説明

舗装体構造および舗装体の施工方法

【課題】夜間視認性、骨材飛散抵抗性およびすべり抵抗性のいずれもが優れた舗装体構造およびこれを得るための舗装体の施工方法を提供する。
【解決手段】舗装体構造は、ニート工法が適用された舗装体の表面に、再帰反射層を塗布したので、ニート工法による高いすべり抵抗性を維持でき、舗装体において広範に再帰反射性を付与するための塗料を適用可能となる。また、塗布された再帰反射層により、暗闇において車両の照明が入射光の方向に反射して優れた夜間視認性を有するとともに、接着性および粘性が付与されて骨材の飛散を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は舗装体構造に関し、特にニート工法が適用された舗装体にさらに適用して有効な技術である。
【背景技術】
【0002】
舗装体においては、カーブや交差点等の道路の危険箇所の明示や、ETCレーン等において車両の誘導をスムーズにするために、識別性舗装としてカラー骨材や着色塗料を用いてカラー舗装化することが知られている。
【0003】
また、光を入射方向と同じ方向に反射させる、いわゆる再帰反射性を付与する塗料(再帰反射性塗料等)が知られている(例えば特許文献1参照)。この再帰反射性塗料等は、その性質より、電柱、踏切、土木作業員の作業服等に、視認性を高めるために使用されている。さらには、同様の目的で、横断歩道等の路面標示にも再帰反射性を付与することがある。
【0004】
一方、高いすべり抵抗性が得られ安全性を向上させることができる工法として、ニート工法が知られている。このニート工法は、アスファルト舗装やコンクリート舗装の表面に、バインダーとしてエポキシ系やアクリル系樹脂等を塗布した後、エメリーやセラミック等の硬質骨材を固着させ凹凸面を形成する工法である。そして、骨材として天然ないしは着色によるカラー骨材を使用すれば、舗装面の視認性が向上するため、識別性舗装として多用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−303011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ニート工法において、単に舗装面をカラー化したのみでは、色彩は反射光により識別できるものであるため、天然のカラー骨材や骨材に使用する着色塗料のみでは、光量の少ない夜間には色彩が目立ちにくい。そのため、補助的にカラー化した箇所の照明を向上させたり、LED(Light Emitting Diode)を使用した舗装錨を設置する等の処置が必要となり、夜間の識別性舗装としての効果は小さかった。また、骨材のみでは、舗装体表面との接着力が弱い箇所が生じてしまい、骨材が飛散しやすい問題があった。
【0007】
一方、舗装体に再帰反射性を付与する塗料を塗布した場合、すべり抵抗性が著しく低下するため、安全性を確保する観点から適用箇所を最小限にする必要があった。そのため、舗装体に対する再帰反射性を付与する塗料の適用例としては、上述の横断歩道のような路面標示の一部程度と極めて限定されていた。また、舗装面のカラー化を考慮すれば、塗料の組成を選択することも望まれる。
【0008】
本発明の目的は、夜間視認性、骨材飛散抵抗性およびすべり抵抗性のいずれもが優れた舗装体構造およびこれを得るための舗装体の施工方法を提供することにある。
【0009】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0011】
代表的な実施の形態による舗装体構造は、ニート工法が適用された舗装体と、この舗装体に塗布された再帰反射層とを有する。
【0012】
また、代表的な実施の形態による舗装体の施工方法は、ニート工法が適用された舗装体の表面に、再帰反射性層を塗布する。
【0013】
なお、本発明において、再帰反射層とは再帰反射性を有する層を意味するものとする。
【発明の効果】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0015】
すなわち、ニート工法が適用された舗装体の表面に、再帰反射層を塗布したので、ニート工法による高いすべり抵抗性を維持でき、舗装体において広範に再帰反射性を付与する塗料を適用可能となる。また、塗布された再帰反射層により、輝度を向上させて優れた夜間視認性を付与することができるとともに、骨材の飛散を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)〜(d)は、再帰反射層を塗布する舗装体上の位置の例を示す図である。
【図2】再帰反射性の原理を説明する説明図である。
【図3】再帰反射性塗料と通常塗料との比較を示す写真である。
【図4】輝度の測定方法を説明する説明図である。
【図5】角度差と輝度との関係を示すグラフである。
【図6】ねじり試験による骨材飛散測定結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明の舗装体構造は、舗装体と再帰反射層とを有する。舗装体は、ニート工法が適用される。
【0018】
このニート工法を適用する舗装体としては、すべり止めやカラー舗装が望まれる場所であって、特に識別性舗装が要求される、例えば、一般道路、自動車専用道路、構内道路、自転車道、駐車場、飛行場、港湾施設等の道路が挙げられる。特に、本発明は再帰反射層を形成することから、夜間視認性が要求される道路に適用することが好ましい。具体的には、車両が通過する道路におけるカーブや交差点等の危険箇所、自動車専用道路のETC(Electronic Toll Collection System)レーンなどが好適に挙げられる。なお、舗装体は、コンクリート舗装およびアスファルト舗装のいずれを行ったものでもよい。
【0019】
ニート工法においては、舗装体表面に骨材が固着されるが、この固着する骨材としては、社団法人日本道路協会発行の「アスファルト舗装要綱」に記載されている舗装用の骨材であれば特に制限はなく、天然骨材、人工骨材、再生骨材いずれであってもよいが、すべり抵抗性に優れる観点からは、硬質骨材を使用することが好ましい。このような硬質骨材としては、例えば、エメリー等の天然石を破砕した骨材、フェロクロムスラグやセラミック等を破砕した人工骨材など高い摩耗性を有する骨材が好適に挙げられる。セラミックを破砕した人工骨材としては、焼成後に破砕する、いわゆる破砕品と、破砕後に焼成する、いわゆるバリカケ品とがあるが、破砕品の方が角張った形状をしており、高いすべり抵抗性を発揮し得るため、より好ましい。同様の理由から、天然石を破砕した骨材も好ましい。また、視認性を高めるには、カラー骨材を使用することが好ましい。カラー骨材は、舗装体の進行方向に沿って所定間隔で使用してもよいし、その進行方向に沿って連続的に使用してもよい。
【0020】
骨材を接着するためのバインダーとしては、通常のニート工法において使用されている樹脂であれば特に制限はなく、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂などが挙げられる。なお、ニート工法の施工条件としては、通常、樹脂舗装技術協会規格に準拠して行われる。
【0021】
再帰反射層を塗布(塗工)するための塗料としては、(a)バインダー(塗料を接着するもの)と、(b)ガラスビーズと、(c)マイカおよび着色アルミニウム粒子の少なくともいずれかと、(d)色素とを含む再帰反射性塗料が好適に使用できる。
【0022】
(a)成分のバインダーとしては、接着性に富み、透明な膜を形成し得る樹脂であれば特に制限はなく、水系、有機溶剤系、水および有機溶剤の混合溶媒系のいずれであってもよい。具体的には、アクリル系、ウレタン系、ビニル系、エポキシ系、シリコーン系、ポリエステル系、オレフィン系、ゴム系等のバインダーの他、ホットメルト樹脂が挙げられる。
【0023】
(b)成分のガラスビーズは、入射光を、ビーズ内で屈折させてビーズ球面に焦点を結ばせ、反射光となって再帰させるという働きを持っている。このため、ガラスビーズは、1.5〜2.5の屈折率を有することが好ましく、1.9〜2.3の屈折率を有することがより好ましい。ガラスビーズの屈折率が1.5未満であると、屈折率が低いため反射光の方向が大幅にずれて視認性が著しく低下するおそれがあり、2.5超であるときも、反射光の方向がずれて視認性が低下するおそれがある。
【0024】
(c)成分のマイカは、いわゆる雲母であり、薄板状の粒子である。マイカは、天然品および合成品のいずれであってもよいが、薄板状雲母粒子の表面を酸化チタンや酸化鉄等で被覆した合成品が好ましく、合成品の中でも酸化チタンを被覆したものがより好ましい。マイカの粒子は、層状構造を形成し、しかも、一部の光を反射しつつ一部の光を透過させるために、光の多重層反射を起こさせることができる。マイカを透過した光は、着色剤を含んでいる場合に下側色素で反射して着色される他、舗装体表面で反射して下地色に着色されることもある。
【0025】
(c)成分としては、カラーアルミニウム粒子も反射鏡となる粒子であり得る。カラーアルミニウム粒子は、粒子の表面を顔料等で着色した粒子であり、粒子本体表面で反射させた光を粒子本体表面に形成された着色層で着色する。また、反射性を高めるために、無色のアルミニウム粒子を配合してもよい。アルミニウム粒子を配合するときは、粉末状であってもよいが、ペースト状である方が他の材料に対する濡れ性が良く、均一な配合が得られやすい理由から好ましい。
【0026】
本発明において、再帰反射性塗料は、カラー骨材に代わってあるいはカラー骨材とともにカラー化による視認性を高める目的もあるので、(d)成分の色素を含むことが好ましい。
【0027】
(d)成分の色素を有する着色剤は、顔料および染料の少なくともいずれかであり、インキ組成物が溶媒を含む場合、その溶媒に溶解可能(水溶性または油溶性)であってもよく、溶解しないが分散可能(水分散性または油分散性)であってもよい。着色剤は、再帰反射光やマイカ透過光に有彩色を付けるためのものであり、その色に特に制限はないが、バインダーとの相溶性の良好なもの、または、バインダーへの分散性の良好なものが挙げられる。塗料に着色剤を配合した場合には、その色や配合量などに応じて、骨材の色、着色剤の色、またはそれらの合わさった色などを帯びたカラー再帰反射光が得られる。
【0028】
つづいて、各成分の粒子径について説明する。マイカの粒子径やカラーアルミニウム粒子の粒子径は、ガラスビーズの粒子径よりも相対的に小さいことが必要である。これは、塗料を舗装体に塗布するときにガラスビーズの大部分または全てが表面側に、マイカやカラーアルミニウム粒子の大部分または全てがその下側に位置するようにするためである。これらの位置関係が逆になると、反射光の再帰が起きにくくなり、反射光が弱くなる。同様の観点から、着色剤の色素粒子径もマイカの粒子径やカラーアルミニウム粒子の粒子径よりも相対的に小さいことが必要である。
【0029】
ガラスビーズとしては、例えば、粒子径20〜2,000μm、好ましくは粒子径20〜300μm、より好ましくは75〜110μmのビーズを用いる。また、マイカとしては、例えば、粒子径1〜150μm、好ましくは5〜60μm、より好ましくは20〜40μmのマイカを用い、アルミニウム粒子としては、例えば、粒子径80μm以下、好ましくは粒子径20μm以下のアルミニウム粒子を用いる。着色剤の粒子径は、非常に小さく、例えば、0.05〜3μmであり、好ましくは0.1〜1.0μmである。
【0030】
ガラスビーズの粒子径が20μm未満であると、マイカよりも小さいガラスビーズの割合が多くなるおそれがあるため、ガラスビーズの下側にマイカや着色剤が位置する構造の被膜が形成されにくくなり、反射光が弱くなって視認性が著しく劣るおそれがある。300μmを超えると、ガラスビーズ全体の表面積が極端に小さくなって反射光量が少なくなり、視認性が低下したり接着性能が低下するおそれがある。
【0031】
マイカの粒子径が1μm未満であると、急激に隠蔽力を増し着色剤の色光が得られにくくなったり、鏡としての面が小さすぎて光を反射する力が小さいため反射光が弱くなったりするおそれがあり、150μmを超えると、マイカよりも小さいガラスビーズの割合が多くなるため上述と同じ問題が生じるおそれがある。アルミニウム粒子の粒子径が80μmを超えると、アルミニウム粒子がガラスビーズの上に位置することがあり、反射光が得られなかったり、入射した光がアルミニウム表面ではねかえされて着色剤に到達しなかったりするので、反射光が弱い色光となるおそれがある。
【0032】
着色剤の色素粒子径が0.01μm未満であると、着色剤としての性能は良いが飛躍的に価格が高くなり、インキとしての実用性に沿わなくなるおそれがあり、10μmを超えると、マイカやアルミニウム粒子よりも大きい粒子径を有する着色剤が多くなるためマイカやアルミニウム粒子に到達する光を遮って反射光を弱くするおそれがある。
【0033】
以上説明した再帰反射性塗料は、いわゆるオールインタイプ(一液型)の塗料であるので、舗装体の表面にこれを塗布することにより再帰反射層を形成することができる。ただし、再帰反射層は、一液型の再帰反射性塗料に代えて、二液型の塗料を使用し、各成分を別々に層状に塗布(塗工)して形成してもよい。つまり、着色したマイカ入りの塗料を塗工し、その表面が乾く前にガラスビーズを散布して再帰反射層を形成することとしてもよい。
【0034】
ここで、舗装体はニート工法が適用されて表面に骨材が固着されているので、再帰反射層は、骨材を含めた舗装体表面に塗布されることとなる。再帰反射層の塗布方法としては、通常公知のコーティング方法を適宜選択すればよく、例えば、刷毛、スプレー、ローラ、塗装機等によるコーティングが挙げられる。なお、塗料の舗装体表面への散布量は、すべり抵抗性および輝度の両面、さらにはコスト面を考慮すると、0.2〜0.6kg/m程度が好ましい。
【0035】
再帰反射層を塗布する舗装体上の位置としては、例えば図1(a)に示すように、交差点等の舗装体10上の危険箇所の全面に再帰反射層11を塗布してもよいし、図1(b)に示すように、危険箇所の全体には通常のカラー骨材12を用いつつ、その中心部分のみに再帰反射層11を塗布することとしてコストの削減を図ってもよい。また、図1(c)に示すように、舗装体10がETCレーンである場合において、その全体は通常のカラー骨材12を用いつつ、ETCのある位置、つまり車両の進行すべき方向を指す表示を所定間隔で再帰反射層11により描いてもよい。なお、この場合においては、再帰反射層11による表示のみでカラー骨材は省略してもよいし、ETCレーン全体に再帰反射層11を塗布してもよい。さらに、図1(d)に示すように、カーブ等の危険箇所が近い位置において、舗装体10上の両側の所定域に再帰反射層11を塗布してもよい。なお、図1(a)〜(d)では、図面を見やすくするために、断面ではないが再帰反射層11およびカラー骨材12の部分にハッチングを付している。
【0036】
このように、本発明の舗装体構造は、ニート工法を適用した舗装体表面に再帰反射層を塗布したので、ニート工法による優れたすべり抵抗性を維持しつつ、再帰反射層により舗装体上の反射面が増大して輝度の向上を図ることができる。
【0037】
また、舗装体上に再帰反射性層を塗布したことにより、夜間等に車両の照明が当たると、識別舗装として高い機能を発揮できる。
【0038】
さらに、図2に示すように、再帰反射層11は、ガラスビーズ13により光の反射メカニズムが変更され、入射光14の方向に反射光15を反射させる再帰反射性が付与されるので、舗装体10上に凸凹10a、10bを形成しても視認性が低下することはない。さらに、再帰反射層を塗布したことにより、接着性および粘性が付与されて骨材の飛散を防ぎやすくなる。
【0039】
さらに、再帰反射層は、高屈折率のガラスビーズと、マイカやアルミニウム粒子(マイカ等)とを含むので、以下の理由からさらなる視認性の向上を図ることができる。
【0040】
つまり、横断歩道等の通常の路面標示に使用される塗料は、ガラスビーズを含むので再帰反射性は有するが、マイカ等が存在しないため反射光が弱くなっていた。また、使用するガラスビーズも屈折率が1.52程度と、本発明で使用される塗料より低いため、入射光がガラスビーズ内で集まりきらず、ガラスビーズを超えて粒子外で入射光が焦点を結んでしまう傾向があった。これにより、反射光が拡散しやすくなり、再帰反射率が10〜20%程度と低かった。
【0041】
一方、本発明の再帰反射層では、ガラスビーズとマイカ等とを含み、後者の粒子径が前者の粒子径より小さい塗料を使用しているので、より粒子径の小さいマイカ等はガラスビーズの下に必ず位置し、塗料中で反射光を有効活用するための鏡の役割を果たす。また、高屈折率(例えば実施例では1.92)のガラスビーズを含む塗料を使用しているので、入射光がガラスビーズ内の底面で焦点を結び、再帰反射率を90%程度まで向上させることができる。さらには、再帰反射せずにガラスビーズ外に拡散した光も、マイカ等により反射させることで視認性向上に寄与させることができるのである。
【0042】
さらに、本発明の再帰反射層に使用される塗料としては、オールインワンタイプの再帰反射性塗料が使用され得ることでも、二液型つまりオールインワンタイプではない通常の路面標示用塗料とは異なる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例によって、本発明をさらに説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されない。
(1)再帰反射性塗料と通常塗料との比較
密粒度アスファルトで舗装された自動車道用の舗装体表面に、ニート工法を樹脂舗装技術協会規格に準拠した施工条件に基づき適用し、エポキシ樹脂(日進化成株式会社製、2液エポキシ樹脂タイストップバインダ)を塗布した後、骨材として英国産の赤石砕石(日進化成式会社製、ニートレッド)を散布した。
【0044】
このニート工法を適用した舗装体の骨材を含めた表面上に、再帰反射性塗料として株式会社小松プロセス製のブライトコート(赤)(特開2000−303011号公報の実施例3のインキ組成物に相当)を、塗装機(アネスト岩田株式会社製、ダイアフラムエアレス塗装機)により散布量0.4kg/mとなるように塗工した。以上により、実施例1の舗装体構造を得た。
【0045】
また、再帰反射性塗料の代わりに通常のトップコート用塗料(日進化成株式会社製、カラーマックス(赤))を使用して0.2kg/mとなるように塗工した以外は同様にして比較例1の舗装体構造を得た。
【0046】
得られた各舗装体について、市販のフラッシュ機能付きカメラにて自然光による撮影と、フラッシュ撮影とをそれぞれ行った。結果を図3の写真に示す。
【0047】
図3に示したように、再帰反射性塗料を塗布した実施例1の舗装体構造は、通常塗料を塗布した比較例1の舗装体構造に比して、自然光で撮影した場合には殆ど遜色のない発光性を有し、フラッシュ撮影した場合にはフラッシュの光がカメラ方向に再帰反射されて高い輝度を有していた。
【0048】
(2)輝度およびすべり抵抗性の測定
上記(1)で作製した実施例1および比較例1の舗装構造体に加えて、実施例1の舗装構造体に比して、再帰反射性塗料を塗布しなかったことのみが異なる比較例2の舗装構造体と、ニート工法を適用しなかったことのみが異なる比較例3の舗装構造体とを、さらに得た。
【0049】
各舗装構造体について、以下の方法により、輝度およびすべり抵抗性を測定した。これらの結果は表1に示す。
【0050】
(a)輝度の測定
図4に示すように、舗装体構造の供試体から水平方向に250cm離れ、かつ高さ55cmの場所に設置されたライトより、供試体表面を170ルクスの明るさで照射した。また、供試体から水平方向に300cm離れた場所に、照射光の角度θと反射光の角度θ’との角度差φ(=θ’−θ)が2°となるように高さHを調節した輝度計を設置して、供試体からの反射光の輝度(cd/m)を測定した。
【0051】
(b)すべり抵抗値の測定
平成20年3月社団法人日本道路協会発行の「舗装性能評価方法 別冊−必要に応じ定める性能指標の評価法編−」193〜204ページに記載の方法により、振動式スキッドレジスタンステスタを用いて20℃におけるすべり抵抗値(BNP)を測定した。なお、この値が大きいほど、舗装体構造がすべりにくいことを示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1の結果から、実施例1の舗装体構造は、再帰反射性塗料を塗布しなかったことのみが異なる比較例2の舗装体構造と遜色のない高いすべり抵抗性を維持しつつ、通常のトップコートを塗布した比較例1の舗装体構造のみならず、ニート舗装を適用しない舗装体に再帰反射性塗料を塗布した比較例3の舗装体構造より高い輝度を有していた。これは、ニート舗装を適用した舗装体は、密粒度アスファルトより表面積が大きいため、輝度が上昇したと考えられる。
【0054】
(3)角度差における再帰反射性の確認
再帰反射は、光の入射方向に光を反射するため、光の入射角と視覚角度に差が大きい場合、再帰した光を確認できなくなる。そこで、実施例1と比較例1の舗装体構造で、図4に示した方法で輝度計の高さHを調節し、角度差φを変化させて輝度を測定した。結果を図5のグラフに示す。なお、図5のグラフ中、検討品は実施例1を、ニート舗装(トップコートあり)は比較例1を表わす。
【0055】
図5に示したように、比較例1の通常のトップコートを施した舗装体構造の輝度は5〜7cd/mと小さく、角度差φを変化させてもその変化は小さい。これに対し、再帰反射性塗料を施した実施例1の舗装体構造は、角度差φが5°以下で高い輝度を有し、比較例1の舗装体構造との輝度比が2以上となった。角度差5°は、車両のライトが照射している中心を15m先とした場合、ライトと運転手の目の位置との高低差が1.4m以下となるので、実施例1の舗装体構造は、普通乗用車やミニバンなどの車両であれば、暗闇においても識別しやすく、夜間視認性に優れることがわかった。また、盲人ブロックの輝度比(盲人ブロックとその周りの路面との輝度の差)は通常2以上が好ましいとされているが、比較例1の舗装体構造との比較で、これと同程度の輝度比であるので、このことからも識別性に優れることがわかった。
【0056】
(4)供用性の確認
ニート工法において固着された骨材の飛散が多いと、再帰反射性の効力を弱めるおそれがあるので、実施例1と比較例1の舗装体構造で、ねじり試験による骨材飛散性を調べた。ねじり試験は、平成20年3月社団法人日本道路協会発行の「舗装性能評価方法 別冊−必要に応じ定める性能指標の評価法編−」38〜53ページに記載の方法により、タイヤ旋回タイプBの装置を用いて、温度30℃、試験時間5分の試験条件で測定した。結果を図6の写真に示す。なお、図6は、骨材飛散箇所を白く、非飛散箇所を黒く画像処理し、その比を求めた結果である。
【0057】
図6に示したように、再帰反射性塗料を塗布した実施例1の舗装体構造は、通常のトップコートを塗布した比較例1の舗装体構造の約40%の値となり、骨材飛散抵抗性も向上していることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ニート工法が適用された舗装体に有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 舗装体
11 再帰反射層
12 カラー骨材
13 ガラスビーズ
14 入射光
15 反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニート工法が適用された舗装体と、この舗装体に塗布された再帰反射層とを有することを特徴とする舗装体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の舗装体構造において、前記再帰反射層は、(a)バインダーと、(b)ガラスビーズと、(c)マイカおよび着色アルミニウム粒子の少なくともいずれかと、(d)色素とを含み、前記(c)成分の粒子径が前記(b)成分の粒子径より相対的に小さく、前記(d)成分の粒子径が前記(c)成分の粒子径より相対的に小さいことを特徴とする舗装体構造。
【請求項3】
請求項2に記載の舗装体構造において、前記(b)成分の粒子径が20〜2000μmであり、前記(c)成分の粒子径が1〜150μmであり、前記(d)成分の粒子径が0.05〜3μmであることを特徴とする舗装体構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の舗装体構造において、前記ニート工法は、骨材として天然石を破砕した骨材および焼成後破砕した骨材の少なくともいずれかを用いたことを特徴とする舗装体構造。
【請求項5】
ニート工法が適用された舗装体の表面に、再帰反射層を塗布することを特徴とする舗装体の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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