自浄式ターゲットを有する円筒状マグネトロン
円筒状マグネトロンは、高電流レベルおよび高電圧レベルで動作することができ、中央部においてだけでなく端部においても自浄式のターゲット管を有している。ターゲット管の端部をスパッタすることによって、実質的に、端部での凝縮物およびこれにともなうアーク放電の集積が取り除かれ、修理の必要性が少なく信頼性が高いマグネトロンおよびより高い一貫性を備えた被覆物を生成するマグネトロンがもたらされる。低スパッタ率の鍔は、ターンアラウンド領域でターゲット管に取り付けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、スパッタ装置に関し、より具体的には、改良された円筒状マグネトロンに関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタ法は、建築グレイジングや自動車グレイジングへの熱制御被覆物の塗布などの市販の大面積の被覆物の塗布に最も頻繁に使用されるプロセスである。このプロセスでは、被覆される基板を、真空ロックによって互いに分離された、一連のインライン真空チャンバに通す。長年に及んで、これらの塗布装置で使用されるマグネトロンは、平面状の設計から回転円筒状の設計に発展してきた。
【0003】
回転マグネトロンは、いくつかの問題を解決しつつも、他の問題を引き起こしている。これらの問題としては、新しいアーク放電現象が挙げられ、それは、誘電材料または二酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび酸化ジルコニウムなどの絶縁材料のDC反応性スパッタリングまたはAC反応性スパッタリングにおいて特に面倒である。二酸化ケイ素などの絶縁材料は、多層構造、反射防止被覆物および反射防止多層構造、および改良されたアルミニウム反射体などの高品質で精密な光被覆物を形成するのに特に有用であるが、均一で一貫性を備えたスパッタを行うことは特に困難である。これは、一般にスパッタされた絶縁材料の積層または縮合によってマグネトロンの端部にアーク放電が生じることによる。
【0004】
円筒状マグネトロンは、一般に、被覆される基板上にスパッタされる材料を有する回転ターゲット管を備える。ターゲット管内には、イオンを励起させて、管に衝突させ、原子をスパッタするシステムの一部である「レーストラック」形状の磁石があり、それは、順に基板を被覆する。レーストラック形状の磁石は、ターゲット管の両端に「ターンアラウンド」を有する。ターンアラウンドは、磁石アセンブリの中央領域においてよりも、以下の2つの著しく異なる特性を有する。磁界によって影響を受けるターゲット面での(1)比較的より大きな磁界強度、および(2)より大きな単位面積(約3:2)。したがって、ターゲット管のスパッタ材料は、ターンアラウンドの近くでより急速にスパッタされる。これは2つの注目すべき結果を有する。まず、被覆される物品がターンアラウンドの直下または十分近くに位置されている場合、スパッタ率は、そのエリアにおいてより高いので、被覆される物品には、被覆物がより厚く堆積されることとなる。第2に、ターゲット管は、ターンアラウンド領域でより急速に磨耗し、ターンアラウンド領域が薄く磨耗した場合にターゲット管を変更すれば、ターゲット管の中央領域の多くは、無駄になることとなる。
【0005】
さらに、現在まで、レーストラックによって生成された磁界の有効範囲(「スパッタゾーン」)外であるターゲット管の端部に、ターゲット管の一部が常に存在する。スパッタゾーンの範囲外のこの部分は、エンドブロック内には未だ存在せず、「スパッタされない端部」と称する。材料が絶えずスパッタされるので、スパッタゾーンは、自浄式であるが、スパッタされない端部は、自浄式ではない。実際、スパッタゾーンからスパッタされた材料は、基板を被覆することに加えて、スパッタされない端部を含むマグネトロンの反応チャンバ内で他の表面も被覆する。望まれない被覆物は凝縮物と称する。
【0006】
ある誘電体が、スパッタされ、スパッタされない端部を被覆する場合、アーク放電が生じる場合がある。誘電体膜が、スパッタされない端部に集積するので、電荷が急速に増加し、誘電性膜が、膜全体に及んで電荷の集積によって生成された高い電界下で破壊する場合、アークが生成する可能性がある。膜の誘電率が高いほど、アーク放電が生じる傾向がある。
【0007】
アーク放電は、基板の被覆物が非均一なものとなり、アークが生じる場合に被覆されると、いかなる物品も不具合を生じる可能性があるため、費用効果の高い作業には不利益である。例えば、物品は、アークに起因する残骸によって汚染される可能性があり、あるいは放電条件の一時的な混乱によって引き起こされた不正確な膜厚領域を有する場合もある。さらに、操作時間とともに、アークの発生が増加し、結局、システムが洗浄およびメンテナンスのために中断することを必要とするレベルに達する。
【0008】
様々なアプローチが、アーク放電およびこのアーク放電の結果を最小限にするために開発されている。
【0009】
その全体が本願明細書において参照により援用されているキルスらの米国特許第5,108,574号(特許文献1)は、アーク放電を最小限にするためにスパッタされない端部を被覆するためにシールドを利用している。この種の暗部シールドは、ターゲット端部または裏面上への凝縮物の再堆積を防ぐ。この特許の考えは、スパッタターゲットを囲み、スパッタが生じる領域に開口を有する円筒状の囲いを提供することである。本質的に、暗部シールドは、ターゲット端部または裏面で、または近くでの凝縮物の再堆積またはプラズマの点火を防ぐ。
【0010】
陰極暗部とは、ダイオード放電におけるほとんどの電位降下が生じる陰極表面の近くでのプラズマのより暗い領域のことである。暗部シールドは、2つの表面間の領域の放電の発生を防ぐために、陰極から暗部距離未満に配置された、接地された表面である。暗部距離は、ガス中の平均自由行程に比例し、したがって真空レベルである。
【0011】
この特許は、研究開発の目的に使用されたターゲットに適用し、それは、約1フィートの長さおよび3フィートの直径である。遮蔽は、小さな研究装置でうまく行うが、生成被覆装置へのスケールアップは困難であると分かり、より重要なことには、シールドに付着する凝縮物に関連する問題は、取り組まれていない。すなわち、アーク放電および凝縮物は基板上に落ちる。
【0012】
その全体が本願明細書において参照により援用されているハーティッグらの米国特許第5,213,672号(特許文献2)は、大規模マグネトロン上で実行することができる改良されたシールドを利用する。
【0013】
その全体が本願明細書において参照により援用されているハーティッグらの米国特許第5,364,518号(特許文献3)は、ターンアラウンドでのガウス磁界を最小限にするために、レーストラック形状の磁石のターンアラウンドを操作する。これは、ターゲット利用性を改善するが、電子閉じ込めを損う危険があり、それによって潜在的に磁気アレイの有効性を低減する。
【0014】
その全体が本願明細書において参照により援用されているシエックらの米国特許第5,527,439号(特許文献4)は、アーク放電が、端部シールドとターゲットの間に生じ得ないように、電気的に端部シールドを浮かせ、端部シールドの外面に凝縮物が堆積する場合に、アークが引き起こされる可能性がある損傷(部分)を囲む端部シールドの外面に溝を組み入れ、アークを開始し、凝縮物の再堆積に対してより良好な遮蔽を提供する端部シールドで、切り欠き領域を使用する。
【0015】
その全体が本願明細書において参照により援用されているディッキーらの米国特許第5,725,746号(特許文献5)は、ターゲット材料と異なる鍔材料の表面を有する陰極体の各端部上の円筒状領域を利用する。円筒状領域は、約2インチの距離で、スパッタゾーンに典型的に延在する。ターゲット材料がスパッタされるので、鍔材料は、典型的に、より低い割合でスパッタされる。スパッタされた鍔材料は、絶縁特性が低下した膜を形成する。これらの膜は、ターゲットからスパッタされた材料よりもむしろ、スパッタされない陰極端部、暗部遮蔽、および支持構造に堆積する。これらの弱い絶縁膜を介しての漏電は、電荷増加およびアーク放電を減少させる。
【0016】
その全体が本願明細書において参照により援用されているバンダーストラエテンの米国特許第5,853,816号(特許文献6)は、単純で容易なアプローチを含み、ターゲット管の端部に、必要な場合、より多くの材料を置く。これは、プラズマ塗布されたターゲットには費用効果が高く、約90%以上接近する陰極のための高い有用性をもたらす。しかし、機械加工コストおよび材料コストによるほとんどの他のターゲットを使用する場合、高いコストである。さらに、ターゲット端部での正常な領域がより厚くなると、今日の使用においてほとんどの標準の端部シールドは機械的に相容れられず、このため、端部シールドへの修正などの提供がなされなければならない。最後に、材料の厚みは、結局、距離とともに低減する磁界強度の物性によって制限される。材料の厚みが大き過ぎる場合、ターゲット面での磁界は弱過ぎるため、電子閉じ込めは低下し、最終的にはすべてが一度に失われる。
【0017】
前述したアプローチは、すべて、その問題の根本的な原因を解決していない。
【特許文献1】米国特許第5,108,574号
【特許文献2】米国特許第5,213,672号
【特許文献3】米国特許第5,364,518号
【特許文献4】米国特許第5,527,439号
【特許文献5】米国特許第5,725,746号
【特許文献6】米国特許第5,853,816号
【特許文献7】米国特許出願第10/052,732号
【発明の開示】
【0018】
従来のマグネトロンの設計においては、ターゲットの端部を清浄にスパッタすることができないと考えられ、したがって、従来のマグネトロンは、端部でアークの働きに関連した結果を最小限にとどめるように設計されていた。しかし、本発明のマグネトロンは、エンドブロック内に無いターゲット管の全長をスパッタし、これにより、アーク放電が、そうでない場合にターゲット管の端部に生じるであろう凝縮物を実質的に除去する。マグネトロンのエンドブロックは、十分に冷却され、電気的に分離されているので、端部ブロックを破損することなく、非常に高い電圧および電流レベルで、ターゲット管の全長に沿ってスパッタすることができる。堅牢なエンドブロックは、露出したターゲット管をすべてスパッタするのに十分に高い電界強度でエンドブロックを磁界が実際に通るように、エンドブロックに非常に近い磁気アレイの設置に耐えることができる。これは、完全な自浄式ターゲット管をもたらす。
【0019】
さらに、本発明のマグネトロンは、磁気アレイのターンアラウンド領域に位置するターゲット管上に、追加のおよび/またはより低いスパッタ率の材料を使用することにより、高いターゲット稼動率を有する。特に、チタンあるいは同様の低いスパッタ率の材料の鍔が、ターゲットのターンアラウンド領域に位置していてもよい。
【0020】
ステンレス鋼または他の材料の支持管に、支持管に鍔を溶接することを直接必要とすることなく、チタンまたは同様の材料からなる鍔を取り付けてもよい。段部を有するターゲット管は、一方の側に鍔の位置を確立することができ、鍔のいかなる移動も防ぐために、ステンレス鋼のリングを、反対側でターゲット管に溶接していてもよい。ターゲット管を保持するために使用されるクランプは、鍔の周囲に延在し、内方向の力を及ぼして、高温下でターゲット管から鍔が離れることを防ぐことができる。
【0021】
鍔の形状は、スパッタリング中に鍔材料の熱を低減するために適合させてもよい。特に、鍔とターゲット材料との間の接触面を、円錐台表面を形成するために傾斜させる場合には、鍔材料が溶融する危険が低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
米国学会では、一般に、円筒状マグネトロンについて、大きければよい、という考えが成り立っている。マグネトロンは、絶えず、より大きくそしてより強い電源を利用する。今日の典型的な電源の例は、300アンペアを送ることができる120kWのACおよび150kWのDCに関して評価される。典型的な電源の第2の例は、180kWのACで動作し、600アンペアとすることができる。今後、さらに大きな電源が利用可能となる。
【0023】
背景の技術の欄で検討したように、円筒状マグネトロンは、一般に、ターゲット管、およびターゲット管に電力を供給し、ターゲット管を回転させ、ターゲット管に冷却水を供給し、ターゲット管内で固定する磁気アレイの位置を決める1つ以上のエンドブロックを含む。スパッタリングが、磁気アレイの磁界の全長に沿って生じる。磁界は、マグネトロンの陰極および陽極の間で生成された電位とともに、全く破壊的なものとなり得、マグネトロンが、持続する被覆作業が可能である場合、極めて十分に管理されなければならない。
【0024】
これらさらに大きな電源の使用には、より強力な冷却装置および電気的遮蔽が必要である。これらの特徴なしでは、マグネトロンのエンドブロックは、結局機能しなくなる。いくつかの状況で、機能停止は、エンドブロックが溶融し多量の冷却水がガラス被覆作業中に漏れた状態で、急速かつ壊滅的でさえある場合がある。
【0025】
従来の設計では、磁気アレイは、エンドブロックからある距離を置いて配置される。これは、磁気アレイによって生成された磁界が、エンドブロックと「接触」または確実に通らないようにし(いずれの高い電界強度においても)、そのような最悪の故障を防ぐためになされる。磁界の強度は距離とともに減少する。すべての従来の設計において、電界強度が、エンドブロックを破損しないポイントまで低下させるように、磁気アレイを位置決めし、それは、ターゲットの使用可能または露出長全体をスパッタしないように、ターゲット端部で低減されることを意味する。背景技術の欄に記載されているように、これは、ターゲット管のスパッタされない端部をもたらす。本発明では、磁界は、エンドブロック内に存在する冷却および電気的遮蔽性を改良するために、エンドブロックまでずっと延在することができる。
【0026】
このことは、なぜ、今日まで、前述したマグネトロンのすべてにおけるターゲット管の端部の大部分が、スパッタされていないままであったのか、または「自浄式」ではなかったのかを説明する。ターゲット管の中央部がスパッタされる従来の設計の場合には、ターゲット管の端部がスパッタされない一方、管を連続的にスパッタする、または中央領域から任意の凝縮物(スパッタされた材料)を「清浄」するので、中央部を「自浄式」と称するが、端部に堆積する可能性がある凝縮物はスパッタされず、したがって、端部は、「自浄式」とはならない。
【0027】
マグネトロンのエンドブロックについて、以下、図1A〜1Fで簡単に説明する。ターゲット管および磁気アレイについては、図2〜4で詳細に検討する。より詳細には、2002年1月18日出願の「コンプライアント駆動装置を有し、電気的分離および熱的分離が向上した円筒状AC/DCマグネトロン」というリチャード・バレットの米国特許出願第10/052,732号(特許文献7)を参照し、この特許出願は、その全体が本願明細書において参照により援用されている。
【0028】
駆動エンドブロック
図1Aは、駆動エンドブロック200の断面である。駆動エンドブロック200は、駆動エンドキャップ202を介してターゲット管アセンブリ(図示せず)に接続されている。駆動エンドキャップ202は、駆動エンドキャップコア203上に多重ローブ式スプラインを有する。軸方向コンプライアンス、すなわち、軸周りの移動の自由が、まず、多重ローブ式スプラインを有する駆動エンドキャップコア203と絶縁部材206との間の接触面で生じる。絶縁部材206は、遊びをもって設計された制限量でエンドキャップコアと結合して、第1のコンプライアント結合を角度または回転が自由な状態で提供する内部雌多重ローブ式スプライン(図示せず)を有する。絶縁部材206の内径(ID)は、エンドキャップコア203の外径(OD)より大きく、スプラインは、絶縁部材206の雌多重ローブ式スプラインより小さい。したがって、駆動エンドキャップ202は、駆動エンドキャップ202と絶縁部材206との間で、この第1の軸方向のコンプライアント結合で、回転軸の周りを回転することができる。「軸方向のコンプライアント」とは、部品、この場合は、エンドキャップ202が、軸の周りを回転しつつ、軸(±x方向および±z方向)の周りを回転、または移動することができ、軸(±y方向)に沿って移動することができることを意味する。駆動部品は、回転軸でシャフトを有さず、このように、回転軸において移動範囲で制限されていない。
【0029】
水エンドブロック
水エンドブロック300を図1B〜1Fで説明する。図1Bは、エンドブロック全体の断面であり、図1Cは、ターゲット管の一部と水エンドブロック300の斜視図である。
【0030】
水エンドブロック300は、一般に、回転ターゲット管362を通って水を循環させ、スパッタプロセス用の回転ターゲット管362に電力を供給しつつ、回転ターゲット管362を支持する。水は、2重目的の水マニフォールド/電気ブロック330を介して到着する。この真鍮ブロックは、水マニフォールドだけでなく、電気マニフォールドおよびヒートシンクとしての機能も果たす。組立プロセスの間の利便性、および電気部品およびターゲット管の取り替えを含む後のメンテナンスについて、電気供給ラインは、交換可能なセグメントに分けられる。電力は、第1の1組のセグメント(図示せず)によってマニフォールド330にもたらされ、セグメントに接続されてターゲット管に至る。これらのセグメント(図示せず)の結合点は、水マニフォールド/電気ブロック330にある。ワイヤセグメント間の結合点で生成される高熱が、水で冷やされた真鍮ブロック330によって消失するように、これらのセグメントによって運ばれた高電流および高電圧は、水マニフォールドで移動される。次いで、水は、ゴムなどのコンプライアント材料からなる柔軟な水ライン316を流れる。図1Cにおいて、4つの水ラインのすべてを見ることができる。
【0031】
柔軟な水ライン316は、水エンドブロックの第1筺体(WEPH)308に入り、エンドブロックの分離筺体(WEIH)304に接続する。WEIH304は、ターゲット管362の内部に対して静止磁気アレイを支持して位置決めし、電気ブラッシュブロック324を介してターゲット管362に/ターゲット管362から電力を送り、水ライン316を介してターゲット管冷却水の供給流および帰還流のために接触面を提供するなどの多面的機能を遂行する水スピンドル320を組込む。水スピンドル320は、分離ハウジング304によって、第1ハウジング308との直接的な電気的接触から分離されている。スピンドルを囲む強電界およびスピンドルを介して流れる電流が、304ステンレス鋼からなる円筒形状で、大量の誘導熱を生成しないので、水スピンドル320は、304ステンレス鋼からなることが好ましい。簡単に言うと、304ステンレス鋼は、特に、円筒状配置で、誘導加熱の影響に対して大半の場合には影響されないことが分かった。
【0032】
水スピンドル320内に、他のスピンドル、回転防止スピンドル342がある。2重真空シール350は、WEIH304と水スピンドル320との間に位置し、周囲真空環境から高圧水を密閉し、逆もまた同様である。2つのシール間で、水センサは、第1のシールが破られ、ユーザインターフェイスでステータス警報を発生させるか否かを判断する。水センサは、インターシール空洞ポート356に接続され、インターシール空洞ポート356をモニタする。水ブッシング346を通る流れは、水スピンドル320と回転防止スピンドル342との間に位置している。回転防止スピンドル342は、ターゲット管ステーショナリー内で磁気アレイ364を保持し、その間、水スピンドル320が、その回りを回転し、水が、回転防止スピンドル342内およびその周りを流れる。
【0033】
水は、まず、回転防止スピンドル342を通り、次いで、ターゲット管362の全長にわたって磁気アレイを支持する支持管366を通る。支持管366の直径は、ターゲット管より小さく、ターゲット管362内で同心的に(あるいは偏心的に)適合する。水は、支持管366内を進んでエンドブロック200を駆動し、次いで、反対方向に支持管366の外のターゲット管362内に戻り、水エンドブロック300内に戻る。水スピンドル320と回転防止スピンドル342との間の隙間の水エンドブロック300に入る。次いで、貫通ブッシング348を流れ、水ライン316を介して分離筺体304から出る。
【0034】
電力は、ブラッシュブロック324によって水スピンドル320に加えられ、次いで、水エンドブロック300と駆動エンドブロック200との間のターゲット管362に電力を送る。流れは、ターゲット管362に水スピンドル320を介してブラッシュブロック324から移動する。水スピンドル320が、分離筺体304、第1筺体308および水エンドブロック300内で回転することができるように、ブラッシュブロック324は、ベアリングによって両側で側面が守られている。外側(ターゲット管から離れて)に、従来の鋼または他の一般に使用される材料からなる外側ベアリング346がある。ブラッシュブロック324の内側(ターゲット管に)には、ベアリング334がある。このように、流れは、ターゲット管への経路上の内側ベアリング334のそばを通るが、外側ベアリング346のそばは通らない。ベアリング334は、完全なセラミックベアリングである。セラミック材料は、非伝導性であるという長所を有し、たとえ、ベアリング334が、ブラッシュブロック324からターゲット管まで流れ経路で水スピンドル320と接触しても、流れに起因するAC誘導により熱くならないということを意味する。セラミックベアリング334および水シール350に接触する水スピンドル320の領域は、ベアリング性能および水密閉のために最も重大なものである。この水スピンドル320の領域は、耐摩耗性、正確な接地、硬いクロムめっきおよび研磨接触面を有する。この表面は、硬いクロム層を堆積し、次いで、精密にダイヤモンドを堆積してそれを包むことにより生成される。セラミックベアリング334は、ベアリングおよびシールキャリア360によって支持されている。また、キャリア360は、スパッタプロセスのために、真空で保持される周囲環境から高圧水を密閉する役目を果たす2重真空シール338も支持する。
【0035】
図1Dは、水エンドブロック300のより詳細な図を示す。クランプ422は、スピンドル320の周囲に延在して示されている。作業中に、クランプ422は、スピンドル320に接触してターゲット管を保持して、漏れ止めシールを形成する。また、クランプ422は、ターゲット管、または後述するようにターゲット管の一部に対して内圧をかける役目も果たす。クランプ422の周囲にシールド420が延在し、クランプ422の周囲に暗部を提供する。これは、クランプ422上で、スパッタされた材料の再堆積を防ぐ。シールド420は、示されている構造で提供される唯一のシールドであることに注目するべきである。遮蔽は、エンドブロックを越えて延在しない。したがって、エンドブロックの外側のターゲット管の任意の部分が露出され、この配置でスパッタされてもよい。
【0036】
また、図1Dは、ベアリングとシールキャリア360を適所に保持するリテーニングリング399を示す。リテーニングリング399などのリテーニングリングは、一般的に必要な弾力特性を有する炭素鋼などの金属からなる。そのような材料は、一般に、電気的に伝導性である。非伝導性リテーニングリングは、可能であるが、市販の大部分のリテーニングリングは、伝導性金属である。市販の大部分のリテーニングリングは、二重螺旋構造であり、それらを容易に適所に設置することを可能にする。したがって、多くのリテーニングリングが、中央開口部の周囲に連続的で伝導性の経路を形成する。リテーニングリング399などの位置では、交流電流がスピンドル320を通されてターゲット管に電力を供給するので、交流電流はこの開口を通る。スピンドル320を通る交流電流は、リテーニングリング399などのコンダクタを流れるように電流を誘導することができる。高い交流電流では、大きな電流を連続的で伝導性のリテーニングリングで誘導できることが分かり、これにより、リングの大きな熱を発生させることもできる。この熱は、リングまたは周囲部、またはリングおよび周囲部の両方に損傷を与える可能性がある。特に、WEIH304、ベアリング、およびシールキャリア360は、PEEKなどの非導電性プラスチックからなってもよく、リテーニングリング399と接触する点で溶融されてもよいし、変形されてもよい。電流の誘導およびリテーニングリングの生じる熱を防ぐために、リテーニングリングは、連続的なリングを形成しないように形成されてもよい。
【0037】
図1Eは、リテーニングリング399、スピンドル320、キャリアおよびシールベアリング360の分解図を示す。図1Eは、リングが連続的ではないが隙間396を有することを示す。したがって、リテーニングリング399は、360度未満にわたって延在して部分リングを形成する。リテーニングリング399は、下方を向く隙間396で示されているとともに、異なる方向に設置されてもよい。連続的な電流経路がスピンドル320の周囲に形成されないように、リテーニングリングの隙間が方向を合わせられる場合、1つより多いリテーニングリングを使用してもよい。例えば、二重螺旋リングを切断して、リテーニングリング399のような2つの部分リングを形成してもよい。図1Fは、隙間396を有するリテーニングリング399の追加の図を示す。一般的には、直径が6インチのリテーニングリングについて、1インチの隙間は、400アンペアまでの電流での熱による損傷を防ぐ上で十分である。この例が、リテーニングリングに対処するとともに、同じ原理が、高い交流電流を運ぶコンダクタの周囲に延在する他の導電部に適用されてもよい。誘導電流および熱は、隙間または非導電材料の一部を提供することによって防いで、コンダクタの周囲の連続的な電流経路の形成を防ぐことができる。
【0038】
ターゲット管および磁気アレイ
図2Aは、ターゲット管362内の磁気アレイ364を例示する。鍔402は、磁気アレイ364のターンアラウンドを囲み、以下で詳細に説明する。アレイ364によって生成された磁界365は、ターゲット管362の露出長全体に及ぶ。前に説明したように、磁界強度は、距離とともに減少する。したがって、磁界は、理論的に、磁気アレイから無限遠点を広げる間、スパッタを引き起こさせる十分な強さを有する部分だけが、実用的な目的のために例示されている。ターゲット面での磁界強度は、一般的に、120ガウス〜140ガウスである。100ガウス未満では、電子閉じ込めが原因の問題が生じる。これは、アレイ364それ自体が、ターゲット管362よりわずかに短いが、磁界365が、アレイ364の端部を通り過ぎて延在するので、本当である。磁界365は、ターゲット管の露出部まで、およびターゲット管を越えて延在し、端部ブロックが十分に冷却され、したがって、最も近い磁界365からの発熱作用および磁界作用に耐えることができるので可能である。磁界は、ターゲット管の全長にわたって延在するので、ターゲット管およびマグネトロンは自浄式である。従来の全ての設計と異なり、ターゲット管のスパッタされない部分はない。したがって、アーク放電は、本発明で大幅に低減されるか、または取り除かれる。
【0039】
図2Bは、ターゲット管の軸に沿って軸方向にみたターゲット管およびエンドブロックの断面である。水エンドブロック300は、図2Bで示されているが、ターゲットおよびエンドブロックの結合は、両方のエンドブロックで類似する。破線367の左側のいずれもが、エンドブロック内にある。破線367は、エンドブロックの境界を画定し、ターゲット管の露出部と未露出部(エンドブロック内)との間の境界を表す。スピンドル424は、クランプ422を備えた鍔402で、ターゲット管362a、bに接続され、磁気アレイ364が静止している間、これらの部品はすべて、一緒に回転する。磁界365は、エンドブロック内ではなくターゲット管の全長に延在し、ターゲット管の露出部または使用可能部と考えることもできる。また、磁界365は、比較的高い電界強度で、エンドブロック内のある距離を通過または貫通する。したがって、スパッタされないターゲット管の使用可能部または露出部はない。言い換えれば、スパッタゾーンは、ターゲット管の全体の露出長および/または使用可能長を含む。したがって、マグネトロンおよびターゲット管は、完全に自浄式であり、凝縮物およびこの凝縮物に起因するアーク放電は、ターゲット管上のどの時点でも生じないに違いない。これは、これらの現象によって引き起こされた欠陥が生じない被覆をもたらす。図2Bは、ターゲットクランプ422によって生成された暗部および縦一列に動作するフローティングエンドブロックカバー伸長420を示す。この暗部は、エンドブロック内またはエンドブロックの近くでプラズマ点火を防ぐためになされ、ターゲットでスパッタ処理に対して貢献をしない。さらに、視線は、凝縮物が、エンドブロック内部上の不適当な領域に集まることを防ぐ。従来の装置とは対照的に、追加のシールドは、ターゲット管の一部を囲むように延在されないように示されている。したがって、シールドは、この例におけるエンドブロックを越えて延在しない。
【0040】
本願明細書に示されているターゲット管は、固体管ではないが、支持管362aおよび支持管上のスパッタ材料362bを含む。さらに、鍔402は、ターゲット管の一部と考えてもよい。鍔402は、支持管362aに取り付けられてもよく、または支持管362aと一体的に形成されてもよい。ターゲット管のいくつかの実施形態で、スパッタ材料が十分に独立である場合、支持管は、存在しなくてもよい。この場合、鍔402は、スパッタ材料と一体的に形成されてもよく、またはスパッタ材料に取り付けられてもよい。必ずしもそうではないが、鍔402は、ターゲット管のスパッタ材料より低いスパッタ率の材料を含むことが好ましい。
【0041】
磁界が露出したターゲット管の全長に延在する限り、磁界強度および形状は、アレイ配置および永久磁石に使用される材料などの他の変数の関数であり、磁気アレイおよびターゲット管の正確な長さは、変化してもよいことが理解されるべきである。
【0042】
図2Cは、ターゲット管のない、磁気アレイ364および磁界365を示す。図2Dは、部品の径線を通って得られた断面において同じ部品を示す。
【0043】
図3は、鍔402を備えたターゲット管362を示す。鍔402は、ターゲット管362の寿命を伸ばすために、磁気アレイ364(図示せず)のターンアラウンドの周りに位置する。鍔材料は、ターゲット材料より低いスパッタ率を有することが好ましい。鍔材料からスパッタされた材料は、ターゲットからスパッタされた材料と混合される場合に被覆される基板の端部上にだけでなく、エンドブロック上にも堆積される。基板の端部上に、スパッタされたターゲット材料に対するスパッタされた鍔材料の比率をできるだけ低く保持することが望ましい。しかし、鍔材料のスパッタ率は、0であり得ない。そうでない場合、スパッタされたターゲット材料は、結局、支持構造上に堆積し、アーク放電を生じさせる。鍔からのスパッタは、ターゲットからスパッタされた材料が、これらの支持構造に達することを防がない。より正確に言えば、スパッタされたターゲット材料が、スパッタされた鍔材料と混合されることを確実にし、スパッタされたターゲット材料の絶縁特性を崩壊させる。鍔402は、高融点材料を含むことが好ましい。
【0044】
ターゲット管(陰極)上の磁界の強度/密度が、最も高い磁気アレイスパッタゾーンの「ターンアラウンド」を覆うために、スパッタゾーン中に、鍔402の一部が延在する。鍔402の残りの部分は、エンドブロックの内にある。ターゲット材料が、低融点材料である、または鍔材料より低い融点である場合、ターゲット材料の融点に達する前に、より高い電力を陰極体に加えることができる。したがって、陰極体上でそのような鍔を使用して、低融点材料用のより高い堆積速度が達成可能である。
【0045】
鍔402は、クランプの一部が適合する凹部を有する。クランプは、エンドブロックにターゲット管を接続する。特に、クランプは、鍔およびターゲット管にエンドブロックスピンドルを接続する。
【0046】
図4は、ターゲット管362下で、潜在的な被覆領域に堆積している鍔402の材料の量を例示する。鍔材料の量は、使用される材料、およびターゲット管および鍔の形状に依存して変化してもよい。示されている特有のデータは、チタンターゲット管およびステンレス鋼鍔に関する。鍔402は、堆積プロフィールを例示するために、断面において単純な長方形として示されている。しかし、様々な鍔の配置および形状の数は、本発明の範囲内である。
【0047】
10個のサンプルを、ターゲット管下の様々な位置で測定した。磁気アレイ364は、説明のためのスパッタダウン構成で示されている。他の図で、「スパッタアップ」構成で示されている。堆積プロフィールを測定するために、一連のシリコンウェハを、チタンターゲット下3.375mmに位置するガラスキャリアに設置する。5000Åのチタン金属は、アルゴンプラズマ中で、DC Halmar電源を使用して、ウェハ上にスパッタした。10個のサンプルは、EDS(エネルギー分散分光)分析のために考えられ、サンプルは、文字A〜Jによって分類したTi−Fe薄膜が堆積されたシリコンウェハの一部であった。定量EDSで測定されたTi−Fe比率を、様々な位置で示す。サンプルAは、磁気アレイ364のターンアラウンド直下に位置する。サンプルB〜Jは、ターゲット管の中心方向に延びて、2インチ間隔で設置した。
【0048】
図4および以下の表1から分かるように、鉄(Fe)の量がF〜J点から1重量%未満となるまで、ステンレス鋼からの鉄の量は、鍔からの距離が増加するにつれて減少する。
【0049】
【表1】
【0050】
説明のために、基板の位置も、図4に例示されている堆積プロフィールセットアップで示している。負荷の大きさおよび堆積プロフィール間の他の妥協案は、本発明の範囲内であるが、基板410は、最も推奨され基板がF点とG点の間に延在するように位置することが好ましい。基板は、G点を越えて0.5インチ、またはA点(ターンアラウンドの中心)から11.5インチ延在する。したがって、任意の被覆物も、鍔から無視できる量の材料を含む。そのような構成で、本発明によるマグネトロンは、実質的に、磁気アレイのターンアラウンドでターゲットを破壊する心配なしで、ターゲット材料のすべてを堆積することができ、また、無視できる量だけの鍔材料で大きな基板を被覆する。
【0051】
チタンは、ほとんどのターゲット材料と比較して、その低いスパッタ率を得るために鍔を作成するのに適切な材料であることが分かった。しかし、ステンレス鋼への溶接チタンは問題である。したがって、ステンレス鋼ターゲット管にチタン鍔を取り付けることは、特有の問題を示す。しかし、鍔を、高温下でターゲット管に取り付けない場合、鍔は、ターゲット管から分離してもよい。分離が生じる場合、鍔は、支持管との接触を通じて冷却される(水によって直接冷却される)ので、鍔は溶融してもよい。真空環境では、鍔が溶けるのを防ぐための対流冷却は、ほとんど発生しないか、またはない。
【0052】
図5は、図3で示されているものに、ターゲット管(支持管)500および鍔に関しての設計代案を示す。図5は、ターゲット管500に対して固定された位置で捕捉するTi鍔502を示す。特に、ターゲット管500の軸方向に沿った鍔502の位置は、一方の側のターゲット管500の外面の段部504、および反対側のキャプチャリング506によって確立される。段部504は、隣接領域でよりも鍔領域で小さな直径のターゲット管500によって形成されている。したがって、鍔500は、鍔領域上にぴったりと適合するが、ターゲット管の隣接部上には適合しない。キャプチャリング506は、この方向に鍔502の移動を防ぐために、鍔502の直外に位置する。ターゲット管500に溶接されるように、キャプチャリング506は、ステンレスからなってもよい。ターゲット管500、鍔502およびキャプチャリング506は、図5から分かるように、同じ軸を共有する。したがって、チタン鍔は、チタン−ステンレス鋼溶接を必要とすることなく、ステンレス鋼管に取り付けられてもよい。
【0053】
図6Aは、鍔502がターゲット管500に適合し、キャプチャリング506が鍔502を適所に固定した状態の図5のターゲット管500および鍔502の概略の説明(目盛はない)を示す。鍔502は、ターゲット管500の軸方向に沿って内側に向く円錐状表面510を有する円錐台形を有する。図6Bは、鍔502、キャプチャリング506、およびターゲット管500の一部横断面図を示す。この図は、ターゲットの組立てにおける初期段階にある。この図では、ターゲット材料は示されていない。一旦、鍔502およびターゲット管500を組み立て、キャプチャリング506を適所に溶接したならば、ターゲット材料を、ターゲット管500に塗布する。
【0054】
図7Aおよび7Bは、ターゲット材料712を塗布した後のターゲット管500を示す。ターゲット材料712は、この例において、半径方向に鍔502を越えて延在する。これは必要ではない。ターゲット材料712は、必要に応じて、鍔502以下の厚みに形成してもよい。ターゲット材料712は、鍔502の一部上に延在して示されている。鍔502の優位性の1つは、非常に正確に、ターゲット材料712を塗布する必要がないということである。ターゲット材料712の境界は、鍔502のいかなる場所にあってもよい。ターゲット材料712の厚みが、鍔502の厚み未満である場合、ターゲット材料712の境界は、円錐状表面510(断面で傾斜面)上に生じる。そして、ターゲット材料712の厚みが、鍔502より大きい場合、ターゲット材料712は、円錐状表面510を越えて延在してもよい。
【0055】
図8Aおよび8Bは、ターゲット材料712が円錐状表面510まで延在する状況を示す。これは、鍔502未満の厚みにターゲット材料712を堆積する状況である。まず、ターゲット材料712を鍔502より大きな厚さに堆積し、次いで、ターゲット材料712の浸食によって、ターゲット材料712の厚みを鍔502未満まで低減する場合に、この状況は起こる。この図から分かるように、ターゲット材料712の浸食は、鍔502を設置する場合、磁気レーストラックのターンアラウンドが生じるので、平坦である。ターゲットをその領域で消耗するので、チタンは露出されるようになるが、その基本スパッタ率が非常に低いので、チタンの消耗は、ターゲット材料712よりはるかに小さい。したがって、従来の装置で時折生じる溝はない。
【0056】
図9Aは、高い電力で、鍔によっては生じる可能性がある問題を示す。特に、約100キロワット(300アンペア)の電力では、鍔は、ターンアラウンドが磁界に発生する場所に鍔が位置する結果、生成熱のために溶融してもよい。ターゲット管に供給される冷却水にもかかわらず、高い電力では、チタン鍔は、変形され、溶融されてもよい。
【0057】
図9Bは、図5で示されているタイプの鍔502を示す。この鍔は、ターゲット材料712に接触する円錐台表面510を有する。ターゲット面に沿ってレーストラック面に対して傾斜した表面を有する鍔は、レーストラックに垂直な表面を示す鍔ほど熱くならないことが分かった。これは、ターゲットが浸食すると、ターゲットの中央部は、チタン鍔より早く磨耗するからである。最終的には、電子によって見られるように、鍔が、垂直表面を示す場合、電子の滑らかな流れを妨害するチタン壁が形成される。この流れに対する抵抗は、鍔/ターゲット接触面で、結局、材料を溶融する大量の熱の生成をもたらす。電子に示された鍔の表面を傾斜させる場合、この結果は低減される。したがって、鍔の形状は、マグネトロンが、そうでない場合には可能でない電力レベルで動作することを可能にする。
【0058】
図10は、ターゲット管500上の鍔502の他の図を示す。図10は、鍔502上に延在するクランプ422を示す。KF−フランジクランプなどの標準クランプは、この位置で使用してもよい。クランプ422を、スピンドル320に対してターゲット管500を密閉するために使用する。また、クランプ422は、鍔502上で内方向の力を及ぼす役目も果たす。一部分が拡大し曲がる傾向がある場合、この内方向の力は、高温下でさえ、ターゲット管500に接触して鍔502を保持する。したがって、クランプ422は、スピンドル320に対してターゲットを密閉し、鍔502およびターゲット管500の分離を防ぐ、2つの機能に役立つ。
【0059】
本発明は、従来の設計に対して極めて多くの優位性を有するマグネトロンをもたらす。ユーザは、アーク放電の環境的影響がなく、より大きな基板を確実に、かつ均一に覆うことができ、そうすることにより、ユーザにとって、必要なターゲットはより少なくなる。これは、ターゲット管自体のコストをセーブするだけでなく、管を変更する、それ以外に、アーク放電の問題によるマグネトロンに対応する場合、コストのかかる中断時間を最小限にする。
【0060】
本発明の特有の実施形態およびそれら優位性を示し、説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義されているように、発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、種々の変化、置換および変更を行うことができることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1A】駆動エンドブロック200の断面である。
【図1B】水エンドブロック300の断面である。
【図1C】ターゲット管の一部と水エンドブロック300の斜視図である。
【図1D】水エンドブロック300のより詳細な図を示す。
【図1E】リテーニングリング399を含む水エンドブロック300の部品の分解図を示す。
【図1F】リテーニングリング399の他の図を示す。
【図2A】ターゲット管の斜視図である。
【図2B】ターゲット管の主軸に沿ったターゲット管の断面である。
【図2C】磁気アレイの斜視図である。
【図2D】径線を通って得られたターゲット管および磁気アレイの断面である。
【図3】エンドブロックへの固定を示すターゲット管の断面である。
【図4】ターゲット管の全長に沿って堆積された鍔材料の量を説明する断面である。
【図5】図3で示されているターゲット管にエンドブロックを別の方法で固定したターゲット管の断面を示す。
【図6A】ターゲット材料のない鍔およびターゲット管を示す。
【図6B】図6Aの鍔およびターゲット管の一部を断面で示す。
【図7A】図6Aの鍔およびターゲット管に配置されたターゲット材料を示す。
【図7B】図7Aのターゲット材料、鍔、およびターゲット管を断面で示す。
【図8A】図6Aの鍔のレベルより下のターゲット材料を示す。
【図8B】図8Aのターゲット材料、鍔、およびターゲット管を断面で示す。
【図9A】鍔の軸に垂直で、鍔の溶融を示すターゲット材料との接触面を有する鍔を示す。
【図9B】鍔の軸の周りで円錐形であり、鍔を溶融することなくターゲットの使用を示すターゲット材料との接触面を有する鍔を示す。
【図10】鍔およびキャプチャリングの周囲に延在するクランプを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、スパッタ装置に関し、より具体的には、改良された円筒状マグネトロンに関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタ法は、建築グレイジングや自動車グレイジングへの熱制御被覆物の塗布などの市販の大面積の被覆物の塗布に最も頻繁に使用されるプロセスである。このプロセスでは、被覆される基板を、真空ロックによって互いに分離された、一連のインライン真空チャンバに通す。長年に及んで、これらの塗布装置で使用されるマグネトロンは、平面状の設計から回転円筒状の設計に発展してきた。
【0003】
回転マグネトロンは、いくつかの問題を解決しつつも、他の問題を引き起こしている。これらの問題としては、新しいアーク放電現象が挙げられ、それは、誘電材料または二酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび酸化ジルコニウムなどの絶縁材料のDC反応性スパッタリングまたはAC反応性スパッタリングにおいて特に面倒である。二酸化ケイ素などの絶縁材料は、多層構造、反射防止被覆物および反射防止多層構造、および改良されたアルミニウム反射体などの高品質で精密な光被覆物を形成するのに特に有用であるが、均一で一貫性を備えたスパッタを行うことは特に困難である。これは、一般にスパッタされた絶縁材料の積層または縮合によってマグネトロンの端部にアーク放電が生じることによる。
【0004】
円筒状マグネトロンは、一般に、被覆される基板上にスパッタされる材料を有する回転ターゲット管を備える。ターゲット管内には、イオンを励起させて、管に衝突させ、原子をスパッタするシステムの一部である「レーストラック」形状の磁石があり、それは、順に基板を被覆する。レーストラック形状の磁石は、ターゲット管の両端に「ターンアラウンド」を有する。ターンアラウンドは、磁石アセンブリの中央領域においてよりも、以下の2つの著しく異なる特性を有する。磁界によって影響を受けるターゲット面での(1)比較的より大きな磁界強度、および(2)より大きな単位面積(約3:2)。したがって、ターゲット管のスパッタ材料は、ターンアラウンドの近くでより急速にスパッタされる。これは2つの注目すべき結果を有する。まず、被覆される物品がターンアラウンドの直下または十分近くに位置されている場合、スパッタ率は、そのエリアにおいてより高いので、被覆される物品には、被覆物がより厚く堆積されることとなる。第2に、ターゲット管は、ターンアラウンド領域でより急速に磨耗し、ターンアラウンド領域が薄く磨耗した場合にターゲット管を変更すれば、ターゲット管の中央領域の多くは、無駄になることとなる。
【0005】
さらに、現在まで、レーストラックによって生成された磁界の有効範囲(「スパッタゾーン」)外であるターゲット管の端部に、ターゲット管の一部が常に存在する。スパッタゾーンの範囲外のこの部分は、エンドブロック内には未だ存在せず、「スパッタされない端部」と称する。材料が絶えずスパッタされるので、スパッタゾーンは、自浄式であるが、スパッタされない端部は、自浄式ではない。実際、スパッタゾーンからスパッタされた材料は、基板を被覆することに加えて、スパッタされない端部を含むマグネトロンの反応チャンバ内で他の表面も被覆する。望まれない被覆物は凝縮物と称する。
【0006】
ある誘電体が、スパッタされ、スパッタされない端部を被覆する場合、アーク放電が生じる場合がある。誘電体膜が、スパッタされない端部に集積するので、電荷が急速に増加し、誘電性膜が、膜全体に及んで電荷の集積によって生成された高い電界下で破壊する場合、アークが生成する可能性がある。膜の誘電率が高いほど、アーク放電が生じる傾向がある。
【0007】
アーク放電は、基板の被覆物が非均一なものとなり、アークが生じる場合に被覆されると、いかなる物品も不具合を生じる可能性があるため、費用効果の高い作業には不利益である。例えば、物品は、アークに起因する残骸によって汚染される可能性があり、あるいは放電条件の一時的な混乱によって引き起こされた不正確な膜厚領域を有する場合もある。さらに、操作時間とともに、アークの発生が増加し、結局、システムが洗浄およびメンテナンスのために中断することを必要とするレベルに達する。
【0008】
様々なアプローチが、アーク放電およびこのアーク放電の結果を最小限にするために開発されている。
【0009】
その全体が本願明細書において参照により援用されているキルスらの米国特許第5,108,574号(特許文献1)は、アーク放電を最小限にするためにスパッタされない端部を被覆するためにシールドを利用している。この種の暗部シールドは、ターゲット端部または裏面上への凝縮物の再堆積を防ぐ。この特許の考えは、スパッタターゲットを囲み、スパッタが生じる領域に開口を有する円筒状の囲いを提供することである。本質的に、暗部シールドは、ターゲット端部または裏面で、または近くでの凝縮物の再堆積またはプラズマの点火を防ぐ。
【0010】
陰極暗部とは、ダイオード放電におけるほとんどの電位降下が生じる陰極表面の近くでのプラズマのより暗い領域のことである。暗部シールドは、2つの表面間の領域の放電の発生を防ぐために、陰極から暗部距離未満に配置された、接地された表面である。暗部距離は、ガス中の平均自由行程に比例し、したがって真空レベルである。
【0011】
この特許は、研究開発の目的に使用されたターゲットに適用し、それは、約1フィートの長さおよび3フィートの直径である。遮蔽は、小さな研究装置でうまく行うが、生成被覆装置へのスケールアップは困難であると分かり、より重要なことには、シールドに付着する凝縮物に関連する問題は、取り組まれていない。すなわち、アーク放電および凝縮物は基板上に落ちる。
【0012】
その全体が本願明細書において参照により援用されているハーティッグらの米国特許第5,213,672号(特許文献2)は、大規模マグネトロン上で実行することができる改良されたシールドを利用する。
【0013】
その全体が本願明細書において参照により援用されているハーティッグらの米国特許第5,364,518号(特許文献3)は、ターンアラウンドでのガウス磁界を最小限にするために、レーストラック形状の磁石のターンアラウンドを操作する。これは、ターゲット利用性を改善するが、電子閉じ込めを損う危険があり、それによって潜在的に磁気アレイの有効性を低減する。
【0014】
その全体が本願明細書において参照により援用されているシエックらの米国特許第5,527,439号(特許文献4)は、アーク放電が、端部シールドとターゲットの間に生じ得ないように、電気的に端部シールドを浮かせ、端部シールドの外面に凝縮物が堆積する場合に、アークが引き起こされる可能性がある損傷(部分)を囲む端部シールドの外面に溝を組み入れ、アークを開始し、凝縮物の再堆積に対してより良好な遮蔽を提供する端部シールドで、切り欠き領域を使用する。
【0015】
その全体が本願明細書において参照により援用されているディッキーらの米国特許第5,725,746号(特許文献5)は、ターゲット材料と異なる鍔材料の表面を有する陰極体の各端部上の円筒状領域を利用する。円筒状領域は、約2インチの距離で、スパッタゾーンに典型的に延在する。ターゲット材料がスパッタされるので、鍔材料は、典型的に、より低い割合でスパッタされる。スパッタされた鍔材料は、絶縁特性が低下した膜を形成する。これらの膜は、ターゲットからスパッタされた材料よりもむしろ、スパッタされない陰極端部、暗部遮蔽、および支持構造に堆積する。これらの弱い絶縁膜を介しての漏電は、電荷増加およびアーク放電を減少させる。
【0016】
その全体が本願明細書において参照により援用されているバンダーストラエテンの米国特許第5,853,816号(特許文献6)は、単純で容易なアプローチを含み、ターゲット管の端部に、必要な場合、より多くの材料を置く。これは、プラズマ塗布されたターゲットには費用効果が高く、約90%以上接近する陰極のための高い有用性をもたらす。しかし、機械加工コストおよび材料コストによるほとんどの他のターゲットを使用する場合、高いコストである。さらに、ターゲット端部での正常な領域がより厚くなると、今日の使用においてほとんどの標準の端部シールドは機械的に相容れられず、このため、端部シールドへの修正などの提供がなされなければならない。最後に、材料の厚みは、結局、距離とともに低減する磁界強度の物性によって制限される。材料の厚みが大き過ぎる場合、ターゲット面での磁界は弱過ぎるため、電子閉じ込めは低下し、最終的にはすべてが一度に失われる。
【0017】
前述したアプローチは、すべて、その問題の根本的な原因を解決していない。
【特許文献1】米国特許第5,108,574号
【特許文献2】米国特許第5,213,672号
【特許文献3】米国特許第5,364,518号
【特許文献4】米国特許第5,527,439号
【特許文献5】米国特許第5,725,746号
【特許文献6】米国特許第5,853,816号
【特許文献7】米国特許出願第10/052,732号
【発明の開示】
【0018】
従来のマグネトロンの設計においては、ターゲットの端部を清浄にスパッタすることができないと考えられ、したがって、従来のマグネトロンは、端部でアークの働きに関連した結果を最小限にとどめるように設計されていた。しかし、本発明のマグネトロンは、エンドブロック内に無いターゲット管の全長をスパッタし、これにより、アーク放電が、そうでない場合にターゲット管の端部に生じるであろう凝縮物を実質的に除去する。マグネトロンのエンドブロックは、十分に冷却され、電気的に分離されているので、端部ブロックを破損することなく、非常に高い電圧および電流レベルで、ターゲット管の全長に沿ってスパッタすることができる。堅牢なエンドブロックは、露出したターゲット管をすべてスパッタするのに十分に高い電界強度でエンドブロックを磁界が実際に通るように、エンドブロックに非常に近い磁気アレイの設置に耐えることができる。これは、完全な自浄式ターゲット管をもたらす。
【0019】
さらに、本発明のマグネトロンは、磁気アレイのターンアラウンド領域に位置するターゲット管上に、追加のおよび/またはより低いスパッタ率の材料を使用することにより、高いターゲット稼動率を有する。特に、チタンあるいは同様の低いスパッタ率の材料の鍔が、ターゲットのターンアラウンド領域に位置していてもよい。
【0020】
ステンレス鋼または他の材料の支持管に、支持管に鍔を溶接することを直接必要とすることなく、チタンまたは同様の材料からなる鍔を取り付けてもよい。段部を有するターゲット管は、一方の側に鍔の位置を確立することができ、鍔のいかなる移動も防ぐために、ステンレス鋼のリングを、反対側でターゲット管に溶接していてもよい。ターゲット管を保持するために使用されるクランプは、鍔の周囲に延在し、内方向の力を及ぼして、高温下でターゲット管から鍔が離れることを防ぐことができる。
【0021】
鍔の形状は、スパッタリング中に鍔材料の熱を低減するために適合させてもよい。特に、鍔とターゲット材料との間の接触面を、円錐台表面を形成するために傾斜させる場合には、鍔材料が溶融する危険が低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
米国学会では、一般に、円筒状マグネトロンについて、大きければよい、という考えが成り立っている。マグネトロンは、絶えず、より大きくそしてより強い電源を利用する。今日の典型的な電源の例は、300アンペアを送ることができる120kWのACおよび150kWのDCに関して評価される。典型的な電源の第2の例は、180kWのACで動作し、600アンペアとすることができる。今後、さらに大きな電源が利用可能となる。
【0023】
背景の技術の欄で検討したように、円筒状マグネトロンは、一般に、ターゲット管、およびターゲット管に電力を供給し、ターゲット管を回転させ、ターゲット管に冷却水を供給し、ターゲット管内で固定する磁気アレイの位置を決める1つ以上のエンドブロックを含む。スパッタリングが、磁気アレイの磁界の全長に沿って生じる。磁界は、マグネトロンの陰極および陽極の間で生成された電位とともに、全く破壊的なものとなり得、マグネトロンが、持続する被覆作業が可能である場合、極めて十分に管理されなければならない。
【0024】
これらさらに大きな電源の使用には、より強力な冷却装置および電気的遮蔽が必要である。これらの特徴なしでは、マグネトロンのエンドブロックは、結局機能しなくなる。いくつかの状況で、機能停止は、エンドブロックが溶融し多量の冷却水がガラス被覆作業中に漏れた状態で、急速かつ壊滅的でさえある場合がある。
【0025】
従来の設計では、磁気アレイは、エンドブロックからある距離を置いて配置される。これは、磁気アレイによって生成された磁界が、エンドブロックと「接触」または確実に通らないようにし(いずれの高い電界強度においても)、そのような最悪の故障を防ぐためになされる。磁界の強度は距離とともに減少する。すべての従来の設計において、電界強度が、エンドブロックを破損しないポイントまで低下させるように、磁気アレイを位置決めし、それは、ターゲットの使用可能または露出長全体をスパッタしないように、ターゲット端部で低減されることを意味する。背景技術の欄に記載されているように、これは、ターゲット管のスパッタされない端部をもたらす。本発明では、磁界は、エンドブロック内に存在する冷却および電気的遮蔽性を改良するために、エンドブロックまでずっと延在することができる。
【0026】
このことは、なぜ、今日まで、前述したマグネトロンのすべてにおけるターゲット管の端部の大部分が、スパッタされていないままであったのか、または「自浄式」ではなかったのかを説明する。ターゲット管の中央部がスパッタされる従来の設計の場合には、ターゲット管の端部がスパッタされない一方、管を連続的にスパッタする、または中央領域から任意の凝縮物(スパッタされた材料)を「清浄」するので、中央部を「自浄式」と称するが、端部に堆積する可能性がある凝縮物はスパッタされず、したがって、端部は、「自浄式」とはならない。
【0027】
マグネトロンのエンドブロックについて、以下、図1A〜1Fで簡単に説明する。ターゲット管および磁気アレイについては、図2〜4で詳細に検討する。より詳細には、2002年1月18日出願の「コンプライアント駆動装置を有し、電気的分離および熱的分離が向上した円筒状AC/DCマグネトロン」というリチャード・バレットの米国特許出願第10/052,732号(特許文献7)を参照し、この特許出願は、その全体が本願明細書において参照により援用されている。
【0028】
駆動エンドブロック
図1Aは、駆動エンドブロック200の断面である。駆動エンドブロック200は、駆動エンドキャップ202を介してターゲット管アセンブリ(図示せず)に接続されている。駆動エンドキャップ202は、駆動エンドキャップコア203上に多重ローブ式スプラインを有する。軸方向コンプライアンス、すなわち、軸周りの移動の自由が、まず、多重ローブ式スプラインを有する駆動エンドキャップコア203と絶縁部材206との間の接触面で生じる。絶縁部材206は、遊びをもって設計された制限量でエンドキャップコアと結合して、第1のコンプライアント結合を角度または回転が自由な状態で提供する内部雌多重ローブ式スプライン(図示せず)を有する。絶縁部材206の内径(ID)は、エンドキャップコア203の外径(OD)より大きく、スプラインは、絶縁部材206の雌多重ローブ式スプラインより小さい。したがって、駆動エンドキャップ202は、駆動エンドキャップ202と絶縁部材206との間で、この第1の軸方向のコンプライアント結合で、回転軸の周りを回転することができる。「軸方向のコンプライアント」とは、部品、この場合は、エンドキャップ202が、軸の周りを回転しつつ、軸(±x方向および±z方向)の周りを回転、または移動することができ、軸(±y方向)に沿って移動することができることを意味する。駆動部品は、回転軸でシャフトを有さず、このように、回転軸において移動範囲で制限されていない。
【0029】
水エンドブロック
水エンドブロック300を図1B〜1Fで説明する。図1Bは、エンドブロック全体の断面であり、図1Cは、ターゲット管の一部と水エンドブロック300の斜視図である。
【0030】
水エンドブロック300は、一般に、回転ターゲット管362を通って水を循環させ、スパッタプロセス用の回転ターゲット管362に電力を供給しつつ、回転ターゲット管362を支持する。水は、2重目的の水マニフォールド/電気ブロック330を介して到着する。この真鍮ブロックは、水マニフォールドだけでなく、電気マニフォールドおよびヒートシンクとしての機能も果たす。組立プロセスの間の利便性、および電気部品およびターゲット管の取り替えを含む後のメンテナンスについて、電気供給ラインは、交換可能なセグメントに分けられる。電力は、第1の1組のセグメント(図示せず)によってマニフォールド330にもたらされ、セグメントに接続されてターゲット管に至る。これらのセグメント(図示せず)の結合点は、水マニフォールド/電気ブロック330にある。ワイヤセグメント間の結合点で生成される高熱が、水で冷やされた真鍮ブロック330によって消失するように、これらのセグメントによって運ばれた高電流および高電圧は、水マニフォールドで移動される。次いで、水は、ゴムなどのコンプライアント材料からなる柔軟な水ライン316を流れる。図1Cにおいて、4つの水ラインのすべてを見ることができる。
【0031】
柔軟な水ライン316は、水エンドブロックの第1筺体(WEPH)308に入り、エンドブロックの分離筺体(WEIH)304に接続する。WEIH304は、ターゲット管362の内部に対して静止磁気アレイを支持して位置決めし、電気ブラッシュブロック324を介してターゲット管362に/ターゲット管362から電力を送り、水ライン316を介してターゲット管冷却水の供給流および帰還流のために接触面を提供するなどの多面的機能を遂行する水スピンドル320を組込む。水スピンドル320は、分離ハウジング304によって、第1ハウジング308との直接的な電気的接触から分離されている。スピンドルを囲む強電界およびスピンドルを介して流れる電流が、304ステンレス鋼からなる円筒形状で、大量の誘導熱を生成しないので、水スピンドル320は、304ステンレス鋼からなることが好ましい。簡単に言うと、304ステンレス鋼は、特に、円筒状配置で、誘導加熱の影響に対して大半の場合には影響されないことが分かった。
【0032】
水スピンドル320内に、他のスピンドル、回転防止スピンドル342がある。2重真空シール350は、WEIH304と水スピンドル320との間に位置し、周囲真空環境から高圧水を密閉し、逆もまた同様である。2つのシール間で、水センサは、第1のシールが破られ、ユーザインターフェイスでステータス警報を発生させるか否かを判断する。水センサは、インターシール空洞ポート356に接続され、インターシール空洞ポート356をモニタする。水ブッシング346を通る流れは、水スピンドル320と回転防止スピンドル342との間に位置している。回転防止スピンドル342は、ターゲット管ステーショナリー内で磁気アレイ364を保持し、その間、水スピンドル320が、その回りを回転し、水が、回転防止スピンドル342内およびその周りを流れる。
【0033】
水は、まず、回転防止スピンドル342を通り、次いで、ターゲット管362の全長にわたって磁気アレイを支持する支持管366を通る。支持管366の直径は、ターゲット管より小さく、ターゲット管362内で同心的に(あるいは偏心的に)適合する。水は、支持管366内を進んでエンドブロック200を駆動し、次いで、反対方向に支持管366の外のターゲット管362内に戻り、水エンドブロック300内に戻る。水スピンドル320と回転防止スピンドル342との間の隙間の水エンドブロック300に入る。次いで、貫通ブッシング348を流れ、水ライン316を介して分離筺体304から出る。
【0034】
電力は、ブラッシュブロック324によって水スピンドル320に加えられ、次いで、水エンドブロック300と駆動エンドブロック200との間のターゲット管362に電力を送る。流れは、ターゲット管362に水スピンドル320を介してブラッシュブロック324から移動する。水スピンドル320が、分離筺体304、第1筺体308および水エンドブロック300内で回転することができるように、ブラッシュブロック324は、ベアリングによって両側で側面が守られている。外側(ターゲット管から離れて)に、従来の鋼または他の一般に使用される材料からなる外側ベアリング346がある。ブラッシュブロック324の内側(ターゲット管に)には、ベアリング334がある。このように、流れは、ターゲット管への経路上の内側ベアリング334のそばを通るが、外側ベアリング346のそばは通らない。ベアリング334は、完全なセラミックベアリングである。セラミック材料は、非伝導性であるという長所を有し、たとえ、ベアリング334が、ブラッシュブロック324からターゲット管まで流れ経路で水スピンドル320と接触しても、流れに起因するAC誘導により熱くならないということを意味する。セラミックベアリング334および水シール350に接触する水スピンドル320の領域は、ベアリング性能および水密閉のために最も重大なものである。この水スピンドル320の領域は、耐摩耗性、正確な接地、硬いクロムめっきおよび研磨接触面を有する。この表面は、硬いクロム層を堆積し、次いで、精密にダイヤモンドを堆積してそれを包むことにより生成される。セラミックベアリング334は、ベアリングおよびシールキャリア360によって支持されている。また、キャリア360は、スパッタプロセスのために、真空で保持される周囲環境から高圧水を密閉する役目を果たす2重真空シール338も支持する。
【0035】
図1Dは、水エンドブロック300のより詳細な図を示す。クランプ422は、スピンドル320の周囲に延在して示されている。作業中に、クランプ422は、スピンドル320に接触してターゲット管を保持して、漏れ止めシールを形成する。また、クランプ422は、ターゲット管、または後述するようにターゲット管の一部に対して内圧をかける役目も果たす。クランプ422の周囲にシールド420が延在し、クランプ422の周囲に暗部を提供する。これは、クランプ422上で、スパッタされた材料の再堆積を防ぐ。シールド420は、示されている構造で提供される唯一のシールドであることに注目するべきである。遮蔽は、エンドブロックを越えて延在しない。したがって、エンドブロックの外側のターゲット管の任意の部分が露出され、この配置でスパッタされてもよい。
【0036】
また、図1Dは、ベアリングとシールキャリア360を適所に保持するリテーニングリング399を示す。リテーニングリング399などのリテーニングリングは、一般的に必要な弾力特性を有する炭素鋼などの金属からなる。そのような材料は、一般に、電気的に伝導性である。非伝導性リテーニングリングは、可能であるが、市販の大部分のリテーニングリングは、伝導性金属である。市販の大部分のリテーニングリングは、二重螺旋構造であり、それらを容易に適所に設置することを可能にする。したがって、多くのリテーニングリングが、中央開口部の周囲に連続的で伝導性の経路を形成する。リテーニングリング399などの位置では、交流電流がスピンドル320を通されてターゲット管に電力を供給するので、交流電流はこの開口を通る。スピンドル320を通る交流電流は、リテーニングリング399などのコンダクタを流れるように電流を誘導することができる。高い交流電流では、大きな電流を連続的で伝導性のリテーニングリングで誘導できることが分かり、これにより、リングの大きな熱を発生させることもできる。この熱は、リングまたは周囲部、またはリングおよび周囲部の両方に損傷を与える可能性がある。特に、WEIH304、ベアリング、およびシールキャリア360は、PEEKなどの非導電性プラスチックからなってもよく、リテーニングリング399と接触する点で溶融されてもよいし、変形されてもよい。電流の誘導およびリテーニングリングの生じる熱を防ぐために、リテーニングリングは、連続的なリングを形成しないように形成されてもよい。
【0037】
図1Eは、リテーニングリング399、スピンドル320、キャリアおよびシールベアリング360の分解図を示す。図1Eは、リングが連続的ではないが隙間396を有することを示す。したがって、リテーニングリング399は、360度未満にわたって延在して部分リングを形成する。リテーニングリング399は、下方を向く隙間396で示されているとともに、異なる方向に設置されてもよい。連続的な電流経路がスピンドル320の周囲に形成されないように、リテーニングリングの隙間が方向を合わせられる場合、1つより多いリテーニングリングを使用してもよい。例えば、二重螺旋リングを切断して、リテーニングリング399のような2つの部分リングを形成してもよい。図1Fは、隙間396を有するリテーニングリング399の追加の図を示す。一般的には、直径が6インチのリテーニングリングについて、1インチの隙間は、400アンペアまでの電流での熱による損傷を防ぐ上で十分である。この例が、リテーニングリングに対処するとともに、同じ原理が、高い交流電流を運ぶコンダクタの周囲に延在する他の導電部に適用されてもよい。誘導電流および熱は、隙間または非導電材料の一部を提供することによって防いで、コンダクタの周囲の連続的な電流経路の形成を防ぐことができる。
【0038】
ターゲット管および磁気アレイ
図2Aは、ターゲット管362内の磁気アレイ364を例示する。鍔402は、磁気アレイ364のターンアラウンドを囲み、以下で詳細に説明する。アレイ364によって生成された磁界365は、ターゲット管362の露出長全体に及ぶ。前に説明したように、磁界強度は、距離とともに減少する。したがって、磁界は、理論的に、磁気アレイから無限遠点を広げる間、スパッタを引き起こさせる十分な強さを有する部分だけが、実用的な目的のために例示されている。ターゲット面での磁界強度は、一般的に、120ガウス〜140ガウスである。100ガウス未満では、電子閉じ込めが原因の問題が生じる。これは、アレイ364それ自体が、ターゲット管362よりわずかに短いが、磁界365が、アレイ364の端部を通り過ぎて延在するので、本当である。磁界365は、ターゲット管の露出部まで、およびターゲット管を越えて延在し、端部ブロックが十分に冷却され、したがって、最も近い磁界365からの発熱作用および磁界作用に耐えることができるので可能である。磁界は、ターゲット管の全長にわたって延在するので、ターゲット管およびマグネトロンは自浄式である。従来の全ての設計と異なり、ターゲット管のスパッタされない部分はない。したがって、アーク放電は、本発明で大幅に低減されるか、または取り除かれる。
【0039】
図2Bは、ターゲット管の軸に沿って軸方向にみたターゲット管およびエンドブロックの断面である。水エンドブロック300は、図2Bで示されているが、ターゲットおよびエンドブロックの結合は、両方のエンドブロックで類似する。破線367の左側のいずれもが、エンドブロック内にある。破線367は、エンドブロックの境界を画定し、ターゲット管の露出部と未露出部(エンドブロック内)との間の境界を表す。スピンドル424は、クランプ422を備えた鍔402で、ターゲット管362a、bに接続され、磁気アレイ364が静止している間、これらの部品はすべて、一緒に回転する。磁界365は、エンドブロック内ではなくターゲット管の全長に延在し、ターゲット管の露出部または使用可能部と考えることもできる。また、磁界365は、比較的高い電界強度で、エンドブロック内のある距離を通過または貫通する。したがって、スパッタされないターゲット管の使用可能部または露出部はない。言い換えれば、スパッタゾーンは、ターゲット管の全体の露出長および/または使用可能長を含む。したがって、マグネトロンおよびターゲット管は、完全に自浄式であり、凝縮物およびこの凝縮物に起因するアーク放電は、ターゲット管上のどの時点でも生じないに違いない。これは、これらの現象によって引き起こされた欠陥が生じない被覆をもたらす。図2Bは、ターゲットクランプ422によって生成された暗部および縦一列に動作するフローティングエンドブロックカバー伸長420を示す。この暗部は、エンドブロック内またはエンドブロックの近くでプラズマ点火を防ぐためになされ、ターゲットでスパッタ処理に対して貢献をしない。さらに、視線は、凝縮物が、エンドブロック内部上の不適当な領域に集まることを防ぐ。従来の装置とは対照的に、追加のシールドは、ターゲット管の一部を囲むように延在されないように示されている。したがって、シールドは、この例におけるエンドブロックを越えて延在しない。
【0040】
本願明細書に示されているターゲット管は、固体管ではないが、支持管362aおよび支持管上のスパッタ材料362bを含む。さらに、鍔402は、ターゲット管の一部と考えてもよい。鍔402は、支持管362aに取り付けられてもよく、または支持管362aと一体的に形成されてもよい。ターゲット管のいくつかの実施形態で、スパッタ材料が十分に独立である場合、支持管は、存在しなくてもよい。この場合、鍔402は、スパッタ材料と一体的に形成されてもよく、またはスパッタ材料に取り付けられてもよい。必ずしもそうではないが、鍔402は、ターゲット管のスパッタ材料より低いスパッタ率の材料を含むことが好ましい。
【0041】
磁界が露出したターゲット管の全長に延在する限り、磁界強度および形状は、アレイ配置および永久磁石に使用される材料などの他の変数の関数であり、磁気アレイおよびターゲット管の正確な長さは、変化してもよいことが理解されるべきである。
【0042】
図2Cは、ターゲット管のない、磁気アレイ364および磁界365を示す。図2Dは、部品の径線を通って得られた断面において同じ部品を示す。
【0043】
図3は、鍔402を備えたターゲット管362を示す。鍔402は、ターゲット管362の寿命を伸ばすために、磁気アレイ364(図示せず)のターンアラウンドの周りに位置する。鍔材料は、ターゲット材料より低いスパッタ率を有することが好ましい。鍔材料からスパッタされた材料は、ターゲットからスパッタされた材料と混合される場合に被覆される基板の端部上にだけでなく、エンドブロック上にも堆積される。基板の端部上に、スパッタされたターゲット材料に対するスパッタされた鍔材料の比率をできるだけ低く保持することが望ましい。しかし、鍔材料のスパッタ率は、0であり得ない。そうでない場合、スパッタされたターゲット材料は、結局、支持構造上に堆積し、アーク放電を生じさせる。鍔からのスパッタは、ターゲットからスパッタされた材料が、これらの支持構造に達することを防がない。より正確に言えば、スパッタされたターゲット材料が、スパッタされた鍔材料と混合されることを確実にし、スパッタされたターゲット材料の絶縁特性を崩壊させる。鍔402は、高融点材料を含むことが好ましい。
【0044】
ターゲット管(陰極)上の磁界の強度/密度が、最も高い磁気アレイスパッタゾーンの「ターンアラウンド」を覆うために、スパッタゾーン中に、鍔402の一部が延在する。鍔402の残りの部分は、エンドブロックの内にある。ターゲット材料が、低融点材料である、または鍔材料より低い融点である場合、ターゲット材料の融点に達する前に、より高い電力を陰極体に加えることができる。したがって、陰極体上でそのような鍔を使用して、低融点材料用のより高い堆積速度が達成可能である。
【0045】
鍔402は、クランプの一部が適合する凹部を有する。クランプは、エンドブロックにターゲット管を接続する。特に、クランプは、鍔およびターゲット管にエンドブロックスピンドルを接続する。
【0046】
図4は、ターゲット管362下で、潜在的な被覆領域に堆積している鍔402の材料の量を例示する。鍔材料の量は、使用される材料、およびターゲット管および鍔の形状に依存して変化してもよい。示されている特有のデータは、チタンターゲット管およびステンレス鋼鍔に関する。鍔402は、堆積プロフィールを例示するために、断面において単純な長方形として示されている。しかし、様々な鍔の配置および形状の数は、本発明の範囲内である。
【0047】
10個のサンプルを、ターゲット管下の様々な位置で測定した。磁気アレイ364は、説明のためのスパッタダウン構成で示されている。他の図で、「スパッタアップ」構成で示されている。堆積プロフィールを測定するために、一連のシリコンウェハを、チタンターゲット下3.375mmに位置するガラスキャリアに設置する。5000Åのチタン金属は、アルゴンプラズマ中で、DC Halmar電源を使用して、ウェハ上にスパッタした。10個のサンプルは、EDS(エネルギー分散分光)分析のために考えられ、サンプルは、文字A〜Jによって分類したTi−Fe薄膜が堆積されたシリコンウェハの一部であった。定量EDSで測定されたTi−Fe比率を、様々な位置で示す。サンプルAは、磁気アレイ364のターンアラウンド直下に位置する。サンプルB〜Jは、ターゲット管の中心方向に延びて、2インチ間隔で設置した。
【0048】
図4および以下の表1から分かるように、鉄(Fe)の量がF〜J点から1重量%未満となるまで、ステンレス鋼からの鉄の量は、鍔からの距離が増加するにつれて減少する。
【0049】
【表1】
【0050】
説明のために、基板の位置も、図4に例示されている堆積プロフィールセットアップで示している。負荷の大きさおよび堆積プロフィール間の他の妥協案は、本発明の範囲内であるが、基板410は、最も推奨され基板がF点とG点の間に延在するように位置することが好ましい。基板は、G点を越えて0.5インチ、またはA点(ターンアラウンドの中心)から11.5インチ延在する。したがって、任意の被覆物も、鍔から無視できる量の材料を含む。そのような構成で、本発明によるマグネトロンは、実質的に、磁気アレイのターンアラウンドでターゲットを破壊する心配なしで、ターゲット材料のすべてを堆積することができ、また、無視できる量だけの鍔材料で大きな基板を被覆する。
【0051】
チタンは、ほとんどのターゲット材料と比較して、その低いスパッタ率を得るために鍔を作成するのに適切な材料であることが分かった。しかし、ステンレス鋼への溶接チタンは問題である。したがって、ステンレス鋼ターゲット管にチタン鍔を取り付けることは、特有の問題を示す。しかし、鍔を、高温下でターゲット管に取り付けない場合、鍔は、ターゲット管から分離してもよい。分離が生じる場合、鍔は、支持管との接触を通じて冷却される(水によって直接冷却される)ので、鍔は溶融してもよい。真空環境では、鍔が溶けるのを防ぐための対流冷却は、ほとんど発生しないか、またはない。
【0052】
図5は、図3で示されているものに、ターゲット管(支持管)500および鍔に関しての設計代案を示す。図5は、ターゲット管500に対して固定された位置で捕捉するTi鍔502を示す。特に、ターゲット管500の軸方向に沿った鍔502の位置は、一方の側のターゲット管500の外面の段部504、および反対側のキャプチャリング506によって確立される。段部504は、隣接領域でよりも鍔領域で小さな直径のターゲット管500によって形成されている。したがって、鍔500は、鍔領域上にぴったりと適合するが、ターゲット管の隣接部上には適合しない。キャプチャリング506は、この方向に鍔502の移動を防ぐために、鍔502の直外に位置する。ターゲット管500に溶接されるように、キャプチャリング506は、ステンレスからなってもよい。ターゲット管500、鍔502およびキャプチャリング506は、図5から分かるように、同じ軸を共有する。したがって、チタン鍔は、チタン−ステンレス鋼溶接を必要とすることなく、ステンレス鋼管に取り付けられてもよい。
【0053】
図6Aは、鍔502がターゲット管500に適合し、キャプチャリング506が鍔502を適所に固定した状態の図5のターゲット管500および鍔502の概略の説明(目盛はない)を示す。鍔502は、ターゲット管500の軸方向に沿って内側に向く円錐状表面510を有する円錐台形を有する。図6Bは、鍔502、キャプチャリング506、およびターゲット管500の一部横断面図を示す。この図は、ターゲットの組立てにおける初期段階にある。この図では、ターゲット材料は示されていない。一旦、鍔502およびターゲット管500を組み立て、キャプチャリング506を適所に溶接したならば、ターゲット材料を、ターゲット管500に塗布する。
【0054】
図7Aおよび7Bは、ターゲット材料712を塗布した後のターゲット管500を示す。ターゲット材料712は、この例において、半径方向に鍔502を越えて延在する。これは必要ではない。ターゲット材料712は、必要に応じて、鍔502以下の厚みに形成してもよい。ターゲット材料712は、鍔502の一部上に延在して示されている。鍔502の優位性の1つは、非常に正確に、ターゲット材料712を塗布する必要がないということである。ターゲット材料712の境界は、鍔502のいかなる場所にあってもよい。ターゲット材料712の厚みが、鍔502の厚み未満である場合、ターゲット材料712の境界は、円錐状表面510(断面で傾斜面)上に生じる。そして、ターゲット材料712の厚みが、鍔502より大きい場合、ターゲット材料712は、円錐状表面510を越えて延在してもよい。
【0055】
図8Aおよび8Bは、ターゲット材料712が円錐状表面510まで延在する状況を示す。これは、鍔502未満の厚みにターゲット材料712を堆積する状況である。まず、ターゲット材料712を鍔502より大きな厚さに堆積し、次いで、ターゲット材料712の浸食によって、ターゲット材料712の厚みを鍔502未満まで低減する場合に、この状況は起こる。この図から分かるように、ターゲット材料712の浸食は、鍔502を設置する場合、磁気レーストラックのターンアラウンドが生じるので、平坦である。ターゲットをその領域で消耗するので、チタンは露出されるようになるが、その基本スパッタ率が非常に低いので、チタンの消耗は、ターゲット材料712よりはるかに小さい。したがって、従来の装置で時折生じる溝はない。
【0056】
図9Aは、高い電力で、鍔によっては生じる可能性がある問題を示す。特に、約100キロワット(300アンペア)の電力では、鍔は、ターンアラウンドが磁界に発生する場所に鍔が位置する結果、生成熱のために溶融してもよい。ターゲット管に供給される冷却水にもかかわらず、高い電力では、チタン鍔は、変形され、溶融されてもよい。
【0057】
図9Bは、図5で示されているタイプの鍔502を示す。この鍔は、ターゲット材料712に接触する円錐台表面510を有する。ターゲット面に沿ってレーストラック面に対して傾斜した表面を有する鍔は、レーストラックに垂直な表面を示す鍔ほど熱くならないことが分かった。これは、ターゲットが浸食すると、ターゲットの中央部は、チタン鍔より早く磨耗するからである。最終的には、電子によって見られるように、鍔が、垂直表面を示す場合、電子の滑らかな流れを妨害するチタン壁が形成される。この流れに対する抵抗は、鍔/ターゲット接触面で、結局、材料を溶融する大量の熱の生成をもたらす。電子に示された鍔の表面を傾斜させる場合、この結果は低減される。したがって、鍔の形状は、マグネトロンが、そうでない場合には可能でない電力レベルで動作することを可能にする。
【0058】
図10は、ターゲット管500上の鍔502の他の図を示す。図10は、鍔502上に延在するクランプ422を示す。KF−フランジクランプなどの標準クランプは、この位置で使用してもよい。クランプ422を、スピンドル320に対してターゲット管500を密閉するために使用する。また、クランプ422は、鍔502上で内方向の力を及ぼす役目も果たす。一部分が拡大し曲がる傾向がある場合、この内方向の力は、高温下でさえ、ターゲット管500に接触して鍔502を保持する。したがって、クランプ422は、スピンドル320に対してターゲットを密閉し、鍔502およびターゲット管500の分離を防ぐ、2つの機能に役立つ。
【0059】
本発明は、従来の設計に対して極めて多くの優位性を有するマグネトロンをもたらす。ユーザは、アーク放電の環境的影響がなく、より大きな基板を確実に、かつ均一に覆うことができ、そうすることにより、ユーザにとって、必要なターゲットはより少なくなる。これは、ターゲット管自体のコストをセーブするだけでなく、管を変更する、それ以外に、アーク放電の問題によるマグネトロンに対応する場合、コストのかかる中断時間を最小限にする。
【0060】
本発明の特有の実施形態およびそれら優位性を示し、説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義されているように、発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、種々の変化、置換および変更を行うことができることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1A】駆動エンドブロック200の断面である。
【図1B】水エンドブロック300の断面である。
【図1C】ターゲット管の一部と水エンドブロック300の斜視図である。
【図1D】水エンドブロック300のより詳細な図を示す。
【図1E】リテーニングリング399を含む水エンドブロック300の部品の分解図を示す。
【図1F】リテーニングリング399の他の図を示す。
【図2A】ターゲット管の斜視図である。
【図2B】ターゲット管の主軸に沿ったターゲット管の断面である。
【図2C】磁気アレイの斜視図である。
【図2D】径線を通って得られたターゲット管および磁気アレイの断面である。
【図3】エンドブロックへの固定を示すターゲット管の断面である。
【図4】ターゲット管の全長に沿って堆積された鍔材料の量を説明する断面である。
【図5】図3で示されているターゲット管にエンドブロックを別の方法で固定したターゲット管の断面を示す。
【図6A】ターゲット材料のない鍔およびターゲット管を示す。
【図6B】図6Aの鍔およびターゲット管の一部を断面で示す。
【図7A】図6Aの鍔およびターゲット管に配置されたターゲット材料を示す。
【図7B】図7Aのターゲット材料、鍔、およびターゲット管を断面で示す。
【図8A】図6Aの鍔のレベルより下のターゲット材料を示す。
【図8B】図8Aのターゲット材料、鍔、およびターゲット管を断面で示す。
【図9A】鍔の軸に垂直で、鍔の溶融を示すターゲット材料との接触面を有する鍔を示す。
【図9B】鍔の軸の周りで円錐形であり、鍔を溶融することなくターゲットの使用を示すターゲット材料との接触面を有する鍔を示す。
【図10】鍔およびキャプチャリングの周囲に延在するクランプを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状マグネトロンターゲットにおいて、
管部と、
前記管部を取り囲み、前記管部に接触する円筒状内面を有する鍔部と、
前記鍔部を前記管部に対して固定された位置で捕捉するように、前記管部に取り付けられた捕捉部と、
を有する円筒状マグネトロンターゲット。
【請求項2】
請求項1記載の円筒状マグネトロンターゲットにおいて、
前記管部は、軸の周りに第1の外径を有する第1の筒状部と、前記軸の周りに第2の外径を有する第2の筒状部とを有し、前記第2の外径は、前記第1の外径未満であり、前記鍔部の前記内面が、前記第2の筒状部には適合するが、前記第1の筒状部には適合しないように、前記第2の筒状部は、前記管部の軸先端に隣接して位置する円筒状マグネトロンターゲット。
【請求項3】
請求項2記載の円筒状マグネトロンターゲットにおいて、
前記第1の筒状部と前記第2の筒状部との間の境界は段部を形成し、前記鍔部は、前記管部の軸方向に、前記段部と前記捕捉部との間で捕捉されている円筒状マグネトロンターゲット。
【請求項4】
請求項2記載の円筒状マグネトロンターゲットにおいて、
前記鍔部の前記内面は、円筒状であり、前記内面の直径は、前記管部の前記第2の筒状部の前記第2の外径とほぼ等しい円筒状マグネトロンターゲット。
【請求項5】
請求項2記載の円筒状マグネトロンターゲットにおいて、
前記鍔部の形状は、円錐台形であり、前記円錐台は、前記鍔部の前記円筒状内面と同軸である円筒状マグネトロンターゲット。
【請求項6】
請求項1記載の円筒状マグネトロンターゲットにおいて、
前記管部および前記捕捉部はステンレス鋼からなり、前記鍔部はチタンからなる円筒状マグネトロンターゲット。
【請求項7】
請求項6記載の円筒状マグネトロンターゲットにおいて、
前記捕捉部は前記管部に溶接されているが、前記鍔部は溶接されていない円筒状マグネトロンターゲット。
【請求項8】
請求項1記載の円筒状マグネトロンターゲットにおいて、
前記鍔部の少なくとも一部を取り囲む締結部をさらに含む円筒状マグネトロンターゲット。
【請求項9】
スパッタ用途用円筒状ターゲットを形成する方法において、
鍔部内に管部を挿入するステップと、
前記鍔部の位置を前記管部に対して固定するように、前記管部に捕捉部を取り付けるステップと、
次いで、前記管部の円筒状表面上にターゲット材料層を形成するステップと、
を含むスパッタ用途用円筒状ターゲットを形成する方法。
【請求項10】
請求項9記載のスパッタ用途用円筒状ターゲットを形成する方法において、
前記管部の外面の直径が中央部に比べて端部領域で小さくなるように、前記管部に段部をさらに形成するステップを含み、前記直径を小さくしたことで、前記鍔部内への前記端部領域の挿入を可能とし、前記段部は、前記鍔部内への前記中央部の挿入を防ぐ方法。
【請求項11】
請求項10記載のスパッタ用途用円筒状ターゲットを形成する方法において、
前記鍔部は、前記管部の軸の周りに軸対称であり、前記段部に最も近い前記鍔部の端部は、円錐台を形成し、前記管部の前記円筒状表面上に形成された前記ターゲット材料層も、前記鍔部の前記円錐台上に形成されている方法。
【請求項12】
被覆装置内にターゲットを取り付けるためのターゲット鍔において、
前記ターゲット鍔に、軸を有する前記円筒状の開口を画定する内面と、
前記円筒状の開口の前記軸を共有する円錐台によって画定された外側円錐状表面と、
を有するターゲット鍔。
【請求項13】
請求項12記載の被覆装置内にターゲットを取り付けるためのターゲット鍔において、 前記ターゲット鍔の周囲に延在する円周状溝をさらに有するターゲット鍔。
【請求項14】
円筒状マグネトロンスパッタ装置内にターゲット管を保持するとともに、前記ターゲット管に電源からの交流電流を移すエンドブロックにおいて、
前記電源からの交流電流を前記ターゲット管に運ぶ中央導電部と、
前記中央部を部分的に囲むが、完全には前記中央部を囲まないように延在する導電材料の部分リングと、
を有するエンドブロック。
【請求項15】
請求項14記載のエンドブロックにおいて、
前記部分リングは、前記エンドブロックの一部の位置を保持するリテーニングリングであるエンドブロック。
【請求項1】
円筒状マグネトロンターゲットにおいて、
管部と、
前記管部を取り囲み、前記管部に接触する円筒状内面を有する鍔部と、
前記鍔部を前記管部に対して固定された位置で捕捉するように、前記管部に取り付けられた捕捉部と、
を有する円筒状マグネトロンターゲット。
【請求項2】
請求項1記載の円筒状マグネトロンターゲットにおいて、
前記管部は、軸の周りに第1の外径を有する第1の筒状部と、前記軸の周りに第2の外径を有する第2の筒状部とを有し、前記第2の外径は、前記第1の外径未満であり、前記鍔部の前記内面が、前記第2の筒状部には適合するが、前記第1の筒状部には適合しないように、前記第2の筒状部は、前記管部の軸先端に隣接して位置する円筒状マグネトロンターゲット。
【請求項3】
請求項2記載の円筒状マグネトロンターゲットにおいて、
前記第1の筒状部と前記第2の筒状部との間の境界は段部を形成し、前記鍔部は、前記管部の軸方向に、前記段部と前記捕捉部との間で捕捉されている円筒状マグネトロンターゲット。
【請求項4】
請求項2記載の円筒状マグネトロンターゲットにおいて、
前記鍔部の前記内面は、円筒状であり、前記内面の直径は、前記管部の前記第2の筒状部の前記第2の外径とほぼ等しい円筒状マグネトロンターゲット。
【請求項5】
請求項2記載の円筒状マグネトロンターゲットにおいて、
前記鍔部の形状は、円錐台形であり、前記円錐台は、前記鍔部の前記円筒状内面と同軸である円筒状マグネトロンターゲット。
【請求項6】
請求項1記載の円筒状マグネトロンターゲットにおいて、
前記管部および前記捕捉部はステンレス鋼からなり、前記鍔部はチタンからなる円筒状マグネトロンターゲット。
【請求項7】
請求項6記載の円筒状マグネトロンターゲットにおいて、
前記捕捉部は前記管部に溶接されているが、前記鍔部は溶接されていない円筒状マグネトロンターゲット。
【請求項8】
請求項1記載の円筒状マグネトロンターゲットにおいて、
前記鍔部の少なくとも一部を取り囲む締結部をさらに含む円筒状マグネトロンターゲット。
【請求項9】
スパッタ用途用円筒状ターゲットを形成する方法において、
鍔部内に管部を挿入するステップと、
前記鍔部の位置を前記管部に対して固定するように、前記管部に捕捉部を取り付けるステップと、
次いで、前記管部の円筒状表面上にターゲット材料層を形成するステップと、
を含むスパッタ用途用円筒状ターゲットを形成する方法。
【請求項10】
請求項9記載のスパッタ用途用円筒状ターゲットを形成する方法において、
前記管部の外面の直径が中央部に比べて端部領域で小さくなるように、前記管部に段部をさらに形成するステップを含み、前記直径を小さくしたことで、前記鍔部内への前記端部領域の挿入を可能とし、前記段部は、前記鍔部内への前記中央部の挿入を防ぐ方法。
【請求項11】
請求項10記載のスパッタ用途用円筒状ターゲットを形成する方法において、
前記鍔部は、前記管部の軸の周りに軸対称であり、前記段部に最も近い前記鍔部の端部は、円錐台を形成し、前記管部の前記円筒状表面上に形成された前記ターゲット材料層も、前記鍔部の前記円錐台上に形成されている方法。
【請求項12】
被覆装置内にターゲットを取り付けるためのターゲット鍔において、
前記ターゲット鍔に、軸を有する前記円筒状の開口を画定する内面と、
前記円筒状の開口の前記軸を共有する円錐台によって画定された外側円錐状表面と、
を有するターゲット鍔。
【請求項13】
請求項12記載の被覆装置内にターゲットを取り付けるためのターゲット鍔において、 前記ターゲット鍔の周囲に延在する円周状溝をさらに有するターゲット鍔。
【請求項14】
円筒状マグネトロンスパッタ装置内にターゲット管を保持するとともに、前記ターゲット管に電源からの交流電流を移すエンドブロックにおいて、
前記電源からの交流電流を前記ターゲット管に運ぶ中央導電部と、
前記中央部を部分的に囲むが、完全には前記中央部を囲まないように延在する導電材料の部分リングと、
を有するエンドブロック。
【請求項15】
請求項14記載のエンドブロックにおいて、
前記部分リングは、前記エンドブロックの一部の位置を保持するリテーニングリングであるエンドブロック。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【公表番号】特表2008−510066(P2008−510066A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525715(P2007−525715)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/028169
【国際公開番号】WO2006/020582
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(507045188)フォン アルデンヌ アンラジェンテクニック ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/028169
【国際公開番号】WO2006/020582
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(507045188)フォン アルデンヌ アンラジェンテクニック ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】
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