説明

自走式切削機

【課題】舗装路面の補修作業にあって、該舗装路面の切削により生じた路面廃材の除去に伴う粉塵の発生を可及的に抑制して作業時の周辺環境の良化向上を図ることができる自走式切削機を提供する。
【解決手段】車体本体3に対し、舗装路面Wの表面部位を切削ビット8を備えた切削ドラム9により切削する切削手段9Aと、切削手段9Aにより切削した路面廃材W1を車体本体3外部に搬出するコンベア等の移送手段10と、車体本体3を切削進行方向に走行する走行手段4とを備えた自走式切削機1であって、路面廃材W1が切削手段9Aから移送手段10を経て車体本体3外部に搬出される経路中のいずれが部位付近に噴霧ノズル手段13を配設するとともに、車体本体3に噴霧ノズル13に防塵液を供給する防塵液供給ユニット14を配設して、舗装路面Wの切削時に際し、路面廃材W1に対して噴霧ノズル手段13から防塵液を散布するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート又はアスファルト混合物で作られた舗装路面の補修工事にあって、該舗装路面の表面部位を切削してその路面廃材を除去する自走式切削機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の自走式切削機にあっては、車体本体に回転可能に装着されかつ外周に切削ビットを設けた比較的長尺(長い)の切削ドラムと、この切削ドラムの前方(走行方向)に隣接して切削ドラムにより切削した路面廃材を該切削ドラムから受け取りかつ車体本体外部に搬出する第1のベルトコンベアと、前記第1のベルトコンベアからの路面廃材を受け取り産廃車両等に搬出する第2のベルトコンベアと、車体本体を前記切削進行方向に走行する走行装置とを備え、前記車体本体を自走させながら切削ドラムを高速回転で駆動することによって舗装路面の表面部位を切削し、その切削屑、いわゆる路面廃材を該回転中の切削ドラムから第1のベルトコンベアに搬出して該第1のベルトコンベアから第2のベルトコンベアに受け渡し、この第2のベルトコンベアから産廃車両等に直接に搬出し、前記補修すべき舗装路面から切削した路面廃材を除去するものであり、とくに、補修すべき舗装路面に対し切削ドラムにより広い幅員を一度に切削し、その路面廃材を除去することができることから舗装道路の大規模な補修工事に主に用いられていた。
上記した構造の自走式切削機においては、切削された路面廃材が切削ドラムに巻上げられる外周部位付近、該切削ドラムから第1のベルトコンベアに路面廃材を受け渡し搬出する部位付近及び第1のベルトコンベアから第2のベルトコンベアに路面廃材を受け渡して搬出する部位付近では該路面廃材の動きによって多大の粉塵が発生する。
しかし、切削ドラムのカバー内部に該切削ドラムに向けて水流を噴射する手段が設けられているものの、この手段は、あくまでも切削ドラムの各切削ビットをその切削効率が低下しないように冷却するためのものであるため、水流の噴射であり、基本的に粉塵の発生を防止・抑制することができず、上記した各部位において粉塵の発生を防止・抑制する手段が講じられていないのが現状である。
そして、この種の舗装路面の補修工事に使用される装置にあって、切削時に発生する粉塵の処理に関する技術手段として、例えば、切削刃を固定した回転ドラムを高速で回転して舗装路面を切削する舗装路面切削機において、回転ドラムを覆うカバー体に集塵装置に繋がる集塵用ダクトを連結して、切削に伴い発生する粉塵を回転ドラムの周辺から直接的に吸引・除去して工事現場に粉塵が飛散することを防止する手段(特許文献1参照)や、
コンクリート面に対し切断装置のカッターによる切断部位の前部、又は削孔装置のドリルによる削孔部位に泡供給源からの泡をノズルから吹き付け、該切断又は削孔により発生する粉塵を泡により捕捉し、この粉塵を泡とともにカッターの後部又は削孔部位において吸引源に接続したフレキシブルホースにより吸引するようにして工事現場に粉塵が飛散することを防止する手段(特許文献2参照)が案出されている。
【特許文献1】特開2007−23755号
【特許文献2】特開平8−224732号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した前者のものにあっては、切削に伴い発生する粉塵を回転ドラムの周辺から直接的に吸引・除去するものであるから、必然的に別途、吸塵装置を必要とし、小型の装置でかつ小規模の補修工事に対応する手段にとどまるものであり、また、後者のものにあっては、前者と同様に、粉塵を泡とともに吸引するものであるから、必然的に吸塵装置を必要とするとともに、カッター切断やドリル削孔という線的、点的作業の場合には該泡自体が飛散されず粉塵の発生が抑制できるものの、小規模の補修工事に対応する手段にとどまるものであって、これを、上述した広い幅員の舗装路面の切削に対応する切削ドラムを備えた自走式切削機に採用したとしても、該切削ドラムの全域に泡を吹き付けたり吸引したりすること自体煩雑なものとなり、不適合のものであった。
そこで、本発明は、舗装路面の補修作業にあって、該舗装路面の切削により生じた路面廃材の除去に伴う粉塵の発生を可及的に抑制して作業時の周辺環境の良化向上を図ることができる自走式切削機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、車体本体に対し、切削ビットを備えた切削ドラムにより舗装路面の表面部位を切削する切削手段と、該切削手段により切削した路面廃材を前記車体本体外部に搬出するコンベア等の移送手段と、車体本体を前記切削進行方向に走行する走行手段とを備えた自走式切削機であって、
前記路面廃材が前記切削手段から前記移送手段を経て前記車体本体外部に排出される経路中のいずれかの部位付近に噴霧ノズル手段を配設するとともに、前記車体本体に該噴霧ノズルに防塵液を供給する防塵液供給ユニットを配設して、前記舗装路面の切削時に際し、路面廃材に対して前記噴霧ノズル手段から防塵液を散布するように構成したことを要旨とする。
この構成によれば、切削ドラムによって補修すべき舗装路面を切削すると、この切削に伴って発生する路面廃材が該切削ドラムの外周から移送手段に受け渡されて、該移送手段によって車体外に搬出されて除去されるものであり、この路面廃材が排出される経路中の部位付近に配設した噴霧ノズル手段によって防塵液供給ユニットからの防塵液を当該配設部位の路面廃材に対し噴霧して同部位における粉塵の発生を抑制するものである。
【0005】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の自走式切削機であって、前記路面廃材が排出される経路中の前記切削ドラムの外周部付近若しくは移送手段における前記切削手段からの路面廃材を受け取る部位付近には、前記防塵液供給ユニットから防塵液が供給される噴霧ノズル手段を配設し、前記舗装路面の切削時に際して前記切削ドラムの外周部付近若しくは前記移送手段における路面廃材の受け取り部位付近の路面廃材に前記噴霧ノズル手段から防塵液を散布するように構成したことを要旨とする。
この構成によれば、切削ドラムによって補修すべき舗装路面を切削すると、この切削に伴って発生する路面廃材が該切削ドラムの外周から移送手段に受け渡されて、該移送手段によって車体外に搬出されて除去されるものであり、この路面廃材が排出される経路中の切削ドラムの外周部付近若しくは移送手段における路面廃材の受け取り部位に配設した噴霧ノズル手段によって防塵液供給ユニットからの防塵液を当該部位の路面廃材に対し噴霧して同部位における粉塵の発生を抑制するものである。
【0006】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の自走式切削機であって、前記路面廃材が排出される経路中において、前記車体本体には前記路面廃材の排出経路中の前記移送手段からの路面廃材を受け取り産廃車両等に搬出するコンベア等の第2の移送手段を配設し、前記移送手段と第2の移送手段との路面廃材の受け渡し部位付近には前記防塵液供給ユニットから防塵液が供給される噴霧ノズル手段を配設して前記移送手段と第2の移送手段との路面廃材受け渡し部位付近の路面廃材に前記噴霧ノズル手段から防塵液を散布するように構成したことを要旨とする。
この構成によれば、切削ドラムによって切削された路面廃材が移送手段から第2の移送手段に受け渡して該第2の移送手段により車体外における産廃車両当に搬出して除去されるものであり、この路面廃材が排出される経路中において移送手段と第2の移送手段との路面廃材の受け渡し部位付近に配設した噴霧ノズル手段によって防塵液供給ユニットからの防塵液を当該部位の路面廃材に対し噴霧して同部位における粉塵の発生を抑制するものである。
【0007】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか1の請求項に記載の自走式切削機であって、前記噴霧ノズル手段から散布される防塵液がミスト状であることを要旨とする。
この構成によれば、防塵液をミスト状にすることにより、粉塵が浮遊している空間の水分密度を上昇させ、粉塵と水の衝突機会を増大して粉塵の発生を効果的に抑制するものである。
【0008】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか1の請求項に記載の自走式切削機であって、前記噴霧ノズル手段から散布される防塵液が泡状であることを要旨とする。
この構成によれば、防塵液を泡状とすることにより、該防塵液を水に比して数十倍の表面積を得るものであり、少ない水分で大きな防塵効果、すなわち、粉塵の発生をより効果的に抑制するものである。そして、水の使用量を大幅に減少して経済的効果を高めるものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明にあっては、路面廃材が排出される経路中の部位付近に配設した噴霧ノズル手段によって防塵液供給ユニットからの防塵液を当該配設部位の路面廃材に対し噴霧して同部位における粉塵の発生を抑制することができる。これによって、作業時の周辺環境の良化向上を図ることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明にあっては、路面廃材が排出される経路中において、切削ドラムの外周部付近若しくは移送手段における路面廃材の受け取り部位に配設した噴霧ノズル手段によって防塵液供給ユニットからの防塵液を当該部位の路面廃材に対し噴霧して同部位における粉塵の発生を抑制することができる。これによって、作業時の周辺環境の良化向上を図ることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明にあっては、路面廃材が排出される経路中において、移送手段と第2の移送手段との路面廃材の受け渡し部位付近に配設した噴霧ノズル手段によって防塵液供給ユニットからの防塵液を当該部位の路面廃材に対し噴霧して同部位における粉塵の発生を抑制することができる。これによって、作業時の周辺環境の良化向上を図ることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明にあっては、粉塵が浮遊している空間の水分密度を上昇させ、粉塵と水の衝突機会を増大して粉塵の発生を効果的に抑制することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明にあっては、防塵液を水に比して数十倍の表面積を得るものであり、少ない水分で大きな防塵効果、すなわち、粉塵の発生をより効果的に抑制することができる。さらには、水の使用量を大幅に減少して経済的効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、実施例にしたがって説明する。
(実施例)
【0015】
以下、本発明の各実施例を図1〜図7にしたがって説明する。
本実施例における自走式切削機1は、図1、図2及び図6に示すように、従来からの既存の仕様に構成されており、その概略を説明すると、ほぼ中央上部に運転席2を備えた車体本体3と、該車体本体3の前後の両側部位に装設されて駆動装置であるエンジン(図示しない)等によって駆動される車輪或いはキャタピラ等(図では車輪を示す)の走行手段4と、車体本体3のほぼ中央下部における幅方向において上部ガイド板5と前後及び両側面部位のカバー板6〜6とで区画形成されかつ下方が開口された切削ドラム室7と、この切削ドラム室7内においてエンジン(図示しない)等によって高速回転可能に装設されかつ補修すべき舗装路面Wの表面部位を切削するための多数個の切削ビット8〜8を備えた切削ドラム9からなる切削手段9Aと、車体本体3の前側下部に対し上方に指向する斜状に装設されかつ前記切削手段9Aにより切削した路面廃材W1を前記車体本体2外部に搬出するベルトコンベア等の第1の移送手段10(本発明の請求項1における移送手段に相当する。)と、車体本体2の前部上部に対し上下及び左右方向への移動可能に斜状に配設されかつ前記第1の移送手段10からの路面廃材W1を受け取り産廃車両(図示しない)等に搬出するベルトコンベア等の第2の移送手段11とから構成されている。
【0016】
前記切削手段9Aにおける切削ドラム9は前記切削ドラム室7に対応して比較的長尺に形成されていて、その外周には多数個の切削ビット8〜8が所定の配列、すなわち、切削した路面廃材W1が該切削ドラム9の回転に伴ってその両端から中央部に集約され、前記第1の移送手段10側に押し出すように配列されている。(図6参照)
【0017】
前記ベルトコンベア等の第1の移送手段10は、所定の駆動手段により図示矢印方向に循環回動可能の構成されており、その下端部、すなわち、テール側が前記切削ドラム9の外周ほぼ中央部に所定の間隔をおいて対向されて路面廃材W1を切削ドラム9から受け取るように位置されるとともに、該切削ドラム9が配設された切削ドラム室7の前部と連通するベルトシュー12内に位置されており、上端部、すなわち、ヘッド側が車体本体3の外部に望んでいる。
【0018】
また、前記ベルトコンベア等の第2の移送手段11は、前記第1の移送手段10と同様に所定の駆動手段により図示矢印方向に循環回動可能の構成されており、その下端部、すなわち、テール部側が前記第1の移送手段10におけるヘッド側の下方に位置されて該第1の移送手段10からの路面廃材W1を受け取るように位置され、上端部、すなわち、ヘッド側が車体本体3の前方上方に位置されて該車体本体3と離れた場所に待機する産廃車両(図示しない)等に路面廃材W1を搬出するように位置されるとともに、そのテール側を中心とする上下方向及び左右方向の移動(回動)が許容されるものである。
【0019】
そして、本実施例においては、図3に示すように、前記移送手段9のテール側上部、すなわち、前記切削手段9Aからの路面廃材W1を受け取る部位の付近上部に噴霧ノズル手段13が下向きに配設されており、この噴霧ノズル手段13は前記車体本体3に配設された防塵液供給ユニット14とホース(配管)を介して接続されるものである。
【0020】
すなわち、前記防塵液供給ユニット14は、図3及び図7に示すように、水を貯蔵する水タンク15と、粉塵防止剤を貯蔵する薬剤タンク16と、この水タンク15及び薬剤タンク16からそれぞれ配管15a、16aを介して水及び粉塵防止剤が供給されて両者を所定の割合で混合する計量器及び供給ポンプ(ともに図示しない)等が内蔵された粉塵防止剤定量注入ユニット17と、この粉塵防止剤定量注入ユニット17及び空気コンプレッサ18からそれぞれ配管17a、18aを介して水と粉塵防止剤が所定の割合で混合された混合液(本明細書では防塵液ともいう。)と圧縮空気が供給されるミスト調節ユニット19から構成されており、このミスト調節ユニット19からそれぞれ配管19a、19bを介して防塵液と圧縮空気が前記噴霧ノズル手段13に供給され、該噴霧ノズル手段13によりミスト状となした防塵液を該噴霧ノズル手段13から噴霧するように構成されている。なお、この噴霧ノズル手段13は、図7に示すように、ガンタイプノズル13a、小径タイプノズル13b、広範囲噴霧タイプノズル13cのいずれのタイプのものも使用可能である。また、防塵液におけるミスト状態は、約10〜100ミクロンの霧状(ミスト状)に設定することが好ましい。
【0021】
前記水と混合される粉塵防止剤は、塩化マグネシウム・塩化カルシウム等無機系、ポリビニル等アルコール系、酢酸ビニル・アクリル系・植物系高分子等によるエマルジョン系で、所定の界面活性剤等を含む液体を採用することが望ましい。
【0022】
また、界面活性剤は、洗浄力、起泡力、乳化力に優れ、水の表面張力を著しく低下させ、水と粉塵をなじみ易くする(粉塵を濡れ易くする)ことで、粉塵を捕捉し易くし、粉塵除去効率を向上するもので、アニオン系、カチオン系、両性及び非イオン系の界面活性剤が用いられる。このアニオン系界面活性剤には、カルボン酸系、硫酸エステル系、スルホン酸系及びリン酸エステル系のもの、カチオン系界面活性剤には、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、イミダゾリウム塩、両性界面活性剤には、カルボキシベタイン系、アミノカルボン酸塩、イミダゾリウムベタイン、アルキルアミンオキシド、非イオン系界面活性剤には、エーテル系、エステルエーテル系、エステル系及び含窒素系のものを用いることが望ましく、これらの中よりアニオン系界面活性剤を用いることがより好ましい。
【0023】
なお、図3において点線で示すように、前記噴霧ノズル手段13を、さらに切削ドラム9の外周の上方、すなわち、切削ドラム室7の上方をカバーする上部ガイド板5に第2の噴霧ノズル手段20として斜め下向きに配設し、この第2の噴霧ノズル手段20を前述と同様にしてミスト調節ユニット19と配管19a、19bを介して接続するようにすることもでき、この第2の噴霧ノズル手段20により切削ドラム9を配置した切削ドラム室7内をミスト状の防塵液が噴霧された雰囲気とするものである。さらに、図3及び図6において点線で示すように、前記噴霧ノズル手段13を、前記切削ドラム室7を区画する前後及び両側両側面部位のカバー板6〜6の外側の各角部に相対するように第3の噴霧ノズル手段21〜21として斜め上方から下向きにそれぞれ配設し、この第3の噴霧ノズル手段21〜21を前述と同様にしてミスト調節ユニット19と配管19a、19bを介して接続するようにすることもでき、この場合は、第3の噴霧ノズル手段21〜21により切削ドラム9を配置した切削ドラム室7の外部(外側)全体をミスト状の防塵液が噴霧された雰囲気とするものである。
【0024】
上述のように構成された自走式切削機1にあっては、補修すべき舗装路面Wに対し、車体本体3をその切削進行方向に走行手段4により走行させながら切削手段9Aである切削ドラム9を高速回転で駆動し、該切削ドラム9の各切削ビット8〜8によって舗装路面Wの表面部位を切削する。その切削された切削屑、いわゆる路面廃材W1は、該切削ドラム9の回転及び各切削ビット8〜8の配列によって、その両端から中央部に寄るように集約されて、ベルトシュー12内おいて第1の移送手段10側に押し出されるようにして該第1の移送手段10のテール部に受け渡されて搬出され、この第1の移送手段10によって車体本体3外の上部に移送され、第2の移送手段11に受け渡される。次いで、この第2の移送手段11から車体本体3の前方上方に移送されて車体本体3と離れた場所に待機する産廃車両(図示しない)等に直接的に搬出(積み込み)される。このように、本実施例の自走式切削機1は補修すべき舗装路面Wの表面部位を切削しながら該切削した路面廃材W1を車体本体3の外部に除去するものである。(図2、図3、図6参照)
【0025】
そして、前述した切削された路面廃材W1が切削ドラム9に巻上げられる外周部位付近、該切削ドラム9から第1の移送手段10に路面廃材W1を受け渡し搬出する部位付近及び第1の移送手段10から第2の移送手段11に路面廃材W1を受け渡して搬出する部位付近ではその路面廃材W1の動きによって多大の粉塵が発生することになる。
【0026】
そこで、本実施例においては、図3に示すように、車体本体3配設された防塵液供給ユニット14から防塵液が供給される噴霧ノズル手段13を第1の移送手段9のテール側上部、すなわち、切削手段9Aである切削ドラム9からの路面廃材W1を受け取る部位の付近上部に配設することによって、該防塵液を路面廃材W1に噴霧してその粉塵の発生を可及的に抑制するものである。
【0027】
すなわち、水タンク15及び薬剤タンク16から水及び粉塵防止剤をそれぞれ粉塵防止剤定量注入ユニット17に供給し、この粉塵防止剤定量注入ユニット17により水と粉塵防止剤が所定の割合で混合された混合液(本明細書では防塵液ともいう。)をミスト調節ユニット19に供給するとともに、該ミスト調節ユニット19に空気コンプレッサ18からの圧縮空気を供給し、このミスト調節ユニット19によりそれぞれ防塵液と圧縮空気の量が調整されて噴霧ノズル手段13に供給され、該噴霧ノズル手段13によりミスト状となした防塵液を該噴霧ノズル手段13から前記路面廃材W1に噴霧するものである。
【0028】
この結果、前記切削ドラム9から第1の移送手段10に路面廃材W1を受け渡し搬出する部位付近において、噴霧ノズル手段13からのミスト状に噴霧された防塵液によって、粉塵が浮遊している空間の水分密度を上昇させ、粉塵と水の衝突機会を増大して当該部位での粉塵の発生を効果的に抑制することができるものであり、防塵液におけるミスト状態を約10〜100ミクロンの霧状(ミスト状)に設定することによって、上記効果が顕著に発揮されるものである。このことは、作業時の周辺環境の良化向上を図ることができるものである。
また、防塵液の噴霧によって、路面廃材W1上に防塵液層Mを形成するか、或いは路面廃材W1に防塵液を染込ませることで、当該部位の後の路面廃材W1を移送、搬出する部位での粉塵発生を抑制することができ、さらなる防塵効果を図ることができるものである。
【0029】
そして、本実施例にあっては、図3の点線で示すように、さらに、第2の噴霧ノズル手段20を切削ドラム9の外周の上方、すなわち、切削ドラム室7の上方をカバーする上部ガイド板5に斜め下向きに配設して、該噴霧ノズル手段20から前述と同様にしてミスト状の防塵液を噴霧することによって、切削ドラム9を配置した切削ドラム室7内全域を該ミスト状の防塵液が噴霧された雰囲気とすることができる。
さらに、図3及び図6の点線で示すように、第3の噴霧ノズル手段21〜21を、前記切削ドラム室7を区画する前後及び両側両側面部位のカバー板6〜6の外側の各角部に相対するように第3の噴霧ノズル手段21〜21として斜め上方から下向きにそれぞれ配設し、この第3の噴霧ノズル手段21〜21から前述と同様にしてミスト状の防塵液を噴霧することによって、切削ドラム9を配置した切削ドラム室7の外部(外側)全域を該ミスト状の防塵液が噴霧された雰囲気とすることができる。なお、前記した第2の噴霧ノズル手段20及び第3の噴霧ノズル手段21〜21を、本発明の請求項2における切削ドラムの外周付近に配設される噴霧ノズル手段に相当するものとする。
これによって、前述と同様に、粉塵が浮遊している切削ドラム室7内の空間及び該切削ドラム室7から漏れ出す部位の外部空間の水分密度を上昇させ、粉塵と水の衝突機会を増大して、切削された路面廃材W1が切削ドラム9に巻上げられる外周部位付近での粉塵の発生及び切削ドラム室7内から外部に漏れ出す部位の粉塵の発生を効果的に抑制することができるものであり、作業時の周辺環境の良化向上を図ることができるものである。
【0030】
また、図4及び図5に示すように、前述した噴霧ノズル手段13を、さらに別の部位に装設することもでき、図4に示す態様は、噴霧ノズル手段13としての第4の噴霧ノズル手段23を、第1の移送手段10から第2の移送手段11に路面廃材W1を受け渡して搬出する部位付近における第1の移送手段10のヘッド側上部にブラケット22を介して下向きに配設した場合で、図5に示す態様は、前記第4の噴霧ノズル手段23に加え、噴霧ノズル手段13としての第5の噴霧ノズル手段24を、第1の移送手段10から第2の移送手段11に路面廃材W1を受け渡して搬出する部位付近における第1の移送手段10のヘッド側下部にブラケット22を介して上向きに配設し、さらに、噴霧ノズル手段13としての第6の噴霧ノズル手段28を、第1の移送手段10から第2の移送手段11に路面廃材W1を受け渡して搬出する部位付近における第2の移送手段11のテール側上部にブラケット22を介して下向きに配設した場合であって、その余の構成は前述した実施例と同様であるので、図中、同一の部材については同符号を付してその説明を省略する。
【0031】
したがって、図4に示す場合は、第4の噴霧ノズル手段23から前述と同様にしてミスト状の防塵液を噴霧することによって、第1の移送手段10から第2の移送手段11に路面廃材W1を受け渡して搬出する部位付近での粉塵の発生を効果的に抑制することができるものである。
図5に示す場合は、第4の噴霧ノズル手段23、第5の噴霧ノズル手段24、第6の噴霧ノズル手段28から前述と同様にしてそれぞれミスト状の防塵液を噴霧することによって、第1の移送手段10から第2の移送手段11に路面廃材W1を受け渡して搬出する部位付近での粉塵の発生をより一層効果的に抑制することができるものである。
いずれの場合にあっても作業時の周辺環境の良化向上を図ることができ、前述と同様の作用効果を享受するものであり、前述と同様に、防塵液の噴霧によって、路面廃材W1上に防塵液層Mを形成するか、或いは路面廃材W1に防塵液を染込ませることで、当該部位の後の路面廃材W1を移送、搬出する部位での粉塵発生を抑制することができ、さらなる防塵効果を図ることができるものである。
【0032】
なお、上記した各噴霧ノズル手段13、20、21、23、24、28は任意に併用して配設することが可能であり、図2においては、噴霧ノズル手段13を、切削された路面廃材W1が切削ドラム9に巻上げられる外周部位付近及び第1の移送手段10から第2の移送手段11に路面廃材W1を受け渡して搬出する部位付近に配設した態様を示す。
【0033】
また、前述した実施例においては、防塵液をミスト状に噴霧する場合について説明したが、防塵液を泡状に噴霧する構成とすることもできる。すなわち、図8に示すように、前述した実施例における防塵液供給ユニット14のミスト調節ユニット19を製泡器25に変更し、噴霧ノズル手段13を泡散布用ノズルとしてのノズルマニホールド26に変更することにより対応するものであり、その余の構成は前述した実施例と同様であるので、図中、同一の部材については同符号を付してその説明を省略する。
【0034】
この場合は、粉塵防止剤定量注入ユニット17により水と粉塵防止剤が所定の割合で混合された混合液(本明細書では防塵液ともいう。)を製泡器25に供給するとともに、該製泡器25に空気コンプレッサ18からの圧縮空気を供給し、この製泡器25において防塵液、圧縮空気が混じり所定の品質の気泡とされて、気泡配管27を噴霧ノズル手段13としてのノズルマニホールド26に供給され、該ノズルマニホールド26から泡状の防塵液が散布されるものである。
【0035】
したがって、噴霧ノズル手段13としてのノズルマニホールド26が配設された前述の実施例で示した各部位において、界面活性剤を含んだ液体を発泡させ、粉塵を発生させる材料を覆うように散布することにより、粉塵の発生をより効果的に抑制することができるものである。
この防塵液を泡状とすることにより、防塵液を水に比して数十倍の表面積を得るものであり、少ない水分で大きな防塵効果、すなわち、粉塵の発生をより効果的に抑制することができる。さらには、水の使用量を大幅に減少して経済的効果を高めるものである。
【0036】
なお、前述した実施例において、防塵液をミスト状に噴霧する構成と泡状に散布する構成を適宜に組合せて使用する、例えば、切削された路面廃材W1が切削ドラム9に巻上げられる外周部位付近に配設される第2の噴霧ノズル手段20を泡状に散布する構成とし、該切削ドラム9から第1の移送手段10に路面廃材W1を受け渡し搬出する部位付近及び第1の移送手段10から第2の移送手段11に路面廃材W1を受け渡して搬出する部位付近に配設される噴霧ノズル手段13、第3〜第6の噴霧ノズル手段21、23、24、28をミスト状に噴霧する構成とすることも可能である。
【0037】
そして、前述した実施例において、噴霧ノズル手段13からの防塵液のミスト状の噴霧及び泡状の散布の運転制御は、車体本体3の運転席当に設置する操作制御手段(図示しない)により運転者が適宜行うように構成されるものであるが、センサー等による自動的な稼動、切削ドラム9や第1及び第2の移送手段10、11に連動する構成でもよい。また、防塵液供給ユニット14の各構成部材の設置場所、装置種類については図示のものに限定するものではない。
【0038】
なお、前述した各実施例において、各構成部位にあっては、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。また、前述した防塵液供給ユニット14から防塵液が供給される噴霧ノズル手段13の全体構成にあっては、自走式切削機1に限らず、例えば、舗装路面W(とくに、切削作業後の切削路面)を清掃する自走式スイーパーにおける清掃用回転ブラシ付近に装設することも可能で、この場合は、清掃作業時に該回転ブラシ付近に発生する粉塵の抑制装置としての効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】自走式切削機を示す概略説明図である。
【図2】自走式切削機における移送手段を主体に示す概略説明図である。
【図3】噴霧ノズル手段の配設状態の要部を示す説明図である。
【図4】噴霧ノズル手段の配設状態の別例を示す説明図である。
【図5】噴霧ノズル手段の配設状態のさらなる別例を示す説明図である。
【図6】噴霧ノズル手段の配設状態を平面視した説明図である。
【図7】防塵液供給ユニットのブロック図である。
【図8】防塵液供給ユニットの別例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0040】
1 自走式切削機
3 車体本体
8 切削ビット
9 切削ドラム
9A 切削手段
10 第1の移送手段
11 第2の移送手段
13 噴霧ノズル手段
14 防塵液供給ユニット
M 防塵液層
W 舗装路面
W1 路面廃材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体本体に対し、切削ビットを備えた切削ドラムにより舗装路面の表面部位を切削する切削手段と、該切削手段により切削した路面廃材を前記車体本体外部に搬出するコンベア等の移送手段と、車体本体を前記切削進行方向に走行する走行手段とを備えた自走式切削機であって、
前記路面廃材が前記切削手段から前記移送手段を経て前記車体本体外部に排出される経路中のいずれかの部位付近に噴霧ノズル手段を配設するとともに、前記車体本体に該噴霧ノズルに防塵液を供給する防塵液供給ユニットを配設して、前記舗装路面の切削時に際し、路面廃材に対して前記噴霧ノズル手段から防塵液を散布するように構成したことを特徴とする自走式切削機。
【請求項2】
請求項1記載の自走式切削機であって、前記路面廃材が排出される経路中の前記切削ドラムの外周部付近若しくは移送手段における前記切削手段からの路面廃材を受け取る部位付近には、前記防塵液供給ユニットから防塵液が供給される噴霧ノズル手段を配設し、前記舗装路面の切削時に際して前記切削ドラムの外周部付近若しくは前記移送手段における路面廃材の受け取り部位付近の路面廃材に前記噴霧ノズル手段から防塵液を散布するように構成したことを特徴とする自走式切削機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の自走式切削機であって、前記路面廃材が排出される経路中において、前記車体本体には前記路面廃材の排出経路中の前記移送手段からの路面廃材を受け取り産廃車両等に搬出するコンベア等の第2の移送手段を配設し、前記移送手段と第2の移送手段との路面廃材の受け渡し部位付近には前記防塵液供給ユニットから防塵液が供給される噴霧ノズル手段を配設して前記移送手段と第2の移送手段との路面廃材受け渡し部位付近の路面廃材に前記噴霧ノズル手段から防塵液を散布するように構成したことを特徴とする自走式切削機。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか1の請求項に記載の自走式切削機であって、前記噴霧ノズル手段から散布される防塵液がミスト状であることを特徴とする自走式切削機。
【請求項5】
請求項1〜3のうちのいずれか1の請求項に記載の自走式切削機であって、前記噴霧ノズル手段から散布される防塵液が泡状であることを特徴とする自走式切削機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−13651(P2009−13651A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176113(P2007−176113)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(390017628)大有建設株式会社 (10)
【出願人】(507227326)有限会社ベックワークス (1)
【Fターム(参考)】