説明

自転車管理システム

【課題】 RFIDリーダライタに対して十分な強度で応答信号を送信することができ、また正当な使用者の走行時に固有識別番号が通信ネットワーク上に流出することのない、RFIDタグを用いた自転車管理システムを提供する。
【解決手段】 自転車11に搭載するRFIDタグ12の動作電力を、その自転車11が備えるハブダイナモ13から得るようにして、合わせてセキュリティキー15がキー装置14に装着されていない場合、もしくはキー装置14が破損している場合にのみ、RFIDタグ12が動作するように構成する。これにより、正当な使用者以外の者がこの自転車11を走行させている場合にのみ、自転車11の固有識別番号を含む応答信号が街中に設置されたRFIDリーダライタ18によって読み取り可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己給電可能なRFIDタグを用いて自転車の車両盗難への対処を行うことのできる、自転車管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車の盗難対策として、自転車本体にRFIDタグを装着しておき、駐輪場の入口のゲートなど、街中の要所にRFIDリーダライタを設置して、その発信信号を受信するシステムが検討されている。このシステムは、RFIDタグからの発信信号に含まれる自転車ごとの固有識別番号をもとに信号を発信した自転車を特定して、それが盗難自転車である場合には、自転車の所有者や警察署など所定の対象に対して盗難自転車を発見した旨の情報を伝達するものである。この方法により、自転車の窃盗者に気づかれずに盗難自転車や窃盗者自身の所在位置を特定して、盗難自転車の回収や窃盗者の検挙を目指すシステムである。
【0003】
特許文献1は、このようなRFIDタグを用いた自転車管理システムの例である。図3に特許文献1における従来の自転車管理システムの構成例を示す。なお特許文献1では、RFIDタグを自転車のフレームに設けたねじ穴にねじ込むか、フレームに設けた凹部に埋め込むか、もしくはシート状のRFIDタグをフレームに貼り付けることにより、自転車の窃盗者がRFIDタグを容易に除去することができないように構成されている。
【0004】
図3において、自転車31のフレームにはRFIDタグ32が取り付けられており、この自転車31が街中に設置されたRFIDリーダライタ35の近傍を通過すると、RFIDタグ32が発信する固有識別番号を含む信号をRFIDリーダライタ35が受信し、通信ネットワーク39に読み取った受信内容を伝達する。RFIDリーダライタ35は、RFIDタグ取り付け店舗36や自転車31の製造メーカ37など、複数の場所に設置することができる。また携帯型RFIDリーダ33によりRFIDタグ32からの信号を受信して、無線基地局34を介して通信ネットワーク39にこの受信内容を伝達してもよい。RFIDタグ32からの読み取り情報は、この通信ネットワーク39を経由して、登録情報センタ41に集められる。なおRFIDタグ取り付け店舗36は、自転車31に実際にRFIDタグ32の取り付けを行い、登録情報センタ41に自転車の固有識別番号を含む登録情報の送信を行う機能を持つ施設である。
【0005】
登録情報センタ41は照会手段42および通知手段43を持ち、RFIDタグ32の固有識別番号をデータベースサーバ40に照会し、この固有識別番号を有する自転車31に盗難届が出されていないかなどを調査する。その結果、自転車31に盗難届が出されているなど問題があることが判明した場合は、通信ネットワーク39を経由して警察署38に自転車31を発見したことを連絡するほか、やはり通信ネットワーク39を経由して、自転車31の所有者にその発見情報を連絡することができる。また、この固有識別番号を含む信号を受信したRFIDリーダライタ35の近傍の施設にこの発見情報を連絡して、自転車31の発見やその窃盗者の身柄の拘束を促すことも可能である。
【0006】
一方、RFIDタグを用いない自転車の盗難防止のための警報システムとして、特許文献2に記載の例がある。この警報システムはRFIDタグを用いて自転車を管理するものではなく、自転車の盗難時にその異常を察知して、搭載しているブザーを動作させて周囲にその自転車の盗難を知らせるとともに、窃盗者には犯罪行為の続行を断念させることを目的としたものである。従って窃盗者に気づかれずに盗難自転車や窃盗者自身の所在位置を特定して、それによる盗難自転車の回収や窃盗者の検挙を目指すものではない。図4にこの特許文献2に記載された従来の自転車の警報システムの構成例を示す。このうち図4(a)は、盗難防止のための警報システムを搭載した自転車の概要を示す図であり、図4(b)は、図4(a)のハブダイナモ45の部分を拡大した図である。
【0007】
図4(a)において、自転車44はハブダイナモ45、および第1のキー装置46を備えている。ここでハブダイナモとは自転車の前輪もしくは後輪の中心(ハブ)の車軸に組み込まれた発電装置であって、自転車のタイヤの腹にロータを当接させて発電を行うリムダイナモに比べて、点灯時にペダルの重さに与える影響が小さいという特徴を持つ。重要な点は一般には乗り手が装置の動作と非動作とを手動で切り換えることができないことであり、自転車の走行時には常に動作状態となる。また図4(b)はこのハブダイナモの部分の構成を示す拡大図であり、ハブダイナモを自転車の側面方向から見た場合を示している。図4(b)において、車軸47は自転車本体に固定されており、自転車の走行に従って、その周りを取り囲むホイールケース51およびドラム48が車輪とともに一体に回転する。ドラム48には車輪を構成するスポークを取り付けるための穴が設けられている。ホイールケース51には圧電ブザー50および第2のキー装置49が組み込まれており、自転車の盗難時には、この圧電ブザー50が動作して大音量の警告音を発する。
【0008】
特許文献2において、第1のキー装置は自転車をロックするための錠前であり、内部には図示しない振動センサが組み込まれている。ここで、ハブダイナモと内部の圧電ブザー、第1のキー装置の間には電気回路が形成されていて、第1のキー装置からキーが抜かれた状態、即ちキーロック状態の場合に、この電気回路は閉回路となるよう構成されている。従って、キーロック状態にて振動センサが振動を検知するか、もしくはハブダイナモが動作して自転車の走行が確認された場合には、圧電ブザーが動作して大音量の警告音が発せられることとなる。ここで第1のキー装置が破壊された場合にも、この電気回路は閉回路のままであり、この電気回路を開回路にして圧電ブザーを非動作とするためには、第1のキー装置に正しいキーを差し込まなくてはならない。従って、正しいキーを所持しない窃盗者は圧電ブザーの動作を阻止する手段を持たないので、圧電ブザーはいつまでも動作し続けることとなり、自転車の盗難を阻止することができる。
【0009】
なお、ハブダイナモに設けられた第2のキー装置は、そこにキーを差し込むことによって圧電ブザーの動作を止めるものであり、自転車の持ち主が誤って圧電ブザーを動作させた場合などに、緊急に動作を停止させるためのものである。この第2のキー装置も正しいキーを差し込まなければ圧電ブザーを停止できないので、正しいキーを所持しない窃盗者が第2のキー装置の存在に気づいたとしても、これを用いて圧電ブザーの動作を阻止することは不可能である。従って、この警報システムにおけるセキュリティの脆弱性を招くことにはならない。
【0010】
【特許文献1】特開2003−306186号公報
【特許文献2】特開平11−134563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記特許文献1に記載の従来のRFIDタグを用いた自転車管理システムには、以下の2つの課題があった。第1の課題は自転車に装着するRFIDタグの駆動電源の確保である。一般にRFIDタグを用いた管理システムでは、RFIDタグの側には電源を搭載せずに、RFIDリーダライタからの問い合わせ信号の搬送波を受信して、この信号から電力を取り出して駆動電源とする場合が多い。しかしこの場合にはRFIDリーダライタとRFIDタグとを十分に接近させる必要があるため、一般にRFIDタグの所持者がRFIDタグを内蔵した物品をRFIDリーダライタのアンテナに意識的に近づけるなどの協力が得られることが前提となる。
【0012】
ところが自転車管理システムでは、RFIDタグの検出を行う場合の自転車の乗り手はその自転車の窃盗者などであるから、当然ながら前記のような協力が得られるはずもなく、RFIDタグをRFIDリーダライタのアンテナに接近させることが難しい。それどころか、このような乗り手からはRFIDタグの存在自体を隠蔽する必要があるので、RFIDタグが備えるアンテナをさほど大きくすることはできず、またその装着位置も乗り手に気づかれにくい、通信には必ずしも適していない箇所としなければならない場合がある。このような理由から、RFIDタグの側が自らの駆動電源を持つ構成とすることが望ましいが、電池を内蔵するシステムの場合には電池寿命の問題があるため、電池交換などのメンテナンスが不要な駆動電源の搭載が求められていた。
【0013】
第2の課題は自転車の正当な使用者の個人情報の拡散の防止である。特許文献1に記載のシステムでは、街中に設置された複数のRFIDリーダライタや携帯型RFIDリーダからの問い合わせ信号を受信すると、自転車に搭載されたRFIDタグの側からは無条件に固有識別番号を含む応答信号を送信する。このため、自転車が盗難に遭っていない場合であっても自転車の位置と時刻の情報が固有識別番号とともに登録情報センタに送られ、データベースサーバに照会されることとなる。従ってこの通信ネットワークにアクセスしている第3者がこれらの情報を入手して、自転車に乗った使用者がいつどこにいるのかを半ばリアルタイムで知ることが理論上は可能である。このような状況は自転車管理システムの信頼性を著しく損なうものであるので、RFIDリーダライタが自転車の固有識別番号を含む情報を読み取る場合を、あくまでその自転車が盗難などのトラブルに遭遇したときなどに限定したシステムとする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記第1および第2の課題は、自転車が備えるハブダイナモをRFIDタグの動作の駆動電源として利用し、その上でキーロック(以下セキュリティキー)をRFIDタグのシステムに適用してなる第1の解決手段により、いずれも解決することができる。
【0015】
自転車が備えるハブダイナモは、リムダイナモなどと異なり、前記のように自転車の走行中は常に動作状態であって、原則として乗り手がその動作、非動作を切り換えることができない。従って、RFIDタグの動作電力をハブダイナモから得ることにより、電池の交換などのメンテナンスを行うことなく、かつ自転車の走行中には常に動作状態とすることが可能である。従って、自転車の盗難時にはハブダイナモの駆動によってRFIDタグの動作に十分な電力が供給されるので、RFIDリーダライタに対して十分な強度の応答信号を常に確実に送信することが可能である。
【0016】
一方、セキュリティキーを使用することにより、自転車の所有者がキー装置にキーを差し込んでいるときはRFIDタグを常に非動作として、応答信号の発信を行わないようにすることができる。この方法により、街中に設置されたRFIDリーダライタが通過した自転車から応答信号を受信してその固有識別番号を取得するのは、キー装置にキーが差し込まれていない場合や、キー装置が破壊されて自転車が盗難などのトラブルに遭遇している場合のみに限定される。従って、通常時の自転車の所有者の位置や時刻の情報が通信ネットワーク上に流出することを防ぐことができる。
【0017】
なお、前記第1の解決手段にて用いたハブダイナモを利用した電源供給方法やセキュリティキーの使用については、前記特許文献2に記述がある。ただし特許文献2に記載された自転車の警報システムではRFIDタグは用いられておらず、また通信ネットワークを用いて盗難に遭った自転車の所在を監視することも行われていない。
【0018】
ところで、前記第1の解決手段の場合に、窃盗者が自転車のキー装置にキーを差し込まず、もしくはキー装置が破壊した状態でハブダイナモを駆動させた場合には、搭載しているRFIDタグは応答信号を発信し続け、自転車が街中に設置されたRFIDリーダライタの近傍を通過した際にこの信号が受信されて、この盗難車の時刻と位置とともに固有識別番号の情報が通信ネットワーク上に流れることになる。
【0019】
一般に自転車に搭載されたRFIDタグが発信する応答信号を受信して、その信号を解析して自転車の固有識別番号その他の情報を読み出すことは非常に困難あり、窃盗者がそのような操作に成功するとは考えにくい。しかし、単に自転車から何らかの信号が発信されているかどうかのみならば、このような管理システムに使用されている周波数帯域の受信が可能な受信装置を用いて探知されるおそれはある。もしその自転車がシステムの監視対象であることを窃盗者が知れば、あるいはその自転車は盗難を免れるかも知れないが、この場合には結局は他の自転車が狙われることになって犯罪を防止することにはならない。さらに、窃盗者が信号の発信を探知した場合には、自転車に装着されたRFIDタグやアンテナを破壊し、このシステムによる監視を無力化することも考えられる。
【0020】
従って第3の課題として、当該自転車が自転車管理システムによって監視されているかどうかを窃盗者が知ることが容易ではなく、また窃盗者がRFIDタグやアンテナの除去や破壊を行うことが困難であるような自転車管理システムが求められていた。
【0021】
この第3の課題は、以下の第2の解決手段により解決することができる。即ち、ハブダイナモとセキュリティキーを備えた自転車において、かつキー装置にキーが差し込まれず、もしくはキー装置が破壊された状態でハブダイナモが駆動した場合でも、自転車に搭載されたRFIDタグはそれだけでは応答信号を送信することはなく、前記の場合にさらに外部のRFIDリーダライタから問い合わせ信号を受信した場合にのみ、応答信号を送信することとする。窃盗者でも入手容易な受信装置では自転車に正しい問い合わせ信号を送信することはできないため、RFIDタグは応答信号を送信することはない。窃盗者がこのような問い合わせ信号を送信可能なRFIDリーダライタを入手して動作させることは非常に困難であり、この第2の解決手段の実施によって自転車管理システムの信頼性を向上させることができる。またこのRFIDリーダライタからの問い合わせ信号を暗号化しておき、RFIDタグの側で解読できない場合には応答信号を送信しない構成とすれば、自転車管理システムの信頼性は一層向上することとなる。
【0022】
即ち、本発明は、セキュリティキーを装着するキー装置、ハブダイナモ、およびRFIDタグを具備する自転車を、RFIDリーダライタを用いて管理する自転車管理システムであって、前記RFIDタグは、前記ハブダイナモにより電力を供給されて動作し、前記RFIDタグは、前記セキュリティキーが前記キー装置に装着されていない場合、もしくは前記キー装置が破損している場合に動作するよう構成されており、前記RFIDタグは、動作時に固有識別信号を発信し、前記RFIDタグより発信された前記固有識別信号を前記RFIDリーダライタが受信することを特徴とする自転車管理システムである。
【0023】
また、本発明は、前記RFIDタグは、前記RFIDリーダライタからの問い合わせ信号を受信した場合にのみ、前記固有識別信号を発信することを特徴とする自転車管理システムである。
【0024】
さらに、本発明は、前記RFIDリーダライタからの問い合わせ信号は暗号化されていることを特徴とする自転車管理システムである。
【0025】
さらに、本発明は、前記RFIDリーダライタが通信ネットワークに接続され、前記通信ネットワークには登録された各自転車の自転車情報と、各自転車の固有識別信号とが記録されたセンターサーバが接続されていて、前記RFIDリーダライタが前記RFIDタグから送信された固有識別信号を受信すると、前記RFIDリーダライタは受信した前記固有識別信号と、前記RFIDリーダライタの受信機位置情報、および受信時刻情報を前記センターサーバに送信し、前記センターサーバは受信した前記固有識別信号をもとに、前記登録された各自転車の自転車情報を照会し、前記RFIDリーダライタの受信機位置情報、受信時刻情報、および前記照会により得られた自転車情報を、所定の対象に連絡することを特徴とする自転車管理システムである。
【0026】
さらに、本発明は、前記RFIDリーダライタにより受信された各自転車の前記固有識別信号を用いて、自転車の盗難車両管理を行うことを特徴とする自転車管理システムである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の解決手段によれば、RFIDタグを用いた自転車管理システムにおいて、自転車に搭載するRFIDタグの動作電力をその自転車が備えるハブダイナモから得るようにし、合わせてセキュリティキーを用いて、セキュリティキーが所定のキー装置に装着されていない場合、もしくはキー装置が破損している場合にのみRFIDタグが動作するよう構成する。このことにより、RFIDタグの駆動電源を確保することができるため、RFIDリーダライタに対して十分な強度で応答信号を送信することができ、また電池の交換などのメンテナンスも必要がない。さらに、RFIDタグの動作を、ハブダイナモが駆動し、かつキー装置が正常に動作していない場合に限定することにより、RFIDタグからの応答信号が正当な使用者の走行時にRFIDリーダライタに送信されることがないように構成する。これにより、自転車の固有識別番号の情報を含む、正当な使用者の個人情報が、RFIDリーダライタを介して通信ネットワーク上に流出することを防ぐことができる。
【0028】
さらに、本発明の異なる解決手段によれば、自転車管理システムにおいて、前記のようにハブダイナモが駆動し、かつセキュリティキーが所定のキー装置に装着されず、もしくはキー装置が破損している場合であっても、それだけではRFIDタグが応答信号を送信しないものとする。そして、前記の場合にさらに外部のRFIDリーダライタから問い合わせ信号を受信した場合にのみ、自転車に搭載されたRFIDタグは応答信号を送信するように構成する。これにより自転車の窃盗者が受信装置などを用いてRFIDタグの搭載の有無を検知することをより困難にし、窃盗者に気づかれることなく、盗難時の自転車の固有識別番号を含む自転車の位置や時刻の情報を通信ネットワーク上で監視できるようにする。またRFIDリーダライタからの問い合わせ信号を暗号化し、RFIDタグの側で解読できない限り応答信号を返信しない構成とすれば、自転車管理システムの信頼性を一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の自転車管理システムにおける実施の形態について、図1および図2を参照しながら説明する。このうち図1は、本発明における自転車管理システムの構成の例を示す図である。
【0030】
図1において、自転車11の前輪もしくは後輪にはハブダイナモ13が設置されており、またフレームにはキー装置14が設けられている。キー装置14は駐輪の際に自転車の車輪をロックして盗難を防ぐための、錠前としての役割を有しており、その鍵穴にセキュリティキー15を装着することで車輪のロックを解除する。一方、自転車11には外部から直接見ることはできない位置にRFIDタグ12が装着されていて、そのアンテナによって街中に設置されているRFIDリーダライタ18と非接触の双方向通信が可能なように構成されている。ハブダイナモ13は自転車11の走行時にRFIDタグ12に対して動作電力を与え、またキー装置14とRFIDタグ12の間には電気回路が設けられていて、セキュリティキー15が装着されていない場合、もしくはキー装置14が破損している場合にこの回路は閉回路となり、RFIDタグ12が動作するよう構成されている。
【0031】
まず、本発明の前記第1の解決手段に基づく自転車管理システムの場合について記述する。この場合は、自転車の乗り手がセキュリティキー15をキー装置14に装着せずに自転車11を無理に走行させると、前記のキー装置14を含む電気回路が閉回路となるとともに、ハブダイナモ13からRFIDタグ12に対して動作電力が供給されるので、RFIDタグ12は自身の固有識別番号を含む無線信号を周囲に発信することとなる。自転車11の正当な所有者であれば、セキュリティキー15をキー装置14に装着せずに自転車を走行させることはあり得ないので、自転車11は盗難に遭っているのであり、その乗り手は自転車11の窃盗者に他ならない。この状態で自転車11が街中に設置されたRFIDリーダライタ18のいずれかの近傍を通過すると、RFIDタグ12が発信する固有識別番号を含む信号をRFIDリーダライタ18が受信して、通信ネットワーク19に読み取った受信内容を伝達することとなる。
【0032】
このRFIDリーダライタ18は要所に設けられた監視システム16、駐輪場17など、街中の複数箇所に設置されていて、読み取った自転車の固有識別番号を含む信号に、その信号の受信時刻と受信したRFIDリーダライタ18の位置の情報を加え、通信ネットワーク19にそれらの情報を流すこととなる。センターサーバ20はこれらの一連の情報である、自転車の固有識別番号、信号を読み取ったRFIDリーダライタ18の受信機位置情報、受信時刻情報の3種類の情報をもとに、予め定められた必要な措置を実施する。つまり、盗難に遭った自転車11の所有者に対して盗難の事実を連絡したり、駐輪場など、窃盗者が立ち寄りそうな場所に対して盗難自転車に関する手配情報を送信したり、警察署に盗難の届け出を行うなどの措置を行うこととなる。
【0033】
一方、本発明の前記第2の解決手段に基づく自転車管理システムの場合には、自転車の乗り手がセキュリティキー15なしで自転車11を走行させても、それだけではRFIDタグ12から無線信号が発信されることはない。しかし自転車11が街中に設置されたRFIDリーダライタ18の近傍を通過すると、前記RFIDリーダライタ18からの問い合わせ信号を受信して、RFIDタグ12は固有識別番号を含む応答信号を周囲に送信することとなる。RFIDリーダライタ18がこの応答信号を受信すると、このときの受信機位置情報、受信時刻情報とともに、通信ネットワーク19に読み取った受信内容を伝達する。センターサーバ20はこれらの一連の情報を受信して、予め定められた必要な措置を実施する。
【0034】
自転車11の走行時にはRFIDタグ12に対して常にハブダイナモ13から動作電力が供給されているので、RFIDタグ12は自身の動作電力をRFIDリーダライタ18からの問い合わせ信号である受信信号の搬送波に頼る必要がない。従ってこの受信信号の強度が弱いものであっても、RFIDタグ12は自分自身でそれを増幅し、十分な感度で解析して、自身の固有識別番号を含む必要な応答信号をRFIDリーダライタ18に向けて送信することができる。この場合には前記のように、外部のRFIDリーダライタ18からの適切な問い合わせ信号を受信した場合にのみ応答信号を送信するので、自転車11の窃盗者が単に受信装置などを用いてRFIDタグ12からの信号を受信しようとしても、RFIDタグ12からの信号を受信できない。従って窃盗者は自転車11にRFIDタグ12が搭載されているかどうか、またその搭載位置を探知することが困難になる。またこの際のRFIDリーダライタ18からの問い合わせ信号を暗号化するならば、自転車管理システムの信頼性はさらに向上することとなる。
【0035】
図2は、図1における自転車へのRFIDタグの搭載位置の例について示した図である。図2では、自転車21の後輪にセキュリティキーを装着するキー装置22、前輪にハブダイナモ23がそれぞれ設置されている。アンテナを含むRFIDタグは、自転車の窃盗者から簡単に見つけられることがなく、しかもRFIDリーダライタと一方向もしくは双方向の無線通信を行うのであるから、金属部材によってこの無線通信の阻害される可能性ができるだけ小さい位置に搭載する必要がある。自転車の主要部材はフレームやタイヤのリムやスポークなど、タイヤ以外は金属により構成されている場合が一般的であるので、RFIDタグはそれらの部材からなるべく離して設置するべきである。この条件を満たすRFIDタグの設置場所としては、図2に示す以下の4箇所が好適である。
【0036】
1番目の設置場所は自転車21が備えるサドル24の座面の裏側、もしくは前記サドル24の内部である。サドル24は非金属にて構成することが一般的であり、自転車の構成部材の中では比較的高い位置に設置されていることも通信には有利である。またその表面積も広く、RFIDタグのアンテナを配置するための十分な領域を有しているため、窃盗者の目に全く触れることがないようにRFIDタグを設置することができる。またRFIDタグからはキー装置22およびハブダイナモ23に対して配線を設ける必要があるが、この配線をサドル24の直下に存在する金属フレームの内部に設けることにより、目立ちにくく配置することが可能である。
【0037】
2番目の設置場所は自転車21が備えるライト25の下側、もしくは前記ライト25の内部である。ライト25は金属光沢を有する部材で構成される場合が多いが、実際には金属ではなく、蒸着を施した樹脂が用いられることが多く、金属により構成される他の部材に比べれば、RFIDタグの設置条件としては優れている。その表面積は必ずしも広くはないが、自転車の構成部材の中では比較的高い位置に設置されており、この点は無線通信には有利である。またライト25とハブダイナモ23の間には当然ながらライト25に給電するための配線が設けられているため、この配線をRFIDタグとの配線にも利用することにより、窃盗者に全く違和感を与えずに電気的接続を行うことが可能である。
【0038】
3番目の設置場所は自転車21の後輪上部の泥除けの上側、もしくは後部のフレーム上に設置される反射器26の内部である。一般に反射器26は樹脂により構成される場合が多く、また通常は垂直な向きに設置されるために、金属製の泥除けからは多少離して配置される場合が多い。このためRFIDタグを反射器26の内部に置けば、金属部材から十分に離して設置することができ、RFIDリーダライタとの通信において好都合である。その表面積は必ずしも広くはなく、また自転車の構成部材の中では設置位置は必ずしも高い位置ではないが、決して低すぎることもなく、また金属部材から突出しているという条件により、設置高さの問題は補うことができる。またハブダイナモ23との間の配線も、近くに置かれた泥除けの裏側に設けるなどの工夫により、比較的目立たないように配置することが可能である。
【0039】
4番目の設置場所は自転車21のハンドルのグリップ27の内部である。一般にグリップ27はゴムなどの非金属により構成されるが、その直下には金属製のハンドルが設けられており、その点でRFIDタグの設置条件としては優れているとはいえない。ただし自転車のハンドルをグリップ27が設けられる領域のみ細く形成するなどの工夫により、RFIDタグを内部に設置する際に、非金属の領域を増加させることが可能である。グリップ27は自転車の構成部材の中では最も高い位置に設置されるので、RFIDリーダライタとの通信環境は最高であり、またグリップ27は左右に2つ存在することからRFIDタグを2つ設け、常に通信条件のいい方のRFIDタグを用いるなどの構成が可能である。その表面積は必ずしも広くはないが、グリップ27は円筒形であることからRFIDタグのアンテナを円筒形に構成することで、アンテナ面積を大きくすることが可能である。またグリップの直下にはハンドルのフレームがあるので、この内部を経由して、ハブダイナモ23までの配線を設けることが可能である。
【0040】
RFIDタグの設置場所としては、この他に例えばタイヤの内部なども考えられる。しかしこの場合には、自転車の走行中は常にRFIDタグに激しい振動が加えられることになり、また自転車内でのRFIDタグの相対位置も常時変化する。さらにハブダイナモ23までの配線の設置も容易ではないなど、前記4箇所のRFIDタグの設置場所に比較すると、設置条件はかなり劣ったものとなる。
【0041】
以上示したように、本発明の実施の形態に基づいて、RFIDリーダライタに対して十分な強度の応答信号を送信することができ、また電池の交換などのメンテナンスの必要もない、RFIDタグを用いた自転車管理システムを実現することができる。またこの自転車管理システムにおいては、自転車の固有識別番号の情報を含む正当な使用者の個人情報の、通信ネットワーク上への流出を防ぐことができる。さらに、上記の説明は、本発明の実施の形態に係る場合の効果について説明するためのものであって、これによって特許請求の範囲に記載の発明を限定し、あるいは請求の範囲を減縮するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明における自転車管理システムの構成の例を示す図。
【図2】図1における自転車へのRFIDタグの搭載位置の例を示す図。
【図3】従来の自転車管理システムの構成の例を示す図。
【図4】従来の自転車の警報システムの構成の例を示す図。図4(a)は警報システムを搭載した従来の自転車の概要図、図4(b)は図4(a)のハブダイナモの部分の拡大図。
【符号の説明】
【0043】
11,21,31,44 自転車
12,32 RFIDタグ
13,23,45 ハブダイナモ
14,22 キー装置
15 セキュリティキー
16 監視システム
17 駐輪場
18,35 RFIDリーダライタ
19,39 通信ネットワーク
20 センターサーバ
24 サドル
25 ライト
26 反射器
27 グリップ
33 携帯型RFIDリーダ
34 無線基地局
36 RFIDタグ取り付け店舗
37 製造メーカ
38 警察署
40 データベースサーバ
41 登録情報センタ
42 照会手段
43 通知手段
46 第1のキー装置
47 車軸
48 ドラム
49 第2のキー装置
50 圧電ブザー
51 ホイールケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティキーを装着するキー装置、ハブダイナモ、およびRFIDタグを具備する自転車を、RFIDリーダライタを用いて管理する自転車管理システムであって、
前記RFIDタグは、前記ハブダイナモにより電力を供給されて動作し、
前記RFIDタグは、前記セキュリティキーが前記キー装置に装着されていない場合、もしくは前記キー装置が破損している場合に動作するよう構成されており、
前記RFIDタグは、動作時に固有識別信号を発信し、
前記RFIDタグより発信された前記固有識別信号を前記RFIDリーダライタが受信することを特徴とする自転車管理システム。
【請求項2】
前記RFIDタグは、前記RFIDリーダライタからの問い合わせ信号を受信した場合にのみ、前記固有識別信号を発信することを特徴とする請求項1に記載の自転車管理システム。
【請求項3】
前記RFIDリーダライタからの問い合わせ信号は暗号化されていることを特徴とする請求項2に記載の自転車管理システム。
【請求項4】
前記RFIDリーダライタが通信ネットワークに接続され、前記通信ネットワークには登録された各自転車の自転車情報と、各自転車の固有識別信号とが記録されたセンターサーバが接続されていて、
前記RFIDリーダライタが前記RFIDタグから送信された固有識別信号を受信すると、前記RFIDリーダライタは受信した前記固有識別信号と、前記RFIDリーダライタの受信機位置情報、および受信時刻情報を前記センターサーバに送信し、
前記センターサーバは受信した前記固有識別信号をもとに、前記登録された各自転車の自転車情報を照会し、前記RFIDリーダライタの受信機位置情報、受信時刻情報、および前記照会により得られた自転車情報を、所定の対象に連絡することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の自転車管理システム。
【請求項5】
前記RFIDリーダライタにより受信された各自転車の前記固有識別信号を用いて、自転車の盗難車両管理を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の自転車管理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−73328(P2009−73328A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243893(P2007−243893)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】