説明

航空機の脱出経路標識

【課題】
【解決手段】
本発明は、標示すべき脱出経路に沿って順次配置されている複数の長手方向の区分を備えた、航空機の客室用の脱出経路標識であって、各区分は、支持モジュール10と、支持モジュール10に配置されている光モジュール12とを有し、光モジュール12は、本質的に透過性プラスチック材料を有し、この中に、暗所で残光するフォトルミネッセンス顔料が混合されており、顔料は第2の材料内にマイクロカプセル化されるので、液体および水分が顔料と接触しない、脱出経路標識に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は航空機の脱出経路標識に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機において、脱出経路を標示するためにフォトルミネッセンスストライプを航空機の客室の床に配置することが知られており、これはまた非常用標識としても示されるものである。フォトルミネッセンスは、時として、残光および/またはリン光とも呼ばれている。脱出経路標識のための安全面での要件は、たとえばドイツ工業標準規格DIN 67 510に特定されている。ストライプが床に直線的に設置され、非常時には、これらは搭乗者および乗組員に出口や避難口への道を表示する。従来、フォトルミネッセンスストライプは、これらが電圧源なしで作動し得るものであり、十分な期間残光し、現在手近な顔料によって暗所で十分に輝くために、航空機の構造においてますます受け入れられてきている。
【0003】
たとえば国際特許公開第96/33093A1号から、非常用照明が知られており、ここでは、フォトルミネッセンスストライプが透過性プラスチック材料に包含されている。キシレン(Xylen)、2−ブトキシエタノール(2-Butoxyethanol)、およびシクロヘキサノン(Cyolohexanone)が、フォトルミネッセンス材料用の染料として使用されている。
【0004】
フォトルミネッセンス反射層が、国際特許公開第94/17766A1号から知られており、ここでは、発光顔料がスクリーン印刷によって基板にパターンで塗布される。
【0005】
フォトルミネッセンス脱出経路標識が、米国特許第4,401,050号から知られており、ここでは、フォトルミネッセンス材料がプラスチック材料製の平坦な材料層の裏面に塗布されている。
【0006】
脱出経路の方向ポインタが、国際特許公開第87/02813A1号から知られており、ここでは光蛍光性の手段が噴霧またはスクリーン印刷によって基板材料に塗布される。
【0007】
持続性蛍光層が、欧州特許公開第0 489 561A1号から知られており、ここでは着色顔料がポリマーマトリックスに包含されている。ここでは、蛍光物質が支持部に含まれていてもよく、追加的なフィルタによって蛍光光線に異なる光学特性を付与する。
【0008】
フォトルミネッセンス材料で裏打ちされた安全標識が、仏国特許公開第2 308 155A1号から知られており、ここでは、フォトルミネッセンス顔料を有する分散がプラスチック材料の透過性層に塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許公開第96/33093A1号公報
【特許文献2】国際特許公開第94/17766A1号
【特許文献3】米国特許第4,401,050号
【特許文献4】国際特許公開第87/02813A1号
【特許文献5】欧州特許公開第0 489 561A1号
【特許文献6】仏国特許公開第2 308 155A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
既知の脱出経路標識の使用において、脱出経路標識を設置した後に、標識の領域によってこれらの照明能力および/またはこれらの色彩が損なわれるという問題が、再三生じている。
【0011】
本発明は、簡単な方法によって航空機の客室に恒久的に設置することのできる脱出経路標識を提供するという目的に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、本目的は、請求項1の特徴を備えた脱出経路標識によって達成される。有利な実施形態は、従属項の主題を構成する。
【0013】
本発明の脱出経路標識は、航空機の客室に適している。脱出経路標識は、標示すべき脱出経路に沿って床に順次配置されている複数の長手方向の区分を有する。長手方向の区分は、任意の形状を有してもよく、特に直線状や曲線状の進路であってもよい。各区分は、支持モジュールおよび光モジュールが特徴となっている。光モジュールは、支持モジュール上に配置されている。光モジュールは、本質的に透過性プラスチック材料からなり、この中に、暗所で所望の残光を発生させるフォトルミネッセンス顔料が包含されている。
【0014】
本発明によると、顔料は第2の材料内にマイクロカプセル化されるので、液体および蒸気が顔料と接触することができない。顔料は、第2の材料内に完全にカプセル化される。本発明は、光モジュールの照明能力が損なわれたり暗くなったりすることは、それ自体がたとえば茶色か黒色の斑点として表現できるものであるが、時がたつにつれて顔料の化学反応を開始させる液体および/または液体の蒸気に起因するものであり、これが進行すると、いわゆる顔料腐食と呼ばれる茶色の着色が生じるという発見に基づくものである。顔料のマイクロカプセル化によって、時間が経過しても確実に顔料が腐食しなくなり、したがって、顔料によって照明能力が損なわれることはない。本発明の脱出経路標識の特段の利点は、切断縁部が腐食することなく光モジュールを切断することができることである。
【0015】
第2の材料に関しては、プラスチック材料が好ましい。カプセル化するためのプラスチック材料は、カプセル化顔料が中に包含されているプラスチック材料と異なるものが好ましい。
【0016】
ケイ酸塩(Silicat)またはガラスを第2の材料に使用してもよい。
【0017】
光モジュールの透過性プラスチック材料の厚さは、0.1mmから2.0mmであり、好ましくは、透過性プラスチック材料は、0.2mmから1.5mmの厚さで作製される。透過性プラスチック材料はマトリックスを形成し、この中に、マイクロカプセル化顔料が好ましくは均一に分散されて保持されている。
【0018】
好ましい製造方法では、透過性プラスチック材料が顔料と共に押出成形される。その代わりに、顔料を備えた透過性プラスチック材料を支持モジュールに印刷することもまた可能であり、ここではスクリーン印刷を使用するのが好ましい。代替実施形態において、光モジュールを形成するために透過性プラスチック材料を成形することもまた可能であり、この際マイクロカプセル化顔料もまた共に流し込まれる。
【0019】
透過性プラスチック材料を顔料と共に支持材料に噴霧して、透過性プラスチック材料をその上で凝固させることもまた、可能である。
【0020】
好ましい実施態様において、アルミン酸ストロンチウム(Strontiumaluminat)を含有するフォトルミネッセンス顔料を使用する。これらの顔料は、溶媒含有ラッカー、印刷インキ、熱転写のり、およびプラスチゾル(Plastisole)で処理されてもよい。ポリプロピレン(polypropylene)およびポリエチレン(Polyethylene)は、顔料のカプセル化に特に適している。特に所望のマイクロカプセル化を達成するために、材料をさらに重合してもよい。たとえば、無水マレイン酸(Maleinanhydrid)と重合したポリプロピレン(polypropylene)をカプセル化に使用することができる。顔料を十分にマイクロカプセル化する他のプラスチック材料もまた、可能である。
【0021】
完成した光モジュールでは、カプセル化顔料が、第1のプラスチック材料のポリマーマトリックスに包含される。
【0022】
本発明の脱出経路標識の2つの例を、以下にさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】光モジュールが上に設けられている支持モジュールの斜視図である。
【図2】光モジュールが内側にあり、さらにカバーによって保護されている支持モジュールの断面図である。
【図3】マイクロカプセル化顔料の拡大図である。
【実施例】
【0024】
図1は、支持モジュール10を示しており、立方体の形状を有し、長手方向のストライプとして実現されている。支持モジュールは、プラスチック材料からなり、たとえば、支持モジュールは、客室の床と共に接着されることができるか、またはねじ止めされることができる。ここでは、支持モジュールが直線状の進路を有することが絶対に欠かせないというわけではなく、支持モジュールまたはさらに脱出経路標識の全体もまた、それぞれ曲線状の進路を有していてもよい。
【0025】
光モジュール12は、支持モジュール10に配置されている。ここで、光モジュール12は、たとえば支持モジュール10に接着されてもよい。別の方法で光モジュール12を支持モジュール10と接続することもまた、可能である。たとえば、光モジュール12は支持モジュール上に押出成形されることができ、あるいは、光モジュール12はスクリーン印刷によって塗布されてもよい。光モジュールの厚さdは、約0.2mmから1.5mmまでである。
【0026】
光モジュール2は、透過性プラスチック材料(バインダ)で構成されており、この中に、マイクロカプセル化されたフォトルミネッセンス顔料が包含されている。アルミン酸ストロンチウム(Strunziumaluminate)が、フォトルミネッセンス粒子として使用される。顔料は、酸化ジスプロシウム(Dysprosiumoxid)および酸化ユウロピウム(Europiumoxid)を含有してもよい。
【0027】
顔料は、プラスチック材料に完全にマイクロカプセル化される。ここでは、顔料はポリエチレン(Polyethylene)であってもよく、これは顔料を完全にマイクロカプセル化するために、無水物でさらに重合されたものである。
【0028】
図2は、断面での代替の脱出経路標識のアセンブリを示しており、ここでは、光モジュール16が支持モジュール14に配置されている。この断面では、支持モジュール14は、側方の外壁18を有し、この外壁18は光モジュール16のためのトラフ状の収容空間を形成する。突起20が光モジュール14の後方に設けられており、支持モジュールの長手方向に延び、より良好に床に接着するのに役立つ。支持モジュールは、U字形のカバーレール22によって覆われており、透過材からなり、光モジュール16の段を保護する。支持レール22は、鼻部26がその各端部で突出している側壁24を有し、各鼻部は側壁18の突起の後方で把持している。
【0029】
図3は、第2の材料30によって完全にカプセル化されたマイクロカプセル化顔料28の詳細を示している。顔料の光が出ることができるように、第2の材料30は透過性である。シェル30の内部で、複数の顔料がひとかたまりに結合されている。個々のマイクロカプセル化顔料は、プラスチック材料のマトリックスに保持されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標示すべき脱出経路に沿って順次配置されている複数の長手方向の区分を備えた、航空機の客室用の脱出経路標識であって、各区分が、支持モジュール(10;14)と、前記支持モジュール(10;14)に配置されている光モジュール(12;16)とを有し、前記光モジュール(12;16)が、本質的に透過性プラスチック材料を有し、この中に、暗所で残光するフォトルミネッセンス顔料が混合されている、脱出経路標識であって、前記顔料は第2の材料内にマイクロカプセル化されるので、液体および蒸気が前記顔料と接触しないことを特徴とする、脱出経路標識。
【請求項2】
前記第2の材料がプラスチック材料であることを特徴とする、請求項1に記載の脱出経路標識。
【請求項3】
前記第2の材料が、前記透過性プラスチック材料と異なるプラスチック材料であることを特徴とする、請求項2に記載の脱出経路標識。
【請求項4】
前記第2の材料が、ガラスまたはケイ酸塩であることを特徴とする、請求項1に記載の脱出経路標識。
【請求項5】
前記透過性プラスチック材料の厚さ(d)が、0.1mmから2.0mmであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の脱出経路標識。
【請求項6】
前記透過性プラスチック材料の厚さ(d)が、0.2mmから1.5mmであることを特徴とする、請求項5に記載の脱出経路標識。
【請求項7】
前記透過性プラスチック材料が、前記顔料と共に押出成形されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の脱出経路標識。
【請求項8】
前記顔料を備えた透過性プラスチック材料が、好ましくはスクリーン印刷によって前記支持モジュールに印刷されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の脱出経路標識。
【請求項9】
光モジュールを形成するために、前記透過性プラスチック材料が成形されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の脱出経路標識。
【請求項10】
前記顔料を備えた透過性プラスチック材料が前記支持モジュールに噴霧されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の脱出経路標識。
【請求項11】
前記顔料がアルミン酸ストロンチウムであることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の脱出経路標識。
【請求項12】
前記フォトルミネッセンス顔料が、さらに、酸化ジスプロシウムおよび/または酸化ユウロピウムであることを特徴とする、請求項11に記載の脱出経路標識。
【請求項13】
前記光モジュールが曲線状の進路を有することを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の脱出経路標識。
【請求項14】
前記光モジュールが直線状の進路を有することを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の脱出経路標識。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−535347(P2010−535347A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504514(P2010−504514)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003114
【国際公開番号】WO2008/135145
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(503371373)ルフトハンザ・テッヒニク・アクチェンゲゼルシャフト (14)
【氏名又は名称原語表記】LUFTHANSA TECHNIK AG
【Fターム(参考)】