説明

自走型防除機

【課題】誤った条件で薬剤の散布が行われることを防止でき、圃場状態や作物の種類などに応じた適切な薬剤散布が可能な自走型防除機の提供である。
【解決手段】走行装置(3,4)上に設けた薬液タンク5と、タンク5内の薬液を散布するノズル11と、タンク5とノズル11との間に設けた薬液経路Yと、散布する薬液量の設定スイッチ31と、走行を開始すると設定された条件で自動的に薬液を散布する自動散布機能を有する制御装置100とを設けた防除機を備えた自走型防除機において、薬液経路Yを散布経路60とコック63を設けたバイパス経路61とから構成し、更にコック63の開閉検出センサ65を設ける。制御装置100は、薬液の設定量とコック63の開閉状態に応じた薬液の散布量が異なる場合に、自動散布機能を停止して、散布を開始させないようにする自動散布停止機能を有する。この機能により、誤った条件における薬剤の散布を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤などを散布する防除機を備えた自走型防除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用管理機にズームスプレーヤーを取り付けて、薬剤を散布するように構成したものが知られている。そして、このような乗用管理機は、機体の前部あるいは後部に散布ノズル付のズームスプレーヤーを左右横方向に拡げて薬液を作物に散布する薬剤散布装置を取り付けている。ズームスプレーヤーは、収納できるような構成であり、例えば機体前部にブームを取り付ける構成のものでは機体正面に固着された中央ブームとその左右にあって前後軸回りに回動して収納あるいは水平展開自在に構成された左右分割ブームとからなるものが知られている。
【0003】
そして、薬剤散布は圃場状態や作物の種類などに合わせて散布量、散布様態、散布タイミングなどを適切にするため、さまざまな散布モード(散布条件)が設定され、制御装置に記憶されている。そして、乗用管理機に搭乗したオペレータが適切な散布モードを選択することで、圃場状態や作物の種類などに応じた薬剤散布が行われる。
【0004】
しかし、オペレータにより圃場状態や作物の種類などに応じた条件でない散布操作、いわゆる誤操作が行われると、薬剤の過剰散布又は過少散布が起こって、作物や土壌に影響をもたらしたり、期待される効果が得られなかったりする。また、薬剤散布を行うオペレータも散布条件に気をつけなければならず、心理的負担が大きい。
【0005】
特に、オペレータが防除作業に慣れていない場合などは散布条件が圃場状態や作物の種類にとって適切であるか否かまでは把握することができず、薬剤散布を行うオペレータにとって、作業ストレス、心理的負担が大きい。また、圃場状態や作物の種類などに応じた良好な散布ではない場合に、そのまま散布を続けることは作物や圃場にとって好ましくないため、オペレータには素早い適切な対応が求められる。
【0006】
そこで、特許文献1には、予め決められた複数の異なる散布条件の中から選択された散布条件を表示する散布条件表示手段(ディスプレイ)と、散布条件表示手段(ディスプレイ)で表示された散布条件を変更する散布条件設定変更手段(ボタン、スイッチ等)と、予め決められた複数の異なる散布条件の中から選択された特定の散布条件のいずれかを順次選択して自動的に薬剤を散布する自動薬剤散布モードと予め決められた複数の異なる散布条件の中から選択される散布条件とそれ以外の散布条件の中のいずれかを順次手動で散布条件設定変更手段により選択して薬剤を散布する手動散布モードを切り換える自動・手動散布モード設定切替手段(自動スイッチ)と自動散布モード時に自動散布モード設定中であることを表示する自動散布モード設定表示手段(パイロットランプ)などを設けた防除機を備えた作業車(自走型防除機)であって、自動・手動散布モード設定切替手段(自動スイッチ)により自動散布モードに切り換えられると、自動散布モード設定中であることを自動散布モード設定表示手段(パイロットランプ)とは異なる形式で散布条件表示手段(ディスプレイ)に表示する構成が開示されている。
【0007】
この構成によれば、自動・手動散布モード設定切替手段(自動スイッチ)により自動散布モードに切り換えられると、自動散布モード設定表示手段(パイロットランプ)及び散布条件表示手段(ディスプレイ)によって、異なる形式でその旨が表示されるため、作業車に搭乗するオペレータは、薬剤散布作業の都度、自動や手動などの散布条件を両表示形式(パイロットランプとディスプレイ)で確認できるので、所定の条件で安心して散布作業を継続でき、オペレータのストレスの低減が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−182972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1によれば、薬剤散布作業の都度、自動や手動などの散布条件を両表示形式(パイロットランプとディスプレイ)で確認できるため、オペレータの心理的負担を軽減できるが、実際に表示された条件や態様で薬剤散布作業が行われているかどうかまでは確認できない。
【0010】
したがって、薬剤の散布条件が設定とは異なる態様で、誤った条件又は不適切な条件で薬剤散布作業が行われている場合もありうる。実際の薬剤散布が圃場状態や作物の種類などに応じた良好な散布ではない場合に、そのまま薬剤の散布を続けることは作物や圃場にとって好ましくない。したがって、誤った条件で薬剤の散布が行われることを防止して、実際の薬剤の散布条件が設定条件と異なる場合には、オペレータは速やかに誤った条件の散布が行われてしまうことを判断する必要がある。
【0011】
そこで、本発明の課題は、誤った条件で薬剤の散布が行われることを防止できる防除機を備えた自走型防除機を提供することである。また、本発明の課題は、圃場状態や作物の種類などに応じた適切な薬剤散布を行うことができる防除機を備えた自走型防除機を提供することである。更に、本発明の課題は、正常な条件で薬剤散布を行うことができるかどうかをオペレータが容易に判断できる防除機を備えた自走型防除機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明は、走行装置(3,4)と、該走行装置(3,4)上に設けた薬液を貯留する薬液タンク(5)と、該薬液タンク(5)内の薬液を散布するための薬液散布ノズル(11)と、前記薬液タンク(5)と前記薬剤散布ノズル(11)との間に設けた薬液経路(Y)と、散布する薬液の量を設定するための設定スイッチ(31)と、前記走行装置(3,4)によって走行を開始すると設定スイッチ(31)により設定された条件で自動的に薬液タンク(5)から薬液経路(Y)を介して薬剤散布ノズル(11)に送液して薬液を散布する自動散布機能を有する制御装置(100)とを設けた防除機とを備えた自走型防除機において、前記薬液経路(Y)は、主経路(60)と、開閉手段(63)を設けた分岐経路(61)からなり、前記分岐経路(61)の開閉手段(63)による開閉状態を検出する開閉検出手段(65)を設け、前記制御装置(100)は、前記設定スイッチ(31)による薬液の設定量と前記開閉検出手段(65)により検出される分岐経路(61)の開閉状態に応じた薬液の散布量が異なる場合は、前記自動散布機能を停止する自動散布停止機能を有する自走型防除機である。
【0013】
請求項2記載の発明は、前記防除機に聴覚又は視覚によって認識可能な報知手段(22,51)を設け、前記制御装置(100)は、前記設定スイッチ(31)による薬液の設定量と前記開閉検出手段(65)により検出される分岐経路(61)の開閉に応じた薬液の散布量が異なる場合は、前記報知手段(22,51)によって報知する報知機能を有する請求項1記載の自走型防除機である。
請求項3記載の発明は、前記主経路(60)内の薬液の流量を検出する流量検出手段(43)と、前記走行装置(3,4)の走行速度を検出する速度検出手段(53)とを設け、前記制御装置(100)は、前記流量検出手段(43)により検出される流量が所定値以下で、且つ速度検出手段(53)により検出される速度がゼロの場合は、前記報知手段によって報知する報知機能を停止する報知停止機能を有する請求項2記載の自走型防除機である。
なお本明細書では「薬剤」とは栄養剤、農薬など作物に散布が必要な固体物が含まれることもある液状物をいう。また、薬剤を薬液という場合もある。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、分岐経路(61)の開閉検出手段(65)によって検出される開閉状態に応じた散布量と散布条件の設定量が異なる場合は自動散布停止機能によって薬剤の自動散布が行われないようにすることで、誤った条件における薬剤の散布を防止できる。そして、実際の薬剤の散布条件が設定条件とは異なる場合に薬剤の自動散布が行われないことで、オペレータは正常な条件で適切な薬剤散布が可能かどうかの判断が容易にできるため、速やかに圃場状態や作物の種類などに応じた適切な薬剤散布を行うことができる。
【0015】
また、請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、分岐経路(61)の開閉検出手段(65)によって検出される開閉状態に応じた散布量と散布条件の設定量が異なる場合は薬剤の自動散布が行われないだけではなく、報知手段(22,51)によってオペレータに誤った条件であることを報知することで、オペレータは確実に、且つより速やかに正常な条件で散布を行えるかどうかの判断ができる。したがって、状況に応じた適切な対応が早期に可能となる。
【0016】
更に、請求項3記載の発明によれば、上記請求項2記載の発明の効果に加えて、主経路(60)の流量検出手段(43)によって検出される薬液の流量が所定値であり、且つ車速検出手段(53)によって検出される車速がゼロであるときは、報知停止機能によって報知手段(22,51)による報知が行われないことで、過度な警告を防止できる。
例えば、開閉検出手段(65)によって検出される開閉状態に応じた散布量と散布条件の設定量が異なっていても、自走型防除機の速度がゼロの場合は水の汲み上げ作業などでポンプが駆動することがある。したがって、自走型防除機の速度をゼロに限定した水を汲み上げているときには警報音は鳴る必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態による自走型防除機の側面図である。
【図2】図1の自走型防除機の正面図である。
【図3】図3(a)は図1の自走型防除機の防除機の防除コントローラボックスの平面図であり、図3(b)は図3(a)のコントローラパネルの平面図である。
【図4】本発明の一実施形態による自走型防除機の防除機の配管系統図である。
【図5】図4の配管系統図の流量制御弁付近の拡大図である。
【図6】図1の自走型防除機の防除機の制御装置の制御回路の構成を示したブロック図である。
【図7】防除機の制御装置の制御の一例(フロー)を示した図である。
【図8】防除機の制御装置の制御の一例(フロー)を示した図である。
【図9】防除機の制御装置の制御の一例(フロー)を示した図である。
【図10】防除機の制御装置の制御回路の構成の別の例を示したブロック図である。
【図11】図11(a)は、図5の配管系統図にバイパスコックモータを設けた場合の図であり、図11(b)は、制御装置の制御の一例(フロー)を示した図である。
【図12】防除機の制御装置の制御の一例(フロー)を示した図である。
【図13】防除機の制御装置の制御の一例(フロー)を示した図である。
【図14】防除機の制御装置の制御の一例(フロー)を示した図である。
【図15】防除機の制御装置の制御の一例(フロー)を示した図である。
【図16】防除機の制御装置の制御の一例(フロー)を示した図である。
【図17】防除機の制御装置の制御の一例(フロー)を示した図である。
【図18】防除機の制御装置の制御の一例(フロー)を示した図である。
【図19】防除機の制御装置の制御の一例(フロー)を示した図である。
【図20】図4の防除ポンプにポンプ回転数センサを設けた場合の拡大図である。
【図21】防除機の制御装置の制御の一例(フロー)を示した図である。
【図22】防除機の制御装置の制御の一例(フロー)を示した図である。
【図23】図23(a)は、自走型防除機の後部に作業機を装着した場合の防除機と作業機の制御装置の制御回路の構成を示したブロック図であり、図23(b)は、水平制御用の操作ボックスの平面図である。
【図24】防除機と作業機の制御装置の制御の一例(フロー)を示した図である。
【図25】従来の自走型防除機の防除機と作業機の制御装置の制御回路の構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態による自走型防除機を図面により説明する。
図1には本発明の一実施形態による自走型防除機の側面図を示し、図2には図1の自走型防除機の正面図を示す。また、図3(a)には図1の自走型防除機の防除コントローラボックスの平面図を示し、図3(b)には図3(a)のコントローラパネル20の平面図を示す。また、図4には防除機の配管系統図を示す。
【0019】
車体(車体フレーム)1の前部にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケース2内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を走行装置の前輪3と後輪4に伝える構成である。そして、機体後部には薬剤(薬液)を収容している薬液タンク5が設置され、該薬液タンク5の上部に運転席6が設けられ、その前方にはステアリングハンドル7が装備されている。薬液タンク5内の薬液は、防除ポンプ8により散布ブーム9に設けられた散布ホース10のノズル11から噴出される。
機体の左右両側には散布ブーム9を収納支持するためのブーム収納支持枠13、13が立設され、受け具14によって係止保持される。
【0020】
次に、散布ブーム9の構成について説明する。
中央の散布ブーム(センターブーム)9Cは機体の横幅に略一致し、その左右両側に連結される左右散布ブーム(サイドブーム)9L、9Rはセンターブーム9Cよりも長さが長く構成されている。そして、左右のサイドブーム9L、9Rは、ブーム支持フレーム12に対し回動自在に連結され、サイドブーム上下シリンダ15により上方へ回動させて収納状態に保持できたり、地面と略平行になるように散布作業姿勢状態に回動させて支持させたりすることができる。そして、散布ブーム9の収納時はサイドブーム9L、9Rが正しい収納姿勢の角度になってから、ブーム全体昇降シリンダ17の下降により収納される。
【0021】
次に、自走型防除機の車速連動噴霧システムを有したブームスプレーヤ(薬液散布装置)の散布制御装置について説明する。
前記走行ミッションケース2の近くには、走行車輪へのドライブ軸の回転数(rpm)を走行速度(車速)として検出する車速センサ53(図6)が設置されていて、この車速センサ53による検出値がコントローラ99の制御装置100(図6)に伝えられる。
【0022】
図3に示すように、防除ポンプ8(図4)の駆動を入り切りする散布スイッチ16、吸水用の吸水スイッチ19や、手動で開閉できる各ブーム9L,9C,9Rの散布コックC1,C2,C3等が運転席6の側部に設置されている。散布コックC1,C2,C3はレバーの操作で開閉する。なお、吸水ポンプ(ジェットポンプ)18(汲み上げに使用)の駆動は、防除ポンプ8を入り切りする吸水スイッチ19によって行う。
【0023】
図3に示すように、コントローラパネル20には、中央上部のディスプレイ(表示部)22の左側に上位から散布設定23、圧力24、流量25、流量累計26等の表示部が表示されていて、複数の異なる散布条件を表示する構成である。ディスプレイ22の左端部に点灯されるインジケータ(三角マーク)22aによって、このディスプレイ22に表示されるデータ内容が指示される。ディスプレイ22の右側には表示切換用の表示切換ボタン28が設けられている。
【0024】
また、これらの下方には、散布条件に基づいて自動的に薬剤を散布する自動薬剤散布モードを設定するための自動スイッチ29が設けられ、この自動スイッチ29を押して自動の散布制御を行うとき(自動スイッチ29がオンのとき)は、ポンプランプ30が点灯する。この状態で、もう一度自動スイッチ29を押すと、ポンプランプ30が消灯して、手動で薬剤を散布する手動薬剤散布モードに切り換わる。手動散布では、防除ポンプ8の入り切りは散布スイッチ16の入り切りにより行う。また、手動散布では、停車中でも散布することができる。更に、散布設定スイッチ31、増減ボタンスイッチ32、33、累計リセットスイッチ34等が配置されている。
【0025】
オペレータによって自動スイッチ29が押されて自動制御が選択されると(自動スイッチ29を入りにする)、車速センサ53からの信号により散布の入り切りを行う。
レバーの開閉操作で散布コックC1〜C3を開き、走行クラッチ(図示せず)を入れて機体を前進させると、制御装置(CPU)100によって(車速センサ)防除ポンプ8が駆動して自動的に防除作業が開始される。なお、散布コックC1〜C3は散布させたいブームの選択用のコックである。自動散布の場合、散布コックC1〜C3は常時開いていても車速センサ53により散布の有無が決定される。手動散布の場合は散布スイッチ16により散布の有無が決定される。
【0026】
高圧吐水経路37からの流量は、流量センサ43によって常時検出されており、該流量センサ43からの信号は、走行速度を検出する車速センサ53からの信号と共にコントローラ99の制御装置100に送信されている。
したがって、制御装置100においては、各散布ノズルの所定吐出量と単位面積当たりの目標散布量の入力の下で、車速センサ53及び流量センサ43からの信号に基づき、前記単位面積当たりの目標散布量を実現するのに必要な薬液の流量を演算し、その演算結果が実現されるように防除ポンプ8の吐出量を制御する。
【0027】
また、図4に示すように、薬液吸込吐出経路は、薬液タンク5から防除ポンプ8間に至る低圧吸水経路35と、防除ポンプ8から流量制御弁36に至る高圧吐水経路37と流量制御弁36から散布ホース10L,10C,10Rに至る薬液経路Yと各散布ブーム9L,9C,9Rに至る散布ホース10L,10C,10Rなどからなる。高圧吐水経路37には、防除ポンプ8の吐出量を制御する調圧制御弁38を有した余水戻し経路40が設けられており、タンク5に薬液を還元できるようになっている。
【0028】
また、高圧吐水経路37とタンク5の底部との間には撹拌経路41が連通されて、高圧吐水経路37内の一部の薬液をタンク5内へ常時、噴出し還元させて、タンク5内の薬液を撹拌している。そして、本実施形態による自走型防除機は、前記薬液経路Yとして、主経路である薬液散布経路60と分岐経路であるバイパス経路61を設けている。
【0029】
図5には、図4の配管系統図の流量制御弁36付近の拡大図を示す。
薬液を比較的少なめに散布する少量散布では、主経路である薬液散布経路60のみに薬液を流して、比較的少なめの薬液を作物に散布する。一方、通常良く行われる通常散布では、薬液散布経路60と分岐経路であるバイパス経路61の両経路に薬液を流して、薬液を比較的多めに作物に散布する。バイパス経路61にはバイパスコック63が設けられ、オペレータの手動操作によって開閉する。また、バイパスコック開閉センサ65によって、バイパスコック63の開閉(開又は閉)が検出される。
【0030】
また、薬液散布経路60には流量を検出する流量センサ43が設けられている。
そして、薬液散布経路60とバイパス経路61から散布ホース10L,10C,10Rに供給される薬液の液圧を検出する圧力センサ45が設けられている。なお、流量制御弁36と調圧制御弁38との間の高圧吐水経路37にはエアチャンバ39が設けられ、低圧吸水経路35には、薬液タンク5と防除ポンプ8との間にサクションフィルタ44が設けられている。
【0031】
また、通常、吸水ポンプ18(ジェットポンプ)の本機への接続は、吸水ホース46のカプラ46aと撹拌経路(撹拌ホース)41終端部のカプラ41aとで接続可能なワンタッチカプラにより行う。そして、このカプラ接続部には切換コック47が存在し、切換コック47を切換え操作することで、検出スイッチ48が吸水側への切換えを検出するようになっており、調圧制御の基圧(例えば所定以上の圧力値30kg/cm2)を固定化する構成としている。
【0032】
図示例では、散布スイッチ16は散布コックC1の左側に配置し、吸水スイッチ19は前側の散布スイッチ16より後側に配置することによってそれぞれの操作を判り易くしている。そして、散布時に散布スイッチ16をオン操作すると防除ポンプ8が駆動して、薬液が散布ブーム9へ流れる。また、吸水時に吸水スイッチ19をオン操作すると防除ポンプ8が駆動して、防除ポンプ8による水流によって吸水ポンプ18が駆動するようになっている。なお、散布スイッチと吸水スイッチをダイヤル式とし、前側に回動操作すると散布スイッチがONし、後側に回動操作すると吸水スイッチがONする構成であると、安価に実施することができ、操作性も良好である。
【0033】
図6には、防除機の散布制御装置の制御回路の構成を示したブロック図を示す。
図6に示すように、制御装置100には、薬剤の自動散布処理(自動散布機能)を制御する各種センサの検出値データなどが格納されるRAMやEEPROMなどのメモリ50が設けられている。
【0034】
制御装置100には、エンジンEの回転数(rpm)を検出するエンジン回転数センサ57、ミッションケース2等の走行伝動装置から車速を検出する車速センサ53、噴霧する薬剤の液圧を検出する圧力センサ45及び薬液散布経路60の流量を検出する流量センサ43などから各検出値(検出信号)が入力され、コントローラパネル20等に配置された表示切換ボタン28、自動スイッチ29、散布設定スイッチ31、増減ボタンスイッチ32、33、累計リセットスイッチ34などの操作スイッチ類等からも各種キー操作に対応した信号が入力される。また、防除ポンプ8作動用の散布スイッチ16や流量制御弁36の開閉を検出するポテンショメータ等からなる弁開度センサ42からの信号も入力される。なお、制御装置100への電力供給は本機始動用キースイッチオンにより外部の電源装置(図示せず)から行われている。
【0035】
一方、制御装置100の出力側には、防除ポンプ8の伝動を入り切りする電磁クラッチリレー49や流量制御弁36を開閉させる流量制御モータ52、及びコントローラパネル20のポンプランプ30やディスプレイ22等の表示部が設けられており、制御装置100から各種命令に基づく出力信号を受信する。また、書き換え可能な不揮発メモリ、EEPROMなどのメモリ50は散布量設定値、弁開度検出値等が記憶される。また、ブザー51はスピーカー等の発生装置から構成されている。
【0036】
本実施形態による自走型防除機の制御装置100は、このようにメモリ50に記憶された散布条件に基づいて、いずれかの散布条件を順次選択して車速に連動して薬剤の散布を行う自動薬剤散布制御(自動制御)が可能な構成である。
オペレータは、例えば少量散布と通常散布に応じた各散布圧力(kgf/cm2)及び10アール当たりの目標散布量(リットル/10アール)を入力して作業を開始する。そして、自動制御を行う自動散布モードでは、車速センサ53により検出される車速に応じて目標散布量となるように散布圧力を自動調整できる。
【0037】
制御装置100は、自動スイッチ29がオペレータによって押されて自動制御が選択されると、ポンプランプ30の点灯と同時にディスプレイ22上の「散布モード」表示を「自動散布モード」表示に切り換える処理を行う。表示内容は、表示切換スイッチ28で散布設定23、圧力24、流量25、流量累計26に切り換える。なお、少量散布と通常散布の表示は流量から分かる。
【0038】
そして、制御装置100は、自動制御が選択されて、車速センサ53から検出される車速が所定値以上になる(走り始める)と薬剤の散布を開始する自動散布機能を有する。
なお、電源装置がオン時の初期状態では、ポンプランプ30が消灯しており、ディスプレイ22上の表示は「手動散布モード」表示になっている。そして、「手動散布モード」表示時に上記と同様に自動スイッチ29がオペレータによって押されて自動制御が選択されると、ポンプランプ30が点灯してディスプレイ22上の「手動散布モード」表示が「自動散布モード」表示に切り換わる。
【0039】
インジケータ22aが散布設定を表示中にオペレータが散布設定スイッチ31を押すことにより、少量散布、通常散布がローテーションで切り替わり、薬液散布経路60のみに薬液を流して作物に散布する少量散布と薬液散布経路60とバイパス経路61の両経路に薬液を流して作物に散布する通常散布の設定ができる。そして、表示切換スイッチ28でインジケータ22aを散布設定に合わせると、現在の散布モードが確認できる。
散布設定スイッチ31の操作によって少量散布と通常散布の設定をすると、各条件に応じた設定量になるように、制御装置100は電磁クラッチリレー49に信号を出力して防除ポンプ8を駆動させる。
【0040】
圃場の作物の量が少ない場合や作物の種類によって薬液の量が少なくて済む場合は薬液散布経路60のみに薬液を流して作物に散布する少量散布を行うが、通常は、薬液散布経路60とバイパス経路61の両経路に薬液を流して作物に散布する通常散布を行う。
そして、散布設定スイッチ31により少量散布を選択した場合は、バイパスコック63を閉じて、散布設定スイッチ31により通常散布を選択した場合は、バイパスコック63を開く。
【0041】
しかし、散布設定スイッチ31による設定とバイパスコック63の開閉状態が異なっている場合、制御装置100は電磁クラッチリレー49に信号を出力せず防除ポンプ8の伝動を切ることで、薬液の自動散布(自動散布機能)が行われないようにする。散布設定スイッチ31による設定とバイパス経路61のバイパスコック63の開閉状態が異なっていると、散布ホース10L,10C,10Rに供給する薬液の流量が正確でなくなってしまう。
【0042】
したがって、本実施形態の自走型防除機によれば、制御装置100が、薬液の散布量と散布条件の設定量が異なる場合は薬剤の自動散布が行われないようにする自動散布停止機能を有することで、誤った条件における薬剤の散布を防止できる。そして、実際の薬剤の散布条件が設定条件とは異なる場合に、オペレータは正常な条件で適切な薬剤散布が可能かどうかの判断が容易にできるため、速やかに圃場状態や作物の種類などに応じた適切な薬剤散布を行うことができる。
【0043】
例えば、散布設定スイッチ31による散布設定が少量散布でバイパス経路61のバイパスコック63が開いた状態の場合、または散布設定スイッチ31による散布設定が通常散布でバイパス経路61のバイパスコック63が閉じた状態の場合などは自動散布停止機能によって自動散布ができなくなる。
【0044】
図7には、制御装置100の制御の一例(フロー)を示す。
オペレータが自動スイッチ29を押すと自動制御が選択されて、ポンプランプ30の点灯と同時に自動的に設定モード(自動散布モード)になり、ディスプレイ22上に設定モードが表示され、インジケータ22aは散布設定23に点灯する。インジケータ22aが散布設定を表示中にオペレータが散布設定スイッチ31を押すことにより、少量散布又は通常散布の設定をする。
【0045】
そして、制御装置100は、バイパスコック開閉センサ65によってバイパス経路61のバイパスコック63の開閉状態が検出されると、散布設定とバイパスコック63の開閉状態が合っているかどうかを判定する。例えば、散布設定スイッチ31による散布設定が少量散布の場合に、バイパスコック63が閉じていると正常な条件の散布が行われる、バイパスコック63が開いていると誤った条件の散布が行われると判定する。また、散布設定スイッチ31による散布設定が通常散布の場合に、バイパスコック63が開いていると正常な条件の散布が行われる、バイパスコック63が閉じていると誤った条件の散布が行われると判定する。
【0046】
そして、制御装置100によって誤った条件の散布が行われると判定されると、すなわち、散布設定スイッチ31による薬液の設定量とバイパスコック開閉センサ65によって検出されるバイパス経路61の開閉状態に応じた薬液の散布量が異なる場合は、自走型防除機が走行を開始しても、防除ポンプ8は駆動せず、自動散布は行われない。また、正常な条件の散布が行われると判定した場合に、自走型防除機が走行を開始すると、電磁クラッチリレー49によって防除ポンプ8をオンにし、自動散布が行われる。自走型防除機の走行は、車速センサ53により検出される車速によって判断される。
【0047】
本構成により、バイパス経路61のバイパスコック63の開閉をバイパスコック開閉センサ65によって検知するだけで、薬液の散布量と散布条件の設定量の異同を判断し、散布量と設定量が異なる場合は薬剤の自動散布を停止することで、簡単、容易に誤った条件の薬剤の散布を防止できる。したがって、薬剤の自動散布の停止によって、オペレータは正常な条件による散布が可能かどうかの判断が容易、且つ速やかにできるため、圃場状態や作物の種類などに応じた適切な薬剤散布を行うことができる。
【0048】
そして、散布設定スイッチ31による散布設定が少量散布の場合にバイパスコック63が開いていると、オペレータはバイパスコック63を閉じ、散布設定スイッチ31による散布設定が通常散布の場合にバイパスコック63が閉じていると、オペレータはバイパスコック63を開くことで、正常な条件の散布が早期に可能となる。
なお、本実施形態の自走型防除機では、バイパス経路61が一つの場合を示したが、バイパス経路61を二つ又はそれ以上設け、通常散布、中量散布、少量散布など三種類以上の散布条件が設定可能な構成でも良い。
【0049】
また、バイパス経路61の開閉状態に応じた薬液の散布量と散布条件の設定量が異なる場合は薬剤の自動散布を停止するだけではなく、ブザー51を鳴らしたり、音声を発したり、ディスプレイ22に表示したりするなどの聴覚や視覚によって認識可能な報知手段によってオペレータに不適切な条件の薬剤散布であることを報知又は警告する構成(報知機能)としても良い。ディスプレイ22に表示する場合は、例えば、絵、図表、文字、数字、明るさなどによって視認できればよい。また、ブザー51などの音声による警告を併用してもよい。
【0050】
図8には、制御装置100の制御の一例(フロー)を示す。
制御装置100は、バイパスコック開閉センサ65によってバイパス経路61のバイパスコック63の開閉状態が検出されると、散布設定とバイパスコック63の開閉状態が合っているかどうかを判定する。そして、散布設定とバイパスコック63の開閉状態が異なる場合、例えば、散布設定スイッチ31による散布設定が少量散布の場合にバイパスコック63が開いていたり、散布設定スイッチ31による散布設定が通常散布の場合にバイパスコック63が閉じていたりすると、誤った条件の散布が行われると判定して、ブザー51がオンする。
【0051】
本構成により、薬剤の散布前に警報を出すことで、オペレータは確実に、且つより速やかに正常な散布を行えるかどうかの判断ができる。したがって、状況に応じた適切な対応が早期に可能となる。
【0052】
更に、薬液散布経路60の流量センサ43によって検出される薬液の散布量が所定値以下であり、且つ車速センサ53によって検出される自走型防除機の車速がゼロであるときは、ブザー51やディスプレイ22による報知が行われないようにしても良い。すなわち、制御装置100は、薬液の散布量と散布条件の設定量が異なる場合でも報知機能を停止する報知停止機能を有する。
【0053】
例えば、自走型防除機が走行していないとき(車速がゼロのときであって、水の汲み上げ作業時など)、流量センサ43によって検出される流量が所定値以下(具体的には薬液散布経路60に薬液が流れていない状態で流量がゼロ)の場合は、薬液を薬液タンク5から吸水ポンプ18によって汲み上げている場合がある。なお、この時は散布コックC1〜C3は閉じている状態であり、切換コック47により吸水側へ切り換える。したがって、薬液散布経路60にはほとんど薬液が流れず、防除ポンプ8を駆動(手動)して水を汲み上げるときは薬剤の散布は行わない。水の汲み上げによって濃度の高い薬液を薄めたり、また作業終了時に薬液タンク5に水を汲み上げて、その後水を散布することで、配管系の洗浄を行う場合がある。また、散布スイッチ16と給水スイッチ19は別に設けているが、両スイッチとも防除ポンプ8を駆動するスイッチであり、防除ポンプ8を駆動しないと吸水ポンプ18は動かず、防除ポンプ8による水流によって吸水ポンプ18のタービンを回して駆動する。
【0054】
このように、自走型防除機の速度をゼロに限定した水を汲み上げているときには警報音は鳴る必要はない。したがって、このような場合に過度に警告を発すると、オペレータに不快感を与えてしまうため、ブザー51やディスプレイ22による報知が行われない方が良い。
【0055】
図9には、制御装置100の制御の一例(フロー)を示す。
制御装置100は、バイパスコック開閉センサ65によってバイパス経路61のバイパスコック63の開閉状態が検出されると、散布設定とバイパスコック63の開閉状態が合っているかどうかを判定する。散布設定とバイパスコック63の開閉状態が異なる場合、通常は図8に示すようにブザー51がオンになるが、散布設定とバイパスコック63の開閉状態が異なる場合であっても、流量センサ43によって検出される薬液の流量が所定値以下であり、且つ車速センサ53によって検出される車速がゼロであるときは、ブザー51をオフにする。本構成により、過度に警告しないことで、オペレータに不快感を与えることはない。
【0056】
図10には、図6の制御回路の構成を示したブロック図にバイパスコックモータ67を設けた場合の図を示す。更に、図11(a)には、図5の配管系統図にバイパスコックモータ67を設けた場合の図を示し、図11(b)には、制御装置100の制御の一例(フロー)を示す。
【0057】
また、バイパス経路61のバイパスコック63を自動的に開閉できるアクチュエータ(バルブ又はモータ等)を設けても良い。オペレータがバイパスコック63を手動で開閉する場合は、少量散布時と通常散布時にバイパスコック63の開閉を確認しなければならない。また、散布設定スイッチ31による散布設定とバイパスコック63の開閉が異なる場合は、正常な薬剤散布ができない、また流量センサ43に負荷がかかるなどの不具合が生じる。流量センサ43には検出限界値があり、バイパス経路61を閉じていて大流量を流すと大きな負荷がかかるため好ましくない。
【0058】
しかし、バイパスコック63を自動的に開閉できるバイパスコック用のアクチュエータを設け、散布設定スイッチ31による散布設定が通常散布の場合は開き、少量散布の場合は閉じるように制御装置100によって制御することで、オペレータはバイパスコック63の開閉を意識せずに作業することができると共に、安全、正確な薬剤散布を行うことができる。上述のように、散布設定スイッチ31による設定とバイパスコック63の開閉状態が異なっている場合は走行を開始しても防除ポンプ8は駆動しないが、制御装置100は、散布設定スイッチ31による散布設定を確認し、散布設定に応じた散布量となるように、バイパスコック63を開閉するバイパスコックモータ67に信号を出力する。なお、バイパスコック開閉センサ65は図11には図示を省略しているが、バイパスコック63の回動支点に設ければ良い。
【0059】
例えば、図11(b)に示すように、散布設定が通常散布の場合は、自動散布又は手動散布に関わらずバイパスコック63を開き、少量散布の場合はバイパスコック63を閉じるように、バイパスコックモータ67を制御する。本構成によれば、散布設定に応じた散布量となるようにバイパスコック63が自動で開閉するため、オペレータの負担が軽減されて、安全、正確な薬剤散布を行うことができる。
【0060】
また、本実施形態の自走型防除機では、散布設定とバイパス経路61のバイパスコック63の開閉状態が異なる場合、すなわち誤った条件の散布が行われると判定すると、制御装置100により防除ポンプ8をオフにする(自動散布を行わない)が、この自動散布停止機能を解除する解除スイッチ55を設けても良い。
【0061】
オペレータによっては、個々に応じた条件や操作方法で散布作業を行いたい場合もあることや、圃場状態や作物などの条件によっては、きめ細かな制御を行いたい場合もある。したがって、解除スイッチ55を設けることで、一律な制御ではなく、個々の条件に応じた制御を可能とし、散布作業の幅を広げることができる。例えば、解除スイッチ55をオンにすることで、以下のような制御を可能としても良い。
【0062】
散布設定スイッチ31による散布設定が少量散布の場合に、バイパス経路61のバイパスコック63が開いているときは、自走型防除機が所定の車速にならないと防除ポンプ8が駆動しない(散布を開始しない)ように、制御装置100により電磁クラッチリレー49に信号を出力して防除ポンプ8の伝動を切りにする構成としても良い。
【0063】
図12には、制御装置100の制御の一例(フロー)を示す。
制御装置100は、自動散布モード時に、散布設定スイッチ31による散布設定とバイパスコック開閉センサ65によって検出されるバイパス経路61のバイパスコック63の開閉状態を判定する。そして、バイパスコック63が開いており、且つ散布設定が少量散布の場合に自走型防除機が走行を開始して、車速センサ53によって検出される車速が所定値未満である場合は防除ポンプ8はオフのままとするが、車速センサ53によって検出される車速が所定値以上である場合は防除ポンプ8をオンにする。
【0064】
このように、バイパス経路61のバイパスコック63が開いており、且つ散布設定が少量散布の場合であって、自走型防除機が低速走行しているときは薬剤の散布を開始できないようにするが、自走型防除機が高速走行しているときは薬剤の散布を開始できるようにすることで、散布設定スイッチ31による散布設定とバイパスコック63の開閉が異なる場合であっても散布作業を行うことができる。バイパス経路61のバイパスコック63が開いている場合は、通常散布も可能な状態であるので散布量が少なくても問題はない。すなわち、この場合に薬液散布経路60にかかる圧力が大きくなって、流量センサ43にかかる負荷が大きくなるという問題はない。
【0065】
なお、薬剤の散布量は車速に連動しているため、自走型防除機の車速が所定車速以上になると散布圧力が高くなって流量が増加する。そして、制御装置100は、流量センサ43によって検出が可能な流量の散布圧力になると電磁クラッチリレー49をオンにして防除ポンプ8を駆動させることで、散布作業が開始する。
【0066】
また、解除スイッチ55がオンの場合は、以下のような制御を可能としても良い。
バイパスコック開閉センサ65によってバイパス経路61のバイパスコック63が閉じた状態が検出されると散布設定が通常散布であっても散布設定スイッチ31を押すことなく自動的に少量散布になる構成としても良い。バイパス経路61のバイパスコック63を自動的に開閉できるバイパスコックモータ67(図11)などのアクチュエータ(モータ又はバルブ等)を設けた場合などは、オペレータが手動でバイパスコック63の開閉を行わないため、自動的に少量散布になることが好ましい。
前回の散布作業で通常散布に設定していても自動的に少量散布の設定になることで、散布作業の操作性が向上する。
【0067】
図13には、制御装置100の制御の一例(フロー)を示す。
バイパスコック開閉センサ65によってバイパス経路61のバイパスコック63が閉じた状態が検出されると、散布設定が通常散布量(例えば、100リットル/10アール)から少量散布量(例えば、25リットル/10アール)に切り替わる。この時、図3(b)に示すように表示される。そして、実際の散布も25リットル/10アールで行われる。なお、通常散布の場合、100リットル/10アールとなるように自動散布では車速に連動して自動で散布圧力を設定し、流量制御弁36をコントロールして噴霧量を変化させる。手動散布ではオペレータが散布圧力を設定する。
【0068】
バイパス経路61のバイパスコック63が閉じているときに、自動散布又は手動散布に関わらず自動的にディスプレイ22の表示が少量散布の設定に切り替わることで、オペレータは少量散布の条件で作業が行われることが容易に認識できるため、散布作業の操作性が向上する。例えば、通常散布の条件で作業を行いたいのに少量散布の設定になっている場合、ディスプレイ22上に少量散布の条件であることが表示されるため、すぐに散布条件が異なることに気が付く。したがって、オペレータは速やかにバイパスコック63を開いて、通常散布に変更できる。
【0069】
また、解除スイッチ55がオンの場合は、以下のような制御を可能としても良い。
オペレータが散布設定を通常散布に設定したが、バイパス経路61のバイパスコック63が閉じている場合(少量散布になる)に、図13のように少量散布の設定に切り替わるのではなく、自走型防除機が走行して自動散布が通常散布の条件の場合に、流量センサ43によって薬液散布経路60の流量を測定し、その測定値が流量センサ43の検出限界値(最大値)よりも大きい場合に、ブザー51やディスプレイ22などの報知手段による報知又は警報が行われ、更に車速に連動する散布量の増減を停止して薬液散布経路60の散布圧力を流量センサ43の検出限界値で制限する構成とする。自動制御を行う自動散布モードでは、車速センサ53により検出される車速に応じて目標散布量となるように散布圧力を自動調整できるが、この散布圧力を流量センサ43の検出限界値で制限するものである。すなわち、バイパス経路61のバイパスコック63を閉じて大流量を流すと流量センサ43に大きな負荷がかかるので、流量センサ43の限界以上には流さないということである。
【0070】
図14には、制御装置100の制御の一例(フロー)を示す。
自動散布モード時に、散布設定スイッチ31による散布設定が通常散布の場合、制御装置100は、バイパスコック開閉センサ65によって検出されるバイパス経路61のバイパスコック63の開閉状態を判定する。そして、バイパスコック63が閉じている場合(少量散布の条件である)でも、通常散布の条件で自動散布が開始される。そして、制御装置100は、流量センサ43からの検出値によって薬液の流量(散布量)を測定し、予め設定されている最大値以上であるかを判定する。薬液の散布量が最大値以上である場合は、その流量に対応する散布圧力を下げて最大値(その時の圧力をP1とする)になるように調整する。また、薬液の散布量が最大値以上である場合は、ブザー51がオンになり、オペレータにその旨が報知される。
【0071】
更に、車速センサ53によって検出される車速に応じた目標散布量の散布圧力を計算し、計算値がP1以下でない場合(P1よりも大きい場合)は、P1を維持するようにし、P1以下の場合は車速に応じた目標散布量の散布圧力(計算値)に制御して、ブザー51をオフにする。
【0072】
散布設定スイッチ31による散布設定が通常散布の場合に、バイパス経路61のバイパスコック63が閉じていると、薬液散布経路60にかかる圧力が大きくなって、流量センサ43にかかる負荷が大きくなる。流量センサ43がタービン式の場合などに、流量センサ43にかかる負荷が大きくなると、交換寿命が短くなるなどの不具合が生じるが、このように薬液散布経路60にかかる圧力を制限することで、上記不具合を防止できる。
【0073】
図14に示すフローにおいて、例えば、バイパス経路61のバイパスコック63が閉じており、且つ散布設定を通常散布とした場合は、流量センサ43の検出限界値(例えば、40リットル/分)で警報を出し、散布圧力の車速連動を停止して、散布圧力を検出限界値(最大流量)に対応する散布圧力又はそれ以下の計算値(車速に応じた目標散布量の散布圧力)による圧力で制限する。
【0074】
また、散布コックC1,C2,C3を全て閉じ、防除ポンプ8を駆動させた場合の圧力センサ45により検出される圧力測定値を調圧制御弁38の調圧制御の最大圧力(上限値)として制御装置100に記憶する機能を設けても良い。
【0075】
図15には、制御装置100の制御の一例(フロー)を示す。
通電状態で散布コックC1,C2,C3を閉じて防除ポンプ8を駆動して薬液の液圧を圧力センサ45で検出し、メモリ50に記憶させる。メモリ50への記憶は別途設ける記憶スイッチ56による。この構成は自動散布や手動散布に関係なく、作業前に調圧制御弁38が作動する圧力を決めるものである。
【0076】
そして、その時の圧力センサ45により検出される圧力測定値を記憶スイッチ56をオンにすることでメモリ50に記憶させる。
本構成により、調圧制御弁38の設定圧力が正常かどうかの判定ができる。そして、調圧制御弁38が作動する圧力を設定し、圧力を抜くことで防除ポンプ8を駆動する馬力が不要となり、エンジンEのパワーのロスを防止できる。
【0077】
そして、調圧制御弁38の設定圧力がメモリ50に記憶された圧力測定値(記憶値)よりも小さい場合は記憶値で散布を行うように制御装置100によって制御する構成としても良い。上記のように、自動散布では自動で圧力が設定され、手動散布ではオペレータが任意に散布圧力を設定するが、この設定は前記メモリ50に記憶した圧力値までにする。すなわち、本構成は、散布設定圧が記憶値よりも大きくできないようにするものである。
【0078】
図16には、制御装置100の制御の一例(フロー)を示す。図16は、図15に示すように、散布コックC1,C2,C3を全て閉じたときの圧力センサ45により検出される圧力測定値をメモリ50に記憶させた場合の制御の例を示している。
制御装置100は、自動散布モード又は手動散布モードになっているかどうかを判定し、自動散布モード又は手動散布モードである場合は、散布設定圧(P1)と記憶値(P2)との大小を比較する。記憶値よりも散布設定圧の方が小さい場合(P2>P1)は、散布圧力を記憶値(P2)の圧力に制御して、すなわち散布設定圧を上げて散布作業を行う。
【0079】
調圧制御弁38の設定圧力がエンジンEのパワーの関係で低いため、できるだけ設定圧力を上げることで、自走型防除機の高速側の散布範囲を広げることができる。すなわち、設計の関係でエンジン馬力により調圧制御弁38の元々の設定値を変えており、エンジン馬力が低いと調圧制御弁38が作動する設定値も低くしているが、作業時に調圧制御弁38の設定値を変えたい場合もあり、そのような場合は調圧制御弁38の変更を行う。
【0080】
なお、図16のフローにおいて、自動散布モード又は手動散布モードになっていない場合とは、散布作業を行わない場合を意味する。前述のように、自動散布や手動散布で実際に作業をするときには散布圧力を設定するため、手動散布か自動散布になっているかを判断するものである。
そして、本構成により、自動散布モード時又は手動散布モード時における散布圧力の設定上限値を記憶値とすることで、散布圧力の低下を防ぎ、適切な薬液散布を行うことができる。
【0081】
更に、手動散布モード時に記憶値(P2)の圧力で散布した場合に、エンジンEの回転数が低下するときは散布圧力を設定圧(P1)に下げ、ブザー51を鳴らしたり、音声を発したり、ディスプレイ22に表示したりするなどの報知手段によって報知又は警告する構成としても良い。
自動散布モードの場合は自走型防除機の車速と散布圧力が連動しているため、エンジンEの回転数が下がると自走型防除機の車速も遅くなって散布圧力も下がる。しかし、手動散布モード時では自走型防除機の車速と散布圧力が連動していないため、エンジンEの回転数が下がっても散布圧力は下がらないためエンジンEが過負荷になる。
【0082】
しかし、本構成により、手動散布モード時にエンジンEの回転数が低下する場合は散布圧力を下げることで、エンジンEの過負荷が防止できる。また、その場合、オペレータに報知手段によって報知又は警告することで、オペレータは散布圧力が記憶値(P2)から設定圧(P1)に下がったことを容易に認識できる。自走型防除機の走行系に負荷が作用してエンジンEの回転数が下がってきているにもかかわらず、高圧力で散布を続けると防除ポンプ8の駆動のため、エンジンEに更に負荷が作用してしまいエンストしてしまうが、このようなことを防止できる。
【0083】
図17には、制御装置100の制御の一例(フロー)を示す。図17は、図16において、散布圧力を記憶値(P2)の圧力に制御した場合であって、更に、散布設定スイッチ31による散布設定が手動散布モードであるときのフローを示している。
散布圧力を記憶値(P2、例えば2MPa)とし、エンジン回転数センサ57により検出される回転数が低下して通常作業回転数から所定回転数(例えば200rpm)下がると、制御装置100によって、散布圧力を散布設定圧(P1)に下げてブザー51を鳴らす構成である。
【0084】
このように、手動散布モード時で、且つエンジンEの回転数が低下する場合は散布圧力を下げることで、エンジンEの過負荷が防止でき、更に、オペレータは報知手段によって、散布圧力が記憶値(P2)から設定圧(P1)に下がったことを容易に認識できる。自走型防除機の走行系に負荷が作用してエンジンEの回転数が下がってきているにもかかわらず、高圧力で散布を続けると防除ポンプ8の駆動のため、エンジンEに更に負荷が作用してしまいエンストしてしまうが、このようなことを防止できる。
【0085】
また、作業前の設定時に自動散布モード又は手動散布モードになっており、且つバイパス経路61のバイパスコック63が開いている場合は通常散布となるが、散布設定を変更した場合に、通常散布の範囲内でノズルの種類が変化する構成としても良い。すなわち、バイパスコック63が開いている場合、散布設定は通常ノズルのみの範囲内でしか設定できないようにする。
【0086】
例えば、散布設定スイッチ31を押す毎に「100(通常ノズル)、100J(除草専用ノズル)、100L(低ドリフト用ノズル)」と順番に切り換わる。散布量は変わらないが、ノズル11の種類が変更できる。そして、これらのノズル11はノズルの径、穴形状、穴の向き等が複雑に異なるものである。
【0087】
図18には、制御装置100の制御の一例(フロー)を示す。
散布設定スイッチ31の操作によって自動散布モード又は手動散布モードになっているかどうかを判定し、自動散布モード又は手動散布モードである場合は、バイパスコック開閉センサ65によって検出されるバイパス経路61のバイパスコック63の開閉状態を判定する。バイパスコック63が開いている場合は通常散布となり、ディスプレイ22には前回の作業時のノズルの種類と反当散布設定量が表示される。そこで、散布設定スイッチ31を押すと、通常散布の種類の範囲内で表示が変化する。
【0088】
例えば、通常散布のノズルの種類として、通常ノズル、除草専用ノズル、低ドリフト用ノズルの3種類がある場合に散布設定スイッチ31を押すと、100(普通のノズル)→100J(除草用のノズル)→100L(低ドリフトノズル)→100の順でディスプレイ22の表示が切り替わる。このように、ディスプレイ22には、通常散布の種類の範囲内でのみ表示され、その中で選択可能となる。なお、ノズル11の交換は人手で行うが、表示切替は別に行う必要がある。
【0089】
したがって、バイパスコック63が開いている通常散布の場合は、少量散布の種類は表示されないため(バイパスコック開閉センサ65からの信号が制御装置100に入力されるため少量散布の表示はされない)、操作性が向上する。すなわち、散布設定スイッチ31を押す毎に100、100J、100Lの順番に表示が切り替わるが、そのときに関係のない少量散布等の数値が表示されると切り替え操作が面倒になる。しかし、本構成によれば、通常散布の種類の範囲内でのみ表示されるため、操作性が良くなる。
【0090】
そして、少量散布の設定に変更したい場合は、バイパスコック63を閉じる必要があることにオペレータはすぐに気が付く。したがって、バイパスコック63の開閉状態を確認せずに作業を開始した場合であっても、容易にバイパスコック63の開閉状態(散布条件)が分かるため、速やかに圃場状態や作物の種類などに応じた適切な薬剤散布を行うことができる。
【0091】
一方、散布設定スイッチ31の操作によって自動散布モード又は手動散布モードになっており、且つバイパス経路61のバイパスコック63が閉じている場合は少量散布となる。その場合は、流量制御弁36を開閉させる流量制御モータ52の駆動デューティ比(モータオン時/モータオフ時)を通常散布時よりも小さくする構成としても良い。
【0092】
図19には、制御装置100の制御の一例(フロー)を示す。
散布設定スイッチ31の操作によって自動散布モード又は手動散布モードになっているかどうかを判定し、自動散布モード又は手動散布モードである場合は、バイパスコック開閉センサ65によって検出されるバイパス経路61のバイパスコック63の開閉状態を判定する。バイパスコック63が閉じている場合は少量散布となり、制御装置100は流量制御モータ52の駆動デューティ比(モータオン時/モータオフ時)を通常散布時よりも小さくする信号を出力する。
【0093】
流量制御モータ52の駆動力の僅かな変化によって流量制御弁36の作動量も左右される。少量散布の場合は通常散布の場合に比べて散布量が少ないので、流量制御モータ52の駆動デューティ比が大きいと、すなわち通常散布の場合と同様にすると、散布圧力の変化が大きくなって、散布圧力の制御の精度が悪くなってしまう。しかし、本構成により、少量散布時の駆動デューティ比を通常散布時の駆動デューティ比よりも小さくすることで、少量散布の場合の散布圧力の制御の精度が向上する。
【0094】
図20には、図4の防除ポンプ8に回転数(rpm)を検出するポンプ回転数センサ70を設けた場合の拡大図を示す。エンジンEからの動力がプーリ72を介して防除ポンプ8のモータ軸のプーリ75に伝達されることで、防除ポンプ8は駆動する。ポンプ回転数センサ70は、モータ軸のプーリ75の回転数を検出するセンサである。
そして、薬剤の散布時に防除ポンプ8の回転数(rpm)を検出するポンプ回転数センサ70によって薬液の吐出量が高吐出量か低吐出量か(バイパスコック63が閉じていると低吐出量でバイパスコック63が開いていると高吐出量である)、をディスプレイ22に表示する構成としても良い。
【0095】
図21には、制御装置100の制御の一例(フロー)を示す。
制御装置100は、防除ポンプ8の回転数を検出するポンプ回転数センサ70が駆動している場合は散布中であると判断し、ポンプ回転数センサ70から検出される回転数が所定値よりも高い場合はディスプレイ22上に「高吐出量」であることを表示し、所定値以下の場合はディスプレイ22上に「低吐出量」であることを表示する。この表示は、表示切替スイッチ(図示せず)を押すか又は所定時間毎に表示されるようにすると良い。
【0096】
例えば、絵、図表、文字、数字、明るさなどによって吐出量が視認できる表示にすれば良い。薬液の吐出量が高吐出量の時は通常散布、低吐出量の時は少量散布であるため、薬液の吐出量と散布設定の妥当性を確認することができ、間違った条件における薬液の散布を防止できる。
【0097】
更に、ポンプ回転数センサ70により検出される防除ポンプ8の回転数が低い場合に、ブザー51を鳴らしたり、音声を発したり、ディスプレイ22に表示したりするなどの報知手段によってオペレータに不適切な条件の薬剤の散布であることを報知又は警告する構成としても良い。
【0098】
図22には、制御装置100の制御の一例(フロー)を示す。
制御装置100は、防除ポンプ8の回転数を検出するポンプ回転数センサ70が駆動している場合は散布中であると判断し、散布設定スイッチ31による設定が通常散布である場合は、バイパスコック開閉センサ65によって、バイパスコック63の開閉が検出される。そして、ポンプ回転数センサ70から検出される回転数が所定値以下の場合に、ブザー51がオンする。
【0099】
本構成により、散布設定スイッチ31による設定とポンプ回転数センサ70から検出される回転数の妥当性を確認することができ、間違った条件である場合は、ブザー51等の報知によってオペレータはすぐに気が付くため、速やかに圃場状態や作物の種類などに応じた適切な薬剤散布を行うことができる。
【0100】
以上の制御装置100の制御例は、矛盾しないように組み合わせることで、バラエティに富んだ散布制御が可能となる。例えば、図13と図14のフローは「コック閉?」以下の構成が異なるが、図14はバイパスコック63が閉じているときに、通常散布が設定された場合の対処方法であり、図13はバイパスコック63が閉じているときの別実施例で、強制的に少量散布にするものである。
【0101】
また、本実施形態の自走型防除機の後部に作業機(例えば、除草機など)を装着した場合に、水平制御用の操作ボックスの操作情報を、本機のコントローラ(後部作業機及び車体本体の制御用)103からCAN回線77を介して防除機のコントローラ99に送信し、該操作ボックスを後部の作業機用と防除機用とで共用する構成としても良い。
【0102】
図23(a)には、後部に作業機(図示せず)を装着した場合の防除機と作業機の制御装置の制御回路の構成を示したブロック図を示す。また、図23(b)には、水平制御用の操作ボックスの平面図を示す。
自走型防除機の機体が傾いた場合は、後部の作業機と防除機の散布ブーム9を水平(絶対水平)に維持する必要がある。
【0103】
水平制御用の操作ボックス80の操作モード選択スイッチ81は、水平制御の自動モードや手動モードなどを選択するためのスイッチであり、操作モード選択スイッチ81を押すと、まず自動水平制御モードになって、自動で後部の作業機と防除機の散布ブーム9が水平になる。また、更に操作モード選択スイッチ81を押すと自動平行制御モードになる。自動平行制御モードとは、自走型防除機の機体(車体フレーム1を基準とする)に対して自動的に水平、すなわち平行になるモードであり、絶対水平とは異なる。更に操作モード選択スイッチ81を押すと手動モードになって、オペレータが手動スイッチ83を操作することで、作業機と散布ブーム9(以下、作業機等という)の水平調整ができる。
【0104】
操作モード選択スイッチ81はダイヤル式でもよく、自動、平行、水平位置にダイヤルを合わせるように構成する。そして、前記手動スイッチ83は、図示例ではトグルスイッチ形状であり、手動スイッチ83を右側に傾けると作業機等は右側に傾斜し、手動スイッチ83を元に戻しても作業機等は右側に傾斜した状態を保持する。左側も同様に操作することができる。すなわち、手動スイッチ83が動いている間は作業機等は右側に傾けたままであり、止めたい位置で手動スイッチ83から手を離すと手動スイッチ83は自動的に中立位置に戻る。
【0105】
なお、この手動スイッチ83は自動水平制御モードでも自動平行制御モードでも使用可能である。この場合は、手動スイッチ83を右に傾けている間は作業機等が右側に傾斜するが、手動スイッチ83を元に戻すと(中立位置)作業機等も元の位置に戻る。例えば、走行中等に何か障害物などを回避したいときに使用する。
【0106】
また、傾き調整ダイヤル85は、操作モード選択スイッチ81が自動水平制御モード又は自動平行制御モードのときに使用する。自動水平制御モードのときは作業機等が絶対水平となるように制御するが、絶対水平よりも右傾斜基準や左傾斜基準としたい場合にダイヤル操作で変更できる。この時は手動の要素が入るが、手動の要素は制御を行う基準を絶対水平から変えるときのみで、変えた後は自動制御(傾斜させた角度を維持する制御)となる。また、自動平行制御モードのときは、機体と一緒に傾いている作業機等を右側に傾斜させたり左側に傾斜させて保持したい場合に使用する。
【0107】
従来は、図25に示すように、分岐ハーネス78を用いて本機のコントローラ103側と防除機のコントローラ99側で水平操作ボックス80を共用していたが、コストもかかり、ハーネスも複雑となって誤った接続が多かった。
しかし、本構成により、分岐ハーネスを削除して、本機のコントローラ103と防除機のコントローラ99にCAN回線77を接続することで、誤った接続となることを防止できると共に、コスト軽減が図れる。
【0108】
そして、CAN回線77が通信不能になった場合に、散布作業中のときは散布ブーム9を自動水平制御モード(水平基準)にし、散布作業中でないときは散布ブーム9を自動平行制御モードにする。
図24には、防除機と作業機の制御装置の制御の一例(フロー)を示す。
本機のコントローラ103によってCAN回線77が正常であるかどうかを判定し、異常であると判断した場合は薬液の散布中であるかどうかを(信号のやりとりができない場合)判定する。薬液の散布中である場合は、操作モード選択スイッチ81を押すことなく、自動水平制御モードになり、薬液の散布中でない場合は、自動平行制御モードになる。
【0109】
従来の分岐ハーネス78を用いた接続の場合は、自動水平制御モードや自動平行制御モードも手動モードにおける散布ブーム9の左右傾斜の操作ができなくなり、散布ブーム9を収納できない場合があった。分岐ハーネス78を用いた場合でもCAN回線77の場合でも機能は同じであり、CAN回線77が通信不能になった場合は、散布ブーム9を自動はもちろん、手動モードで左右に傾斜させる操作ができなくなる。
【0110】
散布ブーム9の収納時は車体フレーム1と散布ブーム9が平行でなければならないが、散布作業中のときは散布ブーム9を自動水平制御モード(水平基準)にすることで、散布作業中でも散布ブーム9の水平(絶対水平)が保持でき、散布作業も続行できる。また、散布していないときは散布ブーム9を自動平行制御モードとし、車体フレーム1と散布ブーム9を平行にすることで、散布ブーム9を収納できる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、薬剤などを散布する自走型防除機に関わらず、他の肥料などを散布する自走型防除機にも利用可能性がある。
【符号の説明】
【0112】
1 車体フレーム 2 ミッションケース
3 前輪 4 後輪
5 薬液タンク 6 運転席
7 ステアリングハンドル 8 ポンプ
9 散布ブーム 9C センターブーム
9L,9R サイドブーム 10 散布ホース
11 ノズル 12 ブーム支持フレーム
13 支持枠 14 受け具
15 サイドブーム上下シリンダ
16 散布スイッチ 17 ブーム全体昇降シリンダ
18 吸水ポンプ 19 吸水スイッチ
20 コントローラパネル 22 ディスプレイ
22a インジケータ 23 散布設定表示
24 圧力表示 25 流量表示
26 流量累計表示
28 表示切換ボタン 29 自動スイッチ
30 ポンプランプ 31 散布設定スイッチ
32、33 増減ボタンスイッチ 34 累計リセットスイッチ
35 低圧吸水経路 36 流量制御弁
37 高圧吐水経路 38 調圧制御弁
39 エアチャンバ 40 余水戻し経路
41 撹拌経路 42 弁開度センサ
41a、46a カプラ
43 流量センサ 44 サクションフィルタ
45 圧力センサ 46 吸水ホース
47 切換コック 48 検出スイッチ
49 電磁クラッチリレー 50 メモリ
51 ブザー 52 流量制御モータ
53 車速センサ 55 解除スイッチ
56 記憶スイッチ 57 エンジン回転数センサ
60 薬液散布経路 61 バイパス経路
63 バイパスコック 65 バイパスコック開閉センサ
67 バイパスコックモータ 70 ポンプ回転数検出センサ
72,75 プーリ 77 CAN回線
78 分岐ハーネス
80 操作ボックス 81 操作モード選択スイッチ
83 手動スイッチ 85 傾き調整ダイヤル
99 防除機のコントローラ 100 制御装置(CPU)
103 作業機のコントローラ
E エンジン Y 薬液経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(3,4)と、
該走行装置(3,4)上に設けた薬液を貯留する薬液タンク(5)と、該薬液タンク(5)内の薬液を散布するための薬液散布ノズル(11)と、前記薬液タンク(5)と前記薬剤散布ノズル(11)との間に設けた薬液経路(Y)と、散布する薬液の量を設定するための設定スイッチ(31)と、前記走行装置(3,4)によって走行を開始すると設定スイッチ(31)により設定された条件で自動的に薬液タンク(5)から薬液経路(Y)を介して薬剤散布ノズル(11)に送液して薬液を散布する自動散布機能を有する制御装置(100)とを設けた防除機と
を備えた自走型防除機において、
前記薬液経路(Y)は、主経路(60)と、開閉手段(63)を設けた分岐経路(61)からなり、
前記分岐経路(61)の開閉手段(63)による開閉状態を検出する開閉検出手段(65)を設け、
前記制御装置(100)は、前記設定スイッチ(31)による薬液の設定量と前記開閉検出手段(65)により検出される分岐経路(61)の開閉状態に応じた薬液の散布量が異なる場合は、前記自動散布機能を停止する自動散布停止機能を有することを特徴とする自走型防除機。
【請求項2】
前記防除機に聴覚又は視覚によって認識可能な報知手段(22,51)を設け、
前記制御装置(100)は、前記設定スイッチ(31)による薬液の設定量と前記開閉検出手段(65)により検出される分岐経路(61)の開閉に応じた薬液の散布量が異なる場合は、前記報知手段(22,51)によって報知する報知機能を有することを特徴とする請求項1記載の自走型防除機。
【請求項3】
前記主経路(60)内の薬液の流量を検出する流量検出手段(43)と、
前記走行装置(3,4)の走行速度を検出する速度検出手段(53)とを設け、
前記制御装置(100)は、前記流量検出手段(43)により検出される流量が所定値以下で、且つ速度検出手段(53)により検出される速度がゼロの場合は、前記報知手段によって報知する報知機能を停止する報知停止機能を有することを特徴とする請求項2記載の自走型防除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−60899(P2012−60899A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205718(P2010−205718)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】