿病の患者である35人に、GAD−alumが皮下に注入され、34人に偽薬(ミョウバン)が注入された。アジュバントとしてミョウバンが使用された。15ヶ月後にて、有効な薬を受け取った患者は、食物刺激後にcペプチドを生成する能力が顕著に高くなった。
【0021】
偽薬と比較したcペプチドレベルの改善については、全ての患者に効き目があったわけではない。しかしながら、診断後に患者がより早く処置されるにつれて、結果がより良くなった。これは、驚くべき発見である。男性よりも女性の方が若干効き目が良いと思われた。若い患者よりも年長の患者の方が若干効き目が良いと思われた。
【0022】
一方、驚くべきことに、15ヶ月後に免疫機構研究を実行すると、ほとんど全ての(全てではない)患者は、GADによる刺激に反応した。偽薬を受け取った患者のほとんど又は大半は、免疫学的に反応しなかった。FoxP3と、15ヶ月後のGAD刺激後に得られたサイトカインパターンとは、自己免疫疾患のダウンレギュレーションに必要とされる反応に関する最新の考えに沿っていた。GADでトリガーされても、効果はGAD特異ではない。測定されたFoxP3の増加は、制御性T細胞の数の増加を示しており、当該分野では、それらの制御性T細胞が自己抗原への自己免疫反応を制御することが知られている。多くのその他の内因性タンパク質とは異なり、GADは隔絶自己抗原であるので、補充されてGADに応答できる未感作T細胞のプールが存在する。皮下(sc)注入されたミョウバン調製GADでは、制御性T細胞が増加した。このことは、GAD注入が全身的作用を有しており、任意の自己免疫疾患の治療に使用できることを示している。
【0023】
最近得られたデータによれば、15ヶ月目に刺激インスリン生成(cペプチドで測定)の減少を示さなかった少数の患者でさえも、15ヶ月後に刺激インスリン生成の減少が始まった。それ故に、治療計画では、単に2回の投与よりも多く投与するのが望ましい。最近得られたデータは、追加の投与が要求されて、インスリン生成の増加を保つのが好ましいことを示唆している。
【0024】
このデータは、継続的で、好ましくは定期的な治療が、ワクチン接種のみよりも好ましいことを示している。
【0025】
それ故に、本発明は、ワクチン接種と関連する処方を含んでおり、さらに、治療計画も含んでいる。
【0026】
その治療は、患者が定期的に新たな治療投与を受ける計画を含んでいる。投与間の好ましい間隔は、12ヶ月であり、9ヶ月毎がより好ましく、6ヶ月毎がさらに好ましく、2乃至5ヶ月目毎の間隔が最も好ましい。
【0027】
本発明によれば、2回投与(つまり、2ショット)計画は、効果的ではあるが、その効果は、最も望ましいようには長続きしない。これは、治療計画がワクチン接種計画よりも好ましいことを示すかも知れない。本発明の理論に限定されないが、この理由は、2ショット計画で成し得るように「内生(endogenic)」タンパク質へのアクティブな機能寛容を引き起こすと、その効果が、そのタンパク質が「外生(exogenic)」であった場合のようには長続きしないことかも知れない。それ故に、免疫系は、(規則的なブーストを用いたような)規則的な治療方式で継続的に催促される必要がある。
【0028】
それ故に、本発明は更に、感作を目的としてプライムアンドブースト計画で少なくとも1種の隔絶自己抗原を投与し、その後、治療目的で少なくとも2回のブースト投与をすることで、自己免疫疾患又は疾病を治療する方法を含んでいる。
【0029】
治療投与のタイミングについては、少なくとも2回の投与の間のインターバルは、12ヶ月未満で(又は、上述したようにより頻繁で)あるのが好ましく、9ヶ月未満であるのがより好ましく、6ヶ月未満であるのが更に好ましく、約2乃至約5ヶ月の期間のインターバルであるのが最も好ましい。ブースト投与は、少なくとも2年の期間について、12ヶ月未満のインターバルでなされるのが好ましい。ブースト投与は、少なくとも5又は10年のより長い期間でなされるのがより好ましく、また、患者の寿命の大部分に渡ってなされるのが好ましい。
【0030】
本発明はまた、自己免疫疾患を治療する薬剤及び方法に関している。特に、本発明は、薬剤と、予め充填された使い捨ての注射器及び薬瓶とを教示しており、それらに含まれる薬剤では、治療に先立つ6ヶ月以内に自己免疫疾患と診断された患者に、6ヶ月の期間内に3回投与される隔絶内生自己抗原が適切な強さを有している。さらに、本発明は、隔絶自己抗原又はそのエピトープが発見される領域にて炎症を制御する構成、薬剤、処方及び方法を教示している。
【0031】
本発明の処方及び方法は、以下を含む群から選ばれる少なくとも1種の自己抗原を含んでいるのが好ましい:GAD65、GAD67、プロインスリン、ミエリン塩基性タンパク質、MOG、II型コラーゲン、ICA512(IA2)、ICA512B(IA2B)、インスリン、インスリンB鎖、Hsp60、Hsp65、P277、ICA69、グリマ38(Glima38)、SOX13、イモゲン38(Imogen 38)、スルファチド、21−水酸化酵素(21-Ohase)、TPO、アレルゲン、移植抗原、癌抗原、又は、それらの部分、ペプチド、若しくは、改変ペプチドリガンド。
【0032】
本発明の薬剤及び方法の使用では、経口、経鼻、吸入、筋肉内、皮下、静脈、直腸内、及び経皮の1又は複数の経路による投与が、又は、インプラント若しくはポンプ、DNAやRNAガン、AAVやHSVのようなウイルスベクターが利用されてもよい。
【0033】
また、本発明の薬剤は、臓器特異的自己免疫疾患の治療の場合には、水酸化アルミニウムのようなアジュバントに調製される(formulated)構成物を含んでおり、癌の治療の場合には免疫系の細胞媒介アーム(cell-mediated arm)を刺激するアジュバントに調製される構成物を含んでいるのが好ましい。
【0034】
本発明の処方は、診断から6ヶ月内に疾患を治療するために3回使用される。更なる投与は、疾患又は病気の検知に応じて行われる。処方は、診断から12ヶ月の期間内に4回使用されるのが好ましい。
【0035】
概して、本発明は、自己免疫疾患を治療する方法として広く提示されてよく、(1)自己免疫疾患の進行が6ヶ月より長くないと判断される患者を特定するステップと、(2)6ヶ月の期間内で自己免疫疾患を治療するのに使用される効果的な量の薬剤を投与することで治療を開始するステップと含んでよい。
【0036】
治療は、自己免疫疾患の進行が3ヶ月を超える前に開始されるのが好ましい。薬剤は、治療開始から6ヶ月内に少なくとも3回投与されるのが好ましい。それら両方がなされるのが最も好ましい。
【0037】
好ましい実施例の場合では、治療開始から4ヶ月内に少なくとも3回薬剤が投与され、治療開始から3ヶ月内に少なくとも3回薬剤が投与されるのがより好ましく、治療開始から10乃至12ヶ月の間に少なくとも4回投与されるのが最も好ましい。また、薬剤は、治療開始から30日内に少なくとも2回投与されるのが好ましい。
【0038】
本発明の方法は、薬剤の少なくとも1つの抗体に対する抗体陽性、及び/又は、異常に高い血糖値を特徴とする自己抗原疾患に対して使用されてよい。これは、1型糖尿病を含んでいてもよい。
【0039】
本発明はまた、自己免疫疾患を治療する方法を含んでおり、当該方法は、(1)空腹時Cペプチドレベルが0.2pmol/ml以上に自己免疫疾患が進行したと、好ましくは、空腹時Cペプチドレベルが0.1pmol/ml以上に自己免疫疾患が進行したと判断される患者を特定するステップと、(2)その時点から6ヶ月内に、自己免疫疾患を治療するのに使用される効果的な量の薬剤を投与することで治療を開始するステップと含んでいる。患者の空腹時cペプチドレベルが0.1pmol/ml以上と特定され、自己免疫疾患がインスリン生成β細胞を攻撃して、この空腹時レベルが0.1pmol/mlより低くなる前に治療が開始されるのが好ましい。残っているβ細胞が実際にほとんどない場合には、空腹時Cペプチドレベルは、0.1pmol/mlより低くなる。通常、あるレベル(0.2pmol/ml)以上の空腹時Cペプチドレベルは、長期的合併症をより少なくする。
【0040】
本発明の方法は、以下の群の構成物から選ばれる少なくとも1種の主要な自己抗原を用いることで、自己免疫疾患に対処するのに使用されてよい:GAD65、GAD67、プロインスリン、ミエリン塩基性タンパク質、MOG、II型コラーゲン、ICA512(IA2)、ICA512B(IA2B)、インスリン、インスリンB鎖、Hsp60、Hsp65、P277、ICA69、グリマ38、SOX13、イモゲン38、スルファチド、21−水酸化酵素、TPO、アレルゲン、移植抗原、癌抗原、又は、それらの部分、ペプチド、若しくは、改変ペプチドリガンド。
【0041】
自己免疫疾患に使用される本発明の方法では、Th2誘導アジュバントに構成物が調製され、さらには、そのTh2誘導アジュバントがミョウバンであるのが好ましい。
【0042】
本発明はまた、以下を含む群から選択された構成物を有することを特徴とする、細胞媒介性細胞毒性を促進する薬剤を用いてよい:GAD65、GAD67、プロインスリン、ミエリン塩基性タンパク質、MOG、II型コラーゲン、ICA512(IA2)、ICA512B(IA2B)、インスリン、インスリンB鎖、Hsp60、Hsp65、P277、ICA69、グリマ38、SOX13、イモゲン38、スルファチド、21−水酸化酵素、TPO、アレルゲン、移植抗原、癌抗原、又は、それらの部分、ペプチド、若しくは、改変ペプチドリガンド。これらの構成物は、Th1誘導アジュバントに調製されてよい。
【0043】
本発明の方法で治療され得る自己免疫疾患の例には、癌が含まれる。その他の自己免疫疾患は、以下を含む群から選択されてよい:膵炎、偽膜性大腸炎、急性潰瘍性大腸炎、慢性潰瘍性大腸炎、無弛緩症、胆管炎、クローン病、炎症性大腸炎、腸炎、ウィップル病、1型及び2型糖尿病、ぜんそく、アレルギー、免疫複合体病、臓器虚血、臓器壊死、花粉症、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、肺気腫、鼻炎、やけど、皮膚炎、皮膚筋炎、じんましん、血管炎、循環器疾患、アテローム性動脈硬化症、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、関節リウマチ、アルツハイマー病、セリアック病、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、神経炎、関節リウマチ、 滑膜炎、シェーグレン症候群、スティッフパーソン症候群、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、紅斑性狼瘡、アジソン病、悪性貧血、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、強直性脊椎炎、ベルジェ病、グレイヴズ病、同種移植拒絶反応、移植片対宿主病、及び癌。
【0044】
本発明の方法はまた、経口、経鼻、吸入、筋肉内、皮下、静脈、直腸内、及び経皮を含む群から選択される経路の少なくとも1つを用いて投与される薬剤を使用してよく、又は、インプラント若しくはポンプを用いて、DNAやRNAガンを用いて、アンフィオン(amphions)、 欠陥(defective)AAVやHSVのようなウイルスベクターを用いて投与される薬剤を使用してよい。
【0045】
本発明の方法は、治療機会(treatment occasion)当たり10と150マイクログラムの間の量である少なくとも一種の自己抗原が使用されるのが好ましい。
【0046】
本発明はまた、本明細書で説明された薬剤処方と、本明細書で説明された方法で適用される薬剤処方とを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図2】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図3】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図4】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図5】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図6】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図7】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図8】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図9】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図10】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図11】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図11A】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図12】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図13】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図14】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図15】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図16】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図17】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図17A】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図18】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図19】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図20A】本発明を明らかにする研究における患者のフロー図である。
【図20B】本発明を明らかにする研究における患者のCペプチドの変化のグラフである。
【図20C】本発明を明らかにする研究における患者のCペプチドの変化のグラフである。
【図20D】本発明を明らかにする研究における患者のフロー図である。
【図20E】診断後の幾つかの期間内に治療された患者のCペプチドレベルの変化のグラフである。
【図21A】21ヶ月検診での本発明を明らかにする研究における患者のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
上述したまとめの通りに、以下の記載は、現在においてベストモードと考えられている本発明の好ましい実施例の詳細な説明を示す。
【0049】
本発明はさらに、以下に述べる患者の研究から理解されるであろう。
【0050】
方法
本研究は、スウェーデンのリンショーピン大学の研究倫理委員会とスウェーデンの監督機関とで承認されている。
【0051】
研究デザイン
スウェーデンの8つの小児科医院にて、過去18ヶ月内に疾患を呈した10乃至18歳のT1D患者が、GAD65自己抗体(GADA)の存在と、0.1pmol/ml以上の空腹時Cペプチドレベルとについてスクリーニングを受けた。総勢70人の患者が適格であり、ミョウバンに調製された20μgの組み換えヒトGAD65(Diamyd(R), Diamyd Medical, Stockholm, Sweden:35人の患者)、又は偽薬(rhGAD65無しで、同じ処方:35人の患者)の何れかの二重盲検治療に無作為に割り当てられた。
【0052】
全ての患者は、 頻回インスリン療法(Multiple Insulin Therapy)で治療され、患者と彼らの親又は保護者の両方は、インフォームドコンセントをした。試験の目的は、残留インスリン分泌の維持において、安全性に加えて偽薬と比較した治療効果を評価することであった。主要な有効性評価項目は、ベースラインから15ヶ月での空腹時Cペプチドレベルの変化であった。2次的な有効性評価項目は、誘導Cペプチドレベル及びHbAIcのベースラインからの変化であった。
【0053】
患者の各々は、1日目に、GAD65又は偽薬の何れかの最初の皮下注射を受けて、続いて、1ヶ月後にブースト注射を受けた。患者は、病院に滞在して、注入後3時間観察された。
【0054】
1日目と、3、9及び15ヶ月目とに、混合食負荷試験(mixed meal tolerance test)(MMTT)が、β細胞機能評価のヨーロッパの研究25に従って実行され、6ml/kg体重のSustacal(登録商標)(Sustacal(R), Mead Johnson, Evansville, IN, USA)が摂取された。MMTTの開始から30、60、90及び120分前にCペプチド分析用に血液サンプルが収集された。神経学的評価、臨床検査、血液学、生化学、及び治療が糖尿病の状態に与える影響を含む安全性評価は、研究を通じて繰り返し行われた。
【0055】
メインの研究期間(15ヶ月)が終了した後、治療コード(treatment code)がオープンになされて、Cペプチドレベル(空腹時、最大、曲線下面積[AUC])、HbAIc、血中グルコース、インスリン必要量(kg体重及び24時間当たりの量)、及びGADA力価(titre)を含むデータ分析がなされた。
【0056】
非盲検化データ(unblinded data)は、統計処理者(statistician)、SASプログラマ及びスポンサにのみ報告されて、研究は、15ヶ月の延長期間について部分的に盲検された形態で継続され、さらなるMMTTが21及び30ヶ月目に行われる。
【0057】
臨床試験
臨床分析は、スウェーデンのリンショーピン大学で行われた。Cペプチドレベルは、時間分解蛍光免疫測定法(AutoDELFIATM C-peptide kit, Wallac, Turku, Finland)を用いて血清試料にて測定された。各アッセイに高、中間及び低レベルのコントロールを含むCペプチドコントロールモジュール(Immulite, DPC, UKから商業的に入手可)を含めることで、結果が確認された。1224 MultiCalc(登録商標)プログラム(Wallacから商業的に入手可)が、自動測定とその結果の計算に使用されて、測定値は、pmol/mlで表示された。
【0058】
血清GADA力価は、インビトロ転写/転換で生成された35S標識組み換えヒトGAD65を用いた放射性結合分析(radio binding assay)を用いて正副2部について決定された(pEx9ベクターが、Ake Lernmark教授(University of Washington, Seattle, WA, USA)から親切に提供された)。セファロースプロテインA(Sepharose protein A)が使用されて、抗体結合標識GAD65から分離解放された。研究の終わりにて最大力価を決定する際に、GADAレベルは、最大で500U/mlを示している。HLA−DQ A1*及びB1*対立遺伝子は、エクソン2シーケンス(exon 2 sequence)のPCR増幅と、上述した時間分解蛍光発光で検出された対立遺伝子特異的プローブを用いたハイブリダイゼーションとによって決定された26。スウェーデンでの集団症例コントロール研究27に記載されているように、患者はその後、超高リスク、高リスク、中(moderate)リスク、ニュートラルリスク及び低リスクという項目に分けられた。
【0059】
統計的分析
LADAの患者の先の研究で得られた結果24は、空腹時Cペプチドレベルにおける0.12pmol/mlの平均差と0.15の標準偏差とを仮定すると、各治療グループの35人の患者が、Cペプチドレベルの差を評価する80乃至90%の検出力を5%の有意水準でもたらすことを示唆した。データ管理と統計的分析は、Trial Form Support AB(Lund, Sweden)で実行された。共分散分析(ANCOVA)モデルが使用され、ここで、ベースラインから15ヶ月目の変化が反応変数として、治療(treatment)が説明変数として、ベースライン値が共変量として使用された。年齢、性別、糖尿病罹病期間、GADA力価、及びHLAタイプのような因子は、更なる予備解析のための考えられ得る因子として前もって特定された。
【0060】
全ての試験において、帰無仮説は、積極的治療と偽薬の間に差はないとした。全ての試験について、両側仮説(two-sided hypotheses)が用いられて、p値は、95%の信頼区間と共に示された。一度の一次解析のみなので、p値は多重度について調整されない。
【0061】
結果
採用(Recruitment)及びランダム化(Randomization)
スクリーニングされた118人の患者中、42人の少女と28人の少年が適格であった。スクリーニングは、2005年の1月及び2月の2週間に渡って行われた。患者への最初の注射は、2005年の2月であり、最後の患者は、2006年の7月に15ヶ月目の診察を終了した。
【0062】
1人を除いて全ての患者は、GAD65又は偽薬の何れかを2度投与された(図20A)。ある患者(少女、偽薬)は、黄疸を伴った単核症によって研究から除かれ、1回の注射のみを受けた。35人がDiamyd(登録商標)で治療され、34人には偽薬が投与された69人の患者が、パープロトコル分析(per protocol analysis)に含められた。1人の患者(偽薬)のみが脱落した際に、「治療の意図」による分析("intention-to-treat" analysis)はなされなかった。
【0063】
【表1】
【0064】
ベースライン特性
ベースラインのデータ(ベースライン=最初の注入日、注入前)は、ほとんどの面で2つの治療群が似ていたことを示している(表1)。HLA遺伝子型の分布について、Diamyd(登録商標)の群と偽薬の群の間で差違がなかった(表1)。
【0065】
安全性
研究中に、深刻な有害事象に関する治療はなかった。同じくらいの数の軽度の皮膚反応(紅斑、浮腫及び圧痛)が、Diamyd(登録商標)の群と偽薬の群の注射部位にて観察された。治療を要求する者、又は2回目の注射の拒否に至る者はいなかった。スティッフパーソン症候群を引き起こす可能性に基づく神経学的評価は、研究群の間に差違を示さなかった。
【0066】
効果
両方の治療群は、空腹時と誘導Cペプチド分泌の両方に関してベースラインからの段階的減少を示し、β細胞機能が徐々に失われた。空腹時Cペプチドに顕著な効果はなかった(表2)。しかしながら、15ヶ月に渡って、AUCで測定された誘導Cペプチド分泌は、Diamyd(登録商標)で治療された群で偽薬群の半分にしか低下しなかった(p=0.01)(図20B及び表2)。また、最大誘導Cペプチドは、Diamyd(登録商標)で治療された群にて顕著に小さくなった(p=0.04)(表2)。
【0067】
糖尿病状態への影響
研究中、両方の治療群で、インスリン必要量、血中グルコース及びHbAIcレベルは増加した。Cペプチドに関して、これら全てのパラメータは、偽薬の患者と比較してDiamyd(登録商標)で小さくなった(表2)。
【0068】
偽薬と比較して、Diamyd(登録商標)で治療された患者では、15ヶ月後にGADA力価が500以上になる傾向がより頻繁にあった(表3)。HLA遺伝子型は、15ヶ月の期間中に、ベースラインにも、又はCペプチドAUCの変化にも影響を与えなかった(表5)。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
予備解析と相互作用
ベースラインにて0.2pmol/ml以上の最大誘導Cペプチドを有する患者のうち、偽薬の患者の42%と比較して、Diamyd(登録商標)で治療された患者の19%のみが、15ヶ月までにそのリミットを下回った(表4)。
【0072】
【表4】
【0073】
69人の患者に渡って、ベースラインから15ヶ月目での空腹時及び誘導Cペプチドの変化の共変分析が実行され、糖尿病罹病期間、年齢、性別、又はベースラインGADAレベルの何れかと共に、共変量としてベースラインCペプチド及び治療(treatment)が用いられた。これらの分析は、Diamyd(登録商標)を用いた場合のベースラインCペプチドレベル及び治療のみが、追跡調査中の残留インスリン分泌について、統計的に有意な効果を有したことを示した(データは示さず)。
【0074】
糖尿病罹病期間、年齢、性別、ベースラインGADAレベル、及びHLA分類に関してプロトコルで特定された部分群が、GAD65の薬効の効果について調査された。この目的のため、薬効は、偽薬群と比較したDiamyd(登録商標)群における、ベースラインから15ヶ月目までのAUCの悪化の緩和として定義された。サンプルサイズが小さいことと多重比較の問題の可能性により、正式な統計分析はなされなかった(表5)。
【0075】
全ての試験において、帰無仮説は、積極的治療と偽薬の間に差はないとされた。残留インスリン分泌の維持は、T1D発病後間もなく治療された患者の間でより顕著であった(図20C、表5)。
【0076】
【表5】
【0077】
考察
LADAの患者における過去の研究24に基づいて主要評価項目として選択された空腹時Cペプチドについては、顕著な薬効は見られなかった。しかしながら、積極的治療により空腹時グルコースが低く保たれる場合に、T1Dが発症して間もなくの患者における空腹時Cペプチドレベルが、正常近くのままであり得る一方で30、誘導Cペプチドレベルは、連続的なβ細胞破壊の結果として時間と共に減少する。このことは、疾患の経過における初期にて、誘導Cペプチドが、血糖コントロールの改善と細小血管合併症の低下に関係するβ細胞機能の維持を評価するための好ましい評価項目であることを意味する31。
【0078】
結果は、20μgのGAD65の2度の注入は、他の介入研究(14,16,17)と似た長さの追跡調査時間の間に、T1Dを発症して間もない患者の残量インスリン分泌の維持を顕著に改善することを示している。効果があって、主として新たに診断された患者において、効果の規模と期間は、抗CD3(16,17)とGAD65で似ているが、GAD65による治療後には有害事象がない。残留インスリン分泌は重要な臨床転帰パラメータに影響を与える。さらに、食事に対して0.2pmol/ml以上のCペプチドを分泌する能力を失った患者の割合は、偽薬の群よりもGAD65の群の患者で小さい。糖尿病の管理と合併症に関する臨床試験(DCCT)では、誘導Cペプチドが0.2pmol/ml未満である患者では、その閾値以上の患者よりも網膜症と重度の低血糖症のリスクが高かった5,28。これは、全体的な代謝調節の改善と、血中グルコース変動の低下と、恐らくは、それ自体が生物学的効果を有するであろうCペプチド露出がより大きくなることとで、説明されるだろう29。我々が知る限りでは、本研究と同じように残留インスリン分泌の損失の減少が得られたような、免疫修飾の手法を用いた臨床試験はほとんどない。
【0079】
本研究中、両方の治療群で、インスリン必要量、血中グルコース、及びHbAIcレベルが増加した。しかしながら、偽薬と比較してDiamyd(登録商標)では、統計的に有意義ではないものの、3つのパラメータ全てで増加が低下した。GAD65が免疫調節ワクチン製剤で注入される際に期待されたように、GADAレベルが増加する傾向が、薬で治療された群で見られた。その他の自己抗体に加えて細胞性免疫への効果は、さらなる分析の対象であろう。
【0080】
薬で治療された患者と偽薬の患者に関する統計上の小さく、有意でない差違は、関連がなさそうである。薬で治療された患者が幾分年長である一方で、治療介入時において、偽薬の患者の罹患期間は幾分短く、残留インスリン分泌は、平均して幾分高かった。HLA遺伝子型の分布は同程度で、Diamyd(登録商標)群と偽薬群の間の差を説明しなかった。T1D患者のGADAはT1D患者のHLA−DQA1*0501−B1*02と関連していることが示されており27、HLAの果たし得る役割を注意深く評価することは重要であった。より多くの患者をさらに研究することは、Diamyd(登録商標)に反応するHLA遺伝子型が重要である可能性を評価するのに必要であろう。
【0081】
過去の研究は、緩徐進行性自己免疫性糖尿病を伴うLADA患者のGAD85の効果を示唆しており、我々は、新たにT1Dと診断された患者だけではなく、18ヶ月までの罹病期間の患者も含めることを選択した。しかしながら、Diamyd(登録商標)の誘導Cペプチドの保護効果は、診断後間もなく治療された患者に特に顕著である傾向があった。我々の計画は、部分群の分析を難しくしているが、確認されれば、罹病期間が短く、残留インスリン分泌が良好な患者は、完全寛解になるのに十分な機能を改善するかもしれない。それにより、進行中の自己免疫発作は、治療によって和らげられる。
【0082】
Diamyd(登録商標)治療がT1D患者の糖尿病の進行を変化させたメカニズムは、今のところ明らかでない。全ての患者における同じタイプのインスリン治療と、HbAIcにおける小さな差違とは、維持されたβ細胞機能が、GAD65群におけるより強化インスリン治療又は良好な代謝制御の結果であること排除するはずである。NODマウスを用いた数々の動物実験は、GAD65が、確立された自己免疫を有しているT1D発病後のマウスに強力な調節応答を引き起こし得ることを示している22,23。制御性(CD4+CD25+)T細胞への効果の可能性を示唆する、24週間後の(CD4+CD25+)/(CD4+CD25−)細胞比の増加を、Diamyd(登録商標)が引き起こすことを、過去の用量設定試験が明らかにしたことは興味深い24。
【0083】
結論として、ミョウバン調製(alum-formulated)GAD65は、治療介入から15ヶ月後にて残留β細胞機能の保護効果を有していた。実証されたGAD65の薬効は、今までに報告されたその他の開発中の治療と同水準であるか、それらよりも良好であり、自己抗原特異的免疫修飾は、単独で、又は併用療法で、T1Dを最終的に防止し得る希望を与える。この研究でのβ細胞機能の保護効果は、偽薬ではなく、投与が非常に簡単であり、副作用が軽度で少なくて耐容性が良好である薬を用いて生じたことが期待できる。
【0084】
図1乃至17は、本発明を説明する研究の結果のグラフである。
【0085】
さらに、上述の研究は、本明細書に記載されたものと同じ方法と研究デザインを用いて継続されて、発症して間もない若いT1D患者へのGAD−alumの投与が安全であるか否かと、残留インスリン分泌の損失を低減すること若しくは食い止めることができるか否かについて判断された。以下に、21ヶ月の研究期間後の研究結果を報告する。
【0086】
非盲検化データは、統計処理者、SASプログラマ及びスポンサにのみ報告されて、研究は、15ヶ月の延長期間について部分的に盲検された形態で継続され、MMTTが、21及び30ヶ月目に行われる。ここでは、21ヶ月目の追跡調査のデータを報告する。
【0087】
HbAIcは、免疫学的方法で分析され、スウェーデンの国別基準(Swedish national standard)Mono−Sに対して較正され、スウェーデンの医学的検査における外部品質保証(EQALIS)の参照方法に対して継続的に調節された。
【0088】
更なる統計的分析
先述したように研究が継続されて、LADAの患者の先の研究で得られた結果24は、空腹時Cペプチドレベルにおける0.12pmol/mlの平均差と0.15の標準偏差とを仮定すると、各治療グループの35人の患者が、Cペプチドレベルの差を評価する80乃至90%の検出力を5%の有意水準でもたらすことを示唆している。データ管理と統計的分析は、Trial Form Support AB(Lund, Sweden)で実行された。共分散分析(ANCOVA)モデルが使用され、ここで、ベースラインから21ヶ月目の変化が反応変数として、治療が説明変数として、ベースライン値が共変量として使用された。年齢、性別、糖尿病罹病期間、GADA力価、及びHLAタイプのような因子は、更なる予備解析のための考えられ得る因子として前もって特定された。
【0089】
全ての試験において、帰無仮説は、積極的治療と偽薬の間に差はないとした。全ての試験について、両側仮説が用いられて、p値は、95%の信頼区間と共に示された。一度の一次解析のみなので、p値は多重度について調整されない。
【0090】
21ヶ月目の診療の終了結果
採用及びランダム化
スクリーニングされた118人の患者中、42人の女子と28人の男子が適格であった。スクリーニングは、2005年の1月及び2月の2週間に渡って行われた。患者への最初の注射は、2005年の2月であり、最後の患者は、2007年の2月に21ヶ月目の診療を終了した。
【0091】
1人を除いて全ての患者は、GAD65又は偽薬の何れかを2度投与された(図21A)。ある患者(少女、偽薬)は、黄疸を伴った単核症によって研究から除かれ、1回の注射のみを受けた。35人が治療され、34人には偽薬が投与された69人の患者が、パープロトコル分析に含められた。1人の患者(偽薬)のみが脱落した際に、「治療の意図」による分析はなされなかった。
【0092】
【表6】
【0093】
ベースライン特性
ベースラインのデータ(ベースライン=最初の注入日、注入前)は、ほとんどの面で2つの治療群が似ていたことを示している(表1)。HLA遺伝子型の分布について、GAD−alum治療群と偽薬群の間で差違がなかった(表6)。
【0094】
安全性
研究中に、深刻な有害事象に関する治療はなかった。各群で同じくらいの数Xの軽度の皮膚反応(紅斑、浮腫及び圧痛)が、GAD−alumの群と偽薬の群の注射部位にて観察された。治療を要求する者、又は2回目の注射の拒否に至る者はいなかった。スティッフパーソン症候群を引き起こす可能性に基づく神経学的評価は、研究群の間に差違を示さなかった。
【0095】
効果
両方の治療群は、空腹時と誘導Cペプチド分泌の両方に関して段階的減少を示し、β細胞機能が徐々に失われた。空腹時Cペプチドに顕著な効果はなかった(図18A及び表7)。しかしながら、21ヶ月に渡って、AUCで測定された誘導Cペプチド分泌の減少は、偽薬群と比較してGAD−alumで治療された群では顕著に低下した(研究を通じた全ての時点でp=0.01)(図18B及び表7)。また、AUCの一部である最大誘導Cペプチドの悪化も、GAD−alum治療群にて顕著に少なくなった(p=0.03)(表7)。
【0096】
糖尿病状態への影響
研究中、両方の治療群で、インスリン必要量及びHbAIcレベルは増加した(表7)。HbAIcは、治療対象として医師に用いられたが、両群の間で差違はなかった(表7)。21ヶ月目にて、GADA力価が500以上の患者の数に顕著な差はなかった(表8)。
【0097】
【表7】
【0098】
【表8】
【0099】
誘導Cペプチドの変化への統計的に有意な治療効果は、糖尿病罹病期間、年齢、性別、及びベースラインのGADAレベルの差違の調整後にも残っていた(データは示さず)。
【0100】
糖尿病罹病期間、年齢、性別、HLA分類及びベースラインGADAに関してプロトコルで特定された部分群が、交互作用効果(interaction effects)について調査された(データは示さず)。それらの中で、糖尿病罹病期のみが、治療効果に顕著な影響を有していた(p=0.04)。
【0101】
残留インスリン分泌の維持は、T1Dの発病後間もなくGAD−alumで治療された患者の間で、より顕著であった。診断から6ヶ月内に治療された患者では、研究期間を通じてAUCで測定された誘導Cペプチド分泌の低下は、偽薬群よりもGAD−alum治療群にて、顕著に少ないが(p=0.02)、糖尿病罹病期間が6ヶ月間、又はそれ以上の患者では、このような違いは観察できなかった(図19)。
【0102】
考察
LADAの患者における過去の研究に基づいて主要評価項目として選択された空腹時Cペプチドへの効果は欠いているにも拘わらず、他の免疫介入研究での観察16,17と非常に似ていた。Cペプチド反応へのGAD−alum治療の顕著な効果は見られなかった24。空腹時グルコースが低く保たれる場合に、T1Dが発症して間もなくの患者におけるCペプチドレベルが、正常近くのままであり得る一方で39、誘導Cペプチドレベルは、通常、連続的なβ細胞破壊の結果として時間と共に減少する。 この結果として、疾患の経過における初期にて、誘導Cペプチドは、血糖コントロールの改善と細小血管合併症の低下に関係しており、β細胞機能の維持を評価するための好ましい評価項目となる傾向があった16,17,31。
【0103】
上述の結果は、20μgGAD65−alumの2度の注入は、他の介入研究14,16,17と似た長さの追跡調査時間の間に、T1Dを発症して間もない患者の残量誘導インスリン分泌の維持を顕著に改善することを示している。新たに診断された患者において、効果の規模と期間は、抗CD3とGAD65−alumで似ているが16,17、GAD65−alumによる治療後には有害事象がなかった点では異なっている。残留インスリン分泌は重要な臨床転帰パラメータに影響を与える5。本発明の理論に限られないが、これは、全体的な代謝調節の改善と、血中グルコース変動の低下と、恐らくは、それ自体が生物学的効果を有するであろうCペプチド露出がより大きくなることとで、説明されるだろう29。
【0104】
本研究中、両方の治療群で、インスリン必要量及びHbAIcレベルの両方が増加した。見込まれたように、HbAIcターゲットへの積極的治療は、それらの群の間で、HbAIcに有意義な差違をもたらさなかった。また、2つの群の間でGADAレベルに有意な差違はなかった。GAD65を用いた我々の免疫調製ワクチン製剤について、その他の自己抗体に加えて細胞性免疫への効果は、さらなる分析の対象であろう。
【0105】
薬で治療された患者と偽薬の患者に関する統計上の小さく、有意でない差違は、関連がなさそうである。薬で治療された患者が幾分年長である一方で、ベースラインにて、偽薬の患者の罹患期間は幾分短く、残留インスリン分泌は、平均して幾分高かった。T1D患者のGADAはT1D患者のHLA−DQA1*0501−B1*02と関連していることが示されており、HLAの果たし得る役割を注意深く評価することは重要であった27。しかしながら、HLA遺伝子型の分布は同程度であって、GAD−alum群と偽薬群の間のCペプチド応答の大きな違いを説明しなかった。どちらかといえば、GAD−alumの患者(n=22)では、偽薬の患者と比較して(n=36)、ニュートラル及び低リスク対立遺伝子が少なかった7。より多くの患者をさらに研究することは、GAD−alumに反応するHLA遺伝子型が重要である可能性を評価するのに必要であろう。
【0106】
過去の研究は、緩徐進行性自己免疫性糖尿病を伴うLADA患者のGAD−alumの効果を示唆しており、我々は、つい最近にT1Dと診断された患者だけではなく、18ヶ月までの罹病期間の患者も含めることを選択した。しかしながら、GAD−alumの誘導Cペプチドの保護効果は、診断後6ヶ月内に治療された患者に特に顕著である傾向があった。
【0107】
GAD−alum治療がT1D患者の糖尿病の進行を変化させるメカニズムは、今のところ明らかでない。全ての患者における強化インスリン治療とターゲットHbAIcを得る機能とは、2つの群におけるHbAIcとインスリン用量の小さな差違と共に、維持されたβ細胞機能の有意な差違が、GAD−alum群におけるより強化インスリン治療又は良好な代謝制御の結果であること排除するはずである。NODマウスを用いた動物実験は、GAD65が、確立された自己免疫を有しているT1D発病後のマウスに強力な調節応答を引き起こし得ることを示している22,23。制御性(CD4+CD25+)T細胞への効果の可能性を示唆する、24週間後の(CD4+CD25+)/(CD4+CD25−)細胞比の増加を、GAD−alumが引き起こすことを、過去の用量設定試験が明らかにしたことは興味深い24。
【0108】
結論として、ミョウバン調製(alum-formulated)GAD65は、治療介入から21ヶ月後にて残留β細胞機能の保護効果を有しており、副作用はまれで小さかった。実証されたGAD65−alumの薬効は、今までに報告されたその他の開発中の治療と同水準であるか、それらよりも良好であり、自己抗原特異的免疫修飾が、単独で、又は併用療法で、T1Dを最終的に防止し得る希望を与える。この研究でのβ細胞機能の保護効果は、投与が非常に簡単であり、副作用が軽度で少なくて耐容性が良好である薬を用いて生じていたことが期待できる。
【0109】
研究デザイン
スウェーデンの8つの小児科医院にて、過去18ヶ月内に疾患を呈した10乃至18歳のT1D患者が、GAD65自己抗体(GADA)の存在と、0.1pmol/ml以上の空腹時Cペプチドレベルとについてスクリーニングを受けた。総勢70人の患者が適格であり、ミョウバンに調製された20μgの組み換えヒトGAD65(Diamyd(R), Diamyd Medical, Stockholm, Sweden:35人の患者)、又は偽薬(rhGAD65無しで、同じ処方:35人の患者)の何れかの二重盲検治療に無作為に割り当てられた。
【0110】
全ての患者は、 頻回インスリン療法(Multiple Insulin Therapy)で治療され、患者と彼らの親又は保護者の両方は、インフォームドコンセントをした。試験の目的は、残留インスリン分泌の維持において、安全性に加えて偽薬と比較した治療効果を評価することであった。主要な有効性評価項目は、ベースラインから15ヶ月での空腹時Cペプチドレベルの変化であった。2次的な有効性評価項目は、誘導Cペプチドレベル及びHbAIcのベースラインからの変化であった。
【0111】
患者の各々は、1日目に、GAD65又は偽薬の何れかの最初の皮下注射を受けて、続いて、1ヶ月後にブースト注射を受けた。患者は、病院に滞在して、注入後3時間観察された。
【0112】
1日目と、3、9及び15ヶ月目とに、混合食負荷試験(MMTT)が、β細胞機能評価のヨーロッパの研究25に従って実行され、6ml/kg体重のSustacal(登録商標)(Sustacal(R), Mead Johnson, Evansville, IN, USA)が摂取された。MMTTの開始から30、60、90及び120分前にCペプチド分析用に血液サンプルが収集された。神経学的評価、臨床検査、血液学、生化学、及び治療が糖尿病の状態に与える影響を含む安全性評価は、研究を通じて繰り返し行われた。
【0113】
メインの研究期間(15ヶ月)が終了した後、治療コード(treatment code)がオープンになされて、Cペプチドレベル(空腹時、最大、曲線下面積[AUC])、HbAIc、血中グルコース、インスリン必要量(kg体重及び24時間当たりの量)、及びGADA力価を含むデータ分析がなされた。
【0114】
非盲検化データは、統計処理者、SASプログラマ及びスポンサにのみ報告されて、研究は、15ヶ月の延長期間について、部分的に盲検された形態で継続された。
【0115】
臨床試験
臨床分析は、スウェーデンのリンショーピン大学で行われた。Cペプチドレベルは、時間分解蛍光免疫測定法(AutoDELFIATM C-peptide kit, Wallac, Turku, Finland)を用いて血清試料にて測定された。各アッセイに高、中間及び低レベルのコントロールを含むCペプチドコントロールモジュール(Immulite, DPC, UKから商業的に入手可)を含めることで、結果が確認された。1224 MultiCalc(登録商標)プログラム(Wallacから商業的に入手可)が、自動測定とその結果の計算に使用されて、測定値は、pmol/mlで表示された。
【0116】
血清GADA力価は、インビトロ転写/転換で生成された35S標識組み換えヒトGAD65を用いた放射性結合分析を用いて正副2部について決定された(pEx9ベクターが、Ake Lernmark教授(University of Washington, Seattle, WA, USA)から親切に提供された)。セファロースプロテインA(Sepharose protein A)が使用されて、抗体結合標識GAD65から分離解放された。研究の終わりにて最大力価を決定する際に、GADAレベルは、最大で500U/mlを示している。HLA−DQ A1*及びB1*対立遺伝子は、エクソン2シーケンスのPCR増幅と、上述した時間分解蛍光発光で検出された対立遺伝子特異的プローブを用いたハイブリダイゼーションとによって決定された26。スウェーデンでの集団症例コントロール研究27に記載されているように、患者はその後、超高リスク、高リスク、中リスク、ニュートラルリスク及び低リスクという項目に分けられた。
【0117】
統計的分析
LADAの患者の先の研究で得られた結果24は、空腹時Cペプチドレベルにおける0.12pmol/mlの平均差と0.15の標準偏差とを仮定すると、各治療グループの35人の患者が、Cペプチドレベルの差を評価する80乃至90%の検出力を5%の有意水準でもたらすことを示唆した。データ管理と統計的分析は、Trial Form Support AB(Lund, Sweden)で実行された。共分散分析(ANCOVA)モデルが使用され、ここで、ベースラインから15ヶ月目の変化が反応変数として、治療が説明変数として、ベースライン値が共変量として使用された。年齢、性別、糖尿病罹病期間、GADA力価、及びHLAタイプのような因子は、更なる予備解析のための考えられ得る因子として前もって特定された。
【0118】
全ての試験において、帰無仮説は、積極的治療と偽薬の間に差はないとした。全ての試験について、両側仮説が用いられて、p値は、95%の信頼区間と共に示された。一度の一次解析のみなので、p値は多重度について調整されない。
【0119】
採用及びランダム化
スクリーニングされた118人の患者中、42人の少女と28人の少年が適格であった。スクリーニングは、2005年の1月及び2月の2週間に渡って行われた。患者への最初の注射は、2005年の2月であり、最後の患者は、2006年の7月に15ヶ月目の診療を終了した。
【0120】
1人を除いて全ての患者は、GAD65又は偽薬の何れかを2度投与された(図20D)。ある患者(少女、偽薬)は、黄疸を伴った単核症によって研究から除かれ、1回の注射のみを受けた。35人がDiamyd(登録商標)で治療され、34人には偽薬が投与された69人の患者が、パープロトコル分析に含められた。1人の患者(偽薬)のみが脱落した際に、「治療の意図」による分析はなされなかった。
【0121】
【表9】
【0122】
ベースライン特性
ベースラインのデータ(ベースライン=最初の注入日、注入前)は、ほとんどの面で2つの治療群が似ていたことを示している(表1)。HLA遺伝子型の分布について、Diamyd(登録商標)の群と偽薬の群の間で差違がなかった(表1)。
【0123】
安全性
研究中に、深刻な有害事象に関する治療はなかった。同じくらいの数の軽度の皮膚反応(紅斑、浮腫及び圧痛)が、Diamyd(登録商標)の群と偽薬の群の注射部位にて観察された。治療を要求する者、又は2回目の注射の拒否に至る者はいなかった。スティッフパーソン症候群を引き起こす可能性に基づく神経学的評価は、研究群の間に差違を示さなかった。
【0124】
【表10】
【0125】
【表11】
【0126】
予備解析と相互作用
ベースラインにて0.2pmol/ml以上の最大誘導Cペプチドを有する患者のうち、偽薬の患者の42%と比較して、Diamyd(登録商標)で治療された患者の19%のみが、15ヶ月までにそのリミットを下回った(表4)。
【0127】
【表12】
【0128】
69人の患者について、ベースラインから15ヶ月目での空腹時及び誘導Cペプチドの変化の共変分析が実行され、糖尿病罹病期間、年齢、性別、又はベースラインGADAレベルの何れかと共に、共変量としてベースラインCペプチド及び治療が用いられた。これらの分析は、Diamyd(登録商標)を用いた場合のベースラインCペプチドレベル及び治療のみが、残留インスリン分泌について、追跡調査中に統計的に有意な効果を有したことを示した(データは含まれていない)。
【0129】
糖尿病罹病期間、年齢、性別、ベースラインGADA、及びHLA分類に関するプロトコルで特定された部分群が、GAD65の薬効の効果について調査された。この目的のため、薬効は、偽薬群と比較したDiamyd(登録商標)群における、ベースラインから15ヶ月目までのAUCの悪化の緩和として定義された。サンプルサイズが小さいことと多重比較の問題の可能性により、正式な統計分析はなされなかった(表5)。
【0130】
全ての試験において、帰無仮説は、積極的治療と偽薬の間に差はないとした。残留インスリン分泌の維持は、T1D発病後間もなく治療された患者でより顕著であった(図20E、表5)。
【0131】
【表13】
【0132】
考察
現在の見解では、誘導Cペプチドは、1型糖尿病の患者のβ細胞機能の維持を評価する好ましい評価基準であり、これは、血糖コントロールの改善と、細小血管合併症の低下に関係している31。
【0133】
結果は、20μgのGAD65の2度の注入は、他の介入研究(14,16,17)と似た長さの追跡調査時間の間に、T1Dを発症して間もない患者の残量インスリン分泌の維持を顕著に改善することを示している。さらに、食事に対して0.2pmol/ml以上のCペプチドを分泌する能力を失った患者の割合は、偽薬の群よりもGAD65の群の患者で小さい。糖尿病の管理と合併症に関する臨床試験(DCCT)では、誘導Cペプチドが0.2pmol/ml未満である患者では、その閾値以上の患者よりも網膜症と重度の低血糖症のリスクが高かった5,28。これは、全体的な代謝調節の改善と、血中グルコース変動の低下と、恐らくは、それ自体が生物学的効果を有するであろうCペプチド露出がより大きくなることとで、説明されるだろう29。我々が知る限りでは、本研究と同じように、残留インスリン分泌の損失の減少が得られたような免疫修飾の手法を用いた臨床試験はほとんどない。
【0134】
過去の研究は、緩徐進行性自己免疫性糖尿病を伴うLADA患者のGAD85の効果を示唆しており、我々は、新たにT1Dと診断された患者だけではなく、18ヶ月までの罹病期間の患者も含めることを選択した。しかしながら、誘導CペプチドへのDiamyd(登録商標)の保護効果は、診断後間もなく治療された患者に特に顕著である傾向があった。我々の計画は、部分群の分析を難しくしているが、確認されれば、罹病期間が短く、残留インスリン分泌が良好な患者は、完全寛解になるのに十分な機能を改善するかも知れない。それにより、進行中の自己免疫発作は、治療によって和らげられるであろう。
【0135】
Diamyd(登録商標)治療がT1D患者の糖尿病の進行を変化させたメカニズムは、今のところ明らかでない。全ての患者における同じタイプのインスリン治療と、HbAIcの小さな差違とは、維持されたβ細胞機能が、GAD65群におけるより強化インスリン治療又は良好な代謝制御の結果であること排除するはずである。NODマウスを用いた数々の動物実験は、GAD65が、確立された自己免疫を有しているT1D発病後のマウスに強力な調節応答を引き起こし得ることを示している22,23。制御性(CD4+CD25+)T細胞への効果の可能性を示唆する、24週間後の(CD4+CD25+)/(CD4+CD25-)細胞比の増加を、Diamyd(登録商標)が引き起こすことを、過去の用量設定試験が明らかにしたことは興味深い24。
【0136】
結論として、ミョウバン調製GAD65は、治療介入から15ヶ月後に残留β細胞機能の保護効果を有していた。実証されたGAD65の薬効は、今までに報告されたその他の開発中の治療と同じであるか、それらよりも良好であり、自己抗原特異的免疫修飾は、単独で、又は併用療法で、T1Dを最終的に防止し得る希望を与える。この研究でのβ細胞機能の保護効果は、投与が非常に簡単であり、副作用が軽度で少なくて耐容性が良好である薬を用いて生じたことが期待できる。
【0137】
効果
残留インスリン分泌の維持は、T1Dの発病後間もなくGAD−alumで治療された患者の間で、より顕著であった。診断から6ヶ月内に治療された患者では、研究期間を通じてAUCで測定された誘導Cペプチドの低下は、偽薬群よりもGAD−alum治療群にて、顕著に少ないが(p=0.02)、糖尿病罹病期間が6ヶ月間、又はそれ以上の患者では、このような違いは観察できなかった(図19)。6ヶ月内に糖尿病と診断された患者群では、誘導Cペプチドの低下が時間の関数として見られ、部分群の分析は、薬が、約3ヶ月の期間内に3回使用されるのが望ましいことを示している。治療開始から約6乃至15ヶ月目で誘導Cペプチドの低下が増していることは、本研究の薬が、β細胞機能の長期の維持のために、12ヶ月の期間内に4回使用されることが望ましいことを示している。
【0138】
新たに診断された患者では、効果の規模と期間は、GAD−alumと抗T細胞療法とて似ているが16,17、GAD−alum治療には、有害事象がない点で異なっている。
【0139】
参考文献
1. Atkinson MA, Eisenbarth GS. Type 1 diabetes: new perspectives on disease pathogenesis and treatment. Lancet 2001 ;358:221-9.
2. The effect of intensive treatment of diabetes on the development and progression of long-term complications in insulin-dependent diabetes mellitus. The Diabetes Control and Complications Trial Research Group. N Engl J Med 1993;329:977-86.
3. Bojestig M, Arnqvist HJ, Hermansson G, Karlberg BE1 Ludvigsson J. Declining incidence of nephropathy in insulin-dependent diabetes mellitus. N Engl J Med 1994;330:15-8.
4. Nordfeldt S, Ludvigsson J. Adverse events in intensively treated children and adolescents with type 1 diabetes. Acta Paediatr 1999;88:1184-93.
5. Steffes MW, Sibley S1 Jackson M, Thomas W. Beta-cell function and the development of diabetes-related complications in the Diabetes Control and Complications Trial. Diabetes Care 2003;26:832-6.
6. Ludvigsson J, Heding L, Lieden G, Marner B, Lernmark A. Plasmapheresis in the initial treatment of insulin-dependent diabetes mellitus in children. Br Med J (Clin Res Ed) 1983;286:176-8.
7. Dupre J, Stiller CR, Gent M, et al. Clinical Trials of Cylosporin in IDDM. Diabetes Care 1988;suppl 1 :37-44.
8. Eisenbarth GS, Srikanta S, Jackson R, et al. Anti-thymocyte globulin and prednisone immunotherapy of recent onset type 1 diabetes mellitus. Diabetes Research 1985;2:271-6.
9. Chase HP, Butler-Simon N, Garg S, McDuffie M, Hoops SL, O'Brien D. A trial of nicotinamide in newly diagnosed patients with type 1 (insulin-dependent) diabetes mellitus. Diabetologia 1990;33:444-6.
10. Pozzilli P, Visalli N, Signore A, et al. Double blind trial of nicotinamide in recent- onset IDDM (the IMDIAB III study). Diabetologia 1995;38:848-52.
11. Coutant R, Landais P, Rosilio M, et al. Low dose linomide in Type I juvenile diabetes of recent onset: a randomised placebo-controlled double blind trial. Diabetologia 1998;41 : 1040-6.
12. Ludvigsson J, Samuelsson U, Johansson C, Stenhammar L. Treatment with antioxidants at onset of type 1 diabetes in children: a randomized, double-blind placebo-controlled study. Diabetes Metab Res Rey 2001 ;17:131-6.
13. Ludvigsson J, Samuelsson U, Emerudh J, Johansson C, Stenhammar L1 Berlin G. Photopheresis at onset of type 1 diabetes: a randomised, double blind, placebo controlled trial. Arch Dis Child 2001 ;85:149-54.
14. Raz I, Elias D, Avron A, Tamir M, Metzger M, Cohen IR. Beta-cell function in new- onset type 1 diabetes and immunomodulation with a heat-shock protein peptide (DiaPep277): a randomised, double-blind, phase II trial. Lancet 2001 ;358: 1749-53.
15. Lazar L, Ofan R, Weintrob N, et al. Heat-shock protein peptide DiaPep277 treatment in children with newly diagnosed type 1 diabetes: a randomised, double- blind phase II study. Diabetes Metab Res Rev 2006; (Epub ahead of print).
16. Herold KC, Gitelman SE, Masharani U, et al. A single course of anti-CD3 monoclonal antibody hOKT3gamma1 (Ala-Ala) results in improvement in C-peptide responses and clinical parameters for at least 2 years after onset of type 1 diabetes. Diabetes 2005;54: 1763-9.
17. Keymeulen B, Vandemeuleroucke E, Ziegler AG, et al. Insulin needs after CD3-antibody therapy in new-onset type 1 diabetes. N Engl J Med 2005;352:2598-608.
18. Harrisson LC. The prospect of vaccination to prevent type 1 diabetes. Hum Vaccin 2005;1 :143-50.
19. Jasinski JM, Eisenbarth GS. Insulin as a primary autoantigen for type 1A diabetes. Clin Dev Immunol 2005;12:181-6.
20. Baekkeskov S, Nielsen JH, Marner H, Bilde T, Ludvigsson J, Lernmark A. Autoantibodies in newly diagnosed diabetic children immunoprecipitate human pancreatic islet cell proteins. Nature 1982;298: 167-9.
21. Lernmark A, Agardh CD. lmmunomodulation with human recombinant autoantigens. Trends Immuonol 2005;26:608-12.
22. Tian J, Clare-Salzler M, Herschenfeld A, et al. Modulating autoimmune responses to GAD inhibits disease progression and prolongs islet graft survival in diabetes- prone mice. Nature Medicine 1996;2: 1348-135.
23. Tisch R, Liblau RS, Yang XD, Liblau P, McDevitt HO. Induction of GAD65-specific regulatory T cells inhibits ongoing autoimmune diabetes in non-obese diabetic mice. Diabetes 1998;47:894-9.
24. Agardh CD, CiNo CM, Lethagen A, et al. Clinical evidence for the safety of GAD65 immunomodulation in adult-onset autoimmune diabetes. J Diabetes Complications 2005;19:238-46.
25. Mandrup-Poulsen TR, Battelino T, Haastert B, et al. The European C-peptide trial CPT: comparison of liquid mixed meal and glucagons stimulation assays for the analyses of residual β-cell function in type 1 diabetes. Diabetologia 2006;49:375.
26. Larsson HE, Lynch K, Lernmark B, et al. DiPiS Study Group. Diabetes-associated HLA genotypes affect birthweight in the general population. Diabetologia 2005 ;48: 1484-91.
27. Graham J, Hagopian WA, Kockum I, et al. Diabetes Incidence in Sweden Study Group; Swedish Childhood Diabetes Study Group. Genetic effects on age-dependent onset and islet cell autoantibody markers in type 1 diabetes. Diabetes 2002;51 : 1346-55.
28. The Diabetes Control and Complications Trial Research Group. Effect of intensive therapy on residual β-Cell function in patients with type 1 diabetes in the diabetes control and complications trial. A randomized controlled trial. Ann Intern Med. 1998;128:517-23.
29. Wahren J, Ekberg K, Johansson J, et al. Role of C-peptide in human physiology. Am J Physiol Endocrinol Metab 2000;278:E759-60.
30. Daneman D, Clarson C. Residual beta-cell function in children with type 1 diabetes: measurement and impact on glycemic control. CHn Invest Med 1987; 10:484-7.
31. Steele C, Hagopian WA, Gitelman S, et al. Insulin secretion in type 1 diabetes. Diabetes 2004;53:426-33.
【0140】
本明細書で述べられた全ての刊行物及び特許は、個々の刊行物又は特許が具体的に個々に引用を以て本明細書の一部となるのと同じ範囲で、引用を以て、本明細書の一部となる。本明細書に記載された原理が理解されると、特許請求の範囲の範囲内での本発明の様々な変更は、当業者には明らかであろう。
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2007年4月24日に出願された米国仮特許出願第60/926,121号と、2007年9月13日に出願された米国仮特許出願第60/993,640号とについて、優先権による利益を主張する。
【0002】
発明の背景技術
自己免疫疾患、アレルギー、及び癌は、似て異なる点で調節異常免疫性炎症(dysregulated immune inflammation)に関係した疾患である。幾つかの自己免疫疾患及び組織拒絶反応のメカニズムは、臓器特異的であり、ほとんどT細胞媒介性であり、且つ、感受性者におけるウイルス感染を含む環境因子によって引き起こされる。このことによって、隔絶(sequestered)自己抗原又は移植抗原が現れて、治療的に使用され、疾患が調整されることが起こり得る。アレルギーは、大抵の場合、アレルゲンの頻繁な出現に応答するB細胞IgE(B cell-mediated IgE)に関係している。癌は、炎症性因子、又は、細胞行動を変化させるその他因子によって引き起こされ得るが、一旦形質転換した癌細胞は、しばしば免疫系の監視を免れる。
【0003】
臓器特異的な自己免疫疾患において、免疫系を抑制すること、又は、免疫系のある種の反応部分を削除することで、疾患を改善することは可能である。免疫抑制は、シクロスポリンのような一般的な抑制剤を用いて達成できるが、T細胞特異的抗体(T cell-specific antibodies)(例えば、抗CD3抗体)及びB細胞特異的抗体(B cell-specific antibodies)(例えば、抗CD20抗体)を使用することで、免疫系の特定のアームを静める、より現代的なアプローチがもたらされる。
【0004】
免疫抑制、及び/又は、免疫成分(immunocomponents)の減少/鎮静は、後天的なB及びT細胞記憶と関係して、さらに、エプスタインバーウイルス感染、インフルエンザ及びその他の微生物の再活性化を含む副作用を頻繁に起こす可能性がある。更に、免疫系の主要なアームへの抗体は、一時的にせよ、治療される患者について、新たな癌疾病と戦う能力を低下させる可能性がある。抗体を用いた免疫調節療法は、大抵の場合、数日間の入院と点滴静注を要することから、面倒である。
【0005】
故に、免疫系自体が時として病気を重くし、及び/又は引き起こすような疾患を安全に治療する薬剤及び方法を見つけるという要求は、殆ど満たされていない。
【0006】
多くの場合、ある種の自己抗原への抗体のような生物学的マーカーは、臓器特異的な自己免疫疾患の顕著な特徴である。このような抗体は、大抵、IgGタイプであるが、疾患のデビュー(disease debut)が近くなるにつれてある種のアイソタイプが顕著になっている(Jacob Pedersen)。免疫系における細胞のアームと体液のアームが疾病の治療効果において協調することは知られているが、現在の見解だと、臓器特異的な自己免疫疾患では、T細胞応答は、主たるインスチゲータ(instigator)である一方で、少なくとも幾つかの自己抗体アイソタイプクラスの存在は、細胞性反応がその自己抗原に対して活性を有することを示している。
【0007】
自己抗原は、当然ながら内因性であるので、自己免疫疾患状態において免疫系によって寛容されないのは驚きかも知れない。インスリンは、患者の免疫系が発達する間は豊富であり、例えば、インスリン抗体が頻繁に生じる1型糖尿病における自己抗原と考えられる。インスリンに対する自己反応性(autoreactivity)は、膵関連(pancreas-related)領域における炎症性を含む環境因子によって、又は、インスリンの隔絶プリフォーム(pre-form)によって誘発される可能性がある。プレプロインスリン又はプロインスリンの全身濃度は、例えば、免疫系が発達する間には免疫系に示されず、一旦現れると、先に隔絶していた内因性のこれらの自己抗原に対する積極的な反応が起こる可能性がある。その反応は、細胞毒性T細胞又はB細胞を含んでいるかも知れない。細胞毒性T細胞は、MHCクラスI抗原及び/又はクラスII抗原によって示されるβ細胞表面の自己抗原エピトープに向かって反応する。B細胞は、先に寛容された又は隔絶した自己抗原に抗体を分泌する。B細胞と自己反応性細胞障害性細胞はさらに、一体となって作用して、目的の治療効果を継続し得る。
【0008】
インスリンは、大きな分子であり、免疫系に十分にさらされるので、1型糖尿病における免疫調節自己抗原としてのポテンシャルは弱い。しかしながら、弱い抗原の免疫調節効果を、それら若しくはそれら由来のペプチドを変化させることで、それらをより強力な抗原に結合することで、アジュバント(adjuvants)にそれらを調製することで、又は、例えば、消化管を介したインスリンのケースのように、新たな投与経路を介して免疫系にそれらをさらすことで、増加することは可能である。
【0009】
自然発症糖尿病NODマウスから得られた説得力のあるデータは、GAD65による治療が、機能性免疫寛容(functional immune tolerance)を誘発することで、自己免疫性糖尿病を防止することを示している。成人性潜在型糖尿病(latent autoimmune diabetes in the adult)(LADA)と5年内に診断された患者の用量設定試験は、一般的なワクチン製剤で組み換え型ヒトGAD65を患者に安全に500μg用量で4回投与できることと、20μgと100μgの用量のプライムアンドブースト注入(prime-and-boost injection)が、数年間、内因性残留インスリン分泌を維持する一方で、4μgと500μgの用量だと有効性を示さなかったこととを示している。それ故に、1型糖尿病である患者のGAD65による治療は、最初の投与に先立つ6ヶ月の期間内に診断された患者群にのみ機能しており、更なる投与が、隔絶しているがなお内因性であるこの自己抗原の免疫調節効果を維持するために必要とされることは、驚くべき発見であり、これが本件発明の主題である。
【0010】
1型糖尿病(T1D)は、自己免疫疾患であり1、人口の0.3乃至1%に影響を及ぼしており、その発生率は増加している。現代の集中的なインスリン治療は、T1Dの患者における神経、腎臓、眼、及び心臓の合併症を低減したが、完全には防止できていない。この病気の疾病率と死亡率は顕著であり、多数の患者が、時には生死に関わる急性の合併症で悩んでいる2-4。少量の残留インスリン分泌でさえも、0.2pmol/ml以上の誘導Cペプチドがあり、長期の合併症を低減する点で、臨床的に有意義な利益をもたらすと言われている5。しかしながら、残留β細胞機能を維持する幾つかの試みは、多くの患者が有害事象を得ているものの非常に見込みがありそうな抗CD3モノクローナル抗体を用いた治療を除いて16,17、副作用に関して小さい又は非常に弱い効果に終わっている6-15。自己抗原の投与は、試みに関係しているように見える18。インスリンとグルタミン酸脱炭酸酵素65(GAD65)は、T1Dにおける主要な自己抗原であって19,20、免疫修飾実験でテストされている21。自然発症糖尿病NODマウスから得られた従来のデータは、GAD65が、機能的免疫寛容を誘発することで、T1Dを防ぐことを示している22,23。過去において、成人性潜在型糖尿病(LADA)である患者の用量設定試験は、20μgのDiamid(登録商標)(ミョウバン(alum)を用いた一般的なワクチン製剤の組み換えヒトGAD65)のプライムアンドブースト注入が、残留インスリン分泌を維持できることを示している24。
【0011】
これら及びその他の発見を考慮して、我々は、発症後間もない若いT1D患者へのDiamid(登録商標)の投与が安全であるか否か、残留インスリン分泌の減少を減らす又は食い止めるか否かに関する研究を考えて、それを開始した。本明細書では、15ヶ月の研究期間後の結果について報告する。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
本発明は、GAD固有作用ではなく全身的効果を引き起こすようなGADワクチン接種の方法及び処方に関している。それ故に、本発明は、GAD固有作用に関係のない人間の疾患の治療に使用できる。
【0013】
大まかに言えば、本発明は、感作目的のプライムアンドブースト投与法に続いて治療目的のブースト投与法で少なくとも一種の隔絶自己抗原を投与することで、自己免疫疾患又は疾病を治療する方法を含んでいる。これは、診断後直ぐに行ってよい。隔絶自己抗原は、GAD65 GAD67、プロインスリン、ミエリン塩基性タンパク質(Basic Myelin Protein)、MOG、及びコンドロイチンII(Chondrotoin II)からなる群から少なくとも1種選択される。
【0014】
投与は、経口投与、経鼻投与、吸入投与、筋肉内投与、又は皮下投与の1つ又は複数であってよい。
【0015】
本発明の対象となり得る疾患又は病気は、下記の群から選択される:膵炎、偽膜性大腸炎、急性潰瘍性大腸炎、慢性潰瘍性大腸炎、無弛緩症、胆管炎、クローン病、炎症性大腸炎、腸炎、ウィップル病、糖尿病、ぜんそく、アレルギー、免疫複合体病、臓器虚血、臓器壊死、花粉症、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、肺気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、やけど、皮膚炎、皮膚筋炎、じんましん、血管炎、循環器疾患、アテローム性動脈硬化症、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、関節リウマチ、アルツハイマー病、セリアック病、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、神経炎、関節リウマチ、滑膜炎、シェーグレン症候群、スティッフパーソン症候群、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、紅斑性狼瘡、アジソン病、悪性貧血、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、同種移植拒絶反応移植片対宿主病、1型糖尿病、強直性脊椎炎、ベルジェ病、2型糖尿病及びグレイヴズ病。
【0016】
疾患又は病気の症状の検知に応じて、追加の投与がなされてもよい。
【0017】
また、自己抗原は、ミョウバンのようなアジュバントに調製されてよい。
【0018】
また、本発明は、GAD65 GAD67、プロインスリン、ミエリン塩基性タンパク質、MOG及びコンドロイチンIIの中の少なくとも1種を含む隔絶自己抗原のカクテル療法を含む処方を含んでおり、当該処方は、医薬組成物として使用されてよい。その薬剤は、ミョウバンのようなアジュバントを含んでよい。
【0019】
本発明の主題は、自己免疫疾患に関している。より詳細には、それは、T細胞の特異的アップレギュレーションを含んでいる。
【0020】
GADは、自己免疫性糖尿病の主要な自己抗原である。1日目と30日目という2回の時点にて、cペプチドが陽性、GADab+であって、発症後間もない10乃至18歳の1型糖尿病の患者である35人に、GAD−alumが皮下に注入され、34人に偽薬(ミョウバン)が注入された。アジュバントとしてミョウバンが使用された。15ヶ月後にて、有効な薬を受け取った患者は、食物刺激後にcペプチドを生成する能力が顕著に高くなった。
【0021】
偽薬と比較したcペプチドレベルの改善については、全ての患者に効き目があったわけではない。しかしながら、診断後に患者がより早く処置されるにつれて、結果がより良くなった。これは、驚くべき発見である。男性よりも女性の方が若干効き目が良いと思われた。若い患者よりも年長の患者の方が若干効き目が良いと思われた。
【0022】
一方、驚くべきことに、15ヶ月後に免疫機構研究を実行すると、ほとんど全ての(全てではない)患者は、GADによる刺激に反応した。偽薬を受け取った患者のほとんど又は大半は、免疫学的に反応しなかった。FoxP3と、15ヶ月後のGAD刺激後に得られたサイトカインパターンとは、自己免疫疾患のダウンレギュレーションに必要とされる反応に関する最新の考えに沿っていた。GADでトリガーされても、効果はGAD特異ではない。測定されたFoxP3の増加は、制御性T細胞の数の増加を示しており、当該分野では、それらの制御性T細胞が自己抗原への自己免疫反応を制御することが知られている。多くのその他の内因性タンパク質とは異なり、GADは隔絶自己抗原であるので、補充されてGADに応答できる未感作T細胞のプールが存在する。皮下(sc)注入されたミョウバン調製GADでは、制御性T細胞が増加した。このことは、GAD注入が全身的作用を有しており、任意の自己免疫疾患の治療に使用できることを示している。
【0023】
最近得られたデータによれば、15ヶ月目に刺激インスリン生成(cペプチドで測定)の減少を示さなかった少数の患者でさえも、15ヶ月後に刺激インスリン生成の減少が始まった。それ故に、治療計画では、単に2回の投与よりも多く投与するのが望ましい。最近得られたデータは、追加の投与が要求されて、インスリン生成の増加を保つのが好ましいことを示唆している。
【0024】
このデータは、継続的で、好ましくは定期的な治療が、ワクチン接種のみよりも好ましいことを示している。
【0025】
それ故に、本発明は、ワクチン接種と関連する処方を含んでおり、さらに、治療計画も含んでいる。
【0026】
その治療は、患者が定期的に新たな治療投与を受ける計画を含んでいる。投与間の好ましい間隔は、12ヶ月であり、9ヶ月毎がより好ましく、6ヶ月毎がさらに好ましく、2乃至5ヶ月目毎の間隔が最も好ましい。
【0027】
本発明によれば、2回投与(つまり、2ショット)計画は、効果的ではあるが、その効果は、最も望ましいようには長続きしない。これは、治療計画がワクチン接種計画よりも好ましいことを示すかも知れない。本発明の理論に限定されないが、この理由は、2ショット計画で成し得るように「内生(endogenic)」タンパク質へのアクティブな機能寛容を引き起こすと、その効果が、そのタンパク質が「外生(exogenic)」であった場合のようには長続きしないことかも知れない。それ故に、免疫系は、(規則的なブーストを用いたような)規則的な治療方式で継続的に催促される必要がある。
【0028】
それ故に、本発明は更に、感作を目的としてプライムアンドブースト計画で少なくとも1種の隔絶自己抗原を投与し、その後、治療目的で少なくとも2回のブースト投与をすることで、自己免疫疾患又は疾病を治療する方法を含んでいる。
【0029】
治療投与のタイミングについては、少なくとも2回の投与の間のインターバルは、12ヶ月未満で(又は、上述したようにより頻繁で)あるのが好ましく、9ヶ月未満であるのがより好ましく、6ヶ月未満であるのが更に好ましく、約2乃至約5ヶ月の期間のインターバルであるのが最も好ましい。ブースト投与は、少なくとも2年の期間について、12ヶ月未満のインターバルでなされるのが好ましい。ブースト投与は、少なくとも5又は10年のより長い期間でなされるのがより好ましく、また、患者の寿命の大部分に渡ってなされるのが好ましい。
【0030】
本発明はまた、自己免疫疾患を治療する薬剤及び方法に関している。特に、本発明は、薬剤と、予め充填された使い捨ての注射器及び薬瓶とを教示しており、それらに含まれる薬剤では、治療に先立つ6ヶ月以内に自己免疫疾患と診断された患者に、6ヶ月の期間内に3回投与される隔絶内生自己抗原が適切な強さを有している。さらに、本発明は、隔絶自己抗原又はそのエピトープが発見される領域にて炎症を制御する構成、薬剤、処方及び方法を教示している。
【0031】
本発明の処方及び方法は、以下を含む群から選ばれる少なくとも1種の自己抗原を含んでいるのが好ましい:GAD65、GAD67、プロインスリン、ミエリン塩基性タンパク質、MOG、II型コラーゲン、ICA512(IA2)、ICA512B(IA2B)、インスリン、インスリンB鎖、Hsp60、Hsp65、P277、ICA69、グリマ38(Glima38)、SOX13、イモゲン38(Imogen 38)、スルファチド、21−水酸化酵素(21-Ohase)、TPO、アレルゲン、移植抗原、癌抗原、又は、それらの部分、ペプチド、若しくは、改変ペプチドリガンド。
【0032】
本発明の薬剤及び方法の使用では、経口、経鼻、吸入、筋肉内、皮下、静脈、直腸内、及び経皮の1又は複数の経路による投与が、又は、インプラント若しくはポンプ、DNAやRNAガン、AAVやHSVのようなウイルスベクターが利用されてもよい。
【0033】
また、本発明の薬剤は、臓器特異的自己免疫疾患の治療の場合には、水酸化アルミニウムのようなアジュバントに調製される(formulated)構成物を含んでおり、癌の治療の場合には免疫系の細胞媒介アーム(cell-mediated arm)を刺激するアジュバントに調製される構成物を含んでいるのが好ましい。
【0034】
本発明の処方は、診断から6ヶ月内に疾患を治療するために3回使用される。更なる投与は、疾患又は病気の検知に応じて行われる。処方は、診断から12ヶ月の期間内に4回使用されるのが好ましい。
【0035】
概して、本発明は、自己免疫疾患を治療する方法として広く提示されてよく、(1)自己免疫疾患の進行が6ヶ月より長くないと判断される患者を特定するステップと、(2)6ヶ月の期間内で自己免疫疾患を治療するのに使用される効果的な量の薬剤を投与することで治療を開始するステップと含んでよい。
【0036】
治療は、自己免疫疾患の進行が3ヶ月を超える前に開始されるのが好ましい。薬剤は、治療開始から6ヶ月内に少なくとも3回投与されるのが好ましい。それら両方がなされるのが最も好ましい。
【0037】
好ましい実施例の場合では、治療開始から4ヶ月内に少なくとも3回薬剤が投与され、治療開始から3ヶ月内に少なくとも3回薬剤が投与されるのがより好ましく、治療開始から10乃至12ヶ月の間に少なくとも4回投与されるのが最も好ましい。また、薬剤は、治療開始から30日内に少なくとも2回投与されるのが好ましい。
【0038】
本発明の方法は、薬剤の少なくとも1つの抗体に対する抗体陽性、及び/又は、異常に高い血糖値を特徴とする自己抗原疾患に対して使用されてよい。これは、1型糖尿病を含んでいてもよい。
【0039】
本発明はまた、自己免疫疾患を治療する方法を含んでおり、当該方法は、(1)空腹時Cペプチドレベルが0.2pmol/ml以上に自己免疫疾患が進行したと、好ましくは、空腹時Cペプチドレベルが0.1pmol/ml以上に自己免疫疾患が進行したと判断される患者を特定するステップと、(2)その時点から6ヶ月内に、自己免疫疾患を治療するのに使用される効果的な量の薬剤を投与することで治療を開始するステップと含んでいる。患者の空腹時cペプチドレベルが0.1pmol/ml以上と特定され、自己免疫疾患がインスリン生成β細胞を攻撃して、この空腹時レベルが0.1pmol/mlより低くなる前に治療が開始されるのが好ましい。残っているβ細胞が実際にほとんどない場合には、空腹時Cペプチドレベルは、0.1pmol/mlより低くなる。通常、あるレベル(0.2pmol/ml)以上の空腹時Cペプチドレベルは、長期的合併症をより少なくする。
【0040】
本発明の方法は、以下の群の構成物から選ばれる少なくとも1種の主要な自己抗原を用いることで、自己免疫疾患に対処するのに使用されてよい:GAD65、GAD67、プロインスリン、ミエリン塩基性タンパク質、MOG、II型コラーゲン、ICA512(IA2)、ICA512B(IA2B)、インスリン、インスリンB鎖、Hsp60、Hsp65、P277、ICA69、グリマ38、SOX13、イモゲン38、スルファチド、21−水酸化酵素、TPO、アレルゲン、移植抗原、癌抗原、又は、それらの部分、ペプチド、若しくは、改変ペプチドリガンド。
【0041】
自己免疫疾患に使用される本発明の方法では、Th2誘導アジュバントに構成物が調製され、さらには、そのTh2誘導アジュバントがミョウバンであるのが好ましい。
【0042】
本発明はまた、以下を含む群から選択された構成物を有することを特徴とする、細胞媒介性細胞毒性を促進する薬剤を用いてよい:GAD65、GAD67、プロインスリン、ミエリン塩基性タンパク質、MOG、II型コラーゲン、ICA512(IA2)、ICA512B(IA2B)、インスリン、インスリンB鎖、Hsp60、Hsp65、P277、ICA69、グリマ38、SOX13、イモゲン38、スルファチド、21−水酸化酵素、TPO、アレルゲン、移植抗原、癌抗原、又は、それらの部分、ペプチド、若しくは、改変ペプチドリガンド。これらの構成物は、Th1誘導アジュバントに調製されてよい。
【0043】
本発明の方法で治療され得る自己免疫疾患の例には、癌が含まれる。その他の自己免疫疾患は、以下を含む群から選択されてよい:膵炎、偽膜性大腸炎、急性潰瘍性大腸炎、慢性潰瘍性大腸炎、無弛緩症、胆管炎、クローン病、炎症性大腸炎、腸炎、ウィップル病、1型及び2型糖尿病、ぜんそく、アレルギー、免疫複合体病、臓器虚血、臓器壊死、花粉症、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、肺気腫、鼻炎、やけど、皮膚炎、皮膚筋炎、じんましん、血管炎、循環器疾患、アテローム性動脈硬化症、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、関節リウマチ、アルツハイマー病、セリアック病、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、神経炎、関節リウマチ、 滑膜炎、シェーグレン症候群、スティッフパーソン症候群、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、紅斑性狼瘡、アジソン病、悪性貧血、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、強直性脊椎炎、ベルジェ病、グレイヴズ病、同種移植拒絶反応、移植片対宿主病、及び癌。
【0044】
本発明の方法はまた、経口、経鼻、吸入、筋肉内、皮下、静脈、直腸内、及び経皮を含む群から選択される経路の少なくとも1つを用いて投与される薬剤を使用してよく、又は、インプラント若しくはポンプを用いて、DNAやRNAガンを用いて、アンフィオン(amphions)、 欠陥(defective)AAVやHSVのようなウイルスベクターを用いて投与される薬剤を使用してよい。
【0045】
本発明の方法は、治療機会(treatment occasion)当たり10と150マイクログラムの間の量である少なくとも一種の自己抗原が使用されるのが好ましい。
【0046】
本発明はまた、本明細書で説明された薬剤処方と、本明細書で説明された方法で適用される薬剤処方とを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図2】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図3】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図4】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図5】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図6】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図7】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図8】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図9】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図10】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図11】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図11A】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図12】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図13】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図14】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図15】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図16】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図17】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図17A】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図18】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図19】本発明を明らかにする研究の結果のグラフである。
【図20A】本発明を明らかにする研究における患者のフロー図である。
【図20B】本発明を明らかにする研究における患者のCペプチドの変化のグラフである。
【図20C】本発明を明らかにする研究における患者のCペプチドの変化のグラフである。
【図20D】本発明を明らかにする研究における患者のフロー図である。
【図20E】診断後の幾つかの期間内に治療された患者のCペプチドレベルの変化のグラフである。
【図21A】21ヶ月検診での本発明を明らかにする研究における患者のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
上述したまとめの通りに、以下の記載は、現在においてベストモードと考えられている本発明の好ましい実施例の詳細な説明を示す。
【0049】
本発明はさらに、以下に述べる患者の研究から理解されるであろう。
【0050】
方法
本研究は、スウェーデンのリンショーピン大学の研究倫理委員会とスウェーデンの監督機関とで承認されている。
【0051】
研究デザイン
スウェーデンの8つの小児科医院にて、過去18ヶ月内に疾患を呈した10乃至18歳のT1D患者が、GAD65自己抗体(GADA)の存在と、0.1pmol/ml以上の空腹時Cペプチドレベルとについてスクリーニングを受けた。総勢70人の患者が適格であり、ミョウバンに調製された20μgの組み換えヒトGAD65(Diamyd(R), Diamyd Medical, Stockholm, Sweden:35人の患者)、又は偽薬(rhGAD65無しで、同じ処方:35人の患者)の何れかの二重盲検治療に無作為に割り当てられた。
【0052】
全ての患者は、 頻回インスリン療法(Multiple Insulin Therapy)で治療され、患者と彼らの親又は保護者の両方は、インフォームドコンセントをした。試験の目的は、残留インスリン分泌の維持において、安全性に加えて偽薬と比較した治療効果を評価することであった。主要な有効性評価項目は、ベースラインから15ヶ月での空腹時Cペプチドレベルの変化であった。2次的な有効性評価項目は、誘導Cペプチドレベル及びHbAIcのベースラインからの変化であった。
【0053】
患者の各々は、1日目に、GAD65又は偽薬の何れかの最初の皮下注射を受けて、続いて、1ヶ月後にブースト注射を受けた。患者は、病院に滞在して、注入後3時間観察された。
【0054】
1日目と、3、9及び15ヶ月目とに、混合食負荷試験(mixed meal tolerance test)(MMTT)が、β細胞機能評価のヨーロッパの研究25に従って実行され、6ml/kg体重のSustacal(登録商標)(Sustacal(R), Mead Johnson, Evansville, IN, USA)が摂取された。MMTTの開始から30、60、90及び120分前にCペプチド分析用に血液サンプルが収集された。神経学的評価、臨床検査、血液学、生化学、及び治療が糖尿病の状態に与える影響を含む安全性評価は、研究を通じて繰り返し行われた。
【0055】
メインの研究期間(15ヶ月)が終了した後、治療コード(treatment code)がオープンになされて、Cペプチドレベル(空腹時、最大、曲線下面積[AUC])、HbAIc、血中グルコース、インスリン必要量(kg体重及び24時間当たりの量)、及びGADA力価(titre)を含むデータ分析がなされた。
【0056】
非盲検化データ(unblinded data)は、統計処理者(statistician)、SASプログラマ及びスポンサにのみ報告されて、研究は、15ヶ月の延長期間について部分的に盲検された形態で継続され、さらなるMMTTが21及び30ヶ月目に行われる。
【0057】
臨床試験
臨床分析は、スウェーデンのリンショーピン大学で行われた。Cペプチドレベルは、時間分解蛍光免疫測定法(AutoDELFIATM C-peptide kit, Wallac, Turku, Finland)を用いて血清試料にて測定された。各アッセイに高、中間及び低レベルのコントロールを含むCペプチドコントロールモジュール(Immulite, DPC, UKから商業的に入手可)を含めることで、結果が確認された。1224 MultiCalc(登録商標)プログラム(Wallacから商業的に入手可)が、自動測定とその結果の計算に使用されて、測定値は、pmol/mlで表示された。
【0058】
血清GADA力価は、インビトロ転写/転換で生成された35S標識組み換えヒトGAD65を用いた放射性結合分析(radio binding assay)を用いて正副2部について決定された(pEx9ベクターが、Ake Lernmark教授(University of Washington, Seattle, WA, USA)から親切に提供された)。セファロースプロテインA(Sepharose protein A)が使用されて、抗体結合標識GAD65から分離解放された。研究の終わりにて最大力価を決定する際に、GADAレベルは、最大で500U/mlを示している。HLA−DQ A1*及びB1*対立遺伝子は、エクソン2シーケンス(exon 2 sequence)のPCR増幅と、上述した時間分解蛍光発光で検出された対立遺伝子特異的プローブを用いたハイブリダイゼーションとによって決定された26。スウェーデンでの集団症例コントロール研究27に記載されているように、患者はその後、超高リスク、高リスク、中(moderate)リスク、ニュートラルリスク及び低リスクという項目に分けられた。
【0059】
統計的分析
LADAの患者の先の研究で得られた結果24は、空腹時Cペプチドレベルにおける0.12pmol/mlの平均差と0.15の標準偏差とを仮定すると、各治療グループの35人の患者が、Cペプチドレベルの差を評価する80乃至90%の検出力を5%の有意水準でもたらすことを示唆した。データ管理と統計的分析は、Trial Form Support AB(Lund, Sweden)で実行された。共分散分析(ANCOVA)モデルが使用され、ここで、ベースラインから15ヶ月目の変化が反応変数として、治療(treatment)が説明変数として、ベースライン値が共変量として使用された。年齢、性別、糖尿病罹病期間、GADA力価、及びHLAタイプのような因子は、更なる予備解析のための考えられ得る因子として前もって特定された。
【0060】
全ての試験において、帰無仮説は、積極的治療と偽薬の間に差はないとした。全ての試験について、両側仮説(two-sided hypotheses)が用いられて、p値は、95%の信頼区間と共に示された。一度の一次解析のみなので、p値は多重度について調整されない。
【0061】
結果
採用(Recruitment)及びランダム化(Randomization)
スクリーニングされた118人の患者中、42人の少女と28人の少年が適格であった。スクリーニングは、2005年の1月及び2月の2週間に渡って行われた。患者への最初の注射は、2005年の2月であり、最後の患者は、2006年の7月に15ヶ月目の診察を終了した。
【0062】
1人を除いて全ての患者は、GAD65又は偽薬の何れかを2度投与された(図20A)。ある患者(少女、偽薬)は、黄疸を伴った単核症によって研究から除かれ、1回の注射のみを受けた。35人がDiamyd(登録商標)で治療され、34人には偽薬が投与された69人の患者が、パープロトコル分析(per protocol analysis)に含められた。1人の患者(偽薬)のみが脱落した際に、「治療の意図」による分析("intention-to-treat" analysis)はなされなかった。
【0063】
【表1】
【0064】
ベースライン特性
ベースラインのデータ(ベースライン=最初の注入日、注入前)は、ほとんどの面で2つの治療群が似ていたことを示している(表1)。HLA遺伝子型の分布について、Diamyd(登録商標)の群と偽薬の群の間で差違がなかった(表1)。
【0065】
安全性
研究中に、深刻な有害事象に関する治療はなかった。同じくらいの数の軽度の皮膚反応(紅斑、浮腫及び圧痛)が、Diamyd(登録商標)の群と偽薬の群の注射部位にて観察された。治療を要求する者、又は2回目の注射の拒否に至る者はいなかった。スティッフパーソン症候群を引き起こす可能性に基づく神経学的評価は、研究群の間に差違を示さなかった。
【0066】
効果
両方の治療群は、空腹時と誘導Cペプチド分泌の両方に関してベースラインからの段階的減少を示し、β細胞機能が徐々に失われた。空腹時Cペプチドに顕著な効果はなかった(表2)。しかしながら、15ヶ月に渡って、AUCで測定された誘導Cペプチド分泌は、Diamyd(登録商標)で治療された群で偽薬群の半分にしか低下しなかった(p=0.01)(図20B及び表2)。また、最大誘導Cペプチドは、Diamyd(登録商標)で治療された群にて顕著に小さくなった(p=0.04)(表2)。
【0067】
糖尿病状態への影響
研究中、両方の治療群で、インスリン必要量、血中グルコース及びHbAIcレベルは増加した。Cペプチドに関して、これら全てのパラメータは、偽薬の患者と比較してDiamyd(登録商標)で小さくなった(表2)。
【0068】
偽薬と比較して、Diamyd(登録商標)で治療された患者では、15ヶ月後にGADA力価が500以上になる傾向がより頻繁にあった(表3)。HLA遺伝子型は、15ヶ月の期間中に、ベースラインにも、又はCペプチドAUCの変化にも影響を与えなかった(表5)。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
予備解析と相互作用
ベースラインにて0.2pmol/ml以上の最大誘導Cペプチドを有する患者のうち、偽薬の患者の42%と比較して、Diamyd(登録商標)で治療された患者の19%のみが、15ヶ月までにそのリミットを下回った(表4)。
【0072】
【表4】
【0073】
69人の患者に渡って、ベースラインから15ヶ月目での空腹時及び誘導Cペプチドの変化の共変分析が実行され、糖尿病罹病期間、年齢、性別、又はベースラインGADAレベルの何れかと共に、共変量としてベースラインCペプチド及び治療(treatment)が用いられた。これらの分析は、Diamyd(登録商標)を用いた場合のベースラインCペプチドレベル及び治療のみが、追跡調査中の残留インスリン分泌について、統計的に有意な効果を有したことを示した(データは示さず)。
【0074】
糖尿病罹病期間、年齢、性別、ベースラインGADAレベル、及びHLA分類に関してプロトコルで特定された部分群が、GAD65の薬効の効果について調査された。この目的のため、薬効は、偽薬群と比較したDiamyd(登録商標)群における、ベースラインから15ヶ月目までのAUCの悪化の緩和として定義された。サンプルサイズが小さいことと多重比較の問題の可能性により、正式な統計分析はなされなかった(表5)。
【0075】
全ての試験において、帰無仮説は、積極的治療と偽薬の間に差はないとされた。残留インスリン分泌の維持は、T1D発病後間もなく治療された患者の間でより顕著であった(図20C、表5)。
【0076】
【表5】
【0077】
考察
LADAの患者における過去の研究24に基づいて主要評価項目として選択された空腹時Cペプチドについては、顕著な薬効は見られなかった。しかしながら、積極的治療により空腹時グルコースが低く保たれる場合に、T1Dが発症して間もなくの患者における空腹時Cペプチドレベルが、正常近くのままであり得る一方で30、誘導Cペプチドレベルは、連続的なβ細胞破壊の結果として時間と共に減少する。このことは、疾患の経過における初期にて、誘導Cペプチドが、血糖コントロールの改善と細小血管合併症の低下に関係するβ細胞機能の維持を評価するための好ましい評価項目であることを意味する31。
【0078】
結果は、20μgのGAD65の2度の注入は、他の介入研究(14,16,17)と似た長さの追跡調査時間の間に、T1Dを発症して間もない患者の残量インスリン分泌の維持を顕著に改善することを示している。効果があって、主として新たに診断された患者において、効果の規模と期間は、抗CD3(16,17)とGAD65で似ているが、GAD65による治療後には有害事象がない。残留インスリン分泌は重要な臨床転帰パラメータに影響を与える。さらに、食事に対して0.2pmol/ml以上のCペプチドを分泌する能力を失った患者の割合は、偽薬の群よりもGAD65の群の患者で小さい。糖尿病の管理と合併症に関する臨床試験(DCCT)では、誘導Cペプチドが0.2pmol/ml未満である患者では、その閾値以上の患者よりも網膜症と重度の低血糖症のリスクが高かった5,28。これは、全体的な代謝調節の改善と、血中グルコース変動の低下と、恐らくは、それ自体が生物学的効果を有するであろうCペプチド露出がより大きくなることとで、説明されるだろう29。我々が知る限りでは、本研究と同じように残留インスリン分泌の損失の減少が得られたような、免疫修飾の手法を用いた臨床試験はほとんどない。
【0079】
本研究中、両方の治療群で、インスリン必要量、血中グルコース、及びHbAIcレベルが増加した。しかしながら、偽薬と比較してDiamyd(登録商標)では、統計的に有意義ではないものの、3つのパラメータ全てで増加が低下した。GAD65が免疫調節ワクチン製剤で注入される際に期待されたように、GADAレベルが増加する傾向が、薬で治療された群で見られた。その他の自己抗体に加えて細胞性免疫への効果は、さらなる分析の対象であろう。
【0080】
薬で治療された患者と偽薬の患者に関する統計上の小さく、有意でない差違は、関連がなさそうである。薬で治療された患者が幾分年長である一方で、治療介入時において、偽薬の患者の罹患期間は幾分短く、残留インスリン分泌は、平均して幾分高かった。HLA遺伝子型の分布は同程度で、Diamyd(登録商標)群と偽薬群の間の差を説明しなかった。T1D患者のGADAはT1D患者のHLA−DQA1*0501−B1*02と関連していることが示されており27、HLAの果たし得る役割を注意深く評価することは重要であった。より多くの患者をさらに研究することは、Diamyd(登録商標)に反応するHLA遺伝子型が重要である可能性を評価するのに必要であろう。
【0081】
過去の研究は、緩徐進行性自己免疫性糖尿病を伴うLADA患者のGAD85の効果を示唆しており、我々は、新たにT1Dと診断された患者だけではなく、18ヶ月までの罹病期間の患者も含めることを選択した。しかしながら、Diamyd(登録商標)の誘導Cペプチドの保護効果は、診断後間もなく治療された患者に特に顕著である傾向があった。我々の計画は、部分群の分析を難しくしているが、確認されれば、罹病期間が短く、残留インスリン分泌が良好な患者は、完全寛解になるのに十分な機能を改善するかもしれない。それにより、進行中の自己免疫発作は、治療によって和らげられる。
【0082】
Diamyd(登録商標)治療がT1D患者の糖尿病の進行を変化させたメカニズムは、今のところ明らかでない。全ての患者における同じタイプのインスリン治療と、HbAIcにおける小さな差違とは、維持されたβ細胞機能が、GAD65群におけるより強化インスリン治療又は良好な代謝制御の結果であること排除するはずである。NODマウスを用いた数々の動物実験は、GAD65が、確立された自己免疫を有しているT1D発病後のマウスに強力な調節応答を引き起こし得ることを示している22,23。制御性(CD4+CD25+)T細胞への効果の可能性を示唆する、24週間後の(CD4+CD25+)/(CD4+CD25−)細胞比の増加を、Diamyd(登録商標)が引き起こすことを、過去の用量設定試験が明らかにしたことは興味深い24。
【0083】
結論として、ミョウバン調製(alum-formulated)GAD65は、治療介入から15ヶ月後にて残留β細胞機能の保護効果を有していた。実証されたGAD65の薬効は、今までに報告されたその他の開発中の治療と同水準であるか、それらよりも良好であり、自己抗原特異的免疫修飾は、単独で、又は併用療法で、T1Dを最終的に防止し得る希望を与える。この研究でのβ細胞機能の保護効果は、偽薬ではなく、投与が非常に簡単であり、副作用が軽度で少なくて耐容性が良好である薬を用いて生じたことが期待できる。
【0084】
図1乃至17は、本発明を説明する研究の結果のグラフである。
【0085】
さらに、上述の研究は、本明細書に記載されたものと同じ方法と研究デザインを用いて継続されて、発症して間もない若いT1D患者へのGAD−alumの投与が安全であるか否かと、残留インスリン分泌の損失を低減すること若しくは食い止めることができるか否かについて判断された。以下に、21ヶ月の研究期間後の研究結果を報告する。
【0086】
非盲検化データは、統計処理者、SASプログラマ及びスポンサにのみ報告されて、研究は、15ヶ月の延長期間について部分的に盲検された形態で継続され、MMTTが、21及び30ヶ月目に行われる。ここでは、21ヶ月目の追跡調査のデータを報告する。
【0087】
HbAIcは、免疫学的方法で分析され、スウェーデンの国別基準(Swedish national standard)Mono−Sに対して較正され、スウェーデンの医学的検査における外部品質保証(EQALIS)の参照方法に対して継続的に調節された。
【0088】
更なる統計的分析
先述したように研究が継続されて、LADAの患者の先の研究で得られた結果24は、空腹時Cペプチドレベルにおける0.12pmol/mlの平均差と0.15の標準偏差とを仮定すると、各治療グループの35人の患者が、Cペプチドレベルの差を評価する80乃至90%の検出力を5%の有意水準でもたらすことを示唆している。データ管理と統計的分析は、Trial Form Support AB(Lund, Sweden)で実行された。共分散分析(ANCOVA)モデルが使用され、ここで、ベースラインから21ヶ月目の変化が反応変数として、治療が説明変数として、ベースライン値が共変量として使用された。年齢、性別、糖尿病罹病期間、GADA力価、及びHLAタイプのような因子は、更なる予備解析のための考えられ得る因子として前もって特定された。
【0089】
全ての試験において、帰無仮説は、積極的治療と偽薬の間に差はないとした。全ての試験について、両側仮説が用いられて、p値は、95%の信頼区間と共に示された。一度の一次解析のみなので、p値は多重度について調整されない。
【0090】
21ヶ月目の診療の終了結果
採用及びランダム化
スクリーニングされた118人の患者中、42人の女子と28人の男子が適格であった。スクリーニングは、2005年の1月及び2月の2週間に渡って行われた。患者への最初の注射は、2005年の2月であり、最後の患者は、2007年の2月に21ヶ月目の診療を終了した。
【0091】
1人を除いて全ての患者は、GAD65又は偽薬の何れかを2度投与された(図21A)。ある患者(少女、偽薬)は、黄疸を伴った単核症によって研究から除かれ、1回の注射のみを受けた。35人が治療され、34人には偽薬が投与された69人の患者が、パープロトコル分析に含められた。1人の患者(偽薬)のみが脱落した際に、「治療の意図」による分析はなされなかった。
【0092】
【表6】
【0093】
ベースライン特性
ベースラインのデータ(ベースライン=最初の注入日、注入前)は、ほとんどの面で2つの治療群が似ていたことを示している(表1)。HLA遺伝子型の分布について、GAD−alum治療群と偽薬群の間で差違がなかった(表6)。
【0094】
安全性
研究中に、深刻な有害事象に関する治療はなかった。各群で同じくらいの数Xの軽度の皮膚反応(紅斑、浮腫及び圧痛)が、GAD−alumの群と偽薬の群の注射部位にて観察された。治療を要求する者、又は2回目の注射の拒否に至る者はいなかった。スティッフパーソン症候群を引き起こす可能性に基づく神経学的評価は、研究群の間に差違を示さなかった。
【0095】
効果
両方の治療群は、空腹時と誘導Cペプチド分泌の両方に関して段階的減少を示し、β細胞機能が徐々に失われた。空腹時Cペプチドに顕著な効果はなかった(図18A及び表7)。しかしながら、21ヶ月に渡って、AUCで測定された誘導Cペプチド分泌の減少は、偽薬群と比較してGAD−alumで治療された群では顕著に低下した(研究を通じた全ての時点でp=0.01)(図18B及び表7)。また、AUCの一部である最大誘導Cペプチドの悪化も、GAD−alum治療群にて顕著に少なくなった(p=0.03)(表7)。
【0096】
糖尿病状態への影響
研究中、両方の治療群で、インスリン必要量及びHbAIcレベルは増加した(表7)。HbAIcは、治療対象として医師に用いられたが、両群の間で差違はなかった(表7)。21ヶ月目にて、GADA力価が500以上の患者の数に顕著な差はなかった(表8)。
【0097】
【表7】
【0098】
【表8】
【0099】
誘導Cペプチドの変化への統計的に有意な治療効果は、糖尿病罹病期間、年齢、性別、及びベースラインのGADAレベルの差違の調整後にも残っていた(データは示さず)。
【0100】
糖尿病罹病期間、年齢、性別、HLA分類及びベースラインGADAに関してプロトコルで特定された部分群が、交互作用効果(interaction effects)について調査された(データは示さず)。それらの中で、糖尿病罹病期のみが、治療効果に顕著な影響を有していた(p=0.04)。
【0101】
残留インスリン分泌の維持は、T1Dの発病後間もなくGAD−alumで治療された患者の間で、より顕著であった。診断から6ヶ月内に治療された患者では、研究期間を通じてAUCで測定された誘導Cペプチド分泌の低下は、偽薬群よりもGAD−alum治療群にて、顕著に少ないが(p=0.02)、糖尿病罹病期間が6ヶ月間、又はそれ以上の患者では、このような違いは観察できなかった(図19)。
【0102】
考察
LADAの患者における過去の研究に基づいて主要評価項目として選択された空腹時Cペプチドへの効果は欠いているにも拘わらず、他の免疫介入研究での観察16,17と非常に似ていた。Cペプチド反応へのGAD−alum治療の顕著な効果は見られなかった24。空腹時グルコースが低く保たれる場合に、T1Dが発症して間もなくの患者におけるCペプチドレベルが、正常近くのままであり得る一方で39、誘導Cペプチドレベルは、通常、連続的なβ細胞破壊の結果として時間と共に減少する。 この結果として、疾患の経過における初期にて、誘導Cペプチドは、血糖コントロールの改善と細小血管合併症の低下に関係しており、β細胞機能の維持を評価するための好ましい評価項目となる傾向があった16,17,31。
【0103】
上述の結果は、20μgGAD65−alumの2度の注入は、他の介入研究14,16,17と似た長さの追跡調査時間の間に、T1Dを発症して間もない患者の残量誘導インスリン分泌の維持を顕著に改善することを示している。新たに診断された患者において、効果の規模と期間は、抗CD3とGAD65−alumで似ているが16,17、GAD65−alumによる治療後には有害事象がなかった点では異なっている。残留インスリン分泌は重要な臨床転帰パラメータに影響を与える5。本発明の理論に限られないが、これは、全体的な代謝調節の改善と、血中グルコース変動の低下と、恐らくは、それ自体が生物学的効果を有するであろうCペプチド露出がより大きくなることとで、説明されるだろう29。
【0104】
本研究中、両方の治療群で、インスリン必要量及びHbAIcレベルの両方が増加した。見込まれたように、HbAIcターゲットへの積極的治療は、それらの群の間で、HbAIcに有意義な差違をもたらさなかった。また、2つの群の間でGADAレベルに有意な差違はなかった。GAD65を用いた我々の免疫調製ワクチン製剤について、その他の自己抗体に加えて細胞性免疫への効果は、さらなる分析の対象であろう。
【0105】
薬で治療された患者と偽薬の患者に関する統計上の小さく、有意でない差違は、関連がなさそうである。薬で治療された患者が幾分年長である一方で、ベースラインにて、偽薬の患者の罹患期間は幾分短く、残留インスリン分泌は、平均して幾分高かった。T1D患者のGADAはT1D患者のHLA−DQA1*0501−B1*02と関連していることが示されており、HLAの果たし得る役割を注意深く評価することは重要であった27。しかしながら、HLA遺伝子型の分布は同程度であって、GAD−alum群と偽薬群の間のCペプチド応答の大きな違いを説明しなかった。どちらかといえば、GAD−alumの患者(n=22)では、偽薬の患者と比較して(n=36)、ニュートラル及び低リスク対立遺伝子が少なかった7。より多くの患者をさらに研究することは、GAD−alumに反応するHLA遺伝子型が重要である可能性を評価するのに必要であろう。
【0106】
過去の研究は、緩徐進行性自己免疫性糖尿病を伴うLADA患者のGAD−alumの効果を示唆しており、我々は、つい最近にT1Dと診断された患者だけではなく、18ヶ月までの罹病期間の患者も含めることを選択した。しかしながら、GAD−alumの誘導Cペプチドの保護効果は、診断後6ヶ月内に治療された患者に特に顕著である傾向があった。
【0107】
GAD−alum治療がT1D患者の糖尿病の進行を変化させるメカニズムは、今のところ明らかでない。全ての患者における強化インスリン治療とターゲットHbAIcを得る機能とは、2つの群におけるHbAIcとインスリン用量の小さな差違と共に、維持されたβ細胞機能の有意な差違が、GAD−alum群におけるより強化インスリン治療又は良好な代謝制御の結果であること排除するはずである。NODマウスを用いた動物実験は、GAD65が、確立された自己免疫を有しているT1D発病後のマウスに強力な調節応答を引き起こし得ることを示している22,23。制御性(CD4+CD25+)T細胞への効果の可能性を示唆する、24週間後の(CD4+CD25+)/(CD4+CD25−)細胞比の増加を、GAD−alumが引き起こすことを、過去の用量設定試験が明らかにしたことは興味深い24。
【0108】
結論として、ミョウバン調製(alum-formulated)GAD65は、治療介入から21ヶ月後にて残留β細胞機能の保護効果を有しており、副作用はまれで小さかった。実証されたGAD65−alumの薬効は、今までに報告されたその他の開発中の治療と同水準であるか、それらよりも良好であり、自己抗原特異的免疫修飾が、単独で、又は併用療法で、T1Dを最終的に防止し得る希望を与える。この研究でのβ細胞機能の保護効果は、投与が非常に簡単であり、副作用が軽度で少なくて耐容性が良好である薬を用いて生じていたことが期待できる。
【0109】
研究デザイン
スウェーデンの8つの小児科医院にて、過去18ヶ月内に疾患を呈した10乃至18歳のT1D患者が、GAD65自己抗体(GADA)の存在と、0.1pmol/ml以上の空腹時Cペプチドレベルとについてスクリーニングを受けた。総勢70人の患者が適格であり、ミョウバンに調製された20μgの組み換えヒトGAD65(Diamyd(R), Diamyd Medical, Stockholm, Sweden:35人の患者)、又は偽薬(rhGAD65無しで、同じ処方:35人の患者)の何れかの二重盲検治療に無作為に割り当てられた。
【0110】
全ての患者は、 頻回インスリン療法(Multiple Insulin Therapy)で治療され、患者と彼らの親又は保護者の両方は、インフォームドコンセントをした。試験の目的は、残留インスリン分泌の維持において、安全性に加えて偽薬と比較した治療効果を評価することであった。主要な有効性評価項目は、ベースラインから15ヶ月での空腹時Cペプチドレベルの変化であった。2次的な有効性評価項目は、誘導Cペプチドレベル及びHbAIcのベースラインからの変化であった。
【0111】
患者の各々は、1日目に、GAD65又は偽薬の何れかの最初の皮下注射を受けて、続いて、1ヶ月後にブースト注射を受けた。患者は、病院に滞在して、注入後3時間観察された。
【0112】
1日目と、3、9及び15ヶ月目とに、混合食負荷試験(MMTT)が、β細胞機能評価のヨーロッパの研究25に従って実行され、6ml/kg体重のSustacal(登録商標)(Sustacal(R), Mead Johnson, Evansville, IN, USA)が摂取された。MMTTの開始から30、60、90及び120分前にCペプチド分析用に血液サンプルが収集された。神経学的評価、臨床検査、血液学、生化学、及び治療が糖尿病の状態に与える影響を含む安全性評価は、研究を通じて繰り返し行われた。
【0113】
メインの研究期間(15ヶ月)が終了した後、治療コード(treatment code)がオープンになされて、Cペプチドレベル(空腹時、最大、曲線下面積[AUC])、HbAIc、血中グルコース、インスリン必要量(kg体重及び24時間当たりの量)、及びGADA力価を含むデータ分析がなされた。
【0114】
非盲検化データは、統計処理者、SASプログラマ及びスポンサにのみ報告されて、研究は、15ヶ月の延長期間について、部分的に盲検された形態で継続された。
【0115】
臨床試験
臨床分析は、スウェーデンのリンショーピン大学で行われた。Cペプチドレベルは、時間分解蛍光免疫測定法(AutoDELFIATM C-peptide kit, Wallac, Turku, Finland)を用いて血清試料にて測定された。各アッセイに高、中間及び低レベルのコントロールを含むCペプチドコントロールモジュール(Immulite, DPC, UKから商業的に入手可)を含めることで、結果が確認された。1224 MultiCalc(登録商標)プログラム(Wallacから商業的に入手可)が、自動測定とその結果の計算に使用されて、測定値は、pmol/mlで表示された。
【0116】
血清GADA力価は、インビトロ転写/転換で生成された35S標識組み換えヒトGAD65を用いた放射性結合分析を用いて正副2部について決定された(pEx9ベクターが、Ake Lernmark教授(University of Washington, Seattle, WA, USA)から親切に提供された)。セファロースプロテインA(Sepharose protein A)が使用されて、抗体結合標識GAD65から分離解放された。研究の終わりにて最大力価を決定する際に、GADAレベルは、最大で500U/mlを示している。HLA−DQ A1*及びB1*対立遺伝子は、エクソン2シーケンスのPCR増幅と、上述した時間分解蛍光発光で検出された対立遺伝子特異的プローブを用いたハイブリダイゼーションとによって決定された26。スウェーデンでの集団症例コントロール研究27に記載されているように、患者はその後、超高リスク、高リスク、中リスク、ニュートラルリスク及び低リスクという項目に分けられた。
【0117】
統計的分析
LADAの患者の先の研究で得られた結果24は、空腹時Cペプチドレベルにおける0.12pmol/mlの平均差と0.15の標準偏差とを仮定すると、各治療グループの35人の患者が、Cペプチドレベルの差を評価する80乃至90%の検出力を5%の有意水準でもたらすことを示唆した。データ管理と統計的分析は、Trial Form Support AB(Lund, Sweden)で実行された。共分散分析(ANCOVA)モデルが使用され、ここで、ベースラインから15ヶ月目の変化が反応変数として、治療が説明変数として、ベースライン値が共変量として使用された。年齢、性別、糖尿病罹病期間、GADA力価、及びHLAタイプのような因子は、更なる予備解析のための考えられ得る因子として前もって特定された。
【0118】
全ての試験において、帰無仮説は、積極的治療と偽薬の間に差はないとした。全ての試験について、両側仮説が用いられて、p値は、95%の信頼区間と共に示された。一度の一次解析のみなので、p値は多重度について調整されない。
【0119】
採用及びランダム化
スクリーニングされた118人の患者中、42人の少女と28人の少年が適格であった。スクリーニングは、2005年の1月及び2月の2週間に渡って行われた。患者への最初の注射は、2005年の2月であり、最後の患者は、2006年の7月に15ヶ月目の診療を終了した。
【0120】
1人を除いて全ての患者は、GAD65又は偽薬の何れかを2度投与された(図20D)。ある患者(少女、偽薬)は、黄疸を伴った単核症によって研究から除かれ、1回の注射のみを受けた。35人がDiamyd(登録商標)で治療され、34人には偽薬が投与された69人の患者が、パープロトコル分析に含められた。1人の患者(偽薬)のみが脱落した際に、「治療の意図」による分析はなされなかった。
【0121】
【表9】
【0122】
ベースライン特性
ベースラインのデータ(ベースライン=最初の注入日、注入前)は、ほとんどの面で2つの治療群が似ていたことを示している(表1)。HLA遺伝子型の分布について、Diamyd(登録商標)の群と偽薬の群の間で差違がなかった(表1)。
【0123】
安全性
研究中に、深刻な有害事象に関する治療はなかった。同じくらいの数の軽度の皮膚反応(紅斑、浮腫及び圧痛)が、Diamyd(登録商標)の群と偽薬の群の注射部位にて観察された。治療を要求する者、又は2回目の注射の拒否に至る者はいなかった。スティッフパーソン症候群を引き起こす可能性に基づく神経学的評価は、研究群の間に差違を示さなかった。
【0124】
【表10】
【0125】
【表11】
【0126】
予備解析と相互作用
ベースラインにて0.2pmol/ml以上の最大誘導Cペプチドを有する患者のうち、偽薬の患者の42%と比較して、Diamyd(登録商標)で治療された患者の19%のみが、15ヶ月までにそのリミットを下回った(表4)。
【0127】
【表12】
【0128】
69人の患者について、ベースラインから15ヶ月目での空腹時及び誘導Cペプチドの変化の共変分析が実行され、糖尿病罹病期間、年齢、性別、又はベースラインGADAレベルの何れかと共に、共変量としてベースラインCペプチド及び治療が用いられた。これらの分析は、Diamyd(登録商標)を用いた場合のベースラインCペプチドレベル及び治療のみが、残留インスリン分泌について、追跡調査中に統計的に有意な効果を有したことを示した(データは含まれていない)。
【0129】
糖尿病罹病期間、年齢、性別、ベースラインGADA、及びHLA分類に関するプロトコルで特定された部分群が、GAD65の薬効の効果について調査された。この目的のため、薬効は、偽薬群と比較したDiamyd(登録商標)群における、ベースラインから15ヶ月目までのAUCの悪化の緩和として定義された。サンプルサイズが小さいことと多重比較の問題の可能性により、正式な統計分析はなされなかった(表5)。
【0130】
全ての試験において、帰無仮説は、積極的治療と偽薬の間に差はないとした。残留インスリン分泌の維持は、T1D発病後間もなく治療された患者でより顕著であった(図20E、表5)。
【0131】
【表13】
【0132】
考察
現在の見解では、誘導Cペプチドは、1型糖尿病の患者のβ細胞機能の維持を評価する好ましい評価基準であり、これは、血糖コントロールの改善と、細小血管合併症の低下に関係している31。
【0133】
結果は、20μgのGAD65の2度の注入は、他の介入研究(14,16,17)と似た長さの追跡調査時間の間に、T1Dを発症して間もない患者の残量インスリン分泌の維持を顕著に改善することを示している。さらに、食事に対して0.2pmol/ml以上のCペプチドを分泌する能力を失った患者の割合は、偽薬の群よりもGAD65の群の患者で小さい。糖尿病の管理と合併症に関する臨床試験(DCCT)では、誘導Cペプチドが0.2pmol/ml未満である患者では、その閾値以上の患者よりも網膜症と重度の低血糖症のリスクが高かった5,28。これは、全体的な代謝調節の改善と、血中グルコース変動の低下と、恐らくは、それ自体が生物学的効果を有するであろうCペプチド露出がより大きくなることとで、説明されるだろう29。我々が知る限りでは、本研究と同じように、残留インスリン分泌の損失の減少が得られたような免疫修飾の手法を用いた臨床試験はほとんどない。
【0134】
過去の研究は、緩徐進行性自己免疫性糖尿病を伴うLADA患者のGAD85の効果を示唆しており、我々は、新たにT1Dと診断された患者だけではなく、18ヶ月までの罹病期間の患者も含めることを選択した。しかしながら、誘導CペプチドへのDiamyd(登録商標)の保護効果は、診断後間もなく治療された患者に特に顕著である傾向があった。我々の計画は、部分群の分析を難しくしているが、確認されれば、罹病期間が短く、残留インスリン分泌が良好な患者は、完全寛解になるのに十分な機能を改善するかも知れない。それにより、進行中の自己免疫発作は、治療によって和らげられるであろう。
【0135】
Diamyd(登録商標)治療がT1D患者の糖尿病の進行を変化させたメカニズムは、今のところ明らかでない。全ての患者における同じタイプのインスリン治療と、HbAIcの小さな差違とは、維持されたβ細胞機能が、GAD65群におけるより強化インスリン治療又は良好な代謝制御の結果であること排除するはずである。NODマウスを用いた数々の動物実験は、GAD65が、確立された自己免疫を有しているT1D発病後のマウスに強力な調節応答を引き起こし得ることを示している22,23。制御性(CD4+CD25+)T細胞への効果の可能性を示唆する、24週間後の(CD4+CD25+)/(CD4+CD25-)細胞比の増加を、Diamyd(登録商標)が引き起こすことを、過去の用量設定試験が明らかにしたことは興味深い24。
【0136】
結論として、ミョウバン調製GAD65は、治療介入から15ヶ月後に残留β細胞機能の保護効果を有していた。実証されたGAD65の薬効は、今までに報告されたその他の開発中の治療と同じであるか、それらよりも良好であり、自己抗原特異的免疫修飾は、単独で、又は併用療法で、T1Dを最終的に防止し得る希望を与える。この研究でのβ細胞機能の保護効果は、投与が非常に簡単であり、副作用が軽度で少なくて耐容性が良好である薬を用いて生じたことが期待できる。
【0137】
効果
残留インスリン分泌の維持は、T1Dの発病後間もなくGAD−alumで治療された患者の間で、より顕著であった。診断から6ヶ月内に治療された患者では、研究期間を通じてAUCで測定された誘導Cペプチドの低下は、偽薬群よりもGAD−alum治療群にて、顕著に少ないが(p=0.02)、糖尿病罹病期間が6ヶ月間、又はそれ以上の患者では、このような違いは観察できなかった(図19)。6ヶ月内に糖尿病と診断された患者群では、誘導Cペプチドの低下が時間の関数として見られ、部分群の分析は、薬が、約3ヶ月の期間内に3回使用されるのが望ましいことを示している。治療開始から約6乃至15ヶ月目で誘導Cペプチドの低下が増していることは、本研究の薬が、β細胞機能の長期の維持のために、12ヶ月の期間内に4回使用されることが望ましいことを示している。
【0138】
新たに診断された患者では、効果の規模と期間は、GAD−alumと抗T細胞療法とて似ているが16,17、GAD−alum治療には、有害事象がない点で異なっている。
【0139】
参考文献
1. Atkinson MA, Eisenbarth GS. Type 1 diabetes: new perspectives on disease pathogenesis and treatment. Lancet 2001 ;358:221-9.
2. The effect of intensive treatment of diabetes on the development and progression of long-term complications in insulin-dependent diabetes mellitus. The Diabetes Control and Complications Trial Research Group. N Engl J Med 1993;329:977-86.
3. Bojestig M, Arnqvist HJ, Hermansson G, Karlberg BE1 Ludvigsson J. Declining incidence of nephropathy in insulin-dependent diabetes mellitus. N Engl J Med 1994;330:15-8.
4. Nordfeldt S, Ludvigsson J. Adverse events in intensively treated children and adolescents with type 1 diabetes. Acta Paediatr 1999;88:1184-93.
5. Steffes MW, Sibley S1 Jackson M, Thomas W. Beta-cell function and the development of diabetes-related complications in the Diabetes Control and Complications Trial. Diabetes Care 2003;26:832-6.
6. Ludvigsson J, Heding L, Lieden G, Marner B, Lernmark A. Plasmapheresis in the initial treatment of insulin-dependent diabetes mellitus in children. Br Med J (Clin Res Ed) 1983;286:176-8.
7. Dupre J, Stiller CR, Gent M, et al. Clinical Trials of Cylosporin in IDDM. Diabetes Care 1988;suppl 1 :37-44.
8. Eisenbarth GS, Srikanta S, Jackson R, et al. Anti-thymocyte globulin and prednisone immunotherapy of recent onset type 1 diabetes mellitus. Diabetes Research 1985;2:271-6.
9. Chase HP, Butler-Simon N, Garg S, McDuffie M, Hoops SL, O'Brien D. A trial of nicotinamide in newly diagnosed patients with type 1 (insulin-dependent) diabetes mellitus. Diabetologia 1990;33:444-6.
10. Pozzilli P, Visalli N, Signore A, et al. Double blind trial of nicotinamide in recent- onset IDDM (the IMDIAB III study). Diabetologia 1995;38:848-52.
11. Coutant R, Landais P, Rosilio M, et al. Low dose linomide in Type I juvenile diabetes of recent onset: a randomised placebo-controlled double blind trial. Diabetologia 1998;41 : 1040-6.
12. Ludvigsson J, Samuelsson U, Johansson C, Stenhammar L. Treatment with antioxidants at onset of type 1 diabetes in children: a randomized, double-blind placebo-controlled study. Diabetes Metab Res Rey 2001 ;17:131-6.
13. Ludvigsson J, Samuelsson U, Emerudh J, Johansson C, Stenhammar L1 Berlin G. Photopheresis at onset of type 1 diabetes: a randomised, double blind, placebo controlled trial. Arch Dis Child 2001 ;85:149-54.
14. Raz I, Elias D, Avron A, Tamir M, Metzger M, Cohen IR. Beta-cell function in new- onset type 1 diabetes and immunomodulation with a heat-shock protein peptide (DiaPep277): a randomised, double-blind, phase II trial. Lancet 2001 ;358: 1749-53.
15. Lazar L, Ofan R, Weintrob N, et al. Heat-shock protein peptide DiaPep277 treatment in children with newly diagnosed type 1 diabetes: a randomised, double- blind phase II study. Diabetes Metab Res Rev 2006; (Epub ahead of print).
16. Herold KC, Gitelman SE, Masharani U, et al. A single course of anti-CD3 monoclonal antibody hOKT3gamma1 (Ala-Ala) results in improvement in C-peptide responses and clinical parameters for at least 2 years after onset of type 1 diabetes. Diabetes 2005;54: 1763-9.
17. Keymeulen B, Vandemeuleroucke E, Ziegler AG, et al. Insulin needs after CD3-antibody therapy in new-onset type 1 diabetes. N Engl J Med 2005;352:2598-608.
18. Harrisson LC. The prospect of vaccination to prevent type 1 diabetes. Hum Vaccin 2005;1 :143-50.
19. Jasinski JM, Eisenbarth GS. Insulin as a primary autoantigen for type 1A diabetes. Clin Dev Immunol 2005;12:181-6.
20. Baekkeskov S, Nielsen JH, Marner H, Bilde T, Ludvigsson J, Lernmark A. Autoantibodies in newly diagnosed diabetic children immunoprecipitate human pancreatic islet cell proteins. Nature 1982;298: 167-9.
21. Lernmark A, Agardh CD. lmmunomodulation with human recombinant autoantigens. Trends Immuonol 2005;26:608-12.
22. Tian J, Clare-Salzler M, Herschenfeld A, et al. Modulating autoimmune responses to GAD inhibits disease progression and prolongs islet graft survival in diabetes- prone mice. Nature Medicine 1996;2: 1348-135.
23. Tisch R, Liblau RS, Yang XD, Liblau P, McDevitt HO. Induction of GAD65-specific regulatory T cells inhibits ongoing autoimmune diabetes in non-obese diabetic mice. Diabetes 1998;47:894-9.
24. Agardh CD, CiNo CM, Lethagen A, et al. Clinical evidence for the safety of GAD65 immunomodulation in adult-onset autoimmune diabetes. J Diabetes Complications 2005;19:238-46.
25. Mandrup-Poulsen TR, Battelino T, Haastert B, et al. The European C-peptide trial CPT: comparison of liquid mixed meal and glucagons stimulation assays for the analyses of residual β-cell function in type 1 diabetes. Diabetologia 2006;49:375.
26. Larsson HE, Lynch K, Lernmark B, et al. DiPiS Study Group. Diabetes-associated HLA genotypes affect birthweight in the general population. Diabetologia 2005 ;48: 1484-91.
27. Graham J, Hagopian WA, Kockum I, et al. Diabetes Incidence in Sweden Study Group; Swedish Childhood Diabetes Study Group. Genetic effects on age-dependent onset and islet cell autoantibody markers in type 1 diabetes. Diabetes 2002;51 : 1346-55.
28. The Diabetes Control and Complications Trial Research Group. Effect of intensive therapy on residual β-Cell function in patients with type 1 diabetes in the diabetes control and complications trial. A randomized controlled trial. Ann Intern Med. 1998;128:517-23.
29. Wahren J, Ekberg K, Johansson J, et al. Role of C-peptide in human physiology. Am J Physiol Endocrinol Metab 2000;278:E759-60.
30. Daneman D, Clarson C. Residual beta-cell function in children with type 1 diabetes: measurement and impact on glycemic control. CHn Invest Med 1987; 10:484-7.
31. Steele C, Hagopian WA, Gitelman S, et al. Insulin secretion in type 1 diabetes. Diabetes 2004;53:426-33.
【0140】
本明細書で述べられた全ての刊行物及び特許は、個々の刊行物又は特許が具体的に個々に引用を以て本明細書の一部となるのと同じ範囲で、引用を以て、本明細書の一部となる。本明細書に記載された原理が理解されると、特許請求の範囲の範囲内での本発明の様々な変更は、当業者には明らかであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療開始前に、診断後6ヶ月よりも長い期間経過していない自己免疫疾患を治療するのに使用されることを特徴とする薬剤。
【請求項2】
治療開始前に、診断後3ヶ月よりも長い期間経過していない自己免疫疾患を治療するのに使用されることを特徴とする薬剤。
【請求項3】
治療開始から6ヶ月内に3回使用されることを特徴とする、請求項1及び2に記載の薬剤。
【請求項4】
治療開始から4ヶ月内に3回使用されることを特徴とする、請求項1及び2に記載の薬剤。
【請求項5】
治療開始から3ヶ月内に安全に3回使用されることを特徴とする、請求項1及び2に記載の薬剤。
【請求項6】
治療開始から12ヶ月内に安全に4回使用されることを特徴とする、請求項1及び2に記載の薬剤。
【請求項7】
治療開始から10ヶ月内に安全に4回使用されることを特徴とする、請求項1及び2に記載の薬剤。
【請求項8】
治療開始から9ヶ月内に安全に3回使用されることを特徴とする、請求項1及び2に記載の薬剤。
【請求項9】
自己免疫疾患が薬剤の少なくとも1種の抗原への抗体陽性を特徴とする、自己免疫疾患を治療するのに使用される請求項1乃至9の何れかに記載の薬剤。
【請求項10】
自己免疫疾患が異常高血糖値であることを特徴とする、自己免疫疾患を治療するのに使用される請求項1乃至9の何れかに記載の薬剤。
【請求項11】
自己免疫疾患が1型糖尿病であることを特徴とする、自己免疫疾患を治療するのに使用される請求項1乃至10の何れかに記載の薬剤。
【請求項12】
自己免疫疾患が、空腹時Cペプチドレベルが0.2pmol/ml未満であるように進行していないことを特徴とする、自己免疫疾患を治療するのに使用される請求項1乃至11の何れかに記載の薬剤。
【請求項13】
GAD65、GAD67、プロインスリン、ミエリン塩基性タンパク質、MOG、II型コラーゲン、ICA512(IA2)、ICA512B(IA2B)、インスリン、インスリンB鎖、Hsp60、Hsp65、P277、ICA69、グリマ38、SOX13、イモゲン38、スルファチド、21−水酸化酵素、TPO、アレルゲン、移植抗原、癌抗原、又は、それらの部分、ペプチド、若しくは、改変ペプチドリガンドからなる群から選択された1種の構成物である少なくとも1種の主たる自己抗原を有することを特徴とする、自己免疫疾患を治療するのに使用される請求項1乃至12の何れかに記載の薬剤。
【請求項14】
構成物がTh2誘導アジュバントで調製されることを特徴とする、自己免疫疾患を治療するのに使用される請求項1乃至13の何れかに記載の薬剤。
【請求項15】
Th2誘導アジュバントがミョウバンであることを特徴とする、自己免疫疾患を治療するのに使用される請求項14に記載の薬剤。
【請求項16】
請求項13に記載の構成物がTh1誘導アジュバントで調製されることを特徴とする、細胞媒介性細胞毒性を増強する薬剤。
【請求項17】
癌の治療に使用される、請求項16に記載の薬剤。
【請求項18】
膵炎、偽膜性大腸炎、急性潰瘍性大腸炎、慢性潰瘍性大腸炎、無弛緩症、胆管炎、クローン病、炎症性大腸炎、腸炎、ウィップル病、1型及び2型糖尿病、ぜんそく、アレルギー、免疫複合体病、臓器虚血、臓器壊死、花粉症、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、肺気腫、鼻炎、やけど、皮膚炎、皮膚筋炎、じんましん、血管炎、循環器疾患、アテローム性動脈硬化症、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、関節リウマチ、アルツハイマー病、セリアック病、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、神経炎、関節リウマチ、滑膜炎、シェーグレン症候群、スティッフパーソン症候群、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、紅斑性狼瘡、アジソン病、悪性貧血、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、強直性脊椎炎、ベルジェ病、グレイヴズ病、同種移植拒絶反応、移植片対宿主病、及び癌からなる群から選択される少なくとも1つの病気を治療するのに使用される、請求項1乃至17に記載の薬剤。
【請求項19】
経口、経鼻、吸入、筋肉内、皮下、静脈、直腸内、及び経皮を含む群から選択される経路の少なくとも1つを用いて投与される、又は、インプラント若しくはポンプを用いて、DNAやRNAガンを用いて、或いは、アンフィオン、 欠陥AAVやHSVのようなウイルスベクターを用いて投与される、請求項1乃至18に記載の薬剤。
【請求項20】
請求項1乃至19に記載の薬剤を、一回の治療機会に適切な量含む、予め充填された使い捨てのシリンジ又は瓶。
【請求項21】
請求項20に記載の薬剤を一回の治療機会に適切な量含むシリンジ、瓶、注入セットからなる群から選択され、少なくとも1種の抗原の量は、10乃至150マイクログラムの間である使い捨てのデバイス。
【請求項22】
(1)6ヶ月よりも長く進行していない1型糖尿病を有する患者を特定する工程と、
(2)この6ヶ月の期間内に少なくとも1種の自己抗原を含む薬剤を投与することで治療を開始する工程とを含む自己免疫疾患を治療する方法。
【請求項23】
1型糖尿病が3ヶ月よりも長い間進行する前に治療が開始される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
治療開始から6ヶ月内に薬剤が少なくとも3回投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
治療開始から3ヶ月内に薬剤が少なくとも3回投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
治療開始から12ヶ月内に薬剤が少なくとも4回投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
治療開始から10ヶ月内に薬剤が少なくとも4回投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
治療開始から40日内に薬剤が少なくとも2回投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
(1) 空腹時Cペプチドレベルが0.1pmol/ml以上である自己免疫疾患の患者を特定する工程と、
(2)空腹時Cペプチドレベルが0.1pmol/ml未満に減少する前に、少なくとも一種の自己抗原を含む薬剤を投与することで治療を開始する工程とを含む自己免疫疾患を治療する方法。
【請求項30】
少なくとも一種の自己抗原は、GAD65、GAD67、プロインスリン、ミエリン塩基性タンパク質、MOG、II型コラーゲン、ICA512(IA2)、ICA512B(IA2B)、インスリン、インスリンB鎖、Hsp60、Hsp65、P277、ICA69、グリマ38、SOX13、イモゲン38、スルファチド、21−水酸化酵素、TPO、アレルゲン、移植抗原、癌抗原、又は、それらの部分、ペプチド、若しくは、改変ペプチドリガンドからなる群から選択された構成物の一つである、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
構成物がTh2誘導アジュバントで調製されることを特徴とする、自己免疫疾患を治療するのに使用される請求項22に記載の方法。
【請求項32】
Th2誘導アジュバントがミョウバンであることを特徴とする、自己免疫疾患を治療するのに使用される請求項31に記載の方法。
【請求項33】
薬剤は、経口、経鼻、吸入、筋肉内、皮下、静脈、直腸内、及び経皮を含む群から選択される経路の少なくとも1つを用いて投与される、又は、インプラント若しくはポンプを用いて、DNAやRNAガンを用いて、若しくは、ウイルスベクターを用いて投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも一種の自己抗原の量は、治療機会当たり、約10乃至約150マイクログラムの間である、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも一種の隔絶自己抗原を、感作目的のプライムアンドブースト投与法に続いて治療目的でブースト投与することで、自己免疫疾患又は病気を治療する方法。
【請求項36】
隔絶自己抗原は、GAD65、GAD67、プロインスリン、ミエリン塩基性タンパク質、MOG、コンドロイチンIIからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも一種の投与は、経口投与、経鼻投与、吸入投与、筋肉内投与、又は皮下投与の1又は複数である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
疾患又は病気は、膵炎、偽膜性大腸炎、急性潰瘍性大腸炎、慢性潰瘍性大腸炎、無弛緩症、胆管炎、クローン病、炎症性大腸炎、腸炎、ウィップル病、糖尿病、ぜんそく、アレルギー、免疫複合体病、臓器虚血、臓器壊死、花粉症、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、肺気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、やけど、皮膚炎、皮膚筋炎、じんましん、血管炎、循環器疾患、アテローム性動脈硬化症、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、関節リウマチ、アルツハイマー病、セリアック病、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、神経炎、関節リウマチ、滑膜炎、シェーグレン症候群、スティッフパーソン症候群、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、紅斑性狼瘡、アジソン病、悪性貧血、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、同種移植拒絶反応、移植片対宿主病、1型糖尿病、強直性脊椎炎、ベルジェ病、2型糖尿病、及びグレイヴズ病からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
疾患又は病気の症状の検知に応じて、追加のブースト投与がなされる、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
自己抗原がアジュバントに調製される、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
GAD65、GAD67、プロインスリン、ミエリン塩基性タンパク質、MOG、及びコンドロイチンIIの少なくとも一種を含む隔絶自己抗原の混合物を含む製剤。
【請求項42】
隔絶自己抗原の混合物がアジュバントに調製される、請求項41に記載の製剤。
【請求項43】
アジュバントがミョウバンである、請求項42に記載の製剤。
【請求項44】
少なくとも一種の隔絶自己抗原を、感作目的のプライムアンドブースト投与に続いて、治療目的で少なくとも2回ブースト投与することで、自己免疫疾患又は病気を治療する方法。
【請求項45】
治療目的の少なくとも2回のブースト投与の間隔は12ヶ月未満である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
治療目的の少なくとも2回のブースト投与の間隔は9ヶ月未満である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
治療目的の少なくとも2回のブースト投与の間隔は6ヶ月未満である、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
治療目的の少なくとも2回のブースト投与は、約2ヶ月から約5ヶ月の継続間隔の治療目的のブースト投与を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
少なくとも2回のブースト投与は、少なくとも2年の期間内で12ヶ月未満の間隔でなされる、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
少なくとも2回のブースト投与は、少なくとも5年の期間内で12ヶ月未満の間隔でなされる、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
少なくとも2回のブースト投与は、少なくとも10年の期間内で12ヶ月未満の間隔でなされる、請求項44に記載の方法。
【請求項1】
治療開始前に、診断後6ヶ月よりも長い期間経過していない自己免疫疾患を治療するのに使用されることを特徴とする薬剤。
【請求項2】
治療開始前に、診断後3ヶ月よりも長い期間経過していない自己免疫疾患を治療するのに使用されることを特徴とする薬剤。
【請求項3】
治療開始から6ヶ月内に3回使用されることを特徴とする、請求項1及び2に記載の薬剤。
【請求項4】
治療開始から4ヶ月内に3回使用されることを特徴とする、請求項1及び2に記載の薬剤。
【請求項5】
治療開始から3ヶ月内に安全に3回使用されることを特徴とする、請求項1及び2に記載の薬剤。
【請求項6】
治療開始から12ヶ月内に安全に4回使用されることを特徴とする、請求項1及び2に記載の薬剤。
【請求項7】
治療開始から10ヶ月内に安全に4回使用されることを特徴とする、請求項1及び2に記載の薬剤。
【請求項8】
治療開始から9ヶ月内に安全に3回使用されることを特徴とする、請求項1及び2に記載の薬剤。
【請求項9】
自己免疫疾患が薬剤の少なくとも1種の抗原への抗体陽性を特徴とする、自己免疫疾患を治療するのに使用される請求項1乃至9の何れかに記載の薬剤。
【請求項10】
自己免疫疾患が異常高血糖値であることを特徴とする、自己免疫疾患を治療するのに使用される請求項1乃至9の何れかに記載の薬剤。
【請求項11】
自己免疫疾患が1型糖尿病であることを特徴とする、自己免疫疾患を治療するのに使用される請求項1乃至10の何れかに記載の薬剤。
【請求項12】
自己免疫疾患が、空腹時Cペプチドレベルが0.2pmol/ml未満であるように進行していないことを特徴とする、自己免疫疾患を治療するのに使用される請求項1乃至11の何れかに記載の薬剤。
【請求項13】
GAD65、GAD67、プロインスリン、ミエリン塩基性タンパク質、MOG、II型コラーゲン、ICA512(IA2)、ICA512B(IA2B)、インスリン、インスリンB鎖、Hsp60、Hsp65、P277、ICA69、グリマ38、SOX13、イモゲン38、スルファチド、21−水酸化酵素、TPO、アレルゲン、移植抗原、癌抗原、又は、それらの部分、ペプチド、若しくは、改変ペプチドリガンドからなる群から選択された1種の構成物である少なくとも1種の主たる自己抗原を有することを特徴とする、自己免疫疾患を治療するのに使用される請求項1乃至12の何れかに記載の薬剤。
【請求項14】
構成物がTh2誘導アジュバントで調製されることを特徴とする、自己免疫疾患を治療するのに使用される請求項1乃至13の何れかに記載の薬剤。
【請求項15】
Th2誘導アジュバントがミョウバンであることを特徴とする、自己免疫疾患を治療するのに使用される請求項14に記載の薬剤。
【請求項16】
請求項13に記載の構成物がTh1誘導アジュバントで調製されることを特徴とする、細胞媒介性細胞毒性を増強する薬剤。
【請求項17】
癌の治療に使用される、請求項16に記載の薬剤。
【請求項18】
膵炎、偽膜性大腸炎、急性潰瘍性大腸炎、慢性潰瘍性大腸炎、無弛緩症、胆管炎、クローン病、炎症性大腸炎、腸炎、ウィップル病、1型及び2型糖尿病、ぜんそく、アレルギー、免疫複合体病、臓器虚血、臓器壊死、花粉症、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、肺気腫、鼻炎、やけど、皮膚炎、皮膚筋炎、じんましん、血管炎、循環器疾患、アテローム性動脈硬化症、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、関節リウマチ、アルツハイマー病、セリアック病、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、神経炎、関節リウマチ、滑膜炎、シェーグレン症候群、スティッフパーソン症候群、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、紅斑性狼瘡、アジソン病、悪性貧血、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、強直性脊椎炎、ベルジェ病、グレイヴズ病、同種移植拒絶反応、移植片対宿主病、及び癌からなる群から選択される少なくとも1つの病気を治療するのに使用される、請求項1乃至17に記載の薬剤。
【請求項19】
経口、経鼻、吸入、筋肉内、皮下、静脈、直腸内、及び経皮を含む群から選択される経路の少なくとも1つを用いて投与される、又は、インプラント若しくはポンプを用いて、DNAやRNAガンを用いて、或いは、アンフィオン、 欠陥AAVやHSVのようなウイルスベクターを用いて投与される、請求項1乃至18に記載の薬剤。
【請求項20】
請求項1乃至19に記載の薬剤を、一回の治療機会に適切な量含む、予め充填された使い捨てのシリンジ又は瓶。
【請求項21】
請求項20に記載の薬剤を一回の治療機会に適切な量含むシリンジ、瓶、注入セットからなる群から選択され、少なくとも1種の抗原の量は、10乃至150マイクログラムの間である使い捨てのデバイス。
【請求項22】
(1)6ヶ月よりも長く進行していない1型糖尿病を有する患者を特定する工程と、
(2)この6ヶ月の期間内に少なくとも1種の自己抗原を含む薬剤を投与することで治療を開始する工程とを含む自己免疫疾患を治療する方法。
【請求項23】
1型糖尿病が3ヶ月よりも長い間進行する前に治療が開始される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
治療開始から6ヶ月内に薬剤が少なくとも3回投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
治療開始から3ヶ月内に薬剤が少なくとも3回投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
治療開始から12ヶ月内に薬剤が少なくとも4回投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
治療開始から10ヶ月内に薬剤が少なくとも4回投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
治療開始から40日内に薬剤が少なくとも2回投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
(1) 空腹時Cペプチドレベルが0.1pmol/ml以上である自己免疫疾患の患者を特定する工程と、
(2)空腹時Cペプチドレベルが0.1pmol/ml未満に減少する前に、少なくとも一種の自己抗原を含む薬剤を投与することで治療を開始する工程とを含む自己免疫疾患を治療する方法。
【請求項30】
少なくとも一種の自己抗原は、GAD65、GAD67、プロインスリン、ミエリン塩基性タンパク質、MOG、II型コラーゲン、ICA512(IA2)、ICA512B(IA2B)、インスリン、インスリンB鎖、Hsp60、Hsp65、P277、ICA69、グリマ38、SOX13、イモゲン38、スルファチド、21−水酸化酵素、TPO、アレルゲン、移植抗原、癌抗原、又は、それらの部分、ペプチド、若しくは、改変ペプチドリガンドからなる群から選択された構成物の一つである、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
構成物がTh2誘導アジュバントで調製されることを特徴とする、自己免疫疾患を治療するのに使用される請求項22に記載の方法。
【請求項32】
Th2誘導アジュバントがミョウバンであることを特徴とする、自己免疫疾患を治療するのに使用される請求項31に記載の方法。
【請求項33】
薬剤は、経口、経鼻、吸入、筋肉内、皮下、静脈、直腸内、及び経皮を含む群から選択される経路の少なくとも1つを用いて投与される、又は、インプラント若しくはポンプを用いて、DNAやRNAガンを用いて、若しくは、ウイルスベクターを用いて投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも一種の自己抗原の量は、治療機会当たり、約10乃至約150マイクログラムの間である、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも一種の隔絶自己抗原を、感作目的のプライムアンドブースト投与法に続いて治療目的でブースト投与することで、自己免疫疾患又は病気を治療する方法。
【請求項36】
隔絶自己抗原は、GAD65、GAD67、プロインスリン、ミエリン塩基性タンパク質、MOG、コンドロイチンIIからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも一種の投与は、経口投与、経鼻投与、吸入投与、筋肉内投与、又は皮下投与の1又は複数である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
疾患又は病気は、膵炎、偽膜性大腸炎、急性潰瘍性大腸炎、慢性潰瘍性大腸炎、無弛緩症、胆管炎、クローン病、炎症性大腸炎、腸炎、ウィップル病、糖尿病、ぜんそく、アレルギー、免疫複合体病、臓器虚血、臓器壊死、花粉症、好酸球性肉芽腫、肉芽腫症、サルコイドーシス、膣炎、前立腺炎、尿道炎、気管支炎、肺気腫、鼻炎、嚢胞性線維症、やけど、皮膚炎、皮膚筋炎、じんましん、血管炎、循環器疾患、アテローム性動脈硬化症、心膜炎、心筋炎、心筋虚血、結節性動脈周囲炎、リウマチ熱、関節リウマチ、アルツハイマー病、セリアック病、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、神経炎、関節リウマチ、滑膜炎、シェーグレン症候群、スティッフパーソン症候群、重症筋無力症、甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、紅斑性狼瘡、アジソン病、悪性貧血、グッドパスチャー症候群、ベーチェット病、同種移植拒絶反応、移植片対宿主病、1型糖尿病、強直性脊椎炎、ベルジェ病、2型糖尿病、及びグレイヴズ病からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
疾患又は病気の症状の検知に応じて、追加のブースト投与がなされる、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
自己抗原がアジュバントに調製される、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
GAD65、GAD67、プロインスリン、ミエリン塩基性タンパク質、MOG、及びコンドロイチンIIの少なくとも一種を含む隔絶自己抗原の混合物を含む製剤。
【請求項42】
隔絶自己抗原の混合物がアジュバントに調製される、請求項41に記載の製剤。
【請求項43】
アジュバントがミョウバンである、請求項42に記載の製剤。
【請求項44】
少なくとも一種の隔絶自己抗原を、感作目的のプライムアンドブースト投与に続いて、治療目的で少なくとも2回ブースト投与することで、自己免疫疾患又は病気を治療する方法。
【請求項45】
治療目的の少なくとも2回のブースト投与の間隔は12ヶ月未満である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
治療目的の少なくとも2回のブースト投与の間隔は9ヶ月未満である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
治療目的の少なくとも2回のブースト投与の間隔は6ヶ月未満である、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
治療目的の少なくとも2回のブースト投与は、約2ヶ月から約5ヶ月の継続間隔の治療目的のブースト投与を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
少なくとも2回のブースト投与は、少なくとも2年の期間内で12ヶ月未満の間隔でなされる、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
少なくとも2回のブースト投与は、少なくとも5年の期間内で12ヶ月未満の間隔でなされる、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
少なくとも2回のブースト投与は、少なくとも10年の期間内で12ヶ月未満の間隔でなされる、請求項44に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図11A】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図17A】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図20E】
【図21A】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図11A】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図17A】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図20E】
【図21A】
【公表番号】特表2010−525049(P2010−525049A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504907(P2010−504907)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001830
【国際公開番号】WO2008/129426
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(509294461)ダイアミド セラピューティクス アーベー (1)
【氏名又は名称原語表記】DIAMYD THERAPEUTICS AB
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001830
【国際公開番号】WO2008/129426
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(509294461)ダイアミド セラピューティクス アーベー (1)
【氏名又は名称原語表記】DIAMYD THERAPEUTICS AB
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]