説明

舗装構造

【課題】自然環境との調和性に優れた外観を有し、透水性と保水性とを兼備し、防カビ性、防苔性及び浄水性も備えた舗装構造を提供する。
【解決手段】土系骨材10と、セメント系固化材11と、防カビ性、防苔性及び浄水性を有する細菌類16をミキサ12に投入して充分に撹拌、混合した後、団粒化剤14を添加し、さらに撹拌、混練することによってスラリー状の混合物15を形成する。このような混合物15を路盤上に打設し、養生、固化させると舗装構造が完成する。この舗装構造は立体網目構造を備えているため、優れた透水性及び保水性を発揮し、土系骨材10を含むことにより、自然環境との調和性に優れた外観性を呈する。さらに、防カビ性、防苔性及び浄水性を有する微生物16を含むことにより、施工後も、長期間にわたって優れた防カビ性、防苔性及び浄水性を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透水性、保水性、防カビ性、防苔性及び浄水性などを備えた舗装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車道、歩道、公園内の通路あるいは駐車場などの舗装工事を行う場合、透水性及び保水性を備えた舗装構造の採用が増えているが、本願発明に関連する舗装技術として、特許文献1に記載の路盤施工法がある。この、路盤施工法の特徴は、ガラス粉末、フライアッシュセメント及び高分子化合物の混練物を路床に打設、固化させることによって路盤を形成することにある。
【0003】
【特許文献1】特開2002−146708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の路盤施工法により、透水性、保水性を備え、耐スリップ性が高く、耐久性にも優れた舗装面を形成することができるが、ガラス粉末及びフライアッシュセメントを主成分としているため、舗装面は無機質で冷たい印象があり、外観性に劣る。特に、自然環境との外観的調和が求められる場所に施工した場合、周囲の景色に馴染まず、違和感を与えることが多い。
【0005】
また、歩道などのように人間が歩く場所に敷設した場合、舗装面から視覚を通じて受ける印象によって歩く感触が左右されることが多いため、硬質で歩きにくいような感じを与えている。さらに、特許文献1記載の路盤施工法によって形成される舗装構造は、水分を長期間にわたって保持することがあるため、舗装面にカビが生えたり、苔が生えたりすることもある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、自然環境との調和性に優れた外観を有し、透水性、と保水性とを兼備し、防カビ性、防苔性及び浄水性も備えた舗装構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の舗装構造は、セメント系固化材、セメント、消石灰のうちの1以上と、土系骨材と、団粒化剤と、防カビ性、防苔性及び浄水性を有する微生物と、を含む混合物を路盤上に打設し、固化させて形成したことを特徴とする。
【0008】
このような構成とすれば、セメント系固化材、セメント、消石灰のうちの1以上と、土質骨材と、団粒化剤とを含む混合物中においては、団粒化剤に含まれるイオンの作用により、セメント系固化材、セメント、消石灰のうちの1以上と土系骨材の粒子とが立体網目構造を形成するため、連続した空隙が発生する。従って、これらの混合物を固化させることにより、透水性と保水性とをバランス良く兼備した舗装構造を得ることができる。また、土系骨材を含むことにより、舗装面は天然土に似た特有の外観、色調、質感を発現するため、自然環境との調和性にも優れている。
【0009】
また、本発明の舗装構造中には、防カビ性、防苔性及び浄水性を有する微生物が含まれているため、施工後も長期間にわたって防カビ作用及び防苔作用を発揮する。また、前記微生物の浄水性により、当該舗装構造中に保持される水分及び当該舗装構造を通過する水分を浄化(殺菌、滅菌)することができるため、当該舗装構造を通過して地下へ浸透する水分に起因する土壌汚染を防止することができる。従って、当該舗装構造の下方に地下貯水構造を構築すれば、当該舗装構造中の微生物によって浄化された清浄な水を貯留することができる。
【0010】
なお、本発明の舗装構造に含まれる土系骨材は舗装部分を一定形状に維持する主材料となり、団粒化剤は土系骨材とセメント系固化材の粒子を団粒化させ、立体網目構造へ変化させる作用を果たし、セメント系固化材、セメント、消石灰はそれぞれ、団粒化剤によって形成された立体網目構造を、外力で破壊されない強度に固める作用を果たす。なお、セメント系固化材、セメント、消石灰は、土系骨材の種類、当該舗装構造の施工場所などに応じて使い分けることが望ましく、2以上を混合して使用することもできる。
【0011】
ここで、前記微生物として、バチルススパリカス、バチルスサブチルス、バチルスツリュゲナイセスのうちの1以上を用いることが望ましい。これらの微生物は、自然環境へ悪影響を及ぼすことがなく、舗装構造を構成する成分中においても防カビ性、防苔性及び浄水性を失わないので、長期間にわたって防カビ性、防苔性及び浄水性を維持することができる。なお、これらの微生物の他に枯草菌も好適に使用することができる。
【0012】
一方、前記土系骨材としては、砂質土、粘土、ヘドロのうちの1以上を用いることができる。砂質土、粘土を用いればこれらの素材が具備する独特の質感を備えた舗装構造を形成することができる。また、ヘドロを用いれば、廃棄物の有効活用を図ることができる。また、これらの土系骨材を用いることにより、舗装構造内に微生物の成育に適した環境を形成することができる。
【0013】
また、前記団粒化剤として、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体を含む高分子化合物を用いると、強固な立体網目構造が形成されるため、舗装構造の強度及び耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、自然環境との調和性に優れた外観を有し、透水性と保水性とを兼備し、防カビ性、防苔性及び浄水性も備えた舗装構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態である舗装構造を示す垂直断面図、図2,図3は図1に示す舗装構造の施工過程の一部を示す図、図4は図3に示す混合物中に形成される立体網目構造の模式図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の舗装構造1は、路床2の上にクラッシャーランを敷設して形成された路盤3の上面に、後述する工程で形成された混合物15を打設し、固化させることによって形成されている。
【0017】
ここで、図1及び図2〜図4に基づいて、舗装構造1の施工方法について説明する。図1に示すように、土系骨材10と、セメント系固化材11と、防カビ性、防苔性及び浄水性を有する微生物16をミキサ12に投入して充分に撹拌、混合する。ミキサ12はモータ13などを用いた撹拌駆動機構を有する一般的なものを用いることができる。土系骨材10とセメント系固化材11とがムラ無く混合されたら、団粒化剤14を添加し、さらに撹拌、混練することによってスラリー状の混合物15を形成する。
【0018】
この後、図3に示すように、前述した混合物15を路盤3の上面3aに打設し、固化させると舗装構造1が形成される。なお、混合物15の打設後は、約15時間程度静置して養生することが望ましい。
【0019】
路盤3の上面3aに打設された混合物15中においては、団粒化剤14の団粒化作用により、図4に示すように、土系骨材10、セメント系固化材11などの粒子群が互いに結合して団粒化しながら立体網目構造19が形成され、この過程において、さらに結合、連結が進行して、大小の間隙を有する多孔質状の粗大粒子20が形成され、養生過程を経ることによって固化する。混合物15が完全に固化すると、図1に示すような舗装構造1が完成する。
【0020】
前述した工程を経て形成された舗装構造1は、図4に示すような立体網目構造19を備えているため、この立体網目構造19内に存在する連続した空隙により、水分を効率的に吸収したり、透過したりする機能が生じ、優れた透水性及び保水性を発揮する。このため、舗装構造1の表面に降り注いだ雨水などは舗装構造1中へ速やかに吸収され、立体網目構造19内に存在する連続した空隙によって保水されるとともに、保水しきれない雨水は下方へ浸透させることが可能であり、舗装構造1は透水性と保水性とのバランスが良好である。
【0021】
さらに、夏季などの気温の高い時期には、舗装構造1中に保持されている水分が表面から蒸発し、その際に気化熱を奪うので、舗装構造1が施工された部分の温度上昇を抑制することができる。このため、ヒートアイランド現象の防止にも有効である。
【0022】
また、舗装構造1中に土系骨材10を含んでいることにより、その表面は天然土に似た外観、色調、質感を発現するため、自然環境との調和性に優れた外観性を呈する。さらに、防カビ性、防苔性及び浄水性を有する微生物16を含んでいるため、施工後、長期間にわたって優れた防カビ性、防苔性及び浄水性を発揮する。
【0023】
また、微生物16の浄水性により、近傍の臭気を分解したり、水質を浄化したりする作用も発揮するため、悪臭軽減や周辺環境の浄化などの効果も得ることができる。さらに、微生物16の浄水性により、舗装構造1中に保持される水分及び舗装構造1を通過する水分も浄化(殺菌、滅菌)されるため、当該舗装構造1を通過して地下へ浸透する水分に起因する土壌汚染を防止することもできる。従って、舗装構造1の下方に地下貯水構造4を構築すれば、舗装構造1中の微生物16によって浄化された清浄な水を貯留することができる。
【0024】
図2に示す過程において形成される混合物15の組成は特に限定するものではないが、本実施形態においては、土系骨材10として砂質土を用い、セメント系固化材11として高炉セメントを使用し、団粒化剤14として有限会社グローバル研究所の「商品名:GB−2000」を用い、微生物16としてバチルススパリカス、バチルスサブチルス、バチルスツリュゲナイセスを含む細菌類(株式会社ビッグバイオの粉末状細菌)を用いたところ、強固な立体網目構造19が形成されるとともに、優れた防カビ作用・防苔作用を得ることができた。
【0025】
なお、「GB−2000」はアクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物である。「GB−2000」は原液そのまま、あるいは水溶液にして使用することができる。団粒化剤として「GB−2000」を使用することにより、強固な立体網目構造19が形成されるため、舗装構造1の強度及び耐久性を向上させることができる。
【0026】
なお、本実施形態において、混合物15を構成する各成分の混合比率は次の通りであるが、これに限定するものではないので、舗装構造1の施工場所、土系骨材10の種類、性状などによって変更することができる。
土系骨材10(砂質土):1000kg〜1500kg
高炉セメント:100kg〜200kg
団粒化剤14(GB−2000の原液):1リットル〜10リットル
微生物16(株式会社ビッグバイオの粉末状細菌):1kg〜100kg
水:適量(混合物15の固さ、流動性を確認しながら添加量を調節する。)
【0027】
また、混合物15を形成する際に植物系や樹脂系などの繊維材を入れることも可能であるため、前述と同様、繊維材を混入させて形成した混合物15を路盤3の上面3aに打設して、固化させれば、舗装構造1の強度を更に高めることができる。なお、本実施形態の舗装構造1は、大気中に露出した表面層部分に施工しているが、これに限定するものではないので、表面層より下方に位置する中間層あるいは路盤層などとして施工することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の舗装構造は、車道、歩道、駐車場などの舗装技術として土木建設業の分野において広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態である舗装構造を示す垂直断面図である。
【図2】図1に示す舗装構造の施工過程の一部を示す図である。
【図3】図1に示す舗装構造の施工過程の一部を示す図である。
【図4】図3に示す混合物中に形成される立体網目構造の模式図である。
【符号の説明】
【0030】
1 舗装構造
2 路床
3 路盤
3a 上面
4 地下貯水構造
10 土系骨材
11 セメント系固化材
12 ミキサ
13 モータ
14 団粒化剤
15 混合物
16 微生物
19 立体網目構造
20 粗大粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系固化材、セメント、消石灰のうちの1以上と、土系骨材と、団粒化剤と、防カビ性、防苔性及び浄水性を有する微生物と、を含む混合物を路盤上に打設し、固化させて形成したことを特徴とする舗装構造。
【請求項2】
前記微生物として、バチルススパリカス、バチルスサブチルス、バチルスツリュゲナイセスのうちの1以上を用いた請求項1記載の舗装構造。
【請求項3】
前記土系骨材として、砂質土、粘土、ヘドロのうちの1以上を用いた請求項1または2記載の舗装構造。
【請求項4】
前記団粒化剤として、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体を含む高分子化合物を用いた請求項1〜3の何れかに記載の舗装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−270302(P2009−270302A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120547(P2008−120547)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(500305380)株式会社シーマコンサルタント (30)
【出願人】(303048341)株式会社ビッグバイオ (10)
【Fターム(参考)】