説明

自走式管内検査ロボット

【課題】簡素な構成で走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えを簡便かつ確実に行うことができ、専任のオペレータや大掛かりな設備が不要で、量産性、操作性に優れ、短時間で効率よく、下水管の内壁の表面を撮影することができ、検査作業の効率性に優れる自走式管内検査ロボットの提供。
【解決手段】走行用駆動モータと、外部からの音響信号を受信して走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えを制御する音響スイッチと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水管の中を走行して下水管の内壁の表面を検査する自走式管内検査ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水管の内壁表面におけるひび割れや亀裂などの発生状態を確認するために、下水管の中を走行し、内壁表面の撮影や測定を行う、自走式管内検査ロボットが提案されている。
例えば(特許文献1)には、「オペレータからの移動命令と、ロボット自身の周囲状況に応じたロボット自身の生成する移動命令とを協調させてオペレータによる遠隔操作とロボット自身の自律移動とで安定した移動が行える遠隔操作ロボット装置」が開示されている。
(特許文献2)には、「フレームと、フレームの下部にハの字型に配設された左右の無限軌道部と、フレームの進行方向側の先端部に配設されたカメラと、進行方向を照らす照明部と、カメラで撮影した画像を記憶する記憶部と、無限軌道部を駆動する走行用駆動モータと、走行用駆動モータに電力を供給するバッテリと、を備えていることを特徴とする自走式管内検査ロボット」が開示されている。
【特許文献1】特開平6−155350号公報
【特許文献2】実用新案登録第3133667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来の技術は、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)では、遠隔操作を行うための大掛かりな設備を搭載した車で現場まで移動しなければならず、多額の設備投資が必要なだけでなく、専任の熟練したオペレータを必要とし、作業に時間がかかり、人件費も高くなり、また、作業時に駐車スペースを必要とし、道路が塞がれてしまい、取扱い性に欠けるという課題を有していた。
(2)本願出願人は、前述の(特許文献1)の課題を解決するために鋭意検討を行い(特許文献2)を出願した。
(特許文献2)の自走式管内検査ロボットは、管内に凹凸、陥没、継ぎ目の位置ずれ、枝管の開口部などがある場合や木の根やその他の障害物がある場合でも、それらを踏み越えて走行でき、走行安定性に優れ、また、管が傾斜している場合や曲がっている場合でも、管に沿って確実に出口に向かって走行でき、外部から操作する必要がなく、専任のオペレータや大掛かりな設備が不要で、省力性、取り扱い性に優れるものであったが、障害物その他の不具合などによって、前進不能となった場合の対策については十分な検討が行われておらず、その改善が強く望まれていることがわかった。
(3)また、下水管の管径が小さい場合や内部に有毒ガスなどが発生している場合に、作業者が下水管の中に入ることが出来ず、自走式管内検査ロボットの回収が困難で作業性に欠けるという課題を有していた。
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、簡素な構成で走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えを簡便かつ確実に行うことができ、専任のオペレータや大掛かりな設備が不要で、量産性、操作性に優れ、短時間で効率よく、下水管の内壁の表面を撮影することができ、検査作業の効率性に優れる自走式管内検査ロボットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記従来の課題を解決するために本発明の自走式管内検査ロボットは、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の自走式管内検査ロボットは、下水管の中を走行して前記下水管の内壁の表面を検査する自走式管内検査ロボットであって、走行用駆動モータと、外部からの音響信号を受信して前記走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えを制御する音響スイッチと、を備えている構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)外部からの音響信号を受信して走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えを制御する音響スイッチを有することにより、下水管を伝声管代わりに利用できるので、下水管が長く、管路が曲がっている場合や分岐している場合などのように、電波或いは赤外線やレーザなどの光が届かない場所を走行していても、ブザーやスピーカーから発生させた音響信号によって、走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えを簡便かつ確実に行うことができ、操作の信頼性に優れる。
(2)障害物などによって、前進が不可能になった場合に、下水管に向かって音響信号を発するだけで、走行用駆動モータを逆回転させて自力で後退させて回収すること、走行用駆動モータを停止させた状態で命綱を引っ張って入口側に引きずり戻すこと、一旦、走行用駆動モータを逆回転させて後退させた後、再度、正回転させてリトライ走行させることなどが可能であり、操作性、取り扱い性に優れる。特に、走行用駆動モータを逆回転させて後退させることにより、走行手段の車輪や無限軌道が損耗することを防止でき、長寿命性に優れる。
【0006】
ここで、自走式管内検査ロボットは、円形や逆卵形などの下水管の内部を走行しながら、カメラによる撮影や超音波その他の手段による測定などを行うものである。走行手段は、車輪でもよいし、ベルト状の履板又はチェーンを備えた無限軌道でもよい。特に、無限軌道をハの字型に配置したものは、下水管の下部中央に溜まった水や異物、或いは一般的に下水管の下部や側部に接続される枝管の開口部などを避けて走行することができ、フレームと障害物との接触を防ぐことができ、振動の少ない安定した走行と高品質な画像の撮影が可能で、画像品質の信頼性に優れる。また、下水管内に凹凸,陥没,段差或いは木の根やその他の避けられない障害物がある場合でも、左右の無限軌道のいずれか一方が内壁面に接触することにより、その動力によってそれらを踏み越えて走行することができ、走破力に優れ、管路に沿って確実に出口に向かって走行することができる。
【0007】
音響スイッチとしては、所定時間内に受信した音響信号の発生回数や音響信号の種類(音の長さや高さ、音色など)によって、走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えを制御するものが好適に用いられる。走行用駆動モータが、少なくとも一方向に回転可能なものであれば、停止と正回転を切り替えることができるが、DCモータを用いれば、正逆回転の切替えが可能であり、必要に応じて前進と後退を切り替えることができ、汎用性に優れる。
音響信号を発する発音器は、音響スイッチで受信可能な音響信号を発することができるものであればよく、ブザーやスピーカーなどが好適に用いられる。
音響信号の周波数は、作業者が耳で聴き取ることができる可聴域で、不快を感じない範囲で選択することが好ましい。作業者がブザーやスピーカーなどを操作して音響信号を発生させる際に、音響信号を耳で確認することができ、誤操作を防止できるためである。
下水管は、船舶などの伝声管と同様に、距離が長い場合、管路が曲がっている場合や分岐している場合でも、確実に音を伝達することができ、音響スイッチの動作の信頼性に優れる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自走式管内検査ロボットであって、前記音響スイッチが、一定時間内に受信した前記音響信号の受信回数に応じて前記走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えを行う構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)音響スイッチが、一定時間内に受信した音響信号の受信回数に応じて走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えを行うので、作業者がブザーやスピーカーなどを操作して発生させる音響信号の発生回数を選択するだけで、自走式管内検査ロボットの停止と前進及び/又は後退の動作を簡便に切り替えることができ、操作性に優れる。
【0009】
ここで、音響スイッチは、一定時間内に受信した音響信号の受信回数に応じて、直接、走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えを行うものでもよいが、走行用駆動モータを制御する制御部に対して制御信号を送信するものが好適に用いられる。
音響スイッチから送信する制御信号の種類を増やすことにより、自走式管内検査ロボットに搭載したカメラ部,照明部,超音波その他の手段で測定を行う測定部などの各搭載機器を制御部で制御することが可能となり、汎用性に優れるためである。この場合、音響スイッチは、一定時間内に受信した音響信号の受信回数に応じて異なる数又は種類の制御信号を発生させたり、受信した音響信号の種類(音の長さや高さ、音色など)に応じて異なる種類の制御信号(長さやレベルの異なる制御信号)を発生させたりする。また、制御部は、音響スイッチから受信した制御信号の数又は種類に応じて、走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えに加え、カメラ部や照明部のオン/オフの切り替えや、測定部のオン/オフの切り替え或いは各種の動作の制御を行うことができる。
尚、一定時間の計測は、1つ目の音響信号を受信してから開始することが好ましい。これにより、一定時間内に受信した音響信号の受信回数を確実に計数することができ、誤動作を防止できるためである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の自走式管内検査ロボットであって、前記音響スイッチが、前記走行用駆動モータを制御する制御部に対し、一定時間内に受信した前記音響信号の前記受信回数に応じて異なる種類の制御信号を送信する構成を有している。
この構成により、請求項2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)音響スイッチが、走行用駆動モータを制御する制御部に対し、一定時間内に受信した音響信号の受信回数に応じて異なる種類の制御信号を送信することにより、制御部において受信した制御信号の種類によって走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転を確実に制御することができ、動作の安定性、確実性に優れる。
ここで、音響スイッチは一定時間内に受信した音響信号の受信回数に応じて、長さやレベルの異なる制御信号(波形の異なる制御信号)を送信する。また、制御部は音響スイッチから受信した制御信号の種類に応じて、走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えを行う。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の自走式管内検査ロボットであって、前記音響スイッチが、前記音響信号を1回目に受信した時に、前記制御部に対し、前記走行用駆動モータを停止させる制御信号を送信する構成を有している。
この構成により、請求項2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)音響スイッチが、音響信号を1回目に受信した時に、制御部に対し、走行用駆動モータを停止させる制御信号を送信することにより、直ちに自走式管内検査ロボットの走行を停止させることができ、2回目以降の音響信号の入力の有無を判断する一定時間の間に、走行用駆動モータが正回転又は逆回転し続けて、自走式管内検査ロボットが前進又は後退してしまうことを防ぐことができ、走行制御の信頼性に優れる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の自走式管内検査ロボットであって、前記音響スイッチが、受信した前記音響信号の種類に応じて前記走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えを行う構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)音響スイッチが、音響信号の種類に応じて走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えを行うので、作業者がブザーやスピーカーなどを操作して発生させる音響信号の種類を選択するだけで、自走式管内検査ロボットの停止と前進及び/又は後退の動作を簡便かつ確実に切り替えることができ、操作性及び動作の確実性に優れる。
【0013】
ここで、音響スイッチは、受信した音響信号の種類に応じて、直接、走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えを行うものでもよいが、走行用駆動モータを制御する制御部に対して制御信号を送信するものが好適に用いられる。
音響信号の種類としては、音の長さや高さ、音色などを単独で変化させてもよいし、これらを組み合わせてもよい。特に、音の長さや高さ、音色などを組み合わせた場合、音響信号の種類を区別し易く、誤動作を防止できると共に、音響信号の種類を容易に増やすことができ、制御部によって走行用駆動モータ以外のカメラ部,照明部,測定部などの各搭載機器を簡便に制御することができる。音響信号を発生させるブザーやスピーカーなどの発音器に複数のスイッチを設け、それぞれのスイッチに異なる種類の音響信号を割り当てておけば、スイッチを選択するだけで、確実に所定の種類の音響信号を発生させることができ、操作性及び動作の確実性に優れる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の自走式管内検査ロボットであって、前記音響スイッチが、前記走行用駆動モータを制御する制御部に対し、受信した前記音響信号の種類に応じて異なる種類の制御信号を送信する構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)音響スイッチが、走行用駆動モータを制御する制御部に対し、受信した音響信号の種類に応じて異なる種類の制御信号を送信することにより、制御部において受信した制御信号の種類によって走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転を確実に制御することができ、動作の安定性、確実性に優れる。
ここで、音響スイッチは受信した音響信号の種類に応じて、長さやレベルの異なる制御信号(波形の異なる制御信号)を送信する。また、制御部は音響スイッチから受信した制御信号の種類に応じて、走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えを行う。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の自走式管内検査ロボットであって、前記音響スイッチにより、一定時間内に受信した前記音響信号の受信回数や前記音響信号の種類に応じて、カメラ部,照明部,測定器などの各搭載機器の動作を制御する構成を有している。
この構成により、請求項1乃至6の内いずれか1項で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)音響スイッチにより、一定時間内に受信した音響信号の受信回数や音響信号の種類に応じて、カメラ部,照明部,測定器などの各搭載機器の動作を制御することができ、操作の簡便性及び動作の安定性、確実性に優れる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の自走式管内検査ロボットによれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような有利な効果が得られる。
(1)音響スイッチを備えることにより、走行距離が長い場合、管路が曲がっている場合や分岐している場合などのように、電波或いは赤外線やレーザなどの光が届かない場所を走行している場合でも、外部から受信した音響信号に応じて確実に駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えを簡便かつ確実に行うことができる操作の信頼性に優れた自走式管内検査ロボットを提供することができる。
(2)外部からブザーやスピーカーなどを操作して所定の音響信号を発するだけで、走行用駆動モータを停止させること、走行用駆動モータを逆回転させて自力で後退させて回収すること、一旦、走行用駆動モータを逆回転させて後退させた後、再度、正回転させてリトライ走行させることなどが可能で、作業者が下水管の中に入る必要がなく、下水管の管径が小さい場合や内部に有毒ガスなどが発生している場合でも好適に用いることができる操作性、取り扱い性、安全性に優れた自走式管内検査ロボットを提供することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)作業者がブザーやスピーカーなどを操作して発生させる音響信号の発生回数を選択するだけで、走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転を切り替えることができる操作性に優れた自走式管内検査ロボットを提供することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)一定時間内に受信した音響信号の受信回数に応じて、音響スイッチから制御部に異なる種類の制御信号を送信することにより、制御部によって走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転を確実に制御することができる動作の安定性、確実性に優れた自走式管内検査ロボットを提供することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)1回目に受信した音響信号に応じて、音響スイッチから制御部に走行用駆動モータを停止させる制御信号を送信することにより、制御部によって直ちに走行用駆動モータを緊急停止することができる走行の安全性に優れた自走式管内検査ロボットを提供することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)作業者がブザーやスピーカーなどを操作して発生させる音響信号の種類に応じて、走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転を簡便かつ確実に切り替えることができる操作性及び動作の確実性に優れた自走式管内検査ロボットを提供することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)受信した音響信号の種類に応じて、音響スイッチから制御部に異なる種類の制御信号を送信することにより、制御部で走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転を確実に制御することができる動作の安定性、確実性に優れた自走式管内検査ロボットを提供することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の効果に加えて以下のような有利な効果が得られる。
(1)一定時間内に受信した音響信号の受信回数や音響信号の種類に応じて、走行用駆動モータだけでなく、カメラ部,照明部,測定器などの各搭載機器の動作を制御することができ、操作用の配線や大掛かりな設備或いは専任のオペレータを必要とせず、誰でも簡便かつ確実に操作を行うことができる操作の簡便性及び動作の安定性、確実性に優れた自走式管内検査ロボットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態における自走式管内検査ロボットについて、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1における自走式管内検査ロボットの模式側面図である。
図1中、1は下水管の中を走行して内壁の表面をカメラで撮影したり、各種の測定手段で測定したりする実施の形態1における自走式管内検査ロボット、2は自走式管内検査ロボット1のフレーム、3はフレーム2の下部に略150度をなすようにハの字型に配設された左右の無限軌道を有する自走式管内検査ロボット1の移動手段、4はフレーム2の進行方向側の先端部に配設された自走式管内検査ロボット1のカメラ部、4aはカメラ部4のレンズの外周部に配設された複数の発光ダイオード4bによって自走式管内検査ロボット1の進行方向を照らす照明部、5は移動手段3を駆動する自走式管内検査ロボット1の走行用駆動モータ、6は走行用駆動モータ5に電力を供給する自走式管内検査ロボット1の充電式のバッテリ、7は外部からの音響信号をマイク7aで受信して走行用駆動モータ5の停止と正回転及び逆回転の切り替えを制御する自走式管内検査ロボット1の音響スイッチ、8は音響スイッチ7からの制御信号に基づいて走行用駆動モータ5を制御する自走式管内検査ロボット1の制御部である。
【0024】
本実施の形態では、無限軌道を有する移動手段3を備えた自走式管内検査ロボット1について説明するが、自走式管内検査ロボット1の移動手段3はこれに限定されるものではなく、無限軌道の代わりに車輪を有するものでもよい。また、移動手段3の数と配置についても、フレーム2の左右に開角度90度〜180度で2箇所、配置する以外に、フレーム2の外周に放射状に3〜4箇所、配置したりしてもよい。尚、移動手段3の左右の無限軌道が略150度をなすようにハの字型に配設されたものは、特に、卵形管に好適に用いることができる。
【0025】
次に、実施の形態1における自走式管内検査ロボットの音響スイッチについて説明する。
図2は実施の形態1における自走式管内検査ロボットのブロック図であり、図3(a)は実施の形態1における自走式管内検査ロボットの停止時の音響信号及び制御信号を示す模式図であり、図3(b)は実施の形態1における自走式管内検査ロボットの正回転時の音響信号及び制御信号を示す模式図であり、図3(c)は実施の形態1における自走式管内検査ロボットの逆回転時の音響信号及び制御信号を示す模式図である。
図2中、10は音響信号を発するブザーやスピーカーなどの発音器である。
図2に示すように、音響スイッチ7は、発音器10から発せられた音響信号をマイク7aを通して受信し、走行用駆動モータ5を制御する制御部8に対して、図3に示すように、一定時間T内に受信した音響信号の受信回数に応じて、異なる種類の制御信号を送信することができ、制御部8によって走行用駆動モータ5の停止と正回転及び逆回転の切り替えを行うことができる。
【0026】
制御部8は、一定時間T内に受信した制御信号の数により、走行用駆動モータ5の停止と正回転及び逆回転の切り替えを行う。
本実施の形態においては、図3(a)に示すように、音響スイッチ7が1回目の音響信号を受信した時点で、制御部8に対して走行用駆動モータ5を停止させる制御信号を送信し、走行用駆動モータ5を停止させた。
1回目の音響信号の受信から一定時間Tが経過する間に、図3(b)に示すように、2回目の音響信号のみを受信した場合には、制御部8に対して走行用駆動モータ5を正回転させる制御信号を送信し、図3(c)に示すように、2回目及び3回目の音響信号を受信した場合には、制御部8に対して走行用駆動モータ5を逆回転させる制御信号を送信して正回転或いは逆回転への切り替えを行った。
【0027】
以上のように実施の形態1における自走式管内検査ロボットは構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)外部からの音響信号を受信して走行用駆動モータ5の停止と正回転及び逆回転の切り替えを制御する音響スイッチ7を有することにより、下水管が長い(走行距離が長い)場合、管路が曲がっている場合や分岐している場合などのように、電波或いは赤外線やレーザなどの光が届かない場所を走行していても、ブザーやスピーカーなどの発音器10から発生させた音響は、下水管が伝声管の役目をし、はっきりと伝わるので、音響信号によって、走行用駆動モータ5の停止と正回転及び逆回転の切り替えを簡便かつ確実に行うことができ、操作の信頼性に優れる。
(2)障害物などによって、前進が不可能になった場合に、下水管に向かって音響信号を発するだけで、走行用駆動モータ5を逆回転させて自力で後退させて回収することや一旦、走行用駆動モータ5を逆回転させて後退させた後、再度、正回転させてリトライ走行させることなどが可能であり、操作性、取り扱い性に優れる。
(3)一定時間T内に受信した音響信号の受信回数に応じて走行用駆動モータ5の停止と正回転及び逆回転の切り替えを行うので、作業者がブザーやスピーカーなどの発音器10を操作して発生させる音響信号の発生回数を選択するだけで、自走式管内検査ロボット1の停止と前進及び/又は後退の動作を簡便に切り替えることができ、操作性に優れる。
(4)音響スイッチ7が、走行用駆動モータ5を制御する制御部8に対し、一定時間T内に受信した音響信号の受信回数に応じて異なる種類の制御信号を送信することにより、制御部8において受信した制御信号の種類によって走行用駆動モータ5の停止と正回転及び逆回転を確実に制御することができ、動作の安定性、確実性に優れる。
(5)音響スイッチ7が、音響信号を1回目に受信した時に、制御部8に対し、走行用駆動モータ5を停止させる制御信号を送信することにより、直ちに自走式管内検査ロボット1の走行を停止させることができ、2回目以降の音響信号の入力の有無を判断する一定時間の間に、走行用駆動モータ5が正回転又は逆回転し続けて、自走式管内検査ロボット1が前進又は後退してしまうことを防ぐことができ、走行制御の信頼性に優れる。
(6)フレーム2の下部にハの字型に配設され下水管の内壁の表面に当接する移動手段3を有するので、下水管の内壁の表面に確実に移動手段3の無限軌道を接触させてフレーム2を安定して支持することができ、カメラ部4によって管内の表面の様子を確実に撮影することができ、管内検査の信頼性に優れる。
(7)下水管の下部中央に溜まった水や異物、或いは一般的に管の下部や側部に接続される枝管の開口部などがあっても、ハの字型に配置された移動手段3の無限軌道部を下水管の内壁の表面に接触させて走行することができるので、フレーム2と障害物との接触を防ぐことができ、振動の少ない安定した走行と高品質な画像の撮影が可能で、画像品質の信頼性に優れる。
(8)移動手段3がハの字型に配置されていることにより、左右の無限軌道の全面を下水管の内壁の表面の形状に沿って確実に接触させることができ、姿勢の安定性、直進性に優れるだけでなく、もし管内の凹凸,陥没,段差などにより姿勢が傾いても、左右の移動手段3の一方が内壁の表面に接触することにより、それらに引っ掛かることなく前進することができ、下水管が曲がっている場合でも、管路に沿って確実に出口に向かって走行することができ、走破力に優れ、走行状態では外部からの人為的な操作が不要で、取扱い性に優れる。
(9)移動手段3をハの字型に配置し、下水管の内壁表面との接触面積を増加させることにより、適切なグリップ力を保持することができ、管が上下に傾斜している場合でも確実に前進することができ、走行安定性に優れる。
(10)移動手段3を駆動する走行用駆動モータ5と、走行用駆動モータ5に電力を供給するバッテリ6を備えることにより、電力供給のための配線が不要で、自律走行することができるので、検査を行う管内の入口に置くだけで自走して出口まで移動しながら、短時間で効率的に管内の撮影を行うことができ、取扱い性に優れる。
(11)重量のあるバッテリ6が移動手段3の左右の無限軌道部の間の下部中央に配置されていることにより、重心の位置を移動手段3の位置よりも低くすることができ、走行時の姿勢の安定性に優れると共に、走行中に車体の傾きが発生しても、バッテリ6の重量によって姿勢を矯正しながら前進し、自動的に元の水平状態に復帰することができ、直進性に優れる。
【0028】
(実施の形態2)
図4(a)は実施の形態2における自走式管内検査ロボットの停止時の音響信号及び制御信号を示す模式図であり、図4(b)は実施の形態2における自走式管内検査ロボットの正回転時の音響信号及び制御信号を示す模式図であり、図4(c)は実施の形態2における自走式管内検査ロボットの逆回転時の音響信号及び制御信号を示す模式図である。尚、実施の形態1と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図4において、実施の形態2における自走式管内検査ロボットの音響スイッチが実施の形態1と異なるのは、一定時間T内に受信した音響信号の受信回数に応じて、異なる種類の制御信号を送信する代わりに、受信した音響信号の種類に応じて、異なる種類の制御信号を送信する点である。
尚、実施の形態2における自走式管内検査ロボットが実施の形態1と異なるのは、音響スイッチによる制御の方法のみであり、自走式管内検査ロボットの構成は実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
【0029】
本実施の形態においては、3種類の長さの異なる音響信号を用いた。
図4(a)に示すように、音響スイッチ7が最も短い音響信号(短音)を受信した場合、制御部8に対して走行用駆動モータ5を停止させる制御信号を送信し、走行用駆動モータ5を停止させた。
図4(b)に示すように、音響スイッチ7が中間の長さの音響信号(中音)を受信した場合には、制御部8に対して走行用駆動モータ5を正回転させる制御信号を送信し、図4(c)に示すように、最も長い音響信号(長音)を受信した場合には、制御部8に対して走行用駆動モータ5を逆回転させる制御信号を送信して正回転或いは逆回転への切り替えを行った。
これにより、一定時間T内に複数回、音響信号を送信する必要がなく、簡便な操作で確実に走行用駆動モータ5の停止と正回転及び逆回転の切り替えを行うことができ、操作性に優れる。
尚、音響信号の種類と制御信号の種類の組合せは、本実施の形態に限定されるものではなく、適宜、選択することができる。音響信号の種類としては、音の長さ以外に、音の高さ、音色などを単独で変化させてもよいし、これらを組み合わせてもよい。特に、音の長さや高さ、音色などを組み合わせた場合、音響信号の種類を区別し易く、誤動作を防止できると共に、音響信号の種類を容易に増やすことができ、制御部8によって走行用駆動モータ5以外のカメラ部4,照明部4a,測定部などの各搭載機器を簡便に制御することができる。
【0030】
以上のように、本発明の実施の形態2における自走式管内検査ロボットは構成されているので、実施の形態1の(1),(2)及び(6)乃至(11)で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)音響信号の種類(長さ)に応じて走行用駆動モータ5の停止と正回転及び逆回転の切り替えを行うので、作業者がブザーやスピーカーなどの発音器10を操作して発生させる音響信号の種類(長さ)を選択するだけで、自走式管内検査ロボット1の停止と前進及び後退の動作を簡便かつ確実に切り替えることができ、操作性及び動作の確実性に優れる。
(2)音響スイッチ7が、走行用駆動モータ5を制御する制御部8に対し、受信した音響信号の種類(長さ)に応じて異なる種類の制御信号を送信することにより、制御部8において受信した制御信号の種類によって走行用駆動モータ5の停止と正回転及び逆回転を確実に制御することができ、動作の安定性、確実性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、簡素な構成で走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えを簡便かつ確実に行うことができ、専任のオペレータや大掛かりな設備が不要で、量産性、操作性に優れ、短時間で効率よく、下水管の内壁の表面を撮影することができ、検査作業の効率性に優れる自走式管内検査ロボットの提供を行うことができるので、各自治体などが低予算で下水管の検査体勢を整えることができ、検査の効率性を向上させ、不具合の発生を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態1における自走式管内検査ロボットの模式側面図
【図2】実施の形態1における自走式管内検査ロボットのブロック図
【図3】(a)実施の形態1における自走式管内検査ロボットの停止時の音響信号及び制御信号を示す模式図(b)実施の形態1における自走式管内検査ロボットの正回転時の音響信号及び制御信号を示す模式図(c)実施の形態1における自走式管内検査ロボットの逆回転時の音響信号及び制御信号を示す模式図
【図4】(a)実施の形態2における自走式管内検査ロボットの停止時の音響信号及び制御信号を示す模式図(b)実施の形態2における自走式管内検査ロボットの正回転時の音響信号及び制御信号を示す模式図(c)実施の形態2における自走式管内検査ロボットの逆回転時の音響信号及び制御信号を示す模式図
【符号の説明】
【0033】
1 自走式管内検査ロボット
2 フレーム
3 移動手段
4 カメラ部
4a 照明部
4b 発光ダイオード
5 走行用駆動モータ
6 バッテリ
7 音響スイッチ
7a マイク
8 制御部
10 発音器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水管の中を走行して前記下水管の内壁の表面を検査する自走式管内検査ロボットであって、
走行用駆動モータと、外部からの音響信号を受信して前記走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えを制御する音響スイッチと、を備えていることを特徴とする自走式管内検査ロボット。
【請求項2】
前記音響スイッチが、一定時間内に受信した前記音響信号の受信回数に応じて前記走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えを行うことを特徴とする請求項1に記載の自走式管内検査ロボット。
【請求項3】
前記音響スイッチが、前記走行用駆動モータを制御する制御部に対し、一定時間内に受信した前記音響信号の前記受信回数に応じて異なる種類の制御信号を送信することを特徴とする請求項2に記載の自走式管内検査ロボット。
【請求項4】
前記音響スイッチが、前記音響信号を1回目に受信した時に、前記制御部に対し、前記走行用駆動モータを停止させる制御信号を送信することを特徴とする請求項3に記載の自走式管内検査ロボット。
【請求項5】
前記音響スイッチが、受信した前記音響信号の種類に応じて前記走行用駆動モータの停止と正回転及び/又は逆回転の切り替えを行うことを特徴とする請求項1に記載の自走式管内検査ロボット。
【請求項6】
前記音響スイッチが、前記走行用駆動モータを制御する制御部に対し、受信した前記音響信号の種類に応じて異なる種類の制御信号を送信することを特徴とする請求項5に記載の自走式管内検査ロボット。
【請求項7】
前記音響スイッチにより、一定時間内に受信した前記音響信号の受信回数や前記音響信号の種類に応じて、カメラ部,照明部,測定器などの各搭載機器の動作を制御することを特徴とする請求項1乃至6の内いずれか1項に記載の自走式管内検査ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−121994(P2009−121994A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297174(P2007−297174)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(591013805)株式会社石川鉄工所 (6)
【Fターム(参考)】