自己診断機能を有する角速度センサ
【課題】本発明は、音叉型振動子を発振回路を共用として自己診断を行うことにより簡略化及び小型化することを目的とする。
【解決手段】本発明による自己診断機能を有する角速度センサは、音叉型振動素子(1)に駆動電極(9)と検出電極(20)と自己診断用電極(6,7)を設け、各自己診断用電極(6,7)と駆動電極(9)を一対のスイッチ(SW1,SW2)を介して1個のみの発振回路(10)を共用として選択的にON/OFFすることにより、音叉型振動子(1)の各アーム部(2,3)を対称駆動又は非対称駆動とする構成である。
【解決手段】本発明による自己診断機能を有する角速度センサは、音叉型振動素子(1)に駆動電極(9)と検出電極(20)と自己診断用電極(6,7)を設け、各自己診断用電極(6,7)と駆動電極(9)を一対のスイッチ(SW1,SW2)を介して1個のみの発振回路(10)を共用として選択的にON/OFFすることにより、音叉型振動子(1)の各アーム部(2,3)を対称駆動又は非対称駆動とする構成である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己診断機能を有する角速度センサに関し、特に、音叉型振動子を発振回路を共用として自己診断を行うようにして簡略化及び小型化するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、角速度センサは回転時の角速度を検知するセンサであり、最近カーナビゲーションなどのシステム、自動車やロボットの姿勢制御システムなどに多く利用されている。
例えば、特許文献1には、音叉型振動子を用いた角速度センサが開示されており、自己診断時に回路側で位相と振幅の大きさが異なる信号を発生させ、振動電極に入力することで、擬似的に検出振動を発生させることにより検出部の自己診断の判定機能を有する角速度センサが開示されている。
他方、特許文献2には、駆動信号に擬似信号発生回路により発生させた擬似角速度信号を重畳させ、駆動電極と検出電極の静電結合容量を介して伝搬する角速度擬似信号を検出することにより自己診断の判定機能を有する角速度センサが開示されている。
さらに、特許文献3には、通常時と自己診断時とでスイッチを介して発振回路の構成を切り替え、診断時の音叉振動モードも検出モードと異なるモードを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−107518号公報
【特許文献2】特開2010−43962号公報
【特許文献3】特許第4529444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の角速度センサの自己診断装置及び方法は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、特許文献1の構成においては、センサ素子の発振回路に自己診断用の増幅率調整・位相調整用の回路を追加する必要があり、少なくとも4つの増幅器が追加で必要となる。他方、特許文献2の構成においては、擬似信号発生回路及び設定値を記憶する不揮発性の記憶部を必要とする。回路規模の増加の課題があった。
また、特許文献3の構成においては、Z軸同相モードで駆動し診断しているため、常時診断が可能であるが、回路上の調整を必要とする部分が多く、回路構成も複雑化していた。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、自己診断用電極をスイッチを介して駆動電極と接続し、1個のみの発振回路を角速度検出時と自己診断時で共用することにより、回路構成が簡略化された小型の自己診断機能を有する角速度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による自己診断機能を有する角速度センサは、ベース部と前記ベース部から二又状に延びる一対のアーム部とを有する音叉型振動子と、前記アーム部に設けられた一対の駆動電極と、前記アーム部に設けられた一対の検出電極と、前記ベース部の表面に設けられた第1、第2自己診断用電極とを有する角速度センサ素子と、前記駆動電極に接続された1個のみの発振回路と、前記各自己診断用電極に前記駆動電極及び発振回路を接続又は非接続とするためのスイッチ手段と、からなり、前記スイッチ手段がオフの時は前記各アーム部が対称的に駆動され、前記スイッチ手段がオンの時は前記各アーム部が非対称的に駆動されるようにした構成であり、また、前記スイッチ手段は前記各自己診断用電極毎に接続された一対のスイッチよりなり、前記スイッチは片側のみ短絡することができ、スイッチ1個のON/OFFにより開放時と短絡時の出力判定により、開放時は静止時出力、短絡時は感度変化、ゲイン変化、回路動作異常を判定する自己診断を行うことができる構成であり、また、前記各自己診断用電極はベース部の左右に1個ずつ設けられると共に、各スイッチを介して、電気的に交互に発振回路及び一方の駆動電極と短絡又は開放とすることができる構成であり、また、前記各スイッチのON/OFFにより左右の自己診断用電極の開放・短絡を切り替えることで前記音叉型振動子の検出振動の位相を変えることができ、右回転、左回転に相当する感度変化、及び静止時出力変化、回路動作異常を判定する自己診断を行うことができる構成であり、また、前記各スイッチの一方をONにし、その際に、角速度センサのオフセット電圧の1/2Vdd付近に第二オフセット調整領域を設け、静止時出力、感度変化、回路動作異常の判定閾値を共通化することができる構成であり、また、前記自己診断用電極の電極寸法は診断信号の大きさにより変更することにより、角速度により得られる感度に影響することなく、電極寸法の変更のみで自己診断信号の振幅の大きさを調整することができる構成であり、また、前記各自己診断用電極で発生する出力変化差を調整することにより、出力差のある検出振動の信号の大きさを監視することで、静止時出力変化、感度変化を診断することができる構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明による自己診断機能を有する角速度センサは、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、ベース部と前記ベース部から二又状に延びる一対のアーム部とを有する音叉型振動子と、前記アーム部に設けられた一対の駆動電極と、前記アーム部に設けられた一対の検出電極と、前記ベース部の表面に設けられた第1、第2自己診断用電極とを有する角速度センサ素子と、前記駆動電極に接続された1個のみの発振回路と、前記各自己診断用電極に前記駆動電極及び発振回路を接続又は非接続とするためのスイッチ手段と、からなり、前記スイッチ手段がオフの時は前記各アーム部が対称的に駆動され、前記スイッチ手段がオンの時は前記各アーム部が非対称的に駆動される。
また、前記スイッチ手段の各スイッチは片側のみ短絡することができ、スイッチ1個のON/OFFにより開放時と短絡時の出力判定により、開放時は静止時出力、短絡時は感度変化、ゲイン変化、回路動作異常を判定する自己診断を行うことができる。
また、前記各自己診断用電極はベース部の左右に1個ずつ設けられると共に、各スイッチを介して、電気的に交互に発振回路及び一方の駆動電極と短絡又は開放とすることができる。
また、前記各スイッチのON/OFFにより左右の自己診断用電極の開放・短絡を切り替えることで前記音叉型振動子の検出振動の位相を変えることができ、右回転、左回転に相当する感度変化、及び静止時出力変化、回路動作異常を判定する自己診断を行うことができる。
また、前記各スイッチの一方をONにし、その際に、角速度センサのオフセット電圧の1/2Vdd付近に第二オフセット調整領域を設け、静止時出力、感度変化、回路動作異常の判定閾値を共通化することができる。
また、前記自己診断用電極の電極寸法は診断信号の大きさにより変更することにより、角速度により得られる感度に影響することなく、電極寸法の変更のみで自己診断信号の振幅の大きさを調整することができる。
また、前記各自己診断用電極で発生する出力変化差を調整することにより、出力差のある検出振動の信号の大きさを監視することで、静止時出力変化、感度変化を診断することができる。
従って、本発明により、音叉型振動子のベース部に自己診断用電極を配置し、この自己診断用電極をSWの開閉により、駆動電極と発振回路に選択的に接続する簡便な方法で、静止時出力変化、感度変化、回路動作異常などの自己診断を有する角速度センサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による自己診断機能を有する角速度センサの音叉型振動子を示す構成図である。
【図2】図1の振動子に電極を形成した状態を示す斜視図である。
【図3】図2の断面Gを示す断面図である。
【図4】図2の断面Hを示す断面図である。
【図5】図2の断面Iを示す断面図である。
【図6】本発明による角速度センサを示す構成図である。
【図7】図2の振動子の駆動インピーダンスを示す説明図である。
【図8】図2の振動子の駆動インピーダンスを示す説明図である。
【図9】図6の変形例を示す構成図である。
【図10】本発明の角速度センサの感度を示す特性図である。
【図11】本発明における自己診断状態を示す特性図である。
【図12】本発明における自己診断状態を示す特性図である。
【図13】本発明における自己診断状態を示す特性図である。
【図14】図10の変形特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、音叉型振動子を発振回路を共用として自己診断を行うことにより小型化した自己診断機能を有する角速度センサを提供することを目的とする。
【実施例】
【0010】
以下、図面と共に本発明による自己診断機能を有する角速度センサの好適な実施の形態について説明する。
まず、図1(a)及び図1(b)を用いて、音叉型振動子1の駆動振動と検出振動について説明する。
図1(a)を参照に、音叉形振動子1の駆動電極(図示せず)に駆動信号を印加することにより左右のアーム部2,3が互いに開閉するような振動が発生する。この振動はX軸に平行な振動である。このような振動を駆動振動という。ここでY軸に対して角速度が印加されると、周知のコリオリ力により図1(b)のように左右のアーム部2,3が前後の振動をする。この振動はZ軸に平行な振動である。このような振動を検出振動という。検出電極20,20aがこの検出振動を検出することによりY軸を中心とした角速度を検知することができる。なお、音叉型振動子1のアーム部2,3の長手方向をY軸、幅方向をX軸、厚み方向をZ軸とする(以下において同じ)。
【0011】
(実施例1)
実施例1は、角速度センサ5に用いる音叉型振動子1に自己診断用電極6,7を設けた例である。
図2は音叉型振動子1のベース部8に自己診断用電極6,7を配置した斜視図であり、図3から図5は各アーム部2,3の表面A、側面C、D、裏面Bにかけて形成され、互いに分離して形成された一対の検出電極20,20aを示し、図6は音叉型振動子1に配置された自己診断用電極6,7が、スイッチ手段40のスイッチSW1,SW2の開閉により駆動電極9及び1個のみの発振回路10と開放、短絡状態となることを示す回路ブロック図である。SW−OFFで各アーム部2,3が平面でみて対称的に両側に開く(図7)ように駆動される通常モード、SW−ONで自己診断モードに切り替えを行う。SW−ON時に短絡状態となった時に、一対の駆動電極9がアンバランスとなり、各アーム部2,3が非対称的に駆動(図8に示す)され、擬似的に検出振動を発生する。その周知のFEM解析結果を図7及び図8に示す。図7はSW−OFFの駆動電極9のインピーダンス応答の解析結果であり、X方向に振動する駆動振動のみの応答となる。他方、図8はSW−ON時の駆動電極9のインピーダンス応答の解析結果であり、X方向に振動する駆動振動の他に、Z方向に振動する検出振動が発生しており、自己診断用電極6,7により、擬似的に検出振動を発生させることができる。すなわち、図8では、各アーム部2,3が平面でみて左右非対称に駆動することで上下方向の動きが発生する。
【0012】
図9、図10は、自己診断用電極6,7による出力変化の実測例を示す。横軸は各アーム部2,3が対称的に駆動される通常モード(SW−OFF)における感度を示し、縦軸は自己診断モードの(SW−ON)における出力変化を通常モードの感度で角速度換算した値である。SW1及びSW2は交互にON−OFFを行う。SW1−ON(SW2−OFF)時は、プラスの出力変化を示し、SW2−ON(SW1−OFF)時は、マイナスの出力変化を示す。SW1,2の切り替えにより、右回転、左回転に相当する出力変化(擬似感度)が発生する。また、通常モードの感度とSW−ON時の出力変化(擬似感度)は、高い相関性がある。以上より、音叉型振動子1に自己診断用電極6,7を配置し、スイッチSW1,SW2の開閉により、自己診断用電極6,7と駆動電極9及び発振回路10と短絡又は開放とすることで、擬似的に検出振動を発生させ、擬似感度を監視することで、感度変化を検出可能となる。
なお、通常モードはSW−OFFとしたが、通常モードをSW1,2−ON状態にし、自己診断モードでSW−1,2を各々OFFにしても、各駆動電極9がアンバランス、すなわち、各アーム部2,3が非対称的に駆動されるために、擬似的に検出振動が発生することはいうまでもない(図示せず)。
【0013】
(実施例2)
実施例2は、上述、自己診断用電極を配置した音叉型振動子とSWの組合せの回路による、自己診断方法を示す。
図11はスイッチSW1,SW2を交互に開閉させることにより自己診断例を示す。図11でVoutは角速度センサのオフセット電圧、V1,V2はSW1,SW2がONの時の出力値、閾値AU,ALはSW1−ON時の判定閾値、閾値BU,BLはSW2−ON時の判定閾値を示す。スイッチSW1をONさせるとセンサ出力がプラス方向に、SW2をONとさせるとマイナス方向に変化する。
それぞれ(V1,V2)の上限値、下限値を設定し、変化時出力が設定値内にはいっていることを確認することで故障判定する。
表1に判定表を示す。SW1,SW2が各々ONの時の判定の組合せにより、静止時出力変化、感度変化、回路動作異常を検出することができる。
【0014】
【表1】
【0015】
(実施例3)
実施例3は、上述、自己診断用電極6,7を配置した音叉型振動子1とSWの組合せの回路による、自己診断方法の例を示す。
図12スイッチSW1(またはSW2)のみ開閉させることによる自己診断例を示す。図12でVoutは角速度センサ5のオフセット電圧、V1はスイッチSW1がONの時の出力値、△Vout1はSW−OFFとSW−ONの出力差、閾値AU,ALはSW1−OFFの時(静止時)の判定閾値、閾値BU,BLはSW1−ON時の判定閾値を示す。
まずVout(SW1がOFFの状態の出力)を測定し、次にスイッチSW1がONしたときの出力(V1)を測定する。
判断は第1例として、Voutの値が設定値内に入っているかどうか第2例としてV1−Vout=△Vout1が設定値内に入っているかどうかを確認することで故障判定を行う。
表2に判定表を示す。SW1−OFF,SW1−ON時の出力差判定の組合せにより、静止時出力変化、感度変化、ゲイン変化、回路動作異常を検出することができる。
【0016】
【表2】
【0017】
(実施例4)
実施例4は、上述、自己診断用電極6,7を配置した音叉型振動子1とスイッチSW1,SW2の組合せの回路による、自己診断方法を示す。
図13はスイッチSW1又はSW2のどちらか一方をONさせ、その際、第二のオフセット調整を実施し、SW−OFF時の出力値及びSW−ON時出力値を確認することによる自己診断例を示す。図13でVoutは角速度センサのオフセット電圧、V1はSW1がONの時の出力値、△Vout1はSW−OFFとSW−ONの出力差を示す。
まず、Vout(SW1−OFFの状態の出力)を測定し、次にSW1又はSW2をONさせ、その際第二のオフセット調整を実施した時の出力(Vout)を測定する。
それぞれのVout(SW−OFF)、Vout(SW−ON)の値がある範囲(閾値共通)に入っているかどうかを確認することで、自己診断を行う。閾値を共通化できる実施の形態となる。
まお、第二オフセット調整とはスイッチSW1又はSW2がONした場合に、角速度センサ5のオフセット電圧、Voutが1/2Vdd近辺になるよう調整する機能である。
【0018】
(実施例5)
実施例5は、角速度センサ5に用いる音叉型振動子1に出力変化の異なる自己診断用電極6,7を設けた例である。
図14は、自己診断用電極6,7で出力差を与えた場合の出力変化の実施例を示す(SW1の例)。横軸は通常モード(SW−OFF)における感度を示し、縦軸は自己診断モードの(SW−ON)における出力変化の通常モードの感度で角速度換算した値である。
出力差のある検出振動の信号の大きさを監視することで、レンジの異なる静止時出力変化、感度変化を診断することができる。出力差は自己診断用電極の寸法で任意に変更可能であり、本実施例は自己診断用電極6の寸法(面積)を自己診断用電極7に対して50%小さくした例である。なお、電極寸法のみならず、電極配置など別の手法で出力差を与えてもよい(図6に基づく)。
尚、前述の角速度センサ5の発振回路10及び各スイッチSW1,SW2は周知のASIC(Application Specific IC)で構成されている。
【0019】
前述の本発明による自己診断機能を有する角速度センサの構成と機能をまとめると、次の通りである。
すなわち、ベース部8と前記ベース部8から二又状に延びる一対のアーム部2,3とを有する音叉型振動子1と、前記アーム部2,3に設けられた一対の駆動電極9と、前記アーム部2,3に設けられた一対の検出電極20,20aと、前記ベース部8の表面Aに設けられた第1、第2自己診断用電極6,7とを有する角速度センサ素子30と、前記駆動電極9に接続された1個のみの発振回路10と、前記各自己診断用電極6,7に前記駆動電極9及び発振回路10を接続(又は非接続と)するためのスイッチ手段40と、前記第2自己診断用電極7に前記駆動電極9及び発振回路10を接続又は非接続とするためのスイッチ手段40と、からなり、前記スイッチ手段40がオフの時は前記各アーム部2,3が平面でみて対称的に駆動され、前記スイッチ手段40がオンの時は前記各アーム部2,3が平面でみて非対称的に駆動される。
また、前記スイッチ手段40は前記各自己診断用電極6,7毎に接続された一対のスイッチSW1,SW2よりなり、前記スイッチSW1,SW2は片側のみ短絡することができ、スイッチ1個のON/OFFにより開放時と短絡時の出力判定により、開放時は静止時出力、短絡時は感度変化、ゲイン変化、回路動作異常を判定する自己診断を行うことができる。
また、前記各自己診断用電極6,7はベース部8の左右に1個ずつ設けられると共に、各スイッチSW1,SW2を介して、電気的に交互に発振回路10及び一方の駆動電極9と短絡又は開放とすることができる。
また、前記各スイッチSW1,SW2のON/OFFにより左右の自己診断用電極6,7の開放・短絡を切り替えることで前記音叉型振動子1の検出振動の位相を変えることができ、右回転、左回転に相当する感度変化、及び静止時出力変化、回路動作異常を判定する自己診断を行うことができる。
また、前記各スイッチSW1,SW2の一方をONにし、その際に、角速度センサ5のオフセット電圧Voutの1/2Vdd付近に第二オフセット調整領域を設け、静止時出力、感度変化、回路動作異常の判定閾値を共通化することができる。
また、前記自己診断用電極6,7の電極寸法は診断信号の大きさにより変更することにより、角速度により得られる感度に影響することなく、電極寸法の変更のみで自己診断信号の振幅の大きさを調整することができる。
また、前記各自己診断用電極6,7で発生する出力変化差を調整することにより、出力差のある検出振動の信号の大きさを監視でき、静止時出力変化、感度変化を診断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明による自己診断機能を有する角速度センサは、音叉型振動子と1個のみの発振回路により構成することにより、構成を簡略化して小型化し、カーナビゲーション、ロボット等の姿勢制御に利用できる。
【符号の説明】
【0021】
1 音叉型振動子
2,3 アーム部
5 角速度センサ
6 第1自己診断用電極
7 第2自己診断用電極
8 ベース部
9 駆動電極
10 発振回路
20,20a 検出電極
30 角速度センサ素子
40 スイッチ手段
A 表面
B 裏面
C 側面
D 側面
SW1,SW2 スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己診断機能を有する角速度センサに関し、特に、音叉型振動子を発振回路を共用として自己診断を行うようにして簡略化及び小型化するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、角速度センサは回転時の角速度を検知するセンサであり、最近カーナビゲーションなどのシステム、自動車やロボットの姿勢制御システムなどに多く利用されている。
例えば、特許文献1には、音叉型振動子を用いた角速度センサが開示されており、自己診断時に回路側で位相と振幅の大きさが異なる信号を発生させ、振動電極に入力することで、擬似的に検出振動を発生させることにより検出部の自己診断の判定機能を有する角速度センサが開示されている。
他方、特許文献2には、駆動信号に擬似信号発生回路により発生させた擬似角速度信号を重畳させ、駆動電極と検出電極の静電結合容量を介して伝搬する角速度擬似信号を検出することにより自己診断の判定機能を有する角速度センサが開示されている。
さらに、特許文献3には、通常時と自己診断時とでスイッチを介して発振回路の構成を切り替え、診断時の音叉振動モードも検出モードと異なるモードを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−107518号公報
【特許文献2】特開2010−43962号公報
【特許文献3】特許第4529444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の角速度センサの自己診断装置及び方法は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、特許文献1の構成においては、センサ素子の発振回路に自己診断用の増幅率調整・位相調整用の回路を追加する必要があり、少なくとも4つの増幅器が追加で必要となる。他方、特許文献2の構成においては、擬似信号発生回路及び設定値を記憶する不揮発性の記憶部を必要とする。回路規模の増加の課題があった。
また、特許文献3の構成においては、Z軸同相モードで駆動し診断しているため、常時診断が可能であるが、回路上の調整を必要とする部分が多く、回路構成も複雑化していた。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、自己診断用電極をスイッチを介して駆動電極と接続し、1個のみの発振回路を角速度検出時と自己診断時で共用することにより、回路構成が簡略化された小型の自己診断機能を有する角速度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による自己診断機能を有する角速度センサは、ベース部と前記ベース部から二又状に延びる一対のアーム部とを有する音叉型振動子と、前記アーム部に設けられた一対の駆動電極と、前記アーム部に設けられた一対の検出電極と、前記ベース部の表面に設けられた第1、第2自己診断用電極とを有する角速度センサ素子と、前記駆動電極に接続された1個のみの発振回路と、前記各自己診断用電極に前記駆動電極及び発振回路を接続又は非接続とするためのスイッチ手段と、からなり、前記スイッチ手段がオフの時は前記各アーム部が対称的に駆動され、前記スイッチ手段がオンの時は前記各アーム部が非対称的に駆動されるようにした構成であり、また、前記スイッチ手段は前記各自己診断用電極毎に接続された一対のスイッチよりなり、前記スイッチは片側のみ短絡することができ、スイッチ1個のON/OFFにより開放時と短絡時の出力判定により、開放時は静止時出力、短絡時は感度変化、ゲイン変化、回路動作異常を判定する自己診断を行うことができる構成であり、また、前記各自己診断用電極はベース部の左右に1個ずつ設けられると共に、各スイッチを介して、電気的に交互に発振回路及び一方の駆動電極と短絡又は開放とすることができる構成であり、また、前記各スイッチのON/OFFにより左右の自己診断用電極の開放・短絡を切り替えることで前記音叉型振動子の検出振動の位相を変えることができ、右回転、左回転に相当する感度変化、及び静止時出力変化、回路動作異常を判定する自己診断を行うことができる構成であり、また、前記各スイッチの一方をONにし、その際に、角速度センサのオフセット電圧の1/2Vdd付近に第二オフセット調整領域を設け、静止時出力、感度変化、回路動作異常の判定閾値を共通化することができる構成であり、また、前記自己診断用電極の電極寸法は診断信号の大きさにより変更することにより、角速度により得られる感度に影響することなく、電極寸法の変更のみで自己診断信号の振幅の大きさを調整することができる構成であり、また、前記各自己診断用電極で発生する出力変化差を調整することにより、出力差のある検出振動の信号の大きさを監視することで、静止時出力変化、感度変化を診断することができる構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明による自己診断機能を有する角速度センサは、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、ベース部と前記ベース部から二又状に延びる一対のアーム部とを有する音叉型振動子と、前記アーム部に設けられた一対の駆動電極と、前記アーム部に設けられた一対の検出電極と、前記ベース部の表面に設けられた第1、第2自己診断用電極とを有する角速度センサ素子と、前記駆動電極に接続された1個のみの発振回路と、前記各自己診断用電極に前記駆動電極及び発振回路を接続又は非接続とするためのスイッチ手段と、からなり、前記スイッチ手段がオフの時は前記各アーム部が対称的に駆動され、前記スイッチ手段がオンの時は前記各アーム部が非対称的に駆動される。
また、前記スイッチ手段の各スイッチは片側のみ短絡することができ、スイッチ1個のON/OFFにより開放時と短絡時の出力判定により、開放時は静止時出力、短絡時は感度変化、ゲイン変化、回路動作異常を判定する自己診断を行うことができる。
また、前記各自己診断用電極はベース部の左右に1個ずつ設けられると共に、各スイッチを介して、電気的に交互に発振回路及び一方の駆動電極と短絡又は開放とすることができる。
また、前記各スイッチのON/OFFにより左右の自己診断用電極の開放・短絡を切り替えることで前記音叉型振動子の検出振動の位相を変えることができ、右回転、左回転に相当する感度変化、及び静止時出力変化、回路動作異常を判定する自己診断を行うことができる。
また、前記各スイッチの一方をONにし、その際に、角速度センサのオフセット電圧の1/2Vdd付近に第二オフセット調整領域を設け、静止時出力、感度変化、回路動作異常の判定閾値を共通化することができる。
また、前記自己診断用電極の電極寸法は診断信号の大きさにより変更することにより、角速度により得られる感度に影響することなく、電極寸法の変更のみで自己診断信号の振幅の大きさを調整することができる。
また、前記各自己診断用電極で発生する出力変化差を調整することにより、出力差のある検出振動の信号の大きさを監視することで、静止時出力変化、感度変化を診断することができる。
従って、本発明により、音叉型振動子のベース部に自己診断用電極を配置し、この自己診断用電極をSWの開閉により、駆動電極と発振回路に選択的に接続する簡便な方法で、静止時出力変化、感度変化、回路動作異常などの自己診断を有する角速度センサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による自己診断機能を有する角速度センサの音叉型振動子を示す構成図である。
【図2】図1の振動子に電極を形成した状態を示す斜視図である。
【図3】図2の断面Gを示す断面図である。
【図4】図2の断面Hを示す断面図である。
【図5】図2の断面Iを示す断面図である。
【図6】本発明による角速度センサを示す構成図である。
【図7】図2の振動子の駆動インピーダンスを示す説明図である。
【図8】図2の振動子の駆動インピーダンスを示す説明図である。
【図9】図6の変形例を示す構成図である。
【図10】本発明の角速度センサの感度を示す特性図である。
【図11】本発明における自己診断状態を示す特性図である。
【図12】本発明における自己診断状態を示す特性図である。
【図13】本発明における自己診断状態を示す特性図である。
【図14】図10の変形特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、音叉型振動子を発振回路を共用として自己診断を行うことにより小型化した自己診断機能を有する角速度センサを提供することを目的とする。
【実施例】
【0010】
以下、図面と共に本発明による自己診断機能を有する角速度センサの好適な実施の形態について説明する。
まず、図1(a)及び図1(b)を用いて、音叉型振動子1の駆動振動と検出振動について説明する。
図1(a)を参照に、音叉形振動子1の駆動電極(図示せず)に駆動信号を印加することにより左右のアーム部2,3が互いに開閉するような振動が発生する。この振動はX軸に平行な振動である。このような振動を駆動振動という。ここでY軸に対して角速度が印加されると、周知のコリオリ力により図1(b)のように左右のアーム部2,3が前後の振動をする。この振動はZ軸に平行な振動である。このような振動を検出振動という。検出電極20,20aがこの検出振動を検出することによりY軸を中心とした角速度を検知することができる。なお、音叉型振動子1のアーム部2,3の長手方向をY軸、幅方向をX軸、厚み方向をZ軸とする(以下において同じ)。
【0011】
(実施例1)
実施例1は、角速度センサ5に用いる音叉型振動子1に自己診断用電極6,7を設けた例である。
図2は音叉型振動子1のベース部8に自己診断用電極6,7を配置した斜視図であり、図3から図5は各アーム部2,3の表面A、側面C、D、裏面Bにかけて形成され、互いに分離して形成された一対の検出電極20,20aを示し、図6は音叉型振動子1に配置された自己診断用電極6,7が、スイッチ手段40のスイッチSW1,SW2の開閉により駆動電極9及び1個のみの発振回路10と開放、短絡状態となることを示す回路ブロック図である。SW−OFFで各アーム部2,3が平面でみて対称的に両側に開く(図7)ように駆動される通常モード、SW−ONで自己診断モードに切り替えを行う。SW−ON時に短絡状態となった時に、一対の駆動電極9がアンバランスとなり、各アーム部2,3が非対称的に駆動(図8に示す)され、擬似的に検出振動を発生する。その周知のFEM解析結果を図7及び図8に示す。図7はSW−OFFの駆動電極9のインピーダンス応答の解析結果であり、X方向に振動する駆動振動のみの応答となる。他方、図8はSW−ON時の駆動電極9のインピーダンス応答の解析結果であり、X方向に振動する駆動振動の他に、Z方向に振動する検出振動が発生しており、自己診断用電極6,7により、擬似的に検出振動を発生させることができる。すなわち、図8では、各アーム部2,3が平面でみて左右非対称に駆動することで上下方向の動きが発生する。
【0012】
図9、図10は、自己診断用電極6,7による出力変化の実測例を示す。横軸は各アーム部2,3が対称的に駆動される通常モード(SW−OFF)における感度を示し、縦軸は自己診断モードの(SW−ON)における出力変化を通常モードの感度で角速度換算した値である。SW1及びSW2は交互にON−OFFを行う。SW1−ON(SW2−OFF)時は、プラスの出力変化を示し、SW2−ON(SW1−OFF)時は、マイナスの出力変化を示す。SW1,2の切り替えにより、右回転、左回転に相当する出力変化(擬似感度)が発生する。また、通常モードの感度とSW−ON時の出力変化(擬似感度)は、高い相関性がある。以上より、音叉型振動子1に自己診断用電極6,7を配置し、スイッチSW1,SW2の開閉により、自己診断用電極6,7と駆動電極9及び発振回路10と短絡又は開放とすることで、擬似的に検出振動を発生させ、擬似感度を監視することで、感度変化を検出可能となる。
なお、通常モードはSW−OFFとしたが、通常モードをSW1,2−ON状態にし、自己診断モードでSW−1,2を各々OFFにしても、各駆動電極9がアンバランス、すなわち、各アーム部2,3が非対称的に駆動されるために、擬似的に検出振動が発生することはいうまでもない(図示せず)。
【0013】
(実施例2)
実施例2は、上述、自己診断用電極を配置した音叉型振動子とSWの組合せの回路による、自己診断方法を示す。
図11はスイッチSW1,SW2を交互に開閉させることにより自己診断例を示す。図11でVoutは角速度センサのオフセット電圧、V1,V2はSW1,SW2がONの時の出力値、閾値AU,ALはSW1−ON時の判定閾値、閾値BU,BLはSW2−ON時の判定閾値を示す。スイッチSW1をONさせるとセンサ出力がプラス方向に、SW2をONとさせるとマイナス方向に変化する。
それぞれ(V1,V2)の上限値、下限値を設定し、変化時出力が設定値内にはいっていることを確認することで故障判定する。
表1に判定表を示す。SW1,SW2が各々ONの時の判定の組合せにより、静止時出力変化、感度変化、回路動作異常を検出することができる。
【0014】
【表1】
【0015】
(実施例3)
実施例3は、上述、自己診断用電極6,7を配置した音叉型振動子1とSWの組合せの回路による、自己診断方法の例を示す。
図12スイッチSW1(またはSW2)のみ開閉させることによる自己診断例を示す。図12でVoutは角速度センサ5のオフセット電圧、V1はスイッチSW1がONの時の出力値、△Vout1はSW−OFFとSW−ONの出力差、閾値AU,ALはSW1−OFFの時(静止時)の判定閾値、閾値BU,BLはSW1−ON時の判定閾値を示す。
まずVout(SW1がOFFの状態の出力)を測定し、次にスイッチSW1がONしたときの出力(V1)を測定する。
判断は第1例として、Voutの値が設定値内に入っているかどうか第2例としてV1−Vout=△Vout1が設定値内に入っているかどうかを確認することで故障判定を行う。
表2に判定表を示す。SW1−OFF,SW1−ON時の出力差判定の組合せにより、静止時出力変化、感度変化、ゲイン変化、回路動作異常を検出することができる。
【0016】
【表2】
【0017】
(実施例4)
実施例4は、上述、自己診断用電極6,7を配置した音叉型振動子1とスイッチSW1,SW2の組合せの回路による、自己診断方法を示す。
図13はスイッチSW1又はSW2のどちらか一方をONさせ、その際、第二のオフセット調整を実施し、SW−OFF時の出力値及びSW−ON時出力値を確認することによる自己診断例を示す。図13でVoutは角速度センサのオフセット電圧、V1はSW1がONの時の出力値、△Vout1はSW−OFFとSW−ONの出力差を示す。
まず、Vout(SW1−OFFの状態の出力)を測定し、次にSW1又はSW2をONさせ、その際第二のオフセット調整を実施した時の出力(Vout)を測定する。
それぞれのVout(SW−OFF)、Vout(SW−ON)の値がある範囲(閾値共通)に入っているかどうかを確認することで、自己診断を行う。閾値を共通化できる実施の形態となる。
まお、第二オフセット調整とはスイッチSW1又はSW2がONした場合に、角速度センサ5のオフセット電圧、Voutが1/2Vdd近辺になるよう調整する機能である。
【0018】
(実施例5)
実施例5は、角速度センサ5に用いる音叉型振動子1に出力変化の異なる自己診断用電極6,7を設けた例である。
図14は、自己診断用電極6,7で出力差を与えた場合の出力変化の実施例を示す(SW1の例)。横軸は通常モード(SW−OFF)における感度を示し、縦軸は自己診断モードの(SW−ON)における出力変化の通常モードの感度で角速度換算した値である。
出力差のある検出振動の信号の大きさを監視することで、レンジの異なる静止時出力変化、感度変化を診断することができる。出力差は自己診断用電極の寸法で任意に変更可能であり、本実施例は自己診断用電極6の寸法(面積)を自己診断用電極7に対して50%小さくした例である。なお、電極寸法のみならず、電極配置など別の手法で出力差を与えてもよい(図6に基づく)。
尚、前述の角速度センサ5の発振回路10及び各スイッチSW1,SW2は周知のASIC(Application Specific IC)で構成されている。
【0019】
前述の本発明による自己診断機能を有する角速度センサの構成と機能をまとめると、次の通りである。
すなわち、ベース部8と前記ベース部8から二又状に延びる一対のアーム部2,3とを有する音叉型振動子1と、前記アーム部2,3に設けられた一対の駆動電極9と、前記アーム部2,3に設けられた一対の検出電極20,20aと、前記ベース部8の表面Aに設けられた第1、第2自己診断用電極6,7とを有する角速度センサ素子30と、前記駆動電極9に接続された1個のみの発振回路10と、前記各自己診断用電極6,7に前記駆動電極9及び発振回路10を接続(又は非接続と)するためのスイッチ手段40と、前記第2自己診断用電極7に前記駆動電極9及び発振回路10を接続又は非接続とするためのスイッチ手段40と、からなり、前記スイッチ手段40がオフの時は前記各アーム部2,3が平面でみて対称的に駆動され、前記スイッチ手段40がオンの時は前記各アーム部2,3が平面でみて非対称的に駆動される。
また、前記スイッチ手段40は前記各自己診断用電極6,7毎に接続された一対のスイッチSW1,SW2よりなり、前記スイッチSW1,SW2は片側のみ短絡することができ、スイッチ1個のON/OFFにより開放時と短絡時の出力判定により、開放時は静止時出力、短絡時は感度変化、ゲイン変化、回路動作異常を判定する自己診断を行うことができる。
また、前記各自己診断用電極6,7はベース部8の左右に1個ずつ設けられると共に、各スイッチSW1,SW2を介して、電気的に交互に発振回路10及び一方の駆動電極9と短絡又は開放とすることができる。
また、前記各スイッチSW1,SW2のON/OFFにより左右の自己診断用電極6,7の開放・短絡を切り替えることで前記音叉型振動子1の検出振動の位相を変えることができ、右回転、左回転に相当する感度変化、及び静止時出力変化、回路動作異常を判定する自己診断を行うことができる。
また、前記各スイッチSW1,SW2の一方をONにし、その際に、角速度センサ5のオフセット電圧Voutの1/2Vdd付近に第二オフセット調整領域を設け、静止時出力、感度変化、回路動作異常の判定閾値を共通化することができる。
また、前記自己診断用電極6,7の電極寸法は診断信号の大きさにより変更することにより、角速度により得られる感度に影響することなく、電極寸法の変更のみで自己診断信号の振幅の大きさを調整することができる。
また、前記各自己診断用電極6,7で発生する出力変化差を調整することにより、出力差のある検出振動の信号の大きさを監視でき、静止時出力変化、感度変化を診断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明による自己診断機能を有する角速度センサは、音叉型振動子と1個のみの発振回路により構成することにより、構成を簡略化して小型化し、カーナビゲーション、ロボット等の姿勢制御に利用できる。
【符号の説明】
【0021】
1 音叉型振動子
2,3 アーム部
5 角速度センサ
6 第1自己診断用電極
7 第2自己診断用電極
8 ベース部
9 駆動電極
10 発振回路
20,20a 検出電極
30 角速度センサ素子
40 スイッチ手段
A 表面
B 裏面
C 側面
D 側面
SW1,SW2 スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部(8)と前記ベース部(8)から二又状に延びる一対のアーム部(2,3)とを有する音叉型振動子(1)と、前記アーム部(2,3)に設けられた一対の駆動電極(9)と、前記アーム部(2,3)に設けられた一対の検出電極(20,20a)と、前記ベース部(8)の表面(A)に設けられた第1、第2自己診断用電極(6,7)とを有する角速度センサ素子(30)と、
前記駆動電極(9)に接続された1個のみの発振回路(10)と、前記各自己診断用電極(6,7)に前記駆動電極(9)及び発振回路(10)を接続又は非接続とするためのスイッチ手段(40)と、からなり、
前記スイッチ手段(40)がオフの時は前記各アーム部(2,3)が対称的に駆動され、前記スイッチ手段(40)がオンの時は前記各アーム部(2,3)が非対称的に駆動されるように構成したことを特徴とする自己診断機能を有する角速度センサ。
【請求項2】
前記スイッチ手段(40)は前記各自己診断用電極(6,7)毎に接続された一対のスイッチ(SW1,SW2)よりなり、前記スイッチ(SW1,SW2)は片側のみ短絡することができ、スイッチ1個のON/OFFにより開放時と短絡時の出力判定により、開放時は静止時出力、短絡時は感度変化、ゲイン変化、回路動作異常を判定する自己診断を行うことができることを特徴とする請求項1記載の自己診断機能を有する角速度センサ。
【請求項3】
前記各自己診断用電極(6,7)はベース部(8)の左右に1個ずつ設けられると共に、各スイッチ(SW1,SW2)を介して、電気的に交互に発振回路(10)及び一方の駆動電極(9)と短絡又は開放とすることができることを特徴とする請求項1記載の自己診断機能を有する角速度センサ。
【請求項4】
前記各スイッチ(SW1,SW2)のON/OFFにより左右の自己診断用電極(6,7)の開放・短絡を切り替えることで前記音叉型振動子(1)の検出振動の位相を変えることができ、右回転、左回転に相当する感度変化、及び静止時出力変化、回路動作異常を判定する自己診断を行うことができることを特徴とする請求項1記載の自己診断機能を有する角速度センサ。
【請求項5】
前記各スイッチ(SW1,SW2)の一方をONにし、その際に、角速度センサ(5)のオフセット電圧(Vout)の1/2Vdd付近に第二オフセット調整領域を設け、静止時出力、感度変化、回路動作異常の判定閾値を共通化することができることを特徴とする請求項1記載の自己診断機能を有する角速度センサ。
【請求項6】
前記自己診断用電極(6,7)の電極寸法は診断信号の大きさにより変更することにより、角速度により得られる感度に影響することなく、電極寸法の変更のみで自己診断信号の振幅の大きさを調整することができることを特徴とする請求項1記載の自己診断機能を有する角速度センサ。
【請求項7】
前記各自己診断用電極(6,7)で発生する出力変化差を調整することにより、出力差のある検出振動の信号の大きさを監視することで、静止時出力変化、感度変化を診断することができることを特徴とする請求項1記載の自己診断機能を有する角速度センサ。
【請求項1】
ベース部(8)と前記ベース部(8)から二又状に延びる一対のアーム部(2,3)とを有する音叉型振動子(1)と、前記アーム部(2,3)に設けられた一対の駆動電極(9)と、前記アーム部(2,3)に設けられた一対の検出電極(20,20a)と、前記ベース部(8)の表面(A)に設けられた第1、第2自己診断用電極(6,7)とを有する角速度センサ素子(30)と、
前記駆動電極(9)に接続された1個のみの発振回路(10)と、前記各自己診断用電極(6,7)に前記駆動電極(9)及び発振回路(10)を接続又は非接続とするためのスイッチ手段(40)と、からなり、
前記スイッチ手段(40)がオフの時は前記各アーム部(2,3)が対称的に駆動され、前記スイッチ手段(40)がオンの時は前記各アーム部(2,3)が非対称的に駆動されるように構成したことを特徴とする自己診断機能を有する角速度センサ。
【請求項2】
前記スイッチ手段(40)は前記各自己診断用電極(6,7)毎に接続された一対のスイッチ(SW1,SW2)よりなり、前記スイッチ(SW1,SW2)は片側のみ短絡することができ、スイッチ1個のON/OFFにより開放時と短絡時の出力判定により、開放時は静止時出力、短絡時は感度変化、ゲイン変化、回路動作異常を判定する自己診断を行うことができることを特徴とする請求項1記載の自己診断機能を有する角速度センサ。
【請求項3】
前記各自己診断用電極(6,7)はベース部(8)の左右に1個ずつ設けられると共に、各スイッチ(SW1,SW2)を介して、電気的に交互に発振回路(10)及び一方の駆動電極(9)と短絡又は開放とすることができることを特徴とする請求項1記載の自己診断機能を有する角速度センサ。
【請求項4】
前記各スイッチ(SW1,SW2)のON/OFFにより左右の自己診断用電極(6,7)の開放・短絡を切り替えることで前記音叉型振動子(1)の検出振動の位相を変えることができ、右回転、左回転に相当する感度変化、及び静止時出力変化、回路動作異常を判定する自己診断を行うことができることを特徴とする請求項1記載の自己診断機能を有する角速度センサ。
【請求項5】
前記各スイッチ(SW1,SW2)の一方をONにし、その際に、角速度センサ(5)のオフセット電圧(Vout)の1/2Vdd付近に第二オフセット調整領域を設け、静止時出力、感度変化、回路動作異常の判定閾値を共通化することができることを特徴とする請求項1記載の自己診断機能を有する角速度センサ。
【請求項6】
前記自己診断用電極(6,7)の電極寸法は診断信号の大きさにより変更することにより、角速度により得られる感度に影響することなく、電極寸法の変更のみで自己診断信号の振幅の大きさを調整することができることを特徴とする請求項1記載の自己診断機能を有する角速度センサ。
【請求項7】
前記各自己診断用電極(6,7)で発生する出力変化差を調整することにより、出力差のある検出振動の信号の大きさを監視することで、静止時出力変化、感度変化を診断することができることを特徴とする請求項1記載の自己診断機能を有する角速度センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−242101(P2012−242101A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109137(P2011−109137)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】
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