説明

自硬性ガラスカルボマー組成物

本発明は、フルオロシリケートガラス粉末を(a)末端ヒドロキシル基を有し、当該アルキル基が1〜4個の炭素原子を有するところのポリ(ジアルキルシロキサン)、(b)水性酸溶液で処理し、(c)処理されたフルオロシリケートガラス粉末を水性酸溶液から分離することにより得られる自硬性ガラスカルボマー組成物に関する。本発明によるガラスカルボマー組成物は、例えば、良好な靭性と強度、並びに優れたフルオライド放出を有する。加えて、本発明によるガラスカルボマー組成物は、収縮または膨張を示さず、これは高い強度と耐久性を有する、キャビティ用充填物を提供するための必須の特性である。さらに、本発明によるガラスカルボマー組成物は、磨耗および損耗に対するより低い感受性、より高い剛度、より滑らかな表面、より良好な色堅牢度、例えば骨組織へのより良好な付着性、並びにより低い水感受性を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
本発明は、改善された性質を有するガラスカルボマーセメント、該ガラスカルボマーセメントを製造する方法、および高応力用途を含む臨床および歯科用途、例えば歯の修復、象牙質置換、歯冠コアの形成、すなわち、骨および歯科用セメントとして、並びに工業用途における該ガラスカルボマーセメントの使用に関する。
【0002】
発明の背景
ガラスアイオノマーセメントは、当該技術分野で知られており、既に、臨床および歯科用途において、例えば永久的な充填材として、かなりの期間にわたって使用されている。例えば、ここに参照により組み込まれる米国特許第4,376,835号は、少なくとも0.5μmの平均粒子サイズ、粉末粒子のコア領域に存在するカルシウム量に対して粉末粒子の表面において少ないカルシウム量、粉末粒子のコア領域におけるSi/Ca原子比に対する粉末粒子の表面におけるSi/Ca原子比の比少なくとも2.0を有し、カルシウム含有量が表面からコア領域に向かって漸近的に増加するフルオロケイ酸カルシウムアルミニウムガラス粉末を開示する。米国特許第4,376,835号によるフルオロケイ酸カルシウムアルミニウムガラス粉末は、硬化反応中および硬化反応後に減少した水感受性を有し、該フルオロケイ酸カルシウムアルミニウムガラス粉末、ポリカルボン酸およびキレート剤の水性混合物を含む自硬性ガラスアイオノマーセメントに使用され、ここで、カルボン酸は、フルオロケイ酸カルシウムアルミニウムガラス粉末の硬化反応を触媒し、キレート剤は、この硬化反応を促進し、向上させる。
【0003】
ここに参照により組み込まれる米国特許第5,063,257号は、当該分野で知られているいくつかのガラスアイオノマーセメントの不利点に取り組んでいる。これら物質の最も重要な不利点の1つは、硬化反応を制御することが困難であることにより、表面が脆化し、それ故低下した強度を有するセメントがもたらされることである。米国特許第5,063,257号は、フルオロシリケートガラス粉末、α,β−不飽和カルボン酸のポリマー例えばポリ(アクリル酸)、不飽和炭素−炭素結合を有する重合性有機化合物、重合触媒、水、界面活性剤および還元剤を含むガラスアイオノマーセメントを用いることにより、この問題に対する解決策を提供する。この組成物の硬化は、フルオロシリケートガラス粉末の通常の中和反応、並びにα,β−不飽和カルボン酸のポリマー中に存在する不飽和基と重合性有機化合物との重合により生じ、それにより、硬化の初期段階で水に対してはるかに低い感受性のガラスアイオノマーセメントを与える。例6および8並びに14〜16によると、フルオロシリケートガラス粉末は、エチレン性不飽和アルコシキシラン、例えばビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シランで前処理される。
【0004】
参照により組み込まれる米国特許第5,453,456号、第5,552,485号および第5,670,258号は、水性シラノール処理溶液および任意に追加の有機化合物で処理されたフルオロシリケートガラス粉末を開示する。これらの処理されたフルオロシリケートガラス粉末は、改善された強度を有するセメントを生成する。水性シラノール処理溶液は、現場で、好ましくは、酸性エチレン性不飽和アルコキシシラン、すなわち好ましくは1つ以上の加水分解性アルコキシ基、1つ以上のエチレン性不飽和基および1つ以上のカルボキシル基を有するアルコキシシランの加水分解により調製される。
【0005】
市販の製品は、例えば、3M ESPEが提供しているKetacMolar(登録商標)およびGC社が提供しているFuji IX(登録商標)である。
【0006】
しかしながら、先行技術から知られるガラスアイオノマーセメントは、いくつかの不利点を受ける。例えば、先行技術によるガラスアイオノマーセメントの強度、剛度および硬度はしばしば不十分である。既知のセメントの表面は、また、硬化したとき、非常に滑らかではないので、例えば歯科用充填材として使用したとき、磨くことが困難である。既知のガラスアイオノマーセメントのもう一つの不利点は、硬化したセメントがかなり高い溶解性を有し、これが歯科用充填物の磨耗を引き起こすことである。この硬化したセメントは、また、骨組織に対するかなり劣った付着性を示す。したがって、これらの不利点を受けない改善されたガラスアイオノマーセメントに対する必要性がなお存在する。
【0007】
結論として、先行技術によるガラスアイオノマー組成物は、特に、磨耗対する感受性および風合いに関し劣っている。さらに、それらは、しばしば、不十分な強度を示す。
【0008】
したがって、本発明の目的は、硬化したとき当該分野で知られているガラスアイオノマーに対し改善された特性を有するガラスアイオノマー組成物(本明細書において、一般的に、ガラスカルボマー組成物というが、両用語は互換的に使用することができる)を提供することにある。
【0009】
発明の概要
改善されたガラスアイオノマー組成物を提供する先行技術から知られるすべての方法は、労力を要し、複雑である。本発明は、劣化作用なしにこの技術的問題に対する解決策を提供する。本発明によるガラスカルボマー組成物は、普通に入手できる材料から製造され、未硬化状態、硬化状態のいずれにおいても、先行技術から知られるガラスアイオノマー組成物に比べてより優れた性能さえ示す。本発明によるガラスカルボマー組成物は、例えば良好な靭性と強度、並びに優れたフルオライド放出を有する。加えて、本発明によるガラスカルボマー組成物は、収縮または膨張を示さず、これは高い強度と耐久性を有する、キャビティ用充填物を提供するための必須の特性である。
【0010】
加えて、本発明によるガラスカルボマー組成物は、硬化したとき、特に、より高い硬度、磨耗および損耗に対するより低い感受性、より高い剛度、より低い溶解性、より滑らかな表面、より良好な色堅牢度、例えば骨組織へのより良好な付着性、並びにより低い水感受性を有する。本発明によるガラスカルボマー組成物のもう一つの利点は、硬化したとき、既知のガラスアイオノマー組成物と比べて、より一層容易に磨くことができるということである。本発明によるガラスカルボマー組成物のさらなる利点は、未硬化のガラスカルボマー組成物が、キャビティを充填することがはるかに容易であるようにより良好な流動性を示し、またより良好な加工性とより短い硬化時間を示すということである。本発明によるガラスカルボマー組成物は、また、シーリング剤として用いることがはるかに容易である。これらのすべての利点は、予備的臨床試験から明らかである。
【0011】
しかして、本発明は、フルオロシリケートガラス粉末を
(a)末端ヒドロキシル基を有し、当該アルキル基が1〜4個の炭素原子を有するところのポリ(ジアルキルシロキサン)、
(b)水性酸溶液
で処理し、
(c)処理されたフルオロシリケートガラス粉末を水性酸溶液から分離する
ことにより得られる自硬性ガラスカルボマー組成物に関する。
【0012】
発明の詳細な説明
この発明に用いられるフルオロシリケートガラス粉末粒子は、一般的に、粉末粒子の表面における原子比Si/Caとコア領域における原子比Si/Caの商が少なくとも2.0、好ましくは少なくとも3.0、最も好ましくは少なくとも4.0であるように、その表面でカルシウムが欠乏している。本発明の粉末粒子のカルシウム含有量は、表面からコア領域に向かって漸近的に増加する。
【0013】
上記欠乏層の深さは、個々の場合に与えられた条件に依存する。しかしながら、欠乏層は、少なくとも約10nmの深さまで、より好ましくは少なくとも約20nmまで、最も好ましくは少なくとも約100nmまで延びる。これらの範囲は、フルオロシリケートガラス粉末を歯科用に用いるために特に適している。他の目的のために、例えば骨セメントに用いるために、欠乏領域は、また、より深くてもよく、例えば200〜300nmであり得る。
【0014】
当該分野で知られているように、フルオロシリケートガラス粉末は、粉末のコア領域に対応する組成を有するガラス粉末の表面処理により製造される。表面処理後、単位体積当たりのケイ素原子の数は、実質的に一定のままである。したがって、他のタイプの原子の単位体積当たりの原子の無名数の実際の変化は、パーセンテージケイ素比率による相対的原子比率の商を作ることにより得られる。したがって、表面における原子比Si/Caとコア領域における原子比Si/Caの商は、フルオロシリケートガラス粉末を特徴付けるための有用な値である。
【0015】
本発明のガラス粉末のCa欠乏を決定するための表面測定は、化学分析のための光電子分光法(ESCA)により好適に行われる。この方法は、クリティカル・レビュー・イン・アナリティカル・ケミストリー、Vol.5、3号、頁267〜321、1975においてR.S.スウィングルIIおよびW.M.リッグズにより、および「ヒーミー・イン・ウンゼレル・ツァイト」、Vol.40,頁48〜53、1976においてK.レブゼンにより記述されている。上に示した記述の根底にある測定データは、米国特許第4,376,835号における要点である。
【0016】
フルオロシリケートガラス粉末は、少なくとも0.5μm、好ましくは少なくとも1.0μm、最も好ましくは少なくとも3.0μmの平均粒子サイズ(重量平均)を有する。歯科目的には、平均粒子サイズ(重量平均)は、1.0〜20.0μm、好ましくは3.0〜15.0μm、最も好ましくは3.0〜10.0μmである。粒子は、150μm、好ましくは100μm、殊に60μmの最大粒子サイズを有する。歯科用の結合セメントとして用いるためには、最大粒子サイズは25μm、好ましくは20μmである。良好な機械的性質を達成するためには、従来通り、過剰に狭いことのない粒子サイズ分布が好ましく、これは、例えば通常の粗大粒子の細砕および分級により達成される。
【0017】
フルオロシリケートガラス粉末は、本発明の粉末のコア領域の平均組成を有するガラス粉末から調製される。そのために、例えばDE A 2061513および表Iに記載されたガラス粉末が好適である。出発材料として使用されるガラス粉末は、従来通り、出発成分を950℃を超える温度で互いに融解させ、急冷し、細砕することにより得られる。出発成分は、例えば、好適な量的範囲内のDE A 2061513に記載された化合物である。
【0018】
こうして得られる粉末を、次に、表面処理に供する。本発明の粉末は、例えば、好適な化学剤によりCaを除去することにより得ることができる。
【0019】
例えば、出発ガラス粉末をその表面において、酸により、好ましくは室温で処理する。そのために、酸性基を有する物質、好ましくは可溶性カルシウム塩を生成する物質を用いる。それぞれのカルシウム塩の水への溶けにくさは、粉末の単位当たりの液体の多い量によりある程度補償され得る。使用する酸の強さおよび濃度に依存して、反応時間は、数分から数日にわたる。
【0020】
したがって、例えば粉末の調製のために、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、プロピオン酸および過塩素酸を用いることができる。
【0021】
酸は、0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜3重量%の濃度で用いられる。
【0022】
それぞれの反応時間の後、粉末を溶液から分離し、粉末粒子の表面上に可溶性カルシウム塩を実質的に残さないように十分に洗浄する。最後に、粉末を、好ましくは70℃以上で、乾燥し、所望の粒子サイズ範囲にふるい分ける。
【0023】
使用する酸が強いほど、また使用する酸が粉末に作用する時間が長いほど、混合流体との混合後の処理時間が長くなる。
【0024】
本粉末の好ましい表面特性は、セメント混合物における特に高い粉末/流体比の使用を可能にし、硬化した材料の高い強度値をもたらす。特に反応性の混合流体を使用することができるということは同じ効果を有する。さらに、本発明のセメントの処理時間は、使用者の要求に合わせて調整することができる。処理時間の長さは、後の硬化時間にほとんど影響を及ぼさないので、長い処理時間でも迅速な攪拌と早期の水不感受性が生じる。
【0025】
ガラス粉末は、例えばDE A2061513、DE A2439882およびDE A2101889に記載されているような通常の水性ポリカルボン酸溶液と混合して、歯科用セメントまたは骨セメントを生成することができる。好適なポリカルボン酸は、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸およびその混合物またはコポリマー、特にマレイン酸/アクリル酸コポリマーおよび/またはアクリル酸/イタコン酸コポリマーである。満足できる硬化特性を得るために、極度に反応性のガラス粉末を用いることにより、より反応性の低いポリカルボン酸が用いられることは自明である。
【0026】
該ガラスアイオノマーセメントの硬化を促進し、向上させるために、DE A2319715から知られる方式で、混合中に、キレート剤を添加することができる。混合流体としての水性ポリカルボン酸溶液の通例の使用の代わりに、ガラス粉末を、対応する比で、乾燥粉末ポリカルボン酸と予め混合することもできる。これら固体物質は互いに反応しないからである。その場合、水が混合流体として使用され、好ましくは、適切であれば静菌剤のような通常の添加剤を伴うキレート剤の水溶液である。
【0027】
計量ミスを避けるため、および最適な機械特性を得るために、粉末は、予め計量された形態で使用することができる。例えば、ガラス粉末をプラスチック容器に量り入れる。ついで、このプラスチックカプセル内でセメントを機械的に混合するか、または該容器を空け、手で混合物を調製する。そのような場合において、水性ポリカルボン酸溶液は、例えば、滴下ボトルまたはシリンジを用いて計量される。例えばDE A2324296に対応する、本発明の粉末のいわゆるシェーカーカプセルでの使用が好適である。所定量の粉末をいわゆる主コンパートメントに準備しておく一方、流体を、横クリップの下の別のクッションに収容する。クリップに圧力を掛けることによって、流体を孔を介して主コンパートメント中に噴霧し、機械的混合に利用する。両方のタイプのカプセルにおいて、純粋なガラス粉末を、所定量のガラス粉末と乾燥ポリカルボン酸との混合物で置き換えることができる。その場合、流体成分は、水、またはキレート剤の水溶液である。
【0028】
ガラス粉末と乾燥ポリカルボン酸との混合物を使用することは、この混合物をペレット化したならば殊に有利である。このために、乾燥ポリカルボン酸を、粗大部分を除去した後の細粒の形態で使用する。該ポリカルボン酸をガラス粉末と十分に混合した後、通常のペレット成形機中でペレットを作ることができる。圧縮圧力は、混合流体(例えば、水または水性酒石酸溶液)の添加後にペレットが、他方でそれらが輸送に対する十分な機械的安定性を有しながら、なお容易にセメントに加工できるように選択しなければならない。このようにして作られたペレットは、例えば対応する量の酒石酸溶液中に短時間溶解した後特に簡単にセメントペースト中に混合することを可能とする。混合流体は、例えば滴下ボトルまたはシリンジから添加することができる。
【0029】
本発明によると、ポリ(ジアルキルシロキサン)は、線状または環状であり得る。これは、さらに、異なるポリ(ジアルキルシロキサン)のブレンド、例えば高動粘度のポリ(ジメチルシロキサン)と低動粘度のポリ(ジメチルシロキサン)とのブレンドであり得る。さらに、ポリ(ジアルキルシロキサン)のアルキル基は、いずれも、メチル基であることが好ましい。動粘度は、好ましくは、25℃で約1cSt〜約100000cSt[約1〜約100000mm2/s]、好ましくは25℃で約100cSt〜約10000cSt[約100〜約10000mm2/s]、さらに好ましくは25℃で約500cSt〜約5000cSt[約100〜約10000mm2/s]の範囲内にある。最良の結果は、25℃で約1000cSt[約1000mm2/s]の粘度で得られる。
【0030】
本発明によると、フルオロシリケートガラス粉末の粒子は、好ましくは約0.5μm〜約200μm、より好ましくは約3μm〜約150μm、さらに好ましくは約3μm〜約100μm、特に約20μm〜約80μmの平均サイズを有する。
【0031】
水性酸溶液は、無機酸または有機酸を含むことが好ましい。水性酸溶液は、有機酸を含むことがさらに好ましく、その場合、有機酸は好ましくはポリマー、例えばポリアクリル酸である。本発明によると、水性酸溶液は、2〜7の範囲内のpHを有する。
【0032】
本発明は、また、自硬性ガラスカルボマー組成物の製造方法に関する。本発明に従う方法によると、以下の順序で、フルオロシリケートガラス粉末を、
(a)末端ヒドロキシル基を有し、当該アルキル基が1〜4個の炭素原子を有するところのポリ(ジアルキルシロキサン)、
(b)水性酸溶液
で処理し、
(c)処理されたフルオロシリケートガラス粉末を水性酸溶液から分離する。
【0033】
また、本発明は、本発明による自硬性ガラスカルボマー組成物の、(一時的)歯科用充填材、歯科用結合セメントおよび骨セメントとしての使用にも関する。本発明による自硬性ガラス刈る簿バー組成物は、整形外科学における骨置換材として、例えば移植片または関節キャビティ用のコーティング材料として使用することもできる。
【0034】

例1
以下の組成物を以下の成分から調製した:
(a)S20と表示された、1000cStの動粘度を有するポリジメチルシロキサン;
(b)通常のフルオロシリケートガラス粉末;および
(c)通常の水性ポリアクリレート溶液。
【0035】
組成物を調製するために使用したフルオロシリケートガラスと水性ポリアクリレート溶液は、3M ESPEが提供しているA3 APLICAPカプセルから取り出した。成分の量を表1に示すが、ここで、5wt%の追加のフルオロシリケートガラスは、約0.015gのフルオロシリケートガラスに等しく、0.0015gのS20は、水性ポリアクリレート溶液の通常の量(約0.0920g)に加える約1.6%の追加の流体に等しい。
【表1】

【0036】
例2
例1による組成物を、口腔内で生じる磨耗を模擬するために設計された三体磨耗システム(de Geeら、1994、1996参照)であるACTA−磨耗機においてインビトロ磨耗試験で評価した。比較のために、2種の参照物質(IFMCおよびKPFA;KPFAは、3M ESPEが提供するKetacMolar(登録商標)である)を試験した。この試験では、2つのホイール(第1のホイールは、試験すべき試料を含有し、第2のホイールは相方である)を、異なる方向であるが円周速度の差を15%にして、円周上で密接に接触させながら、回転させる。試験試料を第1のホイールの円周上に位置させる。2つのホイールが互いに対して作用する力は、1t、約15Nに調整する。両ホイールを米粉のスラリーおよびバッファ溶液中のホワイトミレットスプレー中に配置する。磨耗試験中、食品をホイール間でプレスし、試験試料中に磨耗痕を生じさせ、磨耗の測定のために、参照物質の両側に手付かずの領域を残す。磨耗により失われた物質を、側面計で10個の試料を評価することにより測定した。
【0037】
試料を第1のホイール(サイズ約10×15×3mm)中で調製した。硬化中、例1による組成物を、100%相対湿度のオーブン中、37℃で保存した。硬化後、シアノアクリレート接着剤を用いて試料を第1のホイール上に接着した。その後、試料ホイールを、均質な円柱状の外側表面が得られるまで、湿潤研磨した。この磨耗研磨は、カーブランダムおよびダイアモンドホイールを有する磨耗試験機中で、1000の粒度まで行った。この手法中、外側表面から100μmの層が除去された。次に、磨耗試験を開始し、これを37℃およびpH7.0で行った。1日後、4日後および8日後に磨耗データを得た。得られたデータを表2に示すが、60未満の評点は許容できるものであり、より低いデータはより高い硬度に等しい。
【表2】

【0038】
表2のデータは、試料の硬度が経時的に増加することを示している。表2のデータから、IFMCは本発明による組成物から調製されたすべての試験試料よりも劣っていることが結論付けられる。加えて、KPFAは、本発明による試料8Pと比較すると、劣った性能を示す
例3
この例では、溶解性試験を行った。この試験は、次のように行った。約0.4〜約0.6cmの直径を有し、約1〜約1.5mmの厚さを有する硬化した試料の重量を参考として測定した。この試験では、これら試料を、pHをクエン酸で調節した種々のpH値の水に浸漬した。2.5のpH値を試験した。これは臼歯間中で生じ得るpHを模擬するからである。試験は、約15日間行った。いくつかの時間間隔で試験試料の重量を測定したが、より大きな重量損失は材料のより高い溶解性を示すものであった。データを%溶解度(初期重量と、各時間での重量損失に基づいて計算)で表し、表3に示す。
【表3】

【0039】
表3におけるデータから、本発明による組成物から調製された試料が市販の材料KPFAよりも改善された溶解性能を示したことが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロシリケートガラス粉末を
(a)末端ヒドロキシル基を有し、当該アルキル基が1〜4個の炭素原子を有するところのポリ(ジアルキルシロキサン)、
(b)水性酸溶液
で処理し、
(c)処理されたフルオロシリケートガラス粉末を前記水性酸溶液から分離する
ことにより得られる自硬性ガラスカルボマー組成物。
【請求項2】
前記ポリ(ジアルキルシロキサン)が、線状または環状である請求項1に記載の自硬性ガラスカルボマー組成物。
【請求項3】
前記ポリ(ジアルキルシロキサン)のアルキル基が、メチル基である請求項1または2に記載の自硬性ガラスカルボマー組成物。
【請求項4】
前記ポリ(ジアルキルシロキサン)が、25℃で約1〜約100000cStの動粘度を有する請求項1〜3のいずれか1項記載の自硬性ガラスカルボマー組成物。
【請求項5】
前記フルオロシリケートガラス粉末の粒子が、約0.5〜約200μmの平均サイズを有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の自硬性ガラスカルボマー組成物。
【請求項6】
前記水性酸溶液が、無機酸または有機酸を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の自硬性ガラスカルボマー組成物。
【請求項7】
前記有機酸が、ポリマーである請求項6に記載の自硬性ガラスカルボマー組成物。
【請求項8】
前記水性酸溶液が、2〜7の範囲内のpHを有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の自硬性ガラスカルボマー組成物。
【請求項9】
フルオロシリケートガラス粉末を
(a)末端ヒドロキシル基を有し、当該アルキル基が1〜4個の炭素原子を有するところのポリ(ジアルキルシロキサン)、
(b)水性酸溶液
で処理し、
(c)処理されたフルオロシリケートガラス粉末を前記水性酸溶液から分離する
自硬性ガラスカルボマー組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の自硬性ガラスカルボマー組成物の、歯科用充填材、歯科用結合セメント、骨セメントまたは骨置換材としての使用。

【公表番号】特表2006−526616(P2006−526616A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508557(P2006−508557)
【出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000396
【国際公開番号】WO2004/108095
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(505449715)
【Fターム(参考)】