自発光表示装置、ピーク輝度調整装置、電子機器、ピーク輝度調整方法及びプログラム
【課題】入力映像信号に応じて消費電力量が極端に変化する。結果的に、消費電力が規定値を超えたり、バッテリーの使用時間が極端に短くなる。
【解決手段】自発光パネル面のピーク輝度を1フレーム単位で調整するピーク輝度調整装置に、(a)1フレーム期間中に入力される映像信号の平均階調値を算出する平均階調値算出部と、(b)算出された平均階調値に応じた標準ピーク輝度を求め、当該標準ピーク輝度と算出された平均階調値で消費される消費電力量を算出する消費電力算出部と、(c)一定期間内に消費される消費電力の合計値が設定電力量を超えないように、標準ピーク輝度を調整するピーク輝度調整部とを搭載する。
【解決手段】自発光パネル面のピーク輝度を1フレーム単位で調整するピーク輝度調整装置に、(a)1フレーム期間中に入力される映像信号の平均階調値を算出する平均階調値算出部と、(b)算出された平均階調値に応じた標準ピーク輝度を求め、当該標準ピーク輝度と算出された平均階調値で消費される消費電力量を算出する消費電力算出部と、(c)一定期間内に消費される消費電力の合計値が設定電力量を超えないように、標準ピーク輝度を調整するピーク輝度調整部とを搭載する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書で説明する発明は、自発光表示パネル(装置)で消費される電力を規定範囲内に強制的に抑制する技術に関する。
なお、発明者らが提案する発明は、自発光表示装置、ピーク輝度調整装置、電子機器、ピーク輝度調整方法及びプログラムとしての側面を有する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイは、広視野角特性、応答速度、広色再現性範囲、高コントラスト性能に優れるだけでなく、表示パネル自体を薄く形成することができる。これらの利点により、有機ELディスプレイは、次世代フラットパネルディスプレイの最有力候補として注目されている。
【0003】
さらに昨今では、応答速度やコントラス性能を発光時間の可変制御を通じて改善する手法が検討されている。発光時間の可変制御技術を開示する公知技術には、例えば以下に示す特許文献1〜3がある。
【特許文献1】特開2003−015605号公報
【特許文献2】特開2001−343941号公報
【特許文献3】特開2002−132218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1〜3に開示された各発明は、いずれも画質の向上を目的として検討されたものであるが、定消費電力化や消費電力の抑制化についての視点は検討されていない。
実際、有機ELディスプレイその他の自発光表示装置では、一定輝度のパックライトを常時点灯状態させる方式の表示装置とは異なり、入力される映像信号に応じて表示パネルに流れる電流量が劇的に変化する特性がある。
【0005】
この特性のため、自発光表示装置における単位時間当たりの消費電力は一定にはならない。すなわち、表示パネルの消費電力が表示内容に応じて極端に変化する問題がある。また、表示パネルを搭載する電子機器がバッテリー駆動される場合には、表示内容に応じて使用時間が極端に変化する問題がある。この問題を解決するには、バッテリー容量を大型化する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、自発光パネル面のピーク輝度を1フレーム単位で調整するピーク輝度調整装置として、以下の各機能を搭載するものを提案する。
(a)1フレーム期間中に入力される映像信号の平均階調値を算出する平均階調値算出部
(b)算出された平均階調値に応じた標準ピーク輝度を求め、当該標準ピーク輝度と算出された平均階調値で消費される消費電力量を算出する消費電力算出部
(c)一定期間内に消費される消費電力の合計値が設定電力量を超えないように、標準ピーク輝度を調整するピーク輝度調整部
【発明の効果】
【0007】
発明に係る手法の採用により、自発光パネルで消費される電力量を定量化又は一定量以下に抑制することができる。
を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、発明に係る処理機能を搭載した有機ELパネルモジュールについて説明する。
なお、本明細書で特に図示又は記載されない部分には、当該技術分野の周知又は公知技術を適用する。
また以下に説明する形態例は、発明の一つの形態例であって、これらに限定されるものではない。
【0009】
(A)ピーク輝度の調整
表示パネルのピーク輝度は、最大データの入力時に表示素子に印加される出力電圧(出力電流)又は発光時間の可変制御により調整することができる。
図1に、発光時間と発光輝度との関係を示す。図1に示すように、発光輝度は発光時間に対して線形に変化する。
図2(A)に、表示素子に印加される出力電圧と発光輝度との関係を示す。図2(B)に、入力映像信号の階調値(%)と表示素子に印加される出力電圧(基準値を100%で表す。)との間の入出力関係を示す。
【0010】
ここで、図2(B)に実線で示す曲線は基準値に対応する入出力関係であり、破線で示す曲線は最大データの入力時に表示素子に印加される最大出力電圧Vmax (最大出力電流Imax )を可変制御した場合の入出力関係を示す。図2に示すように、同じ入力階調値でも最大出力電圧Vmax (最大出力電流Imax )を可変制御すると、発光輝度が可変制御される。
【0011】
さて、表示パネルのピーク輝度は、最大出力電圧Vmax (最大出力電流Imax )と発光時間との積Sで与えられる。
従って、発光時間又は最大出力電圧Vmax (最大出力電流Imax )を個別に可変制御すれば、表示パネルのピーク輝度を可変制御することが可能となる。
【0012】
(B)有機ELパネルの構造例
続いて、ピーク輝度の可変制御を可能とする有機ELパネルモジュールの構造例を説明する。
図3に、有機ELパネルモジュール1の構造例を示す。有機ELパネルモジュール1は、発光領域3A(有機EL素子がマトリクス状に配列された領域)と、画像の表示を制御するパネル駆動回路とで構成される。
パネル駆動回路は、データドライバ5、最大出力電圧制御用ドライバ7A、ゲートスキャンドライバ7B、点灯時間制御用ゲートドライバ7Cで構成される。なお、パネル駆動回路は、発光領域3Aの周辺部に形成する。
【0013】
各画素に対応する有機EL素子3Bとその駆動回路(画素駆動回路)3Cは、データ線3Dと走査線3Eの交点位置に配置されている。画素駆動回路3Cは、データスイッチ素子T1、キャパシタC1、電流駆動素子T2、点灯スイッチ素子T3で構成される。
このうち、データスイッチ素子T1は、データ線3Dを通じて与えられる電圧値の取り込みタイミングを制御するのに用いられる。取り込みタイミングは、走査線3Eを通じて線順次で与えられる。
【0014】
キャパシタC1は、取り込んだ電圧値を1フレームの間保持するのに用いられる。キャパシタC1を用いることで、面順次駆動が実現される。
電流駆動素子T2は、キャパシタC1の電圧値に応じた電流を有機EL素子3Bに供給するのに用いられる。駆動電流は、電流供給線3Fを通じて供給される。なお、この電流供給線3Fには、最大出力電圧制御用ドライバ7Aを通じて最大出力電圧Vmax が印加される。
【0015】
点灯スイッチ素子T3は、有機EL素子3Bに対する駆動電流の供給を制御するのに用いられる。点灯スイッチ素子T3は、駆動電流の供給経路に対して直列に配置される。点灯スイッチ素子T3が閉じている間、有機EL素子3Bが点灯する。一方、点灯スイッチ素子T3が開いている間、有機EL素子3Bが消灯する。
この点灯スイッチ素子T3の開閉動作を制御するデューティパルス(図4(B))を供給するのが点灯制御線3Gである。なお、図4(A)は、基準期間としての1フレーム期間を示す。
【0016】
ここで、電流供給線3Fに印加する電圧の可変制御は、最大出力電圧制御用ドライバ7Aが実行する。また、発光時間の可変制御は、点灯時間制御用ゲートドライバ7Cが実行する。これらドライバの制御信号は、後述する発光条件制御装置より供給される。
なお、ピーク輝度を発光時間長で制御する場合には、最大出力電圧制御用ドライバ7Aは全てのフレームについて固定電圧を供給する。一方、ピーク輝度を最大出力電圧Vmax で制御する場合には、点灯時間制御用ゲートドライバ7Cは、全てのフレームについて固定比のデューティパルスを供給する。
【0017】
図5に、画素駆動回路3Cを形成した発光領域3Aを搭載する有機ELパネルモジュール1の構造例を示す。図5の場合、ピーク輝度調整装置11は、タイミングジェネレータ9の一部分として実装する。
なお、発光領域3Aの周辺回路(パネル駆動回路)は、半導体集積回路としてパネル基板上に搭載しても良いし、パネル基板上に半導体プロセスを用いて直接形成しても良い。
【0018】
(C)ピーク輝度調整装置の形態例
以下、一定期間内に消費される消費電力の合計値が設定電力量を超えないように、映像信号のピーク輝度をリアルタイムで制御可能なピーク輝度調整装置11(図6)の形態例を説明する。
【0019】
(C−1)ピーク輝度調整装置の構成例
図6に、ピーク輝度調整装置11に採用して好適な構成例の一つを示す。
この形態例に係るピーク輝度調整装置11は、平均階調値算出部13と、消費電力量一定化制御部15と、ピーク輝度制御部17と、フレーム遅延部19とで構成する。
平均階調値算出部13は、1フレーム期間中に入力される映像信号の平均階調値APLn をフレーム単位で算出する処理デバイスである。ここでの添字nは、時間(例えばフレーム番号)を意味する。
【0020】
図7に、平均階調値算出部13の内部構成例を示す。平均階調値算出部13は、グレースケール変換部131と1フレーム内全画素階調平均計算部133で構成する。
グレースケール変換部131は、入力された映像信号をグレースケール信号に変換する処理デバイスである。
1フレーム内全画素階調平均計算部133は、1フレームを構成する全画素について階調値の平均値を算出する処理デバイスである。
【0021】
消費電力量一定化制御部15は、一定期間内での消費電力が設定電力量に収まるように、各フレームの消費電力量を残存する消費電力量に応じて調整する処理デバイスである。
図8に、消費電力量一定化制御部15の内部構成例を示す。消費電力量一定化制御部15は、消費電力算出部151と、ピーク輝度調整部153で構成する。
消費電力算出部151は、算出された平均階調値APLに応じた標準ピーク輝度を読み出し、当該標準ピーク輝度と算出された平均階調値で消費される消費電力量を算出する処理デバイスである。
【0022】
この形態例の場合、標準ピーク輝度は、ピーク輝度倍率SEL_PKで与える。ピーク輝度倍率SEL_PKは、基準ピーク輝度に対する倍率であり、事前に設定されるものとする。
この場合、あるフレームの消費電力は、平均階調値APL×ピーク輝度倍率SEL_PK×基準ピーク輝度で与えられる。
消費電力算出部151は、平均階調値APLに応じたピーク輝度倍率SEL_PKを、図9に示すルックアップテーブルを使用して読み出す。
【0023】
図9に示すルックアップテーブルでは、平均階調値APLが小さいほど、ピーク輝度倍率SEL_PKを大きな値に設定する。図9では、2倍に設定する。これは平均階調値が低い画面内に高輝度領域が含まれる場合(例えば、夜空の映像に星が光る場合)にも十分なコントラストを確保するためである。
一方、図9に示すルックアップテーブルでは、平均階調値APLが大きいほど、ピーク輝度倍率SEL_PKを小さな値に設定する。
平均階調値APLに応じたピーク輝度倍率SEL_PKを以上の関係に定めることにより、画質を考慮した標準ピーク輝度が得られる。
【0024】
ピーク輝度調整部153は、一定期間内に消費される消費電力の合計値が設定電力量Smax を超えないように、先に算出した標準ピーク輝度を調整する処理デバイスである。何らの調整もしない場合、表示内容によっては設定電力量Smax を超えてしまうためである。
ピーク輝度調整部153は、基準期間(制御単位)内の残存期間で消費可能な実際の消費電力量(残存電力量)Aと、基準期間(制御単位)の全期間を同じピーク輝度で常時点灯する場合における残存期間での消費電力量Bとの比に応じて、対応フレームのピーク輝度を調整する。
【0025】
具体的には、フレームnのピーク輝度倍率PKn を、(A/B)×標準ピーク輝度倍率SEL_PKn で与える。
ここで、実際の残存電力量Aは、(Sn-1
−APLn ×SEL_PKn )×基準ピーク輝度で与える。また、同一ピーク輝度で常時点灯する場合に消費可能な残存電力量Bは、((Tflat−n)×APLflat)×基準ピーク輝度で与える。
なお、Tflatは、基準期間に設定したフレーム数である。また、APLflatは、消費電力量を制限するためのAPL設定値(規定された消費電力を満たすように、基準期間の全期間を同じピーク輝度で点灯する場合におけるフレーム単位の平均階調値)である。
【0026】
ところで、基準期間内に消費可能な残存電力量を与える初期値S0 (=Smax )は、Tflat×APLflat×PKflatで与える。PKflatは、APLflatに対応するピーク輝度倍率である。
また、nフレーム目をピーク輝度倍率PKn で点灯した場合における残存電力量A(=Sn )は、n−1フレーム目の残存電力量Sn-1 を用いることにより、Sn-1 −APLn ×PKn で与えられる。なお、計算上は基準ピーク輝度が省略されるため、ここでの電力量では、乗算すべき基準ピーク輝度の記載を省略している。
【0027】
かかる制御により、入力映像信号の平均階調値に対応するピーク輝度倍率PKn は、以下のように調整される。
例えば、設定された消費電力を達成する平均階調値よりも明るいフレームが続く等により、実際の残存消費電力Aが全期間を平均的に点灯制御する際の残存電力量Bよりも小さくなっている場合には、調整後のピーク輝度倍率PKn は、本来の平均階調値に対応するピーク輝度倍率SEL_PKn よりも小さい値に制御される。
【0028】
また例えば、設定された消費電力を達成する平均階調値よりも暗いフレームが続く等により、実際の残存消費電力Aが全期間を平均的に点灯制御する際の残存電力量Bよりも大きくなっている場合には、調整後のピーク輝度倍率PKn は、本来の平均階調値に対応するピーク輝度倍率SEL_PKn よりも大きい値に制御される。
【0029】
ピーク輝度制御部17と、消費電力量一定化制御部15から与えられるピーク輝度倍率PKn だけ、1フレーム内の点灯時間に相当する基準パルス幅をパルス幅変調し、得られたパルス幅の信号をデューティ比信号として出力する。以下、このデューティ比信号を「ピークコントロール信号」という。
なお、ピーク輝度制御部17は、入力映像信号の垂直同期信号Vsyncに同期したタイミングでピークコントロール信号を生成する。
【0030】
フレーム遅延部19は、消費電力量一定化制御部15から出力されるピークコントロール信号と有機ELパネルに出力される映像信号の位相が一致するように映像信号を遅延するバッファメモリである。遅延時間は、任意である。
図10に、入出力フレームの位相関係を示す。図10(A)は、映像信号VSのフレーム番号(位相)を示す図である。図10(B)は、フレーム遅延部19に入力される画像データの番号(位相)を示す図である。
【0031】
図10(C)は、平均階調値算出部13より出力される平均階調値APLの番号(位相)を示す図である。図10(D)は、フレーム遅延部19から出力される画像データの番号(位相)を示す図である。図10(E)は、ピーク輝度制御部17から出力されるピークコントロール信号(位相)を示す図である。
図10(B)及び(D)を対比して分かるように、フレーム遅延部19では画像データが1フレーム分遅延されている。このため、図10(D)及び(E)に示すように、映像信号とピークコントロール信号の同期が確保される。
【0032】
(b)ピーク輝度調整装置での処理動作の流れ
図11に、以上説明したピーク輝度調整装置11で実行される処理動作の概略を示す。
ピーク輝度調整装置11は、各フレームの平均階調値APLn を算出し(S1)、平均階調値に対応するピーク輝度倍率SEL_PKを求める。
この後、ピーク輝度調整装置11は、現フレームの平均階調値APLn とピーク輝度倍率SEL_PKとを用いて入力映像信号本来の消費電力量を算出する(S2)。
【0033】
次に、ピーク輝度調整装置11は、基準期間内に実際に消費される消費電力量が事前の設定量を超えないように、各フレームのピーク輝度(倍率)を調整する(S3)。
調整後のピーク輝度(倍率)に応じてパルス幅変調したピークコントロール信号を有機ELパネルモジュール1に出力する(S4)。
【0034】
図12に、前述したピーク輝度制御機能の適用時における消費電力量の推移を示す。
いずれの基準期間(0−t0 、t1 −t2 、t2 −t3 …)についても、各基準期間で消費可能な設定電力量Smax 以下に抑制されていることが分かる。
なお、Sn (n=0、1、2…)は、各基準期間内での実際の消費電力量である。
【0035】
(c)実現される効果
以上説明したピーク輝度調整装置をパネル基板上に搭載することにより、有機ELパネルの定消費電力化又は消費電力抑制化を実現できる。勿論、入力映像信号に応じたピーク輝度で点灯制御しても事前に設定した消費電力量を満たす場合には、入力映像信号を高い画質のまま表示することができる。
また、前述したピーク輝度の可変調整機能は、ソフトウェア処理で実現する場合にも演算負荷が小さく、集積回路で実現する場合にも非常に小規模な回路で実現することが可能であり、有機ELパネルモジュールへの実装に有利である。
【0036】
(D)他の形態例
(a)前述の形態例では、発光時間の調整によりピーク輝度を可変制御する場合について説明したが、最大出力電圧の調整によりピーク輝度を可変制御しても良い。また、発光時間及び最大出力電圧の双方を同時に調整し、ピーク輝度を可変制御しても良い。
(b)前述の形態例では、算出された平均階調値APLに対応する標準ピーク輝度SEL_PKを、ルックアップテーブルから読み出す場合について説明したが、事前に設定した関係に従って算出しても良い。
【0037】
(c)前述の形態例では、有機ELパネルモジュール1に最大出力電圧制御用ドライバ7Aと点灯時間制御用ゲートドライバ7Cを2つとも搭載するものとして説明した。
しかし、ピーク輝度の可変制御機能は、発光時間又は最大出力電圧のいずれか一方を可変制御することで実現できる。従って、発光時間を可変制御する方式を採用する場合には最大出力電圧制御用ドライバ7Aを搭載しない構成を採用し、最大出力電圧を可変制御する方式を採用する場合には点灯時間制御用ゲートドライバ7Cを搭載しない構成を採用しても良い。
【0038】
(d)前述の形態例においては、有機ELディスプレイパネルについて説明したが、無機ELディスプレイパネルにも応用できる。また例えば、FED(field emission display) 、無機ELディスプレイパネル、LEDパネル、PDP(Plasma Display
Panel)パネルその他の自発光パネルに適用できる。
【0039】
(e)前述の形態例においては、ピーク輝度調整装置11を有機ELディスプレイパネル上に実装する場合について説明した。
しかし、この有機ELディスプレイパネルその他の表示装置は、単独の商品形態でも良いし、他の画像処理装置の一部として搭載されても良い。
例えば、ビデオカメラ、デジタルカメラその他の撮像装置(カメラユニットだけでなく、記録装置と一体に構成されているものを含む。)、情報処理端末(携帯型のコンピュータ、携帯電話機、携帯型のゲーム機、電子手帳等)、ゲーム機の表示デバイスとしも実現できる。
特に、バッテリー駆動される電子機器に搭載する場合には、既存のバッテリー容量でより長時間の使用を達成できる。
【0040】
(f)前述の形態例では、ピーク輝度調整装置11を有機ELディスプレイパネル上に実装する場合について説明した。
しかし、ピーク輝度調整装置11は、有機ELディスプレイパネルその他の表示装置に対して入力映像信号を供給する画像処理装置側に搭載しても良い。この場合、画像処理装置から表示装置にデューティパルスや電圧値を供給する方式を採用しても良いし、これらの値を指示する情報を画像処理装置から表示装置に与える方式を採用しても良い。
【0041】
(g)前述の形態例では、ピーク輝度調整装置11を機能構成の観点から説明したが、言うまでもなく、同等の機能をハードウェアとしてもソフトウェアとしても実現できる。
また、これらの処理機能の全てをハードウェア又はソフトウェアで実現するだけでなく、その一部はハードウェア又はソフトウェアを用いて実現しても良い。すなわち、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ構成としても良い。
(h)前述の形態例には、発明の趣旨の範囲内で様々な変形例が考えられる。また、本明細書の記載に基づいて創作される又は組み合わせられる各種の変形例及び応用例も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】発光時間と発光輝度の関係を説明する図である。
【図2】出力電圧と発光輝度との関係を説明する図である。
【図3】有機ELパネルモジュールの構造例を示す図である。
【図4】発光時間長を制御するデューティパルス例を示す図である。
【図5】有機ELパネルモジュールの構造例を示す図である。
【図6】ピーク輝度調整装置の構成例を示す図である。
【図7】平均階調値算出部の内部構成例を示す図である。
【図8】消費電力量一定化制御部の内部構成例を示す図である。
【図9】平均階調値にピーク輝度倍率を対応付けたルックアップテーブル例を示す図である。
【図10】各部の位相関係を示す図である。
【図11】ピーク輝度調整装置が実行する処理動作例を示す図である。
【図12】ピーク輝度調整による消費電力量の推移例を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 有機ELパネルモジュール
3A 発光領域
5 データドライバ
7A 電圧切替ドライバ7A
7B ゲートスキャンドライバ
7C 点灯時間制御用ゲートドライバ
9 タイミングジェネレータ
11 ピーク輝度調整装置
13 平均階調値算出部
15 消費電力量一定化制御部
151 消費電力算出部
153 ピーク輝度調整部
17 ピーク輝度制御部
19 フレーム遅延部
【技術分野】
【0001】
この明細書で説明する発明は、自発光表示パネル(装置)で消費される電力を規定範囲内に強制的に抑制する技術に関する。
なお、発明者らが提案する発明は、自発光表示装置、ピーク輝度調整装置、電子機器、ピーク輝度調整方法及びプログラムとしての側面を有する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイは、広視野角特性、応答速度、広色再現性範囲、高コントラスト性能に優れるだけでなく、表示パネル自体を薄く形成することができる。これらの利点により、有機ELディスプレイは、次世代フラットパネルディスプレイの最有力候補として注目されている。
【0003】
さらに昨今では、応答速度やコントラス性能を発光時間の可変制御を通じて改善する手法が検討されている。発光時間の可変制御技術を開示する公知技術には、例えば以下に示す特許文献1〜3がある。
【特許文献1】特開2003−015605号公報
【特許文献2】特開2001−343941号公報
【特許文献3】特開2002−132218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1〜3に開示された各発明は、いずれも画質の向上を目的として検討されたものであるが、定消費電力化や消費電力の抑制化についての視点は検討されていない。
実際、有機ELディスプレイその他の自発光表示装置では、一定輝度のパックライトを常時点灯状態させる方式の表示装置とは異なり、入力される映像信号に応じて表示パネルに流れる電流量が劇的に変化する特性がある。
【0005】
この特性のため、自発光表示装置における単位時間当たりの消費電力は一定にはならない。すなわち、表示パネルの消費電力が表示内容に応じて極端に変化する問題がある。また、表示パネルを搭載する電子機器がバッテリー駆動される場合には、表示内容に応じて使用時間が極端に変化する問題がある。この問題を解決するには、バッテリー容量を大型化する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、自発光パネル面のピーク輝度を1フレーム単位で調整するピーク輝度調整装置として、以下の各機能を搭載するものを提案する。
(a)1フレーム期間中に入力される映像信号の平均階調値を算出する平均階調値算出部
(b)算出された平均階調値に応じた標準ピーク輝度を求め、当該標準ピーク輝度と算出された平均階調値で消費される消費電力量を算出する消費電力算出部
(c)一定期間内に消費される消費電力の合計値が設定電力量を超えないように、標準ピーク輝度を調整するピーク輝度調整部
【発明の効果】
【0007】
発明に係る手法の採用により、自発光パネルで消費される電力量を定量化又は一定量以下に抑制することができる。
を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、発明に係る処理機能を搭載した有機ELパネルモジュールについて説明する。
なお、本明細書で特に図示又は記載されない部分には、当該技術分野の周知又は公知技術を適用する。
また以下に説明する形態例は、発明の一つの形態例であって、これらに限定されるものではない。
【0009】
(A)ピーク輝度の調整
表示パネルのピーク輝度は、最大データの入力時に表示素子に印加される出力電圧(出力電流)又は発光時間の可変制御により調整することができる。
図1に、発光時間と発光輝度との関係を示す。図1に示すように、発光輝度は発光時間に対して線形に変化する。
図2(A)に、表示素子に印加される出力電圧と発光輝度との関係を示す。図2(B)に、入力映像信号の階調値(%)と表示素子に印加される出力電圧(基準値を100%で表す。)との間の入出力関係を示す。
【0010】
ここで、図2(B)に実線で示す曲線は基準値に対応する入出力関係であり、破線で示す曲線は最大データの入力時に表示素子に印加される最大出力電圧Vmax (最大出力電流Imax )を可変制御した場合の入出力関係を示す。図2に示すように、同じ入力階調値でも最大出力電圧Vmax (最大出力電流Imax )を可変制御すると、発光輝度が可変制御される。
【0011】
さて、表示パネルのピーク輝度は、最大出力電圧Vmax (最大出力電流Imax )と発光時間との積Sで与えられる。
従って、発光時間又は最大出力電圧Vmax (最大出力電流Imax )を個別に可変制御すれば、表示パネルのピーク輝度を可変制御することが可能となる。
【0012】
(B)有機ELパネルの構造例
続いて、ピーク輝度の可変制御を可能とする有機ELパネルモジュールの構造例を説明する。
図3に、有機ELパネルモジュール1の構造例を示す。有機ELパネルモジュール1は、発光領域3A(有機EL素子がマトリクス状に配列された領域)と、画像の表示を制御するパネル駆動回路とで構成される。
パネル駆動回路は、データドライバ5、最大出力電圧制御用ドライバ7A、ゲートスキャンドライバ7B、点灯時間制御用ゲートドライバ7Cで構成される。なお、パネル駆動回路は、発光領域3Aの周辺部に形成する。
【0013】
各画素に対応する有機EL素子3Bとその駆動回路(画素駆動回路)3Cは、データ線3Dと走査線3Eの交点位置に配置されている。画素駆動回路3Cは、データスイッチ素子T1、キャパシタC1、電流駆動素子T2、点灯スイッチ素子T3で構成される。
このうち、データスイッチ素子T1は、データ線3Dを通じて与えられる電圧値の取り込みタイミングを制御するのに用いられる。取り込みタイミングは、走査線3Eを通じて線順次で与えられる。
【0014】
キャパシタC1は、取り込んだ電圧値を1フレームの間保持するのに用いられる。キャパシタC1を用いることで、面順次駆動が実現される。
電流駆動素子T2は、キャパシタC1の電圧値に応じた電流を有機EL素子3Bに供給するのに用いられる。駆動電流は、電流供給線3Fを通じて供給される。なお、この電流供給線3Fには、最大出力電圧制御用ドライバ7Aを通じて最大出力電圧Vmax が印加される。
【0015】
点灯スイッチ素子T3は、有機EL素子3Bに対する駆動電流の供給を制御するのに用いられる。点灯スイッチ素子T3は、駆動電流の供給経路に対して直列に配置される。点灯スイッチ素子T3が閉じている間、有機EL素子3Bが点灯する。一方、点灯スイッチ素子T3が開いている間、有機EL素子3Bが消灯する。
この点灯スイッチ素子T3の開閉動作を制御するデューティパルス(図4(B))を供給するのが点灯制御線3Gである。なお、図4(A)は、基準期間としての1フレーム期間を示す。
【0016】
ここで、電流供給線3Fに印加する電圧の可変制御は、最大出力電圧制御用ドライバ7Aが実行する。また、発光時間の可変制御は、点灯時間制御用ゲートドライバ7Cが実行する。これらドライバの制御信号は、後述する発光条件制御装置より供給される。
なお、ピーク輝度を発光時間長で制御する場合には、最大出力電圧制御用ドライバ7Aは全てのフレームについて固定電圧を供給する。一方、ピーク輝度を最大出力電圧Vmax で制御する場合には、点灯時間制御用ゲートドライバ7Cは、全てのフレームについて固定比のデューティパルスを供給する。
【0017】
図5に、画素駆動回路3Cを形成した発光領域3Aを搭載する有機ELパネルモジュール1の構造例を示す。図5の場合、ピーク輝度調整装置11は、タイミングジェネレータ9の一部分として実装する。
なお、発光領域3Aの周辺回路(パネル駆動回路)は、半導体集積回路としてパネル基板上に搭載しても良いし、パネル基板上に半導体プロセスを用いて直接形成しても良い。
【0018】
(C)ピーク輝度調整装置の形態例
以下、一定期間内に消費される消費電力の合計値が設定電力量を超えないように、映像信号のピーク輝度をリアルタイムで制御可能なピーク輝度調整装置11(図6)の形態例を説明する。
【0019】
(C−1)ピーク輝度調整装置の構成例
図6に、ピーク輝度調整装置11に採用して好適な構成例の一つを示す。
この形態例に係るピーク輝度調整装置11は、平均階調値算出部13と、消費電力量一定化制御部15と、ピーク輝度制御部17と、フレーム遅延部19とで構成する。
平均階調値算出部13は、1フレーム期間中に入力される映像信号の平均階調値APLn をフレーム単位で算出する処理デバイスである。ここでの添字nは、時間(例えばフレーム番号)を意味する。
【0020】
図7に、平均階調値算出部13の内部構成例を示す。平均階調値算出部13は、グレースケール変換部131と1フレーム内全画素階調平均計算部133で構成する。
グレースケール変換部131は、入力された映像信号をグレースケール信号に変換する処理デバイスである。
1フレーム内全画素階調平均計算部133は、1フレームを構成する全画素について階調値の平均値を算出する処理デバイスである。
【0021】
消費電力量一定化制御部15は、一定期間内での消費電力が設定電力量に収まるように、各フレームの消費電力量を残存する消費電力量に応じて調整する処理デバイスである。
図8に、消費電力量一定化制御部15の内部構成例を示す。消費電力量一定化制御部15は、消費電力算出部151と、ピーク輝度調整部153で構成する。
消費電力算出部151は、算出された平均階調値APLに応じた標準ピーク輝度を読み出し、当該標準ピーク輝度と算出された平均階調値で消費される消費電力量を算出する処理デバイスである。
【0022】
この形態例の場合、標準ピーク輝度は、ピーク輝度倍率SEL_PKで与える。ピーク輝度倍率SEL_PKは、基準ピーク輝度に対する倍率であり、事前に設定されるものとする。
この場合、あるフレームの消費電力は、平均階調値APL×ピーク輝度倍率SEL_PK×基準ピーク輝度で与えられる。
消費電力算出部151は、平均階調値APLに応じたピーク輝度倍率SEL_PKを、図9に示すルックアップテーブルを使用して読み出す。
【0023】
図9に示すルックアップテーブルでは、平均階調値APLが小さいほど、ピーク輝度倍率SEL_PKを大きな値に設定する。図9では、2倍に設定する。これは平均階調値が低い画面内に高輝度領域が含まれる場合(例えば、夜空の映像に星が光る場合)にも十分なコントラストを確保するためである。
一方、図9に示すルックアップテーブルでは、平均階調値APLが大きいほど、ピーク輝度倍率SEL_PKを小さな値に設定する。
平均階調値APLに応じたピーク輝度倍率SEL_PKを以上の関係に定めることにより、画質を考慮した標準ピーク輝度が得られる。
【0024】
ピーク輝度調整部153は、一定期間内に消費される消費電力の合計値が設定電力量Smax を超えないように、先に算出した標準ピーク輝度を調整する処理デバイスである。何らの調整もしない場合、表示内容によっては設定電力量Smax を超えてしまうためである。
ピーク輝度調整部153は、基準期間(制御単位)内の残存期間で消費可能な実際の消費電力量(残存電力量)Aと、基準期間(制御単位)の全期間を同じピーク輝度で常時点灯する場合における残存期間での消費電力量Bとの比に応じて、対応フレームのピーク輝度を調整する。
【0025】
具体的には、フレームnのピーク輝度倍率PKn を、(A/B)×標準ピーク輝度倍率SEL_PKn で与える。
ここで、実際の残存電力量Aは、(Sn-1
−APLn ×SEL_PKn )×基準ピーク輝度で与える。また、同一ピーク輝度で常時点灯する場合に消費可能な残存電力量Bは、((Tflat−n)×APLflat)×基準ピーク輝度で与える。
なお、Tflatは、基準期間に設定したフレーム数である。また、APLflatは、消費電力量を制限するためのAPL設定値(規定された消費電力を満たすように、基準期間の全期間を同じピーク輝度で点灯する場合におけるフレーム単位の平均階調値)である。
【0026】
ところで、基準期間内に消費可能な残存電力量を与える初期値S0 (=Smax )は、Tflat×APLflat×PKflatで与える。PKflatは、APLflatに対応するピーク輝度倍率である。
また、nフレーム目をピーク輝度倍率PKn で点灯した場合における残存電力量A(=Sn )は、n−1フレーム目の残存電力量Sn-1 を用いることにより、Sn-1 −APLn ×PKn で与えられる。なお、計算上は基準ピーク輝度が省略されるため、ここでの電力量では、乗算すべき基準ピーク輝度の記載を省略している。
【0027】
かかる制御により、入力映像信号の平均階調値に対応するピーク輝度倍率PKn は、以下のように調整される。
例えば、設定された消費電力を達成する平均階調値よりも明るいフレームが続く等により、実際の残存消費電力Aが全期間を平均的に点灯制御する際の残存電力量Bよりも小さくなっている場合には、調整後のピーク輝度倍率PKn は、本来の平均階調値に対応するピーク輝度倍率SEL_PKn よりも小さい値に制御される。
【0028】
また例えば、設定された消費電力を達成する平均階調値よりも暗いフレームが続く等により、実際の残存消費電力Aが全期間を平均的に点灯制御する際の残存電力量Bよりも大きくなっている場合には、調整後のピーク輝度倍率PKn は、本来の平均階調値に対応するピーク輝度倍率SEL_PKn よりも大きい値に制御される。
【0029】
ピーク輝度制御部17と、消費電力量一定化制御部15から与えられるピーク輝度倍率PKn だけ、1フレーム内の点灯時間に相当する基準パルス幅をパルス幅変調し、得られたパルス幅の信号をデューティ比信号として出力する。以下、このデューティ比信号を「ピークコントロール信号」という。
なお、ピーク輝度制御部17は、入力映像信号の垂直同期信号Vsyncに同期したタイミングでピークコントロール信号を生成する。
【0030】
フレーム遅延部19は、消費電力量一定化制御部15から出力されるピークコントロール信号と有機ELパネルに出力される映像信号の位相が一致するように映像信号を遅延するバッファメモリである。遅延時間は、任意である。
図10に、入出力フレームの位相関係を示す。図10(A)は、映像信号VSのフレーム番号(位相)を示す図である。図10(B)は、フレーム遅延部19に入力される画像データの番号(位相)を示す図である。
【0031】
図10(C)は、平均階調値算出部13より出力される平均階調値APLの番号(位相)を示す図である。図10(D)は、フレーム遅延部19から出力される画像データの番号(位相)を示す図である。図10(E)は、ピーク輝度制御部17から出力されるピークコントロール信号(位相)を示す図である。
図10(B)及び(D)を対比して分かるように、フレーム遅延部19では画像データが1フレーム分遅延されている。このため、図10(D)及び(E)に示すように、映像信号とピークコントロール信号の同期が確保される。
【0032】
(b)ピーク輝度調整装置での処理動作の流れ
図11に、以上説明したピーク輝度調整装置11で実行される処理動作の概略を示す。
ピーク輝度調整装置11は、各フレームの平均階調値APLn を算出し(S1)、平均階調値に対応するピーク輝度倍率SEL_PKを求める。
この後、ピーク輝度調整装置11は、現フレームの平均階調値APLn とピーク輝度倍率SEL_PKとを用いて入力映像信号本来の消費電力量を算出する(S2)。
【0033】
次に、ピーク輝度調整装置11は、基準期間内に実際に消費される消費電力量が事前の設定量を超えないように、各フレームのピーク輝度(倍率)を調整する(S3)。
調整後のピーク輝度(倍率)に応じてパルス幅変調したピークコントロール信号を有機ELパネルモジュール1に出力する(S4)。
【0034】
図12に、前述したピーク輝度制御機能の適用時における消費電力量の推移を示す。
いずれの基準期間(0−t0 、t1 −t2 、t2 −t3 …)についても、各基準期間で消費可能な設定電力量Smax 以下に抑制されていることが分かる。
なお、Sn (n=0、1、2…)は、各基準期間内での実際の消費電力量である。
【0035】
(c)実現される効果
以上説明したピーク輝度調整装置をパネル基板上に搭載することにより、有機ELパネルの定消費電力化又は消費電力抑制化を実現できる。勿論、入力映像信号に応じたピーク輝度で点灯制御しても事前に設定した消費電力量を満たす場合には、入力映像信号を高い画質のまま表示することができる。
また、前述したピーク輝度の可変調整機能は、ソフトウェア処理で実現する場合にも演算負荷が小さく、集積回路で実現する場合にも非常に小規模な回路で実現することが可能であり、有機ELパネルモジュールへの実装に有利である。
【0036】
(D)他の形態例
(a)前述の形態例では、発光時間の調整によりピーク輝度を可変制御する場合について説明したが、最大出力電圧の調整によりピーク輝度を可変制御しても良い。また、発光時間及び最大出力電圧の双方を同時に調整し、ピーク輝度を可変制御しても良い。
(b)前述の形態例では、算出された平均階調値APLに対応する標準ピーク輝度SEL_PKを、ルックアップテーブルから読み出す場合について説明したが、事前に設定した関係に従って算出しても良い。
【0037】
(c)前述の形態例では、有機ELパネルモジュール1に最大出力電圧制御用ドライバ7Aと点灯時間制御用ゲートドライバ7Cを2つとも搭載するものとして説明した。
しかし、ピーク輝度の可変制御機能は、発光時間又は最大出力電圧のいずれか一方を可変制御することで実現できる。従って、発光時間を可変制御する方式を採用する場合には最大出力電圧制御用ドライバ7Aを搭載しない構成を採用し、最大出力電圧を可変制御する方式を採用する場合には点灯時間制御用ゲートドライバ7Cを搭載しない構成を採用しても良い。
【0038】
(d)前述の形態例においては、有機ELディスプレイパネルについて説明したが、無機ELディスプレイパネルにも応用できる。また例えば、FED(field emission display) 、無機ELディスプレイパネル、LEDパネル、PDP(Plasma Display
Panel)パネルその他の自発光パネルに適用できる。
【0039】
(e)前述の形態例においては、ピーク輝度調整装置11を有機ELディスプレイパネル上に実装する場合について説明した。
しかし、この有機ELディスプレイパネルその他の表示装置は、単独の商品形態でも良いし、他の画像処理装置の一部として搭載されても良い。
例えば、ビデオカメラ、デジタルカメラその他の撮像装置(カメラユニットだけでなく、記録装置と一体に構成されているものを含む。)、情報処理端末(携帯型のコンピュータ、携帯電話機、携帯型のゲーム機、電子手帳等)、ゲーム機の表示デバイスとしも実現できる。
特に、バッテリー駆動される電子機器に搭載する場合には、既存のバッテリー容量でより長時間の使用を達成できる。
【0040】
(f)前述の形態例では、ピーク輝度調整装置11を有機ELディスプレイパネル上に実装する場合について説明した。
しかし、ピーク輝度調整装置11は、有機ELディスプレイパネルその他の表示装置に対して入力映像信号を供給する画像処理装置側に搭載しても良い。この場合、画像処理装置から表示装置にデューティパルスや電圧値を供給する方式を採用しても良いし、これらの値を指示する情報を画像処理装置から表示装置に与える方式を採用しても良い。
【0041】
(g)前述の形態例では、ピーク輝度調整装置11を機能構成の観点から説明したが、言うまでもなく、同等の機能をハードウェアとしてもソフトウェアとしても実現できる。
また、これらの処理機能の全てをハードウェア又はソフトウェアで実現するだけでなく、その一部はハードウェア又はソフトウェアを用いて実現しても良い。すなわち、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ構成としても良い。
(h)前述の形態例には、発明の趣旨の範囲内で様々な変形例が考えられる。また、本明細書の記載に基づいて創作される又は組み合わせられる各種の変形例及び応用例も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】発光時間と発光輝度の関係を説明する図である。
【図2】出力電圧と発光輝度との関係を説明する図である。
【図3】有機ELパネルモジュールの構造例を示す図である。
【図4】発光時間長を制御するデューティパルス例を示す図である。
【図5】有機ELパネルモジュールの構造例を示す図である。
【図6】ピーク輝度調整装置の構成例を示す図である。
【図7】平均階調値算出部の内部構成例を示す図である。
【図8】消費電力量一定化制御部の内部構成例を示す図である。
【図9】平均階調値にピーク輝度倍率を対応付けたルックアップテーブル例を示す図である。
【図10】各部の位相関係を示す図である。
【図11】ピーク輝度調整装置が実行する処理動作例を示す図である。
【図12】ピーク輝度調整による消費電力量の推移例を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 有機ELパネルモジュール
3A 発光領域
5 データドライバ
7A 電圧切替ドライバ7A
7B ゲートスキャンドライバ
7C 点灯時間制御用ゲートドライバ
9 タイミングジェネレータ
11 ピーク輝度調整装置
13 平均階調値算出部
15 消費電力量一定化制御部
151 消費電力算出部
153 ピーク輝度調整部
17 ピーク輝度制御部
19 フレーム遅延部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自発光パネル面のピーク輝度を1フレーム単位で可変制御可能な自発光表示装置において、
1フレーム期間中に入力される映像信号の平均階調値を算出する平均階調値算出部と、
算出された平均階調値に応じた標準ピーク輝度を求め、当該標準ピーク輝度と算出された平均階調値で消費される消費電力量を算出する消費電力算出部と、
一定期間内に消費される消費電力の合計値が設定電力量を超えないように、前記標準ピーク輝度を調整するピーク輝度調整部と
を有することを特徴とする自発光表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自発光表示装置において、
前記ピーク輝度調整部は、調整後の標準ピーク輝度を、(A/B)×標準ピーク輝度で与える
ことを特徴とする自発光表示装置。
ただし、Aは、制御単位に定めた一定期間内での残存期間に消費可能な実際の消費電力量であり、Bは、制御単位に定めた一定期間の全期間を同じピーク輝度で点灯する場合に残存期間に消費可能な消費電力量である。
【請求項3】
請求項1に記載の自発光表示装置において、
算出された平均階調値に応じた標準ピーク輝度は、個々の平均階調値と標準ピーク輝度の組み合わせを記録した対応テーブルより読み出される
ことを特徴とする自発光表示装置。
【請求項4】
自発光パネル面のピーク輝度を1フレーム単位で調整するピーク輝度調整装置において、
1フレーム期間中に入力される映像信号の平均階調値を算出する平均階調値算出部と、
算出された平均階調値に応じた標準ピーク輝度を求め、当該標準ピーク輝度と算出された平均階調値で消費される消費電力量を算出する消費電力算出部と、
一定期間内に消費される消費電力の合計値が設定電力量を超えないように、前記標準ピーク輝度を調整するピーク輝度調整部と
を有することを特徴とするピーク輝度調整装置。
【請求項5】
自発光パネル面のピーク輝度を1フレーム単位で調整するピーク輝度調整装置を搭載する電子機器において、
1フレーム期間中に入力される映像信号の平均階調値を算出する平均階調値算出部と、
算出された平均階調値に応じた標準ピーク輝度を求め、当該標準ピーク輝度と算出された平均階調値で消費される消費電力量を算出する消費電力算出部と、
一定期間内に消費される消費電力の合計値が設定電力量を超えないように、前記標準ピーク輝度を調整するピーク輝度調整部と
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項6】
自発光パネル面のピーク輝度を1フレーム単位で調整するピーク輝度調整方法において、
1フレーム期間中に入力される映像信号の平均階調値を算出する処理と、
算出された平均階調値に応じた標準ピーク輝度を求め、当該標準ピーク輝度と算出された平均階調値で消費される消費電力量を算出する処理と、
一定期間内に消費される消費電力の合計値が設定電力量を超えないように、前記標準ピーク輝度を調整する処理と
を有することを特徴とするピーク輝度調整方法。
【請求項7】
自発光パネル面のピーク輝度を1フレーム単位で調整するコンピュータに、
1フレーム期間中に入力される映像信号の平均階調値を算出する処理と、
算出された平均階調値に応じた標準ピーク輝度を求め、当該標準ピーク輝度と算出された平均階調値で消費される消費電力量を算出する処理と、
一定期間内に消費される消費電力の合計値が設定電力量を超えないように、前記標準ピーク輝度を調整する処理と
を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項1】
自発光パネル面のピーク輝度を1フレーム単位で可変制御可能な自発光表示装置において、
1フレーム期間中に入力される映像信号の平均階調値を算出する平均階調値算出部と、
算出された平均階調値に応じた標準ピーク輝度を求め、当該標準ピーク輝度と算出された平均階調値で消費される消費電力量を算出する消費電力算出部と、
一定期間内に消費される消費電力の合計値が設定電力量を超えないように、前記標準ピーク輝度を調整するピーク輝度調整部と
を有することを特徴とする自発光表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自発光表示装置において、
前記ピーク輝度調整部は、調整後の標準ピーク輝度を、(A/B)×標準ピーク輝度で与える
ことを特徴とする自発光表示装置。
ただし、Aは、制御単位に定めた一定期間内での残存期間に消費可能な実際の消費電力量であり、Bは、制御単位に定めた一定期間の全期間を同じピーク輝度で点灯する場合に残存期間に消費可能な消費電力量である。
【請求項3】
請求項1に記載の自発光表示装置において、
算出された平均階調値に応じた標準ピーク輝度は、個々の平均階調値と標準ピーク輝度の組み合わせを記録した対応テーブルより読み出される
ことを特徴とする自発光表示装置。
【請求項4】
自発光パネル面のピーク輝度を1フレーム単位で調整するピーク輝度調整装置において、
1フレーム期間中に入力される映像信号の平均階調値を算出する平均階調値算出部と、
算出された平均階調値に応じた標準ピーク輝度を求め、当該標準ピーク輝度と算出された平均階調値で消費される消費電力量を算出する消費電力算出部と、
一定期間内に消費される消費電力の合計値が設定電力量を超えないように、前記標準ピーク輝度を調整するピーク輝度調整部と
を有することを特徴とするピーク輝度調整装置。
【請求項5】
自発光パネル面のピーク輝度を1フレーム単位で調整するピーク輝度調整装置を搭載する電子機器において、
1フレーム期間中に入力される映像信号の平均階調値を算出する平均階調値算出部と、
算出された平均階調値に応じた標準ピーク輝度を求め、当該標準ピーク輝度と算出された平均階調値で消費される消費電力量を算出する消費電力算出部と、
一定期間内に消費される消費電力の合計値が設定電力量を超えないように、前記標準ピーク輝度を調整するピーク輝度調整部と
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項6】
自発光パネル面のピーク輝度を1フレーム単位で調整するピーク輝度調整方法において、
1フレーム期間中に入力される映像信号の平均階調値を算出する処理と、
算出された平均階調値に応じた標準ピーク輝度を求め、当該標準ピーク輝度と算出された平均階調値で消費される消費電力量を算出する処理と、
一定期間内に消費される消費電力の合計値が設定電力量を超えないように、前記標準ピーク輝度を調整する処理と
を有することを特徴とするピーク輝度調整方法。
【請求項7】
自発光パネル面のピーク輝度を1フレーム単位で調整するコンピュータに、
1フレーム期間中に入力される映像信号の平均階調値を算出する処理と、
算出された平均階調値に応じた標準ピーク輝度を求め、当該標準ピーク輝度と算出された平均階調値で消費される消費電力量を算出する処理と、
一定期間内に消費される消費電力の合計値が設定電力量を超えないように、前記標準ピーク輝度を調整する処理と
を実行させるコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−147868(P2007−147868A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340436(P2005−340436)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]