説明

臭素化されたスチレンの重合体または樹脂の製造法

大気圧よりも高い圧力において臭素化反応混合物中のBK同時生成物(ここでHXはHBrまたはHCl、或いは両方)を保持するために、閉じた反応系でスチレン重合体を臭素化する。臭素化されたスチレン重合体および実質的にすべての生成したHX同時生成物を含む反応混合物は水性のクェンチング媒質中に放出することが好ましい。この方法で操作することにより、反応を終結させ、所望の臭素含量の臭素化されたスチレン重合体および実質的にすべてのHX同時生成物を同じ操作で捕捉し、工程の装置のコストを減少させ、反応混合物の処理を容易にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
共通に所有された米国特許第5,677,390号、第5,686,538号、第5,767,203号、第5,852,131号、第5,852,132号、第5,916,978号、第6,113,381号、第6,207,765号、第6,232,393号、第6,232,408号、第6,235,831号、第6,235,844号、第6,326,439号、および第6,521,714号には、臭素化されたポリスチレンを製造する従来公開された最良と考えられる方法、例えば従来公開されている臭素化されたスチレン重合体の中で、最良の性質をもった臭素化されたポリスチレンの製造法が記載されている。この点に関し本明細書および特許請求の範囲において使用される「臭素化されたスチレン重合体」および「臭素化されたポリスチレン」と言う言葉は、予め存在したスチレン重合体、例えばポリスチレンまたはスチレンと少なくとも1種の他のビニル芳香族単量体との共重合体を臭素化してつくられる臭素化された重合体を意味し、1種またはそれ以上の臭素化されたスチレン単量体をオリゴマー化または重合させてつくられるオリゴマーまたは重合体とは区別される。後者のオリゴマーまたは重合体の性質は典型的には多くの点において臭素化された重合体とはかなり異なっている。
【背景技術】
【0002】
上記の共通に所有された特許に記載されているポリスチレン重合体の製造法には、臭素化反応器の上部空間の蒸気を洗浄器に通すことにより、該上部空間に通常見出だされる同時生成物のHBrを除去した後、望ましい程度まで臭素化を行うために臭素化反応混合物に対し或る一定の蒸解期間を与え、次いで適当な水性媒質を用いて臭素化を終結させることが望ましいと記載されている。同時生成物であるHBrは、HBrとして使用するか、或いは例えば臭素自身のような他の工業的に望ましい生成物に変換するような価値をもっているから、上記のような操作は経済的に重要性をもっている。臭素化剤として塩化臭素が使用される場合には、同時生成物としてHClが生じる。
【0003】
このような従来法の技術は優れてはいるが、新しい改良、特に工程を実施する方法に関する改良は常に歓迎されるところである。本発明はこのような少なくとも一つの改良を与えると考えられる。
【発明の開示】
【0004】
本発明の簡単な要約
本発明によれば、スチレン重合体の臭素化反応混合物から極めて効率的な方法で有用な臭素分を回収することができる。また本発明によれば、臭素化反応器から放出されるHXガスを洗滌してHXガスが環境の中に入って行かないようにし、且つ工場施設において典型的に使用されるこのようなガスから生じる有機溶媒を吸収させるための装置を取り除くことにより、工程全体を実施するのに必要な設備投資が減少する。さらに、本発明の臭素化工程において生じる反応混合物は、対応する従来法のスチレン重合体の臭素化反応混合物に比べ容易に工場内で処理することができ、遥かに多くのHXが該反応混合物に対する余分な希釈剤として作用することができる。特許請求の範囲を含む本明細書において使用される場合、式HXはHBrまたはHCl,或いは両方を指すものとする。
【0005】
本発明の一具体化例に従えば、スチレン重合体を臭素化することにより臭素含量が少なくとも約50重量%、好ましくは少なくとも約60重量%、さらに好ましくは少なくとも約67重量%の臭素化されたスチレン重合体を製造する方法において、該方法は、大気圧よりも高い圧力下で液相反応混合物中で臭素化を行ない、この際該閉じた反応系からガス状のHX同時生成物が分離して且つ該反応混合物とは別に放出されることのないようにす
ることを特徴としている。換言すれば、本発明の具体化例はスチレン重合体を臭素化することにより臭素含量が少なくとも約50重量%、好ましくは少なくとも約60重量%、さらに好ましくは少なくとも約67重量%の臭素化されたスチレン重合体を製造する方法である。このような方法における改良は、ガス状のHX同時生成物が該閉じた反応系から分離して且つ該反応混合物とは別に放出されることがないように、大気圧よりも高い圧力下において液相反応混合物中で臭素化を行なう点である。
【0006】
本発明の上記具体化例(上記に述べた二つの形のいずれにおいても)によれば、
(A)臭素化反応器の内部において、閉じた反応系の中で行われるバッチ式の臭素化でつくられた反応混合物と共におよびその一部として実質的にすべての同時生成物HXを捕捉するか;或いは
(B)臭素化反応器の内部において、閉じた反応系の中で行われるスチレン重合体のバッチ式の臭素化が完了した後に存在する反応混合物と共におよびその一部として実質的にすべての同時生成物HXを除去するか;或いはまた、
(C)臭素化反応器の内部において行われるスチレン重合体の連続式の臭素化で生じる反応混合物と共におよびその一部として実質的にすべての同時生成物HXを除去することができる。
次に(A)、(B)および(C)の各々において臭素化されたスチレン重合体および同時生成物HXを分離し回収することができる。
【0007】
本発明の他の具体化例に従えば、臭素含量が少なくとも約50重量%、好ましくは少なくとも約60重量%、さらに好ましくは少なくとも約67重量%の臭素化されたスチレン重合体を製造する方法において、該方法は、ルイス酸の存在下において、且つ閉じた反応系の中において大気圧よりも高い圧力下でスチレン重合体を臭素化し、この際触媒がクェンチングされるまで反応区域の中または反応区域の外部において実質的にすべてのHX同時生成物を該閉じた反応系の中に保持することを特徴とする方法である。
【0008】
上記方法を実施する場合、典型的には水性クェンチング媒質の中で触媒をクェンチングする。好ましくは、得られる水性相に溶解したHXを臭素化されたスチレン重合体を含む有機相から分離する。HXがHBrの場合、(i)水性相に対して水蒸気抽出を行って水性相から残留有機溶媒を除去し、これによって使用または販売に適した臭化水素酸生成物をつくり;(ii)水性相においてHBrを元素状の臭素に変えるか;或いは(iii)HBrを水性金属塩基と反応させて使用または販売に適した金属臭化物の塩の溶液をつくることが好ましい。
【0009】
本発明のバッチ式臭素化法においては、臭素化されたスチレン重合体および実質的にすべての同時生成物のHXを含んで成る液体の反応混合物をそれらが生成した反応容器の中でクェンチングするか、或いは臭素化されたスチレン重合体および実質的にすべての同時生成物のHXを含んで成る液体の反応混合物をそれらが生成した反応容器から取り出し、別のクェンチング区域でクェンチングすることができる。この後者の場合には、臭素化されたスチレン重合体および同時生成物のHXを、それらが反応容器から別のクェンチング容器へと延びたパイプ、導管等の中を移送される際好ましくはこれを加圧下に拘束して保ち、クェンチング容器の中に含まれる液体のクェンチング媒質、好ましくは水性のクェンチング媒質の塊の内部に放出し、ガス状のHXが周囲へと逃げないようにする。
【0010】
同じ反応容器の中で臭素化およびクェンチングを逐次行うバッチ式方法に関連して「閉じた反応系」という言葉は、必要な成分(排気用の担体ガス、液体のクェンチング媒質などを含む)を臭素化反応容器の中へ運び込みまた該反応容器から運び出すパイプまたは導管を除き、該系が周囲から閉ざされていることを意味する。簡潔に述べれば、ガス状のHX同時生成物が系から逃げ出さず、十分な圧力下において反応容器の内部に拘束され、ク
ェンチングを行うまで実質的にすべてのHX同時生成物が反応混合物の内部に留まってその一部をなし、これによってHXが臭素化触媒の失活と同時にクェンチング媒質に捕捉されるように系が設計されている。この時HXがHBrの場合には臭素分は適当な形で回収され、HXがHClの場合には必要に応じHClは例えば塩酸として回収することができる。
【0011】
臭素化およびクェンチングが別の容器または区域で行われるべき或いは行われるバッチ法または連続法と関連して「閉じた反応系」という言葉は、必要な成分(使用する場合排気用の担体ガスなどを含む)を臭素化反応容器または区域の中へ運び込みまたはその中から運び出す、或いは触媒失活容器または区域の中へ運び込みまたはその中から運び出すパイプまたは導管を除き、該系が周囲から閉ざされていることを意味する。簡潔に述べれば、ガス状のHX同時生成物が系から逃げ出さず、十分な圧力下においては臭素化反応容器または区域から触媒失活容器または区域へと運ばれ、クェンチングを行うまで実質的にすべてのHX同時生成物が反応混合物の内部に留まってその一部をなし、これによって臭素化触媒の失活と同時にHXがクェンチング媒質に捕捉されるように系が設計されている。この時もHXがHBrの場合には臭素分は適当な形で回収され、HXがHClの場合には必要に応じHClは例えば塩酸として回収することができる。
【0012】
本発明方法を行うことにより、所望の臭素含量をもつ臭素化されたスチレン重合体および実質的にすべてのHX同時生成物は同じ操作(クェンチング)で捕捉され、工程装置のコストが減少し、反応混合物の処理が容易になる。
【0013】
本発明のこれらのおよび他の具体化例および特徴は下記の説明、添付図面、および添付特許請求の範囲からさらに明らかになるであろう。
【0014】
本発明のさらに詳細な説明
本発明の特徴の一つは、好ましくは本明細書の冒頭に述べた特許文献1に記載された方法を含む臭素化されたスチレン重合体を製造する任意の方法に本発明方法を適用し得るという事実である。
【0015】
即ち例えば、スチレン重合体を臭素化する方法は、(i)臭素化触媒を実質的に含まず、(ii)少なくとも1種の臭素化剤および1種のスチレン重合体からつくられた混合物を、触媒的な量の臭素化触媒に供給して反応混合物をつくることを含んで成り、これは米国特許第5,677,390号明細書に最初に記載された製造技術の例である。
【0016】
同様に、スチレン重合体を臭素化する方法は、臭素化剤を含んで成る第1の流れ、スチレン重合体を含んで成る第2の流れ、および臭素化触媒を含んで成る第3の流れを混合機に供給してこのような流れを緊密に混合することを含んで成る方法であることができ、これは米国特許第5,686,538号明細書に最初に記載された方法の例である。
【0017】
また、スチレン重合体を臭素化する方法は、ルイス酸触媒および溶媒量のブロモクロロメタンの存在下においてスチレン重合体を臭素化剤と接触させることを含んで成る方法であることができ、これは米国特許第5,767,203号明細書に最初に記載された方法の例である。
【0018】
本発明に従えば、米国特許第5,677,390号明細書;同第5,686,538号明細書;または同第5,767,203号明細書に記載された方法の各々においてこのような方法は、臭素化は典型的には最高約60psigの大気圧よりも高い圧力下において閉じた反応系において行われ、臭素化反応混合物中の実質的にすべてのHX同時生成物が保持され、臭素化されたスチレン重合体および実質的にすべての同時生成物のHXを含ん
で成る反応混合物を水性のクェンチング媒質でクェンチングすることにより反応を終結させるように改良が加えられている。クェンチングの際に生成する水性のクェンチング混合物の一部から臭素化されたスチレン重合体およびHX同時生成物を分離し回収することが好ましい。
【0019】
上記の方法に加え、本発明のさらに他の方法は、臭素化剤および臭素化触媒を含んで成る第1の流れ、およびスチレン重合体を含んで成る第2の流れを同時に反応区域に供給し;この際
(A)臭素化は閉じた反応系で行って大気圧よも高い圧力下において臭素化反応混合物中にHX同時生成物を保持し、
(B)臭素化されたスチレン重合体および実質的にすべてのHX同時生成物を含む反応混合物を水性クェンチング媒質中でクェンチングすることにより触媒を失活させる方法である。好ましくは、得られた水性相に溶解したHXを、臭素化されたスチレン重合体を含む有機相から分離する。HXがHBrである場合、(i)水性相に対して水蒸気抽出を行って水性相から残留有機溶媒を除去し、これによって使用または販売に適した臭化水素酸生成物をつくり;(ii)水性相においてHBrを元素状の臭素に変えるか;或いは(iii)HBrを水性の金属塩基と反応させて使用または販売に適した金属臭化物の塩の溶液をつくることが好ましい。
【0020】
本発明方法の各々において使用する大気圧よりも高い圧力は閉じた系の中で発生させた自発性圧力であることができる。しかし、反応器および/またはそれに付随した加圧装置の安全な操作限界の範囲内で大気圧よりも高い任意の圧力を使用することができる。
【0021】
HX同時生成物は本発明に使用されるハロゲン化された溶媒に可溶である。即ち本発明を実施する場合、HX同時生成物は溶液の中に存在する間に閉じた反応区域を通って運ばれ、事実上余分な希釈剤として作用し、これによって重合体溶液の粘度を減少させる。このような粘度の減少により少ない溶媒で操作できるか、或いは同じ量の溶媒を用い中程度の分子量のスチレン重合体を使用できる機会が与えられる。これに加えて、臭素化反応器から出るガス流からHX同時生成物を洗滌して除去するための洗滌系に対する典型的な必要性がなくなる。このような洗滌系を具備し使用する代りに、触媒を失活させるのに使用される水性クェンチング系の内容物から一回の操作ですべてのHX同時生成物を回収することができる。その上、洗滌系に対する設置コストおよび洗滌系の維持に関わるコストをなくすことができる。
【0022】
本発明の他の特徴は、閉じた臭素化反応系の中で操作することにより臭素化反応の速度が減少し、その結果臭素化反応全体に亙り反応混合物と共にHX同時生成物が残留すると考えられるにも拘わらず、すべての実用的な目的に対してはあたかも臭素化が大気圧下で行われたように臭素化反応速度は速いことが見出だされた。
【0023】
必要に応じ臭素化反応区域への供給流を脱ガスし、捕捉されている可能性がある溶解した大気中のガスを除去することができる。この方法により使用される臭素化反応系の圧力限界を超える可能性は最低限度に抑制される。
【0024】
本発明により臭素化されるスチレン重合体はビニル芳香族単量体、即ち不飽和部分と芳香族部分とを有する単量体の単独重合体または共重合体である。好適なビニル芳香族単量体は下記式をもっている。
【0025】
C=CR−Ar
ここでRは水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、Arは炭素数6〜10の芳香族の基(種々のアルキルおよび環にハロゲンが置換した芳香族単位を含む)である。このよ
うなビニル芳香族単量体の例には、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン,p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルナフタレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、ビニルアントラセン、ジメチルスチレン、t−ブチルスチレン、数種のクロロスチレン(例えばモノ−およびジクロロ異性体)、数種のブロモスチレン(例えばモノ−、ジブロモ−およびトリブロモ−異性体)がある。現在ではポリスチレンは好適な重合体であり、臭素化されるスチレン重合体が2種またはそれ以上のビニル芳香族単量体の共重合体である場合には、スチレンが単量体の一つであってスチレンは共重合可能なビニル芳香族単量体の少なくとも50重量%を含んで成っていることが好ましい。
【0026】
本発明により臭素化されるスチレン重合体はスチレンの重合に使用されるものと同等な塊状、溶液、懸濁または乳化重合法によって容易に製造される。重合はフリーラジカル、陽イオン性または陰イオン性重合開始剤、例えば過酸化ジ−t−ブチル、アゾビス(イソブチロニトリル)、過酸化ジベンゾイル、過安息香酸t−ブチル、過酸化ジクミル、過硫酸カリウム、三塩化アルミニウム、三フッ化硼素、エーテル錯体(etherate complex)、四塩化チタン、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、クミルカリウム、1,3−トリリチオシクロヘキサンなどを存在させて行うことができる。単独で或いはスチレンと共重合可能な1種またはそれ以上の単量体を存在させて行うスチレンの重合は公知であり、この重合法に関してこれ以上説明することは不必要であると考える。フリーラジカル重合法でつくられたGPC分子量が少なくとも1,000、好ましくは少なくとも50,000,最も好ましくは150,000〜500,000のスチレン重合体は本発明に従って臭素化される。GPC数平均分子量が2000〜30,000、好ましくは2000〜10,000、さらに好ましくは3000〜7000の範囲にある陰イオン性スチレン重合体(即ち陰イオン性重合開始剤を用いてつくられたスチレン重合体)は本発明に使用されるスチレン重合体の他の好適なタイプをなしている。これらの分子量の範囲外にあるスチレン重合体も本発明に従って臭素化することができるが、典型的にはそうすることによっても経済的な利点は得られない。
【0027】
本発明方法に使用される触媒は、その触媒が高品質の臭素化されたポリスチレン製品を効率的且つ安全に製造することを妨げない限り任意の臭素化触媒であることができる。有利な触媒はルイス酸触媒であり、典型的にはA1C1、FeCl、AlBr、FeBr、SbCl、ZrCl等によって示される。Fe、AlおよびSbはこれらを反応系に加えるだけでルイス酸触媒をつくるのに用いることができる。触媒の混合物も使用することができる。ひとたび触媒を反応系に加えると、触媒は触媒活性を著しく失うことなく或る反応を行うことができる。例えばA1C1は若干A1Brに変化する。もっと好適な触媒はアルミニウムおよび鉄をベースにした触媒である。これらの中でさらに好適なものはアルミニウムおよび鉄のハロゲン化物、特に臭化物および塩化物であり、例えばA1C1およびA1Brは極めて好適である。臭素化剤として臭素(Br)を使用する場合、触媒として最も好適なものはA1BrまたはFeBrのような臭化物であり、これらは芳香族の臭素化に優れた活性を示し、無水のHBr同時生成物流を汚染しその高い含有量を減少させる可能性があるHClの発生源になることはない。また固体のAlCl(臭素に不溶な物質)およびガス状のHBrを温かい(40°〜50℃)液体臭素中で一緒にすることによってつくられる触媒溶液も極めて好適である。迅速なハロゲン交換のために可溶なハロゲン化ブロモアルミニウム触媒およびHClが生じ、この触媒はHClが存在してもしなくても使用することができる。この種の触媒を使用する利点は、活性をもった臭素化用の化学種(ブロミニウムイオンBrであると考えられている)が予め生じ、従って非常に迅速に且つ高い選択性をもってスチレン重合体の臭素化が始まることである。AlBrが臭素に直接付加してもこの好適な予めつくられる臭素化化学種の溶液が生じる。
【0028】
触媒は、要求される触媒効果が得られるのに十分な量で使用される。これらの触媒の量は触媒の活性に依存するが、一般的に臭素化されるスチレン重合体の重量に関し0.2〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%の範囲に入っている。活性が最も高い触媒は少量で使用され、活性が低い触媒は多量で使用されるであろう。好適なアルミニウムおよび鉄をベースにした触媒に対しては、0.5〜5重量%の範囲内の量で使用される。AlClおよびFeClは0.2〜10重量%の範囲内の量で使用される。AlCl、AlBr,或いは上記のような温かい液体臭素の中で固体のAlClとガス状のHBrとからつくられた触媒溶液を触媒として使用する場合には、0.5〜3重量%の範囲内の量が好適である。
【0029】
本発明方法に有用な臭素化剤は、重合体の芳香族の基(以後スチレン単量体単位とも言う)の芳香族炭素原子を臭素化し得る任意のものであることができる。当業界においてはBrおよびBrClは良好な臭素化剤であることが認められており、前者の方がいっそう好適である。臭素は市販品として二原子分子の形で得ることができ、或いはHBrの酸化により発生させることができる。Brは液体またはガスのいずれかの形で供給することができる。この方法に使用される臭素化剤の量は、全臭素化剤対供給される全スチレン重合体の全体的なモル比が重合体中のスチレン単量体単位当たり1〜3個の臭素置換基を与えるような量でなければならない。一般に、本発明の臭素化されたスチレン重合体製品は臭素化された重合体の全量に関し少なくとも30重量%の臭素を含んでいることが望ましい。好ましくは臭素化された重合体は約50重量%以上、最も好ましくは約60重量%以上の臭素を含んでいる。特定のスチレン重合体に対しては、この方法に使用される臭素化剤の量は、選ばれた工程パラメータを用いて得られる最高の臭素含量を考慮した望ましい臭素含量によって決定されるであろう。大部分の臭素化剤ではもっと多い臭素含量を必要とする。臭素化が3個の臭素置換に近づくにつれて、多くの臭素の置換が困難になることが指摘されている。この困難はさらに多量の臭素化剤を加えても必ずしも減少しない。しかし、臭素含量を最大にしようとするためには、臭素化剤を化学量論的に僅かに過剰に与えることが有用である。最高約2%の化学量論的な過剰量が好適である。要求される置換数当たり1モルのBrまたはBrClが必要であるから、化学量論的な量は容易に決定される。実際には実施者は重量基準で要求される臭素含量を決定し、理想的な基準で置換数を得るのに必要な臭素化剤のモル数を計算する。例えばスチレン重合体がポリスチレンであり、要求される臭素含量が68重量%である場合、所望の化学量論的な過剰量を除外して、スチレン単量体単位1個当たり少なくとも2.7モルの臭素またはBrClが必要である。臭素化されたポリスチレンに対しては、40〜70+重量%の臭素含量が望ましい。この範囲は臭素対スチレン単量体単位のモル比が0.9:1〜3.0:1の場合に理論的に得られる。 臭素化されたポリスチレンに対しては60〜70+重量%の臭素含量が好適である。これは臭素またはBrClに対する理論的モル比が1.9:1〜3.0:1の場合に得られる。本発明方法を用いれば、臭素化されたスチレン重合体の中で最高67〜69重量%、実際には最高70〜72重量%の臭素含量さえも容易に得られる。この方法において臭素化剤の量を決定する場合、供給混合物中の臭素化剤および該混合物を供給する前に予め加える臭素化剤の両方を計算する。上記に指摘したように、触媒に臭素化剤を前以て加える必要はなく、従ってこの方法における臭素化剤のすべての必要量は混合物を供給することにより与えられる。しかし、臭素化剤を予め反応器に加えておくことを選ぶこともできる。上記の説明は、臭素化剤とスチレン重合体との間の全体的な定量的関係の説明であるが、供給混合物中のこれらの二つの反応物の間の定量的関係はまだ十分には説明されていない。一般に供給する混合物は供給期間の任意の時点においてスチレン単量体単位1モル当たり1〜8モルの臭素化剤を含んでいるであろう。供給の際、この定量的関係は一定であることができ、或いは上記範囲内において変化させることができる。(工程の効率または製品の品質を著しく損なわない限り、上記範囲から或る程度逸脱することも本発明の範囲に入るものとする。)好適な範囲は供給混合物中のスチレン単量体単位1モル当たり、臭素化剤2.5〜5モルである。予測されるように、臭素化剤対スチレン単量体単位の選ばれた全体としてのモル比よりも臭素化剤対スチレン単量体単位のモル比が大きいかまたは小さい値を与えるような臭素化剤の量を供給混合物中において使用すると、混合物の成分として臭素化剤またはスチレン重合体のいずれかは他の成分がなくなる前に枯渇してしまう。例えば実施者が70重量%の臭素含量の臭素化されたポリスチレンをつくることを選び、臭素対スチレン単量体単位の全体としてのモル比を3.0:1にし、必要に応じ任意の過剰量を用いた場合には適切な結果が得られるであろう。臭素対スチレン単量体単位のモル比が1:1である供給混合物が生じるように選んだ場合には、必要とする臭素の全体的な量が得られる前に供給されるポリスチレンの量がなくなってしまうことがわかる。この場合には、実施者は先ず1;1混合物を使用し、次にポリスチレンの供給が枯渇した後に、適切な臭素の供給量を用いて操作を続ける。反対に、供給混合物中のモル比を5:1に選んだ場合には、臭素が先ず枯渇するので、ポリスチレンだけを用いて供給を終わらせなければならない。一般に、全体的なモル比と供給混合物のモル比とは少なくともほぼ同じにすることが好適である。しかしすべての場合において、最初の供給流においては臭素対スチレン単量体単位のモル比が少なくとも1:1になるようにすることが好ましい。
【0030】
本発明方法で使用される臭素は実質的に無水であること、即ち水を100ppm(重量基準)より少量しか含まず、また有機性の不純物、例えば油、グリース、カルボニル含有炭化水素、鉄等を10ppmより少量しか含んでいないことが好適である。市販品の臭素はこのような純度をもっているものが入手できる。しかし入手できない場合には、臭素対濃硫酸(94〜98%)を3:1の容積比で混合することにより、臭素の有機性不純物および水の含量を便利に減少させることができる。二相の混合物が生じるので、これを10〜16時間撹拌する。撹拌して沈降させた後、硫酸の相を不純物および水と共に臭素相から分離する。臭素の純度をさらに上昇させるためには、回収した臭素相を蒸溜することができる。
【0031】
上記のように、本発明方法は溶媒を使用することが好適である。溶媒はスチレン重合体供給原料および臭素化の程度が低い中間体を可溶化し、反応条件において工程に対し比較的不活性でなければならない。また溶媒は臭素化の程度が低いスチレン重合体に対し、また好適な場合には最終的な臭素化生成物に対し溶解性を示さなければならない。好適な溶媒は、臭素化触媒に対しても可溶であり、容易に分散または容易に懸濁するような溶媒である。ハロゲン化された溶媒が好適であり、その例には四塩化炭素、クロロフォルム、テトラクロロエタン、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロベンゼン、臭化メチレン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロジフルオロメタン、ブロモクロロメタン、およびこれらの混合物である。特に好適なものはブロモクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、臭化メチレン、および塩化メチレンである。溶媒とスチレン重合体との溶液をつくることにより、重合体は取り扱いが容易になり、臭素と混じり合う。本発明の溶液は5〜50重量%の重合体を含んでいることが好ましい。5〜30重合体を含む溶液が極めて好適である。
【0032】
臭素/スチレン重合体混合物が供給される臭素化触媒は液体と組み合わされ、触媒が溶液、スラリ、分散液または懸濁液の中に存在し得ることが好適である。このようにすれば反応物の混合および物質移動特性が増強される。必ずしも必要なことではないが、スチレン重合体溶液をつくるのに用いたのと同じ液体、即ち溶媒を使用することが便利である。即ち一つの好適な態様において本発明方法では、反応器の中でハロゲン化された溶媒および触媒の混合物をつくり、これにスチレン重合体/臭素化剤混合物を供給することができる。ハロゲン化された溶媒および触媒の混合物は懸濁液として最も良く記述される。一般に液体および触媒の全重量に関し95〜99.9重量%、好ましくは99〜99.8重量%の液体を使用することが適当であり、第2の好適な態様においては、反応区域に入れる際に触媒を臭素化剤中に溶解し懸濁させた後にスチレン重合体溶液と一緒にする。
【0033】
スチレン重合体を溶解するのに使用される溶媒および触媒と組み合わせて使用される液体は、好ましくは乾燥している。即ちこれらはその中に水を約200ppm(重量基準)以下、好ましくは約150ppm以下または100ppm以下しか含んでいない。水の存在は望ましくない。何故なら大量に存在すると触媒を望ましくない程度まで失活させるからである。或る理由のためにこの工程において大量の水が用いられ、脱水が実際的に行えない場合には、単に触媒の使用量を増加させることによりこの状況を克服することができる。本発明方法に対しては、米国特許第4,200,703号明細書に記載されているように交叉結合を避けるために水だけを使用することが特徴なのではなく、本発明によれば新規供給方法を含む方法によって交叉結合が最低限度に抑制される。
【0034】
発熱性の工程から生じる熱の負荷を工程の装置が取り扱い得る能力、HX同時生成物によって生じる圧力、および他の関与する工程を考慮し、スチレン重合体/臭素化剤混合物の供給流は迅速につくられなければならない。簡潔に述べれば、臨界的な工程パラメータの範囲を逸脱することなく装置によって許される最短の時間内で供給流を流すことができる。一般に、バッチ操作に対する供給期間は工業的な規模の工場に対して0.5〜10時間である。小規模のバッチ工程に対しては供給時間はこれよりも短いことが期待される。本発明の連続法に対する平均の滞在時間(即ち反応区域において臭素化が開始されてから触媒の失活を行うまでの間の時間)は典型的には20分より短く、好ましくは10分以下、さらに好ましくは5分以下である。
【0035】
本発明方法は−20°〜20°の範囲、好ましくは−10〜10℃の範囲、さらに好ましくは−5℃〜5℃の範囲の温度において行われる。臭素化、および好ましくは水性クェンチング媒質への移送は大気圧より高い圧力で行われる。水性クェンチング媒質への反応器の内容物の移送を開始する時或いは移送を行う際に、圧力を下げることあまり好適ではなく、HXを含むすべての反応器の内容物を例えば移送パイプまたは導管の内部に閉じ込め、臭素化において生じる実質的にすべてのHX同時生成物を閉じ込めた状態に保ち、クェンチング媒質へと移送して捕捉する。
【0036】
本発明の典型的なバッチ型の方法を実施するには、例えばAlClのような臭素化触媒を実質的に無水の溶媒に懸濁させて容易に撹拌できる懸濁液をつくる。この懸濁液を擦り合わせガラスの反応器に入れて撹拌し、温度を−5°〜10℃の範囲にする。この混合物を反応器の中で加圧された乾燥不活性雰囲気に保つ。スチレン重合体および溶媒、例えばブロモクロロメタンの溶液をつくり、臭素流と緊密に混合して均一の混合物をつくる。密封した加圧反応器の中で、冷却した混合物を撹拌した臭素化触媒懸濁液の中に供給する。スチレン重合体溶液および臭素化剤の緊密な混合はいくつかの方法で行うことができる。例えば溶液および臭素化剤を混合装置、例えば懸濁液の水面の下方の点まで延びた浸漬管の下端にある混合ノズルに供給することができる。この混合装置は溶液と臭素化剤を緊密に混合するように設計されている。またこの混合装置は供給点において緊密な混合物および触媒懸濁液に対し混合エネルギーを賦与する作用をする。スチレン重合体溶液と臭素化剤との緊密な混合物を得る他の方法は、インライン混合機、例えば衝突混合機を有する外部反応器のループを使用する方法である。一般に、外部反応器のループを使用することは、先ず反応器に臭素化触媒のスラリ、懸濁液等を装入し、次いで反応器から反応流を取り出し、これを反応器の外部にある混合機に供給することを含んでいる。また、少なくとも臭素およびスチレン重合体からつくられた混合物を混合機に供給し、混合機に対する二つの供給流からつくられた第2の混合物をつくる。この第2の混合物を次いで反応器へフィードバックする。反応器から取り出された反応流は最初は触媒を含んで成っている。第2の混合物を反応器へ供給し工程を動作させた後、取り出される反応流は触媒と共に臭素化されたポリスチレンを含み始める。臭素化工程に外部反応器のループを使用することは米国特許第5,677,390号明細書にさらに説明されている。
【0037】
スチレン重合体および/または臭素化用供給原料を供給する際、その場合に応じて反応器は低温、例えば0°〜−5℃、好ましくは−2°〜2℃に保たれる。
【0038】
予測できるように、臭素およびポリスチレン/溶媒溶液を供給する際、密封された加圧バッチ反応器の内容物の組成は変化する。最初反応器の内容物は触媒および溶媒を含んで成っている。工程が進行すると、反応器の内容物は臭素化されたポリスチレンを含み始めそれに富むようになる。蒸解期間中反応器に供給された最後のスチレン重合体の臭素化が起こる。混合を助けるために蒸解期間中反応器の内容物の取り出しを続けることができる。
【0039】
このようなバッチ型の操作において供給が完了した後、実質的にすべてのHX同時生成物を含む反応混合物を、5〜30分、好ましくは5〜15分の蒸解時間の間大気圧よりも高い圧力下において密封した反応器の中に保つ。蒸解温度は−10°〜10℃、好ましくは−5°〜5℃の範囲である。蒸解時間は反応器に供給された最後のスチレン重合体の臭素化を完了させる役目をする。蒸解期間の操作は反応器の中で行われることができる。
【0040】
スチレン重合体の臭素化は置換反応である。この反応で同時生成物のHXも生成する。本発明を実施する場合、この方法で生成するHXを反応器の内部に保持し、反応混合物と共に水性のクェンチング浴または区域に取り出す。乾燥した不活性ガス、例えば窒素を担体ガスとして使用してHX蒸気を反応器から水性のクェンチング浴に、或いは実質的にすべての蒸気性のHXを溶解するための水性噴霧器を備えたクェンチング区域に追い出すのに使用することができる。水性クェンチング浴またはクェンチング区域の中の噴霧は水酸化ナトリウムのような塩生成塩基を含むことができ、反応混合物中に捕捉されたHX、および蒸気の状態から追い出されたHXはアルカリ金属塩、典型的にはNaBrまたはNaClのような水溶性の塩に変えることができる。クェンチングには水だけを用い、少量の保持された臭素化溶媒を除去した後、使用または販売に適した臭化水素酸または塩化水素酸が生じるようにすることが好ましい。
【0041】
純水は好適な水性クェンチング媒質であるが、亜硫酸ナトリウムの溶液またはスラリ、および/または水酸化ナトリウムを使用して触媒を失活させ、残った臭素化剤を分解し、反応混合物のpHを調節することができる。このような処理を行った後、クェンチングされた反応混合物を沈降させ、溶質として臭素化されたスチレン重合体製品を含む有機相、および全体ではないとしても大部分のHX同時生成物を含む水性相を含んだ二相の反応混合物を得る。水性相をデカンテーションし、残った有機相をその溶媒成分から抽出する。有機相を沸騰水の中に圧入することによりこの抽出を行うことが最も便利である。溶媒をフラッシュ蒸発させると、臭素化されたスチレン重合体製品が沈澱として生じる。この沈澱は任意の固液分離法、例えば濾過、遠心分離等で回収することができる。次に回収された沈澱を乾燥する。HX同時生成物を含むクェンチングにより得られる水性相はバッチ法または連続操作のいずれかで生蒸気を用いて処理し、残留した臭素化溶媒を除去する。臭素(Br)を臭素化剤として用いる場合、水蒸気で抽出された水性溶液を次に臭素回収装置に送り、ここで臭素分を元素状の臭素として回収する。或いはクェンチングに純水を使用した場合には、この溶液は臭化水素酸としての使用または販売に適している。別法として、抽出された水性溶液を金属塩基で処理し、使用または販売するのに適した金属臭化物塩の溶液をつくることができる。
【0042】
本発明方法を典型的な連続法として行うためには、典型的には二つまたは三つの反応器成分の連続流を同時に供給する。この場合反応器または反応区域は筒状またはループ型の反応器であることが好ましく、典型的には反応器から得られる内容物を反応区域から連続的に取り出しし、クェンチング浴またはクェンチング区域に移送する。二つの連続的な供
給流を使用する場合、どの供給流も2秒よりも長い時間の間三つの成分、即ち(1)臭素化剤、(2)触媒、および(3)スチレン重合体(好ましくは溶媒中に溶解されている)をすべて含んでいることはないが、これらの三つの成分の内の二つを二つの供給流の一つの中に組み込むことによりこれらの三つの流れをすべてを供給する。このような場合、(3)がほぼ純粋な形で供給される時には、溶媒は臭素化剤または触媒と一緒に供給されるか、或いは溶媒からなる第3の供給流を使用しなければならない。3種の供給流を使用する場合には、(1)、(2)および(3)の各々を別々に供給することができるが、どの供給流もこれらの三つのすべてを数秒よりも長い時間の間含まない限り、これらの任意の一つの部分を(1),(2)および/または(3)の供給流と組み合わせることができる。これらすべてが組み合わされることが許容される場合は数秒以下の時間の間だけであるが、これは例えば3種の成分が注入器の中の小さい衝突混合室に入った後注入器から放出されるような場合に起こる。このような場合、衝突混合室の出口通路は反応区域の一部を構成している。
【0043】
必要に応じ成分(1)、(2)および/または(3)の多重供給流を使用することができる。
【0044】
図1の流れ図はスチレン重合体の連続的な臭素化を含む本発明の連続法(即ちリチウムアルキルのような陰イオン性重合開始剤を使用することによって生じるスチレン重合体の製造)に使用できる一つのタイプの模式図を示す。基本的には、このシステムはループ型の反応器40、HX同時生成物を含む反応混合物を反応器40を通して循環させるポンプ42、HX同時生成物を含む循環している反応混合物の一部を反応器40から受け取りこのような内容物をクェンチング容器(図示せず)に移送する取り出しライン44、注入器43および注入器45から成る二重注入システム、間接熱交換器46、および静止した混合機48から成っている。この図示された形では、熱交換器46は注入器43および45の上手、およびポンプ42の下手に配置され、ポンプ42の作用によって発生した熱、並びに発熱性の臭素化反応の熱を除去するようになっている。必要に応じ、熱交換器46は反応器40に対して適切な他の任意の位置に配置することができる。また2個以上のこのような熱交換器を反応器40に付随させて使用し、ループの周りの二つ以上の位置で熱を除去することができる。熱交換器46は適当な熱吸収用の液体、例えば冷却水および/または冷却用のエチレングリコールの流れを具備している。
【0045】
図示のように、注入器43および45は軸に対して相対して配置されている。図2の線図には示されていないが、注入器43および45のオリフィスは互いに間隔を置いて配置され、これらのそれぞれの注入器の内容物を直接お互いの方へ且つ互いに直角をなして、反応器40を通って流れるHX同時生成物を含む反応混合物の中に送る。このような配置は注入器から注入される内容物と反応器を通って流れる反応混合物との間で確実に非常に迅速な接触を起こさせる。それによって臭素化反応が極めて迅速に開始される。図示のように取り出しライン44は循環している反応物質の一部を反応器40から連続的に取り出す。取り出しライン44の内容物は典型的には触媒を迅速に失活させるクェンチング用の液を含む容器(図示せず)へと送られこの中に放出される。
【0046】
注入器43は適当な溶媒の中に陰イオン性スチレン重合体を含む溶液を受け取って放出し、他方注入器45は臭素のような臭素化剤、および三臭化アルミニウムのような触媒の混合物を受け取って放出する。必要に応じ、3個の注入器(図示せず)を反応器40の周りに配置し、その一つは陰イオン性スチレン重合体の溶液を注入し、他の一つは臭素化剤(溶媒または希釈剤を含むまたは含まない)を注入し、第3のものは触媒(溶媒または希釈剤を含むまたは含まない)を注入するために用い、3種の注入流の間で迅速に接触が起こり、スチレン重合体の臭素化が極めて迅速に行われるようにすることができる。このような3個の注入系においては、3個の注入器からの内容物が互いに迅速に、好ましくは数
秒程度の範囲で接触する限り、3個の注入器は互いに任意に配置することができる。このような3個の注入器の一例では、3個の注入器のそれぞれの軸が同じ面内にあり、反応器40の周りに半径方向に約120°の間隔を置いて配置されている。
【0047】
図2のシステムは典型的には大気圧より高い圧力下で操作される。従ってHX同時生成物は反応器40の内部に拘束されて反応混合物と共に残り、取り出しライン44を介して反応器から運び出され、反応混合物と一緒に水性のクェンチング媒質を含む容器の中に直接放出され、クェンチング媒質はHXを捕捉し、それが環境へと逃げ出すことを防いでいる。このようにして反応混合物がクェンチングされると同時に、実質的にすべてのHX同時生成物が捕捉される。これは工業的に望ましい形で両方の生成物を回収する一つの段階である。
【0048】
クェンチングの後における生成物の回収および処理は、クェンチングした反応生成物を沈降させ、臭素化された陰イオン性のスチレン重合体生成物を溶質として含む有機相、およびHX同時生成物を含む水性相を含有した二相の反応混合物を得ることによって行うことができる。水性相をデカンテーションし、残った有機相をその溶媒成分から抽出する。この抽出は有機相を沸騰水の中に圧入することによって行うことが最も便利である。溶媒をフラッシュ蒸発させると、臭素化されたスチレン重合体生成物は沈澱を生じる。任意の固液分離法、例えば濾過、遠心分離法等でこの沈澱を回収することができる。次に回収された沈澱を洗滌して得た生成物を典型的には約110〜約150℃の範囲の温度で乾燥する。
【0049】
クェンチングから得られる水性相はバッチ法または連続操作のいずれかで生蒸気を用いて処理し、残留した臭素化溶媒を除去する。HXがHBRである場合、水蒸気で抽出された水性溶液を次に臭素回収装置に送り、ここで臭素分を元素状の臭素として回収するか、或いはクェンチングに純水を使用した場合には、この溶液は臭化水素酸として使用するか販売するのに適している。
【0050】
臭素化剤として臭素を使用し、20〜60psig、好ましくは約45psigの程度の高圧において図1のシステムで操作を行う場合、生成したすべてのHBr同時生成物を液体の反応混合物の中に保持することができる。このことは、システム全体とは別のHBr洗滌器の必要性をなくすばかりでなく、HBr中のすべての臭素分を反応混合物の水性クェンチング溶液から回収することができ、従ってこのような臭素分の回収を簡単にしそのコストを低下させる利点をもっている。さらに保持されたHBrは反応混合物に対し希釈効果をもち、これによって反応混合物の粘度が減少する。このような粘度の減少によって少ない溶媒を用いて臭素化工程を操作することができ、或いは同じ溶媒の量を用いる場合には適当に高い分子量の陰イオン性スチレン重合体を使用することができ、また或いは低価格の小型の熱交換器を使用することができる。
【0051】
本発明によってつくられた臭素化されたスチレン重合体は、種々の重合体材料、例えば熱可塑性および熱硬化性重合体材料および樹脂に対する燃焼遅延剤として使用することができる。本発明に従って燃焼遅延性を賦与し得る重合体の重量平均分子量は低分子量の重合体から非常に高い分子量の重合体まで広い範囲で変えることができる。本発明の臭素化されたスチレン重合体を用いて燃焼遅延性を賦与し得る種々の熱可塑性または熱硬化性重合体を製造する方法は当業界の専門家には公知である。このような事項に馴染みがない他の人々はこのような主題に関する文献を参照されたい。好ましくは本発明の臭素化された重合体は種々の熱可塑性重合体に対する燃焼遅延剤添加物として使用される。
【0052】
特許請求の範囲を含む本明細書の任意の場所に使用される言葉として、「連続的な」および「連続的に」と言う言葉は、参照される操作が通常時間的に中断されることなく進行
することを意味するが、但し該操作の定常的な条件を途絶することのない時間の間ならばそのような中断は許容されるものとする。中断が定常的な操作を途絶させるような時間に亙る場合、製品の捕集が再開される前に操作の定常状態が達成されなければならない。
【0053】
本明細書および特許請求の範囲の任意の場所において化学名または化学式により参照される成分は、それが単数または複数のいずれで参照されようとも、化学名または化学的なタイプによって参照される他の物質(例えば他の成分、溶媒、、その他)と接触する前に存在したものとして同定される。もし予備的な化学変化、転移および/または反応が存在したとしても、それが得られる混合物または溶液中で起こるかどうかは問題ではない。何故ならこのような変化、転移および/または反応は、このような記述に従って求められる条件下で特定の成分を一緒にした当然の結果であるからである。従って成分は所望の操作を行うかまたは所望の組成物をつくることに関連して一緒にされるべき成分として同定される。また、添付特許請求の範囲において物質、成分および/または構成成分は現在形で参照されている(「含んで成る」、「ある」等)が、これらの物質、成分、および/または構成成分はそれらが本発明の記述に従い1種またはそれ以上の他の物質、成分および/または構成成分と最初に接触、配合または混合される直前に存在したものとして参照される。従って、接触、配合または混合の操作が通常の化学の専門家により上記に従って行われた場合、このような過程中において物質、成分または構成成分がその本来の同一性を喪失するかもしれないという事実は実際上全く問題にならない。
【0054】
本明細書の任意の場所において参照されたそれぞれの特許または出版物は、参照によりその全文がそのまま本明細書に包含されるものとする。
【0055】
実際問題として本発明はかなりの変更を行い得るものとする。従って上記の記述は本発明を限定するものではなく、また本発明を上記に提出された特定の例に限定すると考えるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】臭素化されたスチレン重合体を製造するのに使用し得る本発明の臭素化法の模式的流れ図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン重合体を臭素化することにより臭素含量が少なくとも約50重量%の臭素化されたスチレン重合体を製造する方法において、該方法は閉じた反応系の中で大気圧よりも高い圧力下で液相の反応混合物中においてスチレン重合体を臭素化し、この際該閉じた反応系からガス状のHX同時生成物が分離して且つ該反応混合物とは別に放出されることのないようにすることを特徴とする方法。
【請求項2】
臭素化剤として臭素Brを使用して臭素化を行い、従って該HXはHBrであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
該臭素含量は少なくとも約60重量%であることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
該臭素含量は少なくとも約67重量%であることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
スチレン重合体を臭素化することにより臭素含量が少なくとも約50重量%の臭素化されたスチレン重合体を製造する方法において、該方法は大気圧よりも高い圧力下でルイス酸の臭素化触媒を存在させ、且つ実質的にすべてのHX同時生成物が反応混合物中に保持されるような閉じた反応系の中で、触媒が反応区域の中または反応区域の外側のいずれかにおいてクェンチングされるまでスチレン重合体を臭素化することを特徴とする方法。
【請求項6】
水性クェンチング媒質の中で触媒のクェンチングを行うことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
クェンチング中に生成する水性クェンチング混合物の少なくとも一部から臭素化されたスチレン重合体およびHXを分離して回収することを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
臭素化はスチレン重合体を可溶化する溶媒中において行われることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項9】
該溶媒は少なくとも1種の脂肪族ハロゲン化炭素および/またはハロゲン化炭化水素の溶媒を含んで成り、ここでハロゲン原子は塩素原子、臭素原子、またはその両方であることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
該溶媒はブロモクロロメタンを含んで成ることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
ルイス酸触媒はハロゲン原子が臭素、塩素、またはその両方であるハロゲン化アルミニウムであることを特徴とする請求項5〜10のいずれか一つに記載された方法。
【請求項12】
臭素化剤として臭素、塩化臭素、またはその両方を用いて臭素化を行うことを特徴とする請求項5〜10のいずれか一つに記載された方法。
【請求項13】
臭素化剤として臭素を使用することを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
スチレン重合体はフリーラジカル重合によりつくられたスチレン重合体であることを特徴とする請求項5〜10のいずれか一つに記載された方法。
【請求項15】
スチレン重合体はポリスチレンであることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
スチレン重合体は陰イオン重合によりつくられたスチレン重合体であることを特徴とす
る請求項5〜10のいずれか一つに記載された方法。
【請求項17】
スチレン重合体はポリスチレンであることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
(A)臭素化剤として臭素、塩化臭素、または両方を用いて臭素化を行い;
(B)臭素化はスチレン重合体を可溶化する溶媒中において行われ;
(C)クェンチングの際生成した水性クェンチング混合物の少なくとも一部から臭素化されたスチレン重合体およびHXを分離して回収することを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項19】
スチレン重合体はフリーラジカル重合または陰イオン重合によりつくられたスチレン重合体であることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
スチレン重合体はポリスチレンであることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
臭素化を行う際、(i)実質的に臭素化触媒を含まず、且つ(ii)少なくとも1種の臭素化剤とスチレン重合体とからつくられた混合物を、該閉じた反応系の中に含まれた触媒量の臭素化触媒に対し供給することを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項22】
臭素化剤を含んで成る第1の流れ、スチレン重合体を含んで成る第2の流れ、および臭素化触媒を含んで成る第3の流れを、該閉じ反応系の中に配置された混合機に供給し該流れを緊密に混合することを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項23】
臭素化剤および触媒を含んで成る第1の流れおよびスチレン重合体を含んで成る第2の流れを該閉じた反応系に供給することを特徴とする請求項5記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−521584(P2009−521584A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547722(P2008−547722)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/062299
【国際公開番号】WO2007/076355
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(594066006)アルベマール・コーポレーシヨン (155)
【Fターム(参考)】