説明

自己粘着性フィルム

【課題】粘着力が非常に優れ、被着体に粘着剤が残らない自己粘着性フィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルムの表層に、粘着フィルム全体の厚みの5から50%の厚みの粘着剤層を備え、裏層に離型剤層を備える自己粘着性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己粘着性フィルム(Adhesive Film)に関するものであり、より詳しくは、粘着力の強度が従来のコーティング(coating)方式の粘着性テープ(tape)よりも優れ、特に被着体からフィルムを剥離する時に粘着剤が残留せず、製造時に環境有害物質(例えば、トルエンなどのような溶剤)が使用されない粘着性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自己粘着性フィルムは、複数回付着および剥離を繰り返すことができるフィルムである。この自己粘着性フィルムとしては、PE自己粘着性フィルム、PP自己粘着性フィルム、EVA自己粘着性フィルム、PET自己粘着性フィルム、ラップなどがあり、様々な基材の粘着性フィルムが開示されている。
ところが、従来の自己粘着性フィルムは、フィルム材の分子量による粘着力の極大化が困難であるので、3g/inch以下の低粘着力を有しており、その適用可能な分野は一部分に限定されている。また、一部の低粘着力を有するフィルムも輸入に依存している状況であり、中粘着力と高粘着力を有するフィルムは世界的にもまだ開発されていない状態のため、中粘着力と高粘着力を有するフィルムの開発が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする技術的な課題は、被着体に繰り返し付着できると共に、剥離過程で被着体に粘着剤の残留物が全く残らず、粘着の強度を低、中、高などに多様に調節できる自己粘着性フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した技術的課題を達成するための本発明の粘着性フィルムは、表面から第1の深さまで粘着剤が分布した粘着表層を有することを特徴とする。
本発明で粘着剤が分布する前記第1の深さは、前記粘着性フィルムの全厚みの5%〜50%であることが、粘着性フィルムの粘着性能を最も効率的に発揮させることができるため望ましい。
そして、本発明で使用する粘着剤は、例えば ゴム(rubber)または変形前のアクリル粘着剤を混合したもので構成される。
また、本発明に係る粘着性フィルムの粘着強度は例えば3g/inch〜800g/inchであり、この粘着強度は正確な値に非常に容易に調節できる。 一方、本発明に係る粘着性フィルムにおいて、前記粘着剤は下記のグラフ1のような濃度分布を有することを特徴とする。
<グラフ1>

【0005】
そして、本発明に係る粘着性フィルムにおいて、前記粘着性フィルムは、PP、PE、PETなどの様々なフィルムの中から選択される一つ以上のポリオレフィン(Poly Olefin)フィルムからなる。
一方、本発明に係る粘着性フィルムにおいて、前記粘着表層を構成するフィルムと、前記粘着表層を除いた部分を構成するフィルムは互いに異なる材質で構成することもできる。
そして、本発明に係る粘着性フィルムは、前記粘着表層の反対面の表面から第2の深さまで離型剤が分布する離型表層がさらに備えられることが、粘着性フィルムの使用過程で粘着性フィルム同士、または粘着性フィルムと異種物質同士から容易に剥離できるため望ましい。
本発明で前記離型剤が分布する前記第2の深さは、前記粘着性フィルムの全厚みの5%〜40%であることが、粘着性フィルムの離型性能を効果的に発揮できるため望ましい。
本発明では前記離型剤はゴム(rubber)を基本に構成される。
この時、前記離型剤は下記のグラフ2のような濃度分布を有することを特徴とする。
<グラフ2>

【0006】
そして、本発明に係る粘着性フィルムにおいて、前記離型表層を構成するフィルムと前記離型表層を除いた部分のフィルムは、互いに異なる材質で構成することもできる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、粘着剤成分は粘着性フィルムの内部に分布するため、粘着性フィルムの反復的な使用過程でも被着体に粘着剤成分を含んだ粘着残留物が全く残らないという利点がある。
また、本発明に係る粘着性フィルムは、粘着剤成分の濃度および種類を調節することによって、粘着性フィルムの粘着強度が調節自在であり、特に、非常に強い粘着強度を実現することができるという利点がある。
また、本発明に係る粘着性フィルムは、粘着剤成分および離型剤成分が粘着性フィルム内に分布しているため、使用済みの粘着性フィルムを多様にリサイクルできるという利点もある。
また、製造時に環境有害物質(トルエンのような溶剤、可塑剤など)を使用しないため、環境に優しいという利点があり、環境および人体に悪影響を及ぼさない効果もある。
また、従来の粘着性テープの紫外線および熱変化によって粘着剤が変性するという欠点を補完することにより、今まで適用が難しかった産業分野に活用可能であるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例に係る粘着性フィルムの構造を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照して、本発明の具体的な実施例を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
本実施例に係る自己粘着性フィルム1は、図1に示すように、粘着表層10と離型表層20を有する。ここで、図1は、本発明の一実施例に係る粘着性フィルムの断面形状を模式的に示す図である。
本実施例で粘着表層10は、粘着性フィルム1の一側表面から所定の深さ、例えばグラフ1で第1の深さ(d1)程度に形成される。この第1の深さ(d1)は、粘着性フィルムの粘着性能の実現において非常に重要な要素であるので、精密に調節する必要がある。したがって、本実施例に係る粘着性フィルム1において、この第1の深さ(d1)は、粘着性フィルムの全厚みの5%〜50%程度に調節されることが望ましい。ここで第1の深さ(d1)が5%以下だと粘着性能が非常に低くなり、50%以上だと粘着性フィルムの物理的な特性が低下するという問題点がある。
そして、粘着表層に分布する前記粘着剤12としては様々な物質が使用され、例えばゴム(rubber)を単独で、或いは一つ以上の他の物質と混合して使用することもできる。
一方、本実施例に係る粘着性フィルムの粘着強度は多様に調節することができ、例えば3g/inch〜800g/inchの範囲内に調節されることが望ましい。粘着強度が3g/inch以下であると粘着性能が非常に低いという問題点があり、粘着強度が800g/inch以上であるとフィルムの離型に問題点がある。
そして、本実施例に係る粘着性フィルムにおいて、前記粘着剤12は下記のグラフ1のような濃度分布を有することが望ましい。
<グラフ1>

【0010】
すなわち、粘着性フィルムの一側表面から中間部分に行くほど一定の深さ、つまり第1の深さ(d1)までは粘着剤12成分の濃度が一定の値を保ち、前記第1の深さ(d1)を過ぎてからは粘着剤成分の濃度が急激に減少し、最後には粘着剤成分がなくなる分布を有する。ここで、粘着剤成分の濃度が一定の値を有する第1の深さ(d1)までの部分を粘着表層と定義する。
一方、本実施例に係る粘着性フィルムにおいて、この粘着性フィルム自体は様々な樹脂からなる。例えば、PP、PE、PETの中から選択されるいずれか一つ、或いはこれらの混合物からなる。
ここで、粘着性フィルム全体が一つの樹脂からなることもできるが、粘着表層を構成する部分とその他の部分を互いに異なる樹脂で構成することもできる。例えば、粘着表層10を構成する部分はPP(Poly Propylene)樹脂からなり、その他の部分はPE(Poly Ethylene)樹脂で構成することもできる。このように粘着性フィルムの各部分を異種樹脂で構成することは、粘着剤成分を均一に混合しながらも、容易に成形できるという利点などがあるためである。
そして、本実施例において粘着表層10とその他の部分は図1で区分されると示しているが、実際はその境界面が不明で、明確に区分されないことがある。すなわち、粘着剤成分が減少し続け、ある深さ以上では全く現れないが、その深さは粘着性フィルムの位置により変わり得る。また、粘着表層とその他の部分が互いに異なる樹脂からなる場合は、その境界面が明確に区分されるのではなく、むしろ、その境界面で互いに異なる樹脂が混合して境界面が不明確な状態となることがある。
次に、離型表層20は、前記粘着表層10の反対面の表面から第2の深さ(d2)まで離型剤22が分布する部分を言う。この離型表層20は必要に応じて備えられないこともあるが、粘着性フィルムの粘着強度が強くなるほど粘着性フィルム自体の付着を防止するためにも備える必要がある。
本実施例では、この離型表層20も、上述した粘着表層と同様に離型剤成分を粘着性フィルム1の内部に分布させた構造を持つ。したがって、使用過程で粘着性フィルムから離型剤成分が全く露出または流出しない利点がある。
ここで、離型剤22成分が分布する前記第2の深さ(d2)は、前記粘着性フィルム1の全厚みの5%〜40%であることが望ましい。第2の深さ(d2)が5%以下であると離型性能が円滑に実現されないという問題点があり、40%以上であると粘着性フィルムの成形が難しくなるという問題点がある。
そして、本実施例では、前記離型剤22として様々な成分を使用でき、例えばシリコン系のいずれか一つを単独で、或いはこれらの混合物を使用することもできる。
一方、本実施例において、前記離型剤22は下記のグラフ2のような濃度分布を有することを特徴とする。
<グラフ2>

【0011】
すなわち、上述した粘着表層10と同様に、離型表層20も一定の深さまでは離型剤22成分が一定の濃度に保たれ、一定の深さ(d2)を過ぎると離型剤成分の濃度が急激に減少し、最後にはなくなるグラフを有する。この時、離型剤成分が一定に保たれる第2の深さ(d2)は非常に重要な意味を有するが、本実施例では、この第2の深さ(d2)が粘着性フィルムの全厚みの5〜40%程度となるようにすることが望ましい。
そして、この離型表層20も、上述した粘着表層10と同様に、これを構成する樹脂成分がその他の部分を構成する樹脂成分と同一の樹脂で構成することもできるが、互いに異なる樹脂成分で構成することもできる。したがって、粘着表層10を構成する樹脂と、離型表層20を構成する樹脂、そしてその他の部分を構成する樹脂成分がそれぞれ異なる3層形状を有することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面から第1の深さまで粘着剤が分布した粘着表層と、前記粘着表層の反対面の表面から第2の深さまで離型剤が分布する離型表層とを有することを特徴とする自己粘着性フィルム。
【請求項2】
前記第1の深さは、前記粘着性フィルムの全厚みの5%〜50%であることを特徴とする請求項1に記載の自己粘着性フィルム。
【請求項3】
前記粘着剤は、ゴム(rubber)または変形前のアクリル粘着剤を混合したものであることを特徴とする請求項1に記載の自己粘着性フィルム。
【請求項4】
前記粘着表層の粘着強度は、3g/inch〜800g/inchであることを特徴とする請求項1に記載の自己粘着性フィルム。
【請求項5】
前記粘着剤は、下記のグラフ1のような濃度分布を有することを特徴とする請求項1に記載の自己粘着性フィルム。
<グラフ1>

【請求項6】
前記粘着性フィルムは、PP、PE、PETの中で選択されるいずれか一つからなることを特徴とする請求項1に記載の自己粘着性フィルム。
【請求項7】
前記粘着表層を構成するフィルムと、前記粘着表層を除いた部分を構成するフィルムが互いに異なる材質で構成されることを特徴とする請求項1に記載の自己粘着性フィルム。
【請求項8】
前記離型剤は、下記のグラフ2のような濃度分布を有することを特徴とする請求項1に記載の自己粘着性フィルム。
<グラフ2>

【請求項9】
前記第2の深さは、前記粘着性フィルムの全厚みの5%〜40%であることを特徴とする請求項1に記載の自己粘着性フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2009−287026(P2009−287026A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120383(P2009−120383)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(509138693)ハンジン ピー アンド シー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】