説明

自発光型サインボード

【課題】全方向に光が拡散するEL素子を光源とした発光部材をサインボードに用いた場合において、その発光方向を積極的に制御して、情報を伝えたい観察者に効率的に情報を伝えることができ、かつ消費電力を低減することができる自発光型サインボードを提供する。
【解決手段】所定色の光を発光するEL素子を有し、所定の発光パターンを表示する発光部材10と、発光部材10から所定の輝度分布で発光する光のうち実質的に最も高い輝度を示す方向の光を主に集光ないし偏向する光学部材20とを有する自発光型サインボード30Bによって、上記課題を解決する。光学部材20としては、例えば発光部材10から発光する法線方向の光を集光する集光部材であるように構成してもよいし、その法線方向の光を法線方向ではない方向に偏向する偏向部材であるように構成してもよい。より具体的には、微細なレンズ又はプリズムが形成された光学部材であるように構成してもよいし、ホログラムが形成された光学部材であるように構成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発光型サインボードに関し、さらに詳しくは、屋内外に設置され、広告、装飾、道路標識、その他各種の情報表示体として機能する自発光型サインボードに関する。特に自発光体であるエレクトロルミネッセンス素子を有する発光部材と、その発光部材から発光する光を集光ないし偏向する光学部材とを組み合わせることにより、特定方向からの視認性を向上させた自発光型サインボードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
広告、装飾、交通標識、道路案内標識、その他各種の情報表示体として機能する自発光型のサインボードは、トンネル内や夜間など、周辺環境が暗く、照明が得られない環境下でも視認ができるといった優れた点から広く用いられている。自発光型のサインボードは、非発光型のサインボードと異なり、サインボードを離れた位置から照らす所謂スポットライトのような照明が不要であり、比較的コンパクトであるといった利点がある。一般的な自発光型のサインボードは、観察者からみて被表示情報が表示される表示ボードの後ろ側(背面側)に照明装置を有している。照明装置としては、背面側から手前側に向かって、反射板(リフレクター)、蛍光灯などの光源、散乱板の順に配置された箱形構造が一般的であり、特に箱形構造の内面は光の取り出し効率を確保するため白色となっている。箱形構造の照明装置の手前側には、所望の表示情報が印刷、塗布、ラベルやシールの貼付等によって形成される。その結果、夜間等のように周辺環境が暗い場合でも、自発光型のサインボードに表示された表示情報を外部から認識することができる。
【0003】
上記した照明装置は、均一な拡散光を得るために反射板(リフレクター)、光源及び散乱板等を有しているので、一定以上の厚さで構成されている。通常、照明装置の筐体は樹脂材料で形成されていることが多いが、特に大面積の表示を行うサインボード用の照明装置である場合、筐体自体が大型化して重くなるという問題があった。また、サインボードを野外に設置する場合、風雨に対する耐久性も考えると照明装置には十分な強度が必要であり、特に堅牢に設計する必要が有り、その結果ますます重量が増加してしまう。
【0004】
一方、近年においては、電界発光素子、即ちエレクトロルミネッセンス素子(EL素子)を光源として用いた面発光シートが盛んに開発されている。この面発光シートは面内でほぼ均一に発光する面光源であり、発熱が少なく、薄型である等の優れた特性を有している。そのため、従来の白熱灯や蛍光灯に代わる次世代の照明として期待されている。特に近年の材料技術やデバイス技術の進歩により、蛍光灯並みの高効率、長寿命が実現されつつある。こうした面発光シートは、平面発光であるため大面積化が比較的容易であり、また、発光部に水銀を用いないため廃棄後の環境保全の観点からも優位である。EL素子を面発光シート用の光源として用いた場合の利点をまとめると、面発光であること、薄型(自由に曲げられる)であること、明るさを調整できること、発光色が多彩(発光材料が多い)であること、水銀フリーであること、等が挙げられる。この種の面発光シートを情報表示のための照明手段として用いたサインボードとしては、例えば下記特許文献1〜3が提案されている。
【0005】
特許文献1には、第1形態として、道路標識等の表示内容に合わせて作製された有機EL素子を表示面に設けてなる自発光式表示装置が提案され、第2形態として、有機EL素子をシート状光源として背面側に設け、この有機EL素子の表示面側に道路標識等の表示形状を貼り付けてなる自発光式表示装置が提案されている。また、特許文献2には、透明なステッカー本体に、文字又は図形の形状に形成されたEL素子を設けてなる発光ステッカーが提案されている。また、特許文献3には、EL発光シートと、そのEL発光シートの一方の面に剥離自在に貼着されているとともにその表示面側に所望の表示情報が印刷手段で形成された透明性複合シートとで構成されてなる発光表示用シートが提案されている。これらの各文献中で用いられた有機EL素子は、面発光で薄型であり、さらに自由に曲げることができるといった特徴があることから、天井面や壁に等の平面や、湾曲した部分にも貼り付けることが可能である。
【0006】
上記各文献で用いられている有機EL素子は、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層とトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層、又は、発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層、又は、正孔注入層と発光層と電子注入層、のいずれかの積層形態を2つの電極(発光面側の電極は透明電極になる。)間に介在させてなる構造体である。こうした有機EL素子は、発光層に注入された電子と正孔とが再結合するときに生じる発光を利用するものである。このため、有機EL素子は、発光層の厚さを薄くすることにより、例えば4.5Vという低電圧での駆動が可能で応答も速いといった利点や、輝度が注入電流に比例するために高輝度のEL素子を得ることができるといった利点等を有している。また、発光層とする蛍光性の有機固体の種類を変えることにより、青、緑、黄、赤の可視域すべての色で発光が得られている。有機EL素子からの光は指向性を持たないため、広い範囲に渡って光が照射される。そのため、不特定な広い範囲を照らす場合は有効である。
【0007】
ところで、サインボードに表示された内容は、その内容を伝えたい観察者が容易に視認できることが好ましい。観察者は、全ての方向からそのサインボードを見るのではなく、ある特定の方向からサインボードを見ることがほとんどである。一例として、高速道路には種々の情報を表示するサインボードが設置されているが、そのサインボードに対しては、高速道路を走行する自動車や二輪車のドライバーが一定の方向から所定の角度で見ることになる。また、建造物の高い壁面にも種々のサインボードが取り付けられているが、そのサインボードに対しては、歩行者は歩道上等から所定の角度でサインボードを見上げることになる。したがって、サインボードを任意の位置に設置した場合、サインボードの表示内容を見せたい観察者は、サインボードからみて特定の方向に多く存在することとなる
【特許文献1】特開2001−272937号公報
【特許文献2】特開2001−306003号公報
【特許文献3】特開2001−331134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
EL素子は、前述のように、自発光で指向性が低いため、広い範囲に渡って光が照射される。このEL素子をサインボードの照明として考えると、情報を乗せた光は、同様に広い範囲にわたって拡散されることとなる。このことは言い換えると、情報を伝えたい観察者がいない方向に拡散した光は、そのまま無駄になるということであり、エネルギーを有効利用しているとは言い難いものである。また、情報を伝えたい観察者に十分視認できるよう輝度を高めようとする場合は、EL素子に印加する駆動電圧を高めて電流値を高くすることが必要であるが、電流値を高く設定すると、EL発光材料への負荷が増して発光寿命が短くなってしまう。また、当然ながら電流値を高く設定することは、エネルギー的にも不利になるとともに大電流に伴う発熱も無視できなくなる。
【0009】
本発明は上記した現状に鑑みてなされたものであって、その目的は、全方向に光が拡散するEL素子を光源とした発光部材をサインボードに用いた場合において、その発光方向を積極的に制御して、情報を伝えたい観察者に効率的に情報を伝えることができ、かつ消費電力を低減することができる自発光型サインボードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の自発光型サインボードは、所定色の光を発光するエレクトロルミネッセンス素子を有し、所定の発光パターンを表示する発光部材と、該発光部材から所定の輝度分布で発光する光のうち実質的に最も高い輝度を示す方向の光を主に集光する集光部材及び/又は該光を主に偏向する偏向部材と、を有することを特徴とする。
【0011】
この発明において、所定の発光パターンを表示する光を所定の輝度分布で発する発光部材と、発した光のうち実質的に最も高い輝度を示す方向の光を主に集光する集光部材とを有するように構成されてなる発明によれば、駆動電圧を高めて電流値を高くしなくても、発光部材からの情報(以下、情報光ともいう。)を高いエネルギー効率で照射することができる。その結果、表示パターンが表示する情報光を、集光前よりも観察者に効率的に伝えることができる。さらに、情報を伝えたい観察者に最も高い輝度を示す方向の情報光を集光前よりも十分視認させることができるので、駆動電圧を高めて輝度を高めなくてもよく、消費電力の低減と、短寿命化を防ぐことができる。
【0012】
また、この発明において、所定の発光パターンを表示する光を所定の輝度分布で発する発光部材と、発した光のうち実質的に最も高い輝度を示す方向の光を主に偏向する偏向部材とを有するように構成されてなる発明によれば、所望の方向に光の向きを変えることができるので、表示パターンが表示する情報光を、特定の方向の観察者に効率的に伝えることができる。その結果、エネルギーロスを小さくして発光部材の長寿命化を実現できる。また、観察者に向けてサインボードを傾斜させる必要もないので、高い意匠性を実現できる。
【0013】
また、この発明において、それらを両方備えた発明によれば、その両方の作用効果を奏することができる。
【0014】
本発明の自発光型サインボードの好ましい態様として、前記集光部材で集光する光が、偏向部材によって既に偏向された光であるように構成してもよいし、前記偏向部材で偏向する光が、集光部材によって既に集光された光であるように構成してもよい。
【0015】
これらの発明によれば、偏向部材で偏向する光が集光部材で既に集光された光であるので、特定の方向にいる観察者に対して伝えたい情報を、より高いエネルギー効率の情報光として照射し、伝えることができる。
【0016】
また、本発明の自発光型サインボードの好ましい態様として、(A)前記集光部材は、微細なレンズ又はプリズムが形成された光学部材であるように構成してもよいし、(B)前記偏向部材は、微細なレンズ、プリズム又はホログラムが形成された光学部材であるように構成してもよい。
【0017】
こうした態様からなる本発明によれば、発光部材から発光した情報光を所定の態様で集光し又は偏向することができる。
【0018】
本発明の自発光型サインボードの好ましい態様として、光を集光する集光部材、光の集光度合いが異なる2種以上の集光部材、光を偏向する偏向部材、光の偏向度合いが異なる2種以上の偏向部材、及び、光を集光するのと同時に偏向する集光偏向部材、から選ばれる2種以上の光学部材を含むように組み合わされてなり、該2種以上の光学部材が前記発光部材の面内方向に配置されているように構成する。
【0019】
この発明によれば、異なる態様の2種以上の光学部材を発光部材の面内方向に配置するので、例えば湾曲した壁面に本発明の自発光型サインボードを貼り付け且つその湾曲した壁面から特定の方向にいる観察者に対して情報を効果的に伝えたい場合や本発明の自発光型サインボードとした場合のように、積極的に情報光を向けたい方向が自発光型サインボードの面内で異なるときに特に有効である。
【0020】
また、本発明の自発光型サインボードの好ましい態様として、光を集光する集光部材、光の集光度合いが異なる2種以上の集光部材、光を偏向する偏向部材、光の偏向度合いが異なる2種以上の偏向部材、及び、光を集光するのと同時に偏向する集光偏向部材、から選ばれる2種以上の光学部材を含むように組み合わされてなり、該2種以上の光学部材を前記エレクトロルミネッセンス素子の発光面上で自在に切り換えることができる切換手段を備えているように構成する。この場合において、前記切換手段が前記2種以上の光学部材を所定の順番でスライドさせるスライド手段等を例示でき、より具体的な例としては、頂点角度の異なるレンズフィルムを一連のロール状態としてスライドさせるスライド手段が挙げられる。
【0021】
この発明によれば、異なる態様の2種以上の光学部材を自在に切り換えることができる切換手段を備えるので、それらの光学部材を切り換えることにより、情報光の発する方向を場面に応じて自在に変更することが可能となる。この場合において、切換手段として、2種以上の光学部材を所定の順番でスライドさせるスライド手段を採用すれば、情報光を向ける方向をシームレスに連続して変化させることができるので、例えば大きな会場等で、会場内の各エリアにいる観察者に対して順番に同じ情報又は異なる情報を伝えるように使用することができる。
【0022】
本発明の自発光型サインボードの好ましい態様として、前記エレクトロルミネッセンス素子が2以上の発光色を発光するように構成する。
【0023】
この発明のように、EL素子を2以上の発光色を発光する発光素子とすれば、例えばアクティブマトリクス方式で多色カラー又はフルカラーのEL発光を行って定期又は不定期に発光色を変化させたり、表示情報の内容に応じて発光色を変化させたりすることが可能となるので、観察者に対する訴求効果(観察者に注意を喚起するような効果のこと。)をより高めることができる。
【0024】
本発明の自発光型サインボードの好ましい態様として、前記エレクトロルミネッセンス素子が単色光を発光し、前記発光部材が面内方向に2以上の単色発光領域を有するように構成する。
【0025】
この発明のようにEL素子を単色光発光素子とし、発光部材が面内方向に2以上の単色発光領域を有するように構成すれば、例えばエリア毎又は表示する文字や図形毎に単色発光領域を分けることが可能になるので、観察者に対する訴求効果をより高めることができる。
【0026】
本発明の自発光型サインボードの好ましい態様として、前記集光部材及び/又は偏向部材が着脱自在であるように構成する。
【0027】
この発明によれば、集光部材及び/又は偏向部材を取り外し自在とすることにより、表示情報を向けたい方向を切り換えることができる。さらに、照射方向が異なる複数の光学部材を入れ替えて適用することにより、必要に応じて情報伝達方向を積極的に規制することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の自発光型サインボードによれば、駆動電圧を高めて電流値を高くしなくても、発光部材から発した光を高いエネルギー効率で所定の方向に向けることができるので、観察者に効率的に情報を伝えることができるとともに、消費電力の低減と、短寿命化を防ぐことができる。また、観察者に向けてサインボードを傾斜させる必要もないので、高い意匠性を実現できる。
【0029】
また、本発明の自発光型サインボードによれば、例えば湾曲壁面や変形壁面に本発明の自発光型サインボードを貼り付け且つその湾曲壁面又は変形壁面から特定の方向いる観察者に対して情報を効果的に伝えたい場合や大面積のサインボードとした場合のように、積極的に情報光(発光パターンが表示する情報をもった光のこと。)を向けたい方向が自発光型サインボードの面内で異なるときに特に有効である。また、情報光を集光ないし偏向する少なくとも2種の光学部材を切り換えることができるので、積極的に情報光を提供したい方向を場面に応じて自在に変更することが可能となる。
【0030】
また、本発明の自発光型サインボードによれば、例えば多色カラー又はフルカラーのEL発光を行って定期又は不定期に発光色を変化させたり、表示情報の内容に応じて発光色を変化させたりすることが可能となり、また、例えばエリア毎又は表示する文字や図形毎に単色発光領域を分けることが可能になるので、観察者に対する訴求効果をより高めることができる。
【0031】
こうした効果を奏する本発明の自発光型サインボードは、屋内外に設置され、広告、装飾、道路標識、その他各種の情報表示体として機能させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の自発光型サインボードの実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定解釈されるものではない。
【0033】
図1及び図2は、本発明の自発光型サインボードの例を示す模式的な断面図である。本発明の第1態様に係る自発光型サインボード30Aは、図1に示すように、所定色の光を発光するエレクトロルミネッセンス素子(以下「EL素子」という。)を有し、所定の発光パターンを表示する発光部材10と、その発光部材10から所定の輝度分布で発光する光のうち実質的に最も高い輝度を示す方向の光を主に集光する集光部材20Aとの組み合わせからなる。また、本発明の第2態様に係る自発光型サインボード30Bは、図2に示すように、所定色の光を発光するEL素子を有し、所定の発光パターンを表示する発光部材10と、その発光部材10から所定の輝度分布で発光する光のうち実質的に最も高い輝度を示す方向の光を主に偏向する偏向部材20Bとの組み合わせからなる。
【0034】
これら集光部材20Aと偏向部材20Bのように光を制御する光学部材を総称するときは「光学部材20」で表し、光学部材20を備える自発光型サインボードを総称するときは「自発光型サインボード30」で表す。また、「主に集光する」とは、実質的に最も高い輝度を示す方向の光の方向を変えずに又はあまり変えずに集光する場合をいい、光の方向を変えること(偏向)は実質的には起こさない場合をいう。また、「主に偏向する」とは、実質的に最も高い輝度を示す方向の光の方向を実質的に変える場合をいい、光の集光は実質的には起こさない場合をいう。
【0035】
こうした基本構成からなる本発明の自発光型サインボード30は、発光部材10から発した光を制御する光学部材20を備えるので、発した情報光を高いエネルギー効率下で所定の方向に向けることができる。そのため、情報を伝えたい観察者に対し、発光パターンが表示する所定情報を十分視認させることができるので、駆動電圧を高めて輝度を高めなくてもよく、消費電力の低減と、短寿命化を防ぐことができる。
【0036】
図3〜図5は、本発明の自発光型サインボードの発光パターンの例を示す模式的な正面図である。発光パターンの例としては、図3〜図5の自発光型サインボード30C〜30Eに示すように、所定の文字パターン31や所定の絵柄パターン32を挙げることができる。図3は企業広告の例であり、例えば白色光を発光する全ベタ状の発光パターンからなるEL素子パネルの前面に、文字パターン31と絵柄パターン32を備えた透光性パネルを配置した態様の例である。また、図4は歩行者用信号機の例であり、例えば「止まれ」を示すパターン32で形成された赤色発光EL素子と、「進め」を示す絵柄パターン32で形成された緑色発光EL素子とからなる態様の例である。図5は道路標識と規制案内の例であり、例えば道路標識は所定色の文字パターン31を表示する発光パターンであり、規制案内は色や文字を任意に可変できるEL素子を備えた態様の例である。すなわち、本発明において、「所定の発光パターン」とは、全ベタ状のEL素子からなる発光パターンと、文字や絵柄状に形成されたEL素子からなる発光パターンとを含む。
【0037】
これらの発光パターンを表示する自発光型サインボード30は、その種類に応じ、情報を伝えたい観察者の位置がほぼ決まっているので、その観察者の方向に情報光を向けることが望ましい。本発明の自発光型サインボード30は、光学部材20によって情報光を所定の方向に向けている。
【0038】
以下、本発明の自発光型サインボード30の構成要素について説明する。
【0039】
[発光部材]
発光部材10は、光学部材20と組み合わされて本発明の自発光型サインボード30を構成する。この発光部材10は、所定色の光を発光するエレクトロルミネッセンス素子(EL素子という)を有している。発光部材10が表示する発光パターンは、EL素子が発光する光によって構成される。EL素子が単色光を発光するように構成されている場合には、発光部材10は、面内方向に2以上の単色光領域を有するエリアカラータイプの自発光型サインボード30を構成する。一方、EL素子が2以上の発光色を発光するように構成されている場合には、発光部材10は、多色カラー又はフルカラータイプの自発光型サインボード30を構成する。
【0040】
図6は、エリアカラー自発光型サインボード用のEL素子の一例を示す模式的な断面図であり、図7は、フルカラー自発光型サインボード用のEL素子の一例を示す模式的な断面図である。図6に示すEL素子40Aは単色光を発光させる素子構造であり、この素子構造を発光部材10の面内方向に2以上の領域となるように配置することにより、エリアカラータイプの自発光型サインボード30を構成することができる。一方、図7に示すEL素子40Bは画素内で2以上の発光色(図7では3色)を発光させる素子構造であり、この素子構造を発光部材10の面内に多数の画素として配置することにより、多色カラー又はフルカラータイプの自発光型サインボード30を構成することができる。なお、図6に例示した単色光の素子構造は、図7に例示した3色の素子構造を構成する単素子として表すことができる。以下、EL素子を総称するときは、符号40で表す。
【0041】
EL素子40は、図6及び図7に例示するように、EL発光材料を含む発光層4(図7においては3色の発光層4R,4G,4B)を2つの電極3,5間に挟んでなるEL積層体2を少なくとも有している。こうしたEL素子40は、発光層4に注入された電子と正孔とが再結合するときに生じる発光11を利用している。具体的には、図6及び図7に示すように、基材1上に、電極3、発光層4及び電極5の順からなるEL積層体2が設けられており、さらに必要に応じてそのEL積層体2上に保護層6が設けられている。そして、さらに必要に応じて、その上に、カラーフィルタ8を直接又は接着層7を介して設けることもできる。
【0042】
以下では、発光部材10を構成するEL素子40について、有機EL素子と無機EL素子の各構成について説明する。なお、図6及び図7に示すEL素子40A,40Bは有機、無機問わないが、後述する図8に示すEL素子40Cは無機EL素子の一例である。
【0043】
(有機EL素子)
先ず、有機EL素子の構成について説明する。基材1は、本発明の自発光型サインボード30を装着する壁面等の被装着体50側に設けられて、本発明の自発光型サインボード全体を支持する基材として、又は、本発明の自発光型サインボード全体を支持する基材に取り付ける基材として作用する。基材1の種類、大きさ、厚さ等は特に限定されるものではなく、剛性を有するものであっても、フレキシブルで柔軟性のあるものであってもよい。基材の構成材料としては、例えば、Al等の金属、ガラス、石英、又は各種の樹脂等の材料を挙げることができる。なお、発光層4で発光した光は、図6及び図7においてはカラーフィルタ8の側から出射するので、この基材1は、必ずしも透明又は半透明になる材料を用いる必要はなく、不透明材料を用いることができる。
【0044】
電極3は、陽極又は陰極のいずれかであるが、一般的には陽極として基材1上に設けられ、その電極3上には正孔注入層や正孔輸送層が設けられる。形成材料としては、金、銀、クロム等の金属、ITO(インジウム錫オキサイド)、酸化インジウム、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、SnO、ZnO等の透明導電膜、ポリアニリン、ポリアセチレン等の導電性酸化物等を挙げることができる。また、ITOと銀とITOとの積層構造からなる反射型電極とすることもできる。
【0045】
発光層4は、本発明の自発光型サインボード30の発光色を規定する層であり、図6に示すように特定色の発光層を全体又は所定領域に設けたエリアカラー自発光型サインボード用の発光層であってもよいし、図7に示すように赤色発光層4R、緑色発光層4G及び青色発光層4Bを面内方向に面順次に設けたフルカラー自発光型サインボード用の発光層であってもよい。発光層形成用の材料としては、従来公知の有機EL材料を用いることができる。なお、本発明での発光色には白色も含まれ、したがってその発光層4には白色発光層も包含される。
【0046】
発光層4は、具体的には、発光材料を含む事実上の発光層(発光材料層ともいう。)を挟むように電荷注入層や電荷輸送層が設けられた複数の層で構成されている。例えば電極3が陽極である場合、発光層4は、その電極3側から、正孔注入層と発光材料層とからなる積層体、又は、正孔注入層と発光材料層と電子注入層とからなる積層体、又は、発光材料層と電子注入層とからなる積層体、のいずれかの積層体で構成される。正孔注入層と発光材料層との間には正孔輸送層が設けられていてもよいし、発光材料層と電子注入層との間には電子輸送層が設けられていてもよい。また、各注入層や発光材料層が正孔輸送性材料や電子輸送性材料を含んでいてもよい。
【0047】
正孔注入層の形成材料としては、例えば色素系材料、金属錯体系材料又は高分子系材料等、正孔注入層用材料として通常使用されるものを用いることができる。また、正孔輸送層の形成材料としては、フタロシアニン、ナフタロシアニン等、正孔輸送層用材料として通常使用されるものを用いることができる。
【0048】
発光材料層は、ホスト材料とゲスト材料とを含有する層であり、そのホスト材料とゲスト材料は従来公知のものを使用することができ、また、それらの配合割合は使用する材料によって任意に選択される。エリアカラー自発光型サインボード用の発光材料層やフルカラー自発光型サインボード用の発光材料層を構成する各色の形成材料の一例を挙げれば、赤色発光材料層用としては、ホスト材料として4,4−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)を用いると共にゲスト材料としてトリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム(III)錯体(Ir(piq))を挙げることができ、緑色発光材料層用としては、ホスト材料として4,4−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)を用いると共にゲスト材料としてトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)錯体(Ir(ppy))を挙げることができ、青色発光材料層用としては、ホスト材料として9,10−ジ−2−ナフチルアントラセン(DNA)を用いると共にゲスト材料として1−tert−ブチル−ペリレン(TBP)を挙げることができる。また、その他の色を発光させる材料を有するものであってもよい。
【0049】
なお、発光材料層を形成するための材料はこれら以外であってもよく、例えば、ホスト材料としては、アントラセン誘導体、アリールアミン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体、スピロ化合物等を例示でき、ゲスト材料としては、ペリレン誘導体、ピレン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、アリールアミン誘導体、フルオレン誘導体、FIrPic等のイリジウム錯体等を例示できる。
【0050】
電子輸送層の形成材料としては、例えば金属錯体系材料、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体等、電子輸送層として一般的に用いられている材料を挙げることができる。また、電子注入層の形成材料としては、発光材料層の発光材料に例示した材料の他、アルミニウム、フッ化リチウム等、電子注入層として一般的に用いられている材料を挙げることができる。
【0051】
電極5は、上記電極3の対極をなすものであり、陰極又は陽極のいずれかであるが、一般的には陰極として設けられる。電極5は発光層4の光取り出し側にあるので、形成材料としては、ITO(インジウム錫オキサイド)、酸化インジウム、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、SnO、ZnO等の透明導電材料や、MgAg等からなる半透明金属が好ましく用いられる。
【0052】
(無機EL素子)
次に、無機EL素子の構成について説明する。図8は、無機EL素子40Cの一例を示す模式的な断面図である。
【0053】
基材1’としては、アルミナ(Al)、石英ガラス(SiO)、マグネシア(MgO)、フォルステライト(2MgO・SiO)、ステアタイト(MgO・SiO)、ムライト(3Al・2SiO)、ベリリア(BeO)、ジルコニア(ZrO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC+BeO)等のセラミック基材、結晶化ガラス、石英ガラス等を用いることができる。その他、Ba系、Sr系、及びPb系ペロブスカイトを用いることもできる。また、高耐熱ガラス等を用いてもよく、ホウロウ等の絶縁処理を行った金属基板等を用いてもよい。
【0054】
電極3’は、基材1’上に設けられ。この電極3’は、導電性の良い材料であれば特に制限されず、例えば、Au、Ag、Pt、Ir等の貴金属、Ni、W、Mo、Nb、Ta等の高融点金属、これら貴金属又は高融点金属の合金等を使用することができる。通常、AuやPt等の貴金属が好ましく用いられるが、図8に示す電極保護層19を電極3’の表面に設ければ、酸化や硫化され易いような金属、例えばAg、Ag/Pd等を用いることができる。なお、図8に示す電極保護層19は、例えばチタン酸バリウム等を例示でき、後述する無機発光層4’から生じる可能性のある硫化物等によって電極3’が腐食しないように保護するように作用する。
【0055】
電極3’の形成は、上記電極材料の粉体を、例えば溶剤に又は溶剤と樹脂に、必要に応じてガラスフリット等を添加し、混合又は混練して得られたペーストをスクリーン印刷等の方式によって基材1’上に所望のストライプパターンで塗布形成し、焼成することにより行う。また、ペーストをパターン状ではなく基材全面にベタ状に塗布形成し、焼成した後に、フォトリソグラフィー法によりパターニングしてもよい。また、電極3’は、上記の電極材料を用いて、メッキ、蒸着、又はスパッタリングを行うことにより、基材全面にベタ状に金属層又は合金層を形成した後に、上記のようにしてパターニングすることもでき、あるいは、メッキ、蒸着、又はスパッタリングをマスクパターンを介して行うことにより、パターン状に形成することもできる。電極3’の厚さは、形成方法によっても異なるが、スクリーン印刷等の厚膜の形成に適した方式による場合は0.5μm〜5μm程度であることが好ましく、蒸着やスパッタリング等の薄膜の形成に適した方式による場合は0.1μm〜1.0μm程度であることが好ましい。
【0056】
厚膜誘電体層16は、電極3’上、又は電極3’上に電極保護層19が設けられた場合にはその電極保護層19上に設けられる。この厚膜誘電体層16は、誘電体の粉体を、例えば溶剤に又は溶剤と樹脂に、必要に応じてガラスフリット等を添加し、混合又は混練して得られたペーストをスクリーン印刷等の方式によって、電極3’を覆うように塗布形成し、焼成して形成する。厚膜誘電体層16は、静水圧プレス法により、又は、ゾルゲル法やMOD(Metal Organic Decomposition)法等によって形成することができる。静水圧プレス法での形成は、焼成前の厚膜誘電体層の上面に、表面が平滑な基準板を載置し、静水圧プレス法によって圧縮し、その後に焼成を行う。静水圧プレスの条件としては、室温〜300℃で、50KPa〜400MPaで行われる。この範囲で行えば、密度が高く、誘電特性の優れる厚膜誘電体層16が得られる。
【0057】
誘電体粉体としては、例えばBaTiO、(BaCa1−x)TiO、(BaSr1−x)TiO、PbTiO、Pb(ZrTi1−x)O(以下、PZTともいう)等のペロブスカイト構造を有する強誘電体、Pb(Mg1/3Nb2/3)O(以下、PMNともいう)等に代表される複合ペロブスカイト型強誘電体、BiTi12、SrBiTaに代表されるビスマス層状化合物、(SrBa1−x)Nb、PbNb等に代表されるタングステンブロンズ型強誘電体等を用いることができる。中でも、特により高い誘電率を達成でき、かつより低い焼成温度で熱処理可能である、BaTiO、PZT、PMN等のペロブスカイト型誘電体がより好ましく、さらにその中でも化学組成中に鉛元素を含む誘電体がより好ましい。この鉛を含む誘電体は、基材1’としてガラスを用いる場合に特に適している。また、PMNに代表されるPbを含む複合ペロブスカイト型化合物はリラクサと呼ばれ、広い温度範囲で高い比誘電率を示すことから、厚膜誘電体材料として好ましい。
【0058】
厚膜誘電体層16の厚さは、2μm〜100μm程度が好ましい。100μmよりも厚いと緻密化が困難となり、一方、2μmよりも薄いと電極3’のパターニング部分との段差の影響が大きくなる。後記する発光層4’は、厚膜誘電体層16と電気的に直列に配置されることになるため、外部から電圧を印加したとき、発光層4’に効率よく電圧がかかるようにするためには、厚膜誘電体層16の静電容量が発光層4’の静電容量よりも高いことが好ましく、具体的には10倍程度であることが好ましい。なお、厚膜誘電体層16の静電容量と発光層4’の静電容量との比は、それぞれの層の「比誘電率/膜厚」どうしの比率に等しくなる。
【0059】
薄膜誘電体層17は、発光層側の表面の平坦性を向上させ、かつより厚膜誘電体層16の誘電率特性を向上させる場合に設けられる。厚膜誘電体層16に凹凸や異物が付着しているような場合であっても、薄膜誘電体層17を厚膜誘電体層16上に形成することにより、発光層4’の下地層となる薄膜誘電体層17の表面を極めて平坦化することができる。この薄膜誘電体層17は、上記厚膜誘電体層16と同じ組成物を用いて形成することができる。薄膜誘電体層17は、厚膜誘電体層16上に薄膜誘電体層形成用組成物を含む塗布液を、例えばダイコーティング法、ロールコーティング法、ブレードコーティング法、スピンコーティング法等によって塗布形成し、形成された塗膜を塗布液の組成に応じて乾燥し、焼成を行って形成することができる。なお、この薄膜誘電体層17は、平坦性や電気特性をさらに向上させるための他の層を含んでもよい。薄膜誘電体層17の厚さは、0.01μm〜3μm程度でよい。薄膜誘電体層17の厚さは、膜厚が0.01μm未満の場合は、膜としての機能を有さず、また、3μmを超える厚膜となるとクラックが発生し易くなるとともに、基材全体の誘電率が増加するため、電圧印加時に発光層4’に十分に電圧が印加されない場合がある。
【0060】
発光層4’は、非常に平坦な薄膜誘電体層17上に形成されるので、発光特性に優れたものとなる。発光層4’を形成する発光材料は、例えば赤色発光を得る材料としてはZnS、Mn/CdSSe等を挙げることができ、緑色発光を得る材料としてはZnS:TbOF、ZnS:Tb等を挙げることができ、青色発光を得る材料としてはSrS:Ce、(SrS:Ce/Zns)n、CaGa:Ce、SrGa:Ce等を挙げることができ、また、白色発光を得る材料としてSrSは:Ce/ZnS:Mn等を挙げることができる。発光層4’の形成は、上記発光材料を蒸着、スパッタリング又はCVD法等によって行うことができる。発光層4’の厚さは、0.1μm〜3μm程度が好ましく、0.3μm〜2μm程度がより好ましい。
【0061】
薄膜誘電体層18は、発光層4’上に設けられる。この薄膜誘電体層18を設けることにより、外部からの水蒸気や酸素等が発光層4’側へ侵入するのを抑制することができる。この薄膜誘電体層18は、上述した薄膜誘電体層17と同様の方法で形成することができる。また、薄膜誘電体層18の厚さは、0.01μm〜1μm程度が好ましく、0.015μm〜0.5μm程度がより好ましい。なお、この薄膜誘電体層18と上記薄膜誘電体層17とで好ましい膜厚が異なっているのは、それぞれの薄膜誘電体層を設ける下地の表面粗さが異なっているためである。
【0062】
電極5’は、観測者側に設けられるため、発光層4’から発光した光の透過を妨げないように、透明電極材料で形成する必要がある。透明電極材料としては、ITO(酸化インジウム錫)、SnO、ZnO−Al等の酸化物導電性材料が挙げられる。電極5’の形成は、上記の酸化物導電性材料を蒸着又はスパッタリングすることにより行うことができる。電極5’の厚さは、0.05μm〜0.2μm程度が好ましい。
【0063】
以上、有機EL素子と無機EL素子の構成についてそれぞれ説明したが、そうしたEL素子40は、フルカラー照明用のEL素子であってもよいし、エリアカラー照明用のEL素子であってもよい。
【0064】
なお、フルカラー照明用のEL素子は、面内方向に、赤色発光層4R、緑色発光層4G及び青色発光層4Bを順次設けた形態となるので、例えば図7に示すように、各色の発光層4R,4G,4Bを区分けするための隔壁14が設けられる。隔壁14は、酸化ケイ素等の無機材料やレジスト等の有機材料で形成することができ、電極3がパターン形成された後で各色の発光層4R,4G,4Bを形成する前に所定のパターンで形成される。隔壁14よって各色の発光層4R,4G,4Bの形成領域が区分けされた後は、例えば各色の発光層形成用塗布液等を塗布することにより各色の発光層4R,4G,4Bが形成される。その後、全体を覆うように上述した電極5が形成され、その後に例えば各発光層4R,4G,4Bに対してガスバリア性を有するSiON等の保護膜6等が任意に形成される。なお、電極3,5は、アクティブマトリクス方式で形成されてもよいし、単純マトリックス方式で形成されていてもよい。
【0065】
(白色有機EL素子)
本発明に係る自発光型サインボードは、特に白色光を発光することが有効であるので、以下では白色EL素子についてより詳しく説明する。白色EL素子は、エネルギー効率を下げることのあるカラーフィルタを設けなくてもよいので好ましい。なお、R,G,Bの単色での照明光を構成する場合は、各色の発光層を単独でベタ状に成膜して使用すれば可能である。
【0066】
白色EL素子は、発光層4を第1発光層と第2発光層で構成し、かつ第1発光層、第2発光層の順に電極3(通常は透明電極からなる陽極)側から順次積層して構成することが好ましい。特に、電極5(通常は陰極)側に近い第2発光層が、遠い第1発光層よりも電子輸送能力が大であることが好ましい。その理由は、2つの発光層の界面で主たる発光が生じ、ここでの発光又は励起エネルギーを利用し、液体状態での蛍光ピークが580nm以上650nm以下の有機化合物が発光し、透明電極側から白色光を取り出すことができるからである。第1発光層と第2発光層の積層順を逆にした場合は、第1発光層の発光が第2発光層に吸収され、良好な白色光を得ることができなくなる。液体状態での蛍光ピークが580nm以上650nm以下である有機化合物は、発光波長では長波長成分であるので、他の成分により吸収されることはなく、有機化合物層のいかなる層に含有させてもよい。そして、第2発光層の厚さは第1発光層の厚さ以上であればよい。
【0067】
発光層の形成方法としては、例えば蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の方法を挙げることができるが、特に分子堆積膜であることが好ましい。ここで、分子堆積膜とは、有機化合物の気相状態から沈着され、形成された膜や、有機化合物の溶液状態又は液相状態から固体化され、形成された膜のことである。LB法で形成された分子堆積膜は、凝集構造や高次構造の相違、又はそれに起因する機能的な相違により区分けすることができる。
【0068】
正孔注入輸送層は、必須の層ではないが、発光性能を向上させるために好ましく用いられる。正孔注入輸送層用の材料としては、より低い電界で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、さらに正孔の移動度が104〜106V/cmの電場で少なくとも10-6cm2 /V・秒であることがより好ましい。
【0069】
正孔注入輸送層としては、例えば特許第3366401号に記載の、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体等を挙げることができる。さらに、シラザン誘導体、ポリシラン系、アニリン系共重合体、また、特願平1−211399号明細書で示された導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0070】
特に、次に示すポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物を用いることが好ましく、中でも芳香族第三級アミン化合物が好ましい。
【0071】
ポルフィリン化合物の代表例としては、ポルフィン;1,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン銅(II);1,10,15,20−テトラフェニル21H,23H−ポルフィン亜鉛(II);5,10,15,20−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)−21H,23H−ポルフィン;シリコンフタロシアニンオキシド;アルミニウムフタロシアニンクロリド;フタロシアニン(無金属);ジリチウムフタロシアニン;銅テトラメチルフタロシアニン;銅フタロシアニン;クロムフタロシアニン;亜鉛フタロシアニン;鉛フタロシアニン;チタニウムフタロシアニンオキシド;マグネシウムフタロシアニン;銅オクタメチルフタロシアニン等が挙げられる。また、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノフェニル;N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TPDA);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル;N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル;4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−〔4(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4’−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール;芳香族ジメチリディン系化合物等が挙げられる。また、芳香族メチリジン化合物も、正孔注入輸送層の材料として用いることができる。さらに、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物(国際公開特許WO90−05998号公報参照)も、正孔注入輸送層の材料として用いることができる。
【0072】
正孔注入輸送層は、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の方法で形成することができる。正孔注入輸送層の厚さは、通常は1nm〜10μm、好ましくは5nm〜5μmである。正孔注入輸送層は、これらの正孔注入輸送材料一種又は二種以上からなる一層で構成されてもよいし、あるいは、前記正孔注入輸送層とは別種の化合物からなる正孔注入輸送層を積層したものであってもよい。
【0073】
電子注入輸送層には、発光層4と電極5(陰極)との間の付着性を向上させるために、発光層と陰極に対して付着性の高い材料を含有させることが好ましい。付着性の高い材料としては、ニトロ置換フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン誘導体等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン誘導体及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、その他特定の電子伝達性化合物等を挙げることができる。また、8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体(Al、Zn、Li、Ga、Be、In、Mg、Cu、Ca、Sn又はPb)を挙げることができる。具体的には、オキシン(一般に8−キノリノール又は8−ヒドロキシキノリン)のキレートを含む金属キレートオキシノイド化合物である。このような化合物は高水準の性能を示し、容易に薄膜にすることができる。
【0074】
具体的なキレート化オキシノイド化合物としては、トリス(8−キノリノール)アルミニウム;ビス(8−キノリノール)マグネシウム;ビス(ベンゾ−8−キノリノール)亜鉛;ビス(2−メチル−8−キノリラート)アルミニウムオキシド;トリス(8−キノリノール)インジウム;トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム;8−キノリノールリチウム;トリス(5−クロロ−8−キノリノール)ガリウム;ビス(5−クロロ−8−キノリノール)カルシウム;5,7−ジクロル−8−キノリノールアルミニウム;トリス(5,7−ジブロモ−8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム等を挙げることができる。その他に、メタルフリー又はメタルフタロシアニン、それらの末端がアルキル基又はスルホン基で置換されているものも好ましい。さらに、発光層の材料として前述したジスチリルピラジン誘導体も電子注入輸送層の材料として用いることができる。さらに、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物(国際公開特許WO90−05998号公報参照)も、電子注入輸送層の材料として用いることができる。
【0075】
電子注入輸送層は、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の薄膜化方法で形成することができる。電子注入輸送層の厚さは、通常は1nm〜10μm、好ましくは5nm〜5μmである。電子注入輸送層は、これらの電子注入輸送材料一種又は二種以上からなる一層で構成されてもよいし、あるいは、前記電子注入輸送層とは別種の化合物からなる電子注入輸送層を積層したものであってもよい。
【0076】
(カラーフィルタ)
上記した発光部材10は、例えば白色光を発光する全ベタ状発光パターンからなるEL素子パネルの前面に文字や絵柄パターンを備えた透光性パネルを配置してなる発光部材や、例えば所定色を発光する所定のパターン形状からなるEL素子を有するパネルを発光部材したものが好ましく用いられるが、本発明の自発光型サインボードには、必要に応じ、図6及び図7に示すようなカラーフィルタ8を任意に設けてもよい。カラーフィルタ8は、図6に示すように、エリアカラー照明用のEL素子40Aに対応した単色着色層からなるカラーフィルタであってもよいし、図7に示すように、フルカラー照明用のEL素子40Bに対応した単色着色層からなるカラーフィルタであってもよいし、その他の各種形態からなるカラーフィルタであってもよく、特に限定されない。こうしたカラーフィルタ8は、例えば白色発光を着色したい場合や、各色の発光を希望の色目にしたい場合に設けることができる。カラーフィルタ8を構成する着色層としては、一般的に設けられている赤色着色層、緑色着色層、青色着色層の他、シアン着色層、マゼンダ着色層から選ばれる1種又は2種以上の着色層が設けられる。
【0077】
なお、EL素子40が発光する光によって形成される発光パターンは、エリアカラータイプの自発光型サインボード30の場合においては、図6に示す符号8のカラーフィルタの構造によって実現できる。例えば、符号8のカラーフィルタを、所定の文字パターン又は絵柄パターンとし、それ以外を遮蔽パターンとすることにより、図3〜図5に例示する所定の文字パターン31又は絵柄パターン32を発光パターンとすることもできる。また、多色カラー又はフルカラータイプの自発光型サインボード30の場合においては、アクティブマトリクス方式でEL発光を行って文字や絵柄を表示することができるので、所定の文字パターンや絵柄パターンを任意に表示できる。特にアクティブマトリクス方式でEL発光を行う場合は、定期又は不定期に発光色を変化させたり、表示情報の内容に応じて発光色を変化させたりすることが可能となる。
【0078】
(光学部材)
次に、光学部材について説明する。本発明の自発光型サインボード30を構成する光学部材20は、図1及び図2に示すように、大別して2つの態様がある。図1に示す第1の態様に係る光学部材は、上述したEL素子40を有する発光部材10から所定の輝度分布で発光する光のうち実質的に最も高い輝度を示す方向の光を主に集光する集光部材20Aである。一方、図2に示す第2の態様に係る光学部材は、上述したEL素子40を有する発光部材10から所定の輝度分布で発光する光のうち実質的に最も高い輝度を示す方向の光を主に偏向する偏向部材20Bである。
【0079】
図1に示す集光部材20Aは、発光部材10から所定の方向に発光した光を集光するように機能し、図2に示す偏向部材20Bは、発光部材10から所定の方向に発光した光の向きを変える(偏向する)ように機能する。なお、その集光や偏向の程度は特に限定されず、その目的に応じて任意である。また、図2中のθは、発光部材面と所定の角度θをなす方向(法線方向ではない方向)を示している。
【0080】
「実質的に最も高い輝度を示す方向の光」とは、輝度が偶然高くなったようなイレギュラーの方向の光を指すのではなく、「発光部材10から発光した主要な方向の光」を指していることを意味し、本発明の自発光型サインボードを構成する光学部材20は、そうした主要な方向の光を集光ないし偏向する部材として作用する。また、「輝度分布」とは、発光部材10を輝度測定装置(ここではELDIM社製のEZ−contrast160R)によって測定して得られた輝度の分布をいい、法線方向を正面(0°)とし、方位角度方向を360°の全方位、極角度を左右±80°の角度で測定した結果から得られる分布である(後述の図13〜図17を参照)。
【0081】
図9には、本発明の自発光型サインボードを構成可能な光学部材の複数の例を示している。図9(A)に示す光学部材20Aは、発光部材10から発光した主要な方向の光が例えば発光部材面の法線方向の光である場合に、その光を主に集光させることができる光学部材であって、一方向に延びる二等辺の矩形レンズ21が連続して多数配列した光学部材である。詳しくは、矩形レンズ21は、その断面形状が頂角α:30°〜150°で両底角β,γ:75°〜15°の二等辺形状のレンズであり、発光部材10から広角に発光した光の多くを例えば発光部材面の法線方向に向かわせる(集光する)ように作用する。矩形レンズ21の形状を特定する前記の各角度α,β,γの値を任意に設定することによって、発光部材10から発光した光の集光の程度を任意に設定することができる。この矩形レンズ21の高さは7μm〜700μmであり、その幅(図9(A)を正面視した場合の左右方向の幅)は10μm〜1000μmである。
【0082】
また、この矩形レンズ21が配列した光学部材20Aを、一方向に延びる矩形レンズ21の方向が直交するように、すなわち矩形レンズ21の稜線が直交するように、積層させることもできる。こうすることにより、発光部材から発光した光の集光の程度をより高めることができる。
【0083】
一方、図9(B)に示す光学部材20Bは、発光部材10から発光した主要な方向の光が例えば発光部材面の法線方向の光である場合に、その光を発光部材面の法線方向ではない方向、具体的には発光部材面から所定の角度θの方向に偏向させることができる光学部材であって、一方向に延びるノコギリ刃状ないしプリズム形状の矩形レンズ22が連続して多数配列した光学部材である。詳しくは、矩形レンズ22は、その断面形状が頂角α:45°〜80°、左底角β:45°〜10°、右底角γ:90°〜45°のレンズであり、発光部材10から広角に発光した光の多くを例えば発光部材面から角度θの方向に向かわせる、すなわち偏向させるように作用する。矩形レンズ22の形状を特定する前記の各角度α,β,γの値を任意に設定することによって、発光部材10から発光した光の偏向の程度を任意に設定することができる。なお、この矩形レンズ22の高さは7μm〜700μmであり、その幅(図9(B)を正面視した場合の左右方向の幅)は10μm〜1000μmである。
【0084】
また、図9(C)に示す光学部材20Cは、発光部材10から発光した主要な方向の光が例えば発光部材面の法線方向の光である場合に、その光を主に集光させることができる光学部材であって、一方向に延びる蒲鉾状のシリンドリカルレンズ23が多数配列した光学部材である。詳しくは、シリンドリカルレンズ23は、その断面形状が半円状、例えば曲率半径が5μm〜500μm程度の凸レンズであり、発光部材10から広角に発光した光の多くを発光部材面の法線方向に向かわせる(集光する)ように作用する。シリンドリカルレンズ23の形状を特定する前記の半円形状を任意に設定することによって、発光部材10から発光した光の集光の程度を任意に設定することができる。このシリンドリカルレンズ23の高さは5μm〜500μmであり、その幅(図9(C)を正面視した場合の左右方向の幅)は10μm〜1000μmである。
【0085】
また、図9(D)に示す光学部材20Dは、発光部材10から発光した主要な方向の光が例えば発光部材面の法線方向の光である場合に、その光を正面方向に主に集光させることができる光学部材であって、ドーム形状の凸レンズ24が多数配列した所謂フライアイレンズ(ハエの目レンズ)である。詳しくは、凸レンズ24は、その断面形状が半円状のレンズであり、発光部材10から広角に発光した光の多くを発光部材面の正面方向に向かわせる(集光する)ように作用する。凸レンズ24の形状を特定する曲率を任意に設定することによって、発光部材10から発光した光を正面方向に向かわせる集光の程度は任意に設定することができる。なお、この凸レンズ24の高さは5μm〜500μmであり、その幅(図9(D)を正面視した場合の左右方向の幅)は10μm〜1000μmである。
【0086】
なお、図9(D)に示すフライアイレンズとほぼ同等の機能を有するものとして、図9(C)に示すシリンドリカルレンズ23が配列した光学部材20Cを、シリンドリカルレンズ23の延在方向が直交するように積層させることもできる。
【0087】
また、偏向部材として機能する図9(B)の光学部材20Bと発光部材10との間に、集光部材として機能する図9(A)(C)(D)の光学部材20A,20C,20Dのいずれかを配置すれば、各光学部材20A,20C,20Dによって集光性が高められた光(例えば法線方向の光)を、それ以外の方向に偏向することができる。このとき偏向された光の輝度は、光学部材20A,20C,20Dの有無によって若干異なり、それら光学部材を設けた場合の方が、設けない場合に比べて中心輝度の高い光になっている。
【0088】
また、同様に、集光部材として機能する光学部材と発光部材との間に、偏向部材として機能する光学部材を配置すれば、偏向部材によって光の方向が変えられた光を、その光と同じ又は略同じ方向に輝度を高めて透過させることができる。このとき、偏向された光が集光部材を通過することにより、中心輝度が高い光になっている。
【0089】
また、光を集光するのと同時に偏向する部材を集光偏向部材というが、この集光偏向部材は、例えば図9(A)に示す二等辺の矩形レンズ21の角度を調製して、発光部材からの光を集光するのと同時に、集光した光の方向を偏向するようにした一体型の光学部材や、例えば図9(B)に示すプリズム形状の矩形レンズ22の角度を調製して、発光部材からの光を偏向するのと同時に、偏向した後の光を集光するようにした一体型の光学部材を挙げることができる。
【0090】
本発明の自発光型サインボード30を構成する光学部材20は、上記のような微細レンズやプリズムを有する光学部材でなくてもよく、例えばホログラムが形成された光学部材であってもよい。ホログラムとしては、例えば、フォトポリマー中に光の干渉により構成した屈折率格子からなる、体積型のホログラムを用いることができる。
【0091】
体積型のホログラムはリップマンホログラムとも呼ばれ、ホログラムの厚さが光の波長より十分厚い場合のホログラムであり、記録材料の内側に厚さ方向に干渉縞を記録したもので、特定の波長と入射方向をもつ参照光に対してのみ回折光を発生するものである。詳しくは、乾板としてのフォトポリマー中で、波長532nmのLD励起レーザー光源より発振された2本の光を干渉させることにより、屈折率格子を構成してホログラムとしたものである。フォトポリマーとしては、デュポン社製のOMNIDEXシリーズ等を好適に用いることができ、回折効率も原理上90%以上が可能となる。こうしたホログラムが形成された光学部材は、発光部材から所定の方向(例えば法線方向)に発光した光の多くを発光部材面の前記所定の方向(例えば法線方向)から異なる方向に向かわせるように作用する。ホログラムを構成する際に、2本のレーザー光が干渉する角度を調整することにより、発光部材から発光した光が例えば法線方向からずれた方向に向かう程度(回折性)を任意に設定することができる。また、体積ホログラムの他にも、表面に凹凸を設けたエンボスホログラムも適用可能である。
【0092】
(他の形態の自発光型サインボード)
次に、複数の光学部材を有した複合型光学部材を備えた自発光型サインボードについ説明する。図10は、複合型光学部材を備えた自発光型サインボード30F,30Gの設置例であり、図11は、複合型光学部材が有する複数の光学部材の切換手段を備えた自発光型サインボード30Iの一例を示す模式的な断面図である。なお、既述した図3〜図5は、本発明の自発光型サインボードが各種の用途に用いた設置例を示す模式図である。
【0093】
図10(A)に示す自発光型サインボード30Fは、光の方向を所定の方向(図中では発光部材面の法線方向)に主に集光する第1光学部材20Aと、光の方向を第1光学部材20Aとは異なる方向(図中では発光部材面の下方)に主に偏向する第2光学部材20Bとが組み合わされてなる複合型光学部材を備えた自発光型サインボードである。そして、その2つの光学部材20A,20Bが発光部材10の面内方向に配置されている。第1光学部材20Aと第2光学部材20Bの面積は特に限定されない。図10(A)の態様では、同程度の面積で構成され、下半分の第1光学部材20Aが設けられた部分は発光部材面の法線方向に光を照射し、上半分の第2光学部材20Bが設けられた部分は発光部材面から下方に光を照射する。なお、符号60は人である。
【0094】
一方、図10(B)に示す自発光型サインボード30Gは、光の方向を所定の方向(図中では発光部材面の法線方向)に主に集光する第1光学部材20Aと、光の方向を第1光学部材20Aとは異なる方向(図中では発光部材面の下方)に主に偏向する第2光学部材20Bと、その第1光学部材20A及び第2光学部材20Bの間に配置されて光の方向を発光部材面の法線方向から徐々に第2光学部材20Bと同様の方向に変化させる第3光学部材20Gと、が組み合わされてなる複合型光学部材を備えた自発光型サインボードである。そして、その3つの光学部材20A,20B,20Gが発光部材10の面内方向に配置されている。この場合も、3つの光学部材の面積は特に限定されない。図10(B)の態様は、例えば電車やバス等の車両内や地下道内での情報光として好ましく用いることができるものであり、天井の第1光学部材20Aが設けられた部分は発光部材面の法線方向である人60の方向に情報光を照射し、側壁の第2光学部材20Bが設けられた部分は発光部材面から下方である足下に情報光を照射して背の低い子供等に情報を伝えることができる。そして、天井と側壁との間の曲面に配置された第3光学部材20Gが設けられた部分は、その中間であり、光の方向を発光部材面の法線方向から徐々に第2光学部材20Bと同様の下方向に変化させるように設計した光学部材を有し、大人から子供まで情報光を伝えることができる。
【0095】
ここで、「集光」とは、光学部材によって光を所定の方向に集光(通常は法線方向に光を集める)する場合である。また、「偏向」とは、光学部材によって光を所定の方向に偏向(通常は法線方向以外の方向に光を向ける)する場合である。なお、集光と偏向を行う光学部材は、2種の光学部材を重ねたものであってもよいし、積層態様で一体化させた1つの光学部材であってもよい。
【0096】
面内方向に配置された上記複合型光学部材は、複数の光学部材が複合されているものであり、図10(A)に示すように2つの光学部材が複合されたものであってもよいし、図10(B)に示す3つ又は4つ以上の光学部材が複合されたものであってもよい。その複合態様としては、図10(A)(B)に示すように、面内方向に配置してそれぞれの光学部材に基づく方向が異なるように構成したものであってもよいし、また、前記したように積層方向に配置して単一の光学部材では達成できない集光性や偏向性を持たせたものであってもよい(図示しない)。またさらに、照射方向が連続的に変化する構成としてもよい。
【0097】
また、光の集光度合いが異なる2種以上の集光部材を面内方向に配置した複合型光学部材であってもよい。こうした光学部材を用いた自発光型サインボードは、面内方向で輝度が異なる部位をもつ自発光型サインボードとして好ましく利用できる。光の集光度合いが異なる光学部材は、例えば図9(A)に示す矩形レンズ21の頂角α,β,γやレンズ形状を変化させたり、図9(C)(D)に示すレンズ23,24の曲面形状や曲率半径等を変化させることにより実現することができる。
【0098】
また、光の偏向度合いが異なる2種以上の偏向部材を面内方向に配置した複合型光学部材であってもよい。こうした光学部材を用いた自発光型サインボードは、面内方向で光の方向が異なる部位をもつ自発光型サインボードとして好ましく利用できる。光の偏向度合いが異なる光学部材は、例えば図9(B)に示す矩形レンズ22の頂角α,β,γを変化さたり、その矩形レンズ形状を変化させることにより実現することができる。
【0099】
またさらに、光の集光度合いや光の偏向度合いが面内方向で連続的に変化するように構成した複合型光学部材であってもよい。この場合も上記同様、例えば図9(A)に示す矩形レンズ21の頂角α,β,γやレンズ形状を連続的に変化させたり、図9(C)(D)に示すレンズ23,24の曲面形状や曲率半径等を連続的に変化させたり、図9(B)に示す矩形レンズ22の頂角α,β,γやレンズ形状を連続的に変化させるこることにより実現することができる。
【0100】
このように、本発明の自発光型サインボードでは、上記した種々の光学部材を面内方向に複合化させた複合型光学部材を好ましく備えることができる。例えば、図9(A)(C)(D)等に示した光を主に集光する集光部材、図9(B)等に示した光を主に偏向する偏向部材、上記した光の集光度合いが異なる2種以上の集光部材、上記した光の偏向度合いが異なる2種以上の偏向部材、及び、上記した光を集光するのと同時に偏向する集光偏向部材、から選ばれる2種以上の光学部材を含むように組み合わされてなり、該2種以上の光学部材が前記発光部材の面内方向に配置されているように構成した自発光型サインボードを好ましく提供できる。こうした自発光型サインボードは、異なる態様の2種以上の光学部材を発光部材の面内方向に配置するので、例えば湾曲した壁面に本発明の自発光型サインボードを貼り付け且つその湾曲した壁面から特定の方向に情報光を発したい場合や本発明の自発光型サインボードが大面積である場合のように、積極的に情報光を発したい方向が自発光型サインボードの面内で異なるときに特に有効である。
【0101】
図11は、複合型光学部材が備える複数の光学部材の切換手段を備えた自発光型サインボードの一例を示す模式的な断面図である。この自発光型サインボード30Hは、発光部材10と、その発光部材上に設けられた光学部材20Hとを有するものである。その光学部材20Hは、光を集光ないし偏向する2種以上の光学部材が面内方向に配置されている。この自発光型サインボード30Hは、光学部材20Hを面内方向(図中の矢印方向)に移動させて前記2種以上の光学部材を発光部材面上で自在に切り換えることができる切換手段を備えた装置である。
【0102】
この場合において、光学部材20Hは巻き取り可能なシート状又はフィルム状であり、その長尺方向の両端は巻取/送出機能をもつロール27,28に巻き取られている。その巻取/送出機能をもつロール27,28が同期して駆動することにより、その光学部材20Hの長尺方向に配置された、光を集光ないし偏向する2種以上の光学部材を入れ変えることができ、発光部材面上で自在に切り換えることができる。こうした切換手段を有する自発光型サインボード30Hは、発光部材の設置位置を変更することなく、積極的に情報光を照射する方向を制御できるという効果がある。なお、符号29は押さえガイドローラであり、符号70は発光部材を設置するベース部材である。この場合において、切換手段が2種以上の光学部材を所定の順番でスライドさせるスライド手段等を例示でき、より具体的な例としては、頂点角度の異なるレンズフィルムを一連のロール状態としてスライドさせるスライド手段が挙げられる。
【0103】
また、上述した本発明の自発光型サインボード30A〜30Hが備える光学部材や、上記した複合型光学部材を着脱自在とすることが好ましい。着脱自在とすることにより、比較的に広範囲に情報光を伝えたい場合には、光学部材を外すことにより目的を達成できるという利点がある。なお、着脱自在とする具体的手段は特に限定されないが、発光部材と透明基材(ガラス基板やポリカーボネート等の透明樹脂からなる基板)の間に光学部材を挟み込むようにして介在させ、EL自発光型サインボードの外周部に枠を設置して挟持することにより、脱着自在とすることができる。さらには、事後的な剥離が可能な粘着剤を用いて発光部材に直接貼合してもよい。この手法は、光学部材を発光部材に貼合する際に泡かみ、ゴミかみ等が発生した場合でも、リワークが可能となるため生産性の点からも好ましい。
【0104】
上記同様、本発明の自発光型サインボードでは、上記した種々の光学部材を面内方向に複合化させた複合型光学部材を好ましく備えることができる。例えば、図9(A)(C)(D)等に示した光を主に集光する集光部材、図9(B)等に示した光を主に偏向する偏向部材、上記した光の集光度合いが異なる2種以上の集光部材、上記した光の偏向度合いが異なる2種以上の偏向部材、及び、上記した光を集光するのと同時に偏向する集光偏向部材、から選ばれる2種以上の光学部材を含むように組み合わされてなり、該2種以上の光学部材を前記発光部材の発光面上で自在に切り換えることができる切換手段を備えているように構成した自発光型サインボードを好ましく提供できる。こうした自発光型サインボードは、異なる態様の2種以上の光学部材を面内方向に配置した発光部材を自在に切換可能なので、それらの光学部材を切り換えることにより、情報光を発する方向や情報光の輝度を場面に応じて自在に変更することが可能となる。この場合において、切換手段として、2種以上の光学部材を所定の順番でスライドさせるスライド手段を採用すれば、光を照らしたい方向をシームレスに連続して変化させることができる。
【実施例】
【0105】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定解釈されるものではない。
【0106】
[実施例1]
25mm×75mm×1.1mmのガラス基板上に厚さ100nmのITO膜を蒸着法で形成したものを透明電極基板とした。この基板をイソプロピルアルコール中で10分間超音波洗浄した後、乾燥窒素中にて乾燥し、次いで、UVオゾン洗浄を行った。この透明電極基板上に正孔注入輸送層を形成した。正孔注入輸送層の形成は、先ず、蒸着装置内のホルダーに透明電極基板を設置し、抵抗加熱ボートにN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(TPD)を200mg入れ、さらに別の抵抗加熱ボートに4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)を200mg入れ、さらに別の抵抗加熱ボートにPAVBiを入れ、真空チャンバーを1×10-4Paまで減圧し、その後、TPD入りボートを215℃〜220℃まで加熱し、TPDを蒸着速度0.1〜0.3nm/秒で透明電極基板上に蒸着して、厚さ60nmの正孔注入輸送層を製膜した。このときの基板温度は室温であった。
【0107】
次に、真空チャンバーから取り出すことなく、正孔注入輸送層の上にDPVBiの入ったボートを加熱して厚さ40nmの第1発光層を蒸着した。このとき、同時にPAVBiのボートを加熱し、第1発光層内にPAVBiを3.0モル%の割合で含有させた。その後、真空チャンバーを大気圧に戻し、新たに抵抗加熱ボートに8−ヒドロキシキノリン・アルミニウム錯体(Alq)を200mg入れ、さらに別の抵抗加熱ボートにルブレン(アルドリッチ社製)を入れ、再度、真空チャンバーを1×10-4Paまで減圧し、次いでAlq入りのボートを加熱し、厚さ20nmの第2発光層を製膜した。このとき、同時にルブレンのボートも加熱し、0.5モル%の割合で第2発光層に含有させた。その後、真空チャンバーを大気圧へ再度戻し、抵抗加熱ボートにマグネシウムリボンを1g入れ、タングステンバスケットに銀ワイヤーを500mg入れて、真空チャンバーを1×10-4Paまで減圧し、その後、マグネシウムを蒸着速度1.4nm/秒、銀を蒸着速度0.1nm/秒で同時蒸着し、混合金属からなる厚さ150nmの陰極を形成した。
【0108】
なお、用いた有機化合物の蛍光ピーク波長は、DPVBi(固体):465nm、PAVBi(固体):463nm、Alq(固体):500nm、ルブレン(ジメチルホルムアミド0.1重量%溶液):585nmであった。また、PAVBiの構造式を次に示す。
【0109】
【化1】

【0110】
次に、正面の輝度を向上させる光学部材20を作製した。こうした光学部材20として、図9(A)に示す態様の、一方向に延びるとともに断面形状が二等辺からなる矩形レンズ21が多数配列した厚さ300μmの光学フィルム部材を準備した。この矩形レンズ21は、頂角αが90°でピッチが100μmでレンズ高さが70μmの二等辺からなっている。光学フィルムの厚さは、図9(A)を平面視した場合の底面から頂角αまでの高さである。
【0111】
得られたEL発光体10の陰極側と、光学部材20の平坦面側(レンズ側の反対)とを重ね合わせて、実施例1の自発光型サインボードを作製した。この自発光型サインボードにおいて、図3に例示した文字パターン31と絵柄パターン32からなる発光パターンを表示した。
【0112】
[実施例2]
実施例1において、使用した光学フィルム部材の上に、さらに同じ光学フィルム部材をその矩形レンズ21の稜線が直交するように重ねて自発光型サインボードを構成した他は、実施例1と同様にして、実施例2の自発光型サインボードを作製した。
【0113】
[実施例3]
実施例1において、用いた光学部材の代わりに、図9(B)に示す態様のノコギリ刃状の矩形レンズ22を多数配列してなる光学部材を用いた他は、実施例1と同様にして、実施例2の自発光型サインボードを作製した。なお、ここで用いた光学部材は、一方向に延びるとともに断面形状がノコギリ刃状のプリズム態様の矩形レンズ22が多数配列した厚さ100μmの光学フィルム部材であり、その矩形レンズ22は頂角αが100°でピッチが112μmでレンズ高さが16μmである。
【0114】
[実施例4]
実施例1において、用いた光学部材の代わりに、図12に示す態様のホログラムシートを用いた他は、実施例1と同様にして、実施例4の自発光型サインボードを作製した。なお、ここ用いた光学部材は、ホログラムシートであり、感光性材料からなる体積ホログラム層を有したフィルムを準備し、このフィルムの体積ホログラム層に透過型体積ホログラムを記録することによって、作製された。具体的には、50μmの厚さを有する支持基材としてのルミラーT60(東レ社製の未処理PETフィルムの商品名)上に、以下の組成物インキの感光性材料を乾燥後の厚さが13μmとなるように塗布し、その後乾燥して体積ホログラム層を形成し、ルミラーT60/体積ホログラム層からなるフィルムを作製した。
【0115】
<組成物インキ>
・ポリメチルメタクリレート系樹脂(分子量200,000)…70質量部
・下記一般式でR=H、R=p−ビフェニルメチリレン基、m=n=1…150質量部
・3,9−ジエチル−3’−カルボキシメチル−2,2’−チアカルボシアニン、ヨウ素塩…0.6質量部
・ジフェニルヨードニウム−トリフルオロメタンスルホネート…6質量部
・1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル…80質量部
・溶媒(n−ブタノール:メチルイソブチルケトン=1:1)…390質量部
【0116】
【化2】

【0117】
式中、Rは水素原子又はメチル基、Rはp−ビフェニリルメチリレン基又はフルオレニリデン基、Aはエチレン基又はプロピレン基を示し、m、nは各々1以上であり、m+nは2.0〜8.0の範囲の数である。
【0118】
作製されたフィルムに対し、回折層の記録には波長514nmのレーザー光を用いた。また、記録には図12に示す配置にて、粗さ1000番、大きさ500mm×500mmのすりガラスを透過型拡散板として用いた。この透過型拡散板を、大きさ300×300mmの体積ホログラム層に対向するようにして430mmだけ離間して配置し、物体光としての散乱光を入射して回折層を作製した。作製された回折層(透過型体積ホログラム)は、30°入射、0°回折であり、中心部にて±30°の拡散角を有していた。なお、この実施例ではホログラムシートに対して拡散性を持たせたが、拡散性が無いホログラムシートであっても同様な効果を得ることができる。この場合、上記のすりガラスを用いずに、物体光、参照光の双方を平行光とすることにより実現できる。
【0119】
[比較例1]
実施例1において、用いた光学部材の代わりに、レンズ等が形成されていない厚さ50μmの透明フィルムを用いた他は、実施例1と同様にして、比較例1の自発光型サインボードを作製した。
【0120】
[評価及び結果]
実施例1〜4及び比較例1の自発光型サインボードから発光する光の分布(発光光分布)を測定した。発光光分布は、ELDIM社製のEZコントラスト160Rを用い、全方位角度方向の輝度測定と、全極角度方向の輝度測定とを行い、その結果を図13〜図17に示した。各図において、上段は全方位角度方向の輝度測定結果であり、下段は方位角度0°、及び90°における全極角度方向の輝度測定結果である。光学部材を用いない比較例1の結果(図17を参照)に比べ、実施例1〜4の結果は正面輝度が大きく向上していることが解る。目視における評価でも、正面からの観察時には輝度が向上していることが確認され、視野角度を大きくするに従い、比較例1の場合に比較して急激にその輝度が低下していくことが確認された。輝度の向上は、発光パターンを観察者により確実に視認させることができ、伝えたい情報を観察者に正確に伝えることができる。
【0121】
図13は、実施例1の自発光型サインボードから得られた輝度測定の結果である。実施例1の結果は、EL発光体10の法線方向の輝度が法線方向以外の輝度に比べて相対的に大きくなっている。
【0122】
図14は、実施例2の自発光型サインボードから得られた輝度測定の結果である。実施例1の結果と比べEL発光体10の法線方向とそれ以外の方向との輝度の比がさらに大きくなっているのが確認された。こうした結果は、EL発光体10から発光した光の法線方向への指向性が高くなっており、より選択性が高まっていることを示している。
【0123】
図15は、実施例3の自発光型サインボードから得られた輝度測定の結果である。実施例3の結果は、実施例1,2の結果とは異なり、相対的に最も明るくなるエリアが右方向にずれている。すなわち、水平方向で最も明るいエリアが、EL発光体10の法線から角度10°の方向にずれていることがわかる。
【0124】
図16は、実施例4の自発光型サインボードから得られた輝度測定の結果である。実施例4の結果も、実施例1〜2の結果とは異なり、相対的に最も明るくなるエリアが右方向にずれている。なお、こうしたホログラムシートは、屈折率格子の角度により、回折方向を調整可能であるため、必要に応じてその角度を調整することができるという利点があるので、その角度を調整することにより、前記のずれ角度を変化させることができる。
【0125】
図17は、光学部材を設けていない比較例1の自発光型サインボードから得られた輝度測定の結果である。
【0126】
以上の結果から、本発明の自発光型サインボードは、実施例1,2に示すように、最も明るい部分の絶対輝度をより上昇させる効果と、実施例3,4に示すように、輝度は変化しないが明るいエリアの方向を変化させる効果の2つのモードがあり、いずれも観察者に対して伝えたい情報光を正確に伝達できる。なお、比較例1と実施例1とは、共に正面輝度が高くなっているが、比較例1の自発光型サインボードはその拡散角が広いのに対し、実施例1の自発光型サインボードは、最も輝度の高い方向を中央側により選択的に制御している。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の自発光型サインボードの一例を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の自発光型サインボードの他の一例を示す模式的な断面図である。
【図3】本発明の自発光型サインボードの発光パターンの一例を示す模式的な正面図である。
【図4】本発明の自発光型サインボードの発光パターンの他の一例を示す模式的な正面図である。
【図5】本発明の自発光型サインボードの発光パターンのさらに他の一例を示す模式的な正面図である。
【図6】エリアカラー自発光型サインボード用のEL素子の一例を示す模式的な断面図である。
【図7】フルカラー自発光型サインボード用のEL素子の一例を示す模式的な断面図である。
【図8】無機EL素子の一例を示す模式的な断面図である。
【図9】本発明の自発光型サインボードを構成可能な光学部材の複数の例を示す模式的な斜視図である。
【図10】複合タイプの光学部材を備えた自発光型サインボードの設置例である。
【図11】複合型光学部材が備える複数の光学部材の切換手段を備えた自発光型サインボードの一例を示す模式的な断面図である。
【図12】回折層(透過型体積ホログラム)への記録を行うときの配置図である。
【図13】実施例1の自発光型サインボードの発光光分布の測定結果である。
【図14】実施例2の自発光型サインボードの発光光分布の測定結果である。
【図15】実施例3の自発光型サインボードの発光光分布の測定結果である。
【図16】実施例4の自発光型サインボードの発光光分布の測定結果である。
【図17】比較例1の自発光型サインボードの発光光分布の測定結果である。
【符号の説明】
【0128】
1 基材
2 EL積層体
3 電極
4(4R,4G,4B) 発光層
5 電極
6 保護層
7 接着層
8 カラーフィルタ
8R,8G,8B 着色層
9 透明基材
10 発光部材
11(11R,11G,11B) 発光光
12(12R,12G,12B) 透過光
14 隔壁
15 ブラックマトリクス層
20(20A〜20G) 光学部材
20A 集光部材
20B 偏向部材
21,22 矩形レンズ
23 シリンドリカルレンズ
24 レンズ
28 巻取/送出機能ロール
29 ガイドロール
30(30A〜30H) 自発光型サインボード
31 文字パターン
32 絵柄パターン
40(40A,40B,40C) EL素子
50 被装着体
60 人
θ 発光部材面との角度
α 頂角
β 左底角
γ 右底角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定色の光を発光するエレクトロルミネッセンス素子を有し、所定の発光パターンを表示する発光部材と、
該発光部材から所定の輝度分布で発光する光のうち実質的に最も高い輝度を示す方向の光を主に集光する集光部材及び/又は該光を主に偏向する偏向部材と、を有することを特徴とする自発光型サインボード。
【請求項2】
前記集光部材で集光する光が、偏向部材によって既に偏向された光である、請求項1に記載の自発光型サインボード。
【請求項3】
前記偏向部材で偏向する光が、集光部材によって既に集光された光である、請求項1に記載の自発光型サインボード。
【請求項4】
前記集光部材は、微細なレンズ又はプリズムが形成された光学部材である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の自発光型サインボード。
【請求項5】
前記偏向部材は、微細なレンズ、プリズム又はホログラムが形成された光学部材である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の自発光型サインボード。
【請求項6】
光を集光する集光部材、光の集光度合いが異なる2種以上の集光部材、光を偏向する偏向部材、光の偏向度合いが異なる2種以上の偏向部材、及び、光を集光するのと同時に偏向する集光偏向部材、から選ばれる2種以上の光学部材を含むように組み合わされてなり、
該2種以上の光学部材が前記発光部材の面内方向に配置されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の自発光型サインボード。
【請求項7】
光を集光する集光部材、光の集光度合いが異なる2種以上の集光部材、光を偏向する偏向部材、光の偏向度合いが異なる2種以上の偏向部材、及び、光を集光するのと同時に偏向する集光偏向部材、から選ばれる2種以上の光学部材を含むように組み合わされてなり、
該2種以上の光学部材を前記発光部材の発光面上で自在に切り換えることができる切換手段を備えている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の自発光型サインボード。
【請求項8】
前記エレクトロルミネッセンス素子が2以上の発光色を発光する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の自発光型サインボード。
【請求項9】
前記エレクトロルミネッセンス素子が単色光を発光し、前記発光部材が面内方向に2以上の単色発光領域を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の自発光型サインボード。
【請求項10】
前記集光部材及び/又は偏向部材が着脱自在である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の自発光型サインボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−251325(P2009−251325A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99996(P2008−99996)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】