説明

航空機の乗組員によって装着される呼吸マスク用の収納箱

本発明は、航空機乗組員の顔に適用されるように適合された防護マスク(4)がその中で受けられる収納箱(13)であって、前記航空機乗組員が前記収納箱をその周りから区別するのに役立つように、航空機内でのトリガ事象の発生時に作動することができる信号発信手段(19)をさらに含む収納箱に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に航空機内の搭乗員のための機器、防護マスクや呼吸マスクなどの機器、およびそのようなマスク用の収納箱、に関する。
【背景技術】
【0002】
減圧事故または航空機内での煙の発生の場合に乗客および乗組員の安全を保証するために、航空規則は、機内高度に応じた酸素流量を各乗客および乗組員に供給できる安全酸素供給回路をすべての定期旅客機に搭載することを義務付けている。そのような酸素は、呼吸マスクまたは防護マスクを通じて、エンドユーザとしても知られる乗組員または乗客に届けられる。
【0003】
減圧事故後または航空機内での煙の発生時、乗組員は、できる限り速く自身の顔の上に自身の防護マスクを着用しなければならない。実際、高い高度での酸素の欠乏(低酸素症(hypoxia))または毒性ガスによって、乗客および航空機の安全を保証することになる緊急措置を乗組員が続行する能力が変えられるおそれがある。
【0004】
防護マスクは、一般に、乗組員の位置の隣に配置された収納箱と呼ばれる箱の中に収められている。航空規則(FAR)では、5秒未満でマスクが所定の位置に置かれてその装着者に酸素を供給できることが要求されているので、乗組員が迅速に反応して、防護マスクをその収納箱から出し、緊急措置を安全に続行することが最も重要である。
【0005】
飛行シミュレーションにおいても実際の事故においても、乗組員が事故の発見直後に自身の防護マスクを着用することを考え付かない場合があることが示されている。
【0006】
さらに、夜間航行の時には、少なくとも1人の乗組員が航空機を操縦する間に他の何人かが休憩できるように、コックピット内の明かりは通常消される。緊急事態の発生時または他の何らかの理由から防護マスクの着用が必要となる場合、目覚めた乗組員は、コックピットの暗闇の中で収納箱を容易に見分けられないので、収納箱の場所を迅速に見つけるのが困難なことに気付くことがある。
【0007】
現在、コックピット内の様々な機器の中で乗組員が容易に見ることができて特定できる、防護マスクを収容する収納箱が必要である。また、緊急事態で乗組員の注意を引きつけることができる収納箱も必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、容易に見ることができ、および/または、場所を見つけられる収納箱を開発することが望ましい。さらに、緊急事態において乗組員がただちに場所を見つけることができる収納箱を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、請求項1で請求されている収納箱が提供される。
【0010】
航空機内でのトリガ事象の発生時に作動可能な信号発信手段によって、収納箱は、乗組員および収納箱自体を取り囲む環境内で容易に発見することができる。さらに、信号発信手段を作動させるにはトリガ事象が必要となるので、通常の航行中、乗組員は、信号発信手段によって注意をそらされない。
【0011】
前述およびその他の特徴は、非限定例として与える特定の諸実施形態についての以下の説明を読めば、よりよく理解される。以下の説明は、添付図面に言及する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実装形態による呼吸マスク用の収納箱の略図である。
【図2】呼吸マスクが内部に収められ、その信号発信手段が箱の外側に置かれた、収納箱の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による収納箱の第1の実装形態を図1に示す 呼吸マスク(図示せず)がその中に収められた収納箱13は、前記収納箱13をその環境から区別するように適合された信号発信手段19を備えている。前述のように、乗組員が自身を取り囲む様々な機器から収納箱を迅速に識別することが不可欠である。また、緊急事態ゆえに乗組員が呼吸デバイスを着用することを考え付かずに一連の緊急措置を進めるおそれがあるので、乗組員にマスク着用が不可欠であることを思い出させることが重要である。高い高度での酸素の欠乏(客室の圧力損失の場合)または煙の存在によって、マスクをしていない乗組員の能力が急激に変化することがある。
【0014】
収納箱13の場所を見つけるためまたは乗組員の注意を収納箱に引くために、信号発信手段は、光、音声警告デバイスによって生み出される警報音、または振動デバイス、であってもよいし、呼吸マスクを箱から取り出してそれを身に付けることを乗組員に考え付かせるあらゆる適切なデバイスであってもよい。
【0015】
そのような信号発信手段は、乗組員の注意を仕事からそらすことになるので、必ずしも常に作動している必要はない。本発明による収納箱では、航空機内でのトリガ事象の発生時に信号発信手段19が作動される。トリガ事象は、客室圧力の急激な低下であってもよいし、客室および/またはコックピット内での煙の発生であってもよいし、または単純に、前述のように夜間飛行時のコックピット内の消灯であってもよい。
【0016】
トリガ事象の検出のため、様々なパラメータ(緊急事態を示すパラメータ、または、防護マスクに迅速にアクセスできることが重要である状況(例えば、夜間飛行)を示すパラメータ)を測定するセンサ(複数)が設けられていてもよい。センサは、収納箱内または収納箱の近くに設けることもでき、あるいは、航空機内の他の場所で利用可能とすることもでき、それらの信号は航空機バスシステム上で利用可能である。
【0017】
信号発信手段を作動させるために、電子回路20またはCPUが収納箱内または航空機内の他の場所に設けられており、これらは、トリガ事象に関係する情報を読み取り、適切なときに前記信号発信手段を作動させる。その主旨で、電子装置20は、様々なセンサからの信号を読み取るように適合されており、トリガ事象に対応する可能性のあるこれらの信号の発生を検出するように適合されている。
【0018】
収納箱13の近くまたは収納箱13内に配置された図1に示すセンサ50の例としては(これだけに限るものではないが)、
客室圧力の急激な圧力低下を検出するための圧力センサ、
コックピット内での煙またはガス(fumes)の発生を検出するための煙探知器、または、
夜間飛行のために乗組員によって明かりが消されるとき、または日が暮れるときにコックピットの明かりが点いていないとき、のようなコックピット内の明かりの著しい変化を検出するための光センサ、である。
【0019】
一般に、他の類似のセンサ(図1の51〜53)が航空機内に設けられており、それらの信号は航空機バスから利用可能である。緊急事態に関連した事象を検出する追加のデバイスを航空機内で利用することもできる。そのようなデバイス(図1の55)は、航空機バスシステムに接続され、事象を表すトリガ信号を送信する。電子回路20は、また、航空機バスシステムからの利用可能なそのようなトリガ信号を読み取ると信号発信手段19を作動させるように適合されている。
【0020】
夜間飛行の状況に関し、前述の光センサに類似した光センサがコックピット内に設けられていてもよい。また、コックピット内の消灯がトリガ事象であってもよく、例えばバスシステムを介しての電子回路20への信号(コックピットの明かりが消されたという信号)を信号発信手段を作動させるために利用してもよい。信号発信デバイスとしての光が、この場合、より適している可能性がある。しかし、警報音および/または振動が乗組員の注意を引きつけるために使用されてもよい。
【0021】
図2は、本発明による収納箱の第1の実装形態の例示的な図である。防護機器4が収納箱13に収められている。この箱はそれぞれ2つの扉11、12を備えている。各扉は、他方の扉のノッチと一致するノッチ14を含んでいる。これらのノッチによって、防護機器のグリップ表面15が収納箱13の外に突き出ることができる。扉11、12は、収納箱13のアクセス面を構成している。また、ノッチの有無にかかわらず、2つ以上の扉を備えた、収納箱についての他のアクセス面も知られている。信号発信手段19は、扉のうちの1つ、ここではアクセス表面の扉11に設けられているが、乗組員の注意を引くことができるのであれば、収納箱上の他の場所に設けることもできる。
【0022】
信号発信手段19は、図2では、収納箱13の隣に設けられた電子回路20に接続されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機乗組員の顔に適用されるように適合された防護マスク(4)がその中で受けられる収納箱(13)であって、
前記航空機乗組員が該収納箱をその周りから区別するのに役立つように、航空機内でのトリガ事象の発生時に作動可能な信号発信手段(19)をさらに含んでいる、収納箱。
【請求項2】
前記信号発信手段(複数)は、前記航空機内での事故の発生時に作動される、請求項1に記載の収納箱。
【請求項3】
前記収納箱が前記航空機のコックピット内に配置されており、
前記信号発信手段は前記コックピットの明かりの著しい減少時に作動される、請求項1に記載の収納箱。
【請求項4】
トリガ事象を検出しおよび/またはトリガ事象に対応する信号を受信すると共に、前記トリガ事象の発生時に前記信号発信手段を作動させる電子装置(20)が設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の収納箱。
【請求項5】
前記航空機の前記客室内に、客室圧力の急激な低下を測定する圧力センサが設けられており、
前記客室の圧力の前記急激な低下がトリガ事象となる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の収納箱。
【請求項6】
前記航空機の前記コックピット内に、前記コックピットの明かりの著しい変化を測定する光センサが設けられており、
前記コックピットの明かりの前記著しい変化がトリガ事象となる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の収納箱。
【請求項7】
前記航空機の前記コックピット内に、前記コックピットを明るくする明かりが設けられており、
前記航空機の前記コックピット内の前記明かりを消すことがトリガ事象となる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の収納箱。
【請求項8】
前記航空機の前記客室またはコックピット内に、前記航空機内での煙の発生を検出する煙探知器が設けられており、
煙の検出がトリガ事象となる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の収納箱。
【請求項9】
前記信号発信手段が光である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の収納箱。
【請求項10】
前記信号発信手段が警報音を生み出す音声警告デバイスである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の収納箱。
【請求項11】
前記信号発信手段が振動デバイスである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の収納箱。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−500214(P2010−500214A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523358(P2009−523358)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際出願番号】PCT/IB2006/003481
【国際公開番号】WO2008/017901
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(508313840)
【Fターム(参考)】