説明

自閉症の治療のための化合物

本発明は、自閉症の治療に使用される、神経細胞内への塩素イオンの流入を阻害する化合物および神経細胞からの塩素イオンの流出を改善する化合物に関する。本発明は、本発明に係る化合物と医薬的に許容される担体とを含む自閉症の治療に使用される医薬組成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自閉症の治療に使用される、神経細胞内への塩素イオンの流入を阻害する化合物または神経細胞からの塩素イオンの流出を改善する化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
小児自閉症候群障害(ASD:Autistic
Syndrome Disorder)としては、情動的関係の構築能力の先天的欠如、互恵的社会交流での行動異常、言語および非言語コミュニケーション、常同的行動や繰り返しの遊びに付随する周囲環境での制限された関心などの広範囲にわたる異常が挙げられる(Kanner、1943年;LevyおよびHyman、1993年;LevyおよびHyman、2005年;Adrienら、2001年;Blancら、2005年;Bourreauら、2009年)。これまでの調査から、遺伝的素因がこの疾患に関与していると考えられているが、環境汚染物質や恐らく妊娠中の母親の曝露などの1つ以上の環境要因が整った場合に症状が発生するのでないかということが分かっている(PersicoおよびBourgeron、2006年;Bourgeron、2009年;Patterson、2002年)。遺伝的および環境的危険因子が発達プログラムを変え、それにより、皮質および/または皮質下の奇形が引き起こされ、誤って配置/接続された神経細胞集合が形成されるということが示唆されている。第1の症状は、最も可能性が高い早期の起点である3歳前に発症する。現在のところ、ASDに有効な生物学的/医薬的治療が存在しない。
【0003】
脳の成熟は、電位開口型受容体シナプス作動チャネルの発達上の一連の発現および脳のパターンに関連している(Spitzerら、1994年;Ben Ariら、2007年)。抑制性伝達物質GABAの作用の発達的変化は、これらの変化の単に一例である。未発達の神経細胞は、成人よりも高い(Clを有し、それにより、GABAの奇異的興奮作用が生じる(Ben Ari、2002年;Ben Ariら、2007年)。これは、塩素イオンを流入させる共輸送体NKCC1の早期での発現と、神経細胞から塩素イオンを流出させるKCC2の後期での働きに起因する(KahleおよびStaley、2008年;Riveraら、1999年;Dzhalaら、2005年;Delpireら、1999年;Delpire、2000年;Liら、2002年)。さらに、(Clの調節は動的であり、活性亢進の短時間の発症によってさえも変化し(BalenaおよびWoodin、2008年;Fiumelliら、2005年;FiumelliおよびWoodin、2007年;Woodinら、2003年)、様々な発作、病変、てんかん発作および神経障害によってより持続的になる(Khalilovら、2003年;Khalilovら、2005年;Cohenら、2002年;Huberfeldら、2006年;Huberfeldら、2007年)。従って、(Clを減少させる利尿薬は、新規抗てんかん薬および神経保護薬を構成する(Dzhalaら、2005年;Nardouら、2009年;Kahleら、2008年;Payneら、2003年)。これに沿って、現在、小児てんかんにおけるその目的に向かって臨床試験が行われている。
【0004】
ブメタニド(Bum)(Cohen、1981年;Feit、1981年)は、共輸送体NKCC1に選択的に拮抗し、それにより(Clを減少させる古典的な利尿剤である(Delpireら、1999年;DelpireおよびMount、2002年)。Bumは、1975年以降成人に、そして1986年以降小児に広く利用されており、成人および小児におけるその薬物動態学とその副作用は、よく知られている(Lopez−Samblasら、1997年;Sullivanら、1996年;Witteら、1986年;Marshallら、1998年)。Bumは、急性疾患(頭部外傷後の浮腫)や、気管支肺異形成、腎炎症候群または心臓鬱血などの長期疾患に使用されており(O’Donnellら、2004年;Mackieら、1986年;Sullivanら、1996年)、最近では、症例報告(Kahleら、2009年)に、てんかん発作の重症度の減少が報告されている。特に小児において、連続的な臨床的および生物学的監視を伴う限り、Bumの使用は安全である。
【0005】
本発明者らは、現在5人の自閉症児において、臨床的および生物学的監視を行いながら、Bumの効果を調査している。様々な症例を得るために、施設または自宅にいるASD小児の大集団からアプリオリなしにこれらの自閉症児を選択した。本利尿剤を投与し(1mg/24時間、0.5mgを1日に2回)、治療を3ヶ月間継続した。この期間は、IASに対する効果の評価にとって十分だとみなされた最短持続期間であった。本発明者らは、5人の小児におけるIAS兆候の有意な改善を報告する。これらの観察は、IAS(より一般的には自閉症)におけるBumの使用の広範囲なスクリーニングを必要とする。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、神経細胞内への塩素イオンの流入を阻害し、それにより細胞内濃度を減少させるNKCC共輸送体拮抗薬が自閉症の治療に有用になり得るという仮説を立てた。
【0007】
従って、本発明は、自閉症の治療に使用される、神経細胞内への塩素イオンの流入を阻害する化合物および神経細胞からの塩素イオンの流出を改善する化合物に関する。
【0008】
別の態様では、本発明は、本発明に係る化合物と医薬的に許容される担体とを含む自閉症の治療に使用される医薬組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(定義)
本明細書の全体にわたって、いくつかの用語が用いられており、これらの用語を以下の段落に定義する。
【0010】
本明細書に使用されている「自閉症」という用語は、社会的交流およびコミュニケーション障害と、他の欠陥を伴う制限された繰り返し行動を特徴とする神経発達障害ファミリーを意味する。小児が3歳になる前に、これらの全ての徴候が始まる。自閉症は、神経細胞およびそれらのシナプシスの接続および組織化方法が変化することによって脳内の情報処理に影響を与えるが、この発生機序は十分に理解されていない。2つの他の自閉症スペクトル障害(ASD)は、認知的発達および言語の遅延がないアスペルガー症候群と、他の2つの障害の完全な基準が満たされない場合に診断される非定型自閉症と、広汎性発達障害が特定されない場合の特定不能の広汎性発達障害(PDD−NOS)である。
【0011】
本明細書に使用されている「Na−K−Cl共輸送体」を表すNKCCとは、細胞内外へのナトリウム、カリウムおよび塩素イオンの能動輸送を支援するタンパク質を意味する。この膜輸送タンパク質のいくつかの変種またはイソ型、特にNKCC1およびNKCC2が存在する。NKCC1は、体全体に分布しているが、脳内、特に発達中の動物およびヒトの脳内にも広く分布している。NKCC1は、神経細胞内に細胞内塩素イオンを増加させ、それによりGABAをより興奮性にするように作用する。広範囲な調査から、NKCC1の遮断により細胞内塩素イオンが減少し、それによりGABAの阻害作用が増加することが分かっている。現在では、生体内および生体外調査から、NKCC1の遺伝的および/または薬理学的遮断により、初期のネットワーク活動が減少することが分かっている。
【0012】
本明細書に使用されている「カリウム塩素共輸送体」を表すKCCという用語は、塩素イオンの共輸送体を意味する。いくつかの変種またはイソ型、特にKCC2が存在する。KCC2は、多くの臓器、特に脳内に存在し、細胞内塩素イオンを除去し、それによりGABAの阻害作用を増強するように作用する。KCC2遮断薬は、GABAを興奮性にし、かつ容易にてんかん発作を発生させるように形質転換させ、KCC2の遺伝子欠損は、マウスでは致死的である。また、KCC2は、興奮性から抑制性へのGABAの作用の変化に対応して、発達の比較的後期に発現する。また、広範囲にわたる発作およびてんかん発作により機能的なKCC2が除去され、それにより、GABAの持続的な興奮作用およびさらなるてんかん発作が引き起こされる。
【0013】
本明細書に使用されている「利尿薬」という用語は、利尿率を上昇させ、そのようにして強制利尿手段を提供する任意の薬物を意味する。いくつかの種類の利尿薬が存在する。すべての利尿薬は体からの水の排出を増加させるが、各種類は異なった方法でこの増加を行う。
【0014】
本明細書に使用されている「ループ利尿薬」という用語は、腎臓のヘンレ係蹄上行脚に作用する利尿薬を意味する。
【0015】
本明細書に使用されている「治療すること」または「治療」という用語は、そのような用語が適用される障害または疾患の進行の後退、軽減もしくは阻害または予防、あるいはそのような用語が適用される障害または疾患の1つ以上の症状の進行の後退、軽減もしくは阻害または予防を意味する。
【0016】
(拮抗薬およびその使用)
本発明の第1の目的は、自閉症の治療に使用される、神経細胞内への塩素イオンの流入を阻害する化合物または神経細胞からの塩素イオンの流出を改善する化合物に関する。
【0017】
好ましい実施形態では、本発明に係る化合物は、NKCC共輸送体を阻害するかKCC共輸送体を活性化する。
【0018】
別の好ましい実施形態では、本発明に係る化合物は、NKCC共輸送体拮抗薬またはKCC共輸送体作動薬である。
【0019】
一実施形態では、前記NKCC拮抗薬またはKCC作動薬は、低分子量拮抗薬、例えば小有機分子(天然または非天然)であってもよい。
【0020】
「小有機分子」という用語は、医薬品に一般に使用されるそれらの有機分子に相当する大きさの分子(天然または非天然)を指す。上記用語は、生体高分子(例えば、タンパク質、核酸など)を除外する。好ましい小有機分子は、最大約5000Da、より好ましくは最大2000Da、最も好ましくは最大約1000Daのサイズ範囲を有する。
【0021】
別の実施形態では、本発明のNKCC拮抗薬またはKCC作動薬は、NKCCを阻害するかKCCを活性化する抗体またはNKCCを阻害するかKCCを活性化する抗体断片であってもよい。
【0022】
NKCCまたはKCCに対する抗体は、例えば、特に、ブタ、ウシ、ウマ、ウサギ、ヤギ、ヒツジおよびマウスから選択される宿主動物に適当な抗原またはエピトープを投与することによって、公知の方法に従って産生することができる。抗体産生を高めるために、当該技術分野で知られている各種アジュバントを使用することができる。本発明の実施で有用な抗体はポリクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。NKCCまたはKCCに対するモノクローナル抗体は、培養物中の連続細胞株によって抗体分子の産生を得る任意の技術を用いて調製および単離することができる。産生および単離技術としては、最初にKohlerおよびMilstein(1975年)、the human B-cell hybridoma technique(Coteら、1983年)およびthe EBV-hybridoma technique (Coleら、1985年)に記載されたハイブリドーマ技術が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、単鎖抗体(米国特許第4,946,778号を参照)の産生について記載されている技術を、抗NKCCまたは抗KCC単鎖抗体を産生するように構成することができる。本発明を実施するのに有用なNKCC拮抗薬またはKCC作動薬としては、限定されるものではないが、無傷の抗体分子のペプシン消化によって生成することができるF(ab’)断片や、F(ab’)断片のジスルフィド架橋を減少させることによって生成することができるFab断片などの抗NKCC抗体断片または抗KCC抗体断片が挙げられる。あるいは、NKCCまたはKCCに対して所望の特異性を有する断片の迅速な同定を可能にするように、Fabおよび/またはscFv発現ライブラリを構築することができる。
【0023】
ヒト化抗NKCC抗体または抗KCC抗体およびそこからの抗体断片は、公知の技術に従って調製することもできる。「ヒト化抗体」は、ヒト以外の免疫グロブリン由来の最小配列を含む、ヒト以外(例えば齧歯類)のキメラ抗体型である。大抵の場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラット、ウサギまたはヒト以外の霊長類などのヒト以外の生物種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基で置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応するヒト以外の残基で置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体中に存在しない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は、抗体性能をさらに改善するために行う。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的に2つの可変領域の実質的に全てを含み、可変領域では、超可変ループの全てまたは実質的に全ては、ヒト以外の免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRの全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体は任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)(典型的にはヒト免疫グロブリンFc)の少なくとも一部も含む。ヒト化抗体の作製方法は、例えば、Winter(米国特許第5,225,539号)およびBoss(Celltech社、米国特許第4,816,397号)に記載されている。
【0024】
さらに別の実施形態では、NKCC拮抗薬またはKCC作動薬を、アプタマーから選択してもよい。アプタマーは、分子認識の点で抗体の代替物となる分子種である。アプタマーは、高親和性および特異性により、実質的にあらゆる種類の標的分子を認識する能力を有するオリゴヌクレオチドまたはオリゴペプチド配列である。そのようなリガンドは、Tuerk C.およびGold L.(1990年)に記載されているように、ランダム配列ライブラリの試験管内進化法(SELEX)によって単離してもよい。ランダム配列ライブラリは、DNAのコンビナトリアル化学合成によって入手可能である。このライブラリの各メンバーは、非反復配列の最終的に化学修飾される直鎖状オリゴマーである。この種の分子の考えられる修飾、用途および利点は、Jayasena S.D.(1999年)に概説されている。ペプチドアプタマーは、2種類のハイブリッド法によってコンビナトリアルライブラリから選択される大腸菌チオレドキシンAなどのプラットフォームタンパク質によって示される立体構造的に制限された抗体可変領域からなる(Colasら、1996年)。
【0025】
低分子干渉RNA(siRNA)も、本発明で使用されるNKCC共輸送体遺伝子発現阻害剤として機能することができる。NKCC共輸送体遺伝子発現は、NKCC共輸送体遺伝子発現が特異的に阻害されるように(すなわちRNA干渉またはRNAi)、対象または細胞を、小さな二本鎖RNA(dsRNA)または小さな二本鎖RNAの産生を引き起こすベクターもしくは構築物に接触させることによって減少させることができる。適当なdsRNAまたはdsRNAコードベクターの選択方法は、配列が知られている遺伝子については当該技術分野でよく知られている(例えば、Tuschl, T.ら(1999年)、Elbashir, S. M.ら(2001年)、Hannon, GJ.(2002年)、McManus, MT.ら(2002年)、Brummelkamp, TR.ら(2002年)、米国特許第6,573,099号および第6,506,559号ならびに国際特許公開第01/36646号、第99/32619号および第01/68836号を参照)。
【0026】
リボザイムも、本発明で使用されるNKCC共輸送体遺伝子発現阻害剤として機能することができる。リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒することができる酵素RNA分子である。リボザイムの作用機序は、相補的な標的RNAとのリボザイム分子の配列特異的ハイブリッド形成と、それに続くエンドヌクレアーゼ切断を伴う。そのため、NKCC共輸送体mRNA配列のエンドヌクレアーゼ切断を特異的かつ効率的に触媒する遺伝子工学的ヘアピン型またはハンマー型リボザイム分子は、本発明の範囲内で有用である。最初に、典型的にはGUA、GUUおよびGUC配列などのリボザイム切断部位の標的分子を走査することによって、任意のRNA標的候補内の特異的リボザイム切断部位を同定する。一旦同定したら、オリゴヌクレオチド配列を不適当なものにし得る二次構造などの予測される構造特徴について、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する約15〜20個のリボヌクレオチドからなる短いRNA配列を評価することができる。候補となる標的の適合性についても、例えば、リボヌクレアーゼプロテクションアッセイを用いて、相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリッド形成への利用可能性を試験することによって評価することができる。
【0027】
NKCC共輸送体遺伝子発現阻害剤として有用なアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびリボザイムは、公知の方法によって調製することができる。これらの方法としては、例えば、固相ホスホルアミダイト化学合成などの化学合成技術が挙げられる。あるいは、RNA分子をコードするDNA配列の生体外もしくは生体内転写によってアンチセンスRNA分子を生成することができる。そのようなDNA配列を、T7またはSP6ポリメラーゼプロモーターなどの好適なRNAポリメラーゼプロモーターが組み込まれる多種多様なベクターに組み込むことができる。本発明のオリゴヌクレオチドに対する様々な修飾を、細胞内安定性および半減期を増加させる手段として導入することができる。可能な修飾としては、分子の5’および/または3’末端に対するリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのフランキング配列の付加または、オリゴヌクレオチド骨格中のホスホジエステラーゼ結合に代わるホスホロチオエートまたは2’−O−メチルの使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドsiRNAおよびリボザイムは、単独でまたはベクターに結合させて、生体内送達してもよい。「ベクター」は、その最も広い意味では、細胞、好ましくはNKCC共輸送体を発現している細胞までアンチセンスオリゴヌクレオチドsiRNAまたはリボザイム核酸を容易に運搬することができる任意の媒体である。好ましくは、ベクターは、ベクターが消失する分解の程度よりも低い分解で核酸を細胞まで運搬する。一般に、本発明において有用なベクターとしては、プラスミド、ファージミド、ウイルスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドsiRNAもしくはリボザイム核酸配列の挿入または組み込みによって操作されたウイルス源もしくは細菌源由来の他の媒体が挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスベクターは好ましい種類のベクターであり、レトロウイルス(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス、ハーベイマウス肉腫ウイルス、マウス乳癌ウイルスおよびラウス肉腫ウイルス)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40型ウイルス、ポリオーマウイルス、エプスタインバーウイルス、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、およびレトロウイルスなどのRNAウイルスからの核酸配列が挙げられるが、これらに限定されない。列挙されていないが当該技術分野で知られている他のベクターも容易に用いることができる。
【0029】
好ましい実施態様では、NKCC共輸送体を阻害する化合物は利尿薬である。
【0030】
別の好ましい実施形態では、利尿薬はループ利尿薬である。
【0031】
好ましい実施形態では、本発明に係る化合物はNKCC1拮抗薬である。
【0032】
別の好ましい実施形態では、本発明に係る化合物はブメタニドである。
【0033】
好ましい実施形態では、本発明に係る化合物は、フロセミド、エタクリン酸、トルセミド、アゾセミド、ムゾリミン、ピレタニド、トリパミドなど、ベンドロフルメチアジド、ベンズチアジド、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、メチクロチアジド、ポリチアジド、トリクロルメチアジド、クロルタリドン、インダパミド、メトラゾンおよびキネタゾンなどのチアジドおよびチアジド様利尿薬ならびにそのような化合物の類似体および機能的な誘導体から選択される。
【0034】
好ましい実施形態では、本発明に係る類似体は、国際特許公開第2006110187号に記載されている式を有していてもよい。
【0035】
好ましい実施形態では、本発明に係る類似体は、ブメタニドアルデヒド、ブメタニドジベンジルアミド、ブメタニドジエチルアミド、ブメタニドモルホリノエチルエステル、ブメタニド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル、ブメタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル、ブメタニドジメチルグリコールアミドエステル、ブメタニドピバキセチルエステル、ブメタニドメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−i−エチルエステル、ブメタニドベンジルトリメチルアンモニウム塩およびブメタニドセチルトリメチルアンモニウム塩であってもよい。
【0036】
別の好ましい実施形態では、本発明に係る類似体は、フロセミドアルデヒド、フロセミドエチルエステル、フロセミドシアノメチルエステル、フロセミドベンジルエステル、フロセミドモルホリノエチルエステル、フロセミド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル、フロセミドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル、フロセミドジベンジルアミド、フロセミドベンジルトリメチルアンモニウム塩、フロセミドセチルトリメチルアンモニウム塩、フロセミドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル、フロセミドメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−i−エチルエステル、フロセミドピバキセチルエステルおよびフロセミドプロパキセチルエステルであってもよい。
【0037】
別の好ましい実施形態では、本発明に係る類似体は、ピレタニドアルデヒド、ピレタニドメチルエステル、ピレタニドシアノメチルエステル、ピレタニドベンジルエステル、ピレタニドモルホリノエチルエステル、ピレタニド3−(ジメチルアミノプロピル)エステル、ピレタニドN,N−ジエチルグリコールアミドエステル、ピレタニドジエチルアミド、ピレタニドジベンジルアミド、ピレタニドベンジルトリメチルアンモニウム塩、ピレタニドセチルトリメチルアンモニウム塩、ピレタニドN,N−ジメチルグリコールアミドエステル、ピレタニドメトキシ(ポリエチレンオキシ)n−i−エチルエステル、ピレタニドピバキセチルエステルおよび/またはピレタニドプロパキセチルエステルであってもよい。
【0038】
別の好ましい実施形態では、本発明に係る類似体は、テトラゾリル置換アゾセミド(例えば、メトキシメチルテトラゾリル置換アゾセミド、メチルチオメチルテトラゾリル置換アゾセミドおよびN−mPEG350−テトラゾリル置換アゾセミド)、アゾセミドベンジルトリメチルアンモニウム塩および/またはアゾセミドセチルトリメチルアンモニウム塩であってもよい。
【0039】
別の好ましい実施形態では、本発明に係る類似体は、ピリジン置換トルセミド第四級アンモニウム塩または対応する内塩(双性イオン)であってもよい。例としては、メトキシメチルピリジニウムトルセミド塩、メチルチオメチルピリジニウムトルセミド塩およびN−mPEG350−ピリジニウムトルセミド塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
好ましい実施形態では、本発明に係る化合物はKCC2作動薬である。
【0041】
好ましい実施形態では、本発明に係る化合物は、細胞表面のNKCCタンパク質濃度を抑制するか細胞表面のKCCタンパク質濃度を高める化合物である。
【0042】
別の好ましい実施形態では、当該細胞は神経細胞である。
【0043】
本発明の別の目的は、それを必要としている対象に神経細胞内への塩素イオンの流入を阻害する化合物または神経細胞からの塩素イオンの流出を改善する化合物を投与することを含む、自閉症の治療方法に関する。
【0044】
一態様では、本発明は、それを必要としている対象に上記NKCC拮抗薬を投与することを含む、自閉症の治療方法に関する。
【0045】
本発明の化合物を、以下に定義されている医薬組成物の形態で投与してもよい。
【0046】
好ましくは、神経細胞内への塩素イオンの流入を阻害するか神経細胞からの塩素イオンの流出を改善する前記化合物、好ましくは前記NKCC拮抗薬または前記KCC作動薬を、治療的有効量で投与する。
【0047】
「治療的有効量」とは、先に記載した疾患を治療および/または予防するのに十分な化合物の量を意味する。
【0048】
当然のことながら、本発明の化合物および組成物の1日の総使用量は、適切な医学的判断の範囲内で主治医によって決定される。任意の特定の患者のための具体的な治療的有効投与量は、治療中の障害および障害の重症度、用いられる具体的な化合物の活性、用いられる具体的な組成物、患者の年齢、体重、健康状態、性別および食事、投与時間、投与経路および用いられる具体的な化合物の排出率、治療の持続時間、用いられる具体的なポリペプチドと併用または同時使用される薬物、ならびに医療業界でよく知られている同様の要因などの様々な要因によって決まる。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要とされる投与量よりも低量で本化合物の投与を開始し、所望の効果が達成されるまで、徐々に投与量を増加させることは当該技術分野の技術の範囲に十分に含まれている。但し、本製品の1日投与量は、成人1人当たり1日0.01〜1,000mgの広範囲にわたって異なってもよい。好ましくは、本組成物は、治療される患者に対する投与量の対症調整(symptomatic adjustment)のために、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250および500mgの有効成分を含有する。本薬剤は典型的に、約0.01mg〜約500mgの有効成分、好ましくは1mg〜約100mgの有効成分を含有する。薬物の有効量は、通常1日当たり体重の0.0002mg/kg〜約20mg/kgの投与量、特に1日当たり体重の約0.001mg/kg〜7mg/kgで投与される。
【0049】
本発明に係る化合物は、自閉症の治療で使用される医薬組成物の調製のために使用してもよい。
【0050】
従って、本発明は、有効投与量のNKCC共輸送体を阻害する化合物、好ましくはNKCC拮抗薬または本発明に係るKCC共輸送体を活性化させる化合物を含む医薬組成物も提供する。
【0051】
本発明の任意の治療薬を薬学的に許容される賦形剤および任意に生分解性ポリマーなどの徐放性マトリックスと組み合わせて、治療用組成物を形成してもよい。
【0052】
「薬学的に」または「薬学的に許容される」とは、適当であれば哺乳類(特にヒト)に投与された場合に、有害なアレルギ−または他の不都合な反応を引き起こさない分子的実体および組成物を指す。薬学的に許容される担体または賦形剤とは、非毒性の固体、半固体もしくは液体充填剤、希釈液、封入材または任意の種類の製剤補助剤を指す。
【0053】
医薬組成物の形態、投与経路、投与量および投与計画は、当然のことながら、治療される疾患、疾患の重症度、患者の年齢、体重および性別などによって異なる。
【0054】
本発明の医薬組成物は、局所、口腔、鼻腔内、非経口、眼内、静脈内、筋肉内または皮下投与などのために製剤化することができる。
【0055】
好ましくは、本医薬組成物は、注射可能な製剤用の薬学的に許容される媒体を含有する。このような媒体は、特に等張かつ無菌の食塩水(リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムなどとそのような塩の混合物)、または、場合に応じて滅菌水または生理食塩水を添加するとすぐに注射溶液の構成が可能となる乾燥した、特に冷凍乾燥した組成物であってもよい。
【0056】
投与に使用される投与量は、各種パラメータの関数として、特に使用される投与様式、関連する病態の関数として、または代わりとして所望の治療持続時間の関数として構成することができる。
【0057】
さらに、他の薬学的に許容される形態としては、例えば経口投与のための錠剤または他の固体、徐放性カプセルおよび現在使用することができる任意の他の形態が挙げられる。
【0058】
また、本発明に係る医薬組成物は、生物学的に活性または不活性の他の化合物を含有していてもよい。例えば、治療薬の組み合わせにおいて、本発明の1種以上の治療薬を、別の薬剤と組み合わせ、本発明の治療投与計画に従って投与してもよい。そのような組み合わせ薬剤は、別々の組成物として投与しても、相補的な送達システムでの送達のために組み合わせてもよく、あるいは、組み合わせた組成物、例えば混合物または融合化合物として製剤化してもよい。さらに、上記治療薬の組み合わせは、BBB浸透促進剤および/または高浸透圧剤を含んでいてもよい。
【0059】
あるいは、NKCC共輸送体を阻害するかKCC共輸送体を活性化する本発明の化合物を、後述するスクリーニング法によってさらに同定することができる。
【0060】
(スクリーニング法)
本発明の別の目的は、NKCC共輸送体を阻害するかKCC共輸送体を活性化する化合物のスクリーニング法に関する。
【0061】
特に、本発明は、自閉症の治療のためのNKCC拮抗薬またはKCC作動薬のスクリーニング法を提供する。
【0062】
例えば、スクリーニング法は、候補化合物に直接または間接的に関連づけられた標識によって、NKCCもしくはKCCに対する、NKCCもしくはKCCを担持している細胞もしくは膜に対する、あるいはそれらの融合タンパク質に対する候補化合物の結合を測定してもよい。あるいは、スクリーニング法では、標識した競合物質(例えば、拮抗薬)との受容体に対する候補化合物の結合の競合を測定しても、定性的もしくは定量的に検出してもよい。
【0063】
さらに、スクリーニング法では、受容体を担持している細胞にとって適当な検出システムを用いて、本候補化合物により、NKCC拮抗薬またはKCC作動薬によって生成される信号を生じるか否かを試験してもよい。
【0064】
特定の実施形態では、本発明のスクリーニング法は、
a)その表面にNKCCまたはKCCを発現している神経細胞を用意する工程、
b)前記細胞を候補化合物と共にインキュベートする工程、
c)前記候補化合物がNKCCに結合して阻害するか否かまたはKCCに結合して活性化するか否かを決定する工程、および
d)NKCCに結合して阻害するかKCCに結合して活性化する候補化合物を選択する工程、
とからなる工程を含む。
【0065】
一実施形態では、スクリーニング法で使用されるNKCC共輸送体またはKCC共輸送体は、本発明に定義されているその相同分子種および誘導体であってもよい。
【0066】
一般に、そのようなスクリーニング法は、その表面に、NKCCもしくはKCCまたはそれらの相同分子種および誘導体を発現する適当な細胞を用意する工程を伴う。特に、NKCCまたはKCCをコードする核酸を用いて細胞を形質移入し、それにより本発明の受容体を発現させてもよい。そのような形質移入は、当該技術分野でよく知られている方法によって達成してもよい。
【0067】
特定の実施形態では、細胞は、グリア細胞、ノイロン細胞、神経細胞、調査用に形質移入された細胞系、または任意の生物種(マウス、ヒト…)の腎細胞からなる群から選択される。
【0068】
そのような細胞をスクリーニングされる化合物に接触させ、そのような化合物が共輸送体を阻害または活性化するか否かを決定することによって拮抗薬または作動薬を決定するために本発明のスクリーニング法を用いてもよい。
【0069】
細胞生存率を決定することによってNKCCの阻害を評価することができる。細胞救援活性の例として以下に記載されている方法のいずれか1つで陰性である場合、化合物は細胞生存率を減少させるとみなされる。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、本候補化合物は、以前に合成された化合物のライブラリ、データベース上に構造が決定されている化合物のライブラリ、あるいは新しく合成された化合物または天然化合物のライブラリから選択してもよい。
【0071】
本候補化合物を、(a)タンパク質またはペプチド、(b)核酸および(c)有機もしくは化学化合物(天然または非天然)の群から選択してもよい。例示として、米国特許第5,475,096号および第5,270,163号に記載されているSELEX法を行うことによって、事前に選択した候補核酸のライブラリを得てもよい。さらなる例示として、本候補化合物を、NKCCまたはKCCに対する抗体の群から選択してもよい。
【0072】
そのような方法を使用して、本発明に係るNKCC拮抗薬またはKCC作動薬をスクリーニングしてもよい。
【0073】
以下の表および実施例によって本発明をさらに例示する。但し、これらの実施例および図は決して本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【実施例】
【0076】
(材料および方法)
本発明者らは、5人の自閉症児において、臨床的および生物学的監視を行いながら、Bumの効果を調査した。様々な症例を得るために、施設または自宅にいるIAS小児の大集団からアプリオリなしに、これらの自閉症児を選択した。本利尿剤を投与し(1mg/24時間、0.5mgを1日に2回)、治療を3ヶ月間継続した。この期間は、IASに対する効果の評価にとって十分だとみなされた最短持続期間であった。本発明者らは、5人の小児におけるIAS兆候の有意な改善を報告する。これらの観察は、IASにおけるBumの使用の広範囲なスクリーニングを必要とする。
【0077】
自閉性障害の厳しいICD−10(OMS1993)基準を用いて、経験豊富な臨床精神科医によって小児を診断した。これらの小児は、神経系疾患の病歴を有していなかった(正常なEEG)。体系的に行った遺伝子検査は、識別可能な突然変異(核型および脆弱X)を示さず、陰性であった。すべての参加者のADI−R(Le Couteurら、1989年;Lordら、1994年)を回収して、診断を確認した。臨床的および生物学的検査から、小児の中にBumに対して反対の兆候(特に、血液イオノグラム、アミノ基転移酵素、アルカリホスファターゼ、尿毒症、クレアチン血症、クレアチニンクリアランス、γGT、血糖症など)を示すものはいないことが分かった。低カリウム血症によって突発性不整脈が誘発される可能性があるため、ECGを行って、不整脈を引き起こす傾向がより高い当該患者の中にQT延長を有しているものは誰もいないことを確認した。治療開始から1週間後および2ヶ月後の血中ナトリウムおよびカリウムを含む臨床的監視を、治療の開始後1、2および3ヵ月間にわたって毎週行った。小児の中に関連する神経障害に罹患したものは誰もおらず、少なくとも3ヶ月以降に他の治療を受けたものは誰もいなかった。
【0078】
可能な治療指数(有効性)を決定するために、本発明者らは、以下を含むIAS重症度の5つの古典的な行動決定法を利用した:
i)小児自閉症評定尺度(CARS)は、スクリーニング手法として、経時的な自閉症症状の変化を評価するために使用されている15項目の評定尺度である。これらの項目は、自閉症の広範囲な症状を含み、1〜4の尺度で評定し、1は正常な行動を示し、4は、重度に異常かつ/または不適当な行動を意味する。総評点は、15項目を加算することによって決定する。3以上の尺度を有する項目数は、症候群の重症度の強い指標であり、治療後の総評点および/または3以上の尺度を有する項目数の減少は、自閉的特徴の重症度の改善を示す(Rogersら、1993年)。この手法は診断プロセスを補助するために開発されたが、自閉的症状の発達変化にも影響されるため(Schoplerら、1980年;Mesibovら、1989年)、治療によって引き起こされる変化を測定するために使用することができる(Di LallaおよびRogers、1994年;B. Roge、1989年のフランス語版も参照)。小児にゲームをさせるセッションおよび先週の小児の行動に関する両親との活発な議論の間に記録を取った。
ii)ABC(異常行動チェックリスト)は、両親との議論の間に治療医師によって記入される質問表である(Amanら、1985年;RojahnおよびHelsel、1991年)。これは、行動に対する分子の影響を評価するために治験で広く使用されている。ABCは、0(全く生じない)から3(深刻)までの4つの尺度で項目を評価することができる行動チェックリストを用いた、58項目の標準化された問題点である。チェックリストの質問は、5つの下位尺度:被刺激性(ABC1)、社会的ひきこもり(ABC2)、常同症(ABC3)、活動亢進(ABC4)および過剰な発話(ABC5)を含む。ABCは米国では大規模に有効であり、小児集団の調査に適している。フランス語版を本調査で使用した(Bouvard、2000年)。
iii)臨床全般印象尺度(CGI)は、疾患の重症度を調査するために、大部分の治験で広く使用されている。これは、0〜7で評価され、1は正常値であり、患者の全般的な状況の良好な評価とみなされる。臨床医は、当該患者の調査に参加している他の患者との経験の関数として疾患の評価を提供することが求められる。第2の印象尺度によって、治験の開始と比較して、患者および回復の全般的な改善の評価が得られる。7つのレベルがあり、ゼロは進展がないことを示す。第3の印象尺度は、治療指数に関するものであり、治療効果と副作用の両方を示す単一の評価を必要とするため、最も有用である。これは、ほとんど副作用のない新世代精神病薬の研究に利用されている(Guy、1976年)。
iv)調節不全評価グリッド(RDEG)は、調節不全のレベルおよび小児の反応の遅さを検出することができるフランスの活動尺度(96)である(Adrien、1996年;Adrienら、2001年;Blancら、2005年)。質問表は両親によって記入され、先週の小児の行動に関するものである。
v)反復制限行動(RRB)尺度(Bourreauら、2009年)は、0(その行動がその人によって全く発現されない)から、4(その行動が深刻に発現され、その人の特徴である)までの5つの尺度で項目評価することができる35項目からなる標準化されたチェックリストである。要因解析によって、4つの臨床的に有意義な要因、すなわち、感覚運動の常同(F1)、変化に対する反応(F2)、制限された行動(F3)および調節不全(F4)が分かる。
【0079】
(結果)
患者の要約を表1に示す。3人の男児は機能的言語を使用したが、残りの男児および女児は機能的言語を使用しなかった。ADI−Rの評点は、臨床診断を確認する閾値を上回っている。小児1、3、5は、補助人の同行で伝統的な学校に通っている。その年の間、小児1に対して週に1回、小児2に対して週に3回、心理学者がABA手法を用いて小児1および小児2を追跡調査する。小児2に対しては、絵カード交換式コミュニケーションシステム(PECS)を利用した週2回の発声正常のセッションも行う。小児3に対しては発声正常の治療を毎週行い、小児5に対しては全く治療を行わない。小児4を精神的発達の遅い小児専門の医療施設で治療する。行動治療法および学校が中断される夏休みの間に、Bumの試験を行った。
【0080】
表2は、使用した異なる尺度の評点と3ヶ月の治療の前後で得られた評点を示す。治療前の4人の小児(1、2、3、4)のCARS評点は、深刻なIASを示す36超であった。小児5は、中程度の自閉症を示した。結果は、治療から3か月後に全小児のCARS、ABC、RDEGおよびRRBの総評点の改善を示している。CGI1は有意に変化しなかったが、この試験は、この段階で有意な変化を示さない疾患の重症度に関するものである。本発明者らは、5人の小児について、CGI2の僅かな全般的な回復も観察した。患者1、2および5は、CGI3で3の指数を有し、これは、副作用のない適度な作用を示していた。患者3および4は、2の指数を有し、これは副作用のない最小の作用を示していた。5人の小児において、CARSに関する3以上の尺度を有する項目数が治療によって減少した。ABC5の下位評点は、治療によって変化しなかった。5人の小児において、ABC2、ABC3、ABC4、RDEG(調節不全)、RDEG(遅さ)、RRB F4およびRRB F1は、可変的な程度まで改善した。対照的に、ABC1、RRB F2、RRB F3の結果は不均一である。
【0081】
治療から1週間後に開始し、毎月1回、脱水、起立性低血圧症、過敏症、痙攣、無力症、下痢、筋肉痛、関節痛、嘔気、眩暈の調査を含む臨床的監視を行った。ナトリウムおよびカリウムのレベルは安定なままだった(試験は、治療の開始から1週間後および2ヶ月後に行った)。副作用は全く認められなかった。
【0082】
(考察)
本結果は、ブメタニドがIASの行動的側面を改善することを示唆し、本利尿薬が全般的な作用を有することを示唆している。本発明者らの知識の及ぶ限りでは、これは、自閉症における塩素イオンの変化の可能性を高める最初の報告である。
【0083】
これらの観察から導き出される結果は、限定された数の症例によるランダム化二重盲検法およびプラセボ調査の欠如などのいくつかの制限によって妨げられている。プラセボ効果は、成人よりも小児においてよく見られ(Rheimsら、2008年)、これは自閉症にも当てはまる(Sandler、2005年)。明らかに、観察を確認または否定するためには広範囲の調査が必要である。本発明者らは、これらの制限のために、ブメタニドの好ましい効果の実証およびIASに対するその作用の関与には限界があることを認識している。それにも関わらず、本発明者らの観察から、ブメタニドは、利尿薬に対する一般的な耐性に伴う副作用がないことが分かる。また、本発明者らは、その結果に示唆されている劇的な行動回復および自分の子供がより存在感がある(present)という両親の主張ならびにBumの有意な作用を支持して治療を続行したいという両親の願望によって、これらの観察を提供すように促された。この主観的な概念を伝えることの難しさにも関わらず、存在感(presence)という同じ用語がすべての両親によって使用されたことを強調することは興味深い。
【0084】
現時点では、ブメタニドが総体的症状の一側面に対して選択的な作用を与えるか否かについて決定することはできない。発話については3ヶ月で改善が生じる可能性が低いため、ABC5に対するブメタニドの効果の欠如(文脈から外れた不適切に過剰な発話)が予想される。対照的に、ほとんど全ての評点が可変的な程度まで改善され、これはブメタニドの一般作用を強調している。認知および情動行動の変化は、IASの基本的な特徴であり(Kanner、1943年;HillおよびFrith、2003年;Hill、2004年;BieberichおよびMorgan、2004年)、ブメタニドにより、より良好な認知制御が可能となるという事実は、おそらく、両親によって報告されている存在感の改善(improved presence)と相関しているはずである。ABCの下位尺度の結果は、警戒の状態および社会交流、常同的行動、および認知制御の概念にも一致する活動亢進の改善を示唆している。ブメタニドの薬力学については、ヒトの新生児で調査されており(Sullivanら、1996年;Lopez−Samblasら、1997年)、最近の報告では、ブメタニドによっててんかんの小児におけるてんかん発作の重症度が減少することが示唆されている(Kahleら、2009年)。広範囲にわたる実験的な調査では、ブメタニドにより、てんかん発作の重症度が減少することが示唆されている(KahleおよびStaley、2008年;Kahleら、2008年;Nardouら、2009年)。ブメタニドは、新生児のてんかん発作の新規治療薬として、現在調査されている(Eu FP7 NEMOプロジェクト)。
【0085】
本観察は、細胞内塩素イオンを減少させ、GABAの阻害作用を強化することによってブメタニドにより神経細胞の総合的プロセスの有効性が高められるという作業仮説に矛盾していない。これらの調査の基本的な概念フレームは、発達プログラムを順守することに失敗した神経細胞が、おそらく高い(Clおよび他の電気的および構築上の特性を含む未発達の特徴を維持するということである(Ben−Ari、2008年)。他の観察は、GABA作動性シグナルと自閉症との関連性を示唆している(Minshew、1997年;Hussman、2001年;Schmitzら、2005年)。また、いくつかの脳画像化観察により、自閉症では、特に、海馬、小脳および各種辺縁系構造におけるGABA/ベンゾジアゼピン受容体の有意な喪失が分かる(Garreauら、1993年;Oblakら、2009年;Guptillら、2007年;Blatt、2005年)。
【0086】
結論として、新興の一連の調査は、各種発達奇形に関連して塩素イオンが脳成熟の間に蓄積することを示唆している。本観察は、この蓄積を減少させ、かつGABAの阻害作用を復活させるように作用する従来の利尿薬が自閉症において有益な作用を与え得、GABA/(ClとIASとの関連性に関するより詳細な実験的かつ臨床的調査を必要としていることを示唆している。
【0087】
(参考文献)
本出願の全体にわたって、各種参考文献は、本発明が属する最先端技術について記載している。これらの参考文献の開示内容は、参照により本開示に組み込まれる。
【0088】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
自閉症の治療に使用される、神経細胞内への塩素イオンの流入を阻害する化合物または神経細胞からの塩素イオンの流出を改善する化合物。
【請求項2】
前記化合物は、NKCC共輸送体を阻害するかKCC共輸送体を活性化する、請求項1に記載化合物。
【請求項3】
前記化合物は、NKCC1拮抗薬である、請求項2に記載化合物。
【請求項4】
前記化合物は利尿薬である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物はブメタニドである、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物と薬学的に許容される担体とを含む、自閉症の治療に使用される医薬組成物。
【請求項7】
自閉症の治療用薬物のスクリーニング法であって、
a)その表面にNKCCまたはKCCを発現している神経細胞を用意する工程、
b)前記細胞を候補化合物と共にインキュベートする工程、
c)前記候補化合物がNKCCに結合して阻害するか否かまたはKCCに結合して活性化するか否かを決定する工程、および
d)NKCCに結合して阻害するかKCCに結合して活性化する前記候補化合を選択する工程、
からなる工程を含む方法。

【公表番号】特表2013−517251(P2013−517251A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548435(P2012−548435)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050394
【国際公開番号】WO2011/086126
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(511074305)インセルム(インスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ リシェルシェ メディカル) (5)
【出願人】(512183600)ユニバーシティ エクス‐マルセイユ (1)
【出願人】(512183611)
【Fターム(参考)】