説明

自然一方向性を有する音響表面波用変換器

本発明は、自然一方向性を有する音響表面波用変換器に関しており、
ここではインターデジタル電極構造体が圧電結晶基板に配置されており、この電極構造体は、集電電極および櫛歯からなるインターデジタル変換器によって形成されており、
これらの櫛歯のうちの少なくとも2つの櫛歯は、変換器セルを構成し、これらの変換器セルは、電位の波を励起する少なくとも1つの励起中心部と、電位の波反射する反射中心部とを有している。本発明の課題は、自然一方向性を有する変換器に対し、帯域の広い変換器の場合であっても挿入減衰が小さい材料、材料断面および伝搬方向を見つけることであり、またこの変換器の一方向特性にもかかわらず周波数位置が、基板上で電極構造体を配向する際の誤差によって影響を受けないかまたはわずかにしか影響を受けないようにすることである。本発明の重要な1特徴的構成によれば、上記の櫛歯は、向きRに対して垂直に配向されており、ここで向きRは、基板結晶の1回回転軸または3回回転軸に対して平行であり、またRに対して微分dv/dθ=0が成り立ち、ただしvは表面波の位相速度であり、θは櫛歯方向に対する垂直線と、上記の向きRとの角度偏差である。本発明の別の1特徴的構成によれば、上記の電極材料およびその層厚を選択して、各変換器セルにおける励起中心部と反射中心部との間の位相シフトΦsが、式sin2s)=(ωo2s2)(ωs2s1)/(ωs2s1)(ωo1o2s1s2)により、41.4°と48.6°との間か、-48.6°と-41.4°との間か、131.4°と138.6°との間か、または-138.6°と-131.4°との間にあるようにする。本発明による変換器は、機能の仕方が音響表面に基づくものであれば、例えばセンサ、識別素子(IDタグ)、共振器、フィルタ、遅延線路および発振器などに適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気工学/電子工学の分野に関しており、また自然一単方向性を有する音響表面波用の変換器に関する。本発明による変換器の適用が可能でありかつその適用が目的である対象物は、機能の仕方が音響表面波に基づく、例えばセンサ、識別素子(IDタグ)、共振器、フィルタ、遅延線路および発振器などの対象物である。
【0002】
従来技術
自然一方向性を有する音響表面波用の変換器はすでに公知であり、これらの変換器では、圧電結晶基板上にインターデジタル電極構造体が配置される。ここでこのインターデジタル電極構造体は、複数の集電電極と櫛歯とから構成されるインターデジタル変換器によって形成されており、ここで極性の異なる少なくとも2つの櫛歯により、変換器の素子としての変換器セルが構成される。各変換器セルは、電位の波を励起する励起中心部と、電位の波を反射する少なくとも1つの反射中央部とを有する。
【0003】
インターデジタル変換器セルの一方向特性が存在するための前提条件は、同じ1つのセルにおいて上記の励起中心部と反射中心部との間隔が、正確または近似的に波長の±1/8または±3/8になることであり、ここでこの波長は、上記の変換器によって最大表面波振幅が放射される周波数と、表面波の位相速度との商に相応する。したがって上記の波長の励起に加え、波長の反射は、一方向特性が存在するための必要条件である。励起中心部および反射中心部とは、上記の音響表面波の電位の励起中心部および反射中心部のことである。1つのセルの励起中心部と反射中心部との間隔が、波長の±1/8または±3/8から大きく偏差しない場合、上記の自然一方向性は完全であると称される。その他の場合、自然一方向性は不完全であると称される。
【0004】
自然一方向性または自然一方向特性がない場合、(セル当たりに2つ以上の櫛歯がある場合)セルには、幅の異なる櫛歯が含まれ、また多くの場合に櫛歯の間隔が異なる。このようなセルは、伝搬方向に見て、非対称に形成される。対称に形成される変換器が一方向特性を有する場合、この特性は自然一方向性と称される。対称な変換器は、例えば同じ幅と、異なる極性と、波長の0.5である櫛歯中心の間隔とを有する2つの櫛歯を含む複数のセルからなり、ただし櫛歯の長さは、波長に等しい。
【0005】
特別な実施例(以下では[1]とも示す刊行物P. V. Wright著の"The natural single-phase unidirectional transducer: A new low-loss SAW transducer",Proc. 1985 IEEE Ultrasonics Symposium,第58〜63頁)では、変換器の一方向特性は、石英基板上において、音響表面波の伝搬方向を結晶質のX軸からずらして回転することによって形成され、ここでこれらの変換器は、波長の1/4幅の2つのフィンガ(すなわちそれぞれ同じ幅のフィンガを有する)と、これらの間の波長の1/4幅のギャップとを有する複数のセルから構成される。上記の音響表面波がX軸方向に伝搬する場合、使用する変換器タイプに対して一方向特性が得られることはない。自然一方向性を有する音響表面波の伝搬方向についての正確なデータは、別の特別な実施形態に記載されている(T. ThorvaldssonおよびB. P. Abbott著,"Low loss SAW filters utilizing the natural Single phase unidirectional transducer (NSPUDT)",Proc. 1990 IEEE Ultrasonics Symposium,第43〜48頁、以下[2]と記す)。石英の結晶断面と、上記の伝搬方向とは、オイラー角(0°,124°,25°)によって示される。この組み合わせの特徴は、完全な自然一方向性である。自然一方向性の別の例は、オイラー角(0°,138.5°,26.6°)を有するランガサイト(La3Ga5SiO14)である(D. P. Morgan,S. Zhgoon,A. Shvetsov,E. SemenovaおよびV. Semenov,"One-port SAW resonators using Natural SPUDT Substrates",Proc. 2005 IEEE Ultrasonics Symposium,第446〜449頁、以下、[3]と記す)。この場合には自然一方向性は不完全である。
【0006】
刊行物[1],[2]および[3]の実施例には、自然一方向性の他にさらに、音響表面波の伝搬方向に対してdv/dθ≠0が成り立つという共通性があり、ただしvは、表面波の位相速度であり、θは、上記の伝搬方向と、櫛歯方向に対する垂直線との角度偏差である。このことからつぎのような欠点が生じる。すなわち、基板上で電極構造体を配向する際に技術的なパラメタがつねに変動することにより、小さな誤差が、表面波の位相速度の大きな誤差に結び付き、ひいては変換器の周波数位置の大きな誤差に結び付き得るという欠点が生じるのである。
【0007】
また圧電ランガサイト基板上に複数のインターデジタル電極構造体が配置された、自然一方向性を有する変換器もすでに公知である(US 6,194,809 B1)。これらの電極構造体は、集電電極と櫛歯とからなり、2つの櫛歯によって1つの変換器セルが形成される。この構成素子において殊に不利であるのは、使用するランガサイト基板の結合ファクタが小さいことであり、これによって帯域の広い変換器構成素子は、高い挿入減衰を覚悟にしなければ実現できないことである。
【0008】
本発明の説明
本発明の課題は、自然一方向性を有する変換器に対し、帯域の広い変換器の場合であっても挿入減衰が小さくなる材料、材料断面および伝搬方向を見つけることであり、またこの変換器の一方向特性にもかかわらず周波数位置が、電極構造体を基板上で配向する際の誤差によって影響を受けないかかまたはわずかにしか影響を受けないようにすることである。
【0009】
この課題は、上位概念に記載した構成と、請求項1の特徴部分に記載した特徴的構成とによって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明による変換器では、インターデジタル電極構造体が圧電結晶基板に配置されており、この電極構造体は、複数の集電電極および櫛歯からなるインターデジタル変換器によって形成されており、ここでこれらの櫛歯のうちの少なくとも2つの櫛歯は変換器セルを構成し、この変換器セルは、電位の波を励起する少なくとも1つの励起中心部と、電位の波を反射する少なくとも1つの反射中心部とを有する。
【0011】
本発明では、上記の櫛歯は、向きRに対して垂直に配向されており、ここでこの方向Rは、基板結晶の1回回転軸または3回回転軸に対して平行である。この向きRに対して微分dv/dθ=0が成り立ち、ここでvは表面波の位相速度であり、θは、櫛歯方向に対する垂直線と、上記の向きRとの角度偏差であるが、基板結晶の対称面に対して垂直な方向は除外される。またこの関連において上記のインターデジタル電極構造体の配置に対し、基板結晶の対称面に対して平行であるかまたは基板結晶の2回回転軸、4回回転軸または6回回転軸に対して垂直な結晶基板表面は除外される。
【0012】
本発明の別の特徴的構成によれば、上記の電極材料およびそれらの層厚を選択して、各変換器セルにおける励起中心部と反射中心部との間の位相シフトΦsが式
【数1】

により、41.4°と48.6°との間か、-48.6°と-41.4°との間か、131.4°と138.6°との間か、または-138.6°と-131.4°との間が得られる。ただしωs1およびωs2は、短絡したインターデジタル変換器の共振周波数であり、ωo1およびωo2は、無限に多くの櫛歯を有する閉じていないインターデジタル変換器の共振周波数であり、
各変換器セルにおいて励起中心部と反射中心部との間隔は、上記の表面波の位相速度と、変換器によって最大表面波振幅が放射される周波数との商の0.115と0.135との間か、-0.135と-0.115との間か、0.365と0.385との間か、または-0.385と-0.365との間にある。
【0013】
本発明によれば、上記の励起中心部とは、インターデジタル電極構造体の幾何学形状と、圧電結晶基板と、一方向性変換器の電位とに依存しかつ櫛歯エッジに平行な線のことであり、この線において、形成される表面波の1成分である上記の電位の波が励起される。
【0014】
本発明によれば、反射中心部とは、インターデジタル電極構造体の幾何学形状と、圧電結晶基板と、一方向性変換器の電位とに依存しかつ櫛歯エッジに平行な線のことであり、この線において、上記の励起中心部によって励起された電位の波が反射される。ここでこの電位の波は、反射される表面波の1成分である。
【0015】
上記の励起中心部の位置および反射中心部の位置は、一方向性変換器に対し、公知のように市販のコンピュータプログラムによって以下から求めることができる。すなわち、
− インターデジタル変換器に配置されている圧電結晶基板の種類
− 設定された結晶基板断面
− 圧電結晶基板の軸に対するインターデジタル変換器の櫛歯エッジの配向
− インターデジタル変換器における櫛歯位置
− インターデジタル変換器の櫛歯の幅および櫛歯の厚さ
− インターデジタル変換器の櫛歯を構成する材料
− インターデジタル変換器の櫛歯に加わる電位の大きさ
から求められるのである。
【0016】
不可能でないにしても実際上極めて時間がかかるのは、櫛歯の幅および櫛歯の位置を人間が変化させることにより、あらかじめ定めた特性パラメタを有する変換器セルに対して解決手段を見つけることである。しかしながら補助手段としてコンピュータ支援による最適化方法が利用可能である。例えば、市販のプログラミング言語MATLABの相応する最適化機能を利用することができる。変換器セルの構造体の特性パラメタを最適化の都度のステップにおいて計算するため、この特性パラメタを数値的に計算する解析プログラムが必要である。したがって上記の特性パラメタとセル構造体との間に解析的な関係が示されないこともあり得る。このような解析プログラムは購入することが可能である。
【0017】
殊に驚きであるのは、3回回転軸を有する音響表面波用の主伝搬方向が、基板結晶の高次対称性の向きである場合であっても、自然一方向特性を有する変換器が可能なことであり、ここではこの向きに対してdv/dθ=0が成り立つ。自然一方向特性を有する変換器を構成するというこの可能性は、これまで利用されていない。
【0018】
以下では本発明の有利な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による自然一方向性を有する変換器を示す図である。
【0020】
上記の電極は層システムとして実施することができ、ここでこの層システムは1つの層だけを含むこともあり得る。
【0021】
変換器セルは、極性が異なりかつ幅が同じ2つの櫛歯を含むことができ、櫛歯中央におけるこれらの櫛歯の間隔は、上記の表面波の位相速度と、変換器によって最大表面波振幅が放射される周波数との商の0.5である。
【0022】
しかしながら変換器セルは、つぎのような場合には幅の異なる櫛歯を含むことも可能である。すなわち、電極材料とそれらの層厚を選択して、極性が異なりかつ幅が同じ2つの櫛歯を含む変換器セルにおいて、これらの櫛歯の間隔が、表面波の位相速度と、上記の変換器が最大表面波振幅を放射する周波数との商の0.5であり、また上記の励起中心部と反射中心部との間隔が、0.115ないし0.135と、-0.135ないし-0.115と、0.365ないし0.385と、-0.385ないし-0.365との範囲外にある場合に幅の異なる櫛歯を含むことも可能である。このことは殊に、例えば層システムを電極材料として使用しようとする場合には有利であり、ここでは励起中心部と反射中心部との間隔が、上記の所要の範囲のうちの1つの範囲内に入るようにするため、この層システムには上記の複数の電極材料のうちの1つの電極材料の大きすぎる層厚が必要である。この場合、上記の自然一方向性は、構造的な一方向性によって補うことができる。これにより、セルの最も幅の狭い櫛歯を、自然一方向性がない場合よりも幅広にすることができる。
【0023】
ここでは上記の基板結晶が3回回転軸を有すると有利である。これが当てはまるのは、例えばLiNbO3,LiTaO3および石英に対してであり、さらにこれらの結晶は、三方結晶系に属する。
【0024】
上記の基板は、LiNbO3のY断面とすることができ、また櫛歯エッジはその3回回転軸またはZ軸に対して垂直に配向することができる。
【0025】
上記の基板結晶は、ランガサイト([La3GaGa3(GaSi)O14]),ランガナイト([La3(Ga0.5Nb0.5)Ga3Ga2O14]),ランガテイト([La3(Ga0.5Ta0.5)Ga3Ga2O14]),CNGS(Ca3NbGa3Si2O14),CTGS(Ca3TaGa3Si2O14),SNGS(Sr3NbGa3Si2O14)またはSTGS(Sr3TaGa3Si2O14)からなるランガサイト族の結晶とすることもできる。
【0026】
上記の櫛歯は、有利には3回回転軸に対して垂直に配向される。
【0027】
また有利であるのは、電極構造体を多層システムとして実施する場合、上記の電極材料のうちの少なくとも1つの電極材料の密度がアルミニウムの密度よりも大きく、および/または密度の高い状態において上記の電極材料のうちの1つの電極材料の音響剪断波の位相速度が、密度の高いアルミニウムの音響剪断波の位相速度よりも小さくなることである。
【0028】
上記の電極材料は有利には銅、銀、金および白金からなるグループから選択され、また電極構造体を多層システムとして実施する場合、少なくとも1つの層はこのグループの電極材料から構成することができる。
【0029】
本発明の有利な1実施形態によれば、上記の基板におけるトレンチを用いて電極構造体の櫛歯を埋めることできる。ここでは変換器セルの構造を変更させることなく、トレンチの深さにより、励起中心部と反射中心部との間隔を変化させることができる。このことは、上記の基板、または基板および電極構造体を電気絶縁層によって覆う場合にも可能であり、ここでは電極構造体の櫛歯は、トレンチによって上記の層に埋めることができる。ここでは上記の櫛歯を部分的または完全に基板にまたは層に埋めることができるか、または上記の櫛歯によってトレンチの一部分だけを埋めることができる。
【0030】
実施例
以下では実施例と、これに対応する図面とに基づいて本発明を詳しく説明する。
【0031】
LiNbO3の結晶学的なY軸に平行な垂直線を有する、圧電LiNbO3基板1のY断面には、櫛歯21,22,23および24を有するインターデジタル変換器2の電極構造体が配置されている。ここで櫛歯21および22は集電電極3に接続されており、また櫛歯23および24は集電電極4に接続されている。櫛歯21および23は互いに1つの変換器セルを構成する。櫛歯22および24も同様である。
【0032】
すべての櫛歯21ないし24は幅が同じであり、また櫛歯エッジに平行に配向された隣り合う櫛歯の中心線、例えば櫛歯21および23の中心線の間隔は、表面波の位相速度と、変換器によって最大表面波振幅が放射される周波数との商の0.5である。
【0033】
この図に含まれている変換器は、この実施例の特徴を説明するのに必要な数だけの櫛歯を有するように略示されている。変換器は、図に示したものよりも格段に多くの櫛歯を含むことができる。
【0034】
上記の電極構造体は白金からなる。この材料選択の利点は、変換器セル当たりの反射ファクタが大きく、また高い温度において電極構造体の耐性が得られることである。上記の白金層の厚さは、櫛歯21および22または櫛歯23および24の、櫛歯エッジに対して平行に配向された中心線の間隔の2.7%である。
【0035】
上記の電極構造体の層厚を選択して、各変換器セルにおいて、励起中心部と反射中心部との間隔が、表面波の位相速度と、上記の変換器によって最大表面波振幅が放射される周波数との商の0.115と0.135との間にあるか、または-0.135と-0.115との間にあるか、または-0.385と-0.365との間にあるようする。
【0036】
ここでは上記の電極構造体の材料はあらかじめ設定されている。上記の電極材料の機械的な特性とその層厚との間の解析的な関係、また上記の電極材料の機械的な特性と、反射中心部からの励起中心部の間隔との間の解析的な関係を示すことはできない。したがって上記の計算は、これらの関係の複雑さに起因して数値的にしか行うことができない。ここではコンピュータプログラムによって計算した励起中心部と反射中心部との間の間隔が、上で示した範囲のうちの1つに入るまで上記の電極材料の層厚を変化させる。
【0037】
変換器2を作動させる際にはその電気端子5および6を介して高周波交流電圧が加えられる。変換器2の電極構造体は優先的な方向を有してないが、この変換器によって放射される表面波振幅は、向き7の方がこれとは逆の向き8よりも大きい。すなわち変換器2は自然一方向性を有しており、向き7が進行方向と称されるのである。
【0038】
向き7は、LiNbO3の結晶学的なZ軸に平行に配向されている。このZ軸は3回回転軸である。この方向に対してdv/dθ=0が成り立ち、ただしvは表面波の位相速度であり、またθは、櫛歯方向に対する垂直線と、この向きとの角度差分である。この特性は、曲線10の放物線状の経過によって示されており、この曲線は、角度9に対する表面波の位相速度の依存性を示している。角度θは、この図の角度9に相応する。この図において情報を与えるためのエレメントとして記入された横軸11は、角度θの変化をシンボリックに表しており、この変化により、曲線10で示した表面波の位相速度の変化が生じる。
【0039】
上記の電極構造体を回転して向き7’が進行方向であるようにすると、表面波の位相速度が、角度9に対して図のように放物線状に依存すること起因して、表面波の位相速度vはわずかにしか変化しない。変換器2の周波数位置は、基板上における電極構造体の配向の誤差に対して余り影響を受けることがなくなる。それにもかかわらず変換器2は一方向の特性を有するのである。
【符号の説明】
【0040】
1 圧電基板、 2,2’ インターデジタル変換器、 21,22,23,24 櫛歯、 3,4 集電電極、 5,6 端子、 7,7’ 向き/進行方向、 8 向き、 9 角度、 10 曲線、 11 横軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然一方向性を有する音響表面波用変換器であって、
インターデジタル電極構造体が圧電結晶基板(1)に配置されており、
当該電極構造体は、集電電極(3;4)および櫛歯(21;22;23;24)からなるインターデジタル変換器(2)によって形成されており、
前記の櫛歯のうちの少なくとも2つの櫛歯(21;23)(22;24)は、変換器セルを構成し、
当該変換器セルは、電位の波を励起する少なくとも1つの励起中心部と、電位の波を反射する少なくとも1つの反射中心部とを有している、変換器において、
a) 前記の櫛歯(21;22;23;24)は向きRに対して垂直に配向されており、ただし向きRは、前記基板結晶の1回回転軸または3回回転軸に平行であり、
b) 当該の向きRに対して微分dv/dθ=0が成り立ち、ただし
vは、前記表面波の位相速度であり、
θは、前記の櫛歯方向に対する垂直線と前記向きRとの角度偏差であるが、前記基板結晶の対称面に対して垂直な方向は除外され、
前記インターデジタル電極構造体の配置に対し、前記基板結晶の対称面に対して平行な結晶基板表面、または基板結晶の2回転、4回転または6回回転軸に対して垂直な結晶基板表面は除外され、
c) 前記の電極材料およびその層厚を選択して、各変換器セルにおける前記の励起中心部と反射中心部との間の位相シフトΦsは式
【数1】

により、41.4°と48.6°との間か、-48.6°と-41.4°との間か、131.4°と138.6°との間か、または-138.6°と-131.4°との間であり、ただし
ωs1およびωs2は、短絡したインターデジタル変換器の共振周波数であり、
ωo1およびωo2は、無限に多くの櫛歯を有する閉じていないインターデジタル変換器の共振周波数であり、
各変換器セルにおいて前記の励起中心部と反射中心部との間隔は、前記の表面波の位相速度と、前記の変換器によって最大表面波振幅が放射される周波数との商の0.115と0.135との間か、-0.135と-0.115との間か、0.365と0.385との間か、または-0.385と-0.365との間にあることを特徴とする、
自然一方向性を有する音響表面波用変換器。
【請求項2】
前記電極構造体は、単層であるか、または複数層からなる層システムとして実施されている、
請求項1に記載の自然一方向性を有する変換器。
【請求項3】
変換器セルには、極性が異なりかつ幅が同じ2つの櫛歯が含まれており、
櫛歯中央における当該櫛歯の間隔は、前記の表面波の位相速度と、前記の変換器によって最大表面波振幅が放射される周波数との商の0.5である、
請求項1に記載の自然一方向性を有する変換器。
【請求項4】
前記の電極材料およびその層厚を選択して、極性が異なりかつ幅が同じ2つの櫛歯を有する1つの変換器セルにおいて櫛歯中央における当該の櫛歯の間隔が、表面波の位相速度と、前記変換器によって最大表面波振幅が放射される周波数との商の0.5であるようにした場合、1つの変換器セルには、幅の異なる櫛歯が含まれており、
前記の励起中心部と反射中心部との間隔は、前記の表面波の位相速度と、前記の変換器によって最大表面波振幅が放射される周波数との商の0.115ないし0.135と、-0.135ないし-0.115と、0.365ないし0.385と、-0.385ないし-0.365との範囲外にある、
請求項1に記載の自然一方向性を有する変換器。
【請求項5】
前記の基板結晶は三方晶系に属する、
請求項1に記載の自然一方向性を有する変換器。
【請求項6】
前記の基板結晶は、LiNbO3,LiTaO3,石英、またはランガサイト([La3GaGa3(GaSi)O14]),ランガナイト([La3(Ga0.5Nb0.5)Ga3Ga2O14]),ランガテイト([La3(Ga0.5Ta0.5)Ga3Ga2O14]),CNGS(Ca3NbGa3Si2O14),CTGS(Ca3TaGa3Si2O14),SNGS(Sr3NbGa3Si2O14)またはSTGS(Sr3TaGa3Si2O14)からなるランガサイト族の結晶である、
請求項5に記載の自然一方向性変換器。
【請求項7】
前記の圧電結晶基板は、LiNbO3のY断面であり、
前記の櫛歯エッジは、3回回転軸またはZ軸に対して垂直に配向されている、
請求項6に記載の自然一方向性を有する変換器。
【請求項8】
前記の電極構造体を多層システムとして実施する場合、前記の電極材料のうちの少なくとも1つの電極材料の密度はアルミニウムの密度よりも大きい、
請求項2に記載の自然一方向性を有する変換器。
【請求項9】
前記の電極構造体を多層システムとして実施する場合、前記の電極材料のうちの1つの電極材料の、密度が高い状態における音響剪断波の位相速度は、密度が高い状態におけるアルミニウムの音響剪断波の位相速度よりも小さい、
請求項2に記載の自然一方向性を有する変換器。
【請求項10】
前記の電極材料は、銅、銀、金および白金からなるグループから選択され、
前記の電極構造体を複数層からなる層システムとして実施する場合、少なくとも1つの層は当該グループの1つの電極材料から構成される、
請求項1または2に記載の自然一方向性を有する変換器。
【請求項11】
前記の基板、または、基板および電極は、電気絶縁層によって覆われている、
請求項1に記載の自然一方向性を有する変換器。
【請求項12】
前記の基板および/または電気絶縁層における、電極構造体の櫛歯は、部分的または完全にトレンチに埋め込まれており、
前記の櫛歯により、トレンチが完全に満たされるか、または部分的にだけ満たされている、
請求項1または11に記載の自然一方向性を有する変換器。

【公表番号】特表2012−525037(P2012−525037A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506481(P2012−506481)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055291
【国際公開番号】WO2010/122067
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(508361324)ヴェクトロン インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】Vectron International GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Potsdamer Strasse 18, D−14513 Teltow, Germany
【出願人】(502098145)
【氏名又は名称原語表記】Leibniz−Institut fuer Festkoerper− und Werkstoffforschung Dresden e.V.
【住所又は居所原語表記】Helmholtzstrasse 20, D−01069 Dresden, Germany
【Fターム(参考)】